JP4921624B2 - クロロプレンラテックス組成物およびその製造方法、それを用いた接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤として有効なクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法、それを用いた接着剤組成物に関する。さらに詳しくは耐水性と耐熱性に優れ、また初期接着力や常態接着力などの接着性能のバランスに優れ、オレフィン系樹脂などの接着性に優れた水系コンタクト型接着剤として好適なクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法、それを用いた接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリクロロプレンをベースとした接着剤は溶剤型が主流であった。しかし、近年溶剤型接着剤は製造や使用の際の有機溶剤による毒性、火気危険性、環境汚染などの問題から、脱溶剤化の要求が高まっている。
【0003】
脱溶剤化の手法としては、溶剤型接着剤をラテックス接着剤に代替する方法が有効と考えられ、各種ポリマーを使用したラテックス接着剤の検討が盛んに行われている。
【0004】
なかでもクロロプレンラテックス接着剤は、接合する被着体の双方に塗布し、これらの接着剤層を乾燥した後に貼り合わせることにより、貼り合わせ直後から高い接着力を発現する。こうした特徴から、水系コンタクト型接着剤としての利用を期待されている反面、溶剤系接着剤と比較して初期接着強度、耐水性等の接着性能が劣り、この改良が課題とされてきた。
【0005】
例えば特公昭52−13983号公報、特開昭50−22084号公報、特開平05−222106号公報、特開平06−287360号公報、特開平06−336579号公報、特開平07−33912号公報には、クロロプレン100重量部を、α,β不飽和カルボン酸、ポリビニルアルコール、連鎖移動剤の存在下でクロロプレンを重合するクロロプレンラテックス接着剤の製造方法が開示されている。特公昭52−13983号公報の実施例中には、メタクリル酸の添加量を0.5、2、3重量部と、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド1.2重量部の存在下で重合したクロロプレンラテックスが示されているが、このようなクロロプレンラテックスではゲル含有率が低く、耐熱性が劣るものであった。また特開平5−222106号公報の実施例中には、3部のメタクリル酸と、0.405部のドデシルメルカプタンの存在下で重合した、ゲル含有率が25%であるクロロプレンラテックスが示されているが、このようなクロプレンラテックスでは耐水性が劣るものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、耐水性と耐熱性に優れた水系接着剤用のクロロプレンラテックス組成物とその製造方法、それを用いた接着剤組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリビニルアルコールの存在下、クロロプレンと特定量のエチレン性不飽和カルボン酸とを重合することにより、耐水性と耐熱性に優れるクロロプレンラテックス組成物が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、クロロプレン100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0重量部を超え2重量部未満を、ポリビニルアルコール0.5〜10重量部の存在下に重合して得られ、かつクロロプレン系重合体のゲル含有率が10重量%を超えて70重量%以下であるクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法、それを用いた接着剤組成物である。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。本発明におけるクロロプレン系重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンと記す)とエチレン性不飽和カルボン酸との共重合体であり、クロロプレンと共重合可能な他の単量体の1種以上とを更に共重合してもよい。
【0010】
本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸のエステル類、メタクリル酸のエステル類等が挙げられ、必要に応じてこれらを2種以上用いてもかまわない。
【0011】
本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などを挙げることが出来、これらを単独もしくは2種類以上併用して使用することもできる。なお本発明においてはアクリル酸、メタクリル酸を使用することが好ましく、特にメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0012】
また本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の添加量は、クロロプレン100重量部あたり0重量部を超え2重量部未満である。より好ましくは0.5〜1.5重量部、更に好ましくは1.0〜1.5重量部である。エチレン性不飽和カルボン酸の添加量が0重量部の場合にはラテックスの安定性に劣るため高濃度化が困難であり、また接着物性、特に耐熱性に劣る。エチレン性不飽和カルボン酸の添加量が2重量部以上の場合には、耐水性の低下が大きい。
【0013】
本発明におけるポリビニルアルコールは特に制限されるものではないが、けん化度60〜98モル%、重合度が200〜3000の範囲のものが好ましい。より好ましくは、けん化度75〜95モル%、重合度が200〜700であり重合操作が安定に行える。更に好ましくは、けん化度75〜85モル%、重合度が200〜700であり、ラテックスの安定性が優れ、高濃度で安定なラテックスを得ることが出来る。
【0014】
本発明におけるポリビニルアルコールの添加量としては0.5〜10重量部の添加が好ましい。より好ましくは2〜5重量部であり、更に好ましく2.5〜4.5重量部である。ポリビニルアルコールの添加量が0.5重量部未満の場合には、乳化力が充分でなく、重合反応中に凝集物の発生が頻発する。また10重量部を越えると重合反応中に増粘が起こり、撹拌を阻害し、異常発熱するなど安定重合が困難となる。
【0015】
また本発明におけるクロロプレン系重合体は、トルエン不溶のゲル分含有率が10重量%を超えて70重量%以下の範囲にあることが必要であり、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは20〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%の範囲である。ゲル分含有率が10重量%以下の場合には、接着強度、耐熱性やせん断強度が低下する。またゲル分含有率が70重量%を越えると、初期接着性が低下するほか、耐水性が著しく低下する。
【0016】
クロロプレン系重合体のゲル分含有率を制御するには、▲1▼連鎖移動剤の使用とその使用量、▲2▼重合温度とさらに▲3▼最終重合率の制御によって可能となる。
【0017】
まず連鎖移動剤としては、クロロプレン系重合体の製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0018】
次に重合触媒は、通常クロロプレンの乳化重合に用いられる過硫酸カリウム等の加硫酸塩、第3−ブチルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が使用でき、特に限定されるものではない。また亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、ロンガリットなどの還元性物質を併用することでより円滑に重合反応を進めることが出来る。
また、重合温度については、0〜55℃の範囲であることが重合制御上好ましい。なお重合反応をより円滑にかつ安全に行うには、重合温度を30〜50℃とすることが好ましい。
【0019】
また最終重合率については、80重量%以上とすることが好ましく、90重量%以上とすることがより好ましい。
【0020】
本発明において、クロロプレンラテックスの固形分濃度は40〜65重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50〜60重量%の範囲である。より高い固形分濃度とすることにより、乾燥速度が速く、初期接着性により優れたラテックスとなる。なお固形分濃度については、重合時のモノマーと水の比率によっても調整できるが、重合後に濃縮を行い調整することが出来る。
【0021】
本発明で得られたクロロプレンラテックス組成物には、ジエタノールアミンなどの塩基性物質をpH調整剤として添加できるほか、脂肪族アルカノールアミド等の界面活性剤やロジン酸エステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族樹脂等の粘着付与樹脂、酸化亜鉛などの金属酸化物、炭酸カルシウムやシリカなどの無機充填剤、ジブチルフタレートやプロセスオイルなどの可塑剤・軟化剤、更に各種老化防止剤などを任意に配合することができる。
特に接着剤組成物とする場合には、接着性能を制御する目的で粘着付与樹脂を使用することが好ましく、特にテルペンフェノール系やロジン酸エステル系の樹脂エマルジョンや水溶性クマロンインデン樹脂を添加することが好ましい。
【0022】
本発明により得られたクロロプレンラテックス接着剤は、紙、木材、布、皮革、レザー、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、セラミック、金属などの同種、あるいは異種の接合接着用として好適である。接着時の施工方法に関しても、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布などが可能である。
【0023】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部および%は重量基準によって示す。
【0024】
実施例1
内容積3リットルの反応器を用い、窒素気流下で、水94部およびポリビニルアルコール(ユニチカ・UMR−20H、けん化度79モル%、重合度380)3.5部を入れ加温(60℃)溶解した。この水溶液を室温近くまで冷却した後、この中にクロロプレン単量体99部、メタクリル酸0.5部、及びオクチルメルカプタン0.3部を加えた。これを45℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として用い重合してラテックスを得た。最終重合率は98%であった。
【0025】
次に、このクロロプレンラテックスに、20%ジエタノールアミン水溶液を添加してpHを7に調整した後、1:2モル型脂肪酸アルカノールアミド(ダイヤモンドシムヤロックケミカル社製)の20%水溶液を3部添加した。更に減圧下で水分を蒸発させ濃縮を行い、固形分濃度が55%となるように調整した。
【0026】
次に、このクロロプレンラテックスについて、以下の測定を行った。
〔ゲル分測定〕
ラテックス試料を凍結乾燥して精秤しAとした。これをトルエンで溶解(0.6%に調製)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いてゲル分を分離した。ゲル分を風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、精秤してBとした。
ゲル分は下式に従がって算出した。
ゲル分=B/A×100 (%)
結果を表1に示した。
【0027】
〔初期剥離強度〕
表1に示した処方で接着剤組成物を調整した。
次に帆布(25×150mm)2枚の各々に、300g(固形分)/m2の接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を張り合わせハンドローラーで圧締した。
10分間圧締後、引張り試験機で、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
【0028】
〔常態剥離強度〕
表1に示した処方で接着剤組成物を調整した。
次に帆布(25×150mm)2枚の各々に、300g(固形分)/m2の接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を張り合わせハンドローラーで圧締した。
圧締7日後、引張り試験機で、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
【0029】
〔軟化温度〕
表1に示した処方で接着剤組成物を調整した。
次に帆布(25×150mm)2枚の各々に、300g(固形分)/m2の接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を張り合わせハンドローラーで圧締した。
圧締7日後、JIS K−6833に準じて軟化温度を測定した。
【0030】
〔耐水強度〕
表1に示した処方で接着剤組成物を調整した。
次に帆布(25×150mm)2枚の各々に、300g(固形分)/m2の接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を張り合わせハンドローラーで圧締した。
圧締7日後、水中に2日間浸漬し、引張り試験機で引張り速度200mm/minで、180°剥離強度を測定した。
【0031】
実施例2
実施例1において、メタクリル酸の割合を表1のように変更して実施例1と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0032】
実施例3
実施例1において、メタクリル酸の割合を表1のように変更して実施例1と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0033】
実施例4
実施例2において、オクチルメルカプタンを0.38部として実施例2と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例2と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0034】
実施例5
実施例2において、ポリビニルアルコールを3.0部として実施例2と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例2と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0035】
実施例6
実施例4において、ポリビニルアルコールをデンカポバール・B−05を3.5部として実施例4同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例4同様に測定し、結果を表1に示した。
【0036】
比較例1
実施例1において、メタクリル酸の割合を表1のように変更して実施例1と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0037】
比較例2
実施例1において、メタクリル酸の割合を表1のように変更して実施例1と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0038】
比較例3
実施例1において、メタクリル酸の割合を表1のように変更して実施例1と同様に重合を行った。ゲル分および接着物性を実施例1と同様に測定し、結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
以上の実施例と比較例の比較より、本発明のクロロプレンラテックスは特に耐水性に優れ、初期接着強度や耐熱性とのバランスにも優れていることが明かであり、合板など木材接着、紙材、合成樹脂、鋼板などの接着に特に好適なクロロプレンラテックス組成物とその製造方法を提供することが出来る。
Claims (3)
- クロロプレン100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0重量部を超え2重量部未満を、ポリビニルアルコール0.5〜10重量部の存在下に重合温度30〜50℃の条件下において重合して得られ、
最終重合率が90重量%以上で、
かつ、凍結乾燥したもの(質量A)をトルエンに溶解し、遠心分離機及び200メッシュの金網を用いて分離したゲル分を乾燥させたもの(質量B)から求めたクロロプレン系重合体のゲル含有率(=(B/A)×100)が30〜60重量%であることを特徴とするクロロプレンラテックス組成物。 - クロロプレン100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0重量部を超え2重量部未満を、ポリビニルアルコール0.5〜10重量部の存在下で、重合温度30〜50℃の条件下において、最終重合率が90重量%以上になるまで重合し、
凍結乾燥したもの(質量A)をトルエンに溶解し、遠心分離機及び200メッシュの金網を用いて分離したゲル分を乾燥させたもの(質量B)から求めたクロロプレン系重合体のゲル含有率(=(B/A)×100)が30〜60重量%であるクロロプレンラテックス組成物を得ることを特徴とするクロロプレンラテックス組成物の製造方法。 - 請求項1記載のクロロプレンラテックス組成物に、粘着付与樹脂を添加して得られることを特徴とする接着剤組成物。
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