JP2005008859A - ポリクロロプレン系ラテックス組成物、接着剤、塗布剤、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PVAを乳化/分散剤として用いたノニオン型ポリクロロプレン系ラテックスは従来より化学的,機械的安定性が良いことが知られていたが、高粘度であるが故に塗工方法に制限がある、高固形分化が困難である等の問題点があった。
【解決手段】クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、HLB値が14〜19のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合することによって、低粘度で高固形分化が可能なポリクロロプレン系ラテックス組成物を得ることが出来る。
【解決手段】クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、HLB値が14〜19のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合することによって、低粘度で高固形分化が可能なポリクロロプレン系ラテックス組成物を得ることが出来る。
Description
本発明は、低粘度なノニオン型ポリクロロプレン系ラテックスに関するものである。その具体的粘度範囲としては、ブルックフィールド粘度計にて温度25℃、回転数30rpmで測定した際(以下同一条件)、固形分50%品の場合、好ましくは200mPa・s未満、より好ましくは170mPa・s以下である。固形分60%品の場合は、好ましくは1700mPa・s未満、より好ましくは1600mPa・s以下である。該ポリクロロプレン系ラテックスはノニオン型でありながら低粘度であるために、スプレー塗布用にも供することができる、高固形分化が図り易い等のメリットがあり、水系接着剤の原料として好適に用いられる。
従来、ポリクロロプレン系ラテックスとしては、ロジン酸を乳化剤として用いたアニオン型ラテックスが良く知られている。しかしながら、アニオン型ラテックスでは水系接着剤の原料として用いた場合、化学的安定性、機械的安定性に難点があった。そのために特殊スルホン酸塩を乳化剤として用いたアニオン型ラテックスも開発されているが(例えば非特許文献1参照)、この場合、ラテックスが酸性であるためにpHの低下が大きい点や、金属の腐食に対する懸念等の問題点が残されていた。
接着の技術,P14〜19,Vol.21,No.4(2002)(第17頁2.2.2.2項)
また、ポリビニルアルコール(以下PVAと称す)を乳化/分散剤として用いたノニオン型ポリクロロプレン系ラテックスも提案されているが(特許文献1または2参照)、その場合は上述の問題点はない。これらのラテックスの場合、上述の化学的安定性、機械的安定性、pHの低下等の問題は解決できる。しかしながら、さらに、ラテックス自身の粘度を低くして塗工方法の制限を受けない、濃縮による高固形分化が可能である、等といった特性を求められるようになった。
本発明は、かかる現状に鑑み、化学的安定性、機械的安定性に優れ、pHが中性付近で安定し、かつ低粘度のノニオン型のポリクロロプレン系ラテックス組成物を提供するものである。
また、低粘度化の副次効果として、高固形分化されたノニオン型ポリクロロプレン系ラテックス組成物を与えるものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合することにより、化学的安定性、機械的安定性に優れ、pHの低下も少なく、かつ低粘度のノニオン型ポリクロロプレン系ラテックス組成物を与えることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合して得られたポリクロロプレン系ラテックス組成物に関するものである。
また、クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合することを特徴とするポリクロロプレン系ラテックス組成物の製造方法に関するものである。
また、クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合することを特徴とするポリクロロプレン系ラテックス組成物の製造方法に関するものである。
下記の実施例と比較例の比較より、本発明によって得られたポリクロロプレン系ラテックスは、これまでのPVAだけを用いて乳化重合したノニオン型クロロプレン系ラテックスに較べ低粘度であり、高固形分化も可能である。そのため、塗工方法にも制限が無く、また耐水性にも優れている。したがって、水系接着剤の原料として非常に好適に用いることが可能である。
以下本発明を詳細に説明する。本発明で云うクロロプレンとは、2−クロロ−1,3−ブタジエンのことであり、アセチレンやブタジエンを経由して合成することが出来る。
本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられ、必要に応じて2種類以上用いても構わない。
特にアクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸に代表されるエチレン性不飽和カルボン酸(以下不飽和カルボン酸という)を共重合させることは、接着力の点から好ましい。クロロプレンとの共重合性の観点からは、特にメタクリル酸の共重合がより好ましい。
本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられ、必要に応じて2種類以上用いても構わない。
特にアクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸に代表されるエチレン性不飽和カルボン酸(以下不飽和カルボン酸という)を共重合させることは、接着力の点から好ましい。クロロプレンとの共重合性の観点からは、特にメタクリル酸の共重合がより好ましい。
また本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体の使用量は特に限定するものではないが、ポリクロロプレンの特性保持の観点から、クロロプレン100質量部あたり50質量部以下が好ましい。
特に不飽和カルボン酸の共重合は、接着力へ寄与するばかりでなく、乳化重合中の乳化安定性も改善することから、特に好ましいが、その場合、その添加量はクロロプレン100質量部あたり好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.2〜5質量部であり、更に好ましくは0.5〜4質量部であり、特に好ましくは0.7〜3.5質量部である。不飽和カルボン酸の添加量が少な過ぎると接着力への寄与が充分ではない場合があり、逆に多すぎた場合は乳化状態が不安定になる場合がある。
特に不飽和カルボン酸の共重合は、接着力へ寄与するばかりでなく、乳化重合中の乳化安定性も改善することから、特に好ましいが、その場合、その添加量はクロロプレン100質量部あたり好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.2〜5質量部であり、更に好ましくは0.5〜4質量部であり、特に好ましくは0.7〜3.5質量部である。不飽和カルボン酸の添加量が少な過ぎると接着力への寄与が充分ではない場合があり、逆に多すぎた場合は乳化状態が不安定になる場合がある。
本発明におけるポリビニルアルコール(以下PVAと称す)は特に制限されるものではないが、ケン化度60〜98モル%の範囲のものが好ましい。より好ましくはケン化度75〜95モル%であり、更に好ましくはケン化度75〜90モル%である。
PVAの重合度は、好ましくは200〜3000の範囲のものであり、更に好ましくは重合度200〜700である。
PVAがこの範囲であれば、重合操作が安定に行え、得られたラテックスの安定性が優れ、高濃度で安定なラテックスを得ることができる。
また、必要に応じて共重合されたPVAも使用することができる。共重合型の例としてはアクリルアミドとの共重合体等が例示される。
PVAの重合度は、好ましくは200〜3000の範囲のものであり、更に好ましくは重合度200〜700である。
PVAがこの範囲であれば、重合操作が安定に行え、得られたラテックスの安定性が優れ、高濃度で安定なラテックスを得ることができる。
また、必要に応じて共重合されたPVAも使用することができる。共重合型の例としてはアクリルアミドとの共重合体等が例示される。
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、通常ポリオキシエチレンアルキルエーテルと呼ばれているもの、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、又はこれらの混合物等が上げられる。
非イオン性界面活性剤の親水性と親油性のバランスを示す数値としてHLB値が良く知られている(非特許文献2)。本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値は好ましくは14以上である。より好ましくはHLB15〜19.5であり、更に好ましくはHLB16〜19である。HLB値が小さいとラテックスの安定性が悪く重合中に析出物が発生する場合がある。
吉田時行,進藤信一,大垣忠義,山中樹好著、「新版 界面活性剤ハンドブック」工学図書株式会社,p234,2000年
非イオン性界面活性剤の親水性と親油性のバランスを示す数値としてHLB値が良く知られている(非特許文献2)。本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値は好ましくは14以上である。より好ましくはHLB15〜19.5であり、更に好ましくはHLB16〜19である。HLB値が小さいとラテックスの安定性が悪く重合中に析出物が発生する場合がある。
吉田時行,進藤信一,大垣忠義,山中樹好著、「新版 界面活性剤ハンドブック」工学図書株式会社,p234,2000年
本発明におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルとPVAの添加量は、特に限定するものではないが、クロロプレン100質量部に対し、好ましくは合計で1〜10質量部であり、より好ましくは2〜6質量部であり、更に好ましくは3.0〜5.0質量部である。ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びPVAの添加量が1質量部未満の場合には、乳化力が充分でなく、重合反応中に凝集物の発生が頻発し易い場合がある。また10質量部を越えると重合反応中の増粘や、異常発熱など製造を困難としたり、接着物性を大きく損なう場合がある。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとPVAの添加比率は、好ましくは質量比でポリオキシエチレンアルキルエーテル/PVA=0.5/99.5〜99.5/0.5の範囲であり、より好ましくは50/50〜99/1の範囲であり、最も好ましくは70/30〜95/5の範囲である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの比率が0.5質量%未満の場合には、耐水性が低下したり、重合反応中に増粘したり、異常発熱などをもたらし、製造を困難にする場合がある。またポリオキシエチレンアルキルエーテルの比率が99.5質量%を越える場合には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとPVAの合計添加量が2〜6重量部であっても乳化力が充分でなく、重合反応中に凝集物の発生が頻発し易い場合がある。
本発明では、トルエン不溶の重合体であるゲルの含有率や、ポリクロロプレンの分子量を調節する目的で連鎖移動剤を使用することができるが、用いる連鎖移動剤の種類は特に限定されるものではなく、通常クロロプレンの乳化重合に使用されるものが使用できる。例えばオクチルメルカプタンやn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
本発明におけるポリクロロプレン系ラテックスの重合温度は特に限定されるものではないが重合反応を円滑に行うために、好ましくは重合温度を0〜55℃とし、より好ましくは重合温度を10〜50℃にすることで、重合を円滑に進ませることが出来る。0℃より低い場合、水の凍結の懸念があり、55℃よりも高い場合はクロロプレンの揮発が多くなりその対策が必要になる場合がある。
重合の開始剤としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、tert−ブチルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
重合温度を20℃以下に設定した場合には、亜硫酸ソーダ,硫酸第1鉄,アントラキノンβスルフォン酸ソーダ,ロンガリット,アスコルビン酸,ホルムアミジンスルフィン酸等を併用して、所謂レドックス系開始剤として使用した方が重合が円滑に進む場合も多い。
重合温度を20℃以下に設定した場合には、亜硫酸ソーダ,硫酸第1鉄,アントラキノンβスルフォン酸ソーダ,ロンガリット,アスコルビン酸,ホルムアミジンスルフィン酸等を併用して、所謂レドックス系開始剤として使用した方が重合が円滑に進む場合も多い。
本発明のポリクロロプレン系ラテックスの最終重合率は、特に限定するものではなく、任意に調節することができる。その際には重合停止剤(重合禁止剤)により重合を停止すれば良い。重合停止剤は特に限定するものでなく、例えば、2,6−tert−ブチルー4−メチルフェノール、フェノチアジン、ヒドロキシアミン等一般的な重合停止剤が使用できる。
その際、未反応のモノマーは脱モノマー操作によって除去されるが、その方法は特に限定されるものではない。
その際、未反応のモノマーは脱モノマー操作によって除去されるが、その方法は特に限定されるものではない。
また、本発明のポリクロロプレン系ラテックス組成物の固形分は特に限定されるものではなく、濃縮あるいは、水等の添加で希釈することで、固形分濃度を必要な濃度に制御することができる。接着剤としての使用を考慮すると、乾燥速度の点から、好ましくは固形分45質量%以上であり、より好ましくは固形分50質量%以上であり、更に好ましくは55質量%以上である。ただし、固形分75質量%以上にすると実用上、安定性が損なわれる可能性があるので好ましくない。
ただし、水系接着剤の原料として使用する場合には、接着剤の乾燥速度を高める意味からも濃縮により高固形分化することが望ましい。特に本発明のラテックス組成物は、これまでのノニオン型ラテックスに較べ低粘度であるが故に高固形分化が容易である点がメリットであり、濃縮による高固形分化を行うことが好ましい。
この際の濃縮の方法としては、減圧濃縮などがあるが、特に限定するものではない。一般的には、脱モノマーから濃縮まで、減圧下加熱して連続的に行うのが経済的である。
ただし、水系接着剤の原料として使用する場合には、接着剤の乾燥速度を高める意味からも濃縮により高固形分化することが望ましい。特に本発明のラテックス組成物は、これまでのノニオン型ラテックスに較べ低粘度であるが故に高固形分化が容易である点がメリットであり、濃縮による高固形分化を行うことが好ましい。
この際の濃縮の方法としては、減圧濃縮などがあるが、特に限定するものではない。一般的には、脱モノマーから濃縮まで、減圧下加熱して連続的に行うのが経済的である。
本発明におけるポリクロロプレン系ラテックスの構造は、特に限定されるものではないが、重合温度、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率、脱モノマー、濃縮条件等を適切に選定、制御することで、固形分濃度、トルエン可溶部の分子量、トルエン不溶分(ゲル含有量)等を調整することが可能である。
初期接着力を重視する場合には、ポリクロロプレン系ラテックス中の(共)重合体のゲル含有量を3〜30質量%に調整することが好ましく、耐熱接着強度を重視する場合にはゲル含有量を30〜70質量%に調整することが好ましい。
初期接着力を重視する場合には、ポリクロロプレン系ラテックス中の(共)重合体のゲル含有量を3〜30質量%に調整することが好ましく、耐熱接着強度を重視する場合にはゲル含有量を30〜70質量%に調整することが好ましい。
本発明のポリクロロプレン系ラテックスにおいて、クロロプレンと共重合可能な単量体として不飽和カルボン酸を用いた場合、ラテックスは、重合直後は酸性であるがpH調整剤等でpHを自由に調整できる。ラテックスの安定性から考えて好ましいpHは6〜9である。
pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸3ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸水素2カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸水素2カリウム、クエン酸3ナトリウム、クエン酸水素2ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、4硼酸ナトリウム等の無機塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の塩基性物質を挙げることができる。
pH調整剤の添加方法は特に制限を受けるものではなく、pH調整剤粉末を直接添加または水で任意の割合に希釈して添加することができる。
pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸3ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸水素2カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸水素2カリウム、クエン酸3ナトリウム、クエン酸水素2ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、4硼酸ナトリウム等の無機塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の塩基性物質を挙げることができる。
pH調整剤の添加方法は特に制限を受けるものではなく、pH調整剤粉末を直接添加または水で任意の割合に希釈して添加することができる。
本発明のポリクロロプレン系ラテックス組成物を水系接着剤として用いる場合には、初期接着力,耐水接着力,粘着保持時間等の特性をより実用的にバランスするために、粘着付与樹脂を添加することが好ましい。
本発明の粘着付与樹脂としては、 ロジン樹脂、ロジン酸エステル樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられる。十分な初期接着力を得るためには、軟化点温度が50〜160℃の樹脂が好ましい。これらの中では、粘着付与樹脂としてはテルペンフェノール樹脂やロジン酸エステル樹脂のエマルジョンが水系接着剤組成物の初期接着力や耐水性を発現させる上で好ましい。
本発明の粘着付与樹脂としては、 ロジン樹脂、ロジン酸エステル樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられる。十分な初期接着力を得るためには、軟化点温度が50〜160℃の樹脂が好ましい。これらの中では、粘着付与樹脂としてはテルペンフェノール樹脂やロジン酸エステル樹脂のエマルジョンが水系接着剤組成物の初期接着力や耐水性を発現させる上で好ましい。
粘着付与樹脂の添加方法は特に限定されるものではないが、プライマー中に樹脂を均一に分散させるために、水性エマルジョンとしてから添加することが好ましい。
さらに粘着付与樹脂の水性エマルジョンの製法には、トルエン等の有機溶剤に溶解させたものを乳化剤を用いて水中に乳化/分散させた後、有機溶剤を減圧しながら加熱して取り除く方法、溶融状態にして乳化/分散させる方法、微粒子に粉砕して乳化/分散させる方法などがあるが、より微粒子のエマルジョンが作製できる乳化/分散法が好ましい。
粘着付与樹脂の添加量(固形分換算)は、ポリクロロプレンラテックスの固形分100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜70質量部が特に好ましい。10質量部未満では初期接着力が劣る場合があり、100質量部を越えると接着剤皮膜の形成が阻害され易い場合がある。
さらに粘着付与樹脂の水性エマルジョンの製法には、トルエン等の有機溶剤に溶解させたものを乳化剤を用いて水中に乳化/分散させた後、有機溶剤を減圧しながら加熱して取り除く方法、溶融状態にして乳化/分散させる方法、微粒子に粉砕して乳化/分散させる方法などがあるが、より微粒子のエマルジョンが作製できる乳化/分散法が好ましい。
粘着付与樹脂の添加量(固形分換算)は、ポリクロロプレンラテックスの固形分100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜70質量部が特に好ましい。10質量部未満では初期接着力が劣る場合があり、100質量部を越えると接着剤皮膜の形成が阻害され易い場合がある。
本発明のポリクロロプレン系ラテックス組成物には、上述した以外にも、要求性能に合わせて、増粘剤、金属酸化物、充填剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、消泡剤等を任意に添加することができる。
また、ポリイソシアネート化合物等からなる硬化剤との組合せで2液型接着剤としても使用可能である。
また、ポリイソシアネート化合物等からなる硬化剤との組合せで2液型接着剤としても使用可能である。
本発明の金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化鉄等を挙げることができる。酸化亜鉛、酸化チタンが接着剤組成物の耐水性を良くする上で好ましく、特に酸化亜鉛の使用が好ましい。
金属酸化物の添加量は、ポリクロロプレンラテックスの固形分100質量部に対して、0.2〜6.0質量部が好ましく、特に0.5〜3.0質量部が好ましい。0.2質量部未満では接着剤組成物の耐水性が不十分となる場合があり、5.0質量部を越えると初期接着力が悪くなり易い場合がある。
金属酸化物の添加量は、ポリクロロプレンラテックスの固形分100質量部に対して、0.2〜6.0質量部が好ましく、特に0.5〜3.0質量部が好ましい。0.2質量部未満では接着剤組成物の耐水性が不十分となる場合があり、5.0質量部を越えると初期接着力が悪くなり易い場合がある。
本発明のラテックス組成物からなる接着剤の用途は特に限定されるものではなく、セメント,モルタル,スレート,布類,木材,合成ゴム素材,ポリウレタン系素材,ポリ塩化ビニル系素材,ポリオレフィン系素材等の種々の材料を接着する際に好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明の効果を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下の説明において特に断りのない限り部および%は質量基準で表す。
[実施例1]
内容積3リットルの反応器を用いて、窒素雰囲気中で、水95部にポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製、HLB値16.4)3.0部(有効成分換算)とポリビニルアルコール(PVA203、重合度300:クラレ社製、ケン化度87〜89モル%)0.6部とを60℃で溶解させた。このポリオキシエチレンアルキルエーテル/ポリビニルアルコール水溶液を室温近くまで冷却した後、この中にクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部、オクチルメルカプタン0.3部を加えた。なお、クロロプレン単量体とメタクリル酸の合計質量は1500gである。これを45℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として重合した。重合は重合熱の発生が無くなってから更に1時間放置し、重合の終点とした。得られたポリクロロプレン系ラテックスに20%ジエタノールアミン水溶液を添加してpHを7に調製し、減圧加熱により濃縮し、固形分を50%と60%に調製した。
内容積3リットルの反応器を用いて、窒素雰囲気中で、水95部にポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製、HLB値16.4)3.0部(有効成分換算)とポリビニルアルコール(PVA203、重合度300:クラレ社製、ケン化度87〜89モル%)0.6部とを60℃で溶解させた。このポリオキシエチレンアルキルエーテル/ポリビニルアルコール水溶液を室温近くまで冷却した後、この中にクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部、オクチルメルカプタン0.3部を加えた。なお、クロロプレン単量体とメタクリル酸の合計質量は1500gである。これを45℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として重合した。重合は重合熱の発生が無くなってから更に1時間放置し、重合の終点とした。得られたポリクロロプレン系ラテックスに20%ジエタノールアミン水溶液を添加してpHを7に調製し、減圧加熱により濃縮し、固形分を50%と60%に調製した。
[ラテックス粘度の測定]
実施例1で得られた固形分50%と60%のラテックスを25℃に調整し、ブルックフィールド粘度計で、粘度を測定した。結果は表1にまとめて表示した。
実施例1で得られた固形分50%と60%のラテックスを25℃に調整し、ブルックフィールド粘度計で、粘度を測定した。結果は表1にまとめて表示した。
[凝集物の測定]
実施例1で得られた固形分60%のラテックス全量を、目開き177μmのステンレス金網を用いて濾過し、蒸留水を用いて充分洗浄し、残留物を110℃で乾燥して質量を量り、試料ラテックスの質量に対する百分率で表した。結果は表1にまとめて表示した。
凝集物分[%]=(凝集物の質量[g])÷(試料ラテックスの質量[g])×100
実施例1で得られた固形分60%のラテックス全量を、目開き177μmのステンレス金網を用いて濾過し、蒸留水を用いて充分洗浄し、残留物を110℃で乾燥して質量を量り、試料ラテックスの質量に対する百分率で表した。結果は表1にまとめて表示した。
凝集物分[%]=(凝集物の質量[g])÷(試料ラテックスの質量[g])×100
[機械的安定度試験]
実施例1で得られた固形分60%のラテックスを20℃に調整し、目開き177μmのステンレス金網でろ過し50±1gを試料容器に量り採る。試料容器をマロン式安定度試験機に装着し、10kgの荷重をかけて10分間回転させる。回転円板を引き上げ付着した試料と試験容器中の試料を目開き177μmのステンレス金網を通して、発生した凝固物を捕集する。凝固物を蒸留水で洗浄した後、110℃で乾燥し秤量する。結果は表1にまとめて表示した。
実施例1で得られた固形分60%のラテックスを20℃に調整し、目開き177μmのステンレス金網でろ過し50±1gを試料容器に量り採る。試料容器をマロン式安定度試験機に装着し、10kgの荷重をかけて10分間回転させる。回転円板を引き上げ付着した試料と試験容器中の試料を目開き177μmのステンレス金網を通して、発生した凝固物を捕集する。凝固物を蒸留水で洗浄した後、110℃で乾燥し秤量する。結果は表1にまとめて表示した。
〔接着剤組成物の製造〕
実施例1で得られたポリクロロプレン系ラテックス100部、粘着付与樹脂エマルジョン(タマノールE−100:荒川化学工業社製、有効成分53%、テルペンフェノール系樹脂、軟化点温度150℃)30部、及び酸化亜鉛分散体(大崎工業社製AZ−SW)1部(固形分換算比率)を、スリーワンモーターで攪拌混合し、接着剤組成物を作製した。
実施例1で得られたポリクロロプレン系ラテックス100部、粘着付与樹脂エマルジョン(タマノールE−100:荒川化学工業社製、有効成分53%、テルペンフェノール系樹脂、軟化点温度150℃)30部、及び酸化亜鉛分散体(大崎工業社製AZ−SW)1部(固形分換算比率)を、スリーワンモーターで攪拌混合し、接着剤組成物を作製した。
〔刷毛塗り試験〕
次に得られた接着剤のうち固形分60%のラテックスから調製した接着剤を用いて、刷毛塗りによる試験を行った。
帆布(25×150mm)2枚各々に、300g(固形分)/m2の接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を貼り合わせ、ハンドローラーで圧締した。
〔初期剥離強度〕
貼り合わせた帆布を10分間放置後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
〔常態剥離強度〕
貼り合わせた帆布を7日間放置後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
〔耐水強度〕
貼り合わせた帆布を7日間放置後、水中に2日間浸漬した。取り出した帆布は表面の水分を拭き取った後、直ちに引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
試験の結果は表1にまとめて記載した。
次に得られた接着剤のうち固形分60%のラテックスから調製した接着剤を用いて、刷毛塗りによる試験を行った。
帆布(25×150mm)2枚各々に、300g(固形分)/m2の接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を貼り合わせ、ハンドローラーで圧締した。
〔初期剥離強度〕
貼り合わせた帆布を10分間放置後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
〔常態剥離強度〕
貼り合わせた帆布を7日間放置後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
〔耐水強度〕
貼り合わせた帆布を7日間放置後、水中に2日間浸漬した。取り出した帆布は表面の水分を拭き取った後、直ちに引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
試験の結果は表1にまとめて記載した。
[実施例2、3]
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールを、エマルゲン1118S−70/PVA 203=3.0部/0.6部の比率で使用したのに対し、エマルゲン1118S−70/PVA 203=2.4部/1.2部、及び1.8部/1.8部の比率で使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールを、エマルゲン1118S−70/PVA 203=3.0部/0.6部の比率で使用したのに対し、エマルゲン1118S−70/PVA 203=2.4部/1.2部、及び1.8部/1.8部の比率で使用した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
[実施例4]
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてエマルゲン1118S−70(花王社製、HLB値16.4)を用いたのに対し、エマルゲン1135S−70(花王社製、HLB値17.9)を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてエマルゲン1118S−70(花王社製、HLB値16.4)を用いたのに対し、エマルゲン1135S−70(花王社製、HLB値17.9)を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
[比較例1、2]
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製、HLB値16.4)を用いたのに対し、比較例1ではポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1108:花王社製、HLB値13.5)を、比較例2ではポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(エマルゲンA−90:花王社製、HLB値14.5)を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製、HLB値16.4)を用いたのに対し、比較例1ではポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1108:花王社製、HLB値13.5)を、比較例2ではポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(エマルゲンA−90:花王社製、HLB値14.5)を用いた以外は、実施例1と同様に実験を行った。
[比較例3]
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製)3.0部とポリビニルアルコール0.6部を用いたのに対し、ポリビニルアルコール3.6部のみとした以外は、実施例1と同様に実験を行った。ただし、刷毛塗り試験は、固形分60%のラテックスが得られなかったため固形分50%のラテックスを用いて試験した。得られた結果は、表1にまとめた。
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製)3.0部とポリビニルアルコール0.6部を用いたのに対し、ポリビニルアルコール3.6部のみとした以外は、実施例1と同様に実験を行った。ただし、刷毛塗り試験は、固形分60%のラテックスが得られなかったため固形分50%のラテックスを用いて試験した。得られた結果は、表1にまとめた。
[比較例4]
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製)3.0部とポリビニルアルコール0.6部を用いたのに対し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製)3.6部のみとした以外は、実施例1と同様に実験を行った。開始剤添加量を増量しても重合反応は起こらなかった。撹拌を停止すると、モノマー相と水相が分離した。
実施例1でポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製)3.0部とポリビニルアルコール0.6部を用いたのに対し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲン1118S−70:花王社製)3.6部のみとした以外は、実施例1と同様に実験を行った。開始剤添加量を増量しても重合反応は起こらなかった。撹拌を停止すると、モノマー相と水相が分離した。
以上の実施例と比較例の比較より、本発明によって得られたポリクロロプレン系ラテックスは、これまでのPVAだけを用いて乳化重合したノニオン型クロロプレン系ラテックスに較べ低粘度であり、高固形分化も可能である。そのため、塗工方法にも制限が無く、また耐水性にも優れている。したがって、水系接着剤の原料として非常に好適に用いることが可能である。
Claims (8)
- クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、HLB値が14〜19のポリオキシエチレンアルキルエーテルと、ポリビニルアルコールの存在下で乳化重合して得られたポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- クロロプレンと共重合可能な単量体としてエチレン性不飽和カルボン酸を用いる請求項1に記載されたポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- ポリビニルアルコールとしてケン化度が60〜98モル%のポリビニルアルコールを使用する請求項1または2に記載されたポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの合計添加量が、クロロプレン100質量部に対して、1〜10質量部であり、添加比率が、質量比でポリオキシエチレンアルキルエーテル/ポリビニルアルコール=0.5/99.5〜99.5/0.5の範囲で使用する請求項1〜3に記載されたポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- 固形分が45〜75質量%である請求項1〜4に記載されたポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- 請求項1〜5に記載されたポリクロロプレン系ラテックス組成物を使用する接着剤。
- 請求項1〜5に記載されたポリクロロプレン系ラテックス組成物を使用する塗布剤。
- クロロプレン単独、またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、HLB値が14〜19のポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリビニルアルコールの存在下で乳化重合することを特徴とするポリクロロプレン系ラテックス組成物の製造方法。
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---|---|---|---|---|
JP2010537011A (ja) * | 2007-08-24 | 2010-12-02 | バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト | 低粘性の接着性ポリマー水性分散体 |
JP2012219204A (ja) * | 2011-04-11 | 2012-11-12 | Denki Kagaku Kogyo Kk | ポリクロロプレンラテックス及びその製造方法 |
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JP2016155943A (ja) * | 2015-02-25 | 2016-09-01 | 東ソー株式会社 | クロロプレンラテックス及びその製造法 |
-
2004
- 2004-04-02 JP JP2004109691A patent/JP2005008859A/ja active Pending
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