JP3995362B2 - クロロプレンラテックス組成物からなる水系接着剤およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤として有効なポリクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは初期接着性能、特に湿潤状態における接着性能に優れ、かつ耐熱性とのバランスに優れた接着剤組成物を与えるクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリクロロプレンをベースとした接着剤は溶剤型が主流であった。しかし、近年溶剤型接着剤は製造や使用の際の有機溶剤による毒性、火気危険性、環境汚染などの問題から、脱溶剤化の要求が高まっている。
【0003】
脱溶剤化の手法としては、溶剤型接着剤をラテックス接着剤に代替する方法が有効と考えられ、各種ポリマーを使用したラテックス接着剤の検討が盛んに行われている。
【0004】
なかでもクロロプレンラテックス接着剤は、接合する被着体の双方に塗布し、これら接着剤層を乾燥した後に貼り合わせることにより、貼り合わせ直後から高い接着性を発現する。こうした特徴から水系コンタクト型接着剤として利用が期待されている反面、乾燥時間が必要となるために、接着剤を塗布してから接着するのに時間を要すること、また乾燥時間を短縮するには特殊な乾燥設備が必要となりコストアップにつながるなどの課題があった。
【0005】
例えば特公昭51−39262号公報には、クロロプレン100重量部に対し、3〜5重量部の長鎖脂肪酸またはロジン酸の塩類を乳化剤に用い、n−ドデシルメルカプタン0.09〜0.15重量部の存在下で、該単量体を20℃より低温でアルカリ性乳化液中で重合を行い、単量体の転化率90〜98%で重合を停止し、ゲル分40〜90重量%を含有するポリクロロプレンのラテックスをつくり粘着付与樹脂を配合したポリクロロプレンラテックス接着剤の製造方法が開示されている。また特開昭51−136773号公報、特開昭52−992号公報、特開昭56−74108号公報、特開昭57−162709号公報にもロジン酸の塩類を使用したクロロプレンラテックスが開示されているが、これらの公報の実施例に従い作製されたラテックスは、初期接着性能、特に湿潤状態における接着性能が不足しており、この改良が課題となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、初期接着性能、特に湿潤状態における接着性能に優れ、かつ耐熱性とのバランスにも優れたクロロプレンラテックス組成物とその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、30℃より低い温度で重合し、かつクロロプレン重合体が特定量のゲル分とゾルの重量平均分子量であり、ラテックス中に特定量のナトリウムイオンとカリウムイオンを含有するクロロプレンラテックスにより、初期接着性能、特に湿潤状態における接着性能に優れ、かつ耐熱性とのバランスにも優れたクロロプレンラテックス接着剤組成物が得られることを見いだし、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち本発明は、クロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体を30℃より低い温度で重合して得られ、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上と、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムとを含み、かつクロロプレンラテックス中のナトリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%、カリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%であり、クロロプレン重合体が3〜40重量%のゲル分を含み、ゾルの重量平均分子量が40万以上であるクロロプレンラテックス組成物である。
また、本発明は、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上をクロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部に対して3〜7重量部含み、かつ水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムをナトリウムイオン量とカリウムイオン量の合計量がロジン酸の中和量より過剰となるように含む上記のクロロプレンラテックス組成物である。
【0009】
更に、本発明は、クロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部に対して、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上を3〜7重量部と、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムをナトリウムイオン量とカリウムイオン量の合計量がロジン酸の中和量より過剰になるように使用し、かつクロロプレンラテックス中のナトリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%、カリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%であり、連鎖移動剤の存在下に30℃より低い温度で単量体の転化率80〜95%まで重合する上記のクロロプレンラテックス組成物の製造方法である。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。本発明におけるクロロプレン重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンと記す)の単独重合体およびクロロプレンと共重合可能な他の単量体の1種以上を共重合して得られる共重合体である。
【0011】
本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類等が挙げられ、必要に応じてこれらを2種以上用いてもかまわない。
【0012】
本発明におけるクロロプレン重合体のゲル分とは、トルエン溶媒に不溶な成分の含有率をいい、ゾルとはトルエン溶媒に可溶な成分をいう。本発明におけるクロロプレン重合体は、そのゲル分が3〜40重量%の範囲にあることが必要である。
なお、ゲル分は下記の方法で求めることが出来る。
クロロプレン重合体ラテックスを凍結乾燥し重量をAとする、23℃で20時間トルエンに溶解(0.6重量%に調整)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いて不溶分すなわちゲルを分離する。ゲルを分離した残りをゾルとする。
ゲルを風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し重量をBとする。下記の式に従ってゲル分を算出する。
ゲル分=B/A×100 (%)
【0013】
また本発明においては、クロロプレン重合体のゾル、即ちトルエン溶媒可溶成分の重量平均分子量が重要な役割を果たし、本発明におけるクロロプレン重合体のゾルの重量平均分子量は40万以上であることが必要である。重量平均分子量の好ましい範囲は40万以上120万以下である。
【0014】
本発明においてクロロプレン重合体のゲル分、およびゾルの重量平均分子量を以上のように規定しているのは以下の理由による。
【0015】
本発明における優れた初期接着性能の発現は、クロロプレン重合体が分子運動性に優れたゾルを多量に含むことによる。この為クロロプレンラテックス粒子間および接着界面におけるクロロプレン分子鎖の融合がすみやかに起こり、接着強度が瞬時に発現し、優れた初期接着性能を発現することが可能となる。クロロプレン重合体のゲル分が40重量%を越えると、この初期接着性能が大幅に低下するため好ましくない。
【0016】
一方、これまでに知られている一般的なクロロプレンラテックス接着剤においては、ゲル分の低いクロロプレン重合体を使用した場合は耐熱性が劣る傾向にあり、初期接着性と耐熱性のバランスに劣っていた。
本発明においては、クロロプレン重合体のゲル分が3〜40重量%、ゾルの重量平均分子量を40万以上とすることにより、優れた初期接着性能と耐熱性のバランス化を可能とした。ゲル分が3重量%未満、ゾルの重量平均分子量が40万未満の場合には耐熱性が著しく低下する。
【0017】
なお本発明において、更に高度な初期接着性と耐熱性のバランス化が要求される場合にはゲル分は5〜30重量%でありかつゾルの重量分子量は50万以上とすることが好ましい。
【0018】
この様なクロロプレンラテックス接着剤を得るには、周知の重合方法を用いて、クロロプレン重合体のゲル分が3〜40重量%、ゾルの重量平均分子量が40万以上となるよう調整すればよいが、高度な分子制御が必要となるため、以下の方法で調整することが好ましい。
【0019】
一般には、クロロプレンラテックスを得るには、水性乳化液中でラジカル重合する方法が簡便であり工業的にも有利な方法である。この際に使用する乳化剤としては、例えばロジン酸の塩類、脂肪酸の塩類、アルキルベンセンスルホン酸Naなどのアルキルスルホン酸塩、ラウリル硫酸Naなどのアルキル硫酸エステル塩のごときアニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子などが挙げられる。
しかし、本発明においては、重合制御面、および初期接着性能、特に湿潤状態における接着性能の観点から、少なくともロジン酸および/またはロジン酸塩を使用することが必要であり、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上と、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムとを用いる。また、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上をクロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部に対して3〜7重量部含み、かつ水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムをナトリウムイオン量とカリウムイオン量の合計量がロジン酸の中和量より過剰となるように使用することが好ましい。
更に、これに上記の乳化剤の1種あるいは2種以上を併用しても構わない。特にロジン酸とノニオン乳化剤の併用は、ラテックスの多価イオンに対する安定性や凍結・低温安定性を高める上で有効であり、ノニオン乳化剤は重合時あるいは重合後に添加することが出来る。
【0020】
クロロプレン重合体のゲル分、及びゾルの分子量の制御は、▲1▼連鎖移動剤の使用とその使用量、▲2▼重合温度と、さらに▲3▼最終重合率の調整によって可能となる。
【0021】
まず連鎖移動剤としては、クロロプレン重合体の製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
なお、ゲル分、およびゾルの分子量制御面において長鎖アルキルメルカプタン類またはジアルキルキサントゲンジスルフィド類の使用が好ましい。
【0022】
次に重合触媒は、通常クロロプレンの乳化重合に用いられる過硫酸カリウム等の加硫酸塩、第3−ブチルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が使用でき、特に限定されるものではない。またアントラキノンスルホン酸ナトリウムや、ホルムアミジンスルフィン酸などを併用することでより円滑に重合反応を進めることが出来る。
また重合温度については、一般のクロロプレンの乳化重合では0〜55℃の範囲であることが重合制御上好ましいが、本発明におけるゲル分が3〜40重量%、ゾルの重量平均分子量が40万以上のクロロプレン重合体を得るには、30℃より低い温度で重合することが必要であり、5〜20℃の低温で行うことがより好ましい。より低温で重合を行うことにより、ゲル分を低く抑えかつゾルの重量平均分子量を大きくすることができる。また重合温度を低くすることにより、クロロプレン重合体主鎖中の1,4−トランス構造が増加し、結晶性の高いクロロプレン重合体を得ることができる。クロロプレン重合体の結晶化により、初期接着力が向上するほか、凝集力の高い接着剤層を得ることが可能となる。
【0023】
本発明の製造方法において用いられるクロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体の最終重合率は、80〜95%の範囲であることが好ましく、この範囲の最終重合率とすることにより、目的のゲル分とゾルの重量平均分子量を有するクロロプレン重合体の制御が可能となる。最終重合率をこの範囲に制御するには、フェノチアジン、ヒドロキシアミン、ターシャリーブチルカテコールなどの重合停止剤を添加し、所定の最終重合率となるよう重合を停止すればよい。
【0024】
またこの最終重合率範囲において、目標とするゲル分、およびゾルの分子量を達成できるよう連鎖移動剤の添加量を調整すればよいが、例えば連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタンを使用した場合、その使用量をクロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部当たり0.06〜0.18重量部使用し、最終重合率を80〜95%の範囲で重合することで達成できる。
【0025】
本発明において、クロロプレンラテックスの固形分濃度は特に限定されるものではないが、45〜65重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは50〜65重量%、更に好ましくは55〜65重量%の範囲である。より高い固形分濃度とすることにより、より初期接着性に優れたラテックスとなる。特に湿潤状態における接着に対して、高固形分化による接着性能の向上が顕著となる。
なお、固形分濃度は、重合時のモノマー/水比あるいはモノマー分添などにより調節できるほか、濃縮あるいは水等の添加により希釈することで、必要な濃度に制御することができる。濃縮の方法としては、減圧濃縮などがあるが、特に限定するものではない。
【0026】
また本発明においては、このような高濃度ラテックスを取扱い易くし、また特に湿潤状態における高度な接着性能を発現するためには、乳化剤としてロジン酸を用い、更にラテックス中にナトリウムイオンとカリウムイオンを特定量含有することが好ましい。この際のロジン酸の使用量としてはクロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部に対して3〜7重量部の範囲が好ましく、より好ましくは4〜6重量部の範囲である。またラテックス中のナトリウムイオン量は、ラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%、より好ましくは0.3〜1.0重量%、更に好ましくは0.5〜1.0重量%であり、カリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%であることが好ましい。これにより低温安定性や放置中の層分離安定性に優れ、かつ貯蔵安定性に優れ、更に湿潤状態での接着性能に優れたクロロプレンラテックスを得ることができる。
【0027】
本発明のクロロプレンラテックスにおいては、重合後にPH調整剤、凍結安定剤などの添加が可能である。
また使用の際にその用途の要求特性に応じて、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5留分/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などの粘着付与樹脂を添加することが出来る。粘着付与樹脂の添加方法としては、接着剤組成物中に樹脂を均一に分散させるために、エマルジョンとしてから添加するのが好ましい。
その他酸化亜鉛など金属酸化物、炭酸カルシウムやシリカなどの無機充填剤、ジブチルフタレートやプロセスオイルなどの可塑剤・軟化剤、更に各種老化防止剤や加硫促進剤、イソシアネート類などの硬化剤、増粘剤などを任意に配合することができる。
【0028】
本発明により得られたクロロプレンラテックス接着剤は、紙、木材、布、皮革、レザー、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、セラミック、金属などの同種、あるいは異種の接合接着用として好適である。特に湿潤状態における接着性能に優れており、少なくとも片面が紙、木材、布、皮革、レザー、フォームなどの多孔質体である場合より高い接着性能が得られる。また接着時の施工方法に関しても、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布などが可能であり、また湿潤状態での接着以外、例えば強制乾燥後のコンタクト接着においても優れた初期接着性能を発現し、耐熱性とのバランスにも優れる。
【0029】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部および%は重量基準によって示す。
【0030】
実施例1
内容積3リットルの反応器を用い、窒素気流下で、水100部、酸価160の不均化ロジン酸5部、水酸化ナトリウム0.8部、水酸化カリウム0.3部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩0.3部、亜硫酸水素ナトリウムを0.3部仕込み、溶解後、撹拌しながらクロロプレン単量体100部とn−ドデシルメルカプタン0.14部を加えた。過硫酸カリウム0.1重量部を開始剤として用い、窒素雰囲気下10℃で重合し、最終重合率が90%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応単量体を除去し、クロロプレンラテックスを得た。更に減圧下で水分を蒸発させ濃縮を行い、固形分濃度が55重量%となるよう調整した。
ラテックス中のナトリウムイオン(Naイオン)、カリウムイオン(Kイオン)量については、各添加剤の含有量を全て合計し、ラテックス中の固形分に対する割合(%)で示した。
【0031】
次に、このクロロプレンラテックスについて、表1に示した処方で接着剤組成物を調整し、以下の方法により接着性を評価した。
〔初期接着強度〕
密度30kg/m3のウレタンフォーム(厚さ20mm×長さ50mm×幅50mm)を被着体に用い、5℃雰囲気下で70g/m2の接着剤を塗布した。塗布後5℃雰囲気中で1分間放置後、接着剤が未乾燥の状態で2個のウレタンフォームの接着面同士を重ね合わせ、厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持した。その後直ちに引張り試験機(引張り速度200mm/min)で接着面と垂直方向に引張り試験を行い強度を測定した。
〔耐熱クリープ試験〕
密度30kg/m3のウレタンフォーム(厚さ50mm×長さ100mm×幅100mm)を被着体に用い、23℃雰囲気下で70g/m2の接着剤を塗布した。塗布後23℃雰囲気中で1分間放置後、接着剤塗布面を摘むよう(厚さ方向を折りたたむように)に接着し、60℃雰囲気下で4時間放置した。放置後、接着状態を保持したものを○、接着面が開放したものを×と表示した。
【0032】
また得られたクロロプレン重合体のゲル分及びゾルの分子量を下記の方法に従い測定した。
〔ゲル分測定〕
ラテックス試料を凍結乾燥し精秤してAとした。23℃で20時間、トルエンで溶解(0.6%に調製)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いてゲル分を分離した。ゲル分を風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、精秤してBとした。
ゲル分は下式に従がって算出した。
ゲル分=B/A×100 (%)
【0033】
〔分子量測定〕
下記の条件でGPC測定を行った。分子量の算出はポリスチレン換算で求めた。
試料は分離したゾルを0.1%THF溶液に調製した。
カラムサイズ:7.5mmφ×50mm(GUARD)、7.5mmφ×300mm(Mixed−B)
カラム温度:35℃
溶媒:THF、流出速度:1ml/min
検出器:SIMADZU RID−6A
【0034】
実施例2
実施例1において、水酸化ナトリウムを0.6部、水酸化カリウムを0.5部として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0035】
実施例3
実施例1において、水酸化ナトリウムを0.9部、水酸化カリウムを0.2部として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0036】
実施例4
実施例1において、水酸化ナトリウムを0.6部、水酸化カリウムを0.7部として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0037】
実施例5
実施例1において、水酸化ナトリウムを0.6部、水酸化カリウムを0.3部として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0038】
実施例6
実施例1において、重合温度を15℃として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0039】
実施例7
実施例6において、最終重合率を80%として、実施例6同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0040】
実施例8
実施例7において、n−ドデシルメルカプタンの添加量を0.12部として、実施例7同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0041】
比較例1
実施例1において、n−ドデシルメルカプタンの添加量を0.04部として、表2に示した処方で実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0042】
比較例2
実施例1において、n−ドデシルメルカプタンの添加量を0.3部として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0043】
比較例3
実施例1において、水酸化ナトリウムを添加せず、水酸化カリウムを1.5部として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
【0044】
比較例4
実施例1において、最終重合率を97%として、実施例1同様に重合を行い、接着性、ゲル分および分子量測定を行った。
実施例および比較例の結果を表1および表2に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
以上の実施例と比較例の比較より、本発明のクロロプレンラテックス組成物から得られる接着剤組成物は、初期接着性、特に湿潤状態における接着性能に優れ、かつ耐熱性とのバランスが良好なことが明かであり、本発明は合板など木材接着、ウレタンフォームの接着、紙材などの接着に特に好適な接着剤組成物を与えるクロロプレンラテックス組成物を提供することが出来る。
Claims (3)
- クロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体を30℃より低い温度で単量体の転化率80〜95%まで重合して得られ、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上と、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムとを含み、かつクロロプレンラテックス中のナトリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%、カリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%であり、クロロプレン重合体が3〜40重量%のゲル分を含み、ゾルの重量平均分子量が40万以上であることを特徴とするクロロプレンラテックス組成物からなる水系接着剤。
- ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上をクロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部に対して3〜7重量部含み、かつ水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムをナトリウムイオン量とカリウムイオン量の合計量がロジン酸の中和量より過剰となるように含むことを特徴とする請求項1記載のクロロプレンラテックス組成物からなる水系接着剤。
- クロロプレンまたはクロロプレン及びそれと共重合可能な単量体100重量部に対して、ロジン酸、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムから選ばれる1種または2種以上を3〜7重量部と、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムをナトリウムイオン量とカリウムイオン量の合計量がロジン酸の中和量より過剰であり、かつクロロプレンラテックス中のナトリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%、カリウムイオン量がラテックスの固形分あたり0.15〜1.0重量%になるように使用して、連鎖移動剤の存在下に30℃より低い温度で単量体の転化率80〜95%まで重合することを特徴とする請求項1記載のクロロプレンラテックス組成物からなる水系接着剤の製造方法。
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