JP2008195771A - 水性プライマー組成物 - Google Patents

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護 菅谷
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正美 勝木
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Abstract

【課題】耐久性および密着性能に優れ、かつ無機質下地からの発泡現象を抑制し、また下地が湿潤状態でも充分な接着強度を発揮する、土木・建築用途に適した水性プライマー組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるエマルジョン(X)を主成分とする水性プライマー組成物であり、前記エマルジョン(X)の表面張力が42mN/m以上であることを特徴とする水性プライマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に土木・建築分野において使用される水性プライマー組成物に関するものであり、例えば、コンクリート構造物の表面、モルタル表面、セルフレベリング床材等の無機質下地材に好適に使用される水性プライマー組成物に関するものである。
従来からセメント硬化物(例えばコンクリート構造物やモルタル硬化物を指す)に対して、その表面にモルタル組成物を付着させる際、その密着性向上、表面のモルタル硬化物の浮き,割れを防止するために、プライマー用途として水性組成物をセメント硬化物表面に塗布して使用されることが行われている。
このようなプライマー用途に使用される、いわゆる、水性プライマー組成物としては、例えばエチレン−酢ビ系エマルジョン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン等が使用されている。その中でも、接着性、耐久性、耐水性等が特に求められる用途においては、エマルジョンとしてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョンが特に使用されている。
従来のプライマーは、セメント硬化物との密着性向上、表面モルタル硬化物の割れ防止等その改良効果は認められるものの、近年コンクリート構造物に求められる長寿命化、既存コンクリート構造物の補修・補強に見られる下地コンクリートの劣化等により密着性に不良等があり、従来のプライマー性能では不充分な欠点があり、その向上が要求されている。
また、床の平滑性を出すための床セルフレベリング材の使用において、レベリング材の密着不良、浮き、亀裂や下地コンクリートからの空気置換による残存空気のレベリング材への混入や発泡現象が問題となっており、その問題点の解決が望まれている。
例えば、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなり、ガラス転移温度が220〜270Kである水性プライマー組成物が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1においては、この水性プライマー組成物は、密着性に関してはその向上が認められている。
また、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体とを含む単量体組成物を乳化重合して得られる水性プライマー組成物において、カルボキシル基の分布が、水層に5〜25%(当量比)であって、水性プライマー組成物の粒子表面に20〜40%(当量比)である水性プライマー組成物が開示されている(特許文献2参照)。上記特許文献2には、カルボキシル基の分布が重要な因子であることが述べられており、これを制御するため、いわゆる多段重合または限外ろ過という煩雑な方法が採られている。
特開平10−251590号公報 特開2005−220142号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された水性プライマー組成物は、近年要求されている付着強さ、および高度な耐久性のレベルには達していないものである。また、空気置換による発泡現象の抑制は、プライマーの下地基材に対する濡れ具合およびセルフレベリング材用のプライマーに対する濡れ速度によって決定されるものであり、上記カルボキシル基含有の有無は下地に対する密着性には寄与するものの、空気置換による発泡現象の抑制を充分達成し得るものとはならない等の問題点も有している。
また、上記特許文献2に開示された水性プライマー組成物は、カルボシキル基の水層への分布は使用する不飽和単量体の親水性、疎水性により大きく支配されることが一般的に知られており、共重合する不飽和単量体の使用制限や反応温度の制限等が問題点としてあげられる。さらに発泡現象の抑制の面に関しては、上記特許文献1に開示された水性プライマー組成物と同様、カルボキシル基含有の有無およびカルボキシル基の水層への分布は下地に対する密着性には寄与するものの、空気置換による発泡現象を充分抑制し得るものではない等の欠点を有している。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、上記のような諸問題点を解決し、コンクリートやモルタル等の無機質下地材表面に使用されるプライマーであり、優れた下地密着性および下地が湿潤状態でも充分な接着強度を発揮する、例えば、土木・建築用途に適した水性プライマー組成物の提供をその目的とする。さらには、セルフレベリング材との密着性にも優れ、セルフレベリング材打設時の発泡問題をも解決することのできる水性プライマー組成物の提供をその目的とする。
しかるに、本発明者等は上記事情に鑑み種々検討を重ねた結果、エチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるエマルジョン組成物(X)を主成分とする水性プライマー組成物において、前記エマルジョン(X)の表面張力を、従来の水性プライマー組成物に用いられるエマルジョンよりも大きくすることにより、無機質下地との密着性及び湿潤状態での無機質下地との密着性に優れ、さらに、セルフレベリング材との密着性、セルフレベリング材打設時の発泡抑制にも優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、エチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるエマルジョン(X)を主成分とする水性プライマー組成物であり、前記エマルジョン(X)の表面張力が42mN/m以上である水性プライマー組成物に関するものである。
このように、本発明の水性プライマー組成物は、エチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるエマルジョン(X)を主成分とする水性プライマー組成物であり、前記エマルジョン(X)の表面張力が42mN/m以上であるため、この水性プライマー組成物を用いて、コンクリート等の構造物素地を処理した際に、下地セメント硬化物および上塗りセルフレベリング材との密着性に優れた効果を奏する上に、高流動タイプのセルフレベリング材や高強度補修剤を用いる際に問題となる下地からの発泡現象等を抑制することができるのである。
すなわち、本発明の水性プライマー組成物は、上記構成をとることから、前記従来技術での欠点であるプライマーの下地と上塗りであるセルフレベリング材双方への密着性、コンクリート構造物やモルタル表面等のセメント硬化物に良好な下地密着性、空気置換による発泡抑制、上塗りモルタル組成物の浮き、割れ防止効果を奏するものとなる。さらには、上塗りモルタル組成物の硬化阻害を生起させず、かつ上塗りモルタル組成物由来のアルカリに対する耐薬品性に関しても優れた効果を奏する。特に、本発明の水性プライマー組成物は、セルフレベリング材用のプライマーとして、前述の種々の問題を解決し、優れた性能改善効果を発現することができる。
したがって、本発明の水性プライマー組成物は、例えば、土木・建築分野において有用な水性プライマー組成物であり、特にセルフレベリング材のプライマーとして使用した場合、上塗りセルフレベリング材施工時に発生する空気置換による発泡現象を抑制でき、また、下地セメント硬化物および上塗りセルフレベリング材に対し優れた密着性を発揮することができる。
なお、従来品におけるエマルジョンの表面張力は、通常、30〜38mN/m程度であった。
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明の水性プライマー組成物は、エチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるエマルジョン(X)を主成分とする水性プライマー組成物である。なお、本発明の水性プライマー組成物において、上記主成分とするとは、水性プライマー組成物がエマルジョン(X)のみからなる場合も含める趣旨である。
まず、本発明において用いられる、上記エチレン性不飽和単量体(M)について説明する。
上記エチレン性不飽和単量体(M)としては、少なくとも1種類の不飽和単量体が用いられ、例えば、シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)が好適に用いられる。さらには、上記シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とともに、このシリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)を用いることがより好ましい。
なお、本発明において、(メタ)アクリロキシとはアクリロキシあるいはメタクリロキシを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸あるいはメタクリル酸を、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味する。
上記シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、等のモノアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体等があげられる。なかでも、架橋の効率とセメント硬化物に対する密着効果の観点から、トリアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが特に好ましい。
上記シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)としては、例えば、
(イ)芳香族エチレン性不飽和単量体、
(ロ)(メタ)アクリル酸エステル単量体、
(ハ)アミド基含有エチレン性不飽和単量体、
(ニ)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体、
(ホ)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、
(ヘ)エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体、
(ト)メチロール基含有エチレン性不飽和単量体、
(チ)アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体、
(リ)シアノ基含有エチレン性不飽和単量体、
(ヌ)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体、
(ル)アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、
(オ)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体、
(ワ)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体、
等があげられる。これら各単量体は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。さらには、上記以外に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等も所望に応じて適宜使用することができる。
(イ)芳香族エチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどがあげられる。好ましくはスチレンである。
(ロ)(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20脂肪族(メタ)アクリレートや、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート等があげられる。中でも特に好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜10の脂肪族(メタ)アクリレートである。
(ハ)アミド基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドジメチルエタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドペンタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドメチルブタンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドジメチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドエチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリルアミドエチルメチルエタンスルホン酸(塩)および(メタ)アクリルアミドプロピルエタンスルホン酸(塩)などの炭素数1〜5の分岐または直鎖のアルキレン基を有する化合物等をあげることができる。中でも好ましくは(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(塩)である。なお、上記スルホン酸(塩)とは、スルホン酸あるいはその塩を意味する。
(ニ)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の脂肪族ヒドロキシ基含有エチレン性不飽和があげられる。中でも好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
(ホ)カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を用いることができる。中でも、(メタ)アクリル酸、イタコン酸を単独でもしくは2種以上併せて用いることがより好ましい。なお、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のようなジカルボン酸の場合には、これらのモノエステルやモノアマイドを用いてもよい。
(ヘ)エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等があげられる。中でも好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートである。
(ト)メチロール基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド等があげられる。
(チ)アルコキシアルキル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等があげられる。
(リ)シアノ基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等があげられる。
(ヌ)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート等があげられる。
(ル)アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート等があげられる。
(オ)スルホン酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸(塩)等があげられる。
(ワ)リン酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフエート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシブロビル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフエニルー2−メタクリ口イロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリ口イロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフエ一ト、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフエート、ジオクチル−2(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等があげられる。
これらシリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)は、先に述べたように、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
このように、本発明の水性プライマー組成物では、前記各種単量体の構成において、シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)を用いることが好ましい。上記シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)を含有することにより、下地セメント硬化物との密着性が向上し、かつ成膜後の皮膜弾性率が大きく改善されるため、上塗りセルフレベリング材との密着性をも向上することができる。
さらに、上記シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)とともに、このシリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)を併用することが好ましい。このような併用系の場合、エチレン性不飽和単量体(M)全成分中、シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)が0.1〜10重量%に設定することが好ましく、さらには0.1〜7重量%、特には0.1〜5重量%が好ましい。すなわち、シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)が少な過ぎると、下地セメント硬化物との密着性が充分に発揮され難い傾向がみられ、多過ぎると、成膜後の皮膜弾性率が大きくなりすぎ、上塗りセルフレベリング材との密着性の低下等の問題が生じる傾向がみられる。
本発明の水性プライマー組成物を構成する主成分であるエマルジョン(X)は、上記のエチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるものであり、かかるエマルジョン(X)を得るに際しては、(1)界面活性剤を含有する水性媒体中に、上記のエチレン性不飽和単量体(M)を用いて、乳化重合する方法が好ましく用いられる。また、かかる方法以外にも、(2)ポリビニルアルコール系樹脂を乳化剤に用いて、水性媒体中に、上記のエチレン性不飽和単量体(M)を乳化重合することもできる。
以下、前記の(1)の方法について説明する。
本発明で用いられる界面活性剤としては、重合性不飽和結合を1個以上有する界面活性剤を用いることが好ましく、かかる重合性不飽和結合を1個以上有する界面活性剤を用いることにより、それらによる表面張力の低下に起因する気泡の発生抑制効果が得られる。
上記重合性不飽和結合を1個以上有する界面活性剤(以下「重合性界面活性剤」という)については特に制限はなく、従来公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性等のイオン性、非イオン性の界面活性剤の中から、適宜選択して用いることができ、また上記重合性界面活性剤は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、上記重合性界面活性剤としては、例えば、下記に示す一般式(1)〜(15)で表される化合物等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
Figure 2008195771
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上記重合性界面活性剤の具体例としては、例えば、アンモニウム=α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル等があげられる。
また、上記重合性界面活性剤以外に、重合性不飽和結合を有さない通常の界面活性剤(以下「非反応性界面活性剤」という)を適宜に併用しても良い。
上記非反応性界面活性剤としては、例えば、アルキルもしくはアルキルアリル硫酸塩,アルキルもしくはアルキルアリルスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ソーダ等のアニオン性界面活性剤や、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド,アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール型、ポリオキシエチレンプロピレングリコール型等のノニオン性界面活性剤等があげられる。
上記界面活性剤の使用量は、特に制限はないが、エチレン性不飽和単量体(M)全成分に対して0.1〜10重量%、特には0.5〜10重量%、さらには0.5〜5重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、界面活性剤の使用量が少な過ぎると、重合安定性の面において、不安定になる傾向がみられ、多過ぎると、得られる共重合体の平均粒子径が小さくなりすぎ、結果、エマルジョンの粘度が高くなりすぎて作業性が低下する等の問題が生じる傾向がみられるからである。
そして、通常、乳化重合を行うにあたっては重合開始剤を用いるが、上記重合開始剤としては、特に制限されず、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能で、具体的には、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2′−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。これらの中でも重合安定性に優れる点で、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム,過硫酸ナトリウム、レドックス系触媒(酸化剤:過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、還元剤:亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸)等が好適である。
上記重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(M)全体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲に設定することが好ましく、さらには0.03〜3重量部に設定することがより好ましい。すなわち、重合開始剤の使用量が少な過ぎると、重合速度が遅くなる傾向がみられ、多過ぎると、得られる共重合体の分子量が低下し耐水性の面において好ましくない傾向がみられるからである。
なお、上記重合開始剤は重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、必要に応じて重合途中に追加添加してもよい。あるいは、単量体混合物に予め添加したり、上記単量体混合物からなる乳化液に添加してもよい。また、重合開始剤の添加に際しては、重合開始剤を別途溶媒や上記単量体に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤をさらに乳化状にして添加してもよい。
また、必要に応じて、重合時に、pH調整のため、pH緩衝剤を併用してもよい。上記pH緩衝剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(M)全体100重量部に対して0.01〜10重量部に設定することが好ましく、特に0.1〜5重量部に設定することが好ましい。かかる使用量が少なすぎると重合調整剤としての効果が不足する傾向があり、多くなると反応を阻害する可能性がある。
上記pH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸アンモニウム等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
さらには、重合に際して、重合調整剤を配合することができる。上記重合調整剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。本発明において用いることができる重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤等があげられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;n−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類などがあげられる。これらの連鎖移動剤は、1種または2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用は、重合を安定に行わせるという点では有効であるが、合成樹脂の重合度を低下させるため、得られる皮膜の耐水性や耐熱性が低下する可能性がある。また、一方で、下地セメント硬化物への密着性の向上が期待できる。このため、連鎖移動剤を使用する場合には、その使用量を注意して使用することが望ましい。具体的には、連鎖移動剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体(M)の全体100重量部に対して0.01〜1重量部に設定することが好ましく、特に0.01〜0.5重量部に設定することが好ましい。かかる使用量が少なすぎると連鎖移動剤としての効果が不足する傾向があり、多すぎると耐水性や耐熱性が低下する可能性がある。
本発明の水性プライマー組成物に用いられるエマルジョン(X)は、例えば、上記エチレン性不飽和単量体を重合性界面活性剤の存在下にて、上記重合開始剤を用いて乳化重合を行い、共重合体を作製することにより製造される。その重合方法としては、下記に示す(1)〜(3)の方法があげられる。なかでも、重合温度の制御が容易である点で、下記(2)、(3)の方法が好ましい。
(1)エチレン性不飽和単量体(M)、重合性界面活性剤、水等の全量を仕込み、昇温し重合する、
(2)反応缶に水、重合性界面活性剤、エチレン性不飽和単量体(M)の一部を仕込み、昇温し重合した後、残りのエチレン性不飽和単量体(M)を滴下または分割添加して重合を継続する、
(3)反応缶に水、重合性界面活性剤等を仕込んでおき昇温した後、エチレン性不飽和単量体(M)を全量滴下または分割添加して重合する、
上記(1)〜(3)に示す重合方法における重合条件としては、特に限定されないが、例えば、上記(1)の重合方法における重合条件としては、通常、40〜100℃程度の温度範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度反応を行うことがあげられる。
また、上記(2)の重合方法における重合条件としては、エチレン性不飽和単量体(M)の1〜50重量%を通常40〜90℃で0.1〜4時間重合した後、残りのエチレン性不飽和単量体(M)を1〜7時間程度かけて滴下または分割添加して、その後、上記温度で1〜3時間程度熟成することがあげられる。
そして、上記(3)の重合方法における重合条件としては、重合缶に水を仕込み、40〜90℃に昇温し、単量体混合物を2〜7時間程度かけて滴下または分割添加し、その後、上記温度で1〜3時間程度熟成することがあげられる。
上記重合方法において、エチレン性不飽和単量体(M)は、重合性界面活性剤(または重合性界面活性剤の一部)をエチレン性不飽和単量体(M)に溶解しておくか、または、予めO/W型の乳化液の状態とすることが重合安定性の点から好ましい。
上記乳化液の調整方法としては、特に限定されないが、水に重合性界面活性剤を溶解した後、上記単量体を仕込み、この混合液を撹拌乳化する方法、あるいは水に重合性界面活性剤を溶解した後撹拌しながら上記を仕込む方法等があげられる。
上記乳化液の乳化の際の撹拌は、各成分を混合し、ホモディスパー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。
乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
このようにしてエマルジョン(X)が得られるが、本発明においては、上記エマルジョン(X)の表面張力が42mN/m以上であることが必要であり、好ましくは42〜65mN/m、さらに好ましくは42〜60mN/mである。本発明においては、エマルジョン(X)の表面張力が42mN/m以上であることを必須要件とするものであるが、表面張力が42mN/m未満では、プライマー組成物としたときの下地セメント硬化物に対しては充分な濡れ性を得ることは可能となるが、上塗りであるセルフレベリング材のプライマー組成物に対する濡れ性が悪いため、プライマー組成物への濡れ速度が長くなりすぎ、その結果、空気置換に要する時間も長くなり、施工後に気泡が発生することになるからである。すなわち、上記と同様な観点から、表面張力が大きすぎる場合、空気置換による発泡現象は抑制されるものの、下地セメント硬化物に対し充分な濡れ性が得られないため、密着性が不充分となる傾向がみられる。このように、エマルジョン(X)の表面張力を42mN/m以上に設定したことにより、下地セメント硬化物との密着性ならびに上塗りセルフレベリング材施工時に発生する空気置換による発泡現象の抑制効果の向上が図られることとなり、これが本発明の水性プライマー組成物の最大の特徴である。
なお、一般に、上記「濡れ」とは液体が固体表面から気体を押しのける現象をいう。したがって、濡れは固体表面と液体との付着現象である。一方、表面張力はポリマー成分の濡れ性を大きく支配することが知られている。したがって、ポリマー成分の表面張力は密着性に起因する大きな因子であると考えられる。
本発明において、エマルジョン(X)の表面張力の測定方法としては、一般に、静的測定法と動的測定法の二つに大別することができる。上記静的測定法の中で、最も代表的な測定法としては、デュヌーイ法が知られている。そして、本発明の、エマルジョン(X)の表面張力は、デュヌーイ法を用いて測定した値をいう。
本発明の表面張力が高い上記エマルジョン(X)を得る方法としては、エマルジョンの種類、粒径、濃度などにより異なるが、通常、(1)重合性の界面活性剤を用い、その使用量を、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下と従来よりも少量に抑制する方法、(2)重合性でない界面活性剤の場合には、例えば、分子量1000以上となるべく高分子量のものを用いることにより調製することができる。
また、本発明においては、エマルジョン(X)の平均粒子径は特に制限はなく、放置安定性の点で1000nm以下であることが好ましく、特には15〜500nmであることが好ましい。平均粒子径が大きすぎるとセメント硬化物への密着性が低下する傾向があり、小さすぎると重合時エマルジョンの安定性が不十分となる傾向がある。なお、上記エマルジョン(X)の平均粒子径は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、沈降法、電子顕微鏡による直接観察、等を用いて測定することができる。
また、エマルジョン(X)の固形分濃度については10〜75重量%、特には20〜70重量%であることが安定性、作業性の点で好ましい。
さらに、エマルジョン(X)の粘度としては、10〜100000mPa.s、特には10〜50000mPa・sであることが好ましい。
本発明の水性プライマー組成物は、上記エマルジョン(X)を主成分とするものであり、かかるエマルジョンのみから構成されてもよいが、さらにシラン系化合物(Y)を含有することも好ましい。上記シラン系化合物(Y)を含有することにより、前記シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)を用いた場合と同様に、下地セメント硬化物との密着性が向上し、かつ成膜後の皮膜弾性率が大きく改善されるため、上塗りセルフレベリング材との密着性も向上する。なお、上記シラン系化合物(Y)は、エマルジョン(X)を調製した後、これに添加するという態様以外に、エマルジョン(X)の調製時、重合の際に添加しエマルジョン(X)中に含有させてもよい。上記シラン系化合物(Y)としては、特に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン:メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン:ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン等の水溶液中で比較的安定なものが用いられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。中でもグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシドキシ基含有トリアルコキシシランが特に好ましい。
上記シラン系化合物(Y)の含有量は、前述のようにして調製されたエマルジョン(X)とシラン系化合物(Y)の含有割合については、エマルジョン(X)とシラン系化合物(Y)の合計100重量%に対して、シラン系化合物(Y)が0.1〜5重量%の範囲に、および、エマルジョン(X)が95〜99.9重量%の範囲に設定されていることが好ましく、さらにはシラン系化合物(Y)が0.1〜4重量%の範囲に、エマルジョン(X)が96〜99.9重量%の範囲に、特にはシラン系化合物(Y)が0.1〜3重量%の範囲に、エマルジョン(X)が97〜99.9重量%の範囲に設定されていることが好ましい。すなわち、シラン系化合物(Y)が少な過ぎると、下地セメント硬化物との密着性が充分に発揮され難い傾向がみられ、一方、多過ぎると、成膜後の皮膜弾性率が大きくなりすぎ、上塗りセルフレベリング材との密着性の低下および貯蔵時の安定性等の問題が生じる傾向がみられる。
本発明の水性プライマー組成物には、前述の成分以外に、物性が低下しない限り必要に応じて他のいかなる成分を添加するようにしてもよい。例えば、減水剤および流動化剤(ポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸系、ナフタリンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系など)、収縮低減剤(グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(塩化カルシウム、珪酸塩等)、防水剤(ステアリン酸、シリコン系等)、防錆剤(リン酸塩、亜硝酸塩等)、粘度調整剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、凝結調整剤(リン酸塩等)、膨張剤(エトリンガイト系、石灰系等)、着色剤(酸化鉄、酸化クロム等)、消泡剤(シリコン系、鉱油系等)、補強材(鋼繊維、ガラス繊維、合成繊維等)、界面活性剤(アニオン、ノニオン、カチオン系等)、さらには増粘剤、レベリング剤、成膜助剤、溶剤、可塑剤、分散剤、耐水化剤、潤滑剤等があげられる。
本発明の水性プライマー組成物は、上記のようにエマルジョン(X)のまま単独で構成されたり、上記の種々添加剤を配合して構成されたりする。そして、実際の使用に際しては、水により、固形分濃度5〜30重量%、特には5〜25重量%に希釈して塗布することが好ましい。塗布量は、下地の状況に応じて適宜変化させることが好ましく、普通コンクリートのような下地の場合は100〜150g/m2 、軽量気泡コンクリート(ALC)や吸水の激しい下地の場合は200〜250g/m2 、押し出し成形品等のコンクリート二次製品のようなほとんど吸水しない下地の場合は50〜100g/m2 程度が好適である。塗布方法は、ハケ塗り、ローラー塗り、噴霧などを使用することができ、1回塗りで充分な塗布量が得られなかった場合は、複数回塗布してもよい。
本発明の水性プライマー組成物は、例えば、土木・建築分野において使用されるものであり、特にセルフレベリング材のプライマーとして使用した場合、上塗りセルフレベリング材施工時に発生する空気置換による発泡現象を抑制でき、また、下地セメント硬化物および上塗りセルフレベリング材に対し優れた密着性を発揮する。
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の各実施例において示す「部」および「%」はそれぞれ「重量部」および「重量%」の意味である。
〔エマルジョンの調製〕
〔実施例1〕
温度計、撹拌機、環流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に、後記の表1に示す界面活性剤(乳化剤)2.5部と水111.6部を仕込んで溶解し、系内を窒素ガスで置換した。後記の表1に実施例1として示すエチレン性不飽和単量体の混合物全体100.0部のうち、5.0部を反応容器に加え80℃まで昇温した。昇温の後、3%過硫酸カリウム水溶液1.5部を前記の反応容器に添加し反応させ、その後残りのエチレン性不飽和単量体乳化物95部と3%過酸化カリウム水溶液5.7部を240分間にわたって反応容器内に連続滴下し、80℃で重合を行った。滴下終了後、80℃で180分間熟成を行い重合を完結させた。室温(25℃)まで冷却後、中和剤を添加し、固形分を45%、pH=7〜8に調製し、エマルジョンを得た。
〔実施例2〜11、比較例1〕
エマルジョンの調製において使用する界面活性剤(乳化剤)およびエチレン性不飽和単量体を後記の表1〜表3に示す化合物に代え、またその使用量を同表に示す使用量に変えた。それ以外は実施例1に準じてエマルジョンを調製した。また、実施例7,8および比較例2の反応容器中に仕込む水はそれぞれ101.6部、107.7部と105.8部である。さらに、実施例9〜11では、調製したエマルジョンにシラン化合物を配合した。
〔比較例2〕
比較例2は、実施例1においてエマルジョンの調製の際(重合反応中)に、濡れ剤であるフタージェント 100(株式会社ネオス)を0.4重量%の割合(不飽和単量体全体に対する重量割合)で他の不飽和単量体とともに添加した。
なお、下記の表1〜表3における界面活性剤は、つぎに示す化合物である。
アデカリアソープ SR−10:[({α−〔2−(アリルオキシ)−1−({[アルキル(C=10〜14)]オキシ}メチル)エチル〕−ω−ヒドロキシポリ(n=1〜100)(オキシエチレン)}を主成分とする、{アルカノール(C=10〜14、分岐型)と1−(アリルオキシ)−2,3−エポキシプロパンの反応生成物}のオキシラン重付加物)の硫酸エステル化合物]のアンモニウム塩(固形分100%)
アクアロン KH−10:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(固形分100%)
ラテムル PD−104:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(固形分20%)
エレミノール JS−20:アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩水溶液(固形分39%)
エマルゾーゲン EPA−073:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(分子量582)(固形分30%)
Figure 2008195771
Figure 2008195771
Figure 2008195771
このようにして得られたエマルジョンを用いて、下記の方法に従い、その表面張力を測定するとともに、特性を評価した。なお、得られたエマルジョンの平均粒子径は、Nicomp380(Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。
(1)表面張力
得られたエマルジョンを2倍希釈(エマルジョン:水=1:1)し、23℃にてデュヌーイ式表面張力計(伊藤製作所製)により表面張力を測定した。
つぎに、市販のコンクリート平板に、上記で得られたエマルジョンを水で4倍に希釈し、水性プライマー組成物(エマルジョン:水=1:3)として用いて、かかる水性プライマー組成物を250g/m2 となるように塗布を行った。その後、20℃×65%RHの条件にて2時間放置した。ついで、市販のセルフレベリング材を厚み10mmとなるように塗りつけた。その後、20℃×60%RHの条件にて14日間養生し、下記の評価を行った。
(2)気泡の発生:養生後、20cm×20cmの大きさにおいて、発生した気泡の数およびその直径を目視により測定した。その測定結果に基づき、下記の表4に示す基準にて判定した。
Figure 2008195771
(3)常態接着強さ:養生後、建研式引っ張り試験機を用いてセメントモルタル硬化物に対する接着強さを測定した。そして、1.5N/mm2 以上を合格、1.5N/mm2 未満を不合格とした。
(4)耐水接着強さ:養生後、さらに20℃の水中に24時間浸漬し、湿潤状態のままで上記常態接着強さと同様に接着強さを測定した。そして、1.0N/mm2 以上を合格、1.0N/mm2 未満を不合格とした。
(5)温冷繰り返し後の密着強さ:養生後の試験サンプルを用いて、JIS A6909(建築用仕上塗材)7.11温冷繰り返し試験に準拠して試験を実施し、割れ発生の状態を目視にて観察した。そして、割れの発生が認められないものを合格、割れの発生が確認されたものを不合格とした。
下記の表5に、表面張力、気泡の発生、常態接着強さ、耐水接着強さ、温冷繰り返し後の密着強さの各評価結果を示す。
Figure 2008195771
上記結果から、実施例は、全て表面張力が42mN/m以上であり、気泡の発生、常態接着強さ、耐水接着強さ、温冷繰り返し後の密着強さの評価の全てにおいて合格の評価が得られた。
これに対して、比較例1は、表面張力が42mN/m未満であり、常態接着強さに関しては合格の評価であったが、気泡の発生、耐水接着強さ、温冷繰り返し後の密着強さの評価に関して不合格の評価となった。また、比較例2も、表面張力が42mN/m未満であり、常態接着強さ、耐水接着強さ、温冷繰り返し後の密着強さの評価に関して合格の評価であったが、気泡の発生評価に関して不合格の評価となった。

Claims (7)

  1. エチレン性不飽和単量体(M)の共重合体が分散されてなるエマルジョン(X)を主成分とする水性プライマー組成物であり、前記エマルジョン(X)の表面張力が42mN/m以上であることを特徴とする水性プライマー組成物。
  2. エマルジョン(X)が、重合性不飽和結合を1個以上有する界面活性剤を含有する水性媒体中に、エチレン性不飽和単量体(M)を乳化重合してなるエマルジョンである請求項1記載の水性プライマー組成物。
  3. エチレン性不飽和単量体(M)が、シリル基を有する不飽和単量体(a)を含んでなる請求項1または2記載の水性プライマー組成物。
  4. エチレン性不飽和単量体(M)が、シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(a)および前記(a)と共重合可能なエチレン性不飽和単量体(b)を含んでなり、エチレン性不飽和単量体(M)全体における上記(a)の含有割合が、0.1〜10重量%に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
  5. 水性プライマー組成物が、さらにシラン系化合物(Y)を含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
  6. エマルジョン(X)とシラン系化合物(Y)の含有割合〔(X)/(Y)〕が、エマルジョン(X)とシラン系化合物(Y)の合計100重量%に対して、シラン系化合物(Y)が0.1〜5重量%の範囲に設定されている請求項5記載の水性プライマー組成物。
  7. セルフレベリング材のプライマーとして用いられる請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
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