JP6433251B2 - モルタル用水性樹脂分散体、モルタル組成物、及びモルタル硬化物 - Google Patents
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Description
[1]水と、計算ガラス転移温度が−15℃以上+30℃以下であり、コア部とシェル部とを有する重合体粒子と、前記重合体粒子100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下のノニオン性界面活性剤(d)と、を含み、
前記重合体粒子が、ニトリル含有ビニル系単量体(a)と、反応性界面活性剤(b)と、ニトリル含有ビニル系単量体(a)及び反応性界面活性剤(b)のいずれか1種以上と共重合可能な重合性単量体(c)と、を重合して得られ、
ニトリル含有ビニル系単量体(a)が重合した成分は、前記重合体粒子のコア部のみに位置する、
モルタル用水性樹脂分散体。
[2]前記重合性単量体(c)の少なくとも1種が、アルコキシシラン基含有重合性単量体である、[1]に記載のモルタル用水性樹脂分散体。
[3][1]又は[2]に記載のモルタル用水性樹脂分散体と、セメントと、充填剤と、添加剤と、を含む、モルタル組成物。
[4][3]に記載のモルタル組成物を硬化して得られる、モルタル硬化物。
本実施形態のモルタル用水性樹脂分散体は、水と、計算ガラス転移温度が−15℃以上+30℃以下であり、コア部とシェル部とを有する重合体粒子と、前記重合体粒子100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下のノニオン性界面活性剤(d)と、を含み、前記重合体粒子が、ニトリル含有ビニル系単量体(a)と、反応性界面活性剤(b)と、ニトリル含有ビニル系単量体(a)及び反応性界面活性剤(b)のいずれか1種以上と共重合可能な重合性単量体(c)と、を重合して得られ、ニトリル含有ビニル系単量体(a)が重合した成分は、前記重合体粒子のコア部のみに位置する。
本実施形態に用いる重合体粒子は、コア部とシェル部を有する。本実施形態でいうコア部とシェル部を有するとは、粒子の最外層にある共重合体を含む部分をシェル部とし、その内側を構成するすべての共重合体を含む部分をコア部とし、コア部の共重合体とシェル部の共重合体での単量体組成が異なるものである。なお、コア部は、単量体組成が異なる共重合体を含む層が多数存在する多層構造であってもよい。
本実施形態の重合体粒子は、厚塗りダレ性の観点から、ニトリル含有ビニル系単量体(a)とを重合して得られ、ニトリル含有ビニル系単量体(a)が重合した成分は、重合体粒子のコア部のみに位置する。本実施形態でいう重合体粒子のコア部のみに位置するとは、例えば、粒子最外層となるシェル部にはニトリル含有ビニル系単量体(a)が重合した成分を含まず、その内側を構成するコア部の共重合体のいずれか又は全ての共重合体がニトリル含有ビニル系単量体(a)を重合した成分であることを指す。
本実施形態における反応性界面活性剤(b)とは、親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性2重結合を有する化合物をいう。反応性界面活性剤(b)としては、特に限定されないが、製造安定性の観点から、親水基がアニオン性である反応性界面活性剤であることが好ましい。
本実施形態におけるニトリル含有ビニル系単量体(a)又は反応性界面活性剤(b)と共重合可能な重合性単量体(c)として、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有重合性単量体、カルボン酸基含有重合性単量体、アルコキシシラン基含有重合性単量体、これら以外の重合性単量体等が挙げられる。本実施形態において、重合性単量体(c)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の重合体粒子は、計算ガラス転移温度が−15℃以上+35℃以下であり、−10℃以上+20℃以下が好ましく、−5℃以上+10℃以下がより好ましい。35℃以下であることで、接着性を良好なものとすることができる。−15℃以上であることで、接着性と可使時間の両立を可能とすることができる。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:単量体1、2・・・よりなる共重合体の計算ガラス転移温度(K);W1、W2・・・:単量体1、単量体2、・・・の共重合体中の質量分率(W1+W2+・・・=1);Tg1、Tg2・・・:単量体1、単量体2、・・・のホモ重合体のガラス転移温度(K))
ポリスチレン(373K)、ポリメタクリル酸メチル(373K)、ポリアクリル酸n−ブチル(228K)、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル(218K)、ポリアクリル酸(360K)、ポリメタクリル酸(417K)、ポリアクリロニトリル(369K)、ポリアクリル酸2−ヒドロキシエチル(258K)、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(328K)。
本実施形態のモルタル用水性樹脂分散体は、重合体粒子100質量部に対して、ノニオン性界面活性剤(d)を0.1質量部以上6.0質量部以下含み、その含有量は好ましくは1.0質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは1.5質量部以上4.5質量部以下である。この範囲であると、セメントとの混和安定性に優れる傾向にあり、さらに厚塗りダレ性を改善できる傾向にある。
本実施形態のモルタル用水性樹脂分散体は、必要に応じて、反応性界面活性剤、又はノニオン系界面活性剤以外の界面活性剤をさらに含むことができる。具体的には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等が挙げられる。
本実施形態のモルタル用水性樹脂分散体は、上記した成分以外にも、その効果の範囲内において、水性樹脂分散体等に添加配合される他の成分をさらに含んでもよい。このような他の成分として、具体的には、増粘剤、成膜助剤、凍結防止剤、消泡剤、染料、防腐剤等が挙げられる。これらの他の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の重合体粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは180nm以上280nm以下であり、より好ましくは190nm以上260nm以下である。180nm以上であることで、厚塗りダレ性がより良好となる。280nm以下であることで、接着性がより良好となる。平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
本実施形態のモルタル用水性樹脂分散体の固形分含有量は、特に限定されないが、好ましくは30質量%以上65質量%以下である。30質量%以上であることで、貯蔵安定性がより良好となる。65質量%以下であることで、製造安定性がより良好となる。
本実施形態の水性樹脂分散体は、水中にて、ニトリル含有ビニル系単量体(a)と、反応性界面活性剤(b)と、ニトリル含有ビニル系単量体(a)又は反応性界面活性剤(b)と共重合可能な重合性単量体(c)とを、重合させることで得られる。
本実施形態のモルタル組成物は、上記した本実施形態のモルタル用水性樹脂分散体と、セメントと、充填剤と、添加剤と、を含む。そのため、優れた厚塗りダレ性、可使時間及び接着性を発現することができる。
本実施形態のモルタル硬化物は、上記した本実施形態のモルタル組成物を硬化して得られ、優れた接着性を発現することができる。硬化の手段として、具体的には、木枠等で作られた枠に耐硫酸モルタル組成物を投入する等が挙げられる。また、養生条件として、具体的には、室温での養生、加温下での養生、蒸気中での養生、水中での養生、これらの組み合わせによる養生等が挙げられる。
(1)計算ガラス転移温度
計算ガラス転移温度は、単量体のホモ重合体のガラス転移温度及び共重合比率に基づき、次式によって算出した。なお、アルコキシシラン基含有重合性単量体(d)は、計算ガラス転移温度の計算には含めなかった。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
(Tg:単量体1、2・・・よりなる共重合体の計算ガラス転移温度(K);W1、W2・・・:単量体1、単量体2、・・・の共重合体中の質量分率(W1+W2+・・・=1);Tg1、Tg2・・・:単量体1、単量体2、・・・のホモ重合体のガラス転移温度(K))
レーザー回折式の粒度分布計(リーズ・アンド・ノースラップ社製、マイクロトラック粒度分布計「UPA150」)にて測定した体積平均粒子径を、重合体粒子の平均粒子径とした。
アルミ皿にモルタル用水性樹脂分散体1gを正確に秤量し、恒温乾燥機で105℃にて3時間乾燥させ、シリカゲルを入れたデシケーター中で30分間放冷した後に精秤した。乾燥後質量を乾燥前質量で除した割合を固形分率(%)とした。
JIS A5371:2004の付属書2に規定する普通平板の呼び300(寸法300×300×60mm)の表面の脆弱層、汚れ、付着物を取り除くべく、JIS R6255:2006に規定する研磨ディスクを使用して研磨し、20℃65%RHにて7日間養生した後、前記表面が垂直になるようにして固定し、上記モルタルを金鏝を用いて厚さ20mm、幅150mm、高さ280mmで下方から上方に向かって塗り付け、目視にてダレの状態を観察した。
◎:塗り付け時や養生後も全くダレがなく仕上面が平滑である。
○:塗り付け時にモルタルが僅かに動くが、養生後は仕上面が均一の厚みである。
△:塗り付け時にモルタルが僅かに動き、養生後の仕上面は上部が薄く、下部が厚くなっているのが分かる。
×:施工直後、養生後ともにモルタルが下方にずれている。
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)450質量部、6号硅砂1350質量部、固形分率45.0質量%の下記例で作製した水性樹脂分散体50.0質量部と、水適量とを加え、手練りでフロー値(JIS R5201の11.(フロー試験))が150±5mmとなるように調整して、初期フロー値とした。その後、30分経過後に同様にフロー値を測定し、30分後フロー値とした。なお、P/Cは、ポリマー/セメント比を示し、Pは水性樹脂分散体の固形分を、Cはセメントの質量を、それぞれ示す。
JIS A5371:2004の付属書2に規定する普通平板の呼び300(寸法300×300×60mm)の表面の脆弱層、汚れ、付着物を取り除くべく、JIS R6255:2006に規定する研磨ディスクを使用して研磨した。研磨後、20℃65%RHにて7日間養生した後、上記モルタルを塗り付け厚さ10mmで塗り付けた。材齢28日まで20℃65%RHにて養生した後、接着性を測定した。
接着強さ(N/mm2)=最大引張荷重(N)/1600(mm2)
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、表1の反応容器仕込み組成を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を4.0質量部添加した。その5分後に、コア部となる表1の1段目乳化液組成の乳化混合液を、150分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した。つづけて、シェル部となる表1の2段目乳化液組成の乳化混合液を、60分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%アンモニア水と水でpH8.0、固形分率45.0質量%に調整し、製造例1〜6の水性樹脂分散体を得た。結果を表1に示す。
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、表2の反応容器仕込み組成を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を4.0質量部添加した。その5分後に、コア部となる表2の1段目乳化液組成の乳化混合液を、75分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した。つづけて、コア部となる表2の2段目乳化液組成の乳化混合液を、75分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した。つづけて、シェル部となる表2の3段目乳化液組成の乳化混合液を、60分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%アンモニア水と水でpH8.0、固形分率45.0質量%に調整し、製造例7の水性樹脂分散体を得た。結果を表2に示す。
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取り付けた反応容器に、コア部となる表3の反応容器仕込み組成を投入し、反応容器中の温度を80℃に昇温させて、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を4.0質量部添加した。その5分後に、シェル部となる表3の1段目乳化液組成の乳化混合液を、150分かけて反応容器に流入させた。流入中は反応容器の温度を80℃に維持した。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した。つづけて、表2の2段目乳化液組成の乳化混合液を、60分かけて反応容器に流入させた。流入終了後、反応容器の温度を80℃にて60分間維持した後冷却し、25%アンモニア水と水でpH8.0、固形分率45.0質量%に調整し、製造例8〜15の水性樹脂分散体を得た。結果を表3に示す。
製造例1〜7の水性樹脂分散体を使用して、各種物性を評価した。結果を表4に示す。
製造例8〜15の水性樹脂分散体を使用して、各種物性を評価した。結果を表5に示す。
Claims (4)
- 水と、計算ガラス転移温度が−15℃以上+30℃以下であり、コア部とシェル部とを有する重合体粒子と、前記重合体粒子100質量部に対して0.1質量部以上6.0質量部以下のノニオン性界面活性剤(d)と、を含み、
前記重合体粒子が、ニトリル含有ビニル系単量体(a)と、反応性界面活性剤(b)と、ニトリル含有ビニル系単量体(a)及び反応性界面活性剤(b)のいずれか1種以上と共重合可能な重合性単量体(c)と、を重合して得られ、
ニトリル含有ビニル系単量体(a)が重合した成分は、前記重合体粒子のコア部のみに位置し、
ニトリル含有ビニル系単量体(a)は、アクリロニトリル及び/又はメタアクリロニトリルである、
モルタル用水性樹脂分散体。
- 前記重合性単量体(c)の少なくとも1種が、アルコキシシラン基含有重合性単量体である、請求項1に記載のモルタル用水性樹脂分散体。
- 請求項1又は請求項2に記載のモルタル用水性樹脂分散体と、セメントと、充填剤と、添加剤と、を含む、モルタル組成物。
- 請求項3に記載のモルタル組成物を硬化して得られる、モルタル硬化物。
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