JP4595392B2 - ポリマーセメント組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート構造物などを施工する際に施工物への防水性の付与を目的として使用され、非タック性に優れる、接着性、施工性及び耐候性に優れたポリマーセメント組成物に関する。さらに塗布などによりコンクリートに被覆可能な防水用のポリマーセメント組成物に関する。
コンクリート構造物の屋上、地下、ベランダなどに防水性を付与するため、樹脂エマルジョンなどにセメントを配合したポリマーセメント組成物が施工されている。
特許文献1には、コア部とシェル部を有する多層構造ラテックス(1)であって、コア部の共重合体のガラス転移温度が−30℃以下であり、シェル部の共重合体のガラス転移温度が−30℃〜20℃であることを特徴とする樹脂モルタル用ラテックス、及びセメント(2)100質量部に対して、充填材(3)が5〜600質量部、及び上記ラテックス(1)5〜150質量部(固形分)を含む樹脂モルタル組成物が開示されている。
特許文献2には、アルキル(メタ)アクリレート単量体(a−1)80〜100重量%、不飽和カルボン酸単量体(a−2)0〜5重量%、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単量体(a−3)0〜5重量%、および、その他の共重合可能な単量体(a−4)0〜10重量%からなる単量体または単量体混合物を重合してなるコア重合体(A)40〜70重量部、ならびに、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルキル(メタ)アクリレート単量体(b−1)80〜96重量%、不飽和カルボン酸単量体(b−2)4〜10重量%、および、その他の共重合可能な単量体(b−3)0〜10重量%からなる単量体混合物を重合してなる、重量平均分子量が12,000以上のシェル重合体(B)30〜60重量部を含んで成るコア−シェル構造を有する重合体(C)を含有することを特徴とするセメント混和剤が開示されている。このセメント混和剤とポルトランドセメントとの硬化物が開示されている。
特開2003−252667号公報 特開2000−178055号公報
コンクリート防水用のポリマーセメント組成物の必要な特性としては、施工性、接着性、不透水性、耐水性及び下地ひび割れ追従性などがあり、特に防水性能の面から重要な特性としては、コンクリートのひび割れに追従できる下地ひび割れ追従性が考えられる。接着性、不透水性、耐水性及び下地ひび割れ追従性の性質を向上させる目的で、ポリマーセメント組成物に含まれるアクリル系樹脂エマルジョンの含有量を増加させると、得られる被膜にタックが発生し、施工性に問題が起きることが考えられる。
本発明は、コンクリート防水用のポリマーセメント組成物として必要な特性である接着性、不透水性、耐水性及び下地ひび割れ追従性を有し、さらにタックを軽減し、施工性に優れるアクリル系樹脂エマルジョンを用いるポリマーセメント組成物の提供を目的とする。
本発明は、ポリマーセメント組成物に含まれるアクリル系樹脂エマルジョンについて検討し、特定のガラス転移温度範囲のコア部及び特定のガラス転移温度範囲で、特性の単量体成分を含むシェル部からなる2層構造のエマルジョンが、低温化での伸びに優れ、ポリマーセメント組成物の硬化物のタックに影響を及ぼすことを見出した。
本発明は、アルミナセメントとアクリル系樹脂エマルジョンを含むポリマーセメント組成物であり、
アクリル系樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度が−31℃以下のコア部とガラス転移温度が20℃を超えるシェル部を有する多層構造のエマルジョンであることを特徴とするポリマーセメント組成物を提供することである。
本発明のポリマーセメント組成物の好ましい態様を示す。
アクリル系樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度が−45〜−31℃のコア部とガラス転移温度が20℃を超えるシェル部を有する多層構造のエマルジョンであることが好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンは、エマルジョンの重合に用いる全モノマー成分量(コア部のモノマー成分量A+シェル部のモノマー成分量B=100質量%)に対し、コア部のモノマー成分量Aの割合が85〜98質量%及びシェル部のモノマー成分量Bの割合が15〜2質量%であることが好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンのシェル部は、メチル(メタ)アクリレートを50〜100質量%を含む単量体より得られることが好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンは、
(1)ガラス転移温度が−31℃以下の重合体が得られるコア部のモノマー成分Aを重合してコア部を製造し、
(2)さらにガラス転移温度が20℃を超える重合体が得られるシェル部のモノマー成分Bを添加し、重合して得られるエマルジョンであることが好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対し、アルミナセメントを3〜175質量部含むことが好ましく、
さらに好ましくは充填材を含み、アルミナセメントと充填材の合計量20〜350質量部を含むことが好ましい。
ポリマーセメント組成物は、コンクリート防水用であることが好ましい。
ポリマーセメント組成物の乾燥時間が、1時間以上、かつ4時間45分以下であることが好ましい。
本発明のポリマーセメント組成物は、コンクリートに被覆可能な防水用のポリマーセメント組成物であり、硬化後に得られる硬化層はタックの低減された、防水性に優れるものである。
本発明のポリマーセメント組成物をコンクリート層に積層することにより、防水性を有し、タックの低いコンクリート構造体を得ることができる。
アルミナセメントは、耐火物用、土木用、建築用などいずれの用途のアルミナセメントでも問題なく使用出来、アルミナの含有量も特に制限はなく用いることが出来る。
アルミナセメントは、鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されているが、何れも主成分はモノカルシウムアルミネートであり、市販品はその種類によらず使用することができる。
本発明のポリマーセメント組成物において、
アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対し、アルミナセメントを好ましくは3〜175質量部、さらに好ましくは5〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは30〜70質量部含むことにより、
(1)水和反応により組成物の乾燥を促進させ、硬化した塗膜の耐水性及び強度確保に優れ、
(2)アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対し、アルミナセメントの含有量が、上記範囲より小さい場合は組成物の硬化乾燥時間、強度が不十分となり、また上記範囲より大きい場合ポットライフが短く、また粘度が上昇して作業性、施工性に支障を来す場合があり好ましくない。
本発明のポリマーセメント組成物では、塗膜の乾燥時間が、1〜4.75時間、好ましくは1.5〜4.5、さらに好ましくは2〜4.5時間とすることができ、施工性に優れる。
充填材は、珪砂、スラグ粉、フライアッシュ、石灰石粉、タルク、カオリン、アルミナ粉、酸化チタン、水酸化アルミニウム、マイカ、パイロフィライト、ゼオライト、シリカゲルなどを添加して用いることが出来、これらの充填材を1種または2種以上用いることが出来る。特に珪砂の場合、表面精度の面から5〜7号の使用が好ましい。
本発明のポリマーセメント組成物において、
アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対し、充填材が10〜300質量部、好ましくは30〜260質量部、さらに好ましくは50〜230質量部、特に好ましくは100〜200質量部含むことにより、
アクリル系樹脂エマルジョンの固形分に対する充填材の配合量が上記範囲より小さいとタック低減効果が小さく、大きいと粘度上昇のため作業性、施工性に支障を来すために好ましくない。
本発明のポリマーセメント組成物において、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対し、アルミナセメントと充填材とを含む粉体を好ましくは20〜350質量部、さらに好ましくは35〜300質量部、より好ましくは55〜275質量部、特に好ましくは90〜250質量部を含むことが好ましい。
アルミナセメントと充填材とを含む粉体が、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分に対して含まれる割合が、上記範囲より大きい場合、得られるポリマーセメント組成物の粘度が高くなり施工性が低下するとともに、十分な下地ひび割れ追従性が得られないため好ましくなく、上記範囲より小さい場合、十分な下地ひび割れ追従性が得られるが、塗膜強度が低下すること、塗膜のタックが強くなるなど好ましくない。
アクリル系樹脂エマルジョンは、エマルジョンの重合に用いる全モノマー成分量(コア部のモノマー成分量A+シェル部のモノマー成分量B=100質量%)に対し、コア部のモノマー成分量Aの割合が85〜98質量%及びシェル部のモノマー成分量Bの割合が15〜2質量%であることが、タック低減かつ伸び率確保の両面を得るために好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度が−31℃以下のコア部とガラス転移温度が20℃を超えるシェル部を有する多層構造のエマルジョンである。
アクリル系樹脂エマルジョンのコア部は、ガラス転移温度が−31℃以下、好ましくは−60〜−31℃、さらに好ましくは−50〜−31℃、特に好ましくは−45〜−31℃の重合体である。
アクリル系樹脂エマルジョンのシェル部は、ガラス転移温度が20℃を超える重合体である。
アクリル系樹脂エマルジョンのシェル部は、シェル部の全モノマー成分100質量%に対し、メチル(メタ)アクリレートを50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは97〜100質量%と、メチル(メタ)アクリレートを除く他の(メタ)アクリレート誘導体、メチル(メタ)アクリレートと共重合可能なモノマー成分とを重合して得られるものを用いることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンのコア部は、ガラス転移温度が−31℃以下の重合体であり、ガラス転移温度が−31℃以下の重合体は、公知の(メタ)アクリレートを組み合わせて得ることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンのコア部は、
(1)メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選ばれる成分
(2)炭素数4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート及び、
(3)OH基、COOH基及び/又はアミド結合を有する(メタ)アクリレートを必須成分として含むモノマー組成物から得られることが好ましく、
特に(1)メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選ばれる成分9〜35質量%、
(2)炭素数4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート50〜80質量%、及び、
(3)OH基、COOH基及び/又はアミド結合を有する(メタ)アクリレート0.1〜11質量%を含む単量体組成物から得られることが好ましい。
尚、本明細書においては、アクリレート誘導体(アクリル酸誘導体を意味する。)及びメタクリレート誘導体(メタクリル酸誘導体を意味する。)を、(メタ)アクリレート誘導体と表す。
アクリル系樹脂エマルジョンに含まれる固形分は、固形分中、重合体成分を主成分とするもので、重合体成分を好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、より好ましくは96質量%以上、特に好ましくは97質量%以上含むものである。
アクリル系樹脂エマルジョンは、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル及びスチレンから選ばれる成分を含まないエマルジョン、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートを含まないエマルジョン、酢酸ビニルを含まないエマルジョン、スチレンを含まないエマルジョン、グリシジル(メタ)アクリレート及び酢酸ビニルを含まないエマルジョン、グリシジル(メタ)アクリレート及びスチレンを含まないエマルジョン、酢酸ビニル及びスチレンを含まないエマルジョン、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル及びスチレンを含まないエマルジョンなども用いることができる。
アクリル系樹脂エマルジョンは、架橋可能なモノマーを含まないモノマー成分からなるエマルジョンを用いることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンのコア部の(1)メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選ばれる成分としては、
メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートを挙げる事が出来、これらのモノマー成分は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンのコア部の炭素数4〜10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどを挙げる事が出来、これらのモノマー成分は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンのコア部の(3)OH基、COOH基及び/又はアミド結合を有する(メタ)アクリレートとしては、
分子中にOH基、COOH基及び/又はアミド結合を有する(メタ)アクリレートを用いることが出来、
(a)COOH基を有する(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸、メタクリル酸などの末端や側鎖などの分子中にCOOH基を1個有するもの、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの末端や側鎖などの分子中にCOOH基を2個有するものなどを挙げる事が出来、
(b)アミド結合を有する(メタ)アクリレートとしては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの分子中にアミド結合を有するものを挙げる事が出来、
(c)分子中にOH基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの側鎖や末端などの、分子中にOH基を1個有するもの、側鎖や末端などにOH基を2個以上有するものなどを挙げることが出来る。これらのモノマー成分は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
本発明において、アクリル系樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は、用いる個々のモノマーの単独ポリマーのガラス転移温度(Tg)を用いて、下記式(1)により算出した値である。
Figure 0004595392
但し、Ca:モノマーAの重量分率、
Cb:モノマーBの重量分率、
Cz:モノマーZの重量分率とし、
Tg:モノマーA〜ZのCa〜Czの組成より得られるポリマーのTg(°K)、
Tga:モノマーAの単独ポリマーのTg(°K)、
Tgb:モノマーBの単独ポリマーのTg(°K)、
Tgz:モノマーZの単独ポリマーのTg(°K)とし、
(Ca+Cb+・・・+Cz)=1とする。
メチルメタクリレートの単独ポリマーのガラス転移温度は、105℃、
2−エチルヘキシルアクリレートの単独ポリマーのガラス転移温度は、−70℃、
n−ブチルアクリレートの単独ポリマーのガラス転移温度は、−52℃とする。
アクリル系樹脂エマルジョンは、(メタ)アクリレート誘導体以外に、
エチレンなどの炭素数2〜10のα−オレフィン類、酢酸ビニル、炭素数9〜11の合成脂肪酸であるバーサチック酸のビニルエステル(ベホバ類)などのビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、ブタジエンなどのジエン類などの(メタ)アクリレート誘導体と共重合可能な成分を、本発明の特性を損なわない範囲で添加して用いることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンは、アクリル系樹脂エマルジョンを除く他の(メタ)アクリレート誘導体、エチレンなどの炭素数2〜10のα−オレフィン類、酢酸ビニル、炭素数9〜11の合成脂肪酸であるバーサチック酸のビニルエステル(ベホバ類)などのビニルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、ブタジエンなどのジエン類などから製造されるエマルジョンを、本発明の特性を損なわない範囲で添加して用いることが出来る。
アクリル系樹脂エマルジョンの重合体は、用いるエマルジョンに含まれる重合体中の70質量%以上、さらに80質量%以上、特に90質量%以上含まれていることが好ましい。
アクリル系樹脂エマルジョンは、公知の製造方法により得られるものを用いることができ、例えば、乳化剤の存在下に、重合開始剤を用いて、水又は含水溶媒中で合成樹脂の原料となる重合性モノマーを乳化重合する方法などにより製造することができる。
アクリル系樹脂エマルジョンは、水又は含水溶媒を含まない粉末状の合成樹脂粒子を含み、粉末状の合成樹脂粒子を用いると、水又は含水溶媒を除いた全成分を一つのパッケージとすることができ、施工現場では水を添加するだけで使用できるので便利である。
乳化剤としては、公知のものを用いることができ、アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性の界面活性剤やポリビニルアルコール等の保護コロイドなどを挙げることができる。
重合開始剤としては、水又は含水溶媒中でラジカル重合などの重合ができるものが好ましく、過酸化水素、過酢酸、過硫酸又はこれらのアンモニウム塩や硫酸塩等の水溶性の過酸化物やその塩などを挙げることができる。また、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチルニトリルなどの有機過酸化物、メタ亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を併用することができる。
重合開始剤の使用量は、エマルジョンが製造できる範囲であれば適宜選択できる。
アクリル系樹脂エマルジョンは、エマルジョン中に含まれる固形分量又は重合体量は、適宜選択することができるが、エマルジョン100質量部中、30〜80質量部が好ましく、40〜60質量部がより好ましい。30質量部未満だと伸びが不足するおそれがあり、80質量部を越えると粘度が大きすぎて作業性が低下したり、塗膜を均一に形成できないおそれが考えられる。
アクリル系樹脂エマルジョンは、公知の乳化剤や保護コロイドを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体などの水溶性高分子、非イオン界面活性剤、カチオンやアニオンなどのイオン性界面活性剤などの乳化剤や保護コロイドを用いることが出来る。
本発明のポリマーセメント組成物は、乾燥時間や流動性を調整するため、又は本発明の特性を損なわない範囲で添加剤を含むことが出来る。
添加剤としては、一般的に用いられる凝結遅延剤、凝結促進剤などの凝結速度調整剤、消泡剤、増粘剤、減水剤又は流動化剤などを挙げることが出来る。
本発明の防水用ポリマーセメント組成物は、硬化膜の強度を向上させる目的で、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維や有機繊維を含むことができる。
本発明のポリマーセメント組成物は、硬化膜の強度や防水性を向上させる目的で、消泡剤を含むことが好ましい。
消泡剤は、シリコン系、アルコール系、ポリエーテル、フッ素系などの合成物質または植物由来の天然物質など、公知のものを用いることが出来る。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、アルミナセメント及びエマルジョンの固形分と、必要に応じて添加されるタルクや珪砂などの固形分との合計量100質量部に対して、2質量部以下、特に0.2質量部以下が好ましい。消泡剤の添加量は、上記より多く添加する場合、消泡効果の向上がみとめられない場合がある。
増粘剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系、ゼラチン、ベクチンなどの蛋白質系、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマー系、ラテックス系などを用いることが出来、特にセルロース系などを用いることが出来る。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して0.01〜2質量部、さらに0.05〜1.5質量部、特に0.1〜1質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、流動性の低下を招く恐れがあり好ましくない。
凝結速度調整剤としては、凝結促進を行う成分である凝結促進剤、凝結遅延を行う成分である凝結遅延剤などを用いることが出来る。
凝結速度調整剤としては、凝結促進剤及び凝結遅延剤を併用して用いることが好ましい。凝結促進剤と凝結遅延剤を併用添加することで、例えば、30分以上の可使時間を可能とする流動保持性と、その後の速やかな硬化により、即日の軽歩行及び翌日の仕上材施工を可能とする速硬性・速乾性が確保できる。さらに、低温から高温の広範囲において上記の超速硬性、流動保持性及び優れた硬化体性状の両立が可能である。
凝結促進剤としては、公知の凝結促進剤を用いることが出来る。凝結促進剤の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸などの、無機リチウム塩や有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることが出来る。特に炭酸リチウムは、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。
凝結促進剤としては、特性を妨げない粒径を用いることが好ましく、粒径は50μm以下にするのが好ましい。
特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、さらに30μm以下、特に10μm以下が好ましく、粒径が上記範囲より大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなるために好ましくなく、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
凝結遅延剤としては、公知の凝結遅延剤を用いることが出来る。凝結遅延剤の一例として、硫酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム及び酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸などのオキシカルボン酸、又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などを用いることが出来る。特に重炭酸ナトリウムや酒石酸ナトリウムは、効果、入手容易性、価格の面から好ましい。なお、添加量が多いと、流動性の低下、硬化不良を招き表面不良が生じることがあるので、注意が必要である。
凝結速度調整剤は、用いるポリマーセメント組成物に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結促進剤及び凝結遅延剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、流動性、可使時間を調整することができる。
凝結速度調整剤は、流動性及び可使時間を調整に用いる場合、リチウム塩及び/又はナトリウム塩の合量が、水硬性成分100質量部に対して0.05〜5質量部、さらに0.1〜2質量部、特に0.3〜0.7質量部の範囲で添加することが好ましい。
減水剤は、ナフタレン系、メラミン系、ポリカルボン酸系などを用いることが出来、併用する増粘剤との最適な組合わせとなるのは、ポリカルボン酸系が好ましい。
減水剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して0.01〜0.2質量部、さらに0.02〜0.2質量部、特に0.05〜0.2質量部が好ましい。
流動化剤とは、流動性を向上させる混和剤で公知の流動化剤を用いることが出来る。流動化剤の一例として、リグニン系、メラミン系、ポリカルボン酸系などを用いることが出来る。このうち流動性の向上効果が大きいポリカルボン酸系が好ましい。
流動化剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性成分100質量部に対して0.01〜1質量部、さらに0.02〜0.5質量部、特に0.05〜0.5質量部が好ましい。
本発明のポリマーセメント組成物は、
(1)コンクリート層に、本発明のポリマーセメント組成物の硬化物層を積層することによりコンクリート構造体を得ることが出来、
さらに(2)コンクリート層にプライマーの硬化物層を設け、さらにポリマーセメント組成物の硬化物層の順に積層することによりコンクリート構造体を得ることが出来る。
コンクリート層は、モルタル又はコンクリートを固化させた層である。
コンクリート構造体の施工の一例を示すと、
(1)コンクリート又はモルタルを屋上、床面又は壁に打設し、コテ、機械等で仕上げた後、コンクリート又はモルタルを硬化させてコンクリート層を形成させ、(2)プライマーの硬化物層表面に、本発明のポリマーセメント組成物をローラー及びスプレーなどを用いる一般的方法で塗布し、その後ポリマーセメント組成物を硬化させた硬化物層を形成させることにより、コンクリート構造体を施工することができる。
コンクリート構造体のプライマーの硬化物層を有する施工の一例を示すと、
(1)コンクリート又はモルタルを屋上、床面又は壁に打設し、コテ、機械等で仕上げた後、コンクリート又はモルタルを硬化させてコンクリート層を形成させ、(2)コンクリート層表面に、プライマー(エマルジョンの希釈液又は希釈水溶液)をローラー、コテ及びスプレーなどを用いる一般的方法で塗布又は吹き付けを行い、その後プライマーを硬化させた硬化物層を形成させ、
(3)プライマーの硬化物層表面に、本発明のポリマーセメント組成物をローラー、コテ及びスプレーなどを用いる一般的方法で塗布し、その後ポリマーセメント組成物を硬化させた硬化物層を形成させることにより、コンクリート構造体を施工することができる。
プライマーの硬化物層は、プライマーとして公知のエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョンなどのエマルジョンを用いることができ、これらのエマルジョンの硬化物からなる層が好ましい。
プライマーの硬化物層は、本発明のポリマーセメント組成物に含まれるアクリル系樹脂エマルジョンと同じ樹脂成分を用いることが、プライマー層と本発明のポリマーセメント組成物との層間の接着強度が優れるために好ましい。
本発明のポリマーセメント組成物は、コンクリート防水用、コンクリート床防水用、コンクリート屋上防水用などの防水用途に用いることが出来、コンクリートの被施工物表面に塗布したコンクリート構造体を得ることが出来る。
本発明のポリマーセメント組成物は、病院、学校、寮構内等の公共施設、コンビニ、マンションなどの一般建築物の床、ベランダや屋上の防水に最適に用いることが出来る。
本発明のポリマーセメント組成物は、攪拌容器にエマルジョンを所定量計量し、攪拌機でエマルジョンを攪拌しながら所定量のアルミナセメント及び充填材、さらに必要に応じて各種の添加剤などを添加し、数分間攪拌・混合して調整することができる。その際水の添加は、材料分離及び塗膜物性低下の面から行わないほうが好ましい。
アルミナセメント、充填材或いは添加剤などは、単独で添加しても良いし、予め他の数種と混合したものを添加しても良く、添加順序は特に選ばない。また、攪拌機は、一般的な固液攪拌機など撹拌機能を有するものを問題なく用いることが出来る。
本発明のポリマーセメント組成物及びプライマーは、ローラー、コテ及びスプレーなどを用いる一般的方法で被施工物表面に塗布して使用される。塗布膜の乾燥後に更に同じ操作を繰り返し、複数層の塗布膜を形成させるのが好ましい。また、屋上などの施工でメッシュを塗膜間に挟んだ構造とする場合には、乾燥後の塗膜の上にメッシュを置き、メッシュの上から塗布してメッシュを固定する工程を加える工法が採用できる。さらに、最外層に別組成物を塗布・乾燥させた保護層を形成させて仕上げることも可能である。
本発明のポリマーセメント組成物は、−10℃下地ひび伸び追従性に優れ、伸びが2mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上である。
本発明のポリマーセメント組成物において、20℃の可使時間は、好ましくは0.25時間以上、さらに好ましくは0.35時間以上、特に好ましくは0.5時間以上が、作業時間確保のために好ましい。
本発明のポリマーセメント組成物は、スラリー粘度が、好ましくは5〜100Pa・s、さらに好ましくは7〜75Pa・s、特に好ましくは8〜50Pa・sが、ダレ防止及び作業性確保のために好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
塗膜物性の評価は以下のように行う。
(1)塗膜の乾燥時間の評価法: コテ仕上げのコンクリート表面に、プライマー(各実施例及び比較例と同じエマルジョンを用い、エマルジョンに水を添加し10倍に希釈した液)を0.4kg/mの量で塗布し1日放置する。翌日、プライマー塗布面に、さらにポリマーセメント組成物を市販の汎用ローラー[大塚刷毛製造(株)社製、ウーローラーB]で0.9kg/mの量で塗布し、試験体Aを得る。試験体Aに塗布した塗膜を、20±3℃、湿度65±5%の条件で硬化させ、塗膜の乾燥を指触により観察し、塗膜表面に指で触れても指に材料が付着せず、また、ローラーで重ね塗りしても1回目の材料が剥がれず支障のない状態となる時間を乾燥時間とする。
(2)タックの評価法1(引張荷重の測定): 5mm厚スレート板(50×150mm)に、予めプライマー(各実施例及び比較例と同じエマルジョンを用い、エマルジョンに水を添加し10倍に希釈した液)を0.4kg/mの量で塗布する。このスレート板のプライマー塗布面に、ポリマーセメント組成物を1.8kg/mの量で塗布し、20±3℃、湿度65±5%の条件で24時間養生し、試験体Bを得る。
タックは、20℃及び40℃、湿度60%の条件で、オートグラフ((株)東洋ボールドウイン製、TENSILON/UTM−I−2500)に直径20mmのステンレス製の円柱を取付け、円柱を1mm/分の速度で固定した試験体Bに2kgfの荷重で30秒間押し当て、その後円柱を上部に引き上げるさいの引張荷重を測定し、その荷重の最大値をタック荷重とする。
(3)タックの評価法2(歩行による評価): コテ仕上げのコンクリート表面に、プライマー(各実施例及び比較例と同じエマルジョンを用い、エマルジョンに水を添加し10倍に希釈した液)を0.4kg/mの量で塗布し1日放置する。翌日、プライマー塗布面に、さらにポリマーセメント組成物を市販の汎用ローラー[大塚刷毛製造(株)社製、ウーローラーB]で0.9kg/mの量で塗布し、試験体Cを得る。試験体Cに塗布した塗膜を、温度35±3℃、湿度65±5%、4時間の条件で硬化させ、硬化した塗面のうえを安全靴((株)シモン社製)で歩行し、靴底に感じる塗面のタック性を評価する。歩行した人は体重約60kgである。
タック(歩行評価)の評価基準を以下に示す。
○:全く感じないか、殆ど感じない、×:タックが強く歩行できない。
(4)下地ひび割れ追従性試験による伸びの評価法: 中央に切り込みを入れた5mm厚スレート板(50×150mm)に、予めプライマー(各実施例及び比較例と同じエマルジョンを用い、エマルジョンに水を添加し10倍に希釈した液)を0.4kg/mの量で塗布する。このスレート板のプライマー塗布面に、ポリマーセメント組成物を1.8kg/mの量で塗布し、20±3℃、湿度65±5%の条件で28日間養生し、試験体Dを得る。
下地ひび割れ追従性試験による伸びの測定は、試験体Dを、測定温度−10℃、湿度60%の条件で、オートグラフ((株)東洋ボールドウイン社製、TENSILON/UTM−I−2500)を用い、引張速度5mm/分の条件で行う。目視観察で塗膜に亀裂などの欠陥が生じる時の伸びを測定し、その伸びを下地ひび割れ追従性とする。
実施例1及び2、比較例1では、以下の材料を使用した。
・アルミナセメント:市販アルミナセメント(JIS・R−2511による第3種)。
・珪砂:市販の珪砂7号。
実施例1
(1)二段重合によるエマルジョンAの製造
予め、容器にイオン交換水420部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(花王社製、エマルゲン935)28部、メチルメタクリレート252部、2−エチルヘキシルアクリレート616部、n−ブチルアクリレート462部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート60部、メタクリル酸14部及びアクリルアミド7部を秤量し、モノマー成分乳化混合液を調整した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水560部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、ネオペレックスG−65)2.3部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が83℃になるまで加温した。
先に調整したモノマー成分乳化混合液を全体の0.7重量%を量り取り、反応容器に添加した。5分後、5%過硫酸ナトリウム14部を添加して、初期重合を行った。
同温で、残りのモノマー成分乳化混合液と5%過硫酸ナトリウム70部を同時に滴下しながら、4.5時間重合反応を行い、コア部を製造した。
直ちに、メチルメタクリレート70部を20分で滴下した。滴下終了後、さらに1時間、83℃を保ったまま、攪拌を持続した。
その後、70℃まで温度を下げ、有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。
その後、室温まで下げ、消泡剤、防腐剤、光安定剤、紫外線吸収剤を添加し、アンモニア水、イオン交換水でpH、不揮発分を調整し、エマルジョンAを得た。
(2)ポリマーセメント組成物の調製
2Lのポリ容器にエマルジョンA、アルミナセメント及び硅砂を、表1に示す配合割合(合計1250g)で加え、0.15KW攪拌機を使用し1300rpmの条件下で3分間混合し、ポリマーセメント組成物を得た。
得られたポリマーセメント組成物は、塗膜の乾燥時間、タック評価及び下地ひび割れ追従性の評価を行い、結果を表1に示す。
表1の配合割合において、エマルジョンAは固形分量である。
実施例2
(1)二段重合によるエマルジョンBの製造
予め、容器にイオン交換水420部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(花王社製、エマルゲン935)28部、メチルメタクリレート287部、2−エチルヘキシルアクリレート616部、n−ブチルアクリレート462部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート60部、メタクリル酸14部及びアクリルアミド7部を秤量し、モノマー成分乳化混合液を調整した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水560部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、ネオペレックスG−65)2.3部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が78℃になるまで加温した。
先に調整したモノマー成分乳化混合液を全体の0.7重量%を量り取り、反応容器に添加した。5分後、5%過硫酸アンモニウム14部を添加して、初期重合を行った。
同温で、残りのモノマー成分乳化混合液と5%過硫酸アンモニウム42部を同時に滴下しながら、4.5時間重合反応を行い、コア部を製造した。
直ちに、メチルメタクリレート35部を20分で滴下した。滴下終了後、さらに1時間、78℃を保ったまま、攪拌を持続した。
その後、70℃まで温度を下げ、有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。
その後、室温まで下げ、消泡剤、防腐剤、光安定剤、紫外線吸収剤を添加し、アンモニア水、イオン交換水でpH、不揮発分を調整し、エマルジョンBを得た。
(2)ポリマーセメント組成物の調製
2Lのポリ容器にエマルジョンB、アルミナセメント及び硅砂を、表1に示す配合割合(合計1250g)で加え、0.15KW攪拌機を使用し1300rpmの条件下で3分間混合し、ポリマーセメント組成物を得た。
得られたポリマーセメント組成物は、塗膜の乾燥時間、タック評価及び下地ひび割れ追従性の評価を行い、結果を表1に示す。
表1の配合割合において、エマルジョンBは固形分量である。
比較例1
(1)二段重合によるエマルジョンCの製造
予め、容器にイオン交換水420部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(花王社製、エマルゲン935)28部、メチルメタクリレート266部、2−エチルヘキシルアクリレート616部、n−ブチルアクリレート448部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート60部、メタクリル酸10.5部及びアクリルアミド7部を秤量し、モノマー成分乳化混合液を調整した。
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置及び窒素ガス導入管を備えた3Lの反応容器に、イオン交換水560部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、ネオペレックスG−65)2.3部を仕込み、窒素ガスで置換し、攪拌しながら内温が78℃になるまで加温した。
先に調整したモノマー成分乳化混合液を全体の0.7重量%を量り取り、反応容器に添加した。5分後、5%過硫酸アンモニウム14部を添加して、初期重合を行った。
同温で、残りのモノマー成分乳化混合液と5%過硫酸アンモニウム42部を同時に滴下しながら、4.5時間重合反応を行い、コア部を製造した。
直ちに、n−ブチルメタクリレート70部を20分で滴下した。滴下終了後、さらに1時間、78℃を保ったまま、攪拌を持続した。
その後、70℃まで温度を下げ、有機過酸化物と還元剤を用いて、未反応モノマーの重合を完結した。
その後、室温まで下げ、消泡剤、防腐剤、光安定剤、紫外線吸収剤を添加し、アンモニア水、イオン交換水でpH、不揮発分を調整し、エマルジョンCを得た。
(2)ポリマーセメント組成物の調製
2Lのポリ容器にエマルジョンC、アルミナセメント及び硅砂を、表1に示す配合割合(合計1250g)で加え、0.15KW攪拌機を使用し1300rpmの条件下で3分間混合し、ポリマーセメント組成物を得た。
得られたポリマーセメント組成物は、塗膜の乾燥時間、タック評価及び下地ひび割れ追従性の評価を行い、結果を表1に示す。
表1の配合割合において、エマルジョンCは固形分量である。
Figure 0004595392
実施例1及び2のポリマーセメント組成物の硬化物は、タック荷重が小さく、−10℃ゼロスパンが2mm程度有し、乾燥時間も2時間程度である。


Claims (7)

  1. アルミナセメントとアクリル系樹脂エマルジョンを含むポリマーセメント組成物であり、
    アクリル系樹脂エマルジョンは、ガラス転移温度が−45℃〜−31℃以下のコア部とガラス転移温度が20℃を超えるシェル部を有する多層構造のエマルジョンであり、
    前記エマルジョンのシェル部は、メチル(メタ)アクリレートを50〜100質量%を含むモノマー成分より得られ、
    前記エマルジョンは、エマルジョンの重合に用いる全モノマー成分量(コア部のモノマー成分量A+シェル部のモノマー成分量B=100質量%)に対し、コア部のモノマー成分量Aの割合が85〜98質量%及びシェル部のモノマー成分量Bの割合が15〜2質量%であり、
    前記エマルジョンの固形分100質量部に対し、アルミナセメントを3〜175質量部含む
    ことを特徴とするポリマーセメント組成物。
  2. 前記エマルジョンは、エマルジョン100質量部に対し、エマルジョン中に含まれる固形分量又は重合体量が30〜80質量部を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のポリマーセメント組成物。
  3. 前記エマルジョンは、希釈液又は希釈水溶液とすることでコンクリート層表面に塗布又は吹き付けを行い硬化させて硬化物層を形成させるプライマーとして使用可能である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリマーセメント組成物。
  4. 乾燥時間や流動性を調整するための凝結速度調整剤として凝結遅延剤及び凝結促進剤を併用して添加し、リチウム塩及び/又はナトリウム塩の合量が、水硬性成分100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲で添加される
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーセメント組成物。
  5. 本発明のポリマーセメント組成物は、スラリー粘度が5〜100Pa・sである
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマーセメント組成物。
  6. ポリマーセメント組成物は、さらに充填材を含み、アクリル系樹脂エマルジョンの固形分100質量部に対し、アルミナセメントと充填材の合計量20〜350質量部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリマーセメント組成物。
  7. ポリマーセメント組成物が、コンクリート防水用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマーセメント組成物。
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