JP6163382B2 - モルタル用ラテックス、モルタル組成物、及びモルタル硬化物 - Google Patents

モルタル用ラテックス、モルタル組成物、及びモルタル硬化物 Download PDF

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Description

本発明はモルタル用ラテックス、該モルタル用ラテックスを含むモルタル組成物、及び前記モルタル用ラテックスから得られるモルタル硬化物に関する。
土木及び建築の分野において、セメント、珪砂等の充填材を含有するモルタル組成物は、建築物の防水処理、内壁や外壁等の表面の化粧、補修、仕上げ材等に使用されている。
この従来から知られているモルタル組成物は、硬化後にクラックが入りやすいという問題点を抱えていた。この原因は、例えばモルタル自身の収縮によるもの、温度変化及び凍結融解等の外的変化によるもの、下地コンクリートのクラック発生によるもの等が挙げられる。さらに、生じたクラックから、水が入り漏水の原因となったり、またコンクリートの中性化を促進し鉄筋の発錆が生じやすくなったり、さらにコンクリートのクラック発生を助長させるなど、クラック発生は多くの問題の原因となっていた。
硬化後にクラックが入りやすいという問題点を解決するために、モルタル組成物にポリマーを配合する樹脂モルタル組成物が知られている。この樹脂モルタル組成物は、セメントと、骨材を含む充填材との組み合わせに、各種のラテックス、エマルジョン等のポリマーをさらに添加したものである。このようにラテックスを添加することにより、下地躯体との接着強さ、防水性能、ドライアウト防止、下地コンクリートの養護などの性能向上に効果的である。しかし、樹脂モルタル組成物自身の収縮、又は下地コンクリートのクラック発生に対する追従性は充分ではないとともに、樹脂モルタル組成物の厚みが増すとさらにクラック発生が起こり易いという問題があった。
これに対して、特許文献1及び特許文献2では、特定の単量体組成を非イオン性乳化剤の存在下で重合して得られるエマルジョンをモルタル組成物に添加する技術が開示されている。また、特許文献3及び特許文献4では、アルミナセメントとアクリル系樹脂エマルジョンを含むポリマーセメント組成物の技術が開示されている。
また、特許文献5には、特定の単量体組成のコアシェル構造を有する樹脂モルタル用ラテックスが開示されている。
特開昭63−55143号公報 特開平1−5935号公報 特開2003−252667公報 特開2005−343765号公報 特開2005−350288号公報
しかしながら、特許文献1〜4では、セメント配合中のラテックスの粘度安定性に問題があるため、コテ塗り、ローラー塗りなどの作業性が不良であるという問題がある。そのため、セメントに配合しても粘度変化の少ないモルタル用ラテックスの開発が望まれている。
また、特許文献5では、親水性のヒドロキシル基を必須成分とするため長期に水に浸漬される用途では膨れの発生等の問題がある。そのため、長期に水やアルカリ水に浸漬されても膨れのないモルタル用ラテックスの開発が望まれている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、密着性及び追従性に優れ、かつ浸水しても膨れが発生しにくい硬化物が得られ、その上粘度安定性に優れるモルタル組成物が得られるモルタル用ラテックス、該モルタル用ラテックスを含むモルタル組成物、及び前記モルタル用ラテックスから得られるモルタル硬化物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有するラテックス、また特定単量体組成であるラテックスと、セメント、充填材との組み合わせが前記課題を解決するために有効であることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
アミド基含有ビニル系単量体(A)と、
カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)と、
ニトリル基含有ビニル系単量体(C)と、
芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びヒドロキシル基含有ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(D)と、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含み、
前記共重合体粒子は、コア部とシェル部とを有する多層構造を有し、
前記コア部にのみ前記アミド基含有ビニル系単量体(A)と前記カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)とを含む、
モルタル用ラテックス。
〔2〕
前記共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対して、前記アミド基含有ビニル系単量体(A)が0.05〜0.9質量%であり、前記カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)が0.1〜10.0質量%であり、前記ニトリル基含有ビニル系単量体(C)が1〜10質量%である、前項〔1〕に記載のモルタル用ラテックス。
〔3〕
前記コア部を構成する単量体質量/前記シェル部を構成する単量体質量の単量体質量比率が、50/50〜90/10である、前項〔1〕又は〔2〕記載のモルタル用ラテックス。
〔4〕
前項〔1〕〜〔3〕いずれか一項に記載のモルタル用ラテックス(1)を含有する、モルタル組成物。
〔5〕
セメント(2)と、充填剤(3)と、を含み、
前記セメント(2)100質量部に対して、前記充填材(3)が5〜600質量部であり、前記モルタル用ラテックス(1)が固形分で5〜150質量部である、前項〔4〕に記載のモルタル組成物。
〔6〕
前項〔1〕〜〔3〕いずれか一項に記載のモルタル用ラテックス(1)から得られる、モルタル硬化物。
〔7〕
前項〔4〕または〔5〕記載に記載のモルタル組成物から得られる、モルタル硬化物。
本発明によれば、密着性及び追従性に優れ、かつ浸水しても膨れの発生しにくい硬化物が得られ、その上粘度安定性に優れるモルタル組成物が得られるモルタル用ラテックス、該モルタル用ラテックスを含むモルタル組成物、及び前記モルタル用ラテックスから得られるモルタル硬化物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
〔モルタル用ラテックス〕
本実施形態に係るモルタル用ラテックスは、
アミド基含有ビニル系単量体(A)と、
カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)と、
ニトリル基含有ビニル系単量体(C)と、
芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びヒドロキシル基含有ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(D)(以下、単に「単量体(D)」ともいう。)と、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含み、
前記共重合体粒子は、コア部とシェル部と、を有する多層構造を有し、
前記コア部にのみ前記アミド基含有ビニル系単量体(A)と、前記カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)と、を含む。
本実施形態に係るモルタル用ラテックスは、セメント、充填材を含有しうるモルタル組成物に対して配合安定性が良好であるため、粘度安定性が高く、作業性に優れるモルタル組成物を得ることができる。また、モルタル用ラテックスから得られる硬化物は、密着性、下地コンクリート等への追従性、即ち硬化物の伸び及び弾性が良好であり、さらには、長期の浸水でも膨れが発生しにくいものとなる。
〔共重合体粒子〕
本実施形態に用いる共重合体粒子は、コア部とシェル部を有する多層構造を有する。本実施形態において「多層構造」とは、粒子の最外殻部の共重合体をシェル部とし、シェル部の内側にある共重合体をコア部とし、コア部とシェル部での単量体組成が異なるものである。なお、コア部は、単量体組成が異なる層を含む多層構造であってもよい。
また、本実施形態に用いる共重合体粒子は、コア部にのみアミド基含有ビニル系単量体(A)とカルボキシル基含有ビニル系単量体(B)とを含む。これにより、長期の浸水でも膨れがより発生しにくいモルタル硬化物が得られる。
本実施形態に用いる共重合体粒子は、アミド基含有ビニル系単量体(A)と、カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)と、ニトリル基含有ビニル系単量体(C)と、芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びヒドロキシル基含有ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体(D)と、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる。
〔アミド基含有ビニル系単量体(A)〕
アミド基含有ビニル系単量体(A)を用いることにより、モルタル組成物に対する配合安定性により優れ、粘度安定性が高く、作業性に優れる。アミド基含有ビニル系単量体(A)としては、特に限定されないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドなどが挙げられる。共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対するアミド基含有ビニル系単量体(A)の含有量は、0.05〜0.9質量%が好ましく、0.1〜0.6質量%がより好ましく、0.3〜0.6質量%がさらに好ましい。アミド基含有ビニル系単量体(A)が0.05質量%以上であることにより、得られるモルタル組成物に対する配合安定性がより優れ、粘度安定性が高く、作業性に優れる傾向にある。また、含有量が0.9質量%以下であることにより、得られるモルタル硬化物は、長期の浸水でも膨れがより発生しにくい傾向にある。
〔カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)〕
カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)を用いることにより、得られるモルタル硬化物の密着性により優れる。カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はそのモノエステル、フマル酸又はそのモノエステル、イタコン酸又はそのモノエステルなどが挙げられる。このなかでも、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸である。共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対するカルボキシル基含有ビニル系単量体(B)の含有量は、0.1〜10.0質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましく、0.3〜2.0質量%がさらに好ましい。カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)が、0.1質量%以上であることにより、得られるモルタル硬化物の密着性がより優れる傾向にある。また、含有量が10質量%以下であることにより、得られるモルタル硬化物が長期の浸水でも膨れがより発生しにくい傾向にある。
〔ニトリル基含有ビニル系単量体(C)〕
ニトリル基含有ビニル系単量体(C)を用いることにより、得られるモルタル硬化物の密着性、下地コンクリートへの追従性がより優れる。ニトリル基含有ビニル系単量体(C)としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。このなかでも、好ましくはアクリロニトリルである。共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対するニトリル基含有ビニル系単量体(C)の含有量は、0.5〜20.0質量%が好ましく、1.0〜10.0質量%がより好ましく、2.0〜7.0質量%がさらに好ましい。共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対するニトリル基含有ビニル系単量体(C)が、0.5質量%以上であることにより、得られるモルタル硬化物の密着性、下地コンクリートへの追従性がより優れる傾向にある。また、含有量が20質量%以下であることにより、共重合体の乳化重合がより効率よく進行する傾向にある。
〔単量体(D)〕
芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体(D)を用いることができる。共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対する単量体(D)の含有量は、69.1〜99.35質量%が好ましい。
芳香族ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、等が挙げられる。このなかでも、好ましくはスチレンである。
メタクリル酸アルキルエステル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。このなかでも、好ましくはメタクリル酸メチルである。
アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等が挙げられる。このなかでも、好ましくはアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルである。
ヒドロキシル基含有ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ポリエチレングリコール、及びメタクリル酸ポリエチレングリコール;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミドなどのメチロール基含有単量体等が挙げられる。このなかでも、好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
単量体混合物には、上記の単量体に加えて、本実施形態に係るモルタル用ラテックスに要求される様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体成分を使用することもできる。このような単量体としては、;N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアルコキシメチル基含有単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有単量体;ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどの多官能性単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−2−メトキシエトキシビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのシリル基含有単量体;マレイン酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどのα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のジエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステルが挙げられる。
共重合体粒子の多層構造のコア部を構成する単量体質量/シェル部を構成する単量体質量の単量体質量比率(コア部/シェル部)は、50/50〜90/10が好ましく、60/40〜70/30がより好ましく、65/35〜75/25がさらに好ましい。単量体質量比率が50/50以上であることにより、得られるモルタル硬化物のひび割れが防止され、かつ下地コンクリートとの追従性により優れる傾向にある。また、単量体質量比率が90/10以下であることにより、得られるモルタル硬化物表面のベタツキがより抑制される傾向にある。
コア部を構成する共重合体のガラス転移温度は、−30℃以下が好ましく、−35℃以下がより好ましく、−40℃以下がさらに好ましい。また、コア部を構成する共重合体のガラス転移温度の下限は、特に限定されないが、−70℃以上が好ましい。コア部の共重合体のガラス転移温度が−30℃以下であることにより、得られるモルタル組成物のひび割れが防止され、かつ下地コンクリートとの追従性がより優れる傾向にある。
シェル部を構成する共重合体のガラス転移温度は、−30℃〜20℃が好ましく、−10〜20℃がより好ましく、0〜15℃がさらに好ましい。シェル部の共重合体のガラス転移温度が−30〜20℃であることにより、得られるモルタル用ラテックスの配合安定性が良好であり、モルタル組成物の粘度安定性がより優れ、かつ得られるモルタル硬化物の下地コンクリート等との追従性もより優れる傾向にある。
なお、ここで「共重合体のガラス転移温度」とは、単量体のホモ重合体のガラス転移温度と単量体の共重合比率より次式によって推定することが可能である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
Tg:単量体1、2・・・よりなる共重合体のガラス転移温度(゜K)
W1、W2・・:単量体1、単量体2、・・の質量分率
ここでW1+W2+・・=1
Tg1、Tg2・・:単量体1、単量体2、・・のホモ重合体のガラス転移温度(゜K)
計算に使用する単量体のホモ重合体のTg(゜K)としては、特に限定されないが、例えば、ポリマーハンドブック(John Willey & Sons)に記載されている値を採用することができる。このようなホモ重合体のTgとしては、例えば、ポリスチレン(373゜K)、ポリメタクリル酸メチル(378゜K)、ポリアクリル酸ブチル(219゜K)、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル(205゜K)、ポリアクリル酸(379゜K)、ポリメタクリル酸(403゜K)、ポリアクリロニトリル(373゜K)、ポリアクリルアミド(426゜K)、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(328゜K)が挙げられる。
〔共重合体粒子の製造方法〕
本実施形態の共重合体粒子は、乳化重合法によって得ることができる。乳化重合法としては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、水性媒体中で上記の単量体を含む単量体混合物、連鎖移動剤、界面活性剤、ラジカル重合開始剤及び、必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系で、単量体を重合することにより得ることができる。重合に際しては、コア部及びシェル部を形成させるために供給する単量体組成物の組成を重合過程で逐次変化させる方法が利用できる。例えば、コア部を重合した後、コア部存在下にシェル部を重合する方法、またシェル部を重合した後、コア部を重合してもよい。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類やα−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
「界面活性剤」とは、一分子中に少なくとも一つ以上の親水基と一つ以上の親油基を有する化合物をいう。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらのほかに親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性2重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の使用方法は特に限定されず、例えば乳化重合時に全量使用しても、また乳化重合後にさらに必要量を添加してもよい。
界面活性剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して1〜10質量部であることが好ましい。このなかでも、ノニオン性界面活性剤を1〜10質量部使用することがより好ましい。ノニオン性界面活性剤の使用量が1質量部以上であることにより、セメントに対するモルタル用ラテックスの配合安定性がより優れる傾向にある。また、ノニオン性界面活性剤の使用量が10質量部以下であることにより、モルタル硬化物は浸水しても膨れの発生しにくく、浸水後の強度にもがより優れる傾向にある。
重合開始剤としては、特に限定されず、熱又は還元性物質によりラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものを使用でき、無機系開始剤及び有機系開始剤のいずれも使用できる。このような重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、水溶性、油溶性の重合開始剤が使用できる。水溶性の重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、水溶性のアゾビス化合物、過酸化物−還元剤のレドックス系重合開始剤などが挙げられる。ペルオキソ二硫酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NPS)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)などが挙げられる。また、過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシド、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。さらに、水溶性アゾビス化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩化水素、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などが挙げられる。また、過酸化物−還元剤のレドックス系重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、先の過酸化物にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、及びその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせ他ものが挙げられる。また、油溶性の重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化物、油溶性のアゾビス化合物等が挙げられ、過酸化物としては、例えば過酸化ジブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロ過酸化物等が挙げられ、油溶性のアゾビス化合物としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられるなどが挙げられる。
また、共重合体粒子の製造方法として、レドックス重合法を採用することもできる。レドックス重合法としては、特に限定されないが、例えば、前記重合開始剤とする方法が挙げられる。
乳化重合における重合温度は、通常60〜100℃の範囲で選ばれる。また、前記レドックス重合法等により、より低い温度例えば5〜60℃で重合を行ってもよい。また、例えば2段階重合においては、第1段での重合温度と第2段での重合温度は同じでも異なっていてもよい。
本実施形態の共重合体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、50〜400nmが好ましく、80〜300nmがより好ましく、120〜260nmがさらに好ましい。平均粒子径のコントロール方法としては、特に限定されないが、例えば、コア部(シードラテックス)の粒子径と使用割合、界面活性剤の使用割合などによって調整することができ、一般にそれらの使用割合を高くするほど生成するラテックスの平均粒子径は小さくなる。また、使用割合を低くするほど平均粒子径が大きくなる傾向にある。なお、シードラテックスの重合は、本実施形態のラテックスの重合に先だって同一反応容器で行っても、異なる反応容器で重合したシードラテックスを用いてもよい。なお、共重合体粒子の平均粒子径は光散乱法により測定することができる。
本実施形態に係るモルタル用ラテックスは、性能を向上させるために、以下の添加剤を含んでもよい。使用しうる添加剤としては、特に限定されないが、例えば、水溶性樹脂、溶剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、カップリング剤、着色剤、耐水化剤、潤滑剤、pH調整剤、防腐剤、無機顔料、有機顔料、界面活性剤、架橋剤、例えばエポキシ系化合物、多価金属化合物、イソシアネート系化合物などが挙げられる。
〔モルタル組成物〕
本実施形態に係るモルタル組成物は、上記モルタル用ラテックス(1)を含有する。このようなモルタル組成物は、粘度安定性に優れるものとなる。
本実施形態に係るモルタル組成物は、モルタル用ラテックス(1)に加え、セメント(2)と、充填剤(3)と、をさらに含むことが好ましい。
本実施形態に用いられるセメント(2)としては、特に限定されないが、例えばJIS R5210(ポルトランドセメント)、R5211(高炉セメント)、R5212(シリカセメント)、R5213(フライアッシュセメント)に規定されている、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント;社団法人セメント協会が、セメントの常識(1994年3月発行)に記載している、特殊セメント、白色ポルトランドセメント、セメント系固化材、アルミナセメント、超速硬セメント、コロイドセメント、湯井セメント、地熱井セメント、膨張セメント、その他特殊セメント等種々のセメントが挙げられる。
本実施形態に用いられる充填材(3)としては、特に限定されないが、一般的にセメントモルタルに用いられる砂、珪砂、寒水砂、天然及び人工軽量骨材等;無機又は有機の顔料等が挙げられる。このような無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛などの各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩又は珪酸化合物などが挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイトなどが挙げられる。また、有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの固体高分子微粉末などが挙げられる。
モルタル用ラテックス(1)の含有量は、セメント(2)100質量部に対して、固形分で、5〜150質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましく、20〜80質量部がさらに好ましい。モルタル用ラテックス(1)の含有量が、5質量部以上であることにより、ひび割れ、下地コンクリートへの追従性により優れる傾向にある。また、モルタル用ラテックス(1)の含有量が150質量部以下であることにより、接着性、配合安定性により優れる傾向にある。
充填材(3)の含有量は、セメント(2)100質量部に対して、5〜600質量部が好ましく、50〜500質量部がより好ましく、80〜400質量部がさらに好ましい。充填材(3)の含有量が5質量部以上であることにより、強度の増加と、乾燥に伴うひび割れにより優れる傾向にある。一方、含有量が600質量部以下であることにより、強度により優れる傾向にある。
〔モルタル組成物の製造方法〕
本実施形態のモルタル組成物の製造方法は特に限定されず、モルタル用ラテックス(1)、セメント(2)、充填材(3)を一緒に混合してもよく、順次混合してもよい。
本実施形態のモルタル組成物の施工方法は特に限定されず、コテ塗り、ウールローラー塗り、マスチックローラー塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布、流延、注入等いずれの方法も用いることができる。
本実施形態に係るモルタル組成物は、上記の成分に限定されるものではなく、他のいかなる成分を添加するようにしてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、例えば、減水剤及び流動化剤(ポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸系、ナフタリンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系など)、収縮低減剤(グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(塩化カルシウム、珪酸塩等)、防水剤(ステアリン酸、シリコーン系等)、防錆剤(リン酸塩、亜硝酸塩等)、粘度調整剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、凝結調整剤(リン酸塩等)、膨張剤(エトリンガイト系、石灰系等)、着色剤(酸化鉄、酸化クロム等)、消泡剤(シリコン系、鉱油系等)、補強材(鋼繊維、ガラス繊維、合成繊維等)、界面活性剤(アニオン、ノニオン、カチオン系等)、さらには増粘剤、レベリング剤、成膜助剤、溶剤、可塑剤、分散剤、耐水化剤、潤滑剤等が挙げられる。
また、本実施形態に係るモルタル組成物は、ラテックス(1)以外のラテックス、エマルジョンを含んでもよい。このようなラテックス及びエマルジョンとしては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックスなどが挙げられる。さらに、モルタル組成物は、再乳化型の粉末樹脂を含んでもよい。
〔モルタル硬化物〕
本実施形態に係るモルタル硬化物は、上記モルタル用ラテックス(1)およびモルタル組成物から得られる。このモルタル硬化物は、密着性及び追従性に優れ、かつ浸水しても膨れの発生しにくいものとなる。モルタル硬化物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態のモルタル組成物を配合し、養生することで、セメントと水を反応させモルタル硬化物を得る方法などが挙げられる。養生の条件としては気中、風乾、水中、密封、低湿、多湿、低温、常温、高温、低圧、常圧、高圧等のいずれでもよい。
〔用途〕
本実施形態のモルタル用ラテックスの用途は、特に限定されないが、弾性を有する弾性モルタル用ラテックスとして用いられることが好ましく、特に弾性が求められる用途が好ましい。例えば、建築物の防水材、補修材、養護材、仕上げ材、下地調整材、タイル接着用、防錆、グラウト用、パテ用、セルフレベリング床用、耐磨耗性床用、基礎コンクリート部の被覆材、デッキカバリング用、モルタル用、塗料用、防食用、成型品用などの用途が好ましい。
本発明を実施例及び比較例に基づいて説明する。本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の部数は、すべて有り姿での部数(即ち、ラテックスは水を含有したそのものの部数である)を示した。また、「部」は特に断らない限り「質量部」を示すものである。各特性は次ぎのようにして求めた。
a.粘度安定性
表2、表3に示す組成で各成分を計量し、5分間攪拌して実施例6〜12及び比較例5〜8のモルタル組成物を作製した。その後、作製直後のモルタル組成物の粘度をB型粘度計を用いて測定を行った。次いで、得られたモルタル組成物を20℃で4時間放置し、その粘度をB型粘度計を用いて測定した。作製直後に対する4時間後の粘度の粘度比を計算した。
b.硬化物の塗膜伸び試験
表2、表3に示す組成で各成分を計量し、5分間攪拌して実施例6〜12及び比較例5〜8のモルタル組成物を作製し、JIS A6909(建築用仕上塗材)、7.31の20℃時の伸び試験により硬化物の塗膜伸びを測定した。
c.硬化物の付着強さ
表2、表3に示す組成で各成分を計量し、5分間攪拌して実施例6〜12及び比較例5〜8のモルタル組成物を作製し、JIS A6909(建築用仕上塗材)、7.10付着強さ試験により硬化物の付着強さを測定した。
d.硬化物の浸水膨れ試験
表2、表3に示す組成で各成分を計量し、5分間攪拌して実施例6〜12及び比較例5〜8のモルタル組成物を作製し、JIS R5201(セメントの物理試験方法)、10.4によって調整されたモルタル硬化物に1.5kg/m2塗布して20℃65%RHで14日養生後に、20℃水中に浸漬して10日後および30日後に塗布面を観察した。3個のモルタル硬化物を試験をし、下記評価基準に基づいて耐浸水膨れ性について評価し、3個のモルタル硬化物の平均値を用いた。
◎:膨れの発生なし
○:膨れの発生数2個以内
△:膨れの発生数5個以内
×:膨れの発生数6個以上
[実施例1〜4、比較例2〜3]
表1に示す単量体組成物を用いモルタル用ラテックスを得た。具体的方法は、以下の通りである。表1に示すコア組成の全単量体800部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を20部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を200部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を32部、水を600部、混合し、ホモミキサーを用いてコア部プレ乳化物を作製した。また、表1に示すシェル組成の全単量体200部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を5部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を50部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を8部、水を150部、混合し、ホモミキサーを用いてシェル部プレ乳化物も作製した。
次いで、攪拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた反応容器に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を2.5部、水250部を仕込み、内温80℃に昇温し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液4部を添加した。これに、コア部プレ乳化物を3時間かけて一定流速で添加した。その後、0.5時間そのまま保ち、次にシェル部プレ乳化物を1時間かけて一定流速で添加した。添加後1時間そのまま保ち、その後冷却を行って、モルタル用ラテックスを得た。
冷却後、10%水酸化カリウム水溶液を用いてモルタル用ラテックスのpHを8に調整し、その後100メッシュの金網を通した。次いでラテックスの固形分を40%なるよう、水で調整した。粒子径は全て200〜230nmに範囲あった。
[実施例5]
表1に示すコア組成の全単量体600部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を15部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を150部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を24部、水を450部、混合し、ホモミキサーを用いてコア部プレ乳化物を作製した。また、表1に示すシェル組成の全単量体400部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を10部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を100部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を16部、水を300部、混合し、ホモミキサーを用いてシェル部プレ乳化物も作製した。
次いで、攪拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた反応容器に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を2.5部、水250部を仕込み、内温80℃に昇温し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液4部を添加した。これに、コア部プレ乳化物を2時間かけて一定流速で添加した。その後、0.5時間そのまま保ち、次にシェル部プレ乳化物を2時間かけて一定流速で添加した。添加後1時間そのまま保ち、その後冷却を行って、モルタル用ラテックスを得た。
冷却後、10%水酸化カリウム水溶液を用いてモルタル用ラテックスのpHを8に調整し、その後100メッシュの金網を通した。次いでラテックスの固形分を40%なるよう、水で調整した。粒子径は212nmであった。
[比較例1]
表1に示すコア組成の全単量体500部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を12.5部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を125部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を20部、水を375部、混合し、ホモミキサーを用いてコア部プレ乳化物を作製した。また、表1に示すシェル組成の全単量体500部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を12.5部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を125部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を20部、水を375部、混合し、ホモミキサーを用いてシェル部プレ乳化物も作製した。
次いで、攪拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた反応容器に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を2.5部、水250部を仕込み、内温80℃に昇温し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液4部を添加した。これに、コア部プレ乳化物を2時間かけて一定流速で添加した。その後、0.5時間そのまま保ち、次にシェル部プレ乳化物を2時間かけて一定流速で添加した。添加後1時間そのまま保ち、その後冷却を行って、モルタル用ラテックスを得た。
冷却後、10%水酸化カリウム水溶液を用いてモルタル用ラテックスのpHを8に調整し、その後100メッシュの金網を通した。次いでラテックスの固形分を40%なるよう、水で調整した。粒子径は205nmであった。
[比較例4]
表1に示すコア組成の全単量体200部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を5部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を50部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を8部、水を150部、混合し、ホモミキサーを用いてコア部プレ乳化物を作製した。また、表1に示すシェル組成の全単量体800部に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を20部、エマルゲン150(花王株式会社製)の20%水溶液を200部、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液を32部、水を600部、混合し、ホモミキサーを用いてシェル部プレ乳化物をも作製した。
次いで、攪拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた反応容器に、エマールD−3−D(花王株式会社製)の20%水溶液を2.5部、水250部を仕込み、内温80℃に昇温し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの10%水溶液4部を添加した。これに、コア部プレ乳化物を1時間かけて一定流速で添加した。その後、0.5時間そのまま保ち、次にシェル部プレ乳化物を3時間かけて一定流速で添加した。添加後1時間そのまま保ち、その後冷却を行って、モルタル用ラテックスを得た。
冷却後、10%水酸化カリウム水溶液を用いてモルタル用ラテックスのpHを8に調整し、その後100メッシュの金網を通した。次いでラテックスの固形分を40%なるよう、水で調整した。粒子径は221nmであった。
[実施例6〜12]
表2に記載の組成で実施例6〜12のモルタル組成物を調整し、a.粘度安定性、b.硬化物の塗膜伸び、c.硬化物の付着強さ、d.硬化物の膨れの評価を行った。評価結果を表2に示す。使用した原材料は、以下の通りである。
セメント :普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
充填材 :珪砂6号(一般市販品)
メチルセルロース:hiメトローズ90SH4000(信越化学工業株式会製)
[比較例5〜8]
表3に記載の組成で比較例5〜8のモルタル組成物を調整し、a.粘度安定性、b.硬化物の塗膜伸び、c.硬化物の付着強さ、d.硬化物の膨れの評価を実施例と同様に行った。評価結果を表3に示す。表3から分かる様に、比較例5〜8では浸水膨れ性が不良であった。また、実施例では密着、追従、粘度安定性を維持しつつ、その上浸水膨れを改善できることがわかった。
Figure 0006163382
MMA :メタクリル酸メチル
2−EHA :アクリル酸2‐エチルヘキシル
AN :アクリロニトリル
MAA :メタクリル酸
AAm :アクリルアミド
2−HEMA:メタクリル酸2‐ヒドロキシエチル
Tg :ガラス転移温度
Figure 0006163382
1)hiメトローズ90SH4000(信越化学工業株式会社製)
Figure 0006163382
1)hiメトローズ90SH4000(信越化学工業株式会社製)
なお、モルタル用ラテックスの弾性の検証は、得られる塗膜が伸びを示すことで検証できた。
本発明に係るモルタル用ラテックス、及びその組成物は、土木及び建築分野において、建築物の防水材、補修材、養護材、仕上げ材等として産業上の利用可能性を有する。

Claims (7)

  1. アミド基含有ビニル系単量体(A)と、
    カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)と、
    ニトリル基含有ビニル系単量体(C)と、
    芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸アルキルエステル系単量体、アクリル酸アルキルエステル系単量体、及びヒドロキシル基含有ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(D)と、を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体粒子を含み、
    前記共重合体粒子は、コア部とシェル部とを有する多層構造を有し、
    前記コア部にのみ前記アミド基含有ビニル系単量体(A)と前記カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)とを含む、
    モルタル用ラテックス。
  2. 前記共重合体粒子を構成する全単量体100質量%に対して、前記アミド基含有ビニル系単量体(A)が0.05〜0.9質量%であり、前記カルボキシル基含有ビニル系単量体(B)が0.1〜10.0質量%であり、前記ニトリル基含有ビニル系単量体(C)が1〜10質量%である、請求項1に記載のモルタル用ラテックス。
  3. 前記コア部を構成する単量体質量/前記シェル部を構成する単量体質量の単量体質量比率が、50/50〜90/10である、請求項1又は2記載のモルタル用ラテックス。
  4. 請求項1〜3いずれか一項に記載のモルタル用ラテックス(1)を含有する、モルタル組成物。
  5. セメント(2)と、充填剤(3)と、を含み、
    前記セメント(2)100質量部に対して、前記充填材(3)が5〜600質量部であり、前記モルタル用ラテックス(1)が固形分で5〜150質量部である、請求項4に記載のモルタル組成物。
  6. 請求項1〜3いずれか一項に記載のモルタル用ラテックス(1)から得られる、モルタル硬化物。
  7. 請求項4または5記載に記載のモルタル組成物から得られる、モルタル硬化物。
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