JP3886286B2 - ビニルアルコール系重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なビニルアルコール系重合体に関し、該ビニルアルコール系重合体は極性の異なる各種材料に対する親和性が良好で、分散性、接着性、水に対する溶解性、表面コーティング性等に優れる。
【0002】
【従来の技術】
分子内にビニルアルコール単位を有するビニルアルコール系重合体としてはポリビニルアルコール(以下「PVA」と略記する)が知られており、各種用途に使用されているが、求められる性能が多様化し、かつ高度なものになってきている為、特徴のある各種の変性PVAが要望されている。これらの要望に答えるべく各種の検討がなされており、特公平5−49683号公報ではアルキレンオキサイド基を有する不飽和単量体の少なくとも1種と酢酸ビニルの共重合体を鹸化することを特徴とする変性PVAの製造方法が開示されている。
【0003】
また、特開平4−114004号公報には不飽和単量体としてポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリルオキシフェニルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸エステルと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化する事を特徴とする変性PVAの製造方法が開示されている。これらのアルキレンオキサイド基を含有する不飽和単量体の末端基構造はXで示され、その内容を見ると、Xは水素、SO3M、PO3Mであり、Mはアルカリ金属原子、NH4、アルカノールアミン残基であることが公知である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、側鎖にポリアルキレンオキサイド構造を有する新規なビニルアルコール系重合体を提供するものであり、該ビニルアルコール系重合体は極性の異なる各種材料に対する親和性が良好で、分散性、接着性、コーティング性等に優れるものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、ポリアルキレンオキサイド基の末端構造をテトラヒドロフルフリロキシ基としたテトラヒドロフルフリロキシポリアルキレンオキサイド基(以下「THFPAO基」と略記する)を側鎖に有する新規なビニルアルコール系重合体である。このビニルアルコール系重合体はテトラヒドロフルフリロキシポリアルキレンオキサイドアルケニルエーテル(以下「THF−POAE」と略記する)と酢酸ビニルを共重合し鹸化する事により得ることができる。更に本発明のビニルアルコール系重合体にあってはカルボキシル系基を含有させることができ、これにより極性の異なる多様な素材に対する親和性が一段と向上させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明のビニルアルコール系重合体は分子内にビニルアルコール単位と側鎖にTHFPAO基を有するものであり、更に、カルボキシル系基を有するものも含まれる。ここでカルボキシル系基とは、カルボン酸基(−COOH基)、カルボン酸塩基(−COOX基)、酸無水物基(−COOOC−基)を意味する。
【0007】
本発明のビニルアルコール系重合体を分散剤関係、接着剤関係、被覆材関係、乳化剤関係、増粘剤関係、凝集剤関係、成形物関係、土壌改良剤関係、感光剤関係の各分野において用いる場合、その粘度平均重合度(以下「重合度」と略記する)が100〜10000のものを好適に使用することができ、より好ましくは200〜6000、更に好ましくは300〜4500の範囲にあるものである。重合度が100未満の場合はビニルアルコール系重合体としての特徴が出ず、重合度が10000を超える場合は粘度が高すぎて工業的な生産がし難くなる。
【0008】
ビニルアルコール系重合体の鹸化度に特に制限はなく、完全鹸化でも部分鹸化でもよい。水溶性を必要とする場合は鹸化度を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上とするとよい。鹸化度が50モル%未満ではTHFPAO基、カルボキシル系基の量を増やしても水溶性が乏しくなる。
【0009】
THFPAO基の含有量に特に制限はないが、各用途分野においてビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計量に対し0.1〜20モル%のものを使用することができる。より好ましくは0.1〜10モル%、更に好ましくは0.1〜7モル%である。0.1モル%未満ではビニルアルコールの変性効果に乏しく、20モル%を超えるとPVAの良好な強度等の特性が失われる。THFPAO基中のアルキレンオキサイド基の数は1〜200であり、より好ましくは3〜100である。nの数が0では側鎖が短く末端基の効果が発揮されにくく、200超えると側鎖が長すぎてPVAとしての性能が発揮されにくい。
【0010】
カルボキシル系基の含有量に特に制限はないが、各用途分野においてビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計量に対し0.01〜10モル%の範囲のものを好適に使用することとができる。より好ましくは0.1〜7モル%であり、更に好ましい範囲は0.1〜5モル%である。0.01モル%以下では変性による効果が少なく好ましくない。10モル%を超えると耐水性が低下し好ましくない。
【0011】
本発明のビニルアルコール系重合体はTHF−POAEと酢酸ビニルを共重合しそれを鹸化することにより得ることができる。使用されるTHA−POAEのアルキレンオキサイド基の数は、すなわち式(1)のnは1〜200であり、より好ましくは3〜100である。R1は炭素数2〜5の不飽和炭化水素基であり、なかでも炭素数2のビニル基、炭素数3のアリル基が好適であり、最も好適には炭素数2のビニル基である。
【0012】
カルボキシル系基を導入するには重合性不飽和カルボン酸類としてはイタコン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フタル酸を共重合するか、或いは無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸無水物を共重合するか更にそれを加水分解してもよい。また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル等の炭素数1〜18のモノまたはジアルキルアステル類を共重合して加水分解してもよい。これらは単独でも何種類かを併用しても良い。
【0013】
酢酸ビニルとTHF−POAEと重合性不飽和カルボン酸類等を共重合するには、これら不飽和単量体を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法で重合させることが出来る。なかでも無溶媒あるいはメチルアルコールやエチルアルコール等の低級アルコール等の溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が工業的に好適である。この場合重合に影響を及ぼさない範囲でアセトン、酢酸メチル、トルエン等の溶剤を含んでいても差し支えない。共重合に使用される開始剤としては2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と略記する)、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネート等のアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知のラジカル重合開始剤が挙げられる。また重合温度は特に制限はないが40℃から溶媒あるいはモノマーの沸点程度の範囲が好適である。
【0014】
重合は不飽和単量体、溶媒、開始剤を反応缶に仕込み、系内の溶存酸素を窒素ガスのバブリングにより追い出しを行い、所定の温度に反応缶内温を上げ、目標とする重合率まで反応させ、冷却して重合を停止する公知の反応方法で共重合することができる。THF−POAEの一部を始めに仕込み、残りを分割して添加したり、連続的に添加する方法も可能である。重合性不飽和カルボン酸類を共重合させる場合も、THF−POAEと同様に、始めに反応缶に仕込み重合させる方法や、アルコール溶液として分割添加したり、連続的に添加する方法が可能である。
【0015】
本発明のビニルアルコール系重合体は、本発明の目的を阻害しない範囲で他の単量体を、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位の合計に対し30モル%以下の範囲で共重合することも可能である。それらの単量体を以下に例示する。
カルボン酸のビニルエステル類
酢酸ビニル以外のギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等。
アルキルエーテル類
プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、テトラデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等。
アルキルアリルエーテル類
プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、オクチルアリルエーテル、デシルアリルエーテル、ドデシルアリルエーテル、テトラデシルアリルエーテル、ヘキサデシルアリルエーテル、オクタデシルアリルエーテル等。
飽和カルボン酸のアリルエステル類
ステアリン酸アリル、ラウリン酸アリル、ヤシ油脂肪酸アリル、オクチル酸アリル、酪酸アリル等。
α−オレフィン類
エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン、α−デセン、α−ドデセン、α−ヘキセン、α−オクタデセン等。
その他(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アリルスルホン酸塩等。
【0016】
重合終了後、アルコール蒸気で未反応モノマーを取り除き、共重合体のアルコール溶液を鹸化することにより目的のビニルアルコール系重合体を得ることができる。アルコール中の共重合体の濃度は20〜50重量%とすることができる。
【0017】
前記により得られた共重合体はアルコール、場合により含水アルコールに溶解された状態で公知の方法により水酸化ナトリウムやナトリウムアルコラート等のアルカリ触媒をもちいて鹸化しビニルアルコール系重合体を製造することが出来る。これら触媒の使用量は共重合体に対して1/10〜1/300モル当量の範囲が好ましい。尚、鹸化反応の温度は特に制限がないが、通常20〜60℃の範囲が好ましい。
【0018】
鹸化終了後のビニルアルコール系重合体は脱アルコール処理を行い、乾燥により溶剤を除去し、目的とするビニルアルコール系重合体を得ることが出来る。
【0019】
かくして得られたビニルアルコール系重合体は種々の用途に使用されるので、以下にその例を具体的に挙げる。
(1)分散剤関係
塗料、墨汁、水彩カラー、接着剤等の有機・無機顔料の分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤および分散助剤。
(2)接着剤関係
木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿接着剤、不織布用バインダー、繊維バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バインダー、セラミックスバインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト接着剤、感圧接着剤、染料の固着剤。
(3)被覆剤関係
紙のクリアーコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、感熱記録紙用バインダー、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、皮革仕上剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤。
(4)乳化剤関係
エチレン性不飽和化合物、ブタジエン性不飽和化合物の乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等の疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ピチュメン等の後乳化剤。
(5)増粘剤関係
各種エマルジョンの増粘剤、各種水溶液の増粘剤。
(6)凝集剤関係
水中懸濁物および溶存物の凝集剤、パルプスラリーの濾水性向上剤。
(7)成形物関係
繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、ケミカルレース用水溶性繊維、スポンジ
(8)土壌改良剤関係
(9)感光剤関係
【0020】
【実施例】
次に実施例および比較例により、本発明を詳細に説明する。以下の実施例および比較例において「部」と記載のあるものは重量部を示し、「%」と記載のあるものは重量%を示す。
【0021】
ビニルアルコール系重合体中のTHF−POAE単位、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位およびカルボン酸単位および他のコモノマー単位の含有率は、400MHz 1H−NMRにより定量した。1H−NMR測定時のビニルアルコール系重合体の溶媒はD2Oを使用した。
【0022】
(1)粘度平均重合度測定
鹸化度が99.5モル%未満の場合は、鹸化度99.5モル%以上になるまで鹸化したPVAについて、オストワルド粘度計および溶媒にイオン交換水を用い、30℃で測定した極限粘度[η](g/dl)から次式により求めた粘度平均重合度(P)で表す。
【0023】
【式1】
【0024】
(2)顔料分散安定性の測定
各ビニルアルコール系重合体を水に溶解し予めポリマー溶液を作成する。ボールミルを用いてビニルアルコール系重合体を純分として1重量部、各顔料20重量部、純水80重量部よりなる顔料スラリーを得る。
再分散性評価の為、得られた顔料スラリー500mlを直径75mmの密閉容器に移し20℃で静置した。3週間静置後、スラリーに重量25g、直径6mmのガラス棒を静かに落下させた時の感触によりスラリー固さを評価した。次に、スラリー中に直径50mmの撹拌翼が100mlの位置にくるように静かに設置し、回転数400rpmにて60分間撹拌後、スラリー上層部の濃度を固形分より測定し再分散性(%)を算出した。
測定した顔料はカーボンブラック(CBと略記)、酸化チタン(Tiと略記)、フタロシアニンブルー(α−CuPcと略記)を使用した。
【0025】
(実施例1)
還流冷却器、モノマー添加口、温度計、サンプリング口、窒素導入口、撹拌機を備えた5リットルの重合槽に酢酸ビニル2250部、一般式(1)で示されるR1は炭素数2のビニル基、AOは炭素数2のエチレンオキサイド基で、n=7のTHF−POAE450部、メタノール725部を仕込み、撹拌しながら窒素を吹き込み脱酸素を行った。その後加温し槽内温度が62℃に安定したところで、メタノール25部にAIBN1.5部を溶解したメタノール溶液25部を加え重合を開始した。系内の固形分濃度を分析しつつ重合を行い、6時間30分で重合槽を冷却し重合を停止した。その時の重合率は80%であった。その後メタノール蒸気で未反応モノマーを除き、酢酸ビニル/THF−POAE共重合体のメタノール溶液を得た。次にこのメタノール溶液の濃度が50%になるように調整し、35℃に温度調節したニーダーで撹拌しながら水酸化ナトリウムの濃度10%メタノール溶液387mlを加え、3時間鹸化を行った。得られたビニルアルコール系重合体をメタノールで洗浄し、脱溶剤を行った後、90℃で2時間乾燥し白色粉末のビニルアルコール系重合体を得た。得られたビニルアルコール系重合体中のTHF−POAE単位の含有率は3.7モル%/(ポリビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、ビニルアルコールは99.5モル%、酢酸ビニルは0.5モル%であった。イオン交換水を溶媒として測定した粘度平均重合度は860であった。ビニルアルコール系重合体の物性は表1に示した。
【0026】
(実施例2)
実施例1と同様に5リットルの重合槽に酢酸ビニル2250部、一般式(1)で示されるR1の炭素数が2のビニル基で、AOは炭素数2のエチレンオキサイド基、n=7のTHF−POAE450部、メタノール158部を仕込み、撹拌しながら窒素を吹き込み脱酸素を行った。その後加温し槽内温度が62℃に安定したところで、メタノール25部にAIBN1.5部を溶解したメタノール溶液25部を加え重合を開始した。還流開始30分後よりメタノール567部にイタコン酸34部を溶解した液を連続的に6時間添加し、固形分濃度を分析しつつ重合を行い、7時間で重合槽を冷却し重合を停止した。その時の重合率は85%であった。その後実施例1と同様の操作を行いビニルアルコール系重合体を得た。ビニルアルコール系重合体中のTHF−POAE単位の含有率は3.5モル%/(ビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、イタコン酸単位の含有率は0.7モル%/(ビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、鹸化度は99.2モル%であった。実施例1と同様に測定した粘度平均重合度は1200であった。ビニルアルコール系重合体の物性は表1に示した。
【0027】
(実施例3)
実施例2と同様に5リットルの重合槽に酢酸ビニル2250部、一般式(1)で示されるR1の炭素数が2のビニル基で、AOは炭素数2のエチレンオキサイド基、n=44のTHF−POAE450部、メタノール158部を仕込み、撹拌しながら窒素を吹き込み脱酸素を行った。その後加温し槽内温度が62℃に安定したところで、メタノール25部にAIBN1.5部を溶解したメタノール溶液25部を加え重合を開始した。還流開始30分後よりメタノール567部にイタコン酸34部を溶解した液を連続的に6時間添加し、固形分濃度を分析しつつ重合を行い、7時間で重合槽を冷却し重合を停止した。その時の重合率は82%であった。その後実施例1と同様の操作を行いビニルアルコール系重合体を得た。ビニルアルコール系重合体中のTHF−POAE単位の含有率は0.7モル%/(ビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、イタコン酸単位の含有率は0.7モル%/(ビニルアルコール+酢酸ビニル)
であり、鹸化度は99.4モル%であった。実施例1と同様に測定した粘度平均重合度は900であった。ビニルアルコール系重合体の物性は表1に示す。
【0028】
(実施例4)
5リットルの重合槽を用い実施例1と同様にして重合を行いビニルアルコール系重合体のメタノール溶液を得た。その後、実施例1と同様な操作で鹸化を実施するが、加えた水酸化ナトリウムのメタノール溶液量は58mlで、1時間鹸化を行った。得られたビニルアルコール系重合体をメタノールで洗浄し、脱溶剤を行った後、90℃で2時間乾燥し白色粉末のビニルアルコール系重合体を得た。得られたビニルアルコール系重合体中のTHF−POAE単位の含有率は3.7モル%/(ポリビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、ビニルアルコールは88.5モル%、酢酸ビニルは11.5モル%であった。イオン交換水を溶媒として測定した粘度平均重合度は860であった。ビニルアルコール系重合体の物性は表1に示した。
【0029】
(実施例5)
実施例1と同様に5リットルの重合槽に酢酸ビニル1750部、一般式(1)で示されるR1の炭素数が2のビニル基で、AOは炭素数2のエチレンオキサイド基、n=66のTHF−POAE950部、メタノール725部を仕込み、撹拌しながら窒素を吹き込み脱酸素を行った。その後加温し槽内温度が62℃に安定したところで、メタノール25部にAIBN1.5部を溶解したメタノール溶液25部を加え重合を開始した。系内の固形分濃度を分析しつつ重合を行い、7時間30分で重合槽を冷却し重合を停止した。その時の重合率は85%であった。その後メタノール蒸気で未反応モノマーを除き、酢酸ビニル/THF−POAE共重合体のメタノール溶液を得た。次にこのメタノール溶液の濃度が50%になるように調整し、35℃に温度調節したニーダーで撹拌しながら水酸化ナトリウムの濃度10%メタノール溶液387mlを加え、3時間鹸化を行った。得られたビニルアルコール系重合体をメタノールで洗浄し、脱溶剤を行った後、90℃で2時間乾燥し白色粉末のビニルアルコール系重合体を得た。得られたビニルアルコール系重合体中のTHF−POAE単位の含有率は0.3モル%/(ポリビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、ビニルアルコールは99.2モル%、酢酸ビニルは0.8モル%であった。イオン交換水を溶媒として測定した粘度平均重合度は800であった。ビニルアルコール系重合体の物性は表1に示した。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同様に還流冷却器、モノマー添加口、温度計、サンプリング口、窒素導入口、撹拌機を備えた5リットルの重合槽に酢酸ビニル2250部、一般式(1)で示されるR1の炭素数が2のビニル基で、AOは炭素数2のエチレンオキサイド基、n=7で末端基がメチル基のメトキシポリオキシエチレングリコールビニルエーテル(以下「MPEG−VE」と略記する)450部、メタノール725部を仕込み、撹拌しながら窒素を吹き込み脱酸素を行った。その後加温し槽内温度が62℃に安定したところで、メタノール25部にAIBN1.5部を溶解したメタノール溶液25部を加え重合を開始した。系内の固形分濃度を分析しつつ重合を行い、6時間30分で重合槽を冷却し重合を停止した。その時の重合率は82%であった。その後実施例1と同様な操作により変性ポリビニルアルコールを得た。変性ポリビニルアルコール中のMPEG−VE単位の含有率は1.7モル%/(ポリビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、ビニルアルコールは99.3モル%、酢酸ビニルは0.7モル%であった。実施例1と同様に測定した粘度平均重合度は950であった。変性ポリビニルアルコールの物性は表1に示した。
【0031】
(比較例2)
実施例1と同様に5リットルの重合槽に酢酸ビニル2250部、一般式(1)で示されるR1の炭素数が2のビニル基で、AOは炭素数2のエチレンオキサイド基、n=7で末端基がメチル基のMPEG−VE450部、メタノール158部を仕込み、撹拌しながら窒素を吹き込み脱酸素を行った。その後加温し槽内温度が62℃に安定したところで、メタノール25部にAIBN1.5部を溶解したメタノール溶液25部を加え重合を開始した。還流開始30分後よりメタノール567部にイタコン酸34部を溶解した液を連続的に6時間添加し、固形分濃度を分析しつつ重合を行い、7時間で重合槽を冷却し重合を停止した。その時の重合率は85%であった。その後実施例1と同様の操作を行い変性ポリビニルアルコールを得た。変性ポリビニルアルコール中のMPEG−VE単位の含有率は1.8モル%/(ビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、イタコン酸単位の含有率は0.7モル%/(ビニルアルコール+酢酸ビニル)であり、鹸化度は99.4モル%であった。実施例1と同様に測定した粘度平均重合度は1400であった。ビニルアルコール系重合体の物性は表1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
(注1)ケーキ固さ判定基準
○:ガラス棒が抵抗無く自重で底部に達する。
△:ガラス棒が自重では底部に達するが、若干抵抗感がある。
×:ケーキがハードケーキ又はプリン状の凝集層を形成しており、ガラス棒が力を加えても底部に達しない。
【0034】
【発明の効果】
本発明のビニルアルコール系重合体は、極性の異なる各種材料に対する親和性が良好で、分散剤、接着剤、表面コーティング性等に優れる。特に分子側鎖の末端にテトラヒドロフルフリロキシ基を有するため、テトラヒドロフルフリルアルコールの特徴である、水および多くの有機溶剤と自由に混合し、種々のポリマーを溶解するという特徴を生かすことにより、有機材料、無機材料の両者に対して優れた親和性を発現する。更にこれにカルボン酸類を導入することにより、一段と各種材料に対する親和性が向上する為、工業的に非常に有用性が高い。かかる特性から本発明のビニルアルコール系重合体は、分散剤、接着剤、表面コーティング剤に限らず、被覆剤、樹脂用ブレンド剤、懸濁重合安定剤、乳化剤、増粘剤、凝集剤、土壌改良剤、感光剤、感電子剤、成形物、繊維サイジング剤、各種フィルム、シート等の各種用途に使用できる。
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