JP6981258B2 - ポリビニルアルコール系樹脂、分散剤及び懸濁重合用分散剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂に関し、更に詳しくは、ポリ塩化ビニル製造時にビニル系化合物を懸濁重合する際に用いる分散剤として好適なポリビニルアルコール系樹脂、分散剤及び懸濁重合用分散剤に関する。
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記する場合がある。)は、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを重合した重合体をケン化することにより得られるものである。PVA系樹脂は、通常熱処理することにより、脱水し、主鎖中に二重結合を有する構造をもつこととなり、かかる構造を有するPVA系樹脂は、ポリ塩化ビニル製造時の懸濁用分散安定剤、保水材等の用途に用いられている。また、PVA系樹脂を用いてなるフィルムや繊維を熱処理することにより強度を向上させることができることも知られている。
上記PVA系樹脂中の二重結合は、特に0.1重量%水溶液の紫外線吸収スペクトルにより確認することが出来る。215nm付近のピークは[−CO−CH=CH−]の構造に帰属し、280nm付近のピークは[−CO−(CH=CH)−]の構造に帰属し、320nm付近のピークは[−CO−(CH=CH)−]の構造に帰属するものである。
一方、ポリ塩化ビニルを製造する際の懸濁重合用分散剤としては、種々の熱処理PVA系樹脂が検討されている。
例えば、分子内にカルボニル基を有し、かつ2〜3価の金属の塩又は水酸化物を含有するポリビニルアルコール系樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、濃度0.1重量%水溶液の紫外吸収スペクトルによる280nmの吸光度(a)が0.1より大であり、同水溶液の紫外吸収スペクトルによる320nmの吸光度(b)が0.03以上であり、吸光度(b)/吸光度(a)が0.3未満であり、かつ残存酢酸基のブロックキャラクターが0.4以上であるPVA系重合体が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、特許文献1及び2に記載のPVA系樹脂を得るためには、約150℃で5〜6時間熱処理を行なうことが必要であり、製造コストが高くなるという問題があった。また、製造工程において、酸素と接触する機会が多いため不溶解物が生じる可能性があるとともに、アセトキシ基等の残存脂肪酸エステル基のランダム性が上がらないという問題もあった。
上記の課題を解決するために、例えば、特許文献3では、分子内にカルボニル基を有し、残存脂肪酸エステル基のブロックキャラクターが0.5以上であるPVA系樹脂であって、PVA系樹脂の0.1重量%水溶液の紫外線吸収スペクトルによる215nm、280nm、320nmのそれぞれの吸光度が0.1以上であり、320nmの吸光度/280nmの吸光度の比が0.3以上であるPVA系樹脂が提案されている。
日本国特開平08−269112号公報 日本国特開平08−283313号公報 日本国特開2004−250695号公報
しかしながら、従来のPVA系樹脂は、得られた樹脂に着色が発生し、ひいてはポリ塩化ビニル製造時の懸濁重合用分散剤として用いた場合にポリ塩化ビニルに着色が発生するという問題が残るものであった。
近年の要求物性の高まりから、懸濁重合物(例えば、ポリ塩化ビニル)の着色を抑えるために、懸濁重合用分散剤として用いられるPVA系樹脂の着色を抑えることが求められている。
そこで、本発明は、着色が抑えられたPVA系樹脂を提供すること、並びに該PVA系樹脂を用いた分散剤及びポリ塩化ビニル製造時に用いる懸濁重合用分散剤を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、臭素処理をした際のイエローインデックス(YI)値が特定値以下となるPVA系樹脂が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の(1)〜(7)である。
(1)0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける320nmの吸光度(X)が0.1以上であり、PVA系樹脂の1.0重量%水溶液100重量部に対して臭素の3.0重量%水溶液10重量部を混合した混合水溶液を24時間静置することにより臭素処理をした後の前記混合水溶液のイエローインデックス値が5以下であるPVA系樹脂。
(2)0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(Y)に対する320nmの吸光度(X)の比(X/Y)が0.3以上である、前記(1)に記載のPVA系樹脂。
(3)ケン化度が60モル%以上である、前記(1)又は(2)に記載のPVA系樹脂。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のPVA系樹脂からなる分散剤。
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のPVA系樹脂からなる懸濁重合用分散剤。
(6)前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載のPVA系樹脂の製造方法であって、ビニルエステル系単量体を重合して得られた重合体をケン化する工程と、ケン化された重合体を、過熱水蒸気による熱処理及び減圧下での熱処理のうちのいずれか一方の方法で熱処理する工程を含むPVA系樹脂の製造方法。
(7)前記熱処理が110〜230℃の温度範囲で行われる、前記(6)に記載のPVA系樹脂の製造方法。
本発明によれば、着色の少ない外観良好なPVA系樹脂が得られる。よって、かかるPVA系樹脂を懸濁重合用分散剤として用いた場合に、得られる重合体の着色を抑えることができる。
以下、本発明のPVA系樹脂について詳細に説明する。
[PVA系樹脂]
本発明のPVA系樹脂は熱処理が施された熱処理タイプのPVA系樹脂であって、0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける320nmの吸光度(X)が0.1以上であり、PVA系樹脂の1.0重量%水溶液100重量部に対して臭素の3.0重量%水溶液10重量部を混合した混合水溶液を24時間静置することにより臭素処理をした後の前記混合水溶液のイエローインデックス値が5以下である。
本発明者らの研究により、PVA系樹脂を熱処理して脱水又は脱酢酸反応を起こす際に、主鎖中の二重結合を2つ連続した構造よりも3つ連続した構造を多く生じさせることで、前記臭素処理を行った際に臭素と反応しない二重結合を残り難くすることができ、それによりPVA系樹脂の着色が抑制されることが明らかとなった。
一般的に、PVA系樹脂は、ビニルエステル単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体を、アルカリ触媒等を用いてケン化して得られる樹脂である。本発明のPVA系樹脂は、このケン化により得られたPVA系樹脂を熱処理して、脱水又は脱酢酸反応を起こすことにより得られる。
本発明のPVA系樹脂のケン化度は、熱処理前のPVA系樹脂のケン化度と同じである。ケン化度は、60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは65〜98モル%、更に好ましくは67〜90モル%、特に好ましくは69〜88モル%である。PVA系樹脂の分子中に水酸基(親水性)の他に酢酸基(疎水基)が存在するため、界面活性能を有し、分散媒に対して均一に分散できる。ケン化度が低すぎると水分散性が低下する傾向がある。
本発明のPVA系樹脂の平均重合度は、熱処理前のPVA系樹脂の平均重合度と同じである。平均重合度は、100〜4000であることが好ましく、より好ましくは200〜3000、特に好ましくは300〜1000である。平均重合度が低すぎると、界面活性能が低くなる傾向があり、塩化ビニル懸濁重合用分散剤として用いる場合、懸濁重合時に凝集を起こしやすくなる。逆に平均重合度が高すぎると、PVA系樹脂水溶液の粘度が上昇し、ハンドリング性が低下する。
なお、平均重合度はJIS K 6726に準拠して測定することができる。
本発明のPVA系樹脂を0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける320nmの吸光度(X)は0.1以上である。PVA系樹脂の0.1重量%水溶液の320nmにおける紫外線吸光度が0.1未満であると、塩化ビニル懸濁重合用分散剤として用いた場合に、重合安定性が低くなる傾向がある。本発明のPVA系樹脂の0.1重量%水溶液の320nmにおける紫外線吸光度は、好ましくは0.2以上であり、上限は特に限定されないが、製造可能性の観点から1.5程度であることが好ましい。
また、320nm以外のその他の波長における紫外線吸光度は、以下であることが好ましい。具体的には、215nmにおける紫外線吸光度は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、また上限は、2程度である。280nmにおける紫外線吸光度は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、また上限は、2程度である。これらの吸光度が低すぎると二重結合の生成が少ないため、界面活性能が低下する傾向があり、高すぎると製造可能性が低下する傾向がある。
なお、紫外線吸収スペクトルの215nmでの吸収は、PVA系樹脂中の−CO−CH=CH−の構造に帰属し、280nmでの吸収は、PVA系樹脂中の−CO−(CH=CH)−の構造に帰属し、320nmでの吸収は、PVA系樹脂中の−CO−(CH=CH)−の構造に帰属する。
また、本発明において、本発明のPVA系樹脂を0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(Y)に対する320nmの吸光度(X)の比(X/Y:320nm/280nm)は、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.4以上であり、更に好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは1以上である。前記吸光度比が小さすぎると、塩化ビニル懸濁重合用分散剤として用いた場合に、界面活性能が低くなり懸濁重合安定性が低下する傾向がある。また上限は特に限定されないが、生産性の観点から、3程度である。
かかる吸光度は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製「V−560」(商品名))を用いて、波長215nm、280nm、320nmにおいて、PVA系樹脂の0.1重量%水溶液の吸光度を測定することにより得ることができる。なお、厚さ1cmの試料容器(セル)を用いて、測定する。
本発明において、本発明のPVA系樹脂を1.0重量%水溶液としたときの該水溶液のイエローインデックス(YI)値は、45以下であることが好ましく、より好ましくは31以下、更に好ましくは30以下、特に好ましくは28以下である。YI値が小さいと、PVA系樹脂は着色がおさえられていると言える。下限値は0であることが好ましい。
なお、YI値の測定は、例えば、コニカミノルタ株式会社製の測色計「CM−3600A」(商品名)を用いて測定することができる。
また、本発明において、本発明のPVA系樹脂は、該PVA系樹脂の1.0重量%水溶液100重量部に対して臭素の3.0重量%水溶液10重量部を混合した混合水溶液を24時間静置することにより臭素処理した後の、前記混合水溶液のYI値が5以下であることを特徴とする。
臭素処理は、本発明のPVA系樹脂を分散剤として用いた際に消費される(すなわち、有効に作用する)二重結合部分を臭素により反応させる処理である。かかる臭素処理により有効に作用する二重結合は消失し、YI値が低下する。臭素処理後のYI値は、懸濁重合後の懸濁重合物の着色に直接的に関与すると推測される。
臭素処理後のYI値が5以下であると、PVA系樹脂中には有効に作用する二重結合が多く存在し、不要な二重結合が生じていないことがわかる。臭素処理後のYI値は、4以下であることがより好ましく、特に好ましくは3以下である。下限値は通常0である。
なお、YI値の測定は、例えば、コニカミノルタ株式会社製の測色計「CM−3600A」(商品名)を用いて測定することができる。
本発明のPVA系樹脂のブロックキャラクター(PVA系樹脂のビニルアルコール単位とビニルエステル単位のブロック性を表す指標)は0.5以上であることが好ましく、より好ましくは0.55以上である。ブロックキャラクターが低すぎると、塩化ビニル等のビニル系化合物の懸濁重合時の発泡抑制効果が低くなる傾向がある。上限は特にはないが、PVA系樹脂の製造可能性の点から0.9以下である。
なお、ブロックキャラクター(η)は以下のように測定できる。
PVA系樹脂を13C−NMRで測定し(内部標準物質として3−(トリメチルシリル)−2,2,3,3−d−プロピオン酸ナトリウム塩(3−(trimethylsilyl)propionic−2,2,3,3−dacid sodium saltを使用)、38〜49ppmの範囲に見られるメチレン炭素部分に基づき吸収〔(OH,OH)dyadの吸収=43.5〜46ppm、(OH,OR)dyadの吸収=41〜43.5ppm、(OR,OR)dyadの吸収=38〜40.5ppm、ただし、Rはアセチル基(CHCO−)を表わす。〕の吸収強度比から求められるもので、より具体的には下記式より算出される値である。
〔η〕=(OH,OR)/2(OH)(OR)
(ただし、(OH,OR)、(OH)、(OR)は、いずれもモル分率で計算するものとする。また、(OH)は13C−NMRの積分比により算出されるケン化度(モル分率)で、(OR)はその時のアセトキシ基のモル分率を示す。)
本発明のPVA系樹脂には、2〜3価の金属の塩及び水酸化物のうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。2〜3価の金属の塩及び水酸化物のうちの少なくとも1つを含有することで効率的に熱処理がかかる。
2〜3価の金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
これら金属の塩又は水酸化物の具体例としては、例えば、酢酸マグネシウム4水和物、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸亜鉛、水酸化アルミニウム等が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、水及び/又はメタノール等に溶解して工業的に取り扱い易いという点で酢酸マグネシウム4水和物や酢酸カルシウムが好ましい。
本発明のPVA系樹脂中の2〜3価の金属の塩及び/又は水酸化物の含有量としては、PVA系樹脂に対して30〜300μmol/gであることが好ましく、更に好ましくは40〜200μmol/gである。該含有量が少なすぎると、ビニレン基の生成量が低下し、逆に多すぎると、PVA系樹脂の着色や分解が生じる傾向がある。
2〜3価の金属の塩及び/又は水酸化物の含有方法は限定されず、上記の化合物をケン化前のペーストやケン化後のスラリー等に直接添加してもよいが、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、又は水に溶解させて3〜15重量%程度の濃度の溶液状で、ケン化後のPVAスラリーに添加し、PVA系樹脂に分配させる方法が好ましい。
[PVA系樹脂の製造方法]
本発明のPVA系樹脂は、上記したように、0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける320nmの吸光度(X)が0.1以上である。320nmにおける吸光度(X)を0.1以上にするためには、例えば、分子内にカルボニル基を有したPVA系樹脂に共役二重結合を導入した樹脂を用い、更にそれを熱処理し、脱水または脱酢酸反応を起こす方法が挙げられる。
まず、PVA系樹脂の分子内にカルボニル基を導入する方法について説明する。かかる方法としては、例えば、以下の方法(i)〜(iv)が挙げられる。
(i)ビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をケン化し、得られたPVA系樹脂を過酸化水素等の酸化剤で酸化処理する方法
(ii)ビニルエステル系単量体の重合の際に、アルデヒド類やケトン類等のカルボニル基を含有する連鎖移動剤の共存下で重合を行い、得られた重合体をケン化する方法
(iii)1−メトキシ−ビニルアセテート等の共存下でビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をケン化する方法
(iv)ビニルエステル系単量体の重合時にエアを吹き込んで重合し、得られた重合体をケン化する方法
中でも、工業的には、溶剤回収が容易であるという観点から上記(ii)の方法が好ましい。
以下、上記(ii)の方法を例にとり、本発明のPVA系樹脂の製造方法を説明する。(ii)の方法では、本発明のPVA系樹脂は、以下のスキームにより示される方法により得られる。なお、スキーム中、Acはアセチル基を示す。
Figure 0006981258
出発原料であるビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルおよびその他の直鎖または分岐状の飽和脂肪酸ビニルエステル等が挙げられる。実用的観点から、酢酸ビニルが好ましく、通常、酢酸ビニルが単独でまたは酢酸ビニル以外の脂肪酸ビニルエステル化合物と組み合わせて使用される。
ビニルエステル系単量体を重合するに当たっては特に制限はなく公知の重合方法が任意に用いられるが、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等の炭素数1〜3のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、バルク重合、乳化重合、懸濁重合も可能である。
かかる溶液重合においてビニルエステル系単量体の仕込み方法は、分割仕込み、一括仕込み等任意の手段を用いてよい。重合反応は、アゾビスイソブチロニトリル、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合触媒を用いて行われる。また、重合反応温度は40℃〜沸点程度の範囲から選択される。
(ii)の方法に用いられる連鎖移動剤として、アルデヒド類には、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも重合後の構造が最終生成物と類似する点で、アルデヒド類を用いることが好ましく、特にはアセトアルデヒドが好ましい。
連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数や目的とするPVA系樹脂の重合度等により多少異なるが、通常、ビニルエステル系単量体に対して0.1〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3重量%である。また、連鎖移動剤の仕込み方法は、初期の一括仕込みでもよく、また重合反応時に仕込んでもよい。連鎖移動剤を任意の方法で仕込むことにより、PVA系樹脂の分子量分布のコントロールを行うことができる。
ビニルエステル系単量体は単独で用いてもよいが、必要であればビニルエステル系単量体と重合可能な単量体を共重合した変性PVA系樹脂を用いることもできる。かかる単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のビニル基とエポキシ基を有する単量体;トリアリルオキシエチレン、ジアリルマレアート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリルオキシエタン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル基を2個以上有する単量体;酢酸アリル、アセト酢酸ビニルエステル、アセト酢酸アリルエステル、ジアセト酢酸アリルエステル等のアリルエステル系単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルクロトナート等のアセトアセトキシアルキルクロトナート;2−シアノアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル部分がC1〜C10アルキル基であり、好ましくはC1〜C6アルキル基);(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン;エチレンスルホン酸等のオレフィン系単量体;ブタジエン−1,3、2−メチルブタジエン、1,3又は2,3−ジメチルブタジエン−1,3、2−クロロブタジエン−1,3等のジエン系単量体;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、グリセリンモノアリルエーテル等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類、およびそのアシル化物等の誘導体;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート類;イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和酸類、その塩又はモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル等のニトリル類、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、AMPS等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩等の化合物、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニルアルキルジアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のγ−(メタ)アクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられる。ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートの具体的な例としては、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等が挙げられる。
また、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン、グリセリンモノアリルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、2−アセトキシ−1−アリルオキシ−3−ヒドロキシプロパン、3−アセトキシ−1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等のジオールを有する化合物等が挙げられる。これらの単量体は、単独で、又は2種以上を併用してもよい。
なお、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」、「(メタ)アクリロ」についても同様である。
ビニルエステル系単量体と重合可能な単量体の含有量は、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
上記重合により得られたビニルエステル系重合体はケン化され、分子内にカルボニル基が導入される。
ケン化は公知の方法で行うことができ、通常、ビニルエステル系重合体をアルコールに溶解させ、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で行われる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等の炭素数1〜6のアルコールが挙げられる。
アルコール中のビニルエステル系重合体の濃度は、溶解率の観点から、20〜50重量%の範囲から選ばれる。
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。かかる触媒の使用量はビニルエステル系単量体に対して1〜100ミリモル当量にすることが好ましく、より好ましくは1〜40ミリモル当量、更に好ましくは1〜20ミリモル当量である。触媒の使用量が少なすぎると、目的とするケン化度までケン化を進めることが困難となる傾向にあり、また触媒の使用量が多すぎてもケン化の反応性の向上は見られないため好ましくない。
ケン化を行う際の反応温度は、特に制限はないが、通常、10〜70℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃の範囲から選ぶのが望ましい。
ケン化を行う際の反応時間は、ケン化の処理方法により適宜調整されればよく、例えば、バッチケン化で行われる場合、ケン化反応は通常2〜3時間にわたって行なわれる。
本発明では、得られたPVA系樹脂を後変性させることにより変性PVA系樹脂を製造してもよい。変性PVA系樹脂を製造する方法としては、例えば、PVA系樹脂をアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
得られたPVA系樹脂は、熱処理することにより、脱水または脱酢酸反応が起き、共役二重結合が生成する。
熱処理の方法としては、分散剤として用いた際に消費される二重結合以外の不要な二重結合を増大させないために、例えば、(i)過熱水蒸気による熱処理、(ii)減圧下での熱処理、(iii)窒素雰囲気下での熱処理等が挙げられる。中でも、酸素による酸化劣化による不溶解の発生を防ぐ理由で、(i)過熱水蒸気による熱処理及び(ii)減圧下での熱処理のうちのいずれか一方の方法で熱処理を行うことが好ましい。
(i)過熱水蒸気による熱処理
過熱水蒸気とは、100℃で蒸発した飽和水蒸気を常圧のまま更に高温度に加熱した無色透明のHOガスのことであり、本発明においては、かかる過熱水蒸気を用いて熱処理する。
常圧過熱水蒸気を得る方法としては、一般公知の加熱方法が利用できるが、例えば、水をヒーターや電磁誘導加熱やボイラーなどで加熱することで飽和蒸気を発生させ、該蒸気をさらに電磁誘導加熱やヒーター加熱することにより得られ、過熱水蒸気発生装置等を用いて処理することができる。過熱水蒸気発生装置として、具体的には、Super−Hi(第一高周波工業株式会社製)等が使用できる。
熱処理の温度は、通常、110〜230℃の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは120〜180℃である。該処理温度が低すぎると、所望の二重結合が得られにくくなる傾向があり、逆に処理温度が高すぎると、熱処理によるPVA系樹脂の分解が進行する場合がある。
熱処理の時間は、通常、0.5〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1.0〜5時間である。該処理時間が短すぎると、ビニレン基の生成量が不足し、逆に長すぎると、PVA系樹脂の着色の原因や水に対する不溶解分生成の原因となり好ましくない。
熱処理は、通常、常圧下で行われる。
(ii)減圧下での熱処理方法
減圧環境とは、ゲージ圧表記で大気圧(常圧環境)を0MPaとした時に負の数値となる状態を示し、−0.101MPaを絶対真空とした際の数値を示す。
減圧下で熱処理する方法としては、一般公知の方法が利用できるが、例えば、加熱装置内の雰囲気を減圧にする方法が挙げられる。減圧下で加熱する加熱装置としては、例えば、減圧熱処理装置、減圧乾燥機、真空低温乾燥器、振動乾燥機、ナウターミキサー等が挙げられる。
熱処理の温度は、通常、110〜230℃の温度範囲で行うことが好ましく、より好ましくは120〜180℃である。該処理温度が低すぎると、所望の二重結合が得られず、逆に高すぎると、熱処理によるPVA系樹脂の分解が激しくなる場合がある。
熱処理の時間は、通常、0.5〜10時間であることが好ましく、より好ましくは1.0〜5時間である。該処理時間が短すぎると、ビニレン基の生成量が不足し、逆に長すぎると、PVA系樹脂の着色の原因や水に対する不溶解分生成の原因となり好ましくない。
熱処理の真空度は、−0.02MPa以下であることが好ましく、より好ましくは−0.05MPa以下、特に好ましくは−0.08MPa以下である。かかる真空度が大きすぎると熱処理に時間がかかり、PVA系樹脂のYI値が上昇する傾向がある。
本発明において、熱処理する際には、酸素濃度が8容量%以下の酸素雰囲気下で行うのが好ましく、より好ましくは5容量%以下の酸素雰囲気下である。該酸素濃度が高すぎる場合には、PVA系樹脂の着色が激しくなったり、また不溶化の原因となる恐れがあり好ましくない。
かかる熱処理においては、公知の方法で得られたPVA系樹脂に上記に示した金属塩を含有させたものを用いることができるが、良好な界面活性能を得るために十分な量のビニレン基を生成せしめるためには、熱処理前のPVA系樹脂のカルボニル基の含有量は、0.03〜2.5モル%であることが好ましい。
[用途]
上記のようにして得られた本発明のPVA系樹脂は、着色が抑えられているので色相に優れ、様々な用途に好適に使用することができる。本発明のPVA系樹脂の用途としては、例えば、以下が挙げられる。
(1)成形物関係:繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用、水溶性繊維等。
(2)接着剤関係:木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着剤、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤等。
(3)被覆剤関係:紙のクリアーコーティング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、暫定塗料等。
(4)疎水性樹脂用ブレンド剤関係:疎水性樹脂の帯電防止剤、および親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤等。
(5)分散剤関係:感熱発色層用塗工液の顕色剤用分散剤、塗料、墨汁、水性カラー、接着剤等の顔料分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤等。
(6)乳化分散安定剤関係:各種アクリルモノマー、エチレン性不飽和化合物、ブタジエン性化合物の乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ビチューメン等の後乳化剤等。
(7)増粘剤関係:各種水溶液やエマルジョンや石油掘削流体の増粘剤等。
(8)凝集剤関係:水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水性等。
(9)交換樹脂等関係:イオン交換樹脂、キレート交換樹脂、イオン交換膜等。
(10)その他:土壌改良剤、感光剤、感光性レジスト樹脂等。
上記の中でも特に、本発明のPVA系樹脂は、酢酸ビニル、塩化ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤に有用であり、特に塩化ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤として有用である。
[分散剤]
本発明のPVA系樹脂を分散剤として使用する場合、被分散体としては、例えば、重合性モノマー、粉体などが挙げられるが、特に重合性モノマーを分散し、懸濁重合用の分散剤として用いることが好ましい。
懸濁重合の対象となる重合性モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はその無水物やエチレン、プロピレン、スチレン等が挙げられる。中でも、塩化ビニル単独重合又は塩化ビニルと共重合可能なモノマーとの共重合に好適に用いられる。
[懸濁重合用分散剤]
本発明のPVA系樹脂を懸濁重合用分散剤として使用する場合について以下に詳述する。
本発明のPVA系樹脂の使用量は懸濁重合させる単量体に応じて適宜調整すればよいが、例えば、塩化ビニル系単量体の懸濁重合に使用する場合は、通常、塩化ビニル系単量体100重量部に対して5重量部以下で用いることが好ましく、0.01〜1重量部がより好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.2重量部である。かかる使用量が多すぎると分散剤として作用しないPVA系樹脂が増加する傾向がある。
懸濁重合する際には、通常、水又は加熱水媒体に本発明のPVA系樹脂を分散剤として添加し、塩化ビニル系単量体を分散させて油溶性触媒の存在下で重合を行う。
PVA系樹脂の添加方法としては、粉末のまま、水又は、アルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒又は、これら有機溶媒と水との混合溶媒に溶かした溶液、上記の溶媒に分散させた分散液の状態で添加する。
添加のタイミングとしては、重合の初期に一括添加しても、又重合の途中で分割して添加してもよい。
その他添加剤としては、公知の安定剤、例えば高分子物質を併用することも可能である。高分子物質としては、本発明のPVA系樹脂以外のPVA系樹脂が挙げられる。PVA系樹脂としては、未変性のPVAや、上述の変性PVA系樹脂等が挙げられる。
重合助剤としては、各種界面活性剤あるいは無機分散剤等が挙げられ、本発明のPVA系樹脂を重合助剤として使用することも可能である。
重合触媒は油溶性の触媒であればいずれでもよく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、α,α’−アゾビス−2,4−ジメチル−バレロニトリル、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイドあるいはこれらの混合物が使用される。
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、「部」、[%]などは重量基準である。
(実施例1)
<熱処理PVA系樹脂の製造(過熱水蒸気による加熱)>
酢酸ビニル100部、アセトアルデヒド1.2部、メタノール4.7部及び酢酸ビニルに対して0.0092%のアセチルパーオキサイド(APO)を重合缶に仕込み、窒素で置換した。その後、加熱して沸点下で重合を開始させ、反応時間約5.7時間後に重合率91.8%に達した時点で重合を停止した。次いで未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を水酸化ナトリウムで常法によりケン化して樹脂分12%のPVA系樹脂(重合度770、ケン化度72モル%、カルボニル基量0.16モル%)のケン化スラリー(酢酸メチル/メタノール=8/2(重量比)の溶媒)を調製した。
次に上記で調製したPVA系樹脂に金属化合物として酢酸マグネシウム4水和物の10%メタノール溶液をPVA系樹脂1kgに対して350gの割合で添加し、25℃で1時間撹拌した。その後、ヌッチェで振り切りを行って、酢酸マグネシウム177μmol/gを含有した金属塩含有PVA系樹脂を得た。
上記で得られた金属塩含有PVA系樹脂を、過熱水蒸気発生装置「Super−Hi」(商品名、第一高周波工業株式会社)にて発生させた165℃の過熱水蒸気により、圧力常圧、酸素濃度1容量%未満の酸素雰囲気下で、1.5時間熱処理して熱処理されたPVA系樹脂を作製した。
(実施例2)
<熱処理PVA系樹脂の製造(減圧環境下での加熱)>
実施例1で作製した金属塩含有PVA系樹脂を用い、該樹脂を真空定温乾燥器(バキュームドライオーブン)「VOS−301SD」(商品名、東京理化器械株式会社製)にて、165℃、真空度−0.095MPa、酸素濃度1容量%未満の酸素雰囲気下で、1.5時間熱処理して熱処理されたPVA系樹脂を作製した。
(比較例1)
<熱処理PVA系樹脂の製造(従来法での加熱)>
実施例1で作製した金属塩含有PVA系樹脂を用い、該樹脂を110℃において2時間乾燥させた後、窒素:空気=1:1(容積比)のガスを100l/hrの速度で熱処理缶内に流し込んで、酸素濃度10容量%に保ちつつ145℃で3時間熱処理を行って熱処理されたPVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂の特性は以下の通りであった。
重合度;730(JIS K 6726に準拠して測定)、ケン化度;72モル%、酢酸マグネシウム含有量;177μmol/g(含有マグネシウム量より算出)
<評価1:紫外線吸光度の測定>
PVA系樹脂の1.0重量%水溶液を作製した。紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製「V−560」)を用いて、波長280nm、320nmにおける、PVA系樹脂の0.1重量%水溶液の吸光度を測定した。なお、厚さ1cmの試料容器(セル)を用いた。
また、280nmの吸光度(Y)に対する320nmの吸光度(X)の比(X/Y)を算出した。
結果を表1に示す。
<評価2:PVA系樹脂水溶液のイエローインデックス(YI)値の測定>
PVA系樹脂の1.0重量%水溶液を作製した。かかる水溶液のYI値をコニカミノルタ株式会社製測色計「CM−3600A」(商品名)を用いて測定した。
結果を表1に示す。
<評価3:臭素処理後の混合溶液のYI値の測定>
PVA系樹脂の1.0重量%水溶液と臭素の3.0重量%水溶液を作製した。かかるPVA系樹脂水溶液100部に対して、臭素水溶液10部を添加して混合水溶液を作製し、24時間室温で静置した。その後、混合水溶液のYI値をコニカミノルタ株式会社製測色計「CM−3600A」(商品名)を用いて測定した。
結果を表1に示す。
Figure 0006981258
表1の結果より、実施例1、2は、比較例1に比べて臭素処理後の水溶液のYI値が小さいものであり、このことからPVA系樹脂を分散剤として用いた際に消費される二重結合が消失していることがわかり、例えばポリ塩化ビニル製造時の懸濁重合用分散剤として用いた場合、得られるポリ塩化ビニルの着色が抑えられることがわかった。
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2016年12月21日出願の日本特許出願(特願2016−247685)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明のPVA系樹脂は、PVA系樹脂を分散剤として用いた際に消費される二重結合が消失していることがわかり、例えばポリ塩化ビニル製造時の懸濁重合用分散剤として有用である。

Claims (6)

  1. 0.1重量%水溶液としたときの紫外線吸収スペクトルにおける320nmの吸光度(X)が0.1以上であり、前記紫外線吸収スペクトルにおける280nmの吸光度(Y)に対する320nmの吸光度(X)の比(X/Y)が1.23以上であり、ポリビニルアルコール系樹脂の1.0重量%水溶液100重量部に対して臭素の3.0重量%水溶液10重量部を混合した混合水溶液を24時間静置することにより臭素処理をした後の前記混合水溶液のイエローインデックス値が5以下であるポリビニルアルコール系樹脂。
  2. ケン化度が60モル%以上である、請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂。
  3. 請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール系樹脂からなる分散剤。
  4. 請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール系樹脂からなる懸濁重合用分散剤。
  5. 請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール系樹脂の製造方法であって、
    ビニルエステル系単量体を重合して得られた重合体をケン化する工程と、
    ケン化された重合体を、過熱水蒸気による熱処理及び減圧下での熱処理のうちのいずれか一方の方法で熱処理する工程
    を含むポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
  6. 前記熱処理が110〜230℃の温度範囲で行われる、請求項記載のポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
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