JP4128310B2 - ビニルアルコール系重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なビニルアルコール系重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルアルコール系重合体(以下PVAと略記する)は数少ない結晶性の水溶性高分子として優れた界面特性および強度特性を有することから、紙加工、繊維加工およびエマルジョン用の安定剤に利用されているほか、PVA系フィルムおよびPVA系繊維等の原料として重要な地位を占めている。一方で結晶性を制御したり、官能基を導入して特定の性能を向上させた高機能化の追求も行われており、いわゆる変性PVAも種々開発されている。
【0003】
ポリ(オキシアルキレン)基を有するPVAは公知の物質であり、たとえば特開昭59−155408号においては末端にアリル基を有するポリ(オキシアルキレン)やポリ(オキシアルキレン)の(メタ)アクリル酸エステル或いは窒素原子上にポリ(オキシアルキレン)基を有する(メタ)アクリルアミドといった、不飽和結合を有するポリ(オキシアルキレン)基含有化合物とビニルエステルとの共重合体をけん化することによる、ポリ(オキシアルキレン)基含有PVAの合成法が開示されている。しかし、これらにおいてはポリ(オキシアルキレン)基中の側鎖アルキル基の量が増えると、アルキル基の疎水性により水溶性が低下しPVAが水に溶解しなくなることがある。また、アリル基を有するポリ(オキシアルキレン)基とビニルエステルとの共重合では重合時の反応速度低下が大きく、また共重合する量に応じて得られる重合体の重合度が大きく低下するため、合成できるPVAの重合度やポリ(オキシアルキレン)基の含有量の選択の幅が狭い、といった問題がある。更には、アリル系モノマーとビニルエステルとの共重合においては、アリル基とビニルエステルの単量体反応性比が近いために、重合後のポリ酢酸ビニル中に大量のアリル系モノマーが残存しており、これを除去するためにけん化後のPVAを大量の溶媒で洗浄する必要があるなど工業的にも好ましくない。ポリ(オキシアルキレン)基の(メタ)アクリル酸エステルとビニルエステルとの共重合については上記のような重合時の問題はないが、得られた共重合体をけん化してPVAとする段階において、エステル基の加水分解によりポリ(オキシアルキレン)基が脱離してしまうためPVA中に目的とするだけのポリ(オキシアルキレン)基が導入できないといった問題がある。窒素原子上にポリ(オキシアルキレン)基を有する(メタ)アクリルアミドの場合は、ビニルエステルとの共重合については(メタ)アクリル酸エステル同様問題はないが、高けん化度のPVAを得ようとした場合、(メタ)アクリル酸エステルと同様にけん化段階での加水分解によるポリ(オキシアルキレン)基の脱離の問題があり、またこのようなモノマーの供給性に難があり実用的ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、側鎖にポリ(オキシアルキレン)基を有する新規なビニルアルコール系重合体を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み検討を行った結果、一般式(1)で表されるポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体の合成に成功し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
【化2】
(式中R1は炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基を表し、R2は水素原子又は炭素数18以下の直鎖状、枝分かれ状、或いは環状アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基のいずれかを表し、Xは水素又はナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子を表し、nは1〜100の整数を表す。)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のPVAにおけるポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位の含有量は、0.01〜15モル%が必要であり、好ましくは0.03〜15モル%であり、さらに好ましくは0.05〜10モル%である。ポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位の含有量が0.01モル%より少ない場合はポリ(オキシアルキレン)基に基づく物性や機能などが十分に発現されず、また15モル%より多い場合には、ビニルアルコール系重合体が本来有する水溶性や結晶性などの特長が失われるため好ましくない。
【0008】
また、本発明のPVA中におけるポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位の含有量は50重量部以下であることがより好ましい。ポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位の含有量が50重量部を越えるようなものでは、PVAの有する水溶性や結晶性などの特長が損なわれることがある。
【0009】
本発明のPVAの重合度については特に制限はないが、該PVAの30℃における極限粘度測定(オストワルド粘度管にて測定)から算出した粘度平均重合度(以下単に重合度と表すことがある)で表して、50〜10000の範囲が好ましく、100〜8000の範囲がより好ましく、150〜5000の範囲がさらに好ましく、200〜3000の範囲が特に好ましい。重合度が10000を越えるようなものは合成が難しく、また重合度が50より低い場合は重合体としてのPVAの物性が発現しなくなるため好ましくない。
【0010】
本発明のPVAのけん化度は、水溶性であれば特に制限はないが、通常は70モル%以上99.99モル%未満であり、75モル%以上99.9モル%未満がより好ましく、80モル%以上99.7モル%未満が更に好ましく、85モル%以上99.5モル%未満が特に好ましい。
【0011】
本発明のPVAは、ポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位を除くと、実質的にビニルアルコール単位またはビニルアルコール単位とビニルエステル単位からなる。ビニルエステル単位としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等が挙げられ、通常酢酸ビニルが用いられる。
【0012】
また、本発明の主旨を損なわない範囲でこれら以外のモノマー単位を含有することは何ら差し支えない。このような単位を例示するとエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類及びこれらの塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−(N−アクリルアミド)−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これら単量体単位の含有量については特に制限はないが、ポリ(オキシアルキレン)基によって実現される特長を損なわないために、通常これら成分の含有量は10モル%以下とし、5モル%以下がより好ましい。
【0013】
本発明のポリ(オキシアルキレン)基を有する変性PVAの合成法としては、通常PVA系共重合体を合成するのに用いられるビニルエステルモノマーと一般式(2)に示すポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体の共重合体をけん化する方法が用いられる。
【0014】
【化3】
(式中R1は炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基を表し、R2は水素原子又は炭素数18以下の直鎖状、枝分かれ状、或いは環状アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基のいずれかを表し、Xは水素又はナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子を表し、nは1〜100の整数を表す。)
【0015】
ポリ(オキシアルキレン)基に相当する−(O−R1−)n−で示される繰り返し構造は以下の構造を有する。即ち、R1で示される炭素数2〜4のアルキレン基又は置換アルキレン基は各オキシアルキレン単位毎に異なっていても良く、これらオキシアルキレン基はブロック或いはランダムに結合されていても良い。この中でも、R1がエチレンのみ又はプロピレンのみ又はブチレンのみ又はこれらの中から2種又は3種の混合した形であるものが供給性の面からは好んで用いられる。
【0016】
R2 は水素原子又は炭素数18以下の直鎖状、枝分かれ状、或いは環状アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基を示す。これらの中でも、R2が水素又はメチル基又はn−ブチル基であるものが好んで用いられる。
【0017】
このようなポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位としては、例えばメチル−2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−ヒドロキシプロポキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−ヒドロキシプロポキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−ヒドロキシプロポキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−ヒドロキシプロポキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−ヒドロキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−ヒドロキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−ヒドロキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−ヒドロキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−ヒドロキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−ヒドロキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−ヒドロキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−ヒドロキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−メトキシエトキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−メトキシエトキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−メトキシエトキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−メトキシエトキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−メトキシプロポキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−メトキシプロポキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−メトキシプロポキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−メトキシプロポキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−メトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−メトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−メトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−メトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−メトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−メトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−メトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−メトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−n−ブトキシエトキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−n−ブトキシエトキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−n−ブトキシエトキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−n−ブトキシエトキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−n−ブトキシプロポキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−n−ブトキシプロポキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−n−ブトキシプロポキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−n−ブトキシプロポキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−n−ブトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−n−ブトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−n−ブトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−n−ブトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−n−ブトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−n−ブトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−n−ブトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−n−ブトキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−フェノキシエトキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−フェノキシエトキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−フェノキシエトキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−フェノキシエトキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(2−フェノキシプロポキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(2−フェノキシプロポキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(2−フェノキシプロポキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(2−フェノキシプロポキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−フェノキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−フェノキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−フェノキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−フェノキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリレート、メチル−2−(ω−フェノキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、エチル−2−(ω−フェノキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、ブチル−2−(ω−フェノキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−(ω−フェノキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシエトキシ)メチルアクリル酸及びその塩、2−(2−ヒドロキシプロポキシ)メチルアクリル酸及びその塩、2−(2−n−ブトキシエトキシ)メチルアクリル酸及びその塩、2−(ω−ヒドロキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリル酸及びその塩、2−(ω−ヒドロキシポリプロピレングリコキシ)メチルアクリル酸及びその塩、2−(ω−n−ブトキシポリエチレングリコキシ)メチルアクリル酸及びその塩といったものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
一般式(2)中に示すオキシアルキレン基単位のユニット数nは通常1〜100であり、2〜80であるものが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。nが100を越えるようなポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーは合成が難しく、供給性に難があり実用的ではない。
【0019】
ビニルエステルモノマーとポリ(オキシアルキレン)基を有するコモノマーとの共重合の方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用され、高重合度のものを得る場合には、乳化重合法が採用される。溶液重合時に溶媒を用いる場合は、アルコールとしてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどが、その他の有機溶媒としてはジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が用いられるが、これらに限定されるものではない。またこれらの溶媒の2種あるいはそれ以上を混合して重合溶媒として用いることができる。共重合に使用される開始剤としては、α,α’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤など公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、−10℃〜150℃の範囲が適当である。
【0020】
共重合に引き続く加水分解には、通常のポリビニルエステルのけん化で用いられるアルカリけん化又は酸けん化の手法がそのまま適用できる。すなわち、アルカリけん化の場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等の塩基性触媒を、酸けん化の場合は鉱酸やp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコールやグリコール類、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を溶媒として反応が行われる。ビニルエステル系重合体や触媒の溶解性を向上するためにテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、アセトンなどの溶剤を適宜混合して使用しても何ら問題はない。また、ヒドロキノンやp−メトキシフェノール等のラジカル重合禁止剤等を添加する場合もある。けん化反応の条件は、使用するビニルエステル系重合体の構造や目的とするビニルアルコール系重合体のけん化度によって適宜調整されるが、通常、けん化は触媒濃度/ビニルエステル単位濃度(モル比)=0.001〜5.0、反応温度:20〜180℃、反応時間:0.1〜20時間の範囲で実施される。
【0021】
本発明のポリ(オキシアルキレン)基を有するPVAにおいて一般式(1)に示すポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位中のカルボキシル基の存在は必須である。このカルボキシル基はPVA中でカルボン酸あるいはその塩としてPVAの水溶性を向上させており、これにより従来では水に不溶であったようなポリ(オキシアルキレン)基を有する水溶性のPVAを得ることが出来る。
【0022】
本発明のビニルアルコール系重合体はフィルム、シート、パイプ、分離膜、繊維、繊維用糊剤、繊維処理剤、繊維加工剤、繊維製品用サイズ剤、紙のクリアーコーテイング、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、感熱紙のオーバーコート用バインダー等の紙加工剤、有機および無機顔料の分散剤、エマルジョン用重合分散安定剤、塩ビ用重合分散安定剤、モルタルやセメントの添加剤、感圧接着剤、防曇剤、塗料、紙や木材およびプラスチックなどの接着剤、不織布用バインダー、繊維用バインダー、セラミックス用バインダー、石膏ボードや繊維板などの各種建材用バインダー、ホットメルト接着剤、画像形成材料、感光性樹脂、ゲル用基材、ホルマール樹脂やブチラール樹脂等のポリビニルアセタール用原料、成形物(フィルム、繊維、シート、チューブ、不織布など)、土壌改良剤などに用いることができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準を意味する。
【0024】
[ポリ(オキシアルキレン)基を有する変性PVAの実施例]
実施例1
撹拌機、環流冷却管、窒素導入管および温度計を取り付けた5Lの反応器に、酢酸ビニルモノマー2000g、ポリ(オキシアルキレン)基含有モノマー(単量体1)12gおよびメタノール500gを仕込み、窒素ガスを30分バブリングして脱気した。また、ディレー溶液として単量体1をメタノールに溶解して濃度30%としたコモノマー溶液を調整し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.4gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体1の比率)が一定となるようにしながら、60℃で5時間重合したのち冷却して重合を停止した。重合を停止するまでにディレーで加えたコモノマー溶液の総量は440mLであった。また、重合停止時の固形分濃度は25.1%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。このメタノール溶液の一部をエーテル中に投入してポリマーを回収し、アセトン−ヘキサンで2回再沈精製したのち、40℃で減圧乾燥した。この精製ポリマーについて、CDCl3を溶媒にして500MHz 1H−NMR(JEOL製 GX−500)測定を行ったところ、2.5〜2.8ppmの領域にポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位中のα−メチレンプロトンに由来するシグナルが観測された。このシグナルとポリ酢酸ビニル由来のシグナル(4.8〜5.2ppm)との積分値を比較したところ、ポリマー中の単量体1由来の単量体単位の変性量は1.0モル%であることが判った。また30℃でのアセトン中の極限粘度測定(オストワルド粘度管にて測定)を実施し粘度平均重合度を算出したところ、粘度平均重合度は1650であった。
【0025】
撹拌機、環流冷却管、窒素導入管および温度計を備えた反応器に、上で得た酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度30.0%)100部を計りとり、40℃に昇温してから10%濃度の水酸化ナトリウムのメタノール溶液3.5部を添加してけん化を行った。40℃で1時間放置したのち粉砕し、酢酸を加え中和してから浴比3のメタノール浴中で1時間煮沸洗浄を3回繰り返した後、60℃で20時間以上乾燥して、ポリ(オキシアルキレン)基を有する変性PVAを得た。該PVAをPVA1とする。PVA1のプロトンNMR(d6−DMSO)を測定したところ、2.5〜2.8ppmの領域にポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位中のα−メチレンプロトンに由来するシグナルが観測された。このシグナルとポリビニルアルコール由来のシグナル(3.8〜4.2ppm)及びポリ酢酸ビニル由来のシグナル(4.8〜5.2ppm)との積分値を比較したところ、ポリマー中に1.0モル%のポリ(オキシアルキレン)基の導入が確認できた。また、PVA1のNMRチャート上からは単量体1のオレフィン結合に由来するピーク(5.8〜6.4ppm)は観測されず、PVA1中に単量体1が残存していないことが確認された。PVA1の水溶液を用いて30℃での極限粘度測定(オストワルド粘度管にて測定)を実施し粘度平均重合度を算出したところ、粘度平均重合度の値は1600であった。また該ビニルアルコール重合体のけん化度をJIS−K6726に準じて測定したところ、PVA1のけん化度は98.5モル%であった。PVA1を蒸留水に溶解して4%濃度とした水溶液について20℃での溶液状態を目視で観察したところ、PVAは完全に溶解しており溶液は無色透明であった。この溶液について10℃〜90℃の範囲内で温度を変化させて溶液状態を観察したところ、この温度範囲内においては常に溶液は無色透明であり、曇点は観測されなかった。
【0026】
実施例2〜実施例10
表1に示すポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーの変更と表2に示す重合条件の変更及び表3に示すけん化条件の変更以外は実施例1と同様の方法によってPVA2〜PVA10を合成した。得られたPVA1〜PVA10の分析結果及び水溶性を表4に示す。
【0027】
比較例1〜5
表1に示すポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーの変更、共重合時にコモノマー溶液の逐次添加を行わないなどの表2に示す重合条件の変更及び表3に示すけん化条件の変更以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系重合体PVA11〜PVA15を得た。得られたPVA11〜PVA15の物性及び水溶性を表4に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
表4に示すように、20℃において良好な水溶性を示し、かつ10℃〜90℃の温度において曇点が見られなかったのは本発明の条件を満たすものであり、本発明の範囲に含まれないものでは、20℃水溶性と曇点のいずれか又は両方において性能が劣っている。また、実施例のPVAにおいてはいずれもPVA中に残存モノマーは確認されなかったが、比較例のPVAの多くのものはPVA中に不純物として残存モノマーが確認された。
【0033】
実施例1と比較例2の比較
同じ構造のポリ(オキシアルキレン)基を等量変性しているが、実施例1では単量体単位中に含まれるカルボン酸(塩)基により水溶性が向上しており、10〜90℃の温度範囲においてその水溶液は常に無色透明であったのに対して、比較例2においてはカルボン酸(塩)が含まれないため水溶性が低く、20℃において水溶液は青みがかっており30℃では曇点を生じた。
【0034】
実施例6と比較例3の比較
同じ構造のポリ(オキシアルキレン)基を等量変性しているが、実施例6では10℃〜90℃の温度範囲においてその水溶液が常に無色透明であったのに対して、比較例3においては20℃では無色透明な水溶液となるものの、この水溶液を80℃に加熱すると曇点を生じ白濁した。
【0035】
実施例8と比較例4の比較及び実施例9と比較例5の比較
それぞれ同じ構造のポリ(オキシアルキレン)基を等量変性しているが、実施例8、9では10℃〜90℃の温度範囲においてその水溶液が常に無色透明であったのに対して、比較例4、5では20℃においても溶液が白濁しており、10℃〜90℃の温度範囲では常に溶液は白濁しており水溶性は悪い結果であった。
【0036】
【発明の効果】
本発明のビニルアルコール系重合体は、ポリ(オキシアルキレン)基と共にカルボン酸(あるいはその塩)基を有することから、従来水に不溶であったようなポリ(オキシアルキレン)基についてもPVAの水溶性を保持しており有用性が高い。また、ポリ(オキシアルキレン)基を有するためガラス転移点が低く、例えばフィルム状に成形した時、低温でも柔軟なフィルムが得られる。また、ポリ(オキシアルキレン)基によりPVAの熱安定性が向上するため、溶融成形などの目的に好適に用いることが可能である。また、PVA本来の性質も有しているため、PVAの公知の用途、例えばフィルム、シート、パイプ、分離膜、繊維、繊維用糊剤、繊維処理剤、繊維加工剤、繊維製品用サイズ剤、紙のクリアーコーテイング剤、紙の顔料コーティング剤、紙の内添サイズ剤、感熱紙のオーバーコート用バインダー等の紙加工剤、有機および無機顔料の分散剤、エマルジョン用重合分散安定剤、塩ビ用重合分散安定剤、モルタルやセメントの添加剤、感圧接着剤、防曇剤、塗料、紙や木材およびプラスチックなどの接着剤、不織布用バインダー、繊維用バインダー、セラミックス用バインダー、石膏ボードや繊維板などの各種建材用バインダー、ホットメルト接着剤、画像形成材料、感光性樹脂、ゲル用基材、ホルマール樹脂やブチラール樹脂等のポリビニルアセタール用原料、成形物(フィルム、繊維、シート、チューブ、不織布など)、土壌改良剤などにも好適に用いることができる。
Claims (2)
- ビニルアルコール系重合体中における一般式(1)で示すポリ(オキシアルキレン)基を有する単量体単位の含有量が50重量部以下である請求項1記載のビニルアルコール系重合体。
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