JP7067246B2 - 複合粒子、複合粒子の製造方法および乾燥粉体 - Google Patents
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Description
本発明は、微細化セルロースと生分解性を有した化合物との複合粒子、微細化セルロースと生分解性を有した化合物との複合粒子の製造方法およびその複合粒子を含んだ乾燥粉体に関する。
近年、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化し、新規な機能性材料として利用しようとする試みが活発に行われている。
例えば、特許文献1に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバー(以下、CNFとも称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10~50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用フィラーや吸着剤としての利用が期待されている。
例えば、特許文献1に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバー(以下、CNFとも称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10~50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用フィラーや吸着剤としての利用が期待されている。
また、木材中のセルロース繊維を微細化しやすいように予め化学処理したのち、家庭用ミキサー程度の低エネルギー機械処理により微細化してCNFを製造する試みが活発に行われている。上記化学処理の方法は特に限定されないが、セルロース繊維にアニオン性官能基を導入して微細化しやすくする方法が好ましい。セルロース繊維にアニオン性官能基が導入されることによってセルロースミクロフィブリル構造間に浸透圧効果で溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化に要するエネルギーを大幅に減少することができる。上記アニオン性官能基の導入方法としては特に限定されないが、例えば非特許文献1にはリン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行う方法が開示されている。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。
また、比較的安定なN-オキシル化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法も報告されている(例えば、特許文献3を参照)。TEMPOを触媒として用いる酸化反応(TEMPO酸化反応)は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能であり、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
TEMPO酸化によって選択的に結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の電離に伴う浸透圧効果により、溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、セルロースシングルナノファイバー(以下、CSNFとも称する)を得ることが可能となる。CSNFは表面のカルボキシ基に由来した高い分散安定性を示す。木材からTEMPO酸化反応によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm~数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および成形体は高い透明性を有することが報告されている。また、特許文献4にはCSNF分散液を塗布乾燥して得られる積層膜が、ガスバリア性を有することが報告されている。
ここで、CNFの実用化に向けては、得られるCNF分散液の固形分濃度が0.1~5%程度と低くなってしまうことが課題となっている。例えば微細化セルロース分散体を輸送しようとした場合、大量の溶媒を輸送するに等しいため輸送費の高騰を招き、事業性が著しく損なわれるという問題がある。また、樹脂強化用の添加剤として用いる際にも、固形分が低いことによる添加効率の悪化や、溶媒である水が樹脂と馴染まない場合には複合化が困難となるといった問題がある。また、含水状態で取り扱う場合、含水CNF分散体の腐敗の恐れもあるため、冷蔵保管や防腐処理などの対策が必要となり、コストが増加する恐れもある。
しかしながら、単純に熱乾燥などで微細化セルロース分散液の溶媒を除去してしまうと、微細化セルロース同士が凝集・角質化し、あるいは膜化してしまい、添加剤として安定な機能発現が困難になってしまう。さらにCNFの固形分濃度が低いため、乾燥による溶媒除去工程自体に多大なエネルギーがかかってしまうことも事業性を損なう一因となる。
このように、CNFを分散液の状態で取り扱うこと自体が事業性を損なう原因となるため、CNFを容易に取り扱うことができる新たな取り扱い様態を提供することが強く望まれている。
以上例示したように、カーボンニュートラル材料であるCNFまたはCSNFをはじめとする、微細化セルロースに新たな機能性を付与する高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。
このように、CNFを分散液の状態で取り扱うこと自体が事業性を損なう原因となるため、CNFを容易に取り扱うことができる新たな取り扱い様態を提供することが強く望まれている。
以上例示したように、カーボンニュートラル材料であるCNFまたはCSNFをはじめとする、微細化セルロースに新たな機能性を付与する高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。
一方、従来から様々な分野における機能性材料として、各種マイクロ粒子やマイクロカプセルが実用化されている。通常マイクロ粒子は各種ポリマーから形成されたマイクロサイズオーダーの粒子であり、例えば、充填材、スペーサー、研磨剤等として利用されている。従来の樹脂粉体の作製方法としては、例えば、界面活性剤を用いてエマルション化させたモノマーを重合させて作製する方法や、樹脂の塊状物を-50~-180℃の低温に冷却しながら機械粉砕・分級して微細な粉体を得る方法(特許文献5)などが挙げられる。しかしながら、前者は、例えば、攪拌操作や移送、助剤添加、塗工などの各工程で、発泡による泡トラブルを引き起こし、生産効率の低下を招いたり、界面活性剤の系外流出による廃水負荷も問題となっている。また、後者は、例えば、粉砕・分級作業には多くの時間が必要であり、粉体の形状が均一ではないという課題がある。また、マイクロ粒子を芯物質として粒子表面を壁膜で被覆したマイクロカプセル構造とすることにより、さらなる機能性の付与・発現が試みられている。具体的には、例えば、芯物質内に磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料等の機能性材料を取込ませた上でマイクロカプセル化することで、該機能性材料の保護や、放出挙動の制御などが可能となる。芯物質を覆う壁膜自体に機能性材料をさらに付与することも可能である。また近年では環境に配慮した、使用後は自然界の微生物によって分解され、最終的には水と二酸化炭素になることができる生分解性を有する粉体が強く望まれている。
このように、生分解性を有するマイクロ粒子を容易に取り扱うことができる新たな取り扱い様態を提供することが強く望まれている。
Noguchi Y, Homma I, Matsubara Y. Complete nanofibrillation of cellulose prepared by phosphorylation. Cellulose. 2017;24:1295.10.1007/s10570-017-1191-3
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、セルロースナノファイバーの特性を維持しつつ、生分解性を備えた、取り扱いが容易な新たな複合粒子、その複合粒子の製造方法、およびその複合粒子を含んだ乾燥粉体を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る複合粒子は、少なくとも一種類の生分解性を有した化合物を含む粒子と、前記生分解性を有した化合物を含む粒子の表面の少なくとも一部を覆う微細化セルロースとを有し、前記生分解性を有した化合物を含む粒子と前記微細化セルロースとが不可分の状態にある。
本発明の一態様に係る複合粒子は、少なくとも一種類の生分解性を有した化合物を含む粒子と、前記生分解性を有した化合物を含む粒子の表面の少なくとも一部を覆う微細化セルロースとを有し、前記生分解性を有した化合物を含む粒子と前記微細化セルロースとが不可分の状態にある。
本発明の一態様に係る複合粒子の製造方法は、セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロースの分散液を得る第1工程と、前記分散液中において生分解性を有した化合物を含む液滴の表面の少なくとも一部を前記微細化セルロースで覆い、前記生分解性を有した化合物を含む液滴をエマルションとして安定化させる第2工程と、前記生分解性を有した化合物を含む液滴の表面の少なくとも一部が前記微細化セルロースで覆われた状態で、前記生分解性を有した化合物を含む液滴を固体化してポリマー粒子とすることで、前記ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を前記微細化セルロースで覆い、かつ前記ポリマー粒子と前記微細化セルロースとを不可分の状態にする第3工程と、を有する。
本発明の一態様に係る複合粒子の製造方法の前記第2工程では、前記微細化セルロースの分散液に開始剤を含む前記生分解性を有する化合物と重合性モノマーとを混合したものを添加しエマルション化させる工程、前記生分解性を有する化合物を前記微細化セルロースの分散液への相溶性が低い溶媒で溶解したものを前記微細化セルロースの分散液に添加しエマルション化させる工程、および、前記微細化セルロースの分散液に常温にて固体である前記生分解性を有する化合物を添加し前記生分解性を有する化合物の融点以上に加熱し融解させエマルション化させる工程のうちいずれかの工程を用いてもよい。
本発明の一態様に係る乾燥粉体は、上述の複合粒子を含み、固形分率が80%以上である。
本発明の一態様によれば、セルロースナノファイバーの特性を維持しつつ、生分解性を備えた、取り扱いが容易な新たな複合粒子、その複合粒子の製造方法、およびその複合粒子を含んだ乾燥粉体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<微細化セルロース/生分解性を有する化合物複合粒子>
まず、本発明の実施形態に係る微細化セルロース/生分解性を有する化合物粒子の複合粒子5について説明する。図1はセルロースナノファイバー(以下、CNFもしくはセルロースとも称する)1を用いたO/W型ピッカリングエマルションと、エマルション内部の生分解性を有する化合物を固体化することで得られる複合粒子5の概略図である。なお、ここで言う「微細化セルロース」とは、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下の範囲内である繊維状セルロースを意味する。また、ここで言う「生分解性」とは、土壌や海水中などの地球環境において分解して消滅することを意味する。一般的に、土壌や海水中では微生物がもつ酵素によりポリマー等は分解され消滅するのに対し、生体内では酵素を必要とせず物理化学的な加水分解により分解され消滅する。
まず、本発明の実施形態に係る微細化セルロース/生分解性を有する化合物粒子の複合粒子5について説明する。図1はセルロースナノファイバー(以下、CNFもしくはセルロースとも称する)1を用いたO/W型ピッカリングエマルションと、エマルション内部の生分解性を有する化合物を固体化することで得られる複合粒子5の概略図である。なお、ここで言う「微細化セルロース」とは、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下の範囲内である繊維状セルロースを意味する。また、ここで言う「生分解性」とは、土壌や海水中などの地球環境において分解して消滅することを意味する。一般的に、土壌や海水中では微生物がもつ酵素によりポリマー等は分解され消滅するのに対し、生体内では酵素を必要とせず物理化学的な加水分解により分解され消滅する。
複合粒子5は、少なくとも一種類の生分解性を有する化合物を含んだ粒子である化合物粒子3を含有し、生分解性を有する化合物粒子3の表面に、微細化セルロース1により構成された被覆層を有し、生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とが結合して不可分の状態にある複合粒子である。
図1に示すように、分散液4に分散した生分解性を有する化合物を含んだ液滴である化合物液滴2の界面に微細化セルロース1が吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化し、安定化状態を維持したままエマルション内部の生分解性を有する化合物を固体化することによって、エマルションを鋳型とした複合粒子5が作成される。
図1に示すように、分散液4に分散した生分解性を有する化合物を含んだ液滴である化合物液滴2の界面に微細化セルロース1が吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化し、安定化状態を維持したままエマルション内部の生分解性を有する化合物を固体化することによって、エマルションを鋳型とした複合粒子5が作成される。
ここで言う「不可分」とは、例えば、複合粒子5を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで複合粒子5を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、微細化セルロース1と生分解性を有する化合物粒子3とが分離せず、微細化セルロース1による生分解性を有する化合物粒子3の被覆状態が保たれることを意味する。被覆状態の確認は、例えば、走査型電子顕微鏡による複合粒子5の表面観察により確認することができる。なお、複合粒子5において微細化セルロース1と生分解性を有する化合物粒子3の結合メカニズムについては定かではないが、複合粒子5が微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、エマルション内部の生分解性を有する化合物液滴2に微細化セルロース1が接触した状態で生分解性を有する化合物液滴2が固体化するために、固体化後に得られる複合粒子5において、コアとなる生分解性を有する化合物粒子3の表面に存在する微細化セルロース1の少なくとも一部が生分解性を有する化合物粒子3の内部に取り込まれた状態となることが予想される。以上の理由により、物理的に微細化セルロース1が固体化後の生分解性を有する化合物粒子3に固定化されて、最終的に生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とが不可分な状態に至ると推察される。
ここで、O/W型エマルションは、水中油滴型(Oil-in-Water)とも言われ、水を連続相とし、その中に油が油滴(油粒子)として分散しているものである。
また、複合粒子5は微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、複合粒子5の形状はO/W型エマルションに由来した真球状となることが特徴である。詳細には、真球状の生分解性を有する化合物粒子3の表面に微細化セルロース1からなる被覆層が比較的均一な厚みで形成された様態となる。被覆層の平均厚みは、例えば、複合粒子5を包埋樹脂で固定したものをミクロトームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の複合粒子5の断面像における被覆層の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。また、複合粒子5は比較的揃った厚みの被覆層で均一に被覆されていることが特徴であり、具体的には上述した被覆層の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。微細化セルロース1を含む被覆層の厚みの値の変動係数が0.5を超える場合には、例えば、複合粒子5の回収が困難となることがある。
また、複合粒子5は微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、複合粒子5の形状はO/W型エマルションに由来した真球状となることが特徴である。詳細には、真球状の生分解性を有する化合物粒子3の表面に微細化セルロース1からなる被覆層が比較的均一な厚みで形成された様態となる。被覆層の平均厚みは、例えば、複合粒子5を包埋樹脂で固定したものをミクロトームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の複合粒子5の断面像における被覆層の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。また、複合粒子5は比較的揃った厚みの被覆層で均一に被覆されていることが特徴であり、具体的には上述した被覆層の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。微細化セルロース1を含む被覆層の厚みの値の変動係数が0.5を超える場合には、例えば、複合粒子5の回収が困難となることがある。
さらに、微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、微細化セルロース1は繊維状であって、数平均短軸径が1nm以上1000nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であることが好ましい。また、微細化セルロース1の結晶構造は、セルロースI型であることが好ましい。
<複合粒子の製造方法>
次に、本実施形態の複合粒子の製造方法について説明する。本実施形態に係る複合粒子の製造方法は、セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース1の分散液4を得る工程(第1工程)と、微細化セルロース1の分散液4中において生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、生分解性を有する化合物液滴2をエマルションとして安定化させる工程(第2工程)と、生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、生分解性を有する化合物液滴2を固体化して生分解性を有する化合物粒子3とすることで、生分解性を有する化合物粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつ生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程(第3工程)と、を有する複合粒子5の製造方法である。
次に、本実施形態の複合粒子の製造方法について説明する。本実施形態に係る複合粒子の製造方法は、セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース1の分散液4を得る工程(第1工程)と、微細化セルロース1の分散液4中において生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、生分解性を有する化合物液滴2をエマルションとして安定化させる工程(第2工程)と、生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、生分解性を有する化合物液滴2を固体化して生分解性を有する化合物粒子3とすることで、生分解性を有する化合物粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつ生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程(第3工程)と、を有する複合粒子5の製造方法である。
上記製造方法により得られた複合粒子5は溶媒中の分散体として得られる。さらに溶媒を除去することにより乾燥固形物として得られる。溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば遠心分離法やろ過法によって余剰の水分を除去し、さらにオーブンで熱乾燥することで乾燥固形物として得ることができる。この際、得られる乾燥固形物は膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。この理由としては定かではないが、通常微細化セルロース分散体から溶媒を除去すると、微細化セルロース同士が強固に凝集、膜化することが知られている。一方、複合粒子5を含む分散液の場合、微細化セルロース1が表面に固定化された真球状の複合粒子であるため、溶媒を除去しても微細化セルロース1同士が凝集することなく、複合粒子間の点と点で接するのみであるため、その乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られると考えられる。また、複合粒子5同士の凝集がないため、乾燥粉体として得られた複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も複合粒子5の表面に結合された微細化セルロース1に由来した分散安定性を示す。
なお、複合粒子5の乾燥粉体は溶媒をほとんど含まず、さらに溶媒に再分散可能であることを特長とする乾燥固形物であり、具体的には固形分率を80%以上とすることができ、さらに90%以上とすることができ、さらに95%以上とすることができる。溶媒をほぼ除去することができるため、例えば、輸送費の削減、腐敗防止、添加率向上、樹脂との混練効率向上、といった観点から好ましい効果を得る。なお、乾燥処理により固形分率を80%以上にした際、微細化セルロース1は吸湿しやすいため、空気中の水分を吸着して固形分率が経時的に低下する可能性がある。しかしながら、複合粒子5は乾燥粉体として容易に得られ、さらに再分散させ得ることが特長である本発明の技術的思想を考慮すると、複合粒子5を含む乾燥粉体の固形分率を80%以上とする工程を含む乾燥固形物の製造方法により製造された乾燥固形物であれば、本発明の技術的範囲に含まれると定義する。
以下に、各工程について、詳細に説明する。
(第1工程)
第1工程はセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程である。まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。懸濁液中のセルロース原料の濃度が0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なう傾向があるため好ましくない。また、懸濁液中のセルロース原料の濃度が10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となる傾向があるため好ましくない。懸濁液作製に用いる溶媒としては、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%未満になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程において、微細化セルロース1の分散が阻害される傾向がある。また、水以外に含まれる溶媒としては親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒については特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース1の分散性を上げるために、例えば、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
(第1工程)
第1工程はセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程である。まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。懸濁液中のセルロース原料の濃度が0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なう傾向があるため好ましくない。また、懸濁液中のセルロース原料の濃度が10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となる傾向があるため好ましくない。懸濁液作製に用いる溶媒としては、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%未満になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程において、微細化セルロース1の分散が阻害される傾向がある。また、水以外に含まれる溶媒としては親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒については特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース1の分散性を上げるために、例えば、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料を微細化する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロース(微細化セルロース)1の分散液を得ることができる。また、このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られる微細化セルロース1の数平均短軸径および数平均長軸径を調整することができる。
上記のようにして、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロース1の分散体(微細化セルロース分散液)が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、後述するO/W型エマルションの安定化剤として用いることができる。
また、微細化セルロース分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、複合粒子5の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
また、微細化セルロース分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、複合粒子5の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
通常、微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であるため、本実施形態の製造方法に用いる微細化セルロース1としては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。すなわち、微細化セルロース1の形状としては、繊維状であることが好ましい。また、繊維状の微細化セルロース1は、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下であればよく、好ましくは2nm以上500nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、エマルションの安定化と、エマルションを鋳型とした重合反応とを実施することが困難となる傾向がある。一方、短軸径において数平均短軸径が1000nmを超えると、エマルションを安定化させるにはサイズが大きくなり過ぎるため、得られる複合粒子5のサイズや形状を制御することが困難となる傾向がある。また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の5倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍未満であると、複合粒子5のサイズや形状を十分に制御することが困難となる傾向があるために好ましくない。
なお、微細化セルロース繊維の数平均短軸径は、例えば、透過型電子顕微鏡観察または原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロース繊維の数平均長軸径は、例えば、透過型電子顕微鏡観察または原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
微細化セルロース1の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
微細化セルロース1の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
さらに微細化セルロース原料は化学改質されていることが好ましい。より具体的には、微細化セルロース原料の結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることが好ましい。セルロース結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることによって浸透圧効果でセルロース結晶間に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化が進行しやすくなるためである。
セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基がより好ましい。
セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基がより好ましい。
セルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減のためにはN-オキシル化合物を用いた酸化がより好ましい。
ここで、N-オキシル化合物としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高いTEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01~5.0質量%程度である。
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えば木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~200質量%程度である。
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は、4℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上70℃以下がより好ましい。酸化反応の反応温度が4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう傾向がある。酸化反応の反応温度が80℃を超えると副反応が促進して試料であるセルロースが低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造が崩壊し、O/W型エマルションの安定化剤として用いることが困難となる傾向がある。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9~11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料であるセルロースの分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、例えば、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、例えば、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、例えば、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、例えば、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。添加するアルコールとしては、例えば、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、例えば、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nm前後の均一な繊維幅を有するセルロースシングルナノファイバー(CSNF)が得られる。CSNFを複合粒子5の微細化セルロース1の原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nm前後の均一な繊維幅を有するセルロースシングルナノファイバー(CSNF)が得られる。CSNFを複合粒子5の微細化セルロース1の原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
以上のように、本実施形態で用いられるCSNFは、セルロース原料を酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CSNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることが困難となる傾向がある。また、カルボキシ基量が5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、O/W型エマルションの安定化剤として用いることが困難となる傾向がある。
(第2工程)
第2工程は、微細化セルロース1の分散液4中において生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で被覆して、生分解性を有する化合物液滴2をエマルションとして安定化させる工程である。
具体的には第1工程で得られた微細化セルロース分散液に生分解性を有する化合物を添加し、さらに生分解性を有する化合物を微細化セルロース分散液中に液滴として分散させ、さらに生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1によって被覆し、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。
第2工程は、微細化セルロース1の分散液4中において生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で被覆して、生分解性を有する化合物液滴2をエマルションとして安定化させる工程である。
具体的には第1工程で得られた微細化セルロース分散液に生分解性を有する化合物を添加し、さらに生分解性を有する化合物を微細化セルロース分散液中に液滴として分散させ、さらに生分解性を有する化合物液滴2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1によって被覆し、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。
O/W型エマルションを作製する方法としては、例えば、微細化セルロース分散液に開始剤を含む生分解性を有する化合物と重合性モノマーを混合したものを添加しエマルション化させる方法、生分解性を有する化合物を微細化セルロース分散液への相溶性が低い溶媒で溶解したものを微細化セルロース分散液に添加しエマルション化させる方法、微細化セルロース分散液に常温にて固体である生分解性を有する化合物を添加し生分解性を有する化合物の融点以上に加熱し融解させエマルション化させる方法がある。いずれの方法においても生分解性を有する化合物は微細化セルロース分散液に対して相溶性がないものが好ましい。相溶性がある場合は微細化セルロース分散液中にて生分解性を有する化合物の液滴を形成することが困難となり、複合体を得ることが困難となる傾向がある。
微細化セルロース分散液に開始剤を含む生分解性を有する化合物と重合性モノマーを混合したものを添加しエマルション化させる方法に用いることができる生分解性を有する化合物としては、水に溶解しない樹脂であれば制限されることはなく使用でき、具体的には、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテート誘導体、キチン、キトサン等の多糖類、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ポリエステルポリカーボネート類、ロジン等の天然樹脂等が挙げられる。また、これらは1種または2種以上を併用して用いることができる。
また、前述の生分解性を有する化合物としては、後述する重合性モノマーに溶解可能であることが好ましい。
また、前述の生分解性を有する化合物としては、後述する重合性モノマーに溶解可能であることが好ましい。
次いで、第2工程で用いることのできる重合性モノマーについて説明する。
第2工程で用いることのできる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と完全に相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性モノマーは多官能モノマーとも称する。重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等、)を用いることも可能である。
なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
第2工程で用いることのできる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と完全に相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性モノマーは多官能モノマーとも称する。重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等、)を用いることも可能である。
なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
単官能のビニル系モノマーとしては例えば、ビニルエーテル系、ビニルエステル系、芳香族ビニル系、特にスチレンおよびスチレン系モノマーなど、常温で水と相溶しない液体が好ましい。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、単官能芳香族ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソブチルトルエン、tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
多官能のビニル系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
例えば多官能性ビニル系モノマーとしては、具体的には、(1)ジビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン等のジビニル類、(2)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート類、(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート類、(4)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ジプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ジブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキシレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート類、(5)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチロールエタントリアクリレート等のトリアクリレート類、(6)テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート類、(7)その他に、例えばテトラメチレンビス(エチルフマレート)、ヘキサメチレンビス(アクリルアミド)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
例えば官能性スチレン系モノマーとしては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合比としては、生分解性を有する化合物/重合性モノマーの重量比で、10/90~85/15の範囲内であり、好ましくは15/85~70/30の範囲内である。生分解性を有する化合物量が10より低い場合、生分解性が弱く、重合性モノマー量が15より低い場合、重合体を構成することが難しくなる傾向がある。
また、重合性モノマーには予め重合開始剤が含まれていてもよい。一般的な重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤としては、例えばADVN、AIBNが挙げられる。
また、重合性モノマーには予め重合開始剤が含まれていてもよい。一般的な重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤としては、例えばADVN、AIBNが挙げられる。
例えば2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
第2工程において予め重合開始剤が含まれた状態の重合性モノマーを用いれば、O/W型エマルションを形成した際にエマルション粒子内部の重合性モノマー液滴(生分解性を有する化合物液滴)2中に重合開始剤が含まれるため、後述の第3工程においてエマルション内部のモノマーを重合させる際に重合反応が進行しやすくなる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。
生分解性を有する化合物を微細化セルロース分散液への相溶性が低い溶媒で溶解し微細化セルロース分散液に添加しエマルション化させる方法に用いることができるものとしては、前述の生分解性を有する化合物が挙げられる。また、生分解性を有する化合物を溶解する溶媒としては微細化セルロース分散液への相溶性が低い溶媒が好ましい。水への溶解度が高い場合、生分解性を有する化合物相から水相へ溶媒が容易に溶解してしまうため、エマルション化が困難となる傾向がある。水への溶解性がない場合は化合物相から溶媒が移動することができないため、複合粒子を得ることが極めて困難となる傾向がある。また、生分解性を有する化合物を溶解する溶媒は沸点が90℃以下であることが好ましい。沸点が90℃より高い場合、生分解性を有する化合物を溶解する溶媒よりも先に微細化セルロース分散液が蒸発してしまい複合粒子を得ることが極めて困難となる傾向がある。生分解性を有する化合物を溶解する溶媒としては、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼンなどが挙げられる。
微細化セルロース分散液に常温にて固体である生分解性を有する化合物を添加し生分解性を有する化合物の融点以上に加熱し融解させエマルション化させる方法に用いることができるものとしては、常温で固体であり、加熱することで溶解するものであり、融点が40℃以上90℃以下のものが好ましい。生分解性を有する化合物の融点が40℃未満である場合、常温で固体化することが難しいため、複合体を得ることが極めて困難となる傾向がある。また、生分解性を有する化合物の融点が90℃以上である場合、生分解性を有する化合物が溶解するよりも、一緒に加熱する微細化セルロース分散液の溶媒である水が気化してしまいエマルション化することが困難となる傾向がある。このため、本実施形態において使用できる生分解性を有する化合物としては、具体的にはペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ステアリルステアレート、ステアリン酸バチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ジステアリン酸エチレングリコール、ベヘニルアルコール、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、炭化水素ワックス、脂肪酸アルキルエステル、ポリオール脂肪酸エステル、脂肪酸エステルとワックスの混合物、脂肪酸エステルの混合物、グリセリンモノパルミテート(/ステアリン酸モノグリセライド)、グリセリンモノ・ジステアレート(/グリセリンステアレート)、グリセリンモノアセトモノステアレート(/グリセリン脂肪酸エステル)、コハク酸脂肪族モノグリセライド(/グリセリン脂肪酸エステル)、クエン酸飽和脂肪族モノグリセライド、ソルビタンモノステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタントリベヘネート、プロピレングリコールモノベヘネート(/プロピレングリコール脂肪酸エステル)、アジピン酸ペンタエリスリトールポリマーのステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ステアリルシトレート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、超淡色ロジン、ロジン含有ジオール、超淡色ロジン金属塩、水素化石油樹脂、ロジンエステル、水素化ロジンエステル、特殊ロジンエステル、ノボラック、結晶性ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレンエーテル等を主成分とするものが挙げられる。
また、生分解性を有する化合物には機能性成分が含まれていてもよい。具体的には磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物、等が挙げられる。生分解性を有する化合物に、予め機能性成分が含まれている場合、複合粒子5として形成した際の粒子内部に上述の機能性成分を含有させることができ、用途に応じた機能発現が可能となる。
第2工程において用いることができる微細化セルロース分散液と生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液の重量比については特に限定されないが、微細化セルロース繊維100質量部に対し、生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液が1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と添加物の混合液が1質量部未満となると複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。また、生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液が50質量部を超えると生分解性を有する化合物液滴2を微細化セルロース1で均一に被覆することが困難となる傾向があり好ましくない。
第2工程において用いることができる微細化セルロース分散液と生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液の重量比については特に限定されないが、微細化セルロース繊維100質量部に対し、生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液が1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と添加物の混合液が1質量部未満となると複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。また、生分解性を有する化合物および生分解性を有する化合物と重合性モノマーの混合液が50質量部を超えると生分解性を有する化合物液滴2を微細化セルロース1で均一に被覆することが困難となる傾向があり好ましくない。
O/W型エマルションを作製する方法としては特に限定されないが、一般的な乳化処理、例えば各種ホモジナイザー処理や機械攪拌処理を用いることができ、具体的には高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、万能ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ペイントシェイカーなどの機械的処理が挙げられる。また、複数の機械的処理を組み合わせて用いてもよい。
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、第1工程にて得られた微細化セルロース分散液に対し重合性モノマーを添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm2以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、第1工程にて得られた微細化セルロース分散液に対し重合性モノマーを添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm2以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
上記超音波処理により、微細化セルロース分散液中に生分解性を有する化合物液滴2が分散してエマルション化が進行し、さらに生分解性を有する化合物液滴2と微細化セルロース分散液の液/液界面に選択的に微細化セルロース1が吸着することで、生分解性を有する化合物液滴2が微細化セルロース1で被覆されO/W型エマルションとして安定した構造を形成する。このように、液/液界面に固体物が吸着して安定化したエマルションは、学術的には「ピッカリングエマルション」と呼称されている。前述のように微細化セルロース繊維によってピッカリングエマルションが形成されるメカニズムは定かではないが、セルロースはその分子構造において水酸基に由来する親水性サイトと炭化水素基に由来する疎水性サイトとを有することから両親媒性を示すため、両親媒性に由来して疎水性モノマーと親水性溶媒の液/液界面に吸着すると考えられる。
O/W型エマルション構造は、例えば、光学顕微鏡観察により確認することができる。O/W型エマルションの粒径サイズは特に限定されないが、通常0.1μm~1000μm程度である。
O/W型エマルション構造において、生分解性を有する化合物液滴2の表層に形成された微細化セルロース層(被覆層)の厚みは特に限定されないが、通常3nm~1000nm程度である。微細化セルロース層の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
O/W型エマルション構造において、生分解性を有する化合物液滴2の表層に形成された微細化セルロース層(被覆層)の厚みは特に限定されないが、通常3nm~1000nm程度である。微細化セルロース層の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
(第3工程)
第3工程は、生分解性を有する化合物液滴2を固体化して微細化セルロース1で生分解性を有する化合物粒子3が被覆された複合粒子5を得る工程である。より詳しくは、第3工程は、生分解性を有した化合物を含む化合物液滴2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、生分解性を有した化合物を含む化合物液滴2を固体化して生分解性を有する化合物粒子3とすることで、生分解性を有する化合物粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつ生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程である。
第2工程にて微細化セルロース分散液に開始剤を含む生分解性を有する化合物と重合性モノマーを混合したものを添加しエマルション化させる方法を用いた場合、生分解性を有する化合物と重合性モノマーを重合する方法については特に限定されず、用いた重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜選択可能である。前述の生分解性を有する化合物と重合性モノマーを重合する方法としては、例えば懸濁重合法が挙げられる。
第3工程は、生分解性を有する化合物液滴2を固体化して微細化セルロース1で生分解性を有する化合物粒子3が被覆された複合粒子5を得る工程である。より詳しくは、第3工程は、生分解性を有した化合物を含む化合物液滴2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、生分解性を有した化合物を含む化合物液滴2を固体化して生分解性を有する化合物粒子3とすることで、生分解性を有する化合物粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつ生分解性を有する化合物粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程である。
第2工程にて微細化セルロース分散液に開始剤を含む生分解性を有する化合物と重合性モノマーを混合したものを添加しエマルション化させる方法を用いた場合、生分解性を有する化合物と重合性モノマーを重合する方法については特に限定されず、用いた重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜選択可能である。前述の生分解性を有する化合物と重合性モノマーを重合する方法としては、例えば懸濁重合法が挙げられる。
具体的な懸濁重合の方法についても特に限定されず、公知の方法を用いて実施することができる。例えば第2工程で作製された、重合開始剤を含む生分解性を有する化合物と重合性モノマーとを含有する化合物液滴2が微細化セルロース1によって被覆され安定化したO/W型エマルションを攪拌しながら加熱することによって実施することができる。攪拌の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、具体的にはディスパーや攪拌子を用いることができる。また、攪拌せずに加熱処理のみでもよい。また、加熱時の温度条件については重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、20度以上90度以下が好ましい。加熱時の温度が20度未満であると重合の反応速度が低下する傾向があるため好ましくなく、90度を超えると微細化セルロース分散液が蒸発してしまう傾向があるため好ましくない。重合反応に供する時間は重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、通常1時間~24時間程度である。また、重合反応は電磁波の一種である紫外線照射処理によって実施してもよい。また、電磁波以外にも電子線などの粒子線を用いてもよい。
第2工程にて生分解性を有する化合物を微細化セルロース分散液への相溶性が低い溶媒で溶解し微細化セルロース分散液に添加しエマルション化させる方法を用いた場合、エマルションを加熱し、生分解性を有する化合物を溶解した溶媒を揮発させることで生分解性を有する化合物を固体化させることができる。加熱時の温度条件については溶解する溶媒の種類によって適宜設定することが可能であるが、溶媒の沸点以上90度以下が好ましい。加熱時の温度が溶媒の沸点未満であると溶媒が水相へ移動するのが遅くなり、90度を超えると微細化セルロース分散液が蒸発してしまう傾向があるため好ましくない。
第2工程にて微細化セルロース分散液に常温にて固体である生分解性を有する化合物を添加し生分解性を有する化合物の融点以上に加熱し融解させエマルション化させる方法を用いた場合、エマルションを冷却し、生分解性を有する化合物の融点以下にすることで生分解性を有する化合物を固体化することができる。
上述の工程を経て、生分解性を有する化合物粒子3が微細化セルロース1によって被覆された真球状の複合粒子5を作製することができる。
上述の工程を経て、生分解性を有する化合物粒子3が微細化セルロース1によって被覆された真球状の複合粒子5を作製することができる。
なお、固体化の反応終了直後の状態は、複合粒子5の分散液中に多量の水と複合粒子5の被覆層に形成に寄与していない遊離した微細化セルロース1が混在した状態となっている。そのため、作製した複合粒子5を回収・精製する必要があり、回収・精製方法としては、遠心分離による洗浄またはろ過洗浄が好ましい。遠心分離による洗浄方法としては公知の方法を用いることができ、具体的には遠心分離によって複合粒子5を沈降させて上澄みを除去し、水・メタノール混合溶媒に再分散する操作を繰り返し、最終的に遠心分離によって得られた沈降物から残留溶媒を除去して複合粒子5を回収することができる。ろ過洗浄についても公知の方法を用いることができ、例えば孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて水とメタノールで吸引ろ過を繰り返し、最終的にメンブレンフィルター上に残留したペーストからさらに残留溶媒を除去して複合粒子5を回収することができる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた複合粒子5を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた複合粒子5を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
(実施形態の効果)
本実施形態に係る複合粒子5は、複合粒子5の表面の微細化セルロース1に由来した、生体親和性が高く溶媒中でも凝集することない良好な分散安定性を有する、新規な複合粒子である。
また、本実施形態に係る複合粒子5を含む乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られ、粒子同士の凝集がない。このため、乾燥粉体として得られた複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も複合粒子5の表面に結合された微細化セルロース1の被覆層に由来した分散安定性を示す。
また、本実施形態に係る複合粒子5の製造方法によれば、環境への負荷が低く、簡便な方法で提供することが可能な新規な複合粒子5の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る複合粒子5は、複合粒子5の表面の微細化セルロース1に由来した、生体親和性が高く溶媒中でも凝集することない良好な分散安定性を有する、新規な複合粒子である。
また、本実施形態に係る複合粒子5を含む乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られ、粒子同士の凝集がない。このため、乾燥粉体として得られた複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も複合粒子5の表面に結合された微細化セルロース1の被覆層に由来した分散安定性を示す。
また、本実施形態に係る複合粒子5の製造方法によれば、環境への負荷が低く、簡便な方法で提供することが可能な新規な複合粒子5の製造方法を提供することができる。
また、本実施形態に係る微細化セルロース1の複合体を含む乾燥固形物によれば、乾燥固形物を溶媒に再分散可能な形で提供することができる。
また、本実施形態に係る複合粒子5によれば、溶媒をほとんど除去することが可能なため、輸送費の削減、腐敗リスクの低減、添加剤としての添加効率の向上、疎水性樹脂への混練効率向上といった効果が期待できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の第一実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
また、本実施形態に係る複合粒子5によれば、溶媒をほとんど除去することが可能なため、輸送費の削減、腐敗リスクの低減、添加剤としての添加効率の向上、疎水性樹脂への混練効率向上といった効果が期待できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の第一実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
<実施例1>
(第1工程:セルロースナノファイバー分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
(第1工程:セルロースナノファイバー分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
(酸化パルプのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
(酸化パルプの解繊処理)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。CSNF分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV-3600」)を用いて分光透過スペクトルの測定を行った結果を図2に示す。図2から明らかなように、CSNF水分散液は高い透明性を示した。また、CSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。さらに、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果を図3に示す。図3から明らかなように、CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。CSNF分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV-3600」)を用いて分光透過スペクトルの測定を行った結果を図2に示す。図2から明らかなように、CSNF水分散液は高い透明性を示した。また、CSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。さらに、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果を図3に示す。図3から明らかなように、CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
(第2工程:O/W型エマルションを作製する工程)
次に、生分解性を有する化合物であるセルロースアセテートブチレート(商品名CAB-551-0.2以下、CABとも称する。)1g、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)9gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させた。CAB/DVB/ADVN混合溶液全量を、CSNF濃度1%のCSNF分散液40gに対し添加したところ、CAB/DVB/ADVN混合溶液とCSNF分散液はそれぞれ透明性の高い状態で2層に分離した。
次に、上記2層分離した状態の混合液における上層の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1~数μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
次に、生分解性を有する化合物であるセルロースアセテートブチレート(商品名CAB-551-0.2以下、CABとも称する。)1g、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)9gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させた。CAB/DVB/ADVN混合溶液全量を、CSNF濃度1%のCSNF分散液40gに対し添加したところ、CAB/DVB/ADVN混合溶液とCSNF分散液はそれぞれ透明性の高い状態で2層に分離した。
次に、上記2層分離した状態の混合液における上層の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1~数μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
(第3工程:重合反応によりCNFで被覆された複合粒子5を得る工程)
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。得られた分散液に対し、遠心力75,000g(gは重力加速度)で5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで繰り返し洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価したところ平均粒径2.1μmであった。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。得られた分散液に対し、遠心力75,000g(gは重力加速度)で5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで繰り返し洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価したところ平均粒径2.1μmであった。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
(走査型電子顕微鏡による形状観察)
得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図4および図5に示す。図4から明らかなように、O/W型エマルション液滴を鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルション液滴の形状に由来した、真球状の複合粒子5が無数に形成していることが確認された。さらに図5に示されるように、その表面は幅数nmのCNFによって均一に被覆されていることが確認された。また、ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、複合粒子5の表面は等しく均一に微細化セルロース1によって被覆されていることから、本実施形態の複合粒子5において、複合粒子5内部のモノマー(化合物粒子3)と微細化セルロース1であるCNFは結合している可能性があり、化合物粒子3と微細化セルロース1とが不可分の状態にあることが示された。
得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を図4および図5に示す。図4から明らかなように、O/W型エマルション液滴を鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルション液滴の形状に由来した、真球状の複合粒子5が無数に形成していることが確認された。さらに図5に示されるように、その表面は幅数nmのCNFによって均一に被覆されていることが確認された。また、ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、複合粒子5の表面は等しく均一に微細化セルロース1によって被覆されていることから、本実施形態の複合粒子5において、複合粒子5内部のモノマー(化合物粒子3)と微細化セルロース1であるCNFは結合している可能性があり、化合物粒子3と微細化セルロース1とが不可分の状態にあることが示された。
(再分散性の評価)
複合粒子5の乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、攪拌子で再分散させたところ、容易に再分散し、凝集も見られなかった。また、粒度分布計を用いて粒径を評価したところ、平均粒径は乾燥前と同様に2.1μmとなり、粒度分布計のデータにおいても凝集を示すようなシグナルは存在しなかった。
以上のことから、複合粒子5は、その表面がCNFで被覆されているにもかかわらず、乾燥によって膜化することなく粉体として得られ、かつ再分散性も良好であることが示された。
複合粒子5の乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、攪拌子で再分散させたところ、容易に再分散し、凝集も見られなかった。また、粒度分布計を用いて粒径を評価したところ、平均粒径は乾燥前と同様に2.1μmとなり、粒度分布計のデータにおいても凝集を示すようなシグナルは存在しなかった。
以上のことから、複合粒子5は、その表面がCNFで被覆されているにもかかわらず、乾燥によって膜化することなく粉体として得られ、かつ再分散性も良好であることが示された。
<実施例2>
実施例1においてCBAの代わりにポリブチレンサクシネート(商品名BioPBS、三菱ケミカル、以下、PBSとも称する。)を、DVBの代わりにジエチレングリコールジアクリレート(商品名FA-222A、日立化成、以下、FA-222Aとも称する。)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例2に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例3>
実施例1においてTEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた特許文献2に従いカルボキシメチル化(以下、CM化とも称する。)処理を行って得られたCM化CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例3に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例4>
実施例1においてTEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた非特許文献1に従いリン酸エステル化処理を行って得られたリン酸エステル化CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例4に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
実施例1においてCBAの代わりにポリブチレンサクシネート(商品名BioPBS、三菱ケミカル、以下、PBSとも称する。)を、DVBの代わりにジエチレングリコールジアクリレート(商品名FA-222A、日立化成、以下、FA-222Aとも称する。)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例2に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例3>
実施例1においてTEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた特許文献2に従いカルボキシメチル化(以下、CM化とも称する。)処理を行って得られたCM化CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例3に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例4>
実施例1においてTEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた非特許文献1に従いリン酸エステル化処理を行って得られたリン酸エステル化CNF分散液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、実施例4に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例5>
生分解性を有する化合物としてポリ乳酸(商品名テラマックTE4000、以下、PLAと称する。)6gをジクロロメタン(沸点:39.6℃)4gに溶解させた。ポリ乳酸/ジクロロメタン混合溶液全量を、実施例1にて使用したCSNF分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液に対して実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、ジクロロメタンを揮発させた。8時間処理後に上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、実施例5に係る乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
<実施例6>
実施例5においてポリ乳酸の代わりにポリカプロラクトン(商品名TONE、UCC、以下、PCLとも称する。)を、ジクロロメタンの代わりにクロロホルムをそれぞれ用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、実施例6に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
生分解性を有する化合物としてポリ乳酸(商品名テラマックTE4000、以下、PLAと称する。)6gをジクロロメタン(沸点:39.6℃)4gに溶解させた。ポリ乳酸/ジクロロメタン混合溶液全量を、実施例1にて使用したCSNF分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液に対して実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、ジクロロメタンを揮発させた。8時間処理後に上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、実施例5に係る乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
<実施例6>
実施例5においてポリ乳酸の代わりにポリカプロラクトン(商品名TONE、UCC、以下、PCLとも称する。)を、ジクロロメタンの代わりにクロロホルムをそれぞれ用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、実施例6に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<実施例7>
生分解性を有する化合物としてステアリン酸(融点:69.6℃)10gを、実施例1にて使用したCSNF分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液を、ウォーターバスを用いて80℃に加温し、ステアリン酸を融解させた後、実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、室温まで冷却させた。
最後に、上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、実施例7に係る乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
<実施例8>
実施例7においてステアリン酸の代わりに、パラフィンワックス(商品名パラフィンワックス135°F、融点:57.2℃、山桂産業、以下、パラフィンとも称する。)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、実施例8に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
生分解性を有する化合物としてステアリン酸(融点:69.6℃)10gを、実施例1にて使用したCSNF分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液を、ウォーターバスを用いて80℃に加温し、ステアリン酸を融解させた後、実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、室温まで冷却させた。
最後に、上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、実施例7に係る乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
<実施例8>
実施例7においてステアリン酸の代わりに、パラフィンワックス(商品名パラフィンワックス135°F、融点:57.2℃、山桂産業、以下、パラフィンとも称する。)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、実施例8に係る複合粒子5を作製し、同様に各種評価を実施した。
<比較例1>
実施例1においてCSNF分散液の代わりに純水を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例1に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例2>
実施例1においてCSNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例2に係る複合粒子の作製を試みた。
実施例1においてCSNF分散液の代わりに純水を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例1に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例2>
実施例1においてCSNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例2に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例3>
本発明の複合粒子ではなく、市販のポリ乳酸微粒子(商品名トレパールPLA、東レ)を1%濃度で分散させた分散液を用いた以外実施例1と同様の条件で、比較例3に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例4>
実施例5においてジクロロメタンの代わりにキシレン(沸点144℃)を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、比較例4に係る複合粒子の作製を試みた。
本発明の複合粒子ではなく、市販のポリ乳酸微粒子(商品名トレパールPLA、東レ)を1%濃度で分散させた分散液を用いた以外実施例1と同様の条件で、比較例3に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例4>
実施例5においてジクロロメタンの代わりにキシレン(沸点144℃)を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、比較例4に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例5>
実施例7においてステアリン酸の代わりにオレイン酸(融点:13.4℃)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、比較例5に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例6>
実施例7においてステアリン酸の代わりにアミド系ワックス(商品名ITOHWAX-J630、融点:135℃、山桂産業、以下ITOWAXと称する。)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、比較例6に係る複合粒子の作製を試みた。
実施例7においてステアリン酸の代わりにオレイン酸(融点:13.4℃)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、比較例5に係る複合粒子の作製を試みた。
<比較例6>
実施例7においてステアリン酸の代わりにアミド系ワックス(商品名ITOHWAX-J630、融点:135℃、山桂産業、以下ITOWAXと称する。)を用いたこと以外は実施例7と同様の条件で、比較例6に係る複合粒子の作製を試みた。
以上の実施例および比較例を用いた評価結果については、以下の表1にまとめて掲載した。
なお、表1において、エマルションの安定化剤とは、第2工程においてO/W型エマルションを安定化させるために用いた添加剤のことであって、例えば本実施形態における微細化セルロース1が相当する。
〔評価基準〕
表1において、第2工程の可否については、以下のように判定した。
○:O/W型エマルションの形成が可能
×:O/W型エマルションの形成が不可能
また、第3工程の可否については、以下のように判定した。
○:第3工程のエマルション鋳型とした真球状の粒子が得られた
×:上記粒子は得られなかった
また、再分散性に関しては、以下のように判定した。
○:得られた複合粒子が溶媒(水)に、凝集することなく分散した
×:分散せずに凝集した
表1において、第2工程の可否については、以下のように判定した。
○:O/W型エマルションの形成が可能
×:O/W型エマルションの形成が不可能
また、第3工程の可否については、以下のように判定した。
○:第3工程のエマルション鋳型とした真球状の粒子が得られた
×:上記粒子は得られなかった
また、再分散性に関しては、以下のように判定した。
○:得られた複合粒子が溶媒(水)に、凝集することなく分散した
×:分散せずに凝集した
また、生分解性に関してはJIS規格「JIS K6950:2000 プラスチック-水系培養液中の好気的究極生分解度の求め方-閉鎖呼吸計を用いる酸素消費量の測定による方法」に基づき評価した。複合粒子5と活性汚泥をそれぞれ100mg/L、30mg/Lになるように無機塩培地に添加し、酸素の消費量を測定し、酸素消費生物化学的酸素要求量(BOD;化学物質又は有機物が、特定条件下で、水中での好気的生物酸化によって消費された溶存酸素の質量濃度)を算出した。
コントロールとして複合粒子5が入っていない無機塩培地を用いた。複合粒子5の全てが水と炭酸ガスにまで変換されるのに必要な酸素量(理論酸素要求量、ThOD)をポリマー組成式から算出した。生分解度は、理論酸素要求量に対する生物化学的酸素要求量として算出した(生分解度=BOD/ThOD×100)。なお、生分解性を以下の基準で判定した。
〇:試験開始から28日後の生分解度が80%以上であった。
×:試験開始から28日後の生分解度が80%未満であった。
〇:試験開始から28日後の生分解度が80%以上であった。
×:試験開始から28日後の生分解度が80%未満であった。
また、表1の比較例中の各セルにおける斜線表記は、各工程実施中に工程の遂行が不可能となり、その後の工程を実施していないことを示している。
表1の実施例1~8の評価結果において明らかなように、微細化セルロース1の種類(TEMPO酸化CNF、CM化CNF、リン酸エステル化CNF)、または生分解性を有する化合物の種類や重合性モノマーの種類に拠らず、生分解性を有する複合粒子5を作製可能であり、本発明における課題解決に奏功することが確認された。
一方、比較例1においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー層とCNF分散液層が2層分離したままの状態となり、O/W型エマルションの作製自体が不可能であった。
表1の実施例1~8の評価結果において明らかなように、微細化セルロース1の種類(TEMPO酸化CNF、CM化CNF、リン酸エステル化CNF)、または生分解性を有する化合物の種類や重合性モノマーの種類に拠らず、生分解性を有する複合粒子5を作製可能であり、本発明における課題解決に奏功することが確認された。
一方、比較例1においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー層とCNF分散液層が2層分離したままの状態となり、O/W型エマルションの作製自体が不可能であった。
また、比較例2においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。これはCMCが微細化セルロースと同様に両親媒性を示したため、エマルションの安定化剤として機能したと考えられる。しかしながら、続く第3工程において重合反応を実施すると、エマルションが崩壊してしまい、O/W型エマルションを鋳型とした複合粒子を得ることができなかった。この理由としては定かではないが、CMCは水溶性であるため、重合反応中もエマルション形状を維持するための被覆層としては脆弱である可能性が高く、そのため重合反応中にエマルションが崩壊したと考えられる。
また、比較例3においては、類似の構成でCNFに被覆されていない市販のPLA微粒子を用いたが、SEMによる形状観察により、微粒子表面に微細化セルロースが被覆している様子は観察できなかった。
また、比較例4においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。しかし、第3工程においてキシレンを除去するにあたり、CNF分散液に水を使用しているためにキシレンの沸点以上にすることができないため、生分解性を有する化合物液滴2を固体化することができず、複合粒子を得ることができなかった。
また、比較例4においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。しかし、第3工程においてキシレンを除去するにあたり、CNF分散液に水を使用しているためにキシレンの沸点以上にすることができないため、生分解性を有する化合物液滴2を固体化することができず、複合粒子を得ることができなかった。
また、比較例5においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。しかし、第3工程において室温まで冷却してもオレイン酸は凝固することがなく、生分解性を有する化合物液滴2を固体化することができず、複合粒子を得ることができなかった。
また、比較例6においては、第2工程においてCNF分散液に使用している水の沸点よりも高温にすることができず、ITOWAXを融解させることができないため、O/W型エマルションの形成することができなかった。
また、比較例6においては、第2工程においてCNF分散液に使用している水の沸点よりも高温にすることができず、ITOWAXを融解させることができないため、O/W型エマルションの形成することができなかった。
本発明の複合粒子は、添加剤としての添加効率、樹脂との混練効率が向上し、また輸送効率向上や腐敗防止の観点からコスト削減にも寄与するなど、産業実施の観点から好ましい効果が得られる。さらに本発明の複合粒子の特徴である生分解性を有する化合物を内包しており、化合物を被覆しているCNFも生分解性材料であるため、環境に配慮した材料である。また、本複合粒子は粒子表面の微細化セルロースや内包されたポリマーの特性を活かすことによって、色材、吸着剤、化粧顔料、徐放材、消臭剤、抗菌性医療用部材、パーソナルケア用品向け抗菌性物品、包装材料、色素増感太陽電池、光電変換材料、光熱変換材料、遮熱材料、光学フィルター、ラマン増強素子、画像表示素子、磁性粉、触媒担持体、ドラッグデリバリーシステム、などに適用することができる。
1 セルロースナノファイバー(微細化セルロース)
2 生分解性を有する化合物液滴(重合性モノマー液滴)
3 生分解性を有する化合物粒子
4 分散液
5 複合粒子
2 生分解性を有する化合物液滴(重合性モノマー液滴)
3 生分解性を有する化合物粒子
4 分散液
5 複合粒子
Claims (4)
- 少なくとも一種類の生分解性を有した化合物を含む粒子と、前記生分解性を有した化合物を含む粒子の表面の少なくとも一部を覆う微細化セルロースとを有し、前記生分解性を有した化合物を含む粒子と前記微細化セルロースとが不可分の状態にあることを特徴とする複合粒子。
- セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロースの分散液を得る第1工程と、
前記分散液中において生分解性を有した化合物を含む液滴の表面の少なくとも一部を前記微細化セルロースで覆い、前記生分解性を有した化合物を含む液滴をエマルションとして安定化させる第2工程と、
前記生分解性を有した化合物を含む液滴の表面の少なくとも一部が前記微細化セルロースで覆われた状態で、前記生分解性を有した化合物を含む液滴を固体化してポリマー粒子とすることで、前記ポリマー粒子の表面の少なくとも一部を前記微細化セルロースで覆い、かつ前記ポリマー粒子と前記微細化セルロースとを不可分の状態にする第3工程と、を有することを特徴とする複合粒子の製造方法。 - 前記第2工程では、
前記微細化セルロースの分散液に開始剤を含む前記生分解性を有する化合物と重合性モノマーとを混合したものを添加しエマルション化させる工程、前記生分解性を有する化合物を前記微細化セルロースの分散液への相溶性が低い溶媒で溶解したものを前記微細化セルロースの分散液に添加しエマルション化させる工程、および、前記微細化セルロースの分散液に常温にて固体である前記生分解性を有する化合物を添加し前記生分解性を有する化合物の融点以上に加熱し融解させエマルション化させる工程のうちいずれかの工程を用いることを特徴とする請求項2に記載の複合粒子の製造方法。 - 請求項1に記載の複合粒子を含み、固形分率が80%以上であることを特徴とする乾燥粉体。
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