JP2020183499A - 徐放性複合粒子、成形体および徐放性複合粒子の製造方法 - Google Patents

徐放性複合粒子、成形体および徐放性複合粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微細化セルロース(セルロースナノファイバー)のガスバリア性、親水性、耐熱性、高強度、分散安定性等の特性により、揮発性成分を紫外線、熱、酸素等から保護し、分散安定性に優れ、且つ優れた徐放性を有して長期間効果を発揮し、内包された揮発性成分の徐放速度を温度によってコントロールできる徐放性複合粒子を提供する。【解決手段】少なくとも一種類のポリマー及び少なくとも一種類の揮発性成分を含むコア粒子を含み、コア粒子の表面に微細化セルロースからなる被覆層を有する複合粒子であって、複合粒子の粒子径が0.1μm〜300μm、前記被覆層の厚みが3nm〜1000nm、複合粒子の体積に対する前記被覆層の体積比率が1%以上50%以下であって、コア粒子と微細化セルロースとが結合して不可分の状態にある徐放性複合粒子。【選択図】図1

Description

本発明は、揮発性成分を内包する徐放性複合粒子、成形体および徐放性複合粒子の製造方法に関する。
従来から様々な分野における機能性材料として、各種マイクロ粒子やマイクロカプセルが実用化されている。通常マイクロ粒子は各種ポリマーから形成されたマイクロサイズオーダーの粒子であり、充填材、スペーサー、研磨剤、等として利用されている。
このマイクロ粒子の応用技術として、例えば特許文献1に示すように、マイクロ粒子中に防腐防カビ剤を内包することにより、内包物を徐放化し、長期間にわたりその効果を持続させることができる。
上記のマイクロ粒子においては、内包物の放出を持続させることは可能であるが、一時的に放出速度を速めたり、遅くしたりすることができないという課題がある。より効果的に内包物を放出させるためには、持続時間が長く、放出速度をコントロールすることが可能な徐放性複合粒子が望まれる。
温度により放出速度をコントロールできるマイクロカプセルとして、特許文献2に示すような温度応答性高分子を用いた例がある。これによれば、マイクロカプセルに温度応答性高分子であるポリイソプロピルアクリルアミドを含有させることで、化粧品に含まれる有効成分の徐放性を体温付近でコントロールできるとしている。
一方、近年、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化し、新規な機能性材料として利用しようとする試みが活発に行われている。
例えば、特許文献3に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース、すなわちセルロースナノファイバー(以下CNFとも称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10〜50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用フィラーや吸着剤としての利用が期待されている。
また、木材中のセルロース繊維を微細化しやすいように予め化学処理したのち、家庭用ミキサー程度の低エネルギー機械処理により微細化してCNFを製造する試みが活発に行われている。上記化学処理の方法は特に限定されないが、セルロース繊維にアニオン性官能基を導入して微細化しやすくする方法が好ましい。
セルロース繊維にアニオン性官能基が導入されることによって、セルロースミクロフィブリル構造間に浸透圧効果で溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化に要するエネルギーを大幅に減少することができる。
上記アニオン性官能基の導入方法としては特に限定されないが、例えば非特許文献1には、リン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が開示されている。
また、特許文献4には、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノ
クロロ酢酸ナトリウムと反応させることにより、カルボキシメチル化を行う方法が開示されている。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。
また、比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法も報告されている(例えば、特許文献5を参照)。
TEMPOを触媒として用いる酸化反応(TEMPO酸化反応)は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能であり、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
TEMPO酸化によって選択的に結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の電離に伴う浸透圧効果により、溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、セルロースシングルナノファイバー(以下CSNF、TEMPO酸化セルロースナノファイバー、TEMPO酸化CNFとも称する)を得ることが可能となる。
CSNFは、表面のカルボキシ基に由来した高い分散安定性を示す。木材からTEMPO酸化反応によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および成形体は高い透明性を有することが報告されている。
また、特許文献6にはCSNF分散液を塗布乾燥して得られる積層膜が、ガスバリア性を有することが報告されている。
ガスバリア性に関して、特許文献7においては、セルロースナノファイバーを用いた積層体について、セルロースナノファイバーがセルロースIの結晶構造を有しており、また結晶化度が50%以上の場合にガスバリア性を発揮することが示されており、結晶化度が70%以上であると、より高いガスバリア性が得られる。
ここで、CNFの実用化に向けては、得られるCNF分散液の固形分濃度が0.1〜5%程度と低くなってしまうことが課題となっている。例えば微細化セルロース分散体を輸送しようとした場合、大量の溶媒を輸送するに等しいため輸送費の高騰を招き、事業性が著しく損なわれるという問題がある。
また、樹脂強化用の添加剤として用いる際にも、固形分が低いことによる添加効率の悪化や、溶媒である水が樹脂と馴染まない場合には複合化が困難となるといった問題がある。また、含水状態で取り扱う場合、腐敗の恐れもあるため、冷蔵保管や防腐処理などの対策が必要となり、コストが増加する恐れもある。
しかしながら、単純に熱乾燥などで微細化セルロース分散液の溶媒を除去してしまうと、微細化セルロース同士が凝集・角質化し、あるいは膜化してしまい、添加剤として安定な機能発現が困難になってしまう。さらにCNFの固形分濃度が低いため、乾燥による溶媒除去工程自体に多大なエネルギーがかかってしまうことも事業性を損なう一因となる。
このように、CNFを分散液の状態で取り扱うこと自体が事業性を損なう原因となるため、CNFを容易に取り扱うことができる新たな取り扱い様態を提供することが強く望まれている。
特開2006−1188号公報 特許第4734661号公報 特開2010−216021号公報 国際公開第2014/088072号 特開2008−001728号公報 国際公開第2013/042654号 特許第5407304号公報
Noguchi Y, Homma I, Matsubara Y. Complete nanofibrillation of cellulose prepared by phosphorylation. Cellulose. 2017;24:1295.10.1007/s10570-017-1191-3
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、微細化セルロース(セルロースナノファイバー)のガスバリア性、親水性、耐熱性、高強度、分散安定性等の特性により、揮発性成分を紫外線、熱、酸素等から保護し、分散安定性に優れ、且つ優れた徐放性を有して長期間効果を発揮する徐放性複合粒子を提供することを課題とする。
また、CNFのガスバリア性が温度により変化することを利用して、内包された揮発性成分の徐放速度を温度によってコントロールできる徐放性複合粒子を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
少なくとも一種類のポリマー及び少なくとも一種類の揮発性成分を含むコア粒子を含み、前記コア粒子の表面に微細化セルロースからなる被覆層を有する複合粒子であって、
前記複合粒子の粒子径が0.1μm〜300μmであり、
前記被覆層の厚みが3nm〜1000nmであり、
前記複合粒子の体積に対する前記被覆層の体積比率が1%以上50%以下であって、
前記コア粒子と前記微細化セルロースとが結合して不可分の状態にあることを特徴とする、徐放性複合粒子である。
本発明の複合粒子の一態様によれば、微細化セルロース(セルロースナノファイバー)のガスバリア性、親水性、耐熱性、高強度の特性により、揮発性成分を紫外線、熱、酸素等から保護し、分散安定性が良好であるために優れた徐放性を有して長期間効果を発揮する複合粒子を提供できる。また、微細化セルロースのガスバリア性により揮発性成分を安定的に内包させることができ、且つ温度によってバリア性が変化することを利用して、徐放速度をコントロールできる徐放性複合粒子を提供することができる。
本発明の第一実施形態に係るCNFを用いたO/W型ピッカリングエマルションと、エマルション内部の揮発性成分を含んだ重合性モノマーを重合することで得られる徐放性複合粒子の概略模式図である。 本発明の第二実施形態に係る成形体の層構成を示す断面図である。 実施例1で得られた微細化セルロースの水分散液の分光透過スペクトル測定結果である。 実施例1で得られた徐放性複合粒子の断面図である。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<徐放性複合粒子>
まず、本発明の第一実施形態に係る徐放性複合粒子5について説明する。
図1はセルロースナノファイバー(以下、CNFもしくはセルロースとも称する)1を用いたO/W型ピッカリングエマルションと、エマルション内部の揮発性成分を含んだ重合性モノマーを重合することで得られる徐放性複合粒子5およびその製造工程を示す概略図である。
なお、ここで言う「微細化セルロース」とは、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下の範囲内である繊維状セルロースを意味する。
図1(c)において、複合粒子5は、少なくとも一種類のポリマー及び少なくとも一種類の揮発性成分を含むコア粒子4を含み、コア粒子4の表面に、微細化セルロース1により構成された被覆層2を有し、コア粒子4と微細化セルロース1とが結合して不可分の状態にある複合粒子である。
なおここで言う「不可分」とは、複合粒子5を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで複合粒子5を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、微細化セルロース1とコア粒子4とが分離せず、微細化セルロース1によるコア粒子4の被覆状態が保たれることを意味する。
複合粒子5の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、重合性モノマーから、重合過程で粒子形成を行う重合造粒法(乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法、放射線重合法等)、微小液滴化したポリマー溶液から粒子形成を行う分散造粒法(スプレードライ法、液中硬化法、溶媒蒸発法、相分離法、溶媒分散冷却法等)が挙げられる。
特に限定されないが、例えば、微細化セルロース1を用いたO/W型ピッカリングエマルションを形成させ、エマルション内部の液滴を固体化させて固体のコア粒子とすることで、コア粒子4と微細化セルロース1とが結合して不可分の状態にある複合粒子5を得ることができる。
例えば図1(a)のように、水6に分散した重合性モノマー及び揮発性物質を含む液滴3の界面の少なくとも一部に微細化セルロース1が吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化して、液滴3の表面に被覆層2が形成される。
次に図1(b)のように、安定化状態を維持したままエマルション内部の重合性モノマーを重合することによってモノマーがポリマーになり、ポリマーと揮発性物質を含むコア粒子4が形成される。さらにこれをろ過等により精製して、図1(c)に示すような複合粒子5が得られる。なお、製造工程の詳細については後述する。
微細化セルロース1を用いることで界面活性剤等の添加物を用いることなく、液滴を形成することが可能であり、分散性の高い複合粒子5を得ることができる。液滴の固体化の方法は特に限定されず、モノマーを重合させる方法やポリマーを凝固させる方法、ポリマー溶液の溶媒を蒸発させる方法等の公知の方法で固体化することができる。
この被覆状態は、走査型電子顕微鏡による複合粒子5の表面観察により確認することができる。複合粒子5において微細化セルロース1とコア粒子4の結合メカニズムについては定かではないが、複合粒子5が微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作成されるため、エマルション内部の液滴3に微細化セルロース1が接触した状態でモノマーの重合等によりコア粒子4として固体化するために、物理的に微細化セルロース1がコア粒子4表面に固定化されて、最終的にコア粒子4と微細化セルロース1とが不可分な状態に至ると推察される。
ここで、O/W型エマルションは、水中油滴型(Oil−in−Water)とも言われ、水を連続相とし、その中に油が油滴(油粒子)として分散しているものである。
特に限定されないが、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として複合粒子5を作製すると、複合粒子5の形状はO/W型エマルションに由来した真球状となる。詳細には、真球状のコア粒子4の表面に微細化セルロース1からなる被覆層2が比較的均一な厚みで形成された様態となる。
複合粒子5の粒径は光学顕微鏡観察により確認できる。100箇所ランダムに測定し、粒子の直径の平均値を取ることで平均粒径を算出できる。平均粒径は特に限定されないが、0.1μm以上300μm以下であることが好ましい。平均粒径がこの範囲内であることで、内包する揮発性物質の徐放性の速度を適正な値にできる。
また微細化セルロース1で構成される被覆層2の厚みは、特に限定されないが、3nm以上1000nm以下であり、複合粒子5の体積に対する被覆層2の体積比率が1%以上50%以下であることが望ましい。
被覆層2の体積比率が1%未満であると内包された成分がすぐに放出され、徐放性をコントロールできない。一方、被覆層2の体積比率が50%を超えると内包された成分が放出されにくくなり、徐放効果が得られないことが懸念される。
被覆層2の平均厚みは複合粒子5を包埋樹脂で固定したものをミクロトームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の複合粒子5の断面像における被覆層2の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。
また、複合粒子5は比較的揃った厚みの被覆層2で均一に被覆されていることが特徴であり、被覆層2の厚みが均一であると徐放性を制御しやすい。具体的には上述した被覆層2の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。
微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、微細化セルロース1は繊維状であって、数平均短軸径が1nm以上1000nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であることが好ましい。
微細化セルロース1の結晶構造は、セルロースI型であり、その結晶化度が70%以上であることが好ましい。セルロースの結晶化度が高いと、結晶内部には規則正しくセルロース分子鎖が並び、多くの水素結合を形成し理想的なガスバリア領域となる。
このガスバリア領域が多いほど、コア粒子に内包された揮発性物質の粒子外部への放出速度は遅くなり、内包物の徐放性が長期間持続する。この領域をできるだけたくさん設ける為にもセルロースの結晶化度は70%以上であることが好ましく、高い結晶化度を持つセルロースファイバーを得るには、セルロースの結晶型はI型が適している。現段階ではそ
の他の結晶系で高い結晶化度を有するセルロースファイバーを作るのは困難である。
コア粒子4は、少なくとも一種類以上のポリマー及び少なくとも一種類の揮発性成分を含む。ポリマーは、公知のポリマーを用いることができ、重合性モノマーを公知の方法で重合させたポリマーでもよい。
ポリマーは特に限定されず、公知のポリマーを用いることができる。例えば、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、アミノ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン・イソシアネート系ポリマー等が挙げられる。
本発明における揮発性物質は、常温常圧(25℃、1atm)で大気中に容易に揮発する物質であり、香料、防臭剤、防虫剤、抗菌剤、殺菌剤、医薬品などが挙げられる。これらの揮発性物質は特に限定されず、各種公知のものが適用できる。
具体的には、香料として、天然香料、合成香料が挙げられる。
天然香料としては、ラベンダー油、ティートリー油、スィートオレンジ油、レモン油、サイプレス油、フランキンセンス油、ゼラニウム油、グレープフルーツ油、ジュニパー油、アニス油、ウイキョウ油、スペアミント油、セージ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油、センチフォリアバラ油、メボウキ油、ベルガモット油、コショウ油、ショウズク油、エンピツビャクシン油、カミツレ油、セイロンニッケイ油、コウスイガヤ油、オニサルビア油、コリアンダー油、イタリアイトスギ油、ユーカリシトリオドラ油、ニオイテンジクアオイ油、ショウガ油、ヒバ油、ジャスミン油、セイヨウネズ油、ラバンデュラハイブリダ油、バクホウシアシトリオドラ油、レモングラス油、ライム油、アオモジ油、マンダリンオレンジ油、モツヤクジュ油、ビターオレンジ油、ニュウコウジュ油、ダマスクバラ油、パルマローザ油、セイヨウハッカ油、プチグレン油、セイヨウアカマツ油、ローズウッド油、ビャクダン油、ベチベル油、イランイラン油、ユズ油などが挙げられる。
合成香料としては、クシモール、ベチベロール、ケイヒアルデヒド、オイゲノール、α/β−サンタロール、α/β−サンタレン、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、β−フェニルエチルアルコール、ジャスモン、ジャスミンラクトン、ベンジルアセタート、リモネン、テルビネン、ピネン、シトラール、ヌートカトン、n−デシルアルデヒド、カレン、大環状ラクトン類、アセチルオイゲノール、メントール、メントン、イソメントン、メンチルアセタート、ムスコン、3−メチルシクロペンタデカン−1−オン、アンブレイン、アンブリノール、ジヒドロヨノンなどが挙げられる。これらの複数を含む天然香料、合成香料、調合香料を使用できる。
防臭剤としては、消臭法の中でも感覚的方法(マスキング法)および化学反応的方法(中和法,縮合法,付加法,酸化・還元法,吸着反応法,消化法)に適する材料が挙げられる。
感覚的方法に適する材料としては、ホルムアルデヒド含有物,グリオキザール,グルタルアルデヒド,芳香を有するアルデヒドまたはケトンもしくはエステル,マレイン酸エステル,メントール,バニリン,多塩基酸,不飽和脂肪酸,芳香族カルボン酸,置換フェノール,カテキン,イソチオシアネート類,α−ピネン,ボルネオール,アビエチン酸等が挙げられる。
化学反応的方法に適する材料としては、前記のほかフラバノールとその誘導体,フラボノールとその誘導体,多価フェノール,没食子酸あるいは植物樹皮,植物葉,植物茎等からの抽出物(精油を含む)や木酢成分等が挙げられる。
防虫剤としては、エムペントリン等の蒸散性ピレスロイド及びその誘導体、ピレスロイド剤及びその誘導体、DEET、ピカリジン等の合成系薬剤、メンタンジオール等の植物由来の成分等の天然系薬剤又はその誘導体等が挙げられる。
抗菌剤としては、天然系または合成系の抗菌剤、ヒバオイル、月桃オイル、ペニーロイヤル、レモングラス、レモン、スパイスクラベンダー、ナツメグ、オレガノ、セージ、ジンジャー、セーボリー、タイム、ヒノキチオール、オールスパイス、シダーウッド、シナモンバーク、クローブバッズ、カユブテ、パイン、ティートゥリー、カプサイシン、スクワレン、スクワラン、アーモンドオイル、ノニルフェノールスルホン酸銅、ジネブ、アンゼブ、チウラム、ポリオキシン、シクロヘキシミド、ヒアルロン酸化合物などが挙げられる。
殺菌剤としては、シナミックアルデヒド、ペリルアルデヒド、等の不飽和アルデヒド、オイゲノール、チモールなどのフェノール類、アリルスルフィド類、イソチオシアネート類等があげられ、さらに、ラウリル酸、ミリスチン酸等の脂肪酸とそのグリセリンモノエステル等があげられる。
医薬品としては、インドメタシンファルネシル、ザルトプロフェン、フェルビナク等が挙げられる。
前記揮発性物質は固体、気体、液体のいずれの形態であってもよく、複数の揮発性成分を併用しても良い。揮発性成分の複合粒子5中の含有率は、特に限定されず、複合粒子5が安定して形態を保つことができる範囲で変えることができる。揮発性成分の含有率は、複合粒子5を100質量部とすると、揮発性成分は0.001質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
<複合粒子5の製造方法>
特に限定されないが、本実施形態の複合粒子5の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る複合粒子5の製造方法は、セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロースの分散液を得る工程(第1工程)と、少なくとも一種類の重合性モノマーに少なくとも一種類の揮発性成分を含有させる工程(第2工程)と、前記分散液中において重合性モノマー及び揮発性成分を含む液滴の表面を前記微細化セルロースで被覆し、エマルションとして安定化させる工程(第3工程)と、前記重合性モノマー液滴を重合してポリマー化し、ポリマー及び揮発性成分をコア粒子として、その表面に微細化セルロースが被覆された複合粒子5を得る工程(第4工程)と、を具備する徐放性複合粒子の製造方法である。
上記製造方法により得られた複合粒子5は分散体として得られる。さらに溶媒を除去することにより、乾燥固形物として得られる。
溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば遠心分離法やろ過法によって余剰の水分を除去し、さらにオーブンで熱乾燥することで乾燥固形物として得ることができる。
この際、得られる乾燥固形物は膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。この理由としては定かではないが、通常微細化セルロース1分散体から溶媒を除去すると、微細化セルロース1同士が強固に凝集、膜化することが知られている。一方、複合粒子5を含む分散液の場合、微細化セルロース1が表面に固定化された真球状の複合粒子5であるため、溶媒を除去しても微細化セルロース1同士が凝集することなく、複合粒子5間の点と点で接するのみであるため、その乾燥固形物は粉体として得られると考えられる。また、複合粒子5同士の凝集がないため、乾燥粉体として得られた複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も複合粒子5の表面に結合された微細化セルロース1に由来した分散安定性を示す。
なお、複合粒子5の乾燥粉体は溶媒をほとんど含まず、さらに溶媒に再分散可能であることを特長とする乾燥固形物であり、具体的には固形分率を50%以上、さらに80%以上とすることができ、さらに90%以上とすることができ、さらに95%以上とすることができる。このように溶媒をほぼ除去することができるため、輸送費の削減、腐敗防止、添加率向上、樹脂との混練効率向上、といった観点から好ましい効果を得る。
なお、乾燥処理により固形分率を80%以上にした際、微細化セルロース1は吸湿しやすいため、空気中の水分を吸着して固形分率が経時的に低下する可能性がある。しかしながら、複合粒子5は乾燥粉体として容易に得られ、さらに再分散させ得ることが特長である本発明の技術思想を考慮すると、複合粒子5を含む乾燥粉体の固形分率を85%以上とする工程を含む乾燥固形物であれば、本発明の技術的範囲に含まれると定義する。
以下に、各工程について、詳細に説明する。
(第1工程)
第1工程はセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程である。まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なうため好ましくない。10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となるため好ましくない。
懸濁液作製に用いる溶媒としては、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%以下になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程において、微細化セルロース1の分散が阻害される。
また、水以外に含まれる溶媒としては親水性溶媒が好ましい。親水性溶媒については特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース1の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料を微細化する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。
このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロース1の分散液を得ることができる。また、このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られる微細化セルロース1の数平均短軸径および数平均長軸径を調整することができる。
上記のようにして、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースの分散体(微細化セルロース分散液)が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、後述するO/W型エマルションの安定化剤として用いることができる。
また、微細化セルロース1の分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、複合粒子5の用途等に応じて、公知の添加剤の中から適宜選択できる。
具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
通常、微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であるため、本実施形態の製造方法に用いる微細化セルロース1としては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。すなわち、微細化セルロース1の形状としては、繊維状であることが好ましい。また、繊維状の微細化セルロース1は、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下であればよく、好ましくは2nm以上500nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、エマルションの安定化と、エマルションを鋳型とした重合反応やポリマーの固体化等による複合粒子5の形成が難しくなる。
一方、1000nmを超えると、エマルションを安定化させるにはサイズが大きくなり過ぎるため、得られる複合粒子5のサイズや形状を制御することが困難となる。
また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の5倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍未満であると、複合粒子5のサイズや形状を十分に制御することができないために好ましくない。
なお、微細化セルロース1の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロース1の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
微細化セルロース1の原料として用いることができるセルロースの原料については、結晶構造がセルロースI型であれば特に限定されない。
セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
さらに微細化セルロース原料は化学改質されていることが好ましい。より具体的には、微細化セルロース原料の結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることが好ましい。セルロース結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることによって浸透圧効果でセルロース結晶間に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化が進行しやすくなるためである。
セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
セルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。
さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減のためには、N−オキシル化合物を用いた酸化がより好ましい。
ここで、N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高いTEMPOが好ましい。N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01〜5.0質量%程度である。
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えば木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N−オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。
また、N−オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は、4〜80℃が好ましく、10〜70℃がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造が崩壊し、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分〜5時間程度である。
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9〜11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試
料の分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。 添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nmの均一な繊維幅を有するTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TEMPO酸化CNF、セルロースシングルナノファイバー、CSNFともいう)が得られる。CSNFを複合粒子中の微細化セルロースの原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
以上のように、本実施形態で用いられるCSNFは、セルロース原料を酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CSNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。
ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
(第2工程)
第2工程は、少なくとも一種類の重合性モノマーに少なくとも一種類の揮発性成分を含有させて重合性モノマー混合液を調製する工程である。具体的には、特に限定されないが、重合性モノマーに揮発性成分を添加して混合する。
第2工程で用いることができる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。
重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性
モノマーは多官能モノマーとも称する。
重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等)を用いることも可能である。なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレー
ト、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
単官能のビニル系モノマーとしては例えば、ビニルエーテル系、ビニルエステル系、芳香族ビニル系、特にスチレンおよびスチレン系モノマーなど、常温で水と相溶しない液体が好ましい。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、単官能芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソブチルトルエン、tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1,1−ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしてはジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
例えば多官能性ビニル系モノマーとしては、具体的には、(1)ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン等のジビニル類、(2)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート類、(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート類、(4)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ジプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ジブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキシレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート類、(5)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチロールエタントリアクリレート等のトリアクリレート類、(6)テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート類、(7)その他に、例えばテトラメチレンビス(エチルフマレート)、ヘキサメチレンビス(アクリルアミド)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
例えば官能性スチレン系モノマーとしては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前述のように揮発性成分は、特に限定されないが、前記モノマーへ溶解または分散することが好ましい。重合性モノマーに分散することにより、後述の第3工程でO/W型エマルションを形成した際にエマルション粒子内部の液滴3中に揮発性成分を内包しやすく、揮発性成分を内包する複合粒子5を効率的に得ることができる。また、内包する揮発性成分の量を増やすことが可能である。
第2工程において用いることのできる重合性モノマーと揮発性成分の重量比については特に限定されないが、複合粒子5が安定的に形状を保てる範囲で添加率が多いことが好ましい。重合性モノマー100質量部に対し、揮発性成分が0.001質量部以上80質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上60質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以上40質量部以下である。
また、重合性モノマーに重合開始剤を添加してもよい。一般的な重合開始剤としては有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤としては、例えばADVN,AIBNが挙げられる。
例えば2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
第2工程において重合開始剤が含まれた重合性モノマー混合物を用いれば、後述の第3工程でO/W型エマルションを形成した際にエマルション粒子内部の液滴3中に重合開始剤が含まれるため、後述の第4工程においてエマルション内部のモノマーを重合させる際に重合反応が進行しやすくなる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合性開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると、重合反応が充分に進行せずに複合粒子5の収量が低下するため好ましくない。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと溶媒の重量比については、特に限定されないが、重合性モノマー100質量部に対し、溶媒が80質量部以下であることが好ましい。
(第3工程)
第3工程は、分散液微細化セルロース分散液中において重合性モノマー及び揮発性成分を含む液滴3の表面を前記微細化セルロース1で被覆し、エマルションとして安定化させる工程である。
具体的には、第1工程で得られた微細化セルロース分散液に第2工程で得られた混合物を添加し、微細化セルロース分散液中に液滴3として分散させ、さらに重合性モノマー及び揮発性成分を含む液滴3の表面を微細化セルロース1によって被覆し、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。
O/W型エマルションを作製する方法としては、特に限定されないが、一般的な乳化処理、例えば各種ホモジナイザー処理や機械攪拌処理を用いることができ、具体的には高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、万能ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ペイントシェイカーなどの機械的処理が挙げられる。また、複数の機械的処理を組み合わせて用いてもよい。
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、第1工程にて得られた微細化セルロース分散液に対し重合性モノマーを添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
上記超音波処理により、微細化セルロース分散液中に重合性モノマー及び揮発性成分を含む液滴3が分散してエマルション化が進行し、さらに液滴3と微細化セルロース分散液の液/液界面に選択的に微細化セルロース1が吸着することで、液滴3が微細化セルロース1で被覆されO/W型エマルションとして安定した構造を形成する。
このように、液/液界面に固体物が吸着して安定化したエマルションは、学術的には「ピッカリングエマルション」と呼称されている。前述のように微細化セルロース1によってピッカリングエマルションが形成されるメカニズムは定かではないが、セルロースはその分子構造において水酸基に由来する親水性サイトと炭化水素基に由来する疎水性サイトとを有することから両親媒性を示すため、両親媒性に由来して疎水性モノマーと親水性溶媒の液/液界面に吸着すると考えられる。
O/W型エマルション構造は、光学顕微鏡観察により確認することができる。O/W型エマルションの粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.1μm以上300μm以下であることが好ましい。平均粒径は、ランダムに100個のエマルションの直径を測定し、平均値を取ることで算出できる。
O/W型エマルション構造において、液滴3の表層に形成された被覆層2(微細化セルロース層)の厚みは特に限定されないが、3nm以上1000nm以下であることが好ましい。特に限定されないが、エマルション構造における粒径が第4工程において得られる複合粒子5の粒径と同程度となる。被覆層2の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
第3工程において用いることができる微細化セルロース分散液と重合性モノマーの重量比については、特に限定されないが、微細化セルロースが100質量部に対し、重合性モノマーが1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。重合性モノマーが1質量部以下となると複合粒子5の収量が低下するため好ましくなく、50質量部を超えると液滴3を微細化セルロース1で均一に被覆することが困難となり好ましくない。
(第4工程)
第4工程は、液滴3を重合して微細化セルロース1でコア粒子4が被覆された複合粒子5を得る工程である。
重合性モノマーを重合する方法については特に限定されず、用いた重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜選択可能であるが、例えば懸濁重合法が挙げられる。
具体的な懸濁重合の方法についても特に限定されず、公知の方法を用いて実施することができる。例えば第3工程で作製された、重合開始剤を含む液滴3が微細化セルロース1によって被覆され安定化したO/W型エマルションを攪拌しながら加熱することによって実施することができる。
攪拌の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、具体的にはディスパーや攪拌子を用いることができる。また、攪拌せずに加熱処理のみでもよい。
加熱時の温度条件については、重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、20度以上150度以下が好ましい。20度未満であると重合の反応速度が低下するため好ましくなく、150度を超えると微細化セルロース1が変性する可能性があるため好ましくない。
重合反応に供する時間は、重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、通常1時間〜24時間程度である。また、重合反応は電磁波の一種である紫外線照射処理によって実施してもよい。また、電磁波以外にも電子線などの粒子線を用いても良い。
上述の工程を経て、コア粒子3が微細化セルロース1によって被覆された真球状の複合粒子5を作製することができる。
なお、重合反応終了直後の状態は、複合粒子5の分散液中に多量の水と複合粒子5の被覆層2に形成に寄与していない遊離した微細化セルロース1が混在した状態となっている。そのため、作製した複合粒子5を回収・精製する必要があり、回収・精製方法としては、遠心分離による洗浄またはろ過洗浄が好ましい。
遠心分離による洗浄方法としては公知の方法を用いることができ、具体的には遠心分離によって複合粒子5を沈降させて上澄みを除去し、水・メタノール混合溶媒に再分散する操作を繰り返し、最終的に遠心分離によって得られた沈降物から残留溶媒を除去して複合粒子5を回収することができる。
ろ過洗浄についても公知の方法を用いることができ、例えば孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて水とメタノールで吸引ろ過を繰り返し、最終的にメンブレンフィルター上に残留したペーストからさらに残留溶媒を除去して複合粒子5を回収することができる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた複合粒子5を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
(第一実施形態の効果)
本実施形態に係る徐放性複合粒子5は、微細化セルロース1(セルロースナノファイバー)のガスバリア性、親水性、耐熱性、高強度等の特性により、揮発性成分を紫外線、熱、酸素等から保護し、分散安定性が良好であり、優れた徐放性を有して長期間効果を発揮する複合粒子である。微細化セルロース1からなる被覆層がガスバリアとして機能するため、通常では瞬時に揮発する物質を長期間内包することができ、温度によってガスバリア性が変化することを利用して、内包物の放出速度を変化させることができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
例えば、コア粒子4にはポリマー及び揮発性成分の他にその他成分を含んでも構わない。また、被覆層2に微細化セルロース1以外の成分を含有させて徐放性を調節、また機能性材料を付与しても構わない。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
<成形体>
本実施形態に係る成形体は、本発明の第一実施形態に係る徐放性複合粒子5を含む成形体である。
成形体の構成は、徐放性複合粒子5を含む成形体であれば特に限定されないが、効果的に揮発性成分を放出させるためには、最表層に徐放性複合粒子5を含む徐放層が露出していることが好ましい。
成形体は単独で使用しても良く、または図2に示す成形体9のように、基材8の少なくとも一方の面に徐放性複合粒子5を含む徐放層7を設けた成形体9として用いても良い。
成形体9の作製方法は、基材8等に徐放性複合粒子5を含む分散液を塗布して作製してもよく、徐放性複合粒子5を含む組成物を成形したり、塗布するなどして作製してもよい。
徐放性複合粒子5を含む分散液を塗布して成形体9を作製する場合、徐放層7は、前述の複合粒子5を含む分散液を基材8に塗布し、分散液中の溶媒を加熱等により除去することで得られる。
基材8等に徐放性複合粒子5を含む分散液を塗布する手段は、例えば、刷毛塗り、筆塗り、鏝塗り、バーコーター、ナイフコーター、ドクターブレード、スクリーン印刷、スプレー塗布、スピンコーター、アプリケーター、ロールコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター、(マイクロ)グラビアコーター、ディップコート、フレキソ印刷、ポッティング、すきこみ処理等の手法を用いることができ、他の基材、例えば転写基材上に塗布した後に転写してもよい。
また、徐放製複合粒子5を含む分散液の塗布は、一回のみならず、複数回行ってもよい。徐放製複合粒子5を含む分散液に溶媒が含まれる場合は、溶媒を除去しうる程度の温度で加熱乾燥等して、溶媒を除去する必要がある。
徐放性複合粒子5を含む組成物を成形する場合、複合粒子5が安定的に分散される樹脂であれば材料として特に限定されないが、加工工程で高温の熱が長時間加えられると、内包された揮発性成分の放出速度が速まり、成形体の徐放効果が失われる可能性がある。そのため長期的に徐放性を維持する成形体を得るためには、組成物の材料として電離放射線硬化性樹脂材料など、多量の熱を加えることなく成形することができる材料が好ましい。
徐放性複合粒子5を含む組成物には、他の添加剤や機能性成分などを含んでいても良く、電離放射線硬化性樹脂材料としては、例えば(メタ)アクリル系モノマーやその重合体、および共重合体などが挙げられる。
(第二実施形態の効果)
本実施形態に係る成形体によれば、第一実施形態と同様に、微細化セルロース1のガスバリア性、親水性、耐熱性、高強度等の特性により、揮発性成分を紫外線、熱、酸素等から保護し、分散安定性が良好であるために、優れた徐放性を有して長期的に揮発性物質を内包することができる。
また、CNFのガスバリア性が温度によって変化するため、徐放性複合粒子5を含む成形体9も温度に応答して徐放速度が変化する。例えば、徐放性複合粒子5を含む成形体9は、温度が上昇した際に、徐放製複合粒子5に内包された揮発性成分の拡散スピードが速くなり、その結果内包物の放出速度も早くなる。
また、徐放性複合粒子5は粒径や被覆層の比率を制御することで徐放速度をコントロールすることができるため、平均粒子径が異なる粒子を含む成形体9を作製することで、徐放初期や中期で放出速度が異なるなど、多様に放出速度をコントロールすることが可能である。
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の第二実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
<実施例1>
(第1工程:微細化セルロース分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。
(酸化セルロースのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分質量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
(酸化セルロースの解繊処理)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。CSNF分散液を光路長1cmの石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、「UV−3600」)を用いて分光透過スペクトルの測定を行った結果を図3に示す。
図3から明らかなように、CSNF水分散液は高い透明性を示した。また、CSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。さらに、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果、CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
(結晶化度の算出)
TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
TEMPO酸化セルロースについて、試料水平型多目的X線回折装置(商品名:UltimaIII、Rigaku社製)を用い、X線出力:(40kv、40mA)の条件で、5°≦2θ≦35°の範囲でX線回折パターンを測定した。得られるX線回折パターンはセルロースI型結晶構造に由来するものであるため、下記の式(1)を用い、以下に示す手法により、TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100・・・(1)
ただし、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
以上の測定方法から算出された結晶化度は81%であった。
(第2工程:重合性モノマー、揮発成分混合液を調製する工程)
次に、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)10gに対し、重合開始剤である2、2−アゾビス−2、4−ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させた。更に、揮発性成分として香料として広く知られるリモネン((+)−リモネン、東京化成工業製)を2g添加して混合した。
(第3工程:O/W型エマルションを作製する工程)
前記重合性モノマー混合液全量を、微細化セルロース濃度1%の微細化セルロース分散液40gに対し添加したところ、重合性モノマー混合液と微細化セルロース分散液はそれぞれ透明性の高い状態で2相に分離した。
次に、上記2相分離した状態の混合液における上相の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。
この混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1μm〜数μm程度の粒径のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
(第4工程:複合粒子4を得る工程)
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。
得られた分散液に対し、遠心力75,000gで5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで繰り返し洗浄した。
こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC
UPA−EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価したところ、平均粒径は1.1μmであった。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(複合粒子5)を得た。
(走査型電子顕微鏡による断面観察)
得られた乾燥粉体を可視光硬化性樹脂(アロニックス LCR D−800、東亞合成製)に包埋し、ウルトラミクロトーム(Leica社製 EM UC6)を用いて切削し断面を作製した。図4に作製した断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。
図4から明らかなように、O/W型エマルション液滴を鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルション液滴の形状に由来した、真球状の複合粒子5が無数に形成していることが確認された。
また、コア粒子の表面が微細化セルロースによって覆われていることがわかり、被覆層の厚みを計測したところ、平均厚みは10nmであった。ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、複合粒子5の表面は等しく均一に微細化セルロース1によって被覆されていることから、本発明の複合粒子5において、複合粒子内部のモノマーと微細化セルロース1は結合しており、不可分の状態にあることが示された。
<実施例2>
実施例1において、重合性モノマーとしてジビニルベンゼン(DVB)の代わりに多官能性ビニル系モノマーのジエチレングリコールジアクリレート(商品名FA−222A、日立化成、以下、FA−222Aとも称する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<実施例3>
実施例1において重合性モノマーとしてジビニルベンゼン(DVB)の代わりに多官能性ビニル系モノマーのヘキサンジオールジアクリレート(商品名A−HD−N、新中村化学工業、以下、A−HD−Nとも称する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<実施例4>
実施例1において重合開始剤をADVNの代わりに2、2−アゾビス−イソブチロニトリル(以下、AIBNとも称する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<実施例5>
実施例1において、TEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた特許文献6に従いカルボキシメチル化(以下、CM化とも称する。)処理を行って得られたCM化CNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<実施例6>
実施例1において、TEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた非特許文献1に従いリン酸エステル化処理を行って得られたリン酸エステル化CNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<比較例1>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりに純水を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5の作製を試みた。
<比較例2>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子の作製を試みた。
<比較例3>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりにポリビニルアルコール(以下、PVAとも称する。)8%水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5の作製を試みた。
<比較例4>
実施例1において、前述の第3工程で超音波ホモジナイザーの周波数を24Hz、出力を200Wに変更した以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5の作製を作製した。
<比較例5>
実施例1において、超音波ホモジナイザーの周波数を24Hz、出力を600Wに変更した以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5の作製を作製した。
<比較例6>
実施例1において、結晶構造がII型のCNFを用い、TEMPO酸化の代わりに、マーセル化処理(アルカリ水溶液によるアルカリ処理)を行って得られたCNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<比較例7>
実施例1において、結晶構造がIII型のCNFを用い、TEMPO酸化の代わりに、液体アンモニア処理を行って得られたCNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子5を作製した。
<評価方法>
(複合粒子形成可否評価)
複合粒子の形成可否は、走査型電子顕微鏡による形状観察により判断した。得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した。
○:真球状の粒子が得られ、表面に微細化セルロースが被覆されていた。
△:真球状の粒子が得られたが、表面に微細化セルロースが被覆されていなかった。
×:上記粒子は得られなかった。
として判定した。
(徐放性の評価)
徐放性の評価は揮発性成分(リモネン)の水中への溶出試験により行った。500mlの蒸留水に複合粒子5を0.1g添加し、25℃、35℃、45℃の各温度で250rpmの条件で振とう後、試験液をろ過し、高速液体クロマトグラフ測定装置(島津製作所製)を用いて溶出した揮発性成分の濃度を測定した。
徐放開始から試験終了までに水溶液中に徐放された揮発性成分の全量(徐放量)を、調製時に複合粒子5に内包された揮発性成分の量(初期含有量)に対する徐放量を揮発性物質溶出率とした(溶出率=徐放量/初期含有量×100)。初期含有量は、複合粒子5を乳鉢ですりつぶした後すぐに揮発性成分を溶媒に溶解させて測定した。
揮発性物質溶出率は以下のように評価した。
〇:徐放開始から1週間の時点で溶出率が50%未満である。
△:徐放開始から1週間の時点で溶出率が50%以上75%未満である。
×:徐放開始から1週間の時点で溶出率が75%以上である。
として判定した。
ただし本実施形態においてこの実験の狙いとは、揮発性物質の徐放性を温度によってコントロールできることであるから、ある温度では溶出率が低く抑えられ、他の温度では溶出率が高くなるといった変化が得られるかを総合的に評価した。
以上の実施例および比較例を用いた評価結果については、以下の表1、表2にまとめて掲載した。表1は揮発性成分としてリモネンを用いた実施例及び比較例を示した。
表2は、CNFの結晶構造別に抽出した事例を示した。
なお、表1において、エマルションの安定化剤とは、第2工程においてO/W型エマルションを安定化させるために用いた添加剤のことであって、例えば本実施形態における微細化セルロース1が相当する。
実施例1〜6の評価結果において明らかなように、微細化セルロース1の種類(TEMPO酸化CNF、CM化CNF、リン酸エステル化CNF)によらず、各種モノマーの重合物及び揮発性成分をコア粒子4とする複合粒子5を作製可能であることが確認された。
揮発性物質溶出率に関しては、いずれの実施例でも温度によって変化しており、温度によって溶出率が制御可能であることを示した。また、微細化セルロースやモノマー、重合開始剤の種類による影響はなかった。
一方、比較例1においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー相と微細化セルロース分散液相が2相分離したままの状態となり、O/W型エマルションの作製自体が不可能であった。
比較例2においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。これはCMCが微細化セルロースと同様に両親媒性を示したため、エマルションの安定化剤として機能したと考えられる。しかしながら、続く第3工程において重合反応を実施すると、エマルションが崩壊してしまい、O/W型エマルションを鋳型とした複合粒子を得ることができなかった。
比較例3においては、第3工程において重合することができ、粉体として回収することができた。しかしながら、PVAはガスバリア性が低く、徐放性の持続性が悪かった。
比較例4においては、複合粒子のコア粒子径が実施例1の複合粒子と比較して約5倍になった。その結果、複合粒子の比表面積が小さくなったため、内包物の徐放が抑制され各温度における揮発性物質溶出率がいずれの温度でも低かった。即ち、温度によって溶出率を制御することができなかった。
比較例5においては、複合粒子のコア粒子径が実施例1の複合粒子と比較して半分になった。その結果、複合粒子の比表面積が大きくなったため、揮発性内包物の徐放が早いスピードで進行し、各温度における放出率が増加した。
比較例6、7においては、CNFの結晶構造がそれぞれII型、III型のCNFを用いた。その結果、実施例1と同様に複合粒子の形成は可能であったが、セルロースI型と比較して、結晶性が低下したためガスバリア性が悪く、徐放速度も実施例1と比較して速かった。
本発明の徐放性複合粒子は、微細化セルロース1(セルロースナノファイバー)のガスバリア性、親水性、耐熱性、高強度等の特性を微細化セルロースの特性により、揮発性成分を紫外線、熱、酸素等から保護し、且つ優れた徐放性を有して長期間効果を発揮させることができ、経済性、環境への影響の観点から好ましい。また、粒子径と被覆層の比率や使用温度を変えることで放出速度をコントロールすることができ、利用用途を広げることができる。
1 微細化セルロース(セルロースナノファイバー)
2 被覆層(微細化セルロース層)
3 液滴(モノマー+揮発性物質)
4 コア粒子(ポリマー+揮発性物質)
5 複合粒子
6 水
7 徐放層(複合粒子を含む)
8 基材
9 成形体

Claims (12)

  1. 少なくとも一種類のポリマー及び少なくとも一種類の揮発性成分を含むコア粒子を含み、前記コア粒子の表面に微細化セルロースからなる被覆層を有する複合粒子であって、
    前記複合粒子の粒子径が0.1μm〜300μmであり、
    前記被覆層の厚みが3nm〜1000nmであり、
    前記複合粒子の体積に対する前記被覆層の体積比率が1%以上50%以下であって、
    前記コア粒子と前記微細化セルロースとが結合して不可分の状態にあることを特徴とする、徐放性複合粒子。
  2. 前記揮発性成分の前記被覆層からの放出速度が温度により変化することを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合粒子。
  3. 前記微細化セルロースがセルロースI型の結晶構造を有しており、その結晶化度が70%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の徐放性複合粒子。
  4. 前記揮発性成分が、香料、防臭剤、防虫剤、抗菌剤、殺菌剤、医薬品のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の徐放性複合粒子。
  5. 前記ポリマーが、ビニル基を有するモノマーの重合物である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の徐放性複合粒子。
  6. 前記ポリマーが、(メタ)アクリル基を有するモノマーの重合物である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の徐放性複合粒子。
  7. 前記ポリマーが、2つ以上の重合性官能基を有する多官能モノマーの重合物である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の徐放性複合粒子。
  8. 前記多官能モノマーが有する2つ以上の重合性官能基の少なくとも一つがビニル基である、請求項7に記載の徐放性複合粒子。
  9. 前記多官能モノマーが有する2つ以上の重合性官能基の少なくとも一つが(メタ)アクリル基である、請求項7に記載の徐放性複合粒子。
  10. 前記多官能モノマーがジビニルベンゼンである、請求項8に記載の徐放性複合粒子。
  11. 請求項1から10のいずれか一項に記載の徐放性複合粒子を含むことを特徴とする成形体。
  12. セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロースの分散液を得る第1工程と、
    少なくとも一種類の重合性モノマーに少なくとも一種類の揮発性成分を含有させてモノマー混合液を準備する第2工程と、
    前記微細化セルロース分散液中において重合性モノマー及び揮発性成分を含む液滴の表面を前記微細化セルロースで被覆し、エマルションとして安定化させる第3工程と、
    前記重合性モノマー液滴を重合してポリマー及び揮発性成分からなるコア粒子の表面に微細化セルロースが被覆された複合粒子を得る第4工程と、を具備することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の徐放性複合粒子の製造方法。
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JP7443830B2 (ja) 2020-03-03 2024-03-06 Toppanホールディングス株式会社 消臭用複合粒子とその製造方法、及び消臭剤

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