本発明の徐放性粒子は、疎水性の抗生物活性化合物を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、別途、水と乳化剤とを配合して乳化剤水溶液を調製し、続いて、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化し、その後、重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して抗生物活性化合物を含有する重合体を生成することにより得られる。
抗生物活性化合物は、ミニエマルション重合におけるハイドロホーブ(コスタビライザー)として作用し、具体的には、ミニエマルション重合におけるミニエマルション(後述)の安定化に寄与することにより、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制する。
抗生物活性化合物は、例えば、重合性ビニルモノマーの重合体と相互作用できる官能部分を少なくとも2つ有している。
このような官能部分としては、例えば、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、燐酸エステル基、カルボキシル基などの極性官能基、例えば、カルボキシレート結合、フォスフェート結合、尿素結合、炭素−ハロゲン結合などの、極性基を含む極性結合、例えば、ベンゼン環、さらには、トリアジン環、イミダゾール環、イソチアゾリン環などの共役ヘテロ環などの共役環状部分などが挙げられる。
抗生物活性化合物の分子量は、例えば、150〜600、好ましくは、180〜500である。
抗生物活性化合物の分子量が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物の重合体に対する相溶性が低下する場合がある。一方、抗生物活性化合物の分子量が上記範囲に満たない場合には、ミニエマルション重合中に、抗生物活性化合物が水相に漏出してしまい、ミニエマルション重合後に、かかる抗生物活性化合物が析出して、別の粒子を形成したり、乳濁液が凝集あるいは固化する場合がある。
また、抗生物活性化合物の融点は、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下である。抗生物活性化合物の融点が上記範囲を超える場合には、抗生物活性化合物が徐放性粒子に内包されにくく、徐放性粒子外に析出する場合があり、また、たとえ、抗生物活性化合物が徐放性粒子に内包された場合でも、ミニエマルション重合中に固体となって重合体より粒子内で析出・相分離し、抗生物活性化合物が徐放性粒子外に徐放されない場合がある。
具体的には、抗生物活性化合物は、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、殺虫などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、防虫剤、殺虫剤、誘引剤、忌避剤および殺鼠剤などから選択される。これら抗生物活性を有する化合物としては、例えば、ヨウ素系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステルなどの殺菌防腐防藻防かび剤、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、オキサジアジン系化合物などの防虫剤、殺虫剤などが挙げられる。
ヨウ素系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネートなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン(別称:フルシラゾール、1−[[ビス(4−フルオロフェニル)メチルシリル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)などが挙げられる。
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、例えば、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ)などが挙げられる。
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)などが挙げられる。
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)などが挙げられる。
パラオキシ安息香酸エステルとしては、例えば、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
ピレスロイド系化合物としては、例えば、シロバナムシヨケギクより得られるピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどが挙げられ、これらから誘導されるアレスリン、ビフェントリン、アクリナトリン、ペルメトリン(3−フェノキシベンジル(1RS,3RS;1RS,3SR)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート)、アルファシペルメトリン、トラロメトリン、シフルトリン((RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル−(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート。詳しくは、異性体I((1R−3R−αR)+(1S−3S−αS))[融点:57℃]、異性体II((1R−3R−S)+(1S−3S−αR))[融点:74℃]、異性体III((1R−3S−αR)+(1S−3R−αS)))[融点:66℃]の混合物)、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス(2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル)、シラフルオフェン、フェンバレレートなども挙げられる。
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(アセタミプリド)などが挙げられる。
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
カーバメート系化合物としては、例えば、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ペンディメタリン、インダノファンなどが挙げられる。
殺虫剤としては、例えば、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
忌避剤としては、例えば、ディート(N,N−ジエチル−m−トルアミド)などが挙げられる。
抗生物活性化合物は、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、例えば、室温の溶解度が、質量基準で、1質量部/水100質量部(10000ppm)以下、好ましくは、0.5質量部/水100質量部(5000ppm)以下、さらに好ましくは、0.1質量部/水100質量部(1000ppm)以下であり、容量基準で、例えば、1g/水100mL以下、好ましくは、0.5g/水100mL以下、さらに好ましくは、0.1g/水100mL以下である。
抗生物活性化合物の水に対する溶解度が、上記した範囲を超える場合には、重合性ビニルモノマーをミニエマルション重合する際に、ハイドロホーブの役割を果たせず、そのため、重合性ビニルモノマー滴(油滴)の肥大化が起こるので、乳化時の平均粒子径の維持、および、抗生物活性化合物を十分に内包した徐放性粒子の合成が困難となる。
これら抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
なお、上記した抗生物活性化合物は、例えば、製造工程中に、融点が上記範囲外である不純物を適宜の割合で含有していてもよい。具体的には、シフルトリンの異性体I(融点:57℃)と異性体II(融点:74℃)と異性体III(融点:66℃)との混合物は、例えば、不純物である異性体IV(融点102℃)を含有している。
重合性ビニルモノマーは、例えば、重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ分子内に有する重合性モノマーである。
具体的には、重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族系ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステルおよび/アクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル部分の炭素数1〜20のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
重合性ビニルモノマーは、実質的に疎水性であって、例えば、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温における溶解度が、例えば、10質量部/水100質量部以下、好ましくは、8質量部/水100質量部以下である。なお、重合性ビニルモノマーは、異なる種類が併用される場合には、重合性ビニルモノマー全体(つまり、異なる種類の重合性ビニルモノマーの混合物)として実質的に疎水性である。
上記した重合性ビニルモノマーの中で、例えば、上記した抗生物活性化合物に対する相溶性が高く(あるいは良好で)、抗生物活性化合物を溶解することのできる抗生物活性化合物相溶性モノマー(以下、単に相溶性モノマーという場合がある。)が選択される。
相溶性モノマーとしては、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが挙げられる。
これら相溶性モノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとして、好ましくは、アルキル部分の炭素数が1〜3のメタクリル酸アルキルエステル、さらに好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)の単独使用が挙げられる。
また、好ましくは、アルキル部分の炭素数が1〜3のメタクリル酸アルキルエステルと、アルキル部分の炭素数が4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの併用が挙げられ、さらに好ましくは、メタクリル酸メチルと、(メタ)アクリル酸ブチルとの併用、とりわけ好ましくは、MMAとメタクリル酸イソブチルとの併用が挙げられる。
2種類の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(具体的には、アルキル部分の炭素数が1〜3のメタクリル酸アルキルエステルと、アルキル部分の炭素数が4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと)が併用される場合、それらの配合割合は、アルキル部分の炭素数が1〜3のメタクリル酸アルキルエステルの配合割合が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、60質量部以上、さらに好ましくは、65質量部以上であり、また、例えば、100質量部未満でもある。
なお、(メタ)アクリル酸系モノマーは、共重合体乳濁液のコロイド安定性を高める働きがあり、この効果を得るために相溶性モノマーの一部として含まれる場合がある。この場合の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.1〜20質量部、好ましくは、0.5〜10質量部、さらに好ましくは、1〜5質量部である。
抗生物活性化合物および相溶性モノマーは、後述する重合温度(加熱温度)において、重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択される。
また、重合性ビニルモノマーは、架橋性モノマーを相溶性モノマーとして含むこともできる。
架橋性モノマーは、徐放性粒子の徐放性を調節するために、必要により配合され、例えば、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼンなどのジビニル系モノマーなどが挙げられる。
架橋性モノマーとして、好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、さらに好ましくは、エチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
架橋性モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー(相溶性モノマー)100質量部に対して、例えば、1〜80質量部、好ましくは、2〜50質量部、さらに好ましくは、5〜20質量部である。
また、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーとして、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compoundが、例えば、2〜8[(J/cm3)1/2]、好ましくは、3〜7[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compoundが、例えば、5.5〜9.5[(J/cm3)1/2]、好ましくは、5.8〜9.5[(J/cm3)1/2]である抗生物活性化合物と、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが、例えば、5〜7[(J/cm3)1/2]、好ましくは、5〜6.5[(J/cm3)1/2]であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが、例えば、8〜10[(J/cm3)1/2]、好ましくは、8.5〜10[(J/cm3)1/2]である重合体を生成する重合性ビニルモノマーとの組合せが選択される。
溶解度パラメータδの双極子間力項δpおよび水素結合力項δhは、Hansenで定義され、van Klevelen and Hoftyzer法で算出され、具体的には、特開2011−79816号公報に詳述されている。
なお、各項δ(δpおよびδh)の添字compoundおよびpolymerは、抗生物活性化合物および重合体をそれぞれ示す。
重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲に満たないと、重合体の疎水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性を得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができた場合でも、抗生物活性化合物がミニエマルション重合中に徐放性粒子外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
一方、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲を超えると、重合体の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物との十分な相溶性が得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができたとしても、ミニエマルション重合における水相との界面自由エネルギーが低くなり、抗生物活性化合物がミニエマルション重合中に徐放性粒子外へ漏出して、抗生物活性化合物を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
他方、抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび/または水素結合力項δh,compoundが上記範囲に満たないと、抗生物活性化合物の疎水性が過度に高くなり、重合体との十分な相溶性を得ることができない場合がある。
一方、抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび/または水素結合力項δh,compoundが上記範囲を超えると、抗生物活性化合物の親水性が過度に高くなり、抗生物活性化合物が徐放性粒子外へ漏出し易く、抗生物活性化合物を十分に内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
さらに、溶解度パラメータδにおいて、重合体の双極子間力項δp,polymerから抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundを差し引いた値Δδp(=δp,polymer−δp,compound)は、例えば、−1.1〜2.8[(J/cm3)1/2]である。
また、重合体の水素結合力項δh,polymerから抗生物活性化合物の水素結合力項δh,compoundを差し引いた値Δδh(=δh,polymer−δh,compound)は、例えば、−0.1〜4.2[(J/cm3)1/2]である。
ΔδpおよびΔδhが上記した範囲内にあれば、抗生物活性化合物および重合体の優れた相溶性を確保して、優れた徐放性を確保することができる。
抗生物活性化合物の双極子間力項δp,compoundおよび水素結合力項δh,compoundが上記した範囲内であり、かつ、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが上記した範囲内であれば、抗生物活性化合物は、ミニエマルション重合中、徐放性粒子から漏出せずに重合体と相溶していると定義される。つまり、抗生物活性化合物は、重合体に含有されている。
乳化剤は、ミニエマルション重合で通常用いられる乳化剤が挙げられ、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩などのアニオン系乳化剤が挙げられる。
また、乳化剤として、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、ポリオキシアルキレンアリールエーテルなどのノニオン系乳化剤が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、ノイゲンEA−177(第一工業製薬社製))などが挙げられる。
ポリオキシアルキレンブロックコポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアリールエーテルなどが挙げられる。
ノニオン系乳化剤のHLBは、例えば、11〜20、好ましくは、12〜19、さらに好ましくは、13〜18である。
なお、HLBは、下記式(1)で示されるグリフィンの式によって計算される。
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量) (1)
ノニオン系乳化剤としては、好ましくは、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルが挙げられる。
乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤の併用が挙げられ、さらに好ましくは、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルの併用が挙げられる。
アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が併用される場合には、アニオン系乳化剤の配合割合が、乳化剤に対して、例えば、10〜60質量%、好ましくは、15〜50質量%であり、ノニオン系乳化剤の配合割合が、乳化剤に対して、例えば、40〜90質量%、好ましくは、50〜85質量%である。
なお、乳化剤は、予め水に適宜の割合で配合して溶解させ、乳化剤含有水溶液として調製することもできる。乳化剤含有水溶液における乳化剤の配合割合は、例えば、10〜90質量%、好ましくは、20〜80質量%である。
重合開始剤は、ミニエマルション重合で通常用いられる重合開始剤が挙げられ、例えば、油溶性重合開始剤、水溶性重合開始剤などが挙げられる。
油溶性重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ化合物などが挙げられる。
水溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物などの水溶性アゾ化合物、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩化合物、例えば、過酸化水素などの水溶性無機過酸化物、例えば、tert−ブチルパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物などが挙げられる。さらに、水溶性重合開始剤として、例えば、水溶性アゾ化合物を除く水溶性重合開始剤と、アスコルビン酸、次亜硫酸水素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトルム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(ロンガリット)、二酸化チオ尿素、チオ硫酸ナトリウム、2価鉄塩、1価銅塩、アミン類などの水溶性還元剤とを組み合わせたレドックス系水溶性重合開始剤なども挙げられる。
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
好ましくは、油溶性重合開始剤、さらに好ましくは、油溶性有機過酸化物が挙げられる。
そして、本発明の徐放性粒子の製造方法では、まず、疎水性の抗生物活性化合物を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
すなわち、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーを配合して、それらを均一に攪拌することにより、疎水性溶液を得る。
なお、疎水性溶液は、例えば、抗生物活性化合物の溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)、および/または、ハイドロホーブ(ヘキサデカン、セチルアルコールなどのコスタビライザー)を配合することなく、調製される。これにより、環境負荷を低減することができる。
抗生物活性化合物の重合性ビニルモノマーに対する配合割合は、質量基準(つまり、抗生物活性化合物の質量部/重合性ビニルモノマーの質量部)で、例えば、0.01〜4.0、好ましくは、0.05〜3.0である。
疎水性溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、抗生物活性化合物の重合性ビニルモノマーに対する溶解速度を高めるため、さらには、常温では抗生物活性化合物の溶解度が十分でない場合に、溶解度を上げるためには、加熱して実施することもできる。
加熱温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
また、疎水性溶液の調製において、重合開始剤として油溶性重合開始剤が用いられる場合には、抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーとともに、油溶性重合開始剤を配合する。油溶性重合開始剤の配合は、好ましくは、常温で実施する。抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーを配合して、それらを加熱して、抗生物活性化合物を重合性ビニルモノマーに溶解させる場合には、溶解後の溶液を室温に冷却するか、あるいは溶解している抗生物活性化合物が析出しない温度より高い温度まで冷却し、その後、油溶性重合開始剤を配合する。
油溶性重合開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下でもある。
油溶性重合開始剤の配合割合が上記上限を超える場合には、重合体の分子量が過度に低下する場合があり、上記下限に満たない場合には、転化率が十分に向上せず、未反応の重合性ビニルモノマーが残存する場合がある。
また、本発明の徐放性粒子の製造方法では、別途、水と乳化剤とを配合して乳化剤水溶液を調製する。
具体的には、水と乳化剤とを配合して、それらを均一に攪拌することにより、乳化剤水溶液を得る。
乳化剤の配合割合は、乳化剤が疎水性溶液乳化液滴の全表面に吸着されるに十分な量であり、過剰な乳化剤の存在により抗生物活性化合物を含まない新しい重合性ビニルモノマーの乳化重合粒子の発生を抑制する量が選ばれ、乳化剤の種類により異なるが、疎水性溶液に対して、例えば、乳化剤の有効成分量として、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは、0.2〜10質量%である。
乳化剤水溶液の調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、必要に応じて、加熱して実施することもできる。
加熱温度は、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
なお、乳化剤水溶液の調製において、重合開始剤として水溶性重合開始剤が用いられる場合には、水および乳化剤とともに、水溶性重合開始剤を配合する。水溶性重合開始剤の配合は、好ましくは、常温で実施する。水および乳化剤を配合して、それらを加熱して、乳化剤を水に溶解させる場合は、その水溶液を室温に冷却し、その後、水溶性重合開始剤を配合する。
水溶性重合開始剤の配合割合は、水100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下でもある。
水溶性重合開始剤の配合割合が上記上限を超える場合には、重合体の分子量が過度に低下する場合があり、上記下限に満たない場合には、転化率が十分に向上せず、未反応の重合性ビニルモノマーが残存する場合がある。
また、乳化剤水溶液には、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する。)を配合することができる。
PVAは、ミニエマルションの保護コロイドを形成するために、水相に配合される分散剤であり、例えば、酢酸ビニルを主成分とするビニルモノマーを適宜の方法で重合して得られるポリ酢酸ビニル系重合体をけん化させることにより、得ることができる。
PVAを乳化剤水溶液に配合することにより、PVAの保護コロイドによって、安定な水和層を形成し、粒子間の衝突による凝集が起こりにくくさせる。その結果、例えば、乳化剤量が少ない処方においても、ミニエマルション重合中の凝集物量を低下させたり、残存モノマー量を低減するために重合末期に添加される重合開始剤(還元剤を含む)による、ミニエマルション重合粒子の不安定化を防止することができるなど、重合安定性を向上せることができる。また、長期間貯蔵中の徐放性粒子の凝集やケーキングを防止したり、徐放性粒子を木材処理剤として使用するに際して、水で希釈して、高剪断力のポンプやノズルを通過させる場合にも、徐放性粒子の凝集を防止することができるなど、コロイド安定性を向上させることができる。
PVAのけん化度は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上であり、また、例えば、99%以下、好ましくは、90%以下である。
PVAの平均重合度は、例えば、300以上、好ましくは、500以上であり、また、例えば、4000以下、好ましくは、2500以下である。
PVAは、4%水溶液の20℃における粘度が、例えば、3mPa・sec以上、好ましくは、5mPa・sec以上であり、また、例えば、100mPa・sec以下、好ましくは、50mPa・sec以下である。
PVAの粘度は、20℃において、その4%水溶液をB型粘度計を用いて測定することができる。
PVAを配合する場合、その配合割合は、PVAが疎水性溶液乳化液滴の全表面に吸着されるのに十分な量が選ばれ、PVAの種類により異なるが、疎水性溶液に対して、例えば、PVAの有効成分量として、例えば、0.5〜10質量%、好ましくは、1〜8質量%である。
PVA水溶液の調製は、例えば、25℃以下の冷水に撹拌下にPVAを投入して分散させ、そのまま60〜90℃に昇温して溶解させる。PVAが完全に水に溶解したことを確認後、室温に冷却することにより実施することができる。
また、乳化剤水溶液は、PVA以外の分散剤を含有することもできる。
分散剤としては、例えば、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物、ポリカルボン酸型オリゴマーなどが挙げられ、好ましくは、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。
芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物としては、例えば、βナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。
これら分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
分散剤の配合割合は、例えば、疎水性溶液に対して、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.3質量%以下、より好ましくは、0.2質量%以下である。
本発明の徐放性粒子の製造方法では、次いで、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化する。
具体的には、疎水性溶液を乳化剤水溶液に配合し、それらに高い剪断力を与えることにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製する。
疎水性溶液の乳化では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入乳化機などの乳化機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
攪拌条件は、適宜設定され、ホモミキサーを用いる場合には、その回転数を、例えば、6000rpm以上、好ましくは、8000rpm以上、さらに好ましくは、10000rpm以上に、例えば、30000rpm以下に設定する。
回転数が上記下限に満たない場合には、粒子径1μm未満のミニエマルション粒子が形成されない場合がある。
攪拌時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、2分間以上であり、また、1時間以下でもある。
また、ミニエマルションの調製は、例えば、常温で実施してもよく、あるいは、加熱して実施することもできる。また、乳化時に、加熱することもできる。加熱温度は、例えば、上記した疎水性溶液および/または乳化剤水溶液の調製時の加熱温度以上であり、具体的には、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃である。
疎水性溶液の配合割合は、乳化剤水溶液100質量部に対して、例えば、10〜150質量部、好ましくは、25〜90質量部である。
上記の方法により、疎水性溶液のミニエマルションを調製する。なお、疎水性溶液のミニエマルションは、乳化剤が、ミニエマルション粒子(疎水性溶液乳化液滴)に吸着しており、水媒体中に、平均粒子径1μm未満の疎水性溶液のミニエマルション粒子が形成されている。
ミニエマルション粒子の平均粒子径(メジアン径、後述)は、例えば、1μm未満、好ましくは、750nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下、もっとも好ましくは、300nm以下に、また、例えば、50nm以上に調節される。
なお、このミニエマルション粒子の表面には、乳化剤が吸着されており、それによって、ミニエマルションが安定化されている。
そのため、攪拌により調製されたミニエマルションを、調製後、静置した後、次のミニエマルション重合に供することもできる。その場合には、静置時間を、例えば、24時間以上にすることもできる。
ミニエマルション粒子の平均粒子径は、経時的に実質的に変化しないか、あるいは、変化率が極めて小さい。
具体的には、ミニエマルションの調製から20分経過(室温にて静置)後の平均粒子径に対する、調製から24時間経過(室温にて静置)後の平均粒子径の比(調製から24時間経過後の平均粒子径/調製から20分経過後の平均粒子径)が、例えば、0.9〜1.1、好ましくは、0.95〜1.05である。
本発明では、その後、乳化された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、重合体を生成する。
このミニエマルション重合は、原料となる重合性ビニルモノマーがすべてミニエマルション粒子(疎水性液相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合である。
すなわち、ミニエマルション重合は、ミニエマルションを攪拌しながら加熱することにより、重合性ビニルモノマーがそのまま、ミニエマルション粒子中で重合を開始し、重合体が生成する。
攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する攪拌器によって実施でき、ミニエマルションへの均一な熱伝導、ミニエマルション粒子の器壁固着、ミニエマルション表面でのミニエマルションの滞留膜張りを制御するに十分なかき混ぜ効果が実現できればよく、過剰な攪拌はミニエマルション粒子の凝集の原因となる。攪拌速度は、攪拌羽根の周速が、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下でもある。
加熱条件は、重合開始剤や抗生物活性化合物の種類によって適宜選択され、加熱温度が、例えば、抗生物活性化合物の融点以上であり、具体的には、30〜100℃、好ましくは、50〜100℃であり、加熱時間が、例えば、2〜24時間、好ましくは、3〜12時間である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
また、重合末期での残留する重合性ビニルモノマーを低減するには、水相中に飽和溶解している重合性ビニルモノマーを重合させるために、水溶性重合開始剤(水溶性アゾ化合物を除く)および水溶性還元剤を添加することもできる。
水溶性重合開始剤は、上記した水溶性重合開始剤と同様のものが挙げられる。水溶性アゾ化合物を除く水溶性開始剤を使用する場合は、水溶性重合開始剤のみを添加する場合と、水溶性還元剤を含むレドックス系水溶性重合開始剤を添加する場合とがあるが、残留モノマーを低減する観点から、レドックス系水溶性重合開始剤(後者の方)が好ましい。
水溶性還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、2価鉄塩、1価銅塩、アミン類などが挙げられる。
水溶性重合開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01〜0.5質量部であり、また、レドックス系水溶性重合開始剤を添加する場合には、水溶性還元剤の配合割合は、水溶性重合開始剤100質量部に対して、例えば、0.01〜0.5質量部である。
また、ミニエマルション重合時における圧力は、特に限定されず、例えば、常圧である。
なお、上記した説明では、ミニエマルション重合を常圧で実施しているが、例えば、高圧下で実施することもできる。これにより、反応系を、100℃を超過する温度に設定でき、融点が80〜100℃の抗生物活性化合物を容易に液状にすることもできる。
そして、ミニエマルション重合は、上記したように、重合プロセスがインサイチュ重合である点で、重合プロセスが、インサイチュ重合でなく、重合性ビニルモノマーが物質移動して重合する乳化重合と、明らかに相違する。
具体的に、乳化重合は、水相中で、乳化剤、重合性ビニルモノマーおよび重合開始剤(ラジカル重合開始剤)の存在下、攪拌を行い、ラジカル重合開始剤が分解して生成したラジカルにより重合を開始させる。このとき、重合性ビニルモノマーは、以下の3つの状態で存在する。つまり、(1)乳化剤のミセル中に可溶化された状態(平均粒子径数十nm未満の状態)、(2)水相中に溶解した状態、(3)油滴として存在する状態(粒子径数μm以上)の3つの状態で重合性ビニルモノマーが存在する。
そして、ラジカル重合開始剤の分解により生成したラジカルは、この3つ状態の重合性ビニルモノマーに衝突・侵入し、重合性ビニルモノマーに付加して重合を開始させる可能性があるが、上記した(1)重合性ビニルモノマーを可溶化した乳化剤のミセルは、上記した(3)重合性ビニルモノマーの油滴より、粒子の数が圧倒的に多く、そのため、表面積が大きくて、ラジカルの侵入確率が高いため、(1)乳化剤のミセルの中で重合が開始して、重合体粒子を形成する。なお、重合性ビニルモノマーとして水溶性の高い重合性ビニルモノマーを使用する場合には、上記した(2)水相中に溶解したビニルモノマーへのラジカル付加が起こり、生成した重合体が水相に溶解できず析出した時点で乳化剤により安定化され、重合体粒子が生成する。このような開始反応も乳化重合のプロセスで観察される。
そして、乳化重合が開始すると、(3)重合性ビニルモノマーの油滴から水相中に重合性ビニルモノマーが溶解し、次いで、重合性ビニルモノマーが重合体粒子に移動し、重合が進行する。すなわち、重合の場は、重合体粒子であり、重合性ビニルモノマーの油滴は、重合性ビニルモノマーの供給源としての役割を担うのみであり、その場で重合、つまり、インサイチュ重合は起こらない。
これに対して、ミニエマルション重合は、乳化剤およびハイドロホーブ(コスタビライザー)の存在下、ホモミキサー(ホモミクサー)、高圧ホモジナイザー、超音波照射などによって水相中の重合性ビニルモノマーの油滴に高剪断力を与えることによって粒子径1μm未満、好ましくは、0.5μm未満に微小化し、重合開始剤(ラジカル重合開始剤)が油溶性である場合には、その微小でかつ安定な重合性ビニルモノマーの油滴内で、重合開始剤が分解して生成したラジカルにより、あるいは、重合開始剤が水溶性である場合には、ラジカルが油滴に侵入して、侵入したラジカルにより、重合が開始し、ラジカル重合が進行する重合法である。
詳しくは、微小な重合性ビニルモノマーの油滴は、例えば、乳化剤としてアニオン系乳化剤を採用することにより、安定に存在する。同時に、微小な重合性ビニルモノマーの油滴は、ハイドロホーブ(コスタビライザー)を用いることにより、水相を介してより小さな(微小な)重合性ビニルモノマーの油滴からより大きな重合性ビニルモノマーの油滴への重合性ビニルモノマーの移動による肥大化(オストワルド熟成)を制御することにより、安定に存在する。
一方、本発明においては、ミニエマルション粒子(抗生物活性化合物および重合性ビニルモノマーからなる微小な油滴)中で重合性ビニルモノマーが重合(ラジカル重合)するミニエマルション重合が進行する。ミニエマルション重合中、重合性ビニルモノマーの重合体は、好ましくは、抗生物活性化合物に対して相溶している。つまり、重合体が抗生物活性化合物に溶解されて、重合体の抗生物活性化合物溶液とされており、その抗生物活性化合物溶液が、水中で乳化されている。
また、重合性ビニルモノマーは、上記したミニエマルション重合中の重合温度(加熱温度)において、好ましくは、上記したように重合性ビニルモノマーの重合体と抗生物活性化合物とが相溶するような組み合わせが選択されていることから、ミニエマルション重合中に相分離が生じることを防止して、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物に溶解し、あるいは、重合体(反応途中の重合体)が抗生物活性化合物に対して膨潤した状態で反応が進行し、均一相が形成された徐放粒子を得ることができる。なお、抗生物活性化合物は常温で液体であれば、常温でもそのまま重合体の抗生物活性化合物溶液の状態が維持される。
一方、ミニエマルション粒子の平均粒子径が、1μm未満と小さいことから、重合性ビニルモノマーが水相中に分子拡散し易いところ、本発明のミニエマルション重合では、抗生物活性化合物がハイドロホーブとして作用することができるので、上記した分子拡散を有効に防止する結果、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制することができる。
その後、重合後の乳濁液を、例えば、放冷などによって冷却する。
冷却温度は、例えば、室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)である。
徐放性粒子が粉剤(後述)または粒剤(後述)として製剤化される場合には、徐放性粒子が互いに融着することを防止すべく、好ましくは、室温において、硬質のガラス状態とされるように、重合性ビニルモノマーが選択される。
このようにして得られる徐放性粒子(重合体)の平均粒子径は、メジアン径で、1μm未満、好ましくは、750nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下、もっとも好ましくは、300nm以下であり、また、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上でもある。
これにより、抗生物活性化合物が均一に存在する徐放性粒子が微分散された乳濁液を得ることができる。
そして、徐放性粒子を含む乳濁液に、必要により、その他の分散剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合する。
このようにして得られた徐放性粒子は、そのままの状態(乳濁液)、つまり、乳濁剤として用いてもよく、また、スプレードライ、または、凍結・融解や、塩析などにより凝集させた後、遠心分離・洗浄・乾燥などによって固液分離を行い、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。
そして、本発明の徐放性粒子の製造方法は、乳化された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、平均粒子径1μm未満の重合体を生成することにより、本発明の徐放性粒子を得るので、徐放性粒子は、分散性に優れる。
具体的には、徐放性粒子は、平均粒子径が1μm未満であるので、重力に基づく沈降が生じにくく、徐放性粒子のブラウン運動によって、乳濁液中に均一に分散しており、この乳濁液を各種水系媒体中に添加すると、液中に均一に分散させることができる。
そのため、本発明の徐放性粒子は、添加された媒体中で平均粒子径1μm未満(サブミクロンサイズ)で均質(均一)に分散することにより、優れた徐放性は元より、優れた分散性を有する徐放性粒子として、種々の用途に用いることができる。
具体的には、徐放性粒子は、各種の工業製品に適用することができ、例えば、屋内外の塗料、ゴム、繊維、樹脂、プラスチック、接着剤、目地剤、シーリング剤、建材、コーキング剤、土壌処理剤、木材処理剤、製紙工程における白水、顔料、印刷版用処理液、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革などに、抗生物活性を発現する添加剤として添加することができる。なお、これらの工業製品に対する徐放性粒子中の抗生物活性化合物の添加量は、例えば、10mg/kg〜100g/kg(製品質量)である。
また、この徐放性粒子は、乳化剤水溶液に配合される乳化剤と共通する乳化剤が用いられる水性塗料に好適に配合することができる。水性塗料は、屋内外に用いられる水性塗料であって、具体的には、例えば、アクリル系、アクリル−スチレン系、スチレン系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系、アルキッド系、フッ素系の樹脂のエマルションまたは水性樹脂およびこれらの混合物などをビヒクルとする塗料が挙げられ、なかでも、ゼロVOC塗料に配合すれば、環境に優しく、かつ、徐放性粒子の安定性を良好に維持して、効力持続性の向上を、より一層図ることができる。
また、疎水性の抗生物活性化合物がミニエマルション重合におけるハイドロホーブを兼用することができるので、別途、ハイドロホーブを配合することなく、簡易に、平均粒子径1μm未満の徐放性粒子を生成することができる。
また、徐放性粒子の平均粒子径が、750nm以下100nm以上であれば、徐放性粒子の屈折率と媒体の屈折率との間に、例えば、0.2以上の差がある場合には、徐放性粒子と媒体との界面で、光(可視光線、波長360〜760nm)の反射が大きく、媒体に配合された徐放性粒子は、目視で白色に見えるようになる。
さらに、徐放性粒子の平均粒子径が、100nm未満であれば、媒体によらず光(可視光線、波長360〜760nm)は徐放性粒子を透過する割合が高くなり、透明感が強くなる。
従って、適当な媒体に配合された本発明の徐放性粒子は、抗生物活性化合物が、実質的に変色しても、目視では変色が抑えられるので、塗料の添加剤として好適に用いることができる。
また、この徐放性粒子を、木材処理剤として使用することもできる。徐放性粒子を木材処理剤として使用する場合、徐放性粒子を含有していればよく、例えば、上記の徐放性粒子を含む乳濁液(原乳濁液)、および、乳濁液が上記の希釈倍率などで希釈された希釈液を木材処理剤として使用できる。
木材処理剤における徐放性粒子の含有量は、木材処理剤が原乳濁液である場合では、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下でもあり、一方、木材処理剤が希釈液である場合では、例えば、0.2質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下でもある。
木材処理剤における抗生物活性化合物の濃度は、原乳濁液の場合では、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下でもあり、一方、希釈液の場合では、例えば、0.03質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下でもある。
木材処理剤は、例えば、分散剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、殺虫剤、防虫剤、有害生物忌避剤、微生物増殖抑制剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
各実施例および各比較例で用いる原料または測定方法の詳細を次に記載する。
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、分子量281、融点:60℃、水への溶解度:150ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.23[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:7.83[(J/cm3)1/2]、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
OIT:商品名「ケーソン893T」、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、分子量213、融点20℃未満、水への溶解度300ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:5.47[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:5.87[(J/cm3)1/2]、ダウ社製
シフルトリン:商品名「プリベントールHS12」、(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル−(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、分子量434、水への溶解度:1〜2ppb、異性体I(融点57℃)と異性体II(融点74℃)と異性体III(融点66℃)と異性体IV(融点102℃)との混合物、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.46[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:6.09[(J/cm3)1/2]、ランクセス社製
プロピコナゾール:1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量342、融点20℃未満、水への溶解度110ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:6.55[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:9.44[(J/cm3)1/2]、八幸通商社製
プロクロラズ:N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド、分子量375、融点45〜52℃、水への溶解度:55ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:7.07[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:8.31[(J/cm3)1/2]、丸善薬品社製
フルシラゾール:ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン、分子量315、融点:54℃、水への溶解度:45ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:5.95[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:6.85[(J/cm3)1/2]、エアブラウン社製
ディート:N,N−ジエチル−m−トルアミド、分子量191、融点:−45℃、水への溶解度:990ppm、δp,compound:5.42[(J/cm3)1/2]、δh,compound:5.83[(J/cm3)1/2]、東京化成工業社製試薬
ペルメトリン:商品名「プリベントールHS75」、3−フェノキシベンジル(1RS,3RS;1RS,3SR)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、分子量391、融点:34〜35℃、水への溶解度:6ppb、δp,compound:3.63[(J/cm3)1/2]、δh,compound:6.22[(J/cm3)1/2]、ランクセス社製
エトフェンプロックス:商品名「トレボン殺虫剤原体」、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル、分子量377、融点:36〜38℃、水への溶解度:22.5ppb、δp,compound:2.27[(J/cm3)1/2]、δh,compound:5.33[(J/cm3)1/2]、三井化学アグロ社製
メタクリル酸メチル:商品名「アクリルエステルM」、水への溶解度:1.6質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.98[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.25[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
メタクリル酸イソブチル:水への溶解度: 0.06質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:3.75[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.32[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
エチレングリコールジメタクリレート:商品名「ライトエステルEG」、水への溶解度:5.37ppm、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.37[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:10.42[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
T−1890:商品名「VESTANAT T 1890/100」、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、エボニック・インダストリーズ社製
DETA:ジエチレントリアミン、和光一級試薬、和光純薬工業社製
ATBC:アセチルクエン酸トリブチル、溶剤、旭化成ファインケム社製
パーロイルL:商品名(「パーロイル」は登録商標)、ジラウロイルパーオキシド、日油社製
ネオコールSW−C:商品名、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の70質量%イソプロパノール溶液、第一工業製薬社製
DBN:商品名「ネオペレックスNo.6パウダー」、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アニオン系乳化剤、花王社製
ノイゲンEA−177:商品名、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ノニオン系乳化剤、HLB:15.6)、第一工業製薬社製
デモールNL:商品名、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩の41質量%水溶液、分散剤、花王ケミカル社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、分散剤、けん化度87〜89%、重合度(平均重合度)1700、クラレ社製
平均粒子径:下記のサンプルを、下記の測定方法にて評価した。
実施例1〜12の疎水性溶液分散粒子および徐放性粒子と、比較例1〜3の疎水性溶液分散粒子:
粒径アナライザー(FPAR−1000、測定可能平均粒子径3nm〜7μm、ただし、粒子径が数μmを超えて、ブラウン運動に重力の影響が大きくなる領域では測定精度は著しく低下、大塚電子株式会社)を用いる動的光散乱法により、体積基準のメジアン径として測定。
疎水性溶液分散粒子については、調製から20分経過後のミニエマルションを測定。
徐放性粒子については、100目の濾布で濾過した濾液を測定。
比較例4および5の徐放性粒子:
レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(測定可能平均粒子径20nm〜2000μm、ただし、粒子径が1μm以下ではミュー散乱の角度依存性がなくなり、測定精度は著しく低下、堀場製作所社製)を用いるレーザー回折法により、100目の濾布で濾過した濾液を、体積基準のメジアン径として測定。
実施例1
(ミニエマルション重合による、IPBCを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、IPBC25g、メタクリル酸メチル75gおよびパーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水125.5g、ネオコールSW−C 4.0gおよびノイゲンEA−177の25質量%水溶液20gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数125rpm(周速23.6m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3.5時間、連続して実施した。
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80℃±2℃に昇温し、その温度で2.5時間、熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
その後、乳濁液を、100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定したところ、その結果が201nmであった。
この乳濁液は、通常のポリマーラテックスと同様に安定したコロイド分散液であり、室温で貯蔵中に徐放性粒子の沈降や相分離の傾向は認められなかった。
実施例2
(ミニエマルション重合による、IPBCを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、IPBC25g、メタクリル酸メチル70.5g、エチレングリコールジメタクリレート4.5gおよびパーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水125.5g、ネオコールSW−C 4.0gおよびノイゲンEA−177の25質量%水溶液20gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、実施例1と同じ手順により、ミニエマルション重合を実施した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。乳濁液を、100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定したところ、その結果が230nmであった。
この乳濁液は、通常のポリマーラテックスと同様に安定したコロイド分散液であり、室温で貯蔵中に粒子の沈降や相分離の傾向は認められなかった。
実施例3
(ミニエマルション重合による、OITを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、OIT25g、メタクリル酸メチル48g、メタクリル酸イソブチル22.5g、エチレングリコールジメタクリレート4.5gおよびパーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLビーカーに、脱イオン水125.5g、ネオコールSW−C 4.0gおよびノイゲンEA−177の25質量%水溶液20gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、攪拌器により回転数125rpmで攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3.5時間、連続して実施した。
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80℃±2℃に昇温し、その温度で2.5時間、熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を、100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定したところ、その結果が198nmであった。
この乳濁液は、通常のポリマーラテックスと同様に安定したコロイド分散液であり、室温で貯蔵中に粒子の沈降や相分離の傾向は認められなかった。
実施例4
(ミニエマルション重合による、OITを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、OIT30g、MMA65.8g、EGDMA4.2gおよびパーロイルL0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水157.26g、ネオコールSW−C 2.0g、PVA217(10質量%)水溶液40gおよびデモールNL0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数14000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、OITを含有する徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を、100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定したところ、その結果が166nmであった。
この乳濁液は、通常のポリマーラテックスと同様に安定したコロイド分散液であり、室温で貯蔵中に粒子の沈降や相分離の傾向は認められなかった。
実施例5
(ミニエマルション重合による、シフルトリンを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてシフルトリンを用いて、表2に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表2に示す。
実施例6
(ミニエマルション重合による、プロピコナゾールを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてプロピコナゾールを用いて、表2に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表2に示す。
実施例7
(ミニエマルション重合による、プロクロラズを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてプロクロラズを用いて、表2に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表2に示す。
実施例8
(ミニエマルション重合による、フルシラゾールを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてフルシラゾールを用いて、表2に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表2に示す。
実施例9および10
(ミニエマルション重合による、ディートを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてディートを用いて、表3に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表3に示す。
実施例11
(ミニエマルション重合による、ペルメトリンを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてペルメトリンを用いて、表3に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表3に示す。
実施例12
(ミニエマルション重合による、エトフェンプロックスを含有する徐放性粒子の製造)
抗生物活性化合物としてエトフェンプロックスを用いて、表3に記載の配合処方および反応条件に基づき、実施例4と同様に処理して、徐放性粒子の乳濁液を得た。
乳濁液を100目の濾布で濾過した後、濾液中の徐放性粒子のメジアン径を測定した結果を表3に示す。
比較例1
(乳化剤を配合しなかった水分散液の調製)
乳化剤水溶液の調製において、ネオコールSW−CおよびノイゲンEA−177の水溶液(以上、乳化剤)を配合しなかった以外は、実施例1と同様に処理して、疎水性溶液の水分散液を調製した。
しかし、疎水性溶液からなる油滴は、ミニエマルション粒子として形成されなかったため、ミニエマルション重合を実施することができなかった。
比較例2
(IPBCを配合しなかった水分散液の調製)
疎水性溶液の調製において、IPBC25gおよびメタクリル酸メチル75gをメタクリル酸メチル100gに置き換えた以外は、実施例1と同様に処理して、疎水性溶液の水分散液を調製した。
しかし、疎水性溶液からなる油滴は、平均粒子径が1μm未満のミニエマルション粒子に形成されず、そのため、ミニエマルション重合を実施することができなかった。
比較例3
(OITを配合しなかった水分散液の調製)
疎水性溶液の調製において、OIT25g、メタクリル酸メチル48g、メタクリル酸イソブチル22.5gおよびエチレングリコールジメタクリレート4.5gをメタクリル酸メチル64g、メタクリル酸イソブチル30gおよびエチレングリコールジメタクリレート6gに置き換えた以外は、実施例3と同様に処理して、疎水性溶液のミニエマルションを調製した。
しかし、このミニエマルションは、室温で静置すると経時的にミニエマルション粒子の肥大化(つまり、平均粒子径の増大、後述)が起こり、インサイチュのミニエマルション重合を実施することができないと判断した。
比較例4
(懸濁重合による、IPBCを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、IPBC25g、メタクリル酸メチル52.5g、エチレングリコールジメタクリレート22.5gおよびパーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水109.3g、PVA−217の10質量%水溶液40gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製した。
次いで、この500mLのビーカーに、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)により回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に分散させて、懸濁液を調製した。
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mL4口フラスコに移し、窒素気流下、攪拌器により回転数125rpmで攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、懸濁重合を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して反応した。
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液を得た。
得られた懸濁液を4口フラスコから半透明ポリエチレン容器に移し、室温で数時間静置した時の徐放性粒子の状態を観察したところ、徐放性粒子が沈降して、2層に分離したことが確認された。
続いて、室温で3日経過後した時には、沈降した下層が、強く振り混ぜても再分散できないハードケーキが形成されていた。
比較例5
(界面重合による、IPBCを含有する徐放性粒子の製造)
200mLの容器に、IPBC25g、ATBC64gおよびT−1890 10gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水97.8g、PVA−217の10質量%水溶液40gおよびDBNの5%水溶液200mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製した。
次いで、この500mLのビーカーに、疎水性溶液を加え、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)により回転数5000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に分散させて、懸濁液を調製した。
その後、懸濁液を、攪拌機、還流冷却機、および温度計を装備した300mL4口フラスコに移し、回転数125rpmで攪拌しながら、DETAの10質量%水溶液13gを添加した。次いで、4口フラスコをウォーターバスにより昇温し、75±2℃で4時間界面重合を実施した。
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、メジアン径10μmのIPBCを含有する徐放性粒子の懸濁液を得た。
得られた懸濁液を4口フラスコから半透明ポリエチレン容器に移し、室温で数時間静置した時の徐放性粒子の状態を観察したところ、徐放性粒子が沈降して、2層に分離したことが確認された。
続いて、室温で3日経過後した時には、沈降した下層が、強く振り混ぜても再分散できないハードケーキが形成されていた。
(配合処方)
実施例および比較例における配合処方を表1〜表5に記載する。
表中、原料の配合処方欄の数値は、単位を特に言及しない限り、配合g数を示す。
(評価)
1. ミニエマルションの安定性
(1) 実施例1〜12
実施例1〜12のミニエマルションを室温で所定時間静置した時、疎水性溶液分散粒子(ミニエマルション粒子)のメジアン径を測定した。その結果を以下に示す。
(1−1) 実施例1
調製から20分経過後 194nm
調製から5時間経過後 195nm
調製から24時間経過後 192nm
(1−2) 実施例2
調製から20分経過後 223nm
調製から16時間経過後 220nm
(1−3) 実施例3
調製から20分経過後 199nm
調製から5時間経過後 203nm
調製から24時間経過後 201nm
(1−4) 実施例4
調製から20分経過後 175nm
調製から5時間経過後 173nm
調製から24時間経過後 171nm
(1−5) 実施例5
調製から20分経過後 379nm
調製から5時間経過後 382nm
調製から24時間経過後 380nm
(1−6) 実施例6
調製から20分経過後 300nm
調製から5時間経過後 305nm
調製から24時間経過後 301nm
(1−7) 実施例7
調製から20分経過後 289nm
調製から5時間経過後 294nm
調製から24時間経過後 287nm
(1−8) 実施例8
調製から20分経過後 295nm
調製から5時間経過後 297nm
調製から24時間経過後 299nm
(1−9) 実施例9
調製から20分経過後 320nm
調製から5時間経過後 315nm
調製から24時間経過後 317nm
(1−10) 実施例10
調製から20分経過後 261nm
調製から5時間経過後 265nm
調製から24時間経過後 257nm
(1−11) 実施例11
調製から20分経過後 372nm
調製から5時間経過後 375nm
調製から24時間経過後 379nm
(1−12) 実施例12
調製から20分経過後 366nm
調製から5時間経過後 370nm
調製から24時間経過後 372nm
(2)比較例1〜3
比較例1〜3の水分散液を室温で所定時間静置した時、疎水性溶液分散粒子(油滴)の状態を観察し、あるいは、メジアン径を測定した。その結果を以下に示す。
(2−1) 比較例1
調製から1時間経過後 油滴の肥大化(つまり、油滴の合一、相分離)
(2−2) 比較例2
調製から20分経過後 2.06μm
調製から5時間経過後 2.54μm
調製から24時間経過後 3.31μm
(2−3) 比較例3
調製から20分経過後 504nm
調製から5時間経過後 679nm
調製から24時間経過後 914nm
2. SEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)観察
実施例2で得られた乳濁液を自然乾燥し、さらに、金属コート(導電処理)して、サンプルを調製した。調製したサンプルを、走査型電子顕微鏡(型番「S−4800」、日立ハイテクノロジーズ社製)で、SEM観察した。
実施例2のSEM写真の画像処理図を、図1および図2に示す。
徐放性粒子は、メジアン径測定値230nmに相当する粒子であることを確認することができる。
3. TEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electron Microscope)観察
実施例2、4〜9、11および12の乳濁液を自然乾燥し、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂に分散して、アミンで硬化させた。これをウルトラミクロトームで切断することにより断面を出し、四酸化ルテニウムで染色し、これをウルトラミクロトームで超薄切片に切り出して、サンプルを調製した。調製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(型番「H−7100」、日立製作所社製)で、TEM観察した。
実施例2のTEM写真の画像処理図を、図3および図4に示す。実施例4のTEM写真の画像処理図を、図5および図6に示す。実施例5のTEM写真の画像処理図を、図7および図8に示す。実施例6のTEM写真の画像処理図を、図9および図10に示す。実施例7のTEM写真の画像処理図を、図11および図12に示す。実施例8のTEM写真の画像処理図を図13および図14に示す。実施例9のTEM写真の画像処理図を図15および図16に示す。実施例11のTEM写真の画像処理図を図17および図18に示す。実施例12のTEM写真の画像処理図を図19および図20に示す。
徐放性粒子の外層(表面)は、四酸化ルテニウムで染色された、極めて薄い乳化剤層に覆われており、徐放性粒子の内層(内部)は、相分離の無い均一な構造であることが分かる。
4. IPBCを含有する徐放性粒子(実施例1、2および比較例4、5)の徐放性試験
以下の操作に従って、IPBCを含有する実施例1、2および比較例4、5の徐放性粒子について、IPBCの徐放性試験を実施した。
すなわち、まず、実施例1、2の乳濁液および比較例4、5の懸濁液(いずれもIPBC濃度10質量%)と、コントロールとしての、IPBCが水に懸濁されたIPBC懸濁液(IPBC濃度30質量%)とを、それぞれ、徐放性試験のサンプルとして用意した。コントロールのサンプルを比較例6とした。
次いで、ポリプロピレン製50mL遠沈管5本に、用意したサンプルをIPBC質量として、それぞれ20mgとなる量で投入し、次いで、脱イオン水で総量40gとして、IPBC濃度0.05質量%のIPBC含有液を調製した。
次いで、この遠沈管5本を振とう機(タイテック・コーポレーション製 TAITEC RECIPRO SHAKER SR−1)にかけて140回/分の振とうを実施し、所定時間毎に振とうを止めて、遠沈管を遠心分離機(マイクロ冷却遠心機3740、久保田製作所社製)にかけて15000rpm、5分間で固液分離した。
固体部は、脱イオン水を添加して総量40gとし、ミクロスパーテルで再分散後、再度、振とう機にかけて振とうを継続した。
一方、液体部は、島津製作所製HPLCを用いて、IPBCを定量し、徐放率を算出した。
各振とう時間における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
その結果を図21に示す。
ミニエマルション重合により得られた実施例1および2の徐放性粒子は、界面重合により得られた比較例5の徐放性粒子およびコントロールである比較例6で調製したIPBC粒子に比べて、徐放速度が遅い一方、懸濁重合により得られた比較例4で調製した徐放性粒子に比べて、徐放速度が速かった。
上記を考察すると、実施例1および2の徐放性粒子は、それぞれ、平均粒子径が201nmおよび230nmであることから、表面積が、平均粒子径が10μmの比較例4および5の徐放性粒子の表面積に対して約40倍広いことを考慮すると、比較例4および5の徐放性粒子に比べて、徐放性粒子の単位表面積当たりの徐放性に優れている。
5. OITを含有する徐放性粒子(実施例3)の徐放性試験
以下の操作に従って、OITを含有する実施例3の徐放性粒子について、OITの徐放性試験を実施した。
まず、実施例3の乳濁液(OIT濃度10質量%)と、コントロールとしての、OITが水に懸濁されたOIT(ケーソン893T)懸濁液(OIT濃度10質量%)とを、それぞれ、徐放性試験のサンプルとして用意した。
次いで、アクリルスチレン系水性塗料(ウルトラゾールA−20ベース、酸化チタン濃度20質量%、固形分濃度50質量%、ガンツ化成社製)の固形分量に対して、OIT質量として、1000ppmとなる質量でサンプルをそれぞれ添加・撹拌して、評価用塗料をそれぞれ調製した。コントロールのサンプルを比較例7とした。
次いで、評価用塗料をアルミニウム板の上に#75バーコーターを用いて塗布して、40℃にて16時間加熱して、乾燥することにより、塗膜を形成した。
続いて、アルミニウム板を70mm×150mmの大きさに切断して切断板を作製し、切断板をスガ試験機社製のデューパネルウェザーメーター(降雨のみに設定)に取り付け、7日間の降雨環境に曝露した。
降雨曝露後の切断板を25mm×25mmの大きさに切断して試験片を作製し、試験片をガラス瓶に入れ、メタノール10mlを加えて10分間の超音波抽出で、試験片の塗膜中のOITを抽出した。
OITを抽出されたメタノール抽出液を島津製作所製HPLCにて分析することにより、塗膜中のOITの残存率を算出した。
その結果を図22に示す。
実施例3の徐放性粒子が添加された塗膜は、比較例7に比べて、塗膜中のOITの残存率が高いことが分かる。
6. シフルトリンを含有する徐放性粒子の徐放性試験(実施例5)
以下の操作に従って、実施例5のシフルトリンを含有する徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
すなわち、実施例5の徐放性粒子の乳濁液(乳濁剤)(シフルトリン濃度10質量%)と、コントロールとしてのシフルトリンを溶解させたアセトニトリル10質量%溶液とをそれぞれ用意した。
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801で5種Cに相当)を2枚重ねて襞折りした。
次いで、その濾紙に、用意した実施例5の乳濁液0.5mLおよびシフルトリンのアセトニトリル溶液0.5mLをゆっくり添加し、その後、風乾した。
その後、濾紙をガラス瓶に入れ、イオン交換水/メタノール(=50/50(容量比))混合液180mLを加えて、室温で20時間、静置浸漬した。続いて、イオン交換水/メタノール混合液を採取し、新しいイオン交換水/メタノール混合液180mLを加えて、室温で20時間、静置浸漬した。その後、上記したイオン交換水/メタノール混合液の交換操作を2回繰り返した。
上記により、採取した各回のイオン交換水/メタノール混合液かLC/TOF−MSを用いて、シフルトリンの徐放量を測定した。なお、各回数における徐放量は、積算値(つまり、総徐放量)として算出した。
それらの結果を図23に示す。
7. プロピコナゾールを含有する徐放性粒子の徐放試験(実施例6)
以下の操作に従って、実施例6のプロピコナゾールを含有する徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
すなわち、まず、実施例6の徐放性粒子の乳濁液(プロピコナゾール濃度10質量%)と、プロピコナゾールが分散した、コントロールとしてのプロピコナゾール懸濁液(プロピコナゾール濃度10質量%)とを用意した。
次いで、円形濾紙(東洋濾紙No.5C、JIS P 3801の5種に相当)を2枚重ねて襞折りした。
次いで、その濾紙に、用意した乳濁液、懸濁液を0.5mLをゆっくりそれぞれ添加し、その後、風乾した。
この濾紙に、定量ポンプを用いて、流速20mL/hrで1000mL通水し、得られた濾液のプロピコナゾール量および濾紙に残存するプロピコナゾール量をHPLCで測定し、プロピコナゾールの徐放率を算出した。なお、各通水量における徐放率は、積算値(つまり、総徐放率)として算出した。
その結果を図24に示す。
8. プロクロラズを含有する徐放性粒子の徐放試験(実施例7)
上記した「7. プロピコナゾールを含有する徐放性粒子の徐放試験」の操作に準拠して、実施例7のプロクロラズを含有する徐放性粒子の徐放試験を実施した。
その結果を図25に示す。
9. フルシラゾールを含有する徐放性粒子の徐放試験(実施例8)
上記した「7. プロピコナゾールを含有する徐放性粒子の徐放試験」の操作に準拠して、実施例8のフルシラゾールを含有する徐放性粒子の徐放試験を実施した。
その結果を図26に示す。
10. ディートを含有する徐放性粒子の徐放性試験(実施例10)
(1) 虫かごの作製
42mm角の乾燥杉角材を用いて、図27に示すフレーム結合体1を作成した。
すなわち、フレーム結合体1は、左右方向に長く延びており、左右方向に間隔を隔てて対向配置される第1フレーム2および第2フレーム3と、それらを連絡する連絡フレーム4とを備える。
第1フレーム2および第2フレーム3は、直方体フレーム状に形成されている。連絡フレーム4は、第1フレーム2および第2フレーム3のそれぞれの上側部分を連絡するように形成されている。第1フレーム2および第2フレーム3のそれぞれのサイズは、左右方向長さが300mm、前後方向長さ(奥行き)が210mm、上下方向長さ(高さ)が210mmであり、連絡フレーム4のサイズは、左右方向長さが210mm、前後方向長さが210mm、上下方向長さが70mmである。
その後、図28に示すように、図27に示すフレーム結合体1に、外側面として40目の濾布5をそれぞれ配置し、それらの周端部を画鋲で、第1フレーム2、第2フレーム3および連絡フレーム4に固定することにより、虫かご10を作製した。
すなわち、虫かご10に、第1フレーム2および濾布5により仕切られる第1空間6と、第2フレーム3および濾布5により仕切られる第2空間7と、連結フレーム4および濾布5により仕切られる連結空間8とを形成した。第1空間6と第2空間7とは、連結空間8を介して、連通している。
これによって、濾布5は、各フレームに対して着脱可能であり、空気の流通は自由である。また、虫かご10に入れられる小昆虫は、第1空間6と第2空間7と、連結空間8を介して自由に往来できる一方、虫かご10の外に出ることができない。
(2)実施例10のディートを含有する徐放性粒子
角濾紙を120×200mmに切り、実施例10の乳濁液をイオン交換水で1.67倍に希釈してディートを10質量%含む徐放性粒子乳濁液を調製し、これを、噴霧器で角濾紙上にディートとして200mg付着するように散布した。この角濾紙を、夏季(2012年8月)の屋外日陰(大阪市此花区)に静置された虫かご10の第1空間6の底面の濾布5の上面に載置した。
また、リンゴの切片(後述するアカエイカのえさ)を、虫かご10の第2空間7の底面の濾布5の上面に載置した。
続いて、試験当日に羽化したアカイエカ20匹を虫かご10の第2空間7内に放した。放虫後、8時間の間、さらには、24時間後においても、アカイエカ20匹は、第2空間7から第1空間6に移動することがなかった。
(3)実施例10に対するコントロールの徐放性試験
角濾紙を120×200mmに切り、ディートの10質量%エチルアルコール溶液を、噴霧器で濾紙上に200mg付着するように散布し、これをコントロールとした。これを夏季(2012年8月)の屋外日陰(大阪市此花区)に静置された虫かご10の第1空間6の底面の濾布5の上面に載置した。
また、リンゴの切片(後述するアカエイカのえさ)を、虫かご10の第2空間7の底面の濾布5の上面に載置した。
続いて、試験当日に羽化したアカイエカ20匹を虫かご10の第2空間7内に放した。放虫後、8時間までは、アカイエカ20匹は、第2空間7から第1空間6に移動することがなかった。
しかしながら、放虫から24時間後では、アカイエカ7匹が、第2空間7から第1空間6に移動することが確認された。
11. ペルメトリンを含有する徐放性粒子の徐放性試験(実施例11)
上記した「6.シフルトリンを含有する徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠にして、実施例11のペルメトリンを含有する徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
その結果を、図29に示す。
12. エトフェンプロックスを含有する徐放性粒子の徐放性試験(実施例12)
上記した「6.シフルトリンを含有する徐放性粒子の徐放性試験」の操作に準拠にして、実施例12のエトフェンプロックスを含有する徐放性粒子について、徐放性試験を実施した。
その結果を、図30に示す。