1. 処理剤
本発明の処理剤は、有効成分が被処理材の表面に残存する第1の処理剤と、有効成分が被処理材の内部に浸透する第2の処理剤とを含有する。
2. 有効成分
有効成分としては、疎水性の抗生物活性化合物が挙げられる。抗生物活性化合物としては、例えば、重合性ビニルモノマー(後述)に対して実質的に不溶性の第1の抗生物活性化合物、例えば、重合性ビニルモノマーに対して実質的に相溶性の第2の抗生物活性化合物が挙げられる。これら第1の抗生物活性化合物および第2の抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
2−1. 第1の抗生物活性化合物
第1の抗生物活性化合物は、重合性ビニルモノマーに対して実質的に不溶性であって、具体的には、例えば、重合性ビニルモノマーに対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温の溶解度が、例えば、質量基準で、0.1質量部/(使用する)重合性ビニルモノマー(混合物)100質量部(1000ppm)以下、好ましくは、0.05質量部/(使用する)重合性ビニルモノマー(混合物)100質量部(500ppm)以下である。
第1の抗生物活性化合物の分子量は、特に限定されない。
第1の抗生物活性化合物の融点は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上であり、また、金属原子を含まない化合物であれば、例えば、300℃以下である。
第1の抗生物活性化合物は、例えば、殺虫(殺蟻を含む)、防虫(防蟻を含む)、殺菌、抗菌、防腐、除草、防藻、防かび、誘引および忌避などの抗生物活性を有する、殺虫剤(殺蟻剤を含む)、防虫剤(防蟻剤を含む)、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、除草剤、防藻剤、防かび剤、誘引剤および忌避剤などから選択される。
具体的には、第1の抗生物活性化合物として、例えば、殺虫剤としては、クロチアニジン((E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン)、チアクロプリド、チアメトキサム、ジノテフランなどのネオニコチノイド系殺虫剤、フルベンジアミド、クロラントラニリプロールなどのジアミド系、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、クロルフルアズロン、テブフェノジド、メトキシフェノジド、シロマジンなどの昆虫成長制御剤、クロフェンテジンなどの殺ダニ剤、ピメトロジン、オレイン酸ナトリウムなどのその他合成薬剤などが挙げられる。例えば、殺菌剤としては、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、オキシン銅などの銅系殺菌剤、金属銀などの銀系殺菌剤、ポリカーバメートなどの有機硫黄系殺菌剤、フサライド、トリシクラゾールなどのメラニン生合成阻害剤、チオファネートメチル、MBC、ジエトフェンカルブなどのベンゾイミダゾール系殺菌剤、イソチアニルなどの酸アミド系殺菌剤、トリホリンなどのステロール生合成阻害剤、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどのイソチアゾロン系殺菌剤、ジクロミジン、フルオルイミド、キャプタン、クロロタロニル、キノチメオアート、オキソリニック酸、ベンチアバリカルブイソプロピル、ジアゾファミド、ジンクピリチオンなどのその他合成阻害剤などが挙げられる。例えば、除草・防藻剤としては、DCMU、クミルロン、カルブチレートなどの尿素系薬剤、エトキシスルフロン、ハロスルフロンメチル、フラザスルフロン、ニコスルフロン、チフェンスルロンメチル、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、フルセトスルフロン、トリフロキシスルフロンナトリウム塩などのスルホニルウレア系薬剤、CAT、アトラジン、トリアジフラム、レナシル、シブルトリン、テルブトリンなどのトリアジン系薬剤、グリホサートなどのアミノ酸系、フルミオキサジンなどのフェニルフタルイミド系、メソトリオンなどのトリケトン系、キノクラミン、ピリフタリドなどのその他薬剤などが挙げられる。
これら第1の抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
2−2. 第2の抗生物活性化合物
第2の抗生物活性化合物の分子量は、例えば、200以上であり、また、例えば、600以下、好ましくは、500以下である。
第2の抗生物活性化合物の融点は、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下である。
具体的には、第2の抗生物活性化合物は、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、殺虫、誘引および忌避などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤および忌避剤などから選択される。これら抗生物活性を有する化合物としては、例えば、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物、カルバモイルイミダゾール系化合物、ジチオール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ニトロアルコール系化合物、パラオキシ安息香酸エステルなどの殺菌防腐防藻防かび剤(防腐防かび剤を含む)、例えば、ピレスロイド系化合物、ネオニコチノイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カーバメート系化合物、オキサジアジン系化合物などの防蟻剤(殺蟻剤)などが挙げられる。
有機ヨード系化合物としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、1−[[(3−ヨード−2−プロピニル)オキシ]メトキシ]−4−メトキシベンゼン、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネートなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール(プロピコナゾール)、ビス(4−フルオロフェニル)メチル(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチルシラン(別称:フルシラゾール、1−[[ビス(4−フルオロフェニル)メチルシリル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)などが挙げられる。
カルバモイルイミダゾール系化合物としては、例えば、N−プロピル−N−[2−(2,4,6−トリクロロ−フェノキシ)エチル]イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ)などが挙げられる。
ジチオール系化合物としては、例えば、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンなどが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)などが挙げられる。
ニトロアルコール系化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)などが挙げられる。
パラオキシ安息香酸エステルとしては、例えば、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。
ピレスロイド系化合物としては、例えば、シロバナムシヨケギクより得られるピレトリン、シネリン、ジャスモリンなどのピレスロイド系殺虫剤が挙げられ、これらから誘導されるアレスリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、トラロメトリン、シフルトリン((RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル−(1RS,3RS)−(1RS,3RS)−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート。詳しくは、異性体I((1R−3R−αR)+(1S−3S−αS))[融点:57℃]、異性体II((1R−3R−S)+(1S−3S−αR))[融点:74℃]、異性体III((1R−3S−αR)+(1S−3R−αS)))[融点:66℃]の混合物)、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス(2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル)、シラフルオフェン、フェンバレレートなどのピレスロイド系殺虫剤も挙げられる。
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−N1−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N2−シアノ−N1−メチルアセトアミジン(アセタミプリド)などが挙げられる。
有機塩素系化合物としては、例えば、ケルセンなどが挙げられる。
有機リン系化合物としては、例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなどが挙げられる。
カーバメート系化合物としては、例えば、フェノブカルブ、プロポクスルなどが挙げられる。
オキサジアジン系化合物としては、例えば、インドキサカルブなどが挙げられる。
除草剤としては、例えば、ピラクロニル、ペンディメタリン、インダノファンなどが挙げられる。
殺虫剤としては、例えば、ピリプロキシフェンなどが挙げられる。
忌避剤としては、例えば、ディート、カプサイシン類などが挙げられる。好ましくは、カプサイシン類が挙げられる。カプサイシン類としては、例えば、カプサイシン(N−[(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド)、および、カプサイシン誘導体が挙げられる。カプサイシン誘導体としては、例えば、N−バニリルノナンアミド(VNA)、ノニリックアシドバニリルアミド、デシリックアシドバニリルアミド、ノルジヒドロカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンなどが挙げられる。カプサイシン類として、好ましくは、カプサイシン、VNAが挙げられる。
これら第2の抗生物活性化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
3. 第1の処理剤
第1の処理剤は、第1の粒子を含有する。
第1の粒子は、有効成分を含有しており、具体的には、例えば、有効成分が膜により内包されているマイクロカプセル、例えば、有効成分が重合体に分散された有効成分分散粒子、例えば、フロアブル粒子を含んでいる。
また、第1の粒子の平均粒子径は、メジアン径として算出され、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、100μm以下である。
第1の粒子において、有効成分として、例えば、第1の抗生物活性化合物および第2の抗生物活性化合物が挙げられ、それらは、単独使用または併用することができる。例えば、第1の抗生物活性化合物の単独使用、あるいは、第1の抗生物活性化合物および第2の抗生物活性化合物の併用が挙げられる。
3−1. マイクロカプセル
マイクロカプセルに内包される有効成分として、好ましくは、第1の抗生物活性化合物、より好ましくは、殺虫剤、さらに好ましくは、ネオニコチノイド系殺虫剤、とりわけ好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
そして、マイクロカプセルは、例えば、化学的方法、物理化学的方法、物理的および機械的方法など、公知の方法によって調製することができる。
化学的方法としては、例えば、界面重合法、インサイチュ重合法、液中硬化被膜法などが挙げられる。
界面重合法としては、例えば、多塩基酸ハライドとポリオールとを界面重合させてポリエステルからなる膜を形成する方法、多塩基酸ハライドとポリアミンとを界面重合させてポリアミドからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリオールとを界面重合させてポリウレタンからなる膜を形成する方法、ポリイソシアネートとポリアミンとを界面重合させてポリウレアからなる膜を形成する方法などが挙げられる。
インサイチュ重合法では、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとを共重合させてポリスチレン共重合体からなる膜を形成する方法、メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートとを共重合させてポリメタクリレート共重合体からなる膜を形成する方法などが挙げられる。
液中硬化被膜法では、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、アルギン酸ソーダなどを液中で硬化させる方法が挙げられる。
物理化学的方法としては、例えば、単純コアセルベーション法、複合コアセルベーション法、pHコントロール法、非溶媒添加法などの水溶液からの相分離法や、有機溶媒からの相分離法などのコアセルベーション法などが挙げられる。物理化学的方法において、膜形成成分としては、例えば、ゼラチン、セルロース、ゼラチン−アラビアゴムなどが挙げられる。また、ポリスチレンなどが用いられる界面沈降法などを挙げることもできる。
物理的および機械的方法としては、例えば、スプレードライング法、気中懸濁被膜法、真空蒸着被膜法、静電的合体法、融解分散冷却法、無機質壁カプセル化法などが挙げられる。物理的および機械的方法において、膜形成成分としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
好ましくは、マイクロカプセルを、界面重合法によって、調製する。このような界面重合法は、例えば、特開2004−189734号公報の記載に準拠して、調製することができる。
マイクロカプセルにおいて、膜の厚みは、例えば、0.5μm以下であり、また、例えば、0.01μm以上であり、その膜の質量割合は、有効成分100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、100質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
マイクロカプセルの平均粒子径は、メジアン径として算出され、1μm以上、好ましくは、6μm以上、より好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、30μm以下である。
3−2. 有効成分分散粒子
有効成分分散粒子は、有効成分が重合体に分散された粒子であれば、有効成分の分散形態は特に限定されない。有効成分分散粒子としては、例えば、重合体と、重合体中に分散する有効成分とから形成される2相構造を有するマルチドメイン型粒子(第1のマルチドメイン型粒子)、例えば、重合体と有効成分とが相溶する均一相を有する第1の相溶系粒子が挙げられる。
(1) 重合体を生成するためのモノマー
重合体を生成するためのモノマーは、疎水性であって、例えば、ビニル基を少なくとも1つ分子内に有する重合性ビニルモノマーである。そのような重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマー、架橋性モノマーなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアルキル部分が直鎖状、分岐状または環状の炭素数1〜6のアルキル部分を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)などが挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン(ビニルベンゼン)、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチレンビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー(モノビニルベンゼン)などが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸エステル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニルなどが挙げられる。
ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、ビニルピリジンなどが挙げられる。
架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EGDA/EGDMA)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのモノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(PETA/PETM)などのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系架橋性モノマー、例えば、アリル(メタ)メタクリレート、トリアリル(イソ)シアヌレートなどのアリル系モノマー、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの芳香族架橋性モノマーが挙げられる。好ましくは、モノまたはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、より好ましくは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。
なお、モノマーは、異なる種類が併用される場合には、モノマー全体(つまり、異なる種類のモノマーの混合物)として実質的に疎水性である。モノマーは、具体的には、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温における溶解度が、例えば、8質量部/水100容量部(80g/L)以下、好ましくは、5質量部/水100容量部(50g/L)以下、さらに好ましくは、3質量部/水100容量部(30g/L)以下である。
重合体は、その重合体が第1のマルチドメイン型粒子の重合体とされるために、室温で堅牢な表面を有するために、ガラス転移温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、このガラス転移温度となるように重合体のモノマー組成が選ばれる。
(2) 第1のマルチドメイン型粒子
第1のマルチドメイン型粒子において、有効成分の一例としては、例えば、第1の抗生物活性化合物、好ましくは、殺虫剤、より好ましくは、ネオニコチノイド系殺虫剤、さらに好ましくは、クロチアニジンが挙げられる。
A.第1の抗生物活性化合物を含有する第1のマルチドメイン型粒子
次に、上記した有効成分を含有する第1のマルチドメイン型粒子について図1を参照して説明する。
第1のマルチドメイン型粒子は、図1に示すように、例えば、球状粒子として形成されている。第1のマルチドメイン型粒子1は、マトリクス2と、マトリクス2中に分散するドメイン3とから形成される2相構造を有する。
具体的には、第1のマルチドメイン型粒子1では、マトリクス2は、媒体あるいは連続相を形成しており、ドメイン3が孤立状に分散する。この第1のマルチドメイン型粒子1では、マトリクス2およびドメイン3は、互いに非相溶であって、互いに分離する相分離構造を形成する。また、第1のマルチドメイン型粒子1は、マトリクス2およびドメイン3を有するマルチドメイン構造あるいは海島構造(または多核構造)を有する。
具体的には、ドメイン3は、マトリクス2中において、分散相を形成する。ドメイン3の形状は、特に限定されず、例えば、不定形状、球状、塊状、板状など、適宜の形状に形成されている。ドメイン3の最大長さの平均値は、例えば、0.05μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下である。
マトリクス2は、第1のマルチドメイン型粒子1において、ドメイン3以外の領域にある。
また、第1のマルチドメイン型粒子1の表面には、マトリクス2およびドメイン3の両方が露出している。とりわけ、この第1のマルチドメイン型粒子1の表面には、有効成分が外方に突出するように露出しており、突出物4を構成している。突出物4は、懸濁重合体粒子の第1のマルチドメイン型粒子1としての初期徐放速度を速くする働き、および懸濁重合体粒子の乾燥粉体の耐ブロッキング性を著しく高める働きをする。突出物4の、懸濁重合体粒子の全表面に対する露出率(つまり、ドメイン3の露出率)は、第1のマルチドメイン型粒子1の全表面に対して、例えば、0.1%以上、好ましくは、1%以上であり、また、例えば、50%以下、好ましくは、30%以下である。マトリクス2の露出率は、第1のマルチドメイン型粒子1の全表面から突出物4の露出率を差し引いた割合である。
なお、この第1のマルチドメイン型粒子1の表面には、ドメイン3の一部がマトリクス2から脱離(脱落)することにより、穴6が形成される。穴6は、ドメイン3を構成する有効成分の形状に対応するように、形成されている。
マトリクス2は、上記したモノマーから生成される重合体からなる。
ドメイン3は、例えば、有効成分からなり、好ましくは、第1の抗生物活性化合物、より好ましくは、殺虫剤、さらに好ましくは、ネオニコチノイド系殺虫剤、とりわけ好ましくは、クロチアニジンからなる。
次に、この第1のマルチドメイン型粒子1の製造方法について説明する。
第1のマルチドメイン型粒子は、溶剤の不存在下において、疎水性、かつ、重合性ビニルモノマーに対して実質的に不溶性の有効成分を、疎水性の重合性ビニルモノマー中に分散することにより、疎水性スラリーを調製するスラリー化工程、疎水性スラリーを水分散して水分散液を調製する水分散工程、および、重合性ビニルモノマーを懸濁重合して、重合体を生成する重合工程を備える製造方法により得られる。以下、各工程について詳述する。
(スラリー化工程)
スラリー化工程では、溶剤の不存在下において、有効成分(好ましくは、第1の抗生物活性化合物)を、疎水性の重合性ビニルモノマー中に分散することにより、疎水性スラリーを調製する。
具体的には、上記した重合性ビニルモノマーおよび有効成分を配合し、溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)を配合することなく、攪拌する。
重合性ビニルモノマーの中に有効成分を分散するには、例えば、ペイントシェーカー、ホモディスパー(高速分散機)、ビーズミル(バッチ式ビーズミルを含む)、ボールミル、ロッドミルなどの分散機が用いられる。分散機は、単独使用または併用することができる。分散機として、好ましくは、広い粘度領域で使用可能で、大規模工業生産にも使用できるという観点から、バッチ式ビーズミルが用いられる。
上記した分散によって、有効成分は、湿式粉砕される。
有効成分の重合性ビニルモノマーに対する配合割合は、質量割合(つまり、有効成分の質量部/重合性ビニルモノマーの質量部)で、例えば、1/99以上、好ましくは、10/90以上であり、また、例えば、90/10以下、好ましくは、70/30以下である。また、有効成分の疎水性スラリーにおける含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
また、上記した分散において、必要により、分散剤(第1の分散剤)を配合することもできる。分散剤としては、ノニオン系、アニオン系およびカチオン系の両親媒性オリゴマー型分散剤、ノニオン系界面活性剤(第1の界面活性剤)などが挙げられる。例えば、ノニオン系両親媒性高分子型分散剤としては、EFKA4008、EFKA4009(以上チバ・スペシャリティズ製ウレタン系高分子分散剤)、DISPERBYK−2164、DISPERBYK−164(以上ビック・ケミー社製顔料分散用官能基変性共重合体)、NUOSPERSE2008、NUOSPERSE FA−196、NUOSPERSE657(以上エレメンティス社製)、フローレンD−90、ポリフローKL−100、ポリフローKL−700(以上共栄社化学社製)、ホモゲノールL−95(花王社製)などが挙げられる。例えば、アニオン系両親媒性オリゴマー型分散剤としては、フローレンG−900(共栄社化学社製カルボキシル基変性オリゴマー)、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−550、ディスパロンAQ−330(以上楠本化成社製ポリエーテルリン酸エステル塩)などが挙げられる。例えば、カチオン系の両親媒性オリゴマー型分散剤としては、ノプコスパース092(サンノプコ社製)などが挙げられる。例えば、ノニオン系界面活性剤としては、アモーゲンCBH(アルキルベタイン)、アモーゲンSH(アルキルアミドベタイン)、ノイゲン100E(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、ノイゲンEA73(ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル)、ノイゲンES99(モノオレイン酸ポリエチレングリコール)、ダイヤノールCME(ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド)、ダイヤノール300(ヤシ油脂肪酸モノエタノールジアミド)、ソルゲン30(セスキオレイン酸ソルビタン)、ソルゲン40(モノオレイン酸ソルビタン)、ソルゲン50(モノステアリン酸ソルビタン)、エパン420(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)、エパン720(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)(以上花王社製)などが挙げられる。好ましくは、ノニオン系およびアニオン系の両親媒性高分子型分散剤が挙げられ、さらに好ましくは、顔料分散用官能基変性共重合体分散剤が挙げられる。
分散剤の配合割合は、有効成分に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
疎水性スラリーにおける有効成分の平均粒子径は、例えば、5μm以下、好ましくは、2.5μm以下であり、また、例えば、0.05μm以上、好ましくは、0.1μm以上である。
この方法では、例えば、疎水性スラリーの調製とともに、あるいは、疎水性スラリーの調製後に、重合開始剤を配合する。好ましくは、疎水性スラリーの調製後に、重合開始剤を、調製した疎水性スラリーに配合する。
重合開始剤は、懸濁重合で通常用いられるラジカル重合開始剤が挙げられ、具体的には、油溶性重合開始剤などが挙げられる。
油溶性重合開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキシドなどの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの油溶性アゾ化合物などが挙げられる。
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
重合開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。油溶性重合開始剤の配合割合が上記上限を超える場合には、重合体の分子量が過度に低下する場合があり、上記下限に満たない場合には、転化率が十分に向上せず、未反応の重合性ビニルモノマーが数%以上残存する場合がある。
(水分散工程)
次いで、疎水性スラリーを水分散(懸濁)させる。
すなわち、疎水性スラリーおよび水を配合し、均一に攪拌することにより、疎水性スラリーを水分散(懸濁)させる。これにより、疎水性スラリーの水分散(懸濁)液を得る。
疎水性スラリーの水分散では、好ましくは、分散剤(第2の分散剤)、界面活性剤(第2の界面活性剤)を配合する。
分散剤(第2の分散剤)としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化澱粉、ポリアクリル酸およびそのナトリウム塩、スチレンマレイン酸コポリマーおよびそのナトリウム塩などの水溶性ポリマー、例えば、第三燐酸カルシウム、コロイダルシリカ、モンモリナイト、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、亜鉛華などの無機系分散剤などが挙げられる。
分散剤のうち、好ましくは、ポリビニールアルコール(PVA)、第三燐酸カルシウムが挙げられる。さらに好ましくは、ポリビニールアルコール(PVA)が挙げられる。
分散剤の配合割合は、疎水性スラリー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
界面活性剤(第2の界面活性剤)は、ラジカル重合中の粒子の凝集を有効に防止するために、好ましくは、上記した分散剤と併用され、具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の塩などのアニオン系界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン系界面活性剤などが挙げられる。好ましくは、ノニオン系界面活性剤、より好ましくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーが挙げられる。
界面活性剤の配合割合は、疎水性スラリー100質量部に対して、例えば、0.0001質量部以上、好ましくは、0.001質量部以上であり、また、例えば、1.0質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
これら分散剤および界面活性剤は、例えば、疎水性スラリーおよび水の配合前または配合後のいずれにおいても、配合することができ、好ましくは、疎水性スラリーと配合する前の水に配合する。これにより、分散剤および界面活性剤の水溶液を調製する。
上記した疎水性スラリーの水分散(懸濁)では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入分散機などの分散機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
水分散の条件は、適宜設定され、ホモミクサーを用いる場合には、その回転数を、例えば、100rpm以上、好ましくは、1000rpm以上であり、また、例えば、10000rpm以下、例えば、8000rpm以下に設定する。
これによって、疎水性スラリーが水相に分散された水分散液を調製する。
なお、水分散液に分散剤(第2の分散剤)が配合されている場合には、分散剤によって、水分散液中の疎水性スラリー液滴が安定化される。
(重合工程)
重合工程では、重合性ビニルモノマーを懸濁重合して、重合体を生成する。重合性ビニルモノマーを懸濁重合するには、水分散液を所定温度に昇温する。懸濁重合では、水分散液の水分散状態が維持されるように、水分散液を攪拌しながら、重合性ビニルモノマーが反応(具体的には、ラジカル重合)して、重合性ビニルモノマーの重合体が生成される。懸濁重合は、原料となる重合性ビニルモノマーがすべて水分散粒子(疎水性液相)のみにあることから、インサイチュ(in−situ)重合である。
具体的には、懸濁重合は、水分散液を攪拌しながら加熱することにより、重合性ビニルモノマーがそのまま、水分散粒子中で重合を開始し、重合体を生成する。
攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する攪拌器によって実施できる。攪拌速度は、攪拌羽根の周速が、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下である。
加熱温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、また、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。
なお、有効成分が重合体と非相溶である状態で懸濁重合が進行する。
加熱時間は、例えば、2時間以上、好ましくは、3時間以上であり、また、例えば、12時間以下、好ましくは、8時間以下である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
懸濁重合において、有効成分は、重合性ビニルモノマーに対して実質的に不溶性であり、有効成分は、重合開始から重合終了後まで、重合性ビニルモノマーおよび/または重合体に対して、非相溶状態を維持している。そのため、図1に示すように、得られる第1のマルチドメイン型粒子1は、マトリクス2およびドメイン3から形成される2相構造を有する。また、有効成分の一部は、第1のマルチドメイン型粒子1の内部から表面に露出しており、突出物4を構成する。
その後、重合後の水分散液を、例えば、放冷などによって冷却し、100目(メッシュ)の濾布などで濾過することにより、第1のマルチドメイン型粒子の水分散液(懸濁液)を得る。
冷却温度は、例えば、室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)である。
得られた第1のマルチドメイン型粒子の平均粒子径は、メジアン径として算出され、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、100μm以下である。
B.第2の抗生物活性化合物を含有する第1のマルチドメイン型粒子
また、第1のマルチドメイン型粒子に含有される有効成分の他の例として、例えば、第2の抗生物活性化合物を挙げることができ、好ましくは、忌避剤、より好ましくは、カプサイシン類、さらに好ましくは、カプサイシン、VNAが挙げられる。
上記した第2の抗生物活性化合物を含有する第1のマルチドメイン型粒子では、第2の抗生物活性化合物(好ましくは、カプサイシン、VNA)では、重合性ビニルモノマーから生成される重合体に対して、非相溶(非溶解)となっている。つまり、このような第1のマルチドメイン型粒子では、第2の抗生物活性化合物(好ましくは、カプサイシン、VNA)の相と、重合体の相とが互いに分離する相分離構造が形成される。重合体は、マトリクスを形成し、第2の抗生物活性化合物(好ましくは、カプサイシン、VNA)は、マトリクス中に分散するドメインを形成している。
このような第2の抗生物活性化合物を含有する第1のマルチドメイン型粒子を得るには、第2の抗生物活性化合物(好ましくは、カプサイシン、VNA)を、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を水分散させ、重合性ビニルモノマーを、油溶性重合開始剤の存在下、ラジカル重合して、重合体を生成する。
疎水性溶液の水分散では、必要により、後述する乳化剤および/または分散剤が配合される。
第2の抗生物活性化合物(好ましくは、カプサイシン、VNA)は、重合開始時には、疎水性の重合性ビニルモノマーに対して溶解しており、ラジカル重合が進行するに従って重合体から析出して、重合体からなるマトリクス中に分散して、ドメインを形成する。
このようにして得られた第1のマルチドメイン型粒子は、例えば、スプレードライで粉剤とされる。遠心分離、フルタープレスなどで固液分離し、必要に応じ、洗浄後、例えば、流動乾燥、棚乾燥などにより、乾燥し、必要に応じ、アトマイザー、フェザーミルなどで解砕、振動篩などで分級して、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いることもできる。あるいは、第1の処理剤が、水系であれば、水分散液(懸濁液)を、そのままの状態(懸濁液)、つまり、懸濁剤として用いることもできる。
(3)第1の相溶系粒子
第1の相溶系粒子において、有効成分として、好ましくは、重合性ビニルモノマーから生成される重合体に対して実質的に相溶性である第2の抗生物活性化合物、より好ましくは、殺虫剤および防腐防カビ剤から選択される少なくとも1つが挙げられ、さらに好ましくは、ピレスロイド系殺虫剤および有機ヨード系化合物から選択される少なくとも1つが挙げられ、とりわけ好ましくは、エトフェンプロックスおよびIPBCから選択される少なくとも1つが挙げられる。
第1の相溶系粒子は、有効成分を疎水性の重合性ビニルモノマー中に溶解させて、疎水性液を調製し、疎水性液を水分散して水分散液を調製し、重合性ビニルモノマーを懸濁重合して、重合体を生成して、平均粒子径1μm以上の重合体を生成することにより得られる。つまり、第1の相溶系粒子は、溶剤の不存在下において、疎水性の有効成分を、疎水性の重合性ビニルモノマー中に溶解することにより、疎水性溶液を調製する疎水性溶液調製工程、疎水性溶液を水分散して水分散液を調製する水分散工程、および、重合性ビニルモノマーを懸濁重合して、平均粒子径1μm以上の重合体を生成する重合工程を備える製造方法により得られる。そして、第1の相溶系粒子では、疎水性の有効成分が重合体と相溶している。
第1の相溶系粒子の製造方法およびそれにより得られる第1の相溶系粒子は、特開2011−79816号公報に詳細に記載されている。
3−3.フロアブル粒子
フロアブル粒子において、有効成分として、好ましくは、第2の抗生物活性化合物、より好ましくは、防腐防カビ剤、さらに好ましくは、有機ヨード系化合物、とりわけ好ましくは、IPBCが挙げられる。
フロアブル粒子は、水に不溶の固体の微粒子状の有効成分そのものである。フロアブル粒子は、水が/または水に配合されることによって、有効成分が水中に分散することが可能な粒子である。
フロアブル粒子において、有効成分は、例えば、水、界面活性剤および増粘剤などとともに、フロアブル剤として調製されることができる。
フロアブル剤の調製方法および上記した各成分については、特開2008−81466号公報に詳細に記載されている。
3−4.第1の粒子の組合せ
上記した第1の粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
第1の粒子として、好ましくは、マイクロカプセルの単独使用(後述する第1の態様に対応)、有効成分分散粒子の単独使用(後述する第2の態様、第3の態様および第8の態様に対応)、マイクロカプセルおよび有効成分分散粒子の併用(後述する第4の態様および第10の態様に対応)、マイクロカプセルおよびフロアブル粒子の併用(後述する第5の態様に対応)、異なる有効成分分散粒子の併用(後述する第6の態様および第10の態様に対応)、有効成分分散粒子およびフロアブル粒子の併用(後述する第7の態様および第9の態様に対応)が挙げられる。
第1の粒子として、より好ましくは、マイクロカプセルの単独使用(後述する第1の態様に対応)、第1のマルチドメイン型粒子の単独使用(後述する第2の態様に対応)、第1の相溶系粒子の単独使用(後述する第3の態様に対応)、マイクロカプセルおよび第1の相溶系粒子の併用(後述する第4の態様および第10の態様に対応)、マイクロカプセルおよびフロアブル粒子の併用(後述する第5の態様に対応)、第1のマルチドメイン型粒子および第1の相溶系粒子の併用(後述する第6の態様および第10の態様に対応)、異なる複数(具体的には、2)種類の有効成分を含有する第1の相溶系粒子の併用(後述する第8の態様に対応)が挙げられる。
第1の粒子として、さらに好ましくは、マイクロカプセルの単独使用(後述する第1の態様に対応)、第1のマルチドメイン型粒子の単独使用(後述する第2の態様に対応)、同一種類の第1の相溶系粒子の単独使用(後述する第3の態様に対応)が挙げられる。
4. 第2の処理剤
第2の処理剤は、第2の粒子を含有する。
第2の粒子は、有効成分を含有しており、第2の粒子としては、例えば、重合体と有効成分(好ましくは、第2の抗生物活性化合物)とが相溶する均一相を有する第2の相溶系粒子が挙げられる。
第1の相溶系粒子および第2の相溶系粒子は、いずれも、重合体と有効成分とが相溶する均一相を有する一方、第1の相溶系粒子の平均粒子径は、1μm以上であるのに対し、第2の相溶系粒子の平均粒子径は、1μm未満である。
具体的には、第2の処理剤の平均粒子径は、メジアン径として算出され、1μm未満、好ましくは、750nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下であり、また、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上である。
第2の相溶系粒子は、疎水性の有効成分を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製し、水と乳化剤とを配合して乳化剤水溶液を調製し、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化し、重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して重合体を生成することにより得られる。
第2の相溶系粒子において、有効成分として、第2の抗生物活性化合物が挙げられ、好ましくは、防腐防かび剤が挙げられ、より好ましくは、有機ヨード系化合物、トリアゾール系化合物が挙げられる。有効成分は、単独使用または2種類以上併用することができ、有機ヨード系化合物およびトリアゾール系化合物のそれぞれの単独使用、あるいは、それらの併用、具体的には、プロピコナゾールの単独使用、IPBCおよびプロピコナゾールの併用が挙げられる。
第2の相溶系粒子の製造方法において、有効成分が第2の抗生物活性化合物であれば、第2の抗生物活性化合物は、ミニエマルション重合におけるハイドロホーブ(コスタビライザー)として作用し、具体的には、ミニエマルション重合におけるミニエマルション(後述)の安定化に寄与することにより、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制する。
重合性ビニルモノマーは、上記した重合性ビニルモノマーと同一のものが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー、架橋性モノマーが挙げられる。重合性ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
重合性ビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステル系モノマーおよび架橋性モノマーを含有する場合には、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの配合割合は、架橋性モノマーの残部であり、架橋性モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、さらに好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。
重合性ビニルモノマーが(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマーおよび架橋性モノマーを含有する場合には、(メタ)アクリル酸系モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下であり、架橋性モノマーの配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、さらに好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下である。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの配合割合は、架橋性モノマーの残部である。
また、有効成分および重合性ビニルモノマーとして、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,componentが、例えば、2[(J/cm3)1/2]以上、好ましくは、3[(J/cm3)1/2]以上、例えば、8[(J/cm3)1/2]以下、好ましくは、7[(J/cm3)1/2]以下であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,componentが、例えば、5.5[(J/cm3)1/2]以上、好ましくは、5.8[(J/cm3)1/2]以上、例えば、9.5[(J/cm3)1/2]以下である有効成分と、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,polymerが、例えば、5[(J/cm3)1/2]以上、例えば、7[(J/cm3)1/2]以下、6.5[(J/cm3)1/2]以下であり、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,polymerが、例えば、8[(J/cm3)1/2]以上、好ましくは、8.5[(J/cm3)1/2]以上、例えば、10[(J/cm3)1/2]以下である重合体を生成する重合性ビニルモノマーとの組合せが選択される。
溶解度パラメータδの双極子間力項δpおよび水素結合力項δhは、Hansenで定義され、van Krevelen and Hoftyzer法で算出され、具体的には、特開2011−79816号公報に詳述されている。
なお、各項δ(δpおよびδh)の添字componentおよびpolymerは、有効成分および重合体をそれぞれ示す。
重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲に満たないと、重合体の疎水性が過度に高くなり、有効成分との十分な相溶性を得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができた場合でも、有効成分がミニエマルション重合中に徐放性粒子外へ漏出して、有効成分を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
一方、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび/または水素結合力項δh,polymerが上記範囲を超えると、重合体の親水性が過度に高くなり、有効成分との十分な相溶性が得ることができない場合があり、たとえ相溶性を得ることができたとしても、ミニエマルション重合における水相との界面自由エネルギーが低くなり、有効成分がミニエマルション重合中に徐放性粒子外へ漏出して、有効成分を十分内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
他方、有効成分の双極子間力項δp,componentおよび/または水素結合力項δh,componentが上記範囲に満たないと、有効成分の疎水性が過度に高くなり、重合体との十分な相溶性を得ることができない場合がある。
一方、有効成分の双極子間力項δp,componentおよび/または水素結合力項δh,componentが上記範囲を超えると、有効成分の親水性が過度に高くなり、有効成分が徐放性粒子外へ漏出し易く、有効成分を十分に内包した徐放性粒子の合成が困難となる場合がある。
さらに、溶解度パラメータδにおいて、重合体の双極子間力項δp,polymerから有効成分の双極子間力項δp,componentを差し引いた値Δδp(=δp,polymer−δp,component)は、例えば、−1.1〜2.8[(J/cm3)1/2]である。
また、重合体の水素結合力項δh,polymerから有効成分の水素結合力項δh,componentを差し引いた値Δδh(=δh,polymer−δh,component)は、例えば、−0.1〜4.2[(J/cm3)1/2]である。
ΔδpおよびΔδhが上記した範囲内にあれば、有効成分および重合体の優れた相溶性を確保して、優れた徐放性を確保することができる。
有効成分の双極子間力項δp,componentおよび水素結合力項δh,componentが上記した範囲内であり、かつ、重合体の双極子間力項δp,polymerおよび水素結合力項δh,polymerが上記した範囲内であれば、有効成分は、ミニエマルション重合中、徐放性粒子から漏出せずに重合体と相溶していると定義される。つまり、有効成分は、重合体に含有されている。
乳化剤は、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ノニルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩などのアニオン系乳化剤が挙げられる。
また、乳化剤として、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、ポリオキシアルキレンアリールエーテルなどのノニオン系乳化剤が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、ノイゲンEA−177(第一工業製薬社製))、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(例えば、エマルゲンA−90、エマルゲンA−500(以上、第一工業製薬社製))などが挙げられる。
ポリオキシアルキレンブロックコポリマーとしては、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアリールエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアリールエーテルなどが挙げられる。
ノニオン系乳化剤のHLBは、例えば、11以上、好ましくは、12以上、より好ましくは13以上であり、また、例えば、20以下、好ましくは、19以下、さらに好ましくは、18以下である。
なお、HLBは、下記式(1)で示されるグリフィンの式によって計算される。
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量) (1)
ノニオン系乳化剤としては、好ましくは、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルが挙げられる。
乳化剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、アニオン系乳化剤の単独使用、または、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤の併用が挙げられ、さらに好ましくは、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの単独使用、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテルの併用、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩およびポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルの併用が挙げられる。
アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が併用される場合には、アニオン系乳化剤の配合割合が、乳化剤に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下であり、ノニオン系乳化剤の配合割合が、乳化剤に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、80質量%以下、さらに好ましくは、75質量%以下である。
なお、乳化剤は、予め水に適宜の割合で配合して溶解させ、乳化剤含有水溶液として調製することもできる。乳化剤含有水溶液における乳化剤の配合割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
重合開始剤は、上記した懸濁重合で用いられるラジカル重合開始剤と同一のものが挙げられる。例えば、油溶性重合開始剤、水溶性重合開始剤などが挙げられる。好ましくは、油溶性重合開始剤、さらに好ましくは、油溶性有機過酸化物が挙げられる。
そして、第2の粒子の製造方法では、まず、有効成分(好ましくは、第2の抗生物活性化合物)を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解することにより、疎水性溶液を調製する。
すなわち、有効成分および重合性ビニルモノマーを配合して、それらを均一に攪拌することにより、疎水性溶液を得る。
なお、疎水性溶液は、例えば、有効成分の溶剤(ヘキサン、トルエン、酢酸エチルなどの疎水性の有機溶剤)、および/または、ハイドロホーブ(ヘキサデカン、セチルアルコールなどのコスタビライザー)を配合することなく、調製される。これにより、環境負荷を低減することができる。
有効成分の重合性ビニルモノマーに対する配合割合は、質量基準(つまり、有効成分の質量部/重合性ビニルモノマーの質量部)で、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上であり、また、例えば、4.0以下、好ましくは、3.0以下である。
また、疎水性溶液の調製において、重合開始剤として油溶性重合開始剤が用いられる場合には、有効成分および重合性ビニルモノマーとともに、油溶性重合開始剤を配合する。
油溶性重合開始剤の配合割合は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
また、第2の相溶系粒子の製造方法では、別途、水と乳化剤とを配合して乳化剤水溶液を調製する。
具体的には、水と乳化剤とを配合して、それらを均一に攪拌することにより、乳化剤水溶液を得る。
乳化剤の配合割合は、乳化剤が疎水性溶液乳化液滴の全表面に吸着されるに十分な量であり、過剰な乳化剤の存在により有効成分を含まない新しい重合性ビニルモノマーの乳化重合粒子の発生を抑制する量が選ばれ、乳化剤の種類により異なるが、疎水性溶液に対して、例えば、乳化剤の有効成分量として、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
なお、乳化剤水溶液の調製において、重合開始剤として水溶性重合開始剤が用いられる場合には、水および乳化剤とともに、水溶性重合開始剤を配合する。
水溶性重合開始剤の配合割合は、水100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
水溶性重合開始剤の配合割合が上記上限を超える場合には、重合体の分子量が過度に低下する場合があり、上記下限に満たない場合には、転化率が十分に向上せず、未反応の重合性ビニルモノマーが残存する場合がある。
乳化剤水溶液は、分散剤を含有することもできる。
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物、ポリカルボン酸型オリゴマーなどが挙げられ、好ましくは、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記する。)、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられる。
PVAは、ミニエマルションの保護コロイドを形成するために、水相に配合される分散剤であり、例えば、酢酸ビニルを主成分とするビニルモノマーを適宜の方法で重合して得られるポリ酢酸ビニル系重合体をけん化させることにより、得ることができる。
PVAを乳化剤水溶液に配合することにより、PVAの保護コロイドによって、安定な水和層を形成し、粒子間の衝突による凝集が起こりにくくさせる。その結果、例えば、乳化剤量が少ない処方においても、ミニエマルション重合中の凝集物量を低下させたりすることができるなど、重合安定性を向上せることができる。また、長期間貯蔵中の第2の相溶系粒子の凝集やケーキングを防止したり、第2の相溶系粒子を水系木材保存剤(後述)として使用するに際して、水で希釈して、高剪断力のポンプやノズルを通過させる場合にも、第2の相溶系粒子の凝集を防止することができるなど、コロイド安定性を向上させることができる。
PVAのけん化度は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上であり、また、例えば、99%以下、好ましくは、90%以下である。
PVAの平均重合度は、例えば、300以上、好ましくは、500以上であり、また、例えば、4000以下、好ましくは、2500以下である。
PVAは、4%水溶液の20℃における粘度が、例えば、3mPa・sec以上、好ましくは、5mPa・sec以上であり、また、例えば、100mPa・sec以下、好ましくは、50mPa・sec以下である。
PVAの粘度は、20℃において、その4%水溶液をB型粘度計を用いて測定することができる。
PVAを配合する場合、その配合割合は、PVAが疎水性溶液乳化液滴の全表面に吸着されるのに十分な量が選ばれ、PVAの種類により異なるが、疎水性溶液に対して、例えば、PVAの有効成分量として、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下である。
PVA水溶液の調製は、例えば、25℃以下の冷水に撹拌下にPVAを投入して分散させ、そのまま60〜90℃に昇温して溶解させる。PVAが完全に水に溶解したことを確認後、室温に冷却することにより実施することができる。
芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物としては、例えば、βナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の配合割合は、例えば、疎水性溶液に対して、例えば、0.001質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.3質量%以下、より好ましくは、0.2質量%以下である。
これら分散剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
この方法では、次いで、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化する。
具体的には、疎水性溶液を乳化剤水溶液に配合し、それらに高い剪断力を与えることにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製する。
疎水性溶液の乳化では、例えば、ホモミキサー(ホモミクサー)、超音波ホモジナイザー、加圧式ホモジナイザー、マイルダー、多孔膜圧入乳化機などの乳化機が用いられ、好ましくは、ホモミキサーが用いられる。
攪拌条件は、適宜設定され、ホモミキサーを用いる場合には、その回転数を、例えば、6000rpm以上、好ましくは、8000rpm以上、さらに好ましくは、10000rpm以上に、例えば、30000rpm以下に設定する。
回転数が上記下限に満たない場合には、粒子径1μm未満のミニエマルション粒子が形成されない場合がある。
攪拌時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、2分間以上であり、また、1時間以下である。
疎水性溶液の配合割合は、乳化剤水溶液100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、25質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、90質量部以下である。
上記の方法により、疎水性溶液のミニエマルションを調製する。なお、疎水性溶液のミニエマルションは、乳化剤が、ミニエマルション粒子(疎水性溶液乳化液滴)に吸着しており、水媒体中に、平均粒子径1μm未満の疎水性溶液のミニエマルション粒子が形成されている。
ミニエマルション粒子の平均粒子径は、メジアン径として算出され、1μm未満、好ましくは、750nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下に、また、例えば、50nm以上に調節される。
なお、このミニエマルション粒子の表面には、乳化剤が吸着されており、それによって、ミニエマルションが安定化されている。
その後、乳化された疎水性溶液の重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、重合体を生成する。
このミニエマルション重合は、原料となる重合性ビニルモノマーがすべてミニエマルション粒子(疎水性液相)のみにあることから、インサイチュ(in situ)重合である。
すなわち、ミニエマルション重合は、ミニエマルションを攪拌しながら加熱することにより、重合性ビニルモノマーがそのまま、ミニエマルション粒子中で重合を開始し、重合体が生成する。
攪拌は、例えば、攪拌羽根を有する攪拌器によって実施でき、ミニエマルションへの均一な熱伝導、ミニエマルション粒子の器壁固着、ミニエマルション表面でのミニエマルションの滞留膜張りを制御するに十分なかき混ぜ効果が実現できればよく、過剰な攪拌はミニエマルション粒子の凝集の原因となる。攪拌速度は、攪拌羽根の周速が、例えば、10m/分以上、好ましくは、20m/分以上であり、また、400m/分以下、好ましくは200m/分以下である。
加熱条件は、重合開始剤や有効成分の種類によって適宜選択され、加熱温度が、例えば、有効成分の融点以上であり、具体的には、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、100℃以下であり、加熱時間が、例えば、2時間以上、好ましくは、3時間以上であり、また、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。さらに、所定温度に加熱後、その温度を所定時間維持し、その後、加熱および温度維持を繰り返すことにより、段階的に加熱することもできる。
なお、ミニエマルション重合は、上記したように、重合プロセスがインサイチュ重合である点で、重合プロセスが、インサイチュ重合でなく、重合性ビニルモノマーが物質移動して重合する乳化重合と、明らかに相違する。
具体的に、乳化重合は、水相中で、乳化剤、重合性ビニルモノマーおよび重合開始剤(ラジカル重合開始剤)の存在下、攪拌を行い、ラジカル重合開始剤が分解して生成したラジカルにより重合を開始させる。このとき、重合性ビニルモノマーは、以下の3つの状態で存在する。つまり、(1)乳化剤のミセル中に可溶化された状態(平均粒子径数十nm未満の状態)、(2)水相中に溶解した状態、(3)油滴として存在する状態(粒子径数μm以上)の3つの状態で重合性ビニルモノマーが存在する。
そして、ラジカル重合開始剤の分解により生成したラジカルは、この3つ状態の重合性ビニルモノマーに衝突・侵入し、重合性ビニルモノマーに付加して重合を開始させる可能性があるが、上記した(1)重合性ビニルモノマーを可溶化した乳化剤のミセルは、上記した(3)重合性ビニルモノマーの油滴より、粒子の数が圧倒的に多く、そのため、表面積が大きくて、ラジカルの侵入確率が高いため、(1)乳化剤のミセルの中で重合が開始して、重合体粒子を形成する。なお、重合性ビニルモノマーとして水溶性の高い重合性ビニルモノマーを使用する場合には、上記した(2)水相中に溶解したビニルモノマーへのラジカル付加が起こり、生成した重合体が水相に溶解できず析出した時点で乳化剤により安定化され、重合体粒子が生成する。このような開始反応も乳化重合のプロセスで観察される。
そして、乳化重合が開始すると、(3)重合性ビニルモノマーの油滴から水相中に重合性ビニルモノマーが溶解し、次いで、重合性ビニルモノマーが重合体粒子に移動し、重合が進行する。すなわち、重合の場は、重合体粒子であり、重合性ビニルモノマーの油滴は、重合性ビニルモノマーの供給源としての役割を担うのみであり、その場で重合、つまり、インサイチュ重合は起こらない。
これに対して、ミニエマルション重合は、乳化剤およびハイドロホーブ(コスタビライザー)の存在下、ホモミキサー(ホモミクサー)、高圧ホモジナイザー、超音波照射などによって水相中の重合性ビニルモノマーの油滴に高剪断力を与えることによって粒子径1μm未満、好ましくは、0.5μm未満に微小化し、重合開始剤(ラジカル重合開始剤)が油溶性である場合には、その微小でかつ安定な重合性ビニルモノマーの油滴内で、重合開始剤が分解して生成したラジカルにより、あるいは、重合開始剤が水溶性である場合には、ラジカルが油滴に侵入して、侵入したラジカルにより、重合が開始し、ラジカル重合が進行する重合法である。
詳しくは、微小な重合性ビニルモノマーの油滴は、例えば、乳化剤としてアニオン系乳化剤を採用することにより、安定に存在する。同時に、微小な重合性ビニルモノマーの油滴は、ハイドロホーブ(コスタビライザー)を用いることにより、水相を介してより小さな(微小な)重合性ビニルモノマーの油滴からより大きな重合性ビニルモノマーの油滴への重合性ビニルモノマーの移動による肥大化(オストワルド熟成)を制御することにより、安定に存在する。
一方、第2の相溶系粒子の製造方法では、ミニエマルション粒子(有効成分および重合性ビニルモノマーからなる微小な油滴)中で重合性ビニルモノマーが重合(ラジカル重合)するミニエマルション重合が進行する。ミニエマルション重合中、重合性ビニルモノマーの重合体は、好ましくは、有効成分に対して相溶している。つまり、重合体に有効成分が溶解されて、重合体の有効成分溶液とされており、その有効成分溶液が、水中で乳化されている。
また、重合性ビニルモノマーは、上記したミニエマルション重合中の重合温度(加熱温度)において、好ましくは、上記したように重合性ビニルモノマーの重合体と有効成分とが相溶するような組み合わせが選択されていることから、ミニエマルション重合中に相分離が生じることを防止して、重合体(反応途中の重合体)が有効成分に溶解し、あるいは、重合体(反応途中の重合体)が有効成分に対して膨潤した状態で反応が進行し、均一相が形成された徐放粒子を得ることができる。なお、有効成分は常温で液体であれば、常温でもそのまま重合体の有効成分溶液の状態が維持される。
一方、ミニエマルション粒子の平均粒子径が、1μm未満と小さいことから、重合性ビニルモノマーが水相中に分子拡散し易いところ、このミニエマルション重合では、有効成分がハイドロホーブとして作用することができるので、上記した分子拡散を有効に防止する結果、オストワルド熟成を防止して、ミニエマルション粒子の肥大化(粒子径の増大)を抑制することができる。
その後、重合後の乳濁液を、例えば、放冷などによって冷却する。
このようにして得られる第2の相溶系粒子(重合体)の平均粒子径は、メジアン径として算出され、1μm未満、好ましくは、750nm以下、さらに好ましくは、500nm以下、とりわけ好ましくは、400nm以下、もっとも好ましくは、300nm以下であり、また、例えば、10nm以上、好ましくは、50nm以上である。
これにより、有効成分が均一に存在する第2の相溶系粒子が微分散された乳濁液を得ることができる。
また、このようにして得られた第2の相溶系粒子は、そのままの状態(乳濁液)、つまり、乳濁剤として用いてもよく、また、スプレードライ、または、凍結・融解や、塩析などにより凝集させた後、遠心分離・洗浄・乾燥などによって固液分離を行い、例えば、粉剤または粒剤などの公知の剤型に製剤化して用いてもよい。
このような第2の粒子は、好ましくは、複数種類の有効成分、具体的には、複数種類の第2の抗生物活性化合物を含有しており、より具体的には、複数種類の防腐防かび剤、さらには、有機ヨード系化合物およびトリアゾール系化合物、とりわけ、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する。
すなわち、第2の粒子が、一の有効成分と他の有効成分とを含有する場合には、一の有効成分と他の有効成分とを疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解して、一の有効成分と他の有効成分とを含有する疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化し、重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、一の有効成分と他の有効成分とが相溶する重合体を生成することにより、第2の粒子を得ることができる。
あるいは、第2の粒子が、一の有効成分と他の有効成分とを含有する場合には、まず、一の有効成分を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解して、一の有効成分を含有する疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化し、重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、一の有効成分が相溶する重合体を生成する。別途、他の有効成分を疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解して、他の有効成分を含有する疎水性溶液を調製し、その疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化し、重合性ビニルモノマーを、重合開始剤の存在下、ミニエマルション重合して、他の有効成分が相溶する重合体を生成する。その後、一の有効成分が相溶する重合体と、他の有効成分が相溶する重合体とを配合して混合することにより、第2の粒子を得ることもできる。
具体的には、一の有効成分として、好ましくは、有機ヨード系化合物、より好ましくは、IPBCが挙げられ、他の有効成分として、好ましくは、トリアゾール系化合物、より好ましくは、プロピコナゾールが挙げられる。
一の有効成分が、有機ヨード系化合物(具体的には、IPBC)であり、他の成分が、トリアゾール系化合物(具体的には、プロピコナゾール)である場合に、一の有効成分の、有効成分の総量に対する割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、50質量%未満、好ましくは、40質量%以下であり、また、他の成分の、有効成分の総量に対する割合は、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下であり、また、例えば、50質量%超過、好ましくは、60質量%以上である。一の有効成分の割合および/または他の有効成分の割合が上記範囲にあれば、2種類の有効成分が、被処理剤の内部に浸透して優れた効力持続効果を発現することができる。
5. 処理剤の調製
処理剤を調製するには、上記した第1の処理剤および第2の処理剤を混合する。具体的には、第1の処理剤および第2の処理剤を別々に調製し、それらを配合して混合する。
第1の処理剤の、第1の処理剤および第2の処理剤の総量に対する配合割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下である。また、第2の処理剤の、第1の処理剤および第2の処理剤の総量に対する配合割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、65質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。第2の処理剤の配合割合が、上記した下限以上であれば、第2の処理剤が被処理材の内部に浸透して、優れた効力持続効果を発現することができる。第2の処理剤の配合割合が、上記した上限以下であれば、被処理材の表面において、第1の処理剤の効力を確実に確保することができる。
また、第1の処理剤に含有される有効成分の、第1の処理剤に含有される有効成分、および、第2の処理剤に含有される有効成分の総量に対する含有割合が、例えば、5質量%以上、好ましくは、8質量%以上であり、また、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。第2の処理剤に含有される有効成分の、第1の処理剤に含有される有効成分、および、第2の処理剤に含有される有効成分の総量に対する含有割合が、例えば、55質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、92質量%以下である。第2の処理剤に含有される有効成分の配合割合が、上記した下限以上であれば、被処理材の内部において、有効成分の優れた効力持続効果を発現することができる。第2の処理剤に含有される有効成分の配合割合が、上記した上限以下であれば、被処理材の表面において、第1の処理剤に含有される有効成分の効力を確実に確保することができる。
さらに、処理剤における有効成分の総含有割合は、処理剤に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、6質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
なお、処理剤には、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。添加剤は、処理剤の調製時に配合することができ、あるいは、第1の処理剤および第2の処理剤のそれぞれの調製時に配合することもできる。
添加剤として、好ましくは、ノイゲンEA−177などの乳化剤を挙げることができる。添加剤の添加量は、第1の粒子および第2の粒子の総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下である。
上記した特定の添加剤を処理剤に添加することによって、処理剤に機械的な剪断力が負荷されても、第1の粒子および第2の粒子の凝集・破壊を防ぐことができる。さらには、処理剤の貯蔵安定性を向上させることができる。
6. 処理剤の作用および用途
そして、このような処理剤は、第1の処理剤の効力を確保しつつ、第2の処理剤の効力持続効果を向上させることができる。そのため、被処理材の内部において、優れた効力持続効果を発現することができる。
従って、このような処理剤は、種々の用途に用いられ、具体的には、例えば、水系木材保存剤、例えば、水系塗料、例えば、建材などに適用することができる。
6−1. 水系木材保存剤
(1) 水系木材保存剤の組成
水系木材保存剤は、上記した処理剤を含有する。
水系木材保存剤において、処理剤としては、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有するマイクロカプセルを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第1の態様、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有する第1のマルチドメイン型粒子を含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第2の態様、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有する第1の相溶系粒子を含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第3の態様、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有するマイクロカプセルと、防腐防かび剤を含有する第1の相溶系粒子とを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第4の態様、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有するマイクロカプセルと、防腐防かび剤を含有するフロアブル粒子とを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第5の態様、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有する第1のマルチドメイン型粒子と、防腐防かび剤を含有する第1の相溶系粒子とを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第6の態様、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有する第1のマルチドメイン型粒子と、防腐防かび剤を含有するフロアブル粒子とを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第7の態様と、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含有する第1の相溶系粒子と、防腐防かび剤を含有する第1の相溶系粒子とを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第8の態様と、例えば、第1の処理剤が、殺虫剤を含む第1の相溶系粒子と、防腐防かび剤を含有するフロアブル粒子とを含有し、第2の処理剤が、防腐防かび剤を含有する第2の相溶系粒子を含有する第9の態様とが挙げられる。さらに、処理剤として、上記した第1〜9の態様において、第1の処理剤が、忌避剤を含有する第1のマルチドメイン型粒子をさらに含有する第10の態様も挙げられる。なお、第8の態様では、殺虫剤を含有する第1の相溶系粒子と、防腐防かび剤を含有する第1の相溶系粒子との2種類から、第1の相溶系粒子を構成することが可能である。
第1の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、クロチアニジンを含有するマイクロカプセルを含有し、第2の処理剤が、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第2の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、クロチアニジンを含有する第1のマルチドメイン型粒子を含有し、第2の処理剤が、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第3の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、エトフェンプロックスを含有する第1の相溶系粒子を含有し、第2の処理剤が、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第4の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、クロチアニジンを含有するマイクロカプセルと、IPBCを含有する第1の相溶系粒子とを含有し、第2の処理剤が、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第5の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、クロチアニジンを含有するマイクロカプセルと、IPBCを含有するフロアブル粒子とを含有し、第2の処理剤が、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第6の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、クロチアニジンを含有する第1のマルチドメイン型粒子と、IPBCを含有する第1の相溶系粒子とを含有し、第2の処理剤が、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第7の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、クロチアニジンを含有する第1のマルチドメイン型粒子と、IPBCを含有するフロアブル粒子とを含有し、第2の処理剤が、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第8の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、エトフェンプロックスを含有する第1の相溶系粒子と、IPBCを含有する第1の相溶系粒子とを含有し、第2の処理剤が、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第9の態様では、好ましくは、第1の処理剤が、エトフェンプロックスを含有する第1の相溶系粒子と、IPBCを含有するフロアブル粒子とを含有し、第2の処理剤が、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子を含有する。
第10の態様では、好ましくは、第1〜9の態様において、第1の処理剤が、カプサイシン類を含有する第1のマルチドメイン型粒子をさらに含有する。具体的には、第10の態様では、より好ましくは、第1の処理剤が、カプサイシン類を含有する第1マルチドメイン型粒子と、クロチアニジンを含有するマイクロカプセルとを含有し、また、より好ましくは、第1の処理剤が、カプサイシン類を含有する第1マルチドメイン型粒子と、エトフェンプロックスまたはIPBCを含有する第1の相溶系粒子とを含有する。
水系木材保存剤として、より好ましくは、第1の態様、第2の態様、第3の態様、第4の態様、第6の態様、第8の態様、第10の態様が挙げられ、さらに好ましくは、第1の態様、第2の態様が挙げられる。
第1の態様および第2の態様では、第1の処理剤の、第1の処理剤および第2の処理剤の総量に対する配合割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、65質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。また、第2の処理剤の、第1の処理剤および第2の処理剤の総量に対する配合割合は、例えば、60質量%以上、好ましくは、65質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。第2の処理剤の配合割合が、上記した下限以上であれば、第2の相溶系粒子が木材の内部に浸透して、優れた防腐防かびの持続効果を発現することができる。第2の処理剤の配合割合が、上記した上限以下であれば、木材の表面において殺虫効力を確実に確保することができる。
また、第1の態様および第2の態様では、殺虫剤の、殺虫剤および防腐防かび剤の総量に対する含有割合が、例えば、5質量%以上、好ましくは、8質量%以上であり、また、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。また、防腐防かび剤の、殺虫剤および防腐防かび剤の総量に対する含有割合が、例えば、55質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、92質量%以下である。防腐防かび剤の配合割合が、上記した下限以上であれば、木材の内部において、優れた防腐防かびを持続的に発現することができる。防腐防かび剤の配合割合が、上記した上限以下であれば、木材の表面において殺虫効力を確実に確保することができる。
さらに、殺虫剤および防腐防かび剤の総含有割合は、処理剤に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、6質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
また、水系木材保存剤を、有効成分の濃度が、約0.005質量%以上、好ましくは、0.01質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、2質量%以下となるように、必要により水で希釈した後、木材に処理することができる。
さらに、水系木材保存剤には、水系木材保存剤に通常添加される添加剤、具体的には、特開2008−081466号公報に記載される添加剤を、適宜の割合で添加することもできる。
上記のようにして得られた木材保存剤は、浸漬や塗布などの公知の処理方法により、木材に処理することができる。
このような水系木材保存剤によって処理される被処理材である木材としては、特に限定されず、例えば、住宅、建築物などの建材材料や家具などの一般工業木材などが挙げられる。
(2) 水系木材保存剤の効果
そして、上記した処理剤を含有する水系木材保存剤によれば、第1の処理剤の有効成分が、木材の表面に残存するとともに、第2の処理剤の有効成分が木材の内部に浸透しながら、木材の内部において、優れた効力持続効果を発現することができる。
また、この水系木材保存剤では、第2の処理剤が第2の相溶系粒子を含有する場合には、第2の相溶系粒子が分散性に優れるので、水系木材保存剤における乳化剤やバインダーの使用量を低減することができる。そのため、水系木材保存剤製剤の安全性を向上させることができる。
また、この水系木材保存剤では、第2の処理剤が第2の相溶系粒子を含有する場合には、第2の相溶系粒子のコロイド安定性が向上されているので、水系木材保存剤に機械的な剪断力が負荷されても、第2の相溶系粒子の凝集・破壊を防ぐことができる。
さらに、第1の処理剤として好適に使用されるマイクロカプセル、具体的には、界面重合を用いて製造されたクロチアニジンマイクロカプセル(クロチアニジンを内包するマイクロカプセル)は、壁膜が溶剤に膨潤し易いので、第2の処理剤が、第2の相溶系粒子を含有し、溶剤を含有しない乳濁液として調製される場合には、そのような第1の処理剤および第2の処理剤を配合しても、第1の処理剤、具体的には、クロチアニジンマイクロカプセルの膨潤を抑制することができる。
6−2.水系塗料
(1) 水系塗料の組成
水系塗料は、上記の水系木材保存剤で例示した処理剤と、塗膜形成成分とを含有する。
水系塗料において、処理剤として、上記した第1の態様〜第9の態様が挙げられる。
塗膜形成成分としては、例えば、アクリル系、アクリル−スチレン系、スチレン系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ウレタン系、アルキッド系、フッ素系の樹脂のエマルションまたは水性樹脂およびこれらの混合物などが挙げられる。
処理剤に含まれる有効成分の合計の、塗膜形成成分100質量部に対する含有割合は、例えば、0.005質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、2質量部以下である。
水系塗料を得るには、処理剤と、塗膜形成成分とを配合して混合して、混合物を調製する。その後、必要により、水によって混合物を適宜の倍率で希釈する。
水系塗料によって処理される被処理材である塗布対象としては、特に限定されず、例えば、上記した木材、合板、パーティクルボード、集成材、木とプラスチックとの複合材などの各種木質製品などが挙げられる。なお、木材が塗布対象である場合には、この水系塗料は、木材保護塗料とされる。
水系塗料における有効成分の処理量は、基材に対して、例えば、6mg/m2以上、好ましくは、12mg/m2以上であり、また、例えば、48000mg/m2以下、好ましくは、3200mg/m2以下である。
(2) 水系塗料の効果
そして、上記した処理剤を含有する水系塗料によれば、第1の処理剤の有効成分が、塗布対象の表面に残存するとともに、第2の処理剤の有効成分が塗布対象の内部に浸透しながら、塗布対象の内部において、優れた効力持続効果を発現することができる。
また、この水系塗料では、第2の処理剤が第2の相溶系粒子を含有する場合には、第2の相溶系粒子が分散性に優れるので、水系塗料における乳化剤やバインダーの使用量を低減することができる。そのため、水系塗料製剤の安全性を向上させることができる。
また、この水系塗料では、第2の処理剤が、第2の相溶系粒子を含有する場合には、第2の相溶系粒子のコロイド安定性が向上されているので、水系塗料の塗布時に、水系塗料に機械的な剪断力が負荷されても、第2の相溶系粒子の凝集・破壊を防ぐことができる。
また、この水系塗料では、平均粒子径1μm未満である第2の粒子を含有する第2の処理剤を含有するので、塗膜形成成分に対する混和性に優れる。
6−3. 建材
(1) 建材の具体例および処方
処理剤が適用される建材としては、例えば、石膏ボード、セメント、プラスター、天井材、繊維壁、目地剤、シーラント、壁紙などが挙げられる。
処理剤は、上記した建材の原料に添加される。
処理剤の添加量は、有効成分が、建材の原料100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、また、例えば、12質量部以下、好ましくは、13質量部以下となるように、調整される。
(2) 建材の効果
そして、処理剤を含有する建材によれば、第1の処理剤の有効成分が、建材が施工される施工対象の表面に残存するとともに、第2の処理剤の有効成分が施工対象の内部に浸透しながら、施工対象の内部において、優れた効力持続効果を発現することができる。
以下に調製例および実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何らそれらに限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、調製例および実施例中、%などの単位については、特段の記載がない限り、質量%を意味する。
1. 略号の詳細
まず、各調製例で用いる略号の詳細を次に記載する。
(1) 抗生物活性化合物
クロチアニジン:(E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン、分子量250、融点176.8℃、水への溶解度:330ppm、第1の抗生物活性化合物、住友化学社製
エトフェンプロックス:2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル、分子量377、融点37.4℃、水への溶解度:22.5ppb、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:2.27[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:5.33[(J/cm3)1/2]、第2の抗生物活性化合物、丸善薬品社製
IPBC:商品名「ファンギトロール400」、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、分子量281、融点:60℃、水への溶解度:150ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:3.23[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:7.83[(J/cm3)1/2]、第2の抗生物活性化合物、インターナショナル・スペシャリティ・プロダクツ社製
プロピコナゾール:1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール、分子量342、融点20℃未満、水への溶解度110ppm、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,compound:6.55[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,compound:9.44[(J/cm3)1/2]、第2の抗生物活性化合物、八幸通商社製
・カプサイシン:N−[(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド、分子量305、融点66℃、水への溶解度:0.33g/L(25℃)、和光純薬社製
(2) モノマー等
DVB−570:商品名、水に不溶、組成:ジビニルベンゼン(上限60%)、エチルビニルベンゼン(上限40%)、新日鐵住金化学社製
MMA:メタクリル酸メチル、商品名「アクリエステルM」、水への溶解度:1.6質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.98[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:9.25[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
MAA:メタクリル酸、水への溶解度:8.9質量%、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,2nd monomer unit:7.13[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,2nd monomer unit:13.03[(J/cm3)1/2]、三菱レイヨン社製
i−BMA:iso−ブチルメタクリレート、水への溶解度:0.5g/L(25℃)、溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:3.75[(J/cm3)1/2]、溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer unit:7.32[(J/cm3)1/2]、日本触媒社製
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、商品名「ライトエステルEG」、水への溶解度:581mg/L(25℃)、モノマー単位としての溶解度パラメータδの双極子間力項δp,monomer unit:5.37[(J/cm3)1/2]、モノマー単位としての溶解度パラメータδの水素結合力項δh,monomer:10.42[(J/cm3)1/2]、共栄社化学社製
タケネートD−140N:、商品名、ポリイソシアネート、三井化学社製
DETA:ジエチレントリアミン、和光純薬社製
(3) その他の成分
ジラウロイルパーオキシド:商品名「パーロイルL」、油溶性重合開始剤、日油社製
DISPERBYK−164:商品名、顔料分散用官能基変性共重合体(分子量10000〜50000)、ビッグケミー社製
PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、けん化度:87.0〜89.0%、重合度:1700、粘度(4質量%水溶液、20℃):22.0〜27.0mPa・sec、分散剤、クラレ社製
メトローズ90SH−100:商品名、メチルセルロース、、粘度(2質量%水溶液、20℃)100mPa・s、分散剤、信越化学工業社製
DBN:商品名「ネオペレックスNo.6パウダー」、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アニオン系乳化剤、花王社製
ペレックスSS−L:商品名、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の50質量%水溶液、花王社製
パーソフトEF:商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩の25質量%水溶液(アニオン系乳化剤)、日油社製
エマルゲンA−90:商品名、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ノニオン系乳化剤、花王社製
エマルゲンA−500:商品名、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ノニオン系乳化剤、花王社製
ネオコールSW−C:商品名、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)の70質量%イソプロパノール溶液、第一工業製薬社製
プロノン208:商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ノニオン系乳化剤、日油社製
ノイゲンEA−177:商品名、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ノニオン系乳化剤(HLB:15.6)、第一工業製薬社製
DKエステルF−160:商品名、ショ糖脂肪酸エステル、ノニオン系乳化剤、第一工業製薬社製
デモールNL:商品名、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩の41質量%水溶液、アニオン系分散剤、花王社製
ニューカルゲンFS−4:商品名、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩、アニオン系分散剤、竹本油脂社製
レオジック260H:商品名、ポリアクリル酸ナトリウム、増粘剤、東亜合成社製
日石ハイゾールSAS−296:商品名、フェニルキシリルエタン、JX日鉱日石エネルギー社製
アルケンL:商品名、アルキルベンゼン、JX日鉱日石エネルギー社製
プロピレングリコール:凍結防止剤、和光純薬社製
ノプコ8034−L:商品名、消泡剤、サンノプコ社製
2. 分散に使用した機器
ホモディスパー:商品名「T.K.ホモディスパーModel2.5」、プライミクス社製
ホモミクサー:商品名「T.K.ホモミクサーMark2.5型」、プライミクス社製
ビーズミル:商品名「ディスパーマットSL−12C」、VMA−GETZMANNGMBH製
3. メジアン径の測定
次に説明する各調製例の粒子のメジアン径は、調製例1〜3、8、10、11および13の粒子については、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)により測定し、調製例2のスラリーBにおけるクロチアニジンならびに調製例4〜7、9および12の粒子のメジアン径については、動的光散乱法粒径アナライザー(FPAR−1000、大塚電子株式会社)により算出した。
[第1処理剤および第2処理剤のそれぞれの調製]
調製例1
(クロチアニジンを含有するマイクロカプセル(第1の粒子)の製造)
(製造方法:界面重合)
日石ハイゾールSAS−296 318g、アルケンL 154g、DISPERBYK−164 48gを配合し、これらを均一に攪拌して混合し、これにクロチアニジン480gを加えホモディスパーで攪拌することにより、クロチアニジン48質量%含有スラリー液Aを得た。
次いで、得られたクロチアニジン48質量%含有スラリー液Aをビーズミルで湿式粉砕した。その後、湿式粉砕したスラリー液Aのうちの283gに、タケネートD−140N213gを加え、均一に攪拌しスラリー液Bを得た。
その後、得られたスラリー液Bのうちの248gを、PVA−217 50.4gおよびニューカルゲンFS−4 3.6gを含む水溶液492gに加えて、微少滴になるようにホモミクサーで常温下で、数分間、回転数5000rpmで攪拌した。
次いで、この混合液を緩やかに攪拌しながら、水207gおよびスラリー液Bの残りの248gを投入し攪拌を継続した。その後常温下でホモミクサーで、数分間、回転数2500rpmで攪拌した。
次いで、この混合液を75℃の恒温槽中で3時間緩やかに攪拌させながら、DETAを7.6g滴下させて、これらを界面重合させることにより、クロチアニジンがポリウレタンおよびポリウレアからなる膜に内包させて製剤化して、マイクロカプセルを得た。マイクロカプセルの平均粒子径は、10μmであった。
その後、これにレオジック260H 0.5質量%水溶液450g、プロピレングリコール54g、水93.4gを加え全体の質量を1800gとして、クロチアニジンの濃度を7.5質量%に調整した。
調製例2
(クロチアニジンを含有する第1のマルチドメイン型粒子(第1の粒子)の製造)
(製造方法:懸濁重合)
まず、DVB−570 550gと、DISPERBYK−164 60.5gとを、均一になるまで撹拌混合した後、さらに、クロチアニジン385gを加え、ホモディスパーで攪拌混合して、クロチアニジン38.7%含有スラリーを得た。得られたスラリーをビーズミルに投入して、15分間湿式粉砕して、クロチアニジン38.7%含有スラリー(スラリーB)を得た。スラリーBにおけるクロチアニジンのメジアン径は、468nmであった。
次いで、200mLのビーカーに、スラリーB 100g、および、ジラウロイルパーオキシド500mgを仕込み、室温で攪拌することにより、ジラウロイルパーオキシドをスラリーBに溶解させた。
別途、500mLのビーカーに、イオン交換水257.5g、PVA−217の10%水溶液40gおよびプロノン208の1%水溶液1gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
次いで、500mLのビーカーに、ジラウロイルパーオキシドを配合したスラリーBを加え、ホモミクサーにより回転数6000rpmで5分間攪拌することにより、スラリーBを水分散させて、懸濁液(水分散液)を調製した。
その後、懸濁液(水分散液)を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、70±1℃で5時間、80±1℃で2時間、連続して実施した。
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、クロチアニジンを含有する第1のマルチドメイン型粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。第1のマルチドメイン型粒子のメジアン径は、28.2μmであった。
また、この懸濁液の粒子についてTEM観察した結果、第1のマルチドメイン型粒子であることを確認した。具体的には、懸濁液(懸濁剤)を、凍結乾燥し、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂に分散して、アミンで硬化させる。これをウルトラミクロトームで切断することにより断面を出し、四酸化ルテニウムによって染色、これをウルトラミクロトームで超薄切片に切り出しサンプルを調製した。調製したサンプルを、透過型電子顕微鏡(型番「H−7100」、日立製作所社製)で、TEM観察した。第1のマルチドメイン型粒子のTEM写真の画像処理図を図2に示す。
調製例3
(エトフェンプロックスを含有する第1の相溶系粒子(第1の粒子)の製造
(製造方法:懸濁重合)
200mLのビーカーに、エトフェンプロックス40g、MMA42g、EGDMA18gおよびジラウロイルパーオキシド500mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーにイオン交換水258.5g、PVA−217の10%水溶液40gおよびプロノン208の1%水溶液1gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
次いで、500mLのビーカーに、疎水性溶液を加え、ホモミクサーにより回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させた。
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して実施した。
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、エトフェンプロックスを含有する第1の相溶系粒子の懸濁液を得た。
第1の相溶系粒子のメジアン径は、10.1μmであった。
また、この懸濁液の粒子についてTEM観察した結果、第1の相溶系粒子であることを確認した。調製例3の粒子のTEM写真を図3に示す。図3から分かるように、TEM観察によって、粒子が、均一な構造、つまり、エトフェンプロックスと重合体とが相溶する均一相を有することを確認した。
また、図3から分かるように、調製例3のTEM写真では、エトフェンプロックスの濃度の高い相が粒子の表面に近い層を形成し、濃度の低い相がその内側の部分を形成している。それぞれの相において、エトフェンプロックスと重合体とは相溶している。
調製例4
(プロピコナゾールおよびIPBCを含有する第2の相溶系粒子(第2の粒子)の製造)
(製造方法:ミニエマルション重合)
200mLの容器に、IPBC24g、プロピコナゾール56g、MMA18.8g、EGDMA1.2gおよびジラウロイルパーオキシド0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水106.46g、ペレックスSS−L2.8g、PVA−217(10%)水溶液40gおよびデモールNL0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、ホモミクサーにより回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、62±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。続いて、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子の乳濁液を得た。第2の相溶系粒子のメジアン径は、429nmであった。
調製例5〜7
(プロピコナゾールおよびIPBCを含有する第2の相溶系粒子(第2の粒子)の製造)
表1に従って処方を変更した以外は、調製例4と同様に処理して、IPBCおよびプロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子の乳濁液を得た。メジアン径を表1に記載する。
調製例8
(プロピコナゾールおよびIPBCを含有する第1の相溶系粒子(第1の粒子)の製造)
(製造方法:懸濁重合)
200mLのビーカーに、IPBC12g、プロピコナゾール28g、MMA42g、EGDMA18gおよびジラウロイルパーオキシド500mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーにイオン交換水258.5g、PVA−217の10%水溶液40gおよびプロノン208の1%水溶液1gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
次いで、500mLのビーカーに、疎水性溶液を加え、ホモミクサーにより回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させた。
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して実施した。
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、プロピコナゾールおよびIPBCを含有する第1の相溶系粒子の懸濁液を得た。
第1の相溶系粒子のメジアン径は、9.8μmであった。
また、この懸濁液の粒子についてTEM観察した結果、第1の相溶系粒子であることを確認した。調製例8の粒子のTEM写真を図4に示す。図4から分かるように、TEM観察によって、粒子が、均一な構造、つまり、プロピコナゾールおよびIPBCと重合体とが相溶する均一相を有することを確認した。
調製例9
(IPBCを含有する第2の相溶系粒子(第2の粒子)の製造)
(製造方法:ミニエマルション重合)
200mLの容器に、IPBC25g、MMA75gおよびジラウロイルパーオキシド0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水125.5g、ネオコールSW−C 4.0gおよびノイゲンEA−177の25質量%水溶液20gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、ホモミクサーにより回転数12000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数125rpm(周速23.6m/分)で攪拌しながら昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3.5時間、連続して実施した。続いて、反応液の温度を78±2℃に昇温し、その温度で2.5時間、熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する第2の相溶系粒子の乳濁液を得た。第2の相溶系粒子のメジアン径は、201nmであった。
調製例10
(IPBCを含有する第1の相溶系粒子(第1の粒子)の製造)
(製造方法:懸濁重合)
200mLのビーカーに、IPBC40g、MMA42g、EGDMA18gおよびジラウロイルパーオキシド500mgを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーにイオン交換水258.5g、PVA−217の10%水溶液40gおよびプロノン208の1%水溶液1gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
次いで、500mLのビーカーに、疎水性溶液を加え、ホモミクサーにより回転数3000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を懸濁させた。
その後、懸濁液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、80±2℃で2時間、連続して実施した。
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、IPBCを含有する第1の相溶系粒子の懸濁液を得た。
第1の相溶系粒子のメジアン径は、7.4μmであった。
また、この懸濁液の粒子についてTEM観察した結果、第1の相溶系粒子であることを確認した。調製例10の粒子のTEM写真を図5に示す。図5から分かるように、TEM観察によって、粒子が、均一な構造、つまり、IPBCと重合体とが相溶する均一相を有することを確認した。
調製例11
(IPBCのフロアブル粒子を含有するフロアブル剤(第1の粒子)の製造)
(製造方法:湿式粉砕)
IPBC30g、DKエステルF−160 1.5g、メチルセルロース2g、ペレックスSS−L0.6g、ノプコ8034−L 0.2gを水65.7gに加えて攪拌して混合した後、さらにビーズミル(ダイノーミル、Typ KDL A、ガラスビーズ径0.5mm)で湿式粉砕することにより、IPBCのフロアブル粒子を30%含有するフロアブル剤を得た。IPBCのフロアブル粒子のメジアン径は、8.4μmであった。
調製例12
(プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子(第2の粒子)の製造)
(製造方法:ミニエマルション重合)
200mLの容器に、プロピコナゾール45g、MMA51.7g、EGDMA3.3gおよびジラウロイルパーオキシド0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水157.26g、ネオコールSW−C 2.0g、PVA−217(10質量%)水溶液40gおよびデモールNL0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な乳化剤水溶液を調製した。
次いで、500mLビーカーの乳化剤水溶液に、疎水性溶液を加え、ホモミクサーにより回転数14000rpmで10分間攪拌することにより、疎水性溶液を乳化剤水溶液中に乳化させて、ミニエマルションを調製した。
その後、調製したミニエマルションを、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した300mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数200rpm(周速37.7m/分)で攪拌しながら昇温して、ミニエマルション重合を実施した。
ミニエマルション重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で3時間、70±2℃で2時間、連続して実施した。
続いて、反応液の温度を80±2℃に昇温し、2時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、プロピコナゾールを含有する第2の相溶系粒子の乳濁液を得た。第2の相溶系粒子のメジアン径は、166nmであった。
調製例13
(カプサイシンを含有する第1のマルチドメイン型粒子(第1の粒子)の製造)
200mLの容器に、カプサイシン20g、i−BMA56g、EGDMA24gおよびジラウロイルパーオキシド 0.5gを仕込み、室温(25℃)で攪拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
別途、500mLのビーカーに、脱イオン水258.26g、デモールNL 0.24g、プロノン208の1%水溶液1g、PVA−217の10%水溶液40gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を調製した。
次いで、疎水性溶液を500mLビーカーの水溶液に加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数2000rpmで5分間攪拌することにより、疎水性溶液を水溶液中に分散させて、水分散液を調製した。
その後、水分散液を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mLの4口フラスコに移し、窒素気流下、6cm径の攪拌器により回転数100rpm(周速18.9m/分)で攪拌しながら、4口フラスコをウォーターバスにより、昇温して、懸濁重合(ラジカル重合)を実施した。
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、60±2℃で1時間、70±2℃で3時間、連続して実施した。
続いて、ウォーターバスを昇温して、反応液の温度を80±2℃に昇温し、3時間熟成した。
その後、反応液を30℃以下に冷却することにより、カプサイシンを含有する、メジアン径40μmの第1のマルチドメイン型粒子(第1の粒子)を含有する懸濁液を得た。
各調製例の調製方法などを表2に示す。
[木材保存剤の調製]
実施例1〜15および比較例1〜3
表3に記載の配合処方に従って、各調製例で調製した第1処理剤および第2処理剤ならびに水を配合して、木材保存剤を調製した。
[木材保存剤の評価]
(防腐試験)
実施例1〜5および比較例1、2の木材保存剤を純水で20倍に希釈し、実施例6〜12、14、15および比較例3の木材保存剤を純水で10倍に希釈し、実施例13の木材保存剤を純水で8倍に希釈して用いて、社団法人日本木材保存協会が定める「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」に準拠して、防腐試験を実施した。また、木材保存剤を使用しない防腐試験(コントロール)についても、比較例4として実施した。これらの防腐試験では、試験対象としての腐朽菌を、オオウズラタケおよびカワラタケとし、木材の質量減少率(%)を測定し、以下の基準で適合/不適を評価した。なお、質量減少率は、3%以下が、木材保存剤の合格の規定値とされている。
それらの結果を、表3に示す。
適合: 質量減少率が3%以下である
不適: 質量減少率が3%を超える
表3中の数値は、配合質量部数であり、上欄は、各処理剤の配合部数、下欄は、有効成分の配合部数を示す。ただし、実施例1〜6、15および比較例3における第2の処理剤欄中、左欄の数値は、第2の処理剤の配合部数を示し、右欄の数値は、有効成分の配合部数を示す。また、比較例1〜3における第1の処理剤欄中、左欄の数値は、第1の処理剤の配合部数を示し、右欄の数値は、有効成分の配合部数を示す。
[木材保護塗料の調製]
実施例16〜30および比較例5〜7
表4に記載の処方に従って、キシラデコールインテリアファイン ピニー(商品名、主成分:アクリル樹脂、日本エンバイロケミカルズ社製)をディスパーで撹拌しながら、これに、実施例1〜14および比較例1〜3の木材保存剤のそれぞれを配合し、さらに、常温下で、30分間、撹拌して混合することにより、実施例16〜30および比較例5〜7の木材保護塗料のそれぞれを調製した。
[木材保護塗料の評価]
(防腐試験)
木材保護塗料をそのまま原液として用いて、社団法人日本木材保存協会が定める「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法および性能基準(JWPS−FW−S.1)」に準拠して、防腐試験を実施した。防腐試験には、6ケ月間、屋外に放置した(紫外線暴露処理した)木材を供した。また、木材保存剤を添加していないキシラデコールインテリアファイン ピニーを塗布した防腐試験(コントロール)を比較例8とし、また、木材保護塗料を塗布しない防腐試験(無塗装)を比較例9として実施した。これらの防腐試験では、試験対象としての腐朽菌を、オオウズラタケおよびカワラタケとし、木材の質量減少率(質量%)を測定した。なお、質量減少率は、3質量%以下が、木材保護塗料の合格の規格値とされている。その結果を表4に示す。
適合:質量減少率が3%以下である。
不適:質量減少率が3%を超える。
(防かび試験)
木材保護塗料をそのまま原液として用いて、社団法人日本木材保存協会規格第2号に準拠して、防かび試験を実施した。防腐試験には、6ケ月間、屋外に放置した(紫外線暴露処理した)木材を供した。また、木材保存剤を添加していないキシラデコールインテリアファインのみを塗布した防かび試験(コントロール)を比較例10とし、木材保護塗料を塗布しない防腐試験(無塗装)を比較例11として実施した。これらの防かび試験では、試験対象としてのかびを、アスペリギルス ニガー(Aspergillus Niger)およびペニシリウム フニクロサム(Penicillium funiculosum)とした。木材の質量減少率(質量%)を測定した。防かび試験の評価は、下記のとおりとした。その結果を表4に示す。
0 試験体(木材)にかびの発育が全く認められない。
1 試験体の側面のみにかびの発育が認められる。
2 試験体の上面の面積の1/3未満にかびの発育が認められる。
3 試験体の上面の面積の1/3以上にかびの発育が認められる。