JP2000238011A - 木材の防腐処理方法 - Google Patents

木材の防腐処理方法

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JP2000238011A
JP2000238011A JP11039559A JP3955999A JP2000238011A JP 2000238011 A JP2000238011 A JP 2000238011A JP 11039559 A JP11039559 A JP 11039559A JP 3955999 A JP3955999 A JP 3955999A JP 2000238011 A JP2000238011 A JP 2000238011A
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wood
synthetic resin
emulsion
water
decay
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JP11039559A
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English (en)
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Fujio Iwata
藤夫 岩田
Noboru Takahashi
昇 高橋
Isamu Miyatake
勇 宮武
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J C COMPOSITE KK
SANKO KAGAKU KK
Atom Corp
Atom Medical Corp
Original Assignee
J C COMPOSITE KK
SANKO KAGAKU KK
Atom Corp
Atom Medical Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】安価で容易に木材の防腐性能を向上させ、しか
も環境汚染の心配がほとんどない木材の防腐処理方法を
提供する。 【解決手段】木材表面に合成樹脂液を付着させ、上記合
成樹脂液を木材の表層部に浸透固化させることにより、
木材内部への水分の侵入を防ぐとともに木材内部の水分
の蒸発を減少させるようにしたことにより、安価で容易
に木材の防腐性能を向上させ、しかも環境汚染の心配を
解消した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木材の防腐処理方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、風雨にあたるところや湿度の
高いところで木材を使用するときには、種々の防腐方法
が実施されてきた。
【0003】例えば、まず、木材の種類を選択すること
が行われている。すなわち、トドマツやエゾマツは防腐
に対して非常に弱く、アカマツやクロマツはやや弱い種
類である。これに対し、スギやカラマツはやや強く、ヒ
ノキ,サクラ,クリ等は比較的強い。一方、蟻への耐性
としては、カラマツ,アカマツ,クロマツが弱く、ヒノ
キ,スギ,クリ,ケヤキ等は中程度、トドマツ,カヤ等
が比較的強い種類である。したがって、用途や使用環境
に合わせて、防腐や耐蟻性に強い種類の木材を選んで使
用することが行われている。
【0004】また、古来より、木材の表面を焼いて炭化
させたり、コールタールを塗布する等の方法が行われて
いたが、これらの方法は、現在ではほとんど実施されて
いない。
【0005】そして、わが国の法令においても、構造耐
力上主要な部分である柱,筋かい,土台等のうち、地面
から1m以内の部分には有効な防腐処理を行わなければ
ならないとされている(建築基準法施工令第49条第2
項)。
【0006】さらに、JAS(日本農林規格)において
も、各種の薬剤による木材の防腐処理についての規準が
設けられている。まくら木,電柱,土台,住宅部材,木
製遊具,公園土木,コンテナ,造園,緑化資材等に用い
られる木材に対する防腐処理について、つぎに掲げる5
段階の使用環境に応じた規準が設けられ、各種の防腐処
理が行われている。 K:屋内の乾燥した条件で、外気に接しない比較的乾
燥したところ K:低温で腐朽、蟻害の少ないところで耐久性の大な
るところ K:外気または湿潤環境に常時露出されるところで、
一定の耐用を期待できるところ K:通常より激しい腐朽、蟻害の恐れのある条件下
で、高度の耐久性の期待できるところ K:極度に腐朽、蟻害の恐れのある条件下で高度の耐
久性の期待できるもの
【0007】そして、薬剤による処理方法としては、加
圧注入,拡散,浸漬,塗布,吹き付け等があり、薬剤の
種類や木材の用途,目標耐用年数,木材の含水率,処理
環境,経費等によって使い分けられている。特に、「拡
散法」は、未乾燥材を水溶性薬剤で処理するときに用い
られ、「浸漬法」や「塗布法」は、薬剤の種類によら
ず、簡便な方法として広く用いられている。
【0008】また、JASには、薬剤の浸潤度の規準が
規定されている。加圧注入や真空注入あるいは浸漬法等
によって、木材表面の辺材部分に浸潤したパーセンテー
ジによってDとDとに性能区分されている。なお、
製材,2×4製材,構造用製材等による区分もある。
【0009】ここで、上記防腐処理に用いられている薬
剤は、上述したK〜Kの使用環境に応じ、使用する
薬剤の種類や性能区分、吸収量等が定められている。
【0010】上記薬剤としては、主として、B(ホウ素
化合物),CCA(クロム・銅・ヒ素化合物),AAC
(アルキルアンモニウム化合物),ACQ(銅・アルキ
ルアンモニウム化合物),NCN(ナフテン酸銅),N
ZN(ナフテン酸亜鉛),A(クレオソート油),PF
(無機フッ化物)等が用いられている。
【0011】上記各種の薬剤は、上記K〜Kの使用
環境に応じ、1〜2回浸潤される。ここで、PF薬剤
は、毒性が強いうえ離脱が多く、環境汚染の問題がある
ため、現在では使用されていない。また、クレオソート
油は、木材への浸透性,撥水効果,耐候性等の面で優れ
てはいるが、刺激臭が強く、着色や塗装障害があり、人
体がかぶれやすい等、数々の欠点があるため、一部で使
用されているにすぎない。
【0012】ここで、平成元年および平成6年の、薬剤
別にみた防腐木材の生産量を下記の表1に示す。表1か
らわかるように、木材の防腐処理に用いられている薬剤
の大半はCCAである。一方、処理方法と薬剤からみた
防腐木材の耐用年数を下記の表2に示す。表2からわか
るように、クレオソート油以外は大半が4〜5年程度の
耐用年数しかなく、もっと長期間にわたって防腐効果を
発揮する木材の処理方法の実現が強く望まれていた。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】また、上記のような薬液で処理された木材
も、吸湿性の面では無処理の木材とほとんど変わらず、
無処理材同様に乾燥収縮等し、経年変化によるひび割れ
等が生じやすい。このようにひび割れが生じると、薬剤
が浸透していない内部の未処理木材面が表面に露呈して
しまう。このように、無処理木材面が露呈すると、薬液
処理の効果はほとんどなくなってしまい、腐朽は加速的
に進行する結果となる。
【0016】一方、エドマツ,トドマツ,カラマツ,ブ
ナ,ケヤキ,ラワン等、かびやすい種類の木もあり、防
かび処理の必要性もある。これらに対しては、Na−P
CP(ペンタクロロ・フェノール・ナトリウム)が比較
的効果があるが、毒性が強く、環境汚染の問題があるた
め、現在では使用されていない。
【0017】また、近年は、間伐材の処理や有効利用に
ついても、問題視されている。例えば、平成6年の一年
間で生じた間伐材の量は、約395万mであったが、
それらのうち、防腐処理されたものはわずかに43万m
であり、その大半が山中で放置され腐敗し、有効利用
されていない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、木材の
防腐処理には、数々の問題が内在しているが、現在まで
のところ、安価で容易に木材の防腐性能を向上させ、し
かも毒性や環境汚染等のの心配がほとんどない木材の防
腐処理方法は提供されていなかったのが実情である。
【0019】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、安価で容易に木材の防腐性能を向上させ、しか
も環境汚染の心配がほとんどない木材の防腐処理方法の
提供を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の木材の防腐処理方法は、木材表面に合成樹
脂液を付着させ、上記合成樹脂液を木材の表層部に浸透
固化させることにより、木材内部への水分の侵入を防ぐ
とともに木材内部の水分の蒸発を減少させるようにした
ことを要旨とする。
【0021】本発明者は、安価で容易に木材の防腐性能
を向上させ、しかも環境汚染の心配がほとんどない木材
の防腐処理方法を開発すべく、一連の研究を重ねた。そ
の結果、木材を腐朽させる原因が、バクテリア,かび腐
朽菌,きのこ類(木材腐朽菌)等の菌類にあり、上記各
種の菌類が活発に繁殖する条件は、30〜60%RH程
度の湿度と、10〜40℃程度の温度環境にあることに
着目した。また、上記のような菌類とともに、シロアリ
も、上記菌類が繁殖する環境において生息し、湿った木
材を好むことにも着目した。そして、さらに研究を重ね
た結果、上記のような環境において、腐朽は、変色,重
量減少,強度低下,吸収性の増大,化学成分の分解,木
材の諸性質等の変化として現れ、主として木材の中心部
分への菌類等の繁殖によって進行するものであることが
解明された。すなわち、木材が腐朽する真の原因は、木
材の使用環境にあるという研究結果に到達したのであ
る。
【0022】そして、従来から見聞されている事実とし
て、家屋の内部等水がかからないところでは木は腐るこ
とがなく、家屋の柱や家具に用いられた木材は20年〜
30年と腐朽することがないことや、法隆寺等の神社仏
閣に用いられている木材に至っては、1000年以上も
安定しており、基礎杭の松や大正池の枯れ木等の水中に
没した木材は、長期間腐っていないという事実に着目し
た。これらの事実と木材の腐朽が菌類の繁殖によって進
行するという研究結果とから、木材は乾湿の繰り返しに
よって菌類の繁殖が腐朽を起こすのであり、木材の腐朽
を根本的に防止するためには、木材中への湿気の出入り
を封止すればよいのではないかとの着想を得、さらに研
究を重ね、本発明に到達したのである。
【0023】すなわち、本発明の木材の防腐処理方法
は、木材表面に合成樹脂液を付着させ、上記合成樹脂液
を木材の表層部に浸透固化させることにより、木材内部
への水分の侵入を防ぐとともに木材内部の水分の蒸発を
減少させるようにしている。このように、外部の水分を
木材の内部に浸透させず、かつ、木材内部の水分を容易
に外部に放出させないことにより、腐朽菌やバクテリア
が木材内へほとんど侵入しなくなる。そのうえ、木材の
内部が、バクテリアやシロアリが生息しにくい環境にな
る。そして、表層部に合成樹脂が浸透固化することによ
り、木材は乾湿を繰り返さなくなる。その結果、木材の
腐朽速度を大幅に遅らせ、防腐性能を飛躍的に高めるこ
とに成功したのである。
【0024】しかも、従来のように薬剤が周辺環境に溶
け出すことによる環境汚染の心配も全くない。さらに、
木材内部の水分の蒸発を減少させることから、木材の収
縮変形も減少させることができる。これにより、経年変
形によるひび割れ等が防止され、樹脂が浸透していない
木材内部が表面に露出することがほとんどなくなり、極
めて長期間にわたって防腐効果を維持することができ
る。そのうえ、木材表装部に合成樹脂液が浸透固化する
ため、かびの発生も減少させることができる。これらに
より、従来、山中で大量に腐敗していた間伐材の有効活
用の道が開け、限りある森林資源を有効に活用すること
ができるようになる。
【0025】本発明の木材の防腐処理方法において、上
記合成樹脂液として合成ゴムもしくは合成樹脂のエマル
ジョン液を用いるようにした場合には、入手しやすく比
較的安価な合成ゴム液や合成樹脂エマルジョン液によっ
て防腐処理を行うことができ、処理コストが安くなる。
また、溶剤の飛散等の環境汚染の問題もほとんどなく、
安全性が極めて高いうえ、優れた耐候性も得ることが出
きる。
【0026】本発明の木材の防腐処理方法において、エ
マルジョン液として、分散粒子の粒径が10μm以下の
ものを用いるようにした場合には、木材の有する空隙が
おおむね10μm程度の大きさであることから、空隙の
中に合成樹脂エマルジョンの分散粒子が十分に浸透し、
木材内部への水分の侵入と木材内部の水分の蒸発を確実
に防止し、より優れた耐腐朽性を与えることができるよ
うになる。
【0027】本発明の木材の防腐処理方法において、木
材として樹皮つきのものを用いるようにした場合には、
樹皮自体が木材中心付近の心材と比べて耐候性が高く、
その耐候性の高い樹皮に合成樹脂液を浸透固化させるこ
とにより、一層優れた耐腐朽性を与えることができるよ
うになる。
【0028】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳
しく説明する。
【0029】本発明の木材の防腐処理方法は、木材表面
に合成樹脂液を付着させ、上記合成樹脂液を木材の表層
部に浸透固化させることが行われる。
【0030】処理を施す上記木材としては、樹皮付きの
丸太材,樹脂を剥離された丸太材,丸太から切り出され
た角材等のいわゆる材木だけでなく、合板や集成材等の
加工品や、組木・寄木等された加工品、あるいは紙類等
をも含む趣旨である。また、木の種類としても、スギ,
ヒノキ,アカマツ等の針葉樹材、ケヤキ,ブナ等の広葉
樹材等各種のものが用いられ、特に限定されるものでは
ない。
【0031】これらのなかでも、特に、樹皮つきの木材
が好適に用いられる。樹皮自体が木材中心付近の心材と
比べて耐候性が高く、その樹皮の耐候性を活かし、その
樹皮に合成樹脂液を浸透固化させることにより、一層優
れた耐腐朽性を与えることができるからである。
【0032】上記合成樹脂液としては、特に限定するも
のではなく、各種のものを用いることができる。例え
ば、エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ウレタン樹脂,
フェノール樹脂,ユリア樹脂等の反応性樹脂液、合成ゴ
ムや合成樹脂の溶剤系溶液、合成ゴムや合成樹脂のエマ
ルジョン液、水溶性樹脂液等があげられる。これらのな
かでも、入手しやすく安価で、溶剤飛散等の環境汚染も
少なく、しかも優れた耐候性を得ることが出きる合成ゴ
ムもしくは合成樹脂のエマルジョン液が好適に用いられ
る。また、棄てられるポリエーテルやポリスチレン等の
熱溶融液を用いることもできる。
【0033】上記エマルジョン液に用いられる合成ゴム
としては、特に限定するものではなく、各種のものを用
いることができる。例えば、ポリイソプレンゴム,ポリ
ブタジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,エチレン−
プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレン,ブチ
ルゴム,クロロプレンゴム,アクリロニトリルブタジエ
ンゴム,多硫化系ゴム,アクリルゴム,ケイ素ゴム,フ
ッ素ゴム等各種のものがあげられる。これらのなかで
も、入手しやすく扱いやすいスチレンブタジエンゴム
(SBR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NB
R),クロロプレンゴム(CR)等が好適に用いられ
る。
【0034】上記エマルジョン液に用いられる合成樹脂
としては、特に限定するものではなく、各種のものを用
いることができる。例えば、酢酸ビニル,アクリル,塩
化ビニル,エチレン酢酸ビニル共重合体,塩化ビニリデ
ン,アクリルスチレン共重合体,サラン等のラテック
ス、等各種のものがあげられる。これらの中でも、耐候
性に優れ、環境問題の少ないアクリル(AC)もしくは
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に用いら
れる。
【0035】上記エマルジョン液としては、分散粒子の
粒径が10μm以下のものが好ましく、より好ましくは
5μm以下のものである。上記粒径が10μmを超える
と、木材の空隙の大きさが約10μm程度であることか
ら、木材中に合成樹脂の分散粒子が十分に浸透せず、所
望の防腐効果が得難くなるからである。また、上記粒径
として、最も好適なのは、木材の密度の高い年輪部分の
空隙の大きさが約1μm程度であることから、年輪部分
にも十分に合成樹脂の分散粒子が浸透しうる1μm以下
である。なお、上記分散粒子の粒径の下限値としては、
コロイドが分散したというエマルジョン液の特性から
0.001μm程度である。
【0036】上記エマルジョン液中の合成ゴムもしくは
合成樹脂の濃度としては、木材表面に十分付着させるこ
とができ、作業性を損なわなければ、特に限定するもの
ではないが、10%以上90%以下が好ましく、30%
以上70%以下であればより好ましい。10%未満で
は、木材に合成樹脂を十分に浸透させるのに時間がかか
り、90%を超えると粘度が高くなって作業性に劣るか
らである。
【0037】上記木材表面に合成樹脂液を付着させる方
法としては、特に限定するものではなく、各種の方法を
用いることができる。例えば、浸漬法,スプレー噴霧
法,加圧注入法,真空注入法,塗布法等各種の方法があ
げられる。
【0038】本発明の木材の防腐方法では、上記のよう
に、木材表面に合成樹脂液を付着させ、上記合成樹脂液
を木材の表層部に浸透固化させることにより、木材内部
への水分の侵入を防ぐとともに木材内部の水分の蒸発を
減少させるようにする。このように、外部の水分を木材
の内部に浸透させず、かつ、木材内部の水分を容易に外
部に放出させないことにより、腐朽菌やバクテリアが木
材表面で容易に繁殖できなくなるとともに、木材内へほ
とんど侵入しなくなるうえ、木材の内部が、バクテリア
等が生息しにくい環境になり、木材は乾湿を繰り返さな
くなる。また、仮に木材内に菌類等がいたとしても、表
層部では合成樹脂の浸透固化により、菌類等を窒息死さ
せることができる。その結果、木材の腐朽速度を大幅に
送らせ、防腐性能を飛躍的に高めることができる。しか
も、環境汚染の心配もなくなるうえ、木材の収縮変形も
減少させることができ、経年変形によるひび割れ等が防
止され、極めて長期間にわたって防腐効果を維持するこ
とができる。
【0039】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0040】
【実施例1および比較例1】杉の間伐材(径10cm,
長さ1m,樹皮付き)を準備し、合成樹脂エマルジョン
(株式会社クラレ製 #.5010)(50%濃度、粒
径0.5μm)に24時間浸漬したのち、10日間、天
日で乾燥し、本発明の処理を実施した。丸太(乾燥した
もの)の重量は、4.7kg/1本であった。そして、
#.5010に浸漬後の重量は、4.7kg+0.06
3kg=4.763kgであり、表面積が0.314m
であることから、合成樹脂エマルジョンの塗布量は、
0.2kg/mであった。また、天日乾燥後の重量
は、4.75kgであり、少し艶のある美しい外観仕上
がりであった。
【0041】上記実施例品を、7日間の水中浸潰に供し
た。その結果、4.75kgであった重量が、4.85
kgに増加した。重量増は0.1kgであり、増加率と
しては2%であった。
【0042】比較例として、杉丸太(直径10cm,長
さ1m,樹皮付き)を準備した。重量は、4.6kg/
本であった。上記比較例品を、実施例品と同様に、7日
間の水中浸潰に供した。その結果、4.6kgの重量が
5.2kgに増加した。重量増は0.6kgであり、増
加率としては、11.53%であった。
【0043】実施例品と比較例品の吸水率を比較する
と、実施例品が2%であるのに対し、比較例品は11.
53%であり、実施例品に比べ、比較例品では、5.7
65倍の吸水があったことがわかる。
【0044】
【実施例2】実施例1の樹脂含浸木材を、さらに合成樹
脂エマルジョン(#.5010)に浸潰乾燥したとこ
ろ、樹脂含浸量は、0.04kg/本であり、水中浸漬
後の重量変化率は1.2%であった。
【0045】
【実施例3】桧材(直径10cm,長さ50cm,重量
2.35kg)を準備した。上記桧材を、アクリルスチ
レンエマルジョン(三菱化学社製アクロナール#40
0,57%,粒径0.2ミクロン)に12時間浸潰した
のち取り出して乾燥し、本発明の処理を実施した。処理
後の重量は2.43kgであった。この実施例品を7日
間の水中浸潰に供したのち、重量を測定したところ、重
量は約1.5%増加しただけであり、表面は殆ど変化し
ていなかった。
【0046】上記のように、各実施例品は、水中浸漬に
よっても、内部にほとんど水分が侵入することがないこ
とがわかる。このことは、同時に、上記処理品では、木
材内の水分が外部に蒸発しにくいことを表している。
【0047】つぎに、上記実施例3の桧材(重量2.4
7kg)を60℃の乾燥炉に入れ、48時間乾燥させ
た。乾燥後の重量は、2.35kgであった。そのの
ち、乾燥させた桧材に48時間水を噴霧した後、重量を
測定したところ、その重量増は、0.0012kgであ
り、地上においては、ほとんど吸水しないことが証明さ
れた。
【0048】上述のとおり、実施例品は、比較例品に比
べて極めて吸水性が少なく、防腐性が優れていることが
わかる。
【0049】
【発明の効果】以上のように、本発明の木材の防腐処理
方法によれば、外部の水分を木材の内部に浸透させず、
かつ、木材内部の水分を容易に外部に放出させないこと
により、腐朽菌やバクテリアが木材内へほとんど侵入し
なくなる。そのうえ、木材の内部が、バクテリアやシロ
アリが生息しにくい環境になる。そして、表層部に合成
樹脂が浸透固化することにより、木材は乾湿を繰り返さ
なくなる。その結果、木材の腐朽速度を大幅に送らせ、
防腐性能を飛躍的に高めることに成功したのである。
【0050】しかも、従来のように薬剤が周辺環境に溶
け出すことによる環境汚染の心配も全くない。さらに、
木材内部の水分の蒸発を減少させることから、木材の収
縮変形も減少させることができる。これにより、経年変
形によるひび割れ等が防止され、樹脂が浸透していない
木材内部が表面に露出することがほとんどなくなり、極
めて長期間にわたって防腐効果を維持することができ
る。そのうえ、木材表装部に合成樹脂液が浸透固化する
ため、かびの発生も減少させることができる。これらに
より、従来、山中で大量に腐敗していた間伐材の有効活
用の道が開け、限りある森林資源を有効に活用すること
ができるようになる。
【0051】本発明の木材の防腐処理方法において、上
記合成樹脂液として合成ゴムもしくは合成樹脂のエマル
ジョン液を用いるようにした場合には、入手しやすく比
較的安価な合成ゴム液や合成樹脂エマルジョン液によっ
て防腐処理を行うことができ、処理コストが安くなる。
また、溶剤の飛散等の環境汚染の問題もほとんどなく、
安全性が極めて高いうえ、優れた耐候性も得ることが出
きる。
【0052】本発明の木材の防腐処理方法において、エ
マルジョン液として、分散粒子の粒径が10μm以下の
ものを用いるようにした場合には、木材の有する空隙が
おおむね10μm程度の大きさであることから、空隙の
中に合成樹脂エマルジョンの分散粒子が十分に浸透し、
木材内部への水分の侵入と木材内部の水分の蒸発を確実
に防止し、より優れた耐腐朽性を与えることができるよ
うになる。
【0053】本発明の木材の防腐処理方法において、木
材として樹皮つきのものを用いるようにした場合には、
樹皮自体が木材中心付近の心材と比べて耐候性が高く、
その耐候性の高い樹皮に合成樹脂液を浸透固化させるこ
とにより、一層優れた耐腐朽性を与えることができるよ
うになる。
【0054】木は、日本でほぼ唯一の資源であり、毎年
8000万m育成される無限の原料である。日本国土
の67%が緑地帯で、51%が植林である。ところが、
植林の95%が不要とされる間伐材であり、年間400
万mが有効活用されずに廃棄されている。木の物性が
極めて優良であり、これを不用として廃棄するのは、我
々の無知からきている。「木を腐食させない方法」を発
明することにより、不用とされている多くの資源を低価
格で活用できるようにすることは、焦眉のことであり、
本方法の発明はその一端に取付いたものと自覚してい
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年12月16日(1999.12.
16)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 木材の防腐処理方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木材の防腐処理方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、風雨にあたるところや湿度の
高いところで木材を使用するときには、種々の防腐方法
が実施されてきた。
【0003】例えば、まず、木材の種類を選択すること
が行われている。すなわち、トドマツやエゾマツは防腐
に対して非常に弱く、アカマツやクロマツはやや弱い種
類である。これに対し、スギやカラマツはやや強く、ヒ
ノキ,サクラ,クリ等は比較的強い。一方、蟻への耐性
としては、カラマツ,アカマツ,クロマツが弱く、ヒノ
キ,スギ,クリ,ケヤキ等は中程度、トドマツ,カヤ等
が比較的強い種類である。したがって、用途や使用環境
に合わせて、防腐や耐蟻性に強い種類の木材を選んで使
用することが行われている。
【0004】また、古来より、木材の表面を焼いて炭化
させたり、コールタールを塗布する等の方法が行われて
いたが、これらの方法は、現在ではほとんど実施されて
いない。
【0005】そして、わが国の法令においても、構造耐
力上主要な部分である柱,筋かい,土台等のうち、地面
から1m以内の部分には有効な防腐処理を行わなければ
ならないとされている(建築基準法施工令第49条第2
項)。
【0006】さらに、JAS(日本農林規格)において
も、各種の薬剤による木材の防腐処理についての規準が
設けられている。まくら木,電柱,土台,住宅部材,木
製遊具,公園土木,コンテナ,造園,緑化資材等に用い
られる木材に対する防腐処理について、つぎに掲げる5
段階の使用環境に応じた規準が設けられ、各種の防腐処
理が行われている。 K:屋内の乾燥した条件で、外気に接しない比較的乾
燥したところ K:低温で腐朽、蟻害の少ないところで耐久性の大な
るところ K:外気または湿潤環境に常時露出されるところで、
一定の耐用を期待できるところ K:通常より激しい腐朽、蟻害の恐れのある条件下
で、高度の耐久性の期待できるところ K:極度に腐朽、蟻害の恐れのある条件下で高度の耐
久性の期待できるもの
【0007】そして、薬剤による処理方法としては、加
圧注入,拡散,浸漬,塗布,吹き付け等があり、薬剤の
種類や木材の用途,目標耐用年数,木材の含水率,処理
環境,経費等によって使い分けられている。特に、「拡
散法」は、未乾燥材を水溶性薬剤で処理するときに用い
られ、「浸漬法」や「塗布法」は、薬剤の種類によら
ず、簡便な方法として広く用いられている。
【0008】また、JASには、薬剤の浸潤度の規準が
規定されている。加圧注入や真空注入あるいは浸漬法等
によって、木材表面の辺材部分に浸潤したパーセンテー
ジによってDとDとに性能区分されている。なお、
製材,2×4製材,構造用製材等による区分もある。
【0009】ここで、上記防腐処理に用いられている薬
剤は、上述したK〜Kの使用環境に応じ、使用する
薬剤の種類や性能区分、吸収量等が定められている。
【0010】上記薬剤としては、主として、B(ホウ素
化合物),CCA(クロム・銅・ヒ素化合物),AAC
(アルキルアンモニウム化合物),ACQ(銅・アルキ
ルアンモニウム化合物),NCN(ナフテン酸銅),N
ZN(ナフテン酸亜鉛),A(クレオソート油),PF
(無機フッ化物)等が用いられている。
【0011】上記各種の薬剤は、上記K〜Kの使用
環境に応じ、1〜2回浸潤される。ここで、PF薬剤
は、毒性が強いうえ離脱が多く、環境汚染の問題がある
ため、現在では使用されていない。また、クレオソート
油は、木材への浸透性,撥水効果,耐候性等の面で優れ
てはいるが、刺激臭が強く、着色や塗装障害があり、人
体がかぶれやすい等、数々の欠点があるため、一部で使
用されているにすぎない。
【0012】ここで、平成元年および平成6年の、薬剤
別にみた防腐木材の生産量を下記の表1に示す。表1か
らわかるように、木材の防腐処理に用いられている薬剤
の大半はCCAである。一方、処理方法と薬剤からみた
防腐木材の耐用年数を下記の表2に示す。表2からわか
るように、クレオソート油以外は大半が4〜5年程度の
耐用年数しかなく、もっと長期間にわたって防腐効果を
発揮する木材の処理方法の実現が強く望まれていた。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】また、上記のような薬液で処理された木材
も、吸湿性の面では無処理の木材とほとんど変わらず、
無処理材同様に乾燥収縮等し、経年変化によるひび割れ
等が生じやすい。このようにひび割れが生じると、薬剤
が浸透していない内部の未処理木材面が表面に露呈して
しまう。このように、無処理木材面が露呈すると、薬液
処理の効果はほとんどなくなってしまい、腐朽は加速的
に進行する結果となる。
【0016】一方、エドマツ,トドマツ,カラマツ,ブ
ナ,ケヤキ,ラワン等、かびやすい種類の木もあり、防
かび処理の必要性もある。これらに対しては、Na−P
CP(ペンタクロロ・フェノール・ナトリウム)が比較
的効果があるが、毒性が強く、環境汚染の問題があるた
め、現在では使用されていない。
【0017】また、近年は、間伐材の処理や有効利用に
ついても、問題視されている。例えば、平成6年の一年
間で生じた間伐材の量は、約395万mであったが、
それらのうち、防腐処理されたものはわずかに43万m
であり、その大半が山中で放置され腐敗し、有効利用
されていない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、木材の
防腐処理には、数々の問題が内在しているが、現在まで
のところ、安価で容易に木材の防腐性能を向上させ、し
かも毒性や環境汚染等のの心配がほとんどない木材の防
腐処理方法は提供されていなかったのが実情である。
【0019】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、安価で容易に木材の防腐性能を向上させ、しか
も環境汚染の心配がほとんどない木材の防腐処理方法の
提供を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の木材の防腐処理方法は、木材表面に、エチ
レン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル、アクリルスチレ
ン共重合体のうち少なくともいずれかのエマルジョン
を付着させ、上記エマルジョン液を木材の表層部に浸透
固化させることにより、木材内部への水分の侵入を防ぐ
とともに木材内部の水分の蒸発を減少させるようにした
ことを第1の要旨とする。
【0021】また、本発明の木材の防腐処理方法は、木
材表面に、合成ゴムのエマルジョン液を付着させ、上記
エマルジョン液を木材の表層部に浸透固化させることに
より、木材内部への水分の侵入を防ぐとともに木材内部
の水分の蒸発を減少させるようにしたことを第2の要旨
とする。
【0022】本発明者は、安価で容易に木材の防腐性能
を向上させ、しかも環境汚染の心配がほとんどない木材
の防腐処理方法を開発すべく、一連の研究を重ねた。そ
の結果、木材を腐朽させる原因が、バクテリア,かび腐
朽菌,きのこ類(木材腐朽菌)等の菌類にあり、上記各
種の菌類が活発に繁殖する条件は、30〜60%RH程
度の湿度と、10〜40℃程度の温度環境にあることに
着目した。また、上記のような菌類とともに、シロアリ
も、上記菌類が繁殖する環境において生息し、湿った木
材を好むことにも着目した。そして、さらに研究を重ね
た結果、上記のような環境において、腐朽は、変色,重
量減少,強度低下,吸収性の増大,化学成分の分解,木
材の諸性質等の変化として現れ、主として木材の中心部
分への菌類等の繁殖によって進行するものであることが
解明された。すなわち、木材が腐朽する真の原因は、木
材の使用環境にあるという研究結果に到達したのであ
る。
【0023】そして、従来から見聞されている事実とし
て、家屋の内部等水がかからないところでは木は腐るこ
とがなく、家屋の柱や家具に用いられた木材は20年〜
30年と腐朽することがないことや、法隆寺等の神社仏
閣に用いられている木材に至っては、1000年以上も
安定しており、基礎杭の松や大正池の枯れ木等の水中に
没した木材は、長期間腐っていないという事実に着目し
た。これらの事実と木材の腐朽が菌類の繁殖によって進
行するという研究結果とから、木材は乾湿の繰り返しに
よって菌類の繁殖が腐朽を起こすのであり、木材の腐朽
を根本的に防止するためには、木材中への湿気の出入り
を封止すればよいのではないかとの着想を得、さらに研
究を重ね、本発明に到達したのである。
【0024】すなわち、本発明の第1の木材の防腐処理
方法は、木材表面に、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢
酸ビニル、アクリルスチレン共重合体のうち少なくとも
いずれかのエマルジョン液を付着させ、上記エマルジョ
液を木材の表層部に浸透固化させることにより、木材
内部への水分の侵入を防ぐとともに木材内部の水分の蒸
発を減少させるようにしている。また、本発明の第2の
木材の防腐処理方法は、木材表面に、合成ゴムのエマル
ジョン液を付着させ、上記エマルジョン液を木材の表層
部に浸透固化させることにより、木材内部への水分の侵
入を防ぐとともに木材内部の水分の蒸発を減少させるよ
うにしている。このように、外部の水分を木材の内部に
浸透させず、かつ、木材内部の水分を容易に外部に放出
させないことにより、腐朽菌やバクテリアが木材内へほ
とんど侵入しなくなる。そのうえ、木材の内部が、バク
テリアやシロアリが生息しにくい環境になる。そして、
表層部にエマルジョン液が浸透固化することにより、木
材は乾湿を繰り返さなくなる。その結果、木材の腐朽速
度を大幅に遅らせ、防腐性能を飛躍的に高めることに成
功したのである。
【0025】しかも、従来のように薬剤が周辺環境に溶
け出すことによる環境汚染の心配も全くない。さらに、
木材内部の水分の蒸発を減少させることから、木材の収
縮変形も減少させることができる。これにより、経年変
形によるひび割れ等が防止され、エマルジョン液が浸透
していない木材内部が表面に露出することがほとんどな
くなり、極めて長期間にわたって防腐効果を維持するこ
とができる。そのうえ、木材表装部にエマルジョン液が
浸透固化するため、かびの発生も減少させることができ
る。これらにより、従来、山中で大量に腐敗していた間
伐材の有効活用の道が開け、限りある森林資源を有効に
活用することができるようになる。また、入手しやすく
比較的安価な合成ゴムや合成樹脂エマルジョン液によっ
て防腐処理を行うことができ、処理コストが安くなる。
また、溶剤の飛散等の環境汚染の問題もほとんどなく、
安全性が極めて高いうえ、優れた耐候性も得ることが出
きる。
【0026】本発明の木材の防腐処理方法において、エ
マルジョン液として、分散粒子の粒径が10μm以下の
ものを用いるようにした場合には、木材の有する空隙が
おおむね10μm程度の大きさであることから、空隙の
中に合成ゴムや合成樹脂エマルジョンの分散粒子が十分
に浸透し、木材内部への水分の侵入と木材内部の水分の
蒸発を確実に防止し、より優れた耐腐朽性を与えること
ができるようになる。
【0027】本発明の木材の防腐処理方法において、木
材として樹皮つきのものを用いるようにした場合には、
樹皮自体が木材中心付近の心材と比べて耐候性が高く、
その耐候性の高い樹皮にエマルジョン液を浸透固化させ
ることにより、一層優れた耐腐朽性を与えることができ
るようになる。
【0028】本発明の木材の防腐処理方法において、
マルジョン液中の合成樹脂もしくは合成ゴムの濃度を1
0%以上90%以下とした場合には、作業性を低下させ
ることなく木材にエマルジョン液を十分に浸透させるこ
とができる。
【0029】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態を詳
しく説明する。
【0030】本発明の木材の防腐処理方法は、木材表面
合成ゴムや合成樹脂のエマルジョン液を付着させ、上
エマルジョン液を木材の表層部に浸透固化させること
が行われる。
【0031】処理を施す上記木材としては、樹皮付きの
丸太材,樹脂を剥離された丸太材,丸太から切り出され
た角材等のいわゆる材木だけでなく、合板や集成材等の
加工品や、組木・寄木等された加工品、あるいは紙類等
をも含む趣旨である。また、木の種類としても、スギ,
ヒノキ,アカマツ等の針葉樹材、ケヤキ,ブナ等の広葉
樹材等各種のものが用いられ、特に限定されるものでは
ない。
【0032】これらのなかでも、特に、樹皮つきの木材
が好適に用いられる。樹皮自体が木材中心付近の心材と
比べて耐候性が高く、その樹皮の耐候性を活かし、その
樹皮にエマルジョン液を浸透固化させることにより、一
層優れた耐腐朽性を与えることができるからである。
【0033】上記エマルジョン液に用いられる合成ゴム
としては、特に限定するものではなく、各種のものを用
いることができる。例えば、ポリイソプレンゴム,ポリ
ブタジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,エチレン−
プロピレンゴム,ブチルゴム,アクリロニトリルブタジ
エンゴム,多硫化系ゴム,アクリルゴム,ケイ素ゴム,
フッ素ゴム等各種のものがあげられる。これらのなかで
も、入手しやすく扱いやすいスチレンブタジエンゴム
(SBR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NB
)等が好適に用いられる。
【0034】上記エマルジョン液に用いられる合成樹脂
としては、特に限定するものではなく、各種のものを用
いることができる。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合
体,酢酸ビニル,アクリルスチレン共重合体等各種のも
のがあげられる。これらの中でも、耐候性に優れ、環境
問題の少ないエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が
好適に用いられる。
【0035】上記エマルジョン液としては、分散粒子の
粒径が10μm以下のものが好ましく、より好ましくは
5μm以下のものである。上記粒径が10μmを超える
と、木材の空隙の大きさが約10μm程度であることか
ら、木材中に合成ゴムや合成樹脂の分散粒子が十分に浸
透せず、所望の防腐効果が得難くなるからである。ま
た、上記粒径として、最も好適なのは、木材の密度の高
い年輪部分の空隙の大きさが約1μm程度であることか
ら、年輪部分にも十分に合成ゴムや合成樹脂の分散粒子
が浸透しうる1μm以下である。なお、上記分散粒子の
粒径の下限値としては、コロイドが分散したというエマ
ルジョン液の特性から0.001μm程度である。
【0036】上記エマルジョン液中の合成ゴムもしくは
合成樹脂の濃度としては、木材表面に十分付着させるこ
とができ、作業性を損なわなければ、特に限定するもの
ではないが、10%以上90%以下が好ましく、30%
以上70%以下であればより好ましい。10%未満で
は、木材に合成ゴムや合成樹脂を十分に浸透させるのに
時間がかかり、90%を超えると粘度が高くなって作業
性に劣るからである。
【0037】上記木材表面に合成ゴムや合成樹脂のエマ
ルジョン液を付着させる方法としては、特に限定するも
のではなく、各種の方法を用いることができる。例え
ば、浸漬法,スプレー噴霧法,加圧注入法,真空注入
法,塗布法等各種の方法があげられる。
【0038】本発明の木材の防腐方法では、上記のよう
に、木材表面に合成ゴムや合成樹脂のエマルジョン液を
付着させ、上記エマルジョン液を木材の表層部に浸透固
化させることにより、木材内部への水分の侵入を防ぐと
ともに木材内部の水分の蒸発を減少させるようにする。
このように、外部の水分を木材の内部に浸透させず、か
つ、木材内部の水分を容易に外部に放出させないことに
より、腐朽菌やバクテリアが木材表面で容易に繁殖でき
なくなるとともに、木材内へほとんど侵入しなくなるう
え、木材の内部が、バクテリア等が生息しにくい環境に
なり、木材は乾湿を繰り返さなくなる。また、仮に木材
内に菌類等がいたとしても、表層部ではエマルジョン液
の浸透固化により、菌類等を窒息死させることができ
る。その結果、木材の腐朽速度を大幅に送らせ、防腐性
能を飛躍的に高めることができる。しかも、環境汚染の
心配もなくなるうえ、木材の収縮変形も減少させること
ができ、経年変形によるひび割れ等が防止され、極めて
長期間にわたって防腐効果を維持することができる。
【0039】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0040】
【実施例1および比較例1】杉の間伐材(径10cm,
長さ1m,樹皮付き)を準備し、合成樹脂エマルジョン
(株式会社クラレ製 #.5010)(50%濃度、粒
径0.5μm)に24時間浸漬したのち、10日間、天
日で乾燥し、本発明の処理を実施した。丸太(乾燥した
もの)の重量は、4.7kg/1本であった。そして、
#.5010に浸漬後の重量は、4.7kg+0.06
3kg=4.763kgであり、表面積が0.314m
であることから、合成樹脂エマルジョンの塗布量は、
0.2kg/mであった。また、天日乾燥後の重量
は、4.75kgであり、少し艶のある美しい外観仕上
がりであった。
【0041】上記実施例品を、7日間の水中浸潰に供し
た。その結果、4.75kgであった重量が、4.85
kgに増加した。重量増は0.1kgであり、増加率と
しては2%であった。
【0042】比較例として、杉丸太(直径10cm,長
さ1m,樹皮付き)を準備した。重量は、4.6kg/
本であった。上記比較例品を、実施例品と同様に、7日
間の水中浸潰に供した。その結果、4.6kgの重量が
5.2kgに増加した。重量増は0.6kgであり、増
加率としては、11.53%であった。
【0043】実施例品と比較例品の吸水率を比較する
と、実施例品が2%であるのに対し、比較例品は11.
53%であり、実施例品に比べ、比較例品では、5.7
65倍の吸水があったことがわかる。
【0044】
【実施例2】実施例1の樹脂含浸木材を、さらに合成樹
脂エマルジョン(#.5010)に浸潰乾燥したとこ
ろ、樹脂含浸量は、0.04kg/本であり、水中浸漬
後の重量変化率は1.2%であった。
【0045】
【実施例3】桧材(直径10cm,長さ50cm,重量
2.35kg)を準備した。上記桧材を、アクリルスチ
レンエマルジョン(三菱化学社製アクロナール#40
0,57%,粒径0.2ミクロン)に12時間浸潰した
のち取り出して乾燥し、本発明の処理を実施した。処理
後の重量は2.43kgであった。この実施例品を7日
間の水中浸潰に供したのち、重量を測定したところ、重
量は約1.5%増加しただけであり、表面は殆ど変化し
ていなかった。
【0046】上記のように、各実施例品は、水中浸漬に
よっても、内部にほとんど水分が侵入することがないこ
とがわかる。このことは、同時に、上記処理品では、木
材内の水分が外部に蒸発しにくいことを表している。
【0047】つぎに、上記実施例3の桧材(重量2.4
7kg)を60℃の乾燥炉に入れ、48時間乾燥させ
た。乾燥後の重量は、2.35kgであった。そのの
ち、乾燥させた桧材に48時間水を噴霧した後、重量を
測定したところ、その重量増は、0.0012kgであ
り、地上においては、ほとんど吸水しないことが証明さ
れた。
【0048】上述のとおり、実施例品は、比較例品に比
べて極めて吸水性が少なく、防腐性が優れていることが
わかる。
【0049】
【発明の効果】以上のように、本発明の木材の防腐処理
方法によれば、外部の水分を木材の内部に浸透させず、
かつ、木材内部の水分を容易に外部に放出させないこと
により、腐朽菌やバクテリアが木材内へほとんど侵入し
なくなる。そのうえ、木材の内部が、バクテリアやシロ
アリが生息しにくい環境になる。そして、表層部にエマ
ルジョン液が浸透固化することにより、木材は乾湿を繰
り返さなくなる。その結果、木材の腐朽速度を大幅に送
らせ、防腐性能を飛躍的に高めることに成功したのであ
る。
【0050】しかも、従来のように薬剤が周辺環境に溶
け出すことによる環境汚染の心配も全くない。さらに、
木材内部の水分の蒸発を減少させることから、木材の収
縮変形も減少させることができる。これにより、経年変
形によるひび割れ等が防止され、エマルジョン液が浸透
していない木材内部が表面に露出することがほとんどな
くなり、極めて長期間にわたって防腐効果を維持するこ
とができる。そのうえ、木材表装部にエマルジョン液が
浸透固化するため、かびの発生も減少させることができ
る。これらにより、従来、山中で大量に腐敗していた間
伐材の有効活用の道が開け、限りある森林資源を有効に
活用することができるようになる。また、入手しやすく
比較的安価な合成ゴムや合成樹脂エマルジョン液によっ
て防腐処理を行うことができ、処理コストが安くなる。
また、溶剤の飛散等の環境汚染の問題もほとんどなく、
安全性が極めて高いうえ、優れた耐候性も得ることが出
きる。
【0051】本発明の木材の防腐処理方法において、エ
マルジョン液として、分散粒子の粒径が10μm以下の
ものを用いるようにした場合には、木材の有する空隙が
おおむね10μm程度の大きさであることから、空隙の
中に合成ゴムや合成樹脂エマルジョンの分散粒子が十分
に浸透し、木材内部への水分の侵入と木材内部の水分の
蒸発を確実に防止し、より優れた耐腐朽性を与えること
ができるようになる。
【0052】本発明の木材の防腐処理方法において、木
材として樹皮つきのものを用いるようにした場合には、
樹皮自体が木材中心付近の心材と比べて耐候性が高く、
その耐候性の高い樹皮にエマルジョン液を浸透固化させ
ることにより、一層優れた耐腐朽性を与えることができ
るようになる。
【0053】木は、日本でほぼ唯一の資源であり、毎年
8000万m育成される無限の原料である。日本国土
の67%が緑地帯で、51%が植林である。ところが、
植林の95%が不要とされる間伐材であり、年間400
万mが有効活用されずに廃棄されている。木の物性が
極めて優良であり、これを不用として廃棄するのは、我
々の無知からきている。「木を腐食させない方法」を発
明することにより、不用とされている多くの資源を低価
格で活用できるようにすることは、焦眉のことであり、
本方法の発明はその一端に取付いたものと自覚してい
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩田 藤夫 大阪市中央区内淡路町1丁目3番4号ジェ イ.シーコンポジット株式会社内 (72)発明者 高橋 昇 奈良県橿原市石川町2−1 (72)発明者 宮武 勇 大阪市淀川区十八条2丁目18番29号産興化 学株式会社内 Fターム(参考) 2B230 AA01 BA01 BA02 CB25 DA02 EA20 EB01 EB02 EB12 EB13 EB21

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 木材表面に合成樹脂液を付着させ、上記
    合成樹脂液を木材の表層部に浸透固化させることによ
    り、木材内部への水分の侵入を防ぐとともに木材内部の
    水分の蒸発を減少させるようにしたことを特徴とする木
    材の防腐処理方法。
  2. 【請求項2】 上記合成樹脂液として合成ゴムもしくは
    合成樹脂のエマルジョン液を用いるようにした請求項1
    記載の木材の防腐処理方法。
  3. 【請求項3】 エマルジョン液として、分散粒子の粒径
    が10μm以下のものを用いるようにした請求項2記載
    の木材の防腐処理方法。
  4. 【請求項4】 木材として樹皮つきのものを用いるよう
    にした請求項1〜3のいずれか一項に記載の木材の防腐
    処理方法。
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