JP2023021630A - 複合粒子および複合粒子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリマー内に他の機能性材料を添加しても、収率が高く、生産性の優れた、簡便な方法で水を除去することができ、取り扱い性の高い、CNFの複合粒子を提供する。【解決手段】少なくとも1種類のポリマーと機能性材料を含むコア粒子と、アニオン性官能基を有し、前記コア粒子と不可分に結合して前記コア粒子の表面上に配置された微細化セルロースと、を備え、前記微細化セルロースの少なくとも一部に有機オニウムカチオンまたはアミンが結合していることを特徴とする複合粒子であり、樹脂とセルロースナノファイバーと機能性材料を容易に複合化できる新たな取り扱い様態を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、微細化セルロースとコア粒子から成る複合粒子に関する。
近年、木材中のセルロース繊維を、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化し、新規な機能性材料として利用しようとする試みが活発に行われている。
例えば、特許文献1に示されるように、木材セルロースに対しブレンダーやグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維、すなわちセルロースナノファイバー(以下CNFと称する)が得られることが開示されている。この方法で得られるCNFは、短軸径が10~50nm、長軸径が1μmから10mmに及ぶことが報告されている。このCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な比表面積を有することから、樹脂強化用フィラーや吸着剤としての利用が期待されている。
また、木材中のセルロース繊維を微細化しやすいように予め化学処理したのち、家庭用ミキサー程度の低エネルギー機械処理により微細化してCNFを製造する試みが活発に行われている。上記化学処理の方法は特に限定されないが、セルロース繊維にイオン性官能基を導入して微細化しやすくする方法が好ましい。セルロース繊維にイオン性官能基が導入されることによってセルロースミクロフィブリル構造間に浸透圧効果で溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化に要するエネルギーを大幅に減少することができる。上記イオン性官能基の導入方法としては特に限定されないが、例えば非特許文献1にはリン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行う方法が開示されている。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。
また、比較的安定なN-オキシル化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法も報告されている(例えば、特許文献3を参照)。TEMPOを触媒として用いる酸化反応(TEMPO酸化反応)は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能であり、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性1級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。
TEMPO酸化によって選択的に結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の電離に伴う浸透圧効果により、溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、セルロースシングルナノファイバー(以下CSNFと称する)を得ることが可能となる。CSNFは表面のカルボキシ基に由来した高い分散安定性を示す。木材からTEMPO酸化反応によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm~数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および成形体は高い透明性を有することが報告されている。
前述のように、様々な手法を用いて作製可能なCNFは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以
上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な比表面積を有することから、例えばフィラーとして樹脂と混練することにより、樹脂の軽量化および高強度化が期待される。また、CNFは線熱膨張係数が低いため、CNFを樹脂中に分散させることで、樹脂の熱寸法安定性を向上させることも可能である。(例えば、特許文献4を参照。)
しかしながら、CNFの実用化に向けては、通常、CNFは水分散液として得られ、その固形分濃度が0.1~5%程度と低くなってしまうことが課題となっている。特に、樹脂強化用の添加剤として用いる際には、溶媒である水が樹脂と馴染まないため複合化が困難となるといった問題がある。
一方で、単純に熱乾燥などで微細化セルロース分散液の溶媒を除去してしまうと、微細化セルロース同士が凝集・角質化し、あるいは膜化してしまい、樹脂への添加剤として安定な機能発現が困難になってしまう。さらにCNFの固形分濃度が低いため、乾燥による溶媒除去工程自体に多大なエネルギーがかかってしまうことも事業性を損なう一因となる。
このように、CNFを分散液の状態で取り扱うこと自体が、樹脂との複合化を目指す上で事業性を損なう原因となるため、樹脂とCNFを容易に複合化できる新たな取り扱い様態を提供することが強く望まれている。
CNFを容易に取り扱うことができる新たな態様として、特許文献5には、セルロース繊維により構成される被覆層と、被覆層に覆われたポリマーとを含む複合粒子が記載されている。この複合粒子において、セルロース繊維とポリマーとは一体化しているため、ろ過により簡単に分離でき、粉体として流通できる。粉体の再分散性も良好である。
特開2010-216021号公報 国際公開第2014/088072号 特開2008-001728号公報 特開2008-7646号公報 特開2019-38949号公報
Cellulose,(英),2017,Vol.24,p.1295-1305
特許文献5に記載の複合粒子は、上述したようにCNFの特性を発揮する材料として優れているものの、適用できるポリマーの種類に限りがあり、また、適用されるポリマーを用いたとしても、ポリマーに他の材料を添加することによりポリマーのCNFに対する適用性が損なわれる場合もあることがあるという点で改善の余地がある。
適用できない材料で複合粒子を形成する場合、収率が著しく低下する、得られる粒子の粒径分布のバラつきが大きくなる、粒子の表面に存在するCNFの量が少ないために材料としてCNF特性を十分発揮しない等の様々な問題が生じる。
上記事情を踏まえ、本発明は、ポリマー内に他の機能性材料を添加しても、収率が高く、生産性の優れた、簡便な方法で水を除去することができ、取り扱い性の高い、CNFの複合粒子、およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る、少なくとも1種類のポリマーと機能性材料を含むコア粒子と、アニオン性官能基を有し、前記コア粒子と不可分に結合して前記コア粒子の表面上に配置された微細化セルロースとを備え、前記微細化セルロースの少なくとも一部に有機オニウムカチオンまたはアミンが結合していることを特徴とする。
また、前記コア粒子の前駆体の総量に対し、前記複合粒子の総量が0.6より多く、0.99よりも少ないことを特徴とする。
また、前記有機オニウムカチオンが第4級アンモニウムイオンであることを特徴とする。
また、前記アミンが第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンのいずれかであることを特徴とする。
また、前記第4級アンモニウムイオン、またはアミンの窒素原子に結合している炭化水素基または/およびヘテロ原子を含む炭化水素基の少なくとも一つが炭素数を3つ以上含む炭化水素基または/およびヘテロ原子を含む炭化水素基であることを特徴とする。
また、溶媒溶解性複合粒子を含む乾燥粉体であって、固形分率が80%以上であることを特徴とする。
また、1)第1工程:有機オニウム化合物/アミンを含む溶媒中で、アニオン性を有するセルロース原料を溶媒中で解繊して、有機オニウムカチオン/アンモニウムイオンが結合した微細化セルロースを含む微細化セルロースの分散液を得る工程、2)第2工程:前記分散液中において、少なくとも一種類の重合性モノマーまたは/およびポリマーと機能性材料からなる液滴の表面の少なくとも一部を、前記微細化セルロースによる被覆層で覆った状態で、エマルション化させる工程、3)第3工程:前記液滴の表面の少なくとも一部を、前記微細化セルロースによる被覆層で覆った状態で、前記液滴を固体化してコア粒子とすることで前記コア粒子と前記微細化セルロースとを不可分の状態にする工程、を順次含むことを特徴とする。
また、前記第2工程における液滴は、重合開始剤と機能性材料を含む重合性モノマーからなる液体であることを特徴とする。
また、前記第2工程における液滴は、機能性材料と常温にて固体であるポリマーを前記分散液に対し相溶性の低い溶媒で溶解した液体であることを特徴とする。
また、前記第2工程における液滴は、機能性材料を含む常温にて固体であるポリマーが流動性を持つ温度以上に加熱し融解した液体であることを特徴とする。
また、前記第3工程の後に、前記微細化セルロースと結合した前記有機オニウムカチオン/アンモニウムイオンを除去する第4工程をさらに備えることを特徴とする。
本発明の複合粒子の一態様によれば、樹脂とCNFと機能性材料を容易に複合化できる新たな取り扱い様態を提供することができる。
また、本発明によれば、収率が高く、生産性の優れた、簡便な方法で水を除去すること
ができ、取り扱い性の高い、樹脂とCNFと機能性材料の複合粒子を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る複合粒子の模式図である。 同複合粒子の製造方法の一過程を示す図である。 同複合粒子の製造方法の一過程を示す図である。 実施例1に係る微細化セルロース分散液におけるFT-IR測定結果を示すグラフである。 実施例1で得られた複合粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果を示す図(SEM画像)である。 実施例1で得られた複合粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって高倍率で観察した結果を示す図(SEM画像)である。 比較例3で得られた複合粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果を示す図(SEM画像)である。 比較例3で得られた複合粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果を示す図(SEM画像)である。 実施例1に係る複合粒子の粒度分布を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<複合粒子>
まず、本発明の第一実施形態に係る複合粒子5について説明する。図1に複合粒子5の模式図を示す。機能性材料と少なくとも一種類のポリマーからなるコア粒子3を含み、コア粒子3の表面に、微細化セルロース1により構成された微細化セルロース被覆層8を有し、コア粒子3と微細化セルロース1とが結合して不可分の状態にある。
微細化セルロース1の少なくとも一部には、有機オニウムカチオンまたはアミン7aがカウンターカチオンとして結合している。また、有機オニウム化合物がイオン化した状態を、有機オニウムイオンまたは有機オニウムカチオンと記載する。また、ここで言うアミンとは、一部またはすべてがイオン化しアンモニウムイオンを含むものとする。
複合粒子5は、微細化セルロース分散液4に分散した少なくとも一種類の重合性モノマーまたは/およびポリマーと機能性材料からなる液滴(以下、コア粒子前駆体と記載する)2の界面に微細化セルロース1が吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化され、安定化状態を維持したままエマルション内部のコア粒子前駆体2を固体化することによって、エマルションを鋳型とした複合粒子5を作製できる。ここで、「エマルションの安定化状態」とは、長時間(例えば12時間)静置してもエマルションの液滴サイズが変化しない状態を意味する。エマルションが不安定であると、一部の液滴同士が時間経過とともに合一することで、液滴の粒度分布が初期に比べて大きい方へ推移したり、粒度分布にばらつきが生じたり、場合によっては油相と水相の分離が生じる。その結果、得られる複合粒子が不均一となったり、粒子形態として回収することができなくなり、複合粒子としての収率が低くなる。
コア粒子前駆体2と微細化セルロース分散液4の界面に微細化セルロース1が吸着してO/W型ピッカリングエマルションが安定化するメカニズムについては、吸着による界面エネルギーの低下による作用が関係していると考えられている。微細化されサブミクロンオーダーとなった固体粒子である微細化セルロース1は、物理的な力によりコア粒子前駆体2の界面に吸着され、水相に対してセルロースの障壁を形成する。一度吸着し界面を形成すると、脱着にはより大きなエネルギーが必要になるため、エマルション構造は安定化する。
さらに、微細化セルロース1は両親媒性があり、疎水性を有するコア粒子前駆体2に対して微細化セルロース1の疎水性部が吸着し、微細化セルロース1の親水性である部分が微細化セルロース分散液4側に向くことにより、液滴界面の安定化が向上するといった作用も推察されている。この界面における吸着力は、固体粒子の油相と水相への親和性の高さ、つまり微細化セルロース1のコア粒子前駆体2に対する親和性と微細化セルロース1の分散液4に対する親和性との両方に依存する。
本実施形態では、微細化セルロース1の一部に疎水性を付与することにより、コア粒子前駆体2に対する微細化セルロース1の親和性を高め、吸着力を向上させている。疎水性を付与する方法としては、疎水性付与の効果が高くプロセスコストにおいて有利である点から、アニオン性官能基を有する微細化セルロース1に対して有機オニウム化合物/アミン7を用いて対イオンを有機オニウムカチオンまたはアミン7aとする方法が好ましい。
一部が疎水化された微細化セルロース1を使用して複合粒子5を作製することにより、エマルションの安定性が向上する。その結果、適用できるコア粒子前駆体2の材料の種類が大幅に増え、用途等に応じた要求仕様に対応可能な多様な複合粒子5を作製できる。
ここで言う「不可分」とは、例えば、複合粒子5を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで複合粒子5を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、微細化セルロース1とコア粒子3とが分離せず、微細化セルロース1によるコア粒子3の被覆状態が保たれることを意味する。
被覆状態の確認は、例えば、走査型電子顕微鏡による複合粒子5の表面観察により確認することができる。複合粒子5において微細化セルロース1とコア粒子3の結合メカニズムについては定かではないが、複合粒子5が微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、エマルション内部のコア粒子前駆体2に微細化セルロース1が接触した状態で重合性モノマーまたは/およびポリマーが固体化するために、固体化後に得られる複合粒子5において、コアとなるコア粒子3の表面に存在する微細化セルロース1の少なくとも一部がコア粒子3の内部に取り込まれた状態となることが予想される。以上の理由により、物理的に微細化セルロース1が固体化後のコア粒子3に固定化されて、最終的にコア粒子3と微細化セルロース1とが不可分な状態に至ると推察される。
ここで、O/W型エマルションは、水中油滴型(Oil-in-Water)とも言われ、水を連続相とし、その中に油が油滴(油粒子)として分散しているものである。
また、複合粒子5は微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、複合粒子5の形状はO/W型エマルションの油滴の形状に由来した粒状となることが特徴である。詳細には、粒状のコア粒子3の表面に微細化セルロース1からなる微細化セルロース被覆層8が比較的均一な厚みで形成された様態となる。微細化セルロース被覆層8の平均厚みは複合粒子5を包埋樹脂で固定したものをミクロト
ームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の複合粒子5の断面像における微細化セルロース被覆層8の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出でききる。また、複合粒子5は比較的揃った厚みの被覆層8で均一に被覆されていることが特徴であり、具体的には上述した微細化セルロース被覆層8の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。微細化セルロース1を含む被覆層の厚みの値の変動係数が0.5を超える場合には、例えば、複合粒子5の回収が困難となることがある。
なお、本実施形態における微細化セルロース1は特に限定されないが、結晶表面にアニオン性官能基を有しており、当該アニオン性官能基の含有量が、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。
さらに、微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、微細化セルロース1は繊維状であって、数平均短軸径が1nm以上1000nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であることが好ましい。また、微細化セルロース1の結晶構造は、セルロースI型であることが好ましい。
<複合粒子の製造方法>
次に、本実施形態の複合粒子5の製造方法について説明する。本実施形態に係る複合粒子5の製造方法は、有機オニウム化合物/アミン7を含む溶媒中で、アニオン性を有するセルロース原料6を解繊して微細化セルロース分散液を得る工程(第1工程)と、微細化セルロース1の分散液4中においてコア粒子前駆体2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、コア粒子前駆体2をエマルションとして安定化させる工程(第2工程)と、コア粒子前駆体2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、コア粒子前駆体2を固体化してコア粒子3とすることで、コア粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつコア粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程(第3工程)と、を有する複合粒子5の製造方法である。
上記製造方法により得られた複合粒子5は分散体として得られる。さらに溶媒を除去することにより乾燥固形物として得られる。溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば遠心分離法やろ過法によって余剰の水分を除去し、さらにオーブンで熱乾燥することで乾燥固形物として得ることができる。この際、得られる乾燥固形物は膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。この理由としては定かではないが、通常微細化セルロース分散体から溶媒を除去すると、微細化セルロース同士が強固に凝集、膜化することが知られている。一方、複合粒子5を含む分散液の場合、微細化セルロース1が表面に固定化された複合粒子であるため、溶媒を除去しても微細化セルロース1同士が凝集することなく、複合粒子間の点と点で接するのみであるため、その乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られると考えられる。また、複合粒子5同士の凝集がないため、乾燥粉体として得られた複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も複合粒子5の表面に結合された微細化セルロース1に由来した分散安定性を示す。
なお、複合粒子5の乾燥粉体は溶媒をほとんど含まず、さらに溶媒に再分散可能であることを特長とする乾燥固形物であり、具体的には固形分率を80%以上とすることができ、さらに90%以上とすることができ、さらに95%以上とすることができる。溶媒をほぼ除去することができるため、輸送費の削減、腐敗防止、添加率向上、樹脂との混練効率向上、といった観点から好ましい効果を得る。なお、乾燥処理により固形分率を80%以上にした際、微細化セルロース1は吸湿しやすいため、空気中の水分を吸着して固形分率が経時的に低下する可能性がある。しかしながら、複合粒子5は乾燥粉体として容易に得られ、さらに再分散させ得ることが特長である本発明の技術思想を考慮すると、複合粒子
5を含む乾燥粉体の固形分率を80%以上とする工程を含む乾燥固形物であれば、本発明の技術的範囲に含まれると定義する。前記乾燥粉体は簡便な方法で水を除去することができ、微細化セルロースの凝集も無く、マイクロサイズオーダーでポリマーと微細化セルロースの複合化が達成されていることから、複合粒子混合樹脂組成物としての使用が好適である。
以下に、各工程について、詳細に説明する。
(第1工程)
本実施形態における第1工程を図2に示す。第1工程は、有機オニウム化合物/アミン7を含む溶媒中で、アニオン性を有するセルロース原料6を解繊して微細化セルロース分散液4を得る工程である。
まず、図2に示すように、各種アニオン性を有するセルロース原料6と有機オニウム化合物/アミン7とを混合する。これにより、有機オニウム化合物/アミン7に含まれる有機オニウムカチオンまたはアミン7aがセルロース原料6と結合し、セルロース原料6の一部に疎水性が付与される。
アニオン性を有するセルロース原料6は、金属イオンを始めとしたカチオン性物質を対イオンとした塩を形成していてもよいが、カチオン物質を含有しない場合、副生成物の生成を抑制でき、疎水化の効果に優れるため、カチオン性物質を含まないのが好ましい。
セルロース原料6におけるカチオン性物質の含有量は様々な分析方法で調べることができる。例えば、電子線マイクロアナライザーを用いたEPMA法や、蛍光X線分析法による元素分析等を簡易的な方法として例示できる。アニオン性を有するセルロース原料6からカチオン性物質を除去する方法としては、セルロース原料6を酸性下で繰り返し洗浄した後に純水で水洗を繰り返す精製方法を例示できる。
有機アンモニウム化合物/アミン7の結合量としては、セルロース原料6に含まれるアニオン性官能基に対して0.8当量以上2当量以下であることが好ましい。特に、結合量が1当量以上1.8当量以下であると、有機オニウム化合物/アミン7を多量に添加する必要がなく、より好ましい。有機オニウム化合物/アミン7の結合量が0.8当量未満でもセルロース原料6をある程度分散させることは可能だが、分散処理に長時間・高エネルギーを要し、得られる繊維の繊維径が大きくなり均質性が低下する。一方、2当量を超えると、有機オニウム化合物/アミン7の過剰添加によりセルロース原料6の分解や分散媒への親和性低下が生じる場合があり、好ましくない。
有機オニウム化合物/アミン7の種類は、1種類でもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。特に、有機オニウムまたはアミンを構成する水酸基または炭化水素基の構造が異なるものを混合して用いてもよい。或いは、炭化水素基が直鎖状であっても分岐状であってもよい。
次に、有機オニウム化合物/アミン7が結合したセルロース原料6を溶媒中に分散し、疎水性が付与されたセルロース原料6の懸濁液を調製する。溶媒としては水が好適であり、水を50%以上含むことが好ましい。溶媒における水の割合が50%以下になると、後述する第2工程において、液状のコア粒子前駆体2のエマルションの安定が阻害される。
分散液におけるセルロース原料6の割合は、0.1%以上10%未満が好ましい。0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なうため好ましくない。10%以上になると、セルロース原料6の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となる
ため好ましくない。
懸濁液のpHは4以上12以下が好ましい。特に、懸濁液をpH7以上12以下のアルカリ性とすると、セルロース原料6のアニオン性官能基がイオン化する。これにより、浸透圧効果でセルロース原料6に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料6の微細化が進行しやすくなる。pH4未満の場合は、機械的分散処理によりセルロース原料6を分散させることができるが、有機オニウム化合物/アミン7の添加量が過小な場合と同様の現象が発生し、分散液における微細化セルロース1の均質性が低下する。一方、pH12を超えると、分散処理中にアニオン性を有するセルロース原料6に、ピーリング反応やアルカリ加水分解による低分子量化が生じたり、末端アルデヒドや二重結合形成によって分散液の黄変が促進されたりするため、好ましくない。
本実施形態における有機オニウム化合物は、構造式(1)に示すカチオン構造を有する。
(化1)
R1

R4-M+-R2 (1)

R3
構造式(1)中において、Mは窒素原子、リン原子、水素原子、硫黄原子のいずれかであり、R1、R2、R3、およびR4は、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子を含む炭化水素基のいずれかである。例えば、Mが窒素原子であり、R1、R2、R3及びR4がいずれも水素原子の場合、有機オニウム化合物はアンモニアである。R1、R2、R3、R4のうち3つが水素原子の場合は第1級アミン、2つの場合は第2級アミン、1つの場合は第3級アミン、0個の場合は第4級アミン(4級アンモニウムカチオン)となり、いずれも本実施形態における有機オニウム化合物である。へテロ原子を含む炭化水素基としては、アルキル基、アルキレン基、オキシアルキレン基、アラルキル基、アリール基、芳香族基等を例示できる。R1、R2、R3、およびR4が環を形成していてもよい。
有機オニウム化合物のカチオン構造の対イオンは特に限定されないが、金属イオンの混入に伴う悪影響や分散媒への分散性などを考慮すると、水酸化物イオンが対イオンであることが好ましい。
第一工程では、有機オニウム化合物に加えて、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の金属塩を含む無機アルカリが添加されてもよい。
本実施形態における第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンは、それぞれ下記構造式(2)、(3)、(4)に示す構造を有する。なお、これらがイオン化しアンモニウムイオンとなった際の構造は、それぞれ(2)’、(3)’、(4)’となる。
(化2)
NH2-R5 (2)
NH3 +-R5 (2)'
NH-R6R7 (3)
NH2 +-R6R7 (3)'
N-R8R9R10 (4)
NH+-R8R9R10 (4)'
上記構造式中において、R5~R10は、炭化水素基、ヘテロ原子を含む炭化水素基の
いずれかである。
第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、n-オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、へキシルアミン、2-エチルへキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリへキシルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどを例示することができる。
また、第4級アミン(4級アンモニウムカチオン)としてはテトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムヘキサデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリエチルアンモニウムカチオンなどを例示することができる。
本発明において使用する有機オニウムは第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミン(4級アンモニウムカチオン)であることが好ましく、より好ましいのはアミンの窒素原子に結合する炭化水素基、ヘテロ原子を含む炭化水素基のうち、少なくとも一つが炭素数を3つ以上含む炭化水素基、ヘテロ原子を含む炭化水素基であるアミンである。窒素に結合する炭化水素基、ヘテロ原子を含む炭化水素基は炭素数が多くなるほど、疎水性が強くなる。従って、炭素数の多いアミンを使用することで、コア粒子前駆体2と微細化セルロース繊維1との親和性が強くなり、吸着しやすくなる。その結果、安定したエマルションを形成しやすくなる。
アニオン性を有するセルロース原料6と有機オニウム化合物/アミン7を用いて得られた懸濁液は、金属イオンを対イオンとする無機アルカリを用いた場合よりも低エネルギー、短時間で分散処理を行うことができ、かつ最終的に得られる分散液の均質性も高い。これは、有機オニウム化合物/アミン7を用いた方が、セルロース原料6が有するアニオン性部位の対イオンのイオン径が大きいため、分散媒中で微細化セルロース繊維同士をより引き離す効果が大きいためと考えられる。さらに、分散液として有機オニウム化合物/アミン7を含むと、無機アルカリと比べて分散液の粘度とチキソ性を低下させることができ、分散処理のしやすさとその後のハンドリングにおいて有利になる。さらに、有機オニウム化合物/アミン7とイオン結合により相互作用した微細化セルロース1は、有機オニウムイオン/アンモニウムイオン7aに基づく立体斥力または疎水化作用によって親水性が低下する。これにより後述の第二工程において液状のコア粒子前駆体2のエマルション液滴への親和性が高まり、液滴の安定性が向上する。
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料6を微細化する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理を例示できる。物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中のセルロース原料6が微細化され、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化された微細化セルロース1の分散液を得ることができる。物理的解繊処理の時間や回数を変えることにより、分散液に含まれる微細化セルロース1の数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
以上により、図2に示す微細化セルロース1の微細化セルロース分散液4が得られる。微細化セルロース1は、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されている。
微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であるため、本実施形態の製造方法に用いる微細化セルロース1としては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。すなわち、繊維状の微細化セルロース1は、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下であればよく、好ましくは2nm以上500nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、エマルションの安定化と、エマルションを鋳型とした重合反応とを実施することができない。一方、数平均短軸径が1000nmを超えると、エマルションを安定化させるにはサイズが大きくなり過ぎるため、得られる複合粒子5のサイズや形状を制御することが困難となる。
微細化セルロース1の数平均長軸径に特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の5倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍未満であると、複合粒子5のサイズや形状を十分に制御することができないために好ましくない。
微細化セルロース1の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。微細化セルロース1の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
分散液4においては、微細化セルロース1に有機オニウム化合物/アミン7が結合しており、良好な分散を示す。微細化セルロース分散液4は、続く工程において、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができる。
微細化セルロース1を構成するセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料として、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
さらにセルロース原料6は化学改質されていることが好ましい。より具体的には、セルロース原料6の結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることが好ましい。セルロース原料6の結晶表面にアニオン性官能基が導入されていることによって浸透圧効果でセルロース結晶間に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料6の微細化が進行しやすくなるためである。
セルロースの結晶表面に導入されるアニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
セルロースの結晶表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、T
EMPOをはじめとするN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減のためにはN-オキシル化合物を用いた酸化がより好ましい。
ここで、N-オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高いTEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01~5.0質量%程度である。
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えば木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~200質量%程度である。
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は、4~80℃が好ましく、10~70℃がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造が崩壊し、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9~11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機オニウム化合物の水溶液などが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。 添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nmの均一な繊維幅を有するCSNFが得られる。CSNFを複合粒子5の微細化セルロース1の原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
以上のように、本実施形態で用いられるCSNFは、セルロース原料を酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CSNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができず、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
微細化セルロース分散液4は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、特に限定されず、複合粒子5の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
(第2工程)
第2工程は、微細化セルロース1の微細化セルロース分散液4中において少なくとも一種類の重合性モノマーまたは/およびポリマーと機能性材料からなるコア粒子前駆体2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で被覆して、コア粒子前駆体2をエマルションとして安定化させる工程である。
具体的には第1工程で得られた微細化セルロース分散液4に重合性モノマーまたは/お
よびポリマーと機能性材料との混合物を添加し、さらに重合性モノマーまたは/およびポリマーと機能性材料からなるコア粒子前駆体2を微細化セルロース分散液中4に分散させ、さらにコア粒子前駆体2の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1によって被覆し、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。
O/W型エマルションを作製する方法としては、例えば、微細化セルロース分散液4に開始剤を含む重合性モノマーと機能性材料を混合したものを添加しエマルション化させる方法がある。前記重合性モノマーとは、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成でき、分散液4と混合した際にエマルション化できるもの、すなわち水と完全に相溶しないものであれば特に限定されない。
また、水に不溶であるポリマーを微細化セルロース分散液4への相溶性が低い溶媒で溶解したものと機能性材料を微細化セルロース分散液4に添加しエマルション化させる方法、微細化セルロース分散液に常温にて固体であり、水に不溶であるポリマーが流動性を持つ温度以上に加熱し融解させたものと機能性材料を混合したものを微細化セルロース分散液4に添加し、ポリマーが流動性を持つ温度以上に加熱し融解させた状態でエマルション化させる方法がある。いずれの方法においても重合性モノマーまたは/およびポリマーは微細化セルロース分散液に対して相溶性がないものが好ましい。相溶性がある場合は微細化セルロース分散液中にて重合性モノマーまたは/およびポリマーの液滴を形成することが困難となり、複合体を得ることが困難となる傾向がある。
O/W型エマルションを作製する方法としては特に限定されないが、一般的な乳化処理、例えば各種ホモジナイザー処理や機械攪拌処理を用いることができ、具体的には高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、万能ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ペイントシェイカーなどの機械的処理が挙げられる。また、複数の機械的処理を組み合わせて用いてもよい。
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、第1工程にて得られた微細化セルロース分散液4に対し重合性モノマーまたは/およびポリマーと機能性材料との混合物を添加して混合液とし、混合液に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm2以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
上記超音波処理により、微細化セルロース分散液中にコア粒子前駆体2が分散してエマルション化が進行し、さらにコア粒子前駆体2と微細化セルロース分散液4の液/液界面に選択的に微細化セルロース1が吸着することで、コア粒子前駆体2が微細化セルロース1で被覆されO/W型エマルションとして安定した構造を形成する。このように、液/液界面に固体物が吸着して安定化したエマルションは、学術的には「ピッカリングエマルション」と呼称されている。前述のように微細化セルロース繊維によってピッカリングエマルションが形成されるメカニズムは定かではないが、セルロースはその分子構造において水酸基に由来する親水性サイトと炭化水素基に由来する疎水性サイトとを有することから両親媒性を示すため、両親媒性に由来して疎水性モノマーと親水性溶媒の液/液界面に吸着すると考えられる。本発明における微細化セルロース1は有機オニウムカチオンまたはアンモニウムイオン7aにより疎水化されているために、より液/液界面に吸着しやすい。
O/W型エマルション構造は、例えば、光学顕微鏡観察により確認することができる。O/W型エマルションの粒径サイズは特に限定されないが、通常0.1μm~1000μm程度である。
O/W型エマルション構造において、コア粒子前駆体2の表層に形成された微細化セルロース被覆層8の厚みは特に限定されないが、通常3nm~1000nm程度である。微細化セルロース層の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
第2工程で用いることができる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等、)を用いることも可能である。なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘ
キサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
単官能のビニル系モノマーとしては例えば、ビニルエーテル系、ビニルエステル系、芳香族ビニル系、特にスチレンおよびスチレン系モノマーなど、常温で水と相溶しない液体が好ましい。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、単官能芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、例えば、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレンイソプロペニルトルエン、イソブチルトルエン、tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
例えば多官能性ビニル系モノマーとしては、具体的には、(1)ジビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン等のジビニル類、(2)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリ
エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート類、(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート類、(4)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ジプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ジブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキシレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート類、(5)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチロールエタントリアクリレート等のトリアクリレート類、(6)テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート類、(7)その他に、例えばテトラメチレンビス(エチルフマレート)、ヘキサメチレンビス(アクリルアミド)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
例えば官能性スチレン系モノマーとしては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合性モノマーには予め重合開始剤が含まれていてもよい。一般的な重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)が挙げられる。その他として、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
第2工程において予め重合開始剤が含まれた状態の重合性モノマーを用いれば、O/W型エマルションを形成した際にエマルション液滴内部の重合性モノマー中に重合開始剤が含まれるため、後述の第3工程においてエマルション内部のモノマーを重合させる際に重合反応が進行しやすくなる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに複合粒子5の収量が低下する傾向があるため好ましくない。
機能性材料と常温にて固体であるポリマーを微細化セルロース分散液4への相溶性が低い溶媒で溶解し微細化セルロース分散液4に添加しエマルション化させる方法に用いることができるものとしては、前述の重合性モノマーのうち、重合性官能基を一つのみ持つ、単官能モノマーを重合させたポリマーが挙げられる。多官能モノマーを重合させたポリマーは架橋構造を構成しており、溶媒によりポリマー鎖が解れ、溶媒中に分散する、すなわち溶解することが困難である。また、常温にて固体であるポリマーを溶解する溶媒としては微細化セルロース分散液4への相溶性が低い溶媒が好ましい。水への溶解度が高い場合、ポリマー相から水相へ溶媒が容易に溶解してしまうため、エマルション化が困難となる傾向がある。水への溶解性がない場合はポリマー相から溶媒が移動することができないため、複合粒子5を得ることが極めて困難となる傾向がある。また、ポリマーを溶解する溶媒は沸点が90℃以下であることが好ましい。沸点が90℃より高い場合、ポリマーを溶解する溶媒よりも先に微細化セルロース分散液4が蒸発してしまい複合粒子を得ることが極めて困難となる傾向がある。ポリマーを溶解する溶媒としては、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。
機能性材料を含む常温にて固体であるポリマーが流動性を持つ温度以上に加熱し融解させ、機能性成分と混合した混合液を得るために用いることのできるポリマーとしては、常温で固体であり、加熱することで流動性を持つものであり、流動性を持つ温度とは融点またはガラス転移温度である。添加するポリマーの融点またはガラス転移温度は40℃以上90℃以下のものが好ましい。
ポリマーの融点またはガラス転移温度が40℃未満である場合、常温で固体化することが難しいため、複合体を得ることが極めて困難となる傾向がある。また、ポリマーの融点またはガラス転移温度が90℃以上である場合、ポリマーが溶解するよりも、一緒に加熱する微細化セルロース分散液4の溶媒である水が気化してしまいエマルション化することが困難となる。
このため、本実施形態において使用できるポリマーとしては、具体的にはポリ-S-(メチルヘプテン)、ポリデセン、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、シス-1,4-ポリクロロプレン、イソ-シス-1,4-ポリ-(1,3ペンタジエン)、イソ-トランス-1,4-ポリ-(1,3ヘキサジエン)、イソ-トランス-1,4-ポリ-(1,3ヘプタジエン)、イソ-トランス-1,4-ポリ-(1,3オクタジエン)、ポリヘキサメチレンオキシド、ポリオクタメチレンオキシド、ポリブタジエンオキシド、ポリテトラメチレンスルフィド、ポリペンタメチレンスルフィド、ポリヘキサメチレンスルフィド、ポリメチレンチオテトラメチレンスルフィド、ポリエチレンチオテトラメチレンスルフィド、ポリトリメチレンジスルフィド、などが挙げられる。
上記重合性モノマーとポリマーに相溶性がある場合は、重合性モノマーとポリマーを併
用しても構わない。例えば、重合性モノマーにポリマーが溶解することが可能である場合、ポリマーを重合性モノマーに溶解したものを、微細化セルロース分散液中でエマルション化することも可能である。
上記重合性モノマーまたは/およびポリマーは生分解性を有していてもよい。コア粒子3が生分解性を有することで、被覆している微細化セルロース1も生分解性を有するため、得られる複合粒子5はオール生分解性材料として用いることができる。複合粒子5が生分解性を有することで、環境に対する負荷を低減することが可能となる。
コア粒子前駆体2に含まれる機能性材料は、水に溶けにくい、または分散しづらいものが好ましい。より好ましくは、水に不溶であり、水系溶媒に分散しないものである。機能性材料が水に溶けやすい、または分散しやすいものである場合、重合性モノマーまたは/およびポリマーに溶けにくく、分散しづらいため、コア粒子前駆体に機能性材料を含有させることが困難となる。また、重合性モノマー/およびポリマーに溶解、分散させることが可能であっても、分散液4に添加した際にコア粒子前駆体2から分散液4へと機能性材料が移動してしまう可能性がある。
機能性材料の種類は、前記特性を有していれば、特に限定されないが、例えば、香料、消臭剤、防カビ剤、肥料(生物肥料、化学肥料、有機肥料等)、pH調整剤、農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤等)、植物活力剤、植物延命剤、害虫及び動物の忌避剤、土壌浸透剤、栄養成分(ミネラル等)、植物ホルモン、無機質粒子(酸化チタン、シリカ、クレー等)、抗菌性物質等が挙げられる。
香料としては、動植物等から抽出された天然香料、化学的に合成された合成香料、複数種類の香料を調合した調合香料がある。このうち天然香料としては例えばジャスミン、ローズ、カーネーション、ライラック、シクラメン、スズラン、バイオレット、ラベンダー、キンモクセイ等の花卉系、オレンジ、レモン、ライム等の柑橘系、シナモン、ナツメグ等の香辛料系、ヒノキ精油、ヒバ精油、スギ精油等の木材精油系等を挙げることができる。また合成香料としては例えばリモネン、ピネン、カンフェン等の炭化水素類、リナロール、ゲラニオール、メントール、シトロネロール、ベンジルアルコール等のアルコール類、シトラール、シトロネラール、ノナジエナール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド類、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、メチルノニルケトン、イロン、メントン等のケトン類、メチルアニソール、オイゲノール等のフェノール類、デカラクトン、ノニルラクトン、ウンデカラクトン等のラクトン類、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、酢酸テルピニル、酢酸シトロネリル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
消臭剤としては、カテコール、4-メチルカテコール、5-メチルカテコール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾシノール、ハイドロキノン等のジフェノール類;4,4’-ビフェニルジオール、3,4’-ビフェニルジオール等のビフェニルジオール類;カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート等のカテキン類;ドーパ、ドーパミン、クロロゲン酸、コーヒー酸、パラクマル酸、チロシン等のカテコール誘導体。植物から抽出等した植物由来のポリフェノール;コーヒー、リンゴ、ぶどう、茶類(緑茶、焙じ茶、紅茶、ウーロン茶、マテ茶等)、柿、大豆、カカオ、ローズマリー、アロエ等の由来のものが挙げられる。
農薬としては、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、殺そ剤、植物成長調整剤、誘引剤や忌避剤等が挙げられる。
殺虫剤としては、アゾキシベンゼン、アナバシン、アラマイト、アルドリン、アレスリン、イソキサチオン、イソチオエート、エチオン、エチルチオメトン、エンドリン、オルソジクロルベンゼン、カーバム、カルタップ、カルビンホス、クロルピクリン、クロルピリホス、クロルフェナミジン、クロルプロピレート、クロルベンジレート、クロルメタンスルホン酸アミド、ケイフッ化ナトリウム、ケルセン、サリチオン、酸化エチレン、酸化プロピレン、ジオアリホール、ジオキサカルブ、ジオメトエート、臭化メチル、水酸化トリシクロヘキシルスズ、ターバム、ダイアジノン、チオメトン、テトラジホン、テロドリン、バミドチオン、ひ酸石灰、ひ酸鉛、プロクロノール、プロパホス、プロメカルブ、ベンゾエピン、ベンゾメート、ホサロン、ホルモチオン、メカルバム、メソミル、メタアルデヒド、メチルジメトン、メナゾン、ヨウ化メチル、リン化亜鉛、リン化アルミニウム、APC、DDVP、MEP、PMP等が挙げられる。
殺菌剤としては、アンバム、硫黄、エクロメゾール、塩化トリフェニル錫、塩化トリプロピル錫、塩化ニッケル、塩化ベンザルコニウム、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、キャプタン、グアニジン、グリセオフルビンン、クロラムフェニコール、酢酸トリフェニル錫、酢酸トリブチル錫、酢酸ニッケル、次亜塩素酸ナトリウム、ジクロゾリン、シクロヘキシミド、ジクロン、ジチアノン、ジネブ、ジメチルアンバム、ジラム、水酸化トリフェニル錫、ストレプトマイシン、セロサイジン、ダイホルタン、チアジアジン、チアベンダゾール、チオファネート、チオファネートメチル、トリアジン、ニトロスチレン、ノボビオシン、バリダマイシン、ヒドロキシイソキサゾール、ファーバム、フォルペット、プロピケル、プロピネブ、ベノミル、ポリオキシン、ポリカーバメート、ホルムアルデヒド、マンゼブ、マンネブ、メチラム、MAF、PCP等が挙げられる。
除草剤としては、アイオキシニル、アジプロトリン、アシュラム、アトラジン、アメトリン、アラクロール、エチルキサントゲン酸ナトリウム、塩素酸カルシウム、塩素酸ナトリウム、オキサジアゾン、クレダジン、クロチゾール、クロメトキシニル、シアン酸ナトリウム、ジクワット、シデュロン、ジフェナミド、シメトリン、スルファミン酸アンモニウム、ターバシル、デスメトリン、テトラピオン、トリエタジン、トリフルラリン、ニトラリン、バーナレート、パラコレート、ピクロラム、ピクロラム、フェノチオール、フェンメディファム、ブタクロール、プロピサミド、ブロマシル、プロメトリン、ベスロジン、ペブレート、モリネート、リニュロン、硫酸銅、レナシル、ACN、DBN等が挙げられる。
殺そ剤としては、アンツー、黄りん、クロロファシノン、酢酸タリウム、シリロシド、チオセミカルバジド、モノフルオル酢酸ナトリウム、硫酸タリウム、リン化亜鉛等が挙げられる。
植物成長調製剤としては、インドール酪酸、オオキシエチレンナタネ油アルコール、オルソニトロフェノール、ジベレリン、α-ナフチルアセトアミド、ポリブテン、マレイン酸ヒドラジド、α-メトキシメチルナフタリン、硫酸オキシキノリン等が挙げられる。
誘引剤や忌避剤その他としては、キュウルア、クレゾール、酸化第二鉄、ジアリルジスルフィド、シクロヘキシミド、生石灰、炭酸カルシウム、チウラム、テトラヒドロチオフェン、β-ナウトール、メチルオイゲノール等が挙げられる。
肥料としては、例えば、尿素、硫酸カリウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。
特に、化学的緩効性肥料を用いることが好ましい。化学的緩効性肥料は、主に窒素肥料の溶解性を抑えるように化学処理を施したものである。水に溶解しにくく、土壌中でゆっく
りと無機態窒素に転換されて肥料効果を発揮する。化学的緩効性肥料を複合粒子4に内包することにより、更にその肥効を制御することができる。
化学的緩効性肥料としては、例えば、尿素とアルデヒド類を原料とするウレアホルム(UF)、メチロール尿素、アセトアルデヒド縮合尿素(CDU)、イソブチルアルデヒド縮合尿素(IB)、グリオキサール縮合尿素、石灰窒素を原料とする硫酸グアニル尿素、シュウ酸ジエステルとアンモニアを原料とするオキサミドが挙げられる。
コア粒子前駆体2に含まれる機能性材料の含有量は、複合粒子全体に対する重量比率が1%以上、80%以下であることが好ましい。機能性材料の含有量が複合粒子全体量に対して1%未満である場合、機能性材料が少なく、機能を十分に発揮することが困難であり、80%より多い場合、重合性モノマーまたは/およびポリマーにより機能性材料を取り込み切れずに、複合粒子5の形状を維持することが困難となる。
コア粒子前駆体2として重合性モノマーまたは/およびポリマーに機能性材料を添加することにより、重合性モノマーまたは/およびポリマーの場合よりもコア粒子前駆体内が不均一、かつ不安定な状態となる。従って、コア粒子前駆体表面が不安定となり、微細化セルロース繊維が吸着しづらくなり、安定なエマルションを形成することが困難となる。本発明における微細化セルロース繊維は有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aにより疎水性が強くなっていることから、コア粒子前駆体表面が不安定な状態でも、吸着いやすく、安定したエマルションを形成することが可能となる。
(第3工程)
第3工程は、コア粒子前駆体2を固体化して微細化セルロース1でコア粒子3が被覆された複合粒子5を得る工程である。より詳しくは、第3工程は、コア粒子前駆体2の表面の少なくとも一部が微細化セルロース1で覆われた状態で、コア粒子前駆体2を固体化してコア粒子3とすることで、コア粒子3の表面の少なくとも一部を微細化セルロース1で覆い、かつコア粒子3と微細化セルロース1とを不可分の状態にする工程である。
第2工程にて微細化セルロース分散液4に開始剤を含む重合性モノマーと機能性材料を混合したものを添加しエマルション化させる方法を用いた場合、重合性モノマーを重合する方法については特に限定されず、用いた重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜選択可能である。前述の重合性モノマーを重合する方法としては、例えば懸濁重合法が挙げられる。
具体的な懸濁重合の方法についても特に限定されず、公知の方法を用いて実施することができる。例えば第2工程で作製された、重合開始剤を含む重合性モノマーからなる液滴2が微細化セルロース1によって被覆され安定化したO/W型エマルションを攪拌しながら加熱することによって実施することができる。攪拌の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、具体的にはディスパーや攪拌子を用いることができる。また、攪拌せずに加熱処理のみでもよい。また、加熱時の温度条件については重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、20度以上90度以下が好ましい。加熱時の温度が20度未満であると重合の反応速度が低下する傾向があるため好ましくなく、90度を超えると微細化セルロース分散液が蒸発してしまう傾向があるため好ましくない。重合反応に供する時間は重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、通常1時間~24時間程度である。また、重合反応は電磁波の一種である紫外線照射処理によって実施してもよい。また、電磁波以外にも電子線などの粒子線を用いても良い。
第2工程にて機能性材料とポリマーを微細化セルロース分散液4への相溶性が低い溶媒
で溶解し微細化セルロース分散液に添加しエマルション化させる方法を用いた場合、エマルションを加熱し、ポリマーを溶解した溶媒を揮発させることでポリマーを固体化させることができる。加熱時の温度条件については溶解する溶媒の種類によって適宜設定することが可能であるが、溶媒の沸点以上90度以下が好ましい。加熱時の温度が溶媒の沸点未満であると溶媒が水相へ移動するのが遅くなり、90度を超えると微細化セルロース分散液が蒸発してしまう傾向があるため好ましくない。また、加熱をせず、第2工程にて得られたエマルションを微細化セルロース分散液の分散媒中に添加することで、ポリマーを溶解させた溶媒を前記分散媒に拡散させてもよい。ポリマーを溶解させた溶媒が前記分散媒中に拡散することで、ポリマーが析出し、固体化することができる。
第2工程にて微細化セルロース分散液4に機能性材料と常温にて固体であるポリマーを添加しポリマーが流動性を持つ温度以上に加熱し融解させエマルション化させる方法を用いた場合、エマルションを冷却し、ポリマーが流動性を持つ温度以下にすることでポリマーを固体化することができる。
上述の工程を経て、機能性材料とポリマーからなるコア粒子3が微細化セルロース1によって被覆された真球状の複合粒子5が得られる。得られた直後の複合粒子5においては、表在する微細化セルロース1の少なくとも一部に有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aが結合している。また、複合粒子5の粒径は比較的揃っており、均一度が高い。
なお、固体化の反応終了直後の状態は、複合粒子5の分散液中に多量の水と複合粒子5の被覆層8に形成に寄与していない遊離した微細化セルロース1が混在した状態となっている。そのため、作製した複合粒子5を回収・精製する必要があり、回収・精製方法としては、遠心分離による洗浄またはろ過洗浄が好ましい。遠心分離による洗浄方法としては公知の方法を用いることができ、具体的には遠心分離によって複合粒子5を沈降させて上澄みを除去し、水・メタノール混合溶媒に再分散する操作を繰り返し、最終的に遠心分離によって得られた沈降物から残留溶媒を除去して複合粒子5を回収することができる。ろ過洗浄についても公知の方法を用いることができ、例えば孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて水とメタノールで吸引ろ過を繰り返し、最終的にメンブレンフィルター上に残留したペーストからさらに残留溶媒を除去して複合粒子5を回収することができる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた複合粒子5を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
(第4工程)
第4工程は、生成された複合粒子5から有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを取り除く工程である。第4工程は、必要に応じて第3工程の後に行われるものであり、複合粒子5の用途等に鑑みて不要であれば省略されてもよい。
上述したように、製造直後の複合粒子5においては、微細化セルロース1の一部が対イオンとして有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを有する。複合粒子5の用途等に関連して、有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aの存在が好ましくない場合や、有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aとは異なるカチオン性物質をイオン結合として微細化セルロース1に結合したい場合、第4工程を行って有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを除去してもよい。
有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを取り除く方法としては、イオン交換
が挙げられる。酸性化合物を含む水溶液中に有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを有する複合粒子5を分散させ、さらに純水で洗浄することで有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを除去できる。有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aを除去した後に所望のカチオン性化合物を添加し、微細化セルロース1のアニオン性官能基に有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aと異なるカチオン性物質をイオン結合により結合させても構わない。
以上説明したように、本実施形態に係る複合粒子5は、表面に微細化セルロース層8として存在する微細化セルロース1に由来した、良好な分散安定性を有する。
また、有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aが結合した微細化セルロース1を用いて形成されるため、広範な種類の樹脂で、且つ機能性材料を含むコア粒子3を形成でき、多種多様な用途に対応可能な複合粒子を得られる。例えば、従来製造が困難であった熱可塑性を有する複合粒子も簡便に製造できる。
さらに、有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン7aにより微細化セルロース1が疎水性を獲得することで、両親媒性となる。その結果複合粒子5の収率、つまり複合粒子を作製する際に使用する前記コア粒子の前駆体の総量に対し、作製される前記複合粒子の総量が著しく向上するとともに、粒径分布も均一化し、材料としても優れたものとなる。
複合粒子5の乾燥固形物は、微細化セルロース1の材料特性を発揮するものでありながら、きめ細やかな粉体として得られ、粒子同士の凝集がないため、再び溶媒に分散することも容易である。微細化セルロース1とコア粒子3とは不可分に結合しているため、再分散後も微細化セルロース1の特性に由来した安定した分散を示す。
本実施形態に係る複合粒子5の製造方法は、微細化セルロース1の特性を発揮する粒子を、乾燥状態で流通可能な状態で簡便に取得できる。したがって、環境への負荷が低く、輸送費の削減、腐敗リスクの低減、添加剤としての添加効率の向上、疎水性樹脂への混練効率向上といった効果も期待できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
[実施例1]
(第1工程:微細化セルロース分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpHを10に保ち続けた。セルロースの質量に対して水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水
によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。得られた酸化パルプをpH2に調整した塩化水素水溶液に加え、脱水した後水洗いして1回目の酸処理を行った。続いてpH3に調整した塩化水素水溶液に加え、脱水した後水洗いして2回目の酸処理を行った。その後水洗、脱水を繰り返し、精製した酸化パルプを得た。
(酸化パルプのIR測定)
TEMPO酸化反応後、蒸留水による水洗を実施した後の酸化パルプ(酸処理前)、及びその後塩化水素水溶液により酸処理した後に水洗を実施した酸化パルプ(酸処理後)について、スライドガラスに挟み込み70℃で3時間乾燥し、ATR法によるFT-IR測定(日本分光社製、FT/IR-6300)を実施した。結果を図4に示す。
酸処理後の酸化パルプには、COOH基に由来する1720cm-1付近のピークが認められる一方、酸処理前に認められたCOO-に由来する1600cm-1付近のピークが消失している。以上より、酸処理により酸化パルプのCOO-基(Na型)が完全にCOOH基(H型)に置換されていることが確認された。
(酸化パルプのカルボキシ基量測定)
TEMPO酸化後の酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めたところ、1.6mmol/gであった。
(対イオン置換による有機オニウムカチオン導入)
図2に示すようにアニオン性を有するセルロース原料6に水を加えて固形分濃度5%の懸濁液を調製し、アルカリ種として有機オニウム化合物である水酸化テトラブチルアンモニウム(以下、TBAHとも称する。)を酸化パルプのカルボキシ基に対して1.0当量加えた。スターラーを用いて1時間撹拌し、対イオン置換により有機オニウムカチオンが導入された酸化パルプを得た。
(対イオン置換酸化パルプの解繊処理)
上記方法により得た対イオン置換酸化パルプを蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理した。必要に応じて、遠心脱泡器による脱泡を行った。これにより、濃度1%の微細化セルロース(TEMPO酸化CNF、CSNF)分散液を得た。得られた分散液は高い透明性とチキソトロピック性を示した。
(第2工程:O/W型エマルションを作製する工程)
コア粒子前駆体として、機能性材料であるリモネンを3g、重合性モノマーである単官能性メタクリレート、イソボルニルメタクリレート(以下、「IB-X」とも称する。)7g、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、「ADVN」とも称する。)を0.7g溶解させた。リモネン/IB-X/ADVN混合溶液全量を、濃度1%の微細化セルロース分散液40gに対し添加した。リモネン/IB-X/ADVN混合溶液と分散液とは、それぞれ透明性の高い状態で2相に分離した。
次に、2相分離した状態の混合液における上相の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液は、白濁した乳化液の状態となった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1~数μm程度のエマルション液滴が多数観察され、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
(第3工程:コア粒子前駆体の固体化により微細化セルロースで被覆された複合粒子を得る工程)
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却し、液滴を固体化して、分散液中に複合粒子を生成した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。
得られた分散液を遠心分離(75000g、5分間)して複合粒子を含む沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで繰り返し洗浄した。こうして精製・回収された複合粒子を1%濃度で純水に再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社製)を用いて粒径を測定したところ平均粒径(メジアン値)は2.6μmであった。複合粒子を風乾し、室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、きめ細やかな乾燥粉体となり、凝集や膜状化を生じなかった。第3工程のフローを図3に示した。得られた複合粒子の概略図を図1に示す。
(SEMによる複合粒子の形状観察)
上記乾燥粉体のSEM像を図5および図6に示す。第2工程および第3工程において、O/W型エマルション液滴を鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルション液滴の形状に由来した真球状の複合粒子5が多数得られ、粒径の均一度も高いことが図5からわかる。
図6より、複合粒子の表面は幅数nm程度の微細化セルロース1によってまんべんなく被覆されていることがわかる。図6は、繰り返しろ過洗浄した後の像であることから、本発明の複合粒子5において、コア粒子3と微細化セルロース1とは結合しており、不可分の状態にあることが示された。
(複合粒子の粒度分布)
上記乾燥粉体の粒度分布をベックマン・コールター社製の粒度分布計LS-13320により測定した結果を図9に示す。粒度分布は2.6μmを中央値として1~10μmの範囲にほぼ収まっており、SEM像と良好な一致を示した。
[実施例2]
実施例1において、TBAHの代わりにセチルトリメチルアンモニウム臭化物(以下、CTABと称する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、実施例2に係る複合粒子を作製し、同様に各種評価を実施した。
[実施例3]
コア粒子前駆体としてリモネンを3gとポリマーとしてポリスチレン(以下、PSと称する。)6gをジクロロメタン(沸点:39.6℃)4gに溶解させた。リモネン/PS/ジクロロメタン混合溶液全量を、実施例1にて使用した微細化セルロース分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液に対して実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、ジクロロメタンを揮発させた。8時間処理後に上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、複合粒子を得た。作製した複合粒子を用いて、同様に各種評価を実施した。
[実施例4]
実施例3においてPSの代わりにポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称する。)を、ジクロロメタンの代わりにクロロホルムをそれぞれ用いたこと以外は実施例3と同様の条件で、実施例4に係る複合粒9を作製し、同様に各種評価を実施した。
[実施例5]
コア粒子前駆体としてリモネンを3gポリマーとしてポリヘキサメチレンオキシド(以下、PHMOとも称する。融点:58℃)10gをウォーターバスを用いて80℃に加熱し、融解混合させものを、同様にウォーターバスを用いて80℃に加温した実施例1にて使用した微細化セルロース分散液40gに対し添加した。
次に、上記混合液を、ウォーターバスを用いて80℃に加温したままの状態で、実施例1と同様に周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行い、O/W型エマルション分散液を得た。
次に、O/W型エマルション分散液を、室温まで冷却させた。最後に、上記分散液を実施例1と同様に処理を行い、複合粒子を得た。作製した複合粒子を用いて、同様に各種評価を実施した。
[比較例1]
実施例1において微細化セルロース分散液の代わりに純水を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例1に係る複合粒子の作製を試みた。
[比較例2]
実施例1において微細化セルロース分散液の代わりにポリビニルアルコール(以下、PVAと称する。)8%水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例2に係る複合粒子の作製を試みた。
[比較例3]
実施例1においてTBAHの代わりに水酸化ナトリウムを用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例3に係る複合粒子の作製を試みた。
[比較例4]
実施例1においてTBAHの代わりに水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称する。)を用いたこと以外は実施例1と同様の条件で、比較例4に係る複合粒子の作製を試みた。
[比較例5]
実施例3においてジクロロメタンの代わりにキシレン(沸点:144℃)を用いたこと以外は実施例3と同様の条件で、比較例5に係る複合粒子の作製を試みた。
[比較例6]
実施例5においてPHMOの代わりにポリアクリル酸ブチル(ガラス転移温度:-54℃、融点:48℃)を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、比較例6に係る徐放性複合粒子9の作製を試みた。
[比較例7]
実施例5においてPHMOの代わりにポリカーボネート(以下、PCと称する。ガラス転移温度:150℃、融点:250℃)を用いたこと以外は実施例5と同様の条件で、比較
例7に係る複合粒子の作製を試みた。
以上の実施例および比較例を用いた評価結果については、以下の表1及び表2にまとめて掲載した。
Figure 2023021630000002
なお、表1において、エマルションの安定化剤とは、第2工程においてO/W型エマルションを安定化させるために用いた添加剤のことであって、例えば本実施形態における微細化セルロース1が相当する。
〔評価基準〕
表1において、第2工程の可否については、以下のように判定した。
○:O/W型エマルションの形成が可能
×:O/W型エマルションの形成が不可能
また、第3工程の可否については、以下のように判定した。
○:第3工程のエマルション鋳型とした真球状の粒子が得られた
×:上記粒子は得られなかった
また、複合粒子の収率については、以下のように算出した。
得られた複合粒子の重量(g)/製造に用いたコア粒子前駆体の重量(g)×100
また、複合粒子の平均粒径(メジアン値)については、以下のように測定した。
レーザー回折式粒度分布計(ベックマン・コールター社製、LS-13320)を用いて求めた。粗大化した樹脂の塊が存在する場合は、これを除去して測定した。
また、再分散性に関しては、以下のように判定した。
○:得られた複合粒子が水に、凝集することなく分散した
×:分散せずに凝集した
また、香気性の評価に関しては500ml三角フラスコに徐放性複合粒子1gを入れ、温度25度、湿度50%の雰囲気下で24時間静置させた後、フラスコ内の匂いを嗅ぎ、香気性の評価を行った。
○:フラスコ内から香気を感じることができる
×:フラスコ内から香気を感じることができない
また、表1の比較例中の各セルにおける斜線表記は、各工程実施中に工程の遂行が不可能となり、その後の工程を実施していないことを示している。
表1の実施例1~5の評価結果において明らかなように、微細化セルロース分散液中でコア粒子前駆体が安定性して液滴化し、良好に高収率で、粒子径が小さく均一な複合粒子が形成された。これは、有機オニウム化合物由来の有機オニウムカチオンにより、親水性のCNFの一部が疎水化され、コア粒子前駆体への吸着力が向上したことよると考えられる。
一方、比較例1においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー層とCNF分散液層が2層分離したままの状態となり、O/W型エマルションの作製自体が不可能であった。
また、比較例2においては、第3工程において重合することができ、粉体として回収することができたが、得られた粉体は再分散性、香気性ともに悪かった。
また、比較例3においては、第3工程において重合することができ、粉体として回収することができたが、得られた粉体は収率が低く、粒径も大きく不均一な複合粒子が形成さ
れた。これは、CNFの表面のカルボキシ基の対イオンが有機オニウムではなくナトリウムであり、疎水化されていないため、コア粒子前駆体表面に微細化セルロース繊維が吸着しづらく、コア粒子前駆体が安定しないため、コア粒子前駆体の合一、分離などにより、複合粒子化することができなかったためと考えられる。
また、比較例4においては粉体として回収することができたが、得られた粉体は収率が低く、粒径もやや大きく不均一な複合粒子が形成された。これは、CNFの一部をTMAHにより有機オニウムカチオンで修飾し、疎水化されたが、TMAHでは疎水化する効果が弱く、コア粒子前駆体を安定した状態に保てるほど、吸着できなかったためと考えられる。
また、比較例5においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。しかし、第3工程においてキシレンを除去するにあたり、CNF分散液に水を使用しているためにキシレンの沸点以上にすることができないため、液滴5を固体化することができず、複合粒子4を得ることができなかった。
また、比較例6においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。しかし、第3工程において室温まで冷却してもポリアクリル酸ブチルは凝固することがなく、コア粒子前駆体を固体化することができず、複合粒子を得ることができなかった。
また、比較例7においては、第2工程において微細化セルロース分散液に使用している水の沸点よりも高温にすることができず、PCを融解させることができなかったため、O/W型エマルションの形成することができなかった。
図7および図8に、比較例1に係る複合粒子の乾燥粉体をSEMで観察した写真を示す。比較例3では、粗大化した複合粒子が存在し、粒度分布が均一でないことが図7からわかる。粗大化した複合粒子においては、図8に示すようにコア粒子の表面の多くが露出しており、微細化セルロースはわずかしか被覆していなかった。
本発明の複合粒子は、添加剤としての添加効率、樹脂との混練効率が向上し、また輸送効率向上や腐敗防止の観点や、使用する微細化セルロース繊維を有機オニウムカチオンまたはアンモニウムイオンにより疎水化することで、粒度分布の小さい粒子として、高い収率で製造することができ、生産性の高いことからもコスト削減にも寄与するなど、産業実施の観点から好ましい効果が得られる。また、本複合粒子はコア粒子に機能性材料を添加することで、様々な機能性を持つ複合粒子として、多方面において適用可能な材料として使用することができる。
1 微細化セルロース
2 コア粒子前駆体
3 コア粒子
4 微細化セルロース分散液
5 複合粒子
6 アニオン性を有するセルロース原料
7 有機オニウム化合物/アミン
7a 有機オニウムカチオン/アンモニウムイオン
8 微細化セルロース被覆層

Claims (11)

  1. 少なくとも1種類のポリマーと機能性材料を含むコア粒子と、
    アニオン性官能基を有し、前記コア粒子と不可分に結合して前記コア粒子の表面上に配置された微細化セルロースと、を備え、
    前記微細化セルロースの少なくとも一部に有機オニウムカチオンまたはアミンが結合していることを特徴とする複合粒子。
  2. 前記コア粒子の前駆体の総量に対し、前記複合粒子の総量が0.6より多く、0.99よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の複合粒子。
  3. 前記有機オニウムカチオンが第4級アンモニウムイオンであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の複合粒子。
  4. 前記アミンが第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンのいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の複合粒子。
  5. 前記第4級アンモニウムイオン、またはアミンの窒素原子に結合している炭化水素基または/およびヘテロ原子を含む炭化水素基の少なくとも一つが炭素数を3つ以上含む炭化水素基または/およびヘテロ原子を含む炭化水素基であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の複合粒子。
  6. 溶媒溶解性複合粒子を含む乾燥粉体であって、固形分率が80%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の複合粒子。
  7. 1)第1工程:有機オニウム化合物/アミンを含む溶媒中で、アニオン性を有するセルロース原料を溶媒中で解繊して、有機オニウムカチオン/アンモニウムイオンが結合した微細化セルロースを含む微細化セルロースの分散液を得る工程、
    2)第2工程:前記分散液中において、少なくとも一種類の重合性モノマーまたは/およびポリマーと機能性材料からなる液滴の表面の少なくとも一部を、前記微細化セルロースによる被覆層で覆った状態で、エマルション化させる工程、
    3)第3工程:前記液滴の表面の少なくとも一部を、前記微細化セルロースによる被覆層で覆った状態で、前記液滴を固体化してコア粒子とすることで前記コア粒子と前記微細化セルロースとを不可分の状態にする工程、を順次含むことを特徴とする複合粒子の製造方法。
  8. 前記第2工程における液滴は、重合開始剤と機能性材料を含む重合性モノマーからなる液体からなることを特徴とする請求項7に記載の複合粒子の製造方法。
  9. 前記第2工程における液滴は、機能性材料と常温にて固体であるポリマーを前記分散液に対し相溶性の低い溶媒で溶解した液体であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の複合粒子の製造方法。
  10. 前記第2工程における液滴は、機能性材料を含む常温にて固体であるポリマーが流動性を持つ温度以上に加熱し融解した液体であることを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
  11. 前記第3工程の後に、前記微細化セルロースと結合した前記有機オニウムカチオン/アンモニウムイオンを除去する第4工程をさらに備えることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の複合粒子の製造方法。
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