以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<化学物質吸着性複合粒子5>
まず、本発明の実施形態に係る化学物質吸着性複合粒子5について説明する。図1は、ポリマーを含むコア粒子3の表面に微細化セルロース(以下、セルロースナノファイバー、CNFとも称する)1により構成された被覆層2を有する微細化セルロース被覆粒子であり、被覆層2を構成する微細化セルロースに化学物質吸着材料4が担持された化学物質吸着性複合粒子(複合粒子とも称する)5の概略図である。
化学物質吸着性複合粒子5は、少なくとも一種類以上のポリマーを有するコア粒子3と、コア粒子3の表面を被覆する微細化セルロース1とを有する微細化セルロース被覆粒子である。コア粒子3と微細化セルロース1とが結合して不可分の状態であり、微細化セルロースに少なくとも一種類以上の化学物質吸着材料が担持される。微細化セルロース1は、コア粒子3表面に微細化セルロース1からなる被覆層2を形成することが好ましい。
化学物質吸着性複合粒子5の製造方法としては、化学的調製法や物理化学的調製法を用いることができる。化学的調製法としては、重合性モノマーから、重合過程で粒子形成を行う重合造粒法(乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法、放射線重合法等)が挙げられる。物理化学的調製法としては、微小液滴化したポリマー溶液から粒子形成を行う分散造粒法(スプレードライ法、液中硬化法、溶媒蒸発法、相分離法、溶媒分散冷却法等)が挙げられる。
例えば、微細化セルロースを用いて、液滴内部にコア粒子前駆体を含むO/W型ピッカリングエマルションを形成させ、液滴内部のコア粒子前駆体を固体化さてコア粒子の表面が微細化セルロースで被覆された微細化セルロース被覆粒子を作製することができる。微細化セルロースに化学物質吸着材料を担持させることで、コア粒子と微細化セルロースとが結合して不可分の状態にある微細化セルロース被覆粒子に化学物質吸着材料を担持させた複合粒子を得ることができる。微細化セルロースを用いることで界面活性剤等の添加物を用いることなく、液滴を形成することが可能であり、分散性の高い化学物質吸着性複合粒子を得ることができる。コア粒子前駆体は、固体化してコア粒子を形成するものであればよく、例えば、重合性モノマー、溶融ポリマー、溶解ポリマーが挙げられる。コア粒子前駆体の固体化の方法は特に限定されず、例えば、重合性モノマーを重合する、溶融ポリマーを凝固する、溶解ポリマーから溶媒を除去する、ことにより、コア粒子前駆体を固体化することができる。
図2、図3に本発明の実施形態に係る化学物質吸着性複合粒子5の製造方法の一例を示す。
図2は未担持の微細化セルロース1(1A)に化学物質吸着材料4を担持させた化学物質担持微細化セルロース1(1B)を用いてO/W型ピッカリングエマルションを調製し、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化する、化学物質吸着性複合粒子5の製造方法の一例である。図2に示すように、親水性溶媒7に分散したコア粒子前駆体を含む液滴6の界面にセルロース1(1B)が吸着することによって、O/W型ピッカリングエマルションが安定化し、安定化状態を維持したままエマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化することによって、化学物質吸着材料4を担持した複合粒子5が作製される。
ここで言う「不可分」とは、化学物質吸着性複合粒子5を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで化学物質吸着性複合粒子5を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、コア粒子3と微細化セルロース1とが分離せず、微細化セルロース1によるコア粒子3の被覆状態が保たれることを意味する。被覆状態の確認は走査型電子顕微鏡による化学物質吸着性複合粒子5の表面観察により確認することができる。化学物質吸着性複合粒子5において微細化セルロース1とコア粒子3の結合メカニズムについては定かではないが、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として作製されるため、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体に微細化セルロース1が接触した状態で、コア粒子前駆体を固体化してコア粒子3とするために、物理的に微細化セルロース1がコア粒子3表面に固定化されて、最終的にコア粒子3と微細化セルロース1とが不可分な状態に至ると推察される。ここで、O/W型エマルションは、水中油滴型(Oil-in-Water)とも言われ、水を連続相とし、その中に油が油滴(油粒子)として分散しているものである。
特に限定されないが、分散安定性の観点から、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを鋳型として化学物質吸着性複合粒子5を作製すると、O/W型エマルションが安定化するため、化学物質吸着性複合粒子5の形状はO/W型エマルションに由来した真球状とすることができる。更に詳細には、真球状のコア粒子3の表面に微細化セルロース1からなる被覆層2が比較的均一な厚みで形成された様態となることが好ましい。
化学物質吸着性複合粒子5の粒径は光学顕微鏡観察により確認できる。ランダムに選んだ100個の粒子の直径を測定し、粒子の直径の平均値を取ることで平均粒径を算出できる。平均粒径は特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。
特に限定されないが、微細化セルロース1は、コア粒子3表面に被覆層2を形成することが好ましい。被覆層2はコア粒子3表面の全面を覆うことが好ましいが、必ずしも全面を覆わなくてもよい。
微細化セルロース1で構成される被覆層2の厚みは特に限定されないが、3nm以上1000nm以下であることが好ましい。
被覆層2の平均厚みは複合粒子5を包埋樹脂で固定したものをミクロトームで切削して走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の複合粒子5の断面像における被覆層2の厚みを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出でききる。
また、化学物質吸着性複合粒子5は比較的揃った厚みの被覆層2で均一に被覆されていることが好ましい。被覆層2の厚みが均一であると分散安定性が高い。具体的には上述した被覆層2の厚みの値の変動係数は0.5以下となることが好ましく、0.4以下となることがより好ましい。
なお、本実施形態における微細化セルロース1は、セルロース、セルロース誘導体からなる数平均短軸径が1nm以上5000nm以下のファイバーである。微細化セルロースは、木材等から得られるセルロース原料を極細繊維に粉砕して得ることができ、安全で生分解性を有する。
特に限定されないが、結晶表面にイオン性官能基を有していることが好ましい。イオン性官能基を有することで、化学物質吸着性複合粒子5の凝集を抑制することができ、高い化学物質吸着性を有する。
イオン性官能基の種類は特に限定されないが、アニオン性官能基であることが好ましい。アニオン性官能基を有することで、微細化セルロースと化学物質吸着材料が擬似錯体を形成し、化学物質吸着材料の溶出や脱離を抑制することができる。
アニオン性官能基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基が挙げられる。中でも、カルボキシ基やリン酸基が好ましく、セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
イオン性官能基の含有量は、セルロース1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。0.1mmol未満であると、化学物質吸着性複合粒子5の分散安定性が悪くなることがあり、5.0mmolを超えると化学物質吸着材料4を安定して担持することが難しくなることがある。
さらに、微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であることが好ましい。具体的には、微細化セルロース1は繊維状であって、数平均短軸径が1nm以上1000nm以下、数平均長軸径が50nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であることが好ましい。また、微細化セルロース1の結晶構造は、セルロースI型であることが好ましく、結晶化度は50%以上であることが好ましい。
本発明における標的とする化学物質とは、水中や土中に含まれる化学物質を意味し、例えば、セシウム、トリウム、ストロンチウム、ヨウ素が挙げられ、特に、放射性物質セシウム、放射性トリウム、放射性ストロンチウム、放射性ヨウ素が挙げられる。
また、本発明における吸着剤とは、上記特定の化学物質に対して高い結合力ないし選択性を有し、当該化学物質を吸着・保持することのできる物質を意味し、特に、放射性物質吸着材料であることが好ましい。放射性物質吸着材料としては、例えば、ゼオライト、粘土鉱物、プルシアンブルー、プルシアンブルー類縁体やアルギン酸等が挙げられる。
化学物質吸着材料4の担持とは、化学物質吸着材料4と微細化セルロース1が「不可分」であることを言う。前述のように「不可分」とは、化学物質吸着性複合粒子5を含む分散液を遠心分離処理して上澄みを除去し、さらに溶媒を加えて再分散することで化学物質吸着性複合粒子5を精製・洗浄する操作、あるいはメンブレンフィルターを用いたろ過洗浄によって繰り返し溶媒による洗浄する操作を繰り返した後であっても、微細化セルロース1と化学物質吸着材料4が分離しないことである。
特に限定されないが、微細化セルロース1と化学物質吸着材料4とが擬似錯体を形成することにより、化学物質吸着材料4を担持することができる。微細化セルロース1と化学物質吸着材料4が擬似錯体を形成すると、化学物質吸着材料4の溶出や脱離を抑制することができ、効率よく化学物質を吸着、回収することができる。また、化学物質吸着性複合粒子5は、非常に微細な粒子であるため、非常に表面積が大きく、化学物質吸着効率が高い。
特に限定されないが、微細化セルロース1に対して鉄(III)イオン等の陽イオンを結合させ、微細化セルロース1と陽イオンの疑似錯体を形成させた後、疑似錯体に対してヘキサシアノ鉄(II)酸などの錯イオンを結合させることで形成されることで、例えば、微細化セルロース1とプルシアンブルー類縁体の疑似錯体を形成できる。
また、複数種類の化学物質吸着材料4を組み合わせても良い。例えば、微細化セルロース1、プルシアンブルー類縁体、及びゼオライトからなる疑似錯体や、微細化セルロース1、プルシアンブルー類縁体、及びアルギン酸からなる疑似錯体が挙げられる。
本発明のプルシアンブルー類縁体とは、ヘキサシアノ金属酸イオンを構築素子としたシアノ架橋型金属錯体の一種であり、ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩である。本発明のプルシアンブルー類縁体は、セシウムイオン等の標的とする化学物質を吸着することができればよく、標的とする化学物質と錯体ないし疑似錯体を形成することができる性質を有することが好ましい。特定の配位状態や配位数を持つ錯体ないし疑似錯体には限定されない。
プルシアンブルー類縁体(ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩)における遷移金属としては、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)および亜鉛(Zn)が挙げられる。好ましくは、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)および亜鉛(Zn)、より好ましくは、鉄(Fe)、特に第二鉄(Fe(III))が挙げられる。
プルシアンブルー類縁体(ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩)のヘキサシアノ金属酸を構成する金属は、八面六配位構造をとる金属であることが好ましい。例えば、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)であり、より好ましくは、鉄(Fe)、特に第一鉄(Fe(II))が挙げられる。
本発明のプルシアンブルー類縁体の好適な例として、プルシアンブルーと呼ばれるヘキサシアノ鉄(II)酸の第二鉄(Fe(III))塩を用いることができる。
本発明におけるプルシアンブルー類縁体(ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩)は、特に限定されないが、ヘキサシアノ金属酸の無機塩と、遷移金属元素を含む無機化合物との反応により得ることができる。ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩の一部の金属イオンは、アルカリ金属イオン等で置換されていてもよい。特に限定されないが、プルシアンブルーは、一般にヘキサシアノ鉄(II)酸の無機塩と、第二鉄(III)を含む無機化合物との反応により得られる。
ヘキサシアノ金属酸の無機塩は、特に限定されないが、ヘキサシアノ金属酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)またはその水和物が挙げられる。具体的には、ヘキサシアノクロム(III)酸、ヘキサシアノマンガン(II)酸、ヘキサシアノ鉄(II)酸もしくはヘキサシアノコバルト(III)酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、またはそれらの水和物が挙げられる。特に、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはそれらの水和物を用いることが好ましい。
遷移金属元素を含む無機化合物は、特に限定されないが、遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩またはそれらの水和物などが挙げられる。例えば、塩化第二鉄(III)、塩化コバルト(II)、塩化ニッケル(II)などのハロゲン化物、硝酸第二鉄(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸ニッケル(II)などの硝酸塩、硫酸第二鉄(III)、硫酸コバルト(II)などの硫酸塩、過塩素酸第二鉄(III)などの過塩素酸塩またはそれらの水和物が挙げられる。中でも、塩化第二鉄(III)、硝酸第二鉄(III)、硫酸第二鉄(III)、化塩素酸第二鉄(III)間またはそれらの水和物を用いることが好ましい。
プルシアンブルー類縁体の粒径は特に限定されない。好ましくは平均粒径が1nm以上500nmであり、より好ましくは5nm以上50nm以下である。本発明における複合粒子表面の微細化セルロース100質量部に対するプルシアンブルー類縁体の比率が、0.01質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
微細化セルロース1Aへの化学物質吸着材料4の担持方法は、図2のように、微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持させて化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bを作製した後、化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bを用いてコア粒子前駆体を含む液滴6を有するO/W型ピッカリングエマルションを調製し、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化して化学物質吸着性複合粒子5を作製することができる。あるいは、図3のように、微細化セルロース1Aを用いてコア粒子前駆体を含む液滴6を有するO/W型ピッカリングエマルションを作製し、エマルションの液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化した後、化学物質吸着材料4を微細化セルロース1Aに担持して化学物質吸着性複合粒子5を作製することができる。
微細化セルロース1Aへの化学物質吸着材料4の担持方法は特に限定されない。例えば、市販の或いは予め作製した化学物質吸着材料4を微細化セルロース1Aに付着させてもよい。好適には、微細化セルロース1A存在下で化学物質吸着材料4を作製する方法である。微細化セルロース1A存在下で化学物質吸着材料4を作製することにより、微細化セルロース1に化学物質吸着材料4が安定的に担持される。
コア粒子3は、少なくとも一種類以上のポリマーを含む。ポリマーは、公知のポリマーを用いることができ、重合性モノマーを公知の方法で重合させたポリマーでもよい。
ポリマーは公知のポリマーであり、例えば、アクリル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、アミノ系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン・イソシアネート系ポリマー等が挙げられる。
特に、ポリマーは生分解性ポリマーであることが好ましい。生分解性とは、土壌や海水中などの地球環境において分解して消滅するポリマー、または/および生体内で分解して消滅するポリマーのことである。一般的に、土壌や海水中では微生物がもつ酵素によりポリマーが分解されるのに対し、生体内では酵素を必要とせず物理化学的な加水分解により分解される。ポリマーの分解は、ポリマーが低分子化或いは水溶性化して形態を消失することである。ポリマーの分解は、特に限定されないが、主鎖、側鎖、架橋点の加水分解や、主鎖の酸化分解により起こる。
生分解性ポリマーには、天然由来の天然高分子、或いは合成高分子がある。
天然高分子としては、例えば、植物が生産する多糖(セルロース、デンプン、アルギン酸等)、動物が生産する多糖(キチン、キトサン、ヒアルロン酸等)、タンパク質(コラーゲン、ゼラチン、アルブミン等)、微生物が生産するポリエステル(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))、多糖(ヒアルロン酸等)等が挙げられる。
合成高分子としては、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリオール、ポリカーボネート等が挙げられる。
脂肪酸ポリエステルとしては、例えば、グリコール・ジカルボン酸重縮合系(ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等)、ポリラクチド類(ポリグリコール酸、ポリ乳酸等)、ポリラクトン類(β-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等)、その他(ポリブチレンテレフタレート・アジペート等)が挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
ポリカーボネートとしては、例えば、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。
その他、ポリ酸無水物、ポリシアノアクリレート、ポリオルソエステル、ポリフォスファゼン等も生分解性の合成高分子である。
コア粒子3はポリマー以外に機能性成分等他の成分を含んでも良い。例えば、防カビ剤、香料、肥料(生物肥料、化学肥料、有機肥料等)、pH調整剤、農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤等)、植物活力剤、植物延命剤、害虫及び動物の忌避剤、土壌浸透剤、栄養成分(ミネラル等)、植物ホルモン、無機質粒子(酸化チタン、シリカ、クレー等)、磁性材料、抗菌性物質等が挙げられる。機能性成分は固体、気体、液体のいずれの形態であってもよい。機能性成分の複合粒子5中の含有率は、特に限定されず、化学物質吸着性複合粒子5が安定して形態を保つことができればよい。機能性成分の含有率は、化学物質吸着性複合粒子5を100質量部とすると、機能性成分は0.001質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
中でも、コア粒子3に磁性材料を内包することが好ましい。磁性材料を内包することにより、化学物質吸着性複合粒子5を様々な環境下において、分散、分離、回収、攪拌、混合、流速制御、などの操作を可能とさせることである。特に限定されないが、磁性材料としては、自発磁化を有する強磁性材料を用いることが好ましい。強磁性材料とは、フェロ磁性、フェリ磁性など自発磁化を有する磁性材料である。強磁性材料としては、例えば、金属、合金、金属間化合物、酸化物、金属化合物が挙げられる。また、本発明の複合粒子の使用方法によっては残留磁化の少ない磁性材料が求められ、一般的に軟磁性を示す磁性材料が好適である。強磁性材料をナノオーダーのサイズにした超常磁性材料も好適である。
磁性材料に用いる金属としては遷移金属のFe、Ni、Coが代表的であるが、これらの金属との合金として、Fe-V、Fe-Cr、Fe-Ni、Fe-Co、Ni-Co、Ni-Cu、Ni-Zn、Ni-V、Ni-Cr、Ni-Mn、Co-Cr、Co-Mn、50Ni50Co-V、50Ni50Co-Cr系なども使用できる。これらのうち、飽和磁気モーメントの大きいFeや、Niを含む系が好ましく、Fe-Ni系が特に好ましい。他の金属材料としては、希土類のGdおよびその合金が挙げられる。
金属間化合物としては、ZrFe2、HfFe2、FeBe2の他、ScFe2、YFe2、CeFe2、SnFe2、GdFe2、DyFe2、HoFe2、ErFe2、TmFe2、GdCo2などが挙げられる。また、YCo5、LaCo5、CeCo5、SmCo5、Sm2Co17、Gd2O17、さらに、Ni3Mn、FeCa、FeNi、Ni3Fe、CrPt3、MnPt3、FePd、FePd3、Fe3Pt、FePt、CoPt、CoPt3、Ni3Ptなどが挙げられる。
酸化物としてはスピネル型、ガーネット型、ペロブスカイト型、マグネトプランバイト型などの結晶構造を有する磁性酸化物が使用できる。
スピネル型の例として、MnFe2O4、FeFe2O4、CoFe2O4、NiFe2O4、CuFe2O4、MgFe2O4、ZnFe2O4、Li0.5Fe0.5Fe2O4、FeMn2O4、FeCo2O4、NiCo2O4、γ-Fe2O3、などが挙げられる。γ-Fe2O3は、マグヘマイトと呼ばれる酸化鉄である。これは顔料として知られているα-Fe2O3(べんがら)とは異なり、比較的低密度(約3.6g/cm3)で飽和磁気モーメントの大きい材料として知られており、本発明に用いる磁性材料として特に好ましい。これらはいずれも軟磁性材料として知られているが、それらの中でも特にMn-ZnFe2O4、Ni-ZnFe2O4、すなわちマンガンジンクフェライト、ニッケルジンクフェライト等は残留磁化が少なく、磁性樹脂粒子の磁場による回収・分散操作特性が良好となり好ましい。
ガーネット型酸化物としては、希土類鉄ガーネットが使用できる。Y3Fe5O12、Sm3Fe5O12、Zn3Fe5O12、Gd3Fe5O12、Tb3Fe5O12、Dy3Fe5O12、Ho3Fe5O12、Er3Fe5O12、Tm3Fe5O12、Yb3Fe5O12、Lu3Fe5O12においてフェリ磁性を示すことが知られている。このうち、Y、Sm、Yb、Luなどが飽和磁化が大きい点で好ましい。中でも、Yは密度が低く(5.17g/cm3)特に好ましい。
マグネトプランバイト型の酸化物としては、BaFe12O19、SrFe12O19、CaFe12O19、PbFe12O19、Ag0.5La0.5Fe12O19、Ni0.5La0.5Fe12O19、Mn2BaFe16O27、Fe2BaFe16O27、Ni2BaFe16O27、FeZnBaFe16O27、MnZnBaFe16O27、Co2Ba3Fe24O41、Ni2Ba3Fe24O41、Cu2Ba3Fe24O41、Mg2Ba3Fe24O41、Co1.5Fe0.5Ba3Fe24O41、Mn2Ba2Fe12O22、Co2Ba2Fe12O22、Ni2Ba2Fe12O22、Mg2Ba2Fe12O22、Zn2Ba2Fe12O22、Fe0.5Zn1.5Ba2Fe12O22などが挙げられる。
ペロブスカイト型の酸化物としてはRFeO3(R=希土類イオン)が挙げられる。
金属化合物としては、ホウ化物(Co3B、CoB、Fe3B、MnB、FeBなど)、Al化合物(Fe3Al、Cu2MnAlなど)、炭化物(Fe3C、Fe2C、Mn3ZnC、Co2Mn2Cなど)、珪化物(Fe3Si、Fe5Si3、Co2MnSiなど)、窒化物(Mn4N、Fe4N、Fe8N、Fe3NiN、Fe3PtN、Fe2N0.75、Mn4N0.75C0.25、Mn4N0.5C0.5、Fe3N1-xCxなど)の他、リン化物、ヒ素化合物、Sb化合物、Bi化合物、硫化物、Se化合物、Te化合物、ハロゲン化合物、希土類元素なども使用できる。
一方、超常磁性体としては強磁性材料を数nmから数十nmサイズの粒子として得られるものであればいかなるものも使用できる。特に、マグネタイト等のナノ粒子が好ましい。
磁性材料の平均粒子径は0.001μm以上10μm以下が好ましい。平均粒子径が0.001μmよりも小さい場合、磁性材料を分散安定性が悪く、自己凝集しやすくなり、10μmより大きい場合、複合粒子にした際にうまくコア粒子に内包されなくなってしまう。磁性材料の平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の磁性材料の大きさを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。
<化学物質吸着性複合粒子5の製造方法>
本実施形態の化学物質吸着性複合粒子5の製造方法の一例について説明する。
本発明に係る化学物質吸着性複合粒子5の製造方法の第一態様(I)は、図2に示すように、
セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース1A(未担持)の分散液を得る第1工程と、
微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持させて化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bの分散液を得る第i工程と、
化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bの分散液中においてコア粒子前駆体を含む液滴6の表面を化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bで被覆し、エマルションとして安定化させる第2工程と、
液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化させて、コア粒子3の表面が化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bで被覆された微細化セルロース1B被覆粒子を得る第3工程と、
を具備する。
本発明に係る化学物質吸着性複合粒子5の製造方法の第二態様(II)は、図3に示すように、
セルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース1Aの分散液を得る第1工程と、
微細化セルロース1Aの分散液中においてコア粒子前駆体を含む液滴6の表面を微細化セルロース1Aで被覆し、エマルションとして安定化させる第2工程と、
液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化させてコア粒子3の表面に微細化セルロース1Aが被覆された微細化セルロース1A被覆粒子を得る第3工程と、
微細化セルロース被覆粒子の表面の微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持させる第ii工程と、
を具備する。
上記製造方法により得られた化学物質吸着性複合粒子5は分散体として得られる。さらに溶媒を除去することにより乾燥固形物として得られる。溶媒の除去方法は特に限定されず、例えば遠心分離法やろ過法によって余剰の水分を除去し、さらにオーブンで熱乾燥することで乾燥固形物として得ることができる。この際、得られる乾燥固形物は膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。この理由としては定かではないが、通常微細化セルロース1分散体から溶媒を除去すると、微細化セルロース1同士が強固に凝集、膜化することが知られている。一方、化学物質吸着性複合粒子5を含む分散液の場合、微細化セルロース1が表面に固定化された真球状の化学物質吸着性複合粒子5であるため、溶媒を除去しても微細化セルロース1同士が凝集することなく、化学物質吸着性複合粒子5間の点と点で接するのみであるため、その乾燥固形物は肌理細やかな粉体として得られると考えられる。また、化学物質吸着性複合粒子5同士の凝集がないため、乾燥粉体として得られた化学物質吸着性複合粒子5を再び溶媒に再分散することも容易であり、再分散後も化学物質吸着性複合粒子5の表面の微細化セルロース1に由来した分散安定性を示すため、優れた化学物質吸着性を有し、化学物質を容易に回収し、化学物質吸着性複合粒子5を繰り返し使用することが可能となる。
なお、化学物質吸着性複合粒子5の乾燥粉体は溶媒をほとんど含まず、さらに溶媒に再分散可能であることを特長とする乾燥固形物であり、具体的には固形分率を80%以上とすることができ、さらに90%以上とすることができ、さらに95%以上とすることができる。溶媒をほぼ除去することができるため、輸送費の削減、腐敗防止、添加率向上、樹脂との混練効率向上、といった観点から好ましい効果を得る。なお、乾燥処理により固形分率を80%以上にした際、微細化セルロース1は吸湿しやすいため、空気中の水分を吸着して固形分率が経時的に低下する可能性がある。しかしながら、化学物質吸着性複合粒子5は乾燥粉体として容易に得られ、さらに再分散させ得ることが特長である本発明の技術思想を考慮すると、化学物質吸着性複合粒子5を含む乾燥粉体の固形分率を80%以上とする工程を含む乾燥固形物であれば、本発明の技術的範囲に含まれると定義する。
以下に、各工程について、詳細に説明する。
(第1工程)
第1工程はセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース1(1A)の分散液を得る工程である。まず、各種セルロース原料を溶媒中に分散し、懸濁液とする。懸濁液中のセルロース原料の濃度としては0.1%以上10%未満が好ましい。0.1%未満であると、溶媒過多となり生産性を損なうため好ましくない。10%以上になると、セルロース原料の解繊に伴い懸濁液が急激に増粘し、均一な解繊処理が困難となるため好ましくない。
懸濁液作製に用いる溶媒としては、親水性溶媒7を用いることが好ましい。親水性溶媒7については特に制限はないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、或いはこれらの混合物が好ましい。好適には、水を50%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50%以下になると、後述するセルロース原料を溶媒中で解繊して微細化セルロース分散液を得る工程において、微細化セルロース1の分散が阻害される。また、水以外に含まれる溶媒としては前述の親水性溶媒が好ましい。
必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース1の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
続いて、懸濁液に物理的解繊処理を施して、セルロース原料を微細化する。物理的解繊処理の方法としては特に限定されないが、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、親水性溶媒7を溶媒としたセルロース原料の懸濁液中のセルロースが微細化され、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースの分散液を得ることができる。また、このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られる微細化セルロース1の数平均短軸径および数平均長軸径を調整することができる。
上記のようにして、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースの分散体(微細化セルロース分散液)が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、後述するO/W型エマルションの安定化剤として用いることができる。
また、微細化セルロース1の分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。上記他の成分としては、特に限定されず、化学物質吸着性複合粒子5の用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、配向促進剤、可塑剤、架橋剤、磁性体、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物等が挙げられる。
通常、微細化セルロース1は、ミクロフィブリル構造由来の繊維形状であるため、本実施形態の製造方法に用いる微細化セルロース1としては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。すなわち、微細化セルロース1の形状としては、繊維状であることが好ましい。また、繊維状の微細化セルロース1は、短軸径において数平均短軸径が1nm以上1000nm以下であればよく、好ましくは2nm以上500nm以下であればよい。ここで、数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース1繊維構造をとることができず、エマルションの安定化と、エマルションを鋳型としたコア粒子前駆体の固体化による化学物質吸着性複合粒子5の形成が難しくなる。一方、1000nmを超えると、エマルションを安定化させるにはサイズが大きくなり過ぎるため、得られる複合粒子5のサイズや形状を制御することが困難となる。また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは数平均短軸径の5倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍未満であると、化学物質吸着性複合粒子5のサイズや形状を十分に制御することができないために好ましくない。
なお、微細化セルロース1の数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、微細化セルロース1の数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
微細化セルロース1の原料として用いることができるセルロースの種類や結晶構造も特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。さらには、セルロースII型結晶からなるレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースも用いることができる。材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
さらに微細化セルロース原料は化学改質されていることが好ましい。より具体的には、微細化セルロース原料の結晶表面にイオン性官能基が導入されていることが好ましい。セルロース結晶表面にイオン性官能基が導入されていることによって浸透圧効果でセルロース結晶間に溶媒が浸入しやすくなり、セルロース原料の微細化が進行しやすくなるためである。
セルロースの結晶表面に導入されるイオン性官能基の種類は特に限定されないが、アニオン性官能基であることが好ましい。アニオン性官能基を有することで、微細化セルロースと化学物質吸着材料が擬似錯体を形成し、化学物質吸着材料の溶出や脱離を抑制することができる。アニオン性官能基の種類や導入方法は特に限定されないが、カルボキシ基やリン酸基が好ましい。セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
セルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行ってもよい。また、オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入してもよい。さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷低減のためにはN-オキシル化合物を用いた酸化がより好ましい。
ここで、N-オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高いTEMPOが好ましい。N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01質量%以上5.0質量%以下である。
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えば木材系天然セルロースを水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。上記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~200質量%程度である。
また、N-オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。このような化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1~50質量%程度である。
酸化反応の反応温度は、4℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上70℃以下がより好ましい。4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。80℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化して高結晶性の剛直な微細化セルロース1繊維構造が崩壊し、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
また、酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分以上5時間以下である。
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9以上11以下が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9以上11以下に保つことが好ましい。反応系のpHを9以上11以下に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
N-オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。 添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N-オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。
得られたTEMPO酸化セルロースに対し解繊処理を行うと、3nmの均一な繊維幅を有するTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TEMPO酸化CNF、セルロースシングルナノファイバー、CSNFともいう)が得られる。CSNFを複合粒子5の微細化セルロース1の原料として用いると、その均一な構造に由来して、得られるO/W型エマルションの粒径も均一になりやすい。
以上のように、本実施形態で用いられるCSNFは、セルロース原料を酸化する工程と、微細化して分散液化する工程と、によって得ることができる。また、CSNFに導入するカルボキシ基の含有量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、5.0mmol/gを超えると化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直な微細化セルロース1繊維構造をとることができず、O/W型エマルションの安定化剤として用いることができない。
(第i工程)
第i工程は、微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持させて化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bの分散液を得る工程である。
微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持する方法は、公知の方法を用いることができるが、好適には、微細化セルロース1Aの分散液に、遷移金属元素を含む無機化合物を有する溶液を添加、攪拌して遷移金属元素と微細化セルロース1Aの混合液を調製する。遷移金属元素と微細化セルロース1Aの混合液に、ヘキサシアノ金属酸の無機塩を添加して攪拌し、ヘキサシアノ金属酸の無機塩と遷移金属元素を含む無機化合物とを反応させることにより化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bを得ることができる。ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩の一部の金属イオンは、アルカリ金属イオン等で置換されていてもよい。
例えば、プルシアンブルーは、一般にヘキサシアノ鉄(II)酸の無機塩と、第二鉄(III)を含む無機化合物との反応により得られる。
また、市販、或いは予め作製した化学物質吸着材料4と微細化セルロース1Aの分散液とを混合することにより、微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持してもよい。
ヘキサシアノ金属酸の無機塩は、特に限定されないが、ヘキサシアノ金属酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)またはその水和物が挙げられる。具体的には、ヘキサシアノクロム(III)酸、ヘキサシアノマンガン(II)酸、ヘキサシアノ鉄(II)酸もしくはヘキサシアノコバルト(III)酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、またはそれらの水和物が挙げられる。特に、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムまたはそれらの水和物を用いることが好ましい。
遷移金属元素を含む無機化合物は、特に限定されないが、遷移金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩またはそれらの水和物などが挙げられる。例えば、塩化第二鉄(III)、塩化コバルト(II)、塩化ニッケル(II)などのハロゲン化物、硝酸第二鉄(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸ニッケル(II)などの硝酸塩、硫酸第二鉄(III)、硫酸コバルト(II)などの硫酸塩、過塩素酸第二鉄(III)などの過塩素酸塩またはそれらの水和物が挙げられる。中でも、塩化第二鉄(III)、硝酸第二鉄(III)、硫酸第二鉄(III)、化塩素酸第二鉄(III)間またはそれらの水和物を用いることが好ましい。
化学物質吸着材料4を担持する際の微細化セルロース1Aの濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。微細化セルロース1Aの濃度が0.1%未満であると、化学物質吸着材料を効率よく担持させることが難しい。微細化セルロース1Bの濃度が10質量%を超えると、微細化セルロース1Aの粘度が非常に高く、十分に攪拌できずに均一な反応が難しくなる。
微細化セルロース1Aの分散液の溶媒は特に限定されないが、親水性溶媒7であることが好ましい。
親水性溶媒7は、特に制限はないが、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。特に、水を50質量%以上含むことが好ましい。懸濁液中の水の割合が50質量%未満になると、微細化セルロース1の分散性が悪くなることがある。また、水以外に含まれる溶媒としては前述の親水性溶媒が好ましい。
必要に応じて、セルロースや生成する微細化セルロース1の分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
遷移金属元素を含む無機化合物の濃度は、特に限定されないが、微細化セルロース1のイオン性官能基に対して遷移金属元素が等量以下であることが好ましい。微細化セルロースのイオン性官能基に対して遷移金属元素が等量を超えると、微細化セルロース1の電気的反発力が失われ、微細化セルロース1の分散性が悪くなることがある。ヘキサシアノ金属酸の無機塩の濃度は0.001mM以上10mM以下であることが好ましく、より好ましくは0.01mM以上0.5M以下である。
ヘキサシアノ金属酸の無機塩と遷移金属元素を含む無機化合物とを反応させる際の反応温度及び時間は特に限定されないが、4℃以上50℃以下である。また、反応時間は1分以上48時間時間、好ましくは5分以上24時間以下、より好ましくは10分以上10時間以下である。
(第2工程)
第2工程は、微細化セルロース1(1Aまたは1B)分散液中においてコア粒子前駆体を含む液滴6の表面を微細化セルロース1(1Aまたは1B)で被覆し、エマルションとして安定化させる工程である。
具体的には、製造方法Iでは、第i工程で得られた化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bに、製造方法IIでは第1工程で得られた微細化セルロース分散液1Aに、コア粒子前駆体含有液を添加し、微細化セルロース1の分散液中に液滴6として分散させ、液滴6の表面を微細化セルロース1によって被覆し、微細化セルロース1によって安定化されたO/W型エマルションを作製する工程である。
O/W型エマルションを作製する方法としては特に限定されないが、一般的な乳化処理、例えば各種ホモジナイザー処理や機械攪拌処理を用いることができ、具体的には高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、万能ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突、ペイントシェイカーなどの機械的処理が挙げられる。また、複数の機械的処理を組み合わせて用いてもよい。
例えば超音波ホモジナイザーを用いる場合、微細化セルロース1の分散液に対しコア粒子前駆体含有液を添加して混合溶媒とし、混合溶媒に超音波ホモジナイザーの先端を挿入して超音波処理を実施する。超音波ホモジナイザーの処理条件としては特に限定されないが、例えば周波数は20kHz以上が一般的であり、出力は10W/cm2以上が一般的である。処理時間についても特に限定されないが、通常10秒から1時間程度である。
上記超音波処理により、微細化セルロース1の分散液中にコア粒子前駆体を含む液滴6が分散してエマルション化が進行し、さらに液滴6と微細化セルロース分散液の液/液界面に選択的に微細化セルロース1が吸着することで、液滴6が微細化セルロース1で被覆されO/W型エマルションとして安定した構造を形成する。このように、液/液界面に固体物が吸着して安定化したエマルションは、学術的には「ピッカリングエマルション」と呼称されている。前述のように微細化セルロース1によってピッカリングエマルションが形成されるメカニズムは定かではないが、セルロースはその分子構造において水酸基に由来する親水性サイトと炭化水素基に由来する疎水性サイトとを有することから両親媒性を示すため、両親媒性に由来して疎水性モノマーと親水性溶媒の液/液界面に吸着すると考えられる。
O/W型エマルション構造は、光学顕微鏡観察により確認することができる。O/W型エマルションの粒径は特に限定されないが、平均粒径が0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。平均粒径は、ランダムに100個のエマルションの直径を測定し、平均値を取ることで算出できる。
O/W型エマルション構造において、液滴6の表層に形成された被覆層2(微細化セルロース層)の厚みは特に限定されないが、3nm以上1000nm以下であることが好ましい。特に限定されないが、エマルション構造における粒径が第3工程において得られる複合粒子5の粒径と同程度となる。被覆層2の厚みは、例えばクライオTEMを用いて計測することができる。
第2工程において用いることができる微細化セルロース分散液とコア粒子前駆体の重量比については特に限定されないが、微細化セルロース1が100質量部に対し、重合性モノマーが1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。重合性モノマーが1質量部以下となると複合粒子5の収量が低下するため好ましくなく、50質量部を超えると液滴6を微細化セルロース1で均一に被覆することが困難となり好ましくない。
コア粒子前駆体含有液は、コア粒子前駆体を含有し、O/W型エマルションを形成することができればよく、O/W型エマルションを安定的に形成するためには、疎水性であることが好ましい。また、コア粒子前駆体は、化学的な変化或いは物理化学的な変化により固体化してコア粒子3を形成する前駆体である。コア粒子前駆体は、特に限定されないが、液滴6を安定して形成できるものであれば特に限定されない。コア粒子前駆体としては、例えば、重合性モノマー(モノマー)、溶融ポリマー、溶解ポリマーを用いることができる。
第2工程で用いることができる重合性モノマーの種類としては、ポリマーの単量体であって、その構造中に重合性の官能基を有し、常温で液体であって、水と相溶せず、重合反応によってポリマー(高分子重合体)を形成できるものであれば特に限定されない。重合性モノマーは少なくとも一つの重合性官能基を有する。重合性官能基を一つ有する重合性モノマーは単官能モノマーとも称する。また、重合性官能基を二つ以上有する重合性モノマーは多官能モノマーとも称する。重合性モノマーの種類としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマーなどが挙げられる。また、エポキシ基やオキセタン構造などの環状エーテル構造を有する重合性モノマー(例えばε-カプロラクトン等)を用いることも可能である。
なお、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を含むこと示す。
単官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
単官能のビニル系モノマーとしては例えば、ビニルエーテル系、ビニルエステル系、芳香族ビニル系、特にスチレンおよびスチレン系モノマーなど、常温で水と相溶しない液体が好ましい。
単官能ビニル系モノマーのうち(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、単官能芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソブチルトルエン、tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
多官能のビニル系モノマーとしてはジビニルベンゼンなどの不飽和結合を有する多官能基が挙げられる。常温で水と相溶しない液体が好ましい。
例えば多官能性ビニル系モノマーとしては、具体的には、(1)ジビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン等のジビニル類、(2)エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート類、(3)トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート類、(4)エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ジプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ジブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキシレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート類、(5)トリメチロールプロパントリアクリレート、トリエチロールエタントリアクリレート等のトリアクリレート類、(6)テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート類、(7)その他に、例えばテトラメチレンビス(エチルフマレート)、ヘキサメチレンビス(アクリルアミド)、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。
例えば官能性スチレン系モノマーとしては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン等が挙げられる。
また、これらの他にも重合性の官能基を少なくとも1つ以上有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができ、特にその材料を限定しない。
上記重合性モノマーは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、重合性モノマーに重合開始剤を添加してもよい。一般的な重合開始剤としては有機過酸化物やアゾ重合開始剤などのラジカル開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばパーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシカーボネート、パーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ重合開始剤としては、例えばADVN,AIBNが挙げられる。
例えば2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
第2工程において、重合性モノマー及び重合開始剤を含んだコア粒子前駆体含有液を用いれば、後述の第3工程でO/W型エマルションの液滴6中に重合開始剤が含まれるため、後述の第4工程においてエマルションの液滴6内部のモノマーを重合させる際に重合反応が進行しやすくなる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと重合開始剤の重量比については特に限定されないが、通常、重合性モノマー100質量部に対し、重合性開始剤が0.1質量部以上であることが好ましい。重合性モノマーが0.1質量部未満となると重合反応が充分に進行せずに化学物質吸着性複合粒子5の収量が低下するため好ましくない。
コア粒子前駆体含有液は、溶媒を含んでも構わない。特に限定されないが、第2工程にてエマルションを安定化させるためには、有機溶媒を用いることが好ましい。例えば、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソホロン、セロソルブアセテート、イソホロン、ソルベッソ100、トリクレン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、イソオクタン、ノナン等を用いることができる。
第2工程において用いることができる重合性モノマーと溶媒の重量比については特に限定されないが、重合性モノマー100質量部に対し、溶媒が80質量部以下であることが好ましい。
溶解ポリマーを得るためのポリマーは、安定したエマルションを形成することができるものであればよい。特に限定されないが、親水性溶媒7に溶解しにくいことが好ましい。ポリマーが親水性溶媒7に溶解すると、安定したエマルションを形成することができない。
溶解ポリマーを得るためのポリマーとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテート誘導体、キチン、キトサン等の多糖類、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ポリエステルポリカーボネート類、ロジン等の天然樹脂等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
ポリマーが溶解する溶媒に溶解させることで溶解ポリマーを得ることができる。ポリマーを溶解させる溶媒としては、微細化セルロース1の分散液への相溶性が低い溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒7への溶解度が高い場合、溶媒が液滴6相から親水性溶媒7相へ容易に溶解してしまうため、エマルション化が困難となる。また、溶媒は沸点が90℃以下が好ましい。沸点が90℃より高い場合、溶媒よりも先に微細化セルロース1の分散液の親水性溶媒7が蒸発してしまい化学物質吸着性複合粒子5を得ること困難となる。用いることができる溶媒として、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、イソホロン、セロソルブアセテート、イソホロン、ソルベッソ100、トリクレン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、イソオクタン、ノナン等を用いることができる。
溶解させるポリマーと溶媒の重量比については、特に限定されず、ポリマーを溶解することができればよい。好ましくは、ポリマー100質量部に対し、溶媒の重量は0.005質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上80質量部以下であることが好ましい。
溶融ポリマーとしては、微細化セルロース1の親水性溶媒7への溶解性が低いものが好ましい。親水性溶媒7への溶解度が高い場合、溶融ポリマー液滴6の相から親水性溶媒7の相へポリマーが容易に溶解してしまうため、エマルション化が困難となる。また、溶融ポリマーの融点は90℃以下が好ましい。融点が90℃より高い場合、微細化セルロース1の分散液4中の水が蒸発してしまい、エマルション化が困難となる。
溶融ポリマーに用いるポリマーとしては、具体的には、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ステアリルステアレート、ステアリン酸バチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ジステアリン酸エチレングリコール、ベヘニルアルコール、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、炭化水素ワックス、脂肪酸アルキルエステル、ポリオール脂肪酸エステル、脂肪酸エステルとワックスの混合物、脂肪酸エステルの混合物、グリセリンモノパルミテート(/ステアリン酸モノグリセライド)、グリセリンモノ・ジステアレート(/グリセリンステアレート)、グリセリンモノアセトモノステアレート(/グリセリン脂肪酸エステル)、コハク酸脂肪族モノグリセライド(/グリセリン脂肪酸エステル)、クエン酸飽和脂肪族モノグリセライド、ソルビタンモノステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタントリベヘネート、プロピレングリコールモノベヘネート(/プロピレングリコール脂肪酸エステル)、アジピン酸ペンタエリスリトールポリマーのステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ステアリルシトレート、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、超淡色ロジン、ロジン含有ジオール、超淡色ロジン金属塩、水素化石油樹脂、ロジンエステル、水素化ロジンエステル、特殊ロジンエステル、ノボラック、結晶性ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレンエーテル、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリ乳酸類;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル類、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリカプロラクトン類、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートとヒドロキシカルボン酸との共重合体等のポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ酪酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体等の脂肪族ポリエステル類、ポリアミノ酸類、ポリエステルポリカーボネート類、ロジン等の天然樹脂等を用いることができる。
溶融ポリマーを用いてO/W型エマルションを得る方法としては、例えば常温で固体のポリマーを溶融させて液体とし、溶融ポリマーを前述のように超音波ホモジナイザー等による機械処理を加えながら、ポリマーの溶融状態を維持可能な温度にまで加熱された微細化セルロース1の分散液に添加することによって、分散液中で溶融ポリマー液滴をO/W型エマルションとして安定化することが好ましい。
また、液滴6には予め重合開始剤以外の機能性成分が含まれていてもよい。具体的には磁性材料、医薬品、農薬、香料、接着剤、酵素、顔料、染料、消臭剤、金属、金属酸化物、無機酸化物、等が挙げられる。重合性モノマーに、予め重合開始剤以外の他の機能性成分が含まれている場合、化学物質吸着性複合粒子5として形成した際のコア粒子3内部に上述の機能性成分を含有させることができ、利用方法に応じた機能発現が可能となる。
機能性成分は、液滴6へ溶解または分散しやすく、親水性溶媒7に溶解または分散しにくいことが好ましい。液滴6に溶解或いは分散することにより、後述の第3工程でO/W型エマルションを形成した際にエマルションの液滴6中に機能性成分を内包しやすく、機能性成分を内包する化学物質吸着性複合粒子5を効率的に得ることができる。また、内包する機能性成分の量を増やすことが可能である。
中でも、磁性材料を内包することが好ましい。磁性材料を内包することにより、複合粒子5を様々な環境下において、分散、分離、回収、攪拌、混合、流速制御、などの操作を可能とさせることである。前述のように、磁性材料としては、自発磁化を有する強磁性材料を用いることが好ましい。強磁性材料とは、フェロ磁性、フェリ磁性など自発磁化を有する磁性材料である。強磁性材料としては、例えば、金属、合金、金属間化合物、酸化物、金属化合物が挙げられる。また、本発明の複合粒子の使用方法によっては残留磁化の少ない磁性材料が求められ、一般的に軟磁性を示す磁性材料が好適である。強磁性材料をナノオーダーのサイズにした超常磁性材料も好適である。
磁性材料は、液滴6内部のコア粒子前駆体との親和性、分散性との観点から表面が疎水化されたものが好ましい。磁性材料の表面の疎水化処理方法としては、磁性材料と極めて親和性の高い部分と疎水性の部分とを分子内に有する化合物を磁性材料に接触させて結合させる方法を挙げることができる。このような親和性の高い部分と疎水性の部分とを分子内に有する化合物としては、シランカップリング剤に代表されるシラン化合物を挙げることができる。
シランカップリング剤に代表されるシラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランなどがある。
これらのシラン化合物を磁性材料に結合させる方法としては、例えば、磁性材料と、シラン化合物とを水などの無機媒質またはアルコール、エーテル、ケトン、エステルなどの有機媒質中で混合し、撹拌しながら加熱した後、磁性材料をデカンテーションなどにより分離して減圧乾燥により無機媒質または有機媒質を除去する手段を挙げることができる。また、磁性材料とシラン化合物とを直接混合し加熱させて両者を結合させてもよい。これらの手段において、加熱温度は通常30~100℃であり、加熱温度は0.5~2時間程度である。
上記の様に磁性材料表面に疎水化処理を行うことで、磁性材料内包複合粒子を作製した際に、磁性材料がコア粒子および微細化セルロースに内包されやすくなる。磁性材料がコア粒子および微細化セルロースに内包されることで、磁性材料を外部から保護することができ、磁性材料の劣化を防ぐことができる。
前述のように、磁性材料の平均粒子径は0.001μm以上、10μm以下が好ましい。平均粒子径が0.001μmよりも小さい場合、磁性材料を分散安定性が悪く、自己凝集しやすくなり、10μmより大きい場合、複合粒子にした際にうまくコア粒子に内包されなくなってしまう。磁性材料の平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察を行い、画像中の磁性材料の大きさを画像上で100箇所ランダムに測定し、平均値を取ることで算出できる。
さらに、コア粒子前駆体として、重合性モノマーおよび溶解ポリマー、溶融ポリマーを併用して液滴6を形成し、エマルション化することも可能である。また、化学物質吸着性複合粒子5のコア粒子3のポリマー種として生分解性ポリマー(樹脂)を選択した場合、得られる化学物質吸着性複合粒子5は生分解性ポリマーからなるコア粒子3および微細化セルロース1で構成されることにより、生分解性材料を有する環境調和性の高い化学物質吸着性複合粒子5として提供することも可能である。
(第3工程)
第3工程は、液滴6内部のコア粒子前駆体を固体化させてコア粒子3の表面に微細化セルロース(1Aまたは1B)が被覆された微細化セルロース被覆粒子を得る工程である。
コア粒子前駆体を固体化させる方法については特に限定されない。コア粒子前駆体として重合性モノマーを用いた場合、重合性モノマーを重合することによりポリマー化することで、固体化できる。コア粒子前駆体として溶解ポリマーを用いた場合、液滴6内部の溶媒を親水性溶媒7に拡散させる方法や、溶媒を蒸発させる方法により溶媒を除去し、ポリマーを固体化できる。コア粒子前駆体として溶融ポリマーを用いた場合、溶融ポリマーを冷却して凝固させて固体化させることができる。
例えば第2工程で作製された、コア粒子前駆体として重合性モノマー、更に重合開始剤を含む液滴6が微細化セルロース1によって被覆され安定化したO/W型エマルションを、攪拌しながら加熱して重合性モノマーを重合し、コア粒子前駆体を固体化する。攪拌の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、具体的にはディスパーや攪拌子を用いることができる。また、攪拌せずに加熱処理のみでもよい。また、加熱時の温度条件については重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、20度以上150度以下が好ましい。20度未満であると重合の反応速度が低下するため好ましくなく、150度を超えると微細化セルロース1が変性する可能性があるため好ましくない。重合反応に供する時間は重合性モノマーの種類および重合開始剤の種類によって適宜設定することが可能であるが、通常1時間~24時間程度である。また、重合反応は電磁波の一種である紫外線照射処理によって実施してもよい。また、電磁波以外にも電子線などの粒子線を用いても良い。
溶解ポリマーの溶媒を蒸発させる方法としては、具体的には、加熱または/および減圧乾燥により溶媒を蒸発させ、除去する。有機溶媒の沸点が水より低いと、有機溶媒を選択的に除去することが可能である。特に限定されないが、減圧条件下で加熱することにより効率的に溶媒を除去することができる。加熱温度は20℃以上100℃以下であることが好ましく、圧力は600mHg以上750mmHg以下であることが好ましい。
溶解ポリマーの溶媒を拡散させる方法は、具体的にはO/W型エマルション液に更に溶媒や塩の添加により液滴6内部の溶媒を拡散させる。親水性溶媒7への溶解性の低い溶媒が経時的に親水性溶媒7相へと拡散して行くことで、溶解ポリマーが析出してコア粒子3として固体化させることができる。
溶融ポリマーを凝固させる方法としては、O/W型エマルション液を冷却することで、溶融ポリマーを凝固させる。
上述の工程を経て、コア粒子3が微細化セルロース1によって被覆された微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を作製することができる。なお、微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)生成直後の状態は、微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)の分散液中に多量の水と被覆層2の形成に寄与していない遊離した微細化セルロース1が混在した状態となっている。そのため、微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を回収・精製する必要があり、回収・精製方法としては、遠心分離による洗浄またはろ過洗浄が好ましい。また、残留溶媒を除去してもよい。
遠心分離による洗浄方法としては公知の方法を用いることができ、具体的には遠心分離によって微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を沈降させて上澄みを除去し、水・メタノール混合溶媒に再分散する操作を繰り返し、最終的に遠心分離によって得られた沈降物から残留溶媒を除去して微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を回収することができる。ろ過洗浄についても公知の方法を用いることができ、例えば孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて水とメタノールで吸引ろ過を繰り返し、最終的にメンブレンフィルター上に残留したペーストからさらに残留溶媒を除去して微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を回収することができる。
残留溶媒の除去方法は特に限定されず、風乾やオーブンで熱乾燥にて実施することが可能である。こうして得られた微細化セルロース1A被覆粒子または微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を含む乾燥固形物は上述のように膜状や凝集体状にはならず、肌理細やかな粉体として得られる。
(第ii工程)
第ii工程は、微細化セルロース1A被覆粒子の表面の微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持させる工程である。
具体的には、微細化セルロース1A被覆粒子の乾燥粉体を溶媒に分散させた分散液中で、遷移金属元素を含む無機化合物を有する溶液を添加、攪拌して遷移金属元素と微細化セルロース1A被覆粒子の混合液を調製する。遷移金属元素と微細化セルロース1A被覆粒子の混合液に、ヘキサシアノ金属酸の無機塩を添加して攪拌し、ヘキサシアノ金属酸の無機塩と遷移金属元素を含む無機化合物とを反応させることにより化学物質吸着材料担持微細化セルロース1B被覆粒子(化学物質吸着性複合粒子5)を得ることができる。ヘキサシアノ金属酸の遷移金属塩の一部の金属イオンは、アルカリ金属イオン等で置換されていてもよい。
例えば、プルシアンブルーは、一般にヘキサシアノ鉄(II)酸の無機塩と、第二鉄(III)を含む無機化合物との反応により得られる。また、市販、或いは予め作製した化学物質吸着材料4と微細化セルロース1A被覆粒子の分散液とを混合することにより、微細化セルロース1Aに化学物質吸着材料4を担持してもよい。
ヘキサシアノ金属酸の無機塩や遷移金属元素を含む無機化合物は、第i工程と同じものを用いることができる。
化学物質吸着材料4を担持する際の微細化セルロース1A被覆粒子の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。微細化セルロース1A被覆粒子の濃度が0.1%未満であると、化学物質吸着材料4を効率よく担持させることが難しい。微細化セルロース1A被覆粒子の濃度が10質量%を超えると、微細化セルロース1A被覆粒子の分散性が悪くなり、均一な反応が難しくなる。
微細化セルロース1A被覆粒子の分散液の溶媒、遷移金属元素を含む無機化合物の濃度及びヘキサシアノ金属酸の無機塩の濃度、反応温度、反応時間も第i工程と同じ濃度を適用することができる。
本発明の化学物質吸着性複合粒子5を基材に吸着、或いは分散させて使用することができる。化学物質吸着性複合粒子5の表面に微細化セルロース1を有しているため、その特性を利用して用意に基材に固定化できる。基材としては、特に限定されないが、樹脂等の多孔体や、紙、不織不等の繊維シートを用いることができる。
(化学物質吸着性複合粒子5の効果)
本発明の化学物質吸着性複合粒子5の一態様によれば、簡便な手法で化学物質吸着材料4を担持し、脱離や溶解を抑制することができ、化学物質吸着材料4が複合粒子5表面に存在するため、化学物質吸着材料4の凝集が抑制されるため、化学物質の吸着効果が高く、長期間使用可能な化学物質吸着性複合粒子5を提供できる。
また、本発明の一態様に係る化学物質吸着性複合粒子5は、カラムとして使用できる。化学物質吸着性複合粒子5が磁性材料を内包することにより、磁石を利用して容易に回収可能な化学物質吸着性複合粒子を提供することができる。更に、化学物質吸着性複合粒子5を含有する多孔体や繊維シートを提供することができる。
更に、セルロースナノファイバーは生分解性ポリマーであるセルロースから構成され、コア粒子3に含まれるポリマーに生分解性ポリマーを使用することにより、環境への負荷を低減できる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。例えば、コア粒子3にはポリマー及び機能性成分の他にその他成分を含んでも構わない。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
<実施例1>
(第1工程:微細化セルロース分散液を得る工程)
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウムの添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプ(酸化セルロース)を得た。
(酸化セルロースのカルボキシ基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプおよび再酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。
(酸化セルロースの解繊処理)
上記TEMPO酸化で得た酸化セルロース0.5gを99.5gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、濃度0.5%の微細化セルロース水分散液を得た。
(微細化セルロース1の評価)
得られた酸化セルロース、微細化セルロースについて、カルボキシ基量、結晶化度、長軸の数平均軸径、光線透過率およびレオロジーの測定や算出を次のように行った。得られた微細化セルロースの評価結果を表1、図4、図5に示す。
(カルボキシ基量の測定)
分散処理前の酸化セルロースについて、カルボキシ基量を以下の方法にて算出した。
酸化セルロースの乾燥重量換算0.2gをビーカーに採り、イオン交換水80mLを添加した。
そこに、0.01mol/L塩化ナトリウム水溶液5mLを加え、攪拌しながら、0.1mol/L塩酸を加えて、全体がpH2.8となるように調整した。
そこに、自動滴定装置(商品名:AUT-701、東亜ディーケーケー社製)を用いて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.05mL/30秒で注入し、30秒毎の電導度とpH値を測定し、pH11まで測定を続けた。
得られた電導度曲線から、水酸化ナトリウムの滴定量を求め、カルボキシ基の含有量を算出した。
(結晶化度の算出)
TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
TEMPO酸化セルロースについて、試料水平型多目的X線回折装置(商品名:UltimaIII、Rigaku社製)を用い、X線出力:(40kv、40mA)の条件で、5°≦2θ≦35°の範囲でX線回折パターンを測定した。得られるX線回折パターンはセルロースI型結晶構造に由来するものであるため、下記の式(1)を用い、以下に示す手法により、TEMPO酸化セルロースの結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=〔(I22.6-I18.5)/I22.6〕×100・・・(1)
ただし、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。
(微細化セルロース1の長軸の数平均軸径の算出)
原子間力顕微鏡を用いて、微細化セルロース1の長軸の数平均軸径を算出した。
まず、微細化セルロース水分散液を0.001%となるように希釈した後、マイカ板上に20μLずつキャストして風乾した。
乾燥後に原子間力顕微鏡(商品名:AFM5400L、日立ハイテクノロジーズ社製)を用い、DFMモードで微細化セルロースの形状を観察した。
微細化セルロースの長軸の数平均軸径は、原子間力顕微鏡による観察画像から100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求めた。
(微細化セルロース1水分散液の光線透過率の測定)
微細化セルロース0.5質量%の水分散液について、光線透過率を測定した。
石英製のサンプルセルの一方にはリファレンスとして水を入れ、もう一方には気泡が混入しないように微細化セルロース水分散液を入れ、光路長1cmにおける波長220nmから800nmまでの光線透過率を分光光度計(商品名:NRS-1000、日本分光社製)にて測定した。
(レオロジー測定)
微細化セルロース0.5質量%の分散液のレオロジーをレオメーター(商品名:AR2000ex、ティー・エイ・インスツルメント社製)傾斜角1°のコーンプレートにて測定した。
測定部を25℃に温調し、せん断速度を0.01s-1から1000s-1について連続的にせん断粘度を測定した。その結果を図5に示す。図5から明らかなように、微細化セルロース分散液はチキソトロピック性を示した。せん断速度が10s-1と100s-1のときのせん断粘度を表1に示す。
実施例1で得られた微細化セルロースの水分散液の分光透過スペクトル測定結果を図4に示す。図4から明らかなように、微細化セルロース1水分散液は高い透明性を示した。また、微細化セルロース水分散液に含まれる微細化セルロース1(TEMPO酸化CNF)の数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は831nmであった。さらに、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行った結果を図5に示す。図5から明らかなように、微細化セルロース分散液はチキソトロピック性を示した。
(第i工程:化学物質吸着材料担持工程)
微細化セルロース1Aの0.5質量%の分散液100mlに、10mM塩化鉄(III)10mlを添加して塩化鉄(III)と微細化セルロース1Aの混合液を調製した。10mMのヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム10mlを塩化鉄(III)と微細化セルロース混合液に添加して攪拌して混合液を調製した。次に、この混合液に10mMに調製した炭酸水素ナトリウム10mlを添加して攪拌を行い、中性に調整し、化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bを得た。
(第2工程:O/W型エマルションを作製する工程)
次に、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)10gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させた。
重合性モノマー混合液全量を、微細化セルロース1B濃度0.5%の微細化セルロース分散液40gに対し添加したところ、重合性モノマー混合液と微細化セルロース分散液はそれぞれ2相に分離した。
次に、上記2相分離した状態の混合液における上相の液面から超音波ホモジナイザーのシャフトを挿入し、周波数24kHz、出力400Wの条件で、超音波ホモジナイザー処理を3分間行った。超音波ホモジナイザー処理後の混合液の外観は白濁した乳化液の様態であった。混合液一滴をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで封入して光学顕微鏡で観察したところ、1~数μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
(第3工程:コア粒子前駆体を固体化する工程)
O/W型エマルション分散液を、ウォーターバスを用いて70℃の湯浴中に供し、攪拌子で攪拌しながら8時間処理し、重合反応を実施した。8時間処理後に上記分散液を室温まで冷却した。重合反応の前後で分散液の外観に変化はなかった。
(洗浄)
得られた分散液に対し、遠心力75,000gで5分間処理したところ、沈降物を得た。デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで交互に2回ずつ洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価した。次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25度にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、肌理細やかな乾燥粉体(化学物質吸着性複合粒子5)を得た。
(走査型電子顕微鏡による形状観察)
得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した。O/W型エマルションを鋳型として重合反応を実施したことにより、エマルションの液滴6の形状に由来した、真球状の化学物質吸着性複合粒子5が無数に形成していることが確認され、さらに、その表面は幅数nmの微細化セルロース1によって均一に被覆されていることが確認された。
樹脂に乾燥粉体を包埋し、ミクロトームにより断面を切削して走査型電子顕微鏡にて観察を行ったところ、コア粒子3の表面に均一な被覆層2が形成されていることが確認された。
ろ過洗浄によって繰り返し洗浄したにも拘らず、化学物質吸着性複合粒子5の表面は等しく均一に微細化セルロース1によって被覆されていることから、コア粒子3と微細化セルロース1は結合しており、不可分の状態にあることが示された。
更に、ろ過洗浄により繰り返し洗浄したのにも関わらず、乾燥粉体はプルシアンブルーに由来する青色を示し、電子顕微鏡観察により、化学物質吸着性複合粒子5の微細化セルロース1には、プルシアンブルーの微細粒子が担持されていることが確認された。このことから、微細化セルロース1とプルシアンブルーが不可分であり、微細化セルロース1に化学物質吸着材料4であるプルシアンブルーが担持された化学物質吸着性複合粒子5を得られたことが示唆された。
(分散性の評価)
化学物質吸着性複合粒子5の乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、攪拌子で24時間攪拌して再分散させたところ、容易に再分散し、目視で凝集も見られなかった。また、粒度分布計を用いて粒径を評価したところ、平均粒径は乾燥前と同程度であり、粒度分布計のデータにおいても凝集を示すようなシグナルは存在しなかった。以上のことから、複合粒子5はその表面がCNFで被覆されているにもかかわらず、乾燥によって膜化することなく粉体として得られ、かつ再分散性も良好であることが示された。
<実施例2>
実施例1の第2工程において、重合性モノマーであるジビニルベンゼン(以下、DVBとも称する。)10gに対し、重合開始剤である2、2-アゾビス-2、4-ジメチルバレロニトリル(以下、ADVNとも称する。)を1g溶解させ、さらに酸化鉄粒子(粒子径30nm、疎水化処理)を1g添加して混合したこと以外は、実施例1と同様の条件で化学物質吸着性複合粒子5を作製した。
<実施例3>
実施例1においてDVBの代わりにヘキサンジオールジアクリレート(商品名A-HD-N、新中村化学工業、以下、A-HD-Nとも称する。)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で化学物質吸着性複合粒子5を作製した。
<実施例4>
実施例1において、TEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた特許文献3に従いカルボキシメチル化(以下、CM化とも称する。)処理を行って得られたCM化CNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で化学物質吸着性複合粒子5を作製した。
<実施例5>
実施例1において、TEMPO酸化の代わりに、先行技術文献として挙げた非特許文献1に従いリン酸エステル化処理を行って得られたリン酸エステル化CNF分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で化学物質吸着性複合粒子5を作製した。
<実施例6>
(第1工程:微細化セルロース分散液を得る工程)
実施例1と同様の条件で微細化セルロース分散液を得た。
(第i工程:化学物質吸着材料担持工程)
実施例1と同様の条件で化学物質吸着材料担持微細化セルロース分散液を得た。
(第2工程:O/W型エマルションを作製する工程)
次に、ポリ乳酸(PLA)10gを100gのジクロロエタンに溶解、混合し、溶解ポリマーを調製した。
溶解ポリマー全量を、微細化セルロース1濃度0.5%の微細化セルロース分散液500gに対し添加したところ、溶解ポリマーと微細化セルロース分散液はそれぞれ2相に分離した。
次に、上記2相分離した状態の混合液における上層の液面から超音波ホモジナイザーを用いて実施例1の第2工程と同様に超音ホモジナイザー処理した。光学顕微鏡にて1~数十μm程度のエマルション液滴が無数に生成し、O/W型エマルションとして分散安定化している様子が確認された。
(第3工程:コア粒子前駆体を固体化する工程)
O/W型エマルション液を700mgHgの減圧条件下で40℃で3時間減圧乾燥してジクロロエタンを完全に揮発させた。ジクロロエタンの揮発前後で分散液の外観に変化はなかった。
得られた分散液を実施例1と同様の条件で分離・精製したところ、1~数十μm程度の粒子径の化学物質吸着性複合粒子5を得られた。実施例1と同様の条件で回収物を乾燥したところ、肌理細やかな乾燥粉体を得た。
<実施例7>
実施例6において、第1工程と同様の条件で微細化セルロース1を調製し、第2工程にて、ポリ-ε-カプロラクトン(PCL、和光純薬製)10gを200gの酢酸エチルに溶解して溶解ポリマーを調製した以外は第2工程と同様にO/W型エマルション液を調製後、第3工程にてO/W型エマルション液を700mgHgの減圧条件下で40℃で5時間減圧乾燥し、酢酸エチルを完全に揮発させた。それ以外は実施例6と同様の条件で複合粒子5を得た。
<実施例8>
実施例1において、第1工程の後に第i工程を行わずに第2工程、第3工程、洗浄および乾燥工程を行った後に、以下の第ii工程を行い、以下の条件で洗浄した。それ以外は実施例1と同様の条件で化学物質吸着性複合粒子5を得た。
(第ii工程:化学物質吸着材料担持工程)
洗浄および乾燥工程で得られた微細化セルロース1A被覆粒子を純水に分散させ、1.0質量%の微細化セルロース1A被覆粒子の分散液100mlを得た。この微細化セルロース1A被覆粒子の分散液に、10mM塩化鉄(III)10mlを添加して塩化鉄(III)と微細化セルロースの混合液を調製した。10mMのヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム10mlを塩化鉄(III)と微細化セルロース混合液に添加して攪拌して混合液を調製した。次に、この混合液に10mMに調製した炭酸水素ナトリウム10mlを添加して攪拌を行い、中性に調整した。
(洗浄および乾燥工程)
孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水を用いて4回洗浄した。こうして得られた精製・回収物を1%濃度で再分散させ、粒度分布計(NANOTRAC UPA-EX150、日機装株式会社)を用いて粒径を評価した。
次に精製・回収物を風乾し、さらに室温25℃にて真空乾燥処理を24時間実施したところ、球状銀微粒子に由来する黄色を呈する肌理細やかな乾燥粉体(パーソナルケア用粒子1)を得た。
<比較例1>
実施例1において、工程2及び工程3を行わなかった以外は実施例1と同様に実施した。
<比較例2>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりに純水を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子の作製を試みた。
<比較例3>
実施例1において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で複合粒子の作製を試みた。
<比較例4>
実施例6において、第1工程において、微細化セルロース分散液の代わりにポリビニルアルコール(PVA)を8質量部、ラウリン酸ポリグリセリル-10(PGLE ML10)0.5質量部を純水500gに溶かした水溶液を用い、第2工程は実施例6と同様の条件でO/W型エマルション液を調製した。第3工程においては、得られたO/W型エマルション液をスプレードライヤー装置を用いて乾燥温度100℃で噴霧乾燥し、粒子を作製した。
<比較例5>
比較例4において、ラウリン酸ポリグリセリル-10(PGLE ML10)を添加しなかった以外は比較例4と同様の条件で粒子の作製を試みた。
<比較例6>
実施例8において、TEMPO酸化CNF分散液の代わりにカルボキシメチルセルロース(以下、CMCとも称する。)水溶液を用いたこと以外は、実施例8と同様の条件で粒子の作製を試みた。
<評価方法>
(化学物質吸着性複合粒子5作製可否評価)
化学物質吸着性複合粒子5の形成可否は、走査型電子顕微鏡による形状観察により判断した。得られた乾燥粉体を走査型電子顕微鏡にて観察した。
○:真球状の粒子が得られ、表面に微細化セルロース1が被覆されており、微細化セルロース1に化学物質吸着材料4が担持されていた。
×:上記粒子は得られなかった。
として判定した。
(洗浄可否評価)
第3工程或いは第ii工程にて得られた分散液に対し、遠心力75,000gで5分間処理し、デカンテーションにより上澄みを除去して沈降物を回収し、さらに孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いて、純水とメタノールで交互に2回ずつ洗浄した。
○:遠心分離により沈殿物を回収し、メンブレンフィルター上に試料を回収できた。
×:遠心分離により沈殿物を回収できなかった。または、メンブレンフィルター上に試料を回収できなかった
として判定した。
(分散性の評価)
乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、攪拌子で24時間攪拌して分散させ、目視で凝集があるか確認した。
〇:目視で凝集物が確認されなかった。
×:目視で凝集物が確認された。
として判定した。
(化学物質吸着材料の安定性の評価)
得られた乾燥粉体1.0gを100mLの純水に添加してマグネチックスターラーで24時間攪拌した。粉体をろ過洗浄し、溶液を分光光度計でFe-Fe間電荷移動吸収に由来するプルシアンブルーのピークを示す、680nmの透過率を確認した。
〇:680nmにおける透過率が90%以上である。
△:680nmにおける透過率が50%以上90%未満である。
×:680nmにおける透過率が50%未満である。
として判定した。
(化学物質吸着性の評価)
乾燥粉体1.0gを100mLの純水に添加して分散させた後、10ppmのセシウム溶液50mLを添加して24時間攪拌した。粉体を孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いてろ過洗浄し、残りの溶液のセシウム濃度を測定した。ICP-MS(誘導結合プラズマ発光質量分析:セイコーインスツルメンツ社製)で測定し、セシウムの除去率を算出した。
〇:セシウムの除去率が40%以上であった。
△:セシウムの除去率が30%以上40%未満であった。
×:セシウムの除去率が30%未満である。
として判定した。
(磁気応答性の評価)
乾燥粉体を1%の濃度で純水に添加し、超音波照射により再分散させた分散液の入った容器の外部から永久磁石を近づけ、12時間静置させた。
〇:12時間以内に磁石に引き寄せられ、試料を分離できた。
×:12時間以内に試料を分離できなかった。
として判定した。
以上の実施例および比較例を用いた評価結果については、以下の表2にまとめて掲載した。表2におけるエマルション安定化剤は微細化セルロース1または微細化セルロース1の代わりに用いたエマルション安定化剤である。コア粒子3についてはポリマー、コア粒子3に内包した機能性成分を示した。図2に示した作製方法Iまたは図3に示した作製方法IIを用いて化学物質吸着性複合粒子5の作製を行った。
表2に示す比較例の各セルにおける「-」の表記は、実施していない、或いは評価の遂行が不可能であったことを示している。
表2の実施例1から実施例8の評価結果において明らかなように、微細化セルロース1の種類(TEMPO酸化CNF、CM化CNF、リン酸エステル化CNF)によらず、各種モノマーの重合物や生分解性ポリマーを含むコア粒子3とする複合粒子5を作製可能であることが確認された。また、実施例1及び実施例8に示すように、作製方法I及び作製方法IIにおいて化学物質吸着材料4を担持した化学物質吸着性複合粒子5を作製できた。
実施例1から実施例8で得られた化学物質吸着性複合粒子5は、ろ過洗浄が可能であり、乾燥後も再分散性が良好であった。更に、化学物質吸着材料4の安定性が高く、化学物質吸着性も高かった。
表2には記載していないが、実施例2において、磁気応答性を評価した結果、12時間以内に永久磁石により試料が引き寄せられ、分離をすることができ、磁気応答性の評価は「〇」であった。
一方、比較例1においては化学物質吸着材料4を微細化セルロース1に担持して化学物質吸着材料担持微細化セルロース1Bを作製した。比較例1においては洗浄が不可能であったため、分散安定性及び化学物質吸着材料4の安定性、化学物質吸着性の評価ができなかった。
比較例2及び比較例5においては、第2工程の遂行が不可能であった。具体的には、超音波ホモジナイザー処理を実施してもモノマー相或いは溶解ポリマー相と微細化セルロース分散液相が2相分離したままの状態やエマルションの安定性が低く、すぐに崩壊してしまい、安定したO/W型エマルションの作製自体が不可能であった。
また、比較例3、比較例4及び比較例6においては、第2工程におけるO/W型エマルションの形成は可能であった。これはCMCや、PVA/PGLE ML10が微細化セルロースと同様に両親媒性を示したため、エマルションの安定化剤として機能したと考えられる。しかしながら、続く第3工程において重合性モノマーの重合、或いは溶解ポリマーからの溶媒の除去によりコア粒子前駆体の固体化を実施すると、エマルションが崩壊してしまい、O/W型エマルションを鋳型とした複合粒子を得ることができなかった。この理由としては定かではないが、CMCやPVA/PGLE ML10は水溶性であるため、コア粒子前駆体の固体化中にエマルション形状を維持するためには脆弱である可能性が高く、そのためコア粒子前駆体の固体化中にエマルションが崩壊したと考えられる。
比較例2から比較例6において、ろ過洗浄を行うと、試料を回収することが可能であった。分散安定性を評価すると、比較例2から比較例6の全てで、目視で凝集物が確認された。化学物質吸着材料4の安定性及び化学物質吸着性を評価した結果、比較例2においては化学物質吸着材料の溶出が顕著であり、安定性が良好でなく、化学物質吸着性も低かった。比較例3から比較例6においては、比較例2に比べて化学物質吸着材料の溶出量が少ないことが示唆されたが、実施例1から実施例8と比較すると溶出量が多いことが示唆された。また、比較例3から比較例6において化学物質吸着性を評価した結果、比較例2に対して化学物質吸着性が高かったが、実施例1から実施例8と比較すると化学物質吸着性が低かった。
本発明の化学物質吸着性複合粒子5は、簡便な手法で化学物質吸着材料4を担持し、脱離や溶解を抑制することができ、化学物質吸着材料4が微細化セルロース1により、微細な粒子表面に安定して担持されるため、表面積が大きくなり、化学物質の吸着効果が高く、長期間使用可能な、放射性物質等の化学物質吸着性複合粒子5を提供できる。これにより、汚染水や汚染土壌等、環境中の放射性物質等の化学物質を除去することができる。
また、ろ過洗浄が可能であるため、化学物質を容易に回収することができ、磁性材料を内包することにより、磁石を利用して化学物質を回収することが可能である。更に、化学物質吸着性複合粒子5を含有する多孔体や繊維シートを提供することができる。
更に、セルロースナノファイバーは生分解性ポリマーであるセルロースから構成され、コア粒子に含まれるポリマーに生分解性ポリマーを使用することにより、環境への負荷を低減できる。