JP6098382B2 - 正極活物質及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、正極活物質及びリチウムイオン二次電池に関する。
従来、リチウムイオン二次電池の正極材料の活物質としてLiCoOやLiNi1/3Mn1/3Co1/3等の層状化合物やLiMn等のスピネル化合物が用いられてきた。近年では、LiFePOに代表されるオリビン型構造の化合物が注目されている。オリビン構造を有する正極材料は高温での熱安定性が高く、安全性が高いことが知られている。しかし、LiFePOを用いたリチウムイオン二次電池は、その充放電電圧が3.5V程度と低く、エネルギー密度が低くなるという欠点を有する。そのため、高い充放電電圧を実現し得るリン酸系正極材料として、LiCoPOやLiNiPO等が提案されている。しかし、これらの正極材料を用いたリチウムイオン二次電池においても、十分な容量が得られていないのが現状である。リン酸系正極材料の中でも4V級の充放電電圧を実現し得る化合物として、LiVOPOが知られている。しかし、LiVOPOを用いたリチウムイオン二次電池においても、十分な放電容量と高いレート放電特性を確保できていない(特許文献1)。
特許4314859号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池の放電容量及びレート放電特性に優れた正極活物質及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る正極活物質は、化学式LiVOPOで表される化合物であって、ラマンスペクトルにおいて、885cm−1〜892cm−1の範囲内に、ピークを有することを特徴とする。
上記本発明に係る正極活物質を含む正極を用いることにより、従来のLiVOPOを用いた場合に比べて、リチウムイオン二次電池を高容量で、かつレート放電特性に優れたものとすることができる。
上記特徴を備える本発明の正極活物質を用いると充放電に伴うLiの脱離・挿入がスムーズに行われ,高い放電容量及び優れたレート放電特性を備えることができる。
本発明によれば、放電容量及びレート放電特性に優れた正極活物質、及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る正極活物質を含む正極活物質層を備えるリチウムイオン二次電池の模式断面図である。 実施例1、2及び比較例1の正極活物質のラマンスペクトルである。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
〈正極活物質〉
本実施形態の正極活物質は、化学式LiVOPOで表される化合物であって、ラマンスペクトルにおいて、885cm−1〜892cm−1の範囲内に、ピークを有することを特徴とする。なお、885cm−1〜892cm−1の範囲内にピークを有するという事は、ラマンスペクトルにおいてベースラインを引いたときに、そのベースラインに対して凸状のスペクトルが上記範囲内に含まれることを意味し、ピークを示す最高強度のラマンシフト位置が上記範囲内に含まれることを意味する。
上記正極活物質を用いると、以下の理由により、高い放電容量と優れたレート放電特性を備えたリチウムイオン二次電池が得られるものと推察される。
885cm−1〜892cm−1の範囲内に出現するピークは、V=O結合に由来すると推察され、上記範囲内にピークを有すると、V=O結合の結合エネルギーが強くなり、LiVOPOの構造安定性が増すものと推測される。その結果,充放電に伴うLiの脱離・挿入が容易となり,高い放電容量と優れたレート放電特性が得られたものと考えられる。一方、本正極活物質のV=O結合に由来するピークの位置が885cm−1未満を示すとV=O結合の結合エネルギーが弱くなり、LiVOPOの構造が歪んでしまうと推測される。そのため充放電に伴うLiの脱離・挿入時に歪んだ構造が障害となって、その移動を抑制してしまうと考えられる。また、本正極活物質ではV=O結合に由来するピークの位置は892cm−1よりも大きくならない。892cm−1よりも大きくなるとV=O結合エネルギーが強くなりすぎて,β型LiVOPOの構造を維持できなくなると推測される。
本発明におけるラマンスペクトルはホリバ・ジョバンイボン社製アルゴンレーザーラマン装置を使用し、波長514.532nmのアルゴンイオンレーザーを用いて測定した。
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、以下の水熱合成工程及び熱処理工程を備える。
〈水熱合成工程〉
水熱合成工程では、まず、内部を加熱、加圧する機能を有する反応容器、例えばオートクレーブ等の中に、リチウム源、リン酸源、バナジウム源、水、及び還元剤を投入して、これらが分散した混合物を調製する。なお、混合物を調製する際は、例えば、最初に、リン酸源、バナジウム源、水及び還元剤を混合したものを還流した後、これにリチウム源を加えてもよい。この還流により、リン酸源及びバナジウム源の複合体を形成することができる。
リチウム源としては、例えば、LiNO、LiCO、LiOH、LiCl、LiPO、LiSO及びCHCOOLiからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
リン酸源としては、例えば、HPO、NHPO、(NHHPO及びLiPOからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
バナジウム源としては、例えば、V及びNHVOからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
なお、二種以上のリチウム源、二種以上のリン酸源又は二種以上のバナジウム源を併用してもよい。
還元剤としては、例えば、ヒドラジン(NHNH・HO)及び過酸化水素(H)のいずれかまたはこれらを混合したものを用いることができる。還元剤としては、特に、ヒドラジンを用いることが好ましい。ヒドラジンを用いた場合、他の還元剤を用いた場合に比べて、電池の放電容量及びレート放電特性が顕著に向上する傾向がある。
水熱合成工程では、密閉した反応器内の混合物を加圧しながら加熱することにより、混合物中で水熱反応を進行させる。これにより、本実施形態における正極活物質である斜方晶LiVOPOが水熱合成される。なお、混合物を加圧しながら加熱する時間は、混合物の量に応じて適宜調整すればよい。
このように水熱合成工程では、混合物を、加圧下で、好ましくは140〜220℃に加熱する。比較的低温で水熱合成反応することで最終的に得られる斜方晶のLiVOPOのV=O結合を強くすることができる。220℃より高い温度で反応すると前駆体の形態が変化してしまうためか、最終的に得られるLiVOPOのV=O結合が弱くなってしまう。また、140℃より低い温度で反応すると前駆体の形成が不十分で最終的な容量特性が低下してしまう。もちろんV=O結合は水熱条件のみによるものではなく、後述する熱処理条件、粉砕条件によっても変化しうる。
水熱合成工程において混合物に加える圧力は、0.2〜0.9MPaとすることが好ましい。混合物に加える圧力が低過ぎると、最終的に得られるLiVOPOの結晶性が低下し、その容量密度が減少する傾向がある。混合物に加える圧力が高過ぎると、反応容器に高い耐圧性が求められ、正極活物質の製造コストが増大する傾向がある。混合物に加える圧力を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
〈熱処理工程〉
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、水熱合成工程後に混合物を更に加熱する熱処理工程を備える必要がある。熱処理工程によって、水熱合成工程で反応しなかったリチウム源、リン酸源及びバナジウム源の反応を進行させたり、水熱合成工程で生成したLiVOPOの結晶性を向上したりすることができる。
熱処理工程では、混合物を400〜700℃の熱処理温度で加熱することが好ましい。熱処理温度が低過ぎる場合、LiVOPOは十分な結晶性が得られず、その容量密度の向上度が小さくなる傾向がある。熱処理温度が高過ぎる場合、LiVOPOが粒成長し、粒径が増加しすぎる傾向がある。その結果、正極活物質におけるリチウムの拡散が遅くなり、正極活物質の容量密度の向上度が小さくなる傾向がある。熱処理温度を上記の範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
混合物の熱処理時間は、3〜10時間であればよい。また、混合物の熱処理雰囲気は、酸素を含む雰囲気であればよいが、少なすぎると一部にα型のLiVOPOを形成するため放電容量が低下し、また多すぎると粒成長するためレート放電特性が悪化してしまう。具体的には酸素の量は窒素やアルゴンなどの不活性ガスに対して10体積%以上、65体積%以下であることが望ましい。また、混合ガスの流量は毎分0.05L以上、0.3L以内に調整することが望ましい。上記ガス雰囲気や流量は結晶化の際にVとOの配列のし方に影響を及ぼすため、ラマンスペクトルにおけるV=O結合の強さにも大きく影響する。
〈粉砕工程〉
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、熱処理後のLiVOPOを粉砕する粉砕工程を備える必要がある。粉砕処理によって、比較的大きい粒子であった熱処理後のLiVOPOを所望の粒径まで微細化することができ、放電容量やレート放電特性を向上させることができる。LiVOPOの平均一次粒子径としては0.1μm〜0.3μmの範囲が好ましい。
所望の粒子径及び形状を有する活物質の粉体を得るためには、以下のような粉砕機が用いられる。例えばビーズミル、振動ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミル等が用いられる。また、粉砕時には、水又はヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。
上記粉砕機の内、メディアを使用したものについてはその材質や径についても注意する必要がある。メディアの材質としてはAlやSiCなどの材料で比較的比重が軽いものや、メディア径3mmφ以下のものが望ましい。より好ましくはメディア材質がSiCでメディア径3mmφ以下のものである。比重の重い材質や3mmφよりも大きいメディアを使用すると粉砕時の活物質へのダメージが大きく、V=O結合を弱める恐れがある。また、粉砕機の機種によってもV=O結合への影響は異なる物と推察され、例えば、ポットミル、遊星ボールミル、機械衝撃式粉砕機等は大きな負荷がかかるため、活物質へのダメージが大きく、V=O結合を弱める恐れがある。
上述したように水熱合成条件、熱処理条件及び粉砕条件を適宜調整することでLiVOPOのV=O結合ピークの位置を制御することが可能となり、これにより所望の放電容量やレート特性を得ることができる。特に水熱合成時の温度や粉砕方式,粉砕強さはV=O結合のピーク位置に大きく寄与し、それを調整する上で重要なファクターである。
〈リチウムイオン二次電池〉
続いて、本実施形態に係る電極、及びリチウムイオン二次電池について図1を参照して簡単に説明する。
リチウムイオン二次電池100は、主として、発電要素30、発電要素30を密閉した状態で収容するケース50、及び発電要素30に接続された一対のリード60,62を備えている。
発電要素30は、一対の電極10、20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、正極集電体12上に正極活物質層14が設けられた物である。負極20は、負極集電体22上に負極活物質層24が設けられた物である。正極活物質層14及び負極活物質層24がセパレータ18の両側にそれぞれ接触している。正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に電解質溶液が含有されている。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部はケース50の外部にまで延びている。
〈正極〉
正極10の正極集電体12としては、例えば、アルミニウム箔等を使用できる。
正極活物質層14は、上述の正極活物質、バインダー、及び、必要に応じて添加される導電材を含む層である。必要に応じて添加される導電材としては、例えば、カーボンブラック類、炭素材料、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
バインダーは、上記の正極活物質と導電材とを集電体に結着することができれば特に限定されず、公知の結着剤を使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン―ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。
このような正極は、公知の方法、例えば、前述の正極活物質を含む電極活物質、又は正極活物質、バインダー、及び導電材を、それらの種類に応じた溶媒、例えばPVDFの場合はN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒に添加したスラリーを、正極集電体12の表面に塗布し、乾燥させることにより製造できる。
〈負極〉
負極20の負極集電体22としては、銅箔等を使用できる。
負極活物質層24としては、負極活物質、導電材、及び、バインダーを含むものを使用できる。導電材としては特に限定されず、公知の導電材を使用できる。例えば、カーボンブラック類、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属粉、炭素材料及び金属粉の混合物、ITOのような導電性酸化物が挙げられる。負極に用いられるバインダーとしては、公知の結着剤を特に制限なく使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、LiTi12等を含む粒子が挙げられる。
負極20の製造方法は、正極10の製造方法と同様にスラリーを調整して集電体に塗布すればよい。
〈電解質溶液〉
電解質溶液は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質溶液としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解質溶液を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液であることが好ましい。電解質溶液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCF、CFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)、LiBOB等の塩が使用できる。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
なお、本実施形態において、電解質溶液の例を挙げて説明したが、ゲル化剤を添加されたゲル状電解質を用いてもよい。また、電解質溶液に代えて、固体電解質を用いることもできる。
〈セパレータ〉
セパレータ18は、電気絶縁性の多孔質構造から形成されていればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
〈ケース〉
ケース50は、その内部に発電要素30及び電解質溶液を密封するものである。ケース50は、電解質溶液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミニウム箔を、合成樹脂膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましい。
リード60,62は、アルミニウム等の導電材料から形成されている。
本発明の正極活物質は、リチウムイオン二次電池以外の電気化学素子の電極材料としても用いることができる。このような、電気化学素子としては、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等の電気化学キャパシタ等が挙げられる。これらの電気化学素子は、自走式のマイクロマシン、ICカード等の電源や、プリント基板上又はプリント基板内に配置される分散電源の用途に使用することが可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
〈水熱合成工程〉
500mlのマイヤーフラスコに、23.06g(0.20mol)のHPO(ナカライテスク社製、純度85%)、及び、160gの蒸留水(ナカライテスク社製、HPLC用)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌した。続いて、18.38g(0.10mol)のV(ナカライテスク社製、純度99%)を加え、2.5時間攪拌を続けた。次に、1.28g(0.025mol)のNHNH・HOを滴下し、1時間の攪拌を続けた。その後、8.48g(0.20mol)のLiOH・HO(ナカライテスク社製、純度99%)を10分かけて加えた。得られたペースト状の物質を0.5Lオートクレーブのガラス製の円筒容器内に移し、容器を密閉し、16時間、160℃で保持し、水熱合成を行った。
放冷後、8時間後に物質を取り出した。得られた物質を、スポイト除去及び分液漏斗を使用し、スラリーとデカリンに分離した。分離したスラリーを、オーブンを用いて90℃で30時間熱処理した後、粉砕することにより、35.58gの粉体を得た。
〈熱処理工程〉
水熱合成工程で得られた前駆体をアルミナ坩堝に入れ、空気雰囲気中で550℃、4時間熱処理した。
〈粉砕工程〉
粉砕は乾式のビーズミルを用いることによって行った。メディアの材質はSiCであり、径は3mmφのものを用いた。メディアを撹拌するアジテーターの回転速度は3m/secとした。
〈ラマンスペクトルの測定〉
実施例1のラマンスペクトルをホリバ・ジョバンイボン社製アルゴンレーザーラマン装置を使用し、波長514.532nmのアルゴンイオンレーザーを用いて測定した。結果を表1及び図2に示す。
(正極の作製)
実施例1の正極活物質と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)とアセチレンブラックを混合したものを、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。なお、スラリーにおいて正極活物質とアセチレンブラックとPVDFとの重量比が84:8:8となるように、スラリーを調製した。このスラリーを正極集電体であるアルミニウム箔上に塗布し、乾燥させた後、圧延を行い、実施例1の正極活物質を含む活物質層が形成された正極を得た。
(負極の作製)
実施例1の活物質の代わりに黒鉛を用い、導電助剤としてカーボンブラックだけを用いたこと以外は、正極用塗料と同様の方法で、負極用スラリーを調製した。このスラリーを負極集電体である銅箔上に塗布し、乾燥させた後、圧延を行い、負極活物質を含む活物質層が形成された負極を得た。
(評価用セルの作製)
上述したとおり準備した正極、及び負極と、ポリエチレン多孔膜からなるセパレータとを所定の寸法に切断し、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順序で、負極4層、正極3層となるよう積層した。この積層体を、アルミラミネートパックに入れ、電解質溶液として1MのLiPF溶液を注入した後、真空シールし、実施例1の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例2)
粉砕工程のメディア径を2mmφに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。実施例2の正極活物質のラマンスペクトルを図2に示す。
(実施例3)
粉砕工程の粉砕方式を水を溶媒とした湿式法に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
(実施例4)
粉砕工程のメディア材質をSiCよりもやや比重の高いAlに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
(実施例5)
水熱合成工程の反応温度を140℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
(比較例1)
粉砕工程のメディア材質をZrOに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。比較例1の正極活物質のラマンスペクトルを図2に示す。
(比較例2)
粉砕工程の粉砕機をポットミルに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法で評価用セルを作製した。なお、ポットミルのポット回転数は100rpmとした。
(比較例3)
水熱合成工程の反応温度を230℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
(比較例4)
水熱合成工程を溶液法に変更した。すなわち、LiNO、V、HPOを2:1:2のモル比で含有する原料水溶液を加熱攪拌し、その後、乾燥したこと以外は、実施例1と同様の方法で評価用セルを作製した。
〈放電容量及びレート放電特性の測定〉
実施例1〜5、比較例1〜4のリチウムイオン二次電池を用いて、放電レートを0.1C(25℃で定電流放電を行ったときに10時間で放電終了となる電流値)とした場合の放電容量(単位:mAh/g)、及び放電レートを1C(25℃で定電流放電を行ったときに1時間で放電終了となる電流値)とした場合の放電容量をそれぞれ測定した。また、0.1Cでの放電容量を100%とした場合の1Cでの放電容量の比率(%)をレート放電特性として求めた。結果を表1に示す。
〈結果の判定〉
0.1C放電容量が135mAh/g以上であり、且つ上記レート放電特性が75%以上である電池を「○」と評価し、0.1C放電容量が135mAh/g未満、又はレート放電特性が75%未満である電池を「×」と評価する。
Figure 0006098382
表1に示す通り、実施例1〜5のリチウムイオン二次電池は正極活物質の水熱合成条件や粉砕条件を好適に調整したために、放電容量が高く、且つレート放電特性に優れるといった本発明の効果が確認された。一方、比較例1〜4はラマンスペクトルにおいて、V=O結合に由来するピークの位置が885cm−1よりも低いために所望のレート放電特性が得られず、比較例4に至っては放電容量も低いという結果であった。
10・・・正極、20・・・負極、12・・・正極集電体、14・・・正極活物質層、18・・・セパレータ、22・・・負極集電体、24・・・負極活物質層、30・・・発電要素、50・・・ケース、52・・・金属箔、54・・・高分子膜、60,62・・・リード、100・・・リチウムイオン二次電池

Claims (2)

  1. 化学式LiVOPOで表される化合物であって、ラマンスペクトルにおいて、885cm−1〜892cm−1の範囲内にピークを有することを特徴とする正極活物質。
  2. 請求項1記載の正極活物質を含む正極を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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