JP2010232091A - リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法とリチウムイオン電池用正極活物質及びリチウムイオン電池用電極並びにリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、Li3PO4、またはLi源及びリン酸源と、Fe源とを含有する水溶液またはスラリーに、水溶性の無機Mg塩、水溶性の有機Mg塩のいずれか1種または2種からなるMg源を、生成するLiFePO4に対して0.1mol%以上かつ1mol%以下となるように添加し、次いで、この水溶液またはスラリーを高温高圧下にて反応させ、結晶性が制御されたLiFePO4を生成する。
【選択図】なし
Description
ところで、今後期待されるハイブリット自動車、電気自動車、無停電装置に搭載される大型電池等の分野では、LiCoO2をそのまま非水系リチウムイオン電池の正極材料に適用する場合、次のような様々な問題点があった。
このような問題点の1つは、LiCoO2はレアメタルであるコバルト(Co)を用いているので、コバルト(Co)を大量かつ安定的に入手するには、資源的及びコスト的に難しいという点である。
また、LiCoO2は高温で酸素を放出するので、異常発熱時や電池が短絡した場合には爆発の危険性があり、したがって、LiCoO2を大型電池に適用するにはリスクが大きいという点もある。
このLiFePO4で代表されるオリビン系正極材料は、鉄(Fe)を利用するものであるから、資源的にはコバルト、マンガンと比較しても豊富に自然界に存在し安価である。そして、オリビン構造は、リンと酸素の共有結合性から、LiCoO2等のコバルト系のように高温時に酸素を放出することもなく、安全性にも優れた材料である。
1つの問題点は、導電性が低い点であるが、この点については、近年における改良、特にLiFePO4とカーボンとの複合化、もしくはLiFePO4の表面のカーボン被覆等により、導電性を改良する試みが数々なされている。
もう一つの問題点は、充放電時におけるリチウムイオンの拡散性が低い点である。例えば、LiCoO2のような層状構造、あるいはLiMnO2のようなスピネル構造の化合物では、充放電時のリチウムの拡散方向が2方向または3方向であるのに対し、LiFePO4のようなオリビン構造の化合物では、リチウムの拡散方向が1方向に限られてしまう。加えて、充放電時の電極反応は、LiFePO4とFePO4との間で変換を繰り返す2相反応であることから、LiFePO4は高速の充放電には不利だとされている。
従来、LiFePO4の合成法としては固相法が用いられてきたが、この固相法では、LiFePO4の原料を化学量論比で混合し、不活性雰囲気中にて焼成することから、焼成条件を上手く選ばないと目的通りの組成のLiFePO4が得られず、また、粒子径の制御が難しく、小粒径化することが難しいという問題点がある。そこで、このLiFePO4粒子を小粒径化する方法として、水熱反応を利用した液相合成法が研究されている。
そこで、水熱反応によりLiFePO4微粒子を生成する方法として、CH3COO−、SO4 2−、Cl−等の有機酸やイオンを、溶媒に同時に含有させて合成する方法や、この水熱反応の際に過剰のLiを添加することにより、単相のLiFePO4微粒子を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献2等参照)。また、反応中間体を機械的に粉砕することにより、小粒径のLiFePO4微粒子を得る方法も提案されている(特許文献3)。
これらの金属イオンをLiFePO4の結晶中にドープすることで、Liイオンの拡散経路を広げ、Liイオンの挿入脱離時の結晶収縮を抑制することにより、高速充放電に対応するようになっている。
ところで、この異種金属イオンは、LiFePO4の充放電特性に関与しないことが多く、そこで、効果が発現する程度にドープ量を増加させると、ドープ量が増加した分の容量低下が生じてしまうという問題があり、一方、ドープ量が少なすぎると、異種金属イオンのドープの効果が発現しないために、異種金属イオンのドープ量はLiFePO4の5〜10mol%が最適とされているものが多い。
さらに加えて、1次粒子を小粒径化した場合、粒子間の空隙が多くなり、嵩密度やタップ密度が低下することとなり、したがって、最終的に電池としての放電容量も低下するという問題点があった。
また、異種金属イオンを単にLiFePO4の結晶中にドープするだけでは、負荷特性は向上するものの、放電容量が低下してしまい、実用上問題があった。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、Li3PO4、またはLi源及びリン酸源と、Fe源とを含有する水溶液またはスラリーに、Mg源を、生成するLiFePO4に対して0.1mol%以上かつ1mol%以下となるように添加し、次いで、この水溶液またはスラリーを高温高圧下にて反応させ、オリビン型の結晶構造を有するLiFePO4を生成する方法である。
ただし、Fe3(PO4)2は酸化され易く、取り扱いが難しいので、Li3PO4とFe(II)塩を原料とすることが好ましい。
なお、Li源、Fe源及びリン酸源を用いる方法では、反応初期でLi3PO4を生成するので、Li3PO4を用いる方法と同等となる。したがって、初めにLi3PO4を合成し、その後、このLi3PO4とFe源とを水熱反応させてLiFePO4を合成する方法が好ましい。
1.リン酸リチウム(Li3PO4)スラリーの作製
まず、水に、Li源及びリン酸源を投入し、これらLi源及びリン酸源を反応させてリン酸リチウム(Li3PO4)を生成させ、リン酸リチウム(Li3PO4)スラリーとする。
上記のリン酸リチウム(Li3PO4)スラリーに、Fe源、Mg源及び還元剤を添加し、混合物とする。
Fe源としては、Fe塩が好ましく、例えば、塩化鉄(II)(FeCl2)、硫酸鉄(II)(FeSO4)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)及びこれらの水和物の群から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。
水溶性の無機Mg塩としては、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)及びこれらの水和物等が挙げられる。
水溶性の有機Mg塩としては、酢酸マグネシウム(Mg(CH3COO)2)、乳酸マグネシウム(Mg(CH3CH(OH)COO)2)及びこれらの水和物等が挙げられる。
これらのMg塩は、いずれか1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
ここで、Mg源の添加量を0.1mol%以上かつ1mol%以下と限定した理由は、添加量が0.01mol%未満では、添加量が少なすぎるためにLiFePO4の結晶性を制御することが難しいからであり、一方、添加量が1mol%を超えると、LiFePO4中のMgの量が多すぎてしまい、LiFePO4の結晶性を制御することはできるものの、Mgが不純物となって負荷特性に悪影響を及ぼす虞があるからである。
この水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド類、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類、の群から選択される1種のみを、または2種以上を混合して用いることができる。
上記の混合物を、高温高圧の条件下にて反応(水熱合成)させ、LiFePO4を含む反応物を得る。
この高温高圧の条件は、LiFePO4を生成する温度、圧力及び時間の範囲であれば特に限定されるものではないが、反応温度は、例えば、120℃以上かつ250℃以下が好ましく、より好ましくは150℃以上かつ220℃以下である。
上記のLiFePO4を含む反応物を、デカンテーション、遠心分離、フィルター濾過等により、LiFePO4とLi含有廃液(未反応のLiを含む溶液)とに分離する。
分離されたLiFePO4は、乾燥器等を用いて40℃以上にて3時間以上乾燥し、LiFePO4を得る。
以上により、結晶性が制御され、放電容量が低下することなく、負荷特性が向上したLiFePO4を安定して効率良く得ることができる。
従来、水熱合成法において、LiFePO4にMg、Ti、Zn等の金属イオンをドープする方法では、ドープ量を増加させると、増加した分容量低下が生じてしまい、一方、ドープ量が少なすぎると、異種金属イオンのドープの効果が発現しないという問題点があり、そこで、本発明者等は、その原因の解明を行い、水熱合成法におけるドーパントの添加は、LiFePO4の結晶内で作用しているというよりも、水熱合成時のLiFePO4生成に影響を与えていることを解明した。さらに、ドーパントの量は、従来からいわれているLiFePO4の5〜10mol%より微量の0.1mol%以上かつ1mol%以下で、負荷特性向上に効果があることを確認した。
図1は、LiFePO4のa軸の格子定数(オングストローム)における添加Mg量(mol%/LiFePO4)の影響を、理論値と実験値について示している。
図2は、LiFePO4のb軸の格子定数(オングストローム)における添加Mg量(mol%/LiFePO4)の影響を、理論値と実験値について示している。
図3は、LiFePO4のc軸の格子定数(オングストローム)における添加Mg量(mol%/LiFePO4)の影響を、理論値と実験値について示している。
これにより、LiFePO4の水熱合成時に極微量のMgイオンを添加すれば、格子定数が理論値に近づくことが分かる。
図4によれば、LiFePO4に対するMg塩添加量を0.1mol%以上かつ1mol%以下の範囲とすることで、初期放電容量を維持しつつ、5C/0.2C維持率が向上していることが分かる。
このことは、LiFePO4の水熱合成時に微量のMg塩を添加することにより、a軸及びc軸の格子定数が拡大し、したがってLiの拡散通路が拡大し、その結果、5C/0.2C維持率が向上したものと考えられる。
なお、Mg塩添加量が1mol%を超えると、逆に添加したMgが不純物として働いてしまうために、初期容量の低下や5C/0.2C維持率の低下を招くことになるので、好ましくない。
したがって、本実施形態のLiFePO4では、Mgの添加は、導電性の向上をねらったものではなく、格子定数を理論値に近づけるように、結晶性を制御したものと考えられる。
本実施形態のリチウムイオン電池用正極活物質は、上述したリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法にて得られたMgを微量添加したLiFePO4であるから、リチウムイオン電池、特にリチウムイオン2次電池に適用した場合には、正電極の正極活物質として好適に用いられる。リチウムイオン2次電池の正極活物質として用いることで、上述したようにLiの拡散通路が拡大し、高負荷時の放電容量の増加及び放電維持率の向上が図れる。
上記のリチウムイオン電池用正極活物質を、リチウムイオン電池、特にリチウムイオン2次電池の正電極の正極活物質として用いるためには、LiFePO4の表面を炭素により被覆する必要がある。
表面に炭素被覆を施さないと、既に述べたLiFePO4の問題点である導電性が改善されず、電池特性として良好な結果が得られないからである。
500℃未満の低い温度では、カーボン源の分解が不十分かつ導電性のカーボン膜の生成が不十分となり、電池内での抵抗要因となり、電池特性に悪影響を及ぼす。一方、1000℃を超える高い温度では、LiFePO4の粒成長が進行して粗大化してしまい、LiFePO4の問題点であるLi拡散速度に起因する高速充放電特性が著しく悪化する。
このように、上記のリチウムイオン電池用正極活物質であるLiFePO4を炭素により被覆することで、リチウムイオン電池、特にリチウムイオン2次電池の正電極の正極活物質として好適となる。
このリチウムイオン電池は、その正電極が、水熱合成時にMgを微量添加したLiFePO4の表面を導電性のカーボン膜で被覆した炭素被覆LiFePO4を用いて形成されたものであるから、初期の放電容量を維持しつつ、高負荷時の放電容量を増加させることができ、放電維持率の向上を図ることができる。
純水1Lに3molの塩化リチウム(LiCl)と、1molのリン酸(H3PO4)を加えて攪拌し、リン酸リチウム(Li3PO4)スラリーを得た。
次いで、このスラリーに1molの塩化鉄(II)(FeCl2)を添加し、さらに塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)を生成するLiFePO4に対して0.1mol%となるように添加し、さらに水を加えて総量2Lの原料液とした。なお、この原料液の反応濃度をLiFePO4に換算すると0.5mol/Lとなった。
次いで、分離した固形物の質量と同量の水を添加して懸濁させ、濾過により固液分離をする操作を3回行い、洗浄した。
得られたケーキ状のLiFePO4を固形分換算で150gに対し、ポリエチレングリコール5g、純水150gを加えて5mm径のジルコニアビーズをメディアとしたボールミルにて12時間粉砕・分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)の添加量を0.5mol%とした他は、実施例1に準じて実施例2のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)の添加量を1.0mol%とした他は、実施例1に準じて実施例3のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)を酢酸マグネシウム4水和物(Mg(CH3COO)2・4H2O)に替え、この酢酸マグネシウム4水和物の添加量を0.5mol%とした他は、実施例1に準じて実施例4のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)を乳酸マグネシウム3水和物(Mg(CH3CH(OH)COO)2・3H2O)に替え、この乳酸マグネシウム3水和物の添加量を0.5mol%とした他は、実施例1に準じて実施例5のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)の添加を行わなかった他は、実施例1に準じて比較例1のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)の添加量を0.05mol%とした他は、実施例1に準じて比較例2のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)の添加量を2.0mol%とした他は、実施例1に準じて比較例3のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)を塩化ニッケル6水和物(NiCl2・6H2O)に替え、この塩化ニッケル6水和物の添加量を0.5mol%とした他は、実施例1に準じて比較例4のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)を塩化銅(II)2水和物(CuCl2・2H2O)に替え、この塩化銅(II)2水和物の添加量を0.5mol%とした他は、実施例1に準じて比較例5のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)を塩化亜鉛(ZnCl2)に替え、この塩化亜鉛の添加量を0.5mol%とした他は、実施例1に準じて比較例6のリチウムイオン電池用正極活物質を作製した。
実施例1〜5各々の正極活物質について、X線回折装置を用いてX線回折図形を得、このX線回折図形からJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)01−081−1173を用いてXRDプロファイルの最小自乗法による精密化を行い、a軸、b軸及びc軸各々の格子定数を決定した。
その結果、各正極活物質共に、a軸及びc軸各々の格子定数が理論値に近似しており、結晶性が制御されていることが確認できた。
実施例1〜5及び比較例1〜6各々の正極活物質について、以下の処理を行い、実施例1〜5及び比較例1〜6各々のリチウムイオン2次電池を作製した。
まず、正極活物質を90質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部、及び溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を混合した。
次いで、3本ロールミルを用いてこれらを混練し、正極活物質ペーストを作製した。
次いで、この正極を2cm2の円板状に打ち抜き、減圧乾燥後、乾燥アルゴン雰囲気下にてステンレススチール製の2016型コイン型セルを用いてリチウムイオン2次電池を作製した。
ここでは、負極に金属リチウムを、セパレーターに多孔質ポリプロピレン膜を、電解液に1モルのLiPF6を炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを3:7にて混合した溶液に混合した混合物を、用いた。
実施例1〜5及び比較例1〜6各々のリチウムイオン2次電池を用いて、電池充放電試験を行った。
ここでは、カットオフ電圧を2.0V〜4.0Vとし、初期放電容量の測定は、0.1Cで充電を行い、0.1Cで放電した。その他の放電容量の測定は、0.2Cで充電し、0.2C、2C、5C、8C、12C各々における放電容量を測定した。
また、5Cにおける放電容量と0.2Cにおける放電容量との比(%)を放電維持率(5C/0.2C維持率)とした。
実施例1〜5及び比較例1〜6各々の放電容量及び放電維持率(5C/0.2C維持率)を表1に示す。
Claims (5)
- Li3PO4、またはLi源及びリン酸源と、Fe源とを含有する水溶液またはスラリーに、Mg源を、生成するLiFePO4に対して0.1mol%以上かつ1mol%以下となるように添加し、次いで、この水溶液またはスラリーを高温高圧下にて反応させ、LiFePO4を生成することを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
- 前記Mg源は、水溶性の無機Mg塩、水溶性の有機Mg塩のいずれか1種または2種であることを特徴とする請求項1記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
- 請求項1または2記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法により得られたことを特徴とするリチウムイオン電池用正極活物質。
- 請求項3記載のリチウムイオン電池用正極活物質を炭素により被覆してなることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。
- 請求項4記載のリチウムイオン電池用電極を正極として備えてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
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