JP6078085B2 - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、画像形成装置、及びプロセスカートリッジに関する。
近年、画像形成装置の小型化及び高速化が進んでいる。高速プロセスに対応するために、電子写真感光体には高感度化が要求されている。しかし、電子写真感光体を酸化性ガス(例えば、オゾン又はNOx)に曝された状態で使用する場合、又は繰り返し使用する場合には、電子写真感光体の感度(より具体的には、感光層の帯電電位)が低下し易いという問題がある。
特許文献1には、電子輸送剤として特定のジフェノキノン化合物を含有する感光層を備える電子写真感光体が開示されている。
特開2009−128882号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、耐環境性(詳しくは、酸化性ガスに対する耐性)及び繰り返し特性に優れる電子写真感光体を得ることは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電子写真感光体の耐環境性(詳しくは、酸化性ガスに対する耐性)及び繰り返し特性を向上させることを目的とする。また、本発明は、電子写真感光体を用いて、安定して高画質の画像を形成することを他の目的とする。
本発明に係る電子写真感光体は、導電性基体と、前記導電性基体上に直接的又は間接的に設けられた感光層とを備える。前記感光層は、少なくとも電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を含有する単層型感光層である。前記感光層は、前記電荷発生剤として、フタロシアニン又はその誘導体を含有する。前記感光層は、前記電子輸送剤として、下記式(1)又は(2)で表される第1化合物と、下記式(3)、式(4)、及び式(5)のいずれかで表される第2化合物とを、少なくとも1種ずつ含有する。前記バインダー樹脂100質量部に対して、前記第1化合物及び前記第2化合物の総量は60質量部以上120質量部以下であり、前記第1化合物の量は35質量部以上80質量部以下であり、前記第2化合物の量は25質量部以上40質量部以下である。
Figure 0006078085
式(1)中の各記号の意味は、下記のとおりである。R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、及び置換基を有してもよいアラルキル基からなる群より選択される基を表す。
Figure 0006078085
式(2)中の各記号の意味は、下記のとおりである。R21は、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R22は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は式「−O−X」(Xは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、これらはそれぞれ置換基を有してもよい。)で表される基を表す。R23は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。R 21、R22、及びR23は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Figure 0006078085
式(3)、式(4)、及び式(5)中の各記号の意味は、下記のとおりである。R31、R32、R33、R34、R41、R42、R43、R44、R51、及びR52は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群より選択される基を表す。R53は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群より選択される基を表す。
本発明に係る電子写真感光体の製造方法は、本発明に係る電子写真感光体を製造する方法であって、感光層形成工程を含む。感光層形成工程では、少なくとも前記電荷発生剤、前記電子輸送剤、前記正孔輸送剤、前記バインダー樹脂、及び溶剤を含有する塗布液を、前記導電性基体上に塗布し、前記塗布した塗布液に含まれる溶剤を乾燥させて前記感光層を形成する。前記溶剤は、テトラヒドロフラン及びトルエンの少なくとも一方を含有する。
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える。前記像担持体は、本発明に係る電子写真感光体を備える。
本発明に係るプロセスカートリッジは、本発明に係る電子写真感光体を備える。
本発明によれば、電子写真感光体の耐環境性(詳しくは、酸化性ガスに対する耐性)及び繰り返し特性を向上させることが可能になる。また、本発明によれば、こうした効果に代えて又は加えて、電子写真感光体を用いて、安定して高画質の画像を形成することが可能になるという効果が奏される場合がある。
(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の概要を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る電子写真感光体において用いられるチタニルフタロシアニンの第1の例についてのCuKα特性X線回折スペクトルチャートである。 本発明の実施形態に係る電子写真感光体において用いられるチタニルフタロシアニンの第1の例についての示差走査熱量分析スペクトルチャートである。 本発明の実施形態に係る電子写真感光体において用いられるチタニルフタロシアニンの第2の例についてのCuKα特性X線回折スペクトルチャートである。 本発明の実施形態に係る電子写真感光体において用いられるチタニルフタロシアニンの第2の例についての示差走査熱量分析スペクトルチャートである。 本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の概要を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る感光体は、電子写真感光体である。本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。感光層は、導電性基体上に直接的又は間接的に設けられる。感光層は、少なくとも電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を含有する単層型感光層である。感光層は、電荷発生剤として、フタロシアニン又はその誘導体を含有する。感光層は、電子輸送剤として、式(1)又は(2)で表される化合物(以下、ETM1と記載する)と、式(3)、式(4)、及び式(5)のいずれかで表される化合物(以下、ETM2と記載する)とを、少なくとも1種ずつ含有する。バインダー樹脂100質量部に対して、ETM1及びETM2の総量は60質量部以上120質量部以下であり、ETM1の量(複数種のETM1を含有する場合は総量)は35質量部以上80質量部以下であり、ETM2の量(複数種のETM2を含有する場合は総量)は25質量部以上40質量部以下である。
詳しくは、感光層における電子輸送剤の量を増やすことで、電荷発生剤と電子輸送剤との接触面積が増え、露光により発生した電荷を速やかに感光層の表面に輸送し易くなる傾向がある。また、感光層において電荷が移動し易くなることで、感光体の繰り返し特性が向上し、露光又は転写での画像メモリーが抑制される傾向がある。しかしながら、感光層が、電荷発生剤としてフタロシアニン又はその誘導体を含有する場合、感光層中の電子輸送剤の量を増やし過ぎると、感光層中に微細な結晶構造が形成され易くなる。こうした結晶構造が形成されると、感光層の電荷保持率が低下して、感光層の表面電位が低下する傾向がある。発明者は、上記のように、感光層にETM1及びETM2を少なくとも1種ずつ上記量だけ含有させることで、優れた耐環境性(詳しくは、酸化性ガスに対する耐性)及び繰り返し特性を有する電子写真感光体が得られることを見出した(後述する表1及び表2を参照)。電荷発生剤としてフタロシアニン又はその誘導体を使用し、電子輸送剤としてETM1及びETM2を使用することは、感光層の電荷保持率を向上させるために有益である。また、ETM1の量とETM2の量とをそれぞれ上記範囲内に入れることで、上述の結晶化を抑制することが可能になる。上記構成を有する感光体は、酸化性ガス(例えば、オゾン又はNOx)に曝された状態で使用する場合であっても、帯電及び露光を交互に繰り返す場合であっても、感光層の表面電位が低下しにくい。
以下、図1(a)〜図1(c)を参照して、本実施形態の感光体の概略構造について説明する。図1(a)〜図1(c)に示すように、感光体1は、導電性を有する基体2と、感光層3とを備える。図1(a)に示す例では、感光層3が、基体2上に直接的に設けられている。図1(b)に示す例では、感光層3が基体2上に間接的に設けられている。詳しくは、基体2と感光層3との間に下引き層4(中間層)が介在している。図1(a)及び図1(b)に示すように、感光層3を最外層にして感光層3を露出させてもよいし、図1(c)に示すように、感光層3上に保護層5を設けてもよい。
[導電性基体]
本実施形態に係る感光体は、導電性基体を備える。導電性基体の形状は、シート状であってもよいし、ドラム状であってもよい。導電性基体の形状及び寸法は、使用する画像形成装置の構造に合わせて決定することが望ましい。
導電性基体の少なくとも表層部は導電性を有する。導電性基体の全体が導電性材料で構成されてもよいし、導電性基体の表層部のみが導電性材料で構成されてもよい。例えば、導電性基体のうち、表層部が導電性材料で構成され、内部が非導電性材料(例えば、プラスチック)で構成されてもよい。導電性材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮、又はこれらの合金を好適に使用できる。感光層から導電性基体への電荷の移動を促進するためには、導電性基体の少なくとも表層部が、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されることが好ましい。
[中間層]
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と感光層との間に中間層(例えば、図1(b)に示される下引き層4)を備えてもよい。中間層は、例えば、リーク電流の発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にする目的で使用される。
中間層は、例えば、樹脂と、樹脂中に分散した無機粒子とを含有する。無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ)の粒子を使用できる。1種の無機粒子を単独で用いてもよいし、2種以上の無機粒子を併用してもよい。
[感光層]
本実施形態に係る感光体は、感光層を備える。感光層は、少なくとも電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を含有する。また、感光層は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
感光層が安定して高い感度を有するためには、感光層の厚さが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
(電荷発生剤)
感光層は、電荷発生剤として、フタロシアニン又はその誘導体を少なくとも1種含有する。フタロシアニンとしては、例えば、下記式(x−H2Pc)で表されるX型無金属フタロシアニンを好適に使用できる。フタロシアニン誘導体としては、例えば、下記式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンを好適に使用できる。式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンは、ベンゼン環などに置換基を有していてもよい。式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンにおける一乃至複数の置換基(置換基の数が複数である場合には、それらは同種でも異種でもよい)は、ハロゲン原子(より好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基)、炭素数1以上12以下のアルキル基(より好ましくは、炭素数1以上6以下のアルキル基)、シアノ基、及びニトロ基からなる群より選択される1種以上の置換基であることが好ましい。なお、電荷発生剤の種類は、上記に限定されない。例えば、酸化チタン以外の金属が配位したフタロシアニン(例えば、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン)のようなフタロシアニン誘導体も、電荷発生剤として使用できる。また、感光層は、フタロシアニン等に加えて、フタロシアニンでもフタロシアニン誘導体でもない電荷発生剤を含有していてもよい。
Figure 0006078085
Figure 0006078085
感光層に含有されるチタニルフタロシアニンの結晶型は、Y型、α型、及びβ型のいずれであってもよい。また、感光層は、電荷発生剤として、互いに異なる結晶型を有する複数種のチタニルフタロシアニン結晶を含有していてもよい。ただし、感光層が安定して優れた電気特性を有するためには、感光層が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有するY型チタニルフタロシアニン結晶を含有することが好ましい。なお、CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークに相当する。
上記X線回折による特性(主ピーク:27.2°)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶は、DSCによる熱特性(詳しくは、次に示す熱特性(A)〜(C))の違いによって3種類に分類される。
(A)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
(B)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有しない。
(C)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有せず、270℃以上400℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
以下、上記X線回折による特性(主ピーク:27.2°)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶のうち、熱特性(A)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶を「Y型チタニルフタロシアニン(A)」と、熱特性(B)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶を「Y型チタニルフタロシアニン(B)」と、熱特性(C)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶を「Y型チタニルフタロシアニン(C)」と、それぞれ記載する。
Y型チタニルフタロシアニン(A)〜(C)はそれぞれ、波長領域700nm以上で高い量子収率を有し、電荷発生能に優れると考えられる。
Y型チタニルフタロシアニン(B)及び(C)はそれぞれ、結晶安定性に優れており、有機溶媒中で結晶転移を起こしにくく、感光層中に分散し易い。
<CuKα特性X線回折スペクトル>
チタニルフタロシアニンの結晶構造は、光学特性(より具体的には、CuKα特性X線回折スペクトル等)に基づいて推定することができる。以下、CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。
試料(チタニルフタロシアニン結晶)をX線回折装置(例えば、理学電機株式会社製「RINT 1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角:3°、ストップ角:40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。また、α型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の28.6°にピークを有する。また、β型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の26.2°にピークを有する。
<示差走査熱量分析スペクトル>
チタニルフタロシアニンの結晶構造は、熱的特性(より具体的には、示差走査熱量分析スペクトル等)に基づいて推定することができる。以下、示差走査熱量分析スペクトルの測定方法の一例について説明する。
サンプルパンに結晶粉末の評価用試料を載せて、示差走査熱量計(例えば、理学電機株式会社製「TAS−200型 DSC8230D」)を用いて示差走査熱量分析スペクトルを測定する。測定範囲は、例えば40℃以上400℃以下であり、昇温速度は、例えば20℃/分である。
Y型チタニルフタロシアニン(B)は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有しない。
Y型チタニルフタロシアニン(C)は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有せず、270℃以上400℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
図2及び図3は、本実施形態に係る電子写真感光体において用いられるチタニルフタロシアニン結晶の第1の例についての、CuKα特性X線回折スペクトルチャート(図2)及び示差走査熱量分析スペクトルチャート(図3)である。図4及び図5は、本実施形態に係る電子写真感光体において用いられるチタニルフタロシアニン結晶の第2の例についての、CuKα特性X線回折スペクトルチャート(図4)及び示差走査熱量分析スペクトルチャート(図5)である。なお、図2及び図4の各々において、横軸はブラッグ角(°)を示し、縦軸は強度(cps)を示す。また、図3及び図5の各々において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は熱流束(mcal/秒)を示す。各スペクトルチャート(図2〜図5)は、前述の方法で測定された。
図2及び図3の各々のスペクトルチャートから、測定されたチタニルフタロシアニン結晶の第1の例が主にY型チタニルフタロシアニン(B)を含むことを推定できる。図4及び図5のスペクトルチャートから、測定されたチタニルフタロシアニン結晶の第2の例が主にY型チタニルフタロシアニン(C)を含むことを推定できる。
<チタニルフタロシアニン結晶の合成方法>
次に、チタニルフタロシアニン結晶の合成方法について説明する。Y型チタニルフタロシアニン(B)の合成方法の一例を、以下に示す。
まず、次に示す反応式(R−1)又は(R−2)により、チタニルフタロシアニン化合物を合成する。反応式(R−1)及び(R−2)中、Yはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基を表し、eは0以上4以下の整数を表し、Rはアルキル基を表し、baseは塩基を表す。
Figure 0006078085
Figure 0006078085
反応式(R−1)では、フタロニトリル又はその誘導体と、チタンアルコキシドとを反応させることで、チタニルフタロシアニン化合物を合成する。反応式(R−2)では、1,3−ジイミノインドリン又はその誘導体と、チタンアルコキシドとを反応させることで、チタニルフタロシアニン化合物を合成する。
続けて、顔料化前処理を行う。詳しくは、反応式(R−1)又は(R−2)により得られたチタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒に加え、混合液を加熱しながら一定時間攪拌する。その後、攪拌時よりも低温の条件下で、混合液を一定時間静置して安定化する。
上記顔料化前処理では、例えば、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール等)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、及びエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の水溶性有機溶媒を使用できる。なお、水溶性有機溶媒に、少量の非水溶性有機溶媒を添加してもよい。顔料化前処理における攪拌は、一定の温度(例えば、70℃以上200℃以下から選ばれる所定の温度)の条件下で1時間以上3時間以下行われることが好ましい。攪拌後の安定化処理は、一定の温度条件下で5時間以上10時間以下行われることが好ましい。安定化処理時の混合液の温度は、10℃以上50℃以下であることが好ましく、22℃以上24℃以下であることがより好ましい。
続けて、水溶性有機溶媒を乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を得る。続けて、得られた粗結晶を、常法に従って溶媒に溶解させた後、貧溶媒中に滴下して再結晶化させる。その後、ろ過、水洗、ミリング処理、ろ過、及び乾燥の各工程を経て、チタニルフタロシアニン化合物を顔料化する。その結果、Y型チタニルフタロシアニン(B)が得られる。
再結晶化のための貧溶媒としては、例えば、水、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール等)、及び水溶性有機溶媒(より具体的には、アセトン又はジオキサン等)からなる群より選択される1種以上を使用できる。
ミリング処理は、水洗後の固形物を、乾燥させずに水を含む状態のまま非水系溶媒中に分散させた後、分散液を攪拌する処理である。粗結晶を溶解させる溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(より具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、臭化エチル、又は臭化ブチル等)、トリハロ酢酸類(より具体的には、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、又はトリブロモ酢酸等)、及び硫酸からなる群より選択される1種以上を使用できる。ミリング処理のための非水系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン又はジクロロメタンのようなハロゲン系溶媒を使用できる。
なお、Y型チタニルフタロシアニン(B)は、以下の方法で合成することもできる。
上記顔料化前処理後、水溶性有機溶媒を乾燥して得たチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を、アシッドペースト法によって処理する。具体的には、上記粗結晶を酸に溶解させて、得られた溶液を、氷冷下の水中に滴下する。その後、溶液を22℃以上24℃以下の温度条件下で一定時間攪拌して、液中でチタニルフタロシアニン化合物を再結晶化させて、低結晶性チタニルフタロシアニン化合物を得る。なお、アシッドペースト法に使用する酸としては、例えば、濃硫酸又はスルホン酸が好ましい。
続けて、得られた低結晶性チタニルフタロシアニン化合物をろ過し、得られた固形物を水洗する。その後、前述のミリング処理を行う。ミリング処理後、固形物のろ別及び乾燥を行うことで、Y型チタニルフタロシアニン(B)が得られる。
(電子輸送剤)
感光層は、電子輸送剤として、式(1)又は式(2)で表される第1化合物(ETM1)と、式(3)、式(4)、及び式(5)のいずれかで表される第2化合物(ETM2)とを、少なくとも1種ずつ含有する。
Figure 0006078085
式(1)中、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、及び置換基を有してもよいアラルキル基からなる群より選択される基を表す。R11、R12、R13、及びR14は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(1)中、R11〜R14の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、又はシクロヘキシル基が特に好ましい。式(1)中、R11〜R14の少なくとも1つがアルコキシ基である場合、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、又はフェナントリルオキシ基が特に好ましい。式(1)中、R11〜R14の少なくとも1つがアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が特に好ましい。式(1)中、R11〜R14の少なくとも1つがアラルキル基である場合、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、又はβ−ナフチルメチル基が特に好ましい。
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(1)中、R11〜R14が、各々独立して、水素原子、炭素数1以上8以下(より好ましくは、炭素数1以上6以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基、シクロヘキシル基、炭素数1以上4以下(より好ましくは、炭素数1又は2)のアルコキシ基、フェニル基、又はベンジル基であることが特に好ましい。式(1)で表されるETM1としては、下記式(1−1)〜式(1−11)のいずれかで表される化合物(ジナフトキノン誘導体)を好適に使用できる。
Figure 0006078085
Figure 0006078085
式(2)中、R21は、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、R22は、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は式「−O−X」(Xは、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、これらはそれぞれ置換基を有してもよい。)で表される基を表し、R23は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表し、R 21、R22、及びR23は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(2)中、R21〜R23、及び式「−O−X」中の「X」の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、又はn−デシル基が特に好ましい。式(2)中、R21、R22、及び式「−O−X」中の「X」の少なくとも1つがアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が特に好ましい。式「−O−X」中の「X」がアラルキル基である場合、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、又はβ−ナフチルメチル基が特に好ましい。
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(2)中、R21が、炭素数1以上4以下(より好ましくは、炭素数1又は2)の直鎖もしくは分岐アルキル基、フェニル基、置換基として炭素数1以上4以下(より好ましくは、炭素数1又は2)の直鎖もしくは分岐アルキル基を有するフェニル基であり、R22が、炭素数1以上6以下(より好ましくは、炭素数1以上4以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基、フェニル基、置換基として炭素数1以上4以下(より好ましくは、炭素数1又は2)の直鎖もしくは分岐アルキル基を有するフェニル基、式「−O−X」(Xは、炭素数1以上6以下(より好ましくは、炭素数1以上4以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基、フェニル基、置換基として炭素数1以上4以下(より好ましくは、炭素数1又は2)の直鎖もしくは分岐アルキル基を有するフェニル基、ベンジル基、又は置換基として炭素数1以上4以下(より好ましくは、炭素数1又は2)の直鎖もしくは分岐アルキル基を有するベンジル基を表す。)で表される基であり、R 23が、水素原子、炭素数1以上6以下(より好ましくは、炭素数1以上4以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基であることが特に好ましい。式(2)で表されるETM1としては、下記式(2−1)〜式(2−26)のいずれかで表される化合物(ナフトキノン誘導体)を好適に使用できる。
Figure 0006078085
Figure 0006078085
Figure 0006078085
式(3)、式(4)、又は式(5)中、R31、R32、R33、R34、R41、R42、R43、R44、R51、及びR52は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群より選択される基を表し、R53は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群より選択される基を表す。R31、R32、R33、R34、R41、R42、R43、R44、R51、R52、及びR53は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(3)〜式(5)中、R31〜R34、R41〜R44、及びR51〜R53の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、又はシクロヘキシル基が特に好ましい。式(3)〜式(5)中、R31〜R34、R41〜R44、及びR51〜R53の少なくとも1つがアルケニル基である場合、アルケニル基としては、ビニル基又はアリル基が特に好ましい。式(3)〜式(5)中、R31〜R34、R41〜R44、及びR51〜R53の少なくとも1つがアルコキシ基である場合、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、又はフェナントリルオキシ基が特に好ましい。式(3)〜式(5)中、R31〜R34、R41〜R44、及びR51〜R53の少なくとも1つがアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が特に好ましい。式(3)〜式(5)中、R31〜R34、R41〜R44、及びR51〜R53の少なくとも1つがアラルキル基である場合、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、又はβ−ナフチルメチル基が特に好ましい。式(5)中、R53がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基が特に好ましい。式(5)中、R53が複素環基である場合、複素環基としては、ピリジン基が特に好ましい。
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(3)中、R31〜R34が、各々独立して、炭素数1以上8以下(より好ましくは、炭素数1以上6以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基であることが特に好ましい。式(3)で表されるETM2としては、下記式(3−1)〜式(3−10)のいずれかで表される化合物を好適に使用できる。
Figure 0006078085
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(4)中、R41〜R44が、各々独立して、炭素数1以上8以下(より好ましくは、炭素数1以上6以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基であることが特に好ましい。式(4)で表されるETM2としては、下記式(4−1)〜式(4−4)のいずれかで表される化合物を好適に使用できる。
Figure 0006078085
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(5)中、R51及びR52が、各々独立して、炭素数1以上6以下(より好ましくは、炭素数1以上4以下)の直鎖もしくは分岐アルキル基であり、R53が、ハロゲン原子(より好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基)であることが特に好ましい。式(5)で表されるETM2としては、下記式(5−1)で表される化合物を好適に使用できる。
Figure 0006078085
(正孔輸送剤)
感光層は、正孔輸送剤を含有する。感光層の結晶化を抑制しつつ感光層の表面電位を安定化するためには、感光層が、正孔輸送剤として、下記式(HTM−1)で表される化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006078085
式(HTM−1)中、Q11、Q12、Q13、Q14、及びQ15は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、又は置換基を有してもよいアラルキル基を表す。m及びnは、各々独立して、0以上4以下の整数を表す。
式(HTM−1)中、Q11〜Q15の少なくとも1つがハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基が特に好ましい。式(HTM−1)中、Q11〜Q15の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、又はn−デシル基が特に好ましい。式(HTM−1)中、Q11〜Q15の少なくとも1つがアルコキシ基である場合、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、又はn−デシルオキシ基が特に好ましい。式(HTM−1)中、Q11〜Q15の少なくとも1つがアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が特に好ましい。式(HTM−1)中、Q11〜Q15の少なくとも1つがアリールオキシ基である場合、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、又はフェナントリルオキシ基が特に好ましい。式(HTM−1)中、Q11〜Q15の少なくとも1つがアラルキル基である場合、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、又はβ−ナフチルメチル基が特に好ましい。感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(HTM−1)中、Q11〜Q15が、各々独立して、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上6以下のアルコキシ基であり、m及びnが、各々独立して、0又は1の整数であることが特に好ましい。
また、感光層に含有される正孔輸送剤としては、上記式(HTM−1)で表される化合物以外では、下記式(HTM−2)〜(HTM−4)のいずれかで表される化合物が好ましい。
Figure 0006078085
式(HTM−2)中、Q22、Q23、Q24、Q25、Q26、及びQ27は、各々独立して、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素数6以上30以下のアリール基を表す。nは0以上5以下の整数を表す。Q23、Q24、Q25、Q26、及びQ27のうち隣り合う基が互いに結合して環を形成していてもよい。a及びbは、それぞれ1以上3以下の整数であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Figure 0006078085
式(HTM−3)中、Q31、Q32、Q33、Q34、Q35、Q36、Q37、及びQ38は、各々独立して、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。nは0以上5以下の整数を表す。mは0以上4以下の整数を表す。lは0又は1の整数を表す。Q33、Q34、Q35、Q36、及びQ37のうち隣り合う基が互いに結合して環を形成していてもよい。
Figure 0006078085
式(HTM−4)中、Q41、Q42、及びQ43は、各々独立して、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。m及びnは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。lは0以上4以下の整数を表す。
感光層は、上記以外の正孔輸送剤を含有していてもよい。また、バインダー樹脂として機能する正孔輸送剤(例えば、成膜性を有する正孔輸送剤)を使用してもよい。例えば、ポリビニルカルバゾールは、正孔輸送剤としてもバインダー樹脂としても機能する。1種の正孔輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上の正孔輸送剤を併用してもよい。
感光体において、正孔輸送剤の合計含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂を使用できる。具体的には、バインダー樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂のような熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、又はメラミン樹脂のような熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート樹脂又はウレタン−アクリレート共重合樹脂のような光硬化性樹脂を好適に使用できる。
加工性、機械的特性、光学的特性、及び耐摩耗性に優れる感光層を得るためには、バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂を使用することが好ましく、下記式(Resin−1)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂を使用することがより好ましい。
Figure 0006078085
式(Resin−1)中、Q51及びQ52は、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。
式(Resin−1)中のQ51及びQ52の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が特に好ましい。
なお、バインダー樹脂として使用されるポリカーボネート樹脂は、上記構成を有する樹脂には限られない。例えば、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールB型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールCZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂のいずれも、バインダー樹脂として使用できる。1種のバインダー樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上のバインダー樹脂を組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂の分子量は、粘度平均分子量で20000以上であることが好ましく、20000以上65000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の分子量が粘度平均分子量で20000以上であれば、感光層を密に形成することが容易になり、感光層の耐ガス性、耐摩耗性、及び繰り返し特性を向上させ易くなる。また、バインダー樹脂の分子量が粘度平均分子量で65000以下であれば、感光層の形成時において、バインダー樹脂の溶剤に対する溶解を抑制することが可能になる。
(添加剤)
本実施形態の感光体における、感光層、中間層、及び保護層の少なくとも1つが、1種以上の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、BHT(ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン、及びこれらの誘導体、並びに、有機硫黄化合物及び有機燐化合物が挙げられる。
感光層の帯電安定性を向上させるためには、感光層が、式(6)又は式(7)で表される化合物を1種以上含有することが好ましい。式(6)又は式(7)で表される化合物は、可塑剤として機能すると考えられる。
Figure 0006078085
式(6)中、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、及びR60は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下の直鎖もしくは分岐アルキル基、置換基を有してもよい炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7以上30以下のアラルキル基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群より選択される基を表し、R6は、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルキレン基を表し、nは、0又は1を表す。R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、及びR60は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(6)中、R60〜R69の少なくとも1つがハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基が特に好ましい。式(6)中、R60〜R69の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、又はシクロヘキシル基が特に好ましい。式(6)中、R60〜R69の少なくとも1つがアルコキシ基である場合、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、又はフェナントリルオキシ基が特に好ましい。式(6)中、R60〜R69の少なくとも1つがアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が特に好ましい。式(6)中、R60〜R69の少なくとも1つがアラルキル基である場合、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、又はβ−ナフチルメチル基が特に好ましい。式(6)中、R60〜R69の少なくとも1つが複素環基である場合、複素環基としては、ピリジル基が特に好ましい。式(6)中、R6がアルキレン基である場合、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、又はn−ドデシレン基が特に好ましい。
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(6)中、R60〜R69が、各々独立して、水素原子又はフェニル基であり、R6がメチレン基であり、nが0又は1の整数であることが特に好ましい。式(6)で表される化合物としては、下記式(6−1)〜式(6−3)のいずれかで表される化合物(ビフェニル誘導体)を好適に使用できる。
Figure 0006078085
Figure 0006078085
式(7)中、R71、R72、及びR73は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリール基、及び置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリールオキシ基からなる群より選択される基を表し、n、m、及びlは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。R71、R72、及びR73は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(7)中、R71〜R73の少なくとも1つがハロゲン原子である場合、ハロゲン原子としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基が特に好ましい。式(7)中、R71〜R73の少なくとも1つがアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、又はn−デシル基が特に好ましい。式(7)中、R71〜R73の少なくとも1つがアルコキシ基である場合、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、又はn−デシルオキシ基が特に好ましい。式(7)中、R71〜R73の少なくとも1つがアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が特に好ましい。式(7)中、R71〜R73の少なくとも1つがアリールオキシ基である場合、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、又はフェナントリルオキシ基が特に好ましい。
感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(7)中、n、m、及びlが、各々独立して1であり、R71〜R73が、各々独立して、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、感光層の帯電安定性を向上させるためには、式(7)中、n、m、及びlが、各々独立して1であり、R71及びR72が、各々独立して、水素原子であり、R73が炭素数1以上6以下(より好ましくは、炭素数1以上4以下)のアルキル基であることが特に好ましい。式(7)で表される化合物としては、下記式(7−1)〜式(7−6)のいずれかで表される化合物(トリフェニルアミン誘導体)を好適に使用できる。
Figure 0006078085
式(1)、式(2)、式(6)、式(7)、式(HTM−1)、又は式(Resin−1)中、R11〜R14、R21〜R23、R6、R60〜R69、R71〜R73、Q11〜Q15、Q51、及びQ52の各々が有する一乃至複数の上記置換基(置換基の数が複数である場合には、それらは同種でも異種でもよい)としては、電子写真感光体の用途等に応じて、ハロゲン原子(より具体的には、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基等)、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルファニル基、カルバモイル基、炭素数1以上12以下の直鎖もしくは分岐アルキル基、炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキルスルファニル基、炭素数1以上12以下のアルキルスルホニル基、炭素数2以上13以下のアルカノイル基、炭素数2以上13以下のアルコキシカルボニル基、炭素数6以上14以下のアリール基(単環、二環縮合環、及び三環縮合環のいずれでもよい)、及び環員数6以上14以下の複素環基(より具体的には、単環、二環縮合環、及び三環縮合環のいずれでもよい)からなる群より、適切な置換基を選択できる。
[電子写真感光体の製造方法]
以下、上記構成を有する本実施形態に係る電子写真感光体を製造する方法の一例について説明する。例えば、塗布液調製工程と、塗布工程と、乾燥工程とを、この順で行う。塗布液調製工程では、溶剤に、少なくとも電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を添加することにより、塗布液を調製する。必要に応じて、溶剤に添加剤を添加してもよい。また、感光層用塗布液の均質性を高めるためには、溶剤に添加した材料を溶剤中で溶解又は分散させることが好ましい。塗布工程では、塗布液調製工程で得られた塗布液を、導電性基体上に塗布する。乾燥工程では、導電性基体上に塗布された塗布液を乾燥させる。その結果、導電性基体と、導電性基体上に設けられた感光層とを備える電子写真感光体が得られる。
塗布液調製工程において使用される溶剤は、テトラヒドロフラン及びトルエンの少なくとも一方を含有することが好ましい。このような溶剤を使用することにより、電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂の塗布液中での溶解性又は分散性が向上する傾向がある。その結果、均質な感光層が形成され易くなり、感光体の帯電電位の安定性を向上させ易くなる。なお、塗布液調製工程においてテトラヒドロフラン及びトルエンの少なくとも一方を含有する溶剤を使用した場合には、感光層中にテトラヒドロフラン及びトルエンの少なくとも一方が含有される傾向がある。感光層におけるテトラヒドロフラン及び/又はトルエンの量(感光層が両方を含有する場合には総量)は、微量(例えば、数ppm)であることが好ましい。感光層におけるテトラヒドロフラン及び/又はトルエンの量は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて確認することができる。
塗布液調製工程において使用する溶剤の種類は、上記テトラヒドロフラン及びトルエンに限られず任意である。例えば、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール)、脂肪族系炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン)、エーテル類(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン)、エステル類(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシドも、溶剤として使用できる。1種の溶剤を単独で使用してもよいし、2種以上の溶剤を併用してもよい。
塗布液調製工程において溶剤に添加した材料を溶剤中で溶解又は分散させる方法としては、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、もしくは超音波分散機を用いて溶剤を攪拌する方法、又は溶剤に界面活性剤を添加する方法を使用できる。また、これら2つの方法を組み合わせて使用してもよい。
塗布工程において塗布液を塗布する方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法を使用できる。
乾燥工程における塗布液の乾燥方法の例としては、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、塗布液を熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理温度は、例えば40℃以上150℃以下であり、熱処理時間は、例えば3分間以上120分間以下である。
なお、上記電子写真感光体の製造方法は、要求される感光体の構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、感光層を形成するための材料は、一度に溶剤に添加されてもよいし、複数回に分けて溶剤に添加されてもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品を塗布液として使用することで、塗布液調製工程を省略できる。また、電子写真感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程、及び/又は保護層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
[画像形成装置]
本実施形態の電子写真感光体は、例えば、画像形成装置の像担持体として好適に使用できる。画像形成装置は、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。本実施形態の電子写真感光体を適用した画像形成装置は、除電部を省略した除電レス方式を採用して、除電部を備えない構成とすることができる。除電レス方式の画像形成装置では、帯電部が、像担持体に対する帯電を除電レスで繰り返し行うように構成される。画像形成装置から除電部を省略すると、感光体の帯電電位が低下する傾向がある。しかしながら、本実施形態の電子写真感光体は、帯電を繰り返した場合であっても、感光体の帯電電位の安定性に優れる傾向がある。そのため、画像形成装置に本実施形態の電子写真感光体を適用することで、画像形成装置が除電器を備えない場合であっても、画像形成装置における感光体の帯電電位の低下を抑制できると考えられる。ただし、必要に応じて、画像形成装置を、除電器を備える構成にしてもよい。
以下、図6を参照して、本実施形態の電子写真感光体を適用した画像形成装置の一例について説明する。なお、図6に示される画像形成装置は、像担持体(感光体1)と、帯電部(帯電装置27)と、露光部(露光装置28)と、現像部(現像装置29)と、転写部(画像形成部9)とを備える。帯電部は、像担持体の表面を帯電するように構成される。露光部は、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成するように構成される。現像部は、静電潜像を現像してトナー像を形成するように構成される。転写部は、トナー像を像担持体から被転写体へ転写するように構成される。除電レス方式の画像形成装置は、像担持体に対する帯電を帯電部が行った後、露光部による露光、現像部による現像、及び転写部による転写を経て、像担持体の除電を行うことなしに再び帯電部が像担持体を帯電するように構成される。
図6に示すように、画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置6は、箱型の筺体7を有する。また、画像形成装置6は、筺体7内に、給紙部8と、画像形成部9と、定着部10と、搬送ローラー36と、排紙部11とを備える。必要に応じて、画像形成装置6は、クリーニング装置を備えてもよい。
給紙部8は、給紙カセット12と、第一ピックアップローラー13と、給紙ローラー14、15、及び16と、レジストローラー対17と、第二ピックアップローラー18とを備える。給紙部8は、給紙カセット12内の用紙P(又は、図示しない手差しトレイ上に載置された用紙)を画像形成部9へ給紙するように構成される。
画像形成部9は、画像形成ユニット19と、中間転写ベルト20と、二次転写ローラー21と、駆動ローラー30と、従動ローラー31と、バックアップローラー32と、複数の一次転写ローラー33とを備える。画像形成部9は、画像データに基づくトナー像を形成し、形成されたトナー像を中間転写ベルト20に転写(一次転写)し、さらに、中間転写ベルト20に転写されたトナー像を用紙Pに転写(二次転写)するように構成される。中間転写ベルト20は、無端状のベルト回転体である。中間転写ベルト20は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33に架け渡されている。
画像形成ユニット19は、ブラックトナー供給用ユニット22と、シアントナー供給用ユニット23と、マゼンタトナー供給用ユニット24と、イエロートナー供給用ユニット25とを備える。搬送上流(図6では右側)から搬送下流に向けて、ユニット25、24、23、及び22が、この順で配置されている。ユニット22、23、24、及び25はそれぞれ、感光体1(本実施形態の電子写真感光体)と、帯電装置27と、露光装置28と、現像装置29とを備える。
感光体1は、図6中の矢印方向(時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転可能に支持されている。感光体1の回転は、例えば図示しない制御部(より具体的には、コンピューター等)により制御される。感光体1のプロセススピードを120mm/秒以上にすることで、画像形成を高速で行って、画像形成効率を向上させることが可能になる。プロセススピードが速い高速プロセスにおいては、酸化性ガス(例えば、オゾン又はNOx)の発生により、感光体の劣化が起き易い傾向がある。しかしながら、本実施形態の電子写真感光体は、帯電を繰り返した場合であっても、感光体の帯電電位の安定性に優れる傾向がある。そのため、画像形成装置に本実施形態の電子写真感光体を適用することで、プロセススピードが120mm/秒以上である場合であっても、画像形成装置における感光体1の劣化を抑制できると考えられる。ただし、必要に応じて、プロセススピードを120mm/秒未満にしてもよい。
帯電装置27は、感光体1の表面を略均一に正極帯電させるように構成される。帯電装置27としては、例えば、コロナ帯電装置、帯電ローラー、又は帯電ブラシを好適に使用できる。帯電装置27から発生するガス(例えば、酸化性ガス)の量を抑制するためには、帯電装置27として、接触方式の帯電装置(より具体的には、帯電ローラー又は帯電ブラシ等)を使用することが好ましく、帯電ローラーを使用することがより好ましい。帯電ローラーは、例えば、感光体1と接触したまま感光体1の回転に従って回転するように構成される。帯電ローラーとしては、例えば、回転可能に支持された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備える帯電ローラーが好ましい。樹脂層を構成する樹脂としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂を好適に使用できる。また、樹脂層に無機材料(例えば、無機微粒子)を含有させてもよい。ただし、必要に応じて、非接触方式の帯電装置27を使用してもよい。
感光体1の磨耗を抑制するためには、帯電装置27が感光体1に印加する電圧が直流電圧であることが好ましい。帯電装置27が感光体1に直流電圧を印加する場合、その電圧値は、1000V以上2000V以下であることが好ましく、1200V以上1800V以下であることがより好ましく、1400V以上1600V以下であることがさらに好ましい。ただし、必要に応じて、帯電装置27が感光体1に印加する電圧を、交流電圧にしてもよいし、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧にしてもよい。
露光装置28は、帯電された感光体1の表面を露光することで、感光体1の表面に静電潜像を形成するように構成される。露光装置28としては、レーザー走査ユニットを使用できる。
定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備える。定着部10は、用紙Pに転写されたトナー像を定着させるように構成される。
排紙部11は、トナー像が定着した用紙Pを排紙するように構成される。排紙部11は、用紙Pを受ける排紙トレイ37を有する。例えば、筺体7の頂部が凹没されることによって、排紙トレイ37が形成される。
本実施形態の電子写真感光体をユニット化してもよい。また、電子写真感光体と共に、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部、及び除電部からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化してもよい。以下、ユニット化された電子写真感光体を、プロセスカートリッジと記載する。
画像形成装置の保守性を向上させるためには、少なくとも電子写真感光体を含むプロセスカートリッジが、画像形成装置に対して着脱自在であることが好ましい。プロセスカートリッジを交換することで、感光体が劣化した場合に、容易かつ迅速に感光体等を交換することが可能になる。
以上説明した画像形成装置によれば、本実施形態の電子写真感光体を用いて、安定して高画質の画像を形成することが可能になる。
以下、本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係る感光体A−1〜A−8、B−1〜B−6、C−1〜C−2、D−1〜D−2、E−1〜E−6、F−1〜F−2、G−1〜G−3、H−1〜H−6、及びI−1〜I−2(それぞれ電子写真感光体)を示す。
Figure 0006078085
表1中、「CGM」は電荷発生剤を示し、「H2Pc」は、式(H2Pc)で表される無金属フタロシアニンを示し、「TiOPc」は、式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンを示し、「x−」、「y−」はそれぞれ、フタロシアニンの結晶型(X型、Y型)を示す。「y−TiOPc(A)」はY型チタニルフタロシアニン(A)を示し、「y−TiOPc(C)」はY型チタニルフタロシアニン(C)を示す。
また、表1中、「ETM」は電子輸送剤を示す。ETM及び添加剤の各々の「量」は、バインダー樹脂100質量部に対する電子輸送剤又は添加剤の量(質量部)を示す。ETM及び添加剤の各々の「種類」は、前述の式を示す。例えば「1−1」は、式(1−1)で表される化合物を示す。
また、表1中、「HTM」は正孔輸送剤を示す。「HTM−A」、「HTM−B」、「HTM−C」、「HTM−D」はそれぞれ、下記式(HTM−A)、式(HTM−B)、式(HTM−C)、式(HTM−D)で表される化合物を示す。
Figure 0006078085
Figure 0006078085
Figure 0006078085
Figure 0006078085
[感光体の調製]
バインダー樹脂100質量部と、電荷発生剤3質量部と、表1に示される量の正孔輸送剤及び電子輸送剤と、テトラヒドロフラン800質量部とを、ボールミルの容器に加えた。また、感光体E−1〜E−6の調製ではそれぞれ、添加剤も容器に加えた(表1参照)。バインダー樹脂としては、下記式(Resin−A)で表される繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30000)を用いた。
Figure 0006078085
続けて、ボールミルを用いて容器内容物を50時間混合して、テトラヒドロフラン中に材料を分散させた。その結果、感光層用塗布液が得られた。
続けて、得られた塗布液を、ディップコート法により導電性基体上に塗布した。導電性基体としては、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)を用いた。
続けて、塗布された塗布液(塗膜)を100℃で60分間加熱し、塗膜からテトラヒドロフランを除去した。その結果、導電性基体と、導電性基体上に直接的に設けられた厚さ25μmの単層型感光層とを備える電子写真感光体が得られた。
[評価方法]
各試料(感光体A−1〜A−8、B−1〜B−6、C−1〜C−2、D−1〜D−2、E−1〜E−6、F−1〜F−2、G−1〜G−3、H−1〜H−6、及びI−1〜I−2)の評価方法を、以下に示す。
(耐オゾン性)
下記方法に従って、試料(感光体)をオゾンに曝露し、曝露前後での試料の表面電位の変化(ΔV1)に基づいて感光体の耐オゾン性を評価した。評価機として、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いた。
感光体の耐オゾン性を評価する場合には、まず、上記評価機に試料(感光体)をセットし、評価機を用いて、常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)環境下、電流8μA(周速31rpm)の条件で、試料を4周回転させて帯電させる初期帯電試験を行った。また、初期帯電試験中、試料の表面電位を測定した。そして、測定された4周の平均の表面電位を、初期電位V11[V]とした。
次に、初期帯電試験を行った試料(感光体)を、オゾン濃度10ppmかつ常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)の暗所に6時間静置する、オゾン曝露試験を行った。そして、オゾン曝露試験直後の試料の表面電位を測定し、測定された表面電位を、曝露後電位V12[V]とした。曝露後電位V12は、初期電位V11と同様の条件で測定した。
続けて、下記式に従い、得られた初期電位V11及び曝露後電位V12に基づいて、電位差ΔV1[V]を算出した。
(式)ΔV1=V11−V12
下記基準(耐オゾン性が優れているほうから、A、B、C、D)に従って、試料(感光体)の耐オゾン性を評価した。
A:ΔV1が30V未満であった。
B:ΔV1が30V以上40V未満であった。
C:ΔV1が40V以上50V未満であった。
D:ΔV1が50V以上であった。
(繰り返し特性)
下記方法に従って、試料(感光体)について、帯電及び露光を交互に繰り返す耐久試験を行い、耐久試験の前後での試料の表面電位の変化(ΔV2)に基づいて感光体の繰り返し特性を評価した。評価機として、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いた。
感光体の繰り返し特性を評価する場合には、まず、上記評価機に試料(感光体)をセットし、評価機を用いて、常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)環境下、周速100rpm(プロセススピード157mm/秒)で、試料の表面電位が+700Vになるように、試料を帯電させた。
次に、バンドパスフィルターを用いてハロゲンランプの光から単色光(波長:780nm、半値幅:20nm)を取り出し、取り出された単色光を、上述のようにして帯電させた試料(感光体)の表面に、露光後の1周目の表面電位が180Vになるように光量を設定した。そして、同様の帯電及び露光を1周ずつ交互に繰り返す耐久試験を1000セット行った。耐久試験中の試料(感光体)の表面電位を測定し、10セット目の帯電時の平均表面電位を初期電位V21[V]、1000セット目の帯電時の平均表面電位をV22[V]とした。露光後に感光体の除電は行わなかった。
続けて、下記式に従い、得られた初期電位V21及び耐久試験後電位V22に基づいて、電位差ΔV2[V]を算出した。
(式)ΔV2=V21−V22
下記基準(繰り返し特性が優れているほうから、A、B、C、D)に従って、試料(感光体)の繰り返し特性を評価した。
A:ΔV2が30V未満であった。
B:ΔV2が30V以上40V未満であった。
C:ΔV2が40V以上50V未満であった。
D:ΔV2が50V以上であった。
[評価結果]
感光体A−1〜A−8、B−1〜B−6、C−1〜C−2、D−1〜D−2、E−1〜E−6、F−1〜F−2、G−1〜G−3、H−1〜H−6、及びI−1〜I−2の各々についての評価結果を、表2に示す。
Figure 0006078085
感光体A−1〜A−8、B−1〜B−6、C−1〜C−2、D−1〜D−2、E−1〜E−6、F−1〜F−2、及びG−1〜G−3(実施例1〜29に係る感光体)ではそれぞれ、感光層が、電荷発生剤として、フタロシアニン又はその誘導体を含有していた。また、感光層が、電子輸送剤として、式(1)又は(2)で表される化合物(ETM1)と、式(3)、式(4)、及び式(5)のいずれかで表される化合物(ETM2)とを、少なくとも1種ずつ含有していた。バインダー樹脂100質量部に対して、ETM1及びETM2の総量は60質量部以上120質量部以下であり、ETM1の量は35質量部以上80質量部以下であり、ETM2の量は25質量部以上40質量部以下であった。実施例1〜29に係る感光体はそれぞれ、耐オゾン性及び繰り返し特性に優れていた。
本発明に係る電子写真感光体は、画像形成装置に好適に利用できる。
1 感光体
2 導電性基体
3 感光層
4 下引き層
5 保護層
6 画像形成装置
7 筺体
8 給紙部
9 画像形成部
10 定着部
11 排紙部
12 給紙カセット
13 第一ピックアップローラー
14 給紙ローラー
15 給紙ローラー
16 給紙ローラー
17 レジストローラー対
18 第二ピックアップローラー
19 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
21 二次転写ローラー
22〜25 ユニット
27 帯電装置
28 露光装置
29 現像装置
30 駆動ローラー
31 従動ローラー
32 バックアップローラー
33 一次転写ローラー
34 加熱ローラー
35 加圧ローラー
36 搬送ローラー
37 排紙トレイ
40 転写ベルト
41 転写ローラー
42 吸着ローラー

Claims (11)

  1. 導電性基体と、前記導電性基体上に直接的又は間接的に設けられた感光層とを備える電子写真感光体であって、
    前記感光層は、少なくとも電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を含有する単層型感光層であり、
    前記感光層は、前記電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニンを含有するとともに、前記電子輸送剤として、第1化合物と第2化合物とを、少なくとも1種ずつ含有し、
    前記第1化合物と前記第2化合物との組合せは、
    前記第1化合物が下記式(1−5)で表される化合物であり、かつ、前記第2化合物が下記式(3−1)、(3−7)、及び(4−3)のいずれか1つで表される化合物である第1の組合せと、
    前記第2化合物が下記式(3−1)で表される化合物であり、かつ、前記第1化合物が下記式(1−1)、(2−1)、(2−5)、(2−7)、(2−10)、(2−16)、及び(2−26)のいずれか1つで表される化合物である第2の組合せと、
    のいずれかの組合せであり、
    前記バインダー樹脂100質量部に対して、前記第1化合物及び前記第2化合物の総量は60質量部以上120質量部以下であり、前記第1化合物の量は35質量部以上80質量部以下であり、前記第2化合物の量は25質量部以上40質量部以下である、電子写真感光体。
    Figure 0006078085
    Figure 0006078085
    Figure 0006078085
  2. 前記感光層に含有される前記電子輸送剤は、1種類の前記第1化合物及び1種類の前記第2化合物のみである、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記感光層は、下記式(6)又は(7)で表される第3化合物を少なくとも1種含有する、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
    Figure 0006078085
    式(6)中、
    61、R62、R63、R64、R65、R66、R67、R68、R69、及びR60は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリール基、置換基を有してもよい炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、及び置換基を有してもよい複素環基からなる群より選択される基を表し、
    6は、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルキレン基を表し、nは、0又は1を表す。
    Figure 0006078085
    式(7)中、
    71、R72、及びR73は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1以上12以下のアルコキシ基(ただし、アリールオキシ基を除く)、置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリール基、及び置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリールオキシ基からなる群より選択される基を表し、n、m、及びlは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。
  4. 前記感光層は、前記電子輸送剤として、前記式(1−1)で表される化合物と前記式(3−1)で表される化合物とを含有し、
    前記感光層は、前記式(6)で表される第3化合物として、下記式(6−3)で表される化合物を含有する、請求項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0006078085
  5. 前記感光層は、前記正孔輸送剤として、下記式(HTM−3)で表される化合物を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0006078085
    [式(HTM−3)中、Q31、Q32、Q33、Q34、Q35、Q36、Q37、及びQ38は、各々独立して、水素原子、炭素数1以上8以下のアルキル基、炭素数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表し、nは0以上5以下の整数を表し、mは0以上4以下の整数を表し、lは0又は1の整数を表し、Q33、Q34、Q35、Q36、及びQ37のうち隣り合う基が互いに結合して環を形成していてもよい。]
  6. 前記感光層は、前記式(HTM−3)で表される化合物として、下記式(HTM−A)で表される化合物を含有する、請求項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0006078085
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体を製造する方法であって、
    少なくとも前記電荷発生剤、前記電子輸送剤、前記正孔輸送剤、前記バインダー樹脂、及び溶剤を含有する塗布液を、前記導電性基体上に塗布し、前記塗布した塗布液に含まれる溶剤を乾燥させて前記感光層を形成する感光層形成工程を含み、
    前記溶剤が、テトラヒドロフラン及びトルエンの少なくとも一方を含有する、電子写真感光体の製造方法。
  8. 像担持体と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部とを備える画像形成装置であって、
    前記像担持体は、請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備える、画像形成装置。
  9. 前記像担持体のプロセススピードは120mm/秒以上である、請求項に記載の画像形成装置。
  10. 前記帯電部は、前記像担持体に対する帯電を除電レスで繰り返し行うように構成される、請求項8又は9に記載の画像形成装置。
  11. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真感光体を備える、プロセスカートリッジ。
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