以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、何ら規定していなければ、それぞれ次の意味である。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、又はn−オクチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、が挙げられる。メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基と、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基における炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、又は4−フェニルブチル基が挙げられる。
炭素原子数7以上9以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上9以下のアラルキル基は、フェニル基と、炭素原子数1以上3以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上9以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基、又は3−フェニルエチル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデシル基が挙げられる。
<第一実施形態:電子写真感光体>
第一実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1を参照して、感光体の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体1の一例を示す概略断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3として単層型感光層3cとを備える。単層型感光層3cは、一層である。図1(b)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、単層型感光層3cと、中間層(下引き層)4とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と単層型感光層3cとの間に設けられる。また、図1(c)に示すように、単層型感光層3c上に保護層5が設けられてもよい。
単層型感光層3cの厚さは、単層型感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。単層型感光層3cの厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る感光体1は、電子輸送剤として2種以上の化合物を含む。2種以上の化合物のうちの一方は、一般式(1)で表されるナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(以下、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)と記載することがある)である。電子輸送剤の還元電位差の絶対値の最大値は、0.05Vより大きい。本実施形態に係る感光体1は、上記の構成を有するため、転写メモリーの発生を抑制する。その理由は、以下のように推測される。
便宜上、はじめに転写メモリーについて説明する。電子写真方式の画像形成では、例えば、以下の1)〜5)の工程を含む画像形成プロセスが実施される。ここで、反転現像方式及び正極性の帯電極性である画像形成装置を例に挙げて説明する。
1)感光体の表面を帯電する帯電工程、
2)感光体の表面に静電潜像を形成する露光工程、
3)静電潜像をトナー像として現像する現像工程、
4)形成されたトナー像を、感光体から記録媒体へ転写する転写工程、及び
5)記録媒体に転写されたトナー像を定着する工程。
しかし、このような画像形成プロセスでは、感光体を回転させて使用するため、転写工程に起因する転写メモリーが発生する場合がある。具体的には、以下の通りである。帯電工程において、像担持体の表面は、一様に一定の正極性の電位まで帯電される。続いて、露光工程及び現像工程を経て、転写工程において、帯電とは逆極性(負極性)の転写バイアスが、記録媒体を介して、像担持体に印加される。印加された転写バイアスの影響により、感光体表面の非露光領域(非画像領域)の電位が大きく低下し、低下した状態が保持されることがある。上記説明した画像形成における感光体の周を基準とする。この電位低下の影響を受け、非露光領域は、次の周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電されにくい。一方、露光領域(画像領域)の電位は、転写バイアスが印加された状態であっても、露光領域にトナーが付着しているため、感光体表面に直接印加されにくく、低下しにくい。このため、露光領域は、次の周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され易い。その結果、露光領域と非露光領域とで帯電電位が異なり、像担持体の表面を一様に一定の正極性の電位まで帯電させることが困難となる場合がある。このように感光体の画像形成プロセスにおける転写の影響を引きずって非露光領域の帯電能が低下し電位差を生じる現象を、転写メモリーという。
既に述べたように、第一実施形態に係る感光体1は、電子輸送剤として2種以上の化合物を含む。2種以上の化合物のうちの一方は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)である。電子輸送剤の還元電位差の絶対値の最大値は、0.05Vより大きい。第一実施形態に係る感光体1は上記の構成を有するため、感光層中での非露光領域の残留電荷と露光領域の残留電荷とを均一化する傾向にある。よって、第一実施形態に係る感光体1は転写メモリーの発生を抑制すると考えられる。なお、上記説明では、直接転写方式を採用する画像形成装置を例に挙げている。中間転写方式を採用する画像形成装置においても同様に、第一実施形態に係る感光体1は、転写メモリーの発生を抑制できる。
以上、図1を参照して、感光体1の構造について説明した。
感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂と、電子輸送剤とを含有する。感光層は、添加剤を更に含有してもよい。以下、感光体の要素として導電性基体、電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤、バインダー樹脂、添加剤、及び中間層を説明する。また、感光体の製造方法も説明する。
[1.導電性基体]
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体としては、例えば、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、又はインジウムが挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は真鍮等)が挙げられる。これらの導電性を有する材料の中でも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
[2.電子輸送剤]
電子輸送剤は、2種以上の化合物を含む。2種類以上の化合物の一方は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)である。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)は、一般式(1)で表される。
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とフェニルカルボニル基との何れかを有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基からなる群より選択される基を表す。基は、1以上のハロゲン原子で置換されてもよい。R1及びR2のうち少なくとも一方が1以上のハロゲン原子を有する。
一般式(1)中、R1及びR2の表す炭素原子数6以上14以下のアリール基は、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はフェニルカルボニル基が挙げられ、塩素原子、メチル基、エチル基、又はフェニルカルボニル基が好ましい。置換基の数は、1以上3以下の整数であることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基がフェニル基である場合、フェニル基における置換基の置換位置は、例えば、フェニル基が窒素原子と結合する位置に対して、オルト位(o位)、メタ位(m位)、パラ位(p位)、又はこれらの少なくとも2つが挙げられる。置換基を有するフェニル基としては、例えば、4−クロロ−2−フェニルカルボニルフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、又は2−エチル−6−メチルフェニル基が挙げられる。
一般式(1)中、R1及びR2の表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基が好ましく、1−フェニルエチル基がより好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はハロゲン原子が挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル基が挙げられる。
一般式(1)中、R1とR2とが互いに同一であっても異なってもよい。R1とR2とは互いに同一である場合、R1及びR2は、1以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、又はフェニルカルボニル基及びハロゲン原子を各々1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
一般式(1)中、R1とR2とが互いに異なる場合、R1及びR2のうちの一方が、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、R1及びR2のうちの他方が、1以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、又はフェニルカルボニル基を有してもよく、1以上のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
一般式(1)中、R1及びR2の表す基は、1以上のハロゲン原子で置換されてもよく、R1及びR2のうち少なくとも一方が1以上のハロゲン原子を有する。R1の表す基の有するハロゲン原子の数と、R2の表す基の有するハロゲン原子の数との総数は、1以上の整数であり、3又は4であることが好ましい。
ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の具体例としては、化学式(1−1)〜(1−6)で表されるナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(以下、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)〜(1−6)と記載することがある)が挙げられる。
これらのうち、ナフタレンカルボジイミド誘導体(1−1)、(1−2)、及び(1−5)が好ましい。以下、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)(1−2)、及び(1−5)を、それぞれ電子輸送剤(ETM−1)、(ETM−17)、及び(ETM−18)と記載することがある。
(ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の製造方法)
(R1とR2とが互いに異なる場合)
一般式(1)中、R1とR2とが互いに異なる場合、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)は、例えば、反応式(R−1)で表す反応式、反応式(R−2)で表す反応式、及び反応式(R−3)で表す反応式(以下、それぞれ反応(R−1)、反応(R−2)及び反応(R−3)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によって製造される。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の製造方法は、例えば、反応(R−1)と、反応(R−2)と、反応(R−3)とを含む。
反応(R−1)において、R1は一般式(1)中のR1と同義である。Q30は、アルキル基を表し、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。
反応(R−1)では、1モル当量の一般式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)と記載することがある)と1モル当量の一般式(B)で表される化合物(第一級アミン化合物)(以下、化合物(B)と記載することがある)とを塩基の存在下で反応させて、1モル当量の一般式(C)で表される化合物(以下、化合物(C)と記載することがある)を得る。化合物(C)は中間生成物である。反応(R−1)では、1モルの化合物(A)に対して、1モル以上2.5モル以下の化合物(B)を添加することが好ましい。1モルの化合物(A)に対して1モル以上の化合物(B)を添加すると、化合物(C)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(A)に対して2.5モル以下の化合物(B)を添加すると、反応(R−1)後に未反応の化合物(B)が残留し難く、化合物(C)の精製が容易となる。反応(R−1)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R−1)の反応時間は1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(R−1)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジオキサンが挙げられる。塩基は、化合物(C)の収率を向上させる観点から、求核性が低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
反応(R−2)において、R1は一般式(1)中のR1と同義である。反応(R−2)において、Q30は反応(R−1)におけるQ30と同義である。
反応(R−2)では、1モル当量の化合物(C)を酸の存在下で反応して、1モル当量の一般式(D)で表される化合物(以下、化合物(D)と記載することがある)を得る。化合物(D)は中間生成物である。反応(R−2)では、化合物(C)のエステルが酸存在下で加水分解し、ジカルボン酸となった後、ジカルボン酸が閉環し、無水カルボン酸となる。その結果、化合物(D)が生成する。反応(R−2)の反応時間は、5時間以上30時間以下であることが好ましい。反応(R−2)の反応温度は、70℃以上150℃以下であることが好ましい。酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸が好ましい。酸は、溶媒として機能してもよい。
反応(R−3)において、R1及びR2は、それぞれ一般式(1)中のR1及びR2と同義である。
反応(R−3)では、1モル当量の化合物(D)と、1モル当量の一般式(E)で表される化合物(第一級アミン化合物)(以下、化合物(E)と記載することがある)とを塩基の存在下で反応させて、1モル当量のナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)を得る。反応(R−3)では、1モルの化合物(D)に対して、1モル以上2.5モル以下の化合物(E)を添加することが好ましい。1モルの化合物(D)に対して1モル以上の化合物(E)を添加すると、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(D)に対して2.5モル以下の化合物(E)を添加すると、反応(R−3)後に未反応の化合物(E)が残留し難く、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の精製が容易となる。反応(R−3)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R−3)の反応時間は1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(R−3)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ジオキサンが挙げられる。塩基は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の収率を向上させる観点から、求核性が低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
なお、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の製造方法は、反応(R−1)〜(R−3)におけるR1を有する第一級アミン及びR2を有する第一級アミンによるイミド化の順番を変更してもよい。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)は、例えば、反応式(R’−1)で表す反応式、反応式(R’−2)で表す反応式、及び反応式(R’−3)で表す反応式(以下、それぞれ反応(R’−1)、反応(R’−2)及び反応(R’−3)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によっても製造される。
詳しくは、反応(R’−1)は、化合物(B)を化合物(E)に変更した以外は、反応(R−1)と同様の反応である。反応(R’−2)は、化合物(C)を一般式(C’)で表される化合物(以下、化合物(C’)と記載することがある)に変更した以外は、反応(R−2)と同様の反応である。反応(R’−3)は、化合物(D)を一般式(D’)で表される化合物(以下、化合物(D’)と記載することがある)に変更し、化合物(E)を化合物(B)に変更した以外は、反応(R−3)と同様の反応である。
(R1とR2とが同一である場合)
一般式(1)中、R1とR2とが互いに同一である場合、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)は一段階で合成することもできる。かかる場合、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)は、例えば、反応式(R−4)で表す反応式(以下、反応(R−4)と記載することがある)にしたがって又はこれに準ずる方法によって製造される。一般式(1)中、R1とR2とが互いに同一である場合、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の製造方法は、例えば、反応(R−4)を含む。なお、便宜上、反応式(R−4)では、一般式(1)中のR2をR1に置き換えて示している。
反応(R−4)では、1モル当量の化学式(F)で表される化合物(以下、化合物(F)と記載することがある)と、1モル当量の一般式(G)で表される化合物(第一級アミン化合物)(以下、化合物(G)と記載することがある)とを塩基の存在下で反応させて、1モル当量のナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)を得る。反応(R−4)では、1モルの化合物(F)に対して、2モル以上5モル以下の化合物(G)を添加することが好ましい。1モルの化合物(F)に対して2モル以上の化合物(G)を添加すると、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の収率を向上させ易い。一方、1モルの化合物(F)に対して5モル以下の化合物(G)を添加すると、反応(R−4)後に未反応の化合物(G)が残留し難く、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の精製が容易となる。反応(R−4)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R−4)の反応時間は1時間以上8時間以下であることが好ましい。反応(R−4)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、ピコリン(メチルピリジン)が挙げられる。塩基は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の収率を向上させる観点から、求核性が低いことが好ましい。このような塩基としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)が挙げられる。
ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の製造方法は、必要に応じて適宜な工程を含んでもよい。このような工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上75質量部以下であることが特に好ましい。
電子輸送剤は、2種以上の化合物を含む。2種類以上の化合物の他方は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)以外の別の化合物である。別の化合物としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物(ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)以外のジイミド系化合物)、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのうち、2種以上の化合物の他方として、一般式(ETM13)、一般式(ETM14)、又は一般式(ETM15)で表される化合物が好ましい。
一般式(ETM13)中、R3及びR4は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、t−ブチル基を表すことが好ましい。
一般式(ETM14)中、R5及びR6は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、t−ブチル基を表すことが好ましい。R7は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、フェニル基を表すことが好ましい。
一般式(ETM15)中、R8、R9、R10、及びR11は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、水素原子を表すことが好ましい。
一般式(ETM13)で表される化合物としては、例えば、化学式(ETM−13)で表される化合物(以下、電子輸送剤(ETM−13)と記載することがある)が挙げられる。
一般式(ETM14)で表される化合物としては、例えば、化学式(ETM−14)で表される化合物(以下、電子輸送剤(ETM−14)と記載することがある)が挙げられる。
一般式(ETM15)で表される化合物としては、例えば、化学式(ETM−15)で表される化合物(以下、電子輸送剤(ETM−15)と記載することがある)が挙げられる。
電子輸送剤の還元電位は、以下の測定条件によりサイクリックボルタメトリー測定を行って求める。
作用電極:グラッシーカーボン
対極:白金
参照電極:銀/硝酸銀(0.1moL/L、AgNO3−アセトニトリル溶液)
試料溶液電解質:過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.1moL)
測定物質:電子受容化合物(0.001moL)
溶剤:ジクロロメタン(1L)
電子輸送剤が3種以上の化合物を含む場合における還元電位差の絶対値の最大値を説明する。ここで、電子輸送剤が3種の化合物を含む場合を例に挙げる。3種の化合物を電子輸送剤A、電子輸送剤B、及び電子輸送剤Cとする。まず、サイクリックボルタンメトリー測定により、電子輸送剤A、電子輸送剤B、及び電子輸送剤Cの還元電位を得る。得られた3つの還元電位から複数の還元電位差を得る。還元電位差は、具体的には、還元電位差(電子輸送剤A及び電子輸送剤B)、還元電位差(電子輸送剤B及び電子輸送剤C)、及び還元電位差(電子輸送剤C及び電子輸送剤A)である。その後、得られた還元電位差のうち最大値を選択し、還元電位差の絶対値の最大値とする。
電子輸送剤の還元電位差の絶対値の最大値は、0.05Vより大きい。また、電子輸送剤の還元電位差の絶対値の最大値は0.05Vより大きく0.40V以下が好ましい。0.05Vより大きく0.40V以下であると、感光層の露光領域の残留電位と、非露光領域の残留電位とが更に均一に成り易く電子輸送能が低下しにくい。
[3.正孔輸送剤]
正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物又は縮合多環式化合物を使用することができる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、ジアミン誘導体(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等)、オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等)、スチリル化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等)、カルバゾール化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、又はトリアゾール系化合物が挙げられる。これらの正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの正孔輸送剤のうち、一般式(HTM1)、一般式(HTM3)、又は一般式(HTM5)で表される正孔輸送剤(以下、それぞれ正孔輸送剤(HTM1)、正孔輸送剤(HTM3)、及び正孔輸送剤(HTM5)と記載することがある)が好ましい。
一般式(HTM1)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13、及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q9及びQ15は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。bは、0以上5以下の整数を表す。bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ9は、互いに同一でも異なっていてもよい。cは、0以上4以下の整数を表す。cが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ15は、互いに同一でも異なっていてもよい。kは、0又は1を表す。
一般式(HTM1)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13、及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上3以下のアルキル基(より好ましくは、メチル基又はエチル基)を表し、b及びcは0を表し、kは0を表すことが好ましい。
一般式(HTM3)中、Q1は、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。Q2は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、又はフェニル基で表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7のうちの隣接した二つが互いに結合して環を形成してもよい。aは、0以上5以下の整数を表す。aが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(HTM3)中、Q1、Q3、Q4、Q6、及びQ7は水素原子を表し、aは0を表し、Q5は炭素原子数1以上6以下のアルキル基(より好ましくは、n−ブチル基)を表すことが好ましい。
一般式(HTM5)中、Q16、Q17、Q18、及びQ19は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。Q16、Q17、Q18、及びQ19のうち少なくとも1つは、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表す。アリール基は、炭素原子数1以上3以下のアルキル基又は炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を有してもよい。
一般式(HTM5)中、Q16、Q17、Q18、及びQ19は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上3以下のアルキル基(より好ましくは、メチル基)、又はフェニル基を表すことが好ましい。
一般式(HTM1)で表される正孔輸送剤は、化学式(HTM−1)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(HTM−1)と記載することがある)が好ましい。
一般式(HTM3)で表される正孔輸送剤は、化学式(HTM−3)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(HTM−3)と記載することがある)が好ましい。
一般式(HTM5)で表される正孔輸送剤は、化学式(HTM−5)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(HTM−5)と記載することがある)が好ましい。
正孔輸送剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上75質量部以下であることが特に好ましい。
[4.電荷発生剤]
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(より具体的には、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、又はアモルファスシリコン等)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニン(以下、電荷発生剤(CGM−1)と記載することがある)又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CGM−2)で表されるチタニルフタロシアニン(以下、電荷発生剤(CGM−2)と記載することがある)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、X型、α型、β型、Y型、V型、又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、又はY型結晶(以下、それぞれα型チタニルフタロシアニン、β型チタニルフタロシアニン、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。デジタル光学式の画像形成装置としては、例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリが挙げられる。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましい。感光層がナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)を含有する場合に転写メモリーの発生を更に抑制するためには、電荷発生剤としては、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。短波長レーザー光の波長は、例えば、350nm以上550nm以下である。
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
[5.バインダー樹脂]
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、アクリル酸系樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ−アクリル酸系樹脂(より具体的には、エポキシ化合物のアクリル酸誘導体付加物等)又はウレタン−アクリル酸系樹脂(ウレタン化合物のアクリル酸誘導体付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた感光層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、下記化学式(Resin−1)で表されるビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(以下、Z型ポリカーボネート樹脂(Resin−1)と記載することがある)、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂又はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)との相溶性が良好であり、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の感光層中での分散性が向上する観点から、化学式(Resin−1)、化学式(Resin−2)、又は化学式(Resin−3)で表される繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂(以下、それぞれポリカーボネート樹脂(Resin−1)、ポリカーボネート樹脂(Resin−2)、及びポリカーボネート樹脂(Resin−3)と記載することがある)が好ましい。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、40,000以上であることが好ましく、40,000以上52,500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が40,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層を形成し易くなる。
[6.添加剤]
感光体の感光層は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、又はレベリング剤が挙げられる。
[7.中間層]
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛等)の粒子又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層の添加剤と同様である。
[8.感光体の製造方法]
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電子輸送剤と、正孔輸送剤と、電荷発生剤と、バインダー樹脂と、必要に応じて添加される各種添加剤とを、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
感光層用塗布液(以下、塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル類(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、ケトン類(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、エステル類(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
また、第一実施形態に係る感光体は、接触帯電方式の直流印加型の画像形成装置に像担持体として備えることができる。接触帯電方式の直接印加型の画像形成装置は、帯電部を備える。帯電部は、像担持体の表面と接触しながら直流電圧を印加して像担持体の表面を帯電する。
以上、第一実施形態に係る感光体について説明した。第一実施形態の感光体によれば、転写メモリーの発生を抑制することができる。
<第二実施形態:画像形成装置>
第二実施形態は画像形成装置に関する。以下、図2を参照して第二実施形態に係る画像形成装置の一態様について説明する。図2は、第二実施形態に係る画像形成装置の構成を示す図である。第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体は、第一実施形態に係る感光体1である。帯電部42は、像担持体の表面と接触しながら直流電圧を印加して像担持体の表面を帯電する。帯電部42の帯電極性は、正極性である。露光部44は、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する。現像部46は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部48は、トナー像を像担持体から転写体へ転写する。以上、第二実施形態に係る画像形成装置の概要を記載した。
第二実施形態に係る画像形成装置100は、転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備える。第一実施形態に係る感光体1は、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。
まず、便宜上、転写メモリーに起因する画像不良について説明する。上述のように画像形成プロセスで転写メモリーが発生すると、画像形成における感光体の周を基準としたときに(以下、基準周と記載することがある)、像担持体の表面において次の周の帯電工程で所望の電位が得られない領域は、次の周の帯電工程で所望の電位が得られる領域に比べ、電位が低下する傾向にある。具体的には、像担持体の表面における前周回の非露光領域は、前周回の露光領域に比べ、次周回の帯電時に電位が低下する傾向にある。このため、前周回の非露光領域は、前周回の露光領域に比べ、帯電時の電位が低下し易いため、現像時に正帯電トナーを引き付け易くなる。その結果、基準周の非画像部(非露光領域)を反映した画像が形成され易い。このような基準周の画像部を反映した画像が形成される画像不良が、転写メモリーに起因して発生する画像不良(以下、画像ゴーストと記載することがある)である。
図3を参照して、画像不良が発生した画像を説明する。図3は、画像ゴーストが発生した画像51を示す図である。画像51は、領域53及び領域54を含む。領域53は像担持体1周分に相当する領域であり、領域54も像担持体1周分に相当する領域である。領域53は画像56を含む。画像56は、ドーナツ型のソリッド画像から構成される。領域54は画像60及び画像58を含む。画像60は、ドーナツ型のハーフトーン画像である。画像58は、領域54におけるドーナツ型の白抜きのハーフトーン画像である。画像58は、画像60に比べ画像濃度が濃い。画像58は、領域53の非露光領域を反映し、設計画像濃度より濃くなった画像不良(画像ゴースト)である。なお、領域54の画像は、設計画像上全面ハーフトーン画像から構成される。
第一実施形態に係る感光体1は、上述のように転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制する傾向にある。したがって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備えるため、転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができると考えられる。
以下、各部について詳細に説明する。図2を参照して第二実施形態に係る画像形成装置100を説明する。画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えば、タンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、直接転写方式を採用する。通常、直接転写方式を採用する画像形成装置では、像担持体が転写バイアスの影響を受けやすいため、通常、転写メモリーが発生し易い。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備える。第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備えると、画像形成装置100が直接転写方式を採用する場合であっても、転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制できると考えられる。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、像担持体と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体が設けられる。像担持体は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体の周囲には、帯電部42を基準として像担持体の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46、及び転写部48が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。なお、画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置100は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
帯電部42は、像担持体の表面を帯電する。帯電部の帯電極性は正極性である。帯電部42は、像担持体の表面と接触しながら直流電圧を印加して像担持体の表面を帯電する。帯電部42は、接触方式の帯電部である。接触方式の帯電部42としては、例えば、帯電ローラー又は帯電ブラシが挙げられる。
帯電部42として帯電ローラーは画像形成装置100に備えられる。像担持体の表面を帯電するときに、帯電ローラーは像担持体の表面と接触する。通常、帯電ローラーを備える画像形成装置では、転写メモリーが発生し易い。しかし、第一実施形態に係る感光体1は、像担持体として画像形成装置100に備えられる。第一実施形態に係る感光体1は、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、帯電部42として帯電ローラーは画像形成装置100に備えられる場合であっても、転写メモリーの発生に起因する画像不良の発生を抑制される。
帯電部42が印加する電圧は、直流電圧である。直流電圧のみを印加する帯電部42は、帯電部が交流電圧を印加する場合又は帯電部が直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する場合に比べ、以下に示す優位性がある。帯電部42が直流電圧のみを印加すると、像担持体に印加される電圧値が一定であるため、像担持体の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部42が直流電圧のみを印加すると、感光層3の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができる。
通常、直流電圧は、交流電圧に比べ、転写メモリーが発生し易い傾向にある。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備える。第一実施形態に係る感光体1は、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像保持体と接触して直流電圧を印加する帯電部を備えても、転写メモリーに起因する画像不良の発生を抑制することができる。
露光部44は、帯電された像担持体の表面を露光する。これにより、像担持体の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、像担持体の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。
転写ベルト50は、像担持体と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体の表面から記録媒体Pへ転写する。像担持体から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、像担持体は記録媒体Pと接触している。すなわち、画像形成装置100は、いわゆる直接転写方式を採用する。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。図2のように画像形成装置100が直接転写方式を採用する場合、転写体は、記録媒体Pに相当する。
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
以上、第二実施形態に係る画像形成装置を説明した。第二実施形態に係る画像形成装置は、像担持体として第一実施形態に係る感光体を備えることで、画像不良の発生を抑制することができる。
<第三実施形態:プロセスカートリッジ>
第三実施形態はプロセスカートリッジに関する。第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、第一実施形態に係る感光体1を備える。引き続き、図2を参照して、第三実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、ユニット化された像担持体を備える。プロセスカートリッジは、像担持体に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46、及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジは、例えば、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジには、クリーニング装置(不図示)及び除電器(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体の感度特性等が劣化した場合に、像担持体を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以上、第三実施形態に係るプロセスカートリッジを説明した。第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、像担持体として第一実施形態に係る感光体1を備えることで、転写メモリーの発生に起因する画像不良の発生を抑制することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電子輸送剤、正孔輸送剤、電荷発生剤、及びバインダー樹脂を準備した。
[1−1.電子輸送剤]
電子輸送剤として第一実施形態で説明した電子輸送剤(ETM−13)、電子輸送剤(ETM−14)、電子輸送剤(ETM−15)、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)(電子輸送剤(ETM−1))、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)(電子輸送剤(ETM−17))、及びナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−5)(電子輸送剤(ETM−18))を準備した。更に、電子輸送剤(ETM−2)、電子輸送剤(ETM−3)、電子輸送剤(ETM−6)、電子輸送剤(ETM−8)、及び電子輸送剤(ETM−16)を準備した。電子輸送剤(ETM−2)は化学式(ETM−2)で表される。電子輸送剤(ETM−3)は化学式(ETM−3)で表される。電子輸送剤(ETM−6)は化学式(ETM−6)で表される。電子輸送剤(ETM−8)化学式(ETM−8)で表される。電子輸送剤(ETM−16)は化学式(ETM−16)で表される。
ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)、(1−2)、及び(1−5)は、それぞれ以下の方法で製造した。
[1−1−1.ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の製造]
反応式(r−4)で表される反応(以下、反応(r−4)と記載することがある)にしたがってナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)を製造した。
反応(r−4)では、化合物(F)(ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物)2.68g(10ミリモル)と、化学式(1G)で表される化合物4.64g(20ミリモル)と、ピコリン50mLとをフラスコに投入し、ピコリン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して4時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、イオン交換水をフラスコに投入し、クロロホルムで抽出した。有機層の溶媒(ピコリン)を除去し、残渣を得た。得られた残渣を展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)を得た。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の収量は4.16gであり、反応(r−4)における化合物(F)からのナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の収率は60モル%であった。
[1−1−2.ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−5)の製造]
以下の点を変更した以外は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の製造と同様の方法で、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−5)を製造した。なお、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−5)の製造において使用される各原料は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の製造において対応する原料のモル数と同じモル数で添加した。
ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−5)の製造では、反応(r−4)で使用した化合物(1G)を化合物(5G)に変更した。その結果、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の代わりに、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−5)を得た。表1に反応(r−4)における化合物(F)、化合物(G)、及びナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)を示す。表1中、Fは化合物(F)を示す。1Gは化合物(1G)を示し、5Gは化合物(5G)を示す。
表1にナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の収量及び収率を示す。なお、化合物(5G)は、化学式(5G)で表される。
[1−1−3.ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)の製造]
反応式(r’−1)、(r’−2)及び(r’−3)で表される反応(以下、それぞれ反応(r'−1)、反応(r’−2)、及び反応(r'−3)と記載することがある)にしたがってナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)を製造した。
反応(r’−1)では、化合物(1A)3.42g(10ミリモル)と、化合物(2E)1.35g(10ミリモル)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/2)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(2C’)で表される中間生成物(以下、化合物(2C’)と記載することがある)を得た。
反応(r’−2)では、化合物(2C’)と、トリフルオロ酢酸15mLとをフラスコに投入し、トリフルオロ酢酸溶液を調製した。化合物(2C’)は、反応(r’−1)で得られた全量を反応(r’−2)で使用した。フラスコ内容物の温度を80℃に昇温し、80℃に維持して24時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、トリフルオロ酢酸を除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/4)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(2D’)で表される中間生成物(以下、化合物(2D')と記載することがある)を得た。
反応(r’−3)では、化合物(2D’)と、化学式(2B)で表される化合物2.32g(10ミリモル)と、ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチルを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)を得た。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)の収量は2.69gであり、反応(r’−1)〜(r’−3)における化合物(1A)からのナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)の収率は45モル%であった。
表2に反応(r’−1)〜(r’−3)における化合物(A)、化合物(D)、化合物(B)、及びナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)を示す。
表2にナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)の収量及び収率を示す。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、製造したナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)、(1−2)、及び(1−5)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)を代表例として挙げる。
図4は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の1H−NMRスペクトルを示す。図4中、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示し、横軸は化学シフト(単位:ppm)を示す。以下に、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)の化学シフト値を示す。
ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.70(d, 4H), 7.62−7.75(m, 8H), 7.36−7.55(m, 8H).
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)が得られていることを確認した。他のナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)及び(1−5)も同様にして、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−2)及び(1−5)が得られていることを確認した。
[1−2.正孔輸送剤]
第一実施形態で説明した正孔輸送剤(HTM−1)、正孔輸送剤(HTM−3)、及び正孔輸送剤(HTM−5)を準備した。
[1−3.電荷発生剤]
第一実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−1)及び電荷発生剤(CGM−2)を準備した。電荷発生剤(CGM−1)は、化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニン(X型無金属フタロシアニン)であった。また、電荷発生剤(CGM−1)の結晶構造はX型であった。
電荷発生剤(CGM−2)は、化学式(CGM−2)で表されるチタニルフタロシアニン(Y型チタニルフタロシアニン)であった。また、電荷発生剤(CGM−2)の結晶構造はY型であった。
[1−4.バインダー樹脂]
バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(Resin−1)(帝人株式会社製「パンライト(登録商標)TS−2050」、粘度平均分子量50,000)、ポリカーボネート樹脂(Resin−2)(粘度平均分子量50,000)及びポリカーボネート樹脂(Resin−3)(粘度平均分子量50,000)を準備した。
<2.感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−11)及び感光体(B−1)〜(B−7)を製造した。
[2−1.感光体(A−1)の製造]
容器内に、電荷発生剤としての化合物(CGM−1)5質量部と、正孔輸送剤(HTM−3)50質量部と、電子輸送剤(ETM−1、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1))20質量部及び電子輸送剤(ETM−13)20質量部と、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(Resin−1)100質量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部とを投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて24時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で40分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。
[2−2.感光体(A−2)〜(A−11)及び感光体(B−1)〜(B−7)の製造]
以下の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−11)及び感光体(B−1)〜(B−7)をそれぞれ製造した。感光体(A−1)の製造に用いた電荷発生剤としての化合物(CGM−1)を、表3に示す種類の電荷発生剤に変更した。感光体(A−1)の製造に用いた電子輸送剤(ETM−1、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1))20質量部及び電子輸送剤(ETM−13)20質量部を、表3に示す種類及び含有量の電子輸送剤に変更した。なお、表3に感光体(A−1)〜(A−11)及び感光体(B−1)〜(B−7)の構成を示す。表3中、CGM、HTM、及びETMは、それぞれ電荷発生剤、正孔輸送剤、及び電子輸送剤を示す。表3中、CGM欄のCGM−1及びCGM−2は、それぞれ電荷発生剤(CGM−1)及び(CGM−2)を示す。HTM欄のHTM−1、HTM−3、及びHTM−5は、それぞれ正孔輸送剤(HTM−1)、正孔輸送剤(HTM−3)、及び正孔輸送剤(HTM−5)を示す。ETM欄のETM−1〜ETM−3、ETM−6、ETM−8、及びETM−13〜ETM−18は、それぞれ電子輸送剤(ETM−1)〜(ETM−3)、電子輸送剤(ETM−6)、電子輸送剤(ETM−8)、電子輸送剤(ETM−13)〜(ETM−18)を示す。
<3.感光体の評価>
(画像不良の評価)
実施例1〜11の感光体(A−1)〜(A−11)、及び比較例1〜7の感光体(B−1)〜(B−7)の何れかを画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)に装着した。この画像形成装置は、直流電圧を印加する接触方式の帯電ローラーを帯電部として備える。帯電ローラーは、帯電性スリーブを感光体に接触させて、感光体表面を帯電する。帯電性スリーブは、エピクロルヒドリン樹脂に導電性カーボンを分散させた帯電性ゴムから構成される。また、この画像形成装置は、中間転写方式を採用する。画像形成装置の感光体の動作を安定化させるために、アルファベットの画像を1時間印刷した。続いて、下記操作により評価用画像を作成した。
図5を参照して、評価用画像を説明する。図5は、評価用画像70を示す図である。評価用画像70は、領域72及び領域74を含む。領域72は、像担持体1周分に相当する領域である。領域72は、画像76を含む。画像76は、ドーナツ型のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。このソリッド画像は、2つの同心円1組から構成される。領域74は、像担持体1周分に相当する領域である。領域74は画像78を含む。画像78は、全面ハーフトーン画像(画像濃度12.5%)から構成される。はじめに領域72の画像76を形成し、その後、領域74の画像78を形成した。画像76は感光体1周分に相当する画像であり、画像78は画像76を形成する周を基準として次周回1周分に相当する画像である。この画像形成を10回繰り返した。
次いで、最後に得られた画像(10枚目の画像)を評価用画像とした。評価用画像を目視で観察し、領域74における画像76に対応した画像の有無を確認した。ここで、目視による観察とは、肉眼での観察(肉眼観察)又はルーペ(倍率10倍、TRUSCO社製、TL−SL10K)を介した観察(ルーペ観察)である。転写メモリーに起因する画像不良(画像ゴースト)の発生の有無を確認した。画像ゴーストの発生の有無は、下記の基準に基づいて評価した。なお、評価A及び評価Bを合格とした。
評価A:画像76に対応する画像ゴーストが観察されなかった。
評価B:画像76に対応する画像ゴーストがわずかに観察された。
評価C:画像76に対応する画像ゴーストが観察された。評価用サンプルにおいて観測された画像ゴーストと、画像ゴーストが観測されなかった非画像部とのコントラストが低かった。
表3に示すように、感光体(A−1)〜(A−11)では、感光層は電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤とを含有していた、電子輸送剤は、2種以上の化合物を含んでいた。2種以上の化合物のうちの一方は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)、(1−2)、及び(1−5)の何れか1種であった。ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)、(1−2)、及び(1−5)は、一般式(1)で表されるナフタレンテトラカルボジイミド誘導体であった。2種以上の化合物の他方は、電荷輸送剤(ETM−13)、(ETM−14)、及び(ETM−15)の何れか1種以上であった。電子輸送剤の還元電位差の絶対値の最大値は、0.05V以上であった。表5に示すように、感光体(A−1)〜(A−11)では、画像ゴーストの評価がA(非常に良い)又はB(良い)であった。
表4に示すように、感光体(B−1)〜(B−7)では、感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤とを含有していた。具体的には、感光体(B−1)〜(B−2)では、電子輸送剤の還元電位差の絶対値の最大値は、0.05V未満であった。感光体(B−3)及び(B−5)〜(B−7)では、電子輸送剤は、ナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1)を含んでいなかった。感光体(B−4)では、感光層は電子輸送剤としてナフタレンテトラカルボジイミド誘導体(1−1)のみを含んでいた。表6に示すように感光体(B−1)〜(B−7)では、画像ゴーストの評価がC(悪い)であった。
感光体(A−1)〜(A−11)は、感光体(B−1)〜(B−7)に比べ、転写メモリーの発生を抑制することは明らかである。感光体(A−1)〜(A−11)を備える画像形成装置は、感光体(B−1)〜(B−7)を備える画像形成装置に比べ、転写メモリーの発生に起因する画像不良の発生を抑制することは明らかである。