以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。なお、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数2以上5以下のアルキル基、炭素原子数4以上10以下のアルキル基、炭素原子数4以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、及び炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、それぞれ次の意味である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上3以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられる。
炭素原子数2以上5以下のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状で非置換である。炭素原子数2以上5以下のアルキル基としては、例えば、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、又はネオペンチル基が挙げられる。
炭素原子数4以上10以下のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状で非置換である。炭素原子数4以上10以下のアルキル基としては、例えば、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基が挙げられる。
炭素原子数4以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状で非置換である。炭素原子数4以上6以下のアルキル基としては、例えば、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデシル基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、無置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、又はシクロヘプチリデン基が挙げられる。
<第一実施形態:電子写真感光体>
本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)の構造を説明する。図1は、第一実施形態に係る感光体1の構造を示す概略断面図である。図1(a)に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層型感光層(単層の感光層)3cである。図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接的に配置されてもよい。また、図1(b)に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、中間層4(下引層)と、感光層3とを備える。図1(b)に示すように、感光層3は導電性基体2上に間接的に配置されてもよい。図1(b)に示すように、中間層4は、導電性基体2と単層型感光層3cとの間に設けられてもよい。図1(c)に示すように、感光体1は、最表面層として保護層5を備えてもよい。
感光層3は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。電子輸送剤は、一般式(ET)で表されるキノン誘導体(以下、キノン誘導体(ET)と記載することがある)を含む。バインダー樹脂は、一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(1)と記載することがある)を含む。第一実施形態に係る感光体1は、転写メモリーの発生を抑制する。その理由は、以下のように推測される。
便宜上、まず、転写メモリーについて説明する。電子写真方式の画像形成では、例えば、以下の1)〜4)の工程を含む、直接転写方式の画像形成プロセスが実施される。
1)像担持体(感光体に相当)の表面を正極性に帯電する帯電工程、
2)帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する露光工程、
3)静電潜像をトナー像として現像する現像工程、及び
4)形成されたトナー像を、像担持体から記録媒体へ転写する転写工程。
このような画像形成プロセスでは、像担持体を回転させて使用するため、転写工程に起因する転写メモリーが発生する場合がある。具体的には、以下の通りである。帯電工程において、像担持体の表面は、一様に一定の正極性の電位まで帯電される。続いて、露光工程及び現像工程を経て、転写工程において、帯電とは逆極性(負極性)の転写バイアスが、記録媒体を介して像担持体に印加される。具体的には、印加された逆極性の転写バイアスの影響により、像担持体表面の非露光領域(非画像領域)の電位が大きく低下し、低下した状態が保持されることがある。この電位低下の影響を受け、非露光領域は、感光体が画像を形成した周(以下、基準周と記載することがある)を基準として次の周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され難くなる。一方、転写バイアスが印加された状態であっても、露光領域にトナーが付着しているため像担持体の表面に転写バイアスが直接印加され難いことから、露光領域(画像領域)の電位は低下し難い。このため、露光領域は、基準周の次の周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され易い。その結果、露光領域と非露光領域とで帯電電位が異なり、像担持体の表面を一様に一定の正極性の電位まで帯電させることが困難となる場合がある。このように、像担持体の基準周の作像工程(画像形成プロセス)における転写バイアスによって電位低下の影響を受け、非露光領域の帯電能が低下する場合がある。このような帯電電位に電位差が生じる現象を、転写メモリーという。
キノン誘導体(ET)は、空間的広がりが比較的大きなπ共役系を有する。このため、電子輸送剤としてのキノン誘導体(ET)はキャリア(電子)の受容性に優れ、キノン誘導体(ET)の分子内におけるキャリア(電子)の移動距離が大きくなる傾向にある。すなわち、キャリア(電子)の分子内移動距離が大きくなる傾向にある。また、感光層3中の複数の電子輸送剤(ET)は互いのπ共役系が重なり易くなり、複数のキノン誘導体(ET)の分子間におけるキャリア(電子)の移動距離が減少する傾向にある。すなわち、キャリア(電子)の分子間移動距離が減少する傾向にある。よって、キノン誘導体(ET)は、感光体1のキャリア(電子)の受容性(注入性)及び輸送性を向上させると考えられる。
ポリアリレート樹脂(1)は、一般式(1)で表されるようにジカルボン酸由来の繰返し単位と、ジオール由来の繰返し単位とを有する。ジカルボン酸由来の繰返し単位は、化学式(2A)〜(2G)で表される二価の基を有し、ジオール由来の繰返し単位はシクロアルキリデン基を有する。このような構造を有するポリアリレート樹脂(1)は、キノン誘導体(ET)との相溶性に優れるため、感光層3においてキノン誘導体(ET)を均一に分散させ易い。以上から、第一実施形態に係る感光体1は、転写メモリーの発生を抑制することができると考えられる。
以下、第一実施形態に係る感光体1の要素(導電性基体2、感光層3、及び中間層4)を説明する。更に感光体1の製造方法も説明する。
[1.導電性基体]
導電性基体2は、感光体1の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2としては、少なくとも表面部が導電性を有する材料(以下、導電性材料と記載することがある)で構成される導電性基体を用いることができる。導電性基体2の一例としては、導電性材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性材料で被覆されている導電性基体が挙げられる。導電性材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、又はインジウムが挙げられる。これらの導電性材料の中でも、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、合金(具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は真鍮等)が挙げられる。これらの導電性材料の中でも、感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体2の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。導電性基体2の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体2の厚みは、導電性基体2の形状に応じて、適宜選択することができる。
[2.感光層]
感光層3は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光層3は添加剤を含有してもよい。感光層3の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できれば、特に限定されない。具体的には、感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
以下、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、バインダー樹脂、及び添加剤を説明する。
[2−1.電荷発生剤]
電荷発生剤は、感光体1用の電荷発生剤であれば、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンのような無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。フタロシアニン系顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料又はフタロシアニン誘導体の顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン顔料(より具体的には、X型無金属フタロシアニン顔料(x−H2Pc)等)が挙げられる。フタロシアニン誘導体の顔料としては、例えば、金属フタロシアニン顔料(より具体的には、チタニルフタロシアニン顔料、又はV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料等)が挙げられる。フタロシアニン系顔料の結晶形状については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。フタロシアニン系顔料の結晶形状としては、例えば、α型、β型、又はY型が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの電荷発生剤のうち、フタロシアニン系顔料が好ましく、X型無金属フタロシアニン顔料(x−H2Pc)又はY型チタニルフタロシアニン顔料(Y−TiOPc)がより好ましい。感光体1の感度特性を更に向上させる観点から、電荷発生剤はY型チタニルフタロシアニン顔料が更に好ましい。転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、電荷発生剤はX型無金属フタロシアニン顔料が更に好ましい。
Y型チタニルフタロシアニン顔料は、Cu−Kα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法を説明する。試料(チタニルフタロシアニン顔料)をX線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学式の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。デジタル光学式の画像形成装置としては、例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター又はファクシミリが挙げられる。そのため、例えば、フタロシアニン系顔料が好ましく、X型無金属フタロシアニン顔料又はY型チタニルフタロシアニン顔料がより好ましい。
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料又はペリレン系顔料が好適に用いられる。短波長レーザーの波長としては、例えば、350nm以上550nm以下の波長が挙げられる。
電荷発生剤は、例えば、化学式(CGM−1)〜(CGM−4)で表されるフタロシアニン系顔料である(以下、それぞれ電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−4)と記載することがある)。
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
[2−2.正孔輸送剤]
正孔輸送剤としては、例えば、アミン誘導体(より具体的には、トリアリールアミン誘導体等);ジアミン誘導体(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等);オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等);スチリル系化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等);カルバゾール系化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等);有機ポリシラン化合物;ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等);ヒドラゾン系化合物;インドール系化合物;オキサゾール系化合物;イソオキサゾール系化合物;チアゾール系化合物;チアジアゾール系化合物;イミダゾール系化合物;ピラゾール系化合物;トリアゾール系化合物が挙げられる。これらの正孔輸送剤のうち、トリアリールアミン誘導体が好ましく、トリフェニルアミン誘導体がより好ましく、一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体(以下、トリフェニルアミン誘導体(HT)と記載することがある)が更に好ましい。すなわち、電荷輸送剤は、トリフェニルアミン誘導体(HT)を含むことが好ましい。
一般式(HT)中、R11、R12、及びR13は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表す。k、p、及びqは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。m1及びm2は、各々独立に、1以上3以下の整数を表す。kが2以上の整数を表す場合、複数のR11は互いに同一であっても異なってもよい。pが2以上の整数を表す場合、複数のR12は互いに同一であっても異なってもよい。qが2以上の整数を表す場合、複数のR13は互いに同一であっても異なってもよい。
第一実施形態に係る感光体1は、感光層3がトリフェニルアミン誘導体(HT)を含むと、転写メモリーの発生を更に抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。トリフェニルアミン誘導体(HT)は、中心のトリフェニルアミン構造において3つのベンゼン環のうち2つのベンゼン環でフェニルアルカポリエニル基(より具体的には、フェニルエテニル基、フェニルブタジエニル基又はフェニルヘキサトリエニル基)を有する。トリフェニルアミン誘導体(HT)のπ共役系は空間的広がりが比較的大きいため、トリフェニルアミン誘導体(HT)の分子内におけるキャリア(正孔)の移動距離が大きくなる傾向にある。すなわち、キャリア(正孔)の分子内移動距離が大きくなる傾向にある。また、感光層3中の複数のトリフェニルアミン誘導体(HT)は互いのπ共役系が重なり易いため、複数のトリフェニルアミン誘導体(HT)の分子間におけるキャリア(正孔)の移動距離が減少する傾向にある。すなわち、キャリア(正孔)の分子間移動距離が減少する傾向にある。一方、トリフェニルアミン誘導体(HT)は分子内に窒素原子を1個有するため、分子内に窒素原子を2個有する化合物(例えば、ジアミン化合物)に比べ、分子内に電荷の偏りが少ない傾向にある。よって、トリフェニルアミン誘導体(HT)は、感光体1のキャリア(正孔)の受容性(注入性)及び輸送性を向上させると考えられる。
また、トリフェニルアミン誘導体(HT)は、ポリアリレート樹脂(1)との相溶性に優れるため、感光層3中で、トリフェニルアミン誘導体(HT)は均一に分散しやすい。以上から、第一実施形態に係る感光体1は、感光層3がトリフェニルアミン誘導体(HT)を含むと、転写メモリーの発生を更に抑制することができると考えられる。
一般式(HT)中、R11が表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、メチル基、エチル基、又はn−ブチル基を表すことが好ましい。R11が表す炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、エトキシ基又はn−ブトキシ基を表すことが好ましい。R11で表される置換基の置換位置は、窒素原子との結合に対してベンゼン環のオルト位(o位)、メタ位(m位)、又はパラ位(p位)の何れであってもよく、オルト位又はパラ位であることが好ましい。
一般式(HT)中、R11は、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基及び炭素原子数1以上4以下のアルキル基よりなる群から選択される基を表し、kは1又は2を表し、kが2を表す場合、2つのR1は互いに同一であっても異なってもよく、p及びqは0を表し、m1及びm2は2又は3を表すことが好ましい。
転写メモリーの発生を更に抑制し、かつ感光体1の感度特性を向上させる観点から、一般式(HT)中、R11は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、kは2を表すことが好ましい。
転写メモリーの発生を更に抑制し、感光体の感度特性を向上させる観点から、一般式(HT)中、m1及びm2は、3を表すことが好ましい。
トリフェニルアミン誘導体(HT)としては、例えば、化学式(HT−1)、化学式(HT−2)、化学式(HT−3)、化学式(HT−4)、化学式(HT−5)、化学式(HT−6)、又は化学式(HT−7)で表されるトリフェニルアミン誘導体(以下、それぞれトリフェニルアミン誘導体(HT−1)、トリフェニルアミン誘導体(HT−2)、トリフェニルアミン誘導体(HT−3)、トリフェニルアミン誘導体(HT−4)、トリフェニルアミン誘導体(HT−5)、トリフェニルアミン誘導体(HT−6)、及びトリフェニルアミン誘導体(HT−7)と記載することがある)が挙げられる。
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
[2−3.電子輸送剤]
電子輸送剤は、キノン誘導体(ET)を含む。キノン誘導体(ET)は、一般式(ET)で表される。
一般式(ET)中、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、炭素原子数4以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上5以下のアルキル基を表す。R1、R2、及びR3のうちの残りは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表す。R1、R2、及びR3のうちの少なくとも2つは、互いに結合して環を形成してもよい。R4、R5、及びR6のうちの少なくとも1つは、炭素原子数4以上10以下のアルキル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上5以下のアルキル基を表す。R4、R5、及びR6のうちの残りは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表す。R4、R5、及びR6のうちの少なくとも2つは、互いに結合して環を形成してもよい。
一般式(ET)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされる炭素原子数4以上10以下のアルキル基は、炭素原子数4以上6以下のアルキル基が好ましく、n−ブチル基、n−ヘキシル基、又はイソヘキシル基がより好ましい。R1、R2、及びR3のうちの少なくとも2つは、互いに結合して環を形成してもよい。R4、R5、及びR6のうちの少なくとも2つは、互いに結合して環を形成してもよい。このような環としては、例えば、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基又は環状炭化水素基が挙げられる。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基が挙げられる。環状炭化水素基としては、例えば、アダマンチル基が挙げられる。
一般式(ET)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされる炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上5以下のアルキル基としては、フェニル基を有する炭素原子数2以上5以下のアルキル基が好ましく、フェニルエチル基がより好ましい。
一般式(ET)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされる炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(ET)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされる炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
一般式(ET)中、R1、R2、及びR3のうちの少なくとも1つは、炭素原子数4以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を有する炭素原子数2以上5以下のアルキル基を表し、R1、R2、及びR3のうちの残りは、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R1、R2、及びR3のうちの少なくとも2つは、互いに結合して環を形成してもよい。R4、R5、及びR6のうちの少なくとも1つは、炭素原子数4以上6以下のアルキル基、又はフェニル基を有する炭素原子数2以上5以下のアルキル基を表し、R4、R5、及びR6のうちの残りは、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましい。R4、R5、及びR6のうちの少なくとも2つは、互いに結合して環を形成してもよい。
キノン誘導体(ET)の具体例としては、化学式(ET−1)〜(ET−7)で表されるキノン誘導体(以下、それぞれキノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)と記載することがある)が挙げられる。
転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、キノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)のうち、キノン誘導体(ET−1)〜(ET−5)又は(ET−7)が好ましく、キノン誘導体(ET−4)、(ET−5)又は(ET−7)がより好ましい。
感光体1の感度特性を向上させる観点から、キノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)のうち、キノン誘導体(ET−1)又は(ET−4)が好ましい。
(キノン誘導体(ET)の製造方法)
キノン誘導体(ET)は、例えば、反応式(R−1)、(R−2)、及び(R−3)で表す反応(以下、それぞれ反応(R−1)、(R−2)、及び(R−3)と記載することがある)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。キノン誘導体(ET)の製造方法は、例えば、反応(R−1)と、反応(R−2)と、反応(R−3)とを含む。
反応(R−1)において、R1、R2、及びR3は、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、及びR3と同義である。
反応(R−1)では、化学式(A)で表される化合物(1−ナフトール)1当量と、一般式(B)で表される化合物(アルコール誘導体)(以下、アルコール誘導体(B)と記載することがある)1当量とを、溶媒中濃硫酸の存在下で反応させて、中間体である一般式(C)で表される化合物(以下、ナフトール誘導体(C)と記載することがある)1当量を得る。反応(R−1)では、1モルの1−ナフトールに対して、1モル以上2.5モル以下のアルコール誘導体(B)を添加することが好ましい。1モルの1−ナフトールに対して1モル以上のアルコール誘導体(B)を添加すると、ナフトール誘導体(C)の収率を向上させ易い。一方、1モルの1−ナフトールに対して2.5モル以下のアルコール誘導体(B)を添加すると、反応(R−1)後に未反応のアルコール誘導体(B)が残留し難く、キノン誘導体(ET)の精製が容易となる。反応(R−1)の反応温度は室温(例えば、25℃)であることが好ましい。反応(R−1)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。反応(R−1)は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、有機酸水溶液(例えば、酢酸)が挙げられる。
より具体的には、反応(R−1)では、1−ナフトールとアルコール誘導体(B)とを反応させる。反応後、反応液にイオン交換水を加え、有機層に抽出する。有機層に含まれる有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、又は酢酸エチルが挙げられる。有機層にアルカリ水溶液で加え、有機層を洗浄し中和する。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(より具体的には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)、又はアルカリ土類金属の水酸化物(より具体的には、水酸化カルシウム等)が挙げられる。
反応(R−2)において、R4、R5、及びR6は、それぞれ一般式(1)中のR4、R5、及びR6と同義である。
反応(R−2)では、化学式(A)で表される化合物(1−ナフトール)1当量と、一般式(D)で表される化合物(アルコール誘導体)(以下、アルコール誘導体(D)と記載することがある)1当量とを、溶媒中濃硫酸の存在下で反応させて、中間体である一般式(E)で表される化合物(以下、ナフトール誘導体(E)と記載することがある)1当量を得る。反応(R−2)は、アルコール誘導体(B)をアルコール誘導体(D)に変更した以外は、反応(R−1)と同様の反応である。
反応(R−3)において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ一般式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、及びR6と同義である。
反応(R−3)では、1当量のナフトール誘導体(C)及び1当量のナフトール誘導体(E)を酸化剤の存在下で反応して、1当量のキノン誘導体(ET)を得る。反応(R−3)では、1モルのナフトール誘導体(C)及び1モルのナフトール誘導体(E)に対して、1モルの酸化剤を添加することが好ましい。酸化剤としては、例えば、クロラニル、過マンガン酸カリウム、又は酸化銀が挙げられる。反応(R−3)の反応温度は室温(例えば、25℃)であることが好ましい。反応(R−3)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンが挙げられる。
キノン誘導体(ET)の製造では、必要に応じて他の工程を含んでもよい。他の工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製工程の精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶折等)が挙げられる。
感光層3は、キノン誘導体(ET)に加えて、更に別の電子輸送剤を含有してもよい。別の電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物(キノン誘導体(ET)以外のキノン系化合物)、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電子輸送剤の含有量は、感光層3においてバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
電子輸送剤中のキノン誘導体(ET)の含有率は、電子輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
[2−4.バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(1)を含む。ポリアリレート樹脂(1)は、一般式(1)で表される。
一般式(1)中、r及びsは、0以上49以下の整数を表す。t及びuは、1以上50以下の整数を表す。r+s+t+u=100である。r+t=s+uである。r及びtは、互いに同一であっても異なってもよい。s及びuは、互いに同一であっても異なってもよい。krは、2又は3を表す。ktは、2又は3を表す。X及びYは、各々独立に、化学式(2A)、化学式(2B)、化学式(2C)、化学式(2D)、化学式(2E)、化学式(2F)、又は化学式(2G)で表される二価の基を表す。
一般式(1)中、X及びYは、各々独立に、化学式(2A)、化学式(2C)、化学式(2D)、化学式(2E)、化学式(2F)、又は化学式(2G)で表される二価の基を表し、XとYとは互いに異なり、kr及びktは3を表すことが好ましい。
転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、一般式(1)中、sが1以上の整数を表し、X及びYのうちの一方は、化学式(2C)で表される二価の基を表し、X及びYのうちの他方は、化学式(2F)又は(2G)で表される二価の基を表すことが好ましい。
ポリアリレート樹脂(1)は、モル分率r/(r+t)で一般式(1−5)で表される繰返し単位、モル分率s/(s+u)で一般式(1−6)で表される繰返し単位、モル分率t/(r+t)で一般式(1−7)で表される繰返し単位、及びモル分率u/(s+u)で一般式(1−8)で表される繰返し単位を有する。以下、これらの繰り返し単位をそれぞれ繰返し単位(1−5)、(1−6)、(1−7)及び(1−8)と記載することがある。
繰返し単位(1−5)〜(1−8)中のkr、X、kt、及びYは、それぞれ一般式(1)中のkr、X、kt、及びYと同義である。
ポリアリレート樹脂(1)は、繰返し単位(1−5)〜(1−8)以外の繰返し単位を有してもよい。ポリアリレート樹脂(1)中の繰返し単位の物質量の合計に対する繰返し単位(1−5)〜(1−8)の物質量の合計の比率(モル分率)は、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、1.00が更に好ましい。
ポリアリレート樹脂(1)における、繰返し単位(1−5)〜(1−8)の配列は、芳香族ジオール由来の繰返し単位と芳香族ジカルボン酸由来の繰返し単位とが互いに隣接する限り、特に限定されない。例えば、繰返し単位(1−5)は、繰返し単位(1−6)又は繰返し単位(1−8)と隣接して互いに結合している。同様に、繰返し単位(1−7)は、繰返し単位(1−6)又は繰返し単位(1−8)と隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂(1)は、繰返し単位(1−5)〜(1−8)以外の繰返し単位を有してもよい。
一般式(1)中のr及びsは、0以上49以下の整数を表し、t及びuは、1以上50以下の整数を表す。r+s+t+u=100である。r+t=s+uである。s/(s+u)は、0.30以上0.70以下であることが好ましい。s/(s+u)は、ポリアリレート樹脂(1)における繰返し単位(1−6)の物質量及び繰返し単位(1−8)の物質量の合計に対する繰返し単位(1−6)の物質量の比率(モル分率)を表す。
ポリアリレート樹脂(1)の粘度平均分子量は、40,000以上であることが好ましく、40,000以上52,500以下であることが好ましい。ポリアリレート樹脂(1)の粘度平均分子量が40,000以上である場合、感光体1の耐摩耗性を高めることができ、感光層3が摩耗しにくくなる。一方、ポリアリレート樹脂(1)の粘度平均分子量が52,500以下である場合、感光層3の形成時に、ポリアリレート樹脂(1)が溶剤に溶解し易くなり、感光層3の形成が容易になる傾向がある。
ポリアリレート樹脂(1)としては、例えば、化学式(R−1)〜(R−11)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)と記載することがある)が挙げられる。
感光体1の感度特性を向上させる観点から、ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−7)のうち、ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−4)が好ましく、(R−1)又は(R−2)がより好ましい。
転写メモリーの発生を更に抑制する観点から、ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−7)のうち、ポリアリレート樹脂(R−4)又は(R−7)が好ましい。
(ポリアリレート樹脂(1)の製造方法)
バインダー樹脂(1)の製造方法は、ポリアリレート樹脂(1)を製造できれば、特に限定されない。これらの製造方法として、例えば、ポリアリレート樹脂(1)の繰返し単位を構成するための芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。ポリアリレート樹脂(1)の合成方法は特に限定されず、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合、又は界面重合等)を採用することができる。以下、ポリアリレート樹脂(1)の製造方法の一例を説明する。
ポリアリレート樹脂(1)は、例えば、反応式(R−11)で表される反応(以下、反応(R−11)と記載することがある)に従って又はこれに準じる方法によって製造される。ポリアリレート樹脂の製造方法は、例えば、反応(R−11)を含む。
反応(R−11)において、一般式(1−11)中のkr、一般式(1−12)中のkt、一般式(1−9)中のX、並びに一般式(1−10)中のYは、それぞれ一般式(1)中のkr、kt、X、及びYと同義である。
反応(R−11)では、一般式(1−9)で表される芳香族ジカルボン酸及び一般式(1−10)で表される芳香族ジカルボン酸(以下、それぞれ芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)と記載することがある)と、一般式(1−11)で表される芳香族ジオール及び一般式(1−12)で表される芳香族ジオール(以下、それぞれ芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)と記載することがある)とを反応させて、ポリアリレート樹脂(1)を得る。
芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)としては、例えば、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシビフェニル、テレフタル酸、イソフタル酸、又は2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。反応(R−1)では、芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)に加えて他の芳香族ジカルボン酸を用いてもよい。なお、反応(R−1)では、芳香族ジカルボン酸の代わりに、芳香族ジカルボン酸誘導体を用いることができる。芳香族ジカルボン酸誘導体としては、例えば、芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)のハロゲン化アルカノイル又は酸無水物が挙げられる。
芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、又は1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロペンタンが挙げられる。反応(R−1)では、芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)に加えて他の芳香族ジオールを用いてもよい。他の芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールE、又はビスフェノールFが挙げられる。なお、反応(R−1)では、芳香族ジオールの代わりに、芳香族ジオール誘導体を用いることができる。芳香族ジオール誘導体としては、例えば、ジアセテートが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸(1−9)及び(1−10)の合計物質量1モルに対する、芳香族ジオール(1−11)及び(1−12)の合計物質量は、0.9モル以上1.1モル以下であることが好ましい。上記範囲であると、ポリアリレート樹脂(1)を精製し易く、ポリアリレート樹脂(1)の収率が向上するからである。
反応(R−11)は、アルカリ及び触媒の存在下で進行させてもよい。触媒としては、例えば、第三級アンモニウム(より具体的には、トリアルキルアミン等)又は第四級アンモニウム塩(より具体的には、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等)が挙げられる。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(より具体的には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(より具体的には、水酸化カルシウム等)が挙げられる。反応(R−11)は、溶媒中及び不活性ガス雰囲気下で進行させてもよい。溶媒としては、例えば、水又はクロロホルムが挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンが挙げられる。反応(R−11)の反応時間は、2時間以上5時間以下が好ましい。反応温度は、5℃以上25℃以下が好ましい。
ポリアリレート樹脂(1)の製造では、必要に応じて他の工程を含んでもよい。他の工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製方法としては、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー、又は晶析等)が挙げられる。
バインダー樹脂としては、ポリアリレート樹脂(1)のみを単独で用いてもよいし、ポリアリレート樹脂(1)以外の樹脂(その他の樹脂)を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂(1)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂等)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂等)、又は、光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ−アクリル酸系樹脂、又はウレタン−アクリル酸系共重合体等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダー樹脂の含有量の比率は、感光層3に含まれるすべての構成要素(例えば、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂)の質量の合計に対して40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
[2−5.添加剤]
感光層3と、中間層4とのうちの少なくとも一つが、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、又はレベリング剤が挙げられる。
[3.中間層]
第一実施形態に係る感光体1は、中間層4(例えば、下引き層)を有してもよい。中間層4は、例えば、無機粒子及び樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層4を介在させると、電流リークの発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体1を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、電気抵抗の上昇を抑えることができる。
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、又は銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛等)の粒子、又は非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を併用してもよい。
[4.感光体の製造方法]
感光体1の製造方法について説明する。感光体1の製造方法は、例えば、感光層形成工程を有する。
感光層形成工程では、感光層3を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液を導電性基体2上に塗布し、塗布膜を形成する。次いで、適宜な方法で塗布膜を乾燥させることによって、塗布膜に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して感光層3を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む。このような感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。感光層用塗布液は、必要に応じて各種添加剤を加えてもよい。
以下、感光層形成工程の詳細を説明する。感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散でき、かつ塗布膜の乾燥において塗布膜から溶剤が除去され易ければ、特に限定されない。具体的には、溶剤としては、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン系溶剤を用いることが好ましい。
感光層用塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
感光層用塗布液は、各成分の分散性、又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
感光層用塗布液を塗布する方法としては、感光層用塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
塗布膜に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布膜中の溶剤の少なくとも一部を除去(より具体的には、蒸発等)させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体1の製造方法は、必要に応じて中間層4を形成する工程を更に有してもよい。中間層4を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
<第二実施形態:画像形成装置>
以下、図2を参照して第二実施形態に係る画像形成装置の一態様について説明する。図2は、第二実施形態に係る画像形成装置100の一例を示す図である。図2は直接転写方式の画像形成装置100を示す。
第二実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成ユニット40を備える。画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体30は、第一実施形態に係る感光体である。帯電部42は、像担持体30の表面を正極性に帯電する。露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光して、像担持体30の表面に静電潜像を形成する。現像部46は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部48は、像担持体30の表面と転写体である記録媒体Pとが接触しながらトナー像を像担持体30から記録媒体Pへ転写する。以上、第二実施形態に係る画像形成装置100の概要を記載した。
第二実施形態に係る画像形成装置100は、画像不良(例えば、転写メモリーの発生に起因する画像不良)を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。
転写メモリーに起因する画像不良について説明する。画像形成プロセスで転写メモリーが発生すると、画像形成における感光体の周(基準周)を基準としたときに、像担持体30の表面において次の周の帯電工程で所望の電位が得られない領域は、基準周の次の周の帯電工程で所望の電位が得られる領域に比べ、電位が低下する傾向にある。具体的には、像担持体30の表面における基準周の非露光領域は、基準周の露光領域に比べ、次周回の帯電時に電位が低下する傾向にある。このため、基準周の非露光領域は、基準周の露光領域に比べ、帯電時の電位が低下し易いため、現像時に正帯電トナーを引き付け易くなる。その結果、基準周の非画像部(非露光領域)を反映した画像が次周以降の作像工程において形成され易い。このような基準周の非画像部を反映した画像が形成される画像不良が、転写メモリーに起因して発生する画像不良(以下、画像ゴーストと記載することがある)である。
図3を参照して、画像不良が発生した画像を説明する。図3は、画像ゴーストが発生した画像60を示す図である。画像60は、領域62及び領域64を含む。領域62は像担持体30の1周分に相当する領域であり、領域64も像担持体30の1周分に相当する領域である。領域62は画像66と画像65とから構成される。画像66は、正方形状のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。画像65は、正方形状の白抜きの白紙画像(画像濃度0%)から構成される。領域64は画像68及び画像69から構成される。画像68は、正方形状のハーフトーン画像である。画像69は、領域64における正方形状の白抜きのハーフトーン画像である。画像69は、画像68に比べ画像濃度が濃い。画像69は、領域62の非露光領域の画像65を反映し、設計画像濃度より濃くなった画像不良(画像ゴースト)である。なお、領域64の画像は、設計画像上、画像濃度が均一の全面ハーフトーン画像から構成される。
以下、図2を参照して各部について詳細に説明する。画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えば、タンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40と、転写ベルト50と、定着部52とを備える。画像形成ユニット40は、色ごとに備えられる。図2では、画像形成装置100は、4つの画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dを備えるため、4色で画像を形成することができる。
画像形成装置100は、直接転写方式を採用することができる。通常、直接転写方式を採用する画像形成装置では、像担持体の表面と記録媒体が接触しながら、トナー像を記録媒体に転写する。このため、像担持体は、中間転写方式を採用する画像形成装置に搭載された像担持体に比べ、転写バイアスの影響を大きく受ける。よって、通常、直接転写方式を採用する画像形成装置は、転写メモリーの発生に起因する画像不良の発生を抑制しにくい。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、第一実施形態に係る感光体を備える。そして、第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、直接転写方式を採用しても、転写メモリーの発生に起因した画像不良を抑制することができる。
画像形成ユニット40は、その中央位置に像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46、及び転写部48が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
帯電部42は、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。帯電部42は、いわゆる接触方式の帯電部であり、帯電ローラーである。他の接触方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。また、帯電部は、非接触方式の帯電部であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電部又はスコロトロン帯電部が挙げられる。
接触方式の帯電部は、非接触方式の帯電部に比べ、感光体の表面を帯電させにくい。例えば、通常、帯電ローラーを備える画像形成装置では、転写メモリーの発生に起因した画像不良を抑制しにくい。第二実施形態に係る画像形成装置100は、第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制する。このため、第二実施形態に係る画像形成装置100は、接触方式の帯電部を備える場合であっても、転写メモリーの発生に起因する画像不良を抑制することができる。
帯電部42が印加する電圧は、直流電圧、交流電圧、又は重畳電圧の何れであってもよく、直流電圧であることが好ましい。重畳電圧とは、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧である。帯電部42が像担持体30に印加する電圧が直流電圧である場合、交流電圧や重畳電圧である場合に比べ、感光層の最表面層(例えば、単層型感光層)の摩耗量を低減させることができる。
帯電部42が交流電圧を印加すると、像担持体30の表面の表面電位を均一化することができる傾向があるが、接触帯電方式の帯電部42を備えた画像形成装置100では、直流電圧のみを印加しても均一に帯電できる。帯電ローラーに直流電圧のみを印加することによって、好適な画像を形成することができ、更に、感光層の摩耗量を低減させることができる。
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、像担持体30の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。現像部46は、像担持体30の表面と接触しながら静電潜像をトナー像として現像することができる。
転写ベルト50は、像担持体30と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から記録媒体Pへ転写する。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。像担持体30から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、像担持体30の表面は記録媒体Pと接触している。
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
第二実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式を採用する場合、転写部としての一次転写部(より具体的には、一次転写ローラー)は、像担持体から転写体としての中間転写体(より具体的には、中間転写ローラー又は中間転写ベルト等)へトナー像を転写する。詳しくは、一次転写部は、一次転写バイアス(より具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を中間転写体に印加する。その結果、像担持体に担持されたトナー像は、中間転写体に転写(一次転写)される。
転写部としての二次転写部は、中間転写体から記録媒体へトナー像を転写する。詳しくは、二次転写部(より具体的には、二次転写ローラー)は、二次転写バイアス(より具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を記録媒体に印加する。その結果、中間転写体に一次転写されたトナー像は、記録媒体に転写(二次転写)される。
定着部は、加熱及び/又は加圧による定着処理により、トナー像を記録媒体に定着させる。その結果、画像が形成される。
<第三実施形態:プロセスカートリッジ>
第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、第一実施形態に係る感光体を備える。引き続き、図2を参照して、第三実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
プロセスカートリッジは、ユニット化された部分を含む。ユニット化された部分は、像担持体30である。ユニット化された部分は、像担持体30である。ユニット化された部分は、像担持体30に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46、及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。プロセスカートリッジは、例えば、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジには、クリーニング装置(不図示)及び除電器(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体30の感度特性等が劣化した場合に、像担持体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
[感光体の材料]
(正孔輸送剤)
第一実施形態で説明したトリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−7)を準備した。また、正孔輸送剤(HT−8)又は(HT−9)を準備した。正孔輸送剤(HT−8)又は(HT−9)は、それぞれ化学式(HT−8)又は(HT−9)で表される。
(電荷発生剤)
第一実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−2)を準備した。電荷発生剤(CGM−1)は、化学式(CGM−1)で表されるX型無金属フタロシアニンであった。
電荷発生剤(CGM−2)は、化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニン顔料(Y型チタニルフタロシアニン結晶)であった。結晶構造はY型であった。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルチャートにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=9.2°、14.5°、18.1°、24.1°、27.2°にピークを有しており、主ピークは27.2°であった。なお、CuKα特性X線回折スペクトルは、第一実施形態で説明した測定装置及び測定条件で測定された。
(バインダー樹脂)
[ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)]
第一実施形態で説明したポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)を調製した。
[ポリアリレート樹脂(R−2)の合成]
三口フラスコを反応容器として用いた。この反応容器は、温度計と、三方コックと、滴下ロート200mLとを備えた容量1Lの三口フラスコである。反応容器に1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン12.24g(41.28ミリモル)と、t−ブチルフェノール0.062g(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム3.92g(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド0.120g(0.384ミリモル)とを投入した。次いで、反応容器内をアルゴン置換した。その後、水300mLを更に反応容器に投入した。反応容器の内温を50℃に昇温させた。反応容器の内温を50℃に保持して反応容器内の内容物を1時間攪拌した。その後、反応容器の内温を10℃に冷却した。その結果、アルカリ性水溶液を得た。
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド4.10g(16.2ミリモル)と、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジクロリド4.52g(16.2ミリモル)とをクロロホルム150mLに溶解させた。その結果、クロロホルム溶液を得た。
次いで、上記クロロホルム溶液を滴下ロートから上記アルカリ性水溶液に110分間かけてゆっくりと滴下して、重合反応を開始させた。反応容器内の内温を15±5℃に調節して、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。
その後、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、容量1Lの三口フラスコにイオン交換水400mLを投入した後に、得られた有機層を投入した。更にクロロホルム400mLと、酢酸2mLとを三口フラスコに投入した。三口フラスコの内容物を室温(25℃)で30分攪拌した。その後、デカントを用いて三口フラスコの内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。水1Lを用いて得られた有機層を分液ロートにて5回洗浄した。その結果、水洗した有機層を得た。
次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーにメタノール1Lを投入した。得られたろ液をビーカーにゆっくり滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過によりろ別した。得られた沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥した。その結果、ポリアリレート樹脂(R−2)を得た。ポリアリレート樹脂(R−2)の収量は12.2gであり、収率は77モル%であった。
[ポリアリレート樹脂(R−1)及び(R−3)〜(R−11)の合成]
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンをポリアリレート樹脂((R−1)及び(R−3)〜(R−11))の出発物質である芳香族ジオールに変更し、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド及びビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ジクロリドをポリアリレート樹脂(R−1)及び(R−3)〜(R−11)の出発物質であるハロゲン化アルカノイルに変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R−2)と同様にしてそれぞれポリアリレート樹脂(R−1)及び(R−3)〜(R−11)を製造した。なお、種類の異なる芳香族カルボン酸誘導体(ハロゲン化アルカノイル)を複数用いる場合は、モル分率s/(s+u)に相当する含有量の比率で複数の芳香族カルボン酸誘導体(ハロゲン化アルカノイル)を用いた。また、種類の異なる芳香族ジオールを複数用いる場合は、モル分率r/(r+t)に相当する含有量の比率で複数の芳香族ジオールを用いた。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、作製したポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちポリアリレート樹脂(R−2)及び(R−4)を代表例として挙げる。
図4及び図5は、それぞれポリアリレート樹脂(R−2)及び(R−4)の1H−NMRスペクトルを示す。図4及び図5中、横軸は化学シフト(単位:ppm)を示し、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示す。1H−NMRスペクトルにより、ポリアリレート樹脂(R−2)及び(R−4)が得られていることを確認した。他のポリアリレート樹脂(R−1)、(R−3)、及び(R−5)〜(R−11)も同様にして、1H−NMRスペクトルにより、それぞれポリアリレート樹脂(R−1)、(R−3)、及び(R−5)〜(R−11)が得られていることを確認した。
[バインダー樹脂(R−A)〜(R−F)]
バインダー樹脂(R−A)〜(R−F)を準備した。バインダー樹脂(R−A)〜(R−F)は、それぞれ化学式(R−A)〜(R−F)で表される。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、第一実施形態で説明したキノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)を準備した。更に、電子輸送剤(ET−8)、(ET−9)及び(ET−10)を準備した。電子輸送剤(ET−8)〜(ET−10)は、それぞれ化学式(ET−8)〜(ET−10)で表される。
[1−1−1.キノン誘導体(ET−1)の製造]
反応式(r−1)及び反応式(r−3)で表される反応(以下、それぞれ反応(r−1)及び(r−3)と記載することがある)に従ってキノン誘導体(ET−1)を製造した。
反応(r−1)では、ナフトール誘導体(1A)(1−ナフトール)とアルコール誘導体(1B)とを反応させて、中間生成物であるナフトール誘導体(1C)を得た。詳しくは、ナフトール誘導体(1A)1.44g(0.010モル)と、アルコール誘導体(1B)1.64g(0.010モル)と、濃硫酸0.98g(0.010モル)とをフラスコに投入し、酢酸溶液を調製した。フラスコ内容物に濃硫酸0.98g(0.010モル)を滴下し、室温で8時間攪拌した。フラスコ内容物にイオン交換水及びクロロホルムを加え有機層を得た。有機層を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、中和した。続けて、有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、有機層を乾燥させた。乾燥させた有機層を減圧留去し、ナフトール誘導体(1C)を含む粗生成物を得た。
反応(r−3)では、ナフトール誘導体(1C)を酸化反応させて、キノン誘導体(ET−1)を得た。詳しくは、ナフトール誘導体(1C)を含む粗生成物と、クロロホルム100mLとをフラスコに投入し、クロロホルム溶液を調製した。フラスコ内容物にクロラニル2.46g(0.010モル)を加え、室温で8時間攪拌した。続けて、フラスコ内容物をろ過し、ろ液を得た。得られたろ液の溶媒を留去し、残渣を得た。展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりで得られた残渣を精製した。これにより、キノン誘導体(ET−1)を得た。キノン誘導体(ET−1)の収量は、1.73gであり、ナフトール誘導体(1A)からのキノン誘導体(ET−1)の収率は、60モル%であった。
[1−1−2.キノン誘導体(ET−2)〜(ET−7)の製造]
以下の点を変更した以外は、キノン誘導体(ET−1)の製造と同様の方法で、キノン誘導体(ET−2)〜(ET−7)をそれぞれ製造した。なお、キノン誘導体(ET−2)〜(ET−7)の製造において各原料は、キノン誘導体(ET−1)の製造において対応する原料のモル数と同じモル数で添加した。
表1に反応(r−1)におけるナフトール誘導体(A)、アルコール誘導体(B)、及びナフトール誘導体(C)を示す。表1中、ナフトール誘導体(A)欄の種類1Aは、ナフトール誘導体(1A)を示す。アルコール誘導体(B)欄の種類1B〜7Bは、それぞれアルコール誘導体(1B)〜(7B)を示す。ナフトール誘導体(C)欄の1C〜7Cは、それぞれナフトール誘導体(1C)〜(7C)を示す。
反応(r−1)で使用するアルコール誘導体(1B)をアルコール誘導体(2B)〜(7B)の何れかに変更した。それらの結果、反応(r−1)では、ナフトール誘導体(1C)の代わりに、それぞれナフトール誘導体(2C)〜(7C)を含む粗生成物が得られた。
表1に反応(r−3)におけるナフトール誘導体(C)、及びキノン誘導体(ET)を示す。表1中、キノン誘導体(ET)欄の種類ET−1〜ET−7は、それぞれキノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)を示す。反応(r−3)で使用するナフトール誘導体(1C)を含む粗生成物をナフトール誘導体(2C)〜(7C)の何れかを含む粗生成物に変更した。それらの結果、反応(r−3)では、キノン誘導体(ET−1)の代わりに、それぞれキノン誘導体(ET−2)〜(ET−7)が得られた。
表1にキノン誘導体(ET)の収量及び収率を示す。なお、表1中、アルコール誘導体(2B)〜(7B)は、それぞれ下記化学式(2B)〜(7B)で表される。また、ナフトール誘導体(2C)〜(7C)は、それぞれ下記化学式(2C)〜(7C)で表される。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、製造したキノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうちキノン誘導体(ET−1)及び(ET−6)を代表例として挙げる。図6及び図7は、それぞれキノン誘導体(ET−1)及び(ET−6)の1H−NMRスペクトルを示す。図6及び図7中、縦軸は信号強度(単位:任意単位)を示し、横軸は化学シフト(単位:ppm)を示す。
以下に、キノン誘導体(ET−1)及び(ET−6)の化学シフト値を示す。
キノン誘導体(ET−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.32−8.35(m, 2H), 8.02(s, 2H), 7.84−7.88(m, 2H), 7.60−7.67(m, 4H), 7.03−7.18(m, 10H), 2.39−2.45(m, 4H), 2.22−2.29(m, 4H), 1.38(s, 12H).
キノン誘導体(ET−6):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.31−8.35(m, 2H), 7.97(s, 2H), 7.83−7.87(m, 2H), 7.62−7.73(m, 4H), 7.03−7.25(m, 10H), 2.48−2.60(m, 4H), 2.17−2.37(m, 4H), 1.86−1.98(m, 2H), 1.56−1.63(m, 2H), 1.19−1.33(m, 22H), 0.81(t, 6H).
1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、キノン誘導体(ET−1)及び(ET−6)が得られていることを確認した。他のキノン誘導体(ET−2)〜(ET−5)及び(ET−7)も同様にして、1H−NMRスペクトル及び化学シフト値により、それぞれキノン誘導体(ET−2)〜(ET−5)及び(2−7)が得られていることを確認した。
[感光体(A−1)の製造]
以下、実施例1に係る感光体(A−1)の製造について説明する。
電荷発生剤(CGM−1)5質量部、正孔輸送剤としてのトリフェニルアミン誘導体(HT−5)50質量部、電子輸送剤としてのキノン誘導体(ET−1)35質量部、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(R−4)100質量部、及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部を容器内に投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料(電荷発生剤、トリフェニルアミン誘導体(HT−5)、キノン誘導体(ET−1)、及びポリアリレート樹脂(R−4))を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて感光層用塗布液を塗布し、塗布膜を形成した。100℃で40分間で塗布膜を熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層型感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、感光体(A−1)が得られた。
[感光体(A−2)〜(A−26)及び感光体(B−1)〜(B−13)]
下記に示す事項以外は、感光体(A−1)と同様の手法を用いて感光体を作製した。電荷発生剤(CGM−1)の代わりに表2又は表3に記載の電荷発生剤を用いた。キノン誘導体(ET−1)の代わりに表2又は表3に記載の電子輸送剤を用いた。トリフェニルアミン誘導体(HT−5)の代わりに表2又は表3に記載の正孔輸送剤を用いた。ポリアリレート樹脂(R−4)の代わりに表2又は表3に記載のバインダー樹脂を用いた。このようにして感光体(A−2)〜(A−26)及び感光体(B−1)〜(B−11)を得た。
[感光体の性能評価]
(感度特性及び転写メモリーの評価)
感光体(A−1)〜(A−26)及び(B−1)〜(B−13)の各々に対し、感度特性及び転写メモリーの評価を行った。
感光体を画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)に装着した。この画像形成装置は、直流電圧を印加する接触方式の帯電ローラーを帯電部として備えていた。また、この画像形成装置は、中間転写ベルト上に直接トナー像を掲載する中間転写方式を採用していた。帯電性スリーブは、帯電ローラーの表面に備えられ、エピクロルヒドリン樹脂を主たる構成材料とする帯電性ゴムで形成されていた。帯電部の帯電電圧を調整し、非露光時の現像部位置に対応する感光体の帯電電位(白紙部電位Vs)を+570V±10Vに設定した。記録媒体として京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。測定環境は、温度23℃かつ相対湿度50%RHであった。
次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光を取り出した。取り出した単色光は、波長780nm、半値幅20nm、及び光エネルギー1.16μJ/cm2のレーザー光で露光した時の現像位置に対応する感光体の表面電位を測定した。測定された露光領域の表面電位を、露光後電位VL(単位:V)とした。測定した非露光領域の表面電位を白紙部電位V3(単位:V)とした。なお、露光後電位VL及び白紙部電位V3は、転写バイアスをオフにした状態で測定された。次いで、−2kVの転写バイアスを印加し、転写バイアスをオンにした状態で非露光領域(白紙部)の表面電位を測定した。得られた非露光領域(白紙部)の表面電位を、白紙部電位V4とした。得られたV3とV4とから数式「転写メモリー電位ΔVtc=V4−V3」を用いて転写メモリー電位ΔVtc(単位:V)を得た。
得られた露光後電位VL、及び転写メモリー電位ΔVtcを表2及び表3に示す。なお、露光後電位VLの値が小さいほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。転写メモリー電位ΔVtcの絶対値が小さいほど、転写メモリーの発生が抑制されていることを示す。
(画像不良の評価)
感光体(A−1)〜(A−26)及び(B−1)〜(B−13)の各々に対し、画像不良の評価を行った。
感光体を画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)に装着した。この画像形成装置は、直流電圧を印加する接触方式の帯電ローラーを帯電部として備えていた。また、この画像形成装置は、中間転写ベルト上に直接トナー像を掲載する中間転写方式を採用していた。帯電性スリーブは、帯電ローラーの表面に備えられ、エピクロルヒドリン樹脂を主たる構成材料とする帯電性ゴムで形成されていた。帯電部の帯電電圧を調整し、非露光時の現像部位置に対応する感光体の帯電電位(白紙部電位Vs)を+570V±10Vに設定した。レーザー光を露光光として使用した。このレーザー光は、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光を取り出した光であって、波長780nm、半値幅20nm、及び光エネルギー1.16μJ/cm2であった。記録媒体として京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。測定環境は、温度23℃かつ相対湿度50%RHであった。
まず、印字試験を行った。印字試験は、記録媒体に1時間連続して印字パターン(画像濃度40%)を印刷する試験であった。次いで、評価用画像を作成した。図8を参照して、評価用画像を説明する。図8は、評価用画像70を示す図である。評価用画像70は、領域72及び領域74を含む。領域72は、像担持体1周分に相当する領域である。領域72は、画像76と画像75とからなる。画像76は、正方形状のソリッド画像(画像濃度100%)から構成される。画像75は、正方形状の白抜きの白紙画像(画像濃度0%)から構成される。領域74は、像担持体1周分に相当する領域である。領域74は画像78から構成される。画像78は、全面ハーフトーン画像(画像濃度40%)から構成される。はじめに領域72の画像76及び画像75を形成し、その後、領域74の画像78を形成した。画像76は感光体1周分に相当する画像であり、画像78は画像76を形成する周を基準として次周回1周分に相当する画像である。
評価用画像を目視で観察し、領域74における画像76に対応した画像の有無を確認した。ここで、目視による観察とは、肉眼での観察(肉眼観察)又はルーペ(倍率10倍、TRUSCO社製、TL−SL10K)を介した観察(ルーペ観察)である。転写メモリーに起因する画像不良(画像ゴースト)の発生の有無を確認した。画像ゴーストの発生の有無は、下記の基準に基づいて評価した。得られた評価結果を表2及び表3に示す。なお、評価A〜Cを合格とした。
(画像ゴーストの評価基準)
評価A(非常に良い):画像76に対応する画像ゴーストが領域74において観察される。
評価B(良い):画像76に対応する画像ゴーストが領域74においてわずかに観察される。
評価C(普通):画像76に対応する画像ゴーストが領域74において観察されるが、実用上問題のない水準である。
評価D(悪い):画像76に対応する画像ゴーストが領域74において明確に観察され、実用上問題のある水準である。画像評価用サンプルにおいて観測された画像ゴーストと、画像ゴーストが観測されなかった非画像部とのコントラストが低い。
表2は感光体(A−1)〜(A−26)の構成及び評価結果を示し、表3は感光体(B−1)〜(B−13)の構成及び評価結果を示す。欄「CGM」のCG−1〜CG−2は、それぞれ電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−2)を示す。表2及び表3中、欄「HTM」のHT−1〜HT−7及びHT−8〜HT−9は、それぞれトリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−7)及び正孔輸送剤(HT−8)〜(HT−9)を示す。欄「ETM」のET−1〜ET−10は、それぞれキノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)及び電子輸送剤(ET−8)〜(ET−10)を示す。表2及び表3中、欄「Resin」のR−1〜R−11及びR−A〜R−Fは、それぞれポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)及びバインダー樹脂(R−A)〜(R−F)を示す。
表2に示すように、感光体(A−1)〜(A−26)では、感光層は、単層型感光層であった。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有していた。電子輸送剤は、キノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)の何れか1種であった。キノン誘導体(ET−1)〜(ET−7)は、一般式(ET)で表されるキノン誘導体に包含される化合物であった。バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)の何れかであった。ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−11)は、何れも一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂に包含されるポリアリレート樹脂であった。表2に示すように、感光体(A−1)〜(A−26)では、転写メモリー電位が−37V以上−14V以下であり、画像の評価結果がA(非常に良い)、B(良い)又はC(普通)であった。
表3に示すように、感光体(B−1)〜(B−11)では、感光層は、単層型感光層であった。感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有していた。具体的には、感光体(B−1)〜(B−3)及び(B−12)〜(B−13)では、感光層は、電子輸送剤(ET−8)〜(ET−10)の何れか1種を含有していた。電子輸送剤(ET−8)〜(ET−10)は、一般式(ET)で表されるキノン誘導体に包含される化合物ではなかった。感光体(B−4)〜(B−11)では、感光層は、バインダー樹脂(R−A)〜(R−F)の何れか1種を含有していた。バインダー樹脂(R−A)〜(R−F)は、何れも一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂に包含されるバインダー樹脂ではなかった。表3に示すように、感光体(B−1)〜(B−13)では、転写メモリー電位が−61V以上−49V以下であり、画像の評価結果はD(悪い)であった。
表2及び表3から明らかなように、第一実施形態に係る感光体(感光体(A−1)〜(A−26))は、感光体(B−1)〜(B−13)に比べ、転写メモリー電位の絶対値が小さかった。画像の評価結果が優れていた。従って、本発明に係る感光体は、転写メモリーの発生を抑制することが明らかである。また、第二実施形態に係る画像形成装置(感光体(A−1)〜(A−26)の何れか1種を搭載した画像形成装置)は、感光体(B−1)〜(B−13)の何れか1種を搭載した画像形成装置に比べ、画像の評価結果が優れていた。従って、本発明に係る画像形成装置は、画像不良の発生を抑制することが明らかである。
表2に示すように、感光体(A−1)及び(A−22)では、感光層はそれぞれバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(R−4)及び(R−7)を含んでいた。ポリアリレート樹脂(R−4)は、sが1以上の整数を表し、X及びYのうちの一方は、化学式(2C)で表される二価の基を表し、X及びYのうちの他方は、化学式(2F)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂であった。ポリアリレート樹脂(R−7)は、sが1以上の整数を表し、X及びYのうちの一方は、化学式(2C)で表される二価の基を表し、X及びYのうちの他方は、化学式(2G)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂であった。表2に示すように、感光体(A−1)及び(A−22)では、転写メモリー電位がそれぞれ−20V及び−21Vであり、画像の評価結果はA(非常に良い)であった。
表2に示すように、感光体(A−17)〜(A−21)では、感光層は、それぞれバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−3)、(R−5)及び(R−6)の何れか1種を含んでいた。ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−3)、(R−5)及び(R−6)は、何れもsが1以上の整数を表し、X及びYのうちの一方は、化学式(2C)で表される二価の基を表し、X及びYのうちの他方は、化学式(2F)又は(2G)で表される二価の基を表すポリアリレート樹脂ではなかった。表2に示すように、感光体(A−17)〜(A−21)では、転写メモリー電位が−32V以上−22V以下であり、画像の評価結果はB(良い)又はC(普通)であった。
表2から明らかなように、感光体(A−1)及び(A−22)は、感光体(A−17)〜(A−21)に比べ、転写メモリー電位の絶対値が小さかった。感光体は、感光層がバインダー樹脂として一般式(1)で表されるポリアリレート樹脂を含有する場合、ポリアリレート樹脂が、一般式(1)中、sが1以上の整数を表し、X及びYのうちの一方は、化学式(2C)で表される二価の基を表し、X及びYのうちの他方は、化学式(2F)又は(2G)で表される二価の基を表すと、感光層がそれ以外のポリアリレート樹脂を含む感光体に比べ、転写メモリーの発生を抑制することが明らかである。
表2に示すように、感光体(A−1)及び(A−8)〜(A−13)では、感光層は、正孔輸送剤としてトリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−7)の何れか1種を含んでいた。トリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−7)は、一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体に包含される化合物であった。表2に示すように、感光体(A−1)及び(A−8)〜(A−13)では、転写メモリー電位が−22V以上−16V以下であり、画像の評価結果がA(非常に良い)又はB(良い)であった。
表2に示すように、感光体(A−14)及び(A−15)では、感光層はそれぞれ正孔輸送剤(HT−8)及び(HT−9)を含んでいた。正孔輸送剤(HT−8)及び(HT−9)は、一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体に包含される化合物ではなかった。表2に示すように、感光体(A−14)及び(A−15)では、転写メモリー電位が−35V及び−37Vであり、画像の評価結果がC(普通)であった。
表2から明らかなように、感光体(A−1)及び(A−8)〜(A−13)は、感光体(A−14)及び(A−15)に比べ、転写メモリー電位の絶対値が小さかった。感光層が、一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含む感光体は、一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含まない感光体に比べ、転写メモリーの発生を抑制することが明らかである。また、感光体(A−1)及び(A−8)〜(A−13)の何れか1種を搭載した画像形成装置は、感光体(A−14)及び(A−15)の何れか1種を搭載した画像形成装置に比べ、画像の評価結果が優れていた。
表2に示すように、感光体(A−12)及び(A−13)では、感光層はそれぞれ正孔輸送剤としてトリフェニルアミン誘導体(HT−6)及び(HT−7)を含んでいた。トリフェニルアミン誘導体(HT−6)及び(HT−7)は、一般式(HT)中、R11が炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、kは2を表す正孔輸送剤であり、m1及びm2が3を表す正孔輸送剤であった。表2に示すように、感光体(A−12)及び(A−13)では、露光後電位がそれぞれ+114V及び+113Vであった。
表2に示すように、感光体(A−8)〜(A−11)及び(A−1)では、感光層は、それぞれ正孔輸送剤としてトリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−5)を含んでいた。トリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−5)は、何れも一般式(HT)中、R11が炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、kは2を表す正孔輸送剤でもなく、m1及びm2が3を表す正孔輸送剤でもなかった。表2に示すように、感光体(A−8)〜(A−11)及び(A−1)では、露光後電位が+117V以上+126V以下であった。
表2から明らかなように、感光体(A−12)及び(A−13)は、感光体(A−1)及び(A−8)〜(A−11)に比べ、露光後電位が小さかった。感光体は、感光層が正孔輸送剤として一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含有する場合、トリフェニルアミン誘導体が、一般式(HT)中、R11が炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すか、又はkは2を表す正孔輸送剤であり、m1及びm2が3を表すと、感光層がそれ以外の一般式(HT)で表されるトリフェニルアミン誘導体を含む感光体に比べ、感度特性に優れることが明らかである。