以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
[第一実施形態:正帯電単層型電子写真感光体]
第一実施形態は、正帯電単層型電子写真感光体(以下、「感光体」と記載する場合がある)1に関する。以下、図1を参照して、本実施形態の感光体1について説明する。図1は、感光体1の構造を示す概略断面図である。
感光体1は、例えば図1(a)に示すように、感光層3を備える。感光層3は、電荷発生剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を少なくとも含有する。感光層3は、電子輸送剤を更に含有してもよい。
感光層3は、導電性基体2上に直接又は間接に設けられる。例えば、図1(a)に示すように、導電性基体2上に感光層3を直接設けてもよい。あるいは、例えば、図1(b)に示すように、導電性基体2と感光層3との間に中間層4が設けられてもよい。また、図1(a)及び図1(b)に示すように、感光層3が最外層として露出してもよい。あるいは、図1(c)に示すように、感光層3上に保護層5が備えられてもよい。
感光層3の厚さは、感光層として充分に作用できる限り、特に限定されない。感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
以下、導電性基体2、及び感光層3について説明する。更に、中間層4、及び感光体1の製造方法について説明する。
[1.導電性基体]
導電性基体2は、感光体1の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体2としては、例えば、導電性を有する材料で形成される導電性基体、又は導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体2の形状は、第二実施形態で後述する画像形成装置6(図2及び図3参照)の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体2としては、例えば、シート状の導電性基体、又はドラム状の導電性基体が挙げられる。また、導電性基体2の厚みは、導電性基体2の形状に応じて、適宜選択される。
[2.感光層]
以下、感光層3に含有される、電荷発生剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂について説明する。また、感光層3に必要に応じて含有されてもよい、電子輸送剤、及び添加剤について説明する。
[2−1.電荷発生剤]
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(CG−1)で表される無金属フタロシアニン、又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CG−2)で表されるチタニルフタロシアニン、又は酸化チタン以外の金属が配位したフタロシアニン(例えば、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン)が挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、又はY型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下「X型無金属フタロシアニン」と記載する場合がある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型結晶、β型結晶、又はY型結晶が挙げられる。以下、チタニルフタロシアニンのα型結晶、β型結晶、及びY型結晶を、各々、α型チタニルフタロシアニン、β型チタニルフタロシアニン、及びY型チタニルフタロシアニンと記載する場合がある。波長領域700nm以上で高い量子収率を有することから、チタニルフタロシアニンのなかでもY型チタニルフタロシアニンが好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、例えば、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角:3°、ストップ角:40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
このようなY型チタニルフタロシアニンは、示差走査熱量分析(DSC)スペクトルにおける熱特性(詳しくは、次に示す熱特性(A)〜(C))の違いによって3種類に分類される。
熱特性(A):DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲に1つのピークを有する。
熱特性(B):DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有しない。
熱特性(C):DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有せず、270℃以上400℃以下の範囲に1つのピークを有する。
(示差走査熱量分析の測定方法)
示差走査熱量分析スペクトルの測定方法の一例について説明する。サンプルパンにチタニルフタロシアニン結晶粉末の評価用試料を載せて、示差走査熱量計(例えば、株式会社リガク製「TAS−200型 DSC8230D」)を用いて示差走査熱量分析スペクトルを測定する。測定範囲は、例えば40℃以上400℃以下であり、昇温速度は、例えば20℃/分である。
結晶安定性に優れていること、有機溶媒中で結晶転移を起こし難いこと、及び感光層3中に分散させ易いことから、熱特性(B)及び(C)を有するY型チタニルフタロシアニンが好ましい。
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター、又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体1を用いることが好ましい。そのため、例えば、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましい。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下程度の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体1には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、又はペリレン系顔料が好適に用いられる。
電荷発生剤の含有量は、感光層3においてバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
[2−2.正孔輸送剤]
感光層3には、正孔輸送剤として、トリフェニルアミン誘導体(I)が含有される。トリフェニルアミン誘導体(I)を含有する感光層3を備える感光体1は、帯電時の表面電位を安定的に維持できる傾向がある。その理由は、以下のように推測される。
第一に、正孔輸送剤であるトリフェニルアミン誘導体(I)は、比較的大きな分子構造を有する。正孔輸送剤の分子構造が大きくなると、感光層3中に存在する正孔輸送剤同士のホッピング距離が小さくなる傾向がある。その結果、正孔輸送剤間での正孔の移動性が向上すると考えられる。
第二に、正孔輸送剤であるトリフェニルアミン誘導体(I)は、分子中に1個の窒素原子を有する。そのため、トリフェニルアミン誘導体(I)は、分子中に2個以上の窒素原子を有する化合物(例えば、ジアミン化合物)と比較して、分子内の電荷の偏りが少ない傾向がある。その結果、正孔輸送剤であるトリフェニルアミン誘導体(I)の分子内での正孔の移動性も向上すると考えられる。
以上、第一及び第二の理由から、トリフェニルアミン誘導体(I)を含有する感光層3を備える感光体1は、帯電時の表面電位を安定的に維持できると考えられる。トリフェニルアミン誘導体(I)は、一般式(I)で表される。
一般式(I)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表す。或いは、R1とR2とは結合して、R1が結合する炭素原子及びR2が結合する炭素原子とともに、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル環を形成してもよい。R3、R4、R5、R6及びR7は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表す。m1及びm2は、各々独立して、1以上3以下の整数を表す。
一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、n−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、炭素原子数1以上4以下のアルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基、n−ブチル基である。
一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7が表す炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、又はt−ブトキシ基が挙げられる。
一般式(I)中、R1とR2とは結合して、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル環を形成してもよい。この場合、R1が結合する炭素原子、及びR2が結合する炭素原子も、R1及びR2とともに、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル環を形成する。R1とR2とが結合して形成される炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル環の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、又はシクロオクタンが挙げられる。
一般式(I)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の置換位置は特に限定されない。例えば、R1は、R1を有するフェニル基が結合する窒素原子に対して、オルト位(o位)、メタ位(m位)、及びパラ位(p位)の何れに位置してもよい。
m1及びm2は、各々独立して、1以上3以下の整数を表す。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、m1及びm2は、各々2を表すことが好ましい。同様の理由から、m1及びm2は、各々3を表すことも好ましい。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、各々水素原子を表すことが好ましい。同様の理由から、R1は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。同様の理由から、R1が炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す場合、R1は、R1を有するフェニル基が結合する窒素原子に対してパラ位に存在することが好ましい。同様の理由から、R1が炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表す場合、R1は、R1を有するフェニル基が結合する窒素原子に対してオルト位に存在することが好ましい。
トリフェニルアミン誘導体(I)に加えて、トリフェニルアミン誘導体(I)以外の別の正孔輸送剤を組み合わせて用いてもよい。別の正孔輸送剤は、公知の正孔輸送剤から適宜選択される。
正孔輸送剤の合計含有量は、感光層3においてバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
正孔輸送剤中のトリフェニルアミン誘導体(I)の含有率は、正孔輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
トリフェニルアミン誘導体(I)の具体例としては、化学式(HT−1)〜(HT−20)で表されるトリフェニルアミン誘導体が挙げられる。以下、式(HT−1)〜(HT−20)で表されるトリフェニルアミン誘導体を、各々、トリフェニルアミン誘導体(HT−1)〜(HT−20)と記載する場合がある。
[2−3.電子輸送剤]
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。これらの電子輸送剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子輸送剤の具体例としては、一般式(V)〜(VIII)で表される化合物が挙げられる。一般式(V)及び(VI)で表される化合物は、各々、ジフェノキノン系化合物である。一般式(VII)で表される化合物は、アゾキノン系化合物である。一般式(VIII)で表される化合物は、ジイミド系化合物(例えば、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体)である。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R81、R82、R83及びR84は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよい複素環基を表す。一般式(VII)中、R73は、ハロゲン原子、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよい複素環基を表す。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R73、R81、R82、R83及びR84において、アルキル基としては、例えば、炭素原子数1以上10以下のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基が挙げられる。炭素原子数1以上10以下のアルキル基のなかでも、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上5以下のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、又は1,1−ジメチルプロピル基が特に好ましい。アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、又はこれらを組み合わせたアルキル基であってもよい。アルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましい。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R73、R81、R82、R83及びR84において、アルケニル基としては、例えば、炭素原子数2以上10以下のアルケニル基が挙げられ、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が好ましく、炭素原子数2以上4以下のアルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、直鎖状アルケニル基、分岐鎖状アルケニル基、環状アルケニル基、又はこれらを組み合わせたアルケニル基であってもよい。アルケニル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましい。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R73、R81、R82、R83及びR84において、アルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1以上10以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基がより好ましい。アルコキシ基は、直鎖状アルコキシ基、分岐鎖状アルコキシ基、環状アルコキシ基、又はこれらを組み合わせたアルコキシ基であってもよい。アルコキシ基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましい。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R73、R81、R82、R83及びR84において、アラルキル基としては、例えば、炭素原子数7以上15以下のアラルキル基が挙げられ、炭素原子数7以上13以下のアラルキル基が好ましく、炭素原子数7以上12以下のアラルキル基がより好ましい。アラルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上4以下の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を含むアルコキシカルボニル基、又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R73、R81、R82、R83及びR84において、アリール基としては、例えば、フェニル基、2個又は3個のベンゼン環が縮合されることにより形成される基、又は2個若しくは3個のベンゼン環が単結合により連結されることにより形成される基が挙げられる。アリール基に含まれるベンゼン環の数は、例えば、1以上3以下であり、1又は2であることが好ましい。アリール基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上4以下の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を含むアルコキシカルボニル基、又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R73、R81、R82、R83及びR84において、複素環基としては、例えば、N、S、及びOからなる群より選択される1以上のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環同士が縮合した複素環基;又は、このような単環と、5員又は6員の炭化水素環とが縮合した複素環基が挙げられる。複素環基が縮合環である場合、縮合環に含まれる環の数は3以下であることが好ましい。複素環基が有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上4以下の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を含むアルコキシカルボニル基、又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(VII)中のR73において、ハロゲン原子としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基が挙げられ、クロロ基が好ましい。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、一般式(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)中、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R71、R72、R81、R82、R83及びR84は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R73は、ハロゲン原子を表すことが好ましい。
一般式(V)〜(VIII)で表される化合物の具体例としては、化学式(ET−1)〜(ET−4)で表される化合物が挙げられる。
電子輸送剤の含有量は、感光層3においてバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
[2−4.バインダー樹脂]
感光層3は、バインダー樹脂として、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂を含有する。感光層3がフルオロ基を有するポリカーボネート樹脂を含有することにより、帯電時の感光体1の表面電位が安定的に維持されると考えられる。その理由は、以下のように推測される。
第一に、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂を含有する感光層3には、オゾン及びNOXのようなガスが付着し難い。そのため、感光体1をこのようなガスの存在下で使用する場合であっても、感光層3の劣化が引き起こされ難いと考えられる。
第二に、感光体1がクリーニング装置(例えば、クリーニングブレード)を備える画像形成装置6で使用される場合、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂を含有する感光層3は、クリーニング装置によって摺擦されることにより、正極性に帯電し易い傾向がある。
以上の第一及び第二の理由から、感光層3がフルオロ基を有するポリカーボネート樹脂を含有することにより、帯電時(特に、正帯電時)の感光体1の表面電位が安定的に維持されると推測される。
フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールB型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールCZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、又はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。更に、これらの樹脂は、樹脂中にフルオロ基を有する。
フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の具体例としては、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂が挙げられる。
一般式(II)中、R21、R22、R23及びR24は、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。R25及びR26は、各々独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。或いは、R25とR26とは結合して、置換基を有してもよい炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基を形成してもよい。R27、R28、R29及びR30は、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。Rtは、末端基を表す。
一般式(II)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30が表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、n−ブチル基、又はt−ブチル基が挙げられる。なかでも、帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、メチル基が好ましい。
一般式(II)中、R25及びR26が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、炭素数6以上14以下のアリール基(例えば、単環、又は縮合環)が挙げられる。単環のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。縮合環のアリール基としては、例えば、二環のアリール基(例えば、ナフチル基)、又は三環のアリール基(例えば、アントリル基、又はフェナントリル基)が挙げられる。なかでも、帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、フェニル基が好ましい。
一般式(II)中、R25とR26とが結合して形成される炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基の例としては、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、又はシクロオクチリデン基が挙げられる。なかでも、帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、シクロヘキシリデン基が好ましい。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、及び炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基は、各々置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子が挙げられ、より具体的には、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基が挙げられる。
一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂は、更に下記(a)及び(b)の一方又は両方を満たす。
(a)R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30のうちの1つ以上は、フルオロ基を有する。
(b)末端基は、フルオロ基を有する。
一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂が(a)を満たす場合、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30のうちの1つ以上は、フルオロ基を有する。R21、R22、R23、R24、R27、R28、R29又はR30がフルオロ基を有する場合、R21、R22、R23、R24、R27、R28、R29又はR30は、フルオロ基を有する炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。R25又はR26がフルオロ基を有する場合、R25又はR26は、フルオロ基を有する炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフルオロ基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。或いは、R25とR26とが結合して、フルオロ基を有する炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基を形成してもよい。一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂が(a)を満たす場合、Rtの具体例としては、p−tert−ブチル−フェニル基、p−フェニルフェニル基、又はp−クミルフェニル基が挙げられる。
R25及びR26が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基が置換基を有する場合、置換基の置換位置は特に制限されない。例えば、アリール基がフェニル基である場合、置換基は、フェニル基が結合する炭素原子に対して、フェニル基のオルト位(o位)、メタ位(m位)、及びパラ位(p位)の何れに位置してもよい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、置換基は、フェニル基が結合する炭素原子に対して、フェニル基のパラ位(p位)に位置することが好ましい。
R25及びR26が表す炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基が置換基を有する場合、置換基の置換位置は特に制限されない。例えば、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキリデン基がシクロヘキシリデン基である場合、置換基は、シクロヘキシリデン基が結合する炭素原子に対して、シクロヘキシリデン基の2位、3位、4位、5位、及び6位の何れに位置してもよい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、置換基は、シクロヘキシリデン基の4位に位置することが好ましい。
一般式(II)中、n1+n2=1.0であり、0.0<n1≦1.0である。一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂は、一般式(IIa)で表される繰り返し単位(以下「繰り返し単位(IIa)」と記載する場合がある)と、一般式(IIb)で表される繰り返し単位(以下「繰り返し単位(IIb)」と記載する場合がある)とから形成される。n1は、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂における、繰り返し単位(IIa)のモル数と繰り返し単位(IIb)のモル数との合計モル数に対する、繰り返し単位(IIa)のモル数の比率を表す。n2は、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂における、繰り返し単位(IIa)のモル数と繰り返し単位(IIb)のモル数との合計モル数に対する、繰り返し単位(IIb)のモル数の比率を表す。
一般式(IIa)及び(IIb)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30は、各々、一般式(II)中のR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30と同義である。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するための好適な例としては、n1が1.0であり、n2が0.0である。この場合、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂は、繰り返し単位(IIa)のみから形成される重合体である。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するための別の好適な例としては、0.4≦n1≦0.8であり、より好適な例としては、0.5≦n1≦0.7である。
n1及びn2は、例えば、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂を、核磁気共鳴(NMR)分光装置を用いて測定することにより算出される。NMRスペクトルに現れる繰り返し単位(IIa)に特徴的なピークと、繰り返し単位(IIb)に特徴的なピークとの比率を算出することにより、n1及びn2が求められる。
一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂としては、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体が挙げられる。ランダム共重合体は、繰返し単位(IIa)と、繰返し単位(IIb)とがランダムに配列した共重合体である。交互共重合体は、繰返し単位(IIa)と繰り返し単位(IIb)とが交互に配列した共重合体である。周期的共重合体は、1つ又は複数の繰返し単位(IIa)と、1つ又は複数の繰返し単位(IIb)とが周期的に配列した共重合体である。ブロック共重合体は、複数の繰返し単位(IIa)からなるブロックと、複数の繰返し単位(IIb)からなるブロックとが配列した共重合体である。
一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂が(b)を満たす場合、末端基はフルオロ基を有する。末端基がフルオロ基を有するとき、末端基としては、一般式(III)又は(IV)で表される末端基が好ましい。まず、一般式(III)で表される末端基を説明する。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基、及び炭素原子数6以上14以下のアリール基は、各々、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、及びフルオロ基からなる群から選択される1個以上の置換基を有する。
R31、R32、R33、R34及びR35の全てが、水素原子となることはない。つまり、一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35のうちの1つ以上は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基、又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、又はイコシル基が挙げられる。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、炭素原子数1以上11以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数3以上11以下のアルキル基がより好ましく、n−プロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、又はウンデシル基が特に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、へプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、又はイコシルオキシ基が挙げられる。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基が好ましく、オクチルオキシ基がより好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、ウンデシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリデシルオキシカルボニル基、テトラデシルオキシカルボニル基、ペンタデシルオキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基、へプタデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、ノナデシルオキシカルボニル基、又はイコシルオキシカルボニル基が挙げられる。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、炭素原子数1以上12以下のアルコキシカルボニル基が好ましく、炭素原子数6以上12以下のアルコキシカルボニル基がより好ましく、ヘキシルオキシカルボニル基、又はドデシルオキシカルボニル基が特に好ましく、ドデシルオキシカルボニル基が最も好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基の例は、一般式(II)中のR25及びR26が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基と同様である。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
既に述べたように、一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基、及び炭素原子数6以上14以下のアリール基は、各々、1個以上の置換基を有する。置換基は、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、及びフルオロ基からなる群から選択される。
置換基としての、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基の例としては、−Cq1F(q1×2+1)基、−Cq1HF(q1×2)基、又は−Cq1H2F(q1×2-1)基が挙げられる。ここで、q1は1以上20以下の整数を表す。q1として好ましくは1以上9以下の整数である。置換基としての、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基の具体例としては、パーフルオロノニル基(−C9F19基)が挙げられる。
置換基としての、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基の例としては、−O−Cq2F(q2×2+1)基、−O−Cq2HF(q2×2)基、又は−O−Cq2H2F(q2×2-1)基が挙げられる。ここで、q2は1以上20以下の整数を表す。q2として好ましくは1以上13以下の整数である。置換基としての、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基の具体例としては、1H,1H−パーフルオロドデシルオキシ基(−OCH2−C11F23基)又は、1H,1H−パーフルオロトリデシルオキシ基(−OCH2−C12F25基)が挙げられる。
R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基が置換基を有する場合、置換基の置換位置は特に制限されない。例えば、炭素原子数6以上14以下のアリール基がフェニル基である場合、置換基は、フェニル基が結合する炭素原子に対して、フェニル基のオルト位(o位)、メタ位(m位)、及びパラ位(p位)の何れに位置してもよい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、置換基は、フェニル基が結合する炭素原子に対して、フェニル基のパラ位(p位)に位置することが好ましい。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35は、各々独立して、以下の官能基を表すことが好ましい。
水素原子;
フルオロ基で置換された炭素原子数1以上20以下のアルキル基;
フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基と、フルオロ基とで置換された炭素原子数1以上20以下のアルキル基;
フルオロ基で置換された炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基;
フルオロ基で置換された炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基;又は
フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基で置換された炭素原子数6以上14以下のアリール基。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルキル基がフルオロ基で置換される場合、フルオロ基で置換された炭素原子数1以上20以下のアルキル基の例としては、−Cq3F(q3×2+1)基、−Cq3HF(q3×2)基、又は−Cq3H2F(q3×2-1)基が挙げられる。ここで、q3は、1以上20以下の整数を表す。q3として好ましくは、1以上11以下の整数である。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、パーフルオロt−ブチル基(t−C4F9基)、パーフルオロヘキシル基(−C6F13基)、パーフルオロオクチル基(−C8F17基)、パーフルオロノニル基(−C9F19基)、又はパーフルオロウンデシル基(−C11F23基)が好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルキル基が、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基と、フルオロ基とで置換される場合、以下の基が好ましい。即ち、フルオロ基を有する炭素原子数1以上13以下のアルコキシ基と、フルオロ基とで置換される、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましい。なかでも、ヘキサフルオロ(1H,1H−パーフルオロドデシルオキシ)プロピル基(−C3F6(OCH2−C11F23)基)、又はヘキサフルオロ(1H,1H−パーフルオロトリデシルオキシ)プロピル基(−C3F6(OCH2−C12F25)基)がより好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基がフルオロ基で置換される場合、フルオロ基で置換された炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基の例としては、−CO−O−Cq4F(q4×2+1)基、−CO−O−Cq4HF(q4×2)基、又は−CO−O−Cq4H2F(q4×2-1)基が挙げられる。ここで、q4は1以上20以下の整数を表す。q4として好ましくは1以上12以下の整数である。なかでも、帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、パーフルオロドデシルオキシカルボニル基(−CO−O−n−C12F25基)、又はパーフルオロヘキシルオキシカルボニル基(−CO−O−C6F13基)が好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基がフルオロ基で置換される場合、フルオロ基で置換された炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基の例としては、−O−Cq5F(q5×2+1)基、−O−Cq5HF(q5×2)基、又は−O−Cq5H2F(q5×2-1)基が挙げられる。ここで、q5は、1以上20以下の整数である。q5として好ましくは、1以上8以下の整数である。なかでも、帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ基(−O−CH2−C7F15基)が好ましい。
一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基がフルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基で置換される場合、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基で置換された炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フルオロ基を有する炭素原子数1以上9以下のアルキル基で置換された炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましい。なかでも、帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持できることから、パーフルオロノニル基(−C9F19基)で置換されたフェニル基がより好ましい。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するためには、一般式(III)中、R31、R32、R34及びR35は、各々、水素原子を表すことが好ましい。R33は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基を表すことが好ましい。炭素原子数1以上20以下のアルキル基、及び前記炭素原子数1以上20以下のアルコキシカルボニル基は、各々、3個以上41個以下のフルオロ基で置換されることが好ましい。
次に、一般式(IV)で表される末端基を説明する。
一般式(IV)中、R41は、単結合又は−CO−を表す。R42及びR43は、各々独立して、水素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。R44は、水素原子、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又は−OR45−OR46を表す。P1は、0以上12以下の整数を表す。
R42、R43及びR44のうちの全てが、水素原子となることはない。つまり、R42及びR43が各々水素原子であるとき、R44は、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、又は−OR45−OR46を表す。R44が水素原子であるとき、R42及びR43のうちの少なくとも一方は、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。
R44が−OR45−OR46を表す場合、R45は、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキリデン基を表す。R46は、フルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基を表す。
R45が表すフルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキリデン基において、炭素原子数1以上20以下のアルキリデン基の例としては、メチリデン基、エチリデン基、n−プロピリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基、s−ブチリデン基、t−ブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基、ネオペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、デシリデン基、ウンデシリデン基、ドデシリデン基、トリデシリデン基、テトラデシリデン基、ペンタデシリデン基、ヘキサデシリデン基、へプタデシリデン基、オクタデシリデン基、ノナデシリデン基、又はイコシリデン基が挙げられる。なかでも好ましくは、炭素原子数1以上4以下のアルキリデン基であり、より好ましくは、炭素原子数1以上2以下のアルキリデン基である。炭素原子数1以上20以下のアルキリデン基は、2個以上40個以下のフルオロ基を有することが好ましく、2個以上8個以下のフルオロ基を有することがより好ましく、2個以上4個以下のフルオロ基を有することが特に好ましい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するために、R45が表すフルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキリデン基として好ましくは、2個以上8個以下のフルオロ基を有する炭素原子数1以上4以下のアルキリデン基であり、より好ましくは、パーフルオロエチリデン基(−CF2−CF2−基)である。
R46が表すフルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基において、炭素原子数1以上20以下のアルキル基は、例えば、一般式(III)中、R31、R32、R33、R34及びR35が表す炭素原子数1以上20以下のアルキル基の例と同様である。なかでも好ましくは、炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。炭素原子数1以上20以下のアルキル基は、3個以上41個以下のフルオロ基を有することが好ましく、3個以上9個以下のフルオロ基を有することがより好ましい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するために、R46が表すフルオロ基を有する炭素原子数1以上20以下のアルキル基として好ましくは、3個以上9個以下のフルオロ基を有する炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、より好ましくは、パーフルオロs−ブチル基である。
P1は、0以上12以下の整数を表す。P1は、1以上5以下の整数を表すことが好ましく、1以上3以下の整数を表すことがより好ましく、1を表すことが特に好ましい。
帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するためには、一般式(IV)中、R41は、単結合を表すことが好ましい。R42及びR43は、各々、水素原子を表すことが好ましい。R44は、−OR45−OR46を表すことが好ましい。R45は、2個以上8個以下のフルオロ基を有する炭素原子数1以上4以下のアルキリデン基を表すことが好ましい。R46は、3個以上9個以下のフルオロ基を有する炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。P1は、1以上5以下の整数を表すことが好ましい。
一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂の具体例としては、化学式(Resine−1)〜(Resine−6)で表されるポリカーボネート樹脂が挙げられる。なお、化学式(Resine−1)〜(Resine−5)中、繰り返し単位の添え字は、一般式(II)中のn1が表す数に対応する。化学式(Resine−6)中、繰り返し単位の添え字は、一般式(II)中のn1及びn2が表す数に対応する。
以下、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の製造方法を説明する。フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の製造方法の一例として、ポリカーボネート樹脂の繰返し単位を形成するためのジオール化合物とジハロゲン化カルボニルとを界面縮重合させる方法(いわゆるホスゲン法)が挙げられる。フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の製造方法の別の例として、ジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法が挙げられる。なお、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されない。フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂は、ホスゲン法、エステル交換法、又は他の公知の方法を適宜選択することにより製造される。
以下、ホスゲン法を用いて、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂として、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂を製造する場合を例に挙げて説明する。
一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂は、一般式(IIam)で表される化合物と、一般式(IIbm)で表される化合物とを、界面重縮合させることにより製造される。以下、一般式(IIam)で表される化合物と、一般式(IIbm)で表される化合物とを各々、化合物(IIam)、及び化合物(IIbm)と記載する場合がある。界面重縮合反応は、末端停止剤の存在下で行われる。界面重縮合反応は、例えば、ジハロゲン化カルボニル(例えば、ホスゲン)を用いて、酸結合剤及び溶媒の存在下で行われてもよい。
一般式(IIam)及び(IIbm)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30は、各々、一般式(II)中のR21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29及びR30と同義である。
化合物(IIam)の添加量は、化合物(IIam)のモル数と化合物(IIbm)のモル数との合計モル数に対して、0mol%(n1=0.0)より大きく、100mol%(n1=1.0)以下であることが好ましい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するための好適な例としては、化合物(IIam)の添加量は、100mol%(n1=1.0)であることがより好ましい。帯電時の感光体1の表面電位をより安定的に維持するための別の好適な例としては、化合物(IIam)の添加量は、40mol%(n1=0.4)以上80mol%(n1=0.8)以下であり、より好適な例としては、50mol%(n1=0.5)以上70mol%(n1=0.7)以下である。なお、化合物(IIam)の添加量が化合物(IIam)のモル数と化合物(IIbm)のモル数との合計モル数に対して100mol%である場合、化合物(IIbm)は界面重縮合反応に使用されない。
界面重縮合反応において末端停止剤を適宜選択することにより、一般式(II)で表されるポリカーボネート樹脂に所望の末端基が導入される。末端停止剤の例としては、一価のカルボン酸、一価の脂肪族アルコール、一価のフェノール、又は一価のフェノールの誘導体が挙げられる。末端停止剤の例としては、一般式(IIcm)で表される化合物が挙げられる。
一般式(IIcm)中、Rtは、一般式(II)におけるRtと同義である。末端基がフルオロ基を有する場合、一般式(IIcm)中のRtは、既に述べた一般式(III)又は(IV)で表されることが好ましい。
フルオロ基を有しない末端停止剤の具体例としては、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、又はp−クミルフェノールが挙げられる。
フルオロ基を有する末端停止剤の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
p−パーフルオロノニルフェノール;
p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール;
p−(パーフルオロヘキシル)フェノール;
p−tert−パーフルオロブチルフェノール;
パーフルオロオクチルフェノール;
パーフルオロヘキシルフェノール;
1−(p−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン;
p−(2−(1H,1H−パーフルオロトリデシルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)フェノール;
3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール;
p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル;
p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール;
2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸;
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール;
2,2−ジフルオロ−2−(2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−トリフルオロメチル)プロポキシ−1,1,2,2−テトラフルオロ)エトキシエタノール;
一般式「H−(CF2)r−CH2−OH」で表される化合物(rは、1以上12以下の整数を表す);又は
一般式「F−(CF2)s−CH2−OH」で表される化合物(sは、1以上12以下の整数を表す)。
酸結合剤の例としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、又は水酸化セシウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウム)、アルカリ金属弱酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム)、アルカリ土類金属弱酸塩(例えば、酢酸カルシウム)、又は有機塩基(例えば、ピリジン)が挙げられる。これらの酸結合剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。酸結合剤の添加量は、化合物(IIam)のヒドロキシル基と化合物(IIbm)のヒドロキシル基の合計モル数1モルに対して、1モル当量以上であることが好ましく、1モル当量以上10モル当量以下であることがより好ましい。
溶媒の例としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、又はクロロベンゼン)、ケトン類(例えば、シクロヘキサノン、アセトン、又はアセトフェノン)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、又は1,4−ジオキサン)が挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。更に、互いに混ざり合わない2種の溶媒を用いて界面重縮合反応を行ってもよい。以上、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の製造方法の一例を説明した。
フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で40000以上であることが好ましく、40000以上52500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が40000以上であると、バインダー樹脂の耐摩耗性を十分に高めることができ、感光層3が摩耗し難くなる。また、バインダー樹脂の分子量が52500以下であると、感光層3の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層3を形成し易くなる。フルオロ基を有するバインダー樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光層3は、バインダー樹脂として、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂以外の別のバインダー樹脂を更に含有してもよい。別のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル酸樹脂、又はウレタン−アクリル酸共重合体が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[2−5.添加剤]
感光体1の電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、感光層3は各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物、又は有機燐化合物が挙げられる。
[3.中間層]
感光体1において、中間層4(特に、下引き層)が、導電性基体2と感光層3との間に備えられてもよい。中間層4は、例えば、無機粒子、及び中間層4に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層4の存在により、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体1を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制し易くなる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛)の粒子、又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層4を形成する樹脂として用いられる限り、特に限定されない。
中間層4は、感光体1の電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層3の添加剤と同様である。
[4.感光体の製造方法]
次に、図1を参照して、感光体1の製造方法の一例について説明する。感光体1の製造方法は、例えば、感光層形成工程を有する。感光層形成工程では、感光層用塗布液を、導電性基体2上に塗布し、塗布した感光層用塗布液に含まれる溶剤を除去して感光層3を形成する。感光層用塗布液は、電荷発生剤と、トリアリールアミン誘導体(1)と、バインダー樹脂と、溶剤とを少なくとも含む。感光層用塗布液は、電荷発生剤、トリアリールアミン誘導体(1)、及びバインダー樹脂を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。感光層用塗布液には、必要に応じて、電子輸送剤、及び各種添加剤を加えてもよい。
感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール)、脂肪族系炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、又はジエチレングリコールジメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、感光体1の製造時の作業性を向上させるためには、ハロゲン化炭化水素以外の溶剤が好ましい。
感光層用塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器が用いられる。
感光層用塗布液は、各成分の分散性、又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
感光層用塗布液を塗布する方法としては、例えば、導電性基体2上に均一に感光層用塗布液を塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、又はバーコート法が挙げられる。
感光層用塗布液に含まれる溶剤を除去する方法は、感光層用塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法である限り、特に限定されない。溶剤を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体1の製造方法は、必要に応じて、中間層4を形成する工程、及び/又は保護層5を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層4を形成する工程、及び保護層5を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
感光体1は、例えば、像担持体と接触して像担持体に直流電圧を印加する帯電部27を備える画像形成装置6において、像担持体として使用される。像担持体と接触して像担持体に直流電圧を印加する帯電部27を備える画像形成装置6については、第二実施形態で後述する。
以上、図1を参照して、第一実施形態に係る感光体1を説明した。第一実施形態に係る感光体1によれば、帯電時の表面電位を安定的に維持することができる。
[第二実施形態:画像形成装置]
第二実施形態は、画像形成装置6に関する。以下、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る画像形成装置6について説明する。
画像形成装置6は、像担持体としての感光体1を備える。既に述べたように感光体1は、帯電時の表面電位を安定的に維持することができる。帯電時の感光体1の表面電位が安定的に維持されると、感光体1の表面にドラム傷及びトナーフィルミングが生じ難くなる。そのため、感光体1を備える画像形成装置6によれば、ドラム傷及びトナーフィルミングに起因する画像不良の発生を抑制することができる。
以下、図2を参照して、画像形成装置6が中間転写方式を採用する場合を、例に挙げて説明する。なお、画像形成装置6が直接転写方式を採用する場合については後述する。図2は、画像形成装置6の一態様の構成を示す概略図である。
画像形成装置6は、像担持体としての感光体1と、帯電部27と、露光部28と、現像部29と、転写部とを備える。感光体1は、第一実施形態で述べた感光体1である。帯電部27は感光体1の表面を帯電する。帯電部27の帯電極性は、正極性である。露光部28は、帯電された感光体1の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部は、感光体1から被転写体へトナー像を転写する。画像形成装置6が中間転写方式を採用する場合、転写部は、一次転写ローラー33、及び二次転写ローラー21に相当する。被転写体は、中間転写ベルト20、及び記録媒体(例えば、用紙P)に相当する。
画像形成装置6は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置6は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
以下、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて、画像形成装置6を説明する。画像形成装置6は、所定方向に並設された複数の感光体1と、複数の現像部29とを備える。複数の現像部29は、各々、感光体1に対向して配置される。複数の現像部29は、各々、現像ローラーを備える。現像ローラーは、トナーを担持して搬送し、対応する感光体1の表面にトナーを供給する。
図2に示すように、画像形成装置6は、箱型の機器筺体7を更に備える。機器筺体7内には、給紙部8、画像形成部9、及び定着部10が設けられる。給紙部8は、用紙Pを給紙する。画像形成部9は、給紙部8から給紙された用紙Pを搬送しながら、用紙Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部10は、画像形成部9で用紙P上に転写された未定着のトナー像を、用紙Pに定着させる。更に、機器筺体7の上面には、排紙部11が設けられる。排紙部11は、定着部10で定着処理された用紙Pを排紙する。
給紙部8には、給紙カセット12、第一ピックアップローラー13、給紙ローラー14、15、及び16、並びにレジストローラー対17が備えられる。給紙カセット12は、機器筺体7から挿脱可能に設けられる。給紙カセット12には、各種サイズの用紙Pが貯留される。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12の左上方位置に設けられる。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー14、15、及び16は、第一ピックアップローラー13によって取り出された用紙Pを搬送する。レジストローラー対17は、給紙ローラー14、15、及び16によって搬送された用紙Pを、一時待機させた後に、所定のタイミングで画像形成部9に供給する。
また、給紙部8は、手差しトレイ(不図示)と、第二ピックアップローラー18とを更に備えている。手差しトレイは、機器筺体7の左側面に取り付けられる。第二ピックアップローラー18は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。第二ピックアップローラー18によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー14、15及び16によって搬送され、レジストローラー対17によって、所定のタイミングで画像形成部9に供給される。
画像形成部9には、画像形成ユニット19、中間転写ベルト20、及び二次転写ローラー21が備えられる。中間転写ベルト20には、画像形成ユニット19によって、中間転写ベルト20の表面(一次転写ローラー33との接触面)に、トナー像が一次転写される。なお、一次転写されるトナー像は、コンピューターのような上位装置から伝送された画像データに基づいて形成される。二次転写ローラー21は、中間転写ベルト20上のトナー像を、給紙カセット12から送り込まれた用紙Pに二次転写する。
画像形成ユニット19には、イエロートナー供給用ユニット25を基準として中間転写ベルト20の回転方向の上流側(図2では右側)から下流側に向けて、イエロートナー供給用ユニット25、マゼンタトナー供給用ユニット24、シアントナー供給用ユニット23、及びブラックトナー供給用ユニット22が順次配設されている。ユニット22、23、24、及び25には、各ユニットの中央位置に、感光体1が配設されている。感光体1は、矢符(時計回り)方向に回転可能に配設されている。なお、ユニット22、23、24、及び25は、画像形成装置6本体に対して脱着される後述のプロセスカートリッジであってもよい。
そして、各感光体1の周囲には、帯電部27、露光部28、現像部29が、帯電部27を基準として各感光体1の回転方向の上流側から順に配置されている。
感光体1の回転方向における帯電部27の上流側には、除電器(不図示)、及びクリーニング装置(不図示)が設けられてもよい。除電器は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清掃及び除電された感光体1の周面は、帯電部27へ送られ、新たに帯電処理される。画像形成装置6がクリーニング装置及び/又は除電器を備える場合、各感光体1の回転方向の上流側から帯電部27を基準として、帯電部27、露光部28、現像部29、一次転写ローラー33、クリーニング装置、及び除電器の順で配置される。
既に述べたように、帯電部27は、感光体1の表面を帯電する。具体的には、帯電部27は、矢符方向に回転されている感光体1の周面を均一に正極性に帯電する。帯電部27は、非接触方式であってもよいし、接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部27は、感光体1と接触することなく感光体1に電圧を印加する。非接触方式の帯電部27としては、例えば、コロナ放電式の帯電装置が挙げられ、より具体的には、コロトロン帯電器、又はスコロトロン帯電器が挙げられる。接触方式の帯電部27は、感光体1と接触して感光体1に電圧を印加する。接触方式の帯電部27としては、例えば、接触(近接)放電式の帯電器が挙げられ、より具体的には、帯電ローラー又は帯電ブラシが挙げられる。
帯電ローラーとしては、例えば、感光体1と接触したまま、感光体1の回転に従動して回転する帯電ローラーが挙げられる。帯電ローラーは、例えば、少なくとも表面部が樹脂で形成される。具体的には、帯電ローラーは、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備える。このような帯電ローラーを備えた帯電部27は、電圧印加部が芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体1の表面を帯電させる。
帯電ローラーの樹脂層を形成する樹脂は、感光体1の表面(周面)を帯電できる限り特に限定されない。樹脂層を形成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、又はシリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
接触方式の帯電部27を備える画像形成装置6では、非接触方式の帯電部27を備える画像形成装置6と比較して、感光体1の表面が、空隙放電により生じた運動エネルギーの高いイオンに曝されることがある。そのため、接触方式の帯電部27を備える画像形成装置6では、通常、感光体の表面電位が安定し難い傾向がある。しかし、本実施形態の画像形成装置6が第一実施形態に係る感光体1を備えることにより、画像形成装置6が接触方式の帯電部27を備える場合であっても、帯電時の感光体1の表面電位を安定的に維持することができる。
また、画像形成装置6が接触方式の帯電部27を備えることにより、帯電部27から発生する活性ガス(例えば、オゾン、又は窒素酸化物)の排出を抑えることができると考えられる。その結果、活性ガスによる感光層3の劣化が抑制されるとともに、オフィス環境に配慮した設計が達成できると考えられる。
帯電部27が印加する電圧は、特に限定されない。帯電部27が印加する電圧の例としては、交流電圧、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧、又は直流電圧が挙げられる。なかでも、帯電部27は直流電圧のみを印加することが好ましい。直流電圧のみを印加する帯電部27は、交流電圧を印加する帯電部27、又は直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する帯電部27と比較して、以下に示す優位性がある。帯電部27が直流電圧のみを印加すると、感光体1に印加される電圧値が一定であるため、感光体1の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部27が直流電圧のみを印加すると、感光層3の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができる。
帯電部27が感光体1に印加する電圧は、1000V以上2000V以下であることが好ましく、1200V以上1800V以下であることがより好ましく、1400V以上1600V以下であることが特に好ましい。
露光部28としては、例えば、露光装置が挙げられ、より具体的には、レーザー走査ユニットが挙げられる。露光部28は、帯電された感光体1の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。具体的には、露光部28は、帯電部27によって均一に帯電された感光体1の周面に、パーソナルコンピューターのような上位装置から入力された画像データに基づくレーザー光を照射する。これにより、感光体1の周面に、画像データに基づく静電潜像が形成される。
現像部29は、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像部29は、静電潜像が形成された感光体1の周面にトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成する。現像部29としては、例えば、現像装置が挙げられる。
転写部(一次転写ローラー33、及び二次転写ローラー21に相当)は、感光体1の表面に形成されたトナー像を被転写体(中間転写ベルト20、及び用紙Pに相当)に転写する。中間転写ベルト20は、無端状のベルト回転体である。中間転写ベルト20は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33に架け渡されている。複数の感光体1の周面が、各々、中間転写ベルト20の表面(接触面)に当接するように、中間転写ベルト20は配置されている。
また、中間転写ベルト20は、各感光体1に対向して配置される一次転写ローラー33によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、中間転写ベルト20は、複数の駆動ローラー30によって矢符(反時計回り)方向に無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターなどの駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト20を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33は、回転自在に設けられる。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30による中間転写ベルト20の無端回転に伴って、従動回転する。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30の主動回転に応じて中間転写ベルト20を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト20を支持する。
一次転写ローラー33は、一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を中間転写ベルト20に印加する。その結果、各感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と一次転写ローラー33との間で、周回する中間転写ベルト20に対して、順次転写(一次転写)される。なお、トナーの帯電極性は正極性である。
二次転写ローラー21は、二次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を用紙Pに印加する。その結果、中間転写ベルト20上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー21とバックアップローラー32との間で用紙Pに転写される。これにより、未定着のトナー像が用紙Pに転写される。
定着部10は、画像形成部9で用紙Pに転写された未定着トナー像を定着させる。定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備えている。加熱ローラー34は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー35は、加熱ローラー34に対向配置され、加圧ローラー35の周面が加熱ローラー34の周面に押圧される。
画像形成部9で二次転写ローラー21により用紙Pに転写された転写画像は、用紙Pが加熱ローラー34と加圧ローラー35との間を通過する際の加熱による定着処理により用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部11へ排紙される。また、定着部10と排紙部11との間の適所に、複数の搬送ローラー36が配設されている。
排紙部11は、機器筺体7の頂部が凹没されることによって形成される。凹没した凹部の底部に、排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ37が設けられる。以上、図2を参照して、本実施形態の一態様の画像形成装置6について説明した。
以下、図3を参照して、本実施形態の別の態様の画像形成装置6について説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置6の別の態様の構成を示す概略図である。図3に示す画像形成装置6は、直接転写方式を採用する。図3に示す画像形成装置6において、転写部は、転写ローラー41に相当する。被転写体は、記録媒体(例えば、用紙P)に相当する。なお、図3において、図2に対応する要素には同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
図3に示すように、転写ベルト40は、無端状でベルト状の回転体である。転写ベルト40は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の転写ローラー41に架け渡されている。各感光体1の周面が転写ベルト40の表面(接触面)に当接するように、転写ベルト40は配置される。転写ベルト40は、各感光体1に対向して配置される各転写ローラー41によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、転写ベルト40は、複数のローラー30、31、32、及び41によって無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターのような駆動源によって回転駆動し、転写ベルト40を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び転写ローラー41は、回転自在に設けられる。駆動ローラー30による転写ベルト40の無端回転に伴って、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の転写ローラー41は従動回転する。これらのローラー31、32、41は、従動回転するとともに、転写ベルト40を支持する。レジストローラー対17から供給された用紙Pは、吸着ローラー42によって転写ベルト40上に吸着される。転写ベルト40上に吸着された用紙Pは、転写ベルト40の回転に伴い、各感光体1と対応する転写ローラー41との間を通過する。
転写ローラー41は、感光体1から用紙Pへトナー像を転写する。トナー像を転写するときに、感光体1は用紙Pと接触している。具体的には、各転写ローラー41は、転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性のバイアス)を、転写ベルト40上に吸着された用紙Pに印加する。これにより、感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と対応する転写ローラー41との間で、用紙Pに転写される。転写ベルト40は、駆動ローラー30の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する。これに伴い、転写ベルト40上に吸着された用紙Pは、各感光体1と対応する転写ローラー41との間を順次通過する。通過する際に、各感光体1上に形成された対応する色のトナー像が、重ね塗り状態で順次用紙Pに転写される。この後、各感光体1は更に回転し、次のプロセスに移行する。以上、図3を参照して、本実施形態の別の態様に係る直接転写方式を採用する画像形成装置について説明した。
図2及び図3を参照して説明したように、第二実施形態に係る画像形成装置6は、第一実施形態に係る感光体1を備えている。感光体1は帯電時の表面電位を安定的に維持することができる。そのため、このような感光体1を備えることで、第二実施形態に係る画像形成装置6は、画像不良の発生を抑制することができる。
[第三実施形態:プロセスカートリッジ]
第三実施形態は、プロセスカートリッジに関する。本実施形態に係るプロセスカートリッジは、像担持体としての第一実施形態に係る感光体1を備える。第一実施形態に係る感光体1は、帯電時の表面電位を安定的に維持することができる。従って、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、画像形成装置6に備えられた場合に、画像不良の発生を抑制できると考えられる。
プロセスカートリッジは、例えば、ユニット化された第一実施形態に係る感光体1を備える。プロセスカートリッジは、第二実施形態に係る画像形成装置6に対して着脱自在に設計されてもよい。プロセスカートリッジには、例えば、感光体1以外に、第二実施形態で述べた、帯電部27、露光部28、現像部29、転写部、クリーニング装置、及び除電器からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。
以上、第三実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明した。第三実施形態に係るプロセスカートリッジは、画像不良の発生を抑制することができる。更に、このようなプロセスカートリッジは取り扱いが容易であるため、感光体1の感度特性等が劣化した場合に、感光体1を含めて、容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、電荷発生剤(CG−1a)及び(CG−2a)を準備した。電荷発生剤(CG−1a)は、実施形態で述べた化学式(CG−1)で表される無金属フタロシアニンであった。また、電荷発生剤(CG−1a)の結晶構造はX型であった。
電荷発生剤(CG−2a)は、実施形態で述べた化学式(CG−2)で表されるチタニルフタロシアニンであった。また、電荷発生剤(CG−2a)の結晶構造はY型であった。更に、電荷発生剤CG−2aは、DSCスペクトルにおいて熱特性(C)を有していた。詳しくは、電荷発生剤(CG−2a)は、DSCスペクトルにおける熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有せず、270℃以上400℃以下の範囲に1つのピークを有していた。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化学式(HT−1)、(HT−6)、(HT−10)、(HT−11)、(HT−12)、(HT−15)、(HT−17)で表されるトリフェニルアミン誘導体を準備した。また、化学式(HT−21)〜(HT−23)で表される化合物も準備した。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化学式(ET−1)〜(ET−4)で表される化合物を準備した。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、バインダー樹脂(Resine−1a)、(Resine−2a)、(Resine−3a)、(Resine−4a)、(Resine−5a)、(Resine−6a)及び(Resine−7a)を準備した。
バインダー樹脂(Resine−1a)、(Resine−2a)、(Resine−3a)、(Resine−4a)、(Resine−5a)、及び(Resine−6a)は、各々、実施形態で述べた化学式(Resine−1)、(Resine−2)、(Resine−3)、(Resine−4)、(Resine−5)、及び(Resine−6)で表される樹脂であった。また、バインダー樹脂(Resine−1a)、(Resine−2a)、(Resine−3a)、(Resine−4a)、(Resine−5a)、及び(Resine−6a)の粘度平均分子量は、各々、50,000であった。
バインダー樹脂(Resine−7a)は、化学式(Resine−7)で表される樹脂であった。また、バインダー樹脂(Resine−7a)の粘度平均分子量は、50,000であった。化学式(Resine−7)中、繰り返し単位の添え字は、繰り返し単位のモル比率を示す。
<2.感光体の製造>
準備した感光体の感光層を形成するための材料を用いて、感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−19)を製造した。
(感光体(A−1)の製造)
容器内に、電荷発生剤(CG−1a)5質量部と、正孔輸送剤としてのトリフェニルアミン誘導体(HT−1)50質量部と、電子輸送剤としての化学式(ET−1)で表される化合物35質量部と、バインダー樹脂(Resine−1a)100質量部と、溶剤としてのテトラヒドロフラン750質量部とを投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して分散し、感光層用塗布液を調製した。
ディップコート法を用いて、導電性基体上に感光層用塗布液を塗布し、導電性基体上に塗布膜を形成した。続いて、100℃で40分間乾燥させ、塗布膜中からテトラヒドロフランを除去した。これにより、導電性基体上に膜厚35μmの感光層を備える感光体(A−1)を得た。
(感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−19)の製造)
以下の点を変更した以外は、感光体(A−1)の製造と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−19)を製造した。感光体(A−1)の製造に用いた電荷発生剤(CG−1a)、正孔輸送剤としてのトリフェニルアミン誘導体(HT−1)、電子輸送剤としての化学式(ET−1)で表される化合物、及びバインダー樹脂(Resine−1a)に代えて、各々、表1及び表2に示す種類の電荷発生剤(CGM)、正孔輸送剤(HTM)、電子輸送剤(ETM)、及びバインダー樹脂を用いた。
<3.帯電時の表面電位の安定性の評価>
感光体(A−1)〜(A−25)及び(B−1)〜(B−19)の各々に対し、帯電時の表面電位の安定性の評価を行った。
感光体を画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)に装着した。この画像形成装置は、直流電圧を印加する接触方式の帯電ローラーを帯電部として備えていた。帯電部として、帯電性スリーブを感光体に接触させて感光体表面を帯電する帯電ローラーを用いた。帯電性スリーブは、エピクロルヒドリン樹脂に導電性カーボンを分散させた帯電性ゴムで形成されていた。帯電部の帯電電圧を、+1.4kVに設定した。
帯電部を用いて感光体に、30分間帯電電圧を印加し続けた。感光体への30分間の帯電電圧の印加中に、感光体の表面電位を連続して測定した。感光体への30分間の帯電電圧の印加を開始した直後の感光体の表面電位は、+570±30Vであった。感光体への30分間の帯電電圧の印加において測定された感光体の表面電位の最大値をV0(単位:+V)とし、最小値をV1(単位:+V)とした。なお、測定環境は、温度23℃かつ湿度50%RHであった。
測定した感光体の表面電位の最大値(V0)と最小値(V1)とから表面電位の差(ΔV0)を数式「ΔV0=V1−V0」に従い算出した。感光体の表面電位の差(ΔV0)を表1及び表2に示す。なお、感光体の表面電位の差(ΔV0)の絶対値が小さいほど、帯電時に感光体の表面電位が安定性していたことを示す。
<4.画像評価>
感光体を画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)に装着した。この画像形成装置は、直流電圧を印加する接触方式の帯電ローラーを帯電部として備えていた。帯電部として、帯電性スリーブを感光体に接触させて感光体表面を帯電する帯電ローラーを用いた。帯電性スリーブは、エピクロルヒドリン樹脂に導電性カーボンを分散させた帯電性ゴムで形成されていた。帯電部が感光体に印加する帯電電圧を調整することにより、感光体の表面電位を570±10Vとした。
画像形成装置を用いて、5万枚の用紙に、画像Aを連続して印刷した。画像Aは、印字率5%の文字画像であった。5万枚の用紙への画像Aの印刷は、常温常湿環境(温度23℃かつ湿度50%RH)下で行った。続いて、画像形成装置を用いて、常温常湿環境(温度23℃かつ湿度50%RH)下で、画像Bを1枚の用紙に印刷した。画像Bは、ハーフトーン部と白紙部とを含んでいた。画像Bが形成された用紙を、常温常湿環境下の評価用サンプルとした。続いて、画像形成装置を用いて、低温低湿環境(温度10℃かつ湿度20%RH)下で、画像Bを1枚の用紙に印刷した。画像Bが形成された用紙を、低温低湿環境下の評価用サンプルとした。なお、用紙として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4(A4サイズ)」を使用した。
得られた常温常湿環境下及び低温低湿環境下の評価用サンプルを、各々目視で観察した。これにより、ドラム傷に起因する画像不良の有無と、トナーフィルミングに起因する画像不良の有無とを確認した。なお、帯電時の感光体の表面電位が安定し難いほど、感光体の表面にドラム傷及びトナーフィルミングが生じ易くなる。感光体の表面にドラム傷が生じると、評価用サンプルの白紙部とハーフトーン部とに黒筋が現れ易くなる。感光体の表面にトナーフィルミングが生じると、評価用サンプルのハーフトーン部に黒筋が現れ易くなる。
次に、画像形成装置から感光体を取り出した。取り出された感光体の表面を、実体顕微鏡を用いて倍率50倍で観察した。これにより、感光体表面におけるドラム傷の発生の有無、及びトナーフィルミングの発生の有無を観察した。
常温常湿環境下及び低温低湿環境下の評価用サンプルの観察結果と、感光体の表面の観察結果とから、下記の評価基準に基づいて画像評価を行った。画像評価の結果を表1及び表2に示す。
(画像評価の評価基準)
◎(特に良好):感光体表面にドラム傷及びトナーフィルミングが発生していなかった。更に、ドラム傷及びトナーフィルミングに起因する画像不良も観察されなかった。
○(良好):感光体表面にドラム傷又はトナーフィルミングが観察された。しかし、ドラム傷及びトナーフィルミングに起因する画像不良は観察されなかった。
△(不良):感光体表面にドラム傷又はトナーフィルミングが観察された。ドラム傷又はトナーフィルミングに起因する画像不良が低温低湿環境下で観察された。ドラム傷又はトナーフィルミングに起因する画像不良が常温常湿環境下では観察されなかった。
×(特に不良):感光体表面にドラム傷又はトナーフィルミングが観察された。ドラム傷又はトナーフィルミングに起因する画像不良が低温低湿環境下でも常温常湿環境下でも観察された。
表1及び表2中、CGM、HTM、及びETMは、各々、電荷発生剤、正孔輸送剤、及び電子輸送剤を示す。
表1及び表2に示すように、感光体(A−1)〜(A−25)では、帯電時の感光体の表面電位の差(ΔV0)の絶対値が小さかった。このことから、帯電時の感光体の表面電位が安定的に維持されていたことが示された。また、感光体(A−1)〜(A−25)を備える画像形成装置により形成された画像は、画像評価の結果が優れていた。このことから、感光体(A−1)〜(A−25)を備える画像形成装置では、ドラム傷及びトナーフィルミングに起因する画像不良の発生が抑制されていたことが示された。
感光体(B−1)〜(B−3)及び(B−13)には、トリフェニルアミン誘導体(I)と、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂とが含有されていなかった。感光体(B−4)〜(B−6)及び(B−14)〜(B−16)には、フルオロ基を有するポリカーボネート樹脂が含有されていなかった。感光体(B−7)〜(B−12)及び(B−17)〜(B−19)には、トリフェニルアミン誘導体(I)が含有されていなかった。そのため、感光体(B−1)〜(B−19)では、帯電時の感光体の表面電位の差(ΔV0)の絶対値が大きかった。このことから、感光体(B−1)〜(B−19)では、帯電時の感光体の表面電位が安定的に維持され難いことが示された。また、感光体(B−1)〜(B−19)を備える画像形成装置により形成された画像では、画像評価の結果が劣っていた。このことから、感光体(B−1)〜(B−19)を備える画像形成装置では、ドラム傷及びトナーフィルミングに起因する画像不良が発生したことが示された。
以上から、本発明に係る感光体では帯電時の感光体の表面電位が安定的に維持されており、このような感光体を備える画像形成装置は、画像不良の発生を抑制することが示された。