以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基及び炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)は、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)又はヨウ素原子(ヨード基)である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基又はn−ヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基又はn−オクチル基が挙げられる。
炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、例えば、1個以上3個以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基の例としては、ビニル基(エテニル基)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、又はヘキサジエニル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基と、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基における炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基又は4−フェニルブチル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデシル基が挙げられる。
炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基又はシクロオクチル基が挙げられる。
<1.感光体>
本実施形態は正帯電積層型電子写真感光体(以下、感光体と記載する)に関する。以下、図1(a)〜図1(c)を参照して、感光体30の構造について説明する。図1(a)〜図1(c)は、それぞれ、本実施形態に係る感光体30の一例を示す断面図である。
図1(a)に示すように、感光体30は、例えば、導電性基体31と電荷輸送層32と電荷発生層33とを備える。導電性基体31の上に電荷輸送層32が備えられる。電荷輸送層32の上に電荷発生層33が備えられる。感光体30は、感光層として電荷輸送層32と電荷発生層33とを備える積層型感光体である。感光体30は正帯電することができる。詳しくは、感光体30が画像形成装置100(図4参照)に備えられた場合に、帯電部42(図4参照)によって感光体30を正極性に帯電することができる。
正帯電積層型である感光体30は、負帯電積層型電子写真感光体と比較して、次の利点を有する。なお、負帯電積層型電子写真感光体では、導電性基体の上に電荷発生層が備えられ、電荷発生層の上に電荷輸送層が備えられる。負帯電積層型電子写真感光体は、画像形成装置に備えられた場合に、負極性に帯電される。
正帯電積層型である感光体30の第一の利点は、解像度が向上することである。負帯電積層型電子写真感光体では、露光時に、導電性基体の上の電荷発生層において電荷(正孔と電子)が発生する。発生した正孔は、電荷発生層及び電荷発生層上の電荷輸送層を移動し、電荷輸送層の表面に到達する。そして、電荷輸送層の表面に到達した正孔が、電荷輸送層の表面の負電荷を打ち消す。負帯電積層型電子写真感光体では、正孔の移動距離が長いため、正孔が移動している間に、露光された箇所から若干離れたところに正孔が到達することがある。そのため、負帯電積層型電子写真感光体では、解像度が低下することがある。しかし、正帯電積層型である感光体30では、露光時に、感光体30の表面30a(図5参照)に近い電荷発生層33において電荷(正孔と電子)が発生する。発生した電子は、電荷発生層33を移動し、電荷発生層33の表面に到達する。そして、電荷発生層33の表面に到達した電子が、電荷発生層33の表面の正電荷を打ち消す。感光体30では電子の移動距離が短いため、露光された箇所と同じ箇所に電子が到達できる傾向がある。そのため、正帯電積層型である感光体30では、解像度が向上する。
正帯電積層型である感光体30の第二の利点は、オゾンが発生し難いことである。負帯電積層型電子写真感光体は、負極性に帯電されるため、画像形成においてオゾンが発生することがある。しかし、感光体30は正極性に帯電されるため、オゾンの発生を抑制することができる。
図1(b)に示すように、感光体30は、導電性基体31と電荷輸送層32と電荷発生層33と中間層34(下引き層)とを備えてもよい。中間層34は、導電性基体31と電荷輸送層32との間に設けられる。図1(a)に示すように、電荷輸送層32は導電性基体31の上に直接設けられてもよいし、図1(b)に示すように、電荷輸送層32は導電性基体31の上に中間層34を介して間接的に設けられてもよい。
図1(c)に示すように、感光体30は、導電性基体31と電荷輸送層32と電荷発生層33と保護層35とを備えてもよい。保護層35は、電荷発生層33の上に設けられる。しかし、露光時の感光体30の光感度を向上させるためには、感光体30は保護層35を備えないことが好ましい。感光体30が保護層35を備えない場合、電荷発生層33が感光体30の最表面層として備えられる。
電荷発生層33及び電荷輸送層32の厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層33の厚さは、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましく、8μm以上15μm以下であることが更に好ましい。電荷輸送層32の厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層33は、電荷発生剤と電子輸送剤と第一正孔輸送剤と第一バインダー樹脂とを含有する。第一正孔輸送剤は、電荷発生層33に含有される正孔輸送剤である。第一バインダー樹脂は、電荷発生層33に含有されるバインダー樹脂である。電荷発生層33は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。
電荷輸送層32は、第二正孔輸送剤と第二バインダー樹脂とを含有する。第二正孔輸送剤は、電荷輸送層32に含有される正孔輸送剤である。第二バインダー樹脂は、電荷輸送層32に含有されるバインダー樹脂である。電荷輸送層32は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。
感光体30は、感光層(特に、電荷発生層33)の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させることができる。その理由は以下のように推測される。
理解を容易にするために、まず転写メモリーについて説明する。感光体30を備える画像形成装置100を用いて記録媒体P(図4参照)に画像を形成する場合、感光体30が1周回転する間に、帯電工程、露光工程、現像工程及び転写工程が行われる。帯電工程では、感光体30の表面30a(図5参照)が一定の正極性の電位まで帯電される。続いて、露光工程及び現像工程を経て、転写工程では、帯電とは逆極性の転写バイアス(負極性の転写バイアス)が、被転写体(例えば中間転写ベルト56、図4参照)を介して感光体30に印加される。印加された逆極性の転写バイアスの影響により、感光体30の表面30aの非露光領域(非画像領域)の電位が低下し、電位が低下した状態が保持されることがある。この電位低下の影響を受け、非露光領域は、次の周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され難くなる。一方、感光体30の表面30aの露光領域(画像領域)にはトナーが付着しているため、露光領域に転写バイアスが直接印加され難い。そのため、転写バイアスが印加されても、露光領域の電位は低下し難い。その結果、露光領域と非露光領域との間で、次の周の感光体30の表面30aの帯電電位に差が生じることがある。このように、転写バイアスの影響によって、感光体30の表面30aにおいて、前の周の非露光領域に対応する領域の帯電電位が、前の周の露光領域に対応する領域よりも低下する現象を、転写メモリーという。転写メモリーは、高速で画像を形成する場合に発生し易い。高速で画像を形成する場合には、強い転写バイアスを感光体30へ印加する転写条件に設定されることが多いからである。感光体30に転写メモリーが発生すると、形成画像にネガゴーストが発生し易くなる。ネガゴーストは、形成画像において、感光体30の前の周の非露光領域に対応する領域が黒ずむ画像不良である。
ここで、本実施形態の感光体30では、電荷発生層33に含有される2種以上の電子輸送剤の合計質量が、電荷発生層33に含有される正孔輸送剤(即ち、第一正孔輸送剤)の質量よりも多い。通常、電荷発生層に含有される電子輸送剤の質量は、電荷発生層に含有される正孔輸送剤の質量よりも少ない。その理由は次のとおりである。画像形成において感光体30を露光すると、電荷発生層33中の電荷発生剤から電子及び正孔が発生する。発生した電子は、電子輸送剤によって電荷発生層33の表面へ輸送される。発生した正孔は、正孔輸送剤によって電荷輸送層32へ輸送され、更に導電性基体31へ輸送される。露光した光の透過率は、電荷発生層33の表面付近では高く、電荷発生層33の深部(電荷輸送層32側)では低くなる。そのため、露光した光の透過率が高い電荷発生層33の表面付近に存在する電荷発生剤から、多くの電子及び正孔が発生する傾向がある。電荷発生層33の表面付近に存在する電荷発生剤から電子及び正孔が発生した場合、電荷輸送層32までの正孔の移動距離は、電荷発生層33の表面までの電子の移動距離よりも長い。そのため、正孔輸送剤を、電子輸送剤よりも多く含有させることが一般的である。しかし、本発明者らは鋭意検討し、電荷発生層33に含有される2種以上の電子輸送剤の合計質量を電荷発生層33に含有される第一正孔輸送剤の質量よりも多くすることで、転写メモリーの発生を抑制できることを見出した。
また、電子輸送剤は、電荷発生層33を形成するための溶剤に溶解し難い化学構造を有する。しかし、電荷発生層33に電子輸送剤として、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される化合物のうちの2種以上を含有させることで、電荷発生層33を形成するための溶剤に対する電子輸送剤の溶解性を向上させることができる。これにより、電荷発生層33を形成するための溶剤に多くの電子輸送剤を溶解させることができる。その結果、電荷発生層33において、2種以上の電子輸送剤の合計質量を第一正孔輸送剤の質量よりも多くすることができる。これにより、電荷発生層33の結晶化を抑制しつつ、転写メモリーの発生を抑制することができる。
更に、電荷発生層33に電子輸送剤として、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される化合物のうちの2種以上を含有させることで、電荷発生層33に含有されるバインダー樹脂(即ち、第一バインダー樹脂)と電子輸送剤との相溶性が向上する。これにより、電荷発生層33の結晶化を抑制しつつ、第一バインダー樹脂の質量に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量の比率を0.45以上にすることができる。その結果、電荷発生層33の結晶化を抑制しつつ、転写メモリーの発生を抑制することができる。
以上、図1(a)〜図1(c)を参照して、感光体30の構造、及び効果を奏すると考えられる理由について説明した。次に、感光体の要素について説明する。
<1−1.導電性基体>
導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で構成される被覆層を備える導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、電荷輸送層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<1−2.電荷発生層>
電荷発生層は、電荷発生剤と電子輸送剤と第一正孔輸送剤と第一バインダー樹脂とを含有する。
電荷発生層において、2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM)は、第一正孔輸送剤の質量(MHTM)よりも多い。つまり、電荷発生層において、第一正孔輸送剤の質量(MHTM)に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM)の比率(METM/MHTM)は、1.00より大きい。2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM)が第一正孔輸送剤の質量(MHTM)よりも多いことで、既に述べたように、転写メモリーの発生を抑制することができる。電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を更に抑制するためには、比率(METM/MHTM)が1.00より大きく1.60以下であることが好ましく、1.00より大きく1.50以下であることがより好ましく、1.05以上1.50以下であることが更に好ましく、1.05以上1.45以下であることが一層好ましく、1.05以上1.40以下であることが特に好ましい。比率(METM/MHTM)が1.40以下であると、電荷発生層の結晶化を更に抑制することができる。
第一バインダー樹脂の質量(MRESIN)に対する2種以上(好ましくは2種又は3種)の電子輸送剤の合計質量(METM)の比率(METM/MRESIN)は、0.45以上であることが好ましい。転写メモリーの発生を更に抑制するためには、比率(METM/MRESIN)は、0.60以上であることがより好ましい。転写メモリーの発生及び電荷発生層の結晶化を一層抑制するためには、比率(METM/MRESIN)は、0.60以上0.80以下であることが更に好ましく、0.70以上0.80以下であることが特に好ましい。
電荷発生層の質量(ML)に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM)の比率(METM/ML)は、0.20以上であることが好ましく、0.20以上0.50以下であることがより好ましく、0.25以上0.30以下であることが更に好ましい。電荷発生層の質量(ML)は、電荷発生層に含まれる全ての材料の質量の和である。電荷発生層が電荷発生剤と2種以上の電子輸送剤と第一正孔輸送剤と第一バインダー樹脂とを含む場合には、電荷発生層の質量(ML)は、電荷発生剤の質量、2種以上の電子輸送剤の合計質量、第一正孔輸送剤の質量及び第一バインダー樹脂の質量の和である。
電荷発生層の質量(ML)に対する第一バインダー樹脂の質量(MRESIN)の比率(MRESIN/ML)は、0.55以下であることが好ましく、0.50未満であることがより好ましく、0.40以上0.50未満であることが更に好ましい。比率(MRESIN/ML)が0.55以下であると、転写メモリーの発生を抑制することができる。比率(MRESIN/ML)が0.50未満であると、転写メモリーの発生を更に抑制することができる。比率(MRESIN/ML)が0.40以上であると、感光体の耐摩耗性を向上できる傾向がある。
電荷発生層の質量(ML)に対する第一正孔輸送剤の質量(MHTM)の比率(MHTM/ML)は、0.10以上0.50以下であることが好ましく、0.20以上0.30以下であることがより好ましく、0.22以上0.25以下であることが更に好ましい。
電荷発生層の質量(ML)に対する電荷発生剤の質量(MCGM)の比率(MCGM/ML)は、0.005以上0.10以下であることが好ましく、0.01以上0.02以下であることがより好ましい。
(電子輸送剤)
電荷発生層は、電子輸送剤として、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される化合物のうちの2種以上を含む。以下、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される化合物の各々を、化合物(1)、(2)、(3)及び(4)と記載することがある。2種以上の電子輸送剤の各々の間の還元電位差は、小さいことが好ましい。
一般式(1)、(2)及び(3)中、R1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基又は置換基を有してもよい炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基を表す。
一般式(4)中、R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基;及び
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基からなる群より選択される基を表す。このような群から選択される基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表されるハロゲン原子(ハロゲン基)は、塩素原子(クロロ基)であることが好ましい。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基又はn−ペンチル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を更に有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はシアノ基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基としては、炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。置換基としての炭素原子数6以上14以下のアリール基が更に有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するカルボニル基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有するカルボニル基)又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するカルボニル基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有するカルボニル基)、フェノキシカルボニル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はビフェニル基が挙げられる。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はニトロ基が好ましく、メチル基、エチル基又はニトロ基がより好ましい。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R3、R4、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基としては、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキル基が好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
化合物(1)の好適な例は、次のとおりである。一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基を表す。
化合物(1)のより好適な例は、次のとおりである。一般式(1)中のR1及びR2は、各々独立して、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基;炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基を表す。R3及びR4は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。
化合物(1)の更に好適な例は、次のとおりである。一般式(1)中のR1及びR2は、各々独立して、メチル基、イソプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、n−ペンチル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、フェニルメチル基、フェニル基又はメトキシ基を表す。R1及びR2は、同じ基を表す。R3及びR4は、各々独立して、メチル基又は水素原子を表す。
化合物(1)の特に好適な例は、次のとおりである。一般式(1)中のR1及びR2は、各々独立して、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基又はメトキシ基を表す。R1及びR2は、同じ基を表す。R3及びR4は、各々水素原子を表す。
一般式(2)中のR8、R9、R10及びR11は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又は炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基を表すことが好ましい。一般式(2)中のR8、R9、R10及びR11は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましい。R8、R9、R10及びR11が炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す場合、R8、R9、R10及びR11が炭素原子数1以上6以下のアルキル基のうちの同じ基を表してもよく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基のうちの異なる基を表してもよい。一般式(2)中のR8、R9、R10及びR11は、各々独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基又は1,1−ジメチルプロピル基を表すことが更に好ましい。一般式(2)中のR8及びR10は、同じ基を表すことが好ましい。一般式(2)中のR9及びR11は、同じ基を表すことが好ましい。
一般式(3)中のR12及びR13は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基がより好ましい。一般式(3)中のR14は、ハロゲン原子を表すことが好ましい。
化合物(4)は、下記条件(4−A)又は(4−B)を満たすことが好ましく、条件(4−B)を満たすことがより好ましい。
以下、条件(4−A)について説明する。条件(4−A)において、R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基;を表す。
化合物(4)が条件(4−A)を満たす場合、R6及びR7が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R6及びR7が表わす炭素原子数6以上14以下のアリール基は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ(好ましくは1つ又は2つ)有してもよい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。R6及びR7が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基の例は、2−エチル−6−メチルフェニルである。
化合物(4)が条件(4−A)を満たす場合、R6及びR7が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、1,2−ジメチルプロピル基又はエチル基がより好ましい。R6及びR7が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を少なくとも1つ(好ましくは1つ)有してもよい。炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有する炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、エチル基がより好ましい。R6及びR7が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例は、1,2−ジメチルプロピル基又はエトキシエチル基である。
以下、条件(4−B)について説明する。条件(4−B)において、R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;炭素原子数1以上8以下のアルキル基;及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基からなる群より選択される基を表す。このような群から選択される基は1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。R6及びR7のうち少なくとも一方が1つ以上のハロゲン原子を有する。つまり、条件(4−B)を満たす化合物(4)はハロゲン原子を必須で有する。
化合物(4)が条件(4−B)を満たす場合、一般式(4)中、R6及びR7が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基(好ましくは炭素原子数1以上3以下のアルキル基)又はフェニルカルボニル基が挙げられる。このような置換基としては、塩素原子、メチル基、エチル基又はフェニルカルボニル基が好ましい。置換基の数は、1以上3以下の整数であることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基がフェニル基である場合、フェニル基における置換基の位置は、例えば、フェニル基が窒素原子と結合する位置に対して、オルト位(o位)、メタ位(m位)、パラ位(p位)、又はこれらの少なくとも2つが挙げられる。置換基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基の一例は、1つ以上(好ましくは1つ以上3つ以下)のハロゲン原子で置換されてもよく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基である。1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基の好適な例は、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基又は2−エチル−6−メチルフェニル基である。置換基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基の別の例は、1つ以上(好ましくは1つ以上3つ以下)のハロゲン原子で置換されてもよく、フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基である。1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよく、フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基の好適な例は、4−クロロ−2−フェニルカルボニルフェニル基である。
化合物(4)が条件(4−B)を満たす場合、一般式(4)中、R6及びR7が表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基が好ましく、1−フェニルエチル基がより好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、フェニルカルボニル基を有してもよい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。ハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル基が挙げられる。
条件(4−B)を満たす化合物(4)としては、一般式(4)中のR6及びR7が以下のとおりである化合物が好ましい。R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;及び炭素原子数7以上20以下のアラルキル基からなる群より選択される基を表す。選択される基は1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。R6及びR7のうち少なくとも一方が1つ以上のハロゲン原子を有する。つまり、条件(4−B)を満たす化合物(4)の好適な例はハロゲン原子を必須で有する。
なお、条件(4−B)を満たす化合物(4)は、実施例に記載の方法又はその代替法によって製造することができる。
電荷発生層は、電子輸送剤として、化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のうちの2種又は3種を含むことが好ましい。化合物(1)、(2)、(3)及び(4)から2種を選択する場合、同じ一般式(具体的には、一般式(1)〜(4)の何れか)で表される異なる種類の化合物を2種選択してもよい。また、化合物(1)、(2)、(3)及び(4)から2種を選択する場合、異なる一般式で表される化合物を2種選択してもよい。化合物(1)、(2)、(3)及び(4)から3種を選択する場合、同じ一般式(具体的には、一般式(1)〜(4)の何れか)で表される異なる種類の化合物を3種選択してもよい。また、化合物(1)、(2)、(3)及び(4)から3種を選択する場合、異なる一般式で表される化合物を3種選択してもよい。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが好ましい。
化合物(1)及び化合物(2);
化合物(1)及び化合物(3);
2種の化合物(2);
化合物(2)及び化合物(3);
2種の化合物(3);
条件(4−A)を満たす化合物(4)及び化合物(3);
条件(4−B)を満たす化合物(4)及び化合物(3);又は
条件(4−B)を満たす化合物(4)のうちの2種。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生をより好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることがより好ましい。
化合物(1)及び化合物(2);
化合物(1)及び化合物(3);
化合物(2)及び化合物(3);
条件(4−A)を満たす化合物(4)及び化合物(3);
条件(4−B)を満たす化合物(4)及び化合物(3);又は
条件(4−B)を満たす化合物(4)のうちの2種。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を更に好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが更に好ましい。
化合物(1)及び化合物(2);又は
条件(4−B)を満たす化合物(4)のうちの2種。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を特に好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤の少なくとも1種が条件(4−B)を満たす化合物(4)であることが好ましい。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を特に好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが特に好ましい。
条件(4−B)を満たす化合物(4)のうちの2種。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、電荷発生層が3種の電子輸送剤を含む場合には、3種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの3種の化合物であることが好ましい。
化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、電荷発生層が3種の電子輸送剤を含む場合には、3種の電子輸送剤の少なくとも1種が、条件(4−B)を満たす化合物(4)であることが好ましい。
化合物(1)の好適な例は、下記化学式(ET1−1)〜(ET1−12)で表される化合物である。化合物(2)の好適な例は、下記化学式(ET2−1)〜(ET2−10)で表される化合物である。化合物(3)の好適な例は、下記化学式(ET3−1)〜(ET3−3)で表される化合物である。条件(4−A)を満たす化合物(4)の好適な例は、下記化学式(ET4−1)〜(ET4−4)で表される化合物である。条件(4−B)を満たす化合物(4)の好適な例は、下記化学式(ET4−5)〜(ET4−10)で表される化合物である。以下、化学式(ET1−1)〜(ET1−12)、(ET2−1)〜(ET2−10)、(ET3−1)〜(ET3−3)、(ET4−1)〜(ET4−4)及び(ET4−5)〜(ET4−10)で表される化合物の各々を、化合物(ET1−1)〜(ET1−12)、(ET2−1)〜(ET2−10)、(ET3−1)〜(ET3−3)、(ET4−1)〜(ET4−4)及び(ET4−5)〜(ET4−10)と記載することがある。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を抑制するためには、化合物(1)は、化合物(ET1−3)、(ET1−6)又は(ET1−12)であることが好ましい。同じ理由から、化合物(2)は、化合物(ET2−4)、(ET2−6)又は(ET2−7)であることが好ましい。同じ理由から、化合物(3)は、化合物(ET3−1)、(ET3−2)又は(ET3−3)であることが好ましい。同じ理由から、条件(4−A)を満たす化合物(4)は、化合物(ET4−1)、(ET4−2)又は(ET4−4)であることが好ましい。同じ理由から、条件(4−B)を満たす化合物(4)は、化合物(ET4−5)、(ET4−6)又は(ET4−7)であることが好ましい。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが好ましい。
化合物(ET1−3)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−2);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−3);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET2−6);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−4)及び化合物(ET2−6);
化合物(ET2−4)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−7)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET3−1)及び化合物(ET3−3);
化合物(ET4−1)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−2)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−3)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−7)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−6);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−7);又は
化合物(ET4−6)及び化合物(ET4−7)。
転写メモリーの発生をより好適に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることがより好ましい。
化合物(ET1−3)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−2);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−3);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET2−6);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−4)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−7)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−1)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−2)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−3)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−7)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−6);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−7);又は
化合物(ET4−6)及び化合物(ET4−7)。
転写メモリーの発生を更に抑制しつつ、電荷発生層の結晶化を更に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが更に好ましい。
化合物(ET1−3)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−2);
化合物(ET1−3)及び化合物(ET3−3);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−4)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET2−7)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−1)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−2)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−3)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−6)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−7)及び化合物(ET3−1);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−6);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−7);又は
化合物(ET4−6)及び化合物(ET4−7)。
転写メモリーの発生及び電荷発生層の結晶化を一層抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが一層好ましい。
化合物(ET1−3)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−6)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET1−12)及び化合物(ET2−4);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−6);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−7);又は
化合物(ET4−6)及び化合物(ET4−7)。
転写メモリーの発生及び電荷発生層の結晶化を特に抑制するためには、電荷発生層が2種の電子輸送剤を含む場合には、2種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの2種の化合物であることが特に好ましい。
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−6);
化合物(ET4−5)及び化合物(ET4−7);又は
化合物(ET4−6)及び化合物(ET4−7)。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、電荷発生層が3種の電子輸送剤を含む場合には、3種の電子輸送剤が次に示す組み合わせの3種の化合物であることが好ましい。
化合物(ET1−12)、化合物(ET2−4)及び化合物(ET3−1)。
電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、2種又は3種の電子輸送剤の少なくとも1種が化合物(ET4−5)、(ET4−6)又は(ET4−7)であることも好ましい。
電荷発生層は、電子輸送剤として、化合物(1)〜(4)のうちの2種以上に加えて、化合物(1)〜(4)以外の化合物を更に含んでいてもよい。電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を好適に抑制するためには、化合物(1)〜(4)のうちの2種以上の合計質量は、全電子輸送剤の質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
(第一正孔輸送剤)
電荷発生層は、第一正孔輸送剤を含有する。第一正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。第一正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第一正孔輸送剤の好適な例は、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物(以下、化合物(10)、(11)又は(12)と記載することがある)である。電荷発生層の結晶化及び転写メモリーの発生を一層抑制するためには、電荷発生層は、第一正孔輸送剤として、化合物(12)を含むことが好ましい。
一般式(10)中、R20〜R22は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R20〜R22としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、n−ブチル基を表すことがより好ましい。
一般式(10)中、p、q及びrは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。pが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR20は、互いに同一でも異なっていてもよい。qが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR21は、互いに同一でも異なっていてもよい。rが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR22は、互いに同一でも異なっていてもよい。pは1を表すことが好ましい。q及びrは0を表すことが好ましい。
R20〜R22の結合位置は特に限定されない。R20〜R22は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R20は、フェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
一般式(11)中、R23〜R27は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R23〜R25は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが特に好ましい。R26〜R27は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を表すことがより好ましく、メチルフェニル基を表すことが更に好ましく、p−メチルフェニル基を表すことが特に好ましい。
一般式(11)中、s、t及びuは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。sが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR23は、互いに同一でも異なっていてもよい。tが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR24は、互いに同一でも異なっていてもよい。uが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR25は、互いに同一でも異なっていてもよい。s、t及びuは、各々、1を表すことが好ましい。
R23〜R25の結合位置は特に限定されない。R23〜R25は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R23〜R25は、各々、フェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
一般式(12)中、R28〜R33は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表す。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が置換基を有する場合、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が有する置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が有する置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましく、2であることがより好ましい。R28〜R33としては、炭素原子数1以上6以下のアルキルが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
一般式(12)中、g、h、i及びjは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。gが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR28は、互いに同一でも異なっていてもよい。hが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR29は、互いに同一でも異なっていてもよい。iが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR30は、互いに同一でも異なっていてもよい。jが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR31は、互いに同一でも異なっていてもよい。g及びhの一方は2を表し、他方は0又は1を表すことが好ましい。g及びhの一方は2を表し、他方は0を表すことがより好ましい。i及びjの一方は2を表し、他方は0又は1を表すことが好ましい。i及びjの一方は2を表し、他方は0を表すことがより好ましい。
R28〜R31の結合位置は特に限定されない。R28〜R31は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R28〜R31は、各々、フェニル基のオルト位又はパラ位に結合することが好ましい。
一般式(12)中、k及びlは、各々独立して、0以上4以下の整数を表す。kが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR32は、互いに同一でも異なっていてもよい。lが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR33は、互いに同一でも異なっていてもよい。k及びlは、各々、0を表すことが好ましい。
R32及びR33の結合位置は特に限定されない。R32及びR33は、各々、フェニレン基が結合する窒素原子に対して、オルト位及びメタ位の何れに結合(位置)してもよい。
gが2を表しhが0又は1を表す場合、2個のR28は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。gが2を表しhが0又は1を表す場合、R29は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。gが2を表しhが0又は1を表す場合、2個のR28はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R29はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
hが2を表しgが0又は1を表す場合、2個のR29は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。hが2を表しgが0又は1を表す場合、R28は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。hが2を表しgが0又は1を表す場合、2個のR29はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R28はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
iが2を表しjが0又は1を表す場合、2個のR30は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。iが2を表しjが0又は1を表す場合、R31は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。iが2を表しjが0又は1を表す場合、2個のR30はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R31はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
jが2を表しiが0又は1を表す場合、2個のR31は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。iが2を表しjが0又は1を表す場合、R30は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。jが2を表しiが0又は1を表す場合、2個のR31はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R30はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
化合物(10)の好適な例は、下記化学式(HT2)で表される化合物である。化合物(11)の好適な例は、下記化学式(HT3)で表される化合物である。化合物(12)の好適な例は、下記化学式(HT1)で表される化合物である。以下、化学式(HT1)〜(HT3)で表される化合物の各々を、化合物(HT1)〜(HT3)と記載することがある。
(電荷発生剤)
電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CG1)で表されるチタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。また、Y型チタニルフタロシアニンには、電荷発生効率が高く、電荷発生層内に電荷が残留し難いという利点がある。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有しない。
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
図2は、本実施形態に係る感光体において用いられるチタニルフタロシアニンのCuKα特性X線回折スペクトルチャートの一例である。図2において、横軸はブラッグ角2θ(°)を示し、縦軸は強度(cps)を示す。図2のCuKα特性X線回折スペクトルチャートから、測定されたチタニルフタロシアニンの結晶型がY型であることを推定できる。
Y型チタニルフタロシアニンは、示差走査熱量分析(DSC)スペクトルにおける熱特性(詳しくは、次に示す熱特性(a)〜(c))の違いによって3種類に分類される。
(a)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
(b)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有しない。
(c)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
示差走査熱量分析スペクトルの測定方法の一例について説明する。サンプルパンにチタニルフタロシアニン結晶粉末の評価用試料を載せて、示差走査熱量計(例えば、株式会社リガク製「TAS−200型 DSC8230D」)を用いて示差走査熱量分析スペクトルを測定する。測定範囲は、例えば40℃以上400℃以下であり、昇温速度は、例えば20℃/分である。
図3は、本実施形態に係る感光体において用いられるチタニルフタロシアニンの示差走査熱量分析スペクトルチャートの一例である。具体的には、図2のCuKα特性X線回折スペクトルチャートで示されるチタニルフタロシアニンの示差走査熱量分析スペクトルチャートである。図3において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は熱流束(mcal/秒)を示す。図3の示差走査熱量分析スペクトルチャートでは、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークが観察されず、296℃(270℃以上400℃以下の範囲)に1つのピークが観察される。従って、測定されたチタニルフタロシアニン結晶が、主に熱特性(c)を有するY型チタニルフタロシアニンであることを推定できる。
熱特性(b)及び(c)を有するY型チタニルフタロシアニンは、結晶安定性に優れており、有機溶媒中で結晶転移を起こしにくく、電荷発生層中に分散し易い。電荷発生層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させるためには、熱特性(c)を有するY型チタニルフタロシアニンが好ましい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
(第一バインダー樹脂)
電荷発生層は、第一バインダー樹脂を含有する。第一バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン重合体(ポリスチレン)、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物又はウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。これらの第一バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた電荷発生層が得られることから、第一バインダー樹脂としてはポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂又はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂としては、下記化学式(R−1)で表される繰り返し単位を有するビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(R−1)と記載することがある)が好ましい。
第一バインダー樹脂の粘度平均分子量は、25,000以上であることが好ましく、25,000以上52,500以下であることがより好ましい。第一バインダー樹脂の粘度平均分子量が25,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。第一バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、第一バインダー樹脂が電荷発生層用塗布液の溶剤に溶解し易くなり、電荷発生層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、電荷発生層を形成し易くなる。
<1−3.電荷輸送層>
電荷輸送層は、第二正孔輸送剤と第二バインダー樹脂とを含有する。
第二正孔輸送剤の例及び好適な例は、第一正孔輸送剤の例及び好適な例と同じである。第二正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。第二正孔輸送剤は、第一正孔輸送剤と同じであっても異なっていてもよい。第二正孔輸送剤の含有量は、第二バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
第二バインダー樹脂の例は、第一バインダー樹脂の例及び好適な例と同じである。第二バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第二バインダー樹脂は、第一バインダー樹脂と同じであっても異なっていてもよい。電荷輸送層に含有される第二バインダー樹脂は、電荷発生層に含有される第一バインダー樹脂とは異なることが好ましい。感光体の製造では、例えば、導電性基体の上に電荷輸送層が形成され、電荷輸送層の上に電荷発生層が形成される。その際に、電荷輸送層の上に、電荷発生層用塗布液が塗布される。そのため、電荷輸送層は、電荷発生層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。第一バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、第二バインダー樹脂としてはポリスチレンが好ましい。
<1−4.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。
<1−5.感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。まず、電荷輸送層用塗布液及び電荷発生層用塗布液を調製する。電荷輸送層用塗布液を導電性基体に塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層を形成する。続いて、電荷発生層用塗布液を電荷輸送層に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成する。これにより、感光体が製造される。
電荷輸送層用塗布液は、第二正孔輸送剤、第二バインダー樹脂及び必要に応じて添加される成分(例えば、添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤、第一正孔輸送剤、第一バインダー樹脂及び必要に応じて添加される成分(例えば、添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
塗布液(電荷輸送層用塗布液又は電荷発生層用塗布液)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液(電荷輸送層用塗布液又は電荷発生層用塗布液)は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液(電荷輸送層用塗布液又は電荷発生層用塗布液)を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布液(電荷輸送層用塗布液又は電荷発生層用塗布液)を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
<2.画像形成装置>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る感光体30を備える画像形成装置100について説明する。図4は画像形成装置100の構成の一例を示す図であり、この画像形成装置100は本実施形態に係る感光体30を備える。画像形成装置100は、中間転写方式を採用していてもよく、直接転写方式を採用していてもよい。以下、中間転写方式を採用する画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えばタンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、中間転写ベルト56と、二次転写部58と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、感光体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部とを備える。画像形成装置100が中間転写方式を採用する場合、転写部は一次転写部54及び二次転写部58に相当する。画像形成ユニット40の中央位置に、感光体30が設けられる。感光体30は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。感光体30の周囲には、感光体30の回転方向の上流側から、帯電部42、露光部44、現像部46及び一次転写部54が記載された順に設けられる。
なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。画像形成ユニット40にクリーニング部及び除電部が備えられる場合、感光体30の周囲には、感光体30の回転方向の上流側から、帯電部42、露光部44、現像部46、一次転写部54、クリーニング部及び除電部が記載された順に設けられる。
帯電部42は、感光体30の表面30a(具体的には周面、図5参照)を正極性に帯電する。帯電部42は、非接触方式又は接触方式である。非接触方式の帯電部42の例は、コロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器である。接触方式の帯電部42の例は、帯電ローラー又は帯電ブラシである。
露光部44は、帯電された感光体30の表面30aを露光する。これにより、感光体30の表面30aに静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、感光体30の表面30aに形成された静電潜像にトナーを供給する。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。感光体30は、トナー像を担持する像担持体に相当する。現像部46の詳細については、後述する。
転写部は、現像部46によって現像されたトナー像を、感光体30から被転写体へ転写する。画像形成装置100が中間転写方式を採用する場合、転写部は、一次転写部54及び二次転写部58に相当する。画像形成装置100が中間転写方式を採用する場合、被転写体は、中間転写ベルト56及び記録媒体Pに相当する。一次転写部54は、中間転写ベルト56を介して一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性を有するバイアス)を感光体30に印加する。中間転写ベルト56は、無端状のベルトである。中間転写ベルト56は、矢符(反時計回り)方向に回転する。一次転写バイアスが印加されると、感光体30と一次転写部54との間で、感光体30から中間転写ベルト56の表面(感光体30との接触面)へ、感光体30の表面30aに形成されたトナー像が転写(一次転写)される。
次いで、記録媒体Pが二次転写部58と中間転写ベルト56との間に搬送される。搬送された記録媒体Pに、二次転写部58が二次転写バイアス(具体的には、トナー像と逆極性を有するバイアス)を印加する。その結果、中間転写ベルト56の表面に一次転写されたトナー像は、二次転写部58と中間転写ベルト56との間で、中間転写ベルト56の表面から記録媒体Pの表面(中間転写ベルト56との接触面)に転写(二次転写)される。これにより、未定着のトナー像が記録媒体Pに転写される。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、中間転写ベルト56の上に、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。そして、中間転写ベルト56の上に重ねられた複数色のトナー像は、二次転写部58によって、記録媒体Pに一度に二次転写される。なお、画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置100は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
画像形成装置100は、クリーニング部(不図示)を備えてもよい。クリーニング部の例は、クリーニングブレード又はクリーニングローラーである。感光体30の電荷発生層33の摩耗を低減させるためには、クリーニング部がクリーニングローラーであることが好ましい。但し、画像形成装置100は、クリーニング部(不図示)を備えない設計とすることができる。つまり、画像形成装置100は、クリーニング部を備えないクリーナーレス方式を採用することができる。感光体30の電荷発生層33の摩耗を低減させるためには、画像形成装置100がクリーニングブレードを備えないことが好ましい。感光体30の表面30a(周面)は、現像部46によって清掃(クリーニング)されてもよい。感光体30の表面30aを清掃する現像部46については後述する。
画像形成装置100は、除電部を備えない設計とすることができる。つまり、画像形成装置100は、除電部を備えない除電レス方式を採用することができる。画像形成装置100が中間転写方式及び除電レス方式を採用する場合、一次転写部54によって、感光体30の表面30aから中間転写ベルト56の表面(感光体30との接触面)に、トナー像が転写される。そして、感光体30の表面30aにおけるトナー像が転写された領域は、除電されることなく帯電部42によって再び帯電される。除電部を備えない除電レス方式の画像形成装置100では、転写電流の影響が残り易く、転写メモリーが発生し易い。しかし、本実施形態の感光体30によれば、既に述べたように転写メモリーを抑制することができる。そのため、画像形成装置100が本実施形態の感光体30を備えることにより、画像形成装置100が除電部を備えない場合であっても、転写メモリーの発生を抑制することができる。
定着部52は、二次転写部58によって記録媒体Pに二次転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
(現像部)
現像部46は、非磁性一成分現像方式を採用することができる。これにより、感光体30の電荷発生層33の摩耗を低減させることができる。以下、図5を参照して、非磁性一成分現像方式を採用する現像部46について説明する。図5は、図4に示すV領域の拡大図である。
現像部46は、収容フレーム210と、供給ローラー220と、現像ローラー230と、規制ブレード400とを備える。供給ローラー220及び現像ローラー230の軸方向(図5の紙面と直交する方向)の長さは、感光体30の長さとほぼ同じである。
収容フレーム210は、その内部に非磁性一成分現像剤を収容する。非磁性一成分現像剤は、トナーに相当する。トナーは磁性粉を含まない。収容フレーム210は、その内部に、供給ローラー220、現像ローラー230及び規制ブレード400も収容する。収容フレーム210は、感光体30と対向して配置される開口部211を有する。開口部211は、現像ローラー230の一部を、収容フレーム210の外部に露出させる。
供給ローラー220は、収容フレーム210の内部に配置される。供給ローラー220は、現像ローラー230に対向して配置される。供給ローラー220は、供給ローラー軸部材221と、ローラー部222とを備える。供給ローラー軸部材221は、供給ローラー220の回転軸223方向に延びるように配置される。供給ローラー軸部材221は、収容フレーム210の軸支持部(不図示)に回転可能に支持される。供給ローラー220は、矢符方向(反時計回り)に回転可能である。ローラー部222は、供給ローラー軸部材221の外側に取り付けられる円筒状の部材である。
供給ローラー220は、収容フレーム210の内部に収容された非磁性一成分現像剤であるトナーを、供給ローラー220の表面220a(周面)に保持する。詳しくは、ローラー部222は、供給ローラー軸部材221の回転にともなって、供給ローラー軸部材221と一体的に回転する。そして、ローラー部222は、収容フレーム210に収容されたトナーを、ローラー部の外周面に保持する。ローラー部の外周面は、供給ローラー220の表面220aに相当する。供給ローラー220は、その表面220aに保持したトナーを、現像ローラー230に供給する。
現像ローラー230は、感光体30に対向して配置される。現像ローラー230は、収容フレーム210の開口部211を介して、感光体30に対向して配置される。また、現像ローラー230は、供給ローラー220に対向して配置される。供給ローラーは、現像ローラー230を介して、感光体30に対向して配置される。
現像ローラー230は、現像ローラー軸部材231と、ローラー部232とを備える。現像ローラー軸部材231は、現像ローラー230の回転軸233方向に延びるように配置される。現像ローラー軸部材231は、収容フレーム210の軸支持部(不図示)に回転可能に支持される。現像ローラー230は、矢符方向(反時計回り)に回転可能である。現像ローラー軸部材231は、1つ以上の磁石部(不図示)を有する。現像ローラー軸部材231が1つ以上の磁石部を有することで、規制ブレード400と現像ローラー230の表面230aとの間に所定の間隔が設けられる。ローラー部232は、現像ローラー軸部材231の外側に取り付けられる円筒状の部材である。ローラー部232は、現像ローラー軸部材231の回転にともなって、現像ローラー軸部材231と一体的に回転する。
現像ローラー230は、供給ローラー220からトナーの供給を受ける。供給ローラー220から供給されたトナーは、現像ローラー230の表面230a(周面)にトナー層TLとして保持される。トナー層TLは、供給ローラー220から供給されたトナーを含む。現像ローラー230の表面230aは、ローラー部232の表面に相当する。例えば、現像ローラー230の鏡像力によって、トナーが現像ローラー230の表面230aに保持される。
現像ローラー230の表面230aに保持されたトナー層TLの厚さは、規制ブレード400によって規制される。トナー層TLの厚さを規制するとは、トナー層TLの厚さを所定の値に均一に調整することである。
規制ブレード400の形状は、板状である。規制ブレード400は、一端401が収容フレーム210に固定され、他端402が自由端である。他端402(自由端)は、規制ブレード400を構成する板状部材の外縁付近を現像ローラー230側と反対側に折り曲げて形成される。
規制ブレード400は、現像ローラー230の表面230aに保持されるトナー層TLに当接(具体的には、面接触)するように配置される。規制ブレード400と現像ローラー230との間には、規制ニップN1が形成される。
既に述べたように、現像ローラー軸部材231は、1つ以上の磁石部を有する。また、規制ブレード400は、磁性を有する。更に、規制ブレード400は、他端402側が現像ローラー230側に近づくように、撓み変形可能である。これにより、磁石部からの磁力により生じる付勢力によって、規制ブレード400の他端402(自由端)側が現像ローラー230に向かうよう付勢される。そして、現像ローラー230の表面230aに保持されるトナー層TLに、規制ブレード400が所定の圧力で当接する。これにより、現像ローラー230の表面230aに保持されたトナー層TLの厚さを、規制(所定の値に均一に調整する)ことができる。
規制ブレード400は、他端402側が現像ローラー230から離間する側に移動するように、撓み変形可能でもある。これにより、規制ブレード400は、供給ローラー220から現像ローラー230に供給されたトナーを、規制ニップN1にスムーズに誘導することができる。
トナー層TLに含まれるトナーは、規制ブレード400との当接によって摩擦され帯電する。規制ブレード400は、トナー層TLの厚さを規制するとともに、トナー層TLに含まれるトナーを帯電させる。
感光体30は、例えば円筒形状を有する。感光体30の回転軸301を中心に、感光体30は矢符方向(時計回り)に回転可能である。感光体30の回転軸301は、図5の紙面と直交する。
トナー層TLの厚さが規制ブレード400によって規制された後、現像ローラー230は、その表面230aに保持されたトナー層TLに含まれるトナーを、感光体30の表面30a(周面)に形成された静電潜像に供給する。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。現像ローラー230の表面230aから感光体30の表面30aにトナーを効率的に移動させるためには、現像バイアスを印加することが好ましい。以上、一成分現像方式を採用する現像部46について説明した。
次に、感光体30の表面30aを清掃する現像部46について説明する。現像部46が感光体30の表面30aを清掃することで、クリーニング部(特にクリーニングブレード)を備えない場合であっても、感光体30の表面30aを清掃することができる。これにより、感光体30の電荷発生層33の摩耗を低減させつつ、感光体30の表面30aを清掃することができる。
現像部46は、感光体30の表面30aに残留する成分(以下、「残留成分」と記載することがある)を除去することができる。残留成分の一例は、トナー成分であり、より具体的には、トナー又は遊離した外添剤である。残留成分の別の例は、非トナー成分であり、より具体的には記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)である。
現像部46が感光体30の表面30aを効率的に清掃するためには、以下に示す条件(a)及び条件(b)の一方又は両方を満たすことが好ましい。
条件(a):接触現像方式を採用し、感光体30と現像部46との間に周速(回転速度)差が設けられる。
条件(b):感光体30の表面電位と、現像バイアスの電位とが以下の数式(b−1)及び数式(b−2)を満たす。
0(V)<現像バイアスの電位(V)<感光体30の未露光領域の表面電位(V)・・・(b−1)
現像バイアスの電位(V)>感光体30の露光領域の表面電位(V)>0(V)・・・(b−2)
条件(a)に示す接触現像方式を採用し、感光体30と現像部46(具体的には現像ローラー230)との間に周速差が設けられていると、感光体30の表面30aは現像ローラー230と接触し、感光体30の表面30aの付着成分が現像ローラー230との摩擦により除去される。現像ローラー230の周速は、感光体30の周速よりも速いことが好ましい。
条件(b)では、現像方式が反転現像方式である場合を想定している。単層型感光体である感光体30の電気特性を向上させるためには、トナーの帯電極性、感光体30の未露光領域の表面電位、感光体30の露光領域の表面電位及び現像バイアスの電位が何れも正極性であることが好ましい。なお、感光体30の未露光領域の表面電位及び露光領域の表面電位は、一次転写部54がトナー像を感光体30から中間転写ベルト56へ転写した後、帯電部42が次周回の感光体30の表面30aを帯電する前に測定される。
条件(b)の数式(b−1)を満たすと、感光体30に残留したトナー(以下、残留トナーと記載することがある)と感光体30の未露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46(具体的には現像ローラー230)との間に作用する静電的斥力に比べ大きくなる。このため、感光体30の未露光領域の残留トナーは、感光体30の表面30aから現像ローラー230へ移動し、回収される。
条件(b)の数式(b−2)を満たすと、残留トナーと感光体30の露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像ローラー230との間に作用する静電的斥力に比べ小さくなる。このため、感光体30の露光領域の残留トナーは、感光体30の表面30aに保持される。感光体30の露光領域に保持されたトナーは、そのまま画像形成に使用される。
以上、図4及び図5を参照して、本実施形態の感光体30を備える画像形成装置100について説明した。
<3.プロセスカートリッジ>
次に、図4を参照して、本実施形態の感光体30を備えるプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、画像形成用のカートリッジである。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、ユニット化された感光体30を備える。プロセスカートリッジは、感光体30に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部(一次転写部54に相当)からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジには、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、クリーニングブレードを備えないことが好ましい。プロセスカートリッジには、除電レス方式が採用されていてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体30の感度特性等が劣化した場合に、感光体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、図4を参照して、本実施形態の感光体30を備えるプロセスカートリッジについて説明した。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
感光体の電荷発生層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、第一正孔輸送剤、電子輸送剤及び第一バインダー樹脂を準備した。感光体の電荷輸送層を形成するための材料として、以下の第二正孔輸送剤及び第二バインダー樹脂を準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニンを準備した。チタニルフタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CG1)で表される化合物であった。また、このチタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有し、26.2℃にピークを有していなかった。このチタニルフタロシアニンは、DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲に1つのピークを有していた。
(第一正孔輸送剤及び第二正孔輸送剤)
電荷発生層を形成するための第一正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(HT1)を準備した。電荷輸送層を形成するための第二正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(HT1)を準備した。
(第一バインダー樹脂)
電荷発生層を形成するための第一バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリカーボネート樹脂(R−1)を準備した。実施例で使用したポリカーボネート樹脂(R−1)の粘度平均分子量は、30000であった。
(第二バインダー樹脂)
電荷輸送層に含有させる第二バインダー樹脂として、ポリスチレン樹脂(PSジャパン株式会社製「PSJ−ポリスチレン HIPS」)を準備した。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(ET1−3)、(ET1−6)、(ET1−12)、(ET2−4)、(ET2−6)、(ET2−7)、(ET3−1)、(ET3−2)、(ET3−3)、(ET4−1)、(ET4−2)、(ET4−4)、(ET4−5)、(ET4−6)及び(ET4−7)を準備した。電子輸送剤として、これら化合物のうちの2種又は3種を選択して使用した。使用した2種の電子輸送剤の各々を、第一電子輸送剤及び第二電子輸送剤と記載する。また、使用した3種の電子輸送剤の各々を、第一電子輸送剤、第二電子輸送剤及び第三電子輸送剤と記載する。
なお、化合物(ET4−5)、(ET4−6)及び(ET4−7)は、以下の方法で合成した。
(化合物(ET4−5)の製造)
反応式(r−4)で表される反応(以下、反応(r−4)と記載することがある)に従って化合物(ET4−5)を製造した。
反応(r−4)では、化合物(F)(ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物)2.68g(10ミリモル)と、化学式(1G)で表される化合物4.64g(20ミリモル)と、ピコリン50mLとをフラスコに投入し、ピコリン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して4時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、イオン交換水をフラスコに投入し、クロロホルムで抽出した。有機層の溶媒(ピコリン)を除去し、残渣を得た。得られた残渣を展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、化合物(ET4−5)を得た。化合物(ET4−5)の収量は4.16gであり、反応(r−4)における化合物(F)からの化合物(ET4−5)の収率は60モル%であった。
(化合物(ET4−7)の製造)
以下の点を変更した以外は、化合物(ET4−5)の製造と同じの方法で、化合物(ET4−7)を製造した。化合物(ET4−7)の製造では、反応(r−4)で使用した化合物(1G)(4.64g、20ミリモル)を化合物(5G)(3.80g、20ミリモル)に変更した。なお、化合物(5G)は、下記化学式(5G)で表される。その結果、化合物(ET4−5)の代わりに、化合物(ET4−7)を得た。化合物(ET4−7)の収量は3.98gであり、反応(r−4)における化合物(F)からの化合物(ET4−7)の収率は65モル%であった。
(化合物(ET4−6)の製造)
反応式(r’−1)、(r’−2)及び(r’−3)で表される反応(以下、それぞれ反応(r’−1)、反応(r’−2)、及び反応(r’−3)と記載することがある)に従って化合物(ET4−6)を製造した。
反応(r’−1)では、化合物(1A)3.42g(10ミリモル)と、化合物(2E)1.35g(10ミリモル)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/2)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(2C’)で表される中間生成物(以下、化合物(2C’)と記載することがある)を得た。
反応(r’−2)では、化合物(2C’)と、トリフルオロ酢酸15mLとをフラスコに投入し、トリフルオロ酢酸溶液を調製した。化合物(2C’)は、反応(r’−1)で得られた全量を反応(r’−2)で使用した。フラスコ内容物の温度を80℃に昇温し、80℃に維持して24時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、トリフルオロ酢酸を除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/4)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(2D’)で表される中間生成物(以下、化合物(2D’)と記載することがある)を得た。
反応(r’−3)では、化合物(2D’)と、化学式(2B)で表される化合物2.32g(10ミリモル)と、ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチルを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化合物(ET4−6)を得た。化合物(ET4−6)の収量は2.69gであり、反応(r’−1)〜(r’−3)における化合物(1A)からの化合物(ET4−6)の収率は45モル%であった。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、製造した化合物(ET4−5)〜(ET4−7)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうち代表例として、(ET4−5)の化学シフト値を示す。1H−NMRスペクトルの化学シフト値により、(ET4−5)が得られていることを確認した。化合物(ET4−6)及び(ET4−7)も同じように、1H−NMRスペクトルの化学シフト値から、化合物(ET4−6)及び(ET4−7)が得られていることを確認した。
化合物(ET4−5):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.70(d, 4H), 7.62−7.75(m, 8H), 7.36−7.55(m, 8H).
<感光体の製造>
電荷発生層及び電荷輸送層を形成するための材料を用いて、感光体(P−A1)〜(P−A28)及び(P−B1)〜(P−B11)を製造した。
(感光体(P−A1)の製造)
まず、電荷輸送層用塗布液を調製した。詳しくは、容器内に、第二正孔輸送剤としての化合物(HT1)40質量部、第二バインダー樹脂100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン300質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて10時間混合して、溶剤に材料を溶解させた。これにより、電荷輸送層用塗布液を得た。ディップコート法を用いて、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体、直径30mm、全長247mm)に電荷輸送層用塗布液を塗布した。これにより、導電性基体上に塗布膜を形成した。塗布膜が形成された導電性基体を100℃で30分間乾燥させて、塗布膜からテトラヒドロフランを除去した。これにより、導電性基体の上に、電荷輸送層(膜厚20μm)が形成された。
次に、電荷発生層用塗布液を調製した。詳しくは、電荷発生剤3質量部、第一正孔輸送剤としての化合物(HT1)55質量部、第一電子輸送剤としての化合物(ET1−3)30質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3−1)30質量部、第一バインダー樹脂100質量部及び溶剤としてのトルエン800質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、電荷発生層用塗布液を得た。ディップコート法を用いて、導電性基体の上に形成された電荷輸送層に、電荷発生層用塗布液を塗布した。これにより、電荷輸送層の上に塗布膜を形成した。塗布膜が形成された電荷輸送層を備える導電性基体を、100℃で60分間乾燥させた。これにより、塗布膜からトルエンを除去し、電荷輸送層の上に電荷発生層(膜厚10μm)を形成した。その結果、感光体(P−A1)が得られた。
(感光体(A−2)〜(P−A28)及び(P−B1)〜(P−B11)の製造)
下記(1)〜(7)の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同じ方法で、感光体(A−2)〜(P−A28)及び(P−B1)〜(P−B11)の各々を製造した。
(1)第一電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET1−3)から、表1〜表4に示す種類の第一電子輸送剤に変更した。
(2)第一電子輸送剤の添加量(質量METM1)を、感光体(P−A1)の製造における30質量部から、表1〜表4に示す第一電子輸送剤の質量に変更した。
(3)第二電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET3−1)から、表1〜表4に示す種類の第二電子輸送剤に変更した。
(4)第二電子輸送剤の添加量(質量METM2)を、感光体(P−A1)の製造における30質量部から、表1〜表4に示す第二電子輸送剤の質量に変更した。
(5)第一バインダー樹脂の添加量(質量MRESIN)を、感光体(P−A1)の製造における100質量部から、表1〜表4に示す第一バインダー樹脂の質量に変更した。
(6)感光体(P−A15)及び(P−A16)の電荷発生層の製造においては、第一電子輸送剤及び第二電子輸送剤に加えて、表2に示す種類の第三電子輸送剤を表2に示す質量(METM3)で添加した。
(7)感光体(P−B1)〜(P−B7)の電荷発生層の製造においては、第二電子輸送剤を添加しなかった。
<転写メモリー抑制の評価>
製造した感光体(P−A1)〜(P−A28)及び(P−B1)〜(P−B11)の各々に対して、転写メモリーの発生が抑制されているか否かを評価した。転写メモリーの発生が抑制されているか否かの評価は、温度25℃且つ相対湿度45%RHの環境下で行った。
まず、感光体を評価機に搭載した。評価機として、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−1300D」)から除電器及びクリーニングブレードを取り外した改造機を用いた。転写部が印加する転写電流を、−15μAに設定した。感光体の回転速度は150mm/秒であった。評価機の現像部は、供給ローラーと現像ローラーと規制ブレードとを備えていた。また、評価機の現像部には、非磁性一成分現像剤を投入した。
評価機を用いて、5000枚の用紙(富士ゼロックス株式会社製「上質PPC用紙」)に画像I(印字率4%のパターン画像)を連続して印刷した。続いて、画像II及び画像IIIを含む評価用画像を1枚印刷した。画像IIは、黒色(画像濃度100%)の背景に、1個の白色(画像濃度0%)の円型パターンが現された画像であった。画像IIは、感光体の1周目で形成される画像に相当していた。画像IIIは、全面ハーフトーン(画像濃度12.5%)の画像であった。画像IIIは、感光体の2周目で形成される画像に相当していた。
得られた画像IIIを肉眼で観察し、画像IIに由来する画像ゴーストの有無を確認した。また、得られた画像IIIを、ルーペ(TRUSCO社製「TL−SL10K」)を用いて倍率10倍で観察し、画像IIに由来する画像ゴーストの有無を確認した。なお、感光体に転写メモリーが発生すると、形成画像に画像ゴースト(特にネガゴースト)が発生する。画像ゴーストは、感光体の1周目で印刷された画像IIの白色の円型パターンに対応する領域が、感光体の2周目で印刷された全面ハーフトーンの画像IIIにおいて黒く現れる画像不良である。画像ゴーストの確認結果に基づいて、下記の基準に従って、転写メモリーの発生が抑制されているか否かを評価した。評価結果を、表1〜表4に示す。なお、評価がA又はBである感光体を、転写メモリーの発生が抑制されていると評価した。
(転写メモリー抑制の評価基準)
評価A:画像ゴーストが、肉眼観察でもルーペ観察でも全く確認されなかった。
評価B:画像ゴーストが、肉眼観察では確認されないが、ルーペ観察では確認された。
評価C:画像ゴーストが、肉眼観察で観察された。
<感光層の結晶化抑制の評価>
製造した感光体(P−A1)〜(P−A28)及び(P−B1)〜(P−B11)の各々に対して、感光層(特に電荷発生層)の結晶化が抑制されているか否かを評価した。まず、感光体の電荷発生層の全域を肉眼で観察し、電荷発生層における結晶化した部分の有無を確認した。また、感光体の電荷発生層の全域を、ルーペ(TRUSCO社製「TL−SL10K」)を用いて倍率10倍で観察し、電荷発生層における結晶化した部分の有無を確認した。確認結果に基づいて、下記の基準に従って、電荷発生層の結晶化が抑制されているか否かを評価した。評価結果を、表1〜表4に示す。なお、評価がA又はBである感光体を、電荷発生層の結晶化が抑制されていると評価した。
(結晶化抑制の評価基準)
評価A:電荷発生層に結晶化した部分が、肉眼観察でもルーペ観察でも確認されなかった。
評価B:電荷発生層に結晶化した部分が、肉眼観察では確認されないが、ルーペ観察では確認された。
評価C:電荷発生層に結晶化した部分が、肉眼観察で観察された。
表1〜表4中、第一ETM、第二ETM、第三ETM、CGM、第一HTM及び第一樹脂は、各々、第一電子輸送剤、第二電子輸送剤、第三電子輸送剤、電荷発生剤、第一正孔輸送剤及び第一バインダー樹脂を示す。表1〜表4中、METM1、METM2、METM3、MCGM、MHTM、MRESINは、各々、電荷発生層に含有される、第一電子輸送剤の質量、第二電子輸送剤の質量、第三電子輸送剤の質量、電荷発生剤の質量、第一正孔輸送剤の質量、第一バインダー樹脂の質量を示す。
表1〜表4中、「METM/MHTM」は、第一正孔輸送剤の質量(MHTM、単位:質量部)に対する、2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM、単位:質量部)の比率を示す。METM/MHTMは、下記計算式から算出した。比率METM/MHTMが1.00より大きいとき、2種以上の電子輸送剤の合計質量METMが第一正孔輸送剤の質量MHTMよりも多いことを示す。
METM/MHTM=(第一電子輸送剤の質量METM1+第二電子輸送剤の質量METM2+第三電子輸送剤の質量METM3)/第一正孔輸送剤の質量MHTM
表1〜表4中、「METM/MRESIN」は、第一バインダー樹脂の質量(MRESIN、単位:質量部)に対する、2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM、単位:質量部)の比率を示す。METM/MRESINは、下記計算式から算出した。
METM/MRESIN=(第一電子輸送剤の質量METM1+第二電子輸送剤の質量METM2+第三電子輸送剤の質量METM3)/第一バインダー樹脂の質量MRESIN
表1〜表4中、「MRESIN/ML」は、電荷発生層の質量(ML、単位:質量部)に対する、第一バインダー樹脂の質量(MRESIN、単位:質量部)の比率を示す。MRESIN/MLは、下記計算式から算出した。
MRESIN/ML=第一バインダー樹脂の質量MRESIN/電荷発生層の質量ML
表1〜表4中、「METM/ML」は、電荷発生層の質量(ML、単位:質量部)に対する、2種以上の電子輸送剤の合計質量(METM、単位:質量部)の比率を示す。METM/MLは、下記計算式から算出した。
METM/ML=(第一電子輸送剤の質量METM1+第二電子輸送剤の質量METM2+第三電子輸送剤の質量METM3)/電荷発生層の質量ML
感光体(P−A1)〜(P−A28)は、導電性基体と電荷輸送層と電荷発生層とを備えていた。導電性基体の上に電荷輸送層が備えられ、電荷輸送層の上に電荷発生層が備えられていた。電荷発生層は、電荷発生剤と電子輸送剤と第一正孔輸送剤と第一バインダー樹脂とを含有していた。電子輸送剤は、化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のうちの2種以上を含んでいた。第一バインダー樹脂の質量に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量の比率METM/MRESINは、0.45以上であった。2種以上の電子輸送剤の合計質量METMは、第一正孔輸送剤の質量MHTMよりも多かった。つまり、比率METM/MHTMが1.00より大きかった。
そのため、表1〜3から明らかなように、感光体(P−A1)〜(P−A28)では、結晶化抑制の評価がA又はBであり、電荷発生層の結晶化が抑制されていた。また、これらの感光体では、転写メモリー抑制の評価がA又はBであり、転写メモリーの発生が抑制されていた。
感光体(P−A1)〜(P−A16)、(P−A19)〜(P−A20)及び(P−A23)〜(P−A28)の電荷発生層は、第一バインダー樹脂の質量に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量の比率METM/MRESINが0.60以上であった。電荷発生層は、2種又は3種の電子輸送剤を含んでいた。電子輸送剤が2種であるとき、2種の電子輸送剤は、化合物(1)及び(2);化合物(1)及び(3);化合物(2)及び(3);条件(4−A)を満たす化合物(4)及び化合物(3);条件(4−B)を満たす化合物(4)及び化合物(3);又は条件(4−B)を満たす化合物(4)のうちの2種であった。電子輸送剤が3種であるとき、3種の電子輸送剤は、化合物(1)、(2)及び(3)であった。そのため、表1〜3から明らかなように、感光体(P−A1)〜(P−A16)、(P−A19)〜(P−A20)及び(P−A23)〜(P−A28)は、転写メモリー抑制の評価がAであり、転写メモリーの発生が特に抑制されていた。
一方、感光体(P−B1)〜(P−B4)において、電子輸送剤が化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のうちの2種以上を含んでいなかった。そのため、表4から明らかなように、感光体(P−B1)〜(P−B4)では、結晶化抑制の評価がCであり、電荷発生層の結晶化が発生していた。
感光体(P−B5)〜(P−B6)において、電子輸送剤が化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のうちの2種以上を含んでいなかった。また、第一バインダー樹脂の質量に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量の比率METM/MRESINは、0.45未満であった。更に、2種以上の電子輸送剤の合計質量METMは、第一正孔輸送剤の質量MHTMよりも多くなかった。つまり、比率METM/MHTMが1.00以下であった。そのため、表4から明らかなように、感光体(P−B5)〜(P−B6)では、転写メモリー抑制の評価がCであり、転写メモリーが発生していた。
感光体(P−B7)において、電子輸送剤が化合物(1)、(2)、(3)及び(4)のうちの2種以上を含んでいなかった。また、2種以上の電子輸送剤の合計質量METMは、第一正孔輸送剤の質量MHTMよりも多くなかった。つまり、比率METM/MHTMが1.00以下であった。そのため、表4から明らかなように、感光体(P−B7)では、結晶化抑制の評価がCであり、電荷発生層の結晶化が発生していた。
感光体(P−B8)〜(P−B9)において、2種以上の電子輸送剤の合計質量METMは、第一正孔輸送剤の質量MHTMよりも多くなかった。つまり、比率METM/MHTMが1.00以下であった。そのため、表4から明らかなように、感光体(P−B8)〜(P−B9)では、転写メモリー抑制の評価がCであり、転写メモリーが発生していた。
感光体(P−B10)〜(P−B11)において、第一バインダー樹脂の質量に対する2種以上の電子輸送剤の合計質量の比率METM/MRESINは、0.45未満であった。また、2種以上の電子輸送剤の合計質量METMは、第一正孔輸送剤の質量MHTMよりも多くなかった。つまり、比率METM/MHTMが1.00以下であった。そのため、表4から明らかなように、感光体(P−B10)〜(P−B11)では、転写メモリー抑制の評価がCであり、転写メモリーが発生していた。
以上のことから、本発明に係る感光体は、感光層(特に電荷発生層)の結晶化の抑制及び形成画像における画像ゴーストの発生の抑制を両立できることが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、感光層(特に電荷発生層)の結晶化の抑制及び形成画像における画像ゴーストの発生の抑制を両立できることが示された。