JP2017210434A - ナフトキノン誘導体及び電子写真感光体 - Google Patents

ナフトキノン誘導体及び電子写真感光体 Download PDF

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Abstract

【課題】電子写真感光体の感光層に含有された場合に、形成画像における白点の発生を抑制する化合物の提供。
【解決手段】化合物式(1)で表されるナフトンキノン化合物。
Figure 2017210434

(R1及びR2はハロゲン、ハロゲンを有するC1〜8のアルキル基、ハロゲンを有し、C1〜6のアルキル基で置換/非置換のC6〜14のアリール基、ハロゲンを有するC7〜20のアラルキル基又はハロゲン原子を有するC3〜10のシクロアルキル基;m及びnは各々独立に0〜5の整数;m及びnの両方が同時に0はない;Yは−CO−O−CH2−、−CO−又は−CO−O−)
【選択図】図4

Description

本発明は、化合物(特にナフトキノン誘導体)及び電子写真感光体に関する。
電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる。感光体としては、例えば、積層型感光体又は単層型感光体が用いられる。積層型感光体は、感光層として、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを備える。単層型感光体は、感光層として、電荷発生の機能と電荷輸送の機能とを有する単層型感光層を備える。
特許文献1に記載の感光体は、感光層を備える。感光層は、化学式(E−1)で表される化合物を含有する。
Figure 2017210434
特開2008−156302号公報
しかし、特許文献1に記載の化学式(E−1)で表される化合物を含む感光層を備える感光体には、形成画像における白点の発生を抑制することについて、いまだ改善の余地が残されている。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、形成画像における白点の発生を抑制可能な化合物を提供することである。また、本発明の目的は、このような化合物を含有することで、形成画像における白点の発生を抑制可能な電子写真感光体を提供することである。
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
Figure 2017210434
前記一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、ハロゲン原子を少なくとも1個有し炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、又はハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表す。m及びnは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。m及びnの両方が0を表すことはない。Yは、−CO−O−CH2−、−CO−又は−CO−O−を表す。
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と感光層とを備える。前記感光層は、上述した化合物を含有する。
本発明の化合物によれば、形成画像における白点の発生を抑制することができる。また、本発明の電子写真感光体によれば、このような化合物を含有することで、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る一般式(1)で表される化合物を含有する電子写真感光体の一例を示す断面図である。 (a)、(b)及び(c)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る一般式(1)で表される化合物を含有する電子写真感光体の別の例を示す断面図である。 感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る化学式(1−1)で表される化合物の1H−NMRスペクトルである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。更に、反応式(r−a)〜(r−d)及び(r−a1)〜(r−d1)で表される反応の各々を、反応(r−a)〜(r−d)及び(r−a1)〜(r−d1)と記載することがある。一般式(1)、(2)、(A)、(B)、(B’)、(B’’)、(C)、(D)、(F)、(G)で表される化合物の各々を、化合物(1)、(2)、(A)、(B)、(B’)、(B’’)、(C)、(D)、(F)、(G)と記載することがある。化学式(1−1)〜(1−5)、(2−1)、(CGM−1)、(CGM−2)、(A−1)〜(A−3)、(B−1)〜(B−5)、(C−1)〜(C−5)、(D−1)〜(D−5)、(E−1)〜(E−2)、(F−1)及び(G−1)で表される化合物の各々を、(1−1)〜(1−5)、(2−1)、(CGM−1)、(CGM−2)、(A−1)〜(A−3)、(B−1)〜(B−5)、(C−1)〜(C−5)、(D−1)〜(D−5)、(E−1)〜(E−2)、(F−1)及び(G−1)と記載することがある。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基及び炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)は、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)又はヨウ素原子(ヨード基)である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基又はシクロデシル基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基が結合した炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。
<1.化合物(1)>
本実施形態は、化合物(1)に関する。化合物(1)は、下記一般式(1)で表される。化合物(1)は、ナフトキノン誘導体である。化合物(1)は、例えば、感光体が備える感光層に含有される。
Figure 2017210434
一般式(1)中、R1及びR2は、各々独立して、ハロゲン原子、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、ハロゲン原子を少なくとも1個有し炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、又はハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表す。m及びnは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。但し、m及びnの両方が0を表すことはない。よって、化合物(1)は、ハロゲン原子を必須に有する。Yは、−CO−O−CH2−、−CO−又は−CO−O−を表す。
化合物(1)は、感光体の感光層に含有された場合に、形成画像における白点の発生を抑制することができる。その理由は以下のように推測される。
理解を容易にするために、形成画像に白点が発生する一因について説明する。画像形成において記録媒体(例えば、紙)と感光体とが接触するときに、記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が感光体の表面に付着することがある。感光体の表面に記録媒体の微小成分が付着すると、画像形成の露光工程において感光体に露光された光を、その微小成分が遮ることがある。露光された光が微小成分によって遮られた部分は、感光体の表面電位の絶対値が低下し難い。表面電位の絶対値の低下が不十分な部分にはトナーが付着し難いため、形成画像に白点が発生する。
ここで、画像形成において記録媒体(例えば、紙)と感光体とが接触するとき、記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が感光体によって摩擦されて、微小成分が帯電することがある。摩擦により帯電した微小成分は、例えば、感光体の帯電極性と逆極性の帯電量、又は感光体の帯電極性と同極性で且つ所望の値より小さい値の帯電量を有する。しかし、本実施形態の化合物(1)はハロゲン原子を有するため、電気陰性度が高い。電気陰性度が高い化合物(1)を含有する感光体によって記録媒体の微小成分が摩擦されると、微小成分が感光体の帯電極性と同極性に帯電する傾向がある。画像形成の帯電工程で帯電された感光体の表面と、感光体の帯電極性と同極性を帯びる微小成分とは電気的に反発する。微小成分が感光体の帯電極性と同極性で且つ大きな値の帯電量を有するほど、微小成分と感光体の表面との電気的な反発は大きくなる。これにより、感光体の表面に微小成分が付着し難くなる。その結果、形成画像における白点の発生を抑制することができる。
更に、化合物(1)は、Yで表される−CO−O−CH2−、−CO−又は−CO−O−の部位を有する。これらの部位は極性を有するため、極性基を有するバインダー樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)と化合物(1)との相溶性が向上する。相溶性が向上すると、均一な感光層を形成し易くなり、感光体の電気特性が損なわれることを抑制することができる。
1及びR2で表されるハロゲン原子(ハロゲン基)としては、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)が好ましい。
1及びR2で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。R1で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する。R1で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R1で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1個以上17個以下であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。
1及びR2で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R1で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する。R1で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R1で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1個以上10個以下であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子に加えて、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を更に有してもよい。炭素原子数6以上14以下のアリール基が有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましい。
1及びR2で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、フェニル基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。R1で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する。R1で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R1で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子の数は、1個以上22個以下であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。
1及びR2で表される炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する。R1で表される炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基が有するハロゲン原子は、クロロ基又はフルオロ基であることが好ましい。R1で表される炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1個以上19個以下であることが好ましく、1個又は2個であることがより好ましい。
m及びnは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。但し、m及びnの両方が0を表すことはない。形成画像における白点の発生を好適に抑制するためには、mは0を表すことが好ましい。形成画像における白点の発生を好適に抑制するためには、nは、1又は2を表すことが好ましく、2を表すことがより好ましい。R1におけるハロゲン原子の数が多くなるほど、感光体によって記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が摩擦されたときに、微小成分が感光体の帯電極性と同極性で且つ大きな値の帯電量を有する傾向がある。
一般式(1)中、R1の結合位置(置換位置)は特に限定されない。R1はフェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合してもよい。mが2以上5以下の整数を表す場合、複数のR1は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
一般式(1)中、R2の結合位置(置換位置)は特に限定されない。R2はフェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合してもよい。nが2以上5以下の整数を表す場合、複数のR2は互いに同一であってもよく異なっていてもよい。nが1である場合、R2はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。nが2である場合、R2がフェニル基のオルト位及びパラ位に結合すること、又はR2がフェニル基のメタ位及びパラ位に結合することが好ましい。
Yは、−CO−O−CH2−、−CO−又は−CO−O−を表す。−CO−O−CH2−、−CO−及び−CO−O−のカルボニル基が、各々、一般式(1)中のナフトキノン部位と結合する。形成画像における白点の発生を好適に抑制するためには、Yは、−CO−O−CH2−又は−CO−を表すことが好ましい。形成画像における白点の発生を好適に抑制しつつ感光体の電気特性を向上させるためには、Yは、−CO−O−CH2−を表すことがより好ましい。
形成画像における白点の発生を好適に抑制するためには、一般式(1)中のmが0を表し、Yが−CO−O−CH2−又は−CO−を表すことが好ましい。
形成画像における白点の発生を好適に抑制するためには、一般式(1)中のmが0を表し、Yが−CO−O−CH2−又は−CO−を表し、R2がハロゲン原子を表し、nが1又は2を表すことがより好ましい。
化合物(1)の具体例としては、化合物(1−1)〜(1−5)が挙げられる。化合物(1−1)〜(1−5)の各々は、下記化学式(1−1)〜(1−5)で表される。
Figure 2017210434
[化合物(1)の製造方法]
化合物(1)は、例えば、下記の反応(r−a)〜(r−d)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。反応(r−a)〜(r−d)で示す反応式においてR1、R2、m、n及びYは、一般式(1)中のR1、R2、m、n及びYと同義である。反応(r−a)〜(r−d)で示す反応式において、Xはハロゲン原子を表す。
Figure 2017210434
反応(r−a)では、後述する反応(r−b)で使用する化合物(B’)を製造する。化合物(B’)は、一般式(B)中のYが−CO−O−CH2−である化合物である。反応(r−a)では、1モル当量の化合物(F)と、1モル当量の化合物(A)とを反応させて、1モル当量の化合物(B’)を得る。1モルの化合物(F)に対して、1モル以上5モル以下の化合物(A)を添加することが好ましい。反応(r−a)の反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましい。反応(r−a)の反応時間は3時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(r−a)には、脱水縮合剤が使用されてもよい。脱水縮合剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、水溶性カルボジイミド(WSCD)、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリスジメチルアミノホスホニウム塩(BOP)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBOP)、2−クロロ−4,6−ジメトキシトリアジン(CDMT)、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド又は2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物(MNBA)が挙げられる。脱水縮合剤の量は、1モルの化合物(F)に対して、1モル以上3モル以下であることが好ましい。
反応(r−a)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン又は酢酸エチルが挙げられる。
Figure 2017210434
反応(r−b)では、1モル当量の化合物(G)と、1モル当量の化合物(B)とを反応させて、1モル当量の化合物(C)を得る。反応(r−b)で使用される化合物(B)は、下記化合物(B’)、化合物(B’’)又は化合物(B’’’)である。化合物(B’)は、一般式(B)中のYが−CO−O−CH2−である化合物である。化合物(B’’)は、一般式(B)中のYが−CO−である化合物である。化合物(B’’’)は、一般式(B)中のYが−CO−O−である化合物である。化合物(B’)は、反応(r−a)によって合成することができる。化合物(B’’)及び(B’’’)は、公知の方法で合成されてもよく、市販品が使用されてもよい。
Figure 2017210434
反応(r−b)では、1モルの化合物(G)に対して、1モル以上5モル以下の化合物(B)を添加することが好ましい。反応(r−b)の反応温度は70℃以上100℃以下であることが好ましい。反応(r−b)の反応時間は2時間以上6時間以下であることが好ましい。
反応(r−b)には、塩基が使用されてもよい。塩基としては、例えば、ナトリウムアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシド)、金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム又は水素化カリウム)又はn−ブチルリチウムが挙げられる。塩基の量は、1モルの化合物(G)に対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。
反応(r−b)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。
Figure 2017210434
反応(r−c)では、塩基の存在下で、1モル当量の化合物(C)から1モル当量の化合物(D)を得る。反応(r−c)の反応温度は70℃以上100℃以下であることが好ましい。反応(r−c)の反応時間は2時間以上6時間以下であることが好ましい。
反応(r−c)で使用される塩基としては、例えば、ナトリウムアルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシド)、金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム又は水素化カリウム)又はn−ブチルリチウムが挙げられる。塩基の量は、1モルの化合物(G)に対して、1モル以上2モル以下であることが好ましい。
反応(r−b)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。
Figure 2017210434
反応(r−d)では、酸化剤の存在下で、1モル当量の化合物(D)から、1モル当量の化合物(1)を得る。反応(r−d)の反応温度は0℃以上50℃以下であることが好ましい。反応(r−d)の反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(r−d)で使用される酸化剤としては、例えば、クロラニル又は過マンガン酸カリウムが挙げられる。酸化剤の量は、1モルの化合物(D)に対して、1モル以上3モル以下であることが好ましい。
<2.感光体>
次に、本実施形態に係る化合物(1)を含有する感光体について説明する。感光体は、導電性基体と感光層とを備える。感光層が化合物(1)を含有する。感光体は、単層型感光体であってもよく、積層型感光体であってもよい。
<2−1.単層型感光体>
以下、図1を参照して、感光体1が単層型感光体である場合の感光体1の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る化合物(1)を含有する感光体の一例を示す断面図である。
図1(a)に示すように、感光体1としての単層型感光体は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光体1としての単層型感光体には、感光層3として、単層型感光層3cが備えられる。
図1(b)に示すように、感光体1としての単層型感光体は、導電性基体2と、単層型感光層3cと、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と単層型感光層3cとの間に設けられる。図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよいし、図1(b)に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して間接的に備えられてもよい。
図1(c)に示すように、感光体1としての単層型感光体は、導電性基体2と、単層型感光層3cと、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、単層型感光層3c上に設けられる。
単層型感光層3cの厚さは、単層型感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。単層型感光層3cの厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層3としての単層型感光層3cは、電荷発生剤と電子輸送剤としての化合物(1)とを一層に含有する。単層型感光層3cは、正孔輸送剤及びバインダー樹脂のうちの一以上を更に含有してもよい。単層型感光層3cは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。感光体1が単層型感光体である場合、電荷発生剤と、電子輸送剤と、必要に応じて添加される成分(例えば、正孔輸送剤、バインダー樹脂又は添加剤)とは、一層の感光層3(単層型感光層3c)に含有される。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、化合物(1)を含有する単層型感光層3cが、感光体1の最表面層として配置されることが好ましい。以上、図1を参照して、感光体1が単層型感光体である場合の感光体1の構造について説明した。
<2−2.積層型感光体>
以下、図2を参照して、感光体1が積層型感光体である場合の感光体1の構造について説明する。図2は、本実施形態に係る化合物(1)を含有する電子写真感光体の別の例を示す断面図である。
図2(a)に示すように、感光体1としての積層型感光体は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。積層型感光体には、感光層3として、電荷発生層3aと電荷輸送層3bとが備えられる。
図2(b)に示すように、感光体1としての積層型感光体では、導電性基体2上に電荷輸送層3bが設けられ、電荷輸送層3b上に電荷発生層3aが設けられてもよい。ただし、一般に電荷輸送層3bの膜厚は、電荷発生層3aの膜厚に比べ厚いため、電荷輸送層3bは電荷発生層3aに比べ破損し難い。このため、積層型感光体の耐摩耗性を向上させるためには、図2(a)に示すように、導電性基体2上に電荷発生層3aが設けられ、電荷発生層3a上に電荷輸送層3bが設けられることが好ましい。
図2(c)に示すように、感光体1としての積層型感光体は、導電性基体2と感光層3と中間層4(下引き層)とを備えていてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に備えられる。図2(a)及び図2(b)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよいし、図2(c)に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して間接的に備えられてもよい。なお、感光層3上には、保護層5(図1参照)が設けられていてもよい。
電荷発生層3a及び電荷輸送層3bの厚さは、それぞれの層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。電荷発生層3aの厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層3bの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層3のうちの電荷発生層3aは、電荷発生剤を含有する。電荷発生層3aは、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)を含有してもよい。電荷発生層3aは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。
感光層3のうちの電荷輸送層3bは、電子アクセプター化合物としての化合物(1)を含有する。電荷輸送層3bは、正孔輸送剤及びバインダー樹脂を含有してもよい。電荷輸送層3bは、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。
形成画像における白点の発生を抑制するためには、化合物(1)を含有する電荷輸送層3bが、感光体1の最表面層として配置されることが好ましい。以上、図2を参照して、感光体1が積層型感光体である場合の感光体1の構造について説明した。
次に、感光体である積層型感光体及び単層型感光体の要素について説明する。
<2−3.導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<2−4.電荷発生剤>
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、電荷発生剤を含有する。感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、電荷発生剤を含有する。
電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CGM−2)で表されるチタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
Figure 2017210434
Figure 2017210434
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。感光層に正孔輸送剤として化合物(1)が含有される場合に電気特性を特に向上させるためには、電荷発生剤としてはY型チタニルフタロシアニンがより好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、電荷発生層に含有されるベース樹脂100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
感光体が単層型感光体である場合、電荷発生剤の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることが特に好ましい。
<2−5.電子輸送剤及び電子アクセプター化合物>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、電子輸送剤として化合物(1)を含有する。電子輸送剤は、例えば、単層型感光層中で電子を輸送し、単層型感光層にバイポーラー(両極性)の特性を付与する。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、電子アクセプター化合物として化合物(1)を含有する。電子アクセプター化合物は、例えば、正孔輸送剤の正孔輸送能を向上させる。単層型感光層又は電荷輸送層が化合物(1)を含有することにより、既に述べたように形成画像における白点の発生を抑制することができる。
単層型感光層は、化合物(1)に加えて、化合物(1)以外の電子輸送剤(以下、その他の電子輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。電荷輸送層は、化合物(1)に加えて、化合物(1)以外の電子アクセプター化合物(以下、その他の電子アクセプター化合物と記載することがある)を更に含有してもよい。その他の電子輸送剤及びその他の電子アクセプター化合物の例としては、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。電子輸送剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。電子アクセプター化合物も、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光体が単層型感光体である場合、電子輸送剤としての化合物(1)の含有量は、単層型感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。電子輸送剤としての化合物(1)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上40質量部以下であることが特に好ましい。化合物(1)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して20質量部以上であると、感光体の電気特性を向上させ易い。化合物(1)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して40質量部以下であると、感光層を形成するための溶剤に化合物(1)が溶解し易く、均一な感光層を形成し易くなる。
化合物(1)の含有量は、電子輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
感光体が積層型感光体である場合、電子アクセプター化合物としての化合物(1)の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
化合物(1)の含有量は、電子アクセプター化合物の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
<2−6.正孔輸送剤>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、例えば正孔輸送剤を含有する。感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、例えば正孔輸送剤を含有する。
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正孔輸送剤の一例としては、化合物(2)が挙げられる。化合物(2)は、下記一般式(2)で表される。
Figure 2017210434
一般式(2)中、R21〜R26は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。r、s、v及びwは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。t及びuは、各々独立して、0以上4以下の整数を表す。
一般式(2)中、R21〜R26は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。r、s、v及びwは、各々独立して、0又は1を表すことが好ましい。t及びuは、各々独立して、0又は1を表すことが好ましい。
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、化合物(2−1)が挙げられる。化合物(2−1)は下記化学式(2−1)で表される。
Figure 2017210434
感光体が積層型感光体である場合、正孔輸送剤の含有量は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
<2−7.バインダー樹脂>
感光体が積層型感光体である場合、電荷輸送層は、バインダー樹脂を含有する。感光体が単層型感光体である場合、単層型感光層は、バインダー樹脂を含有する。
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)又はウレタン−アクリレート(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた単層型感光層及び電荷輸送層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂又はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、25,000以上であることが好ましく、25,000以上52,500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が25,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、電荷輸送層用塗布液又は単層型感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、電荷輸送層又は単層型感光層を形成し易くなる。
<2−8.ベース樹脂>
感光体が積層型感光体である場合、電荷発生層は、ベース樹脂を含有する。ベース樹脂は、感光体に適用できるベース樹脂である限り、特に制限されない。ベース樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)又はウレタン−アクリレート(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)が挙げられる。ベース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電荷発生層に含有されるベース樹脂は、電荷輸送層に含有されるバインダー樹脂とは異なることが好ましい。積層型感光体の製造では、例えば、導電性基体上に電荷発生層が形成され、電荷発生層上に電荷輸送層が形成される。その際に、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液が塗布される。そのため、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましいからである。
<2−9.帯電量>
感光層と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量(以下、炭酸カルシウムの帯電量と記載することがある)は、7.0μC/g以上であることが好ましく、7.0μC/g以上15.0μC/g以下であることがより好ましく、8.0μC/g以上9.5μC/g以下であることが特に好ましい。炭酸カルシウムは、記録媒体の微小成分の一例である紙粉の主成分である。炭酸カルシウムの帯電量がこのような範囲内であると、形成画像における白点の発生を抑制し易くなる。
以下、図3を参照して、感光層3と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明する。炭酸カルシウムの帯電量は、第一ステップ、第二ステップ、第三ステップ及び第四ステップを行うことにより測定される。第一ステップでは、感光層3を2個準備する。感光層3の一方が第一感光層30である。感光層3の他方が第二感光層32である。第一感光層30及び第二感光層32は、直径3cmの円形状である。第二ステップでは、0.007gの炭酸カルシウムを、第一感光層30の上に載せる。これにより、炭酸カルシウムで構成される炭酸カルシウム層24を形成する。続いて、炭酸カルシウム層24上に第二感光層32を載せる。第三ステップでは、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、第二感光層32を固定したまま、回転速度60rpmで60秒間第一感光層30を回転させる。これにより、第一感光層30と第二感光層32との間で、炭酸カルシウム層24に含まれる炭酸カルシウムを摩擦して炭酸カルシウムを帯電させる。第四ステップでは、帯電させた炭酸カルシウムを、帯電量測定装置を用いて吸引する。吸引された炭酸カルシウムの総電気量Qと質量Mとを帯電量測定装置を用いて測定し、式Q/Mから炭酸カルシウムの帯電量を算出する。なお、炭酸カルシウムの帯電量は、具体的には、実施例に記載の方法で測定される。以上、図3を参照して、感光層3と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明した。
<2−10.添加剤>
感光体の感光層(電荷発生層、電荷輸送層又は単層型感光層)は、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物又は有機燐化合物が挙げられる。
<2−11.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤は、感光層の添加剤と同様である。
<2−12.感光体の製造方法>
感光体が単層型感光体である場合、単層型感光体は、例えば、以下のように製造される。単層型感光体は、単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。単層型感光層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
感光体が積層型感光体である場合、積層型感光体は、例えば、以下のように製造される。まず、電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液を調製する。電荷発生層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、電荷発生層を形成する。続いて、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、乾燥することによって、電荷輸送層を形成する。これにより、積層型感光体が製造される。
電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、ベース樹脂及び各種の添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。電荷輸送層用塗布液は、電子アクセプター化合物及び必要に応じて添加される成分(例えば、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
塗布液(単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液又は電荷輸送層用塗布液)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
塗布液(単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液又は電荷輸送層用塗布液)は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
塗布液(単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液又は電荷輸送層用塗布液)を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布液(単層型感光層用塗布液、電荷発生層用塗布液又は電荷輸送層用塗布液)を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.単層型感光体の材料>
単層型感光体の単層型感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂を準備した。
<1−1.電荷発生剤>
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン及びY型チタニルフタロシアニンを準備した。X型無金属フタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニンであった。また、X型無金属フタロシアニンの結晶構造はX型であった。
Y型チタニルフタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CGM−2)で表されるチタニルフタロシアニンであった。また、Y型チタニルフタロシアニンの結晶構造はY型であった。
<1−2.正孔輸送剤>
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(2−1)を準備した。
<1−3.バインダー樹脂>
バインダー樹脂として、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を準備した。このビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂は、下記化学式で表される繰り返し単位で構成される。このビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、30000であった。
Figure 2017210434
<1−4.電子輸送剤>
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(1−1)〜(1−5)を準備した。化合物(1−1)〜(1−5)を、実施形態で述べた反応(r−a)〜(r−d)を行うことにより製造した。具体的な製造方法は、次の通りであった。
(反応(r−a))
反応(r−a)の化合物(F)として、下記化合物(F−1)を使用した。反応(r−a)の化合物(A)として、下記化合物(A−1)、(A−2)又は(A−3)を使用した。そして、反応(r−a)の反応生成物である化合物(B’)として、下記化合物(B−1)、(B−2)又は(B−3)を得た。
Figure 2017210434
Figure 2017210434
Figure 2017210434
化合物(B−1)の具体的な製造方法は、次の通りであった。反応(r−a)として下記反応(r−a1)を行うことによって、化合物(B−1)を得た。
Figure 2017210434
反応(r−a1)では、化合物(F−1)と化合物(A−1)とを反応させて化合物(B−1)を得た。詳しくは、化合物(F−1)(ブロモ酢酸、1.39g、10mmol)及び化合物(A−1)(1.43g、10mmol)をクロロホルム(50mL)に溶解させ、クロロホルム溶液を得た。クロロホルム溶液に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.12g、20mmol)を加えた。得られた混合物を室温(25℃)で8時間攪拌した。8時間攪拌した後、混合物を濾過して、濾液を得た。濾液を減圧してクロロホルムを留去し、残渣を得た。残渣を、展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、化合物(B−1)が得られた。化合物(B−1)の収量は、2.11gであった。化合物(F−1)からの化合物(B−1)の収率は、80mol%であった。
以下の点を変更した以外は化合物(B−1)の製造と同様の方法で反応(r−a1)を行うことにより、化合物(B−2)を得た。化合物(A)として、化合物(B−1)の製造における化合物(A−1)(1.43g、10mmol)の代わりに、化合物(A−2)(1.77g、10mmol)を使用した。その結果、化合物(B’)として、化合物(B−1)の代わりに、化合物(B−2)が得られた。化合物(B−2)の収量は、2.24gであった。化合物(F−1)からの化合物(B−2)の収率は、75mol%であった。
以下の点を変更した以外は化合物(B−1)の製造と同様の方法で反応(r−a1)を行うことにより、化合物(B−3)を得た。化合物(A)として、化合物(B−1)の製造における化合物(A−1)(1.43g、10mmol)の代わりに、化合物(A−3)(1.26g、10mmol)を使用した。その結果、化合物(B’)として、化合物(B−1)の代わりに、化合物(B−3)が得られた。化合物(B−3)の収量は、1.98gであった。化合物(F−1)からの化合物(B−3)の収率は、80mol%であった。
(反応(r−b))
反応(r−b)の化合物(G)として、下記化合物(G−1)を使用した。反応(r−b)の化合物(B)として、化合物(B−1)〜(B−5)の何れかを使用した。化合物(B−1)〜(B−3)として、上述の反応(r−a)で得られた化合物(B−1)〜(B−3)を使用した。下記化合物(B−4)及び(B−5)として、市販品を使用した。そして、反応(r−b)の反応生成物である化合物(C)として、下記化合物(C−1)〜(C−5)の何れかを得た。
Figure 2017210434
Figure 2017210434
Figure 2017210434
化合物(C−1)の具体的な製造方法は、次の通りであった。反応(r−b)として下記反応(r−b1)を行うことによって、化合物(C−1)を得た。
Figure 2017210434
反応(r−b1)では、化合物(G−1)と化合物(B−1)とを反応させて化合物(C−1)を得た。詳しくは、化合物(G−1)(フェニルインダンジオン、2.22g、10mmol)及び40%水素化ナトリウム(NaH、0.72g、12mmol)を、アルゴンガスで置換した容器に入れた。容器を氷冷した後、容器に蒸留したテトラヒドロフラン(100mL)を加えた。容器に、化合物(B−1)(2.63g、10mmol)の蒸留テトラヒドロフラン(50mL)溶液を更に加えた。容器の内容物を、攪拌しながら90℃で4時間還流した。続いて、容器内に水を加えて、固体を析出させた。析出した固体を濾過して、残渣を得た。残渣をクロロホルムに溶解させてクロロホルム溶液を得た。クロロホルム溶液に水を加えて抽出し、有機層を得た。有機層から溶媒であるクロロホルムを留去し、残渣を得た。残渣を、クロロホルム/メタノール(体積比率1/1)で晶析した。その結果、化合物(C−1)が得られた。化合物(C−1)の収量は3.23gであった。化合物(G−1)からの化合物(C−1)の収率は80mol%であった。
以下の点を変更した以外は化合物(C−1)の製造と同様の方法で反応(r−b1)を行うことにより、化合物(C−2)〜(C−5)の何れかを得た。化合物(B)として、化合物(C−1)の製造における化合物(B−1)の代わりに、表1に示す化合物(B−2)〜(B−5)の何れかを使用した。化合物(B)の添加質量を、化合物(C−1)の製造における2.63gから、表1に示す添加質量に変更した。なお、化合物(B)の添加モル数は、化合物(C−1)の製造における10mmolから変更しなかった。その結果、化合物(C)として、化合物(C−1)の代わりに、化合物(C−2)〜(C−5)の何れかが得られた。得られた化合物(C−2)〜(C−5)の収量を表1に示す。また、化合物(G−1)からの化合物(C−2)〜(C−5)の収率を表1に示す。
Figure 2017210434
(反応(r−c)及び反応(r−d))
反応(r−c)では、反応(r−c)の化合物(C)として、化合物(C−1)〜(C−5)の何れかを使用した。そして、反応(r−c)の反応生成物である化合物(D)として、下記化合物(D−1)〜(D−5)の何れかを得た。反応(r−d)では、反応(r−d)の化合物(D)として、反応(r−c)で得られた化合物(D−1)〜(D−5)の何れかを使用した。そして、反応(r−d)の反応生成物である化合物(1)として、化合物(1−1)〜(1−5)の何れかを得た。
Figure 2017210434
化合物(D−1)の具体的な製造方法は次の通りであった。反応(r−c)として下記反応(r−c1)を行うことによって、化合物(D−1)を得た。
Figure 2017210434
反応(r−c1)では、化合物(C−1)(4.04g、10mmol)、40%水素化ナトリウム(NaH、0.72g、12mmol)を、アルゴンガスで置換した容器に入れた。容器を氷冷した後、容器に蒸留したテトラヒドロフラン(100mL)を加えた。容器の内容物を、攪拌しながら90℃で4時間還流した。続いて、容器内に水を加えて、固体を析出させた。析出した固体を濾過して、残渣を得た。残渣をクロロホルムに溶解させてクロロホルム溶液を得た。クロロホルム溶液に水を加えて抽出し、有機層を得た。有機層から溶媒であるクロロホルムを留去し、残渣を得た。残渣をクロロホルム/ヘキサン(体積比率1/1)で晶析し、化合物(D−1)の粗生成物を得た。化合物(D−1)の粗生成物を精製することなく、反応(r−d)にそのまま使用した。
化合物(1−1)の具体的な製造方法は次の通りであった。反応(r−d)として下記反応(r−d1)を行うことによって、化合物(1−1)を得た。
Figure 2017210434
反応(r−d1)では、反応(r−c1)で得られた化合物(D−1)の粗生成物及びクロラニル(3.69g、15mmol)をクロロホルム100mLに溶解し、クロロホルム溶液を得た。クロロホルム溶液を、室温(25℃)で8時間攪拌した。8時間攪拌した後、混合物を濾過して、濾液を得た。濾液を減圧してクロロホルムを留去し、残渣を得た。残渣を、展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、化合物(1−1)が得られた。化合物(1−1)の収量は、2.41gであった。化合物(C−1)からの化合物(1−1)の二段階収率は、60mol%であった。
以下の点を変更した以外は化合物(D−1)の製造と同様の方法で反応(r−c1)を行うことにより、化合物(D−2)〜(D−5)の何れかを得た。化合物(C)として、化合物(D−1)の製造における化合物(C−1)の代わりに、表2に示す化合物(C−2)〜(C−5)の何れかを使用した。化合物(C)の添加質量を、化合物(D−1)の製造における4.04gから、表2に示す添加質量に変更した。なお、化合物(C)の添加モル数は、化合物(D−1)の製造における10mmolから変更しなかった。その結果、化合物(D)として、化合物(D−1)の代わりに、化合物(D−2)〜(D−5)の何れかが得られた。
以下の点を変更した以外は化合物(1−1)の製造と同様の方法で反応(r−d1)を行うことにより、化合物(1−2)〜(1−5)の何れかを得た。化合物(D)として、化合物(1−1)の製造における化合物(D−1)の代わりに、表2に示す化合物(D−2)〜(D−5)の何れかを使用した。その結果、化合物(1)として、化合物(1−1)の代わりに、化合物(1−2)〜(1−5)の何れかが得られた。
Figure 2017210434
次に、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計)を用いて、製造した化合物(1−1)〜(1−5)の1H−NMRスペクトルを測定した。磁場強度は270MHzに設定した。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl3)を使用した。内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。
化合物(1−1)〜(1−5)のうちの代表例として、化合物(1−1)の1H−NMRスペクトルを、図4に示す。化合物(1−1)の1H−NMRスペクトルの化学シフト値を以下に示す。測定された1H−NMRスペクトル及び化学シフト値から、化合物(1−1)が得られていることを確認した。化合物(1−2)〜(1−5)も同様にして、測定された1H−NMRスペクトル及び化学シフト値から、化合物(1−2)〜(1−5)の各々が得られていることを確認した。
化合物(1−1):1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ=8.14−8.19(m,2H),7.79−7.83(m,2H),7.30−7.44(m,7H),6.96(s,2H),5.11(s,2H).
電子輸送剤として、化合物(E−1)及び(E−2)も準備した。化合物(E−1)及び(E−2)は、各々、下記化学式(E−1)及び(E−2)で表される。
Figure 2017210434
Figure 2017210434
<2.単層型感光体の製造>
単層型感光層を形成するための材料を用いて、単層型感光体(P−1)〜(P−14)を製造した。
<2−1.単層型感光体(P−1)の製造>
容器内に、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニン2質量部、正孔輸送剤としての化合物(2−1)50質量部、電子輸送剤としての化合物(1−1)30質量部、バインダー樹脂としてのビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン600質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて12時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、単層型感光層用塗布液を得た。単層型感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した単層型感光層用塗布液を、120℃で80分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、単層型感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、単層型感光体(P−1)が得られた。
<2−2.単層型感光体(P−2)〜(P−14)の製造>
以下の点を変更した以外は、単層型感光体(P−1)の製造と同様の方法で、単層型感光体(P−2)〜(P−14)の各々を製造した。単層型感光体(P−1)の製造に用いた電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニンを、表3に示す種類の電荷発生剤に変更した。単層型感光体(P−1)の製造に用いた電子輸送剤としての化合物(1−1)を、表3に示す種類の電子輸送剤に変更した。
<3.電気特性の評価>
製造した単層型感光体(P−1)〜(P−14)の各々に対して、電気特性を評価した。電気特性の評価は、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で行った。まず、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、単層型感光体の表面を+600Vに帯電させた。次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光(波長780nm、半値幅20nm、光エネルギー1.5μJ/cm2)を取り出した。取り出された単色光を、単層型感光体の表面に照射した。照射が終了してから0.5秒経過した時の単層型感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を、感度電位(VL、単位:+V)とした。測定された単層型感光体の感度電位(VL)を、表3に示す。なお、感度電位(VL)が小さい正の値であるほど、単層型感光体の電気特性が優れていることを示す。
<4.摩擦帯電性の評価>
製造した単層型感光体(P−1)〜(P−14)の各々に対して、摩擦帯電性を評価した。
以下、図3を再び参照して、感光層3(単層型感光層3cに相当)と炭酸カルシウムとを摩擦させたときの炭酸カルシウムの帯電量を測定する方法を説明する。炭酸カルシウムの帯電量は、下記の第一ステップ、第二ステップ、第三ステップ及び第四ステップを行うことにより測定した。炭酸カルシウムの帯電量の測定には、治具10を使用した。
治具10は、第一台12と、回転シャフト14と、回転駆動部16(例えば、モーター)と、第二台18とを備えている。回転駆動部16は、回転シャフト14を回転させる。回転シャフト14は、回転シャフト14の回転軸Sを中心に回転する。第一台12は、回転シャフト14と一体になって、回転軸Sを中心に回転する。第二台18は、回転することなく固定されている。
(第一ステップ)
第一ステップでは、感光層3を2個準備した。以下、感光層3の一方を第一感光層30と、感光層3の他方を第二感光層32と記載する。まず、膜厚L1が30μmである第一感光層30を備える第一フィルム20を準備した。また、膜厚L2が30μmである第二感光層32を備える第二フィルム22を準備した。詳しくは、第一フィルム20及び第二フィルム22として、オーバーヘッドプロジェクタ(OHP)フィルムを使用した。第一フィルム20及び第二フィルム22の大きさは、各々、直径3cmの円形状であった。第一フィルム20及び第二フィルム22の各々の上に、感光体(P−1)の製造に使用した単層型感光層用塗布液を塗布した。塗布した単層型感光層用塗布液を、120℃で80分間熱風乾燥させた。その結果、第一感光層30を備える第一フィルム20、及び第二感光層32を備える第二フィルム22が得られた。
(第二ステップ)
第二ステップでは、0.007gの炭酸カルシウムを、第一感光層30上に載せた。これにより、炭酸カルシウムから構成される炭酸カルシウム層24を、第一感光層30上に形成した。そして、炭酸カルシウム層24上に第二感光層32を載せた。第二ステップの具体的な手順は以下の通りであった。
まず、第一フィルム20を、両面テープを用いて第一台12に固定した。第一フィルム20が備える第一感光層30上に、0.007gの炭酸カルシウムを載せた。これにより、炭酸カルシウムから構成される炭酸カルシウム層24を第一感光層30上に形成した。炭酸カルシウム層24が第二感光層32と接触するように、両面テープを用いて第二フィルム22を第二台18に固定した。これにより、下から順に、第一台12、第一フィルム20、第一感光層30、炭酸カルシウム層24、第二感光層32、第二フィルム22及び第二台18が配置された。第一台12、第一フィルム20、第一感光層30、第二感光層32、第二フィルム22及び第二台18の各中心が、回転軸Sを通るように配置された。
(第三ステップ)
第三ステップでは、温度23℃且つ相対湿度50%RHの環境下で、第二感光層32を固定したまま、回転速度60rpmで60秒間第一感光層30を回転させた。具体的には、回転駆動部16を駆動させて、回転シャフト14、第一台12、第一フィルム20及び第一感光層30を、回転速度60rpmで60秒間、回転軸Sを中心に回転させた。これにより、炭酸カルシウム層24に含まれる炭酸カルシウムが第一感光層30と第二感光層32との間で摩擦され、炭酸カルシウムが帯電した。
(第四ステップ)
第四ステップでは、第三ステップで帯電させた炭酸カルシウムを治具10から取出し、帯電量測定装置(吸引式小型帯電量測定装置、トレック社製「MODEL 212HS」)を用いて吸引した。吸引された炭酸カルシウムの総電気量Q(単位:+μC)と質量M(単位:g)とを、帯電量測定装置を用いて測定した。式「帯電量=Q/M」から、炭酸カルシウムの帯電量(摩擦帯電量、単位:+μC/g)を算出した。
感光体(P−2)〜(P−14)の各々の摩擦帯電性は、次の点を変更した以外は、感光体(P−1)の摩擦帯電性の評価と同様の方法で評価した。第一ステップにおいて、感光体(P−1)の製造に使用した感光層用塗布液の代わりに、感光体(P−2)〜(P−14)の製造に使用した感光層用塗布液の各々を使用した。
感光体(P−1)〜(P−14)の各々について、算出された炭酸カルシウムの帯電量を表3に示す。なお、炭酸カルシウムの帯電量が大きい正の値であるほど、第一感光層30及び第二感光層32に対して炭酸カルシウムが正帯電し易いことを示す。
<5.画像特性の評価>
製造した単層型感光体(P−1)〜(P−14)の各々に対して、画像特性を評価した。画像特性の評価は、温度32.5℃、相対湿度80%RHの環境下で行った。評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「モノクロプリンターFS−1300D」)を用いた。この画像形成装置は、非接触現像方式、直接転写方式及びブレードクリーニング方式を採用する。この画像形成装置では、帯電部としてスコロトロン帯電器が備えられている。記録媒体として、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ)を使用した。評価機による評価には、一成分現像剤(試作品)を使用した。
評価機を用いて、単層型感光体の回転速度168mm/秒の条件で、20000枚の記録媒体に画像I(印字率1%の画像)を連続して印刷した。続いて、1枚の記録媒体に画像II(A4サイズの黒色ソリッド画像)を印刷した。画像IIが形成された記録媒体を肉眼で観察し、画像II内に現れる白点の個数を数えた。感光体に記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が付着するほど、画像II内の白点の個数が増加する傾向がある。画像II内に現れる白点の個数を、表3に示す。
表3中、CGM、ETM及びVLは、各々、電荷発生剤、電子輸送剤及び感度電位を示す。表3中、X−H2Pc及びY−TiOPcは、各々、X型無金属フタロシアニン及びY型チタニルフタロシアニンを示す。
Figure 2017210434
単層型感光体(P−1)〜(P−10)の感光層は、電子輸送剤として化合物(1)を、具体的には化合物(1−1)〜(1−7)の何れかを含有していた。そのため、表3から明らかなように、単層型感光体(P−1)〜(P−10)では、摩擦帯電性の評価で測定された炭酸カルシウムの帯電量が大きな正の値であり、形成画像における白点の発生が抑制されていた。また、単層型感光体(P−1)〜(P−10)では、単層型感光体の電気特性を損なうことなく、形成画像における白点の発生を抑制することができた。
一方、単層型感光体(P−11)〜(P−14)の感光層は、電子輸送剤として、化合物(1)を含有していなかった。具体的には、化合物(E−1)はハロゲン原子を有していなかった。化合物(E−2)は、ハロゲン原子を有していたが、一般式(1)で表される化合物の骨格を有していなかった。そのため、表3から明らかなように、単層型感光体(P−11)〜(P−14)では、摩擦帯電性の評価で測定された炭酸カルシウムの帯電量が小さな正の値であり、形成画像に白点が多数発生した。
以上のことから、化合物(1)は、感光体の感光層に含有された場合に、形成画像における白点の発生を抑制することが示された。また、化合物(1)を含有する感光層を備える感光体は、形成画像における白点の発生を抑制することが示された。
本発明に係る化合物は、感光体に利用することができる。本発明に係る感光体は、画像形成装置に利用することがきる。
1 電子写真感光体
2 導電性基体
3 感光層
3a 電荷発生層
3b 電荷輸送層
3c 単層型感光層

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    Figure 2017210434
    前記一般式(1)中、
    1及びR2は、各々独立して、
    ハロゲン原子、
    ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基、
    ハロゲン原子を少なくとも1個有し、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、
    ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、又は
    ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基を表し、
    m及びnは、各々独立して、0以上5以下の整数を表し、m及びnの両方が0を表すことはなく、
    Yは、−CO−O−CH2−、−CO−又は−CO−O−を表す。
  2. 前記一般式(1)中、
    mは0を表し、
    Yは、−CO−O−CH2−又は−CO−を表す、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記一般式(1)中、
    2は、ハロゲン原子を表し、
    mは、0を表し、
    nは、1又は2を表し、
    Yは、−CO−O−CH2−又は−CO−を表す、請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記一般式(1)中、Yは、−CO−O−CH2−を表す、請求項1〜3の何れか一項に記載の化合物。
  5. 前記一般式(1)中、nは2を表す、請求項1〜4の何れか一項に記載の化合物。
  6. 前記一般式(1)で表される化合物は、下記化学式(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)又は(1−5)で表される化合物である、請求項1〜3の何れか一項に記載の化合物。
    Figure 2017210434
  7. 導電性基体と感光層とを備える電子写真感光体であって、
    前記感光層は、請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物を含有する、電子写真感光体。
  8. 前記感光層は、電荷発生剤と電子輸送剤とを含有する単層型感光層であり、
    前記電子輸送剤として、前記化合物が含有される、請求項7に記載の電子写真感光体。
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