以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数5以上7以下のシクロアルカン及び炭素原子数1以上6以下のアルキレン基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)は、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)又はヨウ素原子(ヨード基)である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基又はn−オクチル基が挙げられる。
炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、例えば、1個以上3個以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基の例としては、ビニル基(エテニル基)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、又はヘキサジエニル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基又は素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基と、炭素原子数1以上6以下のアルキル基とが結合した基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基における炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基又は4−フェニルブチル基が挙げられる。
炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、非置換である。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデシル基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンは、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルカンの例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン又はシクロヘプタンが挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルキレン基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、n−ブチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルエチレン基、エチルメチルメチレン基、ペンチレン基、又はヘキシレン基が挙げられる。
<1.感光体>
本実施形態は電子写真感光体(以下、感光体と記載する)に関する。本実施形態の感光体は、感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させることができる。その理由は以下のように推測される。
理解を容易にするために、まず転写メモリーについて説明する。感光体を備える画像形成装置を用いて記録媒体に画像を形成する場合、感光体が1周回転する間に、帯電工程、露光工程、現像工程及び転写工程が行われる。帯電工程では、感光体の表面が一定の正極性の電位まで帯電される。続いて、露光工程及び現像工程を経て、転写工程では、帯電とは逆極性の転写バイアス(負極性の転写バイアス)が、被転写体を介して像担持体に印加される。印加された逆極性の転写バイアスの影響により、感光体表面の非露光領域(非画像領域)の電位が低下し、電位が低下した状態が保持されることがある。この電位低下の影響を受け、非露光領域は、次の周の帯電工程において、所望の正極性の電位まで帯電され難くなる。一方、感光体表面の露光領域(画像領域)にはトナーが付着しているため、露光領域に転写バイアスが直接印加され難い。そのため、転写バイアスが印加されても、露光領域の電位は低下し難い。その結果、露光領域と非露光領域との間で、次の周の感光体表面の帯電電位に差が生じることがある。このように、転写バイアスの影響によって、感光体表面において、前の周の非露光領域に対応する領域の帯電電位が、前の周の露光領域に対応する領域よりも低下する現象を、転写メモリーという。転写メモリーは、高速で画像を形成する場合に発生し易い。高速で画像を形成する場合には、強い転写バイアスを感光体へ印加する転写条件に設定されることが多いからである。感光体に転写メモリーが発生すると、形成画像にネガゴーストが発生し易くなる。ネガゴーストは、形成画像において、感光体の前の周の非露光領域に対応する領域が黒ずむ画像不良である。
ここで、本実施形態の感光体では、正孔輸送剤の含有量(MHTM)に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量(METM)の比率(METM/MHTM)が1.1以上である。本実施形態の感光体では、電子輸送剤の合計含有量が、正孔輸送剤の含有量よりも多い。通常、感光体が電荷発生剤、電子輸送剤及び正孔輸送剤を含有する単層の感光層を備える場合、正孔輸送剤の含有量が、電子輸送剤の含有量よりも多い。その理由は次のとおりである。画像形成において感光体を露光すると、感光層中の電荷発生剤から電子及び正孔が発生する。発生した電子は、電子輸送剤によって感光層の表面へ輸送される。発生した正孔は、正孔輸送剤によって導電性基体へ輸送される。露光した光の透過率は、感光層の表面付近では高く、感光層の深部(導電性基体側)では低くなる。そのため、露光した光の透過率が高い感光層の表面付近に存在する電荷発生剤から、多くの電子及び正孔が発生する傾向がある。感光層の表面付近に存在する電荷発生剤から電子及び正孔が発生した場合、導電性基体までの正孔の移動距離は、感光層の表面までの電子の移動距離よりも長い。そのため、正孔輸送剤を、電子輸送剤よりも多く含有させることが一般的である。しかし、本発明者らは鋭意検討し、電子輸送剤の合計含有量を正孔輸送剤の含有量よりも多くすること、詳しくは、正孔輸送剤の含有量に対する3種の電子輸送剤の合計含有量の比率を1.1以上にすることで、転写メモリーの発生を抑制できることを見出した。
また、電子輸送剤は、感光層を形成するための溶剤に溶解し難い化学構造を有する。しかし、感光層に電子輸送剤を3種以上含有させることで、感光層を形成するための溶剤に対する電子輸送剤の溶解性を向上させることができる。これにより、感光層を形成するための溶剤に多くの電子輸送剤を溶解させることができ、感光層中の電子輸送剤の含有量を多くすることができる。詳しくは、正孔輸送剤の含有量に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量の比率を1.1以上にすることができる。その結果、感光層の結晶化を抑制しつつ、転写メモリーの発生を抑制することができる。
更に、本実施形態の感光体では、正孔輸送剤の含有量に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量の比率が1.5以下である。感光層に3種以上の電子輸送剤を含有すること、及び正孔輸送剤の含有量に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量の比率を1.5以下にすることで、感光層の結晶化を抑制することができる。
以下、図1(a)〜図1(c)を参照して、感光体30の構造について説明する。図1は、本実施形態に係る感光体30の一例を示す断面図である。
図1(a)に示すように、感光体30は、例えば、導電性基体32と感光層34とを備える。感光層34は単層である。感光体30は、単層の感光層34を備えるいわゆる単層型感光体である。
図1(b)に示すように、感光体30は、導電性基体32と、感光層34と、中間層36(下引き層)とを備えてもよい。中間層36は、導電性基体32と感光層34との間に設けられる。図1(a)に示すように、感光層34は導電性基体32上に直接設けられてもよいし、図1(b)に示すように、感光層34は導電性基体32上に中間層36を介して間接的に設けられてもよい。
図1(c)に示すように、感光体30は、導電性基体32と、感光層34と、保護層38とを備えてもよい。保護層38は、感光層34上に設けられる。
感光層34の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。感光層34の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
感光層34は、電荷発生剤と電子輸送剤と正孔輸送剤とを含有する。感光層34は、バインダー樹脂を更に含有してもよい。感光層34は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。電荷発生剤と、電子輸送剤と、正孔輸送剤と、必要に応じて添加される成分(例えば、バインダー樹脂又は添加剤)とは、一層(単層)の感光層34に含有される。
以上、図1(a)〜図1(c)を参照して、感光体30の構造について説明した。次に、感光体の要素について説明する。
<1−1.導電性基体>
導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で構成される被覆層を備える導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<1−2.感光層>
感光層は、電荷発生剤と正孔輸送剤と3種以上の電子輸送剤とを含有する。感光層において、正孔輸送剤の含有量(MHTM)に対する、3種以上の前記電子輸送剤の合計含有量(METM)の比率(METM/MHTM)は、1.1以上1.5以下である。比率(METM/MHTM)が1.1以上であると、感光体に転写メモリーが発生することを抑制できる。比率(METM/MHTM)が1.1以上であると、感光層内での電子の移動が促進され、感光層内に電子が残留することを抑制できると考えられるからである。一方、比率(METM/MHTM)が1.5以上であると、感光層の結晶化を抑制することができる。
(電子輸送剤)
感光層は、3種以上の電子輸送剤を含有する。感光層は、3種又は4種の電子輸送剤を含有することが好ましい。電子輸送剤の例としては、キノン化合物、ジイミド化合物、ヒドラゾン化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
電子輸送剤の好適な例は、下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物(以下、化合物(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)と記載することがある)である。
一般式(1)、(2)、(4)及び(5)中、中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(2)中、Wは、−CO−O−又は−CO−を表す。
一般式(3)中、
R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有してもよい炭素原子数1以上8以下のアルキル基;及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基からなる群より選択される基を表す。選択される基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。
一般式(1)、(2)、(4)及び(5)中のR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表されるハロゲン原子(ハロゲン基)は、塩素原子(クロロ基)であることが好ましい。
一般式(1)、(2)、(4)及び(5)中のR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上5以下のアルキル基が好ましく、メチル基、tert−ブチル基又は1,1−ジメチルプロピル基がより好ましい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、置換基を更に有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基、又はシアノ基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基としては、炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。置換基としての炭素原子数6以上14以下のアリール基が更に有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するカルボニル基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有するカルボニル基)又はフェノキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(1)、(2)、(4)及び(5)中のR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(1)、(2)、(4)及び(5)中のR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はシアノ基が挙げられる。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(1)、(2)、(4)及び(5)中のR1、R2、R3、R4、R5、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数2以上7以下のアルカノイル基(炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するカルボニル基)、ベンゾイル基、フェノキシ基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基(炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を有するカルボニル基)、フェノキシカルボニル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基又はビフェニル基が挙げられる。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はニトロ基が好ましく、メチル基、エチル基又はニトロ基がより好ましい。置換基の数は、特に限定されないが、3個以下であることが好ましい。
一般式(1)中のR1及びR2は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましい。R1及びR2は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基のうちの同一の基を表してもよく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基のうちの異なる基を表してもよい。R1及びR2の各々は、tert−ブチル基又は1,1−ジメチルプロピル基を表すことが好ましい。
一般式(2)中のR3、R4及びR5は、各々独立して、水素原子、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はニトロ基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。R3は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はニトロ基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、フェニル基を有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基又はニトロフェニル基を表すことがより好ましく、フェニルメチル基又はニトロフェニル基を表すことが特に好ましい。R4は、炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、フェニル基を表すことがより好ましい。R5は、水素原子を表すことが好ましい。一般式(2)中のWは、−CO−O−又は−CO−を表す。
一般式(3)中、R6及びR7が表す炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、置換基を有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基(好ましくは炭素原子数1以上3以下のアルキル基)又はフェニルカルボニル基が挙げられる。このような置換基としては、塩素原子、メチル基、エチル基又はフェニルカルボニル基が好ましい。置換基の数は、1以上3以下の整数であることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基がフェニル基である場合、フェニル基における置換基の位置は、例えば、フェニル基が窒素原子と結合する位置に対して、オルト位(o位)、メタ位(m位)、パラ位(p位)、又はこれらの少なくとも2つが挙げられる。置換基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基の一例は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基である。1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基の好適な例は、2,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基又は2−エチル−6−メチルフェニル基である。置換基を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基の別の例は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよく、フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基である。1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよく、フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基の好適な例は、4−クロロ−2−フェニルカルボニルフェニル基である。
一般式(3)中、R6及びR7が表す炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、炭素原子数7以上9以下のアラルキル基が好ましく、1−フェニルエチル基がより好ましい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、フェニルカルボニル基を有してもよい。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。ハロゲン原子を有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、例えば、1−(2,4−ジクロロフェニル)エチル基が挙げられる。
一般式(3)中、R6とR7とが互いに同一であっても異なってもよい。R6とR7とは互いに同一である場合、R6及びR7は、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、又は1つのフェニルカルボニル基及び1つのハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
一般式(3)中、R6とR7とが互いに異なる場合、R6及びR7のうちの一方が、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を少なくとも1つ有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表し、R6及びR7のうちの他方が、1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数7以上9以下のアラルキル基、又はフェニルカルボニル基を有してもよく1つ以上のハロゲン原子を有する炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましい。
一般式(3)中、R6及びR7の表す基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。R6及びR7のうち少なくとも一方が1つ以上のハロゲン原子を有することが好ましい。R6が表す基が有するハロゲン原子の数と、R7が表す基が有するハロゲン原子の数との総数は、1以上の整数であり、3又は4であることが好ましい。
化合物(3)としては、一般式(3)中のR6及びR7が以下のとおりである化合物が好ましい。R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;炭素原子数7以上20以下のアラルキル基;炭素原子数1以上8以下のアルキル基;及び炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基からなる群より選択される基を表す。選択される基は1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。R6及びR7のうち少なくとも一方が1つ以上のハロゲン原子を有する。つまり、好適な化合物(3)はハロゲン原子を有する。
化合物(3)としては、一般式(3)中のR6及びR7が以下のとおりである化合物がより好ましい。R6及びR7は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を少なくとも1つ有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;フェニルカルボニル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;及び炭素原子数7以上20以下のアラルキル基からなる群より選択される基を表す。選択される基は1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。R6及びR7のうち少なくとも一方が1つ以上のハロゲン原子を有する。つまり、より好適な化合物(3)はハロゲン原子を有する。
なお、化合物(3)は、実施例に記載の方法又はその代替法によって製造することができる。
一般式(4)中のR8、R9、R10及びR11は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基、tert−ブチル基を表すことがより好ましい。
一般式(5)中のR12及びR13は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、イソプロピル基又はtert−ブチル基を表すことがより好ましい。一般式(5)中のR14は、ハロゲン原子を表すことが好ましく、塩素原子(クロロ基)を表すことがより好ましい。
電子輸送剤は、化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)のうちの3種以上であることが好ましい。感光層が電子輸送剤としての化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)のうちの3種以上を含むことで、感光層を形成するための溶剤に対する電子輸送剤の溶解性を向上させることができる。これにより、感光層を形成するための溶剤に多くの電子輸送剤を溶解させることができ、感光層中の電子輸送剤の含有量を多くすることができる。その結果、感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させることができる。なお、化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)から3種以上を選択する場合、一の一般式(一般式(1)〜(5)の何れか)で表される異なる種類の化合物を3種選択してもよい。化合物(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)から3種以上を選択する場合、一の一般式(一般式(1)〜(5)の何れか)で表される異なる種類の化合物を2種選択し、他の一般式で表される化合物を1種選択してもよい。
感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させるためには、感光層は、電子輸送剤として、次に示す組み合わせの3種の化合物を含むことが好ましい。
化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3);
化合物(1)、化合物(2)及び化合物(5);
化合物(1)及び2種の化合物(4);
化合物(1)、化合物(4)及び化合物(5);
2種の化合物(2)及び化合物(3);又は
化合物(2)、化合物(4)及び化合物(5)。
転写メモリーの発生を一層抑制するためには、感光層は、電子輸送剤として、次に示す組み合わせの3種の化合物を含むことがより好ましい。
化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3);
化合物(1)、化合物(2)及び化合物(5);
化合物(1)及び2種の化合物(4);
化合物(1)、化合物(4)及び化合物(5);又は
2種の化合物(2)及び化合物(3)。
感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させるためには、感光層は、電子輸送剤として、次に示す組み合わせの4種の化合物を含むことも好ましい。
化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)及び化合物(5);又は
化合物(1)、化合物(2)、化合物(4)及び化合物(5)。
感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させるためには、3種以上の電子輸送剤のうちの1種が、化合物(3)であることが好ましい。
化合物(1)の好適な例は、下記化学式(ET3)又は(ET13)で表される化合物であり、化合物(1)のより好適な例は、化学式(ET3)で表される化合物である。化合物(2)の好適な例は、下記化学式(ET1)又は(ET2)で表される化合物である。化合物(3)の好適な例は、下記化学式(ET7)、(ET8)、(ET9)、(ET10)、(ET11)、(ET14)、(ET15)又は(ET16)で表される化合物であり、化合物(3)のより好適な例は、化学式(ET7)、(ET8)又は(ET9)で表される化合物である。化合物(4)の好適な例は、下記化学式(ET4)又は(ET5)で表される化合物である。化合物(5)の好適な例は、下記化学式(ET6)又は(ET12)で表される化合物であり、化合物(5)のより好適な例は、化学式(ET6)で表される化合物である。以下、化学式(ET1)〜(ET16)で表される化合物の各々を、化合物(ET1)〜(ET16)と記載することがある。
感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させるためには、3種以上の電子輸送剤のうちの1種は、化合物(ET7)、(ET8)又は(ET9)で表される化合物であることが好ましい。
1種の電子輸送剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。3種以上の電子輸送剤の合計含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、55質量部以上75質量部以下であることが好ましい。
感光層の質量(MPL)に対する3種以上の前記電子輸送剤の合計含有量(METM)の比率(METM/MPL)は、0.26以上0.33以下であることが好ましい。比率(METM/MPL)が0.26以上であると、転写メモリーの発生を一層抑制することができる。比率(METM/MPL)が0.33以上であると、感光層の結晶化を一層抑制することができる。
(正孔輸送剤)
感光層は、例えば正孔輸送剤を含有する。正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正孔輸送剤の好適な例は、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物(以下、化合物(10)、(11)又は(12)と記載することがある)である。転写メモリーの発生を一層抑制するためには、感光層は、正孔輸送剤として、化合物(12)を含むことが好ましい。
一般式(10)中、R20〜R22は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R20〜R22としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、n−ブチル基を表すことがより好ましい。
一般式(10)中、p、q及びrは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。pが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR20は、互いに同一でも異なっていてもよい。qが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR21は、互いに同一でも異なっていてもよい。rが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR22は、互いに同一でも異なっていてもよい。pは1を表すことが好ましい。q及びrは0を表すことが好ましい。
R20〜R22の結合位置は特に限定されない。R20〜R22は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R20は、フェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
一般式(11)中、R23〜R27は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。R23〜R25は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが特に好ましい。R26〜R27は、各々、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を表すことがより好ましく、メチルフェニル基を表すことが更に好ましく、p−メチルフェニル基を表すことが特に好ましい。
一般式(11)中、s、t及びuは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。sが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR23は、互いに同一でも異なっていてもよい。tが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR24は、互いに同一でも異なっていてもよい。uが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR25は、互いに同一でも異なっていてもよい。s、t及びuは、各々、1を表すことが好ましい。
R23〜R25の結合位置は特に限定されない。R23〜R25は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R23〜R25は、各々、フェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
一般式(12)中、R28〜R33は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表す。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が置換基を有する場合、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が有する置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数6以上14以下のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基が有する置換基の数は、特に限定されないが、3以下であることが好ましく、2であることがより好ましい。R28〜R33としては、炭素原子数1以上6以下のアルキルが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
一般式(12)中、g、h、i及びjは、各々独立して、0以上5以下の整数を表す。gが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR28は、互いに同一でも異なっていてもよい。hが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR29は、互いに同一でも異なっていてもよい。iが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR30は、互いに同一でも異なっていてもよい。jが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のR31は、互いに同一でも異なっていてもよい。g及びhの一方は2を表し、他方は0又は1を表すことが好ましい。g及びhの一方は2を表し、他方は0を表すことがより好ましい。i及びjの一方は2を表し、他方は0又は1を表すことが好ましい。i及びjの一方は2を表し、他方は0を表すことがより好ましい。
R28〜R31の結合位置は特に限定されない。R28〜R31は、各々、フェニル基のオルト位、メタ位及びパラ位の何れに結合(位置)してもよい。R28〜R31は、各々、フェニル基のオルト位又はパラ位に結合することが好ましい。
一般式(12)中、k及びlは、各々独立して、0以上4以下の整数を表す。kが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR32は、互いに同一でも異なっていてもよい。lが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニレン基に結合する複数のR33は、互いに同一でも異なっていてもよい。k及びlは、各々、0を表すことが好ましい。
R32及びR33の結合位置は特に限定されない。R32及びR33は、各々、フェニレン基が結合する窒素原子に対して、オルト位及びメタ位の何れに結合(位置)してもよい。
gが2を表しhが0又は1を表す場合、2個のR28は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。gが2を表しhが0又は1を表す場合、R29は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。gが2を表しhが0又は1を表す場合、2個のR28はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R29はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
hが2を表しgが0又は1を表す場合、2個のR29は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。hが2を表しgが0又は1を表す場合、R28は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。hが2を表しgが0又は1を表す場合、2個のR29はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R28はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
iが2を表しjが0又は1を表す場合、2個のR30は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。iが2を表しjが0又は1を表す場合、R31は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。iが2を表しjが0又は1を表す場合、2個のR30はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R31はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
jが2を表しiが0又は1を表す場合、2個のR31は、各々独立して炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基及びエチル基を表すことがより好ましい。iが2を表しjが0又は1を表す場合、R30は、置換基を有してもよい炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことが好ましく、2個の炭素原子数6以上14以下のアリール基を有する炭素原子数2以上6以下のアルケニル基を表すことがより好ましく、2,2−ジフェニルエテニル基を表すことが特に好ましい。jが2を表しiが0又は1を表す場合、2個のR31はフェニル基のオルト位に結合することが好ましい。この場合、R30はフェニル基のパラ位に結合することが好ましい。
化合物(10)の好適な例は、下記化学式(HT2)で表される化合物である。化合物(11)の好適な例は、下記化学式(HT3)で表される化合物である。化合物(12)の好適な例は、下記化学式(HT1)で表される化合物である。以下、化学式(HT1)〜(HT3)で表される化合物の各々を、化合物(HT1)〜(HT3)と記載することがある。
感光層に含有される正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、45質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。
(電荷発生剤)
感光層は、電荷発生剤を含有する。電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、化学式(CG1)で表されるチタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。また、Y型チタニルフタロシアニンには、電荷発生効率が高く、感光層内に電荷が残留し難いという利点がある。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有しない。
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
図2は、本実施形態に係る感光体において用いられるチタニルフタロシアニンのCuKα特性X線回折スペクトルチャートの一例である。図2において、横軸はブラッグ角2θ(°)を示し、縦軸は強度(cps)を示す。図2のCuKα特性X線回折スペクトルチャートから、測定されたチタニルフタロシアニンの結晶型がY型であることを推定できる。
Y型チタニルフタロシアニンは、示差走査熱量分析(DSC)スペクトルにおける熱特性(詳しくは、次に示す熱特性(a)〜(c))の違いによって3種類に分類される。
(a)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
(b)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有しない。
(c)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
示差走査熱量分析スペクトルの測定方法の一例について説明する。サンプルパンにチタニルフタロシアニン結晶粉末の評価用試料を載せて、示差走査熱量計(例えば、株式会社リガク製「TAS−200型 DSC8230D」)を用いて示差走査熱量分析スペクトルを測定する。測定範囲は、例えば40℃以上400℃以下であり、昇温速度は、例えば20℃/分である。
図3は、本実施形態に係る感光体において用いられるチタニルフタロシアニンの示差走査熱量分析スペクトルチャートの一例である。具体的には、図2のCuKα特性X線回折スペクトルチャートで示されるチタニルフタロシアニンの示差走査熱量分析スペクトルチャートである。図3において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は熱流束(mcal/秒)を示す。図3の示差走査熱量分析スペクトルチャートでは、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークが観察されず、296℃(270℃以上400℃以下の範囲)に1つのピークが観察される。従って、測定されたチタニルフタロシアニン結晶が、主に熱特性(c)を有するY型チタニルフタロシアニンであることを推定できる。
熱特性(b)及び(c)を有するY型チタニルフタロシアニンは、結晶安定性に優れており、有機溶媒中で結晶転移を起こしにくく、感光層中に分散し易い。感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立させるためには、熱特性(c)を有するY型チタニルフタロシアニンが好ましい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上5質量部以下であることが特に好ましい。
(バインダー樹脂)
感光層は、バインダー樹脂を含有してもよい。バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物のアクリル酸付加物又はウレタン化合物のアクリル酸付加物が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性及び耐摩耗性のバランスに優れた感光層が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂の例としては、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールZC型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂又はビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂としては、下記化学式(R−1)で表される繰り返し単位を有するビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(R−1)と記載することがある)が好ましい。
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、25,000以上であることが好ましく、25,000以上52,500以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が25,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。バインダー樹脂の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層を形成し易くなる。
<1−3.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、各種の添加剤を含有してもよい。
<1−4.感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、3種の電子輸送剤、正孔輸送剤及び必要に応じて添加される成分(例えば、バインダー樹脂及び各種添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
感光層用塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
感光層用塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
感光層用塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
<2.画像形成装置>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る感光体30を備える画像形成装置100について説明する。図4は画像形成装置100の構成の一例を示す図であり、この画像形成装置100は本実施形態に係る感光体30を備える。図4に示す画像形成装置100は、直接転写方式を採用する。なお、中間転写方式を採用する画像形成装置100については、図5を参照して後述する。
画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えばタンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、感光体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。画像形成ユニット40の中央位置に、感光体30が設けられる。感光体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。感光体30の周囲には、帯電部42を基準として感光体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示、例えばクリーニングブレード)及び除電部(不図示、例えば除電器)の一方又は両方が更に備えられてもよい。
帯電部42は、感光体30の表面を帯電する。帯電部42は、非接触方式又は接触方式である。非接触方式の帯電部42の例は、コロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器である。接触方式の帯電部42の例は、帯電ローラー又は帯電ブラシである。
単層型感光体である感光体30の電気特性を向上させるためには、帯電部42は感光体30の表面(周面)を正極性に帯電することが好ましい。
露光部44は、帯電された感光体30の表面を露光する。これにより、感光体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、感光体30に形成された静電潜像にトナーを供給する。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。感光体30は、トナー像を担持する像担持体に相当する。
転写ベルト50は、感光体30と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、感光体30から被転写体へ転写する。画像形成装置100が直接転写方式を採用する場合、被転写体は記録媒体Pに相当する。画像形成装置100が直接転写方式を採用する場合、感光体30から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、感光体30は記録媒体Pと接触している。転写部48は、例えば転写ローラーである。
転写部48が感光体30へ印加する転写電流は、−20μA以上−8μA以下であることが好ましい。−20μA以上−8μA以下の転写電流は、通常印加される転写電流と比較して絶対値が大きく(小さな負の値であり)、通常よりも過酷な転写条件である。高速で画像を形成する場合には、転写電流の絶対値を大きく(負の値を小さく)することが好ましい。しかし、転写電流の絶対値を大きく(負の値を小さく)すると、転写メモリーが発生し易くなる。本実施形態の感光体30によれば、既に述べたように転写メモリーの発生を抑制することができる。そのため、−20μA以上−8μA以下の転写電流を転写部48が感光体30へ印加するような過酷な転写条件であっても、転写メモリーの発生を抑制することができる。−20μA以上−8μA以下の転写電流は、例えば、感光体の回転速度140mm/秒の条件下で印加することができる。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。なお、画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置100は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
画像形成装置100は、除電部を備えない設計とすることができる。つまり、画像形成装置100は、除電部を備えない除電レス方式を採用することができる。画像形成装置100が直接転写方式及び除電レス方式を採用する場合、感光体30の表面(周面)において、転写部48によって感光体30から被転写体(記録媒体Pに相当)にトナー像が転写された領域は、除電されることなく帯電部42によって再び帯電される。除電部を備えない除電レス方式の画像形成装置100では、転写バイアスの影響が残り易く、転写メモリーが発生し易い。しかし、本実施形態の感光体30によれば、既に述べたように転写メモリーの発生を抑制することができる。そのため、画像形成装置100が本実施形態の感光体30を備えることにより、画像形成装置100が除電部を備えない場合であっても、転写メモリーの発生を抑制することができる。
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
なお、画像形成装置100は、中間転写方式を採用することもできる。以下、図5を参照して、中間転写方式を採用する画像形成装置100について説明する。図5は、画像形成装置100の構成の別の例を示す図であり、この画像形成装置100は本実施形態に係る感光体30を備える。冗長を避けるために、図4に示す画像形成装置100が備える構成と同じ構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
画像形成装置100が中間転写方式を採用する場合、直接転写方式で説明した転写部48は、一次転写部54及び二次転写部58に相当する。画像形成装置100が中間転写方式を採用する場合、被転写体は、中間転写ベルト56及び記録媒体Pに相当する。一次転写部54は、一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性を有するバイアス)を中間転写ベルト56に印加する。中間転写ベルト56は、無端状のベルトである。中間転写ベルト56は、矢符(反時計回り)方向に回転する。一次転写バイアスが印加されると、感光体30と一次転写部54との間で、感光体30から中間転写ベルト56へ感光体30の表面に形成されたトナー像が転写(一次転写)される。
二次転写部58は、二次転写バイアス(具体的には、トナー像と逆極性を有するバイアス)を記録媒体Pに印加する。その結果、中間転写ベルト56上に一次転写されたトナー像は、二次転写部58と中間転写ベルト56との間で、中間転写ベルト56から記録媒体Pに転写(二次転写)される。これにより、未定着のトナー像が記録媒体Pに転写される。
画像形成装置100が中間転写方式を採用する場合、直接転写方式で説明した転写部48が感光体30へ印加する電流は、一次転写部54が感光体30へ印加する転写電流に相当する。
画像形成装置100が中間転写方式及び除電レス方式を採用する場合、感光体30の表面(周面)において、一次転写部54によって感光体30から被転写体(中間転写ベルト56に相当)にトナー像が転写された領域は、除電されることなく帯電部42によって再び帯電される。
以上、図4及び図5を参照して、本実施形態の感光体30を備える画像形成装置100について説明した。
<3.プロセスカートリッジ>
次に、図4及び図5を引き続き参照して、本実施形態の感光体30を備えるプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、画像形成用のカートリッジである。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、ユニット化された感光体30を備える。プロセスカートリッジは、感光体30に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48(又は一次転写部54)からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成が採用される。プロセスカートリッジには、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジには、除電レス方式が採用されていてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体30の感度特性等が劣化した場合に、感光体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<感光体の材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤及びバインダー樹脂を準備した。
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、チタニルフタロシアニンを準備した。チタニルフタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CG1)で表される化合物であった。また、このチタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有し、26.2℃にピークを有していなかった。このチタニルフタロシアニンは、DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃未満の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲に1つのピークを有していた。
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(HT1)〜(HT3)を準備した。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリカーボネート樹脂(R−1)を準備した。ポリカーボネート樹脂(R−1)の粘度平均分子量は、30000であった。
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(ET1)〜(ET9)を準備した。電子輸送剤として、化合物(ET1)〜(ET9)のうちの3種又は4種を選択して使用した。電子輸送剤を3種使用する場合は、3種の電子輸送剤の各々を、第一電子輸送剤、第二電子輸送剤及び第三電子輸送剤と記載する。電子輸送剤を4種使用する場合は、4種の電子輸送剤の各々を、第一電子輸送剤、第二電子輸送剤、第三電子輸送剤及び第四電子輸送剤と記載する。
なお、化合物(ET7)〜(ET9)は、以下の方法で合成した。
(化合物(ET7)の製造)
反応式(r−4)で表される反応(以下、反応(r−4)と記載することがある)に従って化合物(ET7)を製造した。
反応(r−4)では、化合物(F)(ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物)2.68g(10ミリモル)と、化学式(1G)で表される化合物4.64g(20ミリモル)と、ピコリン50mLとをフラスコに投入し、ピコリン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して4時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、イオン交換水をフラスコに投入し、クロロホルムで抽出した。有機層の溶媒(ピコリン)を除去し、残渣を得た。得られた残渣を展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより、化合物(ET7)を得た。化合物(ET7)の収量は4.16gであり、反応(r−4)における化合物(F)からの化合物(ET7)の収率は60モル%であった。
(化合物(ET9)の製造)
以下の点を変更した以外は、化合物(ET7)の製造と同様の方法で、化合物(ET9)を製造した。化合物(ET9)の製造では、反応(r−4)で使用した化合物(1G)(4.64g、20ミリモル)を化合物(5G)(3.80g、20ミリモル)に変更した。なお、化合物(5G)は、下記化学式(5G)で表される。その結果、化合物(ET7)の代わりに、化合物(ET9)を得た。化合物(ET9)の収量は3.98gであり、反応(r−4)における化合物(F)からの化合物(ET9)の収率は65モル%であった。
(化合物(ET8)の製造)
反応式(r’−1)、(r’−2)及び(r’−3)で表される反応(以下、それぞれ反応(r’−1)、反応(r’−2)、及び反応(r’−3)と記載することがある)に従って化合物(ET8)を製造した。
反応(r’−1)では、化合物(1A)3.42g(10ミリモル)と、化合物(2E)1.35g(10ミリモル)と、N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/2)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(2C’)で表される中間生成物(以下、化合物(2C’)と記載することがある)を得た。
反応(r’−2)では、化合物(2C’)と、トリフルオロ酢酸15mLとをフラスコに投入し、トリフルオロ酢酸溶液を調製した。化合物(2C’)は、反応(r’−1)で得られた全量を反応(r’−2)で使用した。フラスコ内容物の温度を80℃に昇温し、80℃に維持して24時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、トリフルオロ酢酸を除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチル/ヘキサン(体積比V/V=1/4)を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化学式(2D’)で表される中間生成物(以下、化合物(2D’)と記載することがある)を得た。
反応(r’−3)では、化合物(2D’)と、化学式(2B)で表される化合物2.32g(10ミリモル)と、ジイソプロピルエチルアミン1.3g(10ミリモル)と、ジオキサン50mLとをフラスコに投入し、ジオキサン溶液を調製した。フラスコ内容物の温度を100℃に昇温し、100℃に維持して2時間フラスコ内容物を攪拌した。反応後、ジオキサンを除去し、残渣を得た。展開溶媒として酢酸エチルを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより得られた残渣を精製した。これにより、化合物(ET8)を得た。化合物(ET8)の収量は2.69gであり、反応(r’−1)〜(r’−3)における化合物(1A)からの化合物(ET8)の収率は45モル%であった。
次に、プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、製造した化合物(ET7)〜(ET9)の1H−NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。これらのうち代表例として、(ET7)の化学シフト値を示す。1H−NMRスペクトルの化学シフト値により、(ET7)が得られていることを確認した。化合物(ET8)及び(ET9)も同様にして、1H−NMRスペクトルの化学シフト値から、化合物(ET8)及び(ET9)が得られていることを確認した。
化合物(ET7):1H−NMR(300MHz,CDCl3) δ=8.70(d, 4H), 7.62−7.75(m, 8H), 7.36−7.55(m, 8H).
<感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(P−A1)〜(P−A16)、(P−B1)〜(P−B8)、(P−C1)〜(P−C4)、(P−D1)〜(P−D3)、(P−E1)〜(P−E4)及び(P−F1)〜(P−F3)を製造した。
(感光体(P−A1)の製造)
容器内に、電荷発生剤3質量部、正孔輸送剤としての化合物(HT1)50質量部、第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)25質量部、第三電子輸送剤としての化合物(ET6)20質量部、バインダー樹脂100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン800質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて50時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。
次に導電性基体を準備した。導電性基体は、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)であった。導電性基体上に、ディップコート法を用いて調製した感光層用塗布液を塗布した。これにより、導電性基体上に塗布膜を形成した。塗布膜が形成された導電性基体を100℃で60分間乾燥させて、塗布膜からテトラヒドロフランを除去した。これにより、導電性基体上に、単層の感光層(膜厚25μm)が形成された。その結果、感光体(P−A1)が得られた。
(感光体(P−A2)〜(P−A8)及び(P−A11)〜(P−A14)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−A2)〜(P−A8)の各々を製造した。第一電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET1)から、表1に示す種類の第一電子輸送剤に変更した。第一電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における10質量部から、表1に示す第一電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。第二電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET3)から、表1に示す種類の第二電子輸送剤に変更した。第二電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における25質量部から、表1に示す第二電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。第三電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET6)から、表1に示す種類の第三電子輸送剤に変更した。第三電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における20質量部から、表1に示す第三電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。
(感光体(P−A9)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−A9)を製造した。感光体(P−A1)の製造における第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)25質量部及び第三電子輸送剤としての化合物(ET6)20質量部の代わりに、感光体(P−A9)の製造では、第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)15質量部、第三電子輸送剤としての化合物(ET4)15質量部及び第四電子輸送剤としての化合物(ET6)15質量部を使用した。
(感光体(P−A10)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−A10)を製造した。感光体(P−A1)の製造における第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)25質量部及び第三電子輸送剤としての化合物(ET6)20質量部の代わりに、感光体(P−A10)の製造では、第一電子輸送剤としての化合物(ET2)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)15質量部、第三電子輸送剤としての化合物(ET4)15質量部及び第四電子輸送剤としての化合物(ET6)15質量部を使用した。
(感光体(P−A15)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−A15)を製造した。感光体(P−A1)の製造における第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)25質量部及び第三電子輸送剤としての化合物(ET6)20質量部の代わりに、感光体(P−A15)の製造では、第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)15質量部、第三電子輸送剤としての化合物(ET6)15質量部及び第四電子輸送剤としての化合物(ET7)15質量部を使用した。
(感光体(P−A16)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−A16)を製造した。感光体(P−A1)の製造における第一電子輸送剤としての化合物(ET1)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)25質量部及び第三電子輸送剤としての化合物(ET6)20質量部の代わりに、感光体(P−A16)の製造では、第一電子輸送剤としての化合物(ET2)10質量部、第二電子輸送剤としての化合物(ET3)15質量部、第三電子輸送剤としての化合物(ET6)15質量部及び第四電子輸送剤としての化合物(ET7)15質量部を使用した。
(感光体(P−B1)〜(P−B4)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−B1)〜(P−B4)の各々を製造した。第一電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET1)から、表2に示す種類の第一電子輸送剤に変更した。第一電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における10質量部から、表2に示す第一電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。第二電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET3)から、表2に示す種類の第二電子輸送剤に変更した。第二電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における25質量部から、表2に示す第二電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。感光体(P−B1)〜(P−B4)の各々の製造では、第三電子輸送剤を添加しなかった。
(感光体(P−B5)〜(P−B8)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−B5)〜(P−B8)の各々を製造した。第一電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET1)から、表2に示す種類の第一電子輸送剤に変更した。第一電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における10質量部から、表2に示す第一電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。第二電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における25質量部から、表2に示す第二電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。
(感光体(P−C1)〜(P−C4)及び(P−D1)〜(P−D3)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−C1)〜(P−C4)及び(P−D1)〜(P−D3)の各々を製造した。正孔輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(HT1)から、化合物(HT2)に変更した。第一電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET1)から、表3に示す種類の第一電子輸送剤に変更した。第一電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における10質量部から、表3に示す第一電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。第二電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET3)から、表3に示す種類の第二電子輸送剤に変更した。第二電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における25質量部から、表3に示す第二電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。感光体(P−C1)〜(P−C4)、(P−D2)及び(P−D3)の製造では、第三電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET6)から、表3に示す種類の第三電子輸送剤に変更した。感光体(P−C1)〜(P−C4)、(P−D2)及び(P−D3)の製造では、第三電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における20質量部から、表3に示す第三電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。感光体(P−D1)の製造では、第三電子輸送剤を添加しなかった。
(感光体(P−E1)〜(P−E4)及び(P−F1)〜(P−F3)の製造)
次の点を変更した以外は、感光体(P−A1)の製造と同様の方法で、感光体(P−E1)〜(P−E4)及び(P−F1)〜(P−F3)の各々を製造した。正孔輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(HT1)から、化合物(HT3)に変更した。第一電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET1)から、表4に示す種類の第一電子輸送剤に変更した。第一電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における10質量部から、表4に示す第一電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。第二電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET3)から、表4に示す種類の第二電子輸送剤に変更した。第二電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における25質量部から、表4に示す第二電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。感光体(P−E1)〜(P−E4)、(P−F2)及び(P−F3)の製造では、第三電子輸送剤の種類を、感光体(P−A1)の製造における化合物(ET6)から、表4に示す種類の第三電子輸送剤に変更した。感光体(P−E1)〜(P−E4)、(P−F2)及び(P−F3)の製造では、第三電子輸送剤の添加量(含有量)を、感光体(P−A1)の製造における20質量部から、表4に示す第三電子輸送剤の添加量(含有量)に変更した。感光体(P−F1)の製造では、第三電子輸送剤を添加しなかった。
<転写メモリー抑制の評価>
製造した感光体(P−A1)〜(P−A16)、(P−B1)〜(P−B8)、(P−C1)〜(P−C4)、(P−D1)〜(P−D3)、(P−E1)〜(P−E4)及び(P−F1)〜(P−F3)の各々に対して、転写メモリーの発生が抑制されているか否かを評価した。転写メモリーの発生が抑制されているか否かの評価は、温度23℃且つ相対湿度45%RHの環境下で行った。
まず、感光体を評価機に搭載した。評価機として、モノクロプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−1300D」)から除電器及びクリーニングブレードを取り外した改造機を用いた。転写部が印加する転写電流を、−15μAに設定した。感光体の回転速度は140mm/秒であった。評価機に搭載した感光体の動作を安定させるために、アルファベットの画像を連続して1時間印刷した。
続いて、画像A及び画像Bを含む評価用画像を1枚印刷した。画像Aは、黒色(画像濃度100%)の背景に、1個の白色(画像濃度0%)の円型パターンが現された画像であった。画像Aは、感光体の1周目で形成される画像に相当していた。画像Bは、全面ハーフトーン(画像濃度12.5%)の画像であった。画像Bは、感光体の2周目で形成される画像に相当していた。
得られた画像Bを肉眼で観察し、画像Aに由来する画像ゴーストの有無を確認した。また、得られた画像Bを、ルーペ(TRUSCO社製「TL−SL10K」)を用いて倍率10倍で観察し、画像Aに由来する画像ゴーストの有無を確認した。なお、感光体に転写メモリーが発生すると、形成画像に画像ゴースト(特にネガゴースト)が発生する。画像ゴーストは、感光体の1周目で印刷された画像Aの白色の円型パターンに対応する領域が、感光体の2周目で印刷された全面ハーフトーンの画像Bにおいて黒く現れる画像不良である。画像ゴーストの確認結果に基づいて、下記の基準に従って、転写メモリーの発生が抑制されているか否かを評価した。評価結果を、表1〜表4に示す。なお、評価がA又はBである感光体を、転写メモリーの発生が抑制されていると評価した。
(転写メモリー抑制の評価基準)
評価A:画像ゴーストが、肉眼観察でもルーペ観察でも全く確認されなかった。
評価B:画像ゴーストが、肉眼観察では確認されないが、ルーペ観察ではわずかに確認された。
評価C:画像ゴーストが、肉眼観察でわずかに観察された。
評価D:画像ゴーストが、肉眼観察で明確に確認された。
<感光層の結晶化抑制の評価>
製造した感光体(P−A1)〜(P−A16)、(P−B1)〜(P−B8)、(P−C1)〜(P−C4)、(P−D1)〜(P−D3)、(P−E1)〜(P−E4)及び(P−F1)〜(P−F3)の各々に対して、感光層の結晶化が抑制されているか否かを評価した。まず、感光体の感光層の全域を肉眼で観察し、感光層における結晶化した部分の有無を確認した。確認結果に基づいて、下記の基準に従って、感光層の結晶化が抑制されているか否かを評価した。評価結果を、表1〜表4に示す。
(結晶化抑制の評価基準)
○(良好):感光層に結晶化した部分が観察されなかった。
×(不良):感光層に結晶化した部分が観察された。
表1〜表4中、HTM、第一ETM、第二ETM、第三ETM及び第四ETMは、各々、正孔輸送剤、第一電子輸送剤、第二電子輸送剤、第三電子輸送剤及び第四電子輸送剤示す。
表1〜表4中、「METM/MHTM」は、正孔輸送剤の含有量(添加量、単位:質量部)に対する、電子輸送剤の合計含有量(合計添加量、単位:質量部)の比率を示す。METM/MHTMは、下記計算式から算出した。
METM/MHTM=(第一電子輸送剤の含有量+第二電子輸送剤の含有量+第三電子輸送剤の含有量+第四電子輸送剤の含有量)/正孔輸送剤の含有量
表1〜表4中、「METM/MPL」は、感光層の質量(単位:質量部)に対する、電子輸送剤の合計含有量(合計添加量、単位:質量部)の比率を示す。METM/MPLは、下記計算式から算出した。
METM/MPL=(第一電子輸送剤の含有量+第二電子輸送剤の含有量+第三電子輸送剤の含有量+第四電子輸送剤の含有量)/(電荷発生剤の含有量+バインダー樹脂の含有量+正孔輸送剤の含有量+第一電子輸送剤の含有量+第二電子輸送剤の含有量+第三電子輸送剤の含有量+第四電子輸送剤の含有量)
感光体(P−A1)〜(P−A16)、(P−C1)〜(P−C4)及び(P−E1)〜(P−E4)は、導電性基体と感光層とを備えていた。これらの感光体の感光層は、単層であり、電荷発生剤と正孔輸送剤と3種以上の電子輸送剤とを含有していた。これらの感光体において、正孔輸送剤の含有量に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量の比率は、1.1以上1.5以下であった。そのため、表1、表3及び表4から明らかなように、これらの感光体では、結晶化抑制の評価が良好(○)であり、感光層の結晶化が抑制されていた。また、これらの感光体では、転写メモリー抑制の評価がA又はBであり、転写メモリーの発生が抑制されていた。
一方、感光体(P−B1)〜(P−B4)、(P−D1)及び(P−F1)の感光層は、3種以上の電子輸送剤を含有していなかった。そのため、表2、表3及び表4に示すように、感光体(P−B1)〜(P−B4)、(P−D1)及び(P−F1)では、結晶化抑制の評価が不良(×)であり、感光層に結晶化した部分が確認された。また、感光体(P−B1)〜(P−B4)、(P−D1)及び(P−F1)では、転写メモリー抑制の評価がCであり、転写メモリーが発生していた。
感光体(P−B5)、(P−B6)、(P−D2)及び(P−F2)では、正孔輸送剤の含有量に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量の比率が1.1未満であった。そのため、表2、表3及び表4に示すように、感光体(P−B5)、(P−B6)、(P−D2)及び(P−F2)では、転写メモリー抑制の評価がDであり、転写メモリーが発生していた。
感光体(P−B7)、(P−B8)、(P−D3)及び(P−F3)では、正孔輸送剤の含有量に対する3種以上の電子輸送剤の合計含有量の比率が1.5を超えていた。そのため、表2、表3及び表4に示すように、感光体(P−B7)、(P−B8)、(P−D3)及び(P−F3)では、結晶化抑制の評価が不良(×)であり、感光層に結晶化した部分が確認された。
以上のことから、本発明に係る感光体は、感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立できることが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、感光層の結晶化の抑制及び転写メモリーの発生の抑制を両立できることが示された。