以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて、本発明を実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
<第一実施形態:電子写真感光体>
第一実施形態は、電子写真感光体(以下、単に「感光体」と記載する場合がある)に関する。以下、図1を参照して、本実施形態の電子写真感光体について説明する。
感光体1は、導電性基体2上に直接又は間接に設けられた感光層3を備える。感光層3は、少なくとも電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を同一層に含有する。
感光層3には、電荷発生剤として、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体が含有される。感光層3には、正孔輸送剤として、上述の式(1)で表される化合物のうちの1種以上が含有される。
感光体1に備えられる感光層3は、電荷発生剤として、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体を含有する。更に、感光層3は、n型顔料を含有する。これにより、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の感光層3中での分散性が向上する傾向にある。また、感光層3には、正孔輸送剤として、上述の式(1)で表される化合物のうちの1種以上が含有される。式(1)で表される化合物は、溶剤への溶解性が高い傾向にある。フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体、n型顔料、及び式(1)で表される化合物を組み合わせて使用することにより、密度が高く均質な感光層3が形成され易くなる。その結果、電荷発生剤と正孔輸送剤との接触面積を大きくできると考えられる。接触面積が大きくなることにより、電荷発生剤から正孔輸送剤への電荷注入性(電荷の受け取り易さ)が向上する。更に、式(1)で表される化合物(正孔輸送剤)は電荷保持率が高い傾向にあるため、電荷注入性の向上と相まって、電荷トラップを抑制し易くなる。その結果、感光体1を酸化性物質(例えば、オゾン)又は窒素酸化物(例えば、NOX)のガスに曝された状態で使用する場合の感光体1の表面の帯電電位の安定性(耐ガス性)を向上させることができる。また、感光体1を繰り返し使用する場合の感光体1の表面の帯電電位の安定性(繰り返し特性)を向上させることができる。
感光層3は、導電性基体2上に直接又は間接に設けられる。例えば、図1(a)に示すように、導電性基体2上に感光層3が直接備えられていてもよい。あるいは、図1(b)に示すように、導電性基体2と感光層3との間に適宜な中間層4が備えられていてもよい。また、図1(a)及び図1(b)に示すように、感光層3が最外層として露出していてもよい。あるいは、図1(c)に示すように、感光層3上に保護層5が適宜に備えられていてもよい。
感光体1の感光層3の厚さは、感光層として充分に作用することができる限り、特に限定されない。感光層3の厚さは、例えば5μm以上100μm以下であり、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
以下、導電性基体2、及び感光層3について説明する。更に、感光体1に備えられてもよい中間層4について説明する。
[1.導電性基体]
導電性基体2は、感光体1の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2としては、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成される導電性基体を用いることができる。導電性基体2としては、例えば、導電性を有する材料で構成される導電性基体;及びプラスチック材料が導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体2の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。例えば、シート状の導電性基体、又はドラム状の導電性基体を使用することができる。また、導電性基体2の厚みは、導電性基体2の形状に応じて、適宜選択することができる。
[2.感光層]
感光体1が備える感光層3は、少なくとも電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を同一層に含有する。以下、感光層3に含まれる、電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂について説明する。また、感光層3に必要に応じて含まれてもよい添加剤について説明する。
[2−1.フタロシアニン又はその誘導体]
感光層3は、電荷発生剤として、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体を含有する。フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体と、後述するn型顔料とが含有されることにより、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の感光層3中での分散性を向上させ易くなる。
フタロシアニンとしては、例えば、下記式(X−H2Pc)で表されるX型無金属フタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、例えば、下記式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニン結晶、及び酸化チタン以外の金属が配位したフタロシアニン結晶(例えば、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニン)が挙げられる。このようなフタロシアニン又はフタロシアニン誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
感光層3に含有されるチタニルフタロシアニンの結晶型は、Y型、α型、及びβ型の何れであってもよい。また、感光層3は、電荷発生剤として、互いに異なる結晶型を有する複数種のチタニルフタロシアニン結晶を含有していてもよい。ただし、感光層3が安定して優れた電気特性を有するためには、感光層3が、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有するY型チタニルフタロシアニン結晶を含有することが好ましい。なお、CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークに相当する。
以下、α型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンの結晶を説明する。
(α型チタニルフタロシアニン結晶)
α型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の7.4°、及び28.6°にピークを有する。
(β型チタニルフタロシアニン結晶)
β型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の26.2°にピークを有する。
(Y型チタニルフタロシアニン結晶)
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。このようなY型チタニルフタロシアニン結晶は、示差走査熱量分析(DSC)スペクトルにおける熱特性(詳しくは、次に示す熱特性(A)〜(C))の違いによって3種類に分類される。
(A)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
(B)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有さない。
(C)DSCによる熱特性において、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
以下、CuKα特性X線回折スペクトルにおいてブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有するY型チタニルフタロシアニン結晶のうち、熱特性(A)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶を「Y型チタニルフタロシアニン(A)」と、熱特性(B)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶を「Y型チタニルフタロシアニン(B)」と、熱特性(C)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶を「Y型チタニルフタロシアニン(C)」と、それぞれ記載する。
Y型チタニルフタロシアニン(A)〜(C)はそれぞれ、波長領域700nm以上で高い量子収率を有し、電荷発生能に優れると考えられる。
Y型チタニルフタロシアニン(B)及び(C)はそれぞれ、結晶安定性に優れており、有機溶媒中で結晶転移を起こしにくく、感光層3中に分散し易い。
<CuKα特性X線回折スペクトル>
チタニルフタロシアニンの結晶構造は、CuKα特性X線回折スペクトルで示される光学特性に基づいて推定することができる。以下、CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法の一例について説明する。
試料(チタニルフタロシアニン結晶)をX線回折装置(例えば、理学電機株式会社製「RINT 1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角:3°、ストップ角:40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。また、α型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の28.6°にピークを有する。また、β型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の26.2°にピークを有する。
図2は、本実施形態に係る感光体1において用いられるチタニルフタロシアニン結晶の一例のCuKα特性X線回折スペクトルチャートである。図4は、本実施形態に係る感光体1において用いられるチタニルフタロシアニン結晶の別の例のCuKα特性X線回折スペクトルチャートである。なお、図2、及び図4において、横軸はブラッグ角2θ(°)を示し、縦軸は強度(cps)を示す。図2、及び図4のスペクトルチャートから、測定されたチタニルフタロシアニンの結晶型が各々主にY型であることを推定できる。
<示差走査熱量分析スペクトル>
チタニルフタロシアニンの結晶構造は、示差走査熱量分析スペクトルで示される熱的特性に基づいて推定することができる。以下、示差走査熱量分析スペクトルの測定方法の一例について説明する。
サンプルパンにチタニルフタロシアニン結晶粉末の評価用試料を載せて、示差走査熱量計(例えば、理学電機株式会社製「TAS−200型 DSC8230D」)を用いて示差走査熱量分析スペクトルを測定する。測定範囲は、例えば40℃以上400℃以下であり、昇温速度は、例えば20℃/分である。
Y型チタニルフタロシアニン(B)は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有さない。
Y型チタニルフタロシアニン(C)は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲にピーク(例えば、1つのピーク)を有する。
Y型チタニルフタロシアニン(A)は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有する。
図3は、本実施形態に係る感光体1において用いられるチタニルフタロシアニン結晶の一例の示差走査熱量分析スペクトルチャートである。具体的には、図2のCuKα特性X線回折スペクトルチャートで示されるチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析スペクトルチャートである。なお、図3において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は熱流束(mcal/秒)を示す。図3のスペクトルチャートでは、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークが観察されない。従って、測定されたチタニルフタロシアニン結晶が主にY型チタニルフタロシアニン(B)であることを推定できる。
図5は、本実施形態に係る感光体1において用いられるチタニルフタロシアニン結晶の別の例の示差走査熱量分析スペクトルチャートである。具体的には、図4のCuKα特性X線回折スペクトルチャートで示されるチタニルフタロシアニン結晶の示差走査熱量分析スペクトルチャートである。なお、図5において、横軸は温度(℃)を示し、縦軸は熱流束(mcal/秒)を示す。図5のスペクトルチャートでは、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークが観察されず、296℃(270℃以上400℃以下の範囲)に1つのピークが観察される。従って、測定されたチタニルフタロシアニン結晶が主にY型チタニルフタロシアニン(C)であることを推定できる。
<チタニルフタロシアニン結晶の合成方法>
次に、チタニルフタロシアニン結晶の合成方法について説明する。Y型チタニルフタロシアニン(B)の合成方法の一例を、以下に示す。
まず、次に示す反応式(R−1)又は(R−2)により、チタニルフタロシアニン化合物を合成する。反応式(R−1)及び(R−2)中、Yはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、又はニトロ基を表し、eは0以上4以下の整数を表し、Rはアルキル基を表し、baseは塩基を表す。
反応式(R−1)では、フタロニトリル又はその誘導体と、チタンアルコキシドとを反応させることで、チタニルフタロシアニン化合物を合成する。反応式(R−2)では、1,3−ジイミノインドリン又はその誘導体と、チタンアルコキシドとを反応させることで、チタニルフタロシアニン化合物を合成する。
続けて、顔料化前処理を行う。詳しくは、反応式(R−1)又は(R−2)により得られたチタニルフタロシアニン化合物を水溶性有機溶媒に加え、混合液を加熱しながら一定時間攪拌する。その後、攪拌時よりも低温の条件下で、混合液を一定時間静置して安定化する。
上記顔料化前処理では、例えば、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール等)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオン酸、酢酸、N−メチルピロリドン、及びエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の水溶性有機溶媒を使用できる。なお、水溶性有機溶媒に、少量の非水溶性有機溶媒を添加してもよい。顔料化前処理における攪拌は、一定の温度(例えば、70℃以上200℃以下から選ばれる所定の温度)の条件下で1時間以上3時間以下行われることが好ましい。攪拌後の安定化処理は、一定の温度条件下で5時間以上10時間以下行われることが好ましい。安定化処理時の混合液の温度は、10℃以上50℃以下であることが好ましく、22℃以上24℃以下であることがより好ましい。
続けて、水溶性有機溶媒を乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を得る。続けて、得られた粗結晶を、常法に従って溶媒に溶解させた後、貧溶媒中に滴下して再結晶化させる。その後、ろ過、水洗、ミリング処理、ろ過、及び乾燥の各工程を経て、チタニルフタロシアニン化合物を顔料化する。その結果、Y型チタニルフタロシアニン(B)が得られる。
再結晶化のための貧溶媒としては、例えば、水、アルコール類(より具体的には、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール等)、及び水溶性有機溶媒(より具体的には、アセトン又はジオキサン等)からなる群より選択される1種以上を使用できる。
ミリング処理は、水洗後の固形物を、乾燥させずに水を含む状態のまま非水系溶媒中に分散させた後、分散液を攪拌する処理である。粗結晶を溶解させる溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(より具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、臭化エチル、又は臭化ブチル等)、トリハロ酢酸類(より具体的には、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、又はトリブロモ酢酸等)、及び硫酸からなる群より選択される1種以上を使用できる。ミリング処理のための非水系溶媒としては、例えば、クロロベンゼン又はジクロロメタンのようなハロゲン系溶媒を使用できる。
なお、Y型チタニルフタロシアニン(B)は、以下の方法で合成することもできる。
上記顔料化前処理後、水溶性有機溶媒を乾燥して得たチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶を、アシッドペースト法によって処理する。具体的には、上記粗結晶を酸に溶解させて、得られた溶液を、氷冷下の水中に滴下する。その後、溶液を22℃以上24℃以下の温度条件下で一定時間攪拌して、液中でチタニルフタロシアニン化合物を再結晶化させて、低結晶性チタニルフタロシアニン化合物を得る。なお、アシッドペースト法に使用する酸としては、例えば、濃硫酸又はスルホン酸が好ましい。
続けて、得られた低結晶性チタニルフタロシアニン化合物をろ過し、得られた固形物を水洗する。その後、前述のミリング処理を行う。ミリング処理後、固形物のろ別及び乾燥を行うことで、Y型チタニルフタロシアニン(B)が得られる。
[2−2.n型顔料]
感光層3は、n型顔料を含有する。
以下、n型顔料について説明する。顔料は、n型顔料とp型顔料とに大別される。n型顔料は、主たる電荷キャリアが電子である顔料である。p型顔料は主たる電荷キャリアが正孔である顔料である。
n型顔料としては、例えば、ペリレン顔料、及びアゾ顔料が挙げられる。
以下、n型顔料として使用されるペリレン顔料について説明する。ペリレン顔料は、例えば、電子写真感光体に使用される化合物であり、下記式(P−I)で表されるペリレン骨格を有する化合物である。
式(P−I)中、X及びYは、各々独立して、2価の有機基を表す。
ペリレン顔料として好ましくは、下記式(P−II)で表される化合物が挙げられる。
式(P−II)中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、又は1価の有機基を表し、Zは酸素原子又は窒素原子を表す。
式(P−II)中、R1及びR2の好適な例としては、水素原子、脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、及び置換基を有してもよい複素環基が挙げられる。複素環基が含むヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
R1及びR2が脂肪族炭化水素基である場合、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はこれらを組み合わせた構造の何れであってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、飽和であることが好ましい。
脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状である場合、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1以上10以下の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数1以上6以下の脂肪族炭化水素基が特に好ましく、炭素数1以上4以下の脂肪族炭化水素基が最も好ましい。直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基が挙げられる。なかでも好ましくは、メチル基である。
脂肪族炭化水素基が環状である場合、環状の脂肪族炭化水素基としては、炭素数3以上10以下の環状脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数5以上8以下の環状脂肪族炭化水素基がより好ましい。環状脂肪族炭化水素基の好適な具体例としては、シクロヘキシル基、及びシクロペンチル基が挙げられる。
R1及びR2がアラルキル基である場合、アラルキル基としては、炭素数7以上12以下のアラルキル基が好ましい。アラルキル基の好適な具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、及びβ−ナフチルメチル基が挙げられる。
R1及びR2がアリール基である場合、アリール基としては、単環式アリール基、及び縮合環式アリール基が挙げられる。アリール基が縮合環式アリール基である場合、縮合環式アリール基は少なくとも1つのベンゼン環を含む。縮合環式アリール基の結合手は、ベンゼン環に結合している。縮合環式アリール基中の縮合環を構成する環の数は3以下であることが好ましい。縮合環式アリール基において、結合手を有するベンゼン環と縮合する環は、芳香族環であっても、脂肪族環であってもよい。縮合環式アリール基において、結合手を有するベンゼン環と縮合する環は、4員以上8員以下の環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。アリール基としては、例えば、炭素数6以上14以下のアリール基(例えば、単環、又は縮合環)を挙げることができる。単環のアリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。縮合環のアリール基としては、例えば、二環(例えば、ナフチル基、インデニル基、又は1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基)、三環(例えば、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、又はアセナフチレニル基)を挙げることができる。なかでも好ましくは、フェニル基である。
R1及びR2が複素環基である場合、複素環は、単環であっても縮合環であってもよい。また、複素環基は、脂肪族基であっても芳香族基であってもよい。複素環基が、縮合環である場合、縮合環を構成する環の数は3以下であることが好ましい。複素環基において、縮合環を構成する環は、4員以上8員以下の環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。
複素環基に含まれる複素環の好適な具体例としては、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアゾール、テトラゾール、インドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾロン、及びフタルイミドが挙げられる。
R1及びR2が、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である場合、これらの基に含まれる環式基は置換基を有してもよい。置換基の例としては、炭素数1以上6以下のアルキル基(好ましくは、メチル基)、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
ペリレン顔料の別の好ましい例としては、下記式(P−III)で表される化合物が挙げられる。
式(P−III)中、R3〜R6は、各々独立して、水素原子、又は1価の有機基である。R3とR4とは、又はR5とR6とは、それぞれ結合して環を形成してもよい。
式(P−III)中、R3〜R6の好適な例としては、水素原子、脂肪族炭化水素基、アラルキル基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。複素環基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子が挙げられる。
R3〜R6が、脂肪族炭化水素基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である場合、R1及びR2について説明した基と同様の基が好ましい。R3〜R6が、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である場合、これらの基に含まれる環式基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及びニトロ基が挙げられる。
R3とR4とは、又はR5とR6とは、それぞれ結合して環を形成してもよい。R3とR4とが、又はR5とR6とが結合して形成される環は、芳香族環でも脂肪族環でもよく、炭化水素環でも、複素環でもよい。R3とR4とが、又はR5とR6とが結合して形成される環の好適な例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、及びテトラヒドロナフタレン環が挙げられる。
ペリレン顔料の好適な具体例としては、下記式(P1)〜(P17)で表される化合物が挙げられる。式(P5)中のピリジル基、及び式(P12)中のフルオロ基の置換位置は特に限定されず、何れの置換位置に置換基を有する化合物も好適に用いることができる。
次に、n型顔料として使用されるアゾ顔料について説明する。アゾ顔料は、電子写真感光体に使用される化合物であり、その構造中にアゾ基(−N=N−)を含む化合物である限り、特に限定されない。
アゾ顔料は、モノアゾ顔料、及びポリアゾ顔料(例えば、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、及びテトラキスアゾ顔料)の何れも使用することができる。また、アゾ顔料は、アゾ基を有する化合物の互変異性体であってもよい。また、アゾ基を有する化合物は塩素原子で置換されていてもよい。
アゾ顔料としては、例えば、公知のアゾ顔料を使用することができる。アゾ顔料として好ましくは、ピグメントイエロー(14、17、49、65、73、83、93、94、95、128、166、及び77)、ピグメントオレンジ(1、2、13、34、及び36)、及びピグメントレッド(30、32、61、及び144)が挙げられる。
アゾ顔料の好適な具体例としては、下記式(A1)で表される化合物(ピグメントイエロー128)、下記式(A2)で表される化合物(ピグメントイエロー93)、下記式(A3)で表される化合物(ピグメントオレンジ13)、及び下記式(A4)で表される化合物(ピグメントイエロー83)が挙げられる。
n型顔料の含有量は、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の1質量部に対して、0.03質量部以上3質量部以下である。n型顔料の含有量がフタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の含有量に対して過小であると、分散性の向上に十分な効果が得られ難い。n型顔料の含有量がフタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の含有量に対して過大であると、電荷発生又は電荷注入性を阻害し易い。
感光体1の表面の帯電電位の安定性の観点から、感光層3には、n型顔料として、上述のペリレン顔料、及び上述のアゾ顔料からなる群より選択される1種以上が含有されることが好ましい。
なお、n型顔料は、ペリレン顔料、及びアゾ顔料以外のn型顔料であってもよい。ペリレン顔料、及びアゾ顔料以外のn型顔料としては、例えば、多環キノン系顔料、スクアリリウム系顔料、ピランスロン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キナクドリン系顔料、ピラゾロン系顔料、及びベンズイミダゾロン系顔料のような公知の有機顔料が挙げられる。より具体的には、下記式(B1)で表される化合物(ピグメントイエロー110)、下記式(B2)で表される化合物(ピグメントイエロー139)、及び下記式(B3)で表される化合物(ピグメントレッド209)が挙げられる。
感光層3には、2種以上のn型顔料が含有されることがより好ましい。これにより、n型顔料、及びフタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の感光層3中での分散性を向上させ易くなり、電荷トラップを抑制し易くなる。
なお、効果を阻害しない範囲内で、n型顔料以外に、更に別の顔料が感光層3に含有されていてもよい。別の顔料としては、例えば、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料の粉末(具体的には、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。
感光体1において、電荷発生剤とn型顔料との合計含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
[2−3.電子輸送剤]
感光層3は、電子輸送剤を含む。これにより、感光層3は電子を輸送することができ、感光層3にバイポーラー(両極性)の特性を付与し易くなる。
電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物(例えば、ナフトキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アゾキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、又はジニトロアントラキノン系化合物)、ジイミド系化合物(例えば、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体)、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、又はジブロモ無水マレイン酸が挙げられる
上述のキノン系化合物の具体例としては、下記式(ETM−1)、(ETM−2)、及び(ETM−4)で表される化合物が挙げられる。
上述のジイミド系化合物の具体例としては、下記式(ETM−3)で表される化合物が挙げられる。
上述のヒドラゾン系化合物の具体例としては、下記式(ETM−5)で表される化合物が挙げられる。
このような電子輸送剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
感光体1において、電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
[2−4.正孔輸送剤]
感光層3は、正孔輸送剤として、下記式(1)で表される化合物のうちの1種以上を含有する。式(1)で表される化合物は、電荷保持率が高く、感光体1の表面の帯電電位が安定化する傾向にある。
式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、各々独立して、置換基を有してもよいアリール基を表す。Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、何れも、フェニルエテニル基を有するアリール基ではない。Ar5は、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。n1は、1以上5以下の整数である。
式(1)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は、各々独立して、置換基を有してもよいアリール基を表す。Ar1、Ar2、Ar3及びAr4は同一であっても異なっていてもよい。アリール基としては、例えば、炭素数6以上14以下のアリール基(例えば、単環、又は縮合環)を挙げることができる。単環のアリール基としては、例えば、フェニル基を挙げることができる。縮合環のアリール基としては、例えば、二環のアリール基(例えば、ナフチル基)、及び三環のアリール基(例えば、アントリル基、又はフェナントリル基)を挙げることができる。これらのうち、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。
アリール基は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、又はヨード基、好ましくはクロロ基)、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルファニル基、カルバモイル基、炭素数1以上12以下のアルキル基(好ましくは、炭素数1以上6以下のアルキル基)、炭素数1以上12以下のアルコキシ基(好ましくは、炭素数1以上6以下のアルコキシ基)、炭素数2以上12以下のアルケニル基、炭素数7以上20以下のアラルキル基、炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキルスルファニル基、炭素数1以上12以下のアルキルスルホニル基、炭素数1以上12以下のアルカノイル基、炭素数1以上12以下のアルコキシカルボニル基、炭素数6以上14以下のアリール基(例えば、単環、二環縮合環、又は三環縮合環)、及び6員以上14員以下の複素環基(例えば、単環、二環縮合環、又は三環縮合環)を挙げることができる。アリール基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
置換基の立体構造を適宜選択することにより、正孔輸送剤が形成するスタッキング構造の面間距離を調整することができる。更に、置換基の立体構造を適宜選択することにより、正孔輸送剤の溶剤への溶解性を調整することができる。
アリール基が有してもよい置換基として好ましくは、炭素数1以上6以下のアルキル基、及び炭素数1以上6以下のアルコキシ基からなる群より選択される置換基が挙げられる。このような置換基をアリール基が有すると、正孔輸送剤が感光層中でスタッキング構造を形成し易いため、耐ガス性(特に、耐オゾン性)及び繰り返し特性を向上させ易い。
炭素数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。炭素数1以上6以下のアルキル基として好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、及びn−ブチル基が挙げられる。
炭素数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基が挙げられる。炭素数1以上6以下のアルコキシ基として好ましくは、メトキシ基が挙げられる。
アリール基が置換基を有する場合、置換基の置換位置は特に制限されない。例えば、アリール基がフェニル基である場合、フェニル基が結合する窒素原子に対して、フェニル基のオルト位(o位)、メタ位(m位)、及びパラ位(p位)の何れにも置換することができる。
式(1)中、Ar5は、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。アリーレン基としては、例えば、炭素数6以上14以下のアリーレン基(例えば、単環、又は縮合環)を挙げることができる。単環のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基を挙げることができる。縮合環のアリーレン基としては、例えば、二環アリーレン基(例えば、ナフチレン基)、及び三環アリーレン基(例えば、アントリレン基、又はフェナントリレン基)を挙げることができる。これらのうち、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基が好ましい。
アリーレン基は、置換基を有してもよい。アリーレン基の置換基としては、上述のアリール基の置換基と同様の置換基が挙げられる。アリーレン基が有してもよい置換基として好ましくは、炭素数1以上6以下のアルキル基、及び炭素数6以上14以下のアリール基からなる群より選択される置換基が挙げられ、より好ましくはメチル基、及びフェニル基が挙げられる。
n1はAr5で表される置換基を有してもよいアリーレン基の数を表す。n1は、1以上5以下の整数を表し、1以上4以下の整数を表すことが好ましく、1以上3以下の整数を表すことがより好ましい。n1が6以上の整数であると、式(1)で表される化合物の溶剤への溶解性の確保が困難となるため、感光層3の耐ガス性及び繰り返し特性が低下し易い。
n1が2以上の整数を表す場合、複数のアリーレン基は同一であっても異なってもよい。例えば、n1が2を表し、複数のAr5がすべてフェニレン基を表す場合、式(1)中の−(Ar5)n1−は、ビフェニリレン基となる。また、n1が3を表し、複数のAr5がすべてフェニレン基を表す場合、−(Ar5)n1−は、ターフェニレン基となる。
式(1)中、−(Ar5)n1−で表される部位として好ましくは、ナフチレン基(Ar5がナフチレン基、n1が1)、アントリレン基(Ar5がアントリレン基、n1が1)、フェナントリレン基(Ar5がフェナントリレン基、n1が1)、及びターフェニリレン基(Ar5がフェニレン基、n1が3)が挙げられる。なかでも好ましくはアントリレン基、フェナントリレン基、又はターフェニリレン基であり、より好ましくはターフェニリレン基であり、特に好ましくはp−ターフェニリレン基である。
正孔輸送剤として、式(1)で表される化合物のうちの2種以上が感光層3に含有されることが好ましく、式(1)で表される化合物のうちの3種以上が感光層3に含有されることがより好ましい。式(1)で表される化合物のうちの2種以上が使用される場合、式(1)で表される化合物とバインダー樹脂との相溶性が向上する傾向にある。また、バインダー樹脂が芳香環を有する場合には、式(1)で表される化合物のうちの2種以上を使用することにより、式(1)で表される化合物とバインダー樹脂とのスタッキング性が向上し、感光層3の密度が高くなる傾向にある。その結果、耐ガス性及び繰り返し特性が向上できると考えられる。
正孔輸送剤として含有される上述の式(1)で表される化合物の具体例としては、実施例で後述する表1〜表3に示す、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−26)が挙げられる。
感光層3は、効果を阻害しない範囲内で、正孔輸送剤として、式(1)で表される化合物以外に、更に別の正孔輸送剤を含有してもよい。別の正孔輸送剤としては、公知の正孔輸送剤を適宜選択することができる。別の正孔輸送剤として成膜性を有する正孔輸送剤(例えば、ポリビニルカルバゾール)を用いる場合には、バインダー樹脂の役割をも同時に担うため、バインダー樹脂の含有量を減少させてもよい。
感光体1において、正孔輸送剤の合計含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
[2−5.バインダー樹脂]
バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、又はウレタン−アクリレート共重合体が挙げられる。
これらの樹脂の中では、加工性、機械的特性、光学的特性、及び/又は耐摩耗性のバランスに優れた感光層3が得られることから、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールB型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールCZ型ポリカーボネート樹脂、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂、及びビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ポリカーボネート樹脂としてより具体的には、下記式(Resin−1)で表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
式(Resin−1)中、R7、及びR8は、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。R7、及びR8としては、水素原子が好ましい。
R7、及びR8において、炭素数1以上3以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられ、好ましくはメチル基が挙げられる。
R3、及びR4において、炭素数1以上3以下のアルキル基は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基)、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルファニル基、カルバモイル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数3以上12以下のシクロアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキルスルファニル基、炭素数1以上12以下のアルキルスルホニル基、炭素数1以上12以下のアルカノイル基、炭素数1以上12以下のアルコキシカルボニル基、及び炭素数6以上14以下のアリール基を挙げることができる。
これらのバインダー樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダー樹脂の分子量は、粘度平均分子量で20000以上であることが好ましく、20000以上65000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の分子量が低過ぎると、感光層3を密に形成しにくく、耐ガス性及び繰り返し特性を向上させにくい。更に、バインダー樹脂の分子量が低過ぎると、バインダー樹脂の耐摩耗性を十分に高めることができず、感光層3が摩耗し易くなる。また、バインダー樹脂の分子量が高過ぎると、感光層3の形成時にバインダー樹脂が溶剤に溶解しにくくなり、塗布液の粘度が高くなり過ぎるため、感光層3の形成が困難になる傾向がある。
[2−6.添加剤]
本実施形態の感光体1においては、感光層3、中間層4、及び保護層5のうちの少なくとも一つが、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、及びレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、BHT(ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物、及び有機燐化合物が挙げられる。
[3.中間層]
本実施形態の感光体1は、中間層4(例えば、下引き層)を有してもよい。中間層は、導電性基体2と感光層3との間に位置する。中間層4は、例えば、無機粒子、及び中間層4に用いられる樹脂(中間層4用樹脂)を含有する。中間層4の存在により、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体1を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑えることができる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、又は酸化亜鉛)の粒子、又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層4用樹脂は、中間層を形成する樹脂として用いることができる樹脂である限り、特に限定されない。
なお、本実施形態の感光体1は、第二実施形態で後述する製造方法で製造することができる。
以上、図1を参照して、本実施形態の電子写真感光体を説明した。本実施形態の電子写真感光体によれば、感光体を酸化性物質(例えば、オゾン)又は窒素酸化物(例えば、NOX)のガスに曝された状態で使用する場合であっても、繰り返し使用する場合であっても、感光体表面の帯電電位の安定性を向上させることができる。このため、本実施形態の電子写真感光体は、種々の画像形成装置において、像担持体として好適に使用できる。
<第二実施形態:電子写真感光体の製造方法>
以下、図1を引き続き参照して、本実施形態の電子写真感光体の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、第一実施形態の感光体1の製造方法である。本実施形態の製造方法は、感光層形成工程を含む。本実施形態の製造方法は、感光層形成工程に加えて、必要に応じて、塗布液調製工程を更に含んでいてもよい。以下、塗布液調製工程、感光層形成工程について説明する。
[1.塗布液調製工程]
塗布液調製工程では、溶剤に、少なくとも電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を添加することにより塗布液(感光層3用の塗布液)を調製する。溶剤には、必要に応じて各種の添加剤を添加してもよい。
塗布液に含有される溶剤は、テトラヒドロフラン及びトルエンのうちの少なくとも1種を含むことができる。このような溶剤を使用することにより、電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂の塗布液中での溶解性及び/又は分散性が向上する傾向にある。その結果、均質な感光層3が形成され易くなり、感光体1の表面の帯電電位の安定性を向上させ易くなる。
塗布液には、テトラヒドロフラン及びトルエンのうちの少なくとも1種に加えて、更に別の溶剤が含有されてもよい。別の溶剤としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はブタノール)、脂肪族系炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン、又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの別の溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
塗布液調製工程では、続いて、電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂、並びに必要に応じて各種の添加剤を、溶剤と混合して、溶剤に溶解又は分散させてもよい。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散機を用いることができる。塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
[2.感光層形成工程]
感光層形成工程では、塗布液調製工程で得られた、少なくとも電荷発生剤、n型顔料、電子輸送剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂、及び溶剤を含む塗布液を、導電性基体2上に塗布する。塗布液を塗布する方法は、塗布液を導電性基体2上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
続いて、導電性基体2上に塗布された塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して、感光層3を形成する。感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法は、感光層用塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法である限り、特に限定されない。溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、及び加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。感光層形成工程では、感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部が除去されてもよい。なお、感光層形成工程後に、感光層3が感光層用塗布液に含有される溶剤(例えば、テトラヒドロフラン及びトルエンのうちの少なくとも1種)を含むことがある。
なお、本実施形態の製造方法は、必要に応じて、中間層4を形成する工程、及び/又は保護層5を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層4を形成する工程、及び保護層5を形成する工程では、公知の方法を適宜選択することができる。
以上、図1を参照して、本実施形態の電子写真感光体の製造方法を説明した。本実施形態の製造方法によれば、均質な感光層が形成され易くなり、感光体の表面の帯電電位の安定性を向上させ易くなる。
<第三実施形態:画像形成装置>
第三実施形態は、画像形成装置に関する。以下、図6を参照して、本実施形態の画像形成装置を説明する。図6は、第一実施形態の感光体1を備える、本実施形態の画像形成装置6の構成を示す概略図である。
画像形成装置6は、像担持体(感光体1に相当)と、帯電部(帯電装置27に相当)と、露光部(露光装置28に相当)と、現像部(現像装置29に相当)と、転写部(一次転写ローラー33に相当)とを備える。帯電部は、像担持体の表面を帯電する。露光部は、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成する。現像部は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部は、トナー像を像担持体から被転写体(中間転写ベルト20に相当)へ転写する。像担持体は、第一実施形態の感光体1である。
画像形成装置6は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置6は、例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、本実施形態の画像形成装置6は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。
以下、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて、画像形成装置6を説明する。画像形成装置6は、所定方向に並設された複数の感光体1(像担持体に相当)と、複数の現像装置29とを備える。複数の現像装置29は、各々、感光体1に対向して配置される。複数の現像装置29は、現像装置29の表面にトナーを担持して搬送する。複数の現像装置29は、各々、現像ローラーを備える。現像ローラーは、搬送されたトナーを、対応する感光体1の表面に供給する。そして、感光体1として、第一実施形態の感光体1を用いることができる。
図6に示すように、画像形成装置6は、箱型の機器筺体7を有している。機器筺体7内には、給紙部8、画像形成部9、及び定着部10が設けられる。給紙部8は、用紙Pを給紙する。画像形成部9は、給紙部8から給紙された用紙Pを搬送しながら、用紙Pに画像データに基づくトナー像を転写する。定着部10は、画像形成部9で用紙P上に転写された未定着のトナー像を、用紙Pに定着させる。更に、機器筺体7の上面には、排紙部11が設けられる。排紙部11は、定着部10で定着処理された用紙Pを排紙する。
給紙部8には、給紙カセット12、第一ピックアップローラー13、給紙ローラー14、15、及び16、並びにレジストローラー対17が備えられる。給紙カセット12は、機器筺体7から挿脱可能に設けられる。給紙カセット12には、各種サイズの用紙Pが貯留される。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12の左上方位置に設けられる。第一ピックアップローラー13は、給紙カセット12に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー14、15、及び16は、第一ピックアップローラー13によって取り出された用紙Pを搬送する。レジストローラー対17は、給紙ローラー14、15、及び16によって搬送された用紙Pを、一時待機させた後に、所定のタイミングで画像形成部9に供給する。
また、給紙部8は、手差しトレイ(不図示)と、第二ピックアップローラー18とを更に備えている。手差しトレイは、機器筺体7の左側面に取り付けられる。第二ピックアップローラー18は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。第二ピックアップローラー18によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー14、15及び16によって搬送され、レジストローラー対17によって、所定のタイミングで画像形成部9に供給される。
画像形成部9には、画像形成ユニット19、中間転写ベルト20、及び二次転写ローラー21が備えられる。中間転写ベルト20には、画像形成ユニット19によって、中間転写ベルト20の表面(一次転写ローラー33との接触面)に、トナー像が一次転写される。なお、一次転写されるトナー像は、コンピューターのような上位装置から伝送された画像データに基づいて形成される。二次転写ローラー21は、中間転写ベルト20上のトナー像を、給紙カセット12から送り込まれた用紙Pに二次転写する。
画像形成ユニット19には、中間転写ベルト20の回転方向における従動ローラー31の上流側(図6では右側)から下流側に向けて、イエロートナー供給用ユニット25、マゼンタトナー供給用ユニット24、シアントナー供給用ユニット23、及びブラックトナー供給用ユニット22が順次配設されている。ユニット22、23、24、及び25には、各ユニットの中央位置に、感光体1(像担持体に相当)が配設されている。感光体1は、矢符(時計回り)方向に回転可能に配設されている。
そして、各感光体1の周囲には、帯電装置27(帯電部に相当)、露光装置28(露光部に相当)、現像装置29(現像部に相当)、一次転写ローラー33(転写部に相当)、及びクリーニング装置(不図示)が、帯電装置27を基準として各感光体1の回転方向上流側から順に配置されている。なお、感光体1については、第一実施形態で詳述した。
感光体1は、矢符(時計回り)方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。感光体1のプロセススピードは、120mm/秒以上に設定することができる。プロセススピードが120mm/秒以上であると、画像形成を高速で行うことができ、画像形成効率を向上させることができる。また、プロセススピードが速い高速プロセスにおいては、酸化性物質(例えば、オゾン)のガス又は窒素酸化物(例えば、NOX)のガスの発生により、感光体の劣化が引き起こされ易い傾向にある。しかし、上述のように、第一実施形態の感光体1は、酸化性物質(例えば、オゾン)のガス又は窒素酸化物(例えば、NOX)のガスの存在下であっても、感光体1の表面の帯電電位の安定性に優れている。そのため、本実施形態の画像形成装置6が第一実施形態の感光体1を備えることにより、プロセススピードが120mm/秒以上であっても、感光体1の劣化を抑制できると考えられる。
帯電装置27(帯電部に相当)は、感光体1(像担持体に相当)の表面を正極性に帯電する。具体的には、帯電装置27は、矢符方向に回転されている感光体1の周面を均一に正極性に帯電する。帯電装置27は、感光体1の周面を均一に正極性に帯電できる限り特に限定されない。帯電装置27は、非接触方式の帯電装置であってもよいし、接触方式の帯電装置であってもよい。帯電装置27としては、例えば、コロナ帯電装置、帯電ローラー、及び帯電ブラシが挙げられる。帯電装置27としては、接触方式の帯電装置(具体的には、帯電ローラー、又は帯電ブラシ)が好ましく、帯電ローラーがより好ましい。接触方式の帯電装置27を使用することにより、帯電装置27から発生するガス(例えば、オゾンのような酸化性物質のガス、又はNOXのような窒素酸化物のガス)の排出を抑制し易くなる。その結果、ガスによる感光層3の劣化が抑制されるとともに、オフィス環境に配慮した設計が達成できると考えられる。
帯電装置27が接触方式の帯電ローラーを備える場合、帯電ローラーは、感光体1と接触したまま、感光体1の周面(表面)を帯電する。このような帯電ローラーとしては、例えば、感光体1と接触したまま、感光体1の回転に従属して回転する帯電ローラーが挙げられる。また、帯電ローラーとしては、例えば、少なくとも表面部が樹脂で構成された帯電ローラーが挙げられる。帯電ローラーとしてより具体的には、例えば、回転可能に軸支された芯金と、芯金上に形成された樹脂層と、芯金に電圧を印加する電圧印加部とを備えた帯電ローラーが挙げられる。このような帯電ローラーを備えた帯電装置27は、電圧印加部が芯金に電圧を印加することによって、樹脂層を介して接触する感光体1の表面を帯電させることができる。
帯電装置27が印加する電圧は、特に限定されない。しかし、帯電装置27が交流電圧を印加する場合、又は直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧を印加する場合よりも、帯電装置27が直流電圧のみを印加することが好ましい。帯電装置27が直流電圧のみを印加する場合、感光層3の磨耗量が減少する傾向があるためである。その結果、好適な画像を形成することができる。帯電装置27が感光体1に印加する直流電圧は、1000V以上2000V以下であることが好ましく、1200V以上1800V以下であることがより好ましく、1400V以上1600V以下であることが特に好ましい。
帯電ローラーの樹脂層を構成する樹脂は、感光体1の周面を良好に帯電させることができる限り特に限定されない。樹脂層を構成する樹脂の具体例としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン変性樹脂が挙げられる。樹脂層には、無機充填材を含有させてもよい。
感光体1の回転方向における帯電装置27の上流側には、除電器(不図示)が設けられてもよい。除電器は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清掃及び除電された感光体1の周面は、帯電装置27へ送られ、新たに帯電処理される。
しかしながら、本実施形態の画像形成装置6は、除電器(除電部に相当)を備えない設計とすることができる。換言すると、本実施形態の画像形成装置6は、除電器を省略した除電レス方式を採用することができる。画像形成装置6が除電レス方式を採用する場合、感光体1は、中間転写ベルト20に転写し終えた領域に、除電を行うことなしに、帯電装置27により再び帯電される。除電レス方式を採用した画像形成装置は、通常、感光体の表面電位が低下し易い。しかし、上述のように、第一実施形態の感光体1は、帯電を繰り返した場合であっても、感光体1の表面の帯電電位の安定性に優れる傾向にある。そのため、本実施形態の画像形成装置6が第一実施形態の感光体1を備えることにより、画像形成装置6が除電器を備えない場合であっても、感光体1の表面電位の低下を抑制できると考えられる。
露光装置28(露光部に相当)は、いわゆるレーザー走査ユニットである。露光装置28は、帯電された感光体1(像担持体に相当)の表面を露光して、感光体1の表面に静電潜像を形成する。具体的には、露光装置28は、帯電装置27によって均一に帯電された感光体1の周面(表面)に、パーソナルコンピューターのような上位装置から入力された画像データに基づくレーザー光を照射する。これにより、感光体1の周面(表面)に、画像データに基づく静電潜像が形成される。
現像装置29(現像部に相当)は、静電潜像をトナー像として現像する。具体的には、現像装置29は、静電潜像が形成された感光体1の周面にトナーを供給し、画像データに基づくトナー像を形成する。そして、形成されたトナー像が中間転写ベルト20に一次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト20へのトナー像の一次転写が終了した後、感光体1の周面に残留しているトナーを清掃する。
中間転写ベルト20は、無端状のベルト回転体である。中間転写ベルト20は、駆動ローラー30、従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33に架け渡されている。複数の感光体1の周面が、各々、中間転写ベルト20の表面(接触面)に当接するように、中間転写ベルト20は配置されている。
また、中間転写ベルト20は、各感光体1に対向して配置される一次転写ローラー33によって、感光体1に押圧される。押圧された状態で、中間転写ベルト20は、複数の一次転写ローラー33によって無端回転する。駆動ローラー30は、ステッピングモーターなどの駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト20を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び複数の一次転写ローラー33は、回転自在に設けられる。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30による中間転写ベルト20の無端回転に伴って、従動回転する。従動ローラー31、バックアップローラー32、及び一次転写ローラー33は、駆動ローラー30の主動回転に応じて中間転写ベルト20を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト20を支持する。
転写部は、トナー像を像担持体から被転写体へ転写する。具体的には、一次転写ローラー33は、一次転写バイアス(具体的には、トナーの帯電極性と逆極性を有するバイアス)を中間転写ベルト20(被転写体に相当)に印加する。その結果、各感光体1上に形成されたトナー像は、各感光体1と一次転写ローラー33との間で、駆動ローラー30の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト20に対して、順次転写(一次転写)される。
二次転写ローラー21は、二次転写バイアス(具体的には、トナー像と逆極性を有するバイアス)を用紙Pに印加する。その結果、中間転写ベルト20上に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー21とバックアップローラー32との間で用紙Pに転写される。これにより、未定着のトナー像が用紙Pに転写される。
定着部10は、画像形成部9で用紙Pに転写された未定着トナー像を定着させる。定着部10は、加熱ローラー34と、加圧ローラー35とを備えている。加熱ローラー34は、通電発熱体により加熱される。加圧ローラー35は、加熱ローラー34に対向配置され、加圧ローラー35の周面が加熱ローラー34の周面に押圧される。
画像形成部9で二次転写ローラー21により用紙Pに転写された転写画像は、用紙Pが加熱ローラー34と加圧ローラー35との間を通過する際の加熱による定着処理により用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部11へ排紙される。また、定着部10と排紙部11との間の適所に、複数の搬送ローラー36が配設されている。
排紙部11は、機器筺体7の頂部が凹没されることによって形成される。凹没した凹部の底部に、排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ37が設けられる。
以上、図6を参照して、本実施形態の画像形成装置について説明した。本実施形態の画像形成装置には、像担持体として、第一実施形態の感光体が備えられている。このような感光体を備えることで、本実施形態の画像形成装置は、感光体表面の帯電電位の低下から引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。
<第四実施形態:プロセスカートリッジ>
第四実施形態は、プロセスカートリッジに関する。本実施形態のプロセスカートリッジは、第一実施形態の電子写真感光体を備える。
プロセスカートリッジは、例えば、ユニット化された第一実施形態の感光体を備えることができる。プロセスカートリッジは、画像形成装置に対して着脱自在に設計されてもよい。プロセスカートリッジには、例えば、感光体以外に、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部、及び除電部からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成を採用することができる。プロセスカートリッジが除電レス方式を採用した画像形成装置で使用される場合は、除電部を省略してもよい。この場合、プロセスカートリッジには、感光体以外に、帯電部、露光部、現像部、転写部、及びクリーニング部からなる群より選択される少なくとも1つをユニット化した構成を採用することができる。ここで、帯電部、露光部、現像部、転写部、クリーニング部、及び除電部は、各々、第三実施形態で上述した、帯電部(帯電装置27に相当)、露光部(露光装置28に相当)、現像部(現像装置29に相当)、転写部(一次転写ローラー33に相当)、クリーニング部(クリーニング装置に相当)、及び除電部(除電器に相当)と同様の構成とすることができる。
以上、本実施形態のプロセスカートリッジについて説明した。本実施形態のプロセスカートリッジは、像担持体として、第一実施形態の感光体を備えている。このような感光体を備えることで、本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に取り付けられた場合に、感光体表面の帯電電位の低下から引き起こされる画像不良の発生を抑制することができる。更に、このようなプロセスカートリッジは取り扱いが容易であるため、感光体の感度特性等が劣化した場合に、感光体を含めて、容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
[1.電子写真感光体の調製]
フタロシアニン又はその誘導体、n型顔料、正孔輸送剤(HTM)、電子輸送剤(ETM)、及びバインダー樹脂を用いて、感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)を調製した。
[1−1.フタロシアニン又はその誘導体]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)の調製には、電荷発生剤として、以下のフタロシアニン又はその誘導体を用いた。具体的には、以下の電荷発生剤(X−H2Pc)、電荷発生剤(Y−TiOPc(A))、電荷発生剤(Y−TiOPc(C))、及び電荷発生剤(Y−TiOPc(B))の何れかを用いた。
電荷発生剤(X−H2Pc):下記式(X−H2Pc)で表されるX型無金属フタロシアニンである。
電荷発生剤(Y−TiOPc(A)):下記式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンであって、上記熱特性(A)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶である。このチタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有し、26.2°にピークを有していなかった。このチタニルフタロシアニン結晶は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有していた。
電荷発生剤(Y−TiOPc(C)):下記式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンであって、前記熱特性(C)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶である。このチタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有し、26.2°にピークを有していなかった。このチタニルフタロシアニン結晶は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上270℃以下の範囲にピークを有さず、270℃以上400℃以下の範囲に1つのピークを有していた。
電荷発生剤(Y−TiOPc(B)):下記式(TiOPc)で表されるチタニルフタロシアニンであって、前記熱特性(B)を有するY型チタニルフタロシアニン結晶である。このチタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有し、26.2°にピークを有していなかった。このチタニルフタロシアニン結晶は、示差走査熱量分析スペクトルにおいて、吸着水の気化に伴うピーク以外に50℃以上400℃以下の範囲にピークを有していなかった。
[1−2.n型顔料]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−3)〜(B−6)の調製には、以下のn型顔料を用いた。具体的には、下記式(A1)〜(A4)、(B1)、及び(P1)〜(P3)で表される化合物のうちの1種以上を用いた。以下、式(A1)〜(A4)、(B1)、及び(P1)〜(P3)で表される化合物を、各々、n型顔料(A1)〜(A4)、(B1)、及び(P1)〜(P3)と記載する場合がある。
[1−3.正孔輸送剤]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)の調製には、以下の正孔輸送剤を用いた。具体的には、正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−26)のうちの1種以上を用いた。正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−26)は、各々、下記式(1)で表される化合物であって、式(1)中のAr1〜Ar5及びn1が下記表1〜3に示される置換基、及び結合である化合物である。
なお、表1〜表3において用いられる記号の意味を以下に示す。
p−:パラ
m−:メタ
Ph−:フェニル
CH3−:メチル
C2H5−:エチル
di(CH3)−:ジメチル
(CH3)2CH−:iso−プロピル
C4H9−:n−ブチル
CH3O−:メトキシ
例えば、表1〜表3中、「p−CH3O−o−CH3−Ph−」は、フェニル基が結合する窒素原子に対して、フェニル基のパラ位にメトキシ基を有し、オルト位にメチル基を有する、p−メトキシ−o−メチルフェニル基を表す。
感光体(B−2)〜(B−6)の調製には、以下の正孔輸送剤を用いた。具体的には、下記式(HTM−A)、(HTM−B)、(HTM−D)、及び(HTM−E)で表される化合物の何れかを用いた。以下、式(HTM−A)、(HTM−B)、(HTM−D)、及び(HTM−E)で表される化合物を、各々、正孔輸送剤(HTM−A)、(HTM−B)、(HTM−D)、及び(HTM−E)と記載する場合がある。
[1−4.電子輸送剤]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)の調製には、以下の電子輸送剤の何れかを用いた。具体的には、下記式(ETM−1)〜(ETM−5)で表される化合物の何れかを用いた。以下、式(ETM−1)〜(ETM−5)で表される化合物を、各々、電子輸送剤(ETM−1)〜(ETM−5)と記載する場合がある。
[1−5.バインダー樹脂]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)の調製には、以下のバインダー樹脂を用いた。具体的には、下記式(Resin−1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量30000)を用いた。以下、式(Resin−1)で表される繰り返し単位を有する樹脂を、バインダー樹脂(Resin−1)と記載する場合がある。
式(Resin−1)中、R7、R8は水素原子を表す。
[1−6.感光体(A−1)の調製]
電荷発生剤(Y−TiOPc(C))2.00質量部、n型顔料(P1)1.20質量部(電荷発生剤(Y−TiOPc(C))1質量部に対してn型顔料(P1)0.6質量部に相当)、正孔輸送剤(HTM−1)60質量部、電子輸送剤(ETM−1)40質量部、バインダー樹脂(Resin−1)100質量部、及びテトラヒドロフラン800質量部を、ボールミルの容器に加えた。内容物を、ボールミルを用いて50時間混合し分散させることにより、感光層用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、導電性基体上にディップコート法により塗布した。導電性基体として、アルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)を用いた。塗布された塗布液(塗膜)を100℃で60分間加熱し、塗膜よりテトラヒドロフランを除去した。これにより、感光体(A−1)を得た。得られた感光体(A−1)の感光層の膜厚は、25μmであった。
[1−7.感光体(A−2)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)の調製]
下記表4〜表6に示すように、フタロシアニン又はその誘導体の種類及び添加量、n型顔料の種類及び添加量、正孔輸送剤の種類及び添加量、並びに電子輸送剤の種類を変更した以外は、感光体(A−1)の調製と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)を調製した。なお、感光体(A−1)〜(A−44)は実施例であり、(B−1)〜(B−6)は比較例である。表4〜表6中、HTM、及びETMは各々、正孔輸送剤、及び電子輸送剤を示す。
[2.評価]
上述のようにして得られた感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)の各々に対し、下記のような評価を行った。
[2−1.耐オゾン性の評価]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)をオゾンに対して曝露し、曝露前後での各感光体表面の帯電電位の変化を評価した。すなわち、ドラム感度試験機(ジェンテック社製)を用いて、8μA(周速31rpm)の電流条件下にて、感光体を4周回転させて帯電させ、4周分の感光体の表面電位を測定した。測定された表面電位を初期帯電電位VA0とした。次いで、感光体を、暗所にて、オゾン濃度10ppmの雰囲気中、常温(23℃)にて6時間静置した。これにより、感光体をオゾンに対して曝露した。オゾン曝露直後の感光体の表面電位を、初期帯電電位VA0の測定と同様の方法で測定した。測定された表面電位を、曝露直後の帯電電位VAとした。なお、初期帯電電位VA0、及び曝露直後の帯電電位VAは、温度23℃、湿度50%RHで測定した。得られた初期帯電電位VA0、及び曝露直後の帯電電位VAに基づき、下記計算式1より、ΔVA0を算出した。算出されたΔVA0に基づき、下記基準に沿って、耐オゾン性を評価した。かかるΔVA0が小さいほど感光体の耐オゾン性が良好であることを示す。A〜Cの評価を合格とした。得られた結果を表7及び表8に示す。
ΔVA0=(初期帯電電位VA0[V])−(曝露直後の帯電電位VA[V]) (計算式1)
耐オゾン性評価A:30V未満
耐オゾン性評価B:30V以上40V未満
耐オゾン性評価C:40V以上50V未満
耐オゾン性評価D:50V以上
[2−2.繰り返し特性の評価]
感光体(A−1)〜(A−44)、及び(B−1)〜(B−6)に対して、帯電及び露光を交互に繰り返し、繰り返し前後での帯電電位の変化を評価した。すなわち、感光体を、ドラム感度試験機(ジェンテック社製)を用いて、周速100rpm(プロセススピード157mm/秒)の条件にて、+700Vになるように帯電させ、感光体の表面電位を測定した。測定された電位を、初期帯電電位VB0とした。次いで、ハロゲンランプの光から単色光(波長:780nm、半値幅:20nm、光強度:0.5μJ/cm2)をバンドパスフィルターを用いて取り出し、取り出された単色光を感光体1周分の表面に照射(露光)した。露光後の1周分の表面電位の平均値が150Vになるように光量を設定した。更に、同様の帯電及び露光を1周ずつ交互に繰り返した。1周ずつ交互に繰り返す耐久試験を1000セット行った。耐久試験中の試料(感光体)の表面電位を測定した。具体的には、10セット目の帯電時の平均表面電位を、初期帯電電位VB0[V]とした。また、1000セット目の帯電時の平均表面電位を、繰り返し後の帯電電位VB[V]とした。なお、初期帯電電位VB0、及び繰り返し後の帯電電位VBは、温度23℃、湿度50%RHで測定した。また、各露光後に感光体の除電は行わなかった。得られた初期帯電電位VB0、及び繰り返し後の帯電電位VBに基づき、下記計算式2より、ΔVB0を算出した。算出されたΔVB0に基づき、下記基準に沿って、感光体の繰り返し特性の評価を行った。かかるΔVB0が小さいほど感光体の繰り返し特性が良好であることを示す。A〜Cの評価を合格とした。得られた結果を表7及び表8に示す。
ΔVB0=(初期帯電電位VB0[V])−(繰り返し後の帯電電位VB[V]) (計算式2)
繰り返し特性評価A:30V未満
繰り返し特性評価B:30V以上40V未満
繰り返し特性評価C:40V以上50V未満
繰り返し特性評価D:50V以上
[2−3.総合評価]
また、下記基準に沿って、上述した各評価の総合評価を行った。得られた結果を表7及び表8に示す。
総合評価A:耐オゾン性及び繰り返し特性の評価がAであった。
総合評価B:Bの評価が一つ以上あるが、C及びDの評価はなかった。
総合評価C:Cの評価が一つ以上あるが、Dの評価はなかった。
総合評価D:Dの評価が一つ以上あった。
感光体(A−1)〜(A−44)の感光層には、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体、及びn型顔料が含有されていた。また、n型顔料の含有量が、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体の1質量部に対して、0.03質量部以上3質量部以下であった。更に、正孔輸送剤として、式(1)で表される化合物のうちの1種以上が含有されていた。そのため、表7及び表8から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−44)では、耐オゾン性、及び繰り返し特性が優れていた。
一方、感光体(B−1)の感光層には、n型顔料が含有されていなかった。感光体(B−2)の感光層には、n型顔料、及び式(1)で表される化合物が含有されていなかった。感光体(B−3)〜(B−6)の感光層には、式(1)で表される化合物が含有されていなかった。そのため、感光体(B−1)〜(B−6)では、耐オゾン性、及び繰り返し特性に劣った。