JP6077740B2 - 固体電解質 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1の材料は水と接触し、硫化水素を発生(加水分解)しやすく、高露点環境での使用に制限がある。
1.構成成分として、リチウム、リン及び硫黄を含み、
31P−NMRにおいて81.0ppm以上88.0ppm以下の領域にピーク(第1ピーク)を有し、
前記81.0ppm以上88.0ppm以下の領域以外にピークを有さないか、又は有していても前記第1ピークに対するピーク強度比が0.5以下であり、
イオン伝導度が5×10−4S/cm以上である固体電解質。
2.構成成分として、リチウム又はナトリウム、リン並びに硫黄を含み、
イオン伝導度が5×10−4S/cm以上であり、
100mlの容器に0.1gの固体電解質を入れて、この容器に湿度80〜90%の空気を500ml/分で60分間通じたときの前記空気中の硫化水素濃度平均値が200ppm以下である固体電解質。
3.構成成分として、リチウム又はナトリウム、リン並びに硫黄を含むガラスを平均20℃/分以上で昇温して、前記ガラスのガラス転移温度〜結晶化温度+120℃で0.005分〜10時間加熱して得られた2に記載の固体電解質。
4.100mlの容器に0.1gの固体電解質を入れて、この容器に湿度80〜90%の空気を500ml/分で60分間通じたときの前記空気中の硫化水素濃度平均値が200ppm以下である1に記載の固体電解質。
5.構成成分として、さらにハロゲンを含む1〜4のいずれかに記載の固体電解質。
6.1〜5のいずれかに記載の固体電解質を含む電解質層。
7.1〜5のいずれかに記載の固体電解質を用いて製造された電解質層。
8.1〜5のいずれかに記載の固体電解質を含む電極。
9.1〜5のいずれかに記載の固体電解質を用いて製造された電極。
10.6及び7に記載の電解質層、並びに8及び9に記載の電極のうち少なくとも1つを含む電池。
11.正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1つが、1〜5のいずれかに記載の固体電解質を用いて製造された電池。
本発明の第1の固体電解質は、構成成分として、リン、リチウム及び硫黄を含み、31P−NMRにおいて81.0ppm以上88.0ppm以下の領域にピークを有し(第1ピークと称する)、81.0ppm以上88.0ppm以下の領域以外にピークを有さないか、又は81.0ppm以上88.0ppm以下の領域以外にピークを有していても、第1ピークに対するピーク強度比が0.5以下ある。
第1ピークの領域は、好ましくは81.0ppm以上87.0ppm以下であり、より好ましくは81.5ppm以上86.5ppm以下である。
尚、イオン伝導度は高ければ高いほど好ましいが、例えば、上限として5×10−2S/cmを挙げることができる。
LiaMbPcSdXe・・・(A)
式(A)において、a〜eは各元素の組成比を示し、a:b:c:d:eは1〜12:0〜0.2:1:0.1〜9:0〜9を満たす。
好ましくは、bは0である。
また、好ましくはa、c及びdの比はa:c:d=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはa:c:d=2〜4.5:1:3.5〜5である。
BfZngSihCuiGajGek・・・(B)
f〜kは、各元素の組成比を示し、それぞれ0以上1以下であり、f+g+h+i+j+k=1である。好ましくは、f、i及びjは0であり、g及びhはそれぞれ0以上1以下であり、g+h+k=1である。
FlClmBrnIo・・・(C)
l〜oは、各元素の組成比を示し、それぞれ0以上1以下であり、l+m+n+o=1である。好ましくは、l及びmは0であり、n及びoはそれぞれ0以上1以下であり、n+o=1である。より好ましくは、l及びmは0であり、n及びoはそれぞれ0又は1であり、n+o=1である。
また、好ましくは、l〜oのうち、1つが1であり、他は0である。
NaaMbPcSdXe・・・(A’)
式(A’)において、a〜e、M及びXは上記式(A)と同様である。
また、第2の固体電解質のイオン伝導度は、第1の固体電解質と同様である。
ガラスの昇温、加熱方法は後述する通りである。
粒子状であれば、電解質層を形成する際に、後述するように本発明の固体電解質又は電解質前駆体を含むスラリーを塗布することにより電解質層を製造することができる。尚、本発明の固体電解質は、電解質前駆体であるガラスを加熱して製造できる。
また、静電法を用いて電解質層を製造することもできる。
体積基準平均粒径(Mean Volume Diameter、以下「粒径」という。)の測定方法は、レーザー回折式粒度分布測定方法により行うことが好ましい。
本発明では、乾燥した固体電解質又はその前駆体である硫化物系ガラスを用いて平均粒径を測定する。
「乾燥した固体電解質又はその前駆体である硫化物系ガラス」の添加量はイオン伝導性物質の種類等により最適量は異なるが、概ね0.01g〜0.05g程度である。
尚、電解質前駆体にハロゲン元素が含まれていても含まれていなくてもよく、また、電解質前駆体に後述するハロゲン元素を含む化合物を添加しても添加しなくてもよい。
電解質前駆体とハロゲン元素を含む化合物の混合方法は特に制限はなく、乳鉢で混合する方法、メカニカルミリング処理する方法等を例示できる。
好ましい原料aは、Li2S(硫化リチウム)及びP2S5(五硫化二リン)である。
硫化リチウムは、例えば、特開平7−330312号、特開平9−283156号、特開2010−163356、特願2009−238952に記載の方法により製造することができる。
また、N−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物がリチウムイオン電池のサイクル性能を低下させることがない。このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高イオン伝導性電解質が得られる。
一方、特開2010−163356に記載の硫化リチウムの製法で製造した硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等の含有量が非常に少ないため、精製せずに硫化物系ガラスの製造に用いてもよい。
Y−X・・・(E)
式中、Yは、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類が挙げられ、特にリチウムが好ましい。Xは、上記式(C)と同様である。
また、硫化リチウムと五硫化二リンの合計とハロゲン元素の割合(モル比)は、好ましくは50:50〜100:0、より好ましくは60:40〜100:0、特に好ましくは70:30〜100:0である。
溶融急冷法は、例えば、特開平6−279049号公報、国際公開第2005/119706号パンフレットに記載されている。
具体的には、P2S5とLi2Sとハロゲンを含む化合物とを所定量乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、硫化物系ガラスである電解質前駆体が得られる。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/秒程度、好ましくは10〜10000K/秒である。
メカニカルミリング法(以下、「MM法」という。)は、例えば、特開平11−134937、特開2004−348972、特開2004−348973に記載されている。
具体的には、P2S5とLi2Sとハロゲンを含む化合物とを所定量乳鉢にて混合し、例えば、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、硫化物系ガラスである電解質前駆体が得られる。
メカニカルミリングの際に原料が60℃以上160℃以下になるようにすることが好ましい。
スラリー法は、国際公開第2004/093099号パンフレット、国際公開第2009/047977号パンフレットに記載されている。
具体的には、所定量のP2S5粒子とLi2S粒子とハロゲンを含む化合物とを有機溶媒中で所定時間反応させることにより、硫化物系ガラスである電解質前駆体が得られる。
ハロゲンを含む化合物は、有機溶媒に溶解するか、又は粒子であることが好ましい。
また、国際公開第2009/047977号パンフレットに記載されているように、原料の硫化リチウムを予め粉砕しておくと効率的に反応を進行させることができる。
非プロトン性有機溶媒としては、非プロトン性有機溶媒(例えば、炭化水素系有機溶媒)、非プロトン性の極性有機化合物(例えば、アミド化合物,ラクタム化合物,尿素化合物,有機イオウ化合物,環式有機リン化合物等)を単独溶媒として、又は混合溶媒として、好適に使用することができる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。不飽和炭化水素しては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
これらのうち、特にトルエン、キシレンが好ましい。
固相法は例えば、非特許文献「H−J.Deiseroth,et.al.,Angew.Chem.Int.Ed.2008,47,755−758」に記載されている。具体的には、P2S5とLi2Sとハロゲンを含む化合物を所定量乳鉢にて混合し、100〜900℃の温度で加熱することにより、硫化物系ガラスである本発明の電解質の前駆体が得られる。
硫化物ガラスの製造法としては、MM法、スラリー法又は固相法がより好ましい。低コストで製造可能であることから、MM法、スラリー法がより好ましく、特にスラリー法が好ましい。
加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。雰囲気は、空気であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。また、特開2010−186744号公報に記載されているような溶媒中(例えば、炭化水素系有機溶媒)で加熱してもよい。
例えば、Tgが170℃、Tcが230℃の場合、熱処理温度は170℃以上350℃以下であり、好ましくは175℃以上330℃以下である。
0.005分未満であると、熱処理後の固体電解質に電解質前駆体が多く含まれ、イオン伝導度が低くなるおそれがある。10時間を越えると、熱処理後の固体電解質に不純物等が含まれ、イオン伝導度が低下する恐れがある。
例えば、平均昇温速度は20℃/分以上である。20℃/分未満だと、イオン伝導度が十分高くならない恐れがある。さらに好ましくは50℃/分以上であり、特に好ましくは100℃/分以上である。
平均昇温速度の上限は特にないが、例えば、20000℃/分以下である。
本発明の電解質含有物は、上記固体電解質を含む。
本発明の電解質含有物は、上記固体電解質を含んでいればよく、ハロゲン元素を含む化合物をさらに含んでいてもよく、有機溶媒を含んでいてもよい。また、下記バインダー(結着剤)、正極活物質、負極活物質及び導電助剤のいずれか1つ以上を含んでいてもよい。
本発明の電解質層は、電池を構成する電解質層であってもよく、シート状であってもよい。
(1)第1の電解質層
第1の電解質層は、上記固体電解質を含む電解質層である。上記電解質以外に他の電解質を含んでいてもよく、下記バインダーを含んでいてもよい。
第2の電解質層は、上記固体電解質を用いて製造された電解質層である。
上記固体電解質を用いて製造されていればよく、例えば、上記固体電解質、下記バインダー及び溶媒を含むスラリーを塗布して製造してもよく、粒状の上記固体電解質を用いて静電塗布法により製造してもよい。
本発明の電極は、電池を構成する電極層であってもよく、シート状であってもよい。
(1)第1の電極
第1の電極は、上記固体電解質と通常活物質を含む電極である。上記固体電解質以外に他の電解質を含んでいてもよく、後述するバインダーを含んでいてもよい。活物質としては、後述する正極活物質、負極活物質が挙げられる。
第2の電極は、上記固体電解質を用いて製造され、通常活物質を含む電極である。上記固体電解質以外に他の電解質を含んでいてもよく、後述するバインダーを含んでいてもよい。活物質としては、後述する正極活物質、負極活物質が挙げられる。
(1)第1の電池
本発明の第1の電池は、正極層、電解質層、負極層の少なくとも1つが、上記本発明の電解質を含む電池である。各層は、公知の方法により製造することができる。
電解質前駆体を用いて正極層、負極層及び/又は電解質層を製造する場合には、電解質前駆体を用いて正極層等を形成後、上記所定の加熱条件により加熱して本発明の第1の電池を製造することもできる。
(A)正極層
正極層は、正極活物質と電解質と導電助剤を含むことが好ましい。また、必要に応じバインダーを含んでもよい。
正極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において正極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、V2O5、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCoYO2、LiCo1−YMnYO2、LiNi1−YMnYO2(0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNiZO4、LiMn2−ZCoZO4(0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、LixCoO2,LixNiO2,LixMn2O4,LixFePO4,LixCoPO4,LixMn1/3Ni1/3Co1/3O2,LixMn1.5Ni0.5O2等の酸化物が挙げられる。
式(D)において、Zはそれぞれ−S−又は−NH−であり、nは繰返数2〜300の整数である。
電解質は、ポリマー系固体電解質、酸化物系固体電解質、本発明の固体電解質又はその電解質前駆体の少なくとも1つである。
ポリマー系固体電解質は、特に制限はない。例えば、特開2010−262860号公報に開示されているように、フッ素樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートやこれらの誘導体、共重合体等のポリマー電解質として用いられる材料が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、LiN、LISICON類、Thio−LISICON類、La0.55Li0.35TiO3等のペロブスカイト構造を有する結晶や、NASICON型構造を有するLiTi2P3O12、さらにこれら結晶化させた電解質等を用いることができる。
導電助剤は、導電性を有していればよい。導電助剤の導電率は、1×103S/cm以上が好ましく、より好ましくは1×105S/cm以上である。
導電助剤としては、炭素材料、金属粉末及び金属化合物から選択される物質や、これらの混合物が挙げられる。
より好ましくは、導電性が高い炭素単体、炭素、ニッケル、銅、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、ルテニウム、金、白金、ニオブ、オスニウム又はロジウムを含む金属単体、混合物又は化合物である。
中でも、電子伝導性が高いアセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックが好適である。
正極層は、バインダーを含んでもよい。
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。
正極層の厚さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。正極層は、公知の方法により製造することができる。例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
負極層は、負極活物質と電解質と導電助剤を含むことが好ましい。
正極層と負極層は、電極活物質が正極活物質であるか負極活物質であるかの違いのみであるため、ここでは負極活物質についてのみ説明し、正極層と同様の事項はその説明を省略する。
負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質、電池分野において負極活物質として公知のものが使用できる。
例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。中でも、高い理論容量を有するケイ素、スズ、リチウム金属が好ましい。
電解質層は、固体電解質を含み、バインダーも含んでいてもよい。
電解質層の固体電解質は、融着していていることが好ましい。融着とは、固体電解質粒子の一部が溶解し、溶解した部分が他の固体電解質粒子と一体化することを意味する。
電解質層の厚さは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
尚、電解質及びバインダーは正極層と同様であるので、その説明を省略する。
集電体は、公知の集電体を用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Tiや、Cu等のように硫化物系固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
本発明の第2の電池は、正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1つが、上記本発明の電解質を用いて製造された電池である。
第1の電池と第2の電池の違いは、第2の電池が正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1つが、本発明の電解質を用いて製造された固体電解質を用いて製造されたことのみであるので、同様の事項は説明を省略する。
硫化リチウムの製造及び精製は、国際公開第2005/040039号パンフレットの実施例に記載の方法と同様に行った。
具体的には、下記のように行った。
硫化リチウムは、特開平7−330312号公報の第1の態様(2工程法)の方法に従って製造した。具体的には、撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
製造例1で製造した硫化リチウムを用いて、国際公開第07/066539号パンフレットの実施例1に準拠した方法で硫化物系ガラスの製造を行った。
製造例1で製造した硫化リチウム0.383g(0.00833mol)と五硫化二燐(アルドリッチ社製)0.618g(0.00278mol)をよく混合した。そして、この混合した粉末と直径10mmのジルコニア製ボール10個と遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)アルミナ製ポットに投入し完全密閉するとともにこのアルミナ製ポット内に窒素を充填し、窒素雰囲気にした。
このメカニカルミリング処理をして得られた白黄色の粉体をX線測定により評価した結果、ガラス化(硫化物ガラス)していることが確認できた。
このガラスの熱物性をDSCにて調べたところ、ガラス転移点(Tg)は172℃、結晶化温度(Tc)は231℃であった。
また、下記のように31P−NMR測定を行ったところ、85.0ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比(I他/I第1)のうちで最大のものは0.21であった。
製造例1で製造した硫化リチウムを用いて、特開2010−140893号公報の実施例1と同様の方法で硫化物系ガラスの製造を行った。
図1に示す装置1を用いて硫化物系ガラスセラミックスを製造した。撹拌機10として、アシザワ・ファインテック社製スターミルミニツェア(0.15L)(ビーズミル)を用い、0.5mmφジルコニアボール450gを仕込んだ。反応槽20として、攪拌機付の1.5Lガラス製反応器を使用した。
撹拌機10本体は、液温が70℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速8m/sの条件で運転した。2時間ごとにスラリを採取し、150℃にて乾燥して白色粉末を得た。12時間反応後得られた粉末についてX線回析測定を行ったところ、原料である硫化リチウムは僅かに残存しているが、ほとんど消失しており、実質的にガラスとなっていることが分かった。
また、製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、84.9ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.19であった。
原料として、製造例2で得られた硫化物系固体電解質0.781g及びよう化リチウム0.221gを用いた以外は、製造例2と同様にして硫化物系固体電解質ガラスを得た。
また、製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、83.0ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.08であった。
原料として、製造例2で得られた硫化物系固体電解質0.600g及びよう化リチウム0.400gを用いた以外は、製造例2と同様にして硫化物系固体電解質ガラスを得た。
また、製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、83.1ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.12であった。
硫化リチウムの量を0.453g(0.00985mol)、五硫化二燐の量を0.548g(0.00246mol)とした以外は製造例2と同様の操作を行った。X線回析測定を行ったところ、原料である硫化リチウムは僅かに残存しているが、ほとんど消失しており、実質的にガラスとなっていることが分かった。
また、製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、85.2ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.11であった。
硫化リチウムの量を0.326g(0.00709mol)、五硫化二燐の量を0.674g(0.00303mol)とした以外は製造例2と同様にして硫化物系固体電解質ガラスを得た。
また、製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、89.4ppmにメインピークを示した。このピークより小さなピークはいくつか見られたが、81.0ppm〜88.0ppmの領域にはピーク(第1ピーク)は見られなかった。
製造例2で得られた硫化物系固体電解質ガラス300mgを直径10mmの円筒形状に圧粉成形した。この圧粉体を300℃に加熱した2枚のステンレス板の間に挟んだ。このとき、圧粉体は約2分でほぼ300℃まで昇温された。従って、平均昇温速度は約140℃/分であった。圧粉体の温度と加熱時間の関係を図2に示す。
まず、電解質材料200mg〜300mgを直径10mmの円筒形状に圧粉成形したものを測定用試料とした(試料断面積S=0.785cm2)。ノギスで円筒状試料の高さを測定し、それをL(cm)とした。その圧粉体試料片の上下から電極端子を取り、交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:5MHz〜0.5Hz)、Cole−Coleプロットを得た。結果を図3に示す。
R=ρ(L/S)、σ=1/ρ
尚、試料片端面から測定器までのリードの距離が長いと、円弧がはっきりと観測されない場合がある。本実施例ではリードの距離を約60cmとして測定した。
まず、露点−80℃の環境の窒素グローボックス内で試料を乳鉢でよく粉砕した。この粉砕した試料0.1gを100mlシュレンク瓶内に封じて、図4に示した位置にセットした。
ステンレス板の温度を250℃とした以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約110℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、84.9ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.07であった。
熱処理時間を1分とした以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約140℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、85.2ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.08であった。
製造例3で得られた硫化物系固体電解質ガラスを用いた以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約140℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、85.2ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.08であった。
製造例4で得られた硫化物系固体電解質ガラスを用い、ステンレス板の温度を210℃、熱処理時間を1分とした以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約120℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、83.1ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.06であった。
製造例5で得られた硫化物系固体電解質ガラスを用い、熱処理温度を210℃とした以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約120℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、83.0ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.07であった。
製造例6で得られた硫化物系固体電解質ガラスを用いた以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約140℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、85.0ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.12であった。
製造例2で得られた硫化物系固体電解質ガラス粉体をステンレス管に投入し、予め300℃に加熱したオーブンにセットし、2時間放置した。上記粉体300mgを直径10mmの円筒形状に圧粉成形し、実施例1と同様にしてその圧粉体のイオン伝導度σを測定した。尚、平均昇温速度は、約5℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、85.1ppmに第1ピークを示し、他のピークの第1ピークに対する強度比のうちで最大のものは0.10未満であった。
さらに、乳鉢で粉砕した試料について、再度、圧粉体を作製しイオン伝導度を測定したが、その値は上記の値とほぼ同じであった。
製造例7で得られた硫化物系固体電解質ガラスを用いた以外は、実施例1と同様に熱処理を行い、イオン伝導度σ及び硫化水素濃度平均値を測定した。結果を表1に示す。尚、平均昇温速度は、約140℃/分であった。
製造例2と同様に31P−NMR測定を行ったところ、86.1ppm(第1ピーク)と91.2ppmにピークを示した。前者(第1ピーク)に対する後者のピーク強度は1.17であった。
さらに、乳鉢で粉砕した試料について、再度、圧粉体を作製しイオン伝導度を測定したが、その値は上記の値とほぼ同じであった。
10 攪拌機
20 反応槽
22 容器
24 撹拌翼
26 冷却管
30 ヒータ(第1の温度安定手段)
40 オイルバス(第2の温度安定手段)
50 第1の連結管(連結手段)
52 第2の連結管(連結手段)
54 ポンプ(循環手段)
Claims (8)
- 構成成分として、リチウム、リン及び硫黄を含み、下記式(A)を満たし、
31P−NMRにおいて83.0ppm以上88.0ppm以下の領域にピーク(第1ピーク)を有し、
前記83.0ppm以上88.0ppm以下の領域以外にピークを有さないか、又は有していても前記第1ピークに対するピーク強度比が0.5以下であり、
イオン伝導度が5×10−4S/cm以上であり、
100mlの容器に0.1gの固体電解質を入れて、この容器に湿度80〜90%の空気を500ml/分で60分間通じたときの前記空気中の硫化水素濃度平均値が200ppm以下である固体電解質。
LiaPcSdXe・・・(A)
[(式(A)において、a〜eは各元素の組成比を示し、a:c:d:eは1〜9:1:3〜7:0〜9を満たす。
XはIである。] - 前記式(A)のeが0である、請求項1に記載の固体電解質。
- 請求項1又は2に記載の固体電解質を含む電解質層。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質を含む電極。
- 請求項3に記載の電解質層及び請求項4に記載の電極のうち少なくとも1つを含む電池。
- 請求項1に記載の固体電解質の製造方法であって、
下記式(A)を満たす電解質前駆体(ガラス)を、平均昇温速度20℃/分以上で熱処理する、固体電解質の製造方法。
Li a P c S d X e ・・・(A)
[(式(A)において、a〜eは各元素の組成比を示し、a:c:d:eは1〜9:1:3〜7:0〜9を満たす。
XはIである。] - 前記熱処理の温度が、前記電解質前駆体のガラス転移温度(Tg)以上、電解質前駆体の結晶化温度(Tc)+120℃以下である、請求項6に記載の固体電解質の製造方法。
- 前記熱処理の時間が、0.005分以上10時間以下である、請求項6又は7に記載の固体電解質の製造方法。
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