上述したように、特許文献1に係る薬剤払出装置は、固形薬剤を分包紙に分包された状態で撮像するものであるため、複数の固形薬剤が分包紙内において重なったり、接触した状態で撮像されやすい傾向にある。このような画像に基づいて数量の鑑査を行おうとした場合、複数の固形薬剤が一塊として誤認識されてしまい、固形薬剤の数量を正確に把握できない可能性が高い。
そこで、本発明は、固形薬剤の重なりや接触、分包紙の存在などに伴う鑑査不良が起こらず、固形薬剤の数量を適切に鑑査可能な薬剤鑑査装置、及び当該薬剤鑑査装置を備えた薬剤払出装置の提供を目的とした。
上述した課題を解決すべく提供される本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査対象の薬剤が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された薬剤に対して振動を付与することが可能な振動手段と、前記鑑査部に配置された薬剤を撮影可能な撮影手段と、前記撮影手段によって得られた画像に基づき、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出可能な薬剤情報検出手段と、前記撮影手段により撮影して得られた画像に基づいて鑑査部における薬剤の分布を検知する分布検知手段とを備えており、前記分布検知手段の検知結果に基づいて前記振動手段が作動することを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置においては、分布検知手段により鑑査部における薬剤の分布を検知し、その検知結果に基づいて振動手段を作動させる。これにより、鑑査対象である固形薬剤の重なりや接触、起立を防止し、薬剤情報検出手段による薬剤の鑑査精度を向上させることが可能となる。
上述した課題を解決すべく提供される本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査対象の薬剤が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された薬剤に対して振動を付与することが可能な振動手段と、前記鑑査部に配置された薬剤を撮影可能な撮影手段と、前記撮影手段によって得られた画像に基づき、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出可能な薬剤情報検出手段と、前記撮影手段により撮影して得られた画像に基づいて鑑査部における薬剤の分布を検知する分布検知手段とを備えている。また、前記鑑査部は、複数の鑑査領域によって構成されており、前記振動手段は、前記鑑査領域毎に独立的に振動を発生させることが可能なものとされている。本発明の薬剤鑑査装置は、前記分布検知手段の検知結果に基づいて選定された鑑査領域において振動が発生するように前記振動手段が作動することを特徴としている。
本発明の薬剤鑑査装置においては、鑑査部に配置された薬剤を撮影手段によって撮影した画像に基づき、分布検知手段により鑑査部における薬剤の分布状況を検知し、この分布状況に応じて選定された鑑査領域に振動を与える。よって、本発明の薬剤鑑査装置においては、重なりや起立、あるいは接触した状態にある薬剤に対して的確に振動を付与することが可能である。これにより、薬剤を鑑査部上において分散させた上で薬剤情報検出手段により薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出可能することが可能となり、特に分包紙によって分包された状態にある薬剤を鑑査する際には極めて有効である。従って、本発明の薬剤鑑査装置によれば、薬剤の重なりや接触、分包紙による分包の有無によらず鑑査不良が生じず、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を適切に鑑査することが可能である。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査対象の薬剤が透光性を有する分包紙によって一服用分毎に分包された状態で供給されるものであっても良い。
上述したように、本発明の薬剤鑑査装置においては、薬剤の分布状況に応じ、振動手段によって適切な鑑査領域に振動を付与することができるため、仮に鑑査対象の薬剤が分包紙によって分包されたものであっても鑑査に適した状態となるように分散させることが可能である。従って、本発明の薬剤鑑査装置によれば、分包紙によって一服用分ずつ分包された状態の薬剤についても、鑑査不良を生じることなく、正確に鑑査することが可能である。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記振動手段が、他の鑑査領域よりも多くの薬剤が配置されている鑑査領域において優先的に振動を発生させることを特徴とするものであることが望ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、多くの薬剤が配置されている鑑査領域において、他の鑑査領域よりも優先的に振動が付与されるため、重なりや起立、あるいは接触した状態である薬剤が存在しているとしても、これらの薬剤をスムーズかつ確実に離反及び分散し、倒れた状態とすることができる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、薬剤同士が重なっていること、薬剤同士が接触していること、あるいは薬剤が起立していること等による鑑査不良が生じない。
同様の知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、前記振動手段が、薬剤が配置されている薬剤の数量が最も多い鑑査領域において振動を発生させ、他の鑑査領域において振動を発生させないことを特徴とするものであることがより一層望ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、最も多くの薬剤が配置されている鑑査領域において薬剤が偏在し、他の薬剤と重なった状態、接触した状態、あるいは起立した状態で存在している可能性が高いことが考慮されている。かかる考慮に基づき、本発明の薬剤鑑査装置では、最も多くの薬剤が配置されている鑑査領域において振動手段により振動を発生させ、他の鑑査領域においては振動を発生させないこととしている。これにより、他の薬剤と重なった状態、接触した状態、あるいは起立した状態である薬剤が存在していたとしても、これらの薬剤をスムーズかつ確実に離反及び分散させ、倒れた状態とすることが可能となる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、薬剤の起立、薬剤同士の重なり、あるいは接触に起因する鑑査不良が生じない。
ここで、薬剤が所定の鑑査領域に偏在している場合には、分布状況を加味した上で振動手段を作動させる鑑査領域を選定し、薬剤に振動を付与することが望ましい。これに対し、振動を付与しなくても既に薬剤が分散しており、既に正確に鑑査可能な状態になっている場合には、振動を付与せず鑑査を行うことにより鑑査速度を向上させることができるばかりでなく、却って高い鑑査精度が得られる可能性がある。従って、振動を発生させる必要性について的確に判断し、判断結果に応じて振動を適宜付与できる構成であることが望ましい。
かかる知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、前記分布検知手段により検知された鑑査部における薬剤の分布状況に応じて振動発生の要否を判定し、当該判定結果に基づいて前記振動手段の動作制御を実施可能な振動制御手段を有している。本発明の薬剤鑑査装置は、振動を発生させる必要があると前記振動制御手段によって判断された場合には、前記振動手段により振動を発生させた後に前記撮影手段により撮影された画像に基づき前記薬剤情報検出手段により薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出することができる。また、本発明の薬剤鑑査装置は、振動を発生させる必要がないと前記振動制御手段によって判断された場合には、前記振動手段により振動を発生させることなく前記撮影手段により撮影された画像に基づき前記薬剤情報検出手段により薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出することができる。
本発明の薬剤鑑査装置は、振動制御手段を有し、鑑査部における薬剤の分布状況に応じて振動発生の要否を判断し、この判断結果に基づいて振動手段を動作させることが可能とされている。これにより、本発明の薬剤鑑査装置は、振動を付与することにより薬剤を分散させる必要がある場合に適切に振動を付与し、正確に鑑査を行うことができる。また、本発明の薬剤鑑査装置においては、振動の発生が不要であると判断された場合には、振動を発生させず、撮影手段により撮影された画像により鑑査を行うこととされているため、薬剤の鑑査速度及び鑑査精度をより一層向上させうる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記振動手段が、板バネを備えており、前記板バネの弾性力により振動を発生させることが可能なものであり、前記板バネが、前記鑑査領域毎に設けられていることが望ましい。
かかる構成によれば、各鑑査領域毎に設けられた板バネを振動させることにより、振動を付与すべき鑑査領域に存在する薬剤に対して的確に振動を付与することが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記板バネのうち、非振動状態とされる鑑査領域に対応して設けられた板バネが押し下げられ、分包紙から離れた状態とされるものであることがより一層望ましい。
かかる構成によれば、非振動状態とすべき鑑査領域において、薬剤に対して振動が付与されることを確実に防止でき、より一層的確に薬剤を分散させ、鑑査精度を向上させることが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記板バネが、一端側に設けられた固定部を他部材に固定し、他端側が自由端とされたものであり、前記振動手段が、前記板バネの自由端側に衝撃を付与する衝撃付与手段を有し、前記固定部が、前記鑑査領域から離れた位置に設けられているものであることが望ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、衝撃付与手段により板バネの自由端側に衝撃を付与することにより、振動させるべき鑑査領域に対応する板バネを振動させ、薬剤を分散させることが可能となる。また、自由端側への衝撃は一回または、間欠的に複数回与えることにより、板バネに与えられた振動は衝撃付加後、自由に、また次第に減衰する振動となり、常に一定の振動を与える機械的な振動付加機構とは異なり、更に適切な分散効果をもたらすものである。
ここで、上述したように自由端側の部分に衝撃を加えることにより板バネを振動させる場合には、固定部側の部分において他の部分よりも振動が小さくなる傾向にある。かかる知見に基づき、本発明の薬剤鑑査装置においては、固定部が鑑査領域から離れた位置に設けられている。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、板バネの固定部側の部分においても自由端側の部分と同様に薬剤を分散させるために十分な振動を発生させることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査領域あるいは前記鑑査領域に対して鉛直方向に外れた位置に想定される仮想領域の外周を取り囲み、前記鑑査領域あるいは前記仮想領域の外周側において発光可能な照明装置を有することが好ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、鑑査領域、あるいは鑑査領域から鉛直方向に外れた位置に想定される仮想領域を囲むように発光可能な照明装置が設けられていることから、鑑査部に配置された薬剤が外側から照射された状態で撮影手段により撮像される。これにより、輪郭を明確に把握可能な状態で薬剤を撮影することが可能となる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、撮影手段によって得られた画像を薬剤情報検出手段により処理することにより、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を正確に検出することが可能となる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、拡散光を発生させることが可能な拡散光照明装置が、前記鑑査部の上方に設置されたものであることが好ましい。
かかる構成によれば、鑑査部上に配置された薬剤が影を生じることなく照明され、薬剤の輪郭、表面に付された刻印あるいは印字等を鮮明に把握可能な状態になる。これにより、薬剤の数量あるいは種類の検出精度をより一層向上させることが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記照明装置が、前記鑑査領域あるいは前記仮想領域を囲むように配置された複数の発光ダイオードを有し、前記発光ダイオードの光軸が、前記鑑査領域側に向けられたものであることが望ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、照明装置の光源として発光ダイオードが用いられており、その光軸が鑑査領域側に向けられているため、鑑査領域に配された薬剤に対して輝度の高い光を正確に照射することができる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、鑑査領域に配された薬剤についての画像を輪郭が明確に把握可能な状態で得ることができ、鑑査精度をより一層向上させることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査領域に対して鉛直上方に外れた位置に発光ダイオードを光源とする照明装置が設けられており、前記発光ダイオードが、前記鑑査領域に対して鉛直上方に外れた位置に想定される仮想領域よりも外側に配置されており、前記発光ダイオードの光軸が、前記鑑査領域に向けられていることが望ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、鑑査領域に対して鉛直上方に照明装置が設けられており、この照明装置において光源として機能する発光ダイオードから鑑査領域に向けて斜め上方から光が照射される。これにより、鑑査領域上に配置された薬剤が照射され、薬剤の輪郭が明確に把握可能な状態で撮影され、薬剤情報検出手段により薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が正確に把握される。従って、本発明によれば、薬剤鑑査装置の鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査対象の薬剤に係る処方に基づく数量(正規の処方数量)及び処方に基づく種類(正規の処方薬種)の少なくとも一方の情報を処方情報として取得する処方情報取得手段と、前記処方情報と前記処方情報検出手段により取得された検出情報とを照合する照合手段とを有するものであることが望ましい。
かかる構成によれば、薬剤情報検出手段により取得された検出情報を処方情報と照合することにより、薬剤の種類あるいは数量が正規のものと合致しているか否かを的確に把握することが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、鑑査対象の薬剤に係る正規の処方数量及び正規の処方薬種の少なくとも一方に係る情報を処方情報として把握するための情報媒体が前記分包袋連続体に付与されている場合に、当該情報媒体に基づいて前記処方情報を把握可能な処方情報取得手段と、前記処方情報取得手段によって取得された前記処方情報と前記薬剤情報検出手段により取得された検出情報とを照合する照合手段とを有することを特徴とするものであることが好ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、薬剤を分包した一連の分包紙からなる分包袋連続体に付された情報媒体に基づき処方情報を正確かつスムーズに把握することが可能であり、鑑査速度及び鑑査精度をより一層向上させることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、処方にあわせて薬剤を供給可能な薬剤供給手段と、薬剤供給手段から供給された薬剤を一包分ずつ溜め置き、排出することが可能な薬剤準備手段と、前記薬剤準備手段から供給された薬剤を一包分ずつ分包する分包手段と、前記分包手段により分包された薬剤を取り出すための取出口とを有する薬剤分包装置に対して連結されるものであっても良い。また、本発明の薬剤鑑査装置は、前記取出口に対して連結するための連結手段を有するものであっても良い。
本発明の薬剤鑑査装置を薬剤分包装置に対して連結可能とすることにより、薬剤の分包から鑑査に至る作業を薬剤分包装置と連携し、一連の作業として実施できる。また、本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤分包装置において分包された薬剤を取り出すために設けられた取出口に対して連結するための連結手段を設け、薬剤分包装置と連結して使用することにより、一体的に連携作動する装置として利用可能である。従って、本発明の薬剤鑑査装置によれば、薬剤の分包及び鑑査に係る作業効率及び作業速度をより一層向上させることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を水平方向に揺動させつつ前記鑑査部に搬送する搬送手段を有するものであっても良い。
かかる構成とすることにより、各分包袋内に薬剤が起立状態、あるいは他の薬剤と接触等した状態で封入されていたとしても、搬送手段により付与される水平方向への揺動により鑑査部に到達するまでの間に薬剤が倒れ、分散した状態とすることができる。従って、本発明によれば、鑑査部において振動を付与せねばならない可能性を最小限に抑制し、鑑査業務に要する時間をより一層短縮することが可能となる。
ここで、上述したように搬送手段を作動させて分包袋を揺動させようとした場合に、分包袋内に多数の薬剤が包装されている等して、分包袋が重い場合には、搬送手段の上において分包袋連続体が滑ってしまい、うまく揺動させることができない可能性がある。そのため、揺動後に正しい鑑査位置に分包袋が配置されず、正確な画像撮影と鑑査が実行できない可能性がある。
かかる問題に対処すべく、上述した本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を導入するための導入部と、前記導入部から導入された前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部を経た前記分包袋連続体を排出するための排出部とを有し、前記導入部及び前記排出部のいずれか一方又は双方に、前記搬送手段による搬送方向への前記分包袋連続体の動きを停止させることが可能な固定装置が設けられており、前記分包袋連続体を水平方向に揺動させる際に、前記固定装置により分包袋連続体の少なくとも一端側を固定可能なものであることが好ましい。
かかる構成とした場合、分包袋連続体の一端側を固定装置によって固定した状態とすることにより、搬送手段の上で分包袋連続体をスリップさせることなく、確実に揺動させることが可能となる。これにより、分包袋を本来の正しい鑑査位置に配置される機能を維持することが可能となる。
上述した薬剤鑑査装置は、前記固定装置が、前記分包袋連続体を挟持するものであることが好ましい。
かかる構成とすることにより、揺動動作時における分包袋連続体のスリップを確実に防止することができる。
ここで、上述したように分包袋連続体を揺動させる動作を行う際に、固定装置によって分包袋連続体を固定する場合、揺動方向との兼ね合いで適切な位置において固定しないと分包袋連続体に無理な応力が作用し、場合によっては破損する可能性がある。
かかる知見に基づけば、上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記搬送手段により前記分包袋連続体を水平方向に揺動させる揺動動作の実施に際し、最初に前記導入部側に前記分包袋連続体を揺動させる場合には、前記導入部側に設けられた固定装置により前記分包袋連続体を固定し、前記排出部側に設けられた固定装置による前記分包袋連続体の固定を解除した状態とし、最初に前記排出部側に前記分包袋連続体を揺動させる場合には、前記排出部側に設けられた固定装置により前記分包袋連続体を固定し、前記導入部側に設けられた固定装置による前記分包袋連続体の固定を解除した状態とするものであることが好ましい。
上述したように、分包袋連続体の揺動を行う際に、初動時の揺動方向に応じて固定装置による固定位置を選択することとすれば、分包袋連続体に無理な応力が作用すること、及び分包袋連続体が破損することを確実に防止できる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部に対して前記分包袋連続体の搬送方向上流側に設けられた起立解消手段とを有し、前記起立解消手段が、前記搬送手段の搬送路を通過する分包袋連続体の表面に沿って揺動するアームを有することを特徴とするものであっても良い。
本発明の薬剤鑑査装置においては、搬送手段により分包袋連続体を搬送する際に、鑑査部に対して上流側に配置された起立解消手段のアームが分包袋連続体の表面に沿って揺動する。これにより、各分包袋内に収容されている薬剤がアームにより押し動かされて倒れ、分散した状態になってから鑑査部に到達することになる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、鑑査部において振動を付与して薬剤を分散させる必要性を最小限に抑制し、鑑査業務に要する時間をより一層短縮することが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部に対して前記分包袋連続体の搬送方向上流側に設けられた起立解消手段とを備えたものとすることが可能である。また、前記起立解消手段は、前記搬送手段が備える搬送路の上方に配置され、搬送路の幅方向に延びる支軸と、前記支軸を中心として揺動可能なように装着されたアームと、前記アームを前記搬送路側に向けて付勢し、前記前記アームを前記搬送路上の分包袋連続体に接触させる付勢手段とを有するものとすることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、搬送路の上方において搬送路を横断するように設けられた支軸に対してアームが揺動可能に取り付けられている。そのため、分包袋連続体が搬送路を通過すると、アームが分包袋連続体の表面に沿って揺動する。これにより、各分包袋内に収容されている薬剤がアームによって押し動かされて倒れ、分包袋内において分散した状態になる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、分包袋が鑑査部に到達するまでの間に分包袋内における薬剤の分散が促進され、鑑査部にいて振動により薬剤を分散させる必要性を最小限に抑制することができる。また、これにより鑑査業務に要する時間をより一層短縮することが可能となる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、上述したアームに、分包袋連続体の表面に接触可能なローラが設けられており、前記ローラが、前記搬送手段によって形成された搬送路の幅方向略全体に亘って設けられているものであっても良い。
かかる構成とした場合には、各分包袋の表面の略全域がローラによってなぞられ、分包袋内において起立状態である薬剤が倒された状態になる。従って、上述した構成とすることにより、鑑査部に到達するまでの間に分包袋内に収容されている薬剤を確実に倒すことが可能となり、薬剤が起立状態で供給されることによる鑑査精度の低下を防止することができる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、前記起立解消手段が、分包袋連続体の表面に接触可能な接触部を前記アームに設けたものであり、前記接触部が、前記導入部側に向くように傾斜した導入側傾斜面と、前記排出部側に向くように傾斜した排出側傾斜面と、前記導入側傾斜面及び前記排出側傾斜面の境界部分に設けられた薬剤均し具とを備えたものであり、前記薬剤均し具が、前記導入側傾斜面及び前記排出側傾斜面によって形成される稜線に沿って延びる支軸と、前記支軸に対して摺動可能なように装着された珠部材とを有することを特徴とするものであっても良い。
本発明のように、排出側傾斜面及び導入側傾斜面を設けることにより、分包袋連続体を搬送手段により導入部側から排出側に向かう方向(順方向)搬送する場合、及びこれとは逆方向に搬送する場合のいずれの場合であっても、分包袋連続体が起立解消手段に乗り上げてしまうことを防止できる。また、本発明のような薬剤均し具を設けることにより、珠部材が軸方向に摺動しつつ程よく薬剤に当接し、起立状態等にある薬剤を横転させ、鑑査しやすい状態にすることができる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部に対して前記分包袋連続体の搬送方向上流側に設けられ、前記分包袋連続体の表面に接触することにより前記分包袋内において起立状態にある薬剤を倒すことが可能な起立解消手段とを有し、前記分包袋連続体をなす各分包袋について前記薬剤情報検出手段により得られた検出結果が、当該分包袋に係る処方情報と相違する場合に、検出結果が処方情報と相違する分包袋を前記起立解消手段まで逆走させると共に、当該分包袋の表面に前記起立解消手段が接触する範囲内において分包袋連続体を往復動させることを特徴とするものであっても良い。
かかる構成によれば、薬剤が起立状態であることを原因として薬剤情報検出手段により得られた検出結果が処方情報と相違している場合に、起立解消手段により薬剤の起立状態を解消して、再度鑑査を行うことができる。これにより、鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
また、本発明の薬剤鑑査装置においては、薬剤情報検出手段により得られた検出結果が処方情報と相違している場合に薬剤情報検出手段により得られた検出結果が処方情報と相違している場合に限定して分包袋連続体を起立解消手段まで逆走させるようにすることができる。これにより、薬剤鑑査装置による鑑査精度を高めつつ、鑑査速度の高速化を図ることが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記分包袋連続体を導入するための導入部と、前記導入部から導入された前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部を経た前記分包袋連続体を排出するための排出部とを有し、前記アームに、分包袋連続体の表面に接触可能な接触部が設けられており、前記接触部が、前記導入部側に向くように傾斜した導入側傾斜面と、前記排出部側に向くように傾斜した排出側傾斜面とを有し、前記搬送手段が備える搬送路と前記導入側傾斜面とがなす角、及び前記搬送路と前記排出側傾斜面とがなす角が鋭角であることが好ましい。
かかる構成とすれば、分包袋連続体を搬送手段により導入部側から排出側に向かう方向(順方向)搬送する場合、及びこれとは逆方向に搬送する場合のいずれの場合であっても、分包袋連続体が起立解消手段に乗り上げてしまうことを防止できる。これにより、本発明によれば、分包袋連続体を順逆いずれの方向にもスムーズに搬送することが可能となる。従って、本発明によれば、逆方向への分包袋連続体の搬送を伴う動作にも支障を伴うことなく対応することが可能となる。
ここで、上述した本発明の薬剤鑑査装置において、鑑査部に対して鑑査対象である分包袋を位置決めされた状態で供給する方策として、導入部近傍に設けられたセンサによって分包袋連続体を検知した時点から、センサと鑑査部との間隔に相当する距離だけ分包袋連続体を移送させる方策が考えられる。しかしながら、例えば分包袋連続体を装置内に導入する際に、オペレータが手を離すのが遅れる等した場合には、上流側センサによって分包袋連続体が検知された後、センサと鑑査部との間隔相当分を移送するために必要な分だけ搬送手段を作動させたとしても、鑑査部に対して分包袋を精度よく供給することができない事態が想定される。
かかる事態が想定される場合には、本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部に対して前記搬送手段による搬送方向上流側に設けられた上流側センサと、前記鑑査部に対して前記搬送手段による搬送方向下流側に設けられた下流側センサとを有し、前記分包袋連続体の導入時に、前記搬送手段により、上流側センサの設置箇所及び鑑査部を経て下流側センサの設置箇所に至る経路で前記分包袋連続体を搬送し、前記下流側センサにより分包袋連続体が検知されることを条件として、前記搬送手段による前記分包袋連続体の搬送方向を逆転させ、鑑査対象である分包袋を前記鑑査部に到達させることが可能なものであることが望ましい。
かかる構成とすることにより、仮にオペレータが手を離すのが遅れる等した場合であっても、分包袋を鑑査部に対して十分な位置精度で供給することができる。これにより、鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記鑑査部に対して前記分包袋連続体の搬送方向上流側に設けられ、前記分包袋連続体の表面に沿って揺動可能な起立解消手段とを有し、前記分包袋連続体を水平方向に揺動させつつ前記鑑査部に搬送すると共に、前記鑑査部への搬送過程において前記起立解消手段により起立状態で分包袋内に収容されている薬剤を倒すものであっても良い。
かかる構成とした場合、分包袋連続体を水平方向に揺動させつつ搬送することによる効果、及び鑑査部への搬送経路に設けられた起立解消手段による効果が相まって、各分包袋内に収容されている薬剤が確実に倒れた状態で鑑査部に供給されることになる。これにより、薬剤が起立状態で供給されることによる鑑査精度の低下を最小限に防止することが可能となる。
ここで、上述したように一包分ずつ薬剤を包装した分包袋の連続体からなる分包袋連続体の形態として分包袋を供給する場合、分包袋連続体を鑑査部に向けて搬送することにより作用する力、分包袋連続体が薬剤払出装置側、或いは鑑査装置の外側に垂れ下がったり引っ張られたりする等して作用する力等の影響により、分包袋連続体の強度を超える張力が作用することにより分包袋連続体が破損あるいは切断される可能性がある。従って、分包袋連続体の形態で分包袋を供給する場合には、このような事態が生じないように適切な方策を講じることが望ましい。
そこで、かかる知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に薬剤を分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体を導入する導入部を有し、当該導入部から導入された前記分包袋連続体を前記鑑査部に供給することにより、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記導入部に、上下方向に揺動可能であり上方に向けて付勢された導入部揺動部材が設けられており、前記導入部に供給された前記分包袋連続体が、前記導入部揺動部材の上を通過することを特徴としている。
かかる構成とした場合、分包袋連続体を鑑査部に向けて搬送することにより作用する力、分包袋連続体が垂れ下がる等して作用する力等が作用した際に、導入部揺動部材が揺動することにより分包袋連続体に対して過度に大きな力が作用することを防止できる。これにより、分包袋連続体が破損あるいは切断されることを防止できる。
本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋が、前記分包袋連続体の幅方向に延びる縦シール部と、分包袋連続体の長手方向に延びる横シール部において封止されたものであり、前記分包袋連続体を前記鑑査部に移送する搬送手段と、前記搬送手段の側方に配置された搬送ガイドとを有し、前記搬送ガイドが、搬送路に向けて付勢されたガイドローラを有し、前記ガイドローラによって横シール部側に押圧力を作用させた状態で前記搬送手段により前記分包袋連続体を搬送可能であることが望ましい。
かかる構成とすることにより、搬送手段による分包袋連続体の移送をスムーズに行わせることが可能となると共に、分包袋に包装されている薬剤の上をガイドローラが通過することを防止できる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記搬送ガイドが、前記搬送手段による搬送方向に延びるように形成され、前記搬送路上を通過する分包袋連続体の表面に面接触可能な支持アームを有し、前記支持アームの長手方向中間部に、前記ガイドローラが取り付けられていることが好ましい。
かかる構成とすることにより、搬送手段により分包袋連続体を順方向及び逆方向のいずれに移動させた場合であっても、分包袋連続体が搬送ガイドの上に乗り上げることを防止できる。従って、本発明によれば、逆方向への分包袋連続体の搬送を伴う動作にも支障を伴うことなく対応することが可能となる。
ここで、分包袋によって包装された薬剤の鑑査を適切に行うためには、分包袋が鑑査部の正規の位置に配置されることが好ましい。また、分包袋が複数連なった分包袋連続体の形態で供給される場合には、鑑査部に対する位置決め精度が不十分であると鑑査対象である分包袋内の薬剤を認識できないといった不具合や、鑑査対象である分包袋に隣接する他の分包袋内の薬剤を誤って検出してしまう等の不具合が生じる可能性を完全には否定できない。そのため、分包袋連続体の形態で鑑査対象である薬剤が包装して供給される場合には、各分包袋を高い位置決め精度で鑑査部に配置可能な構成であることが望ましい。
そこで、かかる知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋が、前記分包袋連続体の幅方向に延びる縦シール部と、分包袋連続体の長手方向に延びる横シール部において封止されたものであり、前記分包袋連続体が、隣接する分包袋の縦シール部同士の間に境界が形成されたものであり、供給されてきた分包袋連続体を、所定の位置において、前記境界を介して分包袋連続体の長手方向一方側及び他方側に位置する縦シール部を撮影可能なように配置された位置検出用撮影手段と、前記位置検出用撮影手段により撮影された画像領域内に写っている各縦シール部の位置情報を取得可能な縦シール位置検出手段と、前記縦シール位置検出手段により検出された各縦シール部の位置情報の中間値を導出することにより、前記境界の位置を導出可能な境界位置導出手段とを有し、前記境界位置導出手段によって導出された前記境界の位置に基づき、前記鑑査部に対する分包袋の位置を特定する位置特定手段とを有することを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置においては、位置検出用撮影手段により撮影された画像中に含まれている各縦シール部の位置情報を縦シール位置検出手段によって検出し、この位置情報の中間値から連続する2つの分包袋の境界を特定することができる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、分包袋の境界位置の特定結果に基づいて鑑査対象である分包袋の位置決めを行うことが可能であり、鑑査精度の向上を図りうる。
なお、本発明において採用されている位置検出用撮影手段は、鑑査部に配置された薬剤を撮影するために設けられた撮影手段(以下、「薬剤撮影用撮影手段」とも称す)と同一のものであっても、薬剤撮影用撮影手段とは別のものであっても良い。位置検出用撮影手段を薬剤撮影用撮影手段と同一のものとする場合は、装置構成を簡略化することが可能である。また、位置検出用撮影手段を薬剤撮影用撮影手段とは別に設ければ、任意の位置において縦シール部の位置検出を行うことが可能となり、装置設計の自由度が向上する。
本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙をシールすることにより形成された分包袋が複数、帯状に並ぶように形成されると共に、前記分包袋を構成する前記シールのうち、少なくとも隣接する分包袋同士の間に形成される縦シール部にドット状のシール痕が形成された分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記境界の位置を導出可能な境界位置導出手段を備えており、前記境界位置導出手段が、前記撮影手段によって撮影された前記分包袋の画像領域内に存在する輪郭線を検出する輪郭線検出処理と、前記輪郭線検出処理により検出された輪郭線によって囲まれた検出領域を所定量だけ外側に向けて膨張させる輪郭線膨張処理と、前記輪郭線膨張処理後の画像において膨張させることにより互いに重複することになった複数の検出領域によって構成される領域であって、縦シール方向に延びる領域を縦シール領域として検出する縦シール領域検出処理と、前記縦シール領域の中間位置を前記境界の位置として導出する境界位置導出処理と、を実行することにより前記境界の位置を導出することを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置においては、上述したようにして縦シール領域を検出することにより、分包袋連続体に施された縦シールの位置特定、及び隣接する分包袋同士の境界位置の特定を行うことができる。
また、本発明においては、輪郭線膨張処理により輪郭線を検出領域の外側に向けて膨張させ、複数の検出領域が互いに重複した状態とすることにより、輪郭線検出処理において検出された輪郭線及び検出領域が、縦シール部をなすドット状のシール痕によるものであるのか、薬剤によるものであるのかを判別する精度を向上させている。
すなわち、縦シール部のシール痕に相当する検出領域については、輪郭線膨張処理を実行することにより重複し、分包袋連続体の幅方向(縦シール方向)に延びる一連の領域(縦シール領域に相当)になる。これに対し、薬剤についての検出領域については、輪郭線膨張処理を実行した場合に、薬剤の外観形状に近似した形状に膨張するが、通常は縦シール領域のように分包袋連続体の幅方向に延びる形状の領域にはならないと想定される。
このような特性に鑑み、本発明においては、輪郭線検出処理に加えて輪郭線膨張処理を行うことにより、薬剤の存在下においても縦シール部を正確に検出することとしているため、縦シール部が施された領域(縦シール領域)の位置を精度良く検出することができる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、分包袋間に形成された境界の位置を極めて正確に検出することができる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置においては、前記縦シール領域検出処理が実行されるよりも前の動作段階において、前記境界の位置を導出に用いる画像の輝度情報及び/又は色彩情報に基づき、分包袋内に収容されている収容物が識別され、収容物に相当する部分の画像情報を除外する収容物画像除外処理が実行されることが望ましい。
本発明のように、境界の位置を導出に用いる画像の輝度情報及び/又は色彩情報に基づき、分包袋内に収容されている収容物を識別し、収容物が存在している部分を除外した上で境界位置の導出動作を実行することとすれば、収容物の輪郭線を縦シール部の輪郭線であると誤検出してしまう可能性を最小限に抑制できる。これにより、隣接する分包袋同士の間に形成された境界の検出精度をより一層向上させることが可能となる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋が、前記分包袋連続体の幅方向に延びる縦シール部と、分包袋連続体の長手方向に延びる横シール部において封止されたものであり、前記分包袋連続体が、隣接する分包袋の縦シール部同士の間に境界が形成されたものであり、前記境界の位置を導出可能な境界位置導出手段を備えており、前記境界位置導出手段が、前記撮影手段によって撮影された前記分包袋の画像領域内において縦方向に延びる輪郭線たる縦エッジを検出する縦エッジ検出処理と、縦エッジ検出処理により導出された縦エッジのうち所定の長さよりも長いものを選定する縦エッジ選定処理と、縦エッジ選定処理により選ばれた複数の縦エッジのうち、縦エッジ同士の間隔が縦シール部の幅を基準として設定される所定の間隔以内に収まる領域をエッジ領域として認識するエッジ領域認識処理と、エッジ領域認識処理において認識されたエッジ領域の中央部を縦シール部同士の境界位置として認識する境界位置認識処理とを実行可能なものとすることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、縦シール部、及び縦シール部同士の間に形成される境界が、縦方向に延び、所定の長さ以上の縦エッジとして検出可能であると共に、縦シール部及び境界に相当する縦エッジが所定の間隔内に収まるという分包袋連続体に特有の特性に着目して境界を導出しようとするものである。このような特性に着目したものであるため、単なる画像解析により境界を導出しようとする場合に比べて、境界位置を容易かつ正確に導出することができる。
ここで、多数の処方を一括処理する、いわゆる連続処方と称される形態で薬剤を分包した場合等においては、先の処方分の分包袋と、後の処方分の分包袋とが一連の分包袋連続体の形態をなすように薬剤が包装されることがある。また、このような包装形態で薬剤を包装する場合においては、分包袋連続体の中間部分に薬剤を包装していない空の分包袋が作成されることがある。さらに、空の分包袋を形成した場合には、処方情報を示すバーコード等の識別標識が空の分包袋に付されることがある。
上述したように、分包袋連続体の中間部分に空の分包袋が形成される場合、薬剤の鑑査業務を引き続き精度良く実施するためには、空の分包袋に続いて形成された薬剤を収容した分包袋を鑑査部に送り、精度良く位置決めさせねばならない。従って、薬剤鑑査装置を空の分包袋を形成した分包袋連続体を供給できる構成とする場合には、空の分包袋に続く(すなわち、空の分包袋の下流側に存在する)薬剤を包装した分包袋と、鑑査部との位置決め精度を高めるための方策を講じることが望ましい。
かかる知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、分包紙によって一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態であって、前記分包袋連続体の中間部に、薬剤を包装していない空の分包袋が作成されており、前記空の分包袋の所定の位置に識別標識が付された状態の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記鑑査部あるいは前記鑑査部よりも分包袋連続体の供給方向上流側に存在する所定の読取位置に到来した前記識別標識を認識することが可能な識別標識認識手段を有し、前記識別標識認識手段により前記識別標識が認識された認識位置を基準として、前記空の分包袋に対して下流側に存在する薬剤が収容されている分包袋を前記鑑査部に対して位置決め可能であることを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置においては、分包袋連続体の中間部分に形成された空の分包袋に付された識別標識が識別標識認識手段によって認識された認識位置を基準とし、空の分包袋に続く薬剤が収容された分包袋と、鑑査部との位置決めを精度良く実施することができる。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、上述した連続処方等のために分包袋連続体の中間部分に空の分包袋を形成した場合であっても、空の分包袋の下流側に存在する薬剤入りの分包袋について、鑑査部との位置決め精度の低下に伴う鑑査精度の低下を回避することができる。
本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査対象の薬剤が分包袋に収容された状態で配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影手段と、前記撮影手段によって得られた画像に基づき、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出可能な薬剤情報検出手段とを備えており、前記鑑査部が、前記撮影手段による撮影に際して前記分包袋を背面側から照明可能であり、所定のピッチ毎にドット状に光る照射領域を備えた背面照明手段を有するものであり、前記薬剤情報検出手段が、前記背面照明手段によって分包紙を背面側から照明した状態において撮影した背面点灯画像に基づき、薬剤鑑査用の基礎画像を取得する基礎画像取得工程と、前記基礎画像取得工程において得られた基礎画像中に含まれているドット状の透光領域を除外する除外処理を実行することにより鑑査対象領域を画定する鑑査対象領域画定工程と、前記背面照明手段を消灯した状態で前記背面点灯画像と同一領域を撮影した背面消灯画像から、前記鑑査対象領域に相当する領域の画像を鑑査対象画像として取得する鑑査対象画像取得工程と、前記鑑査対象画像に基づき薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出する画像鑑査を実行する画像鑑査工程とを実行可能であることを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置では、基礎画像取得工程において、背面照明手段によって鑑査部に配置された分包袋を照射した状態で撮影した背面点灯画像に基づいて薬剤鑑査用の基礎画像を取得する。ここで、本発明において用いられる背面照明手段は、ドット状に発光させることが可能なものである。そのため、基礎画像中において、薬剤が存在すると想定される領域は基礎画像中において影として撮影され、その他の領域についてはドット状に光が透過した領域(透光領域)として撮影される。さらに、本発明では、鑑査対象領域画定工程において、基礎画像中からドット状に光が透過した領域を除外し、残りの領域を鑑査対象領域として認識する作業が実行される。このようにして基礎画像取得工程及び鑑査対象領域画定工程を実施することにより、後に実施される画像鑑査工程に先だって薬剤の存在が想定される領域を鑑査対象領域として絞り込むことが可能となる。これにより、画像鑑査工程の実行負荷を最小限に抑制し、画像鑑査による薬剤の種類及び/又は数量の検出速度を向上させることが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記背面照明手段が、光源と、前記光源及び前記分包袋の間に配され所定のピッチ毎に透光可能な孔を有するメッシュ状部材とを備えたものであることが好ましい。
かかる構成によれば、容易かつ確実に照射領域全体に亘って所定のピッチ毎にドット状に発光させることが可能となる。
ここで一般的に、薬剤を包装した分包紙には、処方された患者の氏名、薬剤の服用方法等の情報が文字あるいは模様等の形態で印刷されていることが多い。分包紙に印刷が施された状態のものが鑑査対象として供給された場合、分包紙に印刷されている文字等が基礎画像中に混在した状態になり、薬剤が存在する領域と、印刷が施された領域との切り分けが困難になる可能性がある。従って、分包紙に印刷が施された状態で供給されることが想定される場合には、薬剤が存在する領域と印刷領域とを容易かつ確実に切り分けることができるよう、方策を講じることが望ましい。
そこで、かかる知見に基づき提供される本発明の薬剤鑑査装置は、印刷が施された分包紙に包装された薬剤を鑑査対象の薬剤として前記鑑査部に供給可能であり、前記薬剤情報検出手段が、前記基礎画像中において輪郭線によって囲まれた領域の大きさを変化させる画像処理を実行し、当該画像処理の結果として前記輪郭線によって囲まれた領域同士が連続した連続領域が形成された場合に、前記連続領域を含む領域を印刷が施された領域として前記鑑査対象領域から除外する印刷領域除外処理を実行可能であることを特徴とするものである。
上述したように分包紙に印刷が施されている場合において、背面照明手段によりドット状に発光させた状態で分包紙を撮影して得られた基礎画像中において、薬剤が存在する部分については光が遮断されて影となり、薬剤の外縁をなす輪郭線が認識可能な状態で撮影される。これに対し、分包紙に印刷が施された領域(印刷領域)については、基礎画像中において影と同様に輪郭線が把握可能な状態で撮影されるものの、ドット状の光が透過した状態で撮影される。すなわち、印刷領域においてドット状に光が透過した部分(透過光領域)については、透光領域の外縁が輪郭線として把握可能な状態として撮影される。
また、画像処理により基礎画像中に含まれている輪郭線を膨張させると、基礎画像中においてドット状に並んだ透光領域が繋がり、一連の領域(連続領域)になる。従って、基礎画像について、輪郭線を変化(膨張あるいは収縮)させる画像処理を施すことにより連続領域が形成された部分については、印刷領域に該当するものと想定される。
本発明は、かかる現象に着目して提供されるものである。本発明においては、基礎画像中において輪郭線によって囲まれた領域を膨張あるいは収縮させることにより連続領域が検出された場合に、この連続領域を含む領域が分包紙に印刷が施された領域(印刷領域)であると想定されるため、この領域を鑑査対象領域から除外している。従って、本発明の薬剤鑑査装置においては、文字等が印刷された状態で分包紙が供給されたとしても、印刷の影響を受けることなく、正確かつ迅速に薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を導出することができる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査対象の薬剤が分包袋に収容された状態で配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影手段と、前記撮影手段によって得られた画像に基づき、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出可能な薬剤情報検出手段とを備えており、前記鑑査部が、前記撮影手段による撮影に際して前記分包袋を背面側から照明可能であり、所定のピッチ毎にドット状に光る照射領域を備えた背面照明手段を有するものであり、前記薬剤情報検出手段が、前記背面照明手段によって分包紙を背面側から照明した状態において撮影した背面点灯画像に基づき、薬剤鑑査用の基礎画像を取得する基礎画像取得工程と、前記基礎画像をグレイスケール化したグレイスケール画像を取得するグレイスケール画像取得工程と、前記基礎画像をRGB分解することにより得られた基礎Rチャンネル画像、基礎Gチャンネル画像、及び基礎Bチャンネル画像のうちの少なくとも一つのチャンネル画像について、グレイモルフォロジー処理を行い除外対象領域特定用画像として取得するグレイモルフォロジー処理工程と、前記グレイスケール画像に対し前記除外対象領域特定用画像から特定した除外対象領域の除去処理を実施し、鑑査対象領域を確定する鑑査対象領域確定工程と、前記背面照明手段を消灯した状態で前記背面点灯画像と同一領域を撮影した背面消灯画像から、前記鑑査対象領域に相当する領域の画像を鑑査対象画像として取得する鑑査対象画像取得工程と、前記鑑査対象画像に基づき薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出する画像鑑査を実行する画像鑑査工程とを実行可能であることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、分包袋に付された印刷領域が鑑査対象画像に含まれることを最小限に抑制することができる。これにより、薬剤の鑑査精度、及び鑑査速度の向上を図りうる。
ここで、上述した本発明の薬剤鑑査装置において、画像鑑査工程を実施する際には、鑑査に用いる画像に存在する薬剤の輪郭線を抽出する必要がある。この際、基礎画像を加工して得られる基礎画像加工画像の背景色と、薬剤の色とが同系色である場合等には、基礎画像加工画像を用いただけでは薬剤の輪郭線を導出しにくい場合がある。
かかる問題点を解消すべく提供される本発明の薬剤鑑査装置は、前記画像鑑査工程において、前記基礎画像取得工程において得られた基礎画像中に含まれているドット状の透光領域を除外する除外処理を経て得られた基礎画像加工画像と、前記背面消灯画像を構成する明度成分の分布を示す明度マップ画像と、前記背面消灯画像を構成する彩度成分の分布を示す彩度マップ画像とを重複させることにより形成される合成画像に含まれるエッジを抽出する合成画像エッジ抽出処理を実行することにより、分包袋内に存在する薬剤の外形を特定可能であることを特徴とするものである。
本発明のように、基礎画像加工画像と、明度マップ画像と、彩度マップ画像とを重ね合わせた合成画像を用いることにより、明度及び彩度の観点からも薬剤の輪郭を抽出することが可能となる。これにより、基礎画像加工画像の背景色と薬剤の色とが同系色である等しても、薬剤の輪郭線を正確かつスムーズに導出することが可能となり、ひいては画像鑑査精度を向上させることが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記画像鑑査工程において、前記基礎画像中に含まれる鑑査対象領域を抽出した基礎画像加工画像の取得と、前記背面消灯画像をHSV分解することにより得られた背面消灯Hチャンネル画像、背面消灯Sチャンネル画像、及び背面消灯Vチャンネル画像のうちの一つからなる鑑査用HSV分解画像の取得と、前記背面消灯画像をRGB分解することにより得られた背面消灯Rチャンネル画像、背面消灯Gチャンネル画像、及び背面消灯Bチャンネル画像のうちの一つからなる鑑査用単チャンネル画像の取得とを実施すると共に、前記基礎画像加工画像と、前記鑑査用HSV分解画像と、前記鑑査用単チャンネル画像とを重複させることにより形成される合成画像に含まれるエッジを抽出する合成画像エッジ抽出処理を実行することにより、分包袋内に存在する薬剤の外形を特定可能であることを特徴とするものであっても良い。
本発明の画像鑑査装置においては、基礎画像加工画像に加え、鑑査用HSV分解画像、及び鑑査用単チャンネル画像の観点から薬剤の外縁に相当するエッジを抽出し、薬剤の外形を特定することが可能となる。これにより、薬剤の外形の特定精度をより一層向上させ、薬剤の鑑査を高精度かつスピーディに実施することが可能となる。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査用HSV分解画像の取得に際し、前記基礎画像の取得時における前記分包袋の背景色と、前記分包袋内に収容されている薬剤の色とが同系色であることを条件として背面消灯Hチャンネル画像が鑑査用HSV分解画像として選択され、前記分包袋の背景色と、前記分包袋内に収容されている薬剤の色とが異系色であることを条件として背面消灯Sチャンネル画像が鑑査用HSV分解画像として選択されることを特徴とするものであっても良い。
本発明においては、薬剤の色と背景色との関係を考慮し、鑑査用HSV画像を取得することとしている。具体的には、薬剤が背景色と同系色である場合には、薬剤と背景とで色相に差異が強く発現する可能性が高いため、背面消灯Hチャンネル画像を鑑査用HSV分解画像として選択することとしている。また、薬剤が背景色と異系色である場合には、彩度に差異が強く発現する可能性が高いため、背面消灯Sチャンネル画像を鑑査用HSV分解画像として選択することとしている。そのため、本発明によれば、薬剤の外形の特定精度、及び薬剤の鑑査精度をより一層高精度化することが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査用単チャンネル画像の取得に際し、前記背面消灯画像をRGB分解することにより得られた背面消灯Rチャンネル画像、背面消灯Gチャンネル画像、及び背面消灯Bチャンネル画像のうち、鑑査対象領域と鑑査対象領域以外の領域とのコントラストが最も大きいものが鑑査用単チャンネル画像として選択されることを特徴とするものであっても良い。
本発明は、本発明者らが鋭意研究した結果、背面消灯Rチャンネル画像、背面消灯Gチャンネル画像、及び背面消灯Bチャンネル画像のうち、鑑査対象領域と鑑査対象領域以外の領域とのコントラストが最も大きいものを選択することにより、薬剤の外縁に相当するエッジの抽出精度が向上するとの知見に至ったことを反映したものである。本発明のようにして鑑査対象領域と鑑査対象領域以外の領域とのコントラストに着目し、コントラストが最も大きいものを鑑査用単チャンネル画像として選択することにより、薬剤の外形の特定精度、及び薬剤の鑑査精度をより一層高精度化することが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記基礎画像の取得時における分包袋の背景色と、分包袋内に収容されている薬剤の色とが同系色であることを条件として、前記合成画像エッジ抽出処理が実行されるものであることが望ましい。
上述したように、合成画像エッジ抽出処理は、基礎画像の背景色と薬剤の色とが同系色である場合に好適である。従って、本発明によれば、画像鑑査の精度をより一層向上させることが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記背面照明手段が、赤あるいは赤よりも波長の長い光を発生させることが可能なものであることが望ましい。
本発明においては、背面照明手段として赤あるいは赤よりも波長の長い光を発生させうるものが用いられていることから、背面照明手段から発生する光は直進性が高い。そのため、本発明の薬剤鑑査装置においては、薬剤が存在する領域及び薬剤の輪郭線が基礎画像中において明確に認識可能な状態となる。
また、上述したように分包紙に印刷が施されている場合についても、印刷領域において背面照明手段によって発生した光を確実に透過させることができる。従って、上述したように基礎画像中においてドット状に光が透過した部分(透過光領域)に基づいて印刷領域を除外する処理を行う場合には、本発明のように赤あるいは赤よりも波長の長い直進性の高い光を発することが可能な背面照明手段を用いることにより、鑑査対象領域から印刷領域を除外する除外精度を高め、ひいては薬剤の鑑査精度を向上させることが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査部に配置された分包袋を前記撮影手段によって撮影して得られた薬剤領域特定用画像において、薬剤の存在領域を画定する薬剤存在領域画定手段と、所定のピッチ毎に座標が付与された位置標識を有する位置認識用画像、及び前記薬剤情報検出手段により取得された基礎画像に基づき、分包袋内に存在する異物を検出する異物検出処理を実行可能な異物検出処理手段とを備えており、前記異物検出処理が、前記位置認識用画像と前記基礎画像とを重ね合わせた状態において、前記鑑査対象領域画定工程を実行することによって画定された領域内に存在する前記位置座標を抽出する物体存在領域座標抽出工程と、前記薬剤領域画定用画像と前記基礎画像とを重ね合わせた状態において、前記薬剤存在領域画定手段によって画定された薬剤の存在領域内に存在する前記位置座標を抽出する薬剤座標群導出処理工程と、前記物体存在領域座標群において、前記薬剤領域座標群とは相違する座標が含まれていることを条件として、当該座標位置に異物が存在しているものと判定する異物判定処理工程とを実行するものであることが好ましい。
本発明の薬剤鑑査装置では、物体存在領域座標抽出工程を実行することにより基礎画像に含まれている輪郭線から薬剤等の物が存在している領域を座標群(物体存在領域座標群)の形態で取得することができる。また、別途行う薬剤座標群導出処理工程により、薬剤が存在している領域を座標群(薬剤領域座標群)の形態で取得することができる。本発明の薬剤鑑査装置では、異物判定処理工程において物体存在領域座標群と薬剤領域座標群とが一致しているかを確認し、不一致である場合に、薬剤以外の異物が分包袋に収容されているものと判定することとしている。そのため、本発明の薬剤鑑査装置によれば、薬剤の数量あるいは種類の鑑査だけでなく、薬剤以外の異物の混入を確実に検出することができる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査対象領域画定工程において、前記除外処理の実行後に残存した領域を外側に向けて所定量だけ膨張させる膨張処理が実行されるものであることが好ましい。
本発明においては、鑑査対象領域画定工程において、除外処理後に膨張処理を実行することとしているため、除外処理によって予期せず薬剤が存在している領域を鑑査対象領域から除外してしまうことを防止できる。これにより、薬剤の鑑査精度をより一層向上させうる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記背面照明手段により前記鑑査部を照射した照射状態において前記撮影手段により撮影して得られた背面点灯画像と、前記背面照明手段により前記鑑査部を照射していない背面側非照射状態において前記撮影手段により撮影して得られた背面消灯画像を用い、前記鑑査部に配置された薬剤の画像を切り出し可能であり、前記背面点灯画像をRGB分解することにより得られた背面点灯Rチャンネル画像、背面点灯Gチャンネル画像、及び背面点灯Bチャンネル画像のうちの一つからなる背面点灯RGB分解画像を二値化して背面点灯二値化画像を取得し、前記背面点灯二値化画像における薬剤及び背景画像の輝度分布をガウシアン分布と仮定し、薬剤に相当する輝度分布の平均値Mm及び標準偏差σmと、背景画像に相当する輝度分布の平均値Mb及び標準偏差σbとを導出し、Mm+3σm≧Mb−3σbであることを条件として、輝度Mm+3σmよりも高輝度の領域をマスクする薬剤画像切出用マスクを形成し、Mm+3σm<Mb−3σbであることを条件として、輝度Mb−3σbよりも高輝度の領域をマスクする薬剤画像切出用マスクを形成し、前記薬剤画像切出用マスクに基づいて背面消灯画像を切り出すことにより鑑査部に配置された薬剤の画像を取得可能であることを特徴とするものである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、背面点灯RGB分解画像を二値化して取得した背面点灯二値化画像において薬剤に相当する領域、及び背景に相当する領域の輝度分布がガウシアン分布に近似可能であるとの知見を得た。また、本発明者らは、薬剤に相当する領域の輝度が背景に相当する領域の輝度よりも低く、互いに相違しているとの特性を見いだした。
かかる知見に基づき、本発明においては、薬剤に相当する領域の輝度分布の平均値Mm及び標準偏差σmと、背景画像に相当する領域の輝度分布の平均値Mb及び標準偏差σbとを導出し、これらの値に基づいて薬剤に相当する領域を特定している。すなわち、Mm+3σm≧Mb−3σbであることを条件として、輝度Mm+3σmよりも高輝度の領域をマスクする薬剤画像切出用マスクを形成し、Mm+3σm<Mb−3σbであることを条件として、輝度Mb−3σbよりも高輝度の領域をマスクする薬剤画像切出用マスクを形成している。このようにして設定された薬剤画像切出用マスクに基づき、背面消灯画像を切り出すことにより、鑑査部に配置された薬剤の画像を漏れなく取得することが可能となり、鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、透光性を有するステージを備えた撮影用治具を有し、前記ステージ上に撮影対象である薬剤を設置した前記撮影用治具を前記鑑査部に到達させ、前記背面照明手段により前記ステージを照射した照射状態において前記撮影手段により撮影して得られた背面点灯画像に基づき薬剤の輪郭線を導出し、前記背面照明手段により前記ステージを照射していない背面側非照射状態において前記撮影手段により前記鑑査部に配置されている前記撮影用治具を撮影して得られた背面消灯画像において、前記背面点灯画像に基づいて導出された薬剤の輪郭線によって囲まれた領域に相当する領域を切り出すことにより得られた薬剤の外観を示す外観画像を蓄積した外観画像データベースを構築可能であることが好ましい。
本発明において、照射状態において撮影された背面点灯画像には、薬剤が影として写るため、薬剤の輪郭線を明確かつ確実に検出することが可能である。これに対し、背面側非照射状態において撮影することにより背面消灯画像を別途取得した画像においては、背面点灯画像とは異なり薬剤が鮮明に写っているものの、輪郭線が判然としない可能性がある。本発明においては、背面点灯画像に基づいて薬剤の画像を切り出すための領域を輪郭線によって画定し、背面消灯画像から輪郭線によって囲まれた領域に相当する部分を切り出すこととしている。そのため、背面消灯画像中において薬剤が写っている領域を過不足なく切り出すことができる。従って、本発明によれば、薬剤についての鮮明な外観画像を容易かつ精度良く取得し、外観画像データベースを構築することができる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記ステージが、薬剤を構成する面毎に対応付けられた複数の撮影領域を有し、各撮影領域に対応付けられた面を前記撮影手段側に向けた状態として各撮影領域に薬剤を設置し、前記撮影用治具を前記鑑査部に到達させた状態において得られた背面点灯画像及び背面消灯画像を用いることにより、薬剤を構成する面毎に外観画像を蓄積した外観画像データベースを構築可能であることが望ましい。
かかる構成によれば、薬剤をなす各面の外観画像を一度に取得し、外観画像データベースを構築することができる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記ステージに、薬剤を所定位置に設置可能とするための設置用ガイドが設けられており、前記設置用ガイドの大きさが、薬剤及び異物として想定される大きさよりも小さいものであることが望ましい。
本発明のようにステージに設置用ガイドを設けることにより、外観画像データベースの構築のために薬剤の撮影をする際に、薬剤が適切な位置に設置されるようガイドすることができる。また、本発明のように設置用ガイドの大きさを薬剤及び異物として想定される大きさよりも小さくすることにより、外観画像データベースの構築に際して撮影される画像中において、設置用ガイドと薬剤等との識別が容易になり、薬剤の外観画像に設置用ガイドが写り込むことを防止するための画像処理等が容易に実施可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置においては、前記ステージが、白色であることが好ましい。
本発明のようにステージを白色とすることにより、例えば緑色あるいは黒色等の暗色系の薬剤についても、外観画像取得用に撮影された画像においてステージと薬剤とを判然と区別することが可能となる。これにより、薬剤の外観画像を容易かつ正確に取得することが可能となり、外観画像データベースの精度を向上させることができる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置においては、撮影手段が、背面点灯画像を撮影するための背面点灯画像用撮影手段と、背面消灯画像を撮影するための背面消灯画像用撮影手段とを有することが望ましい。
本発明の薬剤鑑査装置においては、背面点灯画像用撮影手段及び背面消灯画像用撮影手段が別々に設けられている。これにより、背面点灯画像及び背面消灯画像を最適な条件下において取得することが可能となる。従って、本発明によれば、より一層鮮明かつ適切な外観画像により外観画像データベースを構築することが可能となる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査可能な薬剤について少なくとも形状を示したマスター外形画像を蓄積した鑑査用薬剤データベースを備えており、鑑査用外径画像と分包袋内に存在する薬剤の外形とのマッチングすることにより画像鑑査を実行することが可能であり、前記鑑査用薬剤データベースに登録されている前記マスター外形画像のうち、薬剤の全体形状を示した前記マスター外形画像を薬剤に相当する薬剤領域の中央を通る分割線を境として分割することにより、前記薬剤を分割して得られる分割薬剤についてのマスター外形画像を取得し、前記鑑査用薬剤データベースに登録可能なものであることが望ましい。
かかる構成によれば、一錠の薬剤をカッター等によって分割した分割薬剤についての鑑査に用いるマスター外形画像を容易かつ正確に取得し、鑑査用薬剤データベースを構築することが可能となる。
ここで、薬剤をカッター等によって分割する際には、薬剤の中心を寸分の違いもなく高精度で切断できるとは限らず、服用に際して問題の生じない範囲において中心から幾ばくか離れた位置で切断される可能性がある。このように、中心を少し外れた位置において切断された薬剤が分包袋内に存在している場合であっても、エラーを生じることなく鑑査可能とすべく、適切な鑑査用薬剤データベースを容易に構築可能であることが望ましい。
かかる課題に対処するためには、上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記分割線を基準として所定間隔分離れた位置に想定される準分割線を境としてマスター外形画像を分割することにより得られる画像を、分割薬剤についてのマスター外形画像の一つとして加えることができるものであることが望ましい。
かかる構成とすることにより、中心を少し外れた位置において切断された分割薬剤についてもマスター外形画像を容易に取得し、鑑査用薬剤データベースに登録することが可能となる。従って、本発明によれば、分割薬剤についての鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤を分割するために薬剤に付された薬剤分割溝を、前記マスター外形画像において特定し、前記マスター外形画像に写った前記薬剤分割溝を基準にして分割線が決定されるものとすることが可能である。
かかる構成によれば、鑑査用薬剤データベースや外観画像データベースを構築するための分割錠マスター外形画像を容易かつ精度良く取得できる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記マスター外形画像に写った前記薬剤分割溝を基準にして分割線を決定した後、薬品領域の重心の周りに前記分割線を基準として前記マスター外形画像を回転させ、前記分割線を基準として一方側に存在する薬剤領域の形状と他方側に存在する薬剤領域の形状とが対称となる状態において、前記分割線を基準として前記マスター外形画像を分割することにより、前記分割薬剤についてのマスター外形画像を取得することを特徴とするものであることが好ましい。
かかる構成によれば、薬剤に形成された薬剤分割溝を基準としつつ、分割線によるマスター外形画像の分割位置を微修正することが可能となる。これにより、分割薬剤についてのマスター外形画像をより一層精度良く取得することが可能となる。なお、本発明においてマスター外形画像を回転させる際には、薬品領域の重心の周りに前記分割線を基準として正負の双方向に微小角度で回転させるようにすることが望ましい。
また、本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤の全体形状を示した前記マスター外形画像を分割線を境として分割することにより、前記薬剤を分割して得られた分割薬剤についてのマスター外形画像を、分割薬剤の外観に係る外観画像として外観画像データベースに登録可能であることが望ましい。
本発明によれば、分割薬剤についてのマスター外形画像を外観画像データベースの構築用としても用いることが可能となる。従って、本発明に寄れば、分割薬剤について、外観画像データベース用の画像を別途準備する手間を回避することができる。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査用外形画像において薬剤領域に対して外接する矩形の分割線設定用ガイドを、前記薬剤領域の全周に亘って想定し、前記仮想線設定用ガイドの中央を通り、前記仮想線設定用ガイドをなす矩形の長辺に対して垂直な線を分割候補線として規定し、前記分割候補線を境として一方側に存在する薬剤領域を薬剤領域CAとし、他方側に存在する薬剤領域を薬剤領域CBと規定し、前記分割候補線を境として薬剤領域CAを薬剤領域CB上に反転させた場合に非重複状態になる領域を非重複領域CCと規定した場合に、前記非重複領域CCが最も小さくなる際の分割候補線を分割線として規定するものであることが望ましい。
かかる構成によれば、いかなる形状の薬剤についても適切な位置において分割線を規定し、分割薬剤についてのマスター外形画像を取得することが可能となる。なお、本発明において用いられる分割線設定用ガイドは、例えば薬剤の外形を完全に囲むことができる最小サイズの矩形とすることが可能である。
本発明の薬剤鑑査装置は、前記鑑査部の側方であって前記鑑査部よりも上方に離れた位置にサイド照明が配置されており、前記サイド照明の光軸が、前記鑑査部側であって、水平方向あるいは水平方向よりも上方に向けられているものであることが望ましい。
かかる構成によれば、鑑査部に配置された薬剤についての画像を鮮明に取得することが可能となる。
本発明の薬剤鑑査装置は、一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査可能なものであり、前記分包袋連続体を導入するための導入部が設けられており、前記導入部が、前記分包袋連続体を水平状態にして配置可能な水平部と、前記水平部上に存在している前記分包袋連続体を検知可能な分包袋検知センサと、前記導入部における前記分包袋連続体の導入不良を判定する導入不良判定手段とを有し、前記分包袋検知センサが、前記水平部における前記分包袋連続体の通過方向を基準として両側方に設けられており、前記両側方に設けられた前記分包袋検知センサの一方のみにおいて分包袋連続体が検知されることを条件として、前記導入不良判定手段により、前記導入部において前記分包袋連続体の導入不良が生じているものと判定されるものであることが望ましい。
かかる構成によれば、分包袋連続体の捩れを正確に検出でき、分包袋連続体の導入不良に伴う鑑査不良を防止することができる。また、分包袋連続体が捩れたまま鑑査部に向けて導入されることを防止し、分包袋連続体の破損等を防止することができる。
本発明の薬剤鑑査装置は、一服用分毎に分包した分包袋が並んだ帯状の分包袋連続体の状態で供給された薬剤につき、各分包袋毎に鑑査し、鑑査結果を表示可能なものであり、前記分包袋連続体を構成する分包袋を服用時期により分類可能であり、各服用時期に相当する複数の分包袋うち、任意の分包袋についての鑑査結果を選択的に表示可能であることを特徴とするものであっても良い。
かかる構成によれば、鑑査結果のうち、任意のものについてのみ選択的に確認したいという要望に対応することが可能となる。これにより、医師や薬剤師等による鑑査結果の確認作業をより一層簡略化することができる。
本発明の薬剤分包装置は、上述した本発明の薬剤鑑査装置と、処方にあわせて薬剤を供給可能な薬剤供給手段と、薬剤供給手段から供給された薬剤を一包分ずつ溜め置き、排出することが可能な薬剤準備手段とを備えており、前記薬剤準備手段から排出された薬剤の個数を前記薬剤鑑査装置によって鑑査可能であることを特徴とするものである。
本発明の薬剤分包装置は、上述した本発明の薬剤鑑査装置を備えたものであり、薬剤準備手段から排出された薬剤の個数を一包分ずつ正確に鑑査することができる。
本発明によれば、固形薬剤の重なりや接触、起立など、分包紙の存在などに伴う鑑査不良が起こらず、固形薬剤の数量を適切に鑑査可能な薬剤鑑査装置、及び当該薬剤鑑査装置を備えた薬剤払出装置を提供することができる。
≪≪第一実施形態≫≫
続いて、本発明の一実施形態に係る薬剤鑑査装置10、及びこの薬剤鑑査装置10を備えた薬剤分包装置100について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、先ず本実施形態の特徴的部分である薬剤鑑査装置10について説明し、その後薬剤分包装置100について説明する。なお、本実施形態において示す例は、本発明についていくつか想定される実施形態のうちの一例に過ぎない。
≪薬剤鑑査装置10について≫
薬剤鑑査装置10は、分包紙に一服用分ずつ分包された状態で供給された鑑査対象の薬剤の数量及び種類を、一包ずつ鑑査する装置である。図1に示すように、薬剤鑑査装置10は、筐体10aの側面に鑑査対象の薬剤を導入するための導入部10bを有し、正面に操作パネル10cを有する。薬剤は、透光性を有する分包紙によって包装され、図7に示すように外部から視認可能な状態で薬剤鑑査装置10に供給される。
また、図7に示すように、薬剤鑑査装置10には、一服用分の薬剤を包装した分包袋bが複数、連続するように形成された分包袋連続体Bの状態で供給される。また、分包袋連続体Bの先頭部分には、処方情報に関連づけられた情報媒体Iが付されている。情報媒体Iとしては、従来公知のバーコード等の識別標識、ICチップ等の情報記録媒体、処方情報についての文字情報、記号等を用いることができる。本実施形態では、分包袋連続体Bが、先頭部分に処方情報に関連づけられたバーコードが印刷等により付された状態で供給される。
図2〜図6に示すように、薬剤鑑査装置10は、搬送手段12、鑑査部14、振動手段16、撮影手段18、照明装置20、及び制御装置22等を備えている。なお、図示しないが、分包袋連続体Bに印刷された、各種情報(患者名、服用時期、薬種等)を分包袋連続体Bの薬剤と区別するためのフィルタを撮影手段に設けても良い。搬送手段12は、薬剤を分包してなる分包袋連続体Bを取り込み、搬送するためのものである。搬送手段12は、従来公知のベルトコンベア、ローラコンベア等によって形成することが可能である。本実施形態では、搬送手段12としてベルトコンベアが採用されている。搬送手段12は、鑑査部14に対して搬送方向上流側に設けられた供給検知手段24aにより分包紙によって形成された分包袋連続体Bが検知された場合に、後に詳述する制御装置22の制御の下で動作し、分包袋連続体Bを順次下流側に向けて搬送する。また、搬送手段12は、下流端に設けられた排出検知手段24bにより、分包紙の分包袋連続体Bの末端が鑑査部14よりも下流側に排出されたことが確認された場合に、動作を停止する。
鑑査部14は、搬送手段12によって形成される搬送経路の略中央部に設けられている。鑑査部14は、搬送手段12により搬送されてきた薬剤が配置される部分である。すなわち、鑑査部14は、分包紙によって形成された一包分の分包袋bが収まる程度の大きさを有する領域である。そのため、分包袋bが鑑査部14上に到来するように搬送手段12によって分包袋連続体Bを搬送することにより、鑑査対象である薬剤が分包袋b(分包紙)によって包装された状態で鑑査部14上に配置された状態になる。
ここで、鑑査部14は、搬送手段12による薬剤(分包袋連続体B)の搬送方向上流側から下流側に向けて複数の領域(鑑査領域26)に分割されている。本実施形態においては、鑑査部14が上流側から下流側に向けて3つの鑑査領域26a,26b,26cに分割されている。
振動手段16は、鑑査部14に配置された分包袋b(薬剤)に対して振動を付与するものである。振動手段16は、各鑑査領域26a,26b,26c毎に独立的に振動を発生させることが可能とされている。本実施形態において採用されている振動手段16は、振動発生源として機能する板バネ28a,28b,28cと、板バネ28a,28b,28cに対して衝撃を付与する衝撃付与手段30とを有する。
板バネ28a,28b,28cは、それぞれ各鑑査領域26a,26b,26c毎に対応して設けられている。板バネ28a,28b,28cは、鑑査部14に到来した分包袋b(分包袋連続体B)の直下に位置し、分包袋b及びこれに収容されている薬剤に対して振動を付与することができる。板バネ28a,28b,28cは、搬送手段12による分包袋連続体Bの搬送方向に対して略直交するように設けられている。図6及び図7に示すように、板バネ28a,28b,28cは、一端側に設けられた固定部32a,32b,32cを固定することにより片持ち状に支持されている。固定部32a,32b,32cは、鑑査部14(鑑査領域26a,26b,26c)から離れた位置において薬剤鑑査装置10の装置本体側に固定されている。
衝撃付与手段30は、板バネ28a,28b,28cの他端側(自由端)の直下に設けられている。衝撃付与手段30は、モータ34a,34b,34cと、モータ34a,34b,34cの回転軸36a,36b,36cに対して一体的に取り付けられたバチ部38a,38b,38cとを有し、それぞれ板バネ28a,28b,28c(鑑査領域26a,26b,26c)毎に対応して設けられている。モータ34a,34b,34cはそれぞれ独立的に作動可能とされている。また、バチ部38a,38b,38cは、回転軸36a,36b,36cに対して略直交するように設けられており、回転軸36a,36b,36cの回転に伴い、板バネ28a,28b,28cの自由端に対して衝突することにより衝撃を付与可能とされている。従って、衝撃付与手段30は、各板バネ28a,28b,28c(鑑査領域26a,26b,26c)に対して独立的に衝撃を加え、上下方向への振動を発生させることができる。
撮影手段18は、鑑査部14に配置された薬剤を撮影するためのものであり、鑑査部14の鉛直上方に配置されている。また、照明装置20は、撮影手段18による撮影に際して鑑査部14を照射するためのものであり、撮影手段18と同様に鑑査部14よりも上方に配置されている。
照明装置20は、環状に形成された発光部42を有する。発光部42は、全周に亘って多数設けられた発光ダイオード44を光源として発光するものである。鑑査部14に対して鉛直上方に外れた位置に鑑査部14と同等の領域(仮想領域40)を想定した場合に、発光部42は、この仮想領域40を取り囲むように設けられている。各発光ダイオード44の光軸は、発光部42側に向けられている。すなわち、各発光ダイオード44の光軸は、発光部42の径方向内側(仮想領域40の外側から内側に向かう方向)であって、下方に向かう方向に向けられている。これにより、図4に矢印で示すように鑑査部14に分包紙によって分包された状態で配置された各薬剤を斜め上方から照射し、各薬剤の輪郭を際だたせることが可能となる。
制御装置22は、薬剤鑑査装置10の動作及び薬剤鑑査を実行するために設けられたものであり、パーソナルコンピュータ、電子部品等を搭載した専用基板等によって構成される。図8に示すように、制御装置22は、薬剤鑑査装置10を構成する各部の動作制御を行う動作制御部50と、及び各部の動作により得られた情報に基づいて情報処理を行い、各分包袋bに収容されている薬剤の鑑査を行う情報処理部60とを備えている。動作制御部50は、上述した搬送手段12、振動手段16、撮影装置18、及び照明装置20の動作制御を行うものである。
動作制御部50は、分包紙によって形成された分包袋連続体Bが供給されたことが鑑査部14に対して上流側に設けられた供給検知手段24aより検知された場合に、搬送手段12を作動させて分包袋連続体Bを鑑査部14に移送し、後に詳述する鑑査動作が完了する度に1包分の分包袋bに相当する分ずつ順次下流側に移送させる制御を行う。また、動作制御部50は、搬送手段12による分包袋連続体Bの順送り動作を開始した後、鑑査部14の下流側に配された排出検知手段24bの検知結果に基づき、鑑査対象の薬剤を分包した全ての分包袋bが鑑査部14を通過し終えたことを確認する。具体的には、動作制御部50は、排出検知手段24bにより分包袋連続体Bが検知された後、排出検知手段24bにより分包袋連続体Bが検知されない状態になった時点で分包袋連続体Bの末端部分が鑑査部14よりも下流側に至り、全ての分包袋bが鑑査部14を通過し終えたものと判断する。全ての分包袋bが鑑査部14を通過し終えたことが確認されると、動作制御部50は、その後搬送手段12の動作を停止させる。
動作制御部50は、鑑査対象の薬剤を収容した分包袋bが鑑査部14に到達すると、撮影装置18を作動させ、鑑査部14内に配置された分包袋b及びこれに収容されている薬剤を撮影することができる。また、動作制御部50は、撮影装置18による撮影に際して照明装置20を作動させることにより鑑査部14を照明することができる。また、動作制御部50は、後に詳述する情報処理部60からの指令に基づき、振動手段16を作動させ、鑑査部14を構成する各鑑査領域26a,26b,26c毎に振動を発生させることができる。
情報処理部60は、分布検知手段62と、振動制御手段64と、薬剤情報検出手段66と、処方情報取得手段68と、照合手段70とを有する。分布検知手段62は、撮影手段18により撮影された画像に基づき、分包袋b内に収容された状態で鑑査部14に到来した薬剤の分布状況を検知するものである。分布検知手段62の検知結果は、分布状況検知情報として振動要否判断手段64に向けて発信される。なお、分布検知手段62は、分包袋連続体Bに印刷された各種情報(患者名、服用時期、薬種等)を、分包袋連続体Bの薬剤と区別するためのフィルタリング処理を実施可能なものであっても良い。
振動制御手段64は、分布検知手段62から受信した分布状況検知情報に基づき、振動手段16により振動を発生させる必要があるか否かの判断を行い、この判断結果に基づいて振動手段16の動作制御を行うことができる。具体的には、振動制御手段64は、分布情報検知情報に基づき、鑑査部14を構成する各鑑査領域26a,26b,26cにおいて薬剤が偏在している領域があるか否かを確認する。振動制御手段64は、薬剤が偏在していることが確認された場合に振動手段16を作動させる必要があると判断し、薬剤が偏在していないことが確認された場合に振動手段16を作動させる必要がないと判断する。
また、振動手段16を作動させる必要があると判断された場合には、振動制御手段64は、薬剤の偏在状況に基づいて、鑑査領域26a,26b,26cのうちいずれの領域において振動を発生させるべきかを判断し、振動手段16を作動させるための指令を動作制御部50に向けて発信することができる。具体的には、振動制御手段64は、板バネ28a〜28cのうち、鑑査領域26a,26b,26cにおいて最も薬剤が多く存在している領域に対応するものを振動させ、他の領域に対応して設けられたものについては振動させないように衝撃付与手段30の動作制御を行うよう、動作制御部50に向けて指令を発信する。これにより、鑑査領域26a,26b,26cのうちいずれに偏在していた薬剤を他の領域に移動させ、薬剤同士の重なりや接触を解消する。
薬剤情報検出手段66は、撮影手段18により撮影された画像に基づき、薬剤の種類の特定、及び計数を行うものである。上述した振動手段16を作動させた場合には、振動手段16の作動後に撮影手段18によって撮影された画像が、薬剤情報検出手段66による薬剤の種類の特定及び計数に用いられる。また、振動手段16を作動させる必要がない場合には、鑑査部14に鑑査対象の薬剤(分包袋b)が到来した時点で撮影手段18によって撮影された画像が、薬剤情報検出手段66による薬剤の種類の特定及び計数に用いられる。
薬剤情報検出手段66は、撮影手段18によって得られた画像から、種々の方法により薬剤の種類を特定することができる。例えば、撮影手段18により得られた画像中に含まれる薬剤の外縁形状を特定することにより、薬剤の大きさや形状を割り出すことができる。また、撮影画像中における薬剤に相当する領域の色彩情報に基づき、薬剤の色を特定することができる。薬剤情報検出手段66は、予め準備されている薬剤の種類、形状、大きさ、色彩等の薬剤の特徴についてのデータベースに基づき、鑑査対象である薬剤の種類を特定することができる。また、薬剤情報検出手段66は、薬剤の表面に刻印や印刷により付されている情報に基づき、薬剤の種類等を特定することも可能である。
また、薬剤情報検出手段66は、撮影手段18によって得られた画像から、種々の方法により薬剤の数量を特定することができる。例えば、撮影手段18により得られた画像中に含まれる薬剤の外縁を特定し、外縁によって囲まれた領域の数を計数することにより薬剤の数量を把握することができる。また、大きさ及び形状が同程度のものが撮影画像中にいくつ含まれているかを確認すること等により、薬剤の種類毎に数量を計数することも可能である。
処方情報取得手段68は、処方情報に基づき、各分包袋bに分包されている薬剤の種類及び数量についての処方情報を取得することができる。本実施形態においては、分包袋bの連続体である分包袋連続体Bの先端部分に付されたバーコードを読み取り可能なリーダ装置72が、鑑査部14に対して搬送手段12の搬送方向上流側の位置に設けられている。処方情報取得手段68は、処方情報が蓄積されている外部記録手段(図示せず)にアクセス可能とされており、リーダ装置72により読み取ったバーコード、ID番号等の情報媒体Iに基づき、外部に設けられた記録装置等から処方情報を取得することができる。
照合手段70は、上述した薬剤情報検出手段66により検出された薬剤の種類及び数量に関する情報と、処方情報取得手段68により取得された処方データとを照合し、分包袋b内に収容されている薬剤の種類及び数量が処方情報通りであるか否かを確認することができる。
制御装置22は、上述した構成に加え、照合手段70による照合により得られた鑑査結果を示す情報を制御装置22が備えるディスプレイ22a等の出力デバイスに向けて出力する鑑査結果出力手段80と、鑑査結果の修正等を実行するための鑑査結果調整手段82とを有する。本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、鑑査結果出力手段80により出力された情報を、図9及び図10に示すようにしてディスプレイ22aに表示することができる。
図9に示す表示画面(以下、「総合インターフェイス」とも称す)は、画像鑑査結果を一覧表示するものである。総合インターフェイスには、処方属性情報欄81、包特定情報欄82、薬品一覧表示欄83等の各種の情報を表示する表示欄と、メニューボタン84、完了ボタン85、一括変更ボタン86等のボタン類とが表示される。
処方属性情報欄81には、後に詳述する薬剤分包装置100の薬剤分包部120に設けられた記録装置(図示せず)等から取得した処方情報に基づき、鑑査対象である薬剤が処方された患者の氏名、ID番号等の患者特定情報、包数、処方された薬剤の服用日数、服用回数等の情報が表示される。また、包特定情報欄82には、現在選択している分包袋bが先頭から何包目に相当するのかかが表示される。
薬品一覧表示欄83は、分包袋連続体Bを構成する各分包袋bについて、鑑査を行うために使用された画像をサムネイル形式で表示するために設けられた欄である。薬品一覧表示欄83には、鑑査結果に応じてサムネイル画像の表示形態を異ならせて表示される。具体的には、処方情報と合致する数量及び種類の薬剤が分包されていると判断された分包袋b(以下、「正常分包袋b」とも称す)のサムネイル画像と、数量及び種類のいずれか一方又は双方が処方情報と相違していると判断された分包袋b(以下、「不良分包袋b」とも称す)のサムネイル画像とが、色や線種等が異なる枠で囲んで表示される。
メニューボタン84は、操作メニューを一覧表示するためのボタンである。また、完了ボタン85は、一連の鑑査結果を確定し、終了するためのボタンである。一括変更ボタン86は、サムネイル表示されている全ての分包袋bの鑑査結果の承認、非承認を一括して変換するために設けられたボタンである。本実施形態では、ディスプレイ22aとしてタッチパネル方式のものが採用されており、前述した各ボタン84,85,86が表示された部分に指等を接触させることにより、後に詳述する各種動作を実行させることができる。
図10に示す表示画面(以下、「個別インターフェイス」とも称す)は、図9の総合インターフェイスにおいて、薬品一覧表示欄83に表示されているサムネイル画像を選択することにより表示されるインターフェイスである。個別インターフェイスにおいては、選択されたサムネイル画像に係る分包袋bに収容されている薬剤の鑑査結果の詳細を表示し、適宜修正等することができる。
個別インターフェイスには、処方属性情報欄90、画像情報欄91、包特定情報欄92、鑑査詳細情報欄93、鑑査総合情報欄94等の各種の情報を表示する表示欄が設けられている。鑑査詳細情報欄93及び鑑査総合情報欄94には、それぞれ鑑査情報の修正、変更、確定等を行うためのボタン95,96が表示される。また、個別インターフェイスには、ボタン95,96に加えて、メニューボタン97、薬包一覧ボタン98、処方完了ボタン99等が表示される。個別インターフェイスにおいて、各ボタン95,96,97,98,99が表示された部分に指等を接触させることにより、後に詳述する各種動作を実行させることができる。
個別インターフェイスを構成する各部についてさらに具体的に説明すると、処方属性情報欄90には、上述した総合インターフェイスの処方属性情報欄81と同様に、鑑査対象である薬剤が処方された患者の氏名、ID番号等の患者特定情報、包数、処方された薬剤の服用日数、服用回数等の情報が表示される。また、画像情報欄91には、選択された分包袋bについて、薬剤の鑑査を行うために使用された画像が表示される。また、包特定情報欄92には、現在選択している分包袋bが先頭から何包目に相当するのかかが表示される。
鑑査詳細情報欄93には、現在選択されている分包袋bについて、薬剤情報検出手段66により取得された鑑査情報(薬剤の種類及び数量)が、薬剤の剤形を示した画像と併記した状態で一覧表示される。ここで、鑑査詳細情報欄93に一覧表示されている薬剤の名称及び数量は、外部に設けられた記録装置等から取得された正規の処方情報であり、鑑査結果については各薬剤毎に対応して設けられたボタン95の形態で表示される。具体的には、照合手段による照合の結果、正確に分包されていると判断された薬剤については「OK」との表示がなされ、誤って分包されていると判断された薬剤については「NG」との表示がなされる。また、照合手段70による照合によっては正否を正確に判断できない薬剤については「類似有り」との表示がなされる。
鑑査詳細情報欄93において、薬剤の名称表示部分、あるいは剤形を示した画像表示部分に接触して選択すると、画像表示欄91において選択された薬剤に相当する領域が明示される。具体的には、選択された薬剤に相当する領域を取り囲むように線を、他とは異なる色で表示すること、あるいは各薬剤毎に対応して設けられたボタン95の色と同じ色で表示すること等により識別可能なように表示される。
鑑査詳細情報欄93に表示されているボタン95を指等で接触することにより選択すると、鑑査結果を修正することができる。具体的には、ボタン95に「OK」あるいは「NG」との鑑査結果が表示されている薬剤について、鑑査結果が誤っているとオペレータが目視により判断した場合には、該当する薬剤に対応したボタン95を選択することにより鑑査結果を変更することができる。このようにして鑑査結果を「NG」である状態から変更する場合には、ボタン95の表示が「目視OK」との表示に切り替えられる。
同様に、鑑査結果を「OK」である状態から変更する場合には、ボタン95の表示が「目視NG」との表示に切り替えられる。ボタン95に「類似有り」との表示がなされている場合についても同様に、オペレータが目視により正確な薬剤であると判断した場合には「目視OK」に切り替えることができ、誤った薬剤であると判断した場合には「目視NG」に切り替えることができる。また、ボタン96を選択することにより、詳細情報表示欄93においてボタン95に表示されている鑑査結果を一括して変換することが可能である。
また、鑑査詳細情報欄93に一覧表示されている薬剤名と、画像情報欄91に表示されている薬剤の画像との関連づけを行う場合には、画像情報欄91において薬剤が表示されている領域に指等で接触し、そのまま鑑査詳細情報欄93において薬品名が表示された部分にスライドさせる。すなわち、画像情報欄91において薬剤の画像が表示されている部分を指等で接触した後、いわゆるドラッグ・アンド・ドロップ操作を行うことにより、薬剤名と薬剤の画像との関連づけがなされる。このようにして関連づけられた薬剤については、ボタン95の表示が「目視OK」に切り替えられる。
また、上述した薬剤情報検出手段66及び照合手段70による鑑査の結果、画像中に判別不能なものが含まれている場合には、鑑査詳細情報欄93にその旨が記載される。具体的には、図10に示す例のように、薬剤名及び数量が「?」マーク等の記号あるいは文字等によって表示される。
鑑査総合情報欄94には、選択されている分包袋b全体について、薬剤の数量と、識別結果とが表示される。具体的には、鑑査総合情報欄94には、処方情報通りの数量であるか否かを表示する薬品数表示部94aと、ボタン95に表示されている鑑査結果が「OK」あるいは「目視OK」である薬剤の数量を表示する識別結果表示部94bとが設けられている。図10に示す例においては、判別不能とされている薬剤が存在しているため、処方情報において指示されている薬剤の数量が7個であるのに対し、8個の薬剤が検出されたものと認識されているため、薬品数表示部94aに8/7との表示がなされている。また、処方情報において指示されている薬剤の数量が7個であるのに対し、鑑査結果が「OK」あるいは「目視OK」とされている薬剤が4個存在するため、識別結果表示部94bに4/7との表示がなされている。
メニューボタン97は、上述したメニューボタン84と同様に、操作メニューを一覧表示するためのボタンである。また、薬包一覧ボタン98は、上述した総合インターフェイスを表示させるためのボタンである。また、処方完了ボタン99は、個別インターフェイスを閉じるためのボタンである。処方完了ボタン99を選択すると、個別インターフェイス上において設定変更された情報が鑑査情報として保存される。
≪薬剤分包装置100について≫
薬剤分包装置100は、入力された処方データに則って薬剤を分包して排出することができる装置である。図11に示すように、薬剤分包装置100は、上述した薬剤鑑査装置10によって構成される薬剤鑑査部110と、薬剤を分包するための薬剤分包部120とを有する。薬剤分包部120の本体の内部には、薬剤供給手段130、薬剤準備手段150、及び薬剤包装手段180が設けられている。
薬剤供給手段130は、固形薬剤を貯蔵すると共に、処方に応じて固形薬剤を適宜排出し、薬剤包装手段180に供給するために設けられたものである。薬剤供給手段130は、供給部132を備えている。供給部132は、固形薬剤を貯蔵しておき、処方にあわせて固形薬剤を薬剤準備手段150に向けて排出する機能を有する。また、薬剤準備手段150は、供給部132から供給された固形薬剤を一包分ずつ溜めておき、薬剤包装手段180に向けて順次排出する機能を有する。
供給部132は、固形薬剤を供給するための手段としてフィーダ式供給部136、及び手撒式供給部138を有する。これに加えて、供給部132は、待機ホッパー140、収集ホッパー142、及び手撒ホッパー144等を備えている。フィーダ式供給部136は、カセット型の薬剤フィーダ146を多数備え、各薬剤フィーダ146に予め薬種ごとに準備しておいた固形薬剤を処方にあわせて排出することができるものである。フィーダ式供給部136の下方には待機ホッパー140が配置されている。待機ホッパー140は、各薬剤フィーダ146から払い出された固形薬剤を一包分集めた後、一度に排出することができる。待機ホッパー140から排出された固形薬剤は、待機ホッパー140の下方に設けられた収集ホッパー142を介して一包分ずつ薬剤準備手段150に供給される。
また、手撒式供給部138は、フィーダ式供給部136とは別に用意されたものであり、フィーダ式供給部136と同様に固形薬剤を薬剤準備手段150側に向けて供給することができる。
薬剤準備手段150は、上述した供給部132よりも下方側に配置されている。薬剤準備手段150は、上述した収集ホッパー142や手撒ホッパー144を介して薬剤供給手段130側から受け入れた固形薬剤を一包分ずつ溜め置くと共に、薬剤包装手段180に向けて供給することができるものである。
薬剤包装手段180は、予め準備されている帯状の分包紙を折り曲げ、溶着等することにより各分包袋bを形成すると共に、薬剤準備手段150側から供給されてきた薬剤を一服用分ずつ分包袋bに包装することができる。これにより、分包袋bが多数連続した帯状の分包袋連続体Bが形成される。薬剤包装手段180によって形成された分包袋連続体Bは、薬剤分包部120の本体に設けられた取出口200から薬剤鑑査部110に向けて排出される。
ここで、薬剤鑑査部110を構成する薬剤鑑査装置10側に、薬剤分包部120の取出口200に対して接続可能な接続部210が設けられており、この接続部210を介して薬剤鑑査部110と薬剤分包部120とが連結されている。また、取出口200から排出された分包袋連続体Bを接続部210を介して薬剤鑑査部110内に導入し、薬剤鑑査装置10に供給することができる構成とされている。そのため、薬剤分包装置100においては、薬剤包装手段180によって分包袋連続体Bが形成されると、その後、この分包袋連続体Bを構成する各分包袋bに収容されている薬剤の鑑査を連続的に実施することができる。
上述したように、本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、鑑査部14に配置された薬剤を撮影手段18によって撮影した画像に基づき、分布検知手段62により鑑査部14における薬剤の分布状況を検知し、鑑査領域26a〜26cのうち最も多くの薬剤が存在する領域において振動を発生させる。よって、薬剤分包部120から薬剤鑑査装置10に供給された分包袋b中において、仮に薬剤同士の重なりや接触が発生している状態、あるいは薬剤が起立している状態であったとしても振動を付与することにより分散及び離反させると共に、倒れて表面の印字や刻印が見える状態とした上で薬剤情報検出手段66により薬剤の数量及び種類を検出可能することが可能となる。従って、薬剤鑑査装置10は、分包紙によって分包された状態の薬剤であっても、その数量及び種類を正確に把握することが可能である。
本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、振動手段16が、薬剤が配置されている薬剤の数量が最も多い鑑査領域26a〜26cにおいて振動を発生させ、他の鑑査領域26a〜26cにおいて振動を発生させないこととされている。これにより、分包袋b中において薬剤が他の薬剤と重なった状態や接触した状態で封入されていたり、起立した状態で封入されていたとしても、これらの薬剤をスムーズかつ効果的に離反及び分散させることが可能となる。従って、薬剤鑑査装置10においては、各薬剤を一つずつ正確に把握することができる。また、薬剤を倒れた状態とすることにより、薬剤の表面が正確に把握できることに加え、表面に付された印字あるいは刻印等まで正確に把握可能となる。従って、薬剤鑑査装置10においては、薬種特定を極めてスムーズかつ正確に実施することができる。
本実施形態においては、鑑査領域26a〜26cのうち薬剤の数量が最も多い領域において振動を発生させ、他の領域において全く振動を発生させない構成とされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、薬剤の数量に応じて各鑑査領域26a〜26cにおいて発生する振動の大きさを変化させる等しても良い。具体的には、鑑査領域26a〜26cのうち最も多くの薬剤が分布している領域において最大の振動を発生させ、最も薬剤が少ない領域において微小な振動を付与し、薬剤の分布が中間程度である領域において中間程度の振動を発生させることとしても良い。すなわち、鑑査領域26a〜26cにおいて多くの薬剤が存在している領域において、これよりも薬剤の数量が少ない領域よりも優先的に振動を発生させることとしても良い。
また、薬剤鑑査装置10は、分布検知手段62により検知された鑑査部14における薬剤の分布状況に応じて振動発生の要否を判定し、振動を発生させる必要があると振動制御手段64によって判断された場合に、振動手段16によって振動を発生させた後に撮影手段18によって撮影した画像に基づいて鑑査を行うこととしている。また、振動制御手段64により振動を発生させる必要がないと判断された場合には、振動手段16により振動を発生させることなく、撮影手段18により撮影された画像に基づいて分包袋b中に含まれている薬剤の数量及び種類についての鑑査を行う。このように、薬剤鑑査装置10においては、薬剤を分散させる必要がある場合にのみ振動手段16を作動させるため、薬剤の鑑査精度を向上しつつ、振動手段16を作動させることによる鑑査速度の低下を最小限に抑制することができる。
本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、振動手段16が、板バネ28a〜28cの弾性力により振動を発生させることが可能なものとされているため、装置構成が極めてシンプルである。なお、本実施形態においては、振動手段16の震動源として板バネ28a〜28cを用いた構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば超音波振動機等によって代替されても良い。また、振動手段16は、板バネ28a〜28cにより上下方向への振動を付与可能なものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく水平方向等、上下方向とは異なる方向に振動を付与可能なものであっても良い。
本実施形態において採用されている振動手段16は、板バネ28a〜28cのうち、非振動状態とされる鑑査領域26a〜26cに対応して設けられた板バネ28a〜28cについては、衝撃付与手段30により衝撃を付与しないことにより非振動とするものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、板バネ28a〜28cを押し下げることが可能な押下手段等を設け、板バネ28a〜28cのうち非振動状態とされるものを前述した押下手段等によって押し下げ、分包紙(分包袋b)から離れた状態にすることとしても良い。このような構成とすることにより、非振動状態とすべき鑑査領域26a〜26cにおいて、薬剤に対して振動が付与されることを確実に防止し、より一層的確に薬剤を分散させることが可能となり、鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
薬剤鑑査装置10においては、板バネ28a〜28cの一端側に設けられた固定部32a〜32cが、鑑査領域26a〜26cから離れた位置において固定されている。そのため、板バネ28a〜28cは鑑査領域26a〜26cのいずれの位置においても略均一の振動を発生させることが可能であり、鑑査部14上において薬剤をスムーズかつ確実に分散させることができる。
薬剤鑑査装置10において、板バネ28a,28b,28cは、鑑査部14に到来した分包袋b(分包袋連続体B)の直下に配置され、分包袋bに対して直接接触しており、分包袋b及びこれに収容されている薬剤に対して振動を付与することができる。また、板バネ28a〜28cにおいて発生する振動は、衝撃付与手段30により衝撃を加えられた後、自由に、また次第に減衰する減衰振動である。この振動は、従来公知の超音波振動機やバイブレータ等の機械的な振動付加機構により発生する常時一定の振動とは異なり、薬剤を分散させるために適切な振動である。従って、薬剤鑑査装置10においては、鑑査領域26a〜26cの一部に薬剤が偏在した状態で供給されてきたとしても、板バネ28a〜28cの振動に伴う分散効果により鑑査部14全体にスムーズかつ略均等に分散させることができる。
なお、薬剤鑑査装置10において衝撃付与手段30により板バネ28a〜28cに対して衝撃を加える回数は、一回であっても、複数回であっても良い。また、薬剤鑑査装置10においては、上述したようにモータ32a〜32cを作動させることにより、回転軸36a〜36cに取り付けられたバチ部38a〜38cによって間欠的に衝撃を加える例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、連続的に衝撃を加える事としても良い。
本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、鑑査領域26a〜26cから鉛直方向に外れた位置に想定される仮想領域40を囲むように環状の照明装置20が設けられている。また、照明装置20の発光部42に設けられた発光ダイオード44は、光軸が斜め下方に存在する鑑査領域26a〜26c側に向けられている。そのため、鑑査部14に配置された薬剤を外側から照射した状態で撮影手段18により撮影することが可能であり、薬剤の輪郭が明確に写るように画像を取得することができる。従って、薬剤鑑査装置10においては、撮影手段18によって得られた画像を薬剤情報検出手段66により処理する際に薬剤の輪郭や色を容易かつ正確に把握することが可能であり、鑑査不良を最小限に抑制することができる。
本実施形態においては、照明装置20を鑑査領域26a〜26cから上方に離れた位置、すなわち撮影手段18と同一方向に離れた位置に設置しているが、鑑査領域26a〜26cから照明装置20までの高さは可能な限り低い方が好ましい。なお、照明装置20は、鑑査領域26a〜26cの側方に設けられていても良い。また、照明装置20は、鑑査領域26a〜26cよりも下方、すなわち撮影手段18とは反対側に離れた位置に設置されていても良い。このように照明装置20の位置を変更する場合についても、薬剤の輪郭が際立つように画像を取得するためには、鑑査領域26a〜26cの外側から内側に向けて光を照射可能なように照明装置20を設置することが望ましい。
本実施形態においては、環状の照明装置20を鑑査部14の上方に配置することにより、鑑査部14に配された薬剤の輪郭や色を正確に把握可能とした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図14及び図15に示す拡散光照明装置160のように拡散光を発生させることが可能な照明装置を照明装置20に加えて、あるいは照明装置20に代えて鑑査部14の上方に設置したものであっても良い。
具体的には、図14及び図15に示す例においては、拡散光照明装置160が照明装置20に加えて設置されている。拡散光照明装置160は、半球型(いわゆるドーム型)の外観形状を有し、平面状に形成された円形の発光面162において拡散光を発生させることが可能とされている。拡散光照明装置160は、環状の照明装置20の上に、発光面162を下方に向けた状態で搭載されている。発光面162は、鑑査部14と略平行とされており、照明装置20によって取り囲まれた仮想領域40を介して鑑査部14に向けて拡散光を照射することが可能とされている。
拡散光照明装置160を上述したように設置することにより、鑑査部14上に配置された薬剤が影を生じることなく照明され、薬剤の輪郭、表面に付された刻印あるいは印字等を鮮明に把握可能な状態になる。これにより、薬剤の数量あるいは種類の検出精度をより一層向上させることが可能となる。
なお、図14及び図15に示す例において、拡散光照明装置160は、照明装置20上に搭載されているが、必ずしも照明装置20上に搭載されている必要はなく、照明装置20から離れた位置に設置されていても良い。また、拡散光照明装置160は、必要に応じて上下動可能なものであっても良く、着脱可能なものであっても良い。
本実施形態の薬剤鑑査装置10は、処方データに基づき、処方情報取得手段68が鑑査対象の薬剤に係る処方情報を取得し、この処方情報と薬剤情報検出手段66により取得された検出情報とを照合手段70によって照合するものである。そのため、薬剤鑑査装置10によれば、いかなる種類の薬剤がどれだけ分包袋b内に収容されているかについての鑑査だけでなく、分包袋bに収容されている薬剤が処方データに合致しているか否かについての鑑査も行うことができ、利便性に優れている。なお、本実施形態では、照合手段70を設け、これにより処方データと検出情報との照合を行える構成としたものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、照合手段70を備えていないものであっても良い。すなわち、薬剤鑑査装置10は、分包袋bに収容されている薬剤の種類や数量を鑑査のために検知するだけのものであっても良い。
また、本実施形態の薬剤分包装置100は、薬剤鑑査部110を構成する薬剤鑑査装置10側に、薬剤分包部120の取出口200に対して接続可能な接続部210が設けられている。これにより、接続部210を介して薬剤鑑査部110と薬剤分包部120とを連結し、両者を一体的に連携作動させ、薬剤の分包から鑑査に至る作業を一連の作業として実施できる。
なお、本実施形態においては、薬剤分包装置100を構成する薬剤鑑査部110として薬剤鑑査装置10を組み込んだ構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薬剤鑑査装置10が単独で用いられても良い。また、接続部210を設けることにより薬剤鑑査装置10を備えた薬剤鑑査部110と、薬剤分包部120とを一体化する構成を例示したが、薬剤分包装置100は、薬剤鑑査部110及び薬剤分包部120を一体化させることなく使用するものであっても良い。この場合についても、薬剤鑑査部110及び薬剤分包部120を連携作動可能とすることにより、薬剤の分包から鑑査に至る一連の作業の効率を向上させうる。
本実施形態では、分包紙によって分包した状態の薬剤を鑑査対象とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、分包紙によって分包する前の薬剤を鑑査部14に配置し、鑑査を行うものであっても良い。
本実施形態では、鑑査部14に配置された薬剤の数量及び種類の双方を鑑査するものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薬剤の数量及び種類のいずれか一方のみを鑑査するものであっても良い。
また、薬剤鑑査装置10においては、薬剤を分包してなる分包袋bが分包袋連続体Bの状態で連続的に供給され、鑑査部14に順次配置される。そのため、鑑査精度をより一層向上させるためには、鑑査部14の中心に各分包袋bの中心が到来するように分包袋連続体Bを搬送する際の位置決め精度を向上させるよう、何らかの方策を講じることが望ましい。具体的には、例えば分包袋連続体Bにおいて隣接する分包袋b間に形成される溶着部分、あるいはミシン目等を目印とし、この目印を基準とすることにより鑑査部14に対する分包袋bの位置決め精度を向上させることが可能である。また、分包袋bの長さが予め判明している場合には、例えば供給検知手段24aによって分包袋連続体Bの先端部分等の基準となる部分が検出された後、分包袋連続体Bを分包袋bの長さ分ずつ順次繰り送るようにしてもよい。
本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、板バネ28a〜28cにより鑑査領域26a〜26cに到来した分包袋bを弾いて振動を付与することにより、薬剤の起立、重なり、接触等を解消するものであるが、さらに別の振動を付与する等により薬剤の起立等を解消することとしても良い。
具体的には、薬剤鑑査装置10においては、搬送手段12により薬剤を分包した分包袋連続体Bを鑑査部14に向けて一定方向にのみ移動させる例を例示したが、これに代えて搬送方向上流側から鑑査部14に向かう途中において、分包袋連続体Bを水平方向に小刻みに往復動させることにより薬剤に対して水平方向の振動(揺動)を付与するようにしてもよい。言い換えれば、分包袋連続体Bの送り出し及び引き戻しを交互に実施し、脈動させることにより、各分包袋b内の薬剤に対して水平方向への振動を付与してもよい。このようにすることにより、分包袋b内に起立状態で封入されている薬剤が鑑査部14に到達するまでの間に倒れた状態になる。また、他の薬剤と重なっていた薬剤や接触していた薬剤を確実に分離及び離反させることが可能となる。
さらに、上述したように搬送方向上流側から鑑査部14に向かう途中において分包袋連続体B(分包袋b)を水平方向に揺動することにより、鑑査部14に到達するまでの間に薬剤を倒れて分散した状態とすることが可能である。従って、鑑査部14において板バネ28a〜28cにより振動を付与せねばならない可能性を低減させることが可能となる。これにより、鑑査業務に要する時間をより一層短縮することが可能となる。
上記変形例においては、鑑査部14において振動を付与することに加え、分包袋連続体B(分包袋b)を水平方向に振動させることにより、薬剤が他の薬剤と重なり合った状態、接触した状態、あるいは起立状態にあることを解消するものを例示したが、分包袋連続体B(分包袋b)を水平方向に振動させることと他の方策を併用すること、あるいは分包袋連続体B(分包袋b)の水平方向への振動に代えて他の方策により薬剤の重なり合い、接触、起立等の問題を解消することとしてもよい。具体的には、図12に示すように、薬剤をパッケージングした分包紙の搬送経路において、鑑査部14よりも搬送方向上流側に分包紙の表面に倣うように動作する起立解消手段110を設けてもよい。
さらに具体的に説明すると、図12及び図13に示すように、起立解消手段110は、分包紙の搬送路を横断するように設けられた支軸112と、支軸112に対して回動自在に装着されたアーム114とを有する。アーム114は、支軸112の軸方向、すなわち搬送路の幅方向に複数並べて設けられている。アーム114の先端部には、ローラ114aが取り付けられている。また、アーム114は、バネ114bにより搬送路側に向けて付勢されている。これにより、搬送路を通過する分包紙の表面に対し、分包紙及び薬剤を破損しない程度の適度な強度でローラ114aを分包紙に接触させることができる。従って、分包紙が搬送路を通過すると、分包紙の表面に沿ってローラ114aが回動し、分包紙の表面に追従してアーム114が支軸112を中心として回動する。なお、ローラー114aの材質は、アーム114と同様に樹脂あるいは金属等であってもよく、スポンジ、ゴム等の弾性体、あるいは軟質の素材であってもよい。ローラ114aを樹脂あるいは金属により形成した場合には、長期に亘って使用を継続しても変形や摩耗が少なく、安定した性能を発揮することが可能となる。また、スポンジあるいはゴム等の弾性体、あるいは軟質の素材をローラ114a用いれば、薬剤に対して加わる衝撃を最小限に抑制し、薬剤の破損、損傷等を防止することが可能となる。
上述したような起立解消手段110を設けた場合、分包紙を鑑査部14に向けて移送する間に、パッケージングされている薬剤に対し分包紙越しにローラ114aが接触する。これにより、分包紙によってパッケージングされている薬剤が押し均され、他の薬剤との重なり、あるいは接触が解消される。また、起立状態で収容されていた薬剤については、分包紙越しにアーム114(ローラ114a)と接触することにより押し倒された状態になる。
上述した起立解消手段110を設けた場合、鑑査対象の分包袋bが鑑査部14に到達する前に薬剤を分散させると共に、起立状態で収容されていた薬剤を横転させることが可能となる。従って、鑑査部14において振動を付与することにより薬剤を分散させねばならない頻度を最小限に抑制できる。これにより、鑑査業務に要する時間をより一層短縮することが可能となる。
上述した起立解消手段110において、ローラ114aは、図12に示すように搬送手段12によって形成される搬送路の幅方向一部の領域に設けられたものであっても良いが、図13(b)に示すように図13(a)に示すものよりも幅広のローラ114aを用いることにより、ローラ114aを搬送路の略全幅に亘って設けたものであっても良い。このような構成とした場合、各分包袋bの表面の略全域がローラ114aによってなぞられるため、起立状態で分包袋b内に収容されている薬剤をより一層確実に横転させることが可能となる。これにより、撮影手段18により撮影される画像を用いて解析することにより、確実に薬剤の種類及び数量を特定することが可能となり、より一層の鑑査精度の向上が見込める。
上述したように、分包袋連続体Bを水平方向に小刻みに往復動させることにより分包袋連続体B(分包袋b)を水平方向に揺動すること、及び起立解消手段110を設けることにより起立状態で収容されている薬剤を横転させることは、いずれも薬剤の鑑査精度の向上効果、及び鑑査部14における振動発生頻度の低減による鑑査速度の向上効果を得る上で有効な方策である。薬剤鑑査装置10においては、これらの方策を単独で採用することも可能であるが、双方の方策を採用することが好ましい。分包袋連続体Bの揺動、及び起立解消手段110の双方を併用することにより、両者の効果が相まってさらなる鑑査精度の向上、及び鑑査速度の向上を図りうる。
薬剤鑑査装置10においては、各分包袋bが帯状に連なった分包袋連続体Bの形態で供給することにより、薬剤の鑑査業務を連続的に実施できるため、鑑査業務の作業速度を向上させることが可能である。その反面、分包袋bをなす分包紙は、紙あるいは薄いフィルム等によって形成されており、さほど大きな力を作用させなくても破れるものと想定される。また、分包袋連続体Bの多くは、患者等が分包袋bを容易に切り分けられるように、各分包袋bの境界部分にミシン目等を設けたものとされている。従って、分包袋連続体Bを導入部10bから導入する際に、分包袋連続体Bを装置内に引き込もうとする力、分包袋連続体Bが垂れ下がる等して鑑査装置の外部側に作用する力等の影響により、分包袋連続体Bの強度を超える張力が作用することにより分包袋連続体が破損あるいは切断される可能性がある。従って、薬剤鑑査装置10においては、装置内への導入時に分包袋連続体Bの破損等が生じないように分包袋連続体Bの保護機構等を設けることが望ましい。
具体的には、例えば図14に示すように、薬剤鑑査装置10の導入部10bに導入部揺動部材220からなる保護機構を設けることが望ましい。導入部揺動部材220は、導入部揺動アーム224と、ローラ226とを備えている。導入部揺動アーム224は、図中に矢印で示すように上下方向に揺動可能であり、図示しないバネ等により上方に向けて付勢された状態で設置されている。また、ローラ226は、導入部揺動アーム224に対して自由に回動可能なように取り付けられている。
薬剤鑑査装置10に供給される分包袋連続体Bは、導入部揺動部材222のローラ226の上を通過し、薬剤鑑査装置10の装置内に導入される。また、分包袋連続体Bを鑑査部14に向けて搬送する際に作用する引き込み力、分包袋連続体Bが垂れ下がる等して作用する力等が作用すると、常時は上方に向けて付勢されている導入部揺動アーム224が下方に向けて揺動し、分包袋連続体Bに対して過度に大きな力が作用することを防止できる。これにより、分包袋連続体Bが破損あるいは切断されることを防止できる。これに対し、分包袋連続体B自身の張力に余裕ができた時には、導入部揺動部材222のローラはバネ等による上方への付勢力をもって自然に上昇し、それと共に分包袋連続体Bも上方に手繰り上げられた状態となるため予め張力の余裕をこの部位で持たせることができる。
本実施形態において示した薬剤鑑査装置10において、分包袋bによって一服用分ずつ包装された薬剤を適切に鑑査するためには、鑑査部14に対して分包袋bが適切な位置に配置される必要がある。すなわち、鑑査部14と鑑査対象である分包袋bとの位置がずれると、鑑査対象である分包袋b内の薬剤が鑑査部14から外れた位置に存在することになり、正確に鑑査できない可能性がある。
また、分包袋連続体Bの形態で分包袋bを順次供給する場合においては、初期段階において分包袋bと鑑査部14とのズレがごく僅かなものであったとしても、何包分かの分包袋bを鑑査するうちにズレが蓄積し、やがて分包袋bと鑑査部14との位置ズレが鑑査に支障を生じる程度に大きくなる可能性を完全に否定することができない。従って、各分包袋bを高い位置決め精度で鑑査部14に配置可能とすることが望ましく、特に分包袋連続体Bの形態で鑑査対象である薬剤が包装されて供給される場合には分包袋bを鑑査部14に対して高い位置決め精度で配置可能であることが必要とされる。
ここで、薬剤鑑査装置10に供給される分包袋連続体Bの多くは、帯状の分包紙を幅方向略中間部において2つに折り曲げると共に、分包袋連続体Bの幅方向に延びる縦シール部s1と、分包袋連続体の長手方向に延びる横シール部s2とによってシールすることにより封止して分包袋bを形成したものである。また、分包袋連続体Bの長手方向に連続する2つの分包袋b,bの間には、縦シール部s1,s1が僅かな間隔を開けて形成されており、両者の間にミシン目等の境界dが形成されている。そのため、境界dの位置を適切に把握することができれば、この結果に基づいて分包袋b(分包袋連続体B)の位置を微調整することにより分包袋bと鑑査部14との位置決め精度を向上させることが可能となる。
しかしながら、境界dをなすミシン目等は、撮影等により正確に把握できない可能性が高い。また、境界dを把握可能な程度まで画像精度を向上させると、画像処理速度等の影響により処理速度が低下してしまう可能性がある。そこで、境界dの位置を直接的に導出することが困難である場合、あるいは直接的に導出することにより処理速度等が低下してしまう可能性がある場合等には、以下に示す位置決め制御手段230のように縦シール部s1の位置情報に基づいて境界dの位置情報を把握するようにしても良い。
具体的には、図18に示す位置決め制御装置230は、縦シール部s1を撮影するための位置検出用撮影手段232と、位置検出用撮影手段232により得られた画像を解析することにより縦シール部s1の位置情報を導出する縦シール位置検出手段234とを有する。また、位置決め制御手段230は、縦シール位置検出手段234により導出された縦シールs1の位置に基づいて境界dの位置を導出する境界位置導出手段236と、境界dの検出結果に基づいて搬送手段12を作動させて分包袋連続体Bの位置を微調整するための位置調整手段238とを備えている。
位置検出用撮影手段232は、分包袋連続体Bの長手方向に連続する2包分の分包袋b,bについて、境界dを挟んで並ぶ2つの縦シール部s1,s1の少なくとも一部が収まる縦シール位置検出領域を設定し、その領域を撮影可能とされている。具体的には、前記領域内の縦シール部s1,s1に形成されたシール痕(例えば、図示しない溶着ローラーのローレットの点の痕)のx座標とその全数を画像から計測し、前記座標を全部足して、その数で除することで境界位置を導出することが可能となる。また、或いは前記縦シール位置検出領域の前記シール痕の最も左と最も右のx座標を計測し、その中間値を導出することにより、境界dの位置の座標を導出することができる。位置調整手段238は、境界位置導出手段236により導出された境界dの位置と、境界dが本来存在すべき正規の位置とを比較し、境界dが正規の位置に到来するように搬送手段12を作動させる。
上述したような位置決め制御装置230を設けることにより、分包袋b,bの境界dがミシン目等のように単に撮影等するだけでは正確に把握しにくいものであったとしても、分包袋bの境界dの位置を正確に把握し、この結果に基づいて鑑査対象である分包袋bを鑑査部14に対して正確に位置決めすることが可能となる。これにより、薬剤鑑査装置10の鑑査精度及び鑑査速度をより一層向上しうる。
上述した薬剤鑑査装置10は、鑑査部14に対して分包袋bを正確に位置決めするためには、分包袋連続体Bの搬送エラーを防止することが望ましい。ここで、分包袋連続体Bの搬送の確実性を向上させるためには、搬送手段12の搬送面に対して分包袋連続体Bを押し当てる押し当て機構を設けることが好ましい。従って、図12に示すように、薬剤鑑査装置10は、搬送手段12によって形成される搬送経路の中途に、一又は複数の押さえローラ240を設け、この押さえローラ240によって分包袋連続体Bを搬送面に押しつけ可能とすることが望ましい。
≪≪第二実施形態≫≫
続いて、本発明の第二実施形態に係る薬剤鑑査装置300について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態の薬剤鑑査装置300において、上述した薬剤鑑査装置10と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細の説明については省略することがある。
図19に示すように、薬剤鑑査装置300は、上述した薬剤鑑査装置10と略同一の外観形状を有する。図20に示すように、薬剤鑑査装置300は、筐体302内に上述した薬剤鑑査装置10と同様の搬送手段12、撮影手段18を備えている。また、薬剤鑑査装置300は、図14に示す変形例で採用した拡散光照明装置160を備えている。これに対し、薬剤鑑査装置300においては、振動手段16と、リング状の照明装置20が除外されている点において薬剤鑑査装置10と構成が相違する。さらに、薬剤鑑査装置300においては、鑑査部14に代えて鑑査部310、制御装置22に代えて制御装置330(図25参照)、導入部10bに代えて導入部304を備えている点等においても薬剤鑑査装置10と構成が相違する。以下、薬剤鑑査装置300について、特徴的構成を中心に説明する。
導入部304は、筐体302の側面に鑑査対象の薬剤を導入するために設けられたものである。導入部304には、筐体302内への供給に際して、分包袋bあるいは分包袋連続体Bが傾かないようにガイドするガイド片306を両サイドに有する。また、導入部304の底面308をなす板体の末端部分を下方に向けて円弧状に湾曲させることにより、分包袋連続体Bの供給時に分包袋連続体Bが引っかかるのを防止している。
鑑査部310は、上記第一実施形態の鑑査部14と同様に鑑査対象の薬剤が分包袋bに収容された状態で配置される部分である。図20及び図21に示すように、鑑査部310は、鑑査部14と同様に撮影手段18及び拡散光照明装置160の直下に配置されている。図20〜図23に示すように、鑑査部310は、分包袋bが配置される撮影用ステージ312と、撮影用ステージ312上に配置された分包袋bを背面側から照明するための背面照明手段314を備えている。
撮影用ステージ312は、透明の板体によって形成されており、一包分の分包袋bを搭載可能な大きさを有する。また、背面照明手段314は、撮影用ステージ312の背面側(図中下方側)、すなわち撮影用ステージ312を介して撮影手段18とは反対側の領域に設けられている。背面照明手段314は、撮影用ステージ312の略全体を照明領域とするものであり、撮影用ステージ312上に搭載された分包袋b全体を背面側から照明することができる。
背面照明手段314は、照明領域たる撮影用ステージ312の略全体に亘って、所定のピッチ毎にドット状に発光させることが可能である。具体的には、図24に示すように、背面照明手段314は、筐体314a内に収容された光源部316と、筐体314aの天面に設けられたメッシュ状部材318とを備えている。筐体314aは、天面側が開口した箱体によって構成されている。光源部316は、発光ダイオードを光源として備えている。また、光源部316は、赤あるいは赤よりも波長の長い光を発生させることが可能なものとされている。本実施形態では、赤色光を発生させることが可能な発光ダイオードが光源部316の光源として採用されている。また、光源部316に設けられた発光ダイオードの光軸は、撮影用ステージ312に対して略垂直方向に向けられている。
ドット形成部318は、光源部316と分包袋bが配置される撮影用ステージ312の間に配置されている。図24(b)に示すように、ドット形成部318は、所定ピッチの網目(開口)を有する網によって構成されている。そのため、光源部316を発光させると、ドット形成部318の網目を通じ、撮影用ステージ312側に向けてドット状の光が照射される。
本実施形態において採用されている制御装置330は、コンピュータに対してソフトウェアをインストールすることにより、コンピュータ上に実現されている。制御装置330は、図25に示すような構成とされており、各分包袋bに収容されている薬剤が処方通りであるかを鑑査する薬剤鑑査処理と、各分包袋bに薬剤以外の異物が混入していないか鑑査する異物検出処理とを実行することができる。
≪薬剤鑑査処理について≫
図25に示すように、制御装置330は、薬剤鑑査処理を実行するための鑑査処理実行手段として、薬剤情報検出手段340と、処方情報取得手段342と、照合手段344とを有する。薬剤情報検出手段340は、撮影手段18により撮影された画像に基づき、薬剤の種類の特定、及び計数を行うものである。図26に示すように、薬剤情報検出手段340は、大別して基礎画像取得工程、鑑査対象領域画定工程、及び画像鑑査工程の3段階の工程からなる画像処理を順を経て実行することにより、薬剤についての情報(種類、数量)を検出することができる。
具体的には、薬剤情報検出手段340は、ステップ1−1に係る基礎画像取得工程において上述した背面照明手段314によって撮影用ステージ312上に設置された分包袋bを背面側(図中下方側)から照明した状態において撮影手段18によって撮影した画像(以下、「背面点灯画像」とも称す)を、薬剤鑑査用の基礎画像として取得する。これにより、図27(a)に示すような基礎画像が取得される。
ここで、分包袋bに印刷等が施されていない場合については、基礎画像(背面点灯画像)において黒色あるいは暗色に写った部分の略全体が薬剤等の物体の存在によるものと想定される。しかしながら、分包袋bに印刷が施されている場合には、印刷部分についても薬剤等との物体と同様に黒色あるいは暗色に写る。そのため、上述した基礎画像において黒色あるいは暗色に写っている部分には、印刷が施された領域(印刷領域)が含まれている可能性が高い。従って、画像鑑査により薬剤の種類あるいは数量を的確に把握するためには、基礎画像取得工程において取得された基礎画像において、黒色あるいは暗色に写っている領域から印刷領域を識別し、除外する必要がある。
そこで、ステップ1−2において実施される鑑査対象領域画定工程においては、上述した基礎画像から印刷領域を除外して薬剤等の物体が存在している領域を抽出し、この抽出領域を基準として画像鑑査を行うために適切な画像領域を画定する処理を実施する。具体的には、鑑査対象領域画定工程においては、薬剤情報検出手段340により、物体存在領域導出処理、膨張処理、及び領域画定処理からなる3つの処理が実行される。鑑査対象領域画定工程については、図28に示すフローチャートに則って実施される。
先ずステップ2−1において、物体存在領域導出処理が実行される。物体存在領域導出処理は、基礎画像から薬物等の物体が存在していると想定される領域(以下、「物体存在領域」とも称す)を抽出する処理である。物体存在領域導出処理は、背面照明手段314の発光に起因するドット状の透光領域、及び分包紙bに施された印刷に起因する印刷領域を除外対象領域として導出し、基礎画像をなす画像領域から削除することにより実行される。
すなわち、ステップ2−1aにおいて、基礎画像中に含まれているエッジを抽出するエッジ抽出処理が実行される。具体的には、ステップ2−1aにおいては、従来公知のSobelフィルタ等のエッジ抽出用のフィルタによって処理することにより、基礎画像中に含まれているエッジを抽出する(図27(b)参照)。その後、ステップ2−1bにおいては、ステップ2−1aにおいて抽出されたエッジにより包囲された領域(以下、「エッジ包囲領域」とも称す)を選択し、エッジ包囲領域を膨張させる画像処理を実行する。エッジ包囲領域の膨張幅については、事前に行った実験結果、あるいは所定の数式に基づいて導出する等して適宜設定することが可能である。
ここで、分包袋bにおいて印刷が施された部分については、背面照明手段314によるドット状の光が分包紙を透過し、写り込んでいる。言い換えれば、印刷領域については、基礎画像中において略全体が黒色あるいは暗色であるものの、ドット状の光が透過した部分において中抜き状になっている。これに対し、薬剤等の物体が存在する部分については、背面照明手段314の発光の光が透過せず、基礎画像中において完全に黒色あるいは暗色に写っている。
ステップ2−1bにおけるエッジ包囲領域の膨張幅については、かかる特性を考慮し、エッジ包囲領域の膨張により、隣接するドット状の透光領域に該当するエッジ包囲領域同士が繋がる程度の膨張幅に設定されることが望ましい。また、エッジ包囲領域の膨張幅は、印刷領域を透過したドット状の透光領域に相当するエッジ包囲領域を膨張させることにより印刷領域の外縁をなす輪郭線内の領域が塗りつぶされる程度の膨張幅に設定されることが望ましい。本実施形態においては、これらの条件に合致するようにエッジ包囲領域の膨張幅が設定されている。上述したようにしてエッジ包囲領域を膨張させる画像処理が完了すると、図27(c)に示すように、基礎画像中に含まれていた印刷領域については、透光領域に相当するエッジ包囲領域が連続した領域が生成された状態になる。これに対して、薬剤等の物品が存在している物体存在領域内においては、背面照明手段314の発光に伴うエッジ包囲領域が存在していないため、エッジ包囲領域が連続した領域も生成されない。
上述したステップ2−1bにおける画像処理が完了すると、ステップ2−1cにおいて選択領域を反転させる処理(選択領域反転処理)が実施される。これにより、図27(d)に示すように、エッジ包囲領域として選択されていた印刷領域を含む領域が非選択状態に反転する。その後、ステップ2−1dにおいては、別途準備された灰色の画像(以下、「グレイ画像」とも称す)が、ステップ2−1cまでの処理によって準備された画像の下層に重ね合わせる画像処理がなされる(図27(e)参照)。このグレイ画像は、分包袋bの大きさと略合致する大きさを有し、全体に亘って単色の画像である。グレイ画像は、ステップ2−1cまでの処理が施された基礎画像中において、鑑査対象の分包袋bが存在している領域の下層に配置される。
上述したステップ2−1dの画像処理により得られた画像につき、ステップ2−1eにおいて二値化し、他よりも暗い部分を抽出する処理(物体存在領域抽出処理)が実行される。ここで、ステップ2−1dにおいて得られた画像を二値化した状態において、薬剤等の物体が存在していると想定される物体存在領域は、印刷領域よりも暗い領域を形成している。従って、ステップ2−1eにおいては、図27(f)に示すように物体存在領域が抽出される。上述したステップ2−1a〜2−1eに係る一連の処理により、物体存在領域導出処理が完了する。
上述したようにして物体存在領域導出処理が完了すると、ステップ2−2において、物体存在領域を外側に膨張させる膨張処理が実行される(図27(g))。その後、ステップ2−3においては、膨張処理により膨張された領域以外の領域を除外するためのフィルタを作成する領域画定処理が実行される(図27(h))。これにより、薬剤等の物品の写像の欠けが生じないようにマスキングを施すフィルタを設定することができる。ステップ2−3においてフィルタの設定が完了すると、ステップ1−2に係る鑑査対象領域画定工程が完了する。
鑑査対象領域画定工程が完了すると、制御フローが図26のステップ1−3に係る鑑査対象画像取得工程に進行する。鑑査対象画像取得工程においては、上述した手順により画定された鑑査領域内に限定した画像による薬剤の鑑査を行うための鑑査画像を取得する。具体的には、画像鑑査工程においては、上述した基礎画像取得のために使用された背面点灯画像とは別に取得された画像(以下、「背面消灯画像」とも称す)に対して上述した鑑査対象領域画定工程において取得されたフィルタを適用することにより鑑査対象領域を最小限に絞った鑑査対象画像を取得する。
ここで、鑑査対象画像取得工程において用いられる背面消灯画像は、背面照明手段314を消灯させた状態において、鑑査部310に配置された分包袋bを撮影手段18により撮影して得られる。背面消灯画像の撮影に際し、拡散光照明装置160は点灯させた状態とされる。背面消灯画像は、画像鑑査工程において薬剤の鑑査を行うまでの任意のタイミングで取得することができる。具体的には、背面点灯画像の撮影後、鑑査対象領域画定工程までの処理の実行中に背面消灯画像を撮影することが可能である。これにより、鑑査対象領域画定工程の実行期間を背面消灯画像を撮影するために有効利用することができ、一連の鑑査業務の迅速化に資することが可能となる。
ステップ1−3の鑑査対象画像取得工程においては、上述したフィルタを背面消灯画像に適用することで、背面消灯画像における薬剤等の物品の写像の欠けが生じないようにマスキングが施される。その後、ステップ1−4において、鑑査対象画像取得工程においてマスキングにより絞り込まれた鑑査対象領域内の画像(鑑査対象画像)について、薬剤の数量及び種類を検出する画像鑑査が実行される。ステップ1−4においては、鑑査対象物である薬剤の形状情報(エッジ情報)及び色彩情報を予め登録したデータベースを参照し、マッチングを行うことにより、処方に即した薬剤が分包袋b内に分包されているか否かを鑑査する。
上述した薬剤鑑査処理による鑑査結果については、例えば図29に示すような表示形態で制御装置330をなすパーソナルコンピュータのモニタ等の表示装置に表示される。具体的には、薬剤鑑査処理の実行中には、図29(a)に示すように、鑑査対象として供給された分包袋連続体Bの各分包袋bのうち、各分包袋bに係る背面消灯画像が鑑査を完了したものから順にサムネイル形式で表示される。薬剤鑑査処理の完了後、薬剤が過不足している分包袋bが存在する場合には、図29(b)に示すように総合判定NGとの表示がなされる。この状態において、鑑査完了ボタンを選択(クリック)すると、鑑査結果を示すジャーナルが図示しないプリンタによって印刷される。
また、図29(b)に示す表示状態において、表示サイズボタンを選択すると、図29(c)に示すように各分包袋bを示すサムネイル画像の表示サイズを切り替え可能となる。また、各分包袋bを示すサムネイル画像をクリックすると、図30に示すように各分包袋bについての鑑査結果を個別に確認することが可能となる。
具体的には、図29に示す表示状態において各分包袋bを示すサムネイル画像をクリックすると、図30に示すような鑑査結果個別表示ウィンドウが表示される。この鑑査結果個別表示ウィンドウ中には、処方されている薬剤の名称、画像、及び数量が列挙されると共に、それぞれの薬剤について検出結果が表示される。また、図30に示すウィンドウにおいて薬剤の画像を選択すると、図30(a)に示すようにその薬剤の画像が拡大表示されると共に、大きさについての情報も併記された状態になる。また、鑑査結果個別表示ウィンドウの表示に際し、未だデータベースに外観を示す画像が登録されていない薬剤が処方されている場合には、薬剤鑑査処理において用いられた背面消灯画像から切り出した画像が薬剤リストと共に表示される(図30(b)参照)。
薬剤鑑査処理の結果、処方情報に含まれているにもかかわらず鑑査によっては検出されなかった薬剤が存在する場合には、図31(a)に示すように鑑査結果個別表示ウィンドウの薬剤リスト欄に未検出である旨のボタン表示がなされる。未検出である旨を示すボタンを選択すると、図31(b)に示すようにオペレータが自己の判断で処方通りの薬剤が分包袋b内に収容されているか否かを決定するためのボタンが表示される。
オペレータは、鑑査結果個別表示ウィンドウの左欄に表示される分包袋bに係る背面消灯画像を用いて、薬剤が分包されているか否かを鑑査することができる。図31(b)のように表示された状態でOKボタンが選択されると、オペレータの判断により、処方通りの薬剤が分包袋b内に収容されていると判断されたとして、鑑査結果が決定される。また、NGボタンが選択されると、処方された薬剤が分包袋b内に収容されていないとの判断がオペレータによりなされたとして、鑑査結果が決定される。また、オリジナルボタンを選択すると、先にOKボタンあるいはNGボタンを選択してなされたオペレータの判断が取り消され、鑑査結果が薬剤鑑査処理による判定結果に戻される。
また、図31及び図32に示すように、鑑査結果個別表示ウィンドウの右下欄に設けられた個数表示部には、分包袋b内に収容されているべき薬剤の個数と、薬剤鑑査処理により検出された薬剤の個数とが分数の形式で表示されると共に、適切に薬剤が分包されているかの判断結果が表示される。具体的には、分包袋b内に収容されているべき薬剤が6個であり、薬剤鑑査処理により検出された薬剤が10個である場合には、図32(a)の表示例のように表示される。この場合、薬剤が適切に分包されているとは言えないため、判断結果としてNGとの表示がなされる。これに対し、図32(b)のように、分包袋b内に収容されているべき薬剤の数及び、薬剤鑑査処理により検出された薬剤の数が合致している場合には、OKとの表示がなされる。
また、図31及び図32の各図に示すように、鑑査結果個別表示ウィンドウの右下欄に設けられた識別結果の表示部分には、薬剤鑑査処理において実行された薬剤の輪郭形状及び色による鑑査結果が表示される。この識別結果欄についても、分包袋b内に収容されているべき薬剤の個数と、薬剤鑑査処理により検出された薬剤の個数とが分数の形式で表示される共に、適切に薬剤が分包されているかの判断結果が表示される。
上述したように、薬剤鑑査装置300では、基礎画像取得工程において、背面照明手段314によって鑑査部310に配置された分包袋bを照射した状態で撮影した背面点灯画像に基づいて薬剤鑑査用の基礎画像が取得される。また、基礎画像中において、薬剤が存在すると想定される領域は基礎画像中において影として撮影され、その他の領域についてはドット状に発光した透光領域として撮影されるとの特性を考慮して鑑査対象領域の絞り込みがなされる。すなわち、基礎画像中においてドット状に発光した透光領域が鑑査対象領域から除外される。そのため、画像鑑査工程において薬剤の鑑査を実行する場合における制御装置330の負荷を最小限に抑制し、画像鑑査の鑑査精度及び実行速度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、分包袋bに印刷が施された印刷領域であるか、あるいは薬剤が存在する領域であるかの違いにより、基礎画像中において輪郭線によって囲まれた領域を所定量だけ変化させることにより連続した連続領域が形成されるか否かの違いが生じるという特徴を有効利用し、印刷領域を鑑査対象領域から除外する印刷領域除外処理(本実施形態では、上述した物体存在領域導出処理に相当)を実施している。すなわち、従って、本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、文字等が印刷された状態で分包袋bが供給されたとしても、印刷の影響を受けることなく、正確かつ迅速に薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を導出することができる。
本実施形態の薬剤鑑査装置300では、背面照明手段314として、光源316と、光源316及び分包袋bの間に配され所定のピッチ毎に透光可能な孔を有するメッシュ状部材318とを備えたものとする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、背面照明手段314による照射領域全体に亘って所定のピッチ毎にドット状に発光させることが可能なものであればいかなるものであっても良く、例えば発光ダイオードをドットマトリックス状に配置することにおり、所定のピッチ毎に光を発することができる構成としても良い。また、背面照明手段314は、赤外線レーザー光を発生させることが可能な物であっても良い。
また、上述した背面照明手段314は、赤あるいは赤よりも波長の長い光を発生させることが可能なものを光源316として用いたものであり、発生する光の直進性が高い。これにより、撮影手段18により撮影された背面点灯画像において薬剤が存在する領域及び薬剤の輪郭線が基礎画像中において明確に認識可能となる。また、分包袋bの印刷領域においても背面照明手段314から発せられたドット状の光が確実に透過し、背面点灯画像中において鮮明に認識可能な状態になる。これにより、鑑査対象領域から印刷領域を除外する際の画像処理精度を向上させ、ひいては薬剤の鑑査精度を向上させることが可能となる。なお、背面照明手段314は、透光性の観点からすると、赤あるいは赤よりも波長の長い光を発生させることが可能なものであることが好ましいが、赤よりも波長の短い光を発生されることが可能なものとされても良い。
また、本実施形態の薬剤鑑査装置300では、鑑査対象領域画定工程において、物体存在領域導出処理(除外処理)を実行することにより残存した領域を、膨張処理において外側に向けて所定量だけ膨張させることにより、鑑査対象領域から薬剤が存在している領域が除外されてしまうことを防止している。これにより、薬剤鑑査装置300による薬剤の鑑査精度をより一層向上させうる。
≪異物検出処理について≫
上述した、異物検出処理を実行するための実行手段として、異物検出処理手段350を備えている。また、鑑査部310に配置された分包袋b内における薬剤の存在領域を画定するための薬剤存在領域画定手段360を備えている。異物検出処理手段350は、分包袋b内に鑑査対象である薬剤以外の物体(異物)の混入の有無を検出する異物検出処理を実行するために設けられたものである。異物検出処理においては、上述した薬剤情報検出手段340によって取得された基礎画像に加え、別途準備された位置認識用画像365が用いられる。図33に示すように、位置認識用画像365は、基礎画像に対応する大きさを有する位置認識用領域366を有する。位置認識用領域366内全体には、ドット状の位置標識367が所定のピッチ毎に付されている。また、各位置標識367には、座標が付与されている。
また、異物検出処理手段350は、位置認識用画像365の位置認識用領域366と基礎画像とを重複させた状態において、基礎画像中に含まれている写像の位置を、位置標識367に付された座標により把握することができる。具体的には、異物検出処理手段350は、基礎画像と位置認識用画像365とを重複させた状態において、基礎画像中に含まれている薬剤等の物品の写像と画定された領域と重複する部分に存在する位置座標を抽出することにより、物品の写像の位置を把握することができる。
薬剤存在領域画定手段360は、薬剤入りの分包袋bについて撮影した画像について、薬剤が存在している領域を画定する処理を行うものである。薬剤存在領域画定手段360は、いわゆる形状ベースパターンマッチング、あるいはグレイパターンマッチング等のマッチング手法により、薬剤の存在領域を画定するものである。本実施形態においては、薬剤存在領域画定手段360は、形状ベースパターンマッチングを実行可能なものとされており、鑑査対象の薬剤について予め登録されている外形(輪郭)についての情報(エッジ情報)に基づきマッチングを行うことによって薬剤の存在領域を画定することができる。
続いて、異物検出処理手段350及び薬剤存在領域画定手段360により実行される異物検出処理について詳細に説明する。図34に示すように、異物検出処理の処理工程は、物体存在領域座標抽出工程、薬剤座標群導出処理工程、及び異物判定処理工程の3工程に大別される。ステップ3−1の物体存在領域座標抽出工程は、上述した薬剤鑑査処理の過程において薬剤情報検出手段340によって取得された基礎画像中において輪郭線によって囲まれた領域内に存在する位置座標群を物体存在領域座標群として導出する工程である。
物体存在領域抽出工程においては、先ずステップ3−1aとして、薬剤鑑査処理の鑑査対象領域画定工程において実行された物体存在領域導出処理により取得した画像(図35(a)参照)と、上述した位置認識用画像365(図33,図35(b)参照)とを重ね合わせる画像処理がなされる。その結果、図35(c)のような画像が取得される。その後、ステップ3−1bにおいて、異物検出処理手段350は、位置認識用画像365中に形成されたドット状の位置座標のうち、物体存在領域導出処理により画定された物体存在領域中に含まれている位置座標を物体存在領域座標群として抽出する処理を実行する。
上述したようにしてステップ3−1に係る物体存在領域抽出工程が完了すると、ステップ3−2に係る薬剤座標群導出処理工程が実行される。薬剤座標群導出処理工程においては、先ずステップ3−2aとして、鑑査部310に配置された薬剤入りの分包袋bを撮影手段18によって撮影した画像を用い、薬剤存在領域画定手段360により形状ベースパターンマッチングが実行される。本工程において用いられる画像(以下、「マッチング用画像」とも称する)は、上述した薬剤鑑査処理の画像鑑査工程において用いられた背面消灯画像と同一のもの、あるいは背面消灯画像と同様に背面照明手段314を消灯し、拡散光照明装置160を点灯した状態で撮影した画像が用いられる。薬剤座標群導出工程においては、マッチング用画像について上述した形状パターンマッチングが実行され、図35(d)のように薬剤の存在領域(薬剤存在領域)が画定される。
上述したようにしてマッチング用画像中における薬剤の存在領域の画定が完了すると、ステップ3−2bにおいて、上述したマッチング用画像と、上述した位置認識用画像365とを重ね合わせる画像処理がなされる。ステップ3−2cにおいて、位置認識用画像365中に形成されたドット状の位置座標のうち、ステップ3−2aにおいて画定された薬剤存在領域内に含まれている位置座標を薬剤領域座標として抽出する処理が実行される。これにより、薬剤座標群導出処理工程が完了し、ステップ3−3に係る異物判定処理工程に移行する。
異物判定処理工程は、上述した物体存在領域座標抽出工程、及び薬剤座標群導出処理工程の結果に基づき、分包袋bにおける異物混入の有無の判定がなされる。すなわち、異物判定処理工程においては、異物検出処理手段350により、上述したステップ3−1において導出された物体存在領域座標群と、ステップ3−2において導出された薬剤領域座標群との照合作業が実施され、両者において合致する座標に位置するドット状の位置座標が画像から消去される。その結果、薬剤領域座標群に、物体存在領域座標群に含まれていない位置座標が含まれている場合には、図35(e)のように位置座標を示すドットが残存し、その座標位置に異物が存在していることを判別可能となる。
上述したように、薬剤鑑査装置300では、物体存在領域座標抽出工程を実行することにより基礎画像に含まれている輪郭線から薬剤等の物が存在している領域を物体存在領域座標群の形態で取得することができる。また、別途行う薬剤座標群導出処理工程により、薬剤が存在している領域を薬剤領域座標群の形態で取得することができる。薬剤鑑査装置300では、物体存在領域座標群と薬剤領域座標群とが一致しているかにより、薬剤以外の異物が分包袋bに収容されているか否かの判定を実行することができる。従って、薬剤鑑査装置300によれば、薬剤の数量あるいは種類の鑑査だけでなく、薬剤以外の異物の混入を確実に検出することができる。
≪薬剤マスタ構築処理について≫
制御装置330は、上述した薬剤鑑査処理、及び異物検出処理に加えて、鑑査対象となる薬剤についてのマスタ情報を登録した薬剤マスタ370をコンピュータ内に構築するための処理(薬剤マスタ構築処理)についても実行することができる。薬剤マスタ370は、薬剤の外観画像を閲覧用として登録した外観画像データベース372を有する。外観画像データベース372には、薬剤の外観画像を各構成面(正面、背面、側面)毎に分類して登録されている。
ここで、本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、薬剤マスタは、制御装置330をなすコンピュータのモニタに図36(a)に示すような操作画面が表示された状態において、メニューボタンを選択(クリック)して表示される薬品マスタボタンを選択することにより表示することができる。また、同画面において類似薬品マスタボタンをクリックすると、図36(b)に示すように外観が類似した薬剤をリストアップして表示することができる。
図36(a)の操作画面において薬品マスタボタンをクリックすると、図36(c)のように各薬剤についてのマスタ情報を表示することができる。このマスタ表示画面においては、薬剤の名称、コード番号等の薬剤に関する情報に加え、上述した薬剤の外観画像が各構成面毎に表示される。
薬剤マスタ構築処理を実行する際には、図37に示すような撮影用治具380が用いられる。撮影用治具380は、薬剤を搭載するためのステージ382と、台座384とを有する。ステージ382は、白色であって透光性を有する樹脂によって形成されている。ステージ382は、領域の中央において縦方向及び横方向に延びるように形成された中央線386によって4領域に分割されている。ステージ382に形成された各領域は、それぞれ撮影対象の薬剤を構成する面毎に対応付けられた撮影領域として機能する。ステージ382には、各領域内において薬剤を所定位置に設置可能とするための設置用ガイド388が設けられている。設置用ガイド388は、ステージ382をなす樹脂板上に描かれたドット状の印によって形成されている。設置用ガイド388をなす各ドットの大きさは、鑑査対象として供給される薬剤及び異物として想定される大きさよりも小さい。
台座384は、鑑査部310に対して分包袋bを搬送するために設けられた搬送手段12上に搭載することが可能な大きさとされている。台座384の中央部には、ステージ382をなす樹脂板を嵌め込むことが可能なステージ設置部385が設けられている。そのため、ステージ382に形成された各撮影領域内に、各撮影領域に対応付けられた面を上方(撮影手段18側)に向くようにして薬剤を設置し、台座384に搭載されたステージ382を搬送手段12によって鑑査部310に送ると、薬剤をなす各面の画像を同一条件下において一度に撮影することができる。
また、ステージ設置部385は、四方が台座をなす黒色あるいは暗色の樹脂によって囲まれ、上下方向に光が透過可能な空間とされている。そのため、撮影用治具380を鑑査部310に到達させて撮影手段18によって撮影すると、薬剤を鮮明に撮影することができる。また、鑑査部310の背面(下方)に配置された背面照明手段314を点灯させた状態で撮影を行うと、ステージ382上に設置された薬剤は、輪郭が鮮明に際だった状態となって撮影される。
続いて、薬剤マスタ構築処理の実行方法について、順を追って説明する。図39に示すように、薬剤マスタ構築処理は、輪郭線導出工程、原画像撮影工程、及び外観画像切出工程の3工程を経て実施される。ステップ4−1に係る輪郭線導出工程においては、ステージ382上に設置された薬剤を背面照明手段314を点灯させた状態で撮影し、その画像に基づき薬剤の輪郭線を導出する工程である。具体的には、輪郭線導出工程においては、先ずステップ4−1aにおいてステージ382上に撮影対象の薬剤を設置した撮影用治具380を鑑査部310に到達させる。また、背面照明手段314によってステージ382を照射した状態としてステージ382上に設置された薬剤を撮影し、輪郭線導出用画像を取得する。その後、ステップ4−1bにおいて、輪郭線導出画像に基づき、薬剤の各面毎に輪郭線を導出する画像処理を実行する。
ステップ4−1において薬剤の輪郭線が導出されると、ステップ4−2の原画像撮影工程において、薬剤の外観画像のベースとなる原画像の撮影が行われる。すなわち、ステップ4−2においては、背面照明手段314を消灯状態とし、拡散光照明装置160によりステージ382を点灯させて照射した状態において撮影手段18によって撮影を行う。これにより、図38に示すように、ステージ382及び薬剤と共に、指標387が表示される。指標387は、ステージ382の側方に表示され、ステージ382に付された設置用ガイド388との関係でステージ382及びステージ382上に配置された薬剤の位置特定をするために使用される。また、指標387は、薬剤のサイズを認識するための指標としても使用される。
ステップ4−2において外観画像作成用の原画像が取得されると、ステップ4−3の外観画像切出工程に進行する。ステップ4−3においては、ステップ4−1において取得された輪郭線導出用画像と、ステップ4−2において取得された原画像とを重ね合わせた状態において、薬剤の輪郭線によって囲まれた領域に相当する領域を原画像から切り出す画像処理が実行される。これにより、薬剤の各面についての外観画像が取得される。
上述したようにして取得された外観画像は、薬剤の各構成面毎に分類され、外観画像データベース372に登録される。このようにして構築された外観画像データベース372の画像は、上述した薬剤鑑査処理の鑑査結果を表示する場合等に、閲覧用として表示するために使用される。
上述したように、薬剤鑑査装置300は、薬剤が影として写っている背面側点灯画像(照射画像)に基づいて薬剤の画像を切り出すための領域を輪郭線によって画定し、薬剤が鮮明に写っている背面側消灯画像(背面側非照射画像)から輪郭線によって囲まれた領域に相当する部分を切り出すこととしている。これにより、背面消灯画像中において薬剤が写っている領域を過不足なく切り出すことができる。従って、薬剤鑑査装置300においては、薬剤についての鮮明な外観画像を容易かつ精度良く取得し、外観画像データベース372を構築することができる。
本実施形態において、薬剤の画像を撮影するために用いられるステージ382が、薬剤を構成する面毎に対応付けられた複数の撮影領域を有し、各撮影領域に対応付けられた面を撮影手段18側に向けた状態として各撮影領域に薬剤を設置することが可能とされている。そのため、台座384に薬剤を搭載したステージ382を設置し、鑑査部310に到達させた状態において撮影すれば、薬剤をなす各面の外観画像を同時かつ同条件で取得することができる。これにより、薬剤の外観画像の取得に要する手間や時間を最小限に抑制すると共に、各面の外観画像の色合い等を均一化することが可能となる。
また、上述したようにステージ382には、薬剤を所定位置に設置させるための設置用ガイド388が設けられている。これにより、外観画像データベースの構築のために薬剤の撮影をする際に、薬剤が適切な位置に設置されるようガイドすることができる。また、設置用ガイド388の大きさが、薬剤及び異物として想定される大きさよりも十分小さいものとされているため、外観画像データベース372の構築に際して撮影される画像中において、設置用ガイド388と薬剤等とを容易かつ正確に識別することが可能となり、設置用ガイド388を画像から消去する等して薬剤の外観画像に設置用ガイドが写り込むことを防止できる。なお、本実施形態では、設置用ガイド388を設けた構成、及び設置用ガイド388を極めて小さなものとした構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、設置用ガイド388を設けない構成とすること、あるいは設置用ガイド388を薬剤等と同程度の大きさとすることも可能である。設置用ガイド388を設けない場合には、薬剤の設置位置を案内するための何らかの目印等を設けることが望ましい。また、設置用ガイド388の大きさを薬剤等と同程度とする場合には、薬剤の外観画像と設置用ガイド388とを確実に識別可能な構成とすることが望ましい。
本実施形態においては、ステージ382が白色とされているため、例えば緑色あるいは黒色等の暗色系の薬剤についても、外観画像取得用に撮影された画像においてステージ382と薬剤とを判然と区別することが可能となる。これにより、薬剤の外観画像を容易かつ正確に取得することが可能となり、外観画像データベースの精度を向上させることができる。なお、ステージ382は、必ずしも白色である必要はなく、他の色合いの物であっても良い。なお、黒色あるいは暗色の薬剤を容易に識別可能とするためには、ステージ382は明色系の色合いのものであることが望ましい。
上述した本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、照射状態において薬剤の画像を撮影するための背面点灯画像用撮影手段、及び鑑査部310の背面側を非照射状態として薬剤の画像を撮影するための背面消灯画像用撮影手段として撮影手段18を併用する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、背面点灯画像用撮影手段及び背面消灯画像用撮影手段を別々の撮影装置によって構成しても良い。
具体的には、拡散光照明装置160に対して上流側等、スペースがある場所に別途撮影装置を設け、この撮影装置を背面消灯画像用撮影手段として用い、撮影手段を背面点灯画像用撮影手段として用いる構成とすることが可能である。また、拡散光照明装置160に対して斜め上方に別途撮影装置を設け、この撮影装置を背面消灯画像用撮影手段として用い、撮影手段を背面点灯画像用撮影手段として用いる構成とすることが可能である。このようにした場合、背面消灯画像用撮影手段によって撮影した画像は、鑑査部310上の薬剤を斜め上方から撮影したものであるため、正面から撮影した状態と同様の画像となるように画像を補整する等の方策を講じることが好ましい。
さらに、撮影手段18として、非照射状態として薬剤の画像を撮影することにより薬剤の外観が鮮明に写るように撮影可能な高画素数の撮影装置を設置し、この撮影手段18を背面消灯画像用撮影手段及び背面点灯画像用撮影手段として併用することも可能である。このような構成とした場合、照射状態において薬剤を撮影した画像は、薬剤の輪郭線を抽出するためには過剰な品質の画像であると想定される。そのため、撮影手段18として高画素数の撮影装置を用いる場合には、薬剤の輪郭線を抽出する際に、照射状態において薬剤を撮影した画像を低品質化する画像処理を行う等の方策を講じることが好ましい。また、上述したように背面消灯画像用撮影手段及び背面点灯画像用撮影手段とを別々に設ける場合には、背面消灯画像用撮影手段による撮影時と背面点灯画像用撮影手段による撮影時とで照明具合等の撮影条件を変化させるようにしても良い。
≪薬剤マスタ構築処理の変形例について≫
薬剤マスタの構築方法は、上述した方法に限定されず、例えば図70に示す制御フローに則って切り出した薬剤に相当する画像を用いて薬剤マスタを構築することとしても良い。以下、図70に示す方法について、順を追って説明する。
図70に示す薬剤マスタ構築用の画像取得方法は、背面照明手段314により鑑査部310を照射した照射状態において撮影手段18によって撮影した背面点灯画像と、背面照明手段314により鑑査部310を照射せず、拡散光照明装置160を点灯させた背面側非照射状態において撮影手段18により撮影した背面消灯画像とを用い、鑑査部310に配置された薬剤の画像を切り出すものである。図70に示す制御フローにおいては、先ずステップ9−1においては、後に使用する背面点灯二値化画像を取得するための画像処理がなされる。具体的には、ステップ9−1においては、背面点灯画像がRGB分解され、これにより得られた背面点灯Rチャンネル画像、背面点灯Gチャンネル画像、及び背面点灯Bチャンネル画像のうちの一つを背面点灯単チャンネル画像として選択する。また、選択された背面点灯単チャンネル画像を二値化する画像処理が実施される。本実施形態では、背面点灯Rチャンネル画像を背面点灯単チャンネル画像として選択し、これを二値化する画像処理により背面点灯二値化画像が取得される。二値化の閾値は輝度ヒストグラムの極小値から決定され、輝度の低い領域を仮薬剤領域、輝度の高い領域を仮背景領域とする。
ステップ9−2においては、ステップ9−1において取得された仮薬剤領域、仮背景領域を用いて前記背面点灯単チャンネル画像における輝度分布に関する情報を導出する処理が実行される。具体的には、ステップ9−2aにおいて、背面点灯単チャンネル画像における薬剤及び背景画像の輝度分布を、ガウシアン分布(正規分布)であるとの仮定の下で導出する(図71(a),(b)参照)。その後、ステップ9−2bにおいて、仮薬剤領域の輝度分布について平均値Mm及び標準偏差σmを導出すると共に、仮背景領域の輝度分布について平均値Mb及び標準偏差σbを導出する。
具体的には、薬剤に相当する領域の輝度は、背景に相当する領域の輝度よりも低く、互いに相違している。そのため、図71(a),(b)のグラフに示すように、背面点灯単チャンネル画像の輝度分布として、略正規分布をなすピークが二つ出現する。また、二つのピークのうち、低輝度側のピークが薬剤に相当する領域の輝度分布を現し、高輝度側のピークが背景に相当する領域の輝度分布を現す。そのため、図71のグラフにおいて低輝度側のピークの平均値が平均値Mm、高輝度側のピークの平均値が平均値Mbとなる。また、図71のグラフから、標準偏差σm,σbを導出することができる。
上述したようにして輝度分布に関する情報が導出されると、制御フローがステップ9−3に移行する。ステップ9−3〜ステップ9−5においては、薬剤に相当する領域の選択漏れを抑制可能とすべく、図71(b)に示すような概念の下、高輝度側に位置する背景に相当する領域にマスキングを施すための薬剤画像切出用マスクを輝度に基づいて形成する。薬剤画像切出用マスクを作成基準となる輝度は、輝度(Mm+3σm)と輝度(Mb−3σb)との大小関係に基づいて設定される。
具体的には、ステップ9−3においては、図71(a)のように、Mm+3σm≧Mb−3σbの関係が成立するか否かが確認される。この関係が成立する場合には、薬剤に相当するガウシアン分布が、背景に相当するガウシアン分布と重複しているが、薬剤についての平均値Mmに3σmを加算した輝度範囲についての画像を取得すれば、薬剤に相当する領域の画像を漏れなく取得できる蓋然性が高いものと想定される。そこで、Mm+3σm≧Mb−3σbの関係が成立する場合には、制御フローがステップ9−4に進められ、輝度Mm+3σmを基準としてこれよりも高輝度の領域についてマスキングを施すための薬剤画像切出用マスクを形成する。
一方、ステップ9−3においてMm+3σm≧Mb−3σbの関係が成立しない場合、すなわち図71(b)のようにMm+3σm<Mb−3σbの場合には、薬剤に相当するガウシアン分布と、背景に相当するガウシアン分布とが離れている。しかしながら、薬剤に相当する画像領域を漏れなく選択するためには、背景側の輝度分布の下限側に位置するMb−3σbよりも高輝度の領域をマスクすることが望ましい。そこで、Mm+3σm<Mb−3σbの関係が成立する場合には、制御フローがステップ9−5に進められ、Mb−3σbよりも高輝度の領域をマスクする薬剤画像切出用マスクを形成する。
上述したステップ9−4あるいはステップ9−5において薬剤画像切出用マスクが形成されると、制御フローがステップ9−6に進められる。ステップ9−6においては、薬剤画像切出用マスクに基づき、背面消灯画像を切り出す画像処理が実施される。すなわち、薬剤画像切出用マスクによりマスクが設定された領域は、薬剤が存在しない領域と想定される。そのため、背面消灯画像に対して薬剤画像切出用マスクを適用し、背面消灯画像においてマスクが付されていない領域を切り出すことにより薬剤の画像を取得することができる。
上述したようにして設定された薬剤画像切出用マスクに基づき、背面消灯画像を切り出すことにより、鑑査部310に配置された薬剤の画像を漏れなく取得することが可能となる、これにより、薬剤鑑査装置300の鑑査精度をより一層向上させることが可能となる。
≪ミシン目検出処理について≫
上述した第一実施形態において説明したように、分包袋bを鑑査部310に対して供給する場合、薬剤の鑑査精度の低下を防止するためには、鑑査部310に対して分包袋bが適切な位置に配置される必要がある。また、分包袋bを多数連続的に形成した分包袋連続体Bの形態で分包袋bが供給される場合においては、分包袋bと鑑査部310とのズレが初期段階においてごく僅かであっても、分包袋bを順次送るうちにズレが蓄積し、鑑査部14に対する分包袋bの位置ズレが鑑査に支障を生じる程度に大きくなる可能性がある。かかる問題を解消するためには、分包袋連続体Bにおいて長手方向に連続する2つの分包袋b,bをなす縦シール部s1,s1同士の間にミシン目等によって形成された境界d(図40参照)を検出し、この境界dを基準として鑑査部310に対して分包袋bを位置決めすることが望ましい。
そこで、本実施形態の薬剤鑑査装置300においても、上記第一実施形態の薬剤鑑査装置10と同様に、隣接する分包袋b間の境界dを検出できる構成とされている。具体的には、薬剤鑑査装置300においては、制御装置330が境界位置導出手段400を備えた構成とされている。以下、境界位置導出手段400について具体的に説明する。
境界位置導出手段400は、分包袋連続体Bを撮影して得られた画像に基づき、分包袋連続体Bに形成された境界dを導出する境界位置導出処理を実行可能なものである。図41に示すように、境界位置導出処理は、画像取得処理、収容物画像除外処理、輪郭線検出処理、輪郭線膨張処理、及び縦シール領域検出処理の各処理を経て実行される。
具体的には、境界位置導出処理を実行する際には、先ずステップ5−1において、撮影手段18により分包袋連続体Bの画像(以下、「境界導出用原画像」とも称す)を取得する画像取得処理が実行される。その後、ステップ5−2では、境界導出用原画像から、分包袋b内に収容されている薬剤等の写像を画像処理により除外する収容物画像除外処理が実行される。具体的には、境界導出用原画像の輝度情報及び色彩情報のいずれか一方又は双方に基づき、分包袋b内に収容されている薬剤等の収容物を識別し、収容物に相当する部分の画像情報を除外する画像処理が実行される。本実施形態では、境界導出用原画像の輝度情報に基づき、収容物画像除外処理が実行される。なお、収容物画像除外処理は、境界導出用原画像の取得直後に限らず、後に詳述する縦シール領域検出処理が実行されるよりも前の動作段階において実行されれば良い。
ステップ5−3においては、収容物画像除外処理後の境界導出用原画像について輪郭線検出処理が実行される。輪郭検出処理は、いわゆる形状ベースパターンマッチング、あるいはグレイパターンマッチング等の手法によるマッチングにより実行することができる。本実施形態の境界位置導出手段400は、形状ベースパターンマッチングにより境界導出用原画像に含まれる輪郭線を検出することができる。
ステップ5−3が完了すると、境界位置導出手段400は、ステップ5−4において輪郭線膨張処理を実行する。輪郭線膨張処理は、輪郭線検出処理により検出された輪郭線によって囲まれた検出領域を所定量だけ外側に向けて膨張させる画像処理を実行することにより、縦シール検出用画像を取得する画像処理である。
ここで、分包袋連続体Bにおいて縦シールが形成された矩形状の領域内には、ドット状のシール痕が、分包袋連続体Bの短手方向(幅方向)に多数形成されている。そのため、シール痕の輪郭線によって形成された領域を膨張させると、各領域が互いに重複し、全体として縦シール方向に延びる領域(以下、「縦シール領域」とも称する)が形成される。
かかる特性に鑑み、境界位置導出手段400は、ステップ5−4において得られた縦シール検出用画像から縦シール領域に相当する画像領域を検出する処理(縦シール領域検出処理)をステップ5−5において実行する。これにより縦シール領域が検出されると、その後ステップ5−6において、縦シール領域の中間位置を隣接する分包袋b同士の境界dの位置として導出する処理(境界位置導出処理)が実行される。
上述したように、本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、輪郭線膨張処理により輪郭線を検出領域の外側に向けて膨張させ、複数の検出領域が互いに重複した状態とすることにより、輪郭線検出処理において検出された輪郭線及び検出領域が、縦シール部をなすドット状のシール痕によるものであるのかの判別精度を向上させている。そのため、薬剤鑑査装置300によれば、分包袋連続体Bに施された縦シールの位置特定、及び隣接する分包袋b同士の境界位置の特定を精度良く行うことができる。
また、本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、縦シール領域検出処理が実行されるよりも前の動作段階において収容物画像除外処理を実行することにより、境界の位置を導出に用いる画像の輝度情報あるいは色彩情報に基づき、分包袋b内に収容されている収容物を識別し、収容物に相当する部分の画像情報を除外している。これにより、収容物の輪郭線が縦シール部の輪郭線であると誤検出されてしまう可能性を最小限に抑制し、境界dをなすミシン目の検出精度をより一層向上させることが可能となる。
なお、本実施形態においては、収容物画像除外処理を実行することにより予め収容物に相当する部分の画像情報を除外し、縦シール領域検出処理の実行精度及び実行速度を向上させているが、本発明はこれに限定されるものではなく、収容物画像除外処理を実行しないものであっても良い。
≪ミシン目検出処理の変形例について≫
境界位置検出手段400によるミシン目検出処理の実行方法は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば図69に示すような制御フローに則って実行される方法であっても良い。以下、図69の制御フローについて説明する。
境界位置導出手段400は、以下の各処理を実施することにより境界の位置を導出することが可能である。すなわち、先ずステップ8−1において、縦エッジ検出処理が実施される。すなわち、撮影手段18によって撮影された分包袋bの画像(境界導出用原画像)からエッジを検出する画像解析が実施される。これにより検出されたエッジのうち、縦方向に延びる輪郭線が縦エッジとして検出される。
ステップ8−1において縦エッジの検出が完了すると、制御フローがステップ8−2において縦エッジ選定処理が実施される。縦エッジ選定処理は、ステップ8−1において検出された縦エッジのうち、境界d及びこれに隣接する縦シール部s1,s1の可能性が高いものを選定する処理である。縦エッジ選定処理は、ステップ8−1において検出された縦エッジのうち、所定の長さよりも長いものを境界d及びこれに隣接する縦シール部s1,s1に相当する縦エッジの候補として選定する。その後、制御フローは、ステップ8−3に進められる。
ステップ8−3においては、エッジ領域結合処理が実施される。エッジ領域結合処理は、縦エッジ選定処理により選ばれた複数の縦エッジのうち、縦エッジ同士の間隔が縦シール部の幅を基準として設定される所定の間隔以内に収まる領域をエッジ領域として結合する。すなわち、縦エッジ同士の間隔が縦シール部s1,s1の間隔を基準として所定の誤差範囲を超えて大きい場合、あるいは小さい場合には、ステップ8−2において選定された縦エッジが境界dあるいは縦シール部s1,s1に相当するものでない可能性が高い。そこで、縦エッジ同士の間隔が縦シール部の幅を基準として設定される所定の間隔以内に収まる領域を探し、エッジ領域として結合する。
上述したようにしてエッジ領域の結合が完了すると、制御フローがステップ8−4に進められ、境界位置確認処理が実行される。境界位置認識処理は、ステップ8−3のエッジ領域結合処理において結合されたエッジ領域の中央部を縦シール部同士の境界dの位置として妥当であるかを確認する処理である。これにより、境界dを容易かつ正確に検出することができる。
なお、本変形例に係るミシン目検出処理において、ステップ8−1〜ステップ8−4の各工程において上手く処理を実行できない状態(エラー状態)である場合には、境界dを検出できない旨のエラーをユーザーに報知するようにしても良いが、エラー状態になった場合には、例えば図41に示す制御フローに則った方法等、他の方法によりミシン目(境界d)の検出を実行するようにしても良い。
上述したミシン目検出処理の実施方法は、縦シール部s1,s1、及び縦シール部s1,s1同士の間に形成される境界dが、縦方向に延び、所定の長さ以上の縦エッジとして検出可能であると共に、縦シール部及び境界に相当する縦エッジが所定の間隔内に収まるという分包袋連続体Bの特性に着目して境界dを導出しようとするものである。そのため、上述したミシン目検出処理方法は、単なる画像解析により境界を導出しようとする場合に比べて、境界dの位置を容易かつ正確に導出することができる。
≪連続処方時の先頭包位置合わせ方法について≫
本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、分包袋bを多数連続するように形成した分包袋連続体Bを鑑査部310に順次供給し、処方通りに薬剤が分包されているかを鑑査することができる。ここで、分包袋連続体Bの形態で薬剤を分包する場合、処方毎に異なる分包袋連続体Bが形成される場合に加え、複数処方分の分包袋bが一連の分包袋連続体Bとして形成される場合がある。このように、一連の分包袋連続体Bに処方の異なる分包袋bが含まれる場合には、図40に示すように、先の処方に係る分包袋bと、後の処方に係る分包袋bとの間に空の分包袋bが一又は複数形成される。また、空の分包袋bの所定の位置には、処方情報等の情報が付与されたバーコード(識別標識)が付される。
上述したように異なる処方に係る分包袋bが一連に形成されている場合には、先の処方に係る分包袋bについて薬剤の鑑査を行った後、空の分包袋bに続く次の処方に係る分包袋bを鑑査部310に供給する場合、次の処方について鑑査を行うに際して分包袋bを鑑査部310と正確に位置決めする必要がある。そこで、単一の分包袋連続体Bに複数の処方に係る分包袋bが存在している場合に、以下のようにして空の分包袋bに続く処方の分包袋bの位置決め(頭出し)を行うべく、薬剤鑑査装置300は、以下のような構成とされている。
具体的には、薬剤鑑査装置300は、空の分包袋bに付された識別標識を認識するための識別標識認識手段410を有する。本実施形態においては、識別標識認識手段410として、レーザー光を発してバーコードを読み取り可能なバーコードリーダが採用されている。また、識別標識認識手段410は、鑑査部310に対して搬送手段12による分包袋連続体Bの搬送方向の上流側に設置されている。
また、制御装置330は、分包袋位置決手段420を備えている。分包袋位置決手段420は、識別標識認識手段410により識別標識(バーコード)が認識された認識位置、すなわち識別標識認識手段410の設置位置を基準として、空の分包袋bに対して下流側に存在する薬剤が収容されている分包袋bを鑑査部310に対して位置決め可能とされている。具体的には、分包袋位置決手段420は、識別標識認識手段410によって識別標識を認識した時点で、空の分包袋bが識別標識認識手段410の直下に到達したものと判断する。
ここで、識別標識認識手段410と鑑査部310との間隔、及び分包袋bの大きさについては、分包袋位置決手段420によって予め把握されている。そのため、分包袋位置決手段420は、空の分包袋bが識別標識認識手段410の直下に到達した時点で、分包袋連続体Bをどれだけ鑑査部310側に送れば、次の処方に係る分包袋bを鑑査部310に到達させることができるか、導出することができる。そこで、分包袋位置決手段420は、次の処方に係る分包袋bを鑑査部310に到達させるために必要である長さ分だけ分包袋連続体Bを鑑査部310側に送る。これにより、空の分包袋bに続く処方の分包袋bを鑑査部310に対して位置決め(頭出し)することができる。従って、本実施形態の薬剤鑑査装置300においては、上述した連続処方等のために分包袋連続体Bの中間部分に空の分包袋bを形成した場合であっても、空の分包袋bの下流側に存在する薬剤入りの分包袋bについて、鑑査部310との位置決め精度の低下に伴う鑑査精度の低下を回避することができる。
本実施形態においては、薬剤鑑査装置300を薬剤鑑査処理に加えて、異物検出処理、薬剤マスタ構築処理、及びミシン目検出処理を実行可能なものとした例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薬剤鑑査処理を除く全ての処理、あるいは一部の処理を実行する機能を備えていないものであっても良い。
また、上述した第一実施形態の薬剤分包装置100における薬剤鑑査装置10に代えて、本実施形態の薬剤鑑査装置300を用いることが可能である。
≪≪変形例≫≫
以下、上記実施形態において示した薬剤鑑査装置10,300のいずれか一方又は双方において適用可能な変形例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、薬剤鑑査装置10,300の双方に適用可能な変形例についても、特に断りのない限り、薬剤鑑査装置300を例に挙げて説明する。
≪固定装置・揺動動作について≫
上述した薬剤鑑査装置10,300は、いずれも搬送方向上流側から鑑査部14,310に向かう途中において分包袋連続体B(分包袋b)を水平方向に揺動することにより、鑑査部14,310に到達するまでの間に薬剤を倒し、分散した状態とすることが可能である。ここで、多数の薬剤が収容されている等して分包袋bが重い場合には、前述したような揺動動作を行うべく搬送手段12を作動させても、搬送路上において分包袋bが滑ってしまい、うまく揺動させることができない可能性がある。これにより、揺動後に正しい鑑査位置に分包袋bが配置されず、正確な画像撮影と鑑査が実行できない可能性がある。このような事態を回避すべく、分包袋連続体Bの端部を一時的に固定することが好ましい。
薬剤鑑査装置300を例に挙げさらに詳細に説明すると、図42及び図43に示すような固定装置500を導入部304に設ける。また、図44〜図46に示すように、排出部305にも、固定装置500と同様の駆動機構を備えた固定装置502を設ける。固定装置500,502は、導入部304及び排出部305において分包袋連続体Bが通過する水平面304a,305aに対して上下動可能な押圧片504,506を有する。通常時は、押圧片504,506が水平面304a,305aに対して分包袋連続体Bが通過可能な程度のクリアランスを介して上方に位置している。また、分包袋連続体Bを一時的に固定する必要がある場合には、押圧片504,506が下降し、水平面304a,305aに押しつけられた状態になる。これにより、水平面304a,305aと押圧片504,506との隙間に存在している分包袋連続体Bを挟持し、固定することができる。
固定装置500,502をなす動作機構及び設置位置はいかなるものであっても良い。すなわち、固定装置500,502を、搬送手段12のベルトと分包袋連続体Bとを一体的に挟み込むことができるものとする他、例えば図42〜図46に示すようなものとすることができる。すなわち、固定装置500,502は、導入部304あるいは排出部305の水平面304a,305aの側方において、ボルトやピン等の軸体508,510を中心として揺動可能なように支持された揺動片512,514を有する。揺動片512,514の先端部分に押圧片504,506が一体的に形成されている。また、揺動片512,514には、ソレノイド516,518の駆動軸520,522が接続されている。駆動軸520,522を進退させることにより、揺動片512,514を揺動させ、先端部分に設けられた押圧片504,506を上下動させることができる。
続いて、分包袋連続体B(分包袋b)内に収容されている薬剤を分散させるべく、分包袋連続体Bを水平方向に揺動する揺動動作と、固定装置500,502との連係動作について説明する。揺動動作は、最初に導入部304側に揺動させ、その後に排出部305側に戻す動作をする揺動方法P1と、最初に排出部305側に揺動させ、その後に導入部304側に戻す動作をする揺動方法P2とが考えられる。揺動方法P1により分包袋連続体Bを揺動させる場合には、導入部304側に設けられた固定装置500により分包袋連続体Bを固定し、排出部305側に設けられた固定装置502による固定を解除した状態とする。また、揺動方法P2により分包袋連続体Bを揺動させる場合には、排出部305側に設けられた固定装置502により分包袋連続体Bを固定し、導入部304側に設けられた固定装置500による分包袋連続体Bの固定を解除した状態とする。これにより、分包袋連続体Bを破損させることなく揺動させることが可能となる。
≪起立解消手段について≫
上記実施形態においては、分包袋b内において起立している薬剤を倒すためにアーム114の先端にローラ114aを取り付けた起立解消手段110を設けた例を示したが、起立解消手段110は、上述したような構成のものに限定されるものではなく、図50に示す起立解消手段530のようなものとし、図47〜図49に示すように鑑査部310の上流側に一つあるいは複数設けるようにしても良い。具体的には、起立解消手段530は、アーム532を有し、アーム532の先端部に側面視が略「V」字型の接触部534を設けた構成とされている。アーム532は、上述した起立解消手段530のアーム114と同様に、分包紙の搬送路を横断するように設けられた支軸536に対して回動自在に装着されている。また、アーム532は、バネ538により搬送路側に向けて付勢されている。これにより、搬送路を通過する分包紙の表面に対し、分包紙及び薬剤を破損しない程度の適度な強度で接触部534を分包紙に接触させることができる。
接触部534は、導入部304側に向くように傾斜した導入側傾斜面540と、排出部305側に向くように傾斜した排出側傾斜面542とを有する。また、搬送手段12によって形成された搬送路及びこの上を通過する分包袋連続体B(分包袋b)と導入側傾斜面540とがなす角θ1、及び搬送路と排出側傾斜面542とがなす角θ2は、共に鋭角である。
≪起立解消手段の別の変形例について≫
上述した起立解消手段110,530は、本発明の一実施形態に過ぎず、さらに別のものとすることが可能である。具体的には、図75に示す起立解消手段700は、接触部702を有する。接触部702は、導入側傾斜面704と、排出側傾斜面706とを有する。導入側傾斜面704及び排出側傾斜面706は、それぞれ上述した起立解消手段530の接触部534をなす導入側傾斜面540及び排出側傾斜面542と同様の構成である。そのため、詳細の説明については省略する。
起立解消手段700は、上述した導入側傾斜面704及び排出側傾斜面706に加え、薬剤均し具708を備えている点に特徴を有する。薬剤均し具708は、導入側傾斜面704及び排出側傾斜面706の間に設けられている。薬剤均し具708は、支軸710、及び珠部材712を有する。支軸710は、導入側傾斜面704及び排出側傾斜面706の境界部分に形成される稜線に沿って延びるように設置された軸体である。すなわち、支軸710は、起立解消手段700の設置状態において、分包袋連続体Bの流れ方向に対して略直行するように設置されている。
珠部材712は、算盤の珠あるいはビーズのような珠によって構成されている。本実施形態では、珠部材712として、算盤の珠のように、二つの台円錐の下底部同士を接合したような外観形状を有し、断面形状が六角形または略菱形の珠が用いられている。珠部材712は、支軸710に対して摺動可能なように装着されている。
上述したような構成とした場合、分包袋連続体Bが往復動することにより、珠部材712が薬剤に対して当接しつつ支軸710に沿って摺動する。このようにして珠部材712が軸方向に摺動しつつ程よく薬剤に当接することで、起立状態等にある薬剤を横転させ、鑑査しやすい状態にすることができる。
≪分包袋連続体の導入動作について≫
上述したような形状の起立解消手段530を設けることにより、分包袋連続体Bを導入部304側から排出部305側に向けて送る動作(順走動作)だけでなく、これとは逆方向に分包袋連続体Bを送る動作(逆走動作)を行う場合についても、起立解消手段530の上に乗り上がることなく分包袋連続体Bがスムーズに流れる。従って、起立解消手段530を設けることにより、例えば次のような動作を不具合を生じることなく実施することが可能となる。
すなわち、薬剤鑑査装置300について、薬剤鑑査装置10と同様に、鑑査部14に対して搬送方向上流側に供給検知手段24a及びリーダ装置72を設け、鑑査部14に対して搬送方向下流側に排出検知手段24bを設けた構成とすることが可能である。ここで、通常であれば、供給検知手段24aにより分包袋連続体Bを検知すると共に、分包袋連続体Bの先頭部分に付されたバーコードをリーダ装置72によって認識した時点から所定距離分だけ上述した順送動作を実行し、分包袋連続体Bを送ることにより、鑑査対象である分包袋bを鑑査部310に到達させ、位置決めすることができる。
しかしながら、分包袋連続体Bを導入する際に、オペレータが分包袋連続体Bを手から放すタイミングを誤る等すると、ごく希に分包袋連続体Bが想定したように搬送路を進行せず、分包袋bが鑑査部310に対して正確に位置決めできない可能性がある。このような不具合が想定される場合には、順走動作及び逆走動作を併用し、次のようにして分包袋連続体Bを導入することが望ましい。
すなわち、分包袋連続体Bを装置内に導入する際には、先ず、搬送手段12を順送動作させることにより、供給検知手段24aの設置箇所及び鑑査部310を経て、排出検知手段24bの設置箇所に至る経路で分包袋連続体Bを引き込む。これにより、排出検知手段24bにより分包袋連続体Bが検知されると、その時点で搬送手段12を逆走動作させ、鑑査対象である分包袋bを鑑査部310に到達させる。排出検知手段24bと鑑査部310との位置関係は予め定まっており、不変である。そのため、逆走動作により、分包袋連続体Bを排出検知手段24bと鑑査部310との間隔分だけ逆方向に移動させることにより、分包袋bが鑑査部310に対して正確に位置決めすることができる。
また、上述したようにして分包袋連続体Bを装置内に導入することとした場合、起立解消手段530を採用しておけば、仮に分包袋連続体Bが短いものであったとしても、逆走動作時に分包袋連続体Bが起立解消手段530の上方に乗り上げてしまう不具合が生じない。
≪分包袋連続体の導入動作の別の変形例について≫
上述した起立解消手段530あるいは起立解消手段700を設けた場合、分包袋連続体Bを順方向に送る動作(順走動作)に加え、逆方向に送る動作(逆走動作)についてもスムーズに行うことができる。そのため、分包袋連続体Bをなす各分包袋bについて鑑査部14において鑑査を行った際に、鑑査結果が処方と相違すると判定された場合や、分包袋b内に異物である可能性がある物体が存在すると判定された場合に、その分包袋bを起立解消手段530,700まで逆走させ、この分包袋bの表面に起立解消手段530,700が接触する範囲内において分包袋連続体Bを往復動させるようにすることが可能である。
上述したように、鑑査結果が異常である場合に分包袋bを起立解消手段530,700まで戻して往復動させることにより、分包袋b内に収容されている薬剤を確実に倒れた状態とし、正確に鑑査可能な状態とすることができる。これにより、鑑査により異常判定された原因が、分包袋b内に薬剤が起立状態で収容されていたことによるものである場合には、この原因を解消することができる。
上述したようにして、鑑査結果が処方情報と相違している場合に、起立解消手段530,700まで分包袋連続体Bを逆送させることとすれば、薬剤が起立状態であることによる鑑査不良を解消し、鑑査精度を向上させうる。また、上述したように鑑査結果が処方情報と相違している場合に限定して分包袋連続体Bを起立解消手段530,700まで逆走させるようにすれば、鑑査精度を高めつつ、鑑査速度の高速化を図ることが可能となる。
≪搬送ガイドについて≫
薬剤鑑査装置10,300においては、分包袋連続体Bを鑑査部310に移送するための搬送手段12の側方に搬送ガイド13が複数、搬送方向に並べて配置されている。図5及び図16等に示す搬送ガイド13は、搬送路に向けて付勢された支持アーム15aの先端にガイドローラ15bが回転可能に取り付けられている。搬送ガイド13は、搬送路を通過する分包袋連続体の横シール部に相当する部分にガイドローラ15bが接触し、押圧力を作用させることができる。そのため、各分包袋b内に収容されている薬剤に対して押圧力を作用させることなく、分包袋連続体Bをガイドすることができる。
ここで、上述した分包袋連続体Bを装置内に導入する際に、上述したように搬送手段12を順送動作及び逆走動作させることとした場合、搬送ガイド13の上に分包袋連続体Bが乗り上げてしまう可能性がある。このような懸念がある場合には、図5及び図16等に示した搬送ガイド13に代えて、図51に示すような搬送ガイド550を図47〜図49に示すように設けることが望ましい。
具体的には、搬送ガイド550は、搬送手段12による搬送方向に延びるように形成され、搬送路上を通過する分包袋連続体Bの表面に面接触可能な支持アーム552を有する。搬送ガイド550は、搬送手段12の側方において、分包袋が通過するような隙間を形成することなく支持アーム552が並ぶように設置されている。また、支持アーム552の長手方向中間部には、ガイドローラ554が取り付けられている。
搬送ガイド550を上述したような構成とすることにより、搬送路上において分包袋連続体Bを順方向あるいは逆方向のいずれに移動させた場合であっても、分包袋連続体Bが搬送ガイド550に乗り上げてしまうことを防止できる。また、ガイドローラ554が分包袋連続体Bの横シール部上を通過することとなり、各分包袋b内に収容されている薬剤の上をガイドローラ554が通過することを回避できる。
≪合成画像によるエッジ検出≫
続いて、上記第二実施形態において示した薬剤鑑査装置300において実施される画像鑑査方法の変形例について説明する。上述したように、薬剤鑑査装置300においては、図26あるいは図66に示すフローに則り、分包袋bに包装されている薬剤の個数及び種類を特定し、処方情報と合致しているか照合することができる。ここで、図26あるいは図66に示すフローのステップ1−4あるいはステップ6−6において画像鑑査工程を実施する際に、ステップ1−1〜ステップ1−3、あるいはステップ6−1〜ステップ6−5の各工程を経て基礎画像を加工して得られた画像(基礎画像加工画像)についてマッチング処理を実行する。
ここで、ステップ1−4あるいはステップ6−6においてマッチング処理をする際には、基礎画像加工画像から薬剤の像と想定される外輪郭をエッジとして抽出する処理を実行する。基礎画像加工画像中に写っている薬剤と、当該画像の背景色とが同系色でない場合には、薬剤に相当する外輪郭を容易かつ正確に抽出することができる。しかしながら、薬剤が背景色と同系色である場合には、薬剤の外輪郭の抽出が困難を極めることが想定される。そこで、薬剤が背景色と同系色である等して、薬剤の外輪郭の抽出が困難である場合には、制御装置330により、以下に説明する合成画像エッジ抽出処理を実行することとしても良い。
合成画像エッジ抽出処理は、上述したステップ1−1〜ステップ1−3、あるいはステップ6−1〜ステップ6−5の各工程を経て得られた基礎画像加工画像に加え、背面消灯画像に基づいて作成された明度マップ画像、及び彩度マップ画像を用いて実行される。明度マップ画像は、背面消灯画像を構成する明度成分によって表された画像である。また、彩度マップ画像は、背面消灯画像を構成する彩度成分によって表された画像である。合成画像エッジ抽出処理においては、基礎画像加工画像、明度マップ画像、及び彩度マップ画像を重複させることにより形成される合成画像を用い、合成画像中に含まれるエッジを抽出する処理を実行する。これにより、基礎画像加工画像のみでは抽出が困難であった薬剤の外輪郭を容易かつ正確に抽出することが可能となる。
上述した合成画像エッジ抽出処理は、背景色と薬剤の色との異同によらず実施することとしても良いが、基礎画像加工画像の背景色と薬剤の色とが同系色である場合に限定して実施することが好ましい。合成画像エッジ抽出処理を背景色と薬剤の色とが同系色である場合に限定して実行することとすれば、マッチング処理の処理速度の低下を最小限に抑制することができる。
≪合成画像によるエッジ検出の変形例について≫
ステップ1−1〜ステップ1−3、あるいはステップ6−1〜ステップ6−5の各工程を経て基礎画像を加工して得られた画像(基礎画像加工画像)についてマッチング処理を実行する際の処理精度を向上させるためには、基礎画像を単独で用いるのではなく、上述したように基礎画像を基準として加工を施した合成画像に基づいて薬剤のエッジ検出を行い、マッチング処理を行う方が好ましい場合がある。また、エッジ検出に用いる合成画像についても、鑑査対象である薬剤の色等を考慮して最適なものを用いることが望ましい。かかる観点に基づいたエッジ検出方法について、以下、図68に示すフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。
図68の制御フローにおいては、先ずステップ7−1の基礎画像加工画像取得工程において基礎画像中に含まれている鑑査対象領域を抽出し、基礎画像加工画像を取得する処理が実行される。具体的には、例えば図26に示す制御フローのステップ1−1〜ステップ1−3、あるいは図66に示す制御フローのステップ6−1〜ステップ6−5の各工程を実行することにより、基礎画像加工画像を取得する。
ステップ7−1において基礎画像加工画像の取得が完了すると、制御フローがステップ7−2の鑑査用HSV分解画像取得工程に進められる。本工程においては、背面照明手段314を消灯状態とすると共に、拡散光照明装置160を点灯状態とした状態で撮影して得られた背面消灯画像をHSV分解する。これにより得られた背面消灯Hチャンネル画像、背面消灯Sチャンネル画像、及び背面消灯Vチャンネル画像のうちの一つを鑑査用HSV分解画像として取得する。
ここで、鑑査用HSV画像の取得に際しては、条件によらず背面消灯Hチャンネル画像、背面消灯Sチャンネル画像、及び背面消灯Vチャンネル画像のうち、条件によらず予め決定されているものを選択するようにしても良いが、基礎画像や背面消灯画像の取得時に分包袋の背景色と、分包袋b内に収容されている薬剤の色とが同系色であるか否かにより選択するチャンネル画像を相違させることが望ましい。具体的には、分包袋bの背景色と、分包袋b内に収容されている薬剤の色とが同系色である場合には、背面消灯Hチャンネル画像を鑑査用HSV分解画像として選択することが望ましい。また、分包袋bの背景色と、分包袋b内に収容されている薬剤の色とが異系色である場合には、背面消灯Sチャンネル画像を鑑査用HSV分解画像として選択することが望ましい。
上述したようにしてステップ7−2の鑑査用HSV分解画像取得工程が完了すると、制御フローがステップ7−3の鑑査用単チャンネル画像取得工程に進行する。本工程においては、背面消灯画像をRGB分解することにより得られた背面消灯Rチャンネル画像、背面消灯Gチャンネル画像、及び背面消灯Bチャンネル画像のうちの一つを鑑査用単チャンネル画像として取得する。鑑査用単チャンネル画像の選択方法についても、鑑査用HSV分解画像の選択方法において説明したように、条件によらず予め規定されているものを選択するようにしても良いが、次のようにして選択することが望ましい。すなわち、ステップ7−1において取得された基礎画像加工画像において予め鑑査対象領域と鑑査対象領域以外の領域の位置が確定されていることを利用し、背面消灯Rチャンネル画像、背面消灯Gチャンネル画像、及び背面消灯Bチャンネル画像のうち、鑑査対象領域と鑑査対象領域以外の領域とのコントラストが最も大きいものを鑑査用単チャンネル画像として選択する。
上述したようにしてステップ7−3の鑑査用単チャンネル画像取得工程が完了すると、制御フローがステップ7−4の合成画像エッジ抽出処理工程に進められる。本工程においては、ステップ7−1において取得した基礎画像加工画像と、ステップ7−2において取得した鑑査用HSV分解画像と、ステップ7−3において取得した鑑査用単チャンネル画像とを3チャンネル画像として合成することにより合成画像を取得する。
上述したようにして合成画像が取得されると、制御フローがステップ7−5の合成画像エッジ抽出処理工程に移行し、合成画像中に含まれるエッジを抽出する画像処理が実行される。これにより、分包袋b内に存在する薬剤の外形が特定される。
上述したように、基礎画像加工画像と鑑査用HSV分解画像、及び鑑査用単チャンネル画像を3チャンネル画像として合成した合成画像を用いて薬剤の外形を特定することとすれば、薬剤の外縁に相当するエッジを抽出するための観点としてHSV色空間の観点、及びRGBカラーモデルの観点を付加することが可能となる。これにより、薬剤の外形の特定精度をより一層向上させ、薬剤の鑑査を高精度かつスピーディに実施することが可能となる。
また、上述した制御フローにおいては、鑑査用HSV分解画像の選択に際し、薬剤の色と背景色との関係を考慮し、薬剤が背景色と同系色であるか否かを考慮している。すなわち、薬剤の色と背景色と同系色である場合には、薬剤と背景とで色相に差異が強く発現する可能性が高いことを考慮し、背面消灯Hチャンネル画像を鑑査用HSV分解画像として選択する。また、薬剤が背景色と異系色である場合には、彩度に差異が強く発現する可能性が高いことを考慮し、背面消灯Sチャンネル画像を鑑査用HSV分解画像として選択することとしている。このようにすることにより、薬剤の外形の特定精度、及び薬剤の鑑査精度の高精度化を図ることができる。
さらに、上述した制御フローにおいては、背面消灯Rチャンネル画像、背面消灯Gチャンネル画像、及び背面消灯Bチャンネル画像のうち、鑑査対象領域と鑑査対象領域以外の領域とのコントラストが最も大きいものを選択することにより、薬剤の外縁に相当するエッジの抽出精度の向上を図っている。これにより、薬剤の外形の特定精度、及び薬剤の鑑査精度をより一層高精度化することが可能となる。
≪分割薬剤に係る鑑査用薬剤データベース及び外観画像データベースについて≫
上述した薬剤鑑査装置10,300は、共に画像鑑査によって薬剤の数量及び種類を特定し、鑑査することができる。ここで、画像鑑査を行う場合には、図52に示すように、薬剤マスタ370の一部として、照合用として薬剤の外観画像、大きさ、種類、色等の情報をマスターデータとして蓄積したデータベース(鑑査用薬剤データベース560)が必要となる。言い換えれば、鑑査用薬剤データベース560にマスターデータが登録されている薬剤については、薬剤鑑査装置10,300によって画像鑑査を実施することができる。また、分包袋bに分包される薬剤は、一錠を二以上に分割した状態のもの(分割薬剤)であることがあるが、分割薬剤についても鑑査用薬剤データベース560に外観画像等の情報が登録されていれば、薬剤鑑査装置10,300によって正確に鑑査することができる。
ここで、分割薬剤についての外観画像を鑑査用薬剤データベース560に登録する場合、実際に分割薬剤について写真撮影したものを用いることができる。しかしながら、鑑査用薬剤データベース560に登録される薬剤の種類は膨大であり、その一つ一つについて別途写真撮影して登録する作業を行うことは繁雑を極める。従って、非分割状態の薬剤についての外形画像(全錠マスター外形画像)を鑑査用薬剤データベース560に登録することで、全錠マスター外形画像を画像処理して分割した薬剤についての外形画像(分割錠マスター外形画像)を作成し、鑑査用薬剤データベース560に登録できる構成とすることが望ましい。
全錠マスター外形画像から分割錠マスター外形画像を作成するための方策としては、様々なものを採用することができるが、例えば次のような方策を採用することができる。すなわち、図53(a)に示すように、全錠マスター外形画像について、薬剤に相当する薬剤領域の中央を通る分割線DLを境として分割することにより、分割薬剤について分割錠マスター外形画像を取得することができる。
また、実際に薬剤を分割する際には、薬剤の中央を微妙に外れた位置において切断される可能性がある。この場合、分割線DLで全錠マスター外形画像を分断して得られた分割錠マスター外形画像によっては、分割薬剤についてのマッチング精度が低下する可能性がある。そこで、画像処理により分割錠マスター外形画像を作成する場合には、図53(a)に示すように、分割線DLを境として全錠マスター外形画像を分割した画像の他に、分割線DLを基準として所定間隔分離れた位置に準分割線SLを想定し、この準分割線SLを境界として全錠マスター外形画像を切り出した画像を分割錠マスター外形画像の一つとして鑑査用薬剤データベース560に加えるようにすることが望ましい。
また、準分割線SLを複数設定し、複数種の分割錠マスター外形画像を用意することが望ましい。具体的には、図53(a)に示す例において、分割線DLから距離dだけ左右に離れた準分割線SL1,SL2、分割線DLから距離2dだけ左右に離れた準分割線SL3,SL4を設定し、これらの準分割線SL1〜SL4において全錠マスター外形画像を分割した画像(図53(b)参照)を分割錠マスター外形画像として鑑査用薬剤データベース560に加えることが望ましい。さらに具体的には、分割線DLを基準として所定のピクセル分だけ左右に外れた位置に準分割線SL1〜SL4を想定し、前述したような画像処理を行うことにより分割錠マスター外形画像を取得することが望ましい。このようにすることで、薬剤が中央を多少外れた位置において切断された場合であっても、分割薬剤についての画像鑑査を精度良く実施することが可能となる。
ここで、上述したように分割線DLを規定し、分割薬剤についての分割錠マスター外形画像を作成する場合、剤形によっては薬剤をちょうど二分割することができる分割線DLを規定することが困難である場合がある。具体的には、図53及び図54に示すような剤形の薬剤については、図53(a)及び図54(b)に示すように分割線DLを規定するのが通常であるが、図54(a)に示すように分割線DLが規定される可能性がある。従って、いかなる剤形の薬剤についても適切な分割線DLを規定することができるよう、次に示すようにして分割線DLを規定することが望ましい。
すなわち、図54に示すように、鑑査用外形画像において薬剤領域に対して外接する矩形の分割線設定用ガイドGを想定する。そして、図54(a),(c)に示すように、分割線設定用ガイドGの中央を通り、仮想線設定用ガイドをなす矩形の長辺に対して垂直な線を分割候補線CLとして規定する。また、分割候補線CLを境として一方側に存在する薬剤領域を薬剤領域CAとし、他方側に存在する薬剤領域を薬剤領域CBと規定する。その後、図54(b),(d)に示すように、分割候補線CLを境として薬剤領域CAを薬剤領域CB上に反転させた場合(例えば、CAとCBを重ね合わせた場合)に非重複状態になる領域(非重複領域CC)の大きさを導出する。このようにして分割線設定用ガイドGをなす矩形領域を所定の角度毎に回転させつつ非重複領域CCを導出する処理を、薬剤領域の全周に亘って実施する。その結果、非重複領域CCが最も小さくなる際の分割候補線CLを分割線DLとして規定する。これにより、いかなる剤形の薬剤についても適切な分割線DLを規定することができる。
上述したようにして得られた鑑査用薬剤データベース560用の分割錠マスター外形画像は、薬剤の外観画像を閲覧用として外観画像データベース372にも登録することが可能である。これにより、オペレータに対して表示する外観画像についても、分割薬剤についての表示を行うことが可能となる。
続いて、鑑査用薬剤データベース560に分割錠マスター外形画像を登録する作業の流れについて例示する。なお、以下において説明する例は、上述した合成画像によるエッジ検出に対応すべく、薬剤の色についても登録可能としたものである。そのため、薬剤鑑査装置10,300が合成画像によるエッジ検出に非対応である場合には、薬剤の色についての登録を省略することができる。
分割錠マスター外形画像を鑑査用薬剤データベース560に登録する際には、オペレータの操作用画面に図55(a)に示すようなウィンドウが表示される。このウィンドウにおいて、タイプとの表示の横に設けられたボタン(図示例においては「ソフトカプセル」と表示)を選択すると、図55(b)のようなウインドーが表示され、薬剤のタイプを選択することにより入力可能な状態になる。この例においては、薬剤のタイプとして、カプセル、ソフトカプセル、裸錠、糖衣錠の4タイプから選択することが可能である。この状態において例えば裸錠を選択すると、図56に示すように、タイプとの表示の横に設けられたボタンに選択したタイプを示す表示(本例では「ソフトカプセル」)がなされる。
また、図55(a)に示すウィンドウにおいて、「薬品検出」と記載された横に設けられたボタンを選択すると、図56に示すウィンドウが表示される。図56のウィンドウにおいては、合成画像によるエッジ検出を行う検出方法(図示例においては「特殊」と記載)により薬品検出を行うか、通常の検出方法(図示例においては「通常」と記載)により薬品検出を行うかを選択することができる。このウィンドウにおいて例えば「特殊」のボタンを選択すると、図55(a)に示すウィンドウに戻り、その旨がボタンに付記される。
また、図55(a)に示すウィンドウにおいて、右上の切り替え欄に設けられたボタンを選択すると、図57(a)に示すようなウィンドウが表示され、鑑査用薬剤データベース560に登録する薬剤が分割薬剤であるのか否かを選択可能な状態になる。この状態において、1/2錠とのボタンを選択すると、図57(b)に示すように半錠分の薬剤に相当する画像が分割錠マスター外形画像として登録される。
≪分割薬剤に係る鑑査用薬剤データベース及び外観画像データベースの構築方法の変形例について≫
分割薬剤に係る鑑査用薬剤データベース及び外観画像データベースの構築方法については、上述した方法に限定されるものではなく、他の方法によるものであっても良い。具体的には、分割した状態で処方する薬剤の多くにおいては、容易に分割可能とする目的、あるいは分割位置の指標とする目的等で、薬剤の表面に溝(薬剤分割溝)が形成されている。そのため、全錠マスター外形画像に写っている薬剤に薬剤分割溝が存在する場合には、この薬剤分割溝を指標として、分割線DLを設定することにより、鑑査用薬剤データベース及び外観画像データベースを構築するための分割錠マスター外形画像を容易かつ精度良く取得できるものと想定される。かかる知見の下、分割錠マスター外形画像を取得する方法について、図72に示す制御フローに則って説明する。
図72に示す制御フローにおいては、先ずステップ10−1の薬剤分割溝特定工程において、全錠マスター外形画像を画像解析し、薬剤に付された薬剤分割溝を検索する。その後、ステップ10−2において、薬剤分割溝が検出されたか否かが確認される。ここで、薬剤分割溝が検出されなかった場合には、本制御フローによる薬剤分割溝を指標とした分割線DLの設定を実施できないため、制御フローが終了する。この場合には、上述したようにして薬剤分割溝を指標とすることなく分割線DLを設定する方法等により分割錠マスター外形画像を取得する。
一方、ステップ10−2において薬剤分割溝の検出が確認された場合には、制御フローがステップ10−3の分割線決定工程に進められる。分割線決定工程においては、全錠マスター外形画像(図72中において符号AMで示す)に写った薬剤分割溝を通る分割線DLを決定する。
ステップ10−3において分割線DLが設定されると、制御フローがステップ10−4の角度調整工程に進められる。角度調整工程においては、ステップ10−3の分割線決定工程において決定された分割線DLを固定すると共に、薬品領域重心の周りに分割線DLを基準として正負の方向に全錠マスター外形画像AMを所定の角度毎に回転させつつ、分割線DLを基準として一方側に存在する薬剤領域と他方側に存在する薬剤領域とが対称であるか否かを確認する処理を実行する。これにより、分割線DLを基準として一方側及び他方側の薬剤領域が対称である状態になると、その位置において全錠マスター外形画像AMの回転を停止する。これにより、全錠マスター外形画像AMの角度調整が完了する。
上述したようにして全錠マスター外形画像AMの角度調整が完了すると、制御フローがステップ10−5の画像取得工程に進められる。画像取得工程においては、ステップ10−4において角度調整された全錠マスター外形画像を、ステップ10−3において設定された分割線DLを基準として分割することにより、分割錠マスター外形画像を取得する。このような手法を採用することにより、高精度な分割錠マスター外形画像を取得することが可能となる。
≪サイド照明について≫
外観画像データベース372を構成する画像を撮影する際には、鮮明な画像を取得すべく、なるべく明るく適切な方向から光を照射した状態で撮影を行うことが望ましい。そこで、図47に示すように、鑑査部310に対して上流側及び下流側に隣接する位置に、鑑査部310を照射可能なサイド照明570,572を設けた構成とすることが可能である。
サイド照明570,572は、鮮明な画像を取得可能なものであればいかなるものであっても良いが、図47等に示すようにバー状のもの等とすることができる。また、サイド照明570,572の光源としては、従来公知の電球、蛍光灯、LED等を用いることができる。本実施形態においては、サイド照明570,572がLEDを光源として内蔵したものとされており、その光軸が鑑査部310側であって、水平方向あるいは水平方向よりも上方に向くように設置されている。このように設置することにより、外観画像データベース372等を構成するための画像として鮮明な画像を取得することができる。
≪画像図について≫
薬剤鑑査装置10,300において、動作の各段階においてオペレータに対して表示する画像は適宜変更することが可能であるが、例えば図58〜図64に示すようなものを採用することが可能である。具体的には、各分包袋bに係る背面消灯画像をサムネイル形式で表示することにより鑑査結果を示す場合には、図29(a)に示すような表示形態を採用する他、図58(a),(b)に示すように鑑査を行った分包袋bの鑑査順に番号をサムネイル画像に隣接する位置に付記するようにしても良い。これにより、分包袋bの特定と鑑査結果の識別性がさらに向上する。また判定結果に応じて、サムネイル画像を取り囲む枠線の色等を変化させることにより、より一層識別性を向上させることが可能である。
また、図58(a),(b)に示す画像図においては、右上に鑑査結果を数量及び外観に分けて表示することとしている。具体的には、「個数」との表示がなされた欄には、数量の鑑査結果の可否を「OK」あるいは「NG」の形態で表示すると共に、包数を表示している。また、「照合」との表示がなされた欄には、外観に基づく鑑査結果を「OK」あるいは「NG」の形態で表示すると共に、包数を表示している。
また、薬剤鑑査装置10,300に照合結果について一覧表示する場合には、例えば図59のような画像図により表示することが可能である。また、このような画像図によって表示する場合に、照合結果の可否に応じて欄の表示色を変化させるようにすれば、より一層識別性を向上させることが可能である。
また、図30〜図32に示す画像図に代えて、図60〜図64に示す画像図を採用することも可能である。具体的には、図60〜図64に示す画像図においては、(1)属性表示部580、(2)包数表示部582、(3)画像表示部584、(4)明細表示部586、(5)服用時期表示部588、(6)判定表示部590、及び(7)ボタン表示部592が一つの画像図に集約されている。
属性表示部580は、患者名、ID番号、鑑査された分包袋bに収容されている薬剤の服用時期等の属性情報を表示する領域である。包数表示部582は、分包袋連続体Bをなす分包袋bの数量と、表示されている分包袋bが何包目に鑑査されたものであるのかを分数の形態等で表示する領域である。画像表示部584は、鑑査された分包袋bの画像を表示する部分である。画像表示部584には、薬剤の輪郭線を付した状態で画像を表示することができる。また、輪郭線の表示及び消去については、ボタン表示部592に設けられたボタンを押すことにより切り替えることができる。また、図60(a)に示すように、後に詳述する明細表示部586にリストアップされている薬剤等を選択すると、その薬剤等に相当する輪郭線が他とは識別可能な状態(アクティブ状態)になる。図60(a)の例では、選択した薬剤等の輪郭線が破線で表示され、破線が薬剤の周方向に回っているかのような表示がなされるが、例えば輪郭線を点滅表示させる等してアクティブ状態とすることも可能である。
明細表示部586は、処方データと鑑査結果とを一覧表示する部分である。明細表示部586には、薬品毎に確認用画像、薬品名、処方量、及び鑑査結果が一列に並べて表示される。鑑査結果の表示方法については適宜のものとすることができるが、図60〜図64に示す例においては、処方データ通りに薬剤が収容されている場合に、その薬剤に対応する欄に「OK」との表示を行うこととしている(図60(b)参照)。また、類似する薬剤が存在する場合には、「類似あり」との表示をして注意を促すこととしている(図61(a)参照)。さらに、処方データ通りに薬剤が収容されていない場合には、その判定理由を付記することとしている。
具体的には、図61(b)の例においては、薬剤の数量が不足しているため「不足」との表示を行っている。また、図62(a)の例においては、処方されている量よりも過剰に薬剤が包装されているため、「過剰」との表示がなされる。図60(b)に示す例においては、分包袋bに異物が混入しているため、その旨を示す表示がなされる。異物混入を知らせる表示については、薬剤のリスト表示に続けて、あるいは薬剤のリスト表示内に混在させても良いが、識別性を向上させるべく、図60(b)に示すように最下欄に表示する等して薬剤のリスト表示から離れた位置に表示することが望ましい。また、図60(b)に示す例においては、画像表示部584の画像中において異物と認識されたものを円形の印で囲む囲み表示がなされる。図62(b)に示す例においては、色が不一致である薬剤が存在するため、「色不一致」との表示がなされる。
図63に示す例においては、薬剤の数が処方量よりも少ないため、「不足」との表示がなされる。また、不明な薬剤が存在しているため、その旨を示す表示が図60(b)の異物混入時と同様にして表示される。また、画像表示部584の画像中において不明な薬剤と認識されたものを円形の印で囲む囲み表示がなされる。この囲み表示は、色を所定時間毎に変更する、あるいは点滅表示する等して目立たせるようにすることが望ましい。また、図60〜図64に示す例においては、鑑査結果に応じて画像表示部584に表示される画像中における薬剤の輪郭線の色を相違させる等することが望ましい。
各薬剤についてのマスタ情報を表示する場合には、図36(c)のように表示する他、図64(a)に示すように表示することも可能である。また、マスタ情報の登録時には、図64(b)に示すように、薬品名及び属性等の文字情報の他に、薬剤の表面、裏面、側面等の画像を表示するようにすることが望ましい。
また、図74(a)に示すような薬剤鑑査装置10,300の動作条件設定画面を設け、この操作画面において運用方法について各種設定を可能とすることができる。具体的には、鑑査方法について、分包袋連続体Bをなす各分包袋bを一括して鑑査するか、一包ずつ鑑査するかを選択可能とするためのボタン800,802を設けた構成としても良い。また、鑑査結果の判定基準として、薬剤の個数が処方情報と合致しているか否かを確認し、種類までは鑑査しないように動作設定するための個数ボタン804、薬剤の個数及び種類の双方について処方情報と照合し鑑査するように動作設定するための照合ボタン806、薬剤師や医師等の医療従事者の目視による鑑査も可能とするための目視ボタン808等を設けることが可能である。
また、薬剤鑑査装置10,300を用いた鑑査結果の表示方法としては、適宜変更することが可能であるが、例えば図74(b)に示すようなものとすることができる。具体的には、薬剤鑑査装置10,300による鑑査結果について、分包されている薬剤が完全に処方と不一致である場合、処方されている薬剤と類似するものが含まれている場合、処方と完全一致である場合のそれぞれについて、異なる表示形態で表示することができる。図74(b)に示す例では、処方と完全不一致である場合には、分包袋bを示すサムネイル画像を赤色の枠で囲み、類似薬剤が含まれていると鑑査された場合には黄色の枠で囲み、処方と完全一致である場合には青色の枠で囲むこととしている。また、薬剤師や医師等の医療従事者の目視による鑑査結果を併用して実施する場合には、その結果を○や×等の記号により表示する等して、薬剤鑑査装置10,300による鑑査結果の表示とは異なる表示方法で表示することとしている。
≪薬剤分包装置とのデータ連携について≫
上述した薬剤鑑査装置10,300は、いずれも薬剤分包装置100とデータ通信可能なように接続し、薬剤分包装置100側から取得した処方データに基づいて画像鑑査を実施することが望ましい。これにより、薬剤の分包業務から鑑査業務に至る一連の業務を滞りなく、迅速かつ正確に実施することが可能となる。
≪ジャーナルについて≫
薬剤鑑査装置10,300においては、鑑査結果を示す印刷物(ジャーナル)を出力可能とすることが望ましい。ジャーナルの出力形態は、いかなるものであっても良いが、例えば図65に示すように印字することが可能である。具体的には、鑑査結果が良好である場合には図65(a)に示すような印字を行うことが可能である。鑑査結果が不良である分包袋bが存在する場合には、図65(b)に示すように、不良である分包袋bを特定する印字、不良である理由についての印字等を行うことが望ましい。また、必要に応じて、図65(c)に示すようにバーコード等の識別標識を付すことも可能である。
≪薬剤鑑査処理の変形例について≫
上述した実施形態においては、図26に示す制御フローに則り、図27に示すような各種画像を取得しつつ鑑査処理を実行する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、図66に示す制御フローに則り、図67に示すような各種画像を取得しつつ、鑑査処理を実行するものとすることが可能である。以下、本変形例に係る薬剤鑑査処理の実行方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、上記実施形態に示した図26に示す制御フロー等と同一の処理を実行する部分について、重複する説明を省略しつつ説明する。
図66に示す制御フローにおいては、先ずステップ6−1の基礎画像取得工程において、背面照明手段314によって分包紙を背面側から照明した状態で撮影した背面点灯画像に基づき、薬剤鑑査用の基礎画像を取得する(図67(a)参照)。その後、ステップ6−2のグレイスケール画像取得工程において、ステップ6−1において取得した基礎画像をグレイスケール化してグレイスケール画像を取得する(図67(b)参照)。
ステップ6−2においてグレイスケール画像の取得が完了すると、制御フローがステップ6−3のグレイモルフォロジー処理工程に移行する。本工程においては、後に詳述するトップハット処理、ボトムハット処理、及び画像結合処理が順を追って実施される。すなわち、グレイモルフォロジー処理においては、先ずステップ6−3aにおいてトップハット処理が実施される。トップハット処理の実行に際して、ステップ6−1において取得した基礎画像をRGB分解する。これにより得られた、図67(c)に示すようなRチャンネル画像(基礎Rチャンネル画像)が取得される。
ステップ6−3aにおいては、基礎Rチャンネル画像にトップハット処理が施される。これにより、図67(d)に示すようなトップハット画像が取得される。図67(d)に示すトップハット画像は、グレイスケール画像において、分包袋bに付された印字部分を透過した透過光に相当するドット状の部分を選択的に示した画像である。
また、ステップ6−3bのボトムハット処理においては、基礎Rチャンネル画像についてボトムハット処理が実施される。これにより、図67(e)に示すようなボトムハット画像が取得される。図67(e)に示すボトムハット画像は、グレイスケール画像に写っている分包袋bに付された印刷部分のうち、上述した透過光に相当するドット状の部分を除く領域を選択的に示した画像である。
上述したようにしてトップハット画像及びボトムハット画像を取得すると、制御フローがステップ6−3cの画像結合処理に移行する。本工程においては、トップハット画像及びボトムハット画像を結合させることにより、図67(f)に示すような除外対象領域特定用画像が取得される。この除外対象領域特定用画像は、分包袋bに付された印字部分を透過した透過光に相当するドット状の領域と、ドット状の部分を除く領域とを組み合わせたものである。そのため、除外対象領域特定用画像は、分包袋bに付された印刷領域を示した画像である。
上述したようにして除外対象領域特定用画像が取得されると、制御フローがステップ6−4の鑑査対象領域確定工程に移行する。本工程においては、ステップ6−2において取得したグレイスケール画像と、ステップ6−3において取得した除外対象領域特定用画像との差分を取ることにより、鑑査対象領域を確定する。すなわち、ステップ6−4においては、グレイスケール画像の領域全体から、分包袋bに印刷が付された領域を除外する処理が実施される。これにより、グレイスケール画像に写っている領域中において、鑑査対象とすべき領域(鑑査対象領域)を確定するためのフィルタを形成することができる。
上述したようにした鑑査対象領域の確定が完了すると、制御フローがステップ6−6の鑑査対象画像取得工程に進められる。本工程は、上述した図26に示す制御フローのステップ1−3と同様の趣旨で実行される工程である。すなわち、背面照明手段314を消灯した状態で背面点灯画像と同一領域を撮影した背面消灯画像から、ステップ6−5において確定された鑑査対象領域に相当する領域の画像を鑑査対象画像として取得する。言い換えれば、背面消灯画像に対して、ステップ6−5において取得された鑑査対象領域確定用のフィルタを適用し、鑑査対象領域の絞り込み、分包袋bに付された印刷領域を除外する処理が実行される。
ステップ6−5において鑑査対象画像が取得されると、制御フローがステップ6−6の画像鑑査工程に移行する。本工程においては、ステップ6−5で取得した鑑査対象画像に基づき、薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方を検出する鑑査処理が実行される。ステップ6−5における鑑査処理は、上述した図26に示す制御フローのステップ1−4と同様の方法により実施される。
上述したようにして鑑査対象画像を取得することとすれば、分包袋bに付された文字や記号等の印刷が写った領域と、薬剤が写った領域とをより一層高精度に分離し、鑑査対象画像を画定することができる。これにより、薬剤の鑑査精度をより一層向上させつつ、鑑査処理の速度向上を図りうる。
≪分包袋連続体導入不良検知について≫
上述したように、薬剤鑑査装置10,300は、いずれも一服用分毎に分包した分包袋bが並んだ帯状の分包袋連続体Bを鑑査部14,310に向けて順次供給し、鑑査するものである。ここで、分包袋連続体Bが長尺であると、導入部10b、304において捩れてしまうことにより導入不良が生じる可能性がある。従って、薬剤鑑査装置10,300は、導入部10b,304における導入不良を検知可能な構成であることが望ましい。かかる問題に対処すべく、例えば以下のような構成とすることができる。なお、以下の説明においては、導入部10b、304のうち、導入部304を例に挙げ説明する。
図42及び図43に示すように、導入部304は、筐体302内への分包袋連続体Bの供給に際して、分包袋連続体Bを水平状態にして配置可能し、通過させることが可能な水平面304aを有する。また、水平面304aの両脇には、分包袋連続体Bが傾かないようにガイドするガイド片306,306が設けられている。さらに、水平面304aの両脇であってガイド片306,306に隣接する位置、言い換えれば水平部304aにおける分包袋連続体の通過方向を基準として両側方には、水平部304a上を通過する分包袋連続体Bを検知可能な分包袋検知センサ304b,304bが設けられている。分包袋検知センサ304b,304bは、制御装置330に対して情報通信可能なように接続されている。
制御装置330は、導入部304における分包袋連続体Bの導入不良を判定するための導入不良判定手段として機能する。具体的には、導入部304においてガイド片306,306の間隔は、分包袋連続体B(分包袋b)が斜めに導入されるのを防止する等の観点から、分包袋連続体B(分包袋b)の幅に近似した大きさとされている。そのため、分包袋連続体B(分包袋b)が捩れることなく導入される場合には、ガイド片306,306近傍に設置された分包袋検知センサ304b,304bは、双方とも分包袋連続体B(分包袋b)を検知することになる。これに対し、分包袋連続体B(分包袋b)が捩れている場合には、分包袋検知センサ304b,304bのうち一方側のみが分包袋連続体B(分包袋b)を検知し、もう一方側においては検知されないことになる。そこで、制御装置330は、両側方に設けられた分包袋検知センサ304b,304bの一方のみにおいて分包袋連続体Bが検知されることを条件として、導入部において分包袋連続体が捩れ、導入不良状態になっているものと判定し、報知する。
上述したようにして分包袋連続体B(分包袋b)の捩れを検出可能とすれば、分包袋連続体B(分包袋b)の導入不良に伴う鑑査不良を防止することができる。また、分包袋連続体B(分包袋b)が捩れたまま導入されることによる破損等を防止することができる。
≪導入部の形状について≫
図42や図43に示すように、導入部304は、分包袋連続体Bが引っかかるのを防止すべく、導入部304の底面308をなす板体の末端部分を下方に向けて円弧状に湾曲させた形状とされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図73のようなものとすることができる。すなわち、導入部304の底面308をなす板体の末端部分を屈曲させ、略鉛直下方に向けて延びる垂下部304cを形成する。また、垂下部304cには、表面側(分包袋連続体Bの通過側の面)に膨出した膨出部304dを設ける。膨出部304dは、垂下部304cの端部をさらに表面側に折り返して形成することが可能であるが、本実施形態では別途作成した断面形状が半円状の部材を導入部304の幅方向に取り付けることにより膨出部304dが形成されている。
上述したような膨出部304dを設けた場合、分包袋連続体Bが底面308をなす板体に沿って流れる際に膨出部304dに当たり、各分包袋bの内部に収容されている薬剤に軽い振動が加わる。これにより、分包袋b内において薬剤が起立状態で収容されている場合に、起立状態を解消するための一助となりうる。
≪抜き取り鑑査モードについて≫
上述した薬剤鑑査装置10,300は、鑑査用として導入された分包袋連続体Bをなす全分包袋bについて鑑査を行うものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、一部を抜き取り、鑑査結果を目視により確認可能な状態で表示する抜き取り鑑査モードでの動作が可能なものとしても良い。抜き取り鑑査モードの実施方法については、適宜のものとすることが可能であるが、例えば以下のようなものとすることが可能である。
具体的には、図76に示す例においては、「抜取表示」ボタンを押下することにより、抜き取り鑑査モードによる動作が可能となる。本例においては、分包袋連続体Bが、朝食後服用分、昼食後服用分、及び夕食後服用分の分包袋bを連続的に形成したものである場合に、各服用時期に相当する複数の分包袋bのうち、最初のものと最後のものとについて鑑査結果を抜き取り、表示することとしている。図76に示す例では、朝食後服用分、昼食後服用分、及び夕食後服用分の鑑査結果を、服用時期に応じて上下に分けて表示している。本例においては、上段に朝食後服用分の鑑査結果、中段に昼食後服用分の鑑査結果、下段に夕食後服用分の鑑査結果を表示している。
また、抜き取り鑑査モードにおいては、各服用時期の最初のものと最後に加え、鑑査結果が処方データと合致しないものや、類似薬品が存在する可能性があるなどといった鑑査結果が疑わしいものについては、鑑査の結果を表示する。鑑査結果が処方データと一致する場合、不一致である場合、及び類似薬品が存在する可能性があるなど注意を要するものである場合の各場合について、異なる表示方法で表示される。図76に示す例においては、鑑査結果に応じて、各分包袋bを示すサムネイルを囲む枠の色を変更している。具体的には、鑑査結果が処方データと一致する場合には青枠で表示し、不一致である場合には赤枠で表示し、注意を要するものである場合には黄色の枠で表示している。鑑査結果が注意を要するものである場合としては、類似薬品が存在する可能性がある場合や、処方されている薬剤が人体に及ぼす危険性の高い薬剤である場合、薬剤の分包作業に薬剤師等の手作業が含まれている場合等が挙げられる。
図76に示す例においては、鑑査結果に間違いがないか薬剤師等の目視により確認した結果を反映させることができる。具体的には、図76に示す例においては、「残り一括OK」ボタンを押下することにより、全ての鑑査結果に間違いがないとの薬剤師等の判断を反映させることができる。また、「朝食後」ボタン、「昼食後」ボタン、あるいは「夕食後」ボタンを押下することにより、朝食後服用分の分包袋b、昼食後服用分の分包袋b、あるいは夕食後服用分の分包袋bについて、間違いがないとの薬剤師等の判断を反映させることができる。また、図76の例では、「目視未」ボタンを押下しておくことにより、目視による判断を行っていない分包袋bに相当するサムネイルのみを表示させることができる。
また、図76(c)に表示されている各分包袋bに相当するサムネイルを押下すると、この分包袋bについての詳細情報が図76に示すように表示される。この表示画面において、「目視OK」ボタン、あるいは「目視NG」ボタンを押下することにより、薬剤師等の目視による確認結果を設定することができる。
上述したような抜き取り鑑査モードによる動作を実行可能とすれば、鑑査結果のうち、任意のものについてのみ選択的に確認したいという要望に対応可能となる。これにより、医師や薬剤師等による鑑査結果の確認作業をより一層簡略化することができる。
また、図76(a)に示す状態において、目視鑑査を行いたい分包袋bに相当するサムネイルを押下(選択)し、図76(c)のような詳細情報を表示させた場合において、薬剤師等の目視による確認結果を「目視OK」ボタン、あるいは「目視NG」ボタンを押下することで設定した後の動作は、適宜のものとすることができる。すなわち、図76(c)の状態において目視による確認結果を設定した後、図76(a)のサムネイル表示に戻るようにしても良く、抜き取り表示対象として選択された他の分包袋bの詳細情報を示す画像に順次切り替わるようにしても良い。後者のように、抜き取り表示対象として選択された他の分包袋bの詳細情報を順次切り替え表示可能とすることで、目視による鑑査業務をより一層容易かつスピーディに実施可能となる。
また、処方されている薬剤あるいは鑑査の結果で類似と判断された薬剤群の中に人体に及ぼす危険性の高い薬剤(以下、「ハイリスク薬剤」とも称す)である場合や、薬剤の分包作業に薬剤師等の手作業が含まれている薬剤(以下、「手撒薬剤」とも称す)が存在する場合等、鑑査結果が注意を要するものである場合には、図76(c)の表示画面の各所に、注意を喚起する表示を施すことが望ましい。具体的には、ハイリスク薬剤の名称については、薬品名を通常とは異なる色(例えば赤色)で表示する等、表示形態を特徴のあるものとすることが望ましい。また、ハイリスク薬剤についての判定結果についても、通常の薬品とは異なる色で表示する等、表示形態を特徴のあるものとすることが望ましい。さらに、鑑査の結果、類似と判断された薬剤群の中にハイリスク薬剤が含まれている場合には、例えば判定結果を通常とは異なる色(例えば赤色)で表示する等して、ハイリスク薬剤が類似薬剤の候補に含まれている旨を明確化した表示とすることが望ましい。また、手撒薬剤については、例えば図76(c)において符号「D」を付して示したように、手撒薬剤であることを示す符号等を用い、他と識別可能なようにすることが望ましい。
≪目視による鑑査結果の表示について≫
薬剤鑑査装置10,300は、当該装置による鑑査に加え、医師や薬剤師の目視による鑑査を行いうるようにすることが可能である。このような構成とした場合、例えば図77(a),(b)に示すようなインターフェイスを表示することで、目視による鑑査結果の識別力を向上させることができる。具体的には、図77(a),(b)に示すように、目視による鑑査結果を、分包袋b毎に設けられたサムネイルに対し「○」印、あるいは「×」印等の記号等を用いて直感的に識別可能なように表示させることが可能である。また、分包袋bの集合からなる分包袋連続体B全体としての目視による鑑査結果について、所定の形式で示すことが可能である。具体的には、目視による鑑査結果が不良である分包袋bが含まれている場合には、分包袋連続体B全体としての鑑査結果が不良である旨を、図77(a)の右上に設けられた目視結果の表示欄に表示(図示例では、「目視 NG」と表示)することが可能である。同様に、全ての分包袋bについて目視による鑑査結果が良好である場合には、分包袋連続体B全体としての鑑査結果が良好である旨を、図77(b)のように表示(図示例では、「目視 OK」と表示)することが可能である。このようにすることで、目視による鑑査結果が一目で判別することが可能となり、より一層利便性が向上する。
本発明は上述した第一実施形態、及び第二実施形態として例示した実施形態、及び各実施形態についての変形例として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。