上述したように、特許文献1に係る錠剤検査システムにおいては、固形薬剤が分包紙により形成された分包袋に収容された状態で撮影される。そのため、例えば薬剤が分包袋の内側で立ったままの状態などで撮影されると、正確に鑑査することが難しくなるという問題がある。特許文献1の錠剤検査システムをはじめとする従来技術の薬剤鑑査装置においては、分包袋内における薬剤の収容状態を鑑査に適切な状態とするための方策が十分とられていないという問題がある。
そこで、本発明は、分包袋に収容された薬剤について十分な精度で鑑査可能な薬剤鑑査装置の提供を目的とした。
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、前記撮影装置によって得られた画像に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置とを備えており、前記鑑査部に至る前記分包袋の搬送経路に、前記分包袋に収容された薬剤を均す均し機構部が設けられており、前記均し機構部が、前記鑑査部に向けて搬送される前記分包袋が通過する搬送面と、前記搬送面に向けて進退自在に付勢された複数のピン部材とを有し、前記ピン部材が、前記搬送面を通過する前記分包袋の進行方向、及び進行方向に対して交差する方向にそれぞれ複数配置されており、前記搬送面を通過する前記分包袋と、複数の前記ピン部材とを、前記搬送方向及び前記搬送方向に対して交差する方向のいずれか一方又は双方に向けて相対移動させることにより、前記分包袋に収容されている薬剤を均す均し処理を行うものである。
本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査部に至る分包袋の搬送経路に、分包袋に収容された薬剤を均す均し機構部が設けられている。均し機構部は、ピン部材が分包袋の進行方向、及び進行方向に対して交差する方向にそれぞれ複数配置されている。また、ピン部材は、分包袋が通過する搬送面に向けて進退自在に付勢されたものとされている。そのため、例えば分包袋の中で薬剤が立った状態や重なった状態で供給される等すると、ピン部材が分包袋を介して薬剤に当たった状態になる。また、分包袋とピン部材とを相対移動させることにより、分包袋内で立った状態や重なった状態で収容されている薬剤を、ピン部材によって倒したり、重なりが解消された拡散された状態にしたりする処理(均し処理)を行える。そのため、本発明の薬剤鑑査装置は、均し機構部において分包袋に収容されている薬剤を均して鑑査に適切な状態とした後、鑑査部に分包袋を供給できる。従って、本発明によれば、例えば分包袋に収容されている薬剤の姿勢等、薬剤の収容状態に起因する鑑査精度の低下を抑制し、十分な精度で鑑査可能な薬剤鑑査装置を提供できる。
(2)上述した薬剤鑑査装置は、前記分包袋が複数連続して形成された分包袋連続体の形態により、前記鑑査部に対して前記分包袋を一つずつ、順番に供給して鑑査可能であり、複数の前記ピン部材と、前記搬送面との間隔を調整するピン位置調整機構を有し、前記ピン位置調整機構が、前記ピン部材が前記均し処理を行える程度に前記分包袋に近接した均し位置と、前記ピン部材と前記搬送面との間に前記分包袋連続体を導入するのに十分な間隔を開けた離反位置と、前記均し位置、及び前記離反位置の中間であって、前記ピン部材と前記搬送面との間に前記分包袋連続体の通過に十分な間隔を開けた中間位置とを含む複数の位置に複数の前記ピン部材の位置を変化可能であると良い。
上述したようなピン位置調整機構を設けた場合、均し位置にピン部材を位置させることにより、均し処理を適切に行うことができる。また、上述したような構成とすれば、離反位置にピン部材を位置させることにより、分包袋連続体をピン部材と搬送面との間に導入するのに適した状態にすることができる。
ここで、分包袋連続体をなす分包袋を順次鑑査していく場合、均し位置のまま分包袋連続体を鑑査部に向けて順次送ろうとすると、分包袋に過大な力が作用する懸念がある。また、離反位置は、分包袋連続体をピン部材と搬送面との間に導入することを想定した位置であるため、ピン部材と搬送面との間に比較的大きな間隔が生じる。そのため、分包袋連続体を一包分ずつ鑑査部に送る度に、均し位置から離反位置までピン部材を移動させれば、ピン部材との接触により分包袋に過大な力が作用するのを抑制できる反面、ピン部材の移動に要する時間が長くなってしまうという懸念がある。均し位置から離反位置までピン部材を移動させるのに要する一回当たりの時間がごく僅かであったとしても、薬剤鑑査装置による鑑査が一度に大量の分包袋について行われることを想定すると、分包袋連続体を鑑査部に送る際にピン部材の移動によるタイムロスを最小限に抑制することが望ましい。
かかる知見に基づけば、上述したように、均し位置及び離反位置の中間であって、ピン部材と搬送面との間に分包袋連続体の通過に十分な間隔を開けた中間位置にピン部材を配置できるようにすると良い。これにより、包袋連続体を鑑査部に向けて送る際に、ピン部材との接触により分包袋に過大な力が作用するのを抑制しつつ、ピン部材の移動によるタイムロスを最小限に抑制できる薬剤鑑査装置を提供できる。
(3)上述した薬剤鑑査装置は、前記ピン部材が、前記搬送面に向けて延びる軸部と、前記軸部の端部に設けられた先端部とを有し、前記先端部において前記搬送面に対して当接可能とされており、隣接する前記ピンの前記先端部同士の間隔が、前記軸部同士の間隔よりも狭いものであると良い。
これにより、均し処理に際して先端部により倒されようとしている薬剤に対し、隣接する他のピンの軸部が障害となり、薬剤が上手く倒れなかったり、倒れかけた薬剤を再度起こしてしまうといった現象を抑制できる。従って、上述した構成によれば、より一層スムーズかつ確実に均し処理を行うことができる。
(4)上述した薬剤鑑査装置は、前記搬送面に複数の凸部が所定の間隔ごとに設けられていると良い。
かかる構成によれば、例えば分包袋内に立った状態や重なった状態で薬剤が供給されたとしても、薬剤の足下が不安定となり、薬剤の均し効果が向上する。また、上述したような凸部を設ければ、均し処理に際してピン部材により押し動かされる薬剤に対して凸部が当たる効果によっても、より一層ピン部材による薬剤の均し効果が向上する。
(5)上述した薬剤鑑査装置は、前記凸部が、前記分包袋の搬送方向に対して斜めに延びるように設けられていると良い。
かかる構成によれば、均し処理を行う際に、薬剤の向きが凸部の配置角度に沿って変わり、より一層均し効果が向上する。
上述した凸部の傾斜については適宜設定可能であるが、例えば、進行方向に対して30度以上60度以下の範囲内で傾斜させると良く、進行方向に対して40度以上50度以下の範囲内で傾斜させるとさらに良い。また、凸部の形状については適宜設定可能であるが、例えば少なくとも先端部の形状が円弧状のものとすると良い。また、凸部の大きさや、隣接する凸部同士の間隔については、適宜設定可能であるが、例えば、凸部の大きさ(幅)は3〜7mmの範囲内の大きさとすると良く、5mm程度とするとさらに良い。また、隣接する凸部同士の間隔(幅)については、凸部の大きさ(幅)よりも小さくすると良く、例えば2〜3mmの範囲内とすると良く、2.5mm程度のとするとさらに良い。
ここで、薬剤鑑査装置における鑑査を、鑑査対象の薬剤に関する情報を登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像と、処方情報とに基づいて行うこととする場合、従来公知の薬剤鑑査装置においては、薬剤情報データベースに未登録の薬剤が処方された分包袋については、処方不良や鑑査不良等として処理される。このような処理を行うと、薬剤情報データベースに未登録の薬剤が含まれているために処方不良や鑑査不良等となっているのか、薬剤情報データベースに登録されている薬剤についての分包に問題があって処方不良や鑑査不良等となっているのかの区別がつかない。そのため、従来公知の薬剤鑑査装置においては、未登録の薬剤を含む分包袋について、他の薬剤が処方通りに正確に分包されていたとしても、薬剤師等が全数目視で鑑査する等の処理を行わねばならない。また、未登録の薬剤を含む分包袋が処方不良や鑑査不良等として処理されると、薬剤師等が目視により鑑査する分包袋の大多数が分包に問題のないものとなる可能性が高い。そのため、本当に処方不良や鑑査不良等とすべきものが、薬剤師等によって見落とされる可能性がある。
(6)上述した薬剤鑑査装置は、前記均し機構部において、前記分包袋を保持する保持機構を備えたものであると良い。
かかる構成によれば、例えば均し機構部において均し処理を行う等する際に、適切な保持力を分包袋に作用させることができる。
(7)上述した薬剤鑑査装置は、前記均し機構部において、前記分包袋を保持する保持機構を備えており、前記保持機構が、前記搬送面に対する前記分包袋の移動を妨げるように前記分包袋を保持する第一の保持状態と、前記搬送面に対する前記分包袋の移動を妨げない程度に前記分包袋を保持する第二の保持状態と、を含む複数の保持状態から選択的に保持状態を切替可能であると良い。
かかる構成によれば、第一の保持状態とすることにより、均し処理を行う等する際に、適切な保持力を分包袋に作用させることができる。また、上述したようにすれば、第二の保持状態とすることにより、保持機構を分包袋の移動をガイドするためのものとしても活用できる。
(8)かかる問題を解消すべく提供される本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、鑑査対象の薬剤に関する情報を登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像、処方情報、及び前記薬剤情報データベースに登録されている情報に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置と、前記鑑査による結果を出力する出力装置とを備えており、前記薬剤情報データベースに未登録の薬剤が含まれている処方に係る前記分包袋について、前記未登録の薬剤を除く他の薬剤に関する前記鑑査を行い、当該鑑査の結果についての出力、及び未鑑査の薬剤の存在を示す出力を前記出力装置により行うことを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置では、薬剤情報データベースに未登録の薬剤が含まれている処方に係る分包袋について、未登録の薬剤を除く他の薬剤に関する鑑査を行い、鑑査の結果についての出力が行われると共に、未鑑査の薬剤の存在を示す出力が行われる。そのため、本発明の薬剤鑑査装置では、仮に薬剤情報データベースに未登録である薬剤が含まれている分包袋があったとしても、薬剤情報データベースに登録されている薬剤について薬剤師等が鑑査を行う必要がなく、未登録の薬剤に集中して鑑査を行うことができる。従って、本発明の薬剤鑑査装置によれば、薬剤情報データベースに未登録の薬剤が含まれている分包袋が供給されたとしても、スムーズかつ精度良く鑑査業務を行える。
(9)本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、前記撮影装置によって得られた画像に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置とを備えており、前記鑑査部に至る前記分包袋の搬送経路に、前記分包袋に収容された薬剤を均す均し機構部が設けられており、前記分包袋が通過する搬送面とは逆側から、前記分包袋に向けて突出退入可能とされた複数の突出退入部材と、複数の前記突出退入部材が所定の順番で突出退入を繰り返すように動作させる動作機構とを有するものである。
本発明の薬剤鑑査装置は、均し機構部を備えている。また、均し機構部は、複数の突出退入部材及び動作機構を備えている。均し機構部は、搬送面を通過する分包袋に向けて、突出退入部材を搬送面とは逆側から分包紙に向けて所定の順番で突出退入を繰り返すため、搬送面上にある分包袋内において薬剤を分散等させることができる。また、均し機構部は、鑑査部に至る分包袋の搬送経路に設けられている。そのため、本発明の薬剤鑑査装置は、均し機構部において分包袋に収容されている薬剤を均して鑑査に適切な状態とした後、鑑査部に分包袋を供給できる。従って、本発明によれば、例えば分包袋に収容されている薬剤の姿勢等、薬剤の収容状態に起因する鑑査精度の低下を抑制し、十分な精度で鑑査可能な薬剤鑑査装置を提供できる。
(10)本発明の薬剤鑑査装置は、前記動作機構が、複数の前記突出退入部材を所定の動作周期で突出退入を繰り返すように動作させつつ、複数の前記突出退入部材をなす一又は一群ごとに前記動作周期の位相を相違させて前記突出退入部材を突出退入させるものであると良い。
かかる構成によれば、複数の突出退入部材をなす一又は一群ごとに異なるタイミングで突出退入させることができる。これにより、複数の突出退入部材が全て同じタイミングで突出退入する場合に比べて確実かつ効率的に薬剤を均すことができる。
(11)本発明の薬剤鑑査装置は、前記動作機構が、動力源から動力を受けて回転可能な回転軸と、前記回転軸に連動して所定の回転周期で回転可能なカムとを有し、前記突出退入部材が、前記カムに対して直接的あるいは間接的に接触して動力を受けて動作するものであり、前記カムが、前記突出退入部材に対応して複数設けられており、複数の前記カムが、一又は一群ごとに互いに位相を相違させて回転可能とされているものであると良い。
本発明の薬剤鑑査装置では、前記突出退入部材に対応して複数設けられカムが、所定の回転周期で回転可能とされると共に、一又は一群ごとに互いに位相を相違させて回転可能とされている。また、本発明の薬剤鑑査装置では、突出退入部材がカムから動力を受けて動作するものとされている。そのため、本発明の薬剤鑑査装置では、複数の突出退入部材をなす一又は一群ごとに異なるタイミングで突出退入させることができる。これにより、複数の突出退入部材が全て同じタイミングで突出退入する場合に比べて確実かつ効率的に薬剤を均すことができる。
ここで、鑑査対象である薬剤が、例えば色味の変化を生じやすいものである場合等には、薬剤情報データベースに登録されているマスター画像の画像との照合により色彩情報の不一致であるとの鑑査結果に至るケースが想定される。このような薬剤については、色味の変化が生じた後の薬剤画像を薬剤情報データベースに登録する方法が考えられる。しかしながら、かかる方法を採用した場合、薬剤画像を薬剤情報データベースに登録するために手間が掛かったり、色味の変化が生じた後の薬剤を用意せねばならなかったりして、薬剤鑑査装置10のユーザビリティが低下してしまう懸念がある。
(12)本発明の薬剤鑑査装置は、上述した知見に基づくものであり、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、鑑査対象の薬剤の形状に係る形状マスター情報と、薬剤の色彩に係る色彩マスター情報とを関連付けて登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像、処方情報、及び前記薬剤情報データベースに登録されている情報に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置とを有し、前記薬剤情報データベースが、一の形状についての形状マスター情報に対し、複数種の色彩情報についての色彩マスターを関連付けて登録可能とされており、撮影装置によって得られた画像と前記色彩マスターに登録されている色彩情報との比較により色彩情報が不一致であるとの鑑査結果が出ることを条件として、鑑査後等の所定のタイミングで、前記色彩情報の不一致とされた前記薬剤についての色彩情報を前記色彩マスターに追加できることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、例えば色味の変化を生じやすい薬剤であるなどの理由により、正しい薬剤であるにもかかわらず、色彩情報の不一致であるとの鑑査結果に至るような場合であっても、薬剤画像を薬剤情報データベースに登録するための手間を最小限に抑制し、ユーザビリティの低下を抑制できる。
ここで本発明者らが鋭意検討したところ、所定の条件を有する薬剤が、所定の条件を有する分包袋に収容されている場合、当該薬剤の輪郭を画像解析により取得するのが困難な場合があるとの知見に至った。例えば、透明の薬剤(以下、「透明薬剤」とも称す)が、一部又は全部が透明である分包袋に分包されている場合においては、透明薬品の輪郭を画像解析により取得するのが困難な場合があることが見いだされた。また、分包袋の透明部分に透明薬品が存在していると、分包袋に形成された皺等の影響により透明薬品の輪郭を画像解析により取得するのがより一層困難になることが見いだされた。
かかる課題を解決すべく、本発明者らが鋭意検討したところ、例えば、透明薬剤が含まれている分包袋についての鑑査を行う際に、鑑査対象である薬剤の色彩マスターにおいて所定の輝度以下のチャンネルをS成分画像に置き換えるのに際し、グレイモルフォロジー変換によるオープニング処理を施すことにより、上述した懸念を解消しうることを見いだした。
本発明の薬剤鑑査装置は、上述した知見に基づくものであり、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、鑑査対象の薬剤に関する情報を登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像、処方情報、及び前記薬剤情報データベースに登録されている情報に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置とを有し、鑑査対象となる薬剤の色彩に関するマスター情報が前記薬剤情報データベースに登録されており、前記撮影装置によって得られた前記画像から薬剤に相当する領域を画像処理により導出する領域導出処理を実行可能であり、前記領域導出処理において、鑑査対象である薬剤が透光性を有するものであることを条件として、前記鑑査対象である前記薬剤の前記色彩マスターにおいて所定の輝度以下のチャンネルをS成分画像に置き換えるのに際し、グレイモルフォロジー変換によるオープニング処理を施すことを特徴とするものである。
かかる構成によれば、鑑査対象である分包袋内に透光性を有する薬品が存在している場合であっても、例えば分包袋に形成された皺等の影響等を受けることなく、より一層確実に透光性を有する薬剤の存在している領域を領域導出処理により導出できるようになる。
上述した本発明の薬剤鑑査装置において、前記S成分画像への置き換え対象となる前記チャンネルが、透光性を有する前記薬剤の色彩マスターにおいて最も輝度が低いチャンネルであると良い。
かかる構成によれば、領域導出処理において、透光性を有する薬剤の存在している領域をより一層確実に導出できるようになる。
本発明の薬剤鑑査装置は、インクによる印を前記分包袋に付すためのマーキング装置を有し、前記インクを導出するインク導出部を備えたインク導出具を揺動可能に保持しつつ所定の軌跡で動作するように案内する案内機構と、前記インク導出部を収容する収容部とを有し、前記案内機構が、前記インク導出具を保持する保持部と、前記保持部を所定の回転軸を中心に旋回させる旋回機構とを有し、前記案内機構により前記保持部を旋回させることにより、前記分包袋に前記インク導出部によって前記印を付す位置、及び前記収容部に前記インク導出部が収容される位置に前記インク導出部を到達させることができるものであると良い。
また、上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記インク導出具が、所定の軸線方向に長い長尺体であり、前記インク導出部が、前記インク導出具の先端部に設けられたものであり、前記案内機構が、前記インク導出具を先端側において揺動可能に保持しつつ所定の軌跡で動作するように案内する先端側案内部を有し、前記保持部が、前記インク導出具を先端側において保持するものであると良い。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記旋回機構の旋回支点に設けられた旋回支点ピンと、前記旋回支点ピンの動作をガイドする旋回ガイドとを有するものであると良い。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記インク導出具を基端側において揺動可能に保持しつつ所定の軌跡で動作するように案内する基端側案内部を有するものであると良い。
上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記インク導出具が、ペンであり、前記インク導出部が、前記ペンのペン先であると良い。
ここで、本発明者らが、均し機構部として様々なものを鋭意検討したところ、搬送経路において搬送される分包袋の表面に接触しつつ、所定の揺動支点を中心として揺動可能とした接触片を用い、接触片に対して接触させた状態で分包袋を搬送方向に往復動させる均し動作を行うことで、高い均し効果が見込まれるとの知見を得た。しかしながら、さらに鋭意検討したところ、分包袋を往復動させる間に分包袋が搬送経路から逸脱してしまうことがあることを見いだした。
かかる問題を解消すべく、本発明者らが鋭意検討したところ、接触片の揺動支点と、接触片が分包袋と接触する接触位置との関係により、接触片から分包袋に作用する負荷が相違することが見いだされた。具体的には、分包袋を鑑査部に対して上流側から下流側に搬送する方向を順方向、その逆を逆方向とした場合、揺動支点に対して接触位置を順方向に外れた位置に配置すると、分包袋を順方向に送ることで分包袋に対して作用する力よりも、分包袋を逆方向に送ることで分包袋に対して作用する力の方が大きくなることが見いだされた。また、揺動支点に対して接触位置を逆方向に外れた位置に配置すると、分包袋を順方向に送ることで分包袋に対して作用する力よりも、分包袋を逆方向に送ることで分包袋に対して作用する力の方が小さくなることが見いだされた。
かかる知見に基づき、本発明者らは、接触片を備えた均し機構部を設ける場合において、例えば上述した均し動作を行う場合のように、分包袋に対して揺動片を接触させた状態で分包袋を往復動させる必要がある場合には、順方向(上流側から下流側に向かう方向)に分包袋を搬送する場合と、逆方向(下流側から上流側に向かう方向)に分包袋を搬送する場合とで、分包袋に作用する負荷が同程度になるように考慮した構成にすることが望ましいとの知見を得た。
また、順方向、逆方向のいずれに分包袋を搬送する場合においても、接触片と搬送部との間に分包袋がスムーズに侵入でき、ジャム等の不具合を起こさないようにすることが好ましい。そのため、順方向、逆方向のいずれに分包袋を搬送する場合においても、搬送方向先頭側となる部分において接触片から分包袋に作用する負荷が極度に大きくならないようにすることが好ましい。
(13)かかる知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、前記撮影装置によって得られた画像に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置と、前記鑑査部を通過する搬送経路で前記分包袋を搬送可能であって、上流側から下流側に向かう順方向、及び下流側から上流側に向かう逆方向に前記分包袋の搬送方向を切り替え可能な搬送部と、前記搬送経路において、前記鑑査部よりも上流側の部分に前記分包袋の表面に接触する接触機構とを備えており、前記接触機構として、第一接触機構、及び前記第一接触機構に対して前記分包袋の搬送方向上流側に配された第二接触機構を備えており、前記第一接触機構が、前記搬送経路において搬送される前記分包袋の表面に接触する第一接触体と、第一揺動支点を支点として揺動可能に支持する第一支持部とを有するものであり、前記第二接触機構が、前記第一支持部に対して前記分包紙の搬送方向上流側において前記分包袋の表面に接触する第二接触体と、第二揺動支点を支点として揺動可能に支持する第二支持部とを有するものであり、前記第一揺動支点が、前記第一接触体において前記分包袋の表面に接触する第一接触位置よりも前記分包袋の搬送方向上流側に位置しており、前記第二揺動支点が、前記第二接触体において前記分包袋の表面に接触する第二接触位置よりも前記分包袋の搬送方向下流側に位置していることを特徴とするものである。
本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査部よりも上流側の部分に均し機構部を備えている。また、均し機構部は、搬送経路において搬送される前記分包袋の表面に接触する第一接触体を備えているのに加え、第一支持部よりも上流側に分包袋の表面に接触する第二接触体を備えている。ここで、第一接触体及び第二接触体は、それぞれ第一支持部及び第二支持部により揺動可能に支持されているが、その支点となる第一揺動支点及び第二揺動支点と、分包袋の表面への接触位置である第一接触位置及び第二接触位置との位置関係が相違している。具体的には、第一接触体における第一揺動支点が、第一接触位置に対して分包袋の搬送方向上流側に位置しているのに対し、第二接触体における第二揺動支点が、第二接触位置に対して分包袋の搬送方向下流側に位置している。そのため、分包袋を鑑査部に対して上流側から下流側に搬送する方向を順方向、その逆を逆方向とした場合、順方向に分包袋を搬送する場合と、逆方向に分包袋を搬送する場合とで、分包袋に作用する負荷が同程度になる。
また、順方向、逆方向のいずれに分包袋を搬送する場合においても、第一接触体及び第二接触体のうち搬送方向先頭側となる部分にあるものから分包袋に作用する負荷が極度に大きくならない。具体的には、順方向に分包袋を搬送する場合には、第二接触体よりも第一接触体の方が搬送方向先頭側にある。順方向への搬送時に第一接触体から分包袋に作用する負荷は、逆方向への搬送時に第一接触体から分包袋に作用する負荷よりも小さい。従って、上述した構成によれば、順方向に分包袋を搬送する場合に、搬送方向先頭側となる部分にある第一接触体から分包袋に作用する負荷が極度に大きくならない。また、逆方向に分包袋を搬送する場合には、第一接触体よりも第二接触体の方が搬送方向先頭側にある。逆方向への搬送時に第二接触体から分包袋に作用する負荷は、順方向への搬送時に第二接触体から分包袋に作用する負荷よりも小さい。従って、上述した構成によれば、逆方向に分包袋を搬送する場合に、搬送方向先頭側となる部分にある第二接触体から分包袋に作用する負荷が極度に大きくならない。このように、上述した構成によれば、順方向、逆方向のいずれに分包袋を搬送する場合においても、第一接触体及び第二接触体のうち搬送方向先頭側となる部分にあるものから分包袋に作用する負荷が極度に大きくならず、分包袋をスムーズに搬送させることができる。
(14)上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記第一接触体が、前記第一接触位置において前記分包袋に接触可能とされた第一接触部を有し、前記第一接触部に、薬剤均し具が設けられており、前記薬剤均し具が、前記搬送経路の幅方向に延びる回転軸線を中心として回動可能とされた珠部材を、前記回転軸線方向に複数並べて配置したものであり、前記珠部材が、前記搬送部により搬送される前記分包袋の表面に接触可能なように設けられているものであると良い。
かかる構成によれば、第一接触部において分包袋の表面に珠部材を接触させ、分包袋内に収容されている薬剤を均すことができる。これにより、分包袋内において薬剤を分散させたり、起立状態で入っていた薬剤を倒したりすることができ、鑑査精度の向上に資することができる。
ここで、本発明者らが鋭意検討したところ、鑑査部に対して上流側だけでなく、下流側においても、分包袋がスムーズに搬送されないと、鑑査効率の低下に繋がるとの知見に至った。かかる知見に基づき、鑑査部に対して下流側においても、搬送部により分包袋がスムーズに搬送されるようにガイドしつつ、分包袋に過剰な負荷が作用するのを抑制できる構成であるようにするのが好ましいことが判明した。
(15)かかる知見に基づけば、上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記搬送経路の前記鑑査部よりも下流側の部分において、前記分包袋の表面に接触する第三接触機構を備えており、前記第三接触機構が、前記搬送経路により搬送される前記分包袋の表面に接触する第三接触体と、第三揺動支点を支点として揺動可能に支持する第三支持部とを有し、前記第三揺動支点が、前記第三接触体において前記分包袋の表面に接触する第三接触位置よりも前記分包袋の搬送方向上流側に位置しているものであると良い。
本発明の薬剤鑑査装置は、鑑査部に対して下流側に第三接触体を備えており、分包袋の表面に接触し、搬送部により分包袋がスムーズに搬送されるようにガイドすることができる。また、本発明の薬剤鑑査装置は、第三支持部を備えており、第三支持部により第三接触体が第三揺動支点を支点として揺動可能に支持されている。
ここで、本発明の薬剤鑑査装置では、第三接触体が分包袋の表面に接触する第三接触位置よりも分包袋の搬送方向上流側の位置に、第三揺動支点が設けられている。また、上述したように、分包袋を上流側から下流側に搬送する方向を順方向、その逆を逆方向とした場合、揺動支点に対して接触位置を順方向に外れた位置に配置すると、分包袋を順方向に送ることで分包袋に対して作用する力よりも、分包袋を逆方向に送ることで分包袋に対して作用する力の方が大きくなる。第三接触体は、鑑査部を通過して下流側に搬送されてきた分包袋を、上流側から下流側に向かう方向(順方向)に搬送されるのをガイドするものであり、第三揺動支点に対して第三接触位置が順方向に外れた位置に配置されている。そのため、本発明の薬剤鑑査装置では、第三接触体によりガイドされる分包袋に過剰な負荷が作用するのを抑制しつつ、適正な力で分包袋を押圧し、分包袋の搬送をガイドできる。
ここで、上述した薬剤鑑査装置は、分包袋に収容された薬剤の数量及び種類について一包ずつ鑑査したことの記録として、分包袋の画像や処方情報等を記録するものであると良い。また、上述した薬剤鑑査装置は、このようにして鑑査の記録を残す場合、処方通りでないとの鑑査結果(以下、鑑査NGとも称す)に至った分包袋(NG包とも称する)が、その原因を示唆ないし特定できるものであるとさらに良い。そこで、本発明者らがNG包が発生するケースについて鋭意検討したところ、同一の鑑査NGが何らかの同じ原因で一定の傾向をもって繰り返し発生する場合があることが見いだされた。かかる知見に基づき、本発明者らは、鑑査NG(NG包)の発生傾向を統計的に分析することにより、その原因を示唆ないし特定できる可能性があるとの知見に至った。
(16)かかる知見に基づいて提供される本発明の薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、鑑査対象の薬剤に関する情報を登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像、処方情報、及び前記薬剤情報データベースに登録されている情報に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置と、処方通りではないとの鑑査結果が得られる傾向を統計的に分析する分析部とを備え、前記分析部による分析結果に基づいて、処方通りではないとの鑑査結果に至る要因を推定可能であることを特徴とするものである。
かかる構成によれば、分析部による分析結果に基づき、どのような場合に処方通りではないとの鑑査結果になる傾向にあるのかを把握することが可能となる。例えば、上述した構成によれば、特定の薬剤が処方されている場合に、処方通りではないとの鑑査結果に至る傾向にある等の傾向を統計的に把握し、以後の鑑査業務や分包業務等に役立てることが可能となる。
上述した要因の推定は、例えば、どの薬剤を含む処方の場合に処方通りではないとの鑑査結果に至りやすいか等、処方通りではないとの鑑査結果に至る要因になりやすい薬剤の種類を推定するものとすることができる。これにより、薬剤の種類に起因して発生する不具合の要因の特定が容易となり、不具合の発生防止のための方策を講じやすくなる。さらに具体的には、上述したように、処方通りではないとの鑑査結果に至りやすい薬剤の種類に基づいて分析することにより、例えば、薬剤の欠けや破損を引き起こしやすい薬剤を特定し、その薬剤に適した場所に薬剤の保管場所を移動させる等の方策が採りやすくなる。また、上述したようにして処方通りではないとの鑑査結果に至る要因となりやすい薬剤を特定できるようにすると、分包装置においてその薬剤が収容されている棚番、カセット、モータベース等の装置の異常箇所の特定も容易になる。また、上述した構成によれば、不具合の原因をスムーズに特定できるため、不具合品の発生を最小限とすることができ、装置の稼働率も高めることが可能である。このように、上述した構成によれば、ユーザーは、処方通りではないとの鑑査結果に至る要因を排除するための対策が容易かつ適切に行うことが可能となる。
ここで、上述した薬剤鑑査装置は、薬剤の鑑査完了後に、薬剤鑑査処理を担当した作業者(一次担当者とも称する)が、例えば、ディスプレイに表示された照合完了のボタンを押すことにより、当該鑑査結果を印刷等によって出力する構成とすることができる。このような構成とした場合、一次担当者が、鑑査結果を承認する権限を有していないパート職員や事務員等の非薬剤師である場合、照合完了ボタンを操作する権限が付与されていないことがあり得る。かかる場合は、鑑査結果の承認権限を有する薬剤師(二次担当者とも称する)が、再度、鑑査結果を確認した上で、照合完了ボタンを押して、鑑査結果を印刷等によって出力する等して、鑑査の信頼性を確保することが望ましい。しかしながら、二次担当者が、鑑査結果を確認するにあたり、毎回、鑑査結果を呼び出してディスプレイ等に表示させ、当該鑑査結果からNG包のような不具合品を特定した上で、照合を完了させることとすると、その分だけ手間を要することになる。そのため、薬剤鑑査装置を前述のような構成とする場合には、鑑査により処方通りではないとの結果が出たときに、これを手間を要することなくスムーズに確認できるようにすることが好ましい。
(17)かかる知見に基づけば、薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、鑑査対象の薬剤に関する情報を登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像、処方情報、及び前記薬剤情報データベースに登録されている情報に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置と、前記鑑査による結果を出力する出力装置とを備えており、前記出力装置は、前記鑑査が完了した後、当該鑑査による結果が処方通りではないことを条件として、前記鑑査による結果を自動的に出力するものであると良い。
かかる構成によれば、承認権限のない操作者(一次担当者とも称する)が薬剤鑑査装置を操作した場合であっても、承認権限のある別の薬剤師等(二次担当者とも称する)を呼び出すことなく、薬剤鑑査装置から自動的にNG包の鑑査結果を出力することができる。これにより、二次担当者が、一次担当者からNG包の鑑査結果を受け取ることができるので、再分包の必要な処方を即座に確認することができ、効率の良い鑑査が可能となる。また、一次担当者が二次担当者に鑑査結果を渡すに際し、出力した鑑査結果をNG包に添付することで、NG包の特定を即座に行うことができる。
ここで、上述した薬剤鑑査装置は、鑑査結果に問題が無かった場合に、撮影装置で撮影した分包袋の画像情報(写真)を保存したり、紙等の媒体に印刷する等の手法によって出力可能とすると良い。かかる構成とした場合は、出力された写真等を、例えば、患者に手渡した分包袋の記録として残したり、薬剤を分包した分包袋と共に患者に手渡すことにより、患者に対して適正に鑑査されたものであるとの心証を与えるための媒体として活用することが可能となる。
ところで、例えば、薬剤が分包袋内でマスターデータベースに登録されているのとは異なる姿勢(例えば、斜め方向に向いた姿勢)で収容されている等の理由により、上述した薬剤鑑査装置による鑑査によりNG包と判断されてしまうことがある。このケースのように、仮に薬剤鑑査装置による鑑査によりNG包と判断された分包袋であっても、薬剤師等の鑑査者による目視による鑑査によれば、患者にそのまま処方しても問題がない場合がある。このような場合は、例えば薬剤が斜め方向に向いている等して、処方通りに薬剤が正確に分包されているか否かを目視で判別しにくい写真等が出力される可能性がある。
ここで、上述したような問題が生じた場合、処方通りに薬剤が正確に分包されているか否かを目視で判別しやすい状態の写真等を得るために、薬剤鑑査装置によって分包袋を再鑑査する方法が考えられる。しかしながら、複数の分包袋からなる分包袋群(例えば、分包袋が帯状に連なった分包袋連続体等)について鑑査を行う場合において、先に行われた鑑査において処方通りではないとの鑑査結果が得られた分包袋が一部のものである場合、全ての分包袋について再鑑査を行うと、大きなタイムロスが生じてしまうという問題が生じる。
かかる課題を解決すべく、薬剤鑑査装置は、薬剤を収容した分包袋が配置される鑑査部と、前記鑑査部に配置された前記分包袋を撮影可能な撮影装置と、鑑査対象の薬剤に関する情報を登録した薬剤情報データベースと、前記撮影装置によって得られた画像、処方情報、及び前記薬剤情報データベースに登録されている情報に基づいて、前記分包袋に収容されている薬剤の数量及び種類のいずれか一方又は双方が、処方通りであるかを鑑査する制御を行う制御装置とを備えており、複数の分包袋からなる分包袋群であって、先に行われた鑑査において処方通りではないとの鑑査結果が得られた分包袋を一又は複数含むものについて再鑑査を行うときに、前記分包袋群をなす分包袋のうち、先に行われた鑑査において処方通りであるとの鑑査結果が得られたものについての撮影及び鑑査を省略し、先に行われた鑑査において処方通りではないとの鑑査結果が得られたものについての撮影及び鑑査を行うものとすることが可能である。
かかる構成によれば、薬剤鑑査装置によって先に行った鑑査で、処方通りではない分包袋と判断された分包袋が存在するときに、再鑑査を行う際に撮影や鑑査に要する時間を最小限に抑制できる。また、本発明の薬剤鑑査装置は、再鑑査を行うことにより、処方通りに薬剤が正確に分包されているか否かを目視で判別しやすい状態の画像情報を取得することができる。
上述した薬剤鑑査装置は、再鑑査により取得した情報を外部に出力可能とすると良い。このようにすることで、再鑑査時に取得された画像情報を、例えば、患者に手渡した分包袋の記録として残したり、薬剤を分包した分包袋と共に患者に手渡すことにより、患者に対して適正に鑑査されたものであるとの心証を与えるための媒体として活用することが可能となる。
以下、本発明の一実施形態に係る薬剤鑑査装置10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、薬剤鑑査装置10の構成、及び薬剤鑑査処理について大略を説明した後、薬剤鑑査装置10において詳細の説明が必要な部分について別途説明する。
≪薬剤鑑査装置10の構成の大略について≫
薬剤鑑査装置10は、分包紙に一服用分ずつ分包された状態で供給された鑑査対象の薬剤の数量及び種類を、一包ずつ鑑査する装置である。図1に示すように、薬剤鑑査装置10は、筐体10aの側面に鑑査対象の薬剤を導入するための導入部10bを有し、正面に操作パネル10cを有する。薬剤は、透光性を有する分包紙によって包装され、外部から視認可能な状態で薬剤鑑査装置10に供給される。また、薬剤鑑査装置10は、一服用分の薬剤を包装した分包袋が複数、連続するように形成された分包袋連続体の状態で分包袋を供給し、各分包袋について順次鑑査を行うことができる。
図1〜図3に示すように、薬剤鑑査装置10は、搬送装置20、鑑査部30、撮影装置40、照明装置50、及び制御装置60等を備えている。搬送装置20は、薬剤を分包してなる分包袋連続体を取り込み、搬送するためのものである。搬送装置20は、従来公知のベルトコンベア、ローラコンベア等によって形成することが可能である。本実施形態では、搬送装置20としてベルトコンベアが採用されている。搬送装置20は、鑑査部30に対して搬送方向上流側に設けられた供給検知装置(図示せず)により分包紙によって形成された分包袋連続体が検知された場合に、後に詳述する制御装置60の制御の下で動作し、分包袋連続体を順次下流側に向けて搬送する。また、搬送装置20は、下流端に設けられた排出検知装置(図示せず)により、分包紙の分包袋連続体の末端が鑑査部30よりも下流側に排出されたことが確認された場合に、動作を停止する。
鑑査部30は、鑑査対象の薬剤が分包袋に収容された状態で配置される部分である。図3に示すように、鑑査部30は、分包袋が配置される撮影用ステージ32を有する。撮影用ステージ32は、透明の板体によって形成されており、一包分の分包袋を搭載可能な大きさを有する。撮影装置40は、鑑査部30に配置された分包袋及びこれに収容されている薬剤を撮影するためのものである。図2に示すように、撮影装置40は、鑑査部30の真上に配置されている。
照明装置50は、鑑査部30に配置された分包袋を照明するためのものである。照明装置50は、正面側照明装置52(図2参照)と背面側照明装置54(図3参照)とを有する。正面側照明装置52は、鑑査部30に配置された分包袋を撮影装置40側、すなわち鑑査部30の上方側から照射するためのものである。正面側照明装置52は、いかなる照明装置によって構成されていても良いが、本実施形態では拡散光を発生させることが可能な照明装置が用いられている。背面側照明装置54は、鑑査部30に配置された分包袋を背面側、すなわち鑑査部30を介して撮影装置40とは反対側(下方)から照射するためのものである。背面側照明装置54は、撮影用ステージ32の略全体を照明領域とするものであり、撮影用ステージ32上に搭載された分包袋全体を背面側から照明することができる。
制御装置60は、コンピュータに対してソフトウェアをインストールすることにより、コンピュータ上に実現されている。制御装置60は、各分包袋に収容されている薬剤が処方通りであるかを鑑査する薬剤鑑査処理等の処理を実行させることができる。
具体的には、制御装置60は、薬剤の画像をマスター画像として蓄積した薬剤情報データベース62を備えている。制御装置60は、薬剤情報データベース62に登録されているマスター画像と、撮影装置40によって取得された薬剤の画像とをマッチングする処理(画像マッチング処理)を実行し、分包袋に処方通りに薬剤が包装されているか否かを鑑査する薬剤鑑査処理を実行できる。薬剤鑑査処理は、分包袋に分包されている薬剤の種類についての鑑査(薬種照合鑑査)や、分包袋に包装されている薬剤の数量についての鑑査(数量照合鑑査)等、様々な観点の鑑査をいずれか一つ単独で行うものであっても、複数組み合わせて行うものであっても良い。
薬剤鑑査処理において、画像マッチング処理のために必要とされる分包袋内に収容されている薬剤の画像や、薬剤に関する情報(大きさや形状、刻印等の情報)は、種々の方法により取得することができるが、例えば、例えば以下に例示する薬品情報検出制御のような方法により行うと良い。
≪薬品情報検出制御≫
薬品情報検出制御は、正面側照明装置52をオン状態として撮影装置40により撮影された正面側照明画像と、背面側照明装置54をオン状態として撮影装置40により撮影された背面側照明画像とを用いて実施される。正面側照明画像は、図4(a)に示すように分包袋を正面視した状態の画像であり、薬剤及び分包袋に付されている印字とが写った画像となる。また、背面側照明画像は、図4(b)に示すように薬剤の影と分包袋に付されている印字とが写った画像となる。制御装置60は、正面側照明画像及び背面側照明画像に基づき、分包袋内に収容されている薬剤の画像を抽出し、この薬剤の画像に基づいて薬剤情報を検出する。
図5に示すように、薬品情報検出制御は、大別して薬剤候補領域抽出工程(ステップ1−1)、印字候補領域抽出工程(ステップ1−2)、印字領域特定工程(ステップ1−3)、薬剤領域導出工程(ステップ1−4)、及び鑑査領域規定工程(ステップ1−5)の各工程を経て実施される。
ステップ1−1において実施される薬剤候補領域抽出工程は、撮影装置40により取得した画像から、薬剤が含まれている領域を薬剤候補領域A(図4(c)参照)として抽出する工程である。薬剤候補領域抽出工程は、例えば、背面側照明画像をグレイ画像化した画像を用いる等、様々な画像処理技術を用いて実現すると良い。また、ステップ1−2において実施される印字候補領域抽出工程は、分包袋に付された印字が含まれている領域を印字候補領域Bとして抽出する工程である。印字候補領域抽出工程は、例えば、正面側照明画像を活用する等して、様々な画像処理により実現すると良い。
ステップ1−3において実施される印字領域特定工程は、印字候補領域B(図4(e)参照)に含まれている印字に相当する領域を印字領域Cとして特定する工程である。印字領域特定工程は、例えば背面側照明画像における輝度分布に基づき画像処理すること等により行うと良い。また、ステップ1−4において実施される薬剤領域導出工程は、薬剤領域Xを導出する工程である。薬剤領域Xの導出は、例えば、ステップ1−1において導出された薬剤候補領域Aから、ステップ1−3において導出された印字領域Cを差し引く処理により行うと良い。また、ステップ1−5において実施される鑑査領域規定工程は、薬剤領域導出工程において導出された薬剤領域Xに基づき、鑑査対象となる領域を規定する工程である。
上述したようにして、撮影装置40により撮影された画像から、鑑査対象となる分包袋に収容されている薬剤の画像領域を画定することにより、薬剤の画像や、薬剤に関する情報(大きさや形状、刻印等の情報)を取得することができる。これにより得られた画像や情報に基づいて画像マッチング処理等を行うことにより、薬剤鑑査処理を行うことができる。
以下、薬剤鑑査装置10において詳細の説明が必要な部分について、順を追って説明する。
≪均し機構100について≫
薬剤鑑査装置10において鑑査精度を向上させるためには、分包袋内において薬剤が立った状態や重なった状態ではなく、全ての薬剤が倒れて重なることなく収容された状態で分包袋が鑑査部30に供給される方が良いと考えられる。そのため、薬剤鑑査装置10は、例えば、鑑査部30に対して上流側の位置等に、分包袋に包まれている薬剤を倒すための機構等を設けると良い。例えば、図1や図6に示す均し機構100のようなものを、導入部10b等に設けると良い。
均し機構100は、分包袋を搬送する略水平な搬送面102を有する。また、搬送面102に対して上方側には、搬送面102上を通過する分包袋の表面に対して接触可能なように配置されたピン104が複数配置されたピンユニット105が設けられている。ピン104は、搬送面102による分包袋の搬送方向、及びこれに対して交差する方向(本実施形態では搬送面102の幅方向)にそれぞれ複数並べて配置されている。ピン104は、バネ等の弾性部材106(図6では図示せず省略。図7参照)により下方(搬送面102側)に向けて付勢され、上下動可能とされている。搬送面102を分包袋が通過する際に、分包袋の表面に各ピン104を接触させる。分包袋内に立っている薬剤があると、この薬剤にピン104が当たり、薬剤が倒される。このような処理(均し処理)は、例えば、分包袋を搬送面102に固定した状態としつつ、ピン104が分包袋の表面に接触する状態としてピンユニット105を搬送方向や搬送方向に対して交差する方向に移動させることにより行うことができる。また、均し処理は、ピンユニット105及び搬送面102を固定状態としつつ、分包袋を搬送方向等に移動させることによっても行うことができる。本実施形態では、前者の方法により均し処理が行われる。
ここで、ピン104は、図6において分包袋の搬送方向(図中矢印で示す方向)、及びこれに対して交差する方向に並ぶように配置されている。図6において奥行き方向(図中の矢印に対して交差する方向)に配列された複数のピン104の並びを1つのピン群と規定した場合、図6の例においては、搬送方向(紙面左右方向)に複数のピン群が設けられている。ピン群をなすように分包袋の搬送方向に対して交差する方向に並んだ各ピン104の間隔は、搬送方向に隣接するピン群をなす各ピン104の間隔よりも小さくなるように設定されている。また、図7に示すように、ピン104は、軸部104aと、この先端(図示例では下端)にある先端部104bとを有する。先端部104bは、例えば図6に示すように半球状等とすることにより、湾曲した形状とされている。
ピン104はどのような形状でも良いが、例えば、分包袋の損傷を軽減することや、分包袋に収容されている薬剤に与える衝撃を緩和すること、ピン104との接触に伴って先端部104bの頂部に向けて滑らかに倒れるようにコントロールすること等、様々な効果を総合的に勘案すると、略半球状等の湾曲した形状とすることが望ましい。図6の例では軸部104a及び先端部104bにより、略キノコ状の外観形状とされている。
ピン104は、先端部104bと、隣接する他のピン104の先端部104bとの間隔が可能な限り小さくなるように配置されている。このような構成とすることにより、均し機構100による薬剤の倒し損ねがないように配慮している。また、ピン104は、先端部104bの部分が隣接する他のピン104の先端部104bと隣接しているが、軸部104aの部分については隣接する他のピン104の軸部104aとの間に、先端部104b,104bの間隔よりも大きな間隔が形成されている。これにより、先端部104bにより倒されようとしている薬剤に対し、隣接する他のピン104の軸部104aが障害となり、薬剤が上手く倒れなかったり、倒れかけた薬剤を再度起こしてしまうといった現象を抑制できる。なお、このような効果を得るべく、少なくとも、隣接するピン104の軸部104a,104aの間隔と、先端部104b,104bの間隔とが異なるようにすると良い。また、包装される薬剤の形状や大きさに応じて、ピン104の間隔、軸部104aの大きさや隣接する他の軸部104aとの間隔、先端部104bの大きさや隣接する他の先端部104bとの間隔等を適宜変更すると良い。
さらに、図6に示す均し機構100においては、搬送面102に、凸部108が複数並べて配置されている。凸部108は、分包袋の搬送方向に対して斜め方向に延び、互いに一定の間隔をあけた状態で配置されている。このような構成とされているため、分包袋内に立っている薬剤があったとしても、この薬剤は下方において凸部108に引っかかりつつ、上方においてピン104が接触する。これに加えて、起立状態にある薬剤の足元を不安定にすること、及びピン104の通過による作用も重なり、より一層薬剤が倒れやすくなる。そのため、分包袋内に薬剤が起立状態で収容されていたとしても、前述したような作用により確実に倒されることになる。また、凸部108が斜めに配置されているため、凸部108の角度に沿って薬剤の向きが変わり、分包袋内において薬剤が倒れやすくなる。
上述した凸部108は、どのような形状のものであっても良いが、分包袋の損傷を軽減することを考慮し、例えば断面形状が円弧状のもの等、湾曲した形状のものとすると良い。凸部108は、例えば、断面形状が略半円状、円形、楕円形等の形状であって棒状のものを用いる等して形成することができる。凸部108は、例えば、分包袋の損傷を軽減することや、分包袋に収容されている薬剤に与える衝撃を緩和すること、ピン104との接触に伴って先端部104bの頂部に向けて滑らかに倒れるようにコントロールすること等、様々な効果を総合的に勘案すると、上述したピン104の先端部104bと同様に、断面形状が略円弧状に湾曲した形状等とすると良い。凸部108を円弧状に湾曲した形状とした場合には、当該円弧の頂部が搬送面102を構成する。また、凸部108の大きさや、隣接する凸部108同士の間隔については、適宜設定可能であるが、例えば、凸部108の大きさ(幅)は3〜7mmの範囲内の大きさとすると良く、5mm程度とするとさらに良い。また、隣接する凸部108同士の間隔(幅)については、凸部108の大きさ(幅)よりも小さくすると良く、例えば2〜3mmの範囲内とすると良く、2.5mm程度のとするとさらに良い。
凸部108は、どのような配置とされても良いが、薬剤に引っかかりつつ、引っかかり過ぎないようにするように配置を工夫すると良い。例えば、図6の例のように、凸部108は、分包袋の搬送方向に対して所定の角度で傾斜した配置とすると良い。凸部108の傾斜については適宜設定可能であるが、例えば、進行方向に対して30度以上60度以下の範囲内で傾斜させると良く、進行方向に対して40以上50度以下の範囲内で傾斜させるとさらに良い。本実施形態では、分包袋の搬送方向と、凸部108とが略50度の角度をなすように配置されている。このような凸部108の配置や形状等と、上述したピン104の形状や構成との相乗効果により、薬剤を確実に倒しつつ、分包袋に対して過剰な負荷が作用しないようにすることができる。
ここで、均し機構100が設けられた位置に、分包袋内に複数の薬剤が立った状態や重なった状態で供給されるケースが想定される。このような場合において、均し機構100によって分包袋内において立った状態や重なった状態の薬剤を倒しきれなかったり、重なりを解消できなかったりすると、均し機構100の全体が持ち上げられてしまい、均し機構100による均し効果が大幅に低減したり、均し効果が損なわれたりする懸念がある。かかる可能性に対処すべく、図6に示した均し機構100は、全体がバネ等の弾性部材106により付勢された構成とされている。これにより、均し機構100の全体を持ち上げようとする力が作用したとしても、この力に反して弾性部材106による付勢力により、均し機構100の全体が持ち上がってしまうのを抑制できる。
また、同様の課題に対処すべく、本実施形態の均し機構100では、上述したように各ピン104がそれぞれ個別にバネ等の弾性部材106により付勢されている。そのため、均し機構100により倒そうとしても倒れない薬剤があったとしても、その薬剤に接触しているピン104のみが弾性部材106による付勢力に反して持ち上げられる。ピンユニット105の全体が持ち上がるのを抑制できる。
薬剤鑑査装置10は、上述したような均し機構100を設けることにより、薬剤が分包袋の中で立ったままの状態や、重なったままの状態で鑑査部30に供給される可能性を相当低減することができる。これにより、鑑査精度をより一層向上させることができる。なお、上述した均し機構100は、分包袋内で薬剤を倒すための機構の一例を示したものに過ぎず、一部の構成を省略あるいは変更等したり、上述したのとは異なる構成としても良い。具体的には、均し機構100は、凸部108を設けない構成としたり、凸部108の配置角度を変更したりしても良い。また、均し機構100は、例えば、凸部108の代わりに、搬送面102の表面に凹凸を形成する他の部材を設けたもの等としても良い。
また、上述したような均し機構100を設ける場合、薬剤鑑査装置10は、鑑査部30に供給される分包袋の全数について、均し機構100による処理(均し処理)を行うようにしても良く、これと異なる運用で均し処理を行うものでも良い。例えば、薬剤鑑査装置10は、鑑査の結果が不良であったり、再鑑査が必要との結果が出た場合に均し機構100まで分包袋を戻し、均し処理を行うようにする等して、一部の分包袋のみについて均し処理を行うようにしても良い。このように、全数の分包袋について均し処理を行う場合、あるいは一部の分包袋のみについて均し処理を行うようにする場合のいずれの場合についても、均し機構100を構成するピンユニット105を搬送面102に対して近接離反する方向に移動(図示例では昇降)できるようにすると良い。
具体的には、図7に示すように、薬剤鑑査装置10は、ピンユニット105を昇降させるための移動機構120を設けたものとすることができる。例えば、移動機構120は、ピンユニット105により均し処理をするために最適な第一の位置(高さ)、分包袋を送るために一時的にピンユニット105を持ち上げた状態で待機する第二の位置(高さ)、ピンユニット105を搬送面102から大きく離し、分包袋の挿入部部分にセットしやすくするための第三の位置(高さ)等、適宜の位置に適宜ピンユニット105を配置できるもの等とすることができる。
具体的には、図7に示した移動機構120は、ピンユニット105から略水平方向に延びる延設部材122に対して下方から当接するように設けられ第一カム124及び第二カム126を有する。第一カム124及び第二カム126は、それぞれ図示しないモータ等から動力を受けて、独立的に回動可能とされている。第一カム124は、第二カム126よりも小さい。第一カム124及び第二カム126により延設部材122が持ち上げられていない状態においては、ピンユニット105は、均し処理をするために最適な第一の位置に到来する。第一カム124により延設部材122が持ち上げられた状態においては、ピンユニット105は、第二の位置に到来する。また、第二カム126により延設部材122が持ち上げられた状態においては、ピンユニット105は、第三の位置に到来する。このようにして、ピンユニット105を搬送面102に対して近接離反する方向に移動可能とすれば、均し機構100の使用形態に併せて適切な位置にピンユニット105を容易かつ的確に配置することができる。
また、移動機構120を上述したようにカムによりピンユニット105を移動させるものとした場合には、ピンユニット105に対して移動機構120を連結する必要がない。そのため、分包袋の紙詰まり等の不具合が発生した場合であっても、ピンユニット105を手で持ち上げる等するだけで不具合を解消することができる。なお、移動機構120は、上述したものに限定されるものではなく、ピンユニット105を適宜移動可能なものであればいかなるものであっても良い。
上述したような構成とした場合、鑑査部30に供給される分包袋の全数について均し処理を行う運用で鑑査を行う場合には、例えば次のような動作を行うようにすると良い。具体的には、先ず第三の位置にてピンユニット105を待機させ、分包袋が連なったもの(分包袋連続体)を受け入れる。分包袋連続体がピンユニット105に到達したことが、例えば図示しないセンサによる検知等により確認されると、ピンユニット105を第一の位置に移動(下降)させ、分包袋とピン104とを搬送方向や搬送方向に対して交差する方向に相対移動させることにより均し処理を行う。均し処理に際しては、分包袋とピン104(ピンユニット105)のいずれか一方を固定しつつ他方を移動させることにより相対移動させても、分包袋とピン104(ピンユニット105)の双方を互いに移動させることで相対移動させても良い。本実施形態の薬剤鑑査装置10においては、分包袋を搬送面102に固定した状態としつつ、ピン104が分包袋の表面に接触する状態としてピンユニット105を搬送方向や搬送方向に対して交差する方向に移動させることにより均し処理を行う。このような動作を行うことにより、仮に分包袋内に薬剤が立った状態や重なった状態で収容されていたとしても、ピン104や凸部108との接触により倒れて重なりなく拡散した状態とすることができる。また、ピンユニット105において、搬送方向に対して交差する方向(本実施形態では略直交方向)に並ぶ複数のピン104によって構成される群(ピン群)は、搬送方向に少し間隔をあけて配置されている。前述のピン群同士の間隔を搬送方向にあけずに各ピン104を配置した場合は、ピンユニット105による均し処理に際し、ある群のピン104に倒されかかった薬剤が、隣の群のピン104に寄りかかって倒れなかったり、ピンユニット105を逆方向に搬送するときに隣のピン群よって倒れかかかった薬剤が起こされたりする。しかしながら、前述のように、ピン群同士の間隔をあけておくことにより、前述のように隣のピン群をなすピンに薬剤が寄りかかったり、隣のピン群をなすピン104により薬剤が再度起こされることもなくなる。
このような動作を行い、一包分の分包袋についての均し処理が完了すると、ピンユニット105を第二の位置に移動(上昇)させる。その後、次の分包袋がピンユニット105の下方に差し掛かったことが例えば図示しないセンサによる検知等により確認されると、ピンユニット105を第一の位置に移動(下降)させる。その後は、先の分包袋について行ったのと同様に、分包袋連続体を揺動させつつ、ピン104や凸部108との相互作用により薬剤を倒す処理(均し処理)を行う。このような動作を行うことにより、分包袋の全数について均し処理を行うことができる。また、先の分包袋についての均し処理を行った後、次の分包袋がピンユニット105の下方に差し掛かるまでの間に、ピンユニット105を第三の位置(離反位置)まで戻すのではなく、第一の位置(均し位置)と第三の位置との中間である第二の位置(中間位置)に戻すようにすることにより、連続する分包紙を鑑査する際にピンユニット105の位置を変更するための移動距離が短くなり、その分だけ均し処理に要する時間を短縮することができる。なお、上述した例においては、第二の位置にピンユニット105を移動させて待機させる例を示したが、本発明はこれに限定されず、第二の位置への移動及び待機を行わない構成であっても良い。
上述した均し機構100の構成や配置等は、上述したものに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、図1〜図3に示すように、均し機構100は筐体10aの外部に配置されたものであるが、本発明はこれに限定されず、筐体10aの内部に配置されたものであっても良い。
≪分包袋保持機構について≫
なお、上述したように均し機構100を設ける場合のように、分包袋を揺動させたり振動させたりする力が作用する等して、分包袋を保持できる構成を設けることが望ましい場合には、分包袋を保持するための機構や部材等を設けると良い。例えば、図8に示すように、均し機構100に対して隣接する位置等に、分包袋保持機構150を設けると良い。分包袋保持機構150は、移動機構120に接続されており、ピンユニット105と同様に、例えばモータ等の動力源154から動力を受けることによって動作するカム等からなる動作機構を設け、当該カム等の動きによって上下動するようにした保持部材152により分包袋を保持可能とすると良い。保持部材152は、例えば図示するように棒状のもの等とすることができる。保持部材152は、分包袋と接触する部分(図示例では先端部)がローラとされている。
保持部材152は、動力源154の動作制御により上述した動作機構を作動させ、上下方向に相違する第一の位置、第二の位置、及び第三の位置に位置を変更可能とされている。
分包袋保持機構150は、動力源154を駆動状態で維持させることにより、保持部材152を第一の位置(固定位置)に配置し、分包袋をクランプした状態(第一の保持状態)とすることができる。分包袋保持機構150は、上述した均し機構100と連動して動作する。具体的には、分包袋保持機構150は、均し機構100においてピンユニット105が第一の位置(均し位置)に配置されるタイミングにおいて、第一の位置(固定位置)に配置される。そのため、分包袋が均し機構100の搬送面102に配置され、均し処理が行われる状態において、分包袋(分包袋連続体)は、第一の位置(固定位置)とされた保持部材152によりクランプされた状態になる。これにより、分包袋(分包袋連続体)を適切な保持力で保持した状態で均し処理を行うことができる。
保持部材152は、動力源154を停止させることにより第一の位置よりも上方に退避した第二の位置(保持位置)に切り替えることができる。すなわち、保持部材152は、動力源154を停止させることにより保持部材152を下方に向けて駆動させる駆動力が解消される。また、動力源154を停止させると、分包袋保持機構150に設けられたバネ等の弾性部材(図示せず)の作用により、保持部材152を退避させる方向(本実施形態では上方)に付勢力が作用する。第二の位置においては、分包袋に対し、分包袋の移動を妨げない程度の付勢力(保持力)が作用した状態(第二の保持状態)となる。そのため、保持部材152が第二の位置にある状態においては、保持部材152は、分包袋がスムーズに移動するようにガイドする役割を果たす。
分包袋保持機構150は、上述した均し機構100と連動して第一の位置から第二の位置に位置を変化させる。具体的には、均し機構100においてピンユニット105が第二の位置(中間位置)に配置されるタイミングにおいて、分包袋保持機構150についても第二の位置(保持位置)に配置される。また、上述したように、保持部材152は、分包袋と接触する部分(図示例では先端部)がローラとされている。そのため、均し機構100の搬送面102上において均し処理が完了した分包袋が鑑査部30側に送られる状態において、分包袋(分包袋連続体)は、第二の位置(保持位置)とされた保持部材152によりガイドされつつ、鑑査部30側に向けてスムーズに移動する。
分包袋保持機構150は、保持部材152が第三の位置に配されると、保持部材152が分包袋から離反した状態になる。これにより、保持部材152から分包袋に対する保持力が解除されると共に、次の分包袋(分包袋連続体)を受け入れ可能な状態になる。
上述したような分包袋保持機構150を設けることにより、必要に応じて適切な保持力を分包袋に作用させることができる。また、分包袋保持機構150を均し機構100と連動させることにより、均し処理の進行状態に応じて適切な保持力を分包袋(分包袋連続体)に付与することができる。
分包袋保持機構150の構成や配置等は、上述したものに限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、図1〜図3に示すように、上述した分包袋保持機構150は、均し機構100と同様に筐体10aの外部に配置されたものであるが、本発明はこれに限定されず、筐体10aの内部に配置されたもの等であっても良い。
≪薬剤鑑査処理に関する変形例(特殊フラグの設定)≫
また、薬剤鑑査装置10における薬剤鑑査処理の変形例として、例えば次のようなものを採用することも可能である。具体的には、例えば主に黒色や褐色など色が濃い薬剤など、錠剤の形状が認識しにくい等して、他の薬剤に比べて高い鑑査精度を確保するのが難しい薬剤が存在する可能性がある。このような薬剤が存在する場合には、例えば個別にフラグ(以下、このフラグを「特殊フラグ」とも称する)を設定する等して、通常の鑑査よりも時間をかけたり、鑑査の工程を追加したりして精度の高い鑑査をできるようにすると良い。薬剤鑑査装置10は、前述した特殊フラグを使用者が手動設定できるようにするだけでなく、自動設定できる機能を設けると良い。具体的には、特殊フラグを手動設定のみ可能とした場合には、例えば、特殊フラグの設定対象となる薬剤を薬剤鑑査装置10に搭載されたマスターデータから検索し、マスターデータに特殊フラグを登録するための操作等を行う必要があり、手間を要する懸念がある。そのため、薬剤鑑査装置10は、特殊フラグを自動設定できる機能を設けると良い。
特殊フラグの自動設定機能については、様々な方法により設けることが可能であるが、例えば次のようなものとすることができる。具体的には、薬剤鑑査装置10は、薬剤鑑査装置10による鑑査結果データを薬剤鑑査装置10に設けた記憶領域(図示せず)等に蓄積しておき、形状の認識不良のエラーの発生確率等のデータを導出し、そのデータに基づいて特殊フラグを設定する等の方法で、特殊フラグを自動設定できるようにすると良い。例えば、ある薬剤について100錠分の鑑査を行った結果のうち、形状の認識不良のエラーの発生確率が所定の確率(例えば30%)を超えていることを条件として、特殊フラグを自動設定したり、設定することの許可を使用者に求めるようにすると良い。このようにすることで、例えば機械に不慣れな使用者等であっても、特殊フラグの設定操作を容易かつ精度良く行うことが可能となる。
≪薬剤鑑査処理に関する変形例(マスター画像再撮影サポート)≫
ここで、上述したようにして薬剤鑑査処理を行う場合、例えば薬剤情報データベース62に登録されているマスター画像の画像品質や、薬剤自体の色の変更等の理由により、十分な鑑査精度が得られなくなる可能性もある。そのため、このような場合には、マスター画像を再撮影することが望ましい。しかなしながら、薬剤師等のユーザーにマスター画像の再撮影の要否について判断を委ねるのは難しい。かかる問題を解消すべく、薬剤鑑査装置10は、例えば次のような動作を行えるものとすると良い。
具体的には、例えばマスター画像と鑑査対象である薬剤との色の違いによりエラーが発生した場合、当該エラーの発生頻度に基づいてマスター画像の再撮影や再登録を行うよう、薬剤師等のユーザーに対して促す処理を行うようにすると良い。さらに詳細には、鑑査対象の薬剤とマスター画像との色の違いによりエラーが発生する頻度(エラー発生頻度)が所定の割合(例えば30%)を超えた場合は、ユーザーに対してマスター画像の再撮影や再登録を促すようにすると良い。マスター画像の再撮影や再登録を促すための基準となるエラー発生頻度は適宜設定することができるが、実際に処方する薬剤を間違えていることを確実に促すことができるようにすることを前提に設定すると良い。
≪薬剤鑑査処理に関する変形例(未登録薬剤が存在する場合の取り扱い)≫
ここで、上述したようにして薬剤鑑査処理を行う場合、例えば薬剤情報データベース62に未登録の薬剤が処方されている分包袋については、照合に失敗するため、処方不良や鑑査不良等として取り扱われることになる。このような処理を行うと、薬剤情報データベース62に未登録の薬剤が含まれているために処方不良や鑑査不良等となっているのか、薬剤情報データベース62に登録されている薬剤についての分包に問題があって処方不良や鑑査不良等となっているのかの区別がつかない。そのため、未登録の薬剤を含む分包袋について、他の薬剤が処方通りに正確に分包されていたとしても、薬剤師等が全数目視で鑑査する等の処理を行わねばならない。また、未登録の薬剤を含む分包袋が処方不良や鑑査不良等として処理されると、薬剤師等が目視により鑑査する分包袋の大多数が分包に問題のないものとなる可能性が高い。そのため、本当に処方不良や鑑査不良等とすべきものが、薬剤師等によって見落とされる可能性がある。
上述の問題を解消すべく、薬剤鑑査装置10は、薬剤情報データベース62に未登録の薬剤が処方されている分包袋が存在している場合に、薬剤情報データベース62に登録されている薬剤と、未登録の薬剤とを区別して鑑査し、鑑査結果についても区別して出力可能とすると良い。
具体的には、薬剤情報データベース62に未登録の薬剤が含まれている処方に係る分包袋については、例えば図9に示す鑑査結果の出力例のように、未登録の薬剤を除く他の薬剤についての鑑査結果を印刷等によって出力する(図中の「判定」欄参照)と共に、未鑑査の薬剤の存在を示す出力(図中の「※未照合薬品があり※」を参照)等の方法により、薬剤情報データベース62に登録されている薬剤と、未登録の薬剤とを区別して鑑査結果を出力するようにすると良い。これにより、薬剤情報データベースに未登録の薬剤が含まれている分包袋が供給されたとしても、スムーズかつ精度良く鑑査業務を行えるようになる。本変形例において鑑査結果の出力に用いる出力装置には、操作パネル10cのように画面表示による出力装置や、図9に示すようなジャーナルを出力可能な印刷装置等を用いると良い。
≪均し機構100の変形例≫
上述した均し機構100は、本発明の一例を示したものに過ぎず、他の構成としても良い。以下、均し機構100の変形例に係る均し機構200について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において上記実施形態において示したものと共通する部分については同一の符号を用い、詳細の説明については省略することがある。
図10に示すように、均し機構200は、均し機構100と同様に、分包袋に収容された薬剤を均すものである。均し機構200は、鑑査部30に至る分包袋の搬送経路、すなわち鑑査部30に対して分包袋の搬送方向上流側に設けられている。
図11及び図12に示すように、均し機構200は、突出退入部材210と、動作機構220とを有する。突出退入部材210は、鑑査部に向けて搬送される分包袋が通過する搬送面212とは逆側から、搬送面212の上を通過する分包袋に向けて突出退入可能とされている。本実施形態では、突出退入部材210は、搬送面212の裏面側(下方側)に退入した状態と、及び搬送面212の表面側(上方側)に突出した状態とになることができる。図11に示すように、突出退入部材210は、複数(本実施形態では4つ)設けられている。突出退入部材210は、それぞれ搬送面212の搬送方向、及び幅方向に複数(本実施形態では2つずつ)設けられている。突出退入部材210は、いかなる形状のものであっても良いが、例えば図11に示すように棒状(軸状)のものであることが望ましい。
動作機構220は、上述した複数の突出退入部材210が所定の順番で突出退入を繰り返すように動作させるための機構である。動作機構220は、複数の突出退入部材210を所定の動作周期で突出退入を繰り返すように動作させると共に、一又は一群の突出退入部材210ごとに動作周期の位相を相違させて突出退入させることができる。本実施形態では、4つの突出退入部材210において一群をなす2つの突出退入部材210(以下、「突出退入部材210A,210D」とも称す)と、他の一群をなす2つの突出退入部材210(以下、「突出退入部材210B,210C」とも称す)とで動作周期の位相を相違させて突出退入させうる構成とされている。
なお、突出退入を同時に行う突出退入部材210の群は、搬送方向に並んだ複数の突出退入部材210(図示例では、突出退入部材210A,210Bの組や、突出退入部材210C,210Dの組)や、幅方向に並んだ複数の突出退入部材210(図示例では、突出退入部材210A,210Cの組や、突出退入部材210B,210Dの組)によって構成されても良いが、第一の群をなす突出退入部材210A,210Dの配列と、第二の群をなす突出退入部材210B,210Cの配列とが交差(クロス)した配置となる構成とすると良い。このような構成とすることにより、突出退入を同時に行う突出退入部材210の群が搬送方向や幅方向に平行に並んだ構成とする場合に比べ、分包袋内において立った状態にある薬剤をより一層倒しやすくしたり、全体的な均し効果を高めたりすることができる。なお、突出退入部材210は、群毎に突出退入を同時に行うものである必要はなく、例えば複数(本実施形態では4つ)の突出退入部材210が搬送面212から突出退入する順番を全て少しずつ異ならせ、順番に突出退入部材210が最高の高さに達するような動きを行うようにしても良い。具体的には、例えば、突出退入部材210A,201B,210C,210Dの順番で搬送面212から突出退入を繰り返し行うようにしても良い。
動作機構220は、上述したような動作を行えるものであればいかなるものであっても良いが、例えば図12に示したようなものとすることができる。具体的には、図12に示した動作機構220は、動力源222、回転軸224、及びカム226を備えている。動力源222は、動力を出力可能なものであれば良く、例えばモータ等のように所定の回転周期で動力を出力可能なものとすると良い。
回転軸224は、動力源222から動力を受けて回転するものである。回転軸224は、動力源222に対して直接的に接続されたものであっても、他部材を介して間接的に接続されたものであっても良い。回転軸224は、動力源222から動力を受けて所定の回転周期で回転可能なものとされている。
カム226は、回転軸224に対して直接的あるいは間接的に接続されている。これにより、カム226は、回転軸224に連動して所定の回転周期で回転可能なものとされている。また、カム226は、上述した複数の突出退入部材210に対応して複数設けられている。本実施形態では、突出退入部材210A,210B,210C,210Dに対応して、4つのカム226A,226B,226C,226Dが設けられている。カム226には、突出退入部材210の下端側において、カム226に対して直接的あるいは間接的に接触している。動作機構220においては、複数のカム226(カム226A,226B,226C,226D)がそれぞれ運動を伝える側(原節)となり、複数の突出退入部材210(突出退入部材210A,210B,210C,210D)がそれぞれ運動を受け取る側(従節)となるように接触している。
また、カム226は、一又は一群ごとに互いに位相を相違させて回転可能とされている。本実施形態では、4つのカム226において一群をなす2つのカム226(カム226A,226D)と、他の一群をなす2つのカム226(カム226B,226C)とで動作周期の位相を相違させて突出退入させうる構成とされている。
上述したように、均し機構200は、複数の突出退入部材210及び動作機構220を備えている。均し機構200は、搬送面212を通過する分包袋に向けて、突出退入部材210を搬送面212とは逆側から分包紙に向けて所定の順番で突出退入を繰り返すことにより、搬送面212上にある分包袋内において薬剤を分散等させることができる。また、均し機構200は、鑑査部30に至る分包袋の搬送経路(鑑査部30に対して上流側)に設けられている。そのため、本実施形態の薬剤鑑査装置10は、均し機構200において分包袋に収容されている薬剤を均して鑑査に適切な状態とした後、鑑査部30に分包袋を供給できる。従って、均し機構100に代えて均し機構200を採用した場合についても、例えば分包袋に収容されている薬剤の姿勢等、薬剤の収容状態に起因する鑑査精度の低下を抑制し、十分な精度で鑑査可能とすることができる。
また、均し機構200は、動作機構220が、複数の突出退入部材210を所定の動作周期で突出退入を繰り返すように動作させつつ、複数の突出退入部材210をなす一又は一群ごとに動作周期の位相を相違させて突出退入部材210を突出退入させることができる。このような構成とされているため、複数の突出退入部材210をなす一又は一群ごと(本変形例では一群ごと)に異なるタイミングで突出退入させることができる。これにより、複数の突出退入部材210が全て同じタイミングで突出退入する場合に比べて確実かつ効率的に薬剤を均すことができる。
均し機構200においては、上述したように複数の突出退入部材210をなす一又は一群ごと(本変形例では一群ごと)に異なるタイミングで突出退入させるための構成として、カム226を用いた動作機構220を採用している。具体的には、動作機構220は、突出退入部材210に対応して複数設けられカム226が、所定の回転周期で回転可能とされると共に、一又は一群ごとに互いに位相を相違させて回転可能とされており、突出退入部材210がカム226から動力を受けて動作するものとされている。このように、上述した均し機構200においては、シンプルな機構により突出退入部材210を搬送面212とは逆側から分包紙に向けて所定の順番で突出退入を繰り返し可能としている。そのため、均し機構200を採用すれば、薬剤鑑査装置10の構成を過度に複雑化することなく鑑査に備えて分包袋内の薬剤を均すことが可能となり、鑑査精度の向上等に貢献することができる。
≪マーキング装置について≫
薬剤鑑査装置10は、上述した構成に加えて他の装置等を備えたものであっても良い。例えば、図13に示すマーキング装置230のように、インクによる印を分包袋に付すための装置を設けたものとしても良い。マーキング装置230を設ければ、例えば鑑査結果に応じて分包袋に適宜印を付す等することができる。マーキング装置230については、どのような構造のものであっても良いが、例えば図13のようなものとすると良い。以下、マーキング装置230の例についてさらに詳細に説明する。
マーキング装置230は、分包袋に印を付すためのインク導出具232を保持しておき、適宜分包袋に向けて移動させ、印を付す作業を行えるものである。インク導出具232は、インクを導出するインク導出部234を備えたものであればいかなるものであっても良く、例えば所定の軸線方向に長い長尺状のものとし、その先端部分にインク導出部234を設けたものであると良い。具体的には、インク導出具232は、例えばペンやスタンプ等とすることができる。本実施形態では、インク導出具232としてペン233を採用し、その先端部にインク導出部234としてペン先235を備えたものを用いた例を示す。
マーキング装置230は、案内機構240(図13(a)参照)と、収容部270(図13(b)参照)とを備えている。案内機構240は、インク導出具232(ペン233)を揺動可能に保持しつつ、所定の軌跡で動作するように案内するための動作機構である。案内機構240は、インク導出具232の先端側を案内する先端側案内部242と、インク導出具232の基端側を案内する基端側案内部244と、モータ等からなる動力源246と、インク導出具232を保持するための保持部248とを有する。
先端側案内部242は、ペン233を先端側において揺動可能に保持しつつ、所定の軌跡で動作するように案内するためのものである。先端側案内部242は、保持部248により保持されたインク導出具232の先端側の所定位置(本実施形態では、後述の旋回支点ピン252が設けられた位置)を回動中心として回動させることができる。
旋回機構250は、保持部248を所定の回転軸を中心に旋回させるための機構である。旋回機構250は、旋回支点ピン252と、旋回ガイド254とを有する。旋回支点ピン252は、旋回機構250の旋回支点に設けられたピンである。旋回支点ピン252は、例えば上述した保持部248に対して一体的あるいは別体として設けることができる。旋回支点ピン252は、保持部248により保持されているペン233の回動中心において立設されている。
旋回ガイド254は、旋回支点ピン252の旋回動作をガイドするものである。旋回ガイド254は、例えばリンク機構等によって構成することができる。旋回ガイド254は、例えば図13に示したような構成とすることができる。具体的には、旋回ガイド254は、金属板や樹脂板等によって構成されたベース256に対して旋回可能に設けられた旋回リンク258や、旋回支点ピン252の動作を案内する先端側ガイド部260等を備えたものとすることができる。
旋回リンク258は、一端側がベース256に対して旋回可能に取り付けられるとともに、他端側において旋回支点ピン252や保持部248に対して接続されている。旋回リンク258の一端側(旋回中心側)には、モータ等の回転動力を出力可能な動力源246が接続されている。先端側ガイド部260は、旋回リンク258の旋回に伴って旋回支点ピン252が描く軌跡に相当する円弧状の形状に形成されている。先端側ガイド部260は、旋回支点ピン252を挿通あるいは係合させることが可能な溝や凹部等(本実施形態では溝)によって構成することができる。
基端側案内部244は、インク導出具232をなすペン233を基端側(ペン先235とは反対側)において揺動可能に保持しつつ、所定の軌跡で動作するように案内するものである。本実施形態では、基端側案内部244は、ベース256に設けられた溝や凹部等からなる基端側ガイド部264を備えたものとされている。本実施形態では、基端側ガイド部264は、ベース256に設けられた直線状の溝によって構成されている。基端側案内部244は、基端側ガイド部264に沿って保持部248が自由に移動可能なものとされている。そのため、保持部248にペン233の基端部を装着することにより、ペン233の先端側の動作に連動して、ペン233を基端部においても安定的に保持した状態で動作させることができる。
収容部270は、インク導出具232をなすペン233のインク導出部234(ペン先235)を収容するものである。本実施形態では、収容部270としてペン233のキャップが採用されており、ペン先235を収容部270に収めることによりペン先235の乾燥を抑制可能とされている。
マーキング装置230は、図13(a),(b)に矢印で示すように案内機構240により保持部248を旋回させることにより、分包袋にインク導出部234によって印を付す位置と、収容部270にインク導出部234が収容される位置との間でインク導出部234の位置が変化するようにインク導出部234の姿勢を変化させることができる。分包袋にインク導出部234によって印を付す位置は、例えば鑑査部30よりも下流側とすると良い。これにより、鑑査結果に応じて適宜、分包袋に対して印を付すことが可能となる。また、インク導出部234によって印を付す位置は、分包紙が略水平に搬送される位置とすると良い。これにより、分包袋に対して所定の位置に安定的に印を付すことが可能となる。また、分包袋にインク導出部234によって印を付す位置において、保持部248によって保持されているインク導出具232(ペン233)のインク導出部234(ペン先235)が、分包袋に対して略垂直に接触するようにすると良い。このようにすることで、インク導出具232(ペン233)による印付けを位置決め精度良く行える等の効果が期待できる。
≪分包袋の排出方向設定について≫
薬剤鑑査装置10においては、導入部10bから鑑査対象の分包袋を導入し、鑑査のための撮影等を終えた分包袋を導入部10bの反対側に設けられた排出口から排出する搬送形態を基本的な搬送形態として分包袋の搬送が行われる。ここで、例えば導入部10bから導入した分包袋の連続体(分包袋連続体)について、途中で鑑査を中止する場合等がある。このような場合において、分包袋連続体のうち薬剤鑑査装置10内に未導入である部分が短い場合は、そのまま導入部10bから薬剤鑑査装置10内に分包袋連続体を搬送し、排出口から排出しても大幅なタイムロスは発生しないと考えられる。しかしながら、分包袋連続体のうち薬剤鑑査装置10内に未導入である部分が長い場合にこのような動作を行うと、大幅なタイムロスが発生してしまい、鑑査業務の効率が低下してしまう可能性がある。このような事態等を考慮すれば、例えば鑑査の中止等に伴い導入部10bから導入し始めた分包袋連続体を排出する場合に、排出口側から排出するだけでなく、導入部10b側に分包袋連続体を戻して排出できるようにすることが望ましい。また、鑑査の中止等に伴い分包袋連続体を排出する際に、分歩袋連続体を排出する方向を制御装置60等により自動判定するようにしても、ユーザーが任意選択できるようにしても良い。また、ユーザーにより分包袋連続体の排出方向を任意選択できるようにする場合には、操作パネル10cにボタンを表示したり、物理的なスイッチ等を設ける等すると良い。
≪分包袋の導入可否報知について≫
薬剤鑑査装置10においては、導入部10bから分包袋を導入することにより鑑査が行われるが、鑑査の進行状況等によっては分包袋の導入を禁止あるいは抑制すべきタイミングが発生する可能性がある。また、導入部10bから分包袋を導入できるタイミングであることをユーザーが直感的に認識できないと、分包袋を導入可能かどうかの判断に時間を要したり、誤って導入部10bから分包袋を導入しようとして発生するエラーを回避するための時間がかかったりしてタイムロスを生じる可能性もある。そのため、薬剤鑑査装置10は、導入部10bから分包袋を導入して良い状態であるか否かを、ユーザーが直感的に理解できるものであることが好ましい。
上述したような問題を抑制すべく、薬剤鑑査装置10は、導入部10bから分包袋を導入して良い状態であるか否かを報知するための報知装置等を設けることが望ましい。さらに詳細には、例えば、導入部10bにLED等からなる報知装置を設け、分包袋を導入可能な場合と導入不能な場合とで点灯形態を変化させる等しても良い。点灯形態については、例えば、分包袋を導入可能な場合はLEDを点灯させ、導入不可能な場合にはLEDを消灯させる等、適宜の形態とすることができる。このような構成とすることにより、分包袋の導入タイミングをユーザーが直感的に把握可能となり、分包袋の導入操作が行いやすくなる。これにより、薬剤鑑査装置10のユーザビリティの向上が期待できる。
≪鑑査中断に伴う再鑑査の所要時間短縮について≫
薬剤鑑査装置10は、例えば、ユーザーの都合により鑑査を中断したり、導入部10bから導入された分包袋が何らかの理由で搬送経路から逸脱する等の動作エラーが発生したりするのに伴い、鑑査を中断しなければならない場合が想定される。このような場合に、鑑査のための撮影等が完了した分包袋や、鑑査が完了した分包袋等、導入部10bから再度導入して一連の鑑査作業を行わなくても良いものについても、全て再鑑査の対象とすると、過剰に時間を要してしまう可能性があると考えられる。そのため、薬剤鑑査装置10は、鑑査が中断された場合に、中断前に鑑査を終えていた分包袋については、前回の鑑査結果を利用するようにすると良い。これにより、中断前に鑑査済である分包袋については、画像による鑑査を行わずにスキップし、鑑査が中断された箇所の分包袋から鑑査を再開することができ、鑑査中断に伴う再鑑査の所要時間を大幅に短縮することができる。
≪NG包の修正包エビデンスについて≫
薬剤鑑査装置10による鑑査の結果、処方通りに薬剤が分包されていないとの判定がなされた分包袋がある場合、その分については、薬剤師により再度分包がなされ、新たな分包袋(以下、「修正包」とも称す)が形成される。修正包が形成された場合には、薬剤鑑査装置10を用いて再度鑑査したり、薬剤鑑査装置10を用いることなく薬剤師の目視等による再鑑査が行われる。薬剤鑑査装置10を用いて修正包の鑑査を行う場合には、手間がかかるという問題がある。また、薬剤師の目視等により修正包の鑑査を行う場合には、例えば、後日患者から問い合わせがあっても、記録が残っておらず修正包の分包結果について最終状態を確認できない可能性があるという問題がある。
かかる課題に対応すべく、例えば、スマートフォンや携帯電話、PDA等の携帯端末を活用し、修正包についてのエビデンスを残せるようにすると良い。具体的には、携帯端末で修正包に該当する処方のバーコードを読み取り、修正包の番号等により修正包を特定することにより、薬品の情報を携帯端末に表示できるようにする。また、携帯端末には、薬剤師による目視鑑査の結果を入力可能とすると共に、携帯端末に付属しているカメラ等により修正包を撮影可能とし、目視鑑査の結果と修正包に係る画像を、修正包を特定するための番号等とともにサーバに登録可能とする。このようにすることで、薬剤鑑査装置10による鑑査の結果、異物混入等の何らかの要因によりマスタとの照合が不一致となった分包袋(本明細書において、「NG包」とも称す)とされた分包袋に係る修正包についてのエビデンスを残すことが可能となる。また、携帯端末を活用して修正包についてのエビデンスを残せるようにする場合には、鑑査結果や画像に加えて、後工程への申し送りコメント等の他の情報も添付できるようにすると良い。例えば、「分包袋を開封して錠剤Aを追加しました。」といったコメントや、「錠剤の重なりによる鑑査不良でした。分包結果に問題はありません。」といったコメント等を付加できるようにすると良い。これにより、一連の調剤業務において前工程と後工程におけるコミュニケーション不足によるミスの削減に貢献できるようになる。
≪NG包の指定分包について≫
薬剤鑑査装置10による鑑査の結果、処方通りに薬剤が分包されていないとの判定がなされた分包袋がある場合、その分包袋について、別途設けられた薬剤分包装置等を用いて再分包して修正包を作成する場合がある。この場合、ユーザーは、薬剤分包装置においてどの処方の何包目の分を再分包するかを指定する入力作業を行う必要がある。このような作業は繁雑であり、手作業を伴うとその分だけミスを誘発する可能性も高まる。従って、薬剤鑑査装置10は、鑑査の結果、修正包の作成が必要と判断された分包袋が存在している場合には、どの処方の何包目の分を再分包するかを示すバーコード等の識別情報を、薬剤分包装置側において特定できる形態で印字等して出力できるようにすることが望ましい。例えば、NG包が1包のみの場合、処方ナンバー、Rpナンバー、及びNGとなつた包の包数の順(何包目か)といった情報を印字すれば良い。また、複数のNG包がある場合には、何包目から何包目かという情報を印字すれば良い。これにより、薬剤鑑査装置10において出力されたバーコード等の識別情報を、薬剤分包装置側において読み込ませることで、再分包が行えるようになり、調剤業務の効率化や人為的ミスの削減に対する貢献が期待できる。
≪ユーザーによる薬剤の色彩情報更新機能について≫
ここで、鑑査対象である薬剤が、例えば色味の変化を生じやすいものである場合等には、薬剤情報データベース62に登録されているマスター画像の画像との照合により色彩情報の不一致を原因としてNG包であるとの鑑査結果に至るケースが想定される。このような薬剤については、色味の変化が生じた後の薬剤画像を薬剤情報データベース62に登録する方法が考えられる。しかしながら、かかる方法を採用した場合、薬剤画像を薬剤情報データベース62に登録するために手間が掛かったり、色味の変化が生じた後の薬剤を用意せねばならなかったりして、薬剤鑑査装置10のユーザビリティが低下してしまう懸念がある。
ここで、一つの形状についてのマスター情報(形状マスター)に対し、複数種の色彩についてのマスター(色彩マスター)を関連付けて薬剤情報データベース62に登録しておくことにより、色彩情報の不一致を原因としてNG包であるとの誤った鑑査結果が出る確率を低減でき、薬剤鑑査装置10のユーザビリティの向上を図れる。従って、薬剤鑑査装置10は、色彩情報の不一致を原因としてNG包であるとの鑑査結果が出た場合に、鑑査後等の所定のタイミングで、色彩情報の不一致とされた薬剤についての色彩情報を追加できる機能を備えたものとすると良い。具体的には、色彩情報の不一致との鑑査結果を示す画面において、色彩情報を追加するためのボタンを表示しておき、このボタンが押下された場合に色彩情報の追加を行うか否かをユーザーに確認して登録作業を行えるようにすると良い。これにより、色味が変化しやすい薬品の鑑査NGの発生を軽減でき、鑑査後にマスターの再登録の手間が不要なる。また、マスター再登録時の薬剤も不要となる。
なお、分包袋越しの画像を用いてマスター登録した後は、当該マスター登録よりも前に登録されている元のマスターと、分包袋越しの画像を用いて再登録したマスターとの両方が保持されるようにし、以後の鑑査において、元のマスターで鑑査を実施し、鑑査NGとなった場合であって分包袋越しの画像を用いて登録されたマスターがあれば、その画像を用いて鑑査を実施するようにすると良い。また、鑑査結果の表示を行う際には、分包袋越しの画像を用いたマスターか、あるいは当該マスター登録よりも前に登録されている元のマスターのいずれを採用したかのかを分かるように表示するようにしても良い。
≪透明薬剤が存在している場合の鑑査性能向上について≫
ここで、本発明者らが鋭意検討したところ、透明の薬剤(以下、「透明薬剤」とも称す)が、一部又は全部が透明である分包袋に分包されている場合においては、透明薬品の輪郭を画像解析により取得するのが困難な場合があることが見いだされた。また、分包袋の透明部分に透明薬品が存在していると、分包袋に形成された皺等の影響により透明薬品の輪郭を画像解析により取得するのがより一層困難になることが見いだされた。具体的には、本発明者らは、例えば図14に示すように、一部に白色に形成された帯状の部分(以下、「白帯」とも称す)を有し、他の部分が透明である分包袋内に透明薬品が収容されている場合を想定して検証を行った。図14(a)はこの分包袋において白帯の上に透明薬品が存在している場合の検証結果、図14(b)はこの分包袋の透明部分の上に透明薬品が存在している場合の検証結果である。図14(a),(b)の双方において、分包袋を撮影した画像について、透明薬品についての色彩マスターの最も輝度が低いチャンネルをS成分画像(Saturation:彩度成分画像)に置き換え、形状マッチングスコアを導出した。その結果、白帯の上に透明薬剤がある場合については比較的高いスコアが得られたが、分包袋の透明部分の上に透明薬剤がある場合には、スコアが低くなってしまうとの知見を得た。
上記のような検証結果を踏まえ、透明薬品が存在している場合であっても、透明薬品の輪郭を確実に導出することができれば、薬剤鑑査装置10における鑑査精度をより一層向上できるとの知見に至った。かかる課題を解決すべく、薬剤鑑査装置10は、透明薬品の輪郭を導出するための処理を行えるものとすると良い。以下、その一例について詳細に説明する。
具体的には、例えば上述したように透明薬品についての色彩マスターの最も輝度が低いチャンネルをS成分画像に置き換えるのに際し、S成分画像にグレイモルフォロジー変換によるオープニング処理を施す処理を行う。これにより、分包袋の皺等による影響が軽減され、透明薬品の領域(輪郭)が明確化される。具体的には、図15(a)に示すように、白帯の上に透明薬剤がある場合について、透明薬品についての色彩マスターの最も輝度が低いチャンネルを、S成分画像にグレイモルフォロジー変換によるオープニング処理を施す処理を行ってから置き換える処理を行い、形状マッチングスコアを導出した。その結果、マッチングスコアの向上が確認された。また、分包袋の透明部分の上に透明薬剤がある場合についても同様の処理を行ったところ、スコアが大幅に改善された。従って、薬剤鑑査装置10は、S成分画像にグレイモルフォロジー変換によるオープニング処理を施す処理を行う処理を行えるものとすることにより、透明薬剤が分包袋の透明部分に存在しているような悪条件下においても透明薬剤の輪郭を精度良く導出できるようになり、鑑査精度のより一層の向上を図れる。
≪遠隔鑑査について≫
上述した薬剤鑑査装置10は、設置された場所において鑑査を行うものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、薬剤鑑査装置10を調剤室等の第一の場所に設置し、薬剤鑑査装置10の設置場所から離れた鑑査室等の第二の場所や、さらに別の第三の場所等において遠隔鑑査できるものであっても良い。具体的には、例えば図16に示すシステム構成図のように、第一の場所に設置された薬剤鑑査装置10と、第二の場所に設置されたサーバ280とを有線又は無線による通信回線で情報通信可能なように接続する。これにより、薬剤鑑査装置10により得られた情報をサーバ280に送受信したり、サーバ280から薬剤鑑査装置10に必要な情報を送受信できる。また、鑑査室等の第二の場所に設置された遠隔鑑査用の端末282や、これとは別の第三の場所にある端末284をサーバ280に対して有線又は無線による通信回線で情報通信可能とする。端末282,284は、例えば従来公知のPCや、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、PDA等の携帯型端末等、適宜のものとすることができる。このようなシステム構成を採用した場合、端末282や端末284からサーバ280に接続することにより目視鑑査等の作業が行えるようになる。なお、図示例においては、端末282による鑑査を行う場所(例えば鑑査室)にサーバ280を設置した例を示したが、本発明はこれに限定されず、サーバ280を第四の場所に設置したり、クラウド上に設置しても良い。また、当該システムを構築するためのプログラムについても、サーバ280や端末282,284等のローカル環境にインストールして実行されるものに限定されず、クラウド環境にインストールして実行されるものであっても良い。また、図示例のように、サーバ280や端末282,284等にバーコードリーダやジャーナルプリンタ、外部記憶装置等の他の機器類を接続し、これらを鑑査のために使用できるようにしても良い。
また、上述したように遠隔鑑査を行えるようにした場合には、薬剤鑑査装置10の表示機能に拘束されることなく、端末282等に任意のディスプレイ283等を設けて表示可能となる。そのため、端末282等におけるディスプレイ283の設置形態に応じて、画面表示形態も変更可能なものであると良い。具体的には、図17(a)に示すように、端末282等において2台以上のディスプレイを接続した場合には、第一のディスプレイ283に薬包一覧画面を表示したまま、第二のディスプレイ283に画像照合画面を表示できるようにすると良い。このようにすることで、薬包一覧画面と、一覧から選択された各包の画像を表示照合する画面(画像照合画面)との間で表示切り替え等を行わなくても良くなり、鑑査業務効率の更なる改善が図れる。
また、上述したように遠隔鑑査を行えるようにした場合には、薬剤鑑査装置10が設置されている場所とは違う場所(例えば別室等)において目視鑑査を行った後、例えばNG包とされた分包袋を薬剤鑑査装置10で確認したい場合があると想定される。このような場合、薬剤鑑査装置10で確認するための分包袋を探し出して特定するために手間を要する可能性がある。かかる課題に対処すべく、図17(b)に示すように、薬剤鑑査装置10は、NG包とされた分包袋を簡単に特定できるようにすると良い。具体的には、例えば、薬剤鑑査装置10で確認する分包袋を特定するためのバーコード等の識別情報286をジャーナルに印刷できる構成とすると良い。また、バーコードを読み取ることにより、携帯型の端末284等の画面には、処方ナンバーと、Rpナンバー及びNG包が何包目であるか等の情報を表示することができるが、同時にジャーナルにも、NG包のナンバーを直接印字(図17(b)参照)することにより、ジャーナルを見ながらNG包の確認作業が実行できるようにしても良い。
≪搬送装置20に噛み込んだ分包袋の除去対応構造について≫
搬送装置20は、導入部10bから導入された分包袋を鑑査部30を通過して下流側まで搬送可能なものである。搬送装置20は、例えば、分包袋を下方から支持する搬送面22と、搬送面22に対して接触するように付勢されたローラ24との間に分包袋の端部を挟み込み、ローラ24を図示しない動力源から受けた動力により駆動させることにより分包袋を搬送するものとすると良い。ここで、搬送装置20をこのような構成とした場合、搬送面22とローラ24との間等への分包袋の噛み込みが発生する可能性がある。また、ローラ24を分包袋の搬送方向に複数並べて設置した場合には、噛み込んだ分包袋を除去するために、各ローラ24を搬送面22から離れる方向に持ち上げる等の煩雑な作業を強いられる可能性がある。従って、搬送装置20は、分包袋の噛み込みが発生した場合に、容易に分包袋を取り出し可能な構造であると良い。具体的には、図18に示すように、搬送装置20は、複数のローラ24を一体的に搬送面22に対して上げ下げ可能なハンドル290を設けると良い。これにより、万が一、搬送装置20において分包袋が噛み込むようなことがあっても、ハンドル290を用いてローラ24を搬送面22から離反させることにより、分包袋を容易に除去することができる。
≪分包袋導入ガイドについて≫
薬剤鑑査装置10は、複数の分包袋が帯状に連なったもの(分包袋連続体)を導入部10bから導入して鑑査を行うことができる。ここで、例えば分包袋(分包袋連続体)の幅が導入部10bの幅よりも狭い場合等には、分包袋を幅方向に位置決めしにくく、想定通りに搬送されない可能性がある。また、上述した搬送装置20のように、搬送面22の幅方向一方側に搬送用のローラ24を設けた場合は、幅が導入部10bの幅よりも狭い分包袋が導入された場合であっても、分包袋(分包袋連続体)が自然にローラ24側に寄るように導入可能な構成であることが好ましい。
上述したような知見に基づけば、薬剤鑑査装置10は、導入部10bに例えば図19及び図20に示すようなガイド300を設けると良い。具体的には、ガイド300は、図19に示すように搬送面22を平面視した状態において、端部302において分包袋(分包袋連続体)の搬送方向に対して直交するのではなく、搬送方向に対して斜めになるように形成されている。ガイド300の端部302は、搬送面22の幅方向一方側(ローラ24が配置されている側)において、他方側よりも搬送方向外側(導入部10b側から側面視して手前側/図20において下側)に突出した形状とされている。薬剤鑑査装置10は、このようなガイド300を設けることにより、幅の狭い分包袋(分包袋連続体)が用いられた場合であっても、分包袋(分包袋連続体)を自然にローラ24側に寄るように導入することができる。
ここで、上述した薬剤鑑査装置10は、例えば上述した均し機構100,200等を設けてもなお、薬剤の重なり等が解消されないことが画像等により確認された場合、分包袋を上流方向(逆方向)に向けて逆搬送させ、薬剤の重なり等を解消できるようにしても良い。また、上述した、均し機構100,200等に加えて、あるいは均し機構100,200等に代えて、例えば以下に詳述する均し機構400を設けることも可能である。均し機構400は、分包袋に対して接触することにより、分包袋の表面に接触する機構(第一接触機構402)を備えつつ、分包袋内にある薬剤の分散等を促進するものであり、分包袋を上流方向、及び下流方向に往復させる動作を数回繰り返すこととすれば、さらに高い効果が見込まれる。本発明者らが、薬剤鑑査装置10に均し機構400を設けるべく、鋭意検討を重ねたところ、分包袋を往復動させる過程において均し機構400の上流側において分包袋が搬送経路から逸脱するという問題が発生する場合があるとの知見を得た。かかる問題を解消するための方策として、以下において第一接触機構402を備えた均し機構400に加え、これよりも上流側に第二接触機構404を設けた例について説明する。また、分包袋が搬送経路から逸脱するのを抑制するために有効な構成の一例として、第三接触機構406について、均し機構400と共に説明する。
≪第一接触機構を備えた均し機構、第二接触機構、及び第三接触機構について≫
薬剤鑑査装置10は、上述した均し機構100,200のようなものに限らず、他の構成の均し機構を備えたものであっても良い。また、薬剤鑑査装置10は、鑑査部30の上流側に均し機構100,200、あるいは他の均し機構等を設けるのに加え、鑑査部30の下流側に分包袋(分包袋連続体)の表面に接触しつつガイドする接触機構等を設けたものとしても良い。具体的には、薬剤鑑査装置10は、例えば、均し機構100,200に代えて、あるいはこれらに加えて、図21〜図24に示した分包袋の表面に接触する機構(第一接触機構402)と薬剤の均し機能とを兼ね備えた均し機構400、及び第二接触機構404を併設したものであっても良い。また、図21〜図23や図25に示すように、薬剤鑑査装置10は、鑑査部30の下流側に、例えば第三接触機構406等を設けたものとしても良い。以下、均し機構400、及び第三接触機構406を、上述した均し機構200と共に備えた構成を例に挙げ、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において上記実施形態において示したものと共通する部分については同一の符号を用い、詳細の説明については省略することがある。
均し機構400は、搬送装置410によって鑑査部30を通過するように形成される搬送経路412のうち、鑑査部30よりも上流側の部分(上流側搬送経路412a)に設けられている。第二接触機構404は、均し機構400よりもさらに上流側に設けられている。第三接触機構406は、搬送経路412のうち鑑査部30よりも下流側の部分(下流側搬送経路412b)に設けられている。搬送装置410は、制御装置60による制御のもと、上流側から下流側に向かう順方向、及び下流側から下流側に向かう逆方向に分包袋の搬送方向を切り替え可能なものとされている。また、図22や図23等に示すように、搬送装置410に対して幅方向(分包袋の搬送方向に対して交差する方向)の一方側には、クランプ28が設けられている。クランプ28は、上述したローラ24を分包袋の搬送方向に複数備えたものとされている。クランプ28は、搬送装置410により搬送される分包袋(分包袋連続体)の幅方向一端側において、分包袋が搬送方向に自由に移動可能な程度の力で挟み込むものとされている。
均し機構400は、上流側搬送経路412aにおいて、鑑査用として供給されてきた分包袋に収容された薬剤を均すためのものである。均し機構400は、第一接触機構402と、薬剤均し部428とを備えている。また、第一接触機構402は、第一接触体420、及び第一支持部440を備えている。薬剤均し部428は、第一接触機構402をなす第一接触体420に組み付けられている。
さらに具体的には、第一接触体420は、搬送経路412において搬送される分包袋の表面に接触する部材である。第一接触体420は、上流側搬送経路412aの途中に位置する第一接触位置422において分包袋に接触可能なように配置されている。第一接触位置422は、搬送装置410において分包袋に対して裏面側から接触可能なように設けられた駆動ローラ26に対して上方に離れた位置に設けられている。
図24や図26に示すように、第一接触体420は、第一アーム部424、第一接触部426、及び薬剤均し部428を備えている。第一アーム部424は、第一接触部426側(先端側)を搬送経路412側に向けた状態とされ、後に詳述する第一支持部440によって基端側において回動自在に支持されている。第一接触体420は、基端側から先端側に向かうに連れて、分包袋の順送り方向(搬送方向)の上流側から下流側に向けて下り勾配となるように傾斜した姿勢とされ、搬送経路412の上方側に配置されている。
第一接触部426は、第一アーム部424の先端部に連続するように設けられた部分である。第一接触部426は、側面視が略「V」字型の形状とされている。第一接触部426は、搬送装置410による分包袋の順送り方向上流側に向けて傾斜した第一導入側傾斜面426aと、下流側に向けて傾斜した第一排出側傾斜面426bとを有する。第一接触部426は、第一導入側傾斜面426a側に第一アーム部424が連続するように形成されている。第一接触部426は、搬送装置410によって形成された搬送経路412及びこの上を通過する分包袋(分包袋連続体)と第一導入側傾斜面426aとがなす角、及び搬送経路412と第一排出側傾斜面426bとがなす角が、共に鋭角になるように屈曲している。
上述したように、薬剤均し部428は、第一接触機構402をなす第一接触体420に組み付けられている。具体的には、薬剤均し部428は、第一導入側傾斜面426a及び第一排出側傾斜面426bの間に設けられている。薬剤均し部428は、珠支軸428a、及び珠部材428bを有する。珠支軸428aは、第一導入側傾斜面426a及び第一排出側傾斜面426bの境界部分に形成される稜線に沿って延びるように設置された軸体である。すなわち、珠支軸428aは、第一接触体420の設置状態において、分包袋(分包袋連続体)の流れ方向に対して略直行するように設置されている。珠部材428bは、算盤の珠あるいはビーズのような珠によって構成されている。本実施形態では、珠部材428bとして、算盤の珠のように、二つの台円錐の下底部同士を接合したような外観形状を有し、断面形状が六角形または略菱形の珠が用いられている。珠部材428bは、珠支軸428aに対して摺動可能なように複数個装着されている。
第一支持部440は、上述した第一接触体420を、第一アーム部424の基端側に位置する第一揺動支点442に設けられた第一支軸444を支点として揺動可能に支持するものである。第一支軸444は、搬送経路412による分包袋の搬送方向に対して交差(本実施形態では略直行)する方向(幅方向)に延びている。また、第一揺動支点442は、上述した第一接触体420が分包袋に接触する位置(第一接触位置422)に対し、分包袋の順送り方向の上流側に外れた位置にある。また、第一揺動支点442は、第一接触位置422に対し、上方に離れた位置にある。
第一接触体420及び第一支持部440は、上述したような構成とされている。このような構成とされているため、分包袋(分包袋連続体)が搬送経路412と第一接触体420との間を往復動することにより、珠部材428bが薬剤に対して当接し、珠支軸428aを軸心として回動しつつ、珠支軸428aに沿って摺動する。このようにして珠部材428bが軸方向に摺動しつつ程よく薬剤に当接することで、起立状態にある薬剤を横転させたり、集合状態にある薬剤を分包袋内において分散させたりして、鑑査しやすい状態にすることができる。
また、第一接触体420及び第一支持部440は、第一揺動支点442に対して、分包袋の順送り方向下流側にある第一接触位置422において分包袋と接触可能な配置とされている。このような配置とされているため、逆送り方向(鑑査部30側から入口側に向かう方向)に向けて搬送される際に第一接触体420から分包袋に作用する力が、分包袋が順送り方向の上流側(入口側)から下流側(鑑査部30側)に向けて搬送される際に第一接触体420から分包袋に作用する力よりも大きくなる。そのため、第一接触体420に対して分包袋が接触した状態で、分包袋を逆送り方向に戻す動作を行うことにより、薬剤均し部428により薬剤を倒したり均したりする効果が高まる。
また、上述したように、第一接触機構402を備えた均し機構400に対し、分包袋の順送り方向上流側には、第二接触機構404が設けられている。第二接触機構404は、以下に示すような第二接触体460、及び第二支持部480を備えている。
第二接触体460及び第二支持部480は、薬剤均し部428の存否、及び位置関係等以外の部分において、それぞれ上述した第一接触体420及び第一支持部440と類似した構成とされている。第二接触体460は、分包袋が搬送経路412(上流側搬送経路412a)から逸脱するのを抑制する紙押さえ機能を有する。以下、第二接触体460及び第二支持部480の構成について、詳細に説明する。
図21〜図24に示すように、第二接触体460は、上述した第一接触体420に対して分包袋の順送り方向上流側に配置されている。第二接触体460は、第一接触位置422よりも分包袋の順送り方向上流側に位置する第二接触位置462において、搬送経路412(上流側搬送経路412a)を通過する分包袋の表面に接触可能とされている。
図24や図27等に示すように、第二接触体460は、第二アーム部464、及び第二接触部466を備えている。第二アーム部464は、第二接触部466側(先端側)を搬送経路412側に向けた状態とされ、後に詳述する第二支持部480によって基端側において回動自在に支持されている。第二接触体460は、基端側から先端側に向かうに連れて、分包袋の順送り方向下流側から上流側に向けて下り勾配となるように傾斜した姿勢とされ、搬送経路412の上方側に配置されている。
第二接触部466は、第二アーム部464の先端部に連続するように設けられた部分である。第二接触部466は、側面視が略「V」字型の形状とされている。第二接触体460は、第二接触部466において第二アーム部464よりも拡幅(設置状態におい搬送経路412の幅方向に拡大)している。第二接触部466は、搬送装置410による搬送方向上流側に向けて傾斜した第二導入側傾斜面466aと、下流側に向けて傾斜した第二排出側傾斜面466bとを有する。第二接触部466は、第二排出側傾斜面466b側に第二アーム部464が連続するように形成されている。第二接触部466は、側面視した状態において、第二導入側傾斜面466aの先端に向けて先細り形状とされている。第二接触部466は、搬送装置410によって形成された搬送経路412及びこの上を通過する分包袋(分包袋連続体)と第二導入側傾斜面466aとがなす角、及び搬送経路412と第二排出側傾斜面466bとがなす角が、共に鋭角になるように屈曲している。
第二支持部480は、上述した第二接触体460を、第二アーム部464の基端側に位置する第二揺動支点482に設けられた第二支軸484を支点として揺動可能に支持するものである。第二支軸484は、搬送経路412による分包袋の搬送方向に対して交差(本実施形態では略直行)する方向(幅方向)に延びている。また、第二揺動支点482は、上述した第二接触体460が分包袋に接触する位置(第二接触位置462)に対し、分包袋の順送り方向下流側に外れた位置にある。また、第二揺動支点482は、第二接触位置462に対し、上方に離れた位置にある。
第二接触体460及び第二支持部480は、上述したような構成及び配置とされている。これにより、搬送経路412を側面視した状態において、第二接触体460及び第二支持部480における第二接触位置462及び第二揺動支点482は、第一接触体420及び第一支持部440における第一接触位置422及び第一揺動支点442と逆転した位置関係とされている。すなわち、第二接触体460及び第二支持部480は、第二揺動支点482に対して、分包袋の順送り方向上流側にある第二接触位置462において分包袋と接触可能な配置とされている。このような配置とされているため、分包袋の順送り及び逆送りに伴って第二接触体460において分包袋に対して作用する力の大小関係は、第一接触体420において分包袋に対して作用する力の大小関係と逆転している。
具体的には、順送り方向(入口側から第一接触体420や鑑査部30側に向かう方向)に向けて分包袋が搬送されるときに第二接触体460から分包袋に作用する力は、逆送り方向に向けて分包袋が搬送されるときに第二接触体460から分包袋に作用する力よりも大きい。これに対し、順送り方向に向けて分包袋が搬送されるときに第一接触体420から分包袋に作用する力は、逆送り方向に向けて分包袋が搬送されるときに第一接触体420から分包袋に作用する力よりも小さい。すなわち、分包袋を鑑査部に対して順方向に搬送する場合には、第一接触体420において分包袋に作用する力が小さいが、第二接触体460において分包袋に作用する力は大きくなる。これとは逆に、分包袋を逆方向に搬送する場合には、第一接触体420において分包袋に作用する力が大きいが、第二接触体460において分包袋に作用する力は小さくなる。そのため、分包袋を鑑査部30に対して順方向に搬送する場合と、逆方向に搬送する場合とで、分包袋に作用する負荷のバランスが取れ、過剰に大きな力が分包袋に作用するのを回避できる。
また、順方向、逆方向のいずれに分包袋を搬送する場合においても、第一接触体420及び第二接触体460のうち搬送方向先頭側となる部分にあるものから分包袋に作用する負荷が極度に大きくならない。具体的には、順方向に分包袋を搬送する場合には、第二接触体460よりも第一接触体420の方が搬送方向先頭側にある。順方向への搬送時に第一接触体420から分包袋に作用する負荷は、逆方向への搬送時に第一接触体420から分包袋に作用する負荷よりも小さい。従って、上述した構成によれば、順方向に分包袋を搬送する場合に、搬送方向先頭側となる部分にある第一接触体420から分包袋に作用する負荷が極度に大きくならない。また、逆方向に分包袋を搬送する場合には、第一接触体420よりも第二接触体460の方が搬送方向先頭側にある。逆方向への搬送時に第二接触体460から分包袋に作用する負荷は、順方向への搬送時に第二接触体460から分包袋に作用する負荷よりも小さい。従って、上述した構成によれば、逆方向に分包袋を搬送する場合に、搬送方向先頭側となる部分にある第二接触体460から分包袋に作用する負荷が極度に大きくならない。このように、上述した構成によれば、順方向、逆方向のいずれに分包袋を搬送する場合においても、第一接触体及び第二接触体のうち搬送方向先頭側となる部分にあるものから分包袋に作用する負荷が極度に大きくならならず、分包袋をスムーズに搬送させることができる。
また、上述したように、図21〜図23や図25に示す例においては、第一接触機構402を備えた均し機構400、及び第二接触機構404に加えて、第三接触機構406を設けたものとされている。第三接触機構406は、各部の位置関係や細部における構成等を除き、上述した均し機構400の第二接触体460及び第二支持部480と類似したものとされている。第三接触機構406は、鑑査部30よりも分包袋の順送り方向下流側において、分包袋が搬送経路412(下流側搬送経路412b)から逸脱するのを抑制しないようにガイドする機能を有する。以下、第三接触機構406の構成について、詳細に説明する。
第三接触機構406は、第三接触体510と、第三支持部530とを有する。第三接触体510は、鑑査部30よりも分包袋の順送り方向下流側に配置されている。第三接触体510は、下流側搬送経路412bの中途にある第三接触位置512において、下流側搬送経路412bを通過する分包袋の表面に接触可能とされている。
図25や図28に示すように、第三接触体510は、第三アーム部514、及び第三接触部516を備えている。第三アーム部514は、第三接触部516側(先端側)を搬送経路412側に向けた状態とされ、後に詳述する第三支持部530によって基端側において回動自在に支持されている。第三接触体510は、基端側から先端側に向かうに連れて、分包袋の順送り方向上流側から下流側に向けて下り勾配となるように傾斜した姿勢とされ、搬送経路412の上方側に配置されている。
第三接触部516は、第三アーム部514の先端部に連続するように設けられた部分である。第三接触部516は、側面視が略「V」字型の形状とされている。第三接触部516は、分包袋の搬送方向上流側に向けて傾斜した第三導入側傾斜面516aと、下流側に向けて傾斜した第三排出側傾斜面516bとを有する。第三接触部516は、第三導入側傾斜面516a側に第三アーム部514が連続するように形成されている。
第三支持部530は、上述した第三接触体510を、第三アーム部514の基端側に位置する第三揺動支点532に設けられた第三支軸534を支点として揺動可能に支持するものである。第三支軸534は、搬送経路412による分包袋の搬送方向に対して交差(本実施形態では略直行)する方向(幅方向)に延びている。また、第三揺動支点532は、上述した第三接触体510が分包袋に接触する第三接触位置512に対し、分包袋の順送り方向上流側に外れた位置にある。また、第三揺動支点532は、第三接触位置512に対し、上方に離れた位置にある。
上述したように、第三接触体510及び第三支持部530は、第三揺動支点532に対して、分包袋の順送り方向下流側にある第三接触位置512において分包袋と接触可能な配置とされている。このような配置とされているため、順送り方向(鑑査部30側から出口側に向かう方向)に向けて分包紙が流れる際に、第三接触位置512において過剰に大きな力が作用することなく、適正な力でガイドされつつスムーズに搬送される。
上述した変形例では、第一接触機構402を備えた均し機構400、及び第二接触機構404、及び第三接触機構406の説明においては、均し機構200を備えた構成を例示したが、薬剤鑑査装置10は、適宜一部の構成について省略したり、他の構成に置き換える等しても良い。例えば、薬剤鑑査装置10は、上述した変形例に係る構成から均し機構200を除外したものや、均し機構200に代えて均し機構100を設けたもの、均し機構400について第一接触機構402と薬剤均し部428とを別々に設けたもの、均し機構400が第一接触機構402を備えていないもの、第二接触機構404を省略したり、これらに代えて他の構成を採用したもの、第三接触機構406を省略したり他の構成を採用したもの等としても良い。
なお、上述した第一接触機構402、第二接触機構404、及び第三接触機構406は、例えばバネ等の付勢部材を用いる等して、分包袋に接触することにより作用する負荷を調整することも可能である。
≪薬剤鑑査処理に関する変形例(統計分析による不具合情報の分析について)≫
ここで、薬剤鑑査装置10は、分包袋に収容された薬剤の数量及び種類について一包ずつ鑑査したことの記録として、分包袋の画像や処方情報等を記録するものであると良い。また、上述した薬剤鑑査装置10は、このようにして鑑査の記録を残す場合、処方通りでないとの鑑査結果(以下、鑑査NGとも称す)に至った分包袋(NG包とも称する)が、その原因を示唆ないし特定できるものであるとさらに良い。そこで、本発明者らがNG包が発生するケースについて鋭意検討したところ、同一の鑑査NGが何らかの同じ原因で一定の傾向をもって繰り返し発生する場合があることが見いだされた。かかる知見に基づき、本発明者らは、鑑査NG(NG包)の発生傾向を統計的に分析することにより、その原因を示唆ないし特定できる可能性があるとの知見に至った。
かかる課題に対応すべく、本変形例では、図29のように、例えば制御装置60に分析部63を設けるようにすると良い。分析部63は、処方通りではないとの鑑査結果が得られる傾向を統計的に分析することが可能なものである。また、本変形例の薬剤鑑査装置10では、分析部63による分析結果に基づいて、処方通りではないとの鑑査結果に至る要因を推定することができる。
ここで、分析部63によって得られた分析結果は、例えば、制御装置60等に設けた記憶手段に保存することができる。前記不具合情報は、薬剤鑑査装置10の内部だけではなく、外部の記憶装置やネットワークを介して接続される外部サーバー等に保存するものであっても良い。また、分析部63は、処方通りではないとの鑑査結果が得られた多数の処方についての情報を統計的に分析するための演算装置等を備えている。分析部63は、本変形例においては、制御装置60内に設けられているが、制御装置60内だけではなく、薬剤鑑査装置10の適宜の箇所に設けることが可能である。また、分析部63は、薬剤鑑査装置10の外部に設けられ、ネットワーク等を通じて接続されるものであっても良い。
また、薬剤鑑査装置10は、分析部63が、処方通りではないとの鑑査結果となる要因を薬剤の種類に基づいて分析するものであると良い。このような構成とすれば、例えば、どの薬剤にどのような不具合が多く発生するか等、薬剤の種類に基づいて処方通りではないとの鑑査結果となる要因分析をすることが可能となる。これにより、薬剤の種類に起因して処方通りではないとの鑑査結果になる要因の特定が容易となり、当該要因を排除するための方策を講じやすくなる。具体的には、上述したように、処方通りではないとの鑑査結果となる要因を薬剤の種類に基づいて分析することにより、例えば、薬剤の欠けや破損を引き起こしやすい薬剤を特定し、その薬剤に適した場所に薬剤の保管場所を移動させる等の方策が採りやすくなる。また、上述したようにして不具合の多い薬剤を特定できるようにすると、分包装置においてその薬剤が収容されている棚番、カセット、モータベース等の装置の異常箇所の特定も容易になる。また、上述した構成によれば、不具合の原因をスムーズに特定できるため、不具合品の発生を最小限とすることができ、装置の稼働率も高めることが可能である。
次に具体的に分析部63を用いて鑑査結果を統計的に分析する分析例を、図30(a)から(c)に基づいて説明する。本実施形態は、例えば、処方された薬剤のうち特定の薬剤が不足する頻度が高い場合についてのものである。図30(a)は、薬剤Aを1錠、薬剤Bを1錠、薬剤Cを1錠、薬剤Dを1錠、一つの分包袋に分包する処方であるにもかかわらず、薬剤Cが欠落している例である。この例において、薬剤A、B、Cが、それぞれ類似しているものであるとする。当該処方について、薬剤鑑査装置10によって鑑査を行うと、薬剤Cが不足しているとの鑑査結果が得られる。一方、分析部63は、薬剤A、B、Cというそれぞれ類似している薬剤が分包されている場合に、いずれか1錠が不足する傾向にあると把握する。
図30(b)は、薬剤Aを1錠、薬剤Cを1錠、一つの分包袋に分包する処方であるにもかかわらず、薬剤Cが欠落している例である。また、上述したのと同様に、薬剤A,Cは、それぞれ類似しているものとする。当該処方について、薬剤鑑査装置10によって鑑査を行うと、薬剤Cが不足しているとの鑑査結果が得られる。一方、分析部63は、薬剤A,Cというそれぞれ類似している薬剤が分包されている場合に、いずれか1錠が不足する傾向にあるとの把握する。このようにして得られた分析結果は、適宜の記憶手段に保存される。
図30(c)は、薬剤Aを1錠、薬剤Bを1錠、一つの分包袋に分包する処方であり、薬剤A,B共に欠落することなく、処方通りに分包されている例である。また、上述したのと同様に、薬剤A,Bは、それぞれ類似しているものとする。当該処方について、薬剤鑑査装置10によって鑑査を行うと、処方通り正常に分包されているとの鑑査結果が得られる。また、分析部63は、薬剤A,Bというそれぞれ類似している薬剤が分包されている場合に、処方通りに分包される傾向にあると把握する。
分析部63は、上述したように、どのような処方のときに、どのような鑑査結果になるのかを鑑査毎に把握し、統計的に分析する。本変形例においては、分析部63は、類似する薬剤A,B,Cを含む処方について得られた鑑査結果を総合的に判断すると、類似する薬剤A,Bが処方され、薬剤Cが処方されていないときには、処方通りであるとの鑑査結果が得られるのに対し、薬剤Cを含む処方であるときには、処方通りでないとの鑑査結果に至る傾向にあるとの分析結果を導出する。また、不具合の根本的な要因が、例えば薬剤Cの分包装置における供給カセットの不具合にあるといったような要因の推定を行うことができる。上述の統計的な分析は、各種の統計的手法を用いることが可能である。また、上述の統計的な分析は、AIを使うものであっても良い。
また、上述の分析は、例えば次のような不具合の特定に応用することが可能である。ここで先ず、処方するべき薬剤の数は処方データから正確に得られるものであり、数量についての正確な鑑査結果が得られることを前提とすると、例えば以下のようにして不具合を要因を推定できる。
(1)処方すべき薬剤の数量が不足し、かつ不明なものが存在しているとの結果が得られる場合。
この場合は、数量については正確であるが、何かしら不明なものが一つ以上含まれているためにNG包であるとされた場合である。例えば、処方すべき薬剤の数量がN個であるのに対し、鑑査により認識された薬剤の数量がN−a個であるものの、不明なものがa個と認識された場合は、上記(1)のような結果になる。ここで、例えば、断面八角形の錠剤や菱形で長めの錠剤のような薬剤の場合、分包袋内で錠剤が斜めの状態で撮影されることにより、当該薬剤が計数されずに不明薬剤として検出されることがある。そのため、上記(1)のような結果が得られた場合には、例えば、分包袋内で斜め方向となりやすい薬剤が含まれていること等が不具合の要因ではないかと推認できる。
(2)処方すべき薬剤の数量が過剰であり、かつ不明なものが存在しているとの結果が得られる場合。
この場合は、そもそも数量が間違っているため、不明な薬剤や処方すべき薬剤が過剰に分包されていることが原因であると推認できる。例えば、処方すべき薬剤の数量がN個であるのに対し、鑑査により認識された処方すべき薬剤の数量がN+b個であると認識された場合には、上記(2)のような結果になる。ここで、例えば、分包袋に異物や処方すべきでない他の薬剤等が混入している場合や、連続的に分包袋を形成する過程において、本来は先に分包した分包袋において包装すべき薬剤であるにもかかわらず、次の薬包袋に紛れ込む等の不具合(後ズレ)が発生すると、上記(2)のような結果になる可能性がある。そのため、上記(2)のような結果が得られた場合には、例えば異物の混入や後ズレしたこと等が不具合の要因ではないかと推認できる。
(3)同一の処方における分包において、半錠と薬剤の過剰とを原因とするNG包が多く発生する場合。
このような原因でNG包が多く発生する場合は、例えば、欠けやすい薬剤が含まれていることが不具合の要因であると推定できる。当該判断の理由は、薬剤が割れたり、欠けたりすることにより、半錠(半分に分割されて処方される薬剤)が過剰に検出されることによるものである。
(4)手撒きの薬剤を処方した場合に手撒きの薬剤を原因とするNG包が多く発生する場合。
このような場合は、例えば手撒きで間違えやすい薬剤が存在するものと判断できる。このような場合には、間違えやすい薬剤を特定することにより、当該薬剤の取扱いの注意喚起をさせることも可能となる。
≪薬剤鑑査処理に関する変形例(鑑査結果の自動出力による二次鑑査効率化について)≫
ここで、薬剤鑑査装置10は、薬剤の鑑査完了後に、薬剤鑑査処理を担当した作業者(一次担当者とも称する)が、例えば、ディスプレイに表示された照合完了のボタンを押すことにより、当該鑑査結果を印刷等によって出力する構成とすることができる。このような構成とした場合、一次担当者が、鑑査結果を承認する権限を有していないパート職員や事務員等の非薬剤師である場合、照合完了ボタンを操作する権限が付与されていないことがあり得る。かかる場合は、鑑査結果の承認権限を有する薬剤師(二次担当者とも称する)が、再度、鑑査結果を確認した上で、照合完了ボタンを押して、鑑査結果を印刷等によって出力する等して、鑑査の信頼性を確保することが望ましい。しかしながら、二次担当者が、鑑査結果を確認するにあたり、毎回、鑑査結果を呼び出してディスプレイ等に表示させ、当該鑑査結果からNG包のような不具合品を特定した上で、照合を完了させることとすると、その分だけ手間を要することになる。そのため、薬剤鑑査装置を前述のような構成とする場合には、鑑査により処方通りではないとの結果が出たときに、これを手間を要することなくスムーズに確認できるようにすることが好ましい。
そこで、薬剤鑑査装置10は、鑑査による結果を出力する出力装置を有するものとすることができる。出力装置は、前記鑑査が完了した後、鑑査結果が処方通りではないことを条件として、当該鑑査結果を自動的に出力することができる。出力装置は、例えば、ジャーナルを出力可能な印刷装置等を用いると良い。
上述のように薬剤鑑査装置10は、前記出力装置を備えているので、一次担当者が薬剤鑑査装置10を操作した場合であっても、二次担当者を呼び出すことなく、薬剤鑑査装置10から自動的にNG包の鑑査結果を出力することができる。これにより、二次担当者が、一次担当者からNG包の鑑査結果を受け取ることができるので、再分包の必要な処方を即座に確認することができ、効率の良い鑑査が可能となる。また、一次担当者が二次担当者に鑑査結果を渡すに際し、出力した鑑査結果をNG包に添付することで、NG包の特定を即座に行うことができる。
また、鑑査結果にNG包が存在する場合、どの分包袋がNG包であるのかを特定できる内容の出力がされるものであれば良い。これにより、鑑査結果について承認権限がない一次担当者が、出力された鑑査結果をNG包に貼り付けて二次担当者に渡すだけで、当該二次担当者が、鑑査結果を直ぐに確認できると共にNG包を特定できるので効率の良い鑑査を行うことが可能となる。すなわち、前記二次担当者が、NG包をいち早く特定し、確認できるので、再分包を効率良く行うことが可能となる。
≪薬剤鑑査処理に関する変形例(NG包の再鑑査時間の短縮について)≫
ここで、薬剤鑑査装置10は、鑑査結果に問題が無かった場合に、撮影装置40で撮影した分包袋の画像情報(写真)を保存したり、紙等の媒体に印刷する等の手法によって出力可能とすると良い。かかる構成とした場合は、出力された写真等を、例えば、患者に手渡した分包袋の記録として残すことが可能となる。
ところで、例えば、薬剤が分包袋内でマスターデータベースに登録されているのとは異なる姿勢(例えば、斜め方向に向いた姿勢)で収容されている等の理由により、薬剤鑑査装置10による鑑査によりNG包と判断されてしまうことがある。このケースのように、仮に薬剤鑑査装置10による鑑査によりNG包と判断された分包袋であっても、薬剤師等の鑑査者による目視による鑑査によれば、患者にそのまま処方しても問題がない場合がある。このような場合は、例えば薬剤が斜め方向に向いている等して、処方通りに薬剤が正確に分包されているか否かを目視で判別しにくい写真等が出力される可能性がある。
また、薬剤鑑査装置10による鑑査によりNG包と判断された分包袋が、薬剤師等の目視による鑑査の結果、再度NG包と判断された場合は、再分包を行って正しい処方の分包袋が患者に処方される。このとき、患者へ再分包袋を処方することに併せて、薬剤鑑査装置10においてNG包として撮影された際の写真が添付される可能性がある。
ここで、上述したような問題が生じた場合、処方通りに薬剤が正確に分包されているか否かを目視で判別しやすい状態の写真や実際の処方と合致する写真等を得るために、薬剤鑑査装置10によって分包袋を再鑑査する方法が考えられる。しかしながら、複数の分包袋からなる分包袋群(例えば、分包袋が帯状に連なった分包袋連続体等)について鑑査を行う場合において、先に行われた鑑査において処方通りではないとの鑑査結果が得られた分包袋が一部のものである場合、全ての分包袋について再鑑査を行うと、大きなタイムロスが生じてしまうという問題が生じる。
そこで、上述のような課題を解決すべく、薬剤鑑査装置10は、複数の分包袋からなる分包袋群であって、先に行われた鑑査において処方通りではないとの鑑査結果が得られた分包袋を一又は複数含むものについて再鑑査を行うときに、前記分包袋群をなす分包袋のうち、先に行われた鑑査において処方通りであるとの鑑査結果が得られたものについての撮影及び鑑査を省略することができる。また、薬剤鑑査装置10は、先に行われた鑑査において処方通りではないとの鑑査結果が得られたものについての撮影及び鑑査を行うことができる。
薬剤鑑査装置10による上述の撮影は、撮影装置40で行い、鑑査は、鑑査部30で行うようにすれば良い。このとき、鑑査部30は、例えば、分包袋のミシン目のみ検出し、処方通りである分包袋を飛ばして分包袋の送り動作を実行するようにすれば良い。これにより、薬剤鑑査装置10は、先に行った鑑査で、処方通りではない分包袋と判断された分包袋が存在するときに、再鑑査を行う際に撮影及び鑑査を省略できるので、撮影や鑑査に要する時間を最小限に抑制することが可能である。また、薬剤鑑査装置10は、再鑑査を行うことにより、処方通りに薬剤が正確に分包されているか否かを目視で判別しやすい状態の画像情報を取得することができる。
本発明は、上述した実施形態、及び各実施形態について変形例として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示および精神から他の実施形態があり得る。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。