JP5496534B2 - α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製造方法 - Google Patents
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Description
このような樹脂を得るための従来の方法としては、環構造を有する単量体を重縮合又は付加重合により連結する方法や、環構造を有さない単量体を付加重合と同時に環化させながら重合する方法がある。中でも、付加重合と同時に環化させながら重合して環構造を有する重合体を得る方法は、予め環構造を有する単量体を調製したうえで重合を行う手法とは異なった新たな製法を提供するものであることから、環構造を有する重合体が利用される様々な技術分野において、そのような製法の利用が期待されるところである。なお、いずれの方法においても、付加重合による方法は、二重結合等の不飽和結合を有する単量体を重合することになるが、一般的に分子量調整が容易であり、また温和な条件で様々なビニルモノマーを共重合させることが可能であるため、用途に応じた物性調整や様々な機能の付与がしやすい。そのため、高度でかつ多様な機能を求められる光学材料やレジスト材料等の用途向けの樹脂の合成方法として検討されている。
本発明者等は、このα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートにおいて、α位の二重結合炭素原子に不飽和結合を含む基を有するという構造上の特徴にともない、その製造方法や精製方法に新たな課題があることを見つけ出したものである。
すなわち、1つの分子内にアクリロイル基とアリルエーテル基等の不飽和アルコキシ基とを有するα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートは、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを反応に使用し、これとヒドロキシ基に不飽和結合を導入するための化合物とを反応させて製造することができるが、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートが反応後に残存することになる。通常の工業的な製造工程においては、化学製品を製造するために蒸留等の精製工程を行うことになるが、この蒸留の際に、反応溶液(反応後の溶液)中のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートに対して、目的生成物であるα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートがヒドロキシ基に不飽和結合を有する基が導入されているという構造上の違いがあるだけであり、ヒドロキシ基と不飽和結合(特にアリル基)とが同じような沸点となる構造であることに起因して分離が困難となる。そのため、通常の精製方法を実施しただけでは、純度の低いα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートしか得られないこととなる。なお、上述したα−(ハロメチル)アクリレートより製造する方法においては、α−(ハロメチル)アクリレートと生成物であるα−(アリルオキシメチル)アクリレートとの間に充分な沸点差があり、蒸留精製により分離することができ、本発明のような課題がなかった。ただ、それにもかかわらず、蒸留後も純度96%と高純度化することはできなかった。また、ハロゲンを使用するために環境に悪い上に、高価なα−(ハロメチル)アクリレートを用いるものであった。
また、例えば、同様にα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートとしてα−(ヒドロキシメチル)アクリレートを反応に使用し、これとメタノールとを反応させてα位の置換基に二重結合を含まないα−(メトキシメチル)アクリレートを合成する際には、α−(ヒドロキシメチル)アクリレートと生成物であるα−(メトキシメチル)アクリレートとの間に充分な沸点差があり、蒸留精製により分離することが容易に可能であり、本発明のような課題がなかった。
このことから、α位に不飽和結合含有有機基をもつα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製造方法や精製方法においては、特有の課題があったといえる。
例えば、下記反応式に示されるように、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルとアリルアルコールとを反応させてα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを製造することができるが、反応後のα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル収率は反応前のα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルに対して60モル%である。α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル転化率は88モル%であり、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが12モル%残存することになる。ここで残存したα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを反応により得られた反応溶液から蒸留により除去することが困難となる。
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、環化重合し、主鎖等に環構造を有する重合体を与えることができる有用な単量体であるα−(アリルオキシメチル)アクリレート等のα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製品を工業的精製方法によって高純度で製造する方法を提供することを目的とするものである。
なお、α位置換アクリレート類の製造方法が開示された文献においては、当該文献に記された実施例1において精製工程として水洗が行われ、また、アリルエーテル類の製造方法が開示された文献においては、当該文献に記された実施例1等において精製工程として洗浄・抽出が行われたことが記載されている。しかしながら、これらの精製手法は、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを反応に使用してα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを製造する方法において、反応により得られた反応溶液中のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを除くための有効な手法とはならないものと考えられる。例えば、後述する実施例、比較例を見ても分かるように、通常は触媒除去を主な目的に水洗を実施するものである。比較例より、水洗工程を行っても蒸留前にはα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートが残存しており(例えば、反応液中のα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル652gに対して、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが85g含まれていたのに対し、比較例1の水洗工程後においては、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル291gに対して、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル34gが残存しており、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが充分に除去されていないといえる)、このような精製手法がα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを除去する有効な手段となっていないことを証明している。
以下に本発明を詳述する。
上記「α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを反応に使用」するとは、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの合成において、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを経由することをいい、当該α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを経由する製法に本発明を適用することになる。α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製造において、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを経由する方法は工業的に有用であるが、本発明はその際に生じる精製上の問題点を解消しようとするものである。
上記α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを経由してα−(不飽和アルコキシメチル)アクリレートを合成して製造する方法については、後に詳述する。
本発明の製造方法においては、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを原料として合成するか、他の原料を用いてα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを中間体として生成させて合成するか、又は、これらを組み合わせて合成することになる。
また生成物である上記α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートは、アクリレート中の二重結合を構成するα位の炭素原子に不飽和結合を有するアルコキシアルキル基が結合した構造を有するが、該不飽和結合を有するアルコキシアルキル基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基及び炭素数1〜10のアルキル基をもち、該アルコキシ基及びアルキル基は置換基を有していてもよい。好ましくは、α−(アリルオキシメチル)アクリレートである。
なお、本明細書中、ヒドロキシアルキル基やアルコキシアルキル基等は、ヒドロキシ基やアルコキシ基が2価のアルキレン基に結合した1価の基となっていることから、ヒドロキシアルキレン基、アルコキシアルキレン基等と標記してもよいものであるが、アルキル基にヒドロキシ基やアルコキシ基が結合したかたちで1価の基になっているとも考えられるため、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基等と標記している。また、不飽和結合を有するアルコキシアルキル基のアルコキシ基についても、アルコキシ基に不飽和結合が結合したかたちで1価の基になっているとも考えられるため、そのように標記している。
上記のようにα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを経由してα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを合成して製造する場合、反応により得られた反応溶液中の、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを工業的製造工程において完全に転化させることは実質的にはできない。すなわち、反応に使用したα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートのすべてがα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートに転化されるわけではない。そのため、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの合成後に得られた反応溶液中にα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートが残存することになり、このα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを除去するための精製工程を行うことになる。この精製工程においては、通常では触媒や副生成物等の不純物も除去されるように操作することになる。
この際に、本発明の製造方法においては、反応により得られた反応溶液中の、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを誘導体化して蒸留することになるが、本発明の効果が際立って発揮されるのは、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートとしてα−(ヒドロキシメチル)アクリレートを用いる場合である。
なお、上記製造方法は、言い換えれば、未反応原料及び/又は未反応中間体を誘導体化して蒸留する工程を含むものである。
したがって、誘導体化剤としては、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートがもつヒドロキシ基と反応する化合物の中から適宜選択すればよいが、好ましくは、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートの誘導体と目的生成物であるα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとの沸点差が蒸留精製する際に充分に分別できる程度まで大きくすることができる化合物を選択することである。
上記誘導体化におけるα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートの低減量に関して、反応終了後、誘導体化処理前のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレート量を100質量%とすると、誘導体化処理後のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートの質量%(残存率)は、例えば0.001〜50質量%とすることができる。より好ましい誘導体化処理後のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートの質量%(残存率)は、0.01〜40質量%であり、更に好ましくは、0.1〜30質量%である。
また触媒や副生成物等の不純物も充分に取り除かれるようにすることが好ましい。蒸留溶剤、共沸溶媒を用いてもよい。なお、蒸留精製により目的生成物以外のものが留去されるようにしてもよく、目的生成物が留去されるようにしてもよい。
上記蒸留条件としては、常圧下又は減圧下で行うことになるが、通常は減圧下で行うことが好ましい。減圧条件としては、上限が30kPa以下であることが好ましく、10kPa以下がより好ましい。また下限が0.01kPa以上であることが好ましく、0.1kPa以上がより好ましい。蒸留温度条件としては、蒸留溶剤等によって適宜設定すればよいが、上限が150℃以下であることが好ましく、120℃以下がより好ましい。また下限が30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましい。蒸留工程は、工業的には通常、蒸留塔を用いて行うことになるが、塔頂温度をこのような温度範囲に設定することが好適である。
更に、上記蒸留工程は、低沸成分を留去する工程を前もって行ってもよく、沸点の違ういくつかの成分を低沸分から高沸分へ順に段階的に留去するようにしてもよい。蒸留工程はまた、精製工程の一環として行われてもよく、蒸留以外の精製方法、例えば、洗浄、抽出等の少なくとも1つを蒸留工程の前及び/又は後に行ってもよい。
これらの好ましい形態(構成要件)は、いずれか一つの構成要件を満たすようにしてもよいし、2つ又はそれ以上の構成要件を組み合わせて満たすようにしてもよい。
以下では、これら好ましい形態について順に説明する。
このように、本発明においては、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートとしてα−(ヒドロキシメチル)アクリレートを反応させることが好ましい。また、不飽和基含有アルコールとしてアリルアルコールを必須とすることが好ましい。これら2つを組み合わせたのが上記好ましい形態である。
上記不飽和基含有アルコールがアリルアルコールを必須とするとは、不飽和基含有アルコールの一部又は全部がアリルアルコールであればよく、好ましくは、アリルアルコールを不飽和基含有アルコールの主成分とすること、実質的に不飽和基含有アルコールとしてアリルアルコールだけを用いることである。本明細書中において必須とするとは、このような意味である。
上記α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートと不飽和基含有アルコールとを反応させてα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを得る場合、反応溶液中のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートとα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとの沸点差は、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートとしてα−(ヒドロキシメチル)アクリレートを用い、不飽和基含有アルコールとしてアリルアルコールを用いる場合が最も近似することとなる。そのため、生成物から未反応原料及び/又は未反応中間体を除去するために蒸留精製するときに両者を分離することができない又は特に困難になる。そのような場合に本発明を適用すれば、環化重合という特異的な重合において特に有用な単量体であるα−(アリルオキシメチル)アクリレートを高純度で得ることができるという際立った効果を発揮することになる。
また本発明の製造方法における特に好ましい形態は、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートが実質的にα−(ヒドロキシメチル)アクリレートであって、不飽和基含有アルコールが実質的にアリルアルコールである形態である。
上記誘導体化における好ましい形態は、上記反応溶液中のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを誘導体化する際の反応性がよく、また、工業的製法への適応性がよいという点から好適である。
中でも、上記誘導体化剤が、酸無水物及び/又はイソシアネート類を必須とする形態、すなわち、上記好ましい形態における誘導体化剤の中でも、酸無水物及び/又はイソシアネート類を用いる形態が特に好適である。このような形態においては、誘導体化における反応時間の点で有利である。また、未反応原料及び/又は未反応中間体であるα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートの残存率の低減にもより効果的である。
上記置換基としては、ハロゲン原子、ジアルキル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基等が好適である。
上記酸無水物類の化合物名としては、例えば、無水酢酸、無水アジピン酸、無水コハク酸、無水セバシン酸、無水アゼライン酸、無水グルタル酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸等の脂肪族カルボン無水物;無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が好適である。中でも、無水フタル酸、無水酢酸が特に好ましい。
上記置換基としては、ハロゲン原子、ジアルキル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基等が好適である。
このようなイソシアネート類の化合物名としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート等の単官能性脂肪族イソシアネート類;シクロヘキシルイソシアネート等の単官能性環状イソシアネート類;フェニルイソシアネート等の単官能性芳香族イソシアネート類;へキサメチレンジイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の二官能性芳香族イソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の二官能性環状イソシアネート類;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の二官能性芳香族イソシアネート類等が好適である。中でも、芳香族イソシアネート類が好ましい。より好ましくは、単官能性芳香族イソシアネート類であり、更に好ましくは、フェニルイソシアネートである。
上記置換基としては、ハロゲン原子、ジアルキル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基等が好適である。
このようなエポキシド類の化合物名としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等が好適である。中でも、プロピレンオキシドが特に好ましい。
上記反応工程(ii)に関して、イソシアネートの使用量はイソシアネート基量が反応液中のヒドロキシ基量に対して0.1〜5.0当量であることが好ましい。また、触媒としては例えば酸触媒又はアミン触媒を用いることが好適であり、触媒量は、反応液中のヒドロキシ基量に対して0.1〜50モル%であることが好ましい。反応温度は10〜80℃であることが好ましい。より好ましくは30℃〜70℃である。反応時間は反応の進行によって適宜設定すればよいが、例えば0.1〜8時間であることが好ましい。
上記反応工程(iii)に関して、無水リン酸類の使用量は反応液中のヒドロキシ基量に対して0.1〜5.0当量であることが好ましい。また、触媒としては例えば酸触媒又はアミン触媒を用いることが好適であり、触媒量は、反応液中のヒドロキシ基量に対して0.1〜50モル%であることが好ましい。反応温度は10〜80℃であることが好ましい。より好ましくは30℃〜70℃である。反応時間は反応の進行によって適宜設定すればよいが、例えば0.1〜16時間であることが好ましい。
上記反応工程(iv)に関して、エポキシド類の使用量は反応液中のヒドロキシ基量に対して0.1〜5.0当量であることが好ましい。また、触媒としては例えば酸触媒又はアミン触媒を用いることが好適であり、触媒量は、反応液中のヒドロキシ基量に対して0.1〜50モル%であることが好ましい。反応温度は10〜80℃であることが好ましい。
より好ましくは30℃〜70℃である。反応時間は反応の進行によって適宜設定すればよいが、例えば0.1〜16時間であることが好ましい。
上述したように誘導体化時におけるアミン触媒としては、3級アミンだけではなく、1級アミン、2級アミンやピリジン等の芳香族アミン等も使用可能である。上記α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを合成する反応には通常3級アミンを用いるので、そのまま反応液中のアミン(3級アミン)を触媒として誘導体化してもよく、後に触媒としてアミンを加えてから誘導体化してもよい。
反応液中のアミン(3級アミン)を触媒として誘導体化する場合においては、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの生成において用いた3級アミン触媒を誘導体化工程においても用いることができる。3級アミン触媒の好ましい例については、後に詳述する。
本発明のα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製法としては、上記α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートとして下記一般式(1);
上記反応工程のうち、上記(2)の反応工程と上記(3)の反応工程とを組み合わせて、α−(ヒドロキシメチル)アクリレートにアリルアルコールを反応させてα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとα−(ヒドロキシメチル)アクリレートとを生成させる工程を行うことも好適である。また、直接的には上記好ましい形態にはならないが、上記(3)の反応工程だけによることも好ましい。
上記(1)〜(3)の反応工程を行う場合や上記(2)及び(3)の反応工程を行う場合、それらの工程は連続した一連の工程として行ってもよく、それらの工程を別個に行ってもよい。すなわち、各工程においてα−(ヒドロキシメチル)アクリレートや2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビスアクリレートを中間体として生成させて反応させてもよく、反応原料として添加して反応させてもよい。また、上記反応工程においては、目的物であるα−(アリルオキシメチル)アクリレートとともにα−(ヒドロキシメチル)アクリレートが生成するが、当該α−(ヒドロキシメチル)アクリレートはα−(アリルオキシメチル)アクリレートを得るための原料として再利用することができる。
この反応式は、上記一般式(1)で表されるα−(ヒドロキシメチル)アクリレートとして、R1がメチル基であり、また、後述するアミン系触媒として、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(本明細書中、ジアザビシクロオクタン、又は、DABCOともいう。)を用いた場合を表している。
上記反応工程(1)に関して、アクリル酸メチルに対するパラホルムアルデヒドのモル比としては0.05〜20とすることが好適である。反応温度としてはアクリル酸メチルやα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合反応を抑制するために、10〜150℃が好適である。反応時間は、反応の進行速度によって適宜設定すればよい。
上記反応工程(2)に関して、反応温度としては、10〜150℃が好適である。
上記反応工程(3)に関して、2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸メチルに対するアリルアルコールの使用量としては、2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸メチル/アリルアルコールのモル比を0.05〜20とすることが好適である。反応温度としては、10〜150℃が好適である。
これらの反応工程におけるアミン系触媒の使用量については後述する。
なお、アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸メチル、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルの重合を抑制するために、重合禁止剤や分子状酸素を用いることが好ましい。
上記一般式(1)中、上記R1は、エステル基を構成する1価の有機基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、環状であってもよい。好ましい炭素数は、1〜18であり、より好ましくは、1〜12であり、更に好ましくは、1〜8である。有機基としては、例えば、鎖状飽和炭化水素基、鎖状不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基であることが好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよく、すなわち、これらの基を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部を置換基で置き換えた置換鎖状飽和炭化水素基、置換鎖状不飽和炭化水素基、置換脂環式炭化水素基又は置換芳香族炭化水素基であってもよい。中でも、置換基を有していてもよい鎖状飽和炭化水素基が好ましい。
また鎖状飽和炭化水素基を構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子等で置換したものであってもよく、例えば、アルコキシ基置換鎖状飽和炭化水素基、ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基、ハロゲン置換鎖状飽和炭化水素基等が好適なものとして挙げられる。
上記アルコキシ置換鎖状飽和炭化水素基としては、例えばメトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシエトキシエチル、フェノキシエチル、フェノキシエトキシエチル等の基が好適なものとして挙げられる。上記ヒドロキシ置換鎖状飽和炭化水素基としては、例えばヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル等の基が好適なものとして挙げられる。上記ハロゲン置換鎖状飽和炭化水素基としては、ハロゲン原子がフッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、例えばフルオロエチル、ジフルオロエチル、クロロエチル、ジクロロエチル、ブロモエチル、ジブロモエチル等の基が好適なものとして挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、ジシクロペンタジエニル等の基が好適なものとして挙げられる。これについても、構成する炭素原子に結合する水素原子の少なくとも一部をアルコキシ基、ヒドロキシ基やハロゲン原子等で置き換えた置換脂環式炭化水素基であってもよい。
本発明においては、不飽和基含有アルコールとして、不飽和基がアリル基であるアリルアルコールを用いることが好ましい。この場合に上記のように反応溶液中のα位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートと目的生成物であるα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとの沸点差が最も小さくなるが、誘導体化によって分別が可能となり、容易となる。すなわち、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
一般式(3)におけるR1の好ましい形態等は、上述した一般式(1)中のR1の好ましい形態と同様である。
α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル等の鎖状飽和炭化水素基含有α−(アリルオキシメチル)アクリレート。
なお、本発明のα−(アリルオキシメチル)アクリレートは、1種のα−(アリルオキシメチル)アクリレートだけを含むものであってもよく、複数種のα−(アリルオキシメチル)アクリレートを含むものであってもよい。
中でも、モノアミン化合物及び/又は環状構造含有アミン化合物が好ましい。より好ましくは、トリメチルアミン及び/又は1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
上記反応工程(1)〜(3)において、これらの工程を一連の工程として実施する場合には、上記のようにアミン系触媒の使用量を設定すればよいが、これらの各工程を別個に実施する場合におけるアミン系触媒の最適量としては、上記反応工程(1)におけるパラホルムアルデヒド100モル%に対して、0.01〜50モル%であることが好適である。上記反応工程(2)におけるα−(ヒドロキシメチル)アクリレート100モル%に対して、0.01〜50モル%であることが好適である。上記反応工程(3)における2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビスアクリレート100モル%に対して、0.01〜50モル%であることが好適である。
本発明は、α位にヒドロキシアルキル基を有するアクリレートを原料及び/又は中間体としてα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを得る反応における未反応原料及び/又は未反応中間体を誘導体化して蒸留する工程を含む精製方法でもある。上記精製方法の好ましい形態は、上述した本発明の製造方法における好ましい形態と同様である。
本発明の製造方法における上記環化重合の態様としては、α−(アリルオキシメチル)アクリレートの場合は、下記反応式で表されるように主鎖等に5員環及び/又は6員環構造を有する重合体を与えることになる。
(反応転化率、収率及び純度)
反応の転化率、収率及び純度については、ガスクロマトグラフ(6890N(商品名)、Agilent Technologies製、キャピラリーカラム DB−WAX(商品名);長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.5μm)を使用して測定し、事前に作成した検量線を使用して求めた。
攪拌機、冷却管、温度計、ガス吹き込み管および油浴を備えた2Lの4つ口フラスコに、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル813g、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン39g、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.4g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.4gを仕込んだ。その後、反応液に空気を吹き込みながら、反応液を100℃に昇温し、10kPaの減圧下、生成する水を留去しながら2時間反応させた。その後、常圧下、2時間かけてアリルアルコール610gと触媒の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン39gを滴下し、さらに12時間反応させた。反応後ガスクロマトグラフィーを用いて測定したところ、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルの収率がα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルに対し60モル%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの転化率が88%であった。次に残存しているアリルアルコールを減圧下(操作圧力7kPa)、単蒸留で留出させて、反応液1139gを得た。この反応液にはα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル652g、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル85g、触媒として1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン30gが含まれていた。
上記反応例より得られた反応液371gに誘導体化剤として無水酢酸87gを1時間かけて滴下して加え、50℃で2時間攪拌した。この反応液458g中のα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは2gとなった。その後、水で洗浄し触媒を除いた後、蒸留装置(理論段数13段)を用い、減圧下(操作圧力2kPa)、蒸留による精製を行った。蒸留前の反応液は450gで、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルが256g、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが1g、α−(アセトキシメチル)アクリル酸メチルが30g含まれていた。蒸留後、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを99.3質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを0.2質量%含む製品を192g得ることができた。
上記反応例より得られた反応液に誘導体化工程を行わず、水で洗浄した後、蒸留による精製を実施例1と同条件で行った。蒸留前の反応液は439gで、α−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルが291g、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが34g含まれていた。蒸留後、得られた製品226gにはα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルが88.5質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが10.1質量%含まれていた。
上記反応例においてアリルアルコールの代わりにメタノールを用いて、同様の反応をおこなった。その反応液に誘導体化工程を行わず、水で洗浄した後、蒸留による精製を実施例1と同条件で行った。蒸留前の反応液は445gで、α−(メトキシメチル)アクリル酸メチルが304g、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが21g含まれていた。
蒸留後、α−(メトキシメチル)アクリル酸メチルを99.5質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを0.1質量%含む製品を245g得ることができた。
実施例1と同様に、上記製造例1より得られた反応液50gに誘導体化剤として無水フタル酸30gを1時間かけて加え、50℃で2時間攪拌した。反応液中のα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは0.9gとなった。その後、実施例1と同様の工程を行いα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを98.6質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを1.3質量%含む製品を得ることができた。
実施例1と同様に、上記製造例1より得られた反応液50gに誘導体化剤としてフェニルイソシアネート24gを1時間かけて加え、50℃で2時間攪拌した。反応液中のα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは0.1gとなった。その後、実施例1と同様の工程を行いα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを99.5質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを0.1質量%含む製品を得ることができた。
実施例1と同様に、上記製造例1より得られた反応液50gに誘導体化剤としてプロピレンオキシド12gを1時間かけて加え、50℃で6時間攪拌した。反応液中のα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは1.4gとなった。その後、実施例1と同様の工程を行いα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを97.5質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを2.4質量%含む製品を得ることができた。
実施例1と同様に、上記製造例1より得られた反応液50gに誘導体化剤として無水リン酸14gを1時間かけて加え、50℃で6時間攪拌した。反応液中のα−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルは1.5gとなった。その後、実施例1と同様の工程を行いα−(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを97.2質量%、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを2.7質量%含む製品を得ることができた。
下記表中、添加量(当量)は、反応液中のヒドロキシ基量に対する当量をいう。
Claims (3)
- 下記一般式(1);
該製造方法は、反応により得られた反応溶液中の、α−(ヒドロキシメチル)アクリレートを誘導体化して蒸留する工程を含み、
該誘導体化は、該α−(ヒドロキシメチル)アクリレートがもつヒドロキシ基に誘導体化剤を付加反応させて行い、
該誘導体化剤は、酸無水物類、イソシアネート類、無水リン酸類及びエポキシド類からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該酸無水物類は、下記一般式(A);
該イソシアネート類は、下記一般式(B);
該無水リン酸類は、無水リン酸を含むものであり、
該エポキシド類は、下記一般式(C);
ことを特徴とするα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製造方法。 - 前記不飽和基含有アルコールがアリルアルコールを必須とすることを特徴とする請求項1に記載のα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートの製造方法。
- α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとα−(ヒドロキシメチル)アクリレートとを含むα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート含有組成物であって、
該α−(ヒドロキシメチル)アクリレートは、下記一般式(1);
該α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートは、下記一般式(3a);
該組成物全体に対するα−(ヒドロキシメチル)アクリレートの含有割合が0.1〜2.7質量%であることを特徴とするα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート含有組成物。
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