JP5418913B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
そして、定着ベルトがヒータによって加熱された金属部材によって加熱されて、ニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像がニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着されることになる。
なお、このような定着装置では、駆動手段によって加圧ローラが回転駆動されることで、ニップ部の位置で加圧ローラに圧接する定着ベルトが摩擦抵抗によって従動回転することになる。
なお、特許文献1、2等の定着装置では、加熱手段としてハロゲンヒータが用いられているため、セラミックヒータの温度を検知する2つの温度検知手段を用いた特許文献3の技術を適用することはできない。
また、本願において、「幅方向」とは、記録媒体の通紙方向に対して直交する方向であるものと定義する。
図1〜図8にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
図2〜図4に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、金属部材22(加熱部材)、補強部材23、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、加圧回転体としての加圧ローラ31、第1温度検知手段としての第1温度センサ40、第2温度検知手段としての第2温度センサ50、断熱部材27、ステー部材28、等で構成される。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30〜50μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。なお、本実施の形態1では、定着ベルト21の弾性層として、層厚が200μmのシリコーンゴムを用いている。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、ヒータ(加熱手段)、金属部材22、補強部材23、断熱部材27、ステー部材28、等が固設されている。また、図示は省略するが、定着ベルト21と金属部材22との間には、潤滑剤が介在(塗布)されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面21aに摺接するように固定されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図3を参照して、固定部材26は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、固定部材26の構成については、後でさらに詳しく説明する。
そして、略パイプ状に形成された金属部材22は、ヒータ25の輻射熱により加熱されて定着ベルト21を加熱する(熱を伝える。)。すなわち、金属部材22がヒータ25によって直接的に加熱されて、金属部材22を介して定着ベルト21がヒータ25によって間接的に加熱されることになる。定着ベルト21の加熱効率を良好に維持するためには、金属部材22の厚さを0.1mm以下に設定することが好ましい。
金属部材22の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることができるが、その中でも単位体積の熱容量比(密度×比熱である。)が比較的小さいフェライト系ステンレス鋼が好適である。本実施の形態1では、金属部材22の材料として、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430を用いている。また、金属部材22の厚さを0.1mmに設定している。
また、金属部材22と定着ベルト21とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、定着ベルト21の内周面には、双方の部材21、22の間にはフッ素グリスやシリコーンオイル等の潤滑剤が塗布されている。
なお、本実施の形態1では、金属部材22の断面形状が略円形になるように形成したが、金属部材22の断面形状が多角形になるように形成することもできる。
また、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、鏡面処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が金属部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(金属部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
また、本実施の形態1では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径とほぼ同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
なお、本実施の形態1では、後述する2つの温度センサ40、50を用いたベルトスリップ検知をおこなうために、加圧ローラ31を直接的に加熱する熱源(例えば、加圧ローラ31の芯金内部に設置するヒータである。)は設けられてはいない。
なお、本実施の形態1では、ニップ部を形成する固定部材26の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成する固定部材26の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、固定部材26の摺接面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形することがある。パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じる。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22とは別に高剛性の固定部材26を設置してニップ部を形成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
また、固定部材26の表面層26aに、予め潤滑剤を含浸させることもできる。これにより、固定部材26は、定着ベルト21に当接する面に潤滑剤が保持された状態になり、双方の部材21、26が磨耗する不具合がさらに軽減される。
本実施の形態1では、定着ベルト21と金属部材22とがほぼ全周にわたって近接しているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、従来のオンデマンド方式の定着装置(例えば、特許第2884714号公報参照。)では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、加熱待機時に金属部材22の熱が固定部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、金属部材22の熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
略パイプ状の金属部材22は、0.1mm厚のステンレスからなる平板に曲げ加工を施して形成したものである。したがって、ステンレス板を曲げ加工によって所望のパイプ形状に加工しようとしても、そのままでは、スプリングバックによって径が大きくなる方向に開いてしまい所望のパイプ形状を形成することができない。そして、金属部材22がスプリングバックによって開いてしまうと、定着ベルト21の内周面に接触してしまい定着ベルト21を傷つけたり、定着ベルト21との接触ムラによる定着ベルト21の加熱ムラが生じたりしてしまう。本実施の形態1では、このような不具合が生じるのを抑止するために、金属部材22の開口部が形成された凹部22a(曲げ部)をステー部材28で固定することによって、金属部材22のスプリングバックによる変形を抑止している。具体的には、スプリングバック力に抗するように曲げ加工が施された金属部材22の形状を保持しながら、金属部材22の内周面側からステー部材28を凹部22aに圧入する。
上述したように、金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力が金属部材22に作用すると、その加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形してしまう。そして、パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じてしまう。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22に凹部22a(固定部材26が挿設されている部分である。)をニップ部から離れるように設けて、加圧ローラ31の加圧力が金属部材22に直接的に作用しないように構成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、不図示の駆動モータから駆動力が伝達されて加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、ニップ部における加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、金属部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
図2及び図3を参照して、本実施の形態1における定着装置20には、定着ベルト21の表面温度を検知する第1温度検知手段としての第1温度センサ40が、ニップ部上流側(ニップ部に対して定着ベルト21の走行方向上流側である。)に配設されている。さらに、加圧ローラ31(加圧回転体)の表面温度を検知する第2温度検知手段としての第2温度センサ50が、ニップ部下流側(ニップ部に対して加圧ローラ31の回転方向下流側である。)に配設されている。
そして、第1温度センサ40(第1温度検知手段)によって検知された検知温度(ニップ部の位置に移動する直前の定着ベルト21の温度である。)と、第1温度センサ40の検知タイミングに対して所定時間だけタイミングを遅らせて第2温度センサ50(第2温度検知手段)によって検知された検知温度(ニップ部の位置から移動した直後の加圧ローラ31の温度である。)と、の温度差が所定の閾値を超えたときに、ヒータ25(加熱手段)による金属部材22の加熱を停止するように制御している。
このような制御が成立するのは、後で詳しく説明するが、定着ベルト21にスリップが生じることなく定着ベルト21が正常に走行している場合には、通紙時であっても非通紙時であっても、それぞれに定着ベルト21から加圧ローラ31への伝熱がほぼ定量的(又は比例的)におこなわれることに基づくものである。
これに対して、上述した第1温度センサ40の検知温度と第2温度センサ50の検知温度とに基づくベルトスリップ検知が、その後に復帰した場合(双方の温度センサ40、50の温度差が正常な値に回復した場合である。)には、再び電源部からヒータ25への電力供給を開始して、ヒータ25による金属部材22の加熱をおこなう。これにより、定着ベルト21の過昇温を防ぎつつ、画像形成装置1のダウンタイムが乱発するのを抑止することができる。
これにより、ニップ部の位置に移動する直前の定着ベルト21の表面温度に対する検知誤差が少なくなるとともに、ニップ部の位置を通過した直後の加圧ローラ31の表面温度に対する検知誤差が少なくなる。したがって、上述したベルトスリップ検知(定着ベルト21のスリップ検知である。)を精度良くおこなうことができる。
例えば、定着ベルト21の外径・回転数と、加圧ローラ31の外径・回転数と、が同じであれば、第1温度センサ40の検知位置からニップ部(ニップ部の中心位置である。)までの周方向の距離と、ニップ部(ニップ部の中心位置である。)から第2温度センサ50の検知位置までの周方向の距離と、が等しくなるように双方の温度センサ40、50を配設すればよい。
これにより、サイズの異なる記録媒体Pが通紙された場合であっても、定着ベルト21におけるニップ部上流側の検知温度と、加圧ローラ31におけるニップ部下流側の検知温度と、の対応が確実にとれることになり、ベルトスリップ検知の精度が高まることになる。
図5は、ウォームアップ時における定着ベルト21及び加圧ローラ31の温度変動を示すグラフである。
図5において、グラフS0は本実施の形態1の定着装置20における定着ベルト21の温度変動(ウォームアップ時の第1温度センサ40による温度プロフィールである。)を示し、グラフS1は本実施の形態1の定着装置20における加圧ローラ31の温度変動(ウォームアップ時の第2温度センサ50による温度プロフィールである。)を示す。また、グラフS1´は、図中の矢印の位置でベルトスリップが生じたときの、加圧ローラ31の温度変動(第2温度センサ50による温度プロフィールである。)を示す。
さらに、グラフR0は従来のベルト方式の定着装置(例えば、特開2009−192720号公報参照。)における定着ベルトの温度変動(ウォームアップ時の第1温度センサによる温度プロフィールである。)を示し、グラフR1は従来のベルト方式の定着装置における加圧ローラの温度変動(ウォームアップ時の第2温度センサによる温度プロフィールである。)を示す。
これに対して、本実施の形態1における定着装置20は、定着ベルト21の昇温が速いために、グラフS0に示すように、第1温度センサ40の出力の傾きが大きくなる。そして、それにともない定着ベルト21から加圧ローラ31への熱量の移動も多くなり、さらにヒータ25がニップ部上流側において定着ベルト21(金属部材22)に対向するように配設されているために、グラフS1に示すように、第2温度センサ50の出力の傾きが大きくなって、立ち上がりの遅れ分M(ディレイ)も小さくなる(M<N)。このように、本実施の形態1における定着装置20は、昇温の傾きが大きく、定着ベルト21の主たる加熱位置(ヒータ25に近い位置である。)からニップ部までの距離が短く、加圧ローラ31へ移動する熱量も大きいことから、上述した第1温度センサ40と第2温度センサ50との検知温度差に基づくベルトスリップ検知が可能になる。
具体的に、図5において、グラフS0の温度勾配は9.2(deg/秒)であり、グラフS1の温度勾配は5.8(deg/秒)である。そして、これらの温度勾配は、第1温度センサ40や第2温度センサ50のニップ部からの距離も短いため、環境によるバラツキがほとんど発生しない。そのため、経過時間に対する第1温度センサ40と第2温度センサ50との検知温度差と所定値とを対比することにより、ベルトスリップの発生を確実に検知することができることになる。
なお、本実施の形態1では、ウォームアップ動作開始時における第2温度センサ50の出力の遅れ分M(定着ベルト21から加圧ローラ31への熱移動が生じないことによる遅れ分である。)を考慮して、遅れ分Mに相当する時間は、ベルトスリップ検知はおこなわない。
図6において、グラフS0は本実施の形態1の定着装置20における定着ベルト21の温度変動(第1温度センサ40による温度プロフィールである。)を示し、グラフS1は本実施の形態1の定着装置20における加圧ローラ31の温度変動(第2温度センサ50による温度プロフィールである。)を示す。また、グラフS1´は、図中の矢印の位置でベルトスリップが生じたときの、加圧ローラ31の温度変動(第2温度センサ50による温度プロフィールである。)を示す。なお、図6における「非通紙時(非通紙中)」は、図5における「非通紙時(ウォームアップ時)」とは異なり、連続通紙時における紙間等のように、定着ベルト21の温度がほぼ一定に維持されている状態(定着温度が立ち上がった状態)のものである。具体的に、本実施の形態1では、定着ベルト21の表面温度が150℃になるように温度制御されている。そして、通紙中における加圧ローラ31の表面温度は90℃程度に維持され、非通紙中における加圧ローラ31の表面温度は110℃程度に維持される。なお、図6の実験結果は、70(g/m2)の記録媒体Pを連続通紙したときのものである。
ここで、図6に示すように、通紙中における2つの温度センサ40、50の検知温度差(温度シフト)は、通常においても、スリップ発生時においても、非通紙中における2つの温度センサ40、50の検知温度差(温度シフト)に比べて大きくなる。したがって、本実施の形態1では、通紙時における所定の閾値(ベルトスリップが生じているものと検知するための双方の温度センサ40、50の検知温度差である。)に対して、非通紙時における所定の閾値が小さくなるように設定している。これにより、通紙時においても、非通紙時においても、ベルトスリップ検知を確実におこなって、定着ベルト21の過昇温を未然に防止することができる。
ここで、上述したベルトスリップ検知は、非通紙中と通紙中との切り替えタイミング前後ではおこなわないことが好ましい。これは、記録媒体Pの先端がニップ部に突入するタイミングにバラツキが生じるために、非通紙中と通紙中との切り替えタイミング前後では、双方の温度センサ40、50の検知温度差が安定しない可能性があるためである。なお、非通紙中と通紙中との切り替えタイミングは、レジストローラ対98の位置から記録媒体Pの搬送が開始されるタイミングと、レジストローラ対98の位置から定着装置20のニップ部の位置までの搬送距離と、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)と、で算出することができる。
ヒータ25の制御は、図7(B)に示すように、点灯デューティの制御(オン・オフ制御)がおこなわれている。そのため、図7(A)に示すように、点灯デューティの制御のタイミングから遅れるように、定着ベルト21の温度変動に細かなリップルが現れる。そして、このような定着ベルト21の温度リップルは、定着ベルト21から受熱される加圧ローラ31の温度変動にも影響する。このようなことを考慮して、上述したベルトスリップ検知をおこなう上で、点灯デューティの制御のタイミングも考慮しておこなうことができる。例えば、上述したベルトスリップ検知をおこなうタイミングを、点灯デューティが所定値(例えば、70%である。)のときに対応しておこなうように限定することで、ヒータ25によって加熱される定着ベルト21(金属部材22)の条件を細かく一致させることができるため、上述したベルトスリップ検知の精度が向上することになる。
図8において、グラフS0とグラフS1とは、それぞれ、図6のものに対応するものである。ここで、グラフS0とグラフS1とに関る温度センサ40、50は、いずれも、定着ベルト21や加圧ローラ31におけるセンター基準(幅方向中央)に設置されている。すなわち、グラフS1は、第2温度センサ50が加圧ローラ31における通紙領域の中央部(第1温度センサ40の幅方向の位置と一致する。)に設置されたときの温度プロフィールを示す。これに対して、グラフQ1は、第2温度センサ50が加圧ローラ31における通紙領域の端部(第1温度センサ40の幅方向の位置と一致しない。)に設置されたときの温度プロフィールを示す。
図8から、グラフS0とグラフS1とが時間的なディレイ(遅れ分)を持った同形の温度プロフィールであるのに対して、グラフS0とグラフQ1とは異形の温度プロフィールであることがわかる。これは幅方向の位置により、定着ベルト21の厚みのバラツキや表面の微妙な凹凸のバラツキ等が生じていることによるものであり、これらはベルトスリップ検知に対してノイズとなるため検知精度を低下させる。このように、第1温度センサ40と第2温度センサ50とを幅方向の同一位置に配置することにより、ベルトスリップ検知の精度が向上することになる。
図9にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図9は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における定着装置は、金属部材22が電磁誘導によって加熱される点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
定着ベルト21が図9中の矢印方向に回転駆動されると、定着ベルト21は誘導加熱部60との対向位置で加熱される。詳しくは、励磁コイルに高周波の交番電流を流すことで、金属部材22の周囲に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このとき、金属部材22表面に渦電流が生じて、金属部材22自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、金属部材22が電磁誘導加熱されて、さらに加熱された金属部材22によって定着ベルト21が加熱される。
なお、金属部材22を効率的に電磁誘導加熱するためには、誘導加熱部60を金属部材22の周方向全域に対向するように構成することが好ましい。また、金属部材22の材料としては、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、スズ、パラジウム、これらのうち複数の金属からなる合金、等を用いることができる。
このような場合にも、本実施の形態2と同様にタイミングを合わせて検知された2つの温度センサ40、50の検知温度の温度差が所定の閾値を超えたときに金属部材22の加熱を停止する制御をおこなうことで、本実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 金属部材(加熱部材)、
23 補強部材、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 固定部材、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
40 第1温度センサ(第1温度検知手段)、
50 第2温度センサ(第2温度検知手段)、 P 記録媒体。
Claims (7)
- 所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融するとともに、可撓性を有する無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面側に固設されて、当該定着ベルトを介して加圧回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する固定部材と、
前記定着ベルトの内周面に対向するように固設されて前記定着ベルトを加熱するとともに、加熱手段によって加熱されるパイプ状の金属部材と、
前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向上流側に配設されるとともに、前記定着ベルトの表面温度を検知する第1温度検知手段と、
前記ニップ部に対して前記加圧回転体の回転方向下流側に配設されるとともに、前記加圧回転体の表面温度を検知する第2温度検知手段と、
を備え、
前記第1温度検知手段によって検知された検知温度と、前記第1温度検知手段の検知タイミングに対して所定時間だけタイミングを遅らせて前記第2温度検知手段によって検知された検知温度と、の温度差が所定の閾値を超えたときに、前記加熱手段による前記金属部材の加熱を停止することを特徴とする定着装置。 - 通紙時における前記所定の閾値に対して、非通紙時における前記所定の閾値が小さくなるように設定されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段とは、幅方向の検知位置が同じ位置になるように配設されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
- 前記第1温度検知手段と前記第2温度検知手段とは、それぞれ、幅方向の検知位置が、通紙可能な種々のサイズの記録媒体に対していずれの通紙領域の範囲内にも含まれる位置になるように配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置。
- 前記第1温度検知手段は、幅方向に直交する断面でみたときに、前記ニップ部の位置から前記定着ベルトの走行方向上流側に向けて前記定着ベルトの周方向に90度の位置までの範囲内に配設され、
前記第2温度検知手段は、幅方向に直交する断面でみたときに、前記ニップ部の位置から前記加圧回転体の回転方向下流側に向けて前記加圧回転体の周方向に90度の位置までの範囲内に配設されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。 - 前記金属部材は、前記ニップ部を除く位置で前記定着ベルトの内周面に対向するように固設され、
前記金属部材の内周面側に固設されて前記固定部材に当接して当該固定部材を補強する補強部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。 - 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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