JP5410275B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

この発明は、タイヤ周方向に延びる複数本のビードワイヤで構成してなるビードコアを埋設した一対のビード部と、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨って延びるトレッド部とを具え、さらにこれら各部に亘ってトロイド状に延び、両端部を前記ビードコアの周りに折り返してなるカーカスを有する空気入りタイヤに関するものである。
一般に空気入りタイヤのビードコアは、リムとの嵌合性を高め気密性を確保するという機能のみならずカーカスを係留するという重要な機能を有している。また通常、これらを適正に機能させるためには、加硫時のビードコアの崩れを抑制したり、リム組み性を良化したりする必要がある。
そこで、従来、特開昭49−119301号公報に記載されているように、タイヤ幅方向断面にて平行な対向二辺を持つ四辺形断面のビードワイヤを、タイヤ幅方向かつタイヤ径方向に相互に接触するように巻回してビードコアを成形し、それにより相互に隣接するビードワイヤ同士の接触面積を大きくしてビードコアの形状安定性を向上させる提案がなされている。
また、特開昭63−312207号公報に記載されているように、タイヤ幅方向断面にてタイヤ径方向で対向する辺が平行し、かつ側部の対向辺の対辺距離が可変的である形状のビードワイヤを用いることでビードコアの形状安定性及びリム組み性の良化を図る提案がなされている。
しかしながら、上記文献に記載されているようなタイヤは、加硫時におけるビードコアの崩れの抑制やリム組み性の良化等は成し得るものの、タイヤの耐久性、特には、ビード部の耐久性には着眼されていないため、近年増加しつつある重荷重化への要求に照らし合わせてみると、ビード部の耐久性という点では十分とはいえない。つまり、ビードワイヤは、空気充填時や経時変化時にはタイヤ幅方向断面にてカーカスが引き抜ける方向へ回転する変形を受けることになるから、この変形がカーカスの係留力を低下させ、いわゆるカーカス引き抜けを引き起こしビード部の耐久性を低下させるという問題がある。
それゆえこの発明は、ビードワイヤの断面形状及び配置の適正化を図ることによりカーカス引き抜けを抑制し、ビード部の耐久性の向上させることを目的するものである。
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、タイヤ周方向に延びる複数本のビードワイヤで構成してなるビードコアを埋設した一対のビード部と、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨って延びるトレッド部とを具え、これら各部に亘ってトロイド状に延び、両端部を前記ビードコアの周りに折り返してなるカーカスを有する空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面にて、前記ビードワイヤは、タイヤ径方向に対して傾斜して直線状に延びるとともに相互に平行する二つの直線部と、前記二つの直線部間の全体に亘って延びるとともにタイヤ幅方向の両側において隣接するビードワイヤとそれぞれ相互に補完的に係合する凸部及び凹部と、を有し、前記凸部と前記凹部のタイヤ幅方向の長さの和が、該ビードワイヤのタイヤ幅方向の長さの20%以上であり、タイヤ幅方向断面にて、前記ビードコアのタイヤ径方向下側及び上側の輪郭線は直線状に延びることを特徴とする空気入りタイヤである。
かかる空気入りタイヤにあっては、ビードコア内のタイヤ幅方向の両側で隣接するビードワイヤが相補的形状部としての凸部と凹部により互いに係合しているので、相互に応力を伝達し易い。そのため、空気充填時や経時変化時等にビードコアに付加される回転応力は効率的に分散され、ビードコア全体としての回転変化は小さくなる(即ち、回転剛性が大きくなる)。また、ビードコアに回転応力が付加された場合に、上記凸部と凹部はタイヤ幅方向において隣接するビードワイヤの移動を制限するよう作用するため、ビードワイヤのタイヤ径方向への移動は抑制される。この結果、ビードコアに回転応力が付加された際の各ビードワイヤの、タイヤ幅方向断面における張力分布は均一化される。
また、かかる空気入りタイヤにあっては、ビードワイヤは、タイヤ幅方向断面にて、タイヤ径方向に対して傾斜して直線状に延びるとともに相互に平行する二つの直線部を有し、凸部と凹部は、二つの直線部間に配置されている
また、かかる空気入りタイヤにあっては、凸部と凹部は、二つの直線部間の全体に亘って延びるように配置されている。
さらに、かかる空気入りタイヤにあっては、ビードワイヤの凸部と凹部のタイヤ幅方向の長さの和が、該ビードワイヤのタイヤ幅方向の長さの20%以上とされている。
また、かかる空気入りタイヤにあっては、タイヤ幅方向断面にて、ビードコアのタイヤ径方向下側及び上側の輪郭線は直線状に延びている。さらに、ビードワイヤの直線部から相補的形状部への遷移領域に形成される角部は面取りされていることが好ましい。ここでいう「面取り」には、上記角部に直線状の傾斜をつけることのみならず、丸みをつけることも含む。
さらに、タイヤ幅方向断面にて、ビードコアのタイヤ径方向下側の輪郭線とタイヤ径方向とのなす角を75度以上90度以下の範囲にすることが好ましい。
さらに、タイヤ幅方向断面にて、ビードワイヤの横幅はその縦幅よりも大きいことが好ましい。ここでいう「縦幅」とはタイヤ幅方向断面においてビードワイヤのタイヤ径方向の長さを指し、また「横幅」とはビードワイヤのタイヤ幅方向の長さを指すものとする。
さらに、隣接するビードワイヤは、互いに接触していることが好ましい。
さらに、ビードコアは、ビードワイヤを金属帯により、又は該ビードコアの延在方向に螺旋状に巻回されたテキスタイルにより集束固定してなることが好ましい。
さらに、ビードコアは、複数本のビードワイヤをタイヤ径方向に積層状に複数回巻回したものをタイヤ幅方向に並列に配置して構成したものであり、同一ビードワイヤの巻き始め端と、巻き終わり端とのタイヤ周方向位置が異なることが好ましい。
さらに、ビードコアは、複数本のビードワイヤをタイヤ径方向に積層状に複数回巻回したものをタイヤ幅方向に並列に配置して構成したものであり、各ビードワイヤの巻き始め端及び巻き終わり端のタイヤ周方向位置がそれぞれ相互に異なる好ましい。
さらに、ビードコアの、タイヤ幅方向における断面形状は、平行四辺形又は長方形であることが好ましい。
さらに、ビードコアとカーカスとの間、及びビードコアのタイヤ径方向上側の少なくとも一方に、85Hs以上のゴム硬度を有するゴム部材を配置することが好ましい。なおここでいう「ゴム硬度」は、JIS K6253に従う、デュロメータ硬さ・タイプA試験機を用いて、試験温度23℃にて測定したときのゴム硬さを意味する。
この発明によれば、ビードコア全体としての回転剛性を大きくしてカーカス引き抜けを抑制することができ、従ってビード部の耐久性は顕著に向上する。
図1は、リムに適用されたこの発明に従う実施の形態の空気入りタイヤのビード部をタイヤ幅方向断面にて示す断面図である。 図2は、図1に示すビードコアの一部を拡大して示す拡大断面図である。 図3は、この発明の空気入りタイヤに好適に適用可能な種々のビードワイヤを例示するタイヤ幅方向の断面図である。 図4は、この発明の空気入りタイヤに好適に適用可能な種々のビードワイヤを例示するタイヤ幅方向の断面図である。 図5は、この発明の空気入りタイヤに好適に適用可能な種々のビードワイヤを例示するタイヤ幅方向の断面図である。 図6(a)〜(c)は、この発明の空気入りタイヤに好適に適用可能な種々のビードワイヤを例示するタイヤ幅方向の断面図である。 図7(a)は、この発明の空気入りタイヤに好適に適用可能なビードコアの模式的な側面図であり、図7(b)は、図7(a)に示すビードコアのタイヤ幅方向断面を模式的に示す断面図である。 図8(a)、(b)は、それぞれこの発明に従う空気入りタイヤに好適に適用可能なビードコアの巻き始め端及び巻き終わり端を模式的に示す斜視図である。 図9は、リムに適用されたこの発明に他の従う実施の形態の空気入りタイヤのビード部をタイヤ幅方向断面にて示す断面図である。 図10は、リムに適用されたこの発明に他の従う実施の形態の空気入りタイヤのビード部のタイヤ幅方向の断面図である。
符号の説明
1 ビード部
2 ビードコア
3 ビードワイヤ
4 カーカス
5 リム
7 直線部
7a 上側直線部
7b 下側直線部
8a、8b 輪郭線
9 相補的形状部
9a 補完形状部
9b 被補完形状部
10 角部
11 金属帯
15 巻き始め端
17 巻き終わり端
19 高硬度ゴム
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここに図1は、リムに適用されたこの発明の一実施形態の空気入りタイヤ(以下「タイヤ」という)のビード部のタイヤ幅方向断面を示す断面図である。図2は、図1のビードコアを拡大して示す拡大断面図である。
この実施形態のタイヤは、図1に示すように、慣例に従いビード部1と、カーカス4と、図示しないトレッド部の補強に供される、カーカス4のクラウン部外周を取り囲んで積層した、図示しないゴム被覆スチールコードの複数層からなる図示しないベルト層とを具える。カーカス4は、ラジアルカーカス又はバイアスカーカスの何れでも良い。また、カーカス4は、例えばスチールコードをラジアル配列又はバイアス配列してなるプライを、一対のビードコア2間に亘ってトロイド状に跨って配置し、ビードコア2の周りにタイヤの内から外へ巻き返すことによって、ビードコア2にその両端が固定されている。
ここでは、ビードコア2は、タイヤ幅方向に複数列(例えば、8列)に並列する環状のビードワイヤ3を複数段(例えば、6段)の積層状に積み重ねてなるものである。そして、図2に示すように、各ビードワイヤ3(ここでは、説明の便宜上、図2の紙面向かって左側からビードワイヤ3a、ビードワイヤ3b及びビードワイヤ3cとする)は、タイヤ幅方向断面において、タイヤ径方向に対して傾斜して直線状に延びる直線部7と、相互に隣接するビードワイヤ3a,3b,3c間で形状的に相互に補完し合う相補的形状部9とを具えてなる。直線部7は、タイヤ径方向の上側(紙面向かって上側)と下側(紙面向かって下側)に相互に平行して延びる上側直線部7a及び下側直線部7bを有する。相補的形状部9は、ビードワイヤ3の二つの直線部7a、7b間に配置され、隣接する他のビードワイヤ3を補完する部分である補完形状部9aと、隣接する他のビードワイヤ3の補完形状部9aに補完される被補完形状部9bとで構成される。例えば、ビードワイヤ3bは、凸状をなすその補完形状部9aにて隣接するビードワイヤ3aの凹状の被補完形状部9bを補完し、その一方で反対側に隣接するビードワイヤ3cの補完形状部9aによって補完されている。なお、これらタイヤ幅方向に相互に隣接するビードワイヤ間の相互補完的な係合は、それらビードワイヤ間において完結するものである。つまり、図2に示すように、それぞれの補完形状部9a及び被補完形状部9bにより、ビードワイヤ3aとビードワイヤ3bとが、及びビードワイヤ3bとビードワイヤ3cとが係合される。
かかる実施形態の空気入りタイヤにあっては、隣接するビードワイヤ3は補完形状部9a及び被補完形状部9bを介して互いに係合しているので、相互に応力を伝達し易い。よって、空気充填時や経時変化時等にビードコア2に回転応力が付加されても、かかる回転応力は各ビードワイヤ3間に効果的に分散され、ビードコア2全体として回転変形は小さくなり、言い換えれば回転剛性は大きくなる。また、ビードコア2に回転応力が付加された場合に、上記相補的形状部9は隣接するビードワイヤ3の移動を制限するよう作用するため、ビードワイヤ3のタイヤ径方向への移動は抑制される。この結果、ビードコア2に回転応力が付加された際の各ビードワイヤ3の、タイヤ幅方向断面における張力分布は均一化される。
このようにこの発明の空気入りタイヤによれば、互いに隣接するビードワイヤ3間に相補的形状部9を形成することにより、ビードコア全体としての回転剛性を大きくしてカーカス4の引き抜けを抑制することができ、従って、ビード部1の耐久性は顕著に向上する。
次に、この発明に好適に利用可能な種々のビードワイヤ3について図3〜6に基づいて説明する。
上述したように、補完形状部9a及び被補完形状部9bの形状は、隣接するビードワイヤ3同士を形状的に相互に補完し得るものであれば良いので、それらは、図1及び2に限定されるものではない。例えば、図3(a)〜(u)に示すように、凸部及び凹部が複数であったり、曲線状であったり、キー及びキー溝型であったりしても良い。図3(a)〜(d)、(i)〜(l)及び(m)〜(q)では、相補的形状部9は、二つの直線部7a、7b間に全体に亘って延在している。これによれば、各ビードワイヤ3の相補的形状部9は、二つの直線部7a、7b間に全体に亘って延在しているので、空気充填時や経時変化時等に起因した回転応力がビードワイヤ3に付加されても、相補的形状部9に局所的に力が加わることがなく、すなわち相補的形状部9に加わる力は効果的に分散される。その結果、ビードワイヤ3の変形量は少なくなり、回転剛性はさらに高まる。図3(e)〜(h)に示すビードワイヤ3は、タイヤ幅方向断面にて、同一形状の二つの方形S、Sをずらして重ねてなる輪郭形状を有するものである。また、ビードワイヤ3は、図3(a)及び(b)に示すように、タイヤ径方向に上下に隣接するビードワイヤ3は左右に揃えて配置しても良く、又は図3(c)及び(d)に示すように左右にずらして配置しても良い。
また、図3に示す例では、タイヤ幅方向断面にて、ビードコア2のタイヤ径方向上側及び下側の輪郭線8a、8bは直線状に延びている。これによれば、ビードコア2のタイヤ径方向下側及び上面に凹凸が生じることがなく、ビードワイヤ3を束ねて使用する場合に形状くずれし難いので、すなわちビードコアの断面形状の安定性が高まるので、加硫時のビードコア2の崩れが抑制される。しかも、リムからの押圧力がビードワイヤ3の特定の箇所に集中することがないため、ビードワイヤ全体に均等に力がかかり、これらによって構成されるビードコア全体にも均等に力がかかることになるので、回転剛性としては高いものになる。加えて、下側の輪郭線8bとタイヤ径方向とのなす角度は、75度以上90度以下の範囲にあることが好ましい(特に、図3(a)参照)。このようにすれば、ビードワイヤ3を巻回してビードコア2を形成した際にビードコア2に所定のテーパ角度与え、ひいてはリムと当接するビード部1の下部に適正なテーパ角度を与えることができる。
図4(a)〜(e)に示す例は、タイヤ幅方向断面にて、隣接するビードワイヤ3間での相補的な係合が、タイヤ径方向に隣接するビードワイヤ3間で行われるものである。
図5(a)〜(e)に示す例では、少なくとも、ビードコアの直線状の輪郭線を構成するビードワイヤの直線部7a、7bから該ビードワイヤの相補的形状部への遷移領域に形成される角部10は、面取りされている。このようにすれば、ビードコアに回転応力が生じた際の当該角部10に加わる応力を効果的に分散させることができるので、ビードコアの耐久性をさらに向上させることができる。なお、このような観点からビードワイヤ3の全ての角部を面取りすることがより好ましい。
図6(a)に示す例では、ビードワイヤ3は、タイヤ幅方向断面における該ビードワイヤ3の重心Pに関して点対称をなすものである。このようにすれば、ビードワイヤ3に回転応力が加わった際に、かかる重心Pを基点に引張力と圧縮力とを均等に分配することができるので、ビードワイヤ3の回転時におけるビードワイヤ3の変形を抑制することができ、その結果、ビードコアの回転剛性を一層高めることができる。
図6(b)に示す例では、タイヤ幅方向断面にて、ビードワイヤ3の横幅Wはその縦幅Hよりも大きい。これによれば、タイヤ径方向への巻きつけ回数を多くすることができるので、ビードワイヤ3の端部における応力集中の影響を効果的に低減してビード部1の耐久性を向上させることができる。
加えて、図2及び図6(c)に示す例では、ビードワイヤの相補的形状部のタイヤ幅方向の長さ、すなわち隣接するビードワイヤがタイヤ幅方向で係合している長さの総和(ここでは、補完形状部9aのタイヤ幅方向の長さXと被補完形状部9bのタイヤ幅方向の長さXとを足したもの)は、該ビードワイヤのタイヤ幅方向の長さXの20%以上である。このようにすれば、十分な係合力が得られるので、ビードコアの回転剛性をさらに効果的に高めることができる。
ところで、上記の実施形態では、隣接するビードワイヤ3は互いに直接的に接触しているが、隣接するビードワイヤ間に被覆ゴム等を介在させることもできる(図示せず)。しかしならが、被覆ゴムの経時的なクリープ変形に起因するビードコア2の形状くずれを防止するという観点からは、隣接するビードワイヤ3を互いに直接接触させることが好ましい(図1〜4参照)。このように、隣接するビードワイヤ3を相互に直接接触させることで、被覆ゴムを介在させた場合に比べてビードコア2の全体としての経時的変化を小さくすることができるので、さらにカーカス4の引き抜けを抑制することができるとともにカーカス4の端部の歪みを小さくすることができる。
また、図7(a),(b)に示すように、ビードコア2は、金属帯11により集束固定されていることが好ましい。このようにすれば、加硫時及び走行時のビードコア2の形状崩れを抑制することができる。なお、金属体11には例えば、スチールやアルミニウム合金製のものが好適に採用できる。またこれに代えて、例えば、ナイロン、レーヨン、ポリエステル等のテキスタイルを用いることもできる。
さらに、図7(a)に示すように、ビードコア2は、複数本のビードワイヤ3をタイヤ径方向に積層状に複数回巻回したものをタイヤ幅方向に並列に配置した上で、同一ビードワイヤ3の巻き始め端15と、巻き終わり端17とのタイヤ周方向位置を相互に異ならせることが好ましい。このように複数本のビードワイヤ3で構成されるビードコア2は、1本のビードワイヤ3をタイヤ径方向に順次巻回して構成されたビードコア2に比べ、ビードコア2の生産に要する時間が大幅に短縮できる。しかしながら、ビードワイヤ3の巻き始め端15や巻き終わり端17がビードコア2周上の一箇所に集中すると、この段差に応力集中しやすく破壊強度の低下を招き、特に巻き始め端15が曲げ応力の支点となりビード部1の損傷を起こすことがある。そこで、同一ビードワイヤ3の巻き始め端15と巻き終わり端17とをタイヤ周方向位置で異ならせることにより、ビードコア2の生産効率を向上させつつ、応力集中を低減させることができる。この場合、図7(a)に示すように、巻き始め端15及び巻き終わり端17とビードコア2の中心点Cとをそれぞれ結んでなる線分が相互に交わってなる角度θを、40度以上80度以下の範囲内にすることが好ましく、特には60度とすることが好ましい。なぜなら、この角度θが40度未満の場合は、応力集中の低減の効果が十分でなく、80度を超えるとビードコア2の周上の重量バランスを低下させタイヤのユニフォミティーが悪化するからである。
さらに、ビードコア2は、図8(a)、(b)に示すように複数本のビードワイヤ3をタイヤ径方向に積層状に複数回巻回したものをタイヤ幅方向に並列に配置した上で、各ビードワイヤ3の巻き始め端15及び巻き終わり端17のタイヤ周方向位置をそれぞれ相互に異ならせることが好ましい。ビードコア2を複数本のビードワイヤ3で構成すると生産効率の面から有利であることは、上述の通りである。しかしながら、各ビードワイヤ3の巻き始め端15及び巻き終わり端17のタイヤ周方向位置がそれぞれ相互に同一の場合、すなわちこれら端15及び17がタイヤ幅方向に揃っている場合、これら段差に応力集中しやすく破壊強度の低下を招くとともに応力の支点となりビード部1の損傷を起こすことがある。そこで、各ビードワイヤ3の端15及び17を、周方向位置でそれぞれに異ならせることで、ビードコア2の生産効率を向上させつつ、応力集中を低減させることができる。
さらに、ビードコア全体の、タイヤ幅方向における断面形状は、図3(a)及び(b)に示すような長方形又は図3(c)及び(d)に例示すような平行四辺形であることが好ましい。このようにすれば、ビードコア全体の断面形状として成型し易い形状となる。
さらに、図9に示すように、ビードコア2とカーカス4との間、及びビードコア2のタイヤ径方向上側の少なくとも一方に、85Hs以上のゴム硬度を有する高硬度ゴム19を配置することが好ましい。一般に、ゴム硬度の高いゴムは、低いゴムに比べて加硫時の流動が小さいことから、このように、ビードコア2とカーカス4との間に高硬度ゴム19を配置すれば、加硫時のビードコア周辺のゴムの流動を小さくすることができ、ビードコア2の崩れを抑制することができる。また、ビードコア2のタイヤ径方向上側に高硬度ゴム19を配置することで、荷重負荷時のビード部1の倒れ込みを抑制し、ビード部1内に発生するせん断歪みを小さくすることができるので、ビード部1の耐久性を向上させることができる。
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したに過ぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。例えば、ビードコア2の周りにタイヤの内から外へ巻き返して配置されたカーカス4を、図10に示すようにさらにビードコア2の周りを包囲するように配置させても良く、このようにすればカーカス4をさらに引き抜かれ難くし、ビード部1の耐久性を一層高めることができる。また、ビードワイヤ3のタイヤ幅方向断面における断面形状も、この明細書に例示的に示したものには限られるものではない。
次に、この発明の効果を確認するために、この発明に従うタイヤ(実施例)及び従来技術のタイヤ(従来例)を試作し以下の試験により比較検討を行った。
試験に用いたタイヤはいずれも、タイヤサイズ11R22.5のチューブレスのトラック・バス用ラジアルタイヤであり、以下の諸元を有する。
実施例1のタイヤは、図1に示したビード部を有するタイヤであり、ビードコアは、図5(a)に示すタイヤ幅方向断面を有する金属製のビードワイヤを、図1に示す向きにタイヤ幅方向8本並列に配置し、そしてタイヤ径方向に6層に巻き重ね金属帯により集束固定されてなる。なお、各ビードワイヤ間は、直接接触しており、ビードワイヤの直線部とタイヤ径方向のなす角度(ビードコアのタイヤ径方向下側の輪郭線とタイヤ径方向とのなす角度)は75度であり、同一ビードワイヤの巻き始め端と、巻き終わり端との周方向位置は異なり、具体的には、巻き始め端及び巻き終わり端とビードコアの中心点とをそれぞれ結んでなる線分が相互に交わってなる角度(図7(a)参照)は、60度であり、各ビードワイヤの巻き始め端及び巻き終わり端のタイヤ周方向位置はそれぞれ相互に異なるものである。また、このタイヤは、1層のカーカスの両端部がビードコアの周りにタイヤ内側から外側に折り返され、トレッド部のカーカス外周側には4層のベルト層を配置した構成である。なお、ビード部以外の構造については慣例の空気タイヤに従うものであり説明を省略する。
実施例のタイヤは、ビードワイヤが、図5(c)に示すタイヤ幅方向断面を有することを除いて実施例1タイヤと同じ構成を有する。
実施例のタイヤは、ビードワイヤが、図5(d)に示すタイヤ幅方向断面を有することを除いて実施例1〜のタイヤと同じ構成を有する。
従来例1のタイヤは、上記図5(a)〜(e)に示すビードワイヤに代えて丸素線のビードワイヤを用いてビードコアを構成したものである(図示せず)。すなわちビードコアは、実施例1〜と同一金属製の1.8mm径の1本のビードワイヤをタイヤ径方向内側から順に、7、8、9、8、7及び6列となるようにタイヤ幅方向及びタイヤ径方向にコイル状に巻き重ねてなり、その断面形状は六角形である。なお、ビードワイヤの巻き数は、上記実施例1〜のタイヤ幅方向断面におけるビードワイヤの総断面積と同一となるように決定されている。また、その以外の構成は、実施例1〜のタイヤと同じである。
これらの各試験タイヤを以下に示す方法により、ビードコアの回転変化及びビード部の耐久性の試験を行った。
(ビードコアの回転変化試験)
ビードコアの回転変化試験は、上記タイヤをサイズ8.25のリムに装着し、内部に空気圧を加える前と700kPa(相対圧)の空気圧を付与したときのタイヤ幅方向断面におけるビードコアをそれぞれCTスキャン装置を用いて撮影し、ビードコアの相対的な角度変化を計測した。その結果を表1に示す。
(耐久性試験)
ビード部の耐久性試験は、上記タイヤを同じくサイズ8.25のリムに装着し、室温が45℃の下、内部に700kPa(相対圧)の空気圧を適用し、室内ドラム試験機を用い、これらタイヤを57kNの荷重(正規荷重の180%)の作用下で60km/hの速度で負荷転動させ、ビード部1が故障するまでの走行距離を計測した。その結果を表1に示す。
Figure 0005410275
表1の結果から明らかなように、タイヤ幅方向に隣接するビードワイヤを相補的な形状により相互に係合することにより、ビードコア全体の回転剛性が向上し、ビード部の耐久性が著しく向上することが確認された。
以上の説明から明らかなように、この発明によって、ビードコア全体としての回転剛性を大きくしてカーカス引き抜けを抑制することができ、もってビード部の耐久性の向上が可能な空気入りタイヤを提供することが可能となった。

Claims (10)

  1. タイヤ周方向に延びる複数本のビードワイヤで構成してなるビードコアを埋設した一対のビード部と、該ビード部からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨って延びるトレッド部とを具え、これら各部に亘ってトロイド状に延び、両端部を前記ビードコアの周りに折り返してなるカーカスを有する空気入りタイヤにおいて、
    タイヤ幅方向断面にて、前記ビードワイヤは、タイヤ径方向に対して傾斜して直線状に延びるとともに相互に平行する二つの直線部と、前記二つの直線部間の全体に亘って延びるとともにタイヤ幅方向の両側において隣接するビードワイヤとそれぞれ相互に補完的に係合する凸部及び凹部と、を有し、
    前記凸部と前記凹部のタイヤ幅方向の長さの和が、該ビードワイヤのタイヤ幅方向の長さの20%以上であり、
    タイヤ幅方向断面にて、前記ビードコアのタイヤ径方向下側及び上側の輪郭線は直線状に延びることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記ビードワイヤの前記直線部から前記凸部及び前記凹部への遷移領域に形成される角部は面取りされている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. タイヤ幅方向断面にて、前記ビードコアのタイヤ径方向下側の前記輪郭線とタイヤ径方向とのなす角は75度以上90度以下の範囲にある、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. タイヤ幅方向断面にて、前記ビードワイヤの横幅はその縦幅よりも大きい、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 隣接する前記ビードワイヤは、互いに接触している、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ビードコアは、前記ビードワイヤを金属帯により、又は該ビードコアの延在方向に螺旋状に巻回されたテキスタイルにより集束固定してなる、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記ビードコアは、複数本の前記ビードワイヤをタイヤ径方向に積層状に複数回巻回したものをタイヤ幅方向に並列に配置して構成したものであり、同一ビードワイヤの巻き始め端と、巻き終わり端とのタイヤ周方向位置が異なる、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記ビードコアは、複数本の前記ビードワイヤをタイヤ径方向に積層状に複数回巻回したものをタイヤ幅方向に並列に配置して構成したものであり、各ビードワイヤの巻き始め端及び巻き終わり端のタイヤ周方向位置がそれぞれ相互に異なる、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記ビードコアの、タイヤ幅方向における断面形状は、平行四辺形又は長方形である、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記ビードコアと前記カーカスとの間、及び前記ビードコアのタイヤ径方向上側の少なくとも一方に、85Hs以上のゴム硬度を有するゴム部材を配置した、請求項1〜の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
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