JP2005178669A - 重荷重用タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】 軽量化を図りつつビード部の耐久性を向上する。
【解決手段】 カーカスプライ6Aの折返し部6bが、ビードコア5のタイヤ軸方向内側面Si、半径方向内面SL及び軸方向外側面Soに沿って折れ曲がる折返し主部10と、ビードコア5から離間してのびる折返し副部11とからなる。折返し副部11は、ビードコア5のタイヤ半径方向外面SUに対して90°未満の角度θで本体部6aに向かって傾いてのびる。折返し副部11は、その少なくとも一部に、前記本体部6aのスチールコード間を通った突き抜けスチールコードSC1を含む。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ビード部の耐久性を向上しうる重荷重用タイヤに関する。
重荷重用タイヤは、充填される空気圧が高く、かつ、負荷荷重も大きい過酷な条件で使用される。このため、大きな荷重を負担することとなるビード部は強固に補強されており、その厚さも大きく重量も非常に大きい。近年、このような重荷重用タイヤの重量を軽減するために、例えば図9に示されるように、トロイド状の本体部b1と、その両端部に連設されビードコアcの回りで略一周巻きされた折返し部b2とからなるカーカスプライbを具えた重荷重用タイヤが下記特許文献1ないし2により提案されている。
特開平11−321244号公報 特開2000−219016号公報
上記ビード構造では、折返し部b2の外端は、タイヤ負荷走行時の歪が小さいビードコアcの周囲近傍に設けられるため、走行中の歪の影響を受け難い。従って、折返し部b2の外端を起点としたコードルース等の損傷も生じ難い。またカーカスプライbの折返し部b2の長さを小さくできるため、タイヤ重量の軽量化にも役立つ。
しかしながら、上記ビード構造は、前記折返し部b2の長さが小でありかつ折れ曲がりの度合いが大きいため、例えば生タイヤ成形工程などにおいて、前記折返し部b2の折れ曲がりが元に戻ろうとする。その結果、ビードコアbとの間に空隙が生じ易く、空気残りなどの成形不良を発生させやすい。このような成形不良は、折返し部b2がつるべ状に本体部b1に引き抜かれるいわゆる吹き抜け現象を誘発するという欠点がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、カーカスプライの折返し部において、その少なくとも一部に、本体部のスチールコード間を通ってタイヤ内腔側に突き抜ける突き抜けスチールコードを含ませることを基本として、本体部と折返し部の拘束力を大とし、折返し部の吹き抜けなどを抑制することによりビード耐久性を向上しうる重荷重用タイヤを提供することを目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、一対のビードコア間を跨るトロイド状の本体部に前記ビードコアの回りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部が連設された少なくとも1枚のスチールコードのカーカスプライを含むカーカスを具えた重荷重用タイヤであって、前記折返し部は、前記ビードコアのタイヤ軸方向内側面、タイヤ半径方向内面及びタイヤ軸方向外側面に沿って折れ曲がる折返し主部と、該折返し主部に連なり前記ビードコアから離間してのびる折返し副部とを有し、前記折返し副部は、前記ビードコアのタイヤ半径方向外面に対して90°未満の角度θで前記本体部に向かって傾いてのびるとともに、該折返し副部は、その少なくとも一部に、前記本体部のスチールコード間を通った突き抜けスチールコードを含むことを特徴としている。
また請求項2記載の発明は、前記折返し副部は、前記突き抜けスチールコードのみで構成されることを特徴とする請求項1記載の重荷重用タイヤである。
また請求項3記載の発明は、前記折返し副部は、外端が前記本体部の手前で終端する非突き抜けスチールコードと、前記突き抜けスチールコードとを含み、かつ、前記突き抜けスチールコードは、少なくとも一方のビード部において前記折返し副部のスチールコード数の1/3以上であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用タイヤである。
また請求項4記載の発明は、前記ビード部は、少なくとも1枚のスチールコードからなるビード補強層が設けられるとともに、該ビード補強層は、前記カーカスプライの本体部のタイヤ軸方向内側をのびかつ前記突き抜けスチールコードの外端よりもタイヤ内腔側に配された内片部を少なくとも含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤである。
また請求項5記載の発明は、前記折返し副部は、そのスチールコードの外端から前記ビードコアの外面までの最短距離が5〜12mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用タイヤである。
また請求項6記載の発明は、前記折返し副部は、そのスチールコードの外端が、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の正規状態におけるタイヤ子午線断面において、リム離反点を通り前記本体部に引いた法線から該本体部に沿って2〜12mmの距離を隔てて内側に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の重荷重用タイヤである。
なお「リム離反点」とは、タイヤ子午線断面において、ビード部とリムとが最もタイヤ半径方向外側で接触する点とする。
本発明の重荷重用タイヤは、カーカスプライの折返し副部が、タイヤの負荷走行時の歪の小さい限定されたビードコアの周囲領域に設けられるため、走行時の大きな歪の影響を受け難い。これは、ビード耐久性に有利である。また折返し副部は、その少なくとも一部に、本体部のスチールコード間を通る突き抜けスチールコードを含んでいる。突き抜けスチールコードの動きは、本体部のカーカスコード間で拘束されることにより、折返し部の吹き抜けが防止される。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の重荷重用タイヤの自然状態を示す断面図、図2はそのビード部を拡大して示す部分的な断面図である。ここで、自然状態とは、タイヤを正規リムJにリム組みしかつ50kPaの内圧を充填した無負荷の状態とする。また本明細書において、前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。本実施形態の正規リムJは、JATMAでいう15゜深底リム(いわゆる15゜テーパリム)である。
また内圧を50kPaとしたのは、重荷重用タイヤ1の自然な姿勢を一義的に特定するためである。特に断りがなき場合、各部の寸法はこの自然状態の下で測定されたものとする。また重荷重用タイヤ1は、この例ではチューブレスタイプの空気入りタイヤが例示されている。
重荷重用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内方に配されるベルト層7とが設けられたものが例示される。
前記カーカス6は、本実施形態では、スチールコードSC(図2に示す)からなるカーカスコードをタイヤ赤道に対して80〜90°(この例では実質的に90゜)の角度で配列した少なくとも一枚(この例では1枚)のカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライの枚数については特に1枚に限定されるものではない。またカーカスプライ6Aの折返し構造の詳細については後で述べる。
図2ないし図3に拡大して示されるように、ビードコア5は、本実施形態ではスチール製のビードワイヤ16(この例では断面円形のスチール素線である)を多段多列に渦巻き状に巻き束ねることにより形成されたリング状体で構成されたものが例示される。ビードコア5の断面形状は特に制限はないが、この例では断面横長とした偏平六角形状のものが例示される。この断面略六角形状のビードコア5については、その横断面において、タイヤ半径方向内側の長片を形成する面をビードコア5のタイヤ半径方向内面SLとし、他の長辺を形成する面をビードコア5のタイヤ半径方向の外面SUとする。またビードコア5の前記内面SLと前記外面SUとの間をタイヤ軸方向内側で継ぐ折れ線状の屈曲辺を形成する面をビードコアのタイヤ軸方向の内側面Siとし、反対側の屈曲辺をタイヤ軸方向外側面Soとする。
ビードコア5の前記横断面において、前記内面SLは、正規リムJのリムシートJ1のシート面と略平行にのびている。これは、ビード部4とリムシートJ1との間の嵌合力を広範囲に亘って高めるのに役立つ。上で述べたとおり、正規リムJはチューブレスタイヤ用の15°深底リムである。従って、ビードコア5の前記内面SL及び外面SUは、いずれもタイヤ軸方向線に対して略15°の角度で傾いている。「略」としているのは、製造時の誤差を考慮するもので少なくとも前記角度から±2゜の誤差は許容される。ビードコア5の断面形状は、必要に応じて正六角形、矩形状、円形状としうる。ビードコア5の断面が円形状の場合、それを囲む一辺がタイヤ軸方向に沿った正方形ないし長方形を仮想定義し、その対角線で区切られる領域に前記内面SL、外面SU、内側面So及び外側面Siを割り当てることができる。
前記ベルト層7は、少なくとも2枚、好ましくは3枚以上、さらに好ましくは(また本実施形態では)4枚のベルトプライ7A、7B、7C及び7Dから構成される。各ベルトプライ7Aないし7Dは、いずれもベルトコードとしてスチールコードが採用されている。タイヤ半径方向の最内側に配置された第1のベルトプライ7Aは、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば60±15°の角度で配列されている。またその外側に順次配された第2ないし第4のベルトプライ7B、7C及び7Dは、ベルトコードがタイヤ赤道Cに対して例えば10〜35°の角度で配列される。第1ないし第4のベルトプライ7A、7B、7C及び7Dは、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所を1箇所以上設けて重ねられる。
前記カーカスプライ6Aは、一対のビードコア5、5間(図では片側のビードコアのみが表示されている。)を跨るトロイド状の本体部6aと、その両側に連設されかつビードコア5の回りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとで構成される。
また折返し部6bは、図2ないし図3に拡大して示されるように、ビードコア5のタイヤ軸方向内側面Si、タイヤ半径方向内面SL及びタイヤ軸方向外側面Soに沿って折れ曲がる折返し主部10と、該折返し主部10に連なりビードコア5から離間してのびる折返し副部11とから構成される。本実施形態の折返し主部10は、滑らかな湾曲形状でビードコア5の前記内側面Si、タイヤ半径方向内面SL及びタイヤ軸方向外側面Soに沿った例が示されている。
前記折返し副部11は、ビードコア5のタイヤ半径方向外面SUに対して90°未満の角度θで傾いて前記本体部6aに向かってのびる。図3に拡大して示されるように、折返し副部11は、ビードコア5のタイヤ半径方向外面SU(ないしその延長線)よりも半径方向外側の部分である。前記角度θを90°未満としたのは、該角度θが90゜以上になると、折返し副部11の外端E1(折返し副部11のスチールコードの外端であり、以下同じである。)が走行時の歪の大きい領域に接近しやすいためである。特に好ましくは、前記角度θは75゜以下が望ましい。また角度θの下限は特に制限はないが、成形時のスプリングバックを抑制する観点より、好ましくは30°以上、より好ましくは60゜以上が望ましい。
また本実施形態の折返し副部11は、逆V字状に折れ曲がる屈曲線状のものが例示されるが、直線状や滑らかな曲線状で形成しても良い。折返し副部11が本実施形態のように屈曲線状(又は曲線状等)の場合、前記角度θは、その折返し副部11のスチールコードSCにおいて、ビードコア5の半径方向外面SUないしその延長線に交わる折返し副部11の下端Pと折返し副部11の外端E1とを結ぶ直線Fと、ビードコア5のタイヤ半径方向外面SUとが挟む角度とする。
また図3に拡大して示したように、ビードコア5は、断面円形のビードワイヤ16が巻き回されたものであるから、そのタイヤ半径方向外面SUの断面形状は半円弧をタイヤ軸方向につなげたような輪郭となる。従って、この外面SUからの相対的な距離や、外面に対する角度などを測定する際には、外面SUに引いた接線Kを基準とする。さらに図3に誇張して示されるように、ビードワイヤ16が一直線状に整一せずにタイヤ半径方向内外にばらつく場合、ビードコア5のタイヤ半径方向外面SUに1本の接線を引くことができない。この場合、前記接線Kは、前記ビードコア5のタイヤ半径方向外面SUをなすビードワイヤ列のうちでタイヤ軸方向最外側に位置するビードワイヤ16oとタイヤ軸方向最内側に位置するビードワイヤ16iとに接する接線で近似する。
また折返し副部11は、図2に示されるように、その外端E1からビードコア5のタイヤ半径方向外面SUまでの最短距離Laが5〜12mmに設定される。該最短距離Laが5mm未満であると、折返し主部10に対して折返し副部11のスプリングバックが生じやすいため、生カバーの成形性を悪化させたりまた加硫中に折返し副部11とビードコア5の外面SUとの間に空気溜まりが形成され易いため好ましくない。逆に前記最短距離Laが12mmを超える場合、折返し副部11の外端E1に、タイヤ変形時の応力が強く作用する傾向があなり、該外端を起点としたコードルース等の損傷が生じやすくなる。特に好ましくは、前記最短距離Laは7〜12mmが好ましい。
また重荷重用タイヤ1の折返し副部11は、図4ないし図5にゴム材を取り除いて部分的に示されるように、その少なくとも一部に、本体部6aに配列されたスチールコードSC、SC間を通る突き抜けスチールコードSC1を含んでいる。この実施形態では、折返し副部11の全てのスチールコードが本体部6aのスチールコードSC、SC間を通っており、従って、折返し副部11が突き抜けスチールコードSC1だけで構成されたものが例示される。
本体部6aに配列された一対のスチールコードSC、SC間には、それぞれ1本の突き抜けスチールコードSC1が通っている。またこの実施形態では、それぞれの突き抜けスチールコードSC1は、本体部6aのスチールコードSC、SC間を通りかつこの本体部6aのスチールコードSCよりもタイヤ内腔側に突き抜けたものが例示されている。つまり、突き抜けスチールコードSC1の外端(折返し副部11の外端E1と同義である。)は、本体部6aのスチールコードSCよりもタイヤ内腔側に近い位置にある。但し、突き抜けスチールコードSC1は、本体部6aのスチールコードSC、SC間に一部でも進入していれば足りる。勿論、突き抜けスチールコードSC1は、インナーライナーゴムが添着されたタイヤ内腔面に突き出すことなく終端させる必要がある。
また図5に示されるように、突き抜けスチールコードSC1と、本体部6aをのびるスチールコードSC、SCとは互いに接触しないよう配置される。従って、図示はしていないが、図4ないし図5のスチールコード間の小隙間にはトッピングゴムなどを含むゴム材が満たされる。かかるゴムは、スチールコード間のせん断力を緩和吸収しコードルースを防ぐ。
本体部6aをのびるスチールコードSCは、タイヤの負荷走行時において、突き抜けスチールコードSC1を拘束し、そのタイヤ周方向ないしタイヤ半径方向の動きを非常に小さなものとする。つまり、折返し副部11の外端E1に作用する歪は小さくなり、その結果、耐久性は向上する。さらに、このような重荷重用タイヤ1は、本体部6aをのびるカーカスコードSCによって突き抜けスチールコードSC1を拘束するという従来にはない作用が得られる結果、いわゆる吹き抜け現象に対して強い抵抗性を示し、とりわけ継続した負荷走行に伴ってビード内部の温度上昇が生じた場合において特に顕著な吹き抜け抵抗性が得られる。
なお折返し副部11は、必ずしも突き抜けスチールコードSC1だけで構成される必要はない。折返し部6b近傍のコード配列略図である図6に示されるように、折返し副部11は、外端E1が本体部6aのスチールコードSCの手前で終端した非突き抜けスチールコードSC2をも含むことができる。この態様は、スチールコード量が低減させ得るため、タイヤ重量を軽量化するのに役立つ。他方、非突き抜けスチールコードSC2の数が増えると、折返し副部11が本体部6aから得ることができる拘束力が低下する傾向がある。従って、突き抜けスチールコードSC1は、少なくとも一方のビード部4において、折返し副部11のスチールコード数の1/3以上、より好ましくは1/2以上とするのが望ましい。
また、折返し副部11において、突き抜けスチールコードSC1と、非突き抜けスチールコードSC2とを混在して用いる場合、タイヤのユニフォミティ(均一性)という観点より、例えば図7に示されるように、突き抜けスチールコードSC1がタイヤ周方向に並ぶ第1の領域Aと、非突き抜けスチールコードSC2がタイヤ周方向に並ぶ第2の領域Bとが、実質的にタイヤ周方向に均一に分布するように配置することが望ましいものである。
このような突き抜けスチールコードSC1を有する重荷重用タイヤ1は、例えば生カバー成形時において、未加硫のカーカスプライ6Aをビードコア5の回りで折り返した後、その折返し端を本体部6a側へと強く当接させることによって生カバーの段階で本体部6aのスチールコードSC、SC間に折返し副部11のスチールコードを通すことができる。そして、これにより得られた生カバーを、常法に従って加硫成形することにより製造することができる。また他の製造方法として、従来通り生カバーを成形した後、加硫成形中に本体部6aと折返し副部11とが互いに強く密着する局部的な圧力が加わるように、ブラダ及び/又は金型のプロファイルを改善することでも同様になし得る。このように、本発明の重荷重用タイヤ1を製造する方法は、特に限定されることなく種々の方法が採用できる。
また、本実施形態のカーカスプライ6Aの構造は、高荷重が負荷された際の本体部6aの倒れ込みに伴い、本体部6aのカーカスコードと突き抜け部11aのカーカスコードとが擦れ合うおそれがある。このようなコードフレッティングが長期に亘って継続して作用すると、局部的にカーカスコードの損傷を招く。このような観点より、本実施形態のビード部4には、少なくとも1枚のスチールコードプライからなるビード補強層8が設けられている。これにより、上述のようなフレッティングに伴うカーカスコードの損傷をより確実に抑制している。
本実施形態のビード補強層8は、例えばスチールコードをタイヤ周方向線に対して10〜40゜の角度で傾けて配列した1枚のスチールコードプライで構成されたものが例示される。
該ビード補強層8は、カーカスプライ6Aの本体部6aのタイヤ軸方向内側をのびる内片部8aと、この内片部8aに連なり前記折返し主部10に沿ってのびる中片部8bと、この中片部8bに連なりかつタイヤ半径方向外側にのびる外片部8cとから構成されたものが例示される。ただし、ビード補強層8としては、少なくとも前記内片部8aを有していれば足りる。
前記内片部8aは、前記突き抜けスチールコードSC1の外端E1よりもタイヤ内腔側に配されている。このような内片部8aは、突き抜けスチールコードSC1の外端E1に対していわゆる壁として機能し、該外端E1と本体部6aとの大きな相対位置の変化を抑制する。また同時に、突き抜け部11aの外端E1がインナーライナが貼付されたタイヤ内腔面まで貫通するのを効果的に防止しうる。さらに内片部8aは、荷重負荷時のカーカスプライ6Aの本体部6aと一体化し、そのタイヤ軸方向外側への倒れ込み量を抑制することができる。これにより、さらに折返し副部11の外端E1に作用する歪を低減するのに役立つ。このような作用を得るために、内片部の8aの外端E3のビードベースラインBLからの高さHiは、少なくとも突き抜けスチールコードSC1の外端E1の高さよりも大きい必要がある。
内片部8aの前記高さHiは、ビードコア5の最大高さHc(ビードベースラインBLからビードコア5のタイヤ半径方向の最外側位置までの高さ)に関連付けて述べれば、概ねその100%以上が望ましいものとなる。他方、前記高さHiが大き過ぎると、内片部8aの外端E3が、負荷走行時に応力が集中しやすい領域に達するおそれがあるため、前記高さHiの上限値は、前記下限値のいずれかとの組み合わせにおいてビードコア5の最大高さHcの300%以下、より好ましくは250%以下が望ましい。
また本実施形態では、内片部8aのコードと突き抜けスチールコードSC1の外端E1との間には、0.5〜1.5mm程度のインスレーションゴムを介在させることが望ましい。この場合、コード間に生じるせん断力を緩和とともに外端E3での歪を緩和してさらにビード部4の耐久性の向上を期待することができる。なおビード補強層8の内片部8aにおけるエンズe1(コード長手方向と直角方向の測定した幅5cm辺りのコード打ち込み本数)は、折返し副部11のエンズe2の0.5〜1.5倍、より好ましくは0.6〜1.0倍が望ましい。これにより、内片部8aをより確実に突き抜けスチールコードSC1に対する壁として機能させることが可能になる。
またビード補強層8のコード角度は、本体部6aの倒れ込みを減じるために、前述の通りタイヤ周方向線に対して10゜以上かつ40゜以下が望ましい。
前記中片部8bは、折返し主部10に接して配されており、ビードコア5とリムシートJ1との間で強く圧縮される。このような中片部8bは、内片部8aの位置ひいてはビード補強層8の位置を固定しかつ安定させるために特に望ましいものとなる。
また外片部8cは、その外端E2の高さが小さいと、ビード部4の曲げ剛性を高めるのが困難となり、特にリムフランジと接触する部分の領域の剛性を十分に確保し得ず、発熱時のゴム移動等の抑制が困難となる。このような観点より、外片部8cの外端E2のビードベースラインBLからのタイヤ半径方向高さHoは、ビードコア5の最大高さHcの100%以上が望ましい。他方、前記高さHoが過度に大きくなると、外片部8cの外端E2が、負荷走行時に歪の大きい領域に前記外端E2が位置して応力が集中しやすくなる傾向があるため好ましくない。このような観点より、外端E2の高さHoは、ビードコア5の最大高さHcの250%以下、より好ましくは220%以下が望ましい。
また図8には、本実施形態の重荷重用タイヤ1を正規リムJにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の正規状態におけるビード部4の断面略図が示されている。この正規状態において、折返し副部11のスチールコードの外端E1は、リム離反点Rを通り前記本体部6aに引いた法線Nから該本体部6aに沿って2〜12mmの距離Lcを隔てて内側に位置することが望ましい。タイヤの負荷走行時では、ほぼリム離反点Rを支点としてビード部4が屈曲変形するが、上記距離Lcを2mm以上確保することによって、前記スチールコードE1の外端E1に作用する歪をより確実に減じることができる。なお距離Lcが12mm以上になると、折返し副部11のスプリングバックなどが生じ易いため、特に好ましくは5〜10mmである。
また重荷重用タイヤ1は、カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとが囲む領域に、充填ゴム12が配される。充填ゴム12は、図3に示されるように、ビードコア5のタイヤ半径方向外面SUと折返し副部11と本体部6aとの間に配される断面略三角形状の領域に配される基部12Aと、ビードコア5と折返し主部10との間に配された比較的薄い断面略U字状の副部12Bとを含んでいる。副部12Bについては必要に応じて省略することができる。このような基部12Aは、成形時においては、折返し副部11が過度にビードコア5に接近するのを減じることにより折返し副部11のスプリングバックを抑え、しかも成形時に空気残りなどの成形不良が発生するのを防止する。
充填ゴム12は、その複素弾性率Eaが5〜15MPaの衝撃ないし応力緩和効果に優れる低弾性のゴム組成物により構成される。これにより、小さいながらも折返し副部11に作用する走行時の歪を効果的に吸収しコードルースの発生を防ぐのに役立つ。
前記複素弾性率Eaが5MPa未満であると、過度に柔らかくなってしまい、走行時における折返し部6bの動きが大きくなり、とりわけ昇温時のゴムの変形とともにに引きずられやすく吹き抜けなどを生じさせるおそれがある。逆に複素弾性率Eaが15MPaを越えると、柔軟性が損なわれ、走行時における本体部6aの倒れ込みにともなう歪をビードコア5の外面SU全体で緩和する能力が低下し、例えばビード補強層8の外片部8cの外端E2近傍でルースなどが生じやすくなる。このような観点より、充填ゴム12の複素弾性率Eaは、6MPa以上、より好ましくは7MPa以上が望ましく、同上限については12MPa以下、より好ましくは10MPa以下が望ましい。
また充填ゴム12は、加硫剤としての硫黄の配合量が4.0phr以上である高硫黄配合ゴムからなることが望ましい。硫黄が4.0phr以上配合されたゴムには、熱軟化し難い特性が与えられる。他方、硫黄の配合量が12phrを超えると、加硫が過度に促進されてゴム焼けが起こリやすくなる。従って、硫黄の配合量は、4.0〜12phrの範囲が好ましく、その下限値はより好ましくは5.0phr以上、また上限値はより好ましくは10phr以下が望ましい。なお一般のタイヤ用ゴム組成物の硫黄の配合量は、せいぜい1.0〜3.5phrである。
なお複素弾性率は、測定試料を岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータ「VES F−3型」を用いて、測定温度70℃、周波数10Hz、初期伸長歪10%、片振幅1%にて測定した値とする。また測定試料は、タイヤを解体して当該部位から幅4mm、長さ30mm、厚さ1〜2mmのサイズで切り出し、表面の凹凸をバフ掛けして平滑化されたものを用いた。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
図1の基本構造を有しかつ表1の仕様に基づく重荷重用タイヤ(サイズ:11R22.5、パターン:4リブ、溝深さ14mm、トレッド幅230mm、トレッド曲率半径700mm)を試作するとともに、それぞれについてビード耐久性を測定した。また図10に示される従来タイヤ(比較例1)及び図2の基本形態を具えつつも突き抜けスチールコードを有しないタイヤ(比較例2)についても同様のテストを行い性能を比較した。なお表中に記載していない仕様は、各タイヤとも同一とした。テスト方法は次の通りである。
<ビード耐久性>
ドラム試験機を用い、タイヤをリム(サイズ:7.50×22.5)に組み、内圧700kPaを充填後、縦荷重(27.25kNの3倍)の条件下で速度30km/hで走行させ、ビード部に損傷が発生するまでの走行時間を測定した。評価は、比較例1の走行時間を100とした指数で表示した。数値が大きいほど良好である。テストの結果などを表1に示す。
Figure 2005178669
テストの結果、実施例のタイヤは、ビード部の耐久性を向上していることが確認できる。
本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示す右半分断面図である。 そのビード部を拡大して示す部分拡大図である。 そのビード部をさらに拡大して示す断面略図である。 折返し部付近のカーカスプライのスチールコードとビードコアとの関係を示す斜視図である。 折返し部付近のカーカスプライのスチールコードとビードコアとの関係を示すタイヤ内腔側から見た側面図である。 本発明の他の形態を示す斜視図である。 本発明の他の形態を示すカーカスプライのスチールコード配列図である。 正規状態におけるビード部の断面略図である。 従来の重荷重用タイヤのビード部の部分断面図である。 比較例1の重荷重用タイヤのビード部の部分断面図である。
符号の説明
1 重荷重用タイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a カーカスプライの本体部
6b カーカスプライの折返し部
8 ビード補強層
10 折返し主部
11 折返し副部
SC1 突き抜けスチールコード
SC2 非突き抜けスチールコード

Claims (6)

  1. 一対のビードコア間を跨るトロイド状の本体部に前記ビードコアの回りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部が連設された少なくとも1枚のスチールコードのカーカスプライを含むカーカスを具えた重荷重用タイヤであって、
    前記折返し部は、前記ビードコアのタイヤ軸方向内側面、タイヤ半径方向内面及びタイヤ軸方向外側面に沿って折れ曲がる折返し主部と、該折返し主部に連なり前記ビードコアから離間してのびる折返し副部とを有し、
    前記折返し副部は、前記ビードコアのタイヤ半径方向外面に対して90°未満の角度θで前記本体部に向かって傾いてのびるとともに、
    該折返し副部は、その少なくとも一部に、前記本体部のスチールコード間を通った突き抜けスチールコードを含むことを特徴とする重荷重用タイヤ。
  2. 前記折返し副部は、前記突き抜けスチールコードのみで構成されることを特徴とする請求項1記載の重荷重用タイヤ。
  3. 前記折返し副部は、外端が前記本体部の手前で終端する非突き抜けスチールコードと、前記突き抜けスチールコードとを含み、
    かつ、前記突き抜けスチールコードは、少なくとも一方のビード部において前記折返し副部のスチールコード数の1/3以上であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用タイヤ。
  4. 前記ビード部は、少なくとも1枚のスチールコードからなるビード補強層が設けられるとともに、
    該ビード補強層は、前記カーカスプライの本体部のタイヤ軸方向内側をのびかつ前記突き抜けスチールコードの外端よりもタイヤ内腔側に配された内片部を少なくとも含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
  5. 前記折返し副部は、そのスチールコードの外端から前記ビードコアの外面までの最短距離が5〜12mmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
  6. 前記折返し副部は、そのスチールコードの外端が、正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の正規状態におけるタイヤ子午線断面において、リム離反点を通り前記本体部に引いた法線から該本体部に沿って2〜12mmの距離を隔てて内側に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
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