JP5476109B2 - 偏平重荷重用ラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、耐久性を向上させた偏平重荷重用ラジアルタイヤに関する。
ビード耐久性を向上した重荷重用ラジアルタイヤとして、下記の先行技術1のものが知られている。このタイヤは、図5に示すように、カーカスプライaのプライ折返し部a1を、ビードコアbの周りで略一周巻きした所謂ビードワインド構造を採用している。そして前記プライ折返し部a1は、ビードコアbの半径方向外周面と対向する部分a1aが、前記ビードコアbとビードエーペックスゴムcとの間で挟まれて保持されるとともに、ビード部には、ビードコアbをカーカスプライaを介してU字状に囲むビード補強コード層dが設けられている。
この構造のタイヤでは、ビードワインド構造の採用により、プライ折返し部a1の先端部がビードコアbの近傍で途切れるため、該先端部に作用するタイヤ変形時の応力が低減されるとともに、ビードワインド構造によるビード剛性の低下が、前記ビード補強コード層dによって抑えられている。しかも前記ビード補強コード層dとして、700N以上のコード強力を有する補強コードを用いるとともに、この補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度を40〜70度の範囲に規制することにより補強効果を高めてビード剛性の低下をさらに抑えビード耐久性の向上が図られている。
他方、近年の道路網の整備化、車両の高性能化等にともない、例えばトラック、バス用の重荷重用ラジアルタイヤにおいても偏平化が促進されている。
しかし、前述のビードワインド構造のタイヤを偏平化した場合、特にタイヤ断面巾に対するタイヤ赤道におけるカーカス高さの比であるカーカス偏平率を0.67以下に減じたタイヤにおいては、ビード耐久性が充分に向上されなかったり、逆にバットレス部分での歪みが増してこの部分で損傷を招くなど、タイヤ全体としての耐久性が向上されないという解決すべき新たな問題が発生する。
特開2009−18717号公報
そこで本発明は、ビードワインド構造を有しかつカーカス偏平率を0.67以下とした偏平重荷重用ラジアルタイヤにおいて、ビード部とバットレス部分との損傷をバランス良く抑制でき、タイヤ全体としての耐久性を向上しうる偏平重荷重用ラジアルタイヤを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部と、該プライ本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されたプライ折返し部とを有する1枚のカーカスプライからなるカーカスを具え、しかもビードベースラインから、タイヤ赤道におけるカーカスプライの半径方向内面までの半径方向高さであるカーカス高さHxと、タイヤ断面巾Wtとの比(Hx/Wt)であるカーカス偏平率を0.67以下とした偏平重荷重用ラジアルタイヤであって、
前記プライ折返し部は、前記ビードコアのタイヤ軸方向内側の内側面、タイヤ半径方向内側の内周面及びタイヤ軸方向外側の外側面に沿って湾曲する折返し主部と、
該折返し主部に連なりかつ前記ビードコアのタイヤ半径方向外側の外周面の近傍を通って前記プライ本体部に向かってのびる折返し副部とからなり、かつ
前記ビード部には、
前記折返し主部に沿ってその半径方向内方をのびる中間部と、この中間部にタイヤ軸方向外側で連なりかつ前記折返し主部と離れて半径方向外側にのびる外片部と、前記中間部にタイヤ軸方向内側で連なりかつ前記プライ本体部のタイヤ軸方向内側面に沿ってタイヤ半径方向外側にのびる内片部とを有する断面U字状をなし、かつ補強コードを配列したビード補強コード層、
及び前記折返し副部から前記プライ本体部と前記外片部との間を通ってタイヤ半径方向外側に先細状にのびるビードエーペックスゴムが配され、
しかも前記補強コードは、前記外片部においてタイヤ周方向に対して40〜70度の角度で傾斜配列するとともに、
ビードベースラインから、前記ビードエーペックスゴムの半径方向外端までの半径方向高さであるエーペックス高さHeと、前記カーカス高さHxとの比He/Hxを0.35〜0.45、
前記外片部の半径方向外端の位置における前記ビードエーペックスゴムの厚さTeを10mm以上、
ビードベースラインから、前記外片部の半径方向外端までの半径方向高さである外片高さHoと、前記カーカス高さHxとの比Ho/Hxを0.12〜0.22としたことを特徴としている。
又請求項2の発明では、ビードベースラインから、前記プライ本体部がタイヤ軸方向外側に張り出すカーカス最大幅点までの半径方向高さである最大幅点高さHcは、前記カーカス高さHxの60%以下であることを特徴としている。
又請求項3の発明では、前記プライ本体部がタイヤ軸方向外側に張り出すカーカス最大幅点よりも半径方向内側の領域において、前記プライ本体部は、カーカス最大幅点を通るタイヤ軸方向線上に中心を有し、前記カーカス最大幅点から凸円弧状にのびる上領域と、この上領域に変曲点で連なり前記ビードコアに向かって凹円弧状にのびる下領域とを具えるとともに、
前記下領域は、前記プライ本体部の半径方向内端を通って前記上領域に接する接線からタイヤ内側に凹むとともに、前記接線からの最大凹み量Qを0.5mm以上としたことを特徴としている。
なお本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、タイヤを正規リムにリム組みしかつ正規内圧を充填した無負荷の正規内圧状態にて特定される値とする。なお前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。本実施形態において、正規リムJは、JATMAでいう15゜深底リム(いわゆる15゜テーパリム)である。また、前記正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
本発明は叙上の如く、
−−−の効果を奏する。
本発明の偏平重荷重用ラジアルタイヤの一実施例を示す断面図である。 ビード部を拡大して示す断面図である。 ビード部を拡大して示す断面図である。 ビード補強コード層の外片部における補強コードの配列を説明する概念図である。 比較例1のタイヤのビード構造を示す断面図である。 従来技術を説明する重荷重用ラジアルタイヤの断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1において、本実施形態の偏平重荷重用ラジアルタイヤ1(以下、単にタイヤ1という場合がある。)は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るトロイド状のカーカス6と、このカーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とを具える。又前記タイヤ1は、ビードベースラインBLから、タイヤ赤道Cにおけるカーカス6の半径方向内面までの半径方向高さであるカーカス高さHxと、タイヤ断面巾Wtとの比(Wt/Hx)であるカーカス偏平率が0.67以下であり、これによりタイヤ断面高さを減じてタイヤ剛性を高める一方、タイヤ接地巾を増加させることにより高速耐久性、及び高速操縦安定性の向上が図られている。
前記ベルト層7は、スチール製のベルトコード(スチールコード)をタイヤ周方向に対して10〜70°の角度で配列した2枚以上のベルトプライから形成される。本例では、ベルト層7が、ベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば60±10°の角度で配列した最内の第1のベルトプライ7Aと、その半径方向外側に順次配されかつベルトコードをタイヤ周方向に対して10〜30°の小角度で配列した第2〜第4のベルトプライ7B〜7Dとからなる4層構造を有するものを例示している。このベルト層7は、ベルトコードがプライ間で互いに交差する箇所を1箇所以上有することにより、ベルト剛性を高めトレッド部2を強固に補強する。又ベルト層7の外端部7Eは、タイヤ軸方向外側に向かってカーカス6から徐々に離間するとともに、この離間部には、前記外端部7Eでの歪みを軽減する断面図三角形状のベルトクッションゴム20が配される。このベルトクッションゴム20には、複素弾性率E*3を例えば2〜6MPaとした低弾性のゴムが使用される。
次に、前記カーカス6は、スチール製のカーカスコード(スチールコード)をタイヤ周方向に対して80〜90°の角度で配列した1枚のカーカスプライ6Aから形成される。このカーカスプライ6Aは、ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、前記ビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されるプライ折返し部6bを一連に具える。
なお前記ビードコア5は、例えばスチール製のビードワイヤを多段多列に巻回してなるコア本体5Aを具え、本例ではその周囲に、ゴム引き布やゴムシートなどからなる被覆層5Bが設けられ、ビードワイヤのバラケ、及びビードワイヤとカーカスコードとの直接の接触がそれぞれ防止されている。
又ビードコア5は、リムJのリムシートJs面に対向するタイヤ半径方向内側の内周面SL(コア内周面SLという場合がある。)、このコア内周面SLと平行なタイヤ半径方向外側の外周面SU(コア外周面SUという場合がある。)、前記コア内周面SLとコア外周面SUとのタイヤ軸方向内縁間を継ぐタイヤ軸方向内側の内側面Si、及びタイヤ軸方向外縁間を継ぐタイヤ軸方向外側の外側面Soからなるコア外周面を有する断面多角形状をなす。特に本例では、前記コア内側面Si、外側面Soをく字状に屈曲させた偏平な断面六角形状をなす場合が例示されており、前記コア内周面SLがリムシートJsと略平行となることによって、リムとの嵌合力を広範囲に亘って高めている。
又図2に示されるように、前記カーカスプライ6Aのプライ折返し部6bは、コア内側面Si、コア内周面SL及びコア外側面Soに沿って滑らかに湾曲する折返し主部6b1と、該折返し主部6b1に連なり前記コア外周面SUの近傍を通って前記プライ本体部6aに向かってのびる折返し副部6b2とから構成され所謂ワインドビード構造を有する。
前記折返し副部6b2は、コア外周面SU或いはその延長線よりも半径方向外側の部位として定義され、プライ本体部6aに向かってコア外周面SUから離間する向きに傾斜してのびる。なお前記折返し副部6b2のコア外周面SUに対する角度θは、小さすぎると、ビードコア5の角部でカーカスコードに局部的に折れ曲がりが生じやすくなって、コード強度を損ねる傾向があり、逆に大きすぎると、カーカスの吹き抜けが生じやすくなる。このような観点から前記角度θの下限は、10°以上さらには15°以上が好ましく、又上限は60°以下さらには45°以下が好ましい。
又前記折返し副部6b2では、その先端のプライ本体部6aからの離間距離U2が小さすぎると、タイヤ変形時に、カーカスコードの先端がプライ本体部6aにおけるカーカスコードと擦れてフレッティング損傷を招く恐れが生じ、逆に大きすぎると、カーカスの吹き抜けが生じやすくなる。このような観点から、前記離間距離U2の下限は0.5mm以上さらには1.0mm以上が好ましく、又上限は5.0mm以下さらには4.0mm以下が好ましい。
なお本例では、前記折返し副部6b2のスプリングバックを防止するために、前記折返し副部6b2のタイヤ半径方向外側に、補助コード層8が設けられている。この補助コード層8は、例えばスチールコードからなる補助コードを、タイヤ周方向に螺旋状に巻回することにより形成される。この補助コードとしては、コード強力が2000〜4000Nのスチールコードが望ましい。
次に、前記ビード部4には、図1、図2に示すように、ビードコア5をカーカスプライ6Aを介してU字状に囲むビード補強コード層9、及びこのビード補強コード層9の外片部9oと前記プライ本体部6aとの間を通って前記折返し副部6b2からタイヤ半径方向外側に先細状にのびるビードエーペックスゴム10が配される。
前記ビード補強コード層9は、スチール製の補強コードを並列した断面U字状の1枚のプライからなり、図2に示すように、前記折返し主部6b1に沿ってその半径方向内方を円弧状にのびる中間部9aと、この中間部9aにタイヤ軸方向外側で連なりかつ前記折返し主部6b1から離れてタイヤ半径方向外側にのびる外片部9oと、前記中間部9aにタイヤ軸方向内側で連なりかつ前記プライ本体部6aのタイヤ軸方向内側面に沿ってタイヤ半径方向外側にのびる内片部9iとで構成される。
このビード補強コード層9は、ワインドビード構造が基本的に有するビード部4における曲げ剛性不足を補い、必要な操縦安定性を確保するとともに、走行時におけるビード変形を抑制する。さらに前記ビード補強コード層9の外片部9oは、ビードエーペックスゴム10などのビード部4内のゴムが、加硫中にタイヤ軸方向外側に向かって流動して、ビード部4のゴムゲージがバラ付くのを抑制することができる。
そのために、ビードベースラインBLから、前記外片部9oの半径方向外端9tまでの半径方向高さである外片高さHoと、前記カーカス高さHxとの比Ho/Hxを0.12〜0.22としている。前記比Ho/Hxが0.12未満では、補強効果が充分達成されず、操縦安定性の確保、及びビード変形の抑制を図ることが難しくなる。逆に0.22を越えると、ビード変形時、外片部9oの外端9tに応力が集中し、この外端9tを起点とした新たな損傷を発生させる。このような観点から前記比Ho/Hxの下限は、0.15以上、又上限は0.20以下が好ましい。
なおビード補強コード層9の内片部9iでは、プライ本体部6aに隣接して配されるため、曲げ剛性に対する補強効果は外片部9oに比して小であり、かつその外端に作用する応力も外片部9oに比べると小さい。従って、ビードベースラインBLから、前記内片部9iの外端までの半径方向高さHiは、特に規制されないが、前記外片部9oと同様、カーカス高さHxの0.12〜0.22倍の範囲が好ましい。
又ビードワインド構造では、プライ折返し部6bがビードコア5に巻き付いている。そのため、図3に示すように、走行時に作用するカーカスコードのテンション力Fによって、ビードコア5に、その断面中心廻りの回転モーメントMが作用するなど回転方向の変形が生じやすい。そしてこのビードコア5の回転変形に起因して、ビード部4の外皮をなすリムずれ防止用のチェーファゴム11が、リムフランジJrと接触する部分においてゴム潰れを発生しやすくなり、ビード耐久性を減じる傾向がある。
そのため、前記ビード補強コード層9では、図4に概念的に示すように、前記外片部9oにおける補強コード9Aのタイヤ周方向に対する角度αを40〜70度の範囲に規制し、ビードコア5の回転変形を抑えて、前記チェーファゴム11のゴム潰れを抑制している。なお、前記角度αが40度未満では、前記回転変形に対して外片部9oが容易に凸状に湾曲変形してしまい、前記回転変形を抑えることができなくなる。逆に70度を超えると、カーカスコードと配列角度が近くなるため補強効果が充分発揮できなくなる。このような観点から前記角度αの下限は45度以上が好ましく、又上限は65度以下が好ましい。
なお前記補強コード9Aとして、コード強力が700N以上のスチールコードを採用することが、走行時のビード変形により補強コード9Aが破断したり塑性変形が生じたりするのを抑える上で好ましい。なおコード強力の上限は特に規制されないが、例えば1200Nを越えるものはコードが硬すぎて、断面U字状への成形が難しくなる。
次に、前記ビードエーペックスゴム10は、前記ビード補強コード層9と協働してビード部4を補強し、ビード変形を抑えてビード耐久性を向上させる。この前記ビードエーペックスゴム10は、図3に示すように、高弾性のゴムからなりかつ半径方向内側に配される内エーペックス部10Aと、この内エーペックス部10Aよりも低弾性のゴムからなりかつ半径方向外側に配された外エーペックス部10Bとから形成される。本例では、前記内エーペックス部10Aは、外片部9o上の位置からプライ本体部6aに向かって半径方向外側に傾斜してのびる斜片10A1を有する断面三角形状をなす。これにより、軟質側の外エーペックス部10Bが、前記外片部9oの外端9tと接触するため、この外端9tに作用する歪を緩和することができる。
なお、前記内エーペックス部10Aには、好ましくは、複素弾性率E*1が20〜70MPaの高弾性ゴムが好適に用いられる。前記複素弾性率E*1が20MPa未満の場合、補強効果が相対的に低下し、逆に70MPaを超えると、ビード部4の曲げ剛性が過度に上昇し、乗り心地の著しい悪化を招くおそれがある。このような観点から、前記複素弾性率E*1の下限は、35MPa以上が好ましく、上限は60MPa以下が好ましい。又、前記外エーペックス部10Bには、好ましくは、複素弾性率E*2が2.0〜6.0MPaの低弾性ゴムが好適であり、2.0MPa未満では、ビード部4の補強効果が十分発揮されない。又6.0MPaを越えると、歪の緩和能力が低下する。
なお、前記複素弾性率E*1、E*2、E*3は、いずれも4mm巾×30mm長さ×1.5mm厚さの短冊状試料を切り取って、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、振幅2%の条件での値を示す。
そしてこのような、ビードワインド構造のタイヤにおいて、前記カーカス偏平率(Wt/Hx)を0.67以下に減じた場合、サイドウォール部3のフレキシブルな領域が大幅に減じるため、タイヤ変形時、ビード部4での歪、及びサイドウォール部3におけるトレッド側の領域であるバットレス部分3A(図1に示す)での歪がそれぞれ増加する。その結果、前述のビード耐久性が充分に向上されなかったり、逆にバットレス部分3Aで損傷を招くなど、タイヤ全体としての耐久性が向上されないという問題が生じる。
具体的には、ビードベースラインBLから、前記ビードエーペックスゴム10の半径方向外端までの半径方向高さであるエーペックス高さHeを高めた場合、ビード剛性が増し、ビード耐久性の向上には好ましい。しかしその反面、タイヤ設計時のカーカス輪郭形状においては、前記エーペックス高さHeの増加に伴い、プライ本体部6aがタイヤ軸方向外側に張り出すカーカス最大幅点Pm(図1に示す)の位置が、半径方向外側に移行する。そのため、このカーカス最大幅点Pmよりも半径方向外側の領域YUが狭くなり、又前記バットレス部分3Aにおけるカーカス輪郭形状の曲率半径R1が相対的に小となる。その結果、このようなタイヤを走行させた場合、前記バットレス部分3Aで歪みが集中し、クラックを発生させたり、又内部発熱によって温度上昇を招き、ベルト端剥離を誘発させるなど、このバットレス部分3Aにおける耐久性を低下させる。
そこで本実施形態では、前記エーペックス高さHeを、カーカス高さHxの0.35〜0.45倍の範囲に敢えて減じ、前記外側領域YUを広げてバットレス部分3Aにおけるカーカス輪郭形状の曲率半径R1を相対的に高めている。これによりバットレス部分3Aでの歪みの集中を抑え、バットレス部分3Aにおける耐久性を確保している。
他方、エーペックス高さHeを前記範囲に減じたことに起因するビード耐久性の低下を抑制するために、図3に示すように、前記外片部9oの外端9tの位置における前記ビードエーペックスゴムの厚さTeを10mm以上に厚肉化している。このゴムボリュームの増加により、前記外端9tの位置での剛性を確保して該外端9tでの歪みを抑え、この外端9tを起点とした損傷を抑制することができる。即ち、エーペックス高さHeを減じながらも、ビード耐久性を確保することが可能となる。
なお前記エーペックス高さHeが、カーカス高さHxの0.35倍未満では、前記厚さTeを増したとしても、必要なビード耐久性を確保することはできなくなり、逆にカーカス高さHxの0.45倍を越えると、バットレス部分3Aでの耐久性が確保できなくなる。なお前記厚さTeの上限は、特に規制されないがコストの観点から、16mm以下が好ましい。なお前記厚さTeの下限はビード耐久性の観点から12mm以上、さらには13mm以上が好ましい。
ここで、前記カーカス最大幅点PmのビードベースラインBLからの半径方向高さである最大幅点高さHcは、前記カーカス高さHxの60%以下、さらには57%以下とするのがバットレス部分3Aでの耐久性確保の観点から好ましい。
又、前記カーカス最大幅点Pmよりも半径方向内側の領域YLにおいて、前記プライ本体部6aは、図3に示すように、カーカス最大幅点Pmを通るタイヤ軸方向線上に中心を有して前記カーカス最大幅点Pmから凸円弧状にのびる上領域YL1と、この上領域YL1に変曲点で連なり前記ビードコアに向かって凹円弧状にのびる下領域YL2とを具える。そして、前記ビード耐久性の確保の観点から、前記下領域YL2では、前記プライ本体部6aの半径方向内端6aeを通って前記上領域YL1に接する接線Kからタイヤ内側に凹むとともに、前記接線Kからの最大凹み量Qを0.5mm以上とするのが、ビード剛性を高めビード耐久性を確保する上でさらに好ましい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうるのは言うまでもない。
図1の基本構造を有するタイヤサイズ245/70R19.5の偏平重荷重用ラジアルタイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤにおけるビード耐久性、チェーファゴムのゴム潰れ、バットレス部分での耐久性についてテストを行った。比較例1として、図5に示す折返し構造のタイヤを使用し、エーペックスゴム厚さとして、プライ折返し部先端での厚さTe1を測定した。なおプライ折り返し部のビードベースラインBLからの半径方向高さHgは35mmとした。
表1に記載以外の仕様は実質的に同仕様であり、その仕様の一部を以下に記載する。
・カーカス偏平率(Wt/Hx): 0.60
<ビードワインド構造>
・折返し副部の角度θ:25度
・離間距離U2:1.5mm
<ビードエーペックスゴム>
・内エーペックス部のビードベースラインからの高さ:30mm
・内エーペックス部の複素弾性率E*1:50.0MPa
・外エーペックス部の複素弾性率E*2:4.0MPa
テスト方法は、次のとうりである。
<ビード耐久性>
テストタイヤをリム(6.75×19.5)、内圧(850kPa)、及び縦荷重(20.79kNの3倍)の条件下にて速度30km/hでドラム試験機上を走行させ、ビード部に損傷が発生するまでの走行時間が測定された。評価は、比較例1の走行時間を100とする指数で表示されている。数値が大きいほどビード耐久性に優れている。
<チェーファゴムのゴム潰れ>
上記ビード耐久性の試験の前後において、図3に符号tで示すように、ビードコア本体のタイヤ軸方向最外側の角部からビード部の外面に下ろした法線上でのチェーファゴムの厚さを測定し、その厚さtの差を、ゴム潰れとした。数値(ゴム潰れ)が小さいほど、ゴム潰れが少なく、タイヤ更正に係わるビード耐久性に優れている。
<バットレス部分での耐久性>
テストタイヤをリム(6.75×19.5)、内圧(850kPa)、及び縦荷重(20.79kN)の条件下にて速度90km/hでドラム試験機上を2時間走行させ、走行後のベルトクレームションゴム内の温度を測定した。評価は、比較例1の発熱温度(℃)を100とする指数で表示されている。数値が小さいほど発熱が低く、バットレス部分での耐久性に優れている。
Figure 0005476109
Figure 0005476109
1 偏平重荷重用ラジアルタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
6A カーカスプライ
6a プライ本体部
6b プライ折返し部
6b1 折返し主部
6b2 折返し副部
9 ビード補強コード層
9a 中間部
9i 内片部
9o 外片部
10 ビードエーペックスゴム
BL ビードベースライン
C タイヤ赤道
Pm カーカス最大幅点
Si 内側面
SL 内周面
So 外側面
SU 外周面
YU1 上領域
YU2 下領域

Claims (3)

  1. トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るプライ本体部と、該プライ本体部に連なりかつ前記ビードコアの回りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返されたプライ折返し部とを有する1枚のカーカスプライからなるカーカスを具え、しかもビードベースラインから、タイヤ赤道におけるカーカスプライの半径方向内面までの半径方向高さであるカーカス高さHxと、タイヤ断面巾Wtとの比(Hx/Wt)であるカーカス偏平率を0.67以下とした偏平重荷重用ラジアルタイヤであって、
    前記プライ折返し部は、前記ビードコアのタイヤ軸方向内側の内側面、タイヤ半径方向内側の内周面及びタイヤ軸方向外側の外側面に沿って湾曲する折返し主部と、
    該折返し主部に連なりかつ前記ビードコアのタイヤ半径方向外側の外周面の近傍を通って前記プライ本体部に向かってのびる折返し副部とからなり、かつ
    前記ビード部には、
    前記折返し主部に沿ってその半径方向内方をのびる中間部と、この中間部にタイヤ軸方向外側で連なりかつ前記折返し主部と離れて半径方向外側にのびる外片部と、前記中間部にタイヤ軸方向内側で連なりかつ前記プライ本体部のタイヤ軸方向内側面に沿ってタイヤ半径方向外側にのびる内片部とを有する断面U字状をなし、かつ補強コードを配列したビード補強コード層、
    及び前記折返し副部から前記プライ本体部と前記外片部との間を通ってタイヤ半径方向外側に先細状にのびるビードエーペックスゴムが配され、
    しかも前記補強コードは、前記外片部においてタイヤ周方向に対して40〜70度の角度で傾斜配列するとともに、
    ビードベースラインから、前記ビードエーペックスゴムの半径方向外端までの半径方向高さであるエーペックス高さHeと、前記カーカス高さHxとの比He/Hxを0.35〜0.45、
    前記外片部の半径方向外端の位置における前記ビードエーペックスゴムの厚さTeを10mm以上、
    ビードベースラインから、前記外片部の半径方向外端までの半径方向高さである外片高さHoと、前記カーカス高さHxとの比Ho/Hxを0.12〜0.22としたことを特徴とする偏平重荷重用ラジアルタイヤ。
  2. ビードベースラインから、前記プライ本体部がタイヤ軸方向外側に張り出すカーカス最大幅点までの半径方向高さである最大幅点高さHcは、前記カーカス高さHxの60%以下であることを特徴とする請求項1記載の偏平重荷重用ラジアルタイヤ。
  3. 前記プライ本体部がタイヤ軸方向外側に張り出すカーカス最大幅点よりも半径方向内側の領域において、前記プライ本体部は、カーカス最大幅点を通るタイヤ軸方向線上に中心を有し、前記カーカス最大幅点から凸円弧状にのびる上領域と、この上領域に変曲点で連なり前記ビードコアに向かって凹円弧状にのびる下領域とを具えるとともに、
    前記下領域は、前記プライ本体部の半径方向内端を通って前記上領域に接する接線からタイヤ内側に凹むとともに、前記接線からの最大凹み量Qを0.5mm以上としたことを特徴とする請求項1又は2記載の偏平重荷重用ラジアルタイヤ。
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