[I]以下に、本発明にかかる微弱光画像の解析方法および解析装置ならびに生体試料撮像方法および生体試料撮像装置の実施の形態(第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
[第1実施形態]
[1.本発明の基本原理]
まず、本発明の基本原理について図を参照して詳細に説明する。本発明は、基準となる対物レンズの焦点位置を決定し、決定した焦点位置を基準として対物レンズの近点側の焦点位置(略焦点位置)および/または対物レンズの遠点側の焦点位置(略焦点位置)を計測し、計測した焦点位置に基づいて試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定し、決定した焦点位置に対物レンズの焦点位置を合わせる(移動する)。
具体的には、本発明は、(1)試料へ光を照射し、(2)例えば試料の位置および/または対物レンズの位置を光軸方向に移動および/または対物レンズの焦点距離を変更(この場合は可変焦点レンズを採用する。)することで、対物レンズの焦点位置を例えば一定量だけ変更し、(3)変更した焦点位置を計測し、(4)変更した焦点位置にて、光が照射された試料を、CCDカメラを用いて撮像し、(5)撮像した撮像画像に基づいて撮像画像を特徴付ける特徴量(例えば、撮像画像のコントラスト、撮像画像の輝度の積分値、撮像画像の輝度分布から得られる統計量、撮像画像における所定の閾値を超えた輝度を有する画素数と全画素数との比など)を算出し、(6)(2)〜(5)を繰り返し実行し、(7)実行して蓄積した複数の焦点位置(対物レンズの焦点位置を表す光軸上の座標値)から、実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、少なくとも1つの焦点位置(具体的には対物レンズの近点側の焦点位置および/または対物レンズの遠点側の焦点位置)を選出し、(8)選出した焦点位置に基づいて、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定し、(9)例えば試料の位置および/または対物レンズの位置を光軸方向に移動および/または対物レンズの焦点距離を変更(この場合は可変焦点レンズを採用する。)することで、決定した焦点位置に対物レンズの焦点位置を合わせる(移動する)。
ここで、本発明は、前記の(7)において、実行して蓄積した複数の焦点位置から、実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、2つの焦点位置(具体的には対物レンズの近点側の焦点位置(略焦点位置)および対物レンズの遠点側の焦点位置(略焦点位置))を選出し、前記の(8)において、選出した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央位置(略中央位置)を、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定してもよい。
また、本発明は、前記の(7)において、実行して蓄積した複数の焦点位置から、実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、1つの焦点位置(具体的には対物レンズの近点側の焦点位置(略焦点位置)または対物レンズの遠点側の焦点位置(略焦点位置))を選出し、前記の(8)において、選出した1つの焦点位置および予め定めた距離に基づいて、当該焦点位置から当該距離だけ離れた位置を、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定してもよい。
また、本発明は、(10)前記の(8)で決定した焦点位置にて、試料の発光画像をCCDカメラを用いて撮像し、(11)撮像した撮像画像に基づいて特徴量を算出し、(12)前記の(8)で決定した焦点位置を変更し、(13)変更した焦点位置にて試料の発光画像をCCDカメラを用いて撮像し、(14)撮像した撮像画像に基づいて特徴量を算出し、(15)(11)で算出した特徴量と(14)で算出した特徴量とを比較し、(16)比較した結果、前記の(14)で算出した特徴量の方が大きかった場合には、(12)で変更した焦点位置を、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として再度決定してもよい。
また、本発明は、前記の(1)で用いる光源を含む照明光学系の瞳位置に開口を例えば光軸に対して偏芯させて配置してもよく、また、前記の(1)で用いる光源を含む照明光学系に狭帯域通過フィルターを配置してもよい。また、本発明は、前記の(1)で用いる光源として、単色の可視光を発するものを用いてもよい。また、本発明は、試料として、生体細胞や組織などを用いてもよい。
ここで、試料として生体細胞を用いた場合を一例として、生体細胞の位相分布に比例したコントラストを撮像画像(照明光による画像)に発生させる原理について、図1を参照して説明する。図1は、物点、光学系の入射瞳、射出瞳、結像面を模式的に示す図である。
合焦位置に生体細胞(物体)を配置してから物体へ光を照射すると、図1に示すように、物点から出た光は実線で示したように球面状に広がって入射瞳に入射し、入射瞳に入射した光は射出瞳から射出し、射出瞳から射出した光は実線で示したように球面状の収束光となって結像面に集光することで、最終的に物体の像が形成される。なお、像が形成されるまでの過程で、光学系を通過する各光線の間に光路差(位相差)は生じず、像にボケは現れない。次に、物点を点線に示す位置に移動してから物体へ光を照射すると、図1に示すように、物点から出た光は点線で示したように球面状に広がって入射瞳に入射し、入射瞳に入射した光は射出瞳から射出し、射出瞳から射出した光は点線で示したように球面状の収束光となって移動後の結像面に集光することで、最終的に物体の像が形成される。以上より、移動後の結像面位置を観察点として物体を観察すれば光学系を通過する各光線の間に光路差(位相差)は生じないが、当初の結像面位置を観察点として物体を観察すると各光線の間に光路差(位相差)が生ずる。
また、生体細胞は、通常、光学的に位相物体として取り扱うことができる。生体細胞は、通常、ほぼ同じような形状となっている。ゆえに、例えばシャーレ内に分布している培養生体細胞へ照明光を入射すると、生体細胞が回折格子のような役割を演じて、生体細胞の形状に依存して特有の方向に照射光が回折し、回折光が観察される。すなわち、シャーレ内の細胞へ特定の方向から照明光を入射すると、細胞に因り入射光に回折が起こり、入射光の方向に0次回折光(透過光)が発生し、更に透過光に対し特定の角度の方向に1次回折光が発生する。
以上より、生体細胞を光学系の合焦位置からずらした位置に配置して光学系を透過する各光線の間に位相差を生じさせることができる。また、観察光学系の合焦位置から前後に外れた位置で生体細胞を観察することにより、生体細胞を透過した光と生体細胞で回折した光との間に、合焦位置からのずれ量(デフォーカス量)に応じた位相差を生じさせることができる。具体的には、対物レンズの焦点位置が通常の観察における合焦位置とされている位置に合うように対物レンズを光軸に沿って移動させ、当該移動させた位置から対物レンズをさらに微小量だけ移動させることで、観察光学系の透過する各光線の間に、移動量に比例した位相差を生じさせることができる。なお、この位相差は、対物レンズの最大NAを通過する光線で最大となる。また、この時、偏射照明により、回折光の一部は対物レンズのNA外に回折されて、観察光学系を透過しなくなるので、屈折光の場合と同様、レリーフ感のあるコントラストの像を形成することができる。
つまり、これらの現象を利用して、生体細胞の鮮明な、照明光による画像(照明画像)を得ることができ、位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡と同じような観察を行うことができる。また、結果として、生じた位相差量が位相差観察法で用いている位相膜と等価な機能を果たし、生体細胞の位相分布に比例したコントラストを観察画像に与えることができ、無色透明な生体細胞を高いコントラストで観察することができるようになる。
なお、より高いコントラストで生体細胞を観察する場合、観察光学系の倍率を低くすれば、観察光学系を通過する回折光の角度が制限されるので、観察画像のコントラストを高くすることができる。
また、生体細胞などの位相物体を観察する場合、位相物体の位相分布に比例したコントラストは、位相物体の位相量および透過光と回折光との間に与える位相差量に比例する。また、透過光と回折光との間の角度は位相物体の形状に依存して変わる。さらに、透過光と回折光との間の角度が変わると、同じデフォーカス量でも2つの光束の間に発生する位相差量が異なってくる。そこで、顕微鏡の照明光学系の瞳位置で開口を照明光学系の光軸に対して偏芯させて配置することにより、物体に対し特定の角度で照射する照明光を生成することができる。そして、開口を偏芯させている分、物体への入射光の方向に透過する透過光より角度を持たせた回折光を、光学系の入射瞳に入射させることができるので、透過光と回折光との位相差をさらに大きくすることができる。換言すると、開口を照明光学系の光軸から偏芯させて配置することにより、透過光より回折光にさらに角度を持たせることができるので、透過光と回折光との位相差をより大きくすることができる(特開2004−354650号公報参照)。つまり、これらの方法で透過光と回折光との位相差を大きくすれば、観察画像のコントラストをより高くすることができる。
また、デフォーカスによって生じる各光線間の位相差については、物体が観察光学系の合焦位置から近点側にずれた場合と遠点側にずれた場合とで、その符号が変わる。ゆえに、デフォーカスにより、物体の高コントラスト画像を光軸上の2箇所で得ることができる。また、画像のコントラストについては、培養細胞等の位相物体を観察光学系の合焦位置から近点側にずらして観察した画像と遠点側にずらして観察した画像とで、当該位相物体の位相分布に相当して反転する。また、シャーレの底面に付着したゴミ等からの光を吸収する物体は位相物体ではなくなるので、デフォーカスによって当該物体に位相差を与えても画像のコントラストに変化は生じない。従って、デフォーカスによって、位相物体とそうでない物体との区別を明確に行なうことができる。そこで、近点側にずらして撮像した画像および遠点側にずらして撮像した画像に対して画像間演算を行うことにより、デフォーカスによって与えられる位相差に影響されない画像成分を分離することができる。特に、2つの画像の各画素間で差演算を行なうことにより、物体の位相分布に相当する画像成分のコントラストを2倍にすることができるので、ゴミや異物、照明ムラなどの位相情報をもたない画像成分を無くすことができる。つまり、これらの方法で観察画像のコントラストをより高くすることができる。
つぎに、対物レンズを移動させながらCCDカメラで生体細胞を撮像した時のCCDカメラの各画素からの出力信号(各画素が捉えた光の光強度に対応したディジタル信号)の変化の仕方の一例、および当該出力信号の変化の仕方に基づく生体細胞内の特定の部位(観察対象部位)に合うような対物レンズの焦点位置の決定の仕方の一例について、図2や図3を参照して説明する。試料容器(シャーレ)に入れられた培養液に生体細胞を浸した状態で、生体細胞へ照明光を照射し、対物レンズを光軸(z軸)に沿ってシャーレの下側から上側へ移動させながらCCDカメラで生体細胞を撮像すると、CCDカメラの全画素からの出力信号(光強度、光検出信号)の積分値と対物レンズの焦点位置(z軸上の座標)との関係は、図2の(A)のようになる。また、シャーレの位置および生体細胞の位置を図2の(A)と対応させて模式的に書くと、図2の(B)のようになる。
具体的には、対物レンズを光軸に沿って上側へ移動させていくと、CCDカメラの全画素からの光強度の積分値は、まず、照射光が強く反射する試料容器の外側底面の位置で極大且つ最大となる。そして、対物レンズを光軸に沿って更に上側へ移動させていくと、CCDカメラの全画素からの光強度の積分値は序々に低下し、試料容器の内側底面の位置で再び極大となる。なお、試料容器の内側底面の位置での積分値は、試料容器の内側底面とそれに接する培養液との屈折率差が試料容器の外側底面と空気の接触面との屈折率差に比べて小さいので、試料容器の外側底面の位置での積分値に比べて小さい。そして、対物レンズを光軸に沿って更に上側へ移動させていくと、CCDカメラの全画素からの光強度の積分値は急激に低下し、図2の(A)で示す位置αで再び極大となる。当該位置αが、デフォーカスに因る高いコントラストの撮像画像が得られるz軸上の位置である。また、当該位置αでは、生体細胞のほぼ下側の淵の部分(下側辺縁部)に対物レンズの焦点が合っている。そして、対物レンズを光軸に沿って更に上側へ移動させていくと、CCDカメラの全画素からの光強度の積分値は低下し、図2の(A)で示す位置βで極小となる。当該位置βでは、生体細胞のほぼ中央の位置に対物レンズの焦点が合っている。そして、対物レンズを光軸に沿って更に上側へ移動させていくと、CCDカメラの全画素からの光強度の積分値は増加し、図2の(A)で示す位置γで再び極大となる。当該位置γも、デフォーカスに因る高いコントラストの撮像画像が得られるz軸上の位置である。当該位置γでは、生体細胞のほぼ上側の淵の部分(上側辺縁部)に対物レンズの焦点が合っている。
つまり、図2の(A)で示す位置αから位置γまでの領域(位置βを含む)では、生体細胞の内部に対物レンズの焦点が合っているので、当該位置αおよび当該位置γに基づいて生体細胞内の特定の部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定することができる。また、位置βを生体細胞内の所定の部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定してもよい。
ここで、図2の(A)で示す位置αで生体細胞を撮像した時のCCDカメラの各画素からの出力信号(各画素がとらえた光の光強度に対応したディジタル信号)および図2の(A)で示す位置βで生体細胞を撮像した時のCCDカメラの各画素からの出力信号から、予め定めた閾値を越えた出力信号のみを有効な出力信号としてそれぞれ選択し、選択したそれぞれの出力信号の強度分布を求めた(図3参照)。図3は、図2の(A)で示す位置αで生体細胞を撮像した時のCCDカメラの特定の画素列に含まれる各画素の光強度の分布(図3の(A))、および図2の(A)で示す位置βで生体細胞を撮像した時のCCDカメラの特定の画素列に含まれる各画素の光強度の分布(細胞の内部の中央付近での出力信号の強度分布:図3の(B))を示す図である。なお、図3において点線は閾値を示す。図3に示す強度分布を統計処理することで、高いコントラストの画像が得られる対物レンズの焦点位置を決定することができる。さらに、図3で示す閾値より高い閾値を超えた光強度の画素の数の計算、および計算した画素の数の全画素数に対する割合(計算した画素数÷全画素数)の算出を、対物レンズの焦点位置を光軸上で動かしながら実行し、この割合が最も高かった時の対物レンズの焦点位置を最も高いコントラストの画像が得られる対物レンズの焦点位置として決定してもよい。
つぎに、高いコントラストの2つの画像(照明画像)を撮像した時の対物レンズの焦点位置に基づいて決定した対物レンズの焦点位置が、生体細胞内の中心部位(例えば発光する部位)にどの程度合っているかを、細胞の発光画像を実際に撮像して確認した。なお、ここで用いた生体細胞は、ルシフェラーゼ遺伝子(pGL3−control vector:プロメガ社)を、1mMのルシフェリンを添加して導入したHeLa細胞である。なお、発光画像は、当該HeLa細胞を室温で1分間露出してから撮像したものである。
まず、対物レンズを光軸に沿って移動させながらHeLa細胞を照明光源で照明しながら撮像し、対物レンズの遠点側で撮像したコントラストの最も高い撮像画像(照明画像)と、対物レンズの近点側で撮像したコントラストの最も高い撮像画像(照明画像)とを選出した。一方、対物レンズを光軸に沿って移動させながら照明を行わずにHeLa細胞を撮像し、コントラストの最も高い撮像画像(発光画像)を選出した。そして、選出した2つの照明画像を撮像した時の対物レンズ(20倍、40倍)の光軸上での焦点位置と、選出した発光画像を撮像した時の対物レンズ(20倍、40倍)の光軸上での焦点位置とを計測した。計測結果を図4に示す。なお、計測した焦点位置は、図5に示すように、対物レンズの焦点位置が試料容器(シャーレ)の外側底面の位置に合った時の対物レンズの光軸上での位置(基準位置)からの距離と同じである。
図4に示すように、選出した発光画像(図8の(B))を撮像した時の対物レンズの焦点位置(図4で示す「中心点」の欄に記載の10.507、10.506:図9で示す“Zb”)は、遠点側に対応する照明画像(図10の(A))を撮像した時の対物レンズの焦点位置(図4で示す「遠点側」の欄に記載の10.512、10.590:図11で示す“Za”)および近点側に対応する照明画像(図6の(A))を撮像した時の対物レンズの焦点位置(図4で示す「近点側」の欄に記載の10.500、10.503:図7で示す“Zc”)の略中央であった。これにより、選出した2つの照明画像(図6の(A)および図10の(A))を撮像した時の対物レンズの焦点位置(図7で示す“Zc”および図11で示す“Za”)に基づいて決定した対物レンズの焦点位置が、細胞内の略中央部位(例えば発光する部位)に合っていることが確認できた。つまり、上述した計算により、細胞内の略中央部位(例えば発光する部位)に対物レンズの焦点位置をあわせることができた。なお、図6は、近点側で撮像した最も高いコントラストの照明画像(A)と発光画像(B)とを示す図である。図7は、図6の画像を撮像した時の対物レンズの焦点位置を模式的に示す図である。図8は、中心点で撮像した最も高いコントラストの照明画像(A)と発光画像(B)とを示す図である。図9は、図8の画像を撮像した時の対物レンズの焦点位置を模式的に示す図である。図10は、遠点側で撮像した最も高いコントラストの照明画像(A)と発光画像(B)とを示す図である。図11は、図10の画像を撮像した時の対物レンズの焦点位置を模式的に示す図である。
これにて、本発明の基本原理の説明を終了する。
[2.装置構成]
つぎに、第1実施形態の焦点位置決定装置1の構成について、図12から図17を参照して詳細に説明する。まず、第1実施形態の焦点位置決定装置1の基本構成について、図12を参照して説明する。図12は、第1実施形態の焦点位置決定装置1の基本構成を示す図である。焦点位置決定装置1は、発光観察を行う際、生体細胞や組織などの試料10を設置した時点で、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を決定する。焦点位置決定装置1は、図12に示すように、光照射部20と、対物レンズ30と、焦点位置変更部40と、焦点位置計測部50と、試料撮像部60と、情報処理装置70と、で構成されている。
光照射部(光源)20は試料10へ光を照射する。光照射部20は、可視光領域の波長の光(可視光)を発するインコヒーレント光源であり、具体的にはハロゲンランプ、LED、タングステンランプ、水銀ランプなどである。なお、光照射部20としてレーザーなどのコヒーレント光源を用いてもよい。ただし、この場合、コヒーレント光源から発せられる光(レーザー光など)は、拡散板などを用いてインコヒーレントな光に変えてから試料10へ照射される。また、光照射部20として赤外光を発する光源を用いてもよい。この場合、赤外光による焦点決定は照明を行わない状態を維持したままで行えるので、自家蛍光による画像ノイズの発生を防止することができると共に可視光よりも鮮明な物体情報を得ることができる。つまり、赤外光による焦点決定には当該焦点決定を精密に行えるという利点がある。また、検出しようとする微弱光と波長が一部重複する光又は当該微弱光と波長が同一の光であっても、当該微弱光に対して有意に強い光強度で且つ短時間(例えば0.5秒以内)に検出可能な光であれば、焦点決定用の照射光として用いてもよい。
対物レンズ30は試料10の像を形成するためのものである。なお、対物レンズ30として可変焦点レンズを用いてもよい。なお、微弱光による画像化を可能にするために対物レンズは開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上、とくに0.071以上とするのが好ましい。このような光学条件にすることにより、微弱光による画像を実用的な露光時間(1分〜90分)で短時間で取得することができ、それ以上の露光によって得られる画像よりも鮮明な微弱光画像が得られるので、微弱光画像による画像解析をより有利なものにする。
焦点位置変更部40は、具体的には試料10の位置および/または対物レンズ30の位置を光軸方向に移動および/または対物レンズ30の焦点距離を変更することで、対物レンズ30の焦点位置を変更する。
焦点位置計測部50は、焦点位置変更部40と接続され、例えば試料10の光軸上での位置、対物レンズ30の光軸上での位置、対物レンズ30の焦点距離のうち少なくとも1つに基づいて、対物レンズ30の焦点位置を計測する。
試料撮像部60は試料10を撮像する。試料撮像部60は、具体的には撮像素子を有する高感度のCCDカメラである。
情報処理装置70は、具体的には市販のパーソナルコンピュータであり、焦点位置変更部40、焦点位置計測部50および試料撮像部60と接続されている。情報処理装置70は、制御部70aと記憶部70bとを備えている。制御部70aは、当該制御部70aを統括的に制御するCPU等であり、OS(Operating System)等の制御プログラム、各種の処理手順等を規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行するための情報処理を行う。
制御部70aは、焦点位置変更部40、焦点位置計測部50、試料撮像部60、後述する特徴量算出部70a1を繰り返し実行するよう、これら各部を制御したり、当該制御部70aが備える各部を制御したりする。また、キーボードやマウスなどの入力装置やTVモニタなどの出力装置が当該情報処理装置70と接続されている場合には、制御部70aは、入力装置で入力された情報を取得したり、出力装置へ情報を出力したりする。制御部70aは、特徴量算出部70a1と、焦点位置選出部70a2と、焦点位置決定部70a3と、特徴量比較部70a4と、焦点位置再決定部70a5と、で構成されている。特徴量算出部70a1は、試料撮像部60で撮像した撮像画像に基づいて撮像画像を特徴付ける特徴量(例えば、撮像画像のコントラスト、撮像画像の輝度の積分値、撮像画像の輝度分布から得られる統計量、撮像画像における所定の閾値を超えた輝度を有する画素数と全画素数との比など)を算出する。焦点位置選出部70a2は、制御部70aで各部(具体的には、焦点位置変更部40、焦点位置計測部50、試料撮像部60、特徴量算出部70a1)を繰り返し実行させたことにより蓄積した複数の焦点位置(焦点位置計測部50で計測した焦点位置)から、繰り返し実行させたことにより蓄積した特徴量に基づいて、少なくとも1つの焦点位置を選出する。焦点位置決定部70a3は、焦点位置選出部70a2で選出した焦点位置に基づいて、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置を決定する。特徴量比較部70a4は、特徴量算出部70a1で予め個別に算出した2つの特徴量の大小を比較する。焦点位置再決定部70a5は、特徴量比較部70a4で比較した結果に基づいて試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置を再度決定する。
記憶部70bは、ストレージ手段であり、具体的には、RAMやROM等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。記憶部70bは、図示の如く、撮像画像データベース70b1と焦点位置管理ファイル70b2とを格納する。撮像画像データベース70b1は、撮像画像を一意に識別するための画像識別情報と、撮像画像と、当該撮像画像を撮像した時の対物レンズの焦点位置と、当該撮像画像の特徴量と、を相互に関連付けて格納する。焦点位置管理ファイル70b2は、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置(具体的には焦点位置決定部70a3で決定した焦点位置や焦点位置再決定部70a5で再度決定した焦点位置)を格納する。ここで、撮像画像には、照明画像、発光画像、蛍光画像が含まれる。
つぎに、第1実施形態の焦点位置決定装置1の構成の具体的一例について、図13を参照して説明する。なお、上述した説明と重複するものについては、その説明を省略する場合がある。図13は、第1実施形態の焦点位置決定装置1の構成の具体的一例を示す図である。図13に示す焦点位置決定装置1は、倒立型顕微鏡をベースとする構成であり、図12に示す焦点位置決定装置1と同様、微弱光を発する生体細胞の発光観察を行うために用いるものである。図13に示す焦点位置決定装置1は、上述した各部(光照射部20、対物レンズ30、焦点位置変更部40、焦点位置計測部50、試料撮像部60、情報処理装置70)に加えて、さらに、照明光学系、観察光学系、接眼レンズ43などを備えて構成されている。以下、当該焦点位置決定装置1を構成する各部を詳細に説明する。
試料10は、試料容器11に入れた培養液に浸されている。
試料容器11は、具体的にはシャーレであり、少なくともその底面が光学的に透明なもの(通常の対物レンズで対応できるようなもの)である。なお、当該底面は、具体的には顕微鏡用のカバーガラスと同じ素材で厚さが0.17mmのものである。ここで、試料容器11として、シャーレの他、スライドガラス、マイクロプレートなどを用いてもよい。また、試料容器11に対して、図14に示すように、フタ18を配設してもよい。再び図13に戻り、試料容器11は、ノズル13を通して供給された純水が張られた水槽12内に配置されている。なお、当該純水は、試料容器11内の湿度を保つことを目的として水槽12内に入れられている。
水槽12には、ガスボンベ14から排出された混合ガス(二酸化炭素(CO2)を5%、酸素(O2)を95%含むガス)が、ガス供給チューブ15を通して、図示の如く水槽12の上方から、50mL/minの流速で供給されている。なお、水槽12の形状は、図14に示すような、試料容器11全体を覆い隠す形状でもよい。この場合、水槽12の上部には着脱可能なフタ19が配設される。再び図13に戻り、水槽12はヒートプレート16の上に配置されている。
ヒートプレート16は環境温度の設定を行うものであり試料ステージ17の上に配置されている。なお、ヒートプレート16は、当該ヒートプレート16と接続された温度コントローラー(図示せず)の制御により、環境温度の設定を0.5℃間隔で行うことができる。
試料ステージ17は、試料10などを設置するための板状のものであり、図示の如く光軸(z軸)に直交するように配設されている。試料ステージ17は、互いに直交する向き(90°方向)で当該ステージの所定の位置に取り付けられた2個のステッピング・モーター(図示せず)の駆動力に因り、当該ステージが配設された位置から光軸(z軸)に直交する方向(例えばx方向やy方向)に移動可能である。なお、各ステッピング・モーターは、当該各モーターと接続された試料ステージコントローラー(図示せず)で制御される。また、試料ステージコントローラーは、情報処理装置70と接続されており、情報処理装置70からの指令に基づいて各ステッピング・モーターを適宜駆動し、試料ステージ17を移動する。
照明光学系は、光源20から発せられた照明光を試料10へ導くためのものであり、コレクターレンズ21と、照明光の光軸を偏向する偏向ミラー22と、光源20の像を投影するコンデンサーレンズ23と、で構成されている。
ここで、コンデンサーレンズ23の瞳位置には、図15の(A)に示す開口ユニット24が着脱自在に配設されている。図15は、開口ユニット24の構成および対物レンズ30の瞳における開口の投影像の一例を示す図である。開口ユニット24は、部分輪帯の開口24aと遮光性を有する遮光板24bとで構成されている。開口24aは、瞳の中心に対して偏芯した状態になるように光軸に対して配設され、自在に横ずれを起こすことができる構成となっている。開口24aの開口径は、当該開口24aの投影像が図15の(B)に示すように対物レンズ30の瞳の外周部分にほぼ内接するように決める。開口24aの幅(図15の(A)に示す“Ro−Ri”)は、共役関係にある対物レンズ30の瞳半径の3分の1以下であることが望ましい。これにより、観察する生体細胞の種類によって対物レンズ30の移動量を適宜設定することで、最良のコントラストの像を得ることができる。
なお、開口ユニット24は、図16の(A)に示すように、矩形の開口24aを備えたものでもよい。図16は、開口ユニット24の別の構成および対物レンズ30の瞳における開口の投影像の一例を示す図である。当該矩形の開口24aは、瞳の中心位置から所定の距離だけ離れた位置に、瞳の中心に対して偏芯した状態で配設されている。当該矩形の開口24aを備えた開口ユニット24を用いて試料10を偏射照明することで、対物レンズ30の瞳に開口24aの像を投影させる。また、矩形の開口24aは瞳の中心に対して同心円状に配設されてないので、例えば観察する生体細胞が細長い場合において高いコントラストの像を得ることができる。ここで、偏射照明光は、立体的な大きさをもった生体細胞に入射され、透過光、屈折光および回折光に分離されて生体細胞から射出される。生体細胞内において、球や楕円体に近い形状の輪郭である部分からは屈折光が多くなり、扁平な部分からは透過光と回折光が多くなる。細胞内の、球や楕円体に近い形状である部分で屈折した屈折光の一部は、対物レンズ30のNAより大きくなるので、対物レンズ30には取り込まれない。
また、図17に示すように、偏向ミラー22の下側に、光源20を準単色とするための干渉フィルター25を配設してもよい。これにより、光源20から発せられた照明光は偏向ミラー22で進行方向が偏向され、偏向された照明光は、干渉フィルター25を通ることで波長帯域バンド幅の極めて狭い単色光となって、コンデンサーレンズ23へ向かう。なお、干渉フィルターに限らず、狭帯域バンドパス・フィルターを用いてもよい。
再び図13に戻り、観察光学系は、試料10の像を形成するためのものであり、試料ステージ17の下方に倒立に配置されている。観察光学系は、対物レンズ30以外に、対物レンズ30で形成された像(試料10の像)を結像面に結像させるリレーレンズ31と、対物レンズ30からの光を偏向する偏向ミラー32と、リレーレンズ31と共に対物レンズ30で形成された像(試料10の像)を結像面に結像させるリレーレンズ33と、で構成されている。従って、前述及び後述する対物レンズに関する光学条件である「(NA÷β)の2乗」の値は、これら観察光学系における全てのレンズを総合した条件を意味する。なお、本発明では、対物レンズを除く観察光学系が決定されている場合に、低倍率ないし高倍率の対物レンズに交換する際の対物レンズの選定条件を説明するものであり、対物レンズ単独で決定される光学条件ではない。本発明の実施形態では、対物レンズ以外の観察光学要素として、例えば図13に示されるリレーレンズ31、33や、図26に示される集光レンズ3Aが挙げられる。このような観察光学系を具備することにより、高開口数(NA)と拡大倍率とで決まる光学条件と適用すべき方法または装置と連携して、微弱光による撮像との連携を最適化することが可能となる。
焦点位置変更部40は、具体的には、ラックピニオン機構(図示せず)で対物レンズ30を光軸方向(z軸方向)に移動(駆動)させる対物レンズz軸移動(駆動)機構である。ラックピニオン機構に含まれるノブは、コンピュータ制御されたステッピング・モーター(図示せず)で回転させる。なお、対物レンズz軸移動機構は、ラックピニオン機構の他、フリクションローラー機構で対物レンズ30を光軸方向に移動させてもよい。また、焦点位置変更部40は、対物レンズ30を光軸に沿って移動させる構成の他、試料ステージ17を光軸に沿って移動させる構成でもよい。対物レンズz軸移動機構には、図示の如く、対物レンズヒーター41が備えられている。
対物レンズヒーター41は、図示の如く、対物レンズ30に接触して対物レンズ30の周囲に取り付けられている。対物レンズヒーター41は、当該対物レンズヒーター41と接続された温度調節装置(図示せず)により制御されている。対物レンズヒーター41は、対物レンズ30の外側から対物レンズ30の温度設定を0.5℃間隔で行うことで、対物レンズ30の温度を一定に保っている。
接眼レンズ43は、試料10の像を拡大するものであり、観察者に試料10の像を目視で観察させるためのものである。
切替ミラー44は、図示の如く、接眼レンズ43とリレーレンズ33との間に配設されている。これにより、接眼レンズ43による試料10の目視での観察と、試料撮像部60による試料10の観察とを、任意に切り替えることができる。なお、切替ミラー44として、機械的に2つの光路を切り替える形式のものの他、ハーフミラーを用いて2つの光路を分離する形式のものを用いてもよい。
赤外線カットフィルター45は、図示の如く試料撮像部60の受光面の上方に着脱自在に配設され、背景光となる赤外線を遮断する。換言すると、赤外線カットフィルター45は、背景光となる赤外線が試料撮像部60に入射するのを必要に応じて防ぐ。
試料撮像部60は、具体的には、その受光面に撮像素子60aを有するCCDカメラである。当該撮像素子60aの画素数は1360×1024である。当該CCDカメラには、試料10から発せられた微弱光を検出することができるよう、できるだけ高感度のものを用いる。ここで、CCDカメラとして、カラーの明視野像を撮像するために、3板式カラーカメラを用いてもよい。また、試料撮像部60は、CCDカメラに限定することなく、例えばCMOSイメージセンサーやSITカメラなどを用いてもよい。試料撮像部60は、情報処理装置70(当該情報処理装置70と接続されたTVモニタ)と信号ケーブルを介して接続されている。試料撮像部60の底部には、CCDカメラから発する暗電流を抑えるために、冷却装置61が配設されている。
冷却装置61は、ペルチェ素子から成るものであり、試料撮像部60の温度を0℃程度に冷却して保温する。
情報処理装置70は、入出力装置(TVモニタ、キーボード、マウスなど)をさらに備えている。情報処理装置70は、試料撮像部60で撮像した撮像画像をTVモニタに描出する。
以上、図13に示す焦点位置決定装置1では、まず、光照射部20から発せられた光はコレクターレンズ21で平行光にされ、この平行光がコンデンサーレンズ23の瞳位置に投影される。そして、光照射部20から発せられた光の像は、コンデンサーレンズ23によりケーラー照明として試料10を照明する。つぎに、試料10を照明した光は、試料10を透過して、対物レンズ30に入射する。つぎに、対物レンズ30に入射した光(測定光)は、対物レンズ30、リレーレンズ31およびリレーレンズ32により結像面に試料10の像を形成する。そして、結像面に形成された試料10の像は、接眼レンズ43にそのまま入射すると共に、切替ミラー44によりCCDカメラ60の撮像素子60a上に結像する。
これにて、第1実施形態の焦点位置決定装置1の構成の説明を終了する。
[3.焦点位置決定装置1の処理]
つぎに、第1実施形態の焦点位置決定装置1が行う焦点位置決定処理について図18を参照して説明する。図18は、第1実施形態の焦点位置決定装置1が行う焦点位置決定処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、生体細胞の発光観察を図13に示す焦点位置決定装置1を用いて行う場合における焦点位置決定処理について説明する。
観察者が、試料10である生体細胞を入れた試料容器11を試料ステージ17上に設置し、焦点位置決定装置1および光源20を起動させると、焦点位置決定装置1は以下の処理を行う。
まず、焦点位置決定装置1は、光源20から発せられた照明光を、生体細胞へ照射する(ステップSA−1)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより焦点位置変更部40である対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により対物レンズ30を初期位置から光軸に沿って一定量だけ移動させることで、対物レンズ30の焦点位置を変更する(ステップSA−2)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより焦点位置計測部50を動作させ、焦点位置計測部50により対物レンズ30の焦点位置を計測する(ステップSA−3)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより試料撮像部60であるCCDカメラを動作させ、CCDカメラにより生体細胞を撮像する(ステップSA−4)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより特徴量算出部70a1を動作させ、特徴量算出部70a1により、ステップSA−4で撮像した撮像画像に基づいて当該撮像画像のコントラストを算出する(ステップSA−5)。
ここで、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、ステップSA−3で計測した焦点位置、ステップSA−4で撮像した撮像画像およびステップSA−5で算出したコントラストを、相互に関連付けて、記憶部70bの撮像画像データベース70b1に格納する。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、ステップSA−2からステップSA−5を、ステップSA−2で変更した対物レンズ30の焦点位置が光軸上の予め定められた位置を越えるまで、繰り返し実行する(ステップSA−6)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、焦点位置選出部70a2を動作させ、焦点位置選出部70a2により、撮像画像データベース70b1に格納された複数のコントラストのうち極大となる2つのコントラストを選出し、選出したコントラストと対応付けられて撮像画像データベース70b1に格納されている焦点位置を取得する(ステップSA−7)。換言すると、焦点位置決定装置1は、焦点位置選出部70a2により、撮像画像データベース70b1に格納された複数の焦点位置から、撮像画像データベース70b1に格納された複数の特徴量に基づいて、対物レンズ30の近点側の焦点位置(略焦点位置)および対物レンズ30の遠点側の焦点位置(略焦点位置)を選出する。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、焦点位置決定部70a3を動作させ、焦点位置決定部70a3により、ステップSA−7で選出した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央の位置(略中央の位置)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定する(ステップSA−8)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により、ステップSA−8で決定した中央の位置(略中央の位置)に対物レンズ30の焦点位置が合うように、対物レンズ30の位置を調整する(ステップSA−9)。このように調整された焦点位置を用いて微弱光画像としての発光画像を取得し、発光画像を画像解析する(ステップSA−10、11)。この画像解析は、光照射して得た照明画像と一緒に画像解析することにより、より迅速かつ正確な解析を行うことができる。
以上、説明したように、第1実施形態の焦点位置決定装置1は、光源20により生体細胞へ照射光を照射する。そして、焦点位置決定装置1は、対物レンズz軸移動機構により対物レンズ30を光軸に沿って一定量ずつ繰り返し移動させながら、移動させる度に、焦点位置計測部50により対物レンズ30の焦点位置を計測し、CCDカメラにより生体細胞を照明して撮像し、特徴量算出部70a1により、撮像した撮像画像のコントラストを算出する。そして、焦点位置決定装置1は、焦点位置選出部70a2により、対物レンズ30を繰り返し移動させたことで蓄積した複数のコントラストのうち極大となるコントラストを2つ選出し、選出したコントラストに対応する撮像画像を撮像した時の対物レンズ30の焦点位置を、対物レンズ30を繰り返し移動させたことで蓄積した複数の焦点位置から取得する。そして、焦点位置決定装置1は、焦点位置決定部70a3により、取得した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央の位置(略中央の位置)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定し、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30を移動させて、対物レンズ30の焦点位置を、決定した焦点位置に合わせる。これにより、生体細胞内の特定の部位を観察対象部位10aとして当該観察対象部位10aの発光観察を行う場合、生体細胞を設置した時点で、当該観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を決定することができ、その結果、対物レンズ30の焦点位置を当該観察対象部位10aに合わせることができる。具体的には、焦点位置決定装置1によれば、微弱光を発する生体細胞をレンズを含む拡大結像光学手段を用いて観察したり、当該生体細胞からの発光を測定したり、例えば、生体細胞内からの生物発光タンパク質による微弱発光を観察したりする顕微鏡において、生体細胞からの発光を確認しなくても、生体細胞内の発光している部位(生物発光タンパク質が局在する部位)に対物レンズの焦点を自動的に合わせることができる。ゆえに、レンズを含む拡大結像光学手段を用いて微弱光を発する試料の観察を行う際に、対物レンズの焦点位置を、試料内の目的とする部位に、手動で行う場合と比べて迅速に且つ精度よく設定することができる。また、焦点位置決定装置1では、対物レンズの焦点位置を決定において試料の照明画像を用いているが、当該照明画像は明るくしかもコントラストが高いので、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を、目視で行う場合と比べて容易且つ迅速に決定することができる。また、焦点位置決定装置1では、コントラストが高い、試料10の照明画像を撮像した時の対物レンズ30の焦点位置が、試料10のほぼ上下辺縁部に対応しているので、その中央位置(略中央位置)を、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定すればよい。これにより、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を容易且つ簡便に決定することができる。
ここで、生物(生体細胞など)による発光現象を測定する場合、試料を設置した時点では、生物からの発光は、その強度が極めて微弱であるため、高性能のCCDカメラでもほとんど検出することができない。すなわち、通常の顕微鏡観察のように生物内の観察対象部位(細胞など)を確認しながら対物レンズの焦点を合わせることができない。つまり、生物を設置した時点では、通常、生物の内部構造を観察することができない。また、蛍光や発光(化学発光または生物発光)を観察する顕微鏡においては、細胞内の発光タンパク質が局在する部位(微弱発光する部位)を細胞間で同時に観察する際、細胞などの位相物体の照明画像に基づいて検出した対物レンズの焦点位置では、細胞内に局在する発光タンパク質の発光部分に合わず、観察画像がぼけてしまう。また、蛍光観察においては、蛍光励起光により蛍光を発している位相物体について蛍光強度が最も大きい位置を焦点位置として決定している。ただし、この決定方法の場合、励起光に因る光毒性が強いため、生きた細胞など生物活性を有する試料に対して繰り返し焦点位置を決定するのは望ましくないので、焦点位置の決定回数をできるだけ少なくする必要がある。しかし、長期間の蛍光観察においては、焦点位置の決定回数を少なくすると、観察画像の鮮明度が不安定になる可能性がある。そこで、焦点位置決定装置1では、照明光による画像観察として、ハロゲンランプなどの光源20から発せられる光を生物に照射し、顕微鏡により生物の照明画像を取得し、取得した照明画像に基づいて対物レンズ30の焦点位置を決定する。つまり、生体細胞を照明下で撮像し、生体細胞の内部の位置を推定する。これにより、生物を設置した時点で生物の内部構造を観察することができる。また、細胞内の発光タンパク質が局在する部位(微弱発光する部位)を細胞間で同時に観察する際、細胞内に局在する発光タンパク質の発光部分に対物レンズの焦点を合わせることができる。また、蛍光で対物レンズの焦点位置を決定しないので、長期間の蛍光観察を行うことができる。
なお、焦点位置決定装置1は、ステップSA−7において、焦点位置選出部70a2により、撮像画像データベース70b1に格納された複数の焦点位置から、撮像画像データベース70b1に格納された複数の特徴量に基づいて、対物レンズ30の近点側の焦点位置(対物レンズ30の近点側においてコントラストの高い撮像画像が得られた時の対物レンズ30の焦点位置)を選出し、ステップSA−8において、焦点位置決定部70a3により、選出した対物レンズ30の近点側の焦点位置から予め測定した生体細胞の厚みの半分の距離だけ光軸の上方に離れた位置を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定してもよい。換言すると、焦点位置決定装置1は、照明下での観察による近点側の高コントラストの画像が得られた時の対物レンズ30の焦点位置を選出し、選出した焦点位置から細胞の厚さの半分程度の距離だけ光軸の上方に離れた位置を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定してもよい。また、焦点位置決定装置1は、ステップSA−7において、焦点位置選出部70a2により、撮像画像データベース70b1に格納された複数の焦点位置から、撮像画像データベース70b1に格納された複数の特徴量に基づいて、対物レンズ30の遠点側の焦点位置(対物レンズ30の遠点側においてコントラストの高い撮像画像が得られた時の対物レンズ30の焦点位置)を選出し、ステップSA−8において、焦点位置決定部70a3により、選出した対物レンズ30の遠点側の焦点位置から予め測定した生体細胞の厚みの半分の距離だけ光軸の下方に離れた位置を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定してもよい。換言すると、焦点位置決定装置1は、照明下での観察による遠点側の高コントラストの画像が得られた時の対物レンズ30の焦点位置を選出し、選出した焦点位置から細胞の厚さの半分程度の距離だけ光軸の下方に離れた位置を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定してもよい。これにより、対物レンズ30や試料10を動かして、近点側と遠点側のデフォーカス位置を選出する場合に比べて、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置を容易且つ簡便に決定することができる。
ここで、焦点位置決定装置1は、以下の工程1から工程6を実行することで、試料容器11に配置された生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を決定してもよい。
(工程1)光源20の電源を入れ、光源20のシャッターを開閉して試料容器11の上方から照明光を照射する。
(工程2)試料容器11の底面(外側底面または内側底面)に合うような対物レンズ30の焦点位置(図14の“Zd”に対応)を決定する。具体的には、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30を光軸に沿って一定量ずつ移動させながら、一定量移動させる度に、CCDカメラにより生体細胞を照明下で撮像し、特徴量算出部70a1により、撮像した撮像画像の全画素からの光強度の積分値(CCDカメラからの出力信号の強度)を算出し、制御部70aにより、算出した積分値が極大値であるか否かを確認し、極大値であると確認された場合には、当該極大値の元となった撮像画像を撮像した時に対物レンズ30の焦点が試料容器11の底面に合っていると見做して、当該撮像した時の対物レンズ30の焦点位置(図14の“Zd”に対応)を焦点位置計測部50で計測する。つまり、対物レンズ30を光軸に沿って動かしながら、試料容器11の底面からの反射光の極大値を照明画像で決定する。
(工程3)対物レンズ30の近点側において、コントラストの高い撮像画像を撮像した時の対物レンズ30の焦点位置(図14の“Zc”に対応)を決定する。具体的には、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30を、(工程2)で移動させた位置からさらに光軸に沿って一定量ずつ移動させながら、一定量移動させる度に、CCDカメラにより生体細胞を照明下で撮像し、特徴量算出部70a1により、撮像した撮像画像のコントラストを算出し、制御部70aにより、算出したコントラストが極大値であるか否かを確認し、極大値であると確認された場合には、当該極大値の元となった撮像画像を撮像した時に対物レンズ30の焦点が生体細胞のほぼ下端面に合っていると見做して、当該撮像した時の対物レンズ30の焦点位置(図14の“Zc”に対応)を焦点位置計測部50で計測する。
(工程4)対物レンズ30の遠点側において、コントラストの高い撮像画像を撮像した時の対物レンズ30の焦点位置(図14の“Za”に対応)を決定する。具体的には、対物レンズz軸移動機構により対物レンズ30を(工程3)で移動させた位置からさらに光軸に沿って一定量ずつ移動させながら、一定量移動させる度に、CCDカメラにより生体細胞を照明下で撮像し、特徴量算出部70a1により、撮像した撮像画像のコントラストを算出し、制御部70aにより、算出したコントラストが極大値であるか否かを確認し、極大値であると確認された場合には、当該極大値の元となった撮像画像を撮像した時に対物レンズ30の焦点が生体細胞のほぼ上端面に合っていると見做して、当該撮像した時の対物レンズ30の焦点位置(図14の“Za”に対応)を焦点位置計測部50で計測する。
(工程5)(工程3)で決定した焦点位置(図14の“Zc”に対応)および(工程4)で決定した焦点位置(図14の“Za”に対応)の略中央の位置(例えば、図14の“Zb((Zc+Za)÷2)”に対応)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定する。
(工程6)(工程5)で決定した中央の位置に対物レンズ30の焦点位置が合うように、対物レンズ30を移動する。
なお、工程4および工程5において、対物レンズ30を一定量移動させる度にCCDカメラで生体細胞を照明下で撮像すると共に当該撮像した時の対物レンズ30の焦点位置を計測し、対物レンズ30を移動させながら撮像してきた複数の撮像画像のコントラスト(複数の撮像画像の各画素からの出力信号の総和)を算出し、算出した各コントラスト(各総和)を比較して極大のコントラスト(総和)を選出し、選出したコントラスト(総和)に対応する撮像画像を撮像した時の対物レンズ30の焦点位置を、対物レンズ30を移動させながら計測してきた複数の対物レンズ30の焦点位置の中から選択することで、図14の“Zc”または“Za”に対応する対物レンズ30の焦点位置を決定してもよい。また、焦点位置決定装置1は、CCDカメラの代わりにフォトダイオードを配設してもよい。この場合、工程4および工程5において、対物レンズ30を一定量移動させる度に、フォトダイオードの出力電流を増幅して電圧信号に変換すると共に対物レンズ30の焦点位置を計測し、対物レンズ30を移動させながら変換してきた複数の電圧信号の強度を比較して極大の電圧信号の強度を選出し、選出した電圧信号の強度に対応する対物レンズ30の焦点位置を、対物レンズ30を移動させながら計測してきた複数の対物レンズ30の焦点位置の中から選択することで、図14の“Zc”または“Za”に対応する対物レンズ30の焦点位置を決定してもよい。また、焦点位置決定装置1において、対物レンズ30や試料10を移動させる量(移動量)は、CCDカメラで撮像した像にボケが生じない範囲であることが望ましい。具体的には、当該移動量は、光源20で発せられる光の波長を対物レンズ30のNAの二乗で割った値(λ÷NA2:λは波長、NAは開口数)以下であることが望ましい。
また、焦点位置決定装置1において、光源20として単色性の高い光源(レーザーなど)を用いてもよい。ここで、光源の単色性が高いと、照明光を位相物体に照射したときに、波長分散がほとんど無くなるので、シャープな回折光が得られる。従って、近点側の撮像画像、遠点側の撮像画像のいずれにおいても、そのコントラストが、白色光源を用いたときと比べて、非常に高くなる。これにより、コントラストが極大となる撮像画像を撮像した時の対物レンズの焦点位置を容易に選出することができる。
また、焦点位置決定装置1において、観察者(オペレーター)が、対物レンズz軸移動機構のノブを手動で回しながら接眼レンズ43を介して、生体細胞の像のコントラストが高くなる2箇所の対物レンズの位置を目視で決定し、焦点位置計測部50により、当該決定した時の対物レンズの焦点位置を計測し、焦点位置決定部70a3により、計測した2つの焦点位置の中央位置(略中央位置)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置として決定してもよい。
また、焦点位置決定装置1によれば、対物レンズ30の位置を通常の観察の合焦位置から試料10に対して微小量だけ前後に移動させることにより、位相差用の対物レンズを使用しなくても位相差観察法と同様なコントラストの像を得ることができる。また、焦点位置決定装置1によれば、対物レンズ30とコンデンサーレンズ23との瞳収差を考慮する必要がないので、低倍率の対物レンズを使用することができる。つまり、焦点位置決定装置1によれば、位相差観察法では使えない、1倍や2倍の倍率の対物レンズを使用しても、培養細胞のような位相物体を観察することができ、従来の観察法では実現できなかった広い範囲での観察が可能になる。また、焦点位置決定装置1によれば、偏射照明により、位相分布に陰影を付けたレリーフ感のある、高いコントラストの像を得ることができる。また、焦点位置決定装置1によれば、切替ミラー44により、目視による観察とTVモニタによる観察とを切り替えて行うことができる。また、切替ミラー44としてハーフミラーを用いることで、目視による観察とTVモニタによる観察とを同時に行うことができる。また、焦点位置決定装置1によれば、開口を取り外すことで、通常の顕微鏡として試料の観察を行うことができる。また、焦点位置決定装置1によれば、対物レンズ30の焦点位置の決定を2段階に分けて実施することにより、高倍率の対物レンズを用いた場合でも焦点位置の決定を行うことができる。また、焦点位置決定装置1によれば、励起光を使用しないので、蛍光を発する生物学的試料に対して繰り返し焦点位置決定処理を実行しても、光毒性の影響が殆どないという利点がある。換言すると、生きた細胞に対して連続的・経時的に観察を行う場合において、焦点位置決定処理を繰り返し行うことで鮮明な撮像画像を撮像し続けることができる。また、焦点位置決定装置1によれば、赤外光を用いて焦点位置決定処理を行う場合において、可視光での照明を行わない状態を維持したまま、対物レンズの焦点位置を合わせることと試料の暗視野画像を撮像することの両方を行うことができるので、自家発光により撮像画像にノイズが生じることを効果的に防止することができる。
また、焦点位置決定装置1は、試料10から発せられる発光の強度がCCDカメラで検出できる程度になった場合には、試料10を設置した時点で決定した、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置を再度決定し直してもよい(焦点位置再決定処理)。ここで、高倍率(例えば40倍以上)の対物レンズ30で試料10からの発光を観察する場合には、対物レンズ30の倍率が高くなればなるほど、焦点深度が極めて浅くなっていくので、対物レンズ30の焦点位置が精確に試料10内の観察対象部位10aに合ってないと試料10の像がぼやける。上述した焦点位置決定処理で決定した焦点位置は試料10のほぼ中心に合っているが、さらに高精度で試料10からの発光を取得する場合には、より精度よく試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を決定する必要がある。そこで、焦点位置再決定処理を実行することにより、試料10を設置した時点だけでなく、試料10の発光観察を開始してからも、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置を決定し続けることができ、その結果、対物レンズの焦点位置を常に当該観察対象部位10aに合わせることができる。ここで、焦点位置決定装置1が行う焦点位置再決定処理について、図19を参照して説明する。図19は、第1実施形態の焦点位置決定装置1が行う焦点位置再決定処理の一例を示すフローチャートである。
まず、焦点位置決定装置1は、制御部70aによりCCDカメラを動作させ、CCDカメラにより、焦点位置決定部70a3で決定した焦点位置(上述した図18におけるステップSA−8で決定した、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置)にて、試料10を照明を行わずに撮像する(ステップSB−1)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、制御部70aにより特徴量算出部70a1を動作させ、特徴量算出部70a1により、ステップSB−1で撮像した撮像画像(発光画像)に基づいて特徴量(例えば発光画像の各画素からの発光強度、発光画像の発光強度分布から得られる統計量、発光画像のコントラストなど)を算出する(ステップSB−2)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、制御部70aにより対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30を光軸に沿って一定量だけ移動することで、焦点位置決定部70a3で決定した焦点位置を変更する(ステップSB−3)。なお、焦点位置の変更は、対物レンズ30の移動の他、試料ステージ17の移動で行ってもよい。
つぎに、焦点位置決定装置1は、制御部70aによりCCDカメラを動作させ、CCDカメラにより、ステップSB−3で変更した焦点位置にて試料10を照明を行わずに撮像する(ステップSB−4)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、制御部70aにより特徴量算出部70a1を動作させ、特徴量算出部70a1により、ステップSB−4で撮像した撮像画像(発光画像)に基づいて特徴量(例えば発光画像の各画素からの発光強度、発光画像の発光強度分布から得られる統計量、発光画像のコントラストなど)を算出する(ステップSB−5)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、制御部70aにより特徴量比較部70a4を動作させ、特徴量比較部70a4により、ステップSB−2で算出した特徴量とステップSB−5で算出した特徴量とを比較する(ステップSB−6)。なお、特徴量の比較においては、試料10の種類や特性に因りコントラストで比較した方が適当である場合と発光強度分布から得られる統計量で比較した方が適当である場合とがあるが、最終的にはS/N(シグナル・ノイズ比)で比較する。
つぎに、焦点位置決定装置1は、ステップSB−6での比較結果がステップSB−5で算出した特徴量の方が大きかった場合(ステップSB−7:Yes)には、制御部70aにより焦点位置決定部70a5を動作させ、焦点位置決定部70a5により、ステップSB−3で変更した焦点位置を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズの焦点位置として決定する(ステップSB−8)。
一方、焦点位置決定装置1は、ステップSB−6での比較結果がステップSB−5で算出した特徴量の方が大きくなかった場合(ステップSB−7:No)には、制御部70aにより、ステップSB−3の実行回数が所定回数に達したか否か(ステップSB−3での対物レンズ30の移動量が所定量に達したか否か)を確認し、所定回数に達した場合(ステップSB−9:Yes)には、制御部70aにより対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により、ステップSB−3で変更した対物レンズ30の焦点位置を、焦点位置決定部70a3で当初決定した焦点位置(上述した図18におけるステップSA−8で決定した、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置)に戻す(ステップSB−10)。また、焦点位置決定装置1は、所定回数に達してない場合(ステップSB−9:No)には、制御部70aにより、ステップSB−3の処理に戻る。
以上、第1実施形態の焦点位置決定装置1の説明を終了する。
[第2実施形態]
つぎに、第2実施形態の焦点位置決定装置1の構成について、図20から図22を参照して詳細に説明する。なお、上述した第1実施形態の説明と重複する説明を省略する場合がある。
図20は、第2実施形態の焦点位置決定装置1の構成の具体的一例を示す図である。図20に示す焦点位置決定装置1は、倒立型顕微鏡をベースとする構成であり、微弱光を発する生体細胞の発光観察と蛍光観察とを同時に行うために用いるものである。焦点位置決定装置1は、蛍光観察と発光観察とを同時に行う際、生体細胞や組織などの試料10を設置した時点で、試料10内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を決定する。焦点位置決定装置1は、図20に示すように、励起光照射部(励起用光源)80、コリメートレンズ81、偏向ミラー82およびダイクロイックミラー83からなる励起用光学系をさらに備えて構成されている。
なお、図20に示す焦点位置決定装置1において、試料10が空気中に存在する(試料10が培養液などの液体に浸されてない)場合には、対物レンズ30として開口数(NA)が0.9程度のものを用い、試料10が液体に浸されている場合には、対物レンズ40として開口数が1.0以上のものを用いる。また、試料10は、蛍光色素(蛍光物質)であるローダミン・グリーン(Rhodamine Green:RhG)で予め染色されている。ここで、蛍光物質として、ローダミン・グリーンの他、例えばTMR(Tetramethylrhodamine)、5−Tamra(5−carboxytetramethylrhodamine)、FITC(Fluorescein−isothiocyanate)、TOTO1、Acridine−Orange、Texas−Redなどを用いてもよい。
励起光照射部80は、可視光領域の波長のレーザー光を発するガスレーザー(例えばアルゴン・レーザー、ヘリウムネオン・レーザー(He・Neレーザー)など)であり、具体的には、波長488nmで出力10mWのアルゴン・レーザーである。ここで、試料10を蛍光物質であるTMRで染色した場合には、当該TMRを励起するために、励起光照射部80として波長514.5nmのアルゴン・レーザーを用いる。また、試料10を蛍光物質である5−Tamraで染色した場合には、当該5−Tamraを励起するために、励起光照射部80として波長543.5nmのHe・Neレーザーを用いる。
コリメートレンズ81は、励起光照射部80から発せられたレーザー光を、ビーム幅を有する円形の平行光束に変換する。
偏向ミラー82は、コリメートレンズ81で平行光束に変換されたレーザー光の光軸を偏向する。
ダイクロイックミラー83は、具体的には切替式ダイクロイックミラーであり、偏向ミラー82で偏向されたレーザー光を対物レンズ30へ入射させる。なお、切替式ダイクロイックミラーは、励起用光源80の発振波長の光を反射し、蛍光信号および発光信号のスペクトルを透過するスペクトル特性を持っている。ここで、ダイクロイックミラー83は、ホルダー(図示せず)に収められており、レーザー光の発振波長に合わせて、交換可能に配設されている。なお、励起光照射部80から発するレーザー光の波長を変更する必要がなければ、ダイクロイックミラー83として、切替式のものでなく、通常のダイクロイックミラーを用いてもよい。
以上、図20に示す焦点位置決定装置1では、試料10から発せられた蛍光および発光は、対物レンズ30を通って、ダイクロイックミラー83に到達する。そして、ダイクロイックミラー83に到達した蛍光および発光は、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ31およびリレーレンズ33を通って、切替ミラー44で反射し、CCDカメラ60の受光面にある撮像素子60aで焦点を結ぶ。なお、切替ミラー44を光路から取り外した場合、試料10から発せられた蛍光および発光は、接眼レンズ43に到達する。これにより、観察者が試料10の像を直接観察することができる。
つぎに、第2実施形態の焦点位置決定装置1の構成の別の具体的一例について、図21を参照して詳細に説明する。図21は、第2実施形態の焦点位置決定装置1の構成の別の具体的一例を示す図である。
図21に示すように、焦点位置決定装置1の本体(光学系部分)は本体架台106に固定されている。なお、本体架台106は上下方向に移動できるような構成である。本体架台106は支柱105に取り付けられている。支柱105は底板100の上に固定されている。焦点位置決定装置1の観察光学系やCCDカメラ60などは鏡筒に収められている。鏡筒は、鏡筒上部107および当該鏡筒上部107と連結された鏡筒下部108で構成されている。鏡筒上部107は本体架台106に固定されている。鏡筒下部108はベース架台104の上に固定されている。鏡筒は上下方向に移動可能に取り付けられている。ベース架台104は底板100の上に固定されている。焦点位置決定装置1の本体は遮光性を有する遮光箱101で覆われている。遮光箱101は底板100に固定されている。遮光箱101の上面には遮光蓋102が取り付けられている。遮光蓋102は、その一端が遮光箱101と蝶番103で連結されており、開閉できるように取り付けられている。
試料10を入れた試料容器11は、試料ステージ17上に配設されている。ここで、図22に示すように、試料容器11を水槽12に入れて試料ステージ17上に配設してもよい。
再び図21に戻り、光照射部20には例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプなどを用い、光照射部20から発せられた光は光ファイバー26を通して試料ステージ17上の試料10を含む試料容器11に照射される。
観察光学系において、偏向ミラー32は用いず、対物レンズ30で形成された像(試料10の像)を結像させるリレーレンズ34が鏡筒下部108に図示の如く配設されている。
ここで、図21に示す焦点位置決定装置1は、図22に示すように、焦点位置変更部40として、対物レンズz軸移動機構ではなく、試料ステージ17をz軸に沿って移動させるステージz軸移動機構を備えてもよい。ここで、図22には、本体架台106にステージz軸移動機構を備えたZ軸移動ステージが設置されている。当該Z軸移動ステージは、XY方向に移動可能なXY試料ステージの下方に、当該XY試料ステージを支える形で取り付けられている。当該Z軸移動ステージの上方には、試料容器11が配置されており、試料容器11はZ軸移動ステージの上下移動と共に上下に移動する。Z軸移動ステージはラックピニオン機構により上下運動する。なお、ラックピニオン機構の動作は、ラックピニオン機構のノブ(図示しない)をステッピング・モーターにより回転駆動することにより実施される。そして、ステッピング・モーターの駆動はコンピュータにより制御される。これにより、対物レンズ30を上下移動させた場合と同様の操作ができる。ここで、Z軸移動ステージの上下移動は手動により行ってもよい。また、ラックピニオン機構の動作は、当該ラックピニオン機構のノブ(図示しない)を回転して行なってもよい。
再び図21に戻り、CCDカメラ60は、その受光面の中心が光軸にほぼ合うように、配設されている。試料(生体細胞)10から発せられた蛍光および発光は、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ34を通ってCCDカメラ60の受光面に集光する。ここで、赤外光を取り出す場合には、CCDカメラ60の前面に取り付けられた赤外線カットフィルター45を、焦点位置決定装置1を起動させる前に取り外す。CCDカメラ60は、CCDカメラ60からの出力信号を処理する情報処理装置70とケーブルを介して接続されている。
情報処理装置70は、CCDカメラの出力信号から発光画像を描出してそれを解析したり、発光強度の時間変化を測定したり、出力信号を解析したりする。また、情報処理装置70は、対物レンズ30の焦点位置が試料10内の観察対象部位10aに合った後、試料10からの蛍光および発光を受光するために、制御部70aによりCCDカメラを動作させる。
励起光照射部80は、波長488nmで出力10mWのアルゴン・レーザーであり、図示の如く、遮光箱101の外に配設されている。なお、遮光箱101には光ファイバーを通すレーザー入射口84が設けられている。励起光照射部80から発せられたレーザー光はコリメートレンズ81を通過して光ファイバー内を伝播し、伝播したレーザー光はダイクロイックミラー83に到達する。ダイクロイックミラー83に到達したレーザー光はダイクロイックミラー83で反射されて対物レンズ30に下方から入射し、入射したレーザー光は集光して試料10に照射される。ダイクロイックミラー83は、ホルダー85に収められており、レーザー光の発振波長に合わせて、交換可能に配設されている。
以上、図21に示す焦点位置決定装置1では、試料10から発せられた蛍光および発光は、対物レンズ30を通って、ダイクロイックミラー83に到達する。そして、ダイクロイックミラー83に到達した蛍光および発光は、ダイクロイックミラー83を透過し、リレーレンズ34を通って、CCDカメラの受光面にある撮像素子60aで焦点を結ぶ。
これにて、第2実施形態の焦点位置決定装置1の構成の説明を終了する。
つぎに、第2実施形態の焦点位置決定装置1が行う焦点位置決定処理および焦点位置再決定処理については、上述した第1実施形態の説明と同様であるため、その説明を省略する。
以上、説明したように、第2実施形態の焦点位置決定装置1は、励起用光学系をさらに備えている。第2実施形態の焦点位置決定装置1は、光源20により生体細胞へ照射光を照射する。そして、焦点位置決定装置1は、対物レンズz軸移動機構により対物レンズ30を光軸に沿って一定量ずつ繰り返し移動させながら、移動させる度に、焦点位置計測部50により対物レンズ30の焦点位置を計測し、CCDカメラにより生体細胞を照明下で撮像し、特徴量算出部70a1により、撮像した撮像画像のコントラストを算出する。そして、焦点位置決定装置1は、焦点位置選出部70a2により、対物レンズ30を繰り返し移動させたことで蓄積した複数のコントラストのうち極大となるコントラストを2つ選出し、選出したコントラストに対応する撮像画像を撮像した時の対物レンズ30の焦点位置を、対物レンズ30を繰り返し移動させたことで蓄積した複数の焦点位置から取得する。そして、焦点位置決定装置1は、焦点位置決定部70a3により、取得した焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央の位置(略中央の位置)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定し、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30を移動させて、対物レンズ30の焦点位置を、決定した焦点位置に合わせる。これにより、生体細胞内の特定の部位を観察対象部位10aとして当該観察対象部位10aの蛍光観察と発光観察とを同時に行う場合、生体細胞を設置した時点で、当該観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置を決定することができ、その結果、対物レンズ30の焦点位置を当該観察対象部位10aに合わせることができる。
ここで、第2実施形態の焦点位置決定装置1を用いて生体細胞の発光画像と蛍光画像とを同時に観察しながら、生体細胞内のATP量の測定を行う手法について、その幾つかを以下に説明する。ルシフェラーゼの発光反応(発光の強度)はATP量に依存するので、ルシフェラーゼの発光反応を利用してATPを定量することは以前から行われている。そして、バイオ、臨床検査、食品衛生などの分野では、ルシフェラーゼを用いた細胞内のATP量の測定が行なわれている。なお、ATP(アデノシン3リン酸)は細胞内のエネルギーの供給源であり、生命現象に深く関わっている物質である。一方、ホタルのルシフェラーゼは、ATP、O2、Mg2+の存在下で、D‐ルシフェリンを発光基質として、オキシルシフェリン、CO2、AMP、ピロリン酸を生成する反応を触媒し、当該反応により発光する。
生体細胞内のATP量の測定は、通常、以下の(1A)〜(1C)の工程で行われる(H.J.Kennedy, A.E.Pouli, E.K.Ainscow, L.S.Jouaville, R.Rizzuto, G.A.Rutter, “Glucose generates sub−plasma membrane ATP microdomains in single islet β−cells.”, Journal of Biological Chemistry, vol.274, pp.13281−13291, 1999)。
(1A)細胞または細菌を溶解してATPを抽出する。
(1B)その抽出液をルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む反応液に添加する。
(1C)抽出液が添加された反応液から生じる発光量を測定することで、細胞内のATPを定量する。
また、細胞内のATP量の測定は、通常、以下の(2A)〜(2C)の工程で行われる。
(2A)ルシフェラーゼ遺伝子を細胞に導入して発現させる。
(2B)細胞を含む培養液中にルシフェリンを添加する。
(2C)ルシフェリンが加えられた培養液から生じる発光量を検出し、細胞内のATPを定量する。
さらに、生きた細胞内の所定の部位(具体的にはミトコンドリア)におけるATP量の経時的測定は、以下の(3A)および(3B)の工程で行われる(H.J.Kennedy, A.E.Pouli, E.K.Ainscow, L.S.Jouaville, R.Rizzuto, G.A.Rutter, “Glucose generates sub−plasma membrane ATP microdomains in single islet β−cells.”, Journal of Biological Chemistry, vol.274, pp.13281−13291, 1999)。
(3A)ルシフェラーゼ遺伝子にミトコンドリア移行シグナル遺伝子を融合し、その融合した遺伝子を細胞に導入する。細胞に導入する融合遺伝子は、移行塩基配列および発光関連遺伝子に加えてさらに蛍光タンパク質を発現する蛍光関連遺伝子を融合したものである。
(3B)ルシフェラーゼが細胞内のミトコンドリアに局在しているということを前提とし、細胞からの発光量を経時的に測定することで、細胞内のミトコンドリアにおけるATP量の時間変動を測定する。具体的には、当該融合遺伝子が導入された細胞の蛍光画像を撮り、得られた蛍光画像に基づいて所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かを判定する。判定結果が局在すると結論された場合、細胞からの発光量を検出する。これにより、当該細胞の所定の部位に発光たんぱく質が局在しているか否かを判定することができる。すなわち、融合遺伝子が導入された生きた細胞に対し発光タンパク質の局在を確認すると共に、当該細胞からの発光量を測定する。また、測定した発光量が所定の部位からのものであることを確認することができる。
なお、融合遺伝子が導入された生きた細胞が撮像視野の範囲内に複数個存在する場合、複数の細胞の蛍光画像および発光画像を撮り、その蛍光画像に基づいて所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かを細胞ごとに判定し、撮像した蛍光画像および撮像した発光画像を重ね合わせることで、判定結果が局在すると判定された細胞の中から測定対象の細胞を選定し、選定した細胞からの発光量を測定する。これにより、複数の細胞の中から個々の細胞を識別し、単一の細胞内の所定の部位からの発光量を他と分離して測定することができる。また、蛍光画像および発光画像を同時に取得することで、測定対象の細胞における発光タンパク質の局在と、当該細胞から発せられる発光強度を同時に得ることができる。そのため、遺伝子の導入効率や細胞周期による個々の細胞の生理的な状態の違いの影響を排除した解析を行うことができる。ここで一例として、蛍光画像を撮像した後、発光タンパク質が所定の部位に局在しているか否かの判定を行ない、局在すると判定された場合、発光画像を撮像してもよい。さらに、蛍光画像および発光画像を撮像した後、局在の判定を行なってもよい。
以上、第2実施形態の焦点位置決定装置1の説明を終了する。
[第3実施形態]
[1.本発明の基本原理]
まず、本発明にかかる生体試料撮像方法および生体試料撮像装置の基本原理について詳細に説明する。本発明は、複数の収容部を有する基板の収容部に収容された微弱光を発する生体試料を、対物レンズを介して撮像する。本発明は、対物レンズの視野内に所望の収容部が収まるまで基板および/または対物レンズを移動し、対物レンズの近点側の焦点位置および/または対物レンズの遠点側の焦点位置を計測し、計測した焦点位置に基づいて、所望の収容部に収容された生体試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定し、決定した焦点位置に対物レンズの焦点位置を合わせ、対物レンズを介して生体試料を撮像することで当該生体試料の発光画像を取得する。これにより、基板が有する各収容部(例えばマイクロプレートが有する各ウェル)に収容された生体試料の撮像を、迅速且つ正確に行うことができる。
なお、本発明は、対物レンズの視野内に所望の収容部が収まるまで基板および/または対物レンズを移動した際、当該基板および/または当該対物レンズの移動先での位置を計測し、計測した移動先での位置に関する移動先位置情報を当該所望の収容部を識別するための収容部識別情報と関連付けて記憶してもよい。これにより、対物レンズの視野内に所望の収容部が収まるまで基板および/または対物レンズを移動しようとする際、当該所望の収容部に対応する収容部識別情報が記憶されていれば、当該収容部識別情報と関連付けて記憶されている移動先位置情報に基づいて基板および/または対物レンズを適切に移動することができる。
また、本発明は、(1)対物レンズの視野内に所望の収容部が収まるまで基板および/または対物レンズを移動し、(2)生体試料へ光を照射し、(3)対物レンズの焦点位置を変更し、(4)変更した焦点位置を計測し、(5)変更した焦点位置にて、光が照射された生体試料を撮像し、(6)撮像した撮像画像に基づいて当該撮像画像を特徴付ける特徴量を算出し、(7)前記の“焦点位置の変更”、“焦点位置の計測”、“試料の撮像”および“特徴量の算出”を繰り返し実行し、(8)繰り返し実行して蓄積した複数の焦点位置から、当該繰り返し実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、少なくとも1つの焦点位置を選出し、(9)選出した焦点位置に基づいて、所望の収容部に収容された生体試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定し、(10)決定した焦点位置に対物レンズの焦点位置を合わせ、(11)対物レンズを介して生体試料を撮像することで当該生体試料の発光画像を取得する。これにより、基板が有する各収容部(例えばマイクロプレートが有する各ウェル)に収容された生体試料の撮像を、迅速且つ正確に行うことができる。
なお、本発明は、前記の(1)の処理で、対物レンズの視野内に所望の収容部が収まるまで基板および/または対物レンズを移動し、当該基板および/または当該対物レンズの移動先での位置を計測し、計測した移動先での位置に関する移動先位置情報を当該所望の収容部を識別するための収容部識別情報と関連付けて記憶してもよい。これにより、対物レンズの視野内に所望の収容部が収まるまで基板および/または対物レンズを移動しようとする際、当該所望の収容部に対応する収容部識別情報が記憶されていれば、当該収容部識別情報と関連付けて記憶されている移動先位置情報に基づいて基板および/または対物レンズを適切に移動することができる。
[2.装置構成]
つぎに、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1の構成の具体的一例について、図33から図39を参照して詳細に説明する。なお、上述した第1実施形態や第2実施形態の説明と重複する説明を省略する場合がある。
まず、図33および図34はそれぞれ、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1の構成の具体的一例を示す図である。図33および図34に示す第3実施形態の焦点位置決定装置1はそれぞれ、図13および図17に示す第1実施形態の焦点位置決定装置1において、試料容器11、水槽12および試料ステージ17の所定の位置に取り付けられたステッピング・モータの構成を変更したものである。また、図35は、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1の構成の具体的一例を示す図である。図35に示す第3実施形態の焦点位置決定装置1は、図20に示す第2実施形態の焦点位置決定装置1において、試料容器11、水槽12および試料ステージ17の所定の位置に取り付けられたステッピング・モータの構成を変更したものである。
ここで、図33、図34および図35において、試料容器11は、具体的には、複数のウェルを有するマイクロプレートである。マイクロプレートの底面(少なくともウェルに対応する部分の底面)は、平らであり、光学的に透明なもの(通常の対物レンズで対応できるようなもの)である。また、水槽12は、図示の如く、その底面を設けず、試料容器11を囲うように構成されている。また、ステッピング・モータ(図示せず)の数は3個であり、各ステッピング・モータは互いに直交する向き(90°方向)で試料ステージ17の所定の位置に取り付けられている。そして、試料ステージ17は、これらステッピング・モータの駆動力に因り、当該ステージが配設された位置から光軸(z軸)方向や、それに直交する方向(例えばx方向やy方向)に移動可能である。
つぎに、図36は、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1の構成の具体的一例を示す図である。図36に示す第3実施形態の焦点位置決定装置1は、図21に示す第2実施形態の焦点位置決定装置1において試料容器11および試料ステージ17を変更したものである。
ここで、図36において、試料容器11は、具体的には、複数のウェルを有するマイクロプレートである。マイクロプレートの底面(少なくともウェルに対応する部分の底面)は、平らであり、光学的に透明なもの(通常の対物レンズで対応できるようなもの)である。また、試料ステージ17は、当該ステージを光軸(Z軸)に沿って移動させたり、それに直交する方向(XY方向)に移動させたりするステージXYZ軸移動機構を備えている。
つぎに、図37は、第3実施形態にかかる検査システムの構成の具体的一例を示す図である。図37に示す検査システムは、複数の容器(特にマイクロプレートの多数のウェル)ごとの検体を網羅的に解析するのに適したスループットの高い構成を有している。
図37に示す検査システムには、多数のウェルをマトリックス状に配置した図38に示すマイクロプレートを格納するマイクロプレートチャンバ111Dが、電動ステージ112D上に取り外し可能に固定されている。
マイクロプレートチャンバ111Dの上方には、明視野観察を行うための照明系が配置されている。一方、マイクロプレートチャンバ111Dの下方には、マイクロプレートの各ウェルに収納されている細胞等の試料画像を接眼レンズ113Dにより肉眼で明視野観察するための観察系と、撮像装置114Dで暗視野撮像するための撮像系と、が配置されている。
ウェル内に収容される細胞を含む試料ないし生体組織は、個々の細胞が認識できる程度に、光路上で重ならない程度の低密度である。この点、ルミノメータのようなウェル全体の発光量を解析するシステムのような重畳された高密度の細胞数による測定とは異なる。
マイクロプレートチャンバ111Dと照明系のレンズ要素は、細胞や抗原・抗体等の生物学的試料を活性維持可能な温度に維持するための保温箱115D内に格納されている。ここで、前述の観察系および撮像系の各種レンズ要素は、保温箱115Dの外部に配置され、さらに遮光性を有する断熱部材(例えばアルミフィルム、セラミックス筒体)により保護されている。
電動ステージ112Dは、コントローラ132Dの制御で3つのモータを適宜駆動させることで光軸方向(Z軸)やそれに直交する方向(XY方向)に移動可能である。対物レンズ121Dには、当該対物レンズを光軸(Z軸)方向に移動する対物レンズZ軸駆動機構が備えられている。
マイクロプレートチャンバ111D内の試料から発した光は、適切な光学条件に設定された対物レンズ121Dを通過後、最下部の結像用ミラーで反射し、さらに結像用レンズを経て撮像装置114Dに送られる。他方、図37に示すような可動ミラーを選択的に光路上に侵退させることで接眼レンズ113Dを介した選択的な観察を実行することによって、試料からの微弱光を検出する場合の光損失を極力防止できると共に、観察に最適な高反射性のミラーを接眼レンズ113Dに採用できる。なお、可動ミラーの駆動は、自動切換え式であっても、スライド棒による手動操作式であってもよい。
保温箱115Dは、外部環境(光、気温、湿度、酸素等)からの影響を遮断するための暗箱116Dにさらに格納されており、これにより本検査システム全体は二重構造になっている。暗箱116Dには、内部の空調効率を適宜考慮した位置に、温風導入装置117D(図37では暗箱の上部左側壁側)及び温風排出装置118D(図37では暗箱の上部右側壁側)を設置している。また、保温箱115D及び暗箱116Dにはそれぞれ内側扉及び外側扉を設けており、電動ステージ112D上に設置するマイクロプレートを交換可能にしている。
暗箱116Dの外部には、熱的トラブルを回避するように配慮して、照明系のための光源(図37ではハロゲンランプ)120Dと、撮像系のための撮像装置(図37ではC−CCDカメラ)114Dとを配置している。撮像装置114Dのための結像レンズと波長選択用の回転フィルタホイールは、保温箱115Dと暗箱116Dの間に配置されている。
図37に示すように、マイクロプレート内の観察及び撮像を厳密に合焦するために、赤外光又は可視光による指定点フォーカスを行うレーザ検出機構を設置してもよい。指定点フォーカスを行う場合には、例えばマイクロプレートの底面からの反射を測定するために、電動ステージ112Dの下方に光分割ミラーを配置することとなる。このような指定点フォーカスは、細密な画像分解能を要求する場合を除いて、必須な構成ではない。なお、光分割ミラーに関しては、赤外線を用いることで、ダイクロックミラーにより試料からの光損失を最小限にすることが好ましく、可視光線を用いる場合には、フォーカシングできる最小限の反射率からなるハーフミラーを使用するか、或いは上述したような可動式のミラーにすることで同様に光損失を防止するのが好ましい。
撮像装置114Dから送出された画像データは、演算処理部130Dにより統計解析ないし形状解析されて、表示部131Dに表示される。これにより、時系列での解析をウェルごとに行ったり、ウェル間の比較を行ったりするような多様な解析を網羅的に実行できる。表示部131Dには、数値データを、時系列曲線でもってグラフィカルに表示することが可能である。また、本検査システムは、コントローラ132Dと接続した画像データ記憶部133Dに画像データを記憶すると共に、画像データ記憶部133Dで記憶した画像データを必要に応じて表示部131Dに呼び出し映像として再生することが可能となっていることが特徴である。従って、本検査システムによれば、グラフィカルな表示データのうち興味有るデータについてそのデータ部分(測定点ないしデータ領域)を適宜の指定手段(マウスポインタ、タッチペン、キーボード等)で指定することにより、その部分の時系列データを静止画像ないし動画像で再生するリコール機能を発揮させることも可能である。本検査システムによれば、表示部131Dに、画像データのみを表示したり、画像データと数値データとの組合せを表示したりすることもできる。なお、本検査システムによれば、この場合には、さらに、表示された画像のうち興味有る画像の部位または領域を適宜の指定手段で指定することによって、対応する数値やグラフを呼び出したり、特定の数値ないしグラフ部位を色別等で強調して確認し易いようにしたりすることも可能である。さらに、本検査システムによれば、多数の容器ごとに異なる検体(例えば、臓器別、病態別、患者別、測定項目別)を収容する場合には、検体別に所望の順番ないし相関関係を表示部131Dに表現するように解析させることも可能である。これら各種の多様な解析ないし表示形式は、交換可能なソフトウェアないし内部プログラムによって、実行可能に設計することで実現できる。
以上の構成において、各種の電気的制御および信号処理の管理及び制御は、コントローラ132Dが一元的に行う構成となっている。コントローラ132Dは、上述した多数の検査装置や検査システムを通信回線(無線でも有線でもよい)等で通信可能に連携可能した遠隔システムによって、分散的に又はホストコンピュータの集中管理で、データ共有化や診断等の医療連携をリアルタイムに行うようにしてもよい。また、種々の有用な医学的データベースとコントローラ132Dとを通信等で接続可能にすることにより、リアルタイムに最新データを入手しながら、生体システムとの関連を解析するようにすることも可能である。
図39は、上述した検査システムの変形例であり、対物レンズで画像化する場合の例を示す。電動制御されるXYZステージ201E上には、底面が平坦なガラス製ないしプラスチック製のマイクロプレート203Eが固定されている。ここで、マイクロプレート203Eに形成された全てのウェル207Eが下方に露出するように、マイクロプレート203Eの周囲のみをXYZステージ201E上に接地させるようになっている。マイクロプレート203Eの上方には、各ウェル207E及び当該マイクロプレート上部を覆うように蓋をし且つ当該マイクロプレートをXYZステージ201E上に固定するためのプレートカバー202Eが配置している。プレートカバー202Eには図示せぬ配管が形成され、プレートカバー202Eは、軟性のチューブ209aEを通じて各ウェルに所定条件の気体(例えば炭酸ガス、熱風)を給排するための気体供給部210Eと接続している。また、全体を格納するハウジング206Eは、プレート交換、試薬分注、換気等を行うための開閉式の上部ハウジング206aEと、各手段を固定するためのベースとなる下部ハウジング206bEと、を具備している。ハウジング206E内全体の温度は、温風発生装置208Eからチューブ209bEを通じて当該ハウジング内に温風が送られることで、生物活性に都合の良いように昇温される。なお、マイクロプレート203E及びXYZステージ201Eの温度は、温度センサ211Eにより、図37で示したようなコントローラを通じて所望の温度となるように温度制御するのが好ましい。
微弱光の例である発光(特に細胞内生物発光)の観察においては、低倍率(例えば2倍〜20倍、特に4倍〜10倍)の対物レンズ204Eで、個々の細胞を網羅的に認識できる視野を得るのが好ましいので、マイクロプレート203Eの移送を自在に行うのに適している。いずれの倍率の対物レンズ204Eにおいても、マイクロプレート203Eの接地誤差やロット差を考慮すべきである場合には、図示するようなZ軸駆動機構205Eによって、マイクロプレート203Eの底面との距離を適宜の距離に保つような調整を行うのが好ましい。
これにて、第3実施形態の各装置の構成の説明を終了する。
[3.焦点位置決定装置1の処理]
つぎに、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1が行う生体試料撮像・解析処理について図40等を参照して説明する。図40は、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1が行う生体試料撮像・解析処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、生体細胞の明視野観察および発光観察を図33に示す焦点位置決定装置1を用いて行う場合における処理について説明する。
観察者が、試料10である生体細胞を各ウェルに入れたマイクロプレートを試料ステージ17上に設置し、焦点位置決定装置1および光源20を起動させると、焦点位置決定装置1は以下の処理を行う。
まず、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、生体細胞のタイムラプス観察を行う際の時間間隔(タイムラプス間隔)および当該タイムラプス観察を行う回数(タイムラプス回数)を、観察者に指定させる(ステップSC−1)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、マイクロプレートが有するウェルのうち観察対象とするウェル(観察対象ウェル)の数ならびに各観察対象ウェルの観察順序およびマイクロプレート上での位置を、観察者に指定させる(ステップSC−2)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、試料ステージ17の所定の位置に取り付けられた各ステッピング・モータを適宜動作させ、当該ステッピング・モータの動作により、ステップSC−2で指定された位置(具体的には、観察対象ウェルのうち観察順の早いもののマイクロプレート上での位置)に基づいて、当該位置に対応する観察対象ウェルが対物レンズ30の視野内に収まるまでマイクロプレート(実際には試料ステージ17)を移動することで、当該観察対象ウェルの位置決め(位置合わせ)を行う(ステップSC−3)。なお、ステップSC−3において、マイクロプレートを移動し終わったら、当該マイクロプレートの移動先でのウェルの位置を計測し、計測した移動先でのウェルの位置に関する移動先位置情報を、当該ウェルを識別するための収容部識別情報と関連付けて記憶してもよい。これにより、以前に位置決めを行ったウェルと同じウェルの位置決めを再度行う際には、記憶している移動先位置情報および収容部識別情報に基づいて速やか且つ適切に当該同じウェルの位置決めを行うことができる。
つぎに、焦点位置決定装置1は、明視野観察を開始するために、光源20から発せられた照明光の生体細胞への照射を開始する(ステップSC−4)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、ステップSC−3で位置決めした観察対象ウェルに対応する明視野観察用の焦点位置を記憶していない場合(ステップSC−5:No)には、情報処理装置70の制御部70aにより各処理部を適宜動作させて、図41に示す焦点位置決定処理を実行することにより、当該位置決めした観察対象ウェルに対応する明視野観察用の焦点位置を決定し記憶する(ステップSC−6)。なお、ステップSC−3で位置決めした観察対象ウェルに対応する明視野観察用の焦点位置を記憶している場合(ステップSC−5:Yes)には、ステップSC−7に進む。
ここで、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1が行う焦点位置決定処理について図41を参照して説明する。図41は、第3実施形態にかかる生体試料撮像装置としての焦点位置決定装置1が行う焦点位置決定処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、図33に示す焦点位置決定装置1を用いて行う場合における処理について説明する。
まず、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により対物レンズ30を、初期位置から光軸に沿って一定量だけ移動させることで、対物レンズ30の焦点位置を変更する(ステップSD−1)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより焦点位置計測部50を動作させ、焦点位置計測部50により対物レンズ30の焦点位置を検出し記憶する(ステップSD−2)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aによりCCDカメラを動作させ、CCDカメラにより、光が照射されている場合には生体細胞の明視野画像を、光が照射されていない場合には生体細胞の発光画像を撮像し記憶する(ステップSD−3)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより特徴量算出部70a1を動作させ、特徴量算出部70a1により、ステップSD−3で撮像した撮像画像(明視野画像または発光画像)に基づいて当該撮像画像のコントラストを算出する(ステップSD−4)。ここで、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、ステップSD−2で検出した焦点位置、ステップSD−3で撮像した撮像画像およびステップSD−4で算出したコントラストを相互に関連付けて、記憶部70bの撮像画像データベース70b1に格納する。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、ステップSD−1からステップSD−4を、ステップSD−1で変更した対物レンズ30の焦点位置が光軸上の予め定められた位置を越えるまで、繰り返し実行する(ステップSD−5)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより焦点位置選出部70a2を動作させ、焦点位置選出部70a2により、撮像画像データベース70b1に格納された複数のコントラストのうち極大となる2つのコントラストを選出し、選出した各コントラストと対応付けられている撮像画像データベース70b1に格納されている2つの焦点位置を取得し、そして情報処理装置70の制御部70aにより焦点位置決定部70a3を動作させ、焦点位置決定部70a3により、取得した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央の位置(略中央の位置)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定する(ステップSD−6)。換言すると、焦点位置決定装置1は、焦点位置選出部70a2により、撮像画像データベース70b1に格納された複数の焦点位置から、撮像画像データベース70b1に格納された複数の特徴量に基づいて、対物レンズ30の近点側の焦点位置(略焦点位置)および対物レンズ30の遠点側の焦点位置(略焦点位置)を選出し、焦点位置決定部70a3により、選出した近点側の焦点位置および遠点側の焦点位置に基づいて、この2つの焦点位置の中央の位置(略中央の位置)を、生体細胞内の観察対象部位10aに合うような対物レンズ30の焦点位置として決定する。
これにて、焦点位置決定処理の説明を終了する。
図40に戻り、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30の焦点位置がステップSC−6で決定した明視野観察用の焦点位置(又は記憶している明視野観察用の焦点位置)に合うまで当該対物レンズを光軸に沿って移動させ、そして情報処理装置70の制御部70aによりCCDカメラを動作させ、CCDカメラにより、移動させた焦点位置において、生体細胞の明視野画像を撮像し記憶する(ステップSC−7)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、明視野観察を終了するために、光源20から発せられた照明光の生体細胞への照射を終了する(ステップSC−8)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、ステップSC−3で位置決めした観察対象ウェルに対応する発光観察用の焦点位置を記憶していない場合(ステップSC−9:No)には、情報処理装置70の制御部70aにより各処理部を適宜動作させて、上述した図41に示す焦点位置決定処理を実行することにより、当該位置決めした観察対象ウェルに対応する発光観察用の焦点位置を決定し記憶する(ステップSC−10)。なお、ステップSC−3で位置決めした観察対象ウェルに対応する発光観察用の焦点位置を記憶している場合(ステップSC−9:Yes)には、ステップSC−11に進む。
つぎに、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより対物レンズz軸移動機構を動作させ、対物レンズz軸移動機構により、対物レンズ30の焦点位置がステップSC−10で決定した発光観察用の焦点位置(又は記憶している発光観察用の焦点位置)に合うまで当該対物レンズを光軸に沿って移動させ、そして情報処理装置70の制御部70aによりCCDカメラを動作させ、CCDカメラにより、移動させた焦点位置において、生体細胞に関する微弱光画像としての発光画像を撮像し記憶する(ステップSC−11)。
つぎに、焦点位置決定装置1は、ステップSC−2で指定された解析対象ウェルの数だけ明視野観察および発光観察が終了していない場合(ステップSC−12:No)には、情報処理装置70の制御部70aにより各処理部を適宜動作させて、明視野観察および発光観察が終了していない残りの解析対象ウェルに対してステップSC−3からSC−11までの処理を繰り返し実行する。
一方、焦点位置決定装置1は、ステップSC−2で指定された解析対象ウェルの数だけ明視野観察および発光観察が終了した場合(ステップSC−12:Yes)には、情報処理装置70の制御部70aにより、タイムラプス観察の実行済み回数を確認し、確認した結果、ステップSC−1で指定されたタイムラプス回数が終了した場合(ステップSC−13:Yes)にはステップSC−15に進む。
一方、焦点位置決定装置1は、ステップSC−1で指定されたタイムラプス回数が終了していない場合(ステップSC−13:No)には、情報処理装置70の制御部70aにより、タイムラプス観察の開始からの経過時間を確認し、確認した結果、ステップSC−1で指定されたタイムラプス間隔が経過した場合(ステップSC−14:Yes)には、残りのタイムラプス観察を開始するためにステップSC−3へ戻る。
そして、焦点位置決定装置1は、情報処理装置70の制御部70aにより、これまでにステップSC−11で取得した発光画像を画像解析すると共に、それを表示し記録する(ステップSC−15)。なお、この発光画像の画像解析は、これまでにステップSC−7で取得した明視野画像と一緒に画像解析する(具体的には発光画像と明視野画像との重ね合わせ画像に対して画像解析する)ことにより、より迅速かつ正確な解析を行うことができる。
これにて、生体試料撮像・解析処理の説明を終了する。
以上、第3実施形態の説明を終了する。
[実施例]
本実施例では、第2実施形態の焦点位置決定装置1でプラスミドベクターを導入した複数のHeLa細胞に対物レンズの焦点を合わせ、複数のHeLa細胞の中から対象とするHeLa細胞を選定し、選定したHeLa細胞内のミトコンドリアからの発光量およびATP量を経時的に測定した。まず、本実施例における実験を、以下の(手順1)〜(手順7)に従って行った。
(手順1)蛍光タンパク質(GFP)とミトコンドリア移行シグナルとルシフェラーゼとが繋がった融合遺伝子を作製する。
(手順2)融合遺伝子が入ったプラスミドベクターをHeLa細胞に導入する。
(手順3)焦点位置決定装置1により、HeLa細胞内のミトコンドリアに対物レンズの焦点位置を予め合わせて、CCDカメラでHeLa細胞を照明下と照明無しのそれぞれで撮像し、撮像した撮像画像(蛍光画像)に基づいてGFPがミトコンドリアに局在しているか否かを判定することで、ルシフェラーゼがミトコンドリアに局在しているか否かを確認する(図23参照)。図23はプラスミドベクターを導入したHeLa細胞の照明画像および蛍光画像を示す図である。
(手順4)HeLa細胞にヒスタミンを投与し、Ca2+を介したミトコンドリアのATP量の変動を引き起こす。
(手順5)CCDカメラでHeLa細胞を照明下と照明無しのそれぞれで撮像することで、HeLa細胞内のミトコンドリアからの発光を捉えた発光画像を経時的に取得する(図24参照)。図24はプラスミドベクターを導入したHeLa細胞の照明画像および発光画像を示す図である。
(手順6)撮像した照明画像、蛍光画像および発光画像を重ね合わせることで、対象とするHeLa細胞を選定する。
(手順7)選定したHeLa細胞内のミトコンドリアからの発光強度の時間変化を測定すると共に、ATP量の時間変動をモニタする。
つぎに、実験結果について説明する。図23に示すように、番号1のHeLa細胞においては、プラスミドベクターにより融合遺伝子が導入され且つミトコンドリアにルシフェラーゼが局在していることが確認できた。また、番号2および番号4のHeLa細胞においては、プラスミドベクターにより融合遺伝子が導入されていないことが確認できた。さらに、番号3のHeLa細胞においては、プラスミドベクターにより融合遺伝子が導入されているがミトコンドリアにルシフェラーゼが局在していないことが確認できた。つまり、プラスミドベクターにより融合遺伝子が導入され且つミトコンドリアにルシフェラーゼが局在していることが確認できたHeLa細胞は番号1のHeLa細胞のみであったので、対象とするHeLa細胞は番号1のHeLa細胞に選定された。また、図24に示すように、番号3のHeLa細胞からの発光強度が最も大きく、ついで番号1のHeLa細胞からの発光強度が大きく、ついで番号2および番号4のHeLa細胞からの発光強度は同等の大きさであることが確認できた。そして、図25に示すように、番号1のHeLa細胞のミトコンドリアからの発光強度の経時変動をモニタすることができた。図25は、選定した番号1のHeLa細胞からの発光強度の時間変化を示す図である。
次に、以上で説明した本発明の微弱光画像の解析方法および解析装置にとって有利な焦点位置の決定方法および装置を以下に付記項として述べる。上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる付記項1に記載の焦点位置決定方法は、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定する焦点位置決定方法であって、対物レンズの近点側の焦点位置および/または対物レンズの遠点側の焦点位置を計測し、計測した焦点位置に基づいて前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項2に記載の焦点位置決定方法は、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定する焦点位置決定方法であって、試料へ光を照射する光照射ステップと、対物レンズの焦点位置を変更する焦点位置変更ステップと、前記焦点位置変更ステップで変更した焦点位置を計測する焦点位置計測ステップと、前記焦点位置変更ステップで変更した焦点位置にて、前記光照射ステップで光が照射された試料を撮像する試料撮像ステップと、前記試料撮像ステップで撮像した撮像画像に基づいて撮像画像を特徴付ける特徴量を算出する特徴量算出ステップと、前記焦点位置変更ステップ、前記焦点位置計測ステップ、前記試料撮像ステップおよび前記特徴量算出ステップを繰り返し実行する実行ステップと、前記実行ステップを実行して蓄積した複数の焦点位置から、前記実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、少なくとも1つの焦点位置を選出する焦点位置選出ステップと、前記焦点位置選出ステップで選出した焦点位置に基づいて、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定する焦点位置決定ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項3に記載の焦点位置決定方法は、付記項2に記載の焦点位置決定方法において、前記焦点位置選出ステップでは、前記実行ステップを実行して蓄積した複数の焦点位置から、前記実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、2つの焦点位置を選出し、前記焦点位置決定ステップでは、前記焦点位置選出ステップで選出した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央位置を、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項4に記載の焦点位置決定方法は、付記項3に記載の焦点位置決定方法において、前記2つの焦点位置は、対物レンズの近点側の焦点位置および対物レンズの遠点側の焦点位置であることを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項5に記載の焦点位置決定方法は、付記項2に記載の焦点位置決定方法において、前記焦点位置選出ステップでは、前記実行ステップを実行して蓄積した複数の焦点位置から、前記実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、1つの焦点位置を選出し、前記焦点位置決定ステップでは、前記焦点位置選出ステップで選出した1つの焦点位置および予め定めた距離に基づいて、当該焦点位置から当該距離だけ離れた位置を、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項6に記載の焦点位置決定方法は、付記項5に記載の焦点位置決定方法において、前記1つの焦点位置は、対物レンズの近点側の焦点位置または対物レンズの遠点側の焦点位置であることを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項7に記載の焦点位置決定方法は、付記項2から6のいずれか1つに記載の焦点位置決定方法において、前記焦点位置決定ステップで決定した焦点位置にて試料を撮像する決定位置試料撮像ステップと、前記決定位置試料撮像ステップで撮像した撮像画像に基づいて特徴量を算出する決定位置特徴量算出ステップと、前記焦点位置決定ステップで決定した焦点位置を変更する決定後焦点位置変更ステップと、前記決定後焦点位置変更ステップで変更した焦点位置にて試料を撮像する決定後試料撮像ステップと、前記決定後試料撮像ステップで撮像した撮像画像に基づいて特徴量を算出する決定後特徴量算出ステップと、前記決定位置特徴量算出ステップで算出した特徴量と前記決定後特徴量算出ステップで算出した特徴量とを比較する特徴量比較ステップと、前記特徴量比較ステップで比較した結果、前記決定後特徴量算出ステップで算出した特徴量の方が大きかった場合には、前記決定後焦点位置変更ステップで変更した焦点位置を、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として再度決定する焦点位置再決定ステップと、をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項8に記載の焦点位置決定方法は、付記項2から7のいずれか1つに記載の焦点位置決定方法において、前記試料は生体細胞または組織であることを特徴とする。
また、本発明は焦点位置決定装置に関するものであり、本発明にかかる付記項9に記載の焦点位置決定装置は、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定する焦点位置決定装置であって、試料へ光を照射する光照射手段と、対物レンズの焦点位置を変更する焦点位置変更手段と、対物レンズの焦点位置を計測する焦点位置計測手段と、試料を撮像する試料撮像手段と、前記試料撮像手段で撮像した撮像画像に基づいて撮像画像を特徴付ける特徴量を算出する特徴量算出手段と、前記焦点位置変更手段、前記焦点位置計測手段、前記試料撮像手段および前記特徴量算出手段を繰り返し実行させるよう、各々の手段を制御する制御手段と、前記制御手段で前記各々の手段を繰り返し実行させたことにより蓄積した複数の焦点位置から、前記繰り返し実行させたことにより蓄積した複数の特徴量に基づいて、少なくとも1つの焦点位置を選出する焦点位置選出手段と、前記焦点位置選出手段で選出した焦点位置に基づいて、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定する焦点位置決定手段と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項10に記載の焦点位置決定装置は、付記項9に記載の焦点位置決定装置において、前記焦点位置選出手段は、前記蓄積した複数の焦点位置から、前記蓄積した複数の特徴量に基づいて、2つの焦点位置を選出し、前記焦点位置決定手段は、前記焦点位置選出手段で選出した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央位置を、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項11に記載の焦点位置決定装置は、付記項10に記載の焦点位置決定装置において、前記2つの焦点位置は、対物レンズの近点側の焦点位置および対物レンズの遠点側の焦点位置であることを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項12に記載の焦点位置決定装置は、付記項9に記載の焦点位置決定装置において、前記焦点位置選出手段は、前記蓄積した複数の焦点位置から、前記蓄積した複数の特徴量に基づいて、1つの焦点位置を選出し、前記焦点位置決定手段は、前記焦点位置選出手段で選出した1つの焦点位置および予め定めた距離に基づいて、当該焦点位置から当該距離だけ離れた位置を、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項13に記載の焦点位置決定装置は、付記項12に記載の焦点位置決定装置において、前記1つの焦点位置は、対物レンズの近点側の焦点位置または対物レンズの遠点側の焦点位置であることを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項14に記載の焦点位置決定装置は、付記項9から13のいずれか1つに記載の焦点位置決定装置において、前記特徴量算出手段で予め個別に算出した2つの特徴量を比較する特徴量比較手段と、前記特徴量比較手段で比較した結果に基づいて前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を再度決定する焦点位置再決定手段とをさらに備え、前記焦点位置決定手段で決定した焦点位置にて前記試料撮像手段で試料を撮像し、撮像した撮像画像に基づいて前記特徴量算出手段で特徴量を算出し、前記焦点位置決定手段で決定した焦点位置を前記焦点位置変更手段で変更し、変更した焦点位置にて前記試料撮像手段で試料を撮像し、撮像した撮像画像に基づいて前記特徴量算出手段で特徴量を算出し、前記決定した焦点位置に対応する特徴量と前記変更した焦点位置に対応する特徴量とを前記特徴量比較手段で比較し、比較した結果、前記変更した焦点位置に対応する特徴量の方が大きかった場合には、前記焦点位置再決定手段で、前記変更した焦点位置を、前記観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として再度決定することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項15に記載の焦点位置決定装置は、付記項9から14のいずれか1つに記載の焦点位置決定装置において、前記試料は生体細胞または組織であることを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項16に記載の焦点位置決定装置は、付記項9から15のいずれか1つに記載の焦点位置決定装置において、前記光照射手段を含む照明光学系の瞳位置に開口を配置したことを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項17に記載の焦点位置決定装置は、付記項16に記載の焦点位置決定装置において、前記開口を光軸に対して偏芯させて配置したことを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項18に記載の焦点位置決定装置は、付記項9から15のいずれか1つに記載の焦点位置決定装置において、前記光照射手段を含む照明光学系に狭帯域通過フィルターを配置したことを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項19に記載の焦点位置決定装置は、付記項9から18のいずれか1つに記載の焦点位置決定装置において、前記光照射手段は単色の可視光を発することを特徴とする。
また、本発明にかかる付記項20に記載の焦点位置決定装置は、付記項9から19のいずれか1つに記載の焦点位置決定装置において、試料へ励起光を照射する励起光照射手段をさらに備えたことを特徴とする。
上述した付記項によれば、対物レンズの近点側の焦点位置(略焦点位置)および/または対物レンズの遠点側の焦点位置(略焦点位置)を計測し、計測した焦点位置に基づいて試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定するので、試料内の特定の部位を観察対象部位として当該観察対象部位の発光観察を行う場合、試料を設置した時点で、当該観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定することができ、その結果、対物レンズの焦点位置を当該観察対象部位に合わせることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、試料内の発光部位の発光観察を行う際、当該発光部位からの発光を確認しなくても、試料内の発光部位に対物レンズの焦点を合わせることができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定方法および焦点位置決定装置によれば、(1)試料へ光を照射し、(2)対物レンズの焦点位置を変更し、(3)変更した焦点位置を計測し、(4)変更した焦点位置にて、光が照射された試料を撮像し、(5)撮像した撮像画像に基づいて撮像画像を特徴付ける特徴量を算出し、(6)(2)〜(5)を繰り返し実行し、(7)実行して蓄積した複数の焦点位置から、実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、少なくとも1つの焦点位置を選出し、(8)選出した焦点位置に基づいて、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定するので、試料内の特定の部位を観察対象部位として当該観察対象部位の発光観察を行う場合、試料を設置した時点で、当該観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定することができ、その結果、対物レンズの焦点位置を当該観察対象部位に合わせることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、試料内の発光部位の発光観察を行う際、当該発光部位からの発光を確認しなくても、試料内の発光部位に対物レンズの焦点を合わせることができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定方法および焦点位置決定装置によれば、前記の(7)では、実行して蓄積した複数の焦点位置から、実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、2つの焦点位置を選出し、前記の(8)では、選出した2つの焦点位置に基づいて、当該2つの焦点位置の中央位置(略中央位置)を、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定するので、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を容易に決定することができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定方法および焦点位置決定装置によれば、2つの焦点位置は、対物レンズの近点側の焦点位置(略焦点位置)および対物レンズの遠点側の焦点位置(略焦点位置)であるので、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を容易かつ簡便に決定することができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定方法および焦点位置決定装置によれば、前記の(7)では、実行して蓄積した複数の焦点位置から、実行して蓄積した複数の特徴量に基づいて、1つの焦点位置を選出し、前記の(8)では、選出した1つの焦点位置および予め定めた距離に基づいて、当該焦点位置から当該距離だけ離れた位置を、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として決定するので、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置をさらに容易に決定することができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定方法および焦点位置決定装置によれば、1つの焦点位置は、対物レンズの近点側の焦点位置(略焦点位置)または対物レンズの遠点側の焦点位置(略焦点位置)であるので、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置をさらに容易かつ簡便に決定することができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定方法および焦点位置決定装置によれば、(9)前記の(8)で決定した焦点位置にて試料を撮像し、(10)撮像した撮像画像に基づいて特徴量を算出し、(11)前記の(8)で決定した焦点位置を変更し、(12)変更した焦点位置にて試料を撮像し、(13)撮像した撮像画像に基づいて特徴量を算出し、(14)(10)で算出した特徴量と(13)で算出した特徴量とを比較し、(15)比較した結果、(13)で算出した特徴量の方が大きかった場合には、(11)で変更した焦点位置を、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置として再度決定するので、試料を設置した時点だけでなく、試料の発光観察を開始してからも、試料内の観察対象部位に合うような対物レンズの焦点位置を決定し続けることができ、その結果、対物レンズの焦点位置を常に当該観察対象部位に合わせることができるという効果を奏する。ここで、生体試料が生体細胞または組織であるので、微弱光を発するものを試料として用いることができるという効果を奏する。
また、本発明にかかる焦点位置決定装置によれば、光照射手段(光源)を含む照明光学系の瞳位置に開口を配置することにより、透過光と回折光との位相差を大きくすることができ、その結果、撮像画像のコントラストを高くすることができるという効果を奏する。開口を光軸に対して偏芯させて配置することにより、透過光と回折光との位相差をさらに大きくすることができ、その結果、撮像画像のコントラストをより高くすることができるという効果を奏する。また、光照射手段(光源)を含む照明光学系に狭帯域通過フィルターを配置することにより、光源から発せられた光を、波長帯域バンド幅の極めて狭い単色光とすることができ、その結果、撮像画像のコントラストを高くすることができるという効果を奏する。また、光照射手段(光源)は単色の可視光を発するので、光源から発せられた光を試料に照射したときに、波長分散がほとんど無くなり、シャープな回折光を得ることができ、その結果、撮像画像のコントラストを高くすることができるという効果を奏する。また、試料へ励起光を照射する励起光照射手段(励起用光源)をさらに備えることにより、試料の蛍光観察と発光観察とを同時に行うことができるという効果を奏する。
また、本発明によれば、以下の付記項に記載の発明を包含すると解することもできる。
付記項1A:微弱光を発する生体試料を画像解析するにあたり、生体試料の解析すべき対象部位に前記微弱光とは異なる種類の電磁エネルギーを用いて前記対象部位に関する少なくとも一つの基準位置を決定し、前記基準位置に対する前記対象部位に対応する微弱光用の焦点位置を決定し、決定された焦点位置に照準して前記微弱光による画像化を実行し、微弱光画像から必要な測定パラメータの数値を抽出し、抽出したパラメータ数値に基いて対象部位の評価を行うこと、を特徴とする微弱光画像の解析方法。
付記項2A:前記基準位置の決定が、前記電磁エネルギーによる基準画像の取得を含むことを特徴とする付記項1Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項3A:前記基準画像の取得が、前記対象部位を含む試料領域について画像取得することを特徴とする付記項2Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項4A:前記電磁エネルギーが、生体へのダメージが少ない可視光、近赤外線、超音波、磁力線のいずれかであることを特徴とする付記項1Aまたは2Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項5A:直接的可視化が困難な微弱光を発する生体試料に対し可視化容易な照射光を照射して可視化し、前記可視化された生体試料がもたらす基準画像について、前記基準画像からの光を受光する対物レンズの近点側の焦点位置および/または対物レンズの遠点側の焦点位置を基準位置として、前記生体試料の解析すべき対象部位から発する微弱光の画像化に必要な距離に相当する位置を前記対物レンズによる微弱光用の焦点位置として決定し、決定した微弱光用の焦点位置に前記対物レンズを照準して必要な画像が得られるまで微弱光を蓄積することにより前記生体試料の微弱光画像を形成し、形成した前記微弱光画像から前記対象部位における微弱光の有無または光強度を評価すること、を特徴とする微弱光画像の解析方法。
付記項6A:直接的可視化は、光学的画像形成のための露光時間が10秒以上である場合に可視化が困難であると定義することを特徴とする付記項5Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項7A:前記照射光に基づく画像シグナルは透過光または蛍光であることを特徴である付記項5Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項8A:前記微弱光用の焦点位置の決定は、前記生体試料の観察部位ごとに行うことを特徴とする付記項1Aから7Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項9A:前記基準位置と前記焦点位置は、対物レンズの同一のビーム経路上で決定されることを特徴とする付記項1Aから8Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項10A:前記微弱光画像の取得を検査項目に応じた複数の時刻において実行することにより複数の微弱光画像を蓄積し、蓄積された複数の前記微弱光画像における観察対象部位を照合し、照合された複数の微弱光画像を時刻ごとに比較することを特徴とする付記項1Aから9Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項11A:前記基準画像と前記微弱光画像のそれぞれの焦点位置を比較し設定された距離範囲を外れた場合には、基準画像および/または微弱光画像の取得を再度実行することを特徴とする付記項2Aから10Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項12A:前記微弱光画像の評価が、前記基準画像からの測定パラメータの取得をさらに含んでおり、前記基準画像からの測定データと関連付けて前記微弱光パラメータの評価を行うことを特徴とする付記項11Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項13A:前記基準画像における対象部位の輪郭情報に関連付けて前記微弱光画像を評価することを特徴とする付記項12Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項14A:評価が、前記対象部位の輪郭に相当する面積当たりの微弱光強度であることを特徴とする付記項1Aから13Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項15A:評価が、前記対象部位の輪郭における微弱光の位置または分布を決定することを特徴とする付記項1Aから13Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項16A:前記生体試料が複数の収容部に個別に収容されており、前記基準位置を個々の収容部ごとに実行することを特徴とする付記項1Aから15Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項17A:前記微弱光画像の取得を複数の収容部を含む広角視野で実行することを特徴とする付記項1Aから16Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項18A:前記微弱光画像を光学的および/または電気的に拡大することにより、前記対象部位から測定パラメータの取得を行うことを特徴とする付記項17Aに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項19A:前記生体試料は生きた細胞または組織であることを特徴とする付記項1Aから17Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
付記項20A:前記微弱光は、生物発光性タンパク質の発現に伴う発光であることを特徴とする付記項1Aから19Aのいずれか1つに記載の微弱光画像の解析方法。
以上の説明から、本発明にかかる微弱光画像の解析方法および解析装置ならびに生体試料撮像方法および生体試料撮像装置は、とくに生体細胞の発光観察、蛍光観察、蛍光・発光同時観察において産業上の利用可能性が高いことが理解できよう。
[II]以下に、本発明にかかる生体試料の撮像方法および撮像装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
第1の実施形態
第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置の構成について図26を参照して説明する。図26は、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。図26に示すように、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1Aを短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、対物レンズ2Aと集光レンズ3AとCCDカメラ4AとCPU5Aとで構成されている。なお、当該装置は図示の如くズームレンズ6Aをさらに備えてもよい。
サンプル1Aは、発光試料であり、例えば、発光タンパク質(例えば導入された遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子など)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞や、発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の臓器や、発光性の個体(動物など)などである。また、サンプル1Aは、具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞でもよい。対物レンズ2Aは、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上、好ましくは0.039以上のものである。集光レンズ3Aは、対物レンズ2Aを介して到達したサンプル1Aからの発光を集める。CCDカメラ4Aは、0℃程度の冷却CCDカメラであり、対物レンズ2Aや集光レンズ3Aを介してサンプル1Aを撮像する。CPU5AはCCDカメラ4Aで撮像した画像を出力する。
そして、対物レンズ2Aや対物レンズ2Aの包装容器(パッケージ)には、(NA/β)の2乗の値を表記する。ここで、(NA/β)の2乗の値を表記した対物レンズの一例について図27を参照して説明する。図27は、(NA/β)の2乗の値を表記した対物レンズ2Aの一例を示す図である。従来の対物レンズには、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)および無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)が表記されていた。しかし、本実施形態にかかる対物レンズ(対物レンズ2A)には、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)、無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)の他に、さらに射出開口角(例えば、“(NA/β)の2乗:0.05”)が表記されている。
以上、説明したように、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置において、対物レンズ2Aは、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上、好ましくは0.039以上である。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。また、対物レンズ2Aは従来の対物レンズと比較して開口数が大きく且つ倍率が小さいので、対物レンズ2Aを用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば動きのある発光試料や移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。また、対物レンズ2Aには、当該対物レンズ2Aおよび/または当該対物レンズ2Aを包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値(例えば0.01以上、好ましくは0.039以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)の2乗の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる。
従来、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイにおいては、細胞を溶解した後に発光量を測定するため、ある時点での発現量しか捉えることができず、しかも細胞全体の平均値としての計測になってしまう。また、培養しながらの計測においては、細胞コロニーの経時的な発現量の変化を捉えることはできるが、個々の細胞での発現量の変化を捉えることはできない。そして、個々の細胞の発光を顕微鏡で観察するためには、生きた細胞からの発光量が極めて弱いため、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラでフォトンカウンティングをしたりしなければならない。そのため、発光検出のカメラは高価で大掛かりなものになってしまう。しかし、レポーター遺伝子産物としてのルシフェラーゼの活性を示す個々の細胞の発光を顕微鏡によって観察する際、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度の冷却CCDカメラを用いて定量的な画像を取得することができる。すなわち、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、生きた状態で個々の細胞の発光を0℃程度の冷却CCDカメラによって観察することができるので、イメージ・インテンシファイアやフォトンカウンティングのための装置が不要である。つまり、低コストで発光試料の撮像を行うことができる。また、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、個々の生きた細胞の発光を、培養しながら経時的に観察することができ、さらにリアルタイムに観察することもできる。また、第1の実施形態の発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、同じ細胞について、異なった条件での薬剤や刺激の応答をモニタすることができる。
ここで、第1の実施形態の発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの理解を容易にするために、従来の対物レンズおよびそれを用いた発光画像観察について簡単に説明する。
一般に、顕微鏡観察における空間分解能εは、下記数式1で表される。
ε=0.61×λ÷NA ・・・(数式1)
(数式1において、λは光の波長であり、NAは開口数である。)
また、観察範囲の直径dは、下記数式2で表される。
d=D÷M ・・・(数式2)
(数式2において、Dは視野数であり、Mは倍率である。なお、視野数は一般に22から26である。)
従来、顕微鏡用対物レンズの焦点距離は国際規格で45mmとされていた。そして、最近では、焦点距離を60mmとする対物レンズが使われはじめている。この焦点距離を前提にしてNAが大きい、つまり空間分解能が高いレンズを設計すると作動距離(WD)は一般には0.5mm程度であり、また長WD設計のものでも8mm程度であった。このような対物レンズを用いた場合、観察範囲は0.5mm径程度である。
しかし、ディッシュやガラズボトムディッシュに分散した細胞群や組織、個体の観察を行う場合、観察範囲が1から数cmに及ぶことがある。このような範囲を分解能よく観察したいときには、低倍率でありながらNAを大きい値で維持しなければならない。換言すると、NAはレンズ半径と焦点距離との比であるので、NAが大きいまま広い範囲を観察できる対物レンズは、低倍である必要がある。そして、結果的に、このような対物レンズは大口径となる。なお、大口径の対物レンズの製作では、一般的に光学材料の物性の均一性やコーティングの均一性において、また、レンズ形状においても高い精度が求められる。
また、顕微鏡観察の場合、光学系の透過率や対物レンズの開口数やCCDカメラのチップ面での投影倍率やCCDカメラの性能などが、像の明るさに大きく影響してくる。そして、像の明るさは、開口数(NA)を投影倍率(β)で割った値の2乗、すなわち(NA/β)の2乗で評価される。ここで、対物レンズには、一般に、入射開口角NAと射出開口角NA´との間に下記数式3の関係があり、NA´2が、観察者の目やCCDカメラなどに届く明るさを示す値である。
NA´=NA÷β ・・・(数式3)
(数式3において、NAは入射開口角(開口数)であり、NA´は射出開口角であり、βは投影倍率である。)
一般の対物レンズにおいて、NA´は高々0.04であり、NA´2は0.0016である。また、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズにおける像の明るさ((NA/β)の2乗の値)を調査したところ、0.0005から0.002の範囲であった。
ところが、現在市販されている対物レンズを装着した顕微鏡を用いて、例えば細胞内でルシフェラーゼ遺伝子を発現させ発光している細胞を観察しても、当該細胞からの発光を目視で観察することができないし、さらに0℃程度に冷却したCCDカメラを用いて撮像した発光画像を観察しても細胞からの発光を確認することができない。なお、発光試料を観察する場合には、蛍光観察に必要な励起光の投影は不要である。例えば、落射蛍光観察では、対物レンズは、励起光投影レンズと蛍光を集光して画像を形成するレンズとの両方の機能を満たしている。そこで、光量の少ない発光を画像で観察するためには、大きなNAと小さいβの特性を有する対物レンズが必要である。そして、結果的に、当該対物レンズは大口径となる傾向がある。なお、このような対物レンズでは、励起光投影の機能を考慮することなく機能を単純化して設計、製造し易くすることが求められる。
また、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるために、タイムラプスや動画撮像が求められている。最近では、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察が行われている。これらの撮像では、単位時間の撮像フレーム数が多いほど、画像1フレームあたりの露出時間は短くなる。このような観察においては、明るい光学系、特に、明るい対物レンズが必要となる。しかし、蛍光に比べて発光タンパク質の光量は少ないので、1フレームの撮像に、例えば20分の露出時間を要することが多い。このような露出時間でタイムラプス観察を行うには、動的な変化が非常に遅い試料に限られる。例えば、約1時間に一度分裂する細胞では、その周期内の変化を観察することはできない。従って、シグナル・ノイズ比を高く維持しながら少ない光量を効率よく画像化するために、光学系の明るさを向上することは重要である。
以上の経緯を踏まえて製作された第1の実施形態の対物レンズは、一般に市販されている対物レンズに比べて、大きなNAと小さいβの特性を有している。ここで、0℃〜5℃の弱低温の冷却型CCDを用いた場合において、(NA/β)の2乗の値が0.01〜0.09の範囲の対物レンズで、個々の細胞の発光タンパク質による発光画像を5分以内で生成でき、且つ個々の細胞についての発光量の計測も可能であった。これに対して、同様の場合において、(NA/β)の2乗の値が0.007以下の対物レンズでは、肉眼ないし画像解析ソフトウェアによる認識可能な発光画像を生成出来なかった。よって、発光画像を生成可能な第1の実施形態の対物レンズの(NA/β)の2乗の値(またはNA´2)は、従来使用されていた対物レンズのその範囲よりも有意に大きな値である。つまり、第1の実施形態の対物レンズは、従来使用されて来た条件とは異なる条件において明るい対物レンズである、と言うことができる。これにより、第1の実施形態の対物レンズのような明るい対物レンズを用いれば、光量の少ない発光試料からの発光を、画像で観察することができる。また、より暗い像を観察するために、開口数の大きい第1の実施形態の対物レンズを実体顕微鏡に装着することで、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度に冷却したCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、液体窒素冷却を用いるCCDカメラで感度を上げる方法があるが、この場合CCDカメラが非常に高価に且つ大規模になる。しかし、第1の実施形態の対物レンズを用いれば、ペルチェ冷却によるCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。なお、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラによる撮像を行うと、標本がモザイク状に撮像され、発光する細胞を特定することは非常に困難である(文献「David K. Welshら、Current Biology, Vol. 14 (2004) 2289−2295」参照)。
また、第1の実施形態の対物レンズは、5cmから10cm程度の大口径である。これにより、従来では撮像対象となり得なかった揺れ、変形、分裂、移動等の動きの有る発光試料や広い範囲に分布する発光試料などを、撮像対象とすることができる。第1の実施形態によれば、例えば、細胞を含む培養試料(組織または細胞群)において、1cm角相当、好ましくは2cm〜5cm角相当以上の視野範囲を観察できるので、種々の重要な組織ないし器官(例えば、脳、視交叉上核、膵臓、腫瘍組織、線虫など)の全体もしくは大部分を、適宜、薄切片等で広視野で観察および解析できる点で好ましい。なお、上記の説明により、液体窒素のような極低温の冷却CCDの第1の実施形態への適用は排除されない。第1の実施形態によれば、極低温の冷却CCDでも得られなかった高速な撮像を、対物レンズを含む受光前の光学的構成だけで実現するようにしたからである。従って、第1の実施形態の方法および装置に対して、極低温の冷却CCDを組合せることによって、高感度化が図られ且つS/N比が増すので、画質を向上させるようにすることが出来る。
対物レンズ2Aおよび結像用の集光レンズ3Aとして用いるレンズは、例えば、それぞれ「Oil、20倍、NA0.8」および「5倍、NA0.13」の仕様である市販の顕微鏡用対物レンズであり、倍率Mgに対応する総合倍率は4倍である。CCDカメラ4Aは、例えば、5℃冷却の顕微鏡用デジタルカメラ「DP30BW(オリンパス社製)」であり、CCD素子は、2/3インチ型、画素数1360×1024、画素サイズ6μm角である。
なお、上述した発光観察は室温(25℃)で行われている。標本がインキュベーター内に載置される場合、あるいは、撮像ユニットまたは撮像装置の一部もしくは全部がインキュベーター内に収納される場合では、37℃の環境で発光観察が可能である。
また、この実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置によれば、例えば、5℃冷却の冷却CCDによって、フォトンカウンティングすることなく、1分間という短い露光時間で、ルシフェラーゼ遺伝子が発する微弱光を撮像できる。
また、明視野像と自己発光による像とを重ね合わせることによって、発光するルシフェラーゼ遺伝子の位置を鮮明な画像で観測することができるとともに、このルシフェラーゼ遺伝子を含む細胞を容易に特定することができる。
また、この実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置によれば、発光するルシフェラーゼ遺伝子の位置を特定して時系列に追跡し、発光現象の経時変化を測定することもできる。
ところで、この実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置では、対物レンズ2Aと結像用の集光レンズ3Aとからなる結像光学系を無限遠補正系とすることにより対物レンズ2Aと結像用レンズ3Aとの間に各種光学素子を配置して、サンプル1Aを様々な方法で観察することができる。
また、この実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置は、DNAマイクロアレイや細胞アレイや蛋白アレイのようなバイオチップを、光学的に読み取るためのバイオチップリーダーとして利用することができる。複数の収容部を有する基板としてのバイオチップとは、ガラスやポリスチレンなどの樹脂で作製された基板であってアドレス化された微小部位(その径は例えば0.05〜5.0mm)がその上に2〜1000個、0.1〜1.0mm間隔で貼りつけられたものであり、その各微小部位に多種類のDNA(又はRNA)断片や合成オリゴヌクレオチドや細胞や蛋白質等を配置して遺伝子の発現や特定遺伝子の存在などの分子生物学的に有用な情報を調べるために用いるものである。通常、このバイオチップから発せられる蛍光又は発光は、非常に微弱なものである。この実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を用いれば、従来の遺伝学的ないし免疫学的物質を固相化した微小なバイオチップへの固相化量を大幅に減らしても、リアルタイムな検出が可能となる可能性がある点で優れている。
一般的なバイオチップリーダーは、バイオチップから発せられる光が蛍光の場合、レーザー照射のコンフォーカル光学系と高速移動スキャニングステージとの組み合わせであり、このバイオチップリーダーでの測光は、スポット励起光照射点の発光量の和であるため、スキャニング幅が変わるとその都度測定光量も変化することになり、絶対光量を測定することができない。そこで、この実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すると、例えば、0.5mm径の視野を有する対物レンズに対して0.6mmステップでバイオチップを保持するステージを移動させ、停止する毎に測光することによって、絶対光量を測定することができる。特に、この実施形態によれば、蛍光よりも微弱な光を発する発光(化学発光、とくに生物発光)を十分に検出できるだけの光学条件を有する撮像装置を、所定の倍率に応じて設計できるので、バイオチップにおける定量的且つ高感度な発光解析を実行できる。
第2の実施形態
第2の実施形態にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置(微弱光標本撮像装置)は、倒立型のものである。図28の倒立型の微弱光標本撮像装置においては、外部からの光を遮断するチャンバー等の遮光装置内に配置することによって、外部の光の影響を受けることなく精度よく安定して微弱光を検出することができ、標本1Bの自己発光による像を鮮明に撮像することができる。ここで、図28に示す遮光装置はベース41B、囲い42Bおよび蓋43Bによって暗室を形成し、微弱光標本撮像装置は、この暗室内でベース41B上に備えられている。この遮光装置では、ノブ45Bを持ち上げることによってヒンジ部44Bを中心に蓋43Bを開扉し、標本1Bを交換することができる。
また、第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置を遮光装置内に配設した場合、キーボード、マウス等の入力装置47Bを有したコンピュータ等の制御装置46Bによって、この微弱光標本撮像装置を遮光装置の外部から遠隔操作および自動制御できるようにするとよく、特に、標本1Bに対する焦点合わせ動作および位置合わせ動作、カメラ5B等の撮像動作、照明ファイバー15Bによる照明光の調光などを、自動制御できるようにするとよい。
ここで、標本1Bに対する位置合わせ動作とは、対物レンズ6aBおよび結像用レンズ10Bからなる結像光学系、カメラ5Bおよび標本1Bを保持する試料台13Bの少なくとも1つを光軸に略直交する方向に移動させて、対物レンズ6aBの視野内に標本1Bを配設する動作である。なお、このような位置合わせ動作を利用して、結像用レンズ10Bが形成したエアリーディスクのうち着目するエアリーディスク毎に、エアリーディスクの中心とCCDの画素の中心とが合致するように処理してもよい。この場合、たとえば、エアリーディスクと画素とを相対的に2次元的に操作して、この画素に対応する出力が最大となる位置を検出するようにすればよい。
また、制御装置46Bは、図28に示すように、表示装置48Bを備え、当該表示装置48Bに、標本1Bの明視野像に対応する画像と標本1Bの自己発光による像に対応する画像とを重ね合わせて表示できるようにするとよい。さらに、制御装置46Bは、これらの画像を保存するメモリー等の記憶部を備えるとよい。
一方、第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置は、試料台13Bに替えて、例えば図29に示すように、シャーレ51B、区画52Bおよび透明板53Bからなる収容手段としての密閉容器を備え、シャーレ51B上に標本1Bを保持するようにしてもよい。ここで、この密閉容器は、図示しない空調装置によって生成される定温低湿のCO2をこの密閉容器内に給気する給気パイプ54Bと、この密閉容器内のCO2を排気する排気パイプ55Bと、を備え、この密閉容器内の温度、湿度、気圧およびCO2濃度の少なくとも1つを調整できるようにしている。なお、CO2を給排気する替わりに、この密閉容器の内部にヒートシート等を設けて、電気的にこの密閉容器内の温度調整等を行うようにしてもよい。
また、第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置は、標本1Bを照明する照明手段を設けてもよい。この場合、白色光源等から照明光を導光する照明ファイバーや、白色LEDと単レンズとを組み合わせてクリティカル照明を実現する照明装置や、コンデンサーレンズを用いたケーラー照明装置である顕微鏡用UCDなど、を用いることができる。また、第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置は、照明手段として、微分干渉観察や位相差観察を行う照明装置を備えてもよい。ただし、この場合、専用のリングストップ、プリズム、対物レンズ等を備える必要がある。
また、第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置を正立型の光学系とするか倒立型にするかは、試料の種類や目的に応じて適宜選ぶのが好ましい。正立型にする場合の利点は、試料容器への接地を良好にするためのメンブレンを用いた組織切片の観察において、メンブレンが邪魔にならない上方からの観察を行い易くする点に有る。組織切片の観察において、好適には1層に近い薄さにスライスされた細胞層を有する生体組織の切片を長期間培養しながらその発光画像を長期間かつ連続的に撮像できることは、極めて重要な技術といえる。このような組織切片の例として、小脳、視交叉上核のような中枢系組織や、膵臓、臓器腫瘍といった各種器官系組織が挙げられる。なお、生体試料が線虫のような光透過性を有する小動物ないし昆虫類であれば、当該生体試料をスライスせずに観察することも可能となる。第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置は、広視野を有する光学系をも提供するので、この装置により、運動能力を維持した小動物ないし昆虫類等の生体試料を、無毒な発光画像によって長期間観察できる利点は大きい。一方、倒立型にする場合の利点は、微弱光をより厳重な遮光条件で測定したい場合に、試料台の下方に撮像系を全て配置できるので、試料台における各種作業(例えば、シャーレ等の交換、薬剤等の注入、その他保守点検のためにカバーを開けること)を、試料上方で行う作業とは光学的に隔離しながら(なるべく外来光等の影響が介入しない状態で)行え、一定の撮像条件を維持できる点に有る。
また、第2の実施形態にかかる微弱光標本撮像装置では、撮像手段としてCCDを用いるようにしたが、これに限定されず、CMOS等の撮像素子であって0℃程度の冷却CCDと同等の撮像感度を有する撮像素子であってもよい。
産業上の利用可能性に関する補足
以上のように、本実施形態にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズは、例えば、ルシフェラーゼなどの発光遺伝子をレポーター遺伝子とし、遺伝子発現を制御するプロモーターやエンハンサーの解析や、転写因子などのエフェクター遺伝子や様々な薬剤の効果などを調べるレポーターアッセイにおいて、好適に用いることができる。
次に、本実施形態の主旨に基づいて、その適用可能な範囲を述べる。
画像解析用の細胞および試料の例
本実施形態のシステムおよび方法は、基板の種類に応じて、各種多様な形で提供される各種の任意の細胞を画像化するよう容易に適合させることができる。例えば、細胞は、細菌、原生動物、菌類の原核細胞、または真核細胞とすることができ、かつ、鳥類、爬虫類、両生類、植物、または哺乳類(例えば、霊長類(例えば、ヒト)、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ウサギ、有蹄類(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ等)など)に由来する細胞とすることもできる。細胞は、一次細胞、正常および癌化した株化細胞、遺伝子改変細胞、ならびに培養細胞とすることができる。これらの細胞には、自発的に誘導された各種の株化細胞や、個々の株化細胞から所望の生育特性または応答特性について選択された各種の株化細胞や、腫瘍の種類としては類似しているものの異なった患者または異なった部位から誘導した複数の株化細胞が含まれている。細胞の培養は、通常、保湿した92〜95%の空気および5〜8%のCO2の雰囲気を含み且つその気温が例えば37℃に管理されたインキュベータ内において、滅菌環境にて行う。細胞の培養は、成分未特定のウシ胎児血清のような生物学的流体を含有する栄養混合物中で行うことも、成分がすべて既知の無血清培地中で行うこともできる。
特に関心対象のものは、神経細胞および神経前駆細胞の画像化である。画像化を行う細胞は、遺伝的に改変した細胞(例えば、組換え細胞)とすることもできる。特に関心対象のものは、生細胞の画像化であるが、本実施形態は、態様によっては、細胞膜浸透化または固定細胞の画像化も意図する。細胞は、通常、細胞の維持および/または生育を目的とした培養液を含む試料中で画像化される。
本実施形態の多くの態様(特に、同一の細胞視野に戻る工程および/または細胞視野中の同じ個別の細胞に戻る工程を含む態様)において、細胞は基板表面に十分固定化され(例えば、基板(例えば細胞に対して付着性の物質でコーティングすることによって処理した基板)表面に付着させ)、基板の操作を行っても細胞が基板に対して相対的に移動することのないようにしておく。例えば、細胞は基板(例えば、ウェル中の組織培養用プラスチック)に直接付着させ、細胞の位置が基板に対して相対的に固定されて基板に対する細胞の位置が移動することなく基板の操作を行えるようにしておく。こうすると、同一の細胞視野に正確に戻ることも、細胞視野中の同じ個別の細胞に正確に戻ることも可能となる。
本実施形態は、一般に単一細胞レベルの画像化を意図しており、特に生きた細胞の画像化を意図する。細胞は、基板表面に孤立した単一細胞として分散していてもよく、例えば単層の場合のように他の細胞と接触していてもよく、また、例えば組織切片の場合のように薄層を形成していてもよい。画像化を行う細胞は、均質な細胞集団であっても、異質な細胞集団(例えば混合細胞培養物)であってもよい。このように、本実施形態は、単一細胞の画像化および細胞集団(この細胞集団は、場合によっては複数の異なった細胞を含んでいてもよい。)の画像化を可能とするものである。
細胞の画像化は、検出可能なマーカー(例えば蛍光ラベル又は発光(化学発光、生物発光)ラベル)を利用して行ってもよく、また、それらを利用せずに行ってもよい。こうした検出可能なマーカーおよび当該検出可能なマーカーを細胞と共に利用する方法は、当技術分野で周知である。検出可能なマーカーとしては、例えば、フルオロフォア(または蛍光)や化学発光体、他の適当な検出可能標識(例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)検出系やBRET(生物発光共鳴エネルギー転移)検出系で使用する標識)などが挙げられる。
本実施形態のシステムおよび方法は、細胞集団および個々の細胞の画像化を可能とする。本実施形態のシステムおよび方法は、特に、細胞の生存度(例えば、細胞の生存率や細胞の健康)や細胞の生理学的性質(シナプスの生理学的性質)やシグナル伝達やオルガネラの位置および機能やタンパク質の位置および機能(相互作用およびターンオーバーを含む)や酵素活性やレセプターの発現および位置や細胞表面の変化や細胞構造や分化や細胞分裂などを観察するための経時的な画像化を可能とする。例えば、一つの態様において、本実施形態のシステムおよび方法を、タンパク質の発現(例えば、ハンティントン舞踏病におけるハンティンギン(huntingin)の役割)及びタンパク質のレベル変化もしくは凝集が細胞死を引き起こしているのかを判断する際に使用したり、それらが細胞死の症状(例えば、細胞による、細胞死を防止するための試みであって、細胞死自体の原因ではない)なのかを判断する際に使用したりする。特に関心対象のものは、培養中における神経細胞の神経変性についての研究である。
本実施形態のシステムおよび方法は、単一細胞または細胞の集団をリアルタイムで所望の時間例えば、比較的に短い時間をおいて画像化することを可能とする。
本実施形態のシステムおよび方法では、細胞の画像化(例えば隣接したウェルに位置する細胞の画像化)を迅速に行うことができ、さらに、比較的短い時間をおいて、同じ個別の細胞を含む同一の細胞視野に戻ることによって再度画像化を行うことができるので、従来の方法では各画像の取得に要する時間の長さなどの事由ゆえに到底行い得なかったような観察を行うことが可能となった。本実施形態では、細胞現象(例えば、細胞の機能、細胞の生存、集団中の個々の細胞の運命)を、比較的短い時間をおいて追跡することもできる。こうしたことは、特定の時点で撮影された画像しか得られず、進行する現象(例えば変性)について得られる情報の量に制限があり、ひたすら時間が必要とされた従来の免疫細胞化学研究とは対照的である。具体的には、例えば神経変性についての従来の免疫細胞化学研究で300,000個の細胞を分析するには通常約6週間を要していたが、本実施形態のシステムおよび方法を用いると、この同じ分析を、半分にもはるかに満たない時間で完了させることができる。本実施形態のシステムおよび方法を用いると、手動で行えば通常丸6日かかるような免疫細胞化学的な分析や顕微鏡を用いた分析の作業を、顕微鏡およびコンピュータの処理により1時間で終えることができる。
また、本実施形態のシステムおよび方法では、基板をシステムから取り出し、その後再度システムに載置しても、同じ細胞集団および細胞集団中の個々の細胞を正確に特定できるので、単一細胞および選択された細胞集団の長期(例えば、数時間、数日、数週間またはそれ以上といった期間)にわたる分析も可能となっている。
本実施形態のシステムおよび方法では、複数の生物学的変数(例えば、細胞機能のパラメータまたは変数)を、略同時に又は全く同時に、定性的または定量的に測定することもできる。例えば、本実施形態のシステムおよび方法にて、位相差も併用して細胞を画像化することにより、細胞の形態や分子の諸現象の変化についての情報をさらに得ることができる。また、本実施形態のシステムおよび方法では、別の態様において、複数の検出可能なマーカーを使用して細胞を画像化することができる。
本実施形態のシステムおよび方法の適用事例
本実施形態のシステムおよび方法は、多種多様な細胞を用いた各種の設定において有用である。本実施形態のシステムおよび方法では、組織培養中で細胞または細胞集団を、任意の所望の期間(例えば、2時間、5時間、12時間、24時間、2日、4日、6日、7日、数週間、関心対象の細胞の寿命に至るまでの期間)にわたって追跡することも可能である。細胞をはじめとする生体試料の画像化は、上記期間に対応する一定の時間をおいて行うことも、他の態様で行うこともできる。以下はそうした画像化の例であるが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、以下の画像化の例では、本実施形態の特定の利点や特徴を強調する。
光毒性を防止または低減するための細胞の画像化
光毒性は、生きた試料の画像化を行う上で常に重要な制限要因となっており、光毒性は、入射光の強度、照射時間、波長と直接関連している。徐々に進行するプロセスを調べる場合、同一の細胞試料を繰り返し照射せねばならないので、光毒性は特に問題になる。そこで、本実施形態のシステムおよび方法を使用して、利用可能な信号を検出するために必要な入射光の量を低減する。本実施形態では、光毒性をいくつかの方法によって有意に低減する。本実施形態のシステムおよび方法によれば、低強度の白色光を極めて短時間照射することによって顕微鏡の焦点を合わせ、その後、より高強度の光を照射することによって高解像度の蛍光画像を取得することができる。なお、焦点合わせの自動化を行わない場合、焦点は、通常、高強度の蛍光を連続照射することによって合わせることになる。しかし、顕微鏡の焦点を合わせに要する時間やその後画像を取得するのに要する時間を考慮すると、細胞は、光毒性を有する高強度の光に、自動化を行った場合と比べ一桁程度長い時間にわたって照射され得ることになる。
また、本実施形態のシステムおよび方法は、一度焦点を合わせた後、焦点を合わせ直すことなく複数の隣接した蛍光画像を取得するので、光毒性を低減するうえで有利である。本実施形態のシステムおよび方法では、細胞の視野の大半が画像の生成に必要な光のみを有意な光として受け取るので、当該システムおよび当該方法は、蛍光画像を取得するうえで最適化されたものであるといえる。最後に、本実施形態のシステムおよび方法では、自動化によって高強度の光の照射時間が実質的に低減するので、光褪色も生じにくくなり、発せられる蛍光が明るいので、高解像度の画像を生成するのに必要な励起時間もさらに低減する。
刺激による遺伝子発現の光学イメージング
本実施形態は例えば、下記のように実施することが出来る。
まず、例えば、物質を細胞に接触させた際のこの接触という刺激により発現が誘導される遺伝子のプロモーター領域に発現可能に連結されたレポーター遺伝子(好ましくは蛍もしくはウミシイタケなどに由来するルシフェラーゼ)を、前記の遺伝子導入方法を用いて、所定数(例えば1〜1×109個、好ましくは1×103〜1×106個)の細胞に導入する。つぎに、前記レポーター遺伝子が導入された所定数の細胞を、細胞培養が可能な所望の器具(例えばシャーレ、多数のウェルを有するマルチプレートなど)を用いて、所望の栄養培地(例えばD−MEM培地など)中で培養する。つぎに、当該所定数の細胞からなる試料を、細胞にとって最適な温度(例えば25〜37℃、好ましくは35〜37℃)に予め保温して、試料の乾燥を防ぐため水を注入して保湿した発光顕微鏡の培養装置部に設置し、該発光顕微鏡の試料観察部にある対物レンズを通してデジタルカメラで発光イメージを記録する。つぎに、細胞に接触させて刺激を行なうための物質(例えば化合物)を所望の濃度(例えば1pM〜1M、好ましくは100nM〜1mM)で試料に加え、所望の時間間隔(例えば5分間〜5時間、好ましくは10分間〜1時間)で当該試料の発光イメージを記録する。そして、記録した発光イメージ内の所望の領域における輝度値を、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、MetaMorph(商標名);ユニバーサルイメージング社製など)を用いて取得する。
さらに、本実施形態は、発光イメージと同視野において明視野イメージも撮像して記録する構成を有する場合、画像解析ソフトウェアが発光イメージと明視野イメージとを重ね合わせる機能をさらに有することにより、意外に速く動いた細胞等(例えば組織全体、特定細胞群、個々の細胞、細胞の一部の領域など)による不鮮明な発光画像についても、明視野画像のような鮮明な画像を利用してこの細胞等の認識を正確に行なえるため、解析の信頼性も安定に維持できる利点がある。このように、本実施形態による撮像方法および装置を用いた画像解析を行なうための画像解析用ソフトウェアは、少なくとも発光画像において個々の細胞等(組織全体、特定細胞群、個々の細胞、細胞の一部の領域など)を形状や大きさ等のパラメータによる輪郭情報により識別するような認識機能と、認識した細胞等から発生する発光量を計測する計測機能とを有し、好ましくは、撮像装置を制御するコンピュータや操作者による入力手段(キーボード、マウス、テンキー、タッチパネル等)からの要求に応じて計測結果を出力する機能を有する。計測結果は、認識した細胞等の画像情報と対応付けて出力するのがさらに好ましい。出力の形式は、発光量に応じた擬似画像や数値であり得、多数の細胞を解析する場合には、正規分布、ヒストグラム、折れ線グラフ、棒グラフ等のグラフィック表現でもよい。また、同じ細胞等に関する時系列の解析結果を出力する場合には、その出力の形式は、経過時間順に発光量を並べた点分布や、時間順に線で繋げた波形パターンでもよい。波形パターンは、特に時計遺伝子のような周期性を示す発光データに適している。画像解析用のソフトウェアは、必要に応じて、出力後のグラフや波形パターンを単独ないし他の細胞等との相関を解析するように構成されてもよい。さらに、ディスプレイ上に出力した解析結果について興味有る部分を上記入力手段を通じて指定した時に、対応する細胞等の画像をディスプレイ上に表示するリコール機能を具備するのが好ましい。このリコール機能は、指定された細胞等に関して撮像した全期間ないし特定期間における動画情報を上映する上映モードを有するのがさらに好ましい。
生細胞の長時間にわたる画像化
生細胞は、大抵、組織培養用プラスチック上で培養される。生細胞を調べる場合、特に、生細胞を徐々に進行するプロセスにおいて調べる場合には、生細胞(例えば神経細胞)の健康を、調べているプロセスをカバーするのに十分な期間にわたって維持する必要がある。理想的には、細胞がもともと生育していたのと同じ培養皿で一定時間をおいて細胞の画像化を行うと細胞の健康が保たれ、かく乱の程度も最小限で済む。組織培養皿中の細胞を、滅菌条件下で倒立顕微鏡を使用して画像化することは可能であるが、倒立顕微鏡の場合、細胞が生育している基板(例えば、ガラスまたはプラスチック)を通して画像化を行うことになる。組織培養用プラスチックは、ガラスと比較すると波長によっては(例えば紫外線)、透過性に劣り、光の散乱を生じ、画像分解能が低減してしまう。しかし、神経細胞をはじめとする多くの細胞は、ポリリジンおよびラミニンで基板をコーティングして細胞の付着および分化を促した場合でも、ガラスと比べて組織培養用プラスチックで生育させた場合の方が長期にわたって生存し、健康な外観を示す。したがって、本実施形態の目標は、透過させるのがプラスチックであるかガラスであるかを問わずに高品質の画像が得られるような光学系を備えたシステムを提供することにある。
ガラスまたはプラスチックを通して画像を自動的に取得する場合、使用が可能な対物レンズについても重要な影響が及ぶ。すなわち、液浸レンズは通常、非液浸(空気)対物レンズより多くの光を集光するが、液浸レンズは浸漬溶媒を必要とし、自動画像化の場合にはこの溶媒を供給することは現実的ではない。非液浸レンズを使用して各種の組成および厚さを有する基板を通して焦点を合わせる作業も問題が多い。これらの基板の屈折率は製品ごとに異なり、発せられた蛍光が対物レンズに集光されるまでの間通過する空気の屈折率とも異なっている。異なった屈折率の物質を通して画像化を行うと色収差および球面収差が生じ、この収差によってレンズの開口数が増大する。収差は、20倍で顕在化し、40倍で実質的となり、60倍でほぼ克服不能となる。最後に、試料によっては、培養脳切片のように組織培養皿の底面から比較的離れて存在するものもあり、焦点面を自動的に判断するアルゴリズムを用いてZ軸に沿った各種の平面から画像を取得する必要がある。このような場合、光学的なデコンボリューション機能を本実施形態の発光撮像データに対して適用することが好ましい。光学的なデコンボリューション機能を採用することにより、切片に限らず、生体組織や小型の生物(昆虫、動物、植物など)にも3次元的な画像を提供し得る。3次元的な画像においては、検出光路に沿って重複するような複数の細胞等の試料を区別するのが容易であるばかりでなく、検出光路上の異なる距離に相当する各位置に存在するような別々の試料を高精度に定量できる。なお、焦点距離が極めて長い対物レンズを使用すると、離れた対象物に焦点を合わせることが可能となり、自動焦点合わせの間に対物レンズと組織培養プレートとが衝突することを防止することができる。
高処理スクリーニング・アッセイ法
本実施形態のシステムおよび方法は、高処理スクリーニング・アッセイ法を行ううえで特に有用である。こうしたアッセイ法の例としては、細胞の所望の応答(例えば、細胞死の調節、レセプターの内部移行、信号伝達経路の活性の調節(上昇または低下)、転写活性の調節、など)を惹起する物質の同定や、これまで知られていない又は調べられていない機能を有する核酸の分析(例えば、関心対象のコード配列を標的細胞に導入し、細胞中で発現させて行うような分析)等があるが、これらに限定されるものではない。
複数のパラメータを評価する場合には、検出の際に区別が可能なマーカーを使用して、異なった変数を検出することができる。例えば、スクリーニング・アッセイ法が、ポリヌクレオチドによってコードされた遺伝子産物の影響の評価を含む場合、1種のマーカーを使用して対象構築物でトランスフェクトされた細胞を同定し(例えば、関心対象のポリヌクレオチドを含む構築物中にコードされた検出可能なマーカーの利用、または関心対象の構築物と共に同時トランスフェクションされた構築物上に存在する検出可能なマーカーの利用により、関心対象の構築物におけるトランスフェクトされた細胞を同定し)、第二のマーカーを使用して遺伝子産物の発現を検出し(例えば、そのポリヌクレオチドによってコードされた遺伝子産物から生成された融合タンパク質の提供する検出可能なマーカー中の遺伝子産物を検出し)、第三の検出可能なマーカーを使用して遺伝子産物の標的細胞に対する影響を評価する(例えば、候補ポリヌクレオチドの遺伝子産物によって調節されていることが想定されているプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子の発現によって、または候補ポリヌクレオチドの遺伝子産物によって調節されている因子によって、細胞の生存度を評価するなど)ことができる。また、細胞の形態の変化(例えば、細胞の分化や細胞構造(例えば樹状突起)の形成)についての情報を位相差画像から得ることもでき、この場合、位相差画像を、例えば細胞ごとに所定の選択した時間をおいて取得した蛍光画像と重ね合わせて比較することができる。
スクリーニング・アッセイ法により標的細胞上のレセプターの活性を調節する物質を同定する別の例において、第一マーカーを使用して物質のレセプターに対する結合を検出し、その一方で第二マーカーを使用してレポーター遺伝子の転写による活性化を検出することができる。本実施形態で使用する場合には、「検出可能なマーカー」は、所定の波長で励起すると検出可能なシグナルを発するような分子を包含する。
本実施形態では、同一アッセイ法で複数の蛍光標識を使用し、細胞を個々に定性的または定量的に検出して、複数の細胞応答を同時に検出および/または測定することを可能とすることもできる。蛍光の独特の特性を利用すべく数多くの定量的技術が開発されており、そうした技術として、例えば、直接蛍光測定法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、蛍光偏光法または異方性法(FP)、時間分解蛍光法(TRF)、蛍光寿命測定法(FLM)、蛍光相関分光法(FCS)、蛍光退色回復法(FPR)が挙げられる。特に関心対象のものは、生細胞に適用可能であり、かつ場合によっては所望の時間をおいて使用することのできる(例えば何時間または何日かの間隔をおいて撮影された画像同士の比較が可能な)標識技術である。本実施形態は、これらの蛍光を用いたアッセイ法を、光励起が不要な発光を用いたアッセイ法に変更することができる。光励起が不要であれば、光学機器を単純化できるばかりでなく、上述した光学的条件によって適切な倍率で十分に明るく且つ定量性に優れた測定データを取得することができる。
試料としてのポリペプチド
態様によっては、試料は「ポリペプチド」または「タンパク質」である。これらの用語は互換的に使用するものであり、任意の長さの重合体形態アミノ酸のことを称する。例としては、遺伝的にコードされたアミノ酸および遺伝的にコードされていないアミノ酸、化学的もしくは生化学的に修飾された(例えば翻訳後修飾された、また例えばグリコシル化された)アミノ酸、または変性アミノ酸、重合体ポリペプチド、ならびに修飾ペプチド骨格を備えたポリペプチドが挙げられる。スクリーニングすることのできる「ポリペプチド」としては、エフュージョン(effusion)タンパク質で、異種アミノ酸配列を有するもの、異種および同種リーダー配列と融合させたもの、N末端メチオニン残基を有するか又は有さないもの、免疫的に標識したタンパク質などがある。ポリペプチドの修飾は、例えば、基材(例えば、ビーズのような固相担体、多孔質基板、キャピラリーアレイ)への付着を促すために行うこともできる。かかる基材を用いる場合、微量な物質の検出を高表面積ないし微小ボリュームにより行うことが可能である。ポリペプチドが細胞内に取り込まれない場合には、ポリペプチドは例えばマイクロインジェクションによって標的細胞に導入することができる。
スクリーニング・アッセイ法に使用する細胞
本実施形態のスクリーニング・アッセイ法に使用するのに適した細胞としては、上述したものが挙げられる。態様によっては、標的遺伝子産物を発現する組換え細胞のアッセイおよびアッセイ法を、例えば標的遺伝子産物への結合、標的遺伝子産物の発現の調節、または標的遺伝子産物の生物学的活性の調節によって、標的遺伝子産物と相互作用を生じる候補物質の検出に適したものとすることが、特に関心対象である。本明細書で使用する場合、「標的遺伝子産物」は、候補物質のスクリーニングの中心となるタンパク質をはじめとする各種の遺伝子産物のことを称するが、それらに限定されるものではない。例えば、標的遺伝子産物をレセプターとし、アッセイ法を、レセプターの活性を調節する物質の同定に適合させることができる。
一般的なアッセイ方法
何を目的としてスクリーニング・アッセイ法を行うかに関わらずアッセイ法の工程において物質と細胞とを接触させることになり、この工程では、遺伝物質のような場合、物質を細胞内に導入し、細胞の1以上の変数について検出を行うことになる。物質に対応した細胞パラメータの読み取り値の変化を測定し、できれば標準化し、このパラメータを照合用の読み取り値と比較することによって評価する。この評価には、照合用の読み取り結果、各種因子の存在下および不在下で得られた基礎読み取り値、他の物質(公知の経路の公知の阻害物質を含んでも含まなくてもよい)を用いることによって得られた読み取り値、などを用いることができる。分析対象物質としては、対象となる細胞の対象の細胞パラメータを直接または間接的に調節する能力を備えた任意の生物学的活性を有する分子を挙げることができる。
物質は、細胞に溶液のかたちで又は易溶性の形態で、培養中の細胞の培養液に加えるのが好都合である。物質はフロースルーシステムに間歇的もしくは連続したストリームのかたちで加えることもでき、添加時以外は静的な溶液に化合物を一度にまたは少量ずつまとめて加えることもできる。フロースルーシステムの一例では2種の流体を使用し、一方は生理学的に中性の溶液とし、他方は同じ溶液で試験化合物を加えたものとする。第一の流体を細胞上に通過させ、その後第二の流体を通過させる。溶液を1種のみ使用する方法において、試験化合物を、細胞の周囲の特定量の培養液にまとめて加える。培養液の成分の全体的濃度が、試験化合物の添加によって、またはフロースルー法における2種の溶液の間で、有意に変動するようなことがあってはならない。
態様によっては、物質の組成は、全体の組成に有意な影響を及ぼし得るような追加の成分(例えば防腐剤など)を含有しない。この場合、物質の組成は、試験対象物質および生理学的に許容される担体(例えば、水、細胞培養液など)から本質的に構成される。他の態様において、スクリーニング・アッセイ法において別の物質を含有させることができ、こうした物質としては、例えば、物質の結合パートナーへの静的な結合を可能とするための物質、非特異的な相互作用またはバックグラウンドでの相互作用を低減するための物質などが挙げられる。こうした物質については、当然ながら、生細胞のスクリーニングと適合するものを選択する必要がある。
上述したように、異なる物質濃度を用いた複数のアッセイ法を並行して実施して、各種の濃度に対応する示差的な応答を得ることができる。当技術分野で公知のように、物質の有効濃度を決定する際には、通常、1:10、または他の対数尺度を用いた希釈によって得られたある範囲の濃度を使用する。この濃度は、必要に応じて、二度目の一連の希釈を行うことによってさらに精緻化することができる。通常、これらの濃度の1つがネガティブ・コントロールの役目を果たし、このネガティブ・コントロールは、ゼロ濃度、または物質の検出レベル未満、または表現型の検出が可能な変化が得られない物質濃度以下の濃度とする。
本実施形態のシステムおよび方法の各種の側面や特徴を利用したアッセイ法の例を以下に示すが、本実施形態はそれらに限定されるものではない。
薬剤スクリーニング・アッセイ法
本実施形態の画像化システムおよび方法は、多岐にわたるアッセイ様式に適合させて、候補物質が標的細胞に対して及ぼす所望の生物学的効果(例えば、対象細胞パラメータの調節)に関してスクリーニングを行うことができ、この生物学的効果は、物質を薬剤として使用する際に意味を持つようなものとすることができる。例えば、各種の物質を、細胞分化、細胞死(例えば、アポトーシスの調節)、シグナル伝達(例えば、G結合タンパク質レセプターでのシグナル伝達、GTP結合、第二メッセンジャー系の検出など)、イオンチャネルの活性(例えば、流入を、例えばカルシウム・画像化を使用して評価することによって)、転写(例えばレポーター遺伝子アッセイ法を使用して、例えば標的遺伝子産物の発現に影響を及ぼす物質を同定する)などの調節について調べることができる。特に関心対象のものは、生細胞と共に使用することのできるアッセイ法である。
一つの態様において、スクリーニング・アッセイ法は、細胞中における候補物質の結合パートナーに対する結合を検出する結合アッセイ法、例えばレセプターに対してアゴニストまたはアンタゴニスト・リガンドとして作用する物質を同定するためのスクリーニングとすることができる。特定の態様において、アッセイ法は、例えば公知のレセプター・リガンド(例えば公知のアゴニストまたはアンタゴニスト)の活性の阻害について候補物質を評価する拮抗結合アッセイ法とすることもできる。この後者の態様において、公知のリガンドを検出可能となるよう標識し、例えば公知のリガンドの活性の低下または結合にともなって、その公知のリガンドの検出可能な標識も低減するようにしておくことができる。
候補物質を標的細胞と共にインキュベートする際、培養は任意の適当な温度で行うことができ、通常は4〜40℃で培養することができる。インキュベーション時間は活性が最適となるように選択するが、迅速でハイスループットなスクリーニングを進行させるうえで最適な時間を選ぶこともできる。インキュベーション時間は通常0.1〜1時間で十分であるが、態様によっては、細胞を、この培養時間ないしもっと長い適当な時間をおいてから調べることが望ましい場合もある。
さらに、発明者は、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。さらに、発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズについての「開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗」で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できること突き止めた。これらの発光画像を蓄積型の撮像装置により顕微鏡観察する発光解析システムを発光顕微鏡と呼ぶこととする。発光顕微鏡は、好ましくは遮光のための開閉蓋(ないし開閉窓)を具備する遮光手段を有し、この遮光手段の開閉によって必要な生体試料をセットまたは交換するようになっている。目的に応じて、生体試料を収容する容器に対して化学的ないし物理学的刺激を行なう操作を手動ないし自動で行なうようにしてもよい。最良の一形態では、発光顕微鏡は公知または独自の培養装置を搭載している。培養装置は、システム内での長期間の解析を可能にするように、温度、湿度、pH、外気成分、培地成分、培養液成分を最適に維持する機能を備えている。
発光試料の元となる生物学的材料は、例えば、真核動物、シアノバクテリア由来の細胞または組織が挙げられる。医学用途においては、哺乳類(特にヒト)における検査すべき部位からバイオプシーにより切除した細胞を含む試料が特に例示される。再生医療においては、少なくとも一部が人工的に改良ないし合成された生体試料が特に例示され、生物学的活性を良好に維持するかどうかを検査する目的に利用できる。他の一面において、本実施形態のアッセイ対象は、動物由来の細胞または生体組織に限らず、植物や昆虫由来の細胞または生体組織であってもよい。菌、ウイルスにおいては、従来のルミノメータでは実行されなかった容器内の部分ごとの解析が対象となり得る。ルミノメータではウェルまたはシャーレ等の容器内に無数の試料(例えば1ウェル当り100万個以上)を重積することで強大な発光量を迅速に得るようにしている。本実施形態では、肉眼では全く見えない個々の発光試料の画像を生成するので、個々の細胞が識別できる程度の密度で容器内に収容しても、個別の細胞ないし生体組織を解析できる。このような個別の解析は、発光している細胞だけを統計的に合計したり平均化したりする解析方法を含んでいる。これにより、細胞1個当りの正確な相互作用に関する評価が行なえる。また、多数の混在する発光試料において、同様の発光量ないし発光パターンを有する細胞群ないし組織領域を識別することが可能となる。
第1の実施形態に関する用語の補足説明および変形例
サンプル1Aを収容する試料容器としては、シャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、フローセルが挙げられる。ここで、容器底面は、光透過性の材料(ガラス、プラスチックなど)であるのは勿論のこと、2次元的データが得られやすいように、幅広(ないし扁平)な底面を有する容器であるのがさらに好ましい。複数の収容部分を一体化したウェルやキュベットにおいては、各収容部分の仕切り部分を遮光性の材料ないし染料で全面的に成形するのが好ましい。また、シャーレ等の上部開口を有する容器については、蒸発防止用のフタを覆い被せるのが好ましく、さらにフタの内面に反射防止用の被膜ないし染色を施すのがS/N比を向上させる上で好ましい。このような硬質のフタの代わりに、容器内の試料の上面にミネラルオイルのような液状のフタを配置するようにしてもよい。試料容器を載置するための試料ステージを、必要に応じて一般の顕微鏡装置のように、別の撮像用の視野に変更するために、X軸方向およびY軸方向に移動させるようにしてもよい。
対物レンズ2Aは、サンプル1Aの下方に倒立形式で配置してもよい。対物レンズ2Aは、生きた発光試料を培養条件のような恒温環境で安定に機能するように、適宜の加熱手段(ペルチェ素子、温風ヒーターなど)で加熱してもよい。対物レンズ2Aは、さらに、光軸方向であるZ軸方向に駆動(図26では上下方向)するようにしてもよい。対物レンズ2Aには対物レンズのZ軸駆動機構が備えられており、対物レンズ2AをZ軸(光軸方向)に沿って自動的に駆動する。対物レンズのZ軸駆動機構としては、ラックピニオン機構やフリクションローラー機構が例として挙げられる。
また、対物レンズ2Aは、所望の倍率に応じて適宜、油浸式にすることができる。また、どの倍率を選択するかは、評価(ないし解析)すべき試料のサイズに応じて任意に設定する。具体的には、細胞や組織を観察できる程度の低倍率(例えば5倍から20倍)や、細胞内または細胞外の微小物質を観察できる程度の高倍率(例えば40倍〜100倍)であり得る。
CPU5Aは、発光試料の画像情報を動画で表示する構成を具備することにより、1以上の所望の細胞に関する活性の変化をリアルタイムな映像でもって観察するような解析方法を提供するのが好ましい。これにより、細胞単位または組織単位での発光の様子を臨場感有る映像でもって時系列で観察することが可能となる。
本実施形態において、時系列で観察するための方法および装置は、必要とする装置構成を制御したり連携したりするためのソフトウェア、または該ソフトウェアを特徴づけるコンピュータプログラムの形態で提供されてもよい。また、本実施形態の方法または装置を、装置と同一ないし別個に配置されたデータベースと電気的に接続することにより、画像容量ないし解析情報量に制限されることなく、高速で且つ信頼性と質の高い解析結果を提供することが可能になる。
本実施形態においては、化学的励起試薬としての基質溶液による発光(冷光)を用いることにより、検出工程において励起光照射のための構成を不要にする。さらに顕微鏡を用いた観察において、肉眼で見えないような微弱光を発する発光試料に対して、高開口数の対物レンズを用いることにより、液体窒素を用いた極低温(例えば−30〜−60℃)の冷却を必要とするような大型且つ高コストな超冷却CCDを採用することなく、高速に画像化できるようにした。具体的には、高開口数(高NA)で且つ対象物を観察視野内に含むような投影倍率を有する対物レンズと、弱低温(例えば−5℃かそれ以上の高温)で、たかだか室温(ないし装置内温度)付近で、連続的に機能し得る撮像素子(CCD、CMOSなど)と、対象物を画像生成に適した位置に保持する保持手段と、これら対物レンズ、撮像素子、保持手段をハウジングして画像生成時の遮光を保障するための遮光手段と、を主要な構成として具備する。CCDが小型で且つ弱低温で制御できる場合、トータルシステムとしてコンパクトであり、同じハウジング内に全ての構成要素を収容しても、机上で見下ろせるような高さに設計することも可能である。従って、本実施形態を具現化した装置は、非常に小型で低コストの商品となる。小型化することにより、装置内空間も小体積となるので装置内の生物学的環境(温度、湿度、エアー成分)の条件を培養や微量反応に適したレベルに調節し易くなり、さらなる低コストと高い信頼性を有するという利点もある。また、装置全体の高さを低くすることにより、発光試料の出し入れや収容済みの試料に対する薬剤の分注のような刺激処理を、装置の上部から適宜の開閉窓ないし開閉カバーを介して簡単に行なえる。
他方、本実施形態は、光走査を行なわずに多数のピクセル(好ましくは多画素数)で画像生成する方法および装置を提供する。生成された画像の画像解析において、細胞を解析するような画像解析ソフトウェアも本実施形態の一部として、単独、ないし発光顕微鏡とのトータルシステムとして産業利用可能な製品を提供できる。
以下のハイスループット撮像装置に関する説明もまた、本実施形態として単独ないし、以上の説明に記載された実施形態との組合せとして含まれる。但し、下記に示す内容が共有出来る他の方法または装置については、以下の説明の範囲において、本実施形態の要旨に限定されず、分割可能な実施形態の記載を含んでいる。
ハイスループット撮像装置の技術分野について
本実施形態は1以上の生物学的試料に設定された多数の撮像領域をタイムラプスにより撮像する撮像装置に関し、特にハイスループットな撮像を可能するためのハイスループット撮像装置に関する。また、本実施形態は、このような撮像装置の機能を行わせるプログラムを含んでいるソフトウェアに関する。本実施形態は、生命体由来の細胞などの生物学的試料の生物学的活性を多数効率良く検査するような研究ないし臨床用途に適している。
ハイスループット撮像装置の背景技術について
生物は高度な複雑性を持つため、構造や機能を理解するのは容易なことではない。そのため、近年、生命現象を再現できる最小単位である細胞(つまり培養細胞)を用いた単純な実験系が用いられている。培養細胞を用いることで、ホルモンの応答などの解析について、生体内の他要因による影響を受けることのない実験が可能となる。つまり遺伝子の導入や阻害により遺伝子の機能解析を行うことが可能となる。
細胞を培養するためには、生体内を真似た環境を用いる必要がある。そのため温度は体温の37℃とし、また細胞間液を真似た培地が用いられる。培地にはアミノ酸などの栄養源の他に、PH調整のための炭酸バッファーが含まれる。炭酸バッファーは、5%という高い分圧の炭酸ガスを含む空気の存在下で平衡状態になり、ディッシュなどの開放系の培養に利用される。また培地から水分の蒸発を防ぐため、95〜100%の高湿度の環境が要求される。
細胞の培養には上記環境条件を備えた炭酸ガスインキュベータが用いられる。さらに、細胞の状態観察には位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡が用いられ、GFPなどの発現観察には蛍光顕微鏡が用いられる。また、顕微鏡画像の撮影および表示にはCCDカメラとコントローラ(パソコン)が用いられ、これらを組合せた培養顕微鏡が提案されている(特許文献;特開2003−29164号公報)。
ハイスループット撮像装置に係る解決すべき課題について
培養している細胞を長時間または長期的に顕微鏡で観察する場合、タイムラプス観察方式で行われ時系列的に画像を取得している。タイムラプスとは一定間隔の時間で試料の撮影、画像の保存を行い、長時間かけて変化する細胞の状態を確認し易くするために用いられる。例えば、始めに細胞1個を所要撮影時間(カメラの露出時間)で1回撮影し、その後1時間毎に1回ずつ撮影し続け24時間撮影すれば25枚の画像を取得できる。これら画像を撮影したあと連続的に再生すれば、1時間ごとの細胞の変化を容易に確認することができる。撮影間隔を例えば30分、15分と短くすれば、動きの速い細胞の観察も行える。
また、細胞を複数箇所観察したい場合は、顕微鏡に付随する電動ステージを用いて目的の場所に顕微鏡または試料を移動して観察を行っている。観察位置への移動はタイムラプスと同期して行っている。このような複数の観察位置を順次観察するタイムラプスを多点タイムラプスという。なお、上述した本実施形態の発光試料撮像方法および発光試料撮像装置によれば、独自に究明された明るい開口数の対物レンズを採用することによって、従来よりも顕著に短時間(例えば30分の1以下の所要時間)で発光画像を生成できるので、5〜20分単位、好適条件では5分未満、最短で約1分単位の微弱光画像による時系列評価が実現する。このことは、従来、肉眼で観察できるような輝度の蛍光画像に対して、肉眼で見えないような発光画像を代替ないし連携させることを可能とし、高速な反応ないし生体分子の動態の解析にも利用できるという画期的技術を提供するものである。発光画像を得るには、励起光を必要としないので、概日リズムのような光感受性試験は勿論のこと、生物材料への過度な刺激ないしダメージを無くして正確かつ長期安定な解析を実現する。再生医療においては、発光画像による解析により、何ら生物学的ダメージを受けていない生体材料を用いた治療、診断、創薬等の医学利用が可能であるという可能性を有する。
しかしながら、タイムラプスによる撮像を多数の細胞について行おうとすると、最初に撮像した細胞と最後に撮像した細胞とで少なからず有意な時間差が生じる場合がある。有意な時間差は、細胞同士の比較を行う場合にしばしば致命的である。また、任意に指定した複数の細胞について時間差が生じないように撮像する有効な方法は知られていない。従来は、複数の細胞について順次に撮像を行うように撮像間隔を手作業で変更し、誤動作したら停止して再トライするような対応しか知られていない。特に、昨今のセルベースアッセイのように、多数の細胞を自動的に解析するシステムにおいては、タイムラプスによる画像を用いるとスループットが激減する可能性がある。
以上のような実情に鑑みて本実施形態の方法および装置をタイムラプスの撮影作業を効率的に行うように改良した応用例を、以下に説明する。なお、以下に説明するハイスループット撮像装置およびそのためのソフトウェアは、本実施形態の主旨に基づき、さらなる特許性を有する優れた発明である。ここにおいて、以下に示す実施形態は、多数の撮像対象からのタイムラプスデータを同時期に得ることが可能なハイスループット撮像装置およびそのためのソフトウェアを提供することを目的とすることができる。
課題を解決するためのハイスループット撮像装置の手段について
上記目的を達成するために本実施形態のハイスループット撮像装置は、複数の撮像領域に存在している生物学的試料を撮像して試料画像を取得するための画像取得手段と、前記画像取得手段を制御し、前記撮像領域ごとにタイムラプス・インターバル撮影を行うための制御手段とを備え、前記制御手段は、前記試料画像の取得に必要な撮像時間と前記撮像領域の数に基づいてインターバル撮影の条件を設定するためのインターバル撮像条件設定手段を有していることを特徴としている。インターバル撮影の条件の一例として、生物学的試料の活性速度ないし反応速度に応じて、タイムラプス条件としての撮像時間を変更することも含まれる。本実施形態のハイスループット撮像装置によれば、1分〜20分の露光時間ないしそれ以上の時間から適当な露光時間を選択することができる。反応(ないし活性)速度が速い試料については、画像解析可能なレベルの発光画像が得られる範囲で最小の露光時間を設定することができる。逆に、反応(ないし活性)速度が遅い試料については、画像容量が余分にならない程度に長い露光時間を設定することができる。好ましくは、同一ないし異なる撮像視野において、複数段階の露光時間(例えば、1分、5分、10分、20分、30分の群から2以上の任意の組合せの段階)または連続的時間範囲(例えば、1〜30分の露光時間において、1〜3分単位の分割目盛または無段階で選ばれる任意の露光時間)を設定することによって、試料ごと、ないし試料中の領域(ないし部位)ごとの画像解析を実行できる。さらに、反応(ないし活性)の速度が異なる発光画像において、画像再生手段における再生速度を制御することによって擬似的に類似の速度による動画映像を提供でき、診断などの評価を簡単且つ効率良いものとし、試料ごとに非特異的なばらつきがあった場合にも正確に解析できるので、最終的な評価結果を早く出せるという利点もある。また、試料ごとに画像解析可能なレベルの発光画像が得られる範囲で最小の露光時間を設定することができ、解析時間の短縮にも役立ち、スループットを高める。露光時間の選択は、自動でも手動でもよい。
また、本実施形態のハイスループット撮像装置は、複数の撮像領域に存在している生物学的試料を、異なる画像関連情報を抽出する画像情報抽出手段により撮像して試料画像を取得するための画像取得手段と、前記画像取得手段を制御し、前記撮像領域ごとにタイムラプス・インターバル撮影を行うための制御手段とを備え、前記制御手段は、前記試料画像の取得に必要な撮像時間と前記画像情報抽出手段の種類に基づいてインターバル撮影の条件を設定するためのインターバル撮像条件設定手段を有していることを特徴としている。このような構成においても、制御手段により設定された撮像条件によって撮像の作業が効率的に実行されるので、多数の撮像領域を短時間で撮像することが可能となる。
本実施形態において「生物学的試料」はあらゆる生命体を対象とすることができ、関心がある生物学的活性を、維持可能な状態で適当な保持手段としての容器または生命体に保持することによって、撮像手段に対し撮像すべき撮像領域を提供することができる。ここで、容器は、所望の撮像手段により撮像が可能な状態で試料を保持するあらゆる収容体を含み、具体的にはウェル、シャーレ、スライドチャンバー、キュベットが挙げられる。また、生命体としては、植物、哺乳類、魚類、昆虫類、細菌、ウイルスが挙げられる。生命体が生命を維持している状態で、必要に応じて生命体の一部を撮像可能な状態に処置し、適宜の撮像手段により生命体の撮像領域にアクセスできる場合には、生物学的試料が生命体に保持されていることになる。生物学的試料としては、生命体に由来するあらゆる部分を含むが、好ましくは生物学的な細胞であり、さらに好ましくは発生学的な分裂または増殖が可能な有核細胞である。細胞が異なる機能に分離した複数の器官を構築している生命体については、関心ある生物学的活性を示している任意の器官であってよい。生物学的活性としては、生理学的、遺伝学的、免疫学的、生化学的、血液学的活性のうち1以上の活性であり得る。「複数の撮像領域」は、同一の保持手段に保持された1個以上の生物学的試料、または別々の保持手段にぞれぞれ保持された1種類以上の被撮像部位を意味する。
ハイスループット撮像装置の効果について
以上のように本実施形態のハイスループット撮像装置は、制御手段により設定された撮像条件によって撮像の作業が効率的に実行されるので、多数の撮像領域を短時間で撮像することが可能となる。また、多数のタイムラプスデータを試料の数が非常に多い場合でも同時期に得ることができるので、生物学的活性に関する研究や臨床において大きく寄与する。
本実施形態の第一の実施例として、図30を参照して説明する。図30は本実施形態の装置の全体構成を示す概念図である。培養顕微鏡本体101Cは、細胞を培養するインキュベータ室と細胞を観察する顕微鏡部分とが一体となっている。培養顕微鏡本体101Cには内部にコントローラ102Cが内蔵されており、後述する各ユニットの制御を行っている。コントローラ102Cは培養顕微鏡のスペースをコンパクトにするため培養顕微鏡本体101C内部に配置したが、コントローラ102Cの発熱による影響がある場合は培養顕微鏡本体101C外部に配置してもよい。さらに、培養顕微鏡本体101Cは警告ブザー103Cと警告表示装置104Cとを備えている。警告ブザー103Cは、実験中に何か問題が発生した場合などに警告音を鳴らすことができる。また、警告表示装置104Cは、警告ブザー103Cと同様に何か問題が発生した場合の警告表示や、作業指示などの表示が可能である。特に、警告表示装置104Cは、操作パネルとしての機能を持つタッチパネル104aCを備えており、作業者が、警告表示装置104Cに表示される指示に従いタッチパネル104aCに触れて操作を選択することができる。
コントローラ102Cにはフォーカスハンドル・ジョイスティック105Cが接続されており、フォーカスハンドルにて後述する顕微鏡部分のZ軸方向(即ち、試料にピントを合わせる方向)を移動させることができ、ジョイスティックにてRステージ、θステージを移動させることができる。θステージは軸を中心に回転方向に移動可能な電動ステージであり、Rステージは前記θステージの中心軸と垂直な1つの軸の方向に移動可能な電動ステージである。これらは装置サイズをコンパクトにするため使用したが、一般的なXYステージでもよい。特に、図31に示すRステージモータ30Cとθステージモータ31Cは、後述する本実施形態の装置のインターバル撮像条件設定手段により設定された条件に基づいて、コントローラ102Cを通じて駆動制御される。
培養顕微鏡本体101Cはインキュベータ室内に温度制御用のヒータ112Cを有し、ヒータ112Cをコントロールする温度コントローラ106Cが装備されている。
コントローラ102Cおよび温度コントローラ106Cはコンピュータ109C(図30ではパソコン)に、例えばRS−232Cなどのインターフェイスで接続されており、コンピュータ109Cから制御が可能になっている。また、インターフェイスとして必要な各手段(メモリ、演算回路、表示部、入力部等)も含んでいる。
培養顕微鏡本体101Cのインキュベータ室内へ供給する混合エアー(温度、湿度および炭酸ガス濃度(二酸化炭素濃度)をそれぞれ、例えば37℃、95〜100%および5%に制御したもの。なお、各数値は一般的な値であり調整可能である。)を蓄積してあるタンク107Cが図示の如く外部にあり、電磁弁108Cの開閉により混合エアーをインキュベータ室内へ供給できる。本実施形態ではタンク107Cに混合エアーを入れているが、タンク107Cを炭酸ガスのみとし、湿度を維持するための不図示の水槽をインキュベータ室内に設置してもよい。またタンク107Cを37℃に維持しないで炭酸ガスをインキュベータ室に供給することも可能である。電磁弁108Cはコンピュータ109Cにより制御するようにしても良い。
コンピュータ109CはLAN、インターネット等のネットワーク110Cに繋がれており、さらにネットワーク110Cは遠隔地コンピュータ111Cに接続されており、ネットワーク110Cを介して遠隔地コンピュータ111C(図30ではパソコン)からコンピュータ109Cを制御することができ、ついては培養顕微鏡本体101Cで行うタイムラプス・インターバル撮像を遠隔地コンピュータ111Cから監視したり、撮像データを大量に蓄積して検索可能なデータベースとしてコンピュータ109Cを機能させたりすることが可能である。遠隔地コンピュータ111Cのユーザは利害関係者であってよいが、複雑多岐に亘るタイムラプス撮像の利用を順調に継続するために、システム運用を行う外部の専門業者との業務契約でまかなうのが好ましい。また、遠隔地コンピュータ111Cとしては、装置の現場(検査室、実験室等)以外の場所であれば、退室時、帰宅時、主張時、休暇時の任意の時刻において主に監視を行う目的の携帯型の画像受信機であってもよい。携帯型の遠隔地コンピュータ111Cによれば、所望の画像を呼び出したり、警告時にブザー、ランプ、異常マーク等で異常を把握したりという即座の対応が可能となる。いずれにしても、装置本体101Cと通信手段で接続する遠隔地コンピュータ111Cにおいては、適切な認証手段(例えば、暗証番号、担当者ID、電子鍵、バイオメトリックス(指紋、虹彩、静脈等))によるアクセス制限を行うのが好ましい。また、適切な認証が行われたアクセス者であれば、遠隔コンピュータ111Cを通じて、インターバル撮像条件を変更するようにリモート・コントロール出来るようにすることがさらに好ましい。このように、遠隔地コンピュータ111Cは、装置の現場に行かなくとも、監視や一部の操作を可能にすることも出来るので、使用者の負担(例えば工数、経費、移動時間)を大幅に軽減する優れた利用システムを提供する。
図31は本実施形態の培養顕微鏡本体101Cの内部構成図である。インキュベータ室20Cはフタ22Cにより外部から密閉され、その内部の培養環境の温度と湿度と炭酸ガス(CO2)濃度とを一定に維持したり又積極的に制御したりする。混合エアーはエアー配管24Cを介してタンク107Cから供給されている。不要なエアーは不図示の配管から廃棄される。フタ22Cはヒンジ23Cを軸に把手21Cにより開閉可能である。フタ22Cが開いている場合、フタ開閉センサー28Cが作動し、コントローラ102Cに対しフタ22Cの開閉を知らせることができる。
ヒータ112Cは、インキュベータ室20C内部に設置され、定められた温度(例えば37℃)以下になったことを不図示の温度センサーにより検出した場合、自動的に動作し温度を維持することができる。図31にはヒータ112Cを1個しか記載していないが、フタ22Cやベース55C全体に取り付けインキュベータ室20C内の温度ムラを小さくするようにしてもよい。
円形トレイ26Cは複数の試料設置穴52Cを有し、これらに複数の試料容器25Cが設置できる。複数の試料容器25Cは、装置本体の搬送手段の保持台として機能する円形トレイ26Cに対し保持される。本発明では、円形トレイのような搬送手段における板状の保持台における別々の位置に、複数個の試料容器が保持された場合にも、「複数の試料容器を収容する基板」と称することができる。試料容器25Cは円形トレイ26Cに対し上方向に取出すことが可能である。試料容器25Cを円形トレイ26Cに設置すると、試料容器25Cの底面が円形トレイ26Cの試料設置穴52Cのリング状突起51Cに接触し、試料容器25Cが下に落ちないようになっている。さらに、試料容器25Cは円形トレイ26Cに対し位置決め可能で設置できるようになっている。試料容器25Cの底面は透明のガラスまたは樹脂でできており、対物レンズ33Cから観察可能である。ここで、試料容器25Cの材質ないし表面形状によっては、撮像視野に対応する試料容器25Cの底面の中央付近またはほぼ全面を切り欠き状態とし、この部分に、光透過性が高く且つ平滑に成形されたガラス等の透光窓を貼り合わせるようにした改良型の容器を用いるのが好ましい。
また、試料からの水分の蒸発を防止するために試料容器25Cを覆う程度の適宜の試料容器フタ57Cを被せてもよい。培地交換で試料容器25Cをインキュベータ室20Cから外に出し、試料容器25Cが冷えた状態でインキュベータ室20Cに入れたときに、試料容器25Cに被せられている試料容器フタ57Cが結露する可能性がある。試料容器フタ57Cが結露した場合に当該結露した試料容器フタを交換できるように、予備の試料容器フタ57Cを保管するスペースがインキュベータ室20C内に設けてある。保管スペースに置かれている試料容器フタ57Cは培地交換中もインキュベータ室20C内にあるため冷えることはない。さらに、試料容器25Cは、例えばガラスのような透明で観察可能な底面部材および上面部材、ならびに例えば金属のように熱容量の大きい2つの部材(部材Aおよび部材B)からできており、底面部材と部材Aは接着により固定され、上面部材は部材Bと接着されている。部材Aと部材Bは着脱可能になっている。このような構造にすることで、上面部材と底面部材の結露を防止することができる。
円形トレイ26Cは回転ベース34Cから脱着可能で、円形トレイ26Cを外した場合、円形トレイ脱着センサー27Cが作動し、コントローラ102Cへ円形トレイ26Cが外れていることを知らせることができる。円形トレイ脱着センサー27Cは図31では押しボタン式を記載しているが、円形トレイ26Cの脱着を検知できるセンサーならどのようなものでもよい。また、試料台としても機能するこの円形トレイ26Cは、試料容器25C内に添加ないし交換された試薬等の所定の溶液を適宜混和するための混和手段(図示せず)を具備するのが好ましく、この混和手段により、揺動ないし振動(超音波振動もしくは震蕩)でもって特定の試料容器25C内の液体を万遍なく容器内に行渡らせるものである。
回転ベース34Cは、θ回転軸35Cに取り付けられており、θステージモータ31Cの回転により円形トレイ26Cを所定の回転方向に1トレイずつ間欠的に回転停止することができる。この円形トレイ26Cの回転と停止からなる回転周期は、後述する本実施形態の装置のインターバル撮像条件設定手段により設定された条件に基づいて、コントローラ102Cを通じて駆動制御される。回転周期の変形例として、円形トレイ26Cに配置した同一円周上の全ての試料容器25Cの個数より1トレイ分だけ多いか又は少ない回転距離で停止するような回転停止の周期を行うことによって、見かけ上は1試料容器ずつ間欠的に進むような停止でありながら、間欠的移動するごとに殆ど全ての試料容器25Cを毎回1周させることも可能となり、この各周回移動において、個々の試料容器25Cに関する培養状態の良否などの監視を行うことも可能となる。
Rステージモータ30Cによりリードネジ38Cが回転し、ナット53Cに取り付けられている直線移動ベース36Cが左右に移動する。直線移動ベース36Cには直線ガイド54Cがあり直線方向のみ移動可能になっている。θ回転軸35Cは直線移動ベース36Cに対し回転可能に取り付けられており、直線移動ベース36Cが左右に移動すると回転ベース34Cも左右に移動させることができる。これにより、試料をRθ極座標系で移動できるステージを実現できる。
ベース55Cはインキュベータ室20Cとモータ室58Cとを分けており、インキュベータ室20C内の高湿のエアーがモータ室58Cに進入しないように各部が密閉されている。まず回転ベース34Cとベース55Cの間には平面状のシート50Cを挟んであり滑動可能になっている。
蛇腹56Cは、対物レンズ33Cがインキュベータ室20内に露出している部分を囲むように取り付けてあり、対物レンズ33C先端部分とベース55Cにその端面を接着等で固定し密閉されている。これによりベース55Cと対物レンズ33Cの隙間からモータ室58Cに高湿のエアーが入らないようにしている。
対物レンズ33Cは、Zステージモータ32Cがリードネジ39Cを回すことにより上下させることができる。対物レンズ33Cが上下することで試料にピントを合わせることができる。対物レンズ33Cが上下しても蛇腹56Cはゴムなどのやわらかい樹脂でできているため伸び縮みすることができ、密閉は維持される。
顕微鏡室59Cは温度変化による光学系部材の膨張がない程度に温度を維持するようになっている。温度維持には不図示のヒータ等が用いられる。
顕微鏡室59Cにはコントローラ102Cが設置されており、各ユニットへの配線が接続されている。LED照明41Cは蛍光観察用の照明で、蛍光キューブ42Cを介して通過窓40C、対物レンズ33Cを経由して試料を照明する。試料からの光は対物レンズ33C、通過窓40C、蛍光キューブ42Cを介して、倍率変更レンズ43Cを通過しミラー44Cで光路を90度曲げてCCDカメラ45Cに入射される。ミラー44CはCCDカメラ45Cの設置スペースを確保するために付けたもので、CCDカメラ45Cの設置スペースがあれば光路を折り曲げる必要は無い。
LED照明41Cの代わりに、不図示の水銀ランプ等、光ファイバーを用いて光源として用いることも可能である。水銀ランプの場合、LED照明41Cのように高速で点灯消灯ができないため、シャッターを取り付けて光の入射をオン/オフする必要がある。これらもコントローラ102Cから制御可能である。なお、倍率変更レンズ43Cを介さずにCCDカメラ45Cに入射する場合もある。つまり、倍率変更レンズ43Cは対物レンズ33CからCCDカメラ45Cに延びる光路上に適宜挿脱されてよい。
蛍光キューブ42Cは軸48Cを中心に回転可能になっており、波長の異なる蛍光キューブに切換えることができる。回転はキューブターレットモータ47Cの駆動により電動で行える。これらもコントローラ102Cから制御可能である。
倍率変更レンズ43Cは軸49Cを中心に回転可能になっており、倍率の異なるレンズに切換えることができる。回転はレンズターレットモータ46Cの駆動により電動で行える。これらもコントローラ102Cから制御可能である。この倍率変更レンズ43Cは、ズーム機能を内蔵した1個のズームレンズであってもよい。また、必要に応じ、所望の倍率等の仕様のレンズに交換するだけの構成でもよい。
図32は、図30、図31に記載したユニットで電気的方法などにより制御可能なユニットをブロック図に示したものである。図30と図31で説明した各ユニットについての説明は省略するが、各ユニットは、コントローラ102Cに接続され、コンピュータ(パソコン)109Cのユーザインターフェイスから観察者が制御可能になっている。CCDカメラ45Cは、冷却CCDを用いた高感度タイプが用いられ、直接コンピュータ109Cに接続されている。ヒータ112Cは温度コントローラ106Cを介してコンピュータ109Cに接続されているが、温度コントローラ106Cの機能がコントローラ102Cにあればコントローラ102Cを介してヒータ112Cを制御してもよい。
図32の特徴的な構成としては、装置本体101C内部の機能を外部より制御する外部制御系60において、セッティングされた各試料容器25に関する撮像条件を設定するインターバル撮像条件設定手段70Cがコンピュータ109Cを介してコントローラ102Cに接続している点である。また、コントローラ102Cが撮像手段としてのCCDカメラ45Cの撮像動作についても駆動制御するべく接続している点も特徴の一つである。これにより、コンピュータ109Cに付随する入力手段や表示手段のような各種インターフェイスを含む外部制御系60Cと、インターバル撮像条件設定手段70Cと、内部制御系としてのコントローラ102Cと、撮像手段としてのCCDカメラ45Cと、各試料容器25Cを保持する円形トレイ26Cのための各種モータ30Cおよび31Cと、を連携可能にしている。
ここで、インターバル撮像条件設定手段70Cによる設定内容について説明する。このインターバル撮像条件設定手段70Cは、次に示すようにあらゆる場面での想定に対応した装置を提供する。
装置1:複数の撮像領域に存在している生物学的試料を撮像して試料画像を取得するための画像取得手段と、前記画像取得手段を制御し、前記撮像領域ごとにタイムラプス・インターバル撮影を行うための制御手段とを備え、前記制御手段は、前記試料画像の取得に必要な撮像時間と前記撮像領域の数に基づいて前記撮像領域ごとのインターバル撮影の条件を設定するためのインターバル撮像条件設定手段を有していることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置2:装置1に記載の装置において、前記インターバル撮影の条件は、複数の撮像領域を複数回切り換えて撮像する設定を有していることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置3:装置2に記載の装置において、前記画像取得手段から送出される画像信号を撮像領域ごとに積算して画像を生成することを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置4:装置1に記載の装置において、前記インターバル撮影の条件は、撮像に必要な時間以外に別種の処理を行うための余剰時間を含んでいることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置5:装置4に記載の装置において、前記撮像領域を前記画像取得手段による撮像可能な光環境に維持するために外部との遮光を行う遮光手段と、前記遮光手段による光環境を一時的に解除して前記画像取得手段による撮像以外の処理を行うための処理手段とを備えたことを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置6:装置1から5のいずれかに記載の装置において、前記複数の撮像領域に対して前記画像取得手段を相対的に移動する移動手段を備えることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置7:装置6に記載の装置において、複数の生物学的試料を円形トレイの円周に沿って順次配置するとともに、この円形トレイを前記制御手段の撮像条件に応じて回転および停止可能としたことを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置8:装置7に記載の装置において、前記円形トレイの回転周期を複数の撮像領域を通過してから停止する構成としたことを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置9:装置8に記載の装置において、前記円形トレイの回転周期が、1回転±1個の撮像領域分の長距離回転モードを有していることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置10:装置9に記載の装置において、前記長距離回転モードの長距離回転中に前記円形トレイ上の全ての撮像領域に関する別種の参考情報を取得する参考情報取得手段を備えたことを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置11:装置1〜4のいずれかに記載の装置において、前記画像取得手段は撮像時の撮像倍率を変更可能な撮像倍率変更手段を有し、前記撮像倍率変更手段による撮像倍率に応じてインターバル撮像条件を設定することを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置12:装置1〜4のいずれかに記載の装置において、前記画像取得手段は撮像領域から得られる光信号を受光する受光素子を備え、受光素子の受光能力に応じてインターバル撮像条件を設定することを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置13:複数の撮像領域に存在している生物学的試料を異なる画像関連情報を抽出する画像情報抽出手段により撮像して試料画像を取得するための画像取得手段と、前記画像取得手段を制御し、前記撮像領域ごとにタイムラプス・インターバル撮影を行うための制御手段とを備え、前記制御手段は、前記試料画像の取得に必要な撮像時間と前記画像情報抽出手段の種類に基づいて前記撮像領域ごとのインターバル撮影の条件を設定するためのインターバル撮像条件設定手段を有していることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置14:装置13に記載の装置において、前記画像情報抽出手段が、同一の撮像領域に対して同時または連続的に異なる画像関連情報を抽出することを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置15:装置14に記載の装置において、前記画像情報抽出手段が抽出した異なる画像関連情報を撮像領域上の試料に対応付けて合成する画像合成手段を有することを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置16:装置13〜16のいずれかに記載の装置において、前記画像情報抽出手段が、透過光、蛍光、生物発光、化学発光、ラマン分光、赤外線の2組以上の組合せであることを特徴とするハイスループット撮像装置。
装置17:装置1〜16のいずれかに記載の装置において、前記生物学的試料中の細胞を継続して培養するための培養手段を備え、前記制御手段が複数の撮像領域に存在する細胞に関する各培養期間中の撮像時期に応じてインターバル撮像条件を設定することを特徴とするハイスループット撮像装置。
各試料設置穴52Cにセットされた試料容器25Cに関する試料情報は、コンピュータ109Cに内臓のメモリに記憶され、タイムラプスのインターバル撮像条件の設定時に呼び出され、撮像条件を決定して、コントローラ102Cによる撮像が実行される。決定した撮像条件に関する情報は、コントローラ102Cを介してコンピュータ109Cに通知され、試料情報と対応付けてコンピュータ109Cのメモリに記憶されるとともに、適宜、ユーザインターフェイスに表示することが可能である。
コンピュータ109Cのユーザインターフェイスには、円形トレイ26Cの試料容器25Cの個別IDが付与されており、このIDを通じて撮像装置および円形トレイの動作が対応するようにプログラミングされている。ユーザインターフェイスの入力手段(オプティカルマウス、キーボード、タッチパネル、電子ペン等)は、ユーザが前記IDごとに選択した情報に基づいた撮像条件を設定するようにコンピュータ109Cを促がす。
次の各ステップによって示される一連の工程において、まず、観察準備状態となって、GUIが表示される(S1)とともに、ステージ原点出しが実行される(S2)。ここで、ユーザが観察したい試料容器を入力可能となり入力待ち(S3)になった後、好ましくはGUIにおける「Stage/Rθ」と「Stage/Z」にある各方向矢印ボタンを押し、試料容器25C内の細胞画像をライブイメージウィンドとして表示させながら、タイムラプス撮像を希望する細胞を探して、入力手段により表示画面上で位置を選択する。即ち、この例においては、最初に、上述したような明視野画像および/または発光画像を表示した上で所望の細胞、細胞群、組織領域、ひいては細胞中の特定部位を指定するようになっている。好ましくは、任意の撮像時期において、タイムラプス撮像の途中でも、現在の撮像結果ないし解析結果を表示できるようにするのが好ましい。このためには、タイムラプス撮像の継続中に得られた発光画像を逐次解析するようにして、迅速な結果出しを行うような制御を実行するのがさらに好ましい。
次に、選択した観察位置に関する観察条件の待ち状態となり(S4)、ユーザが所望の観察条件を入力する(S5)。入力においては、例えば要求に沿った観察条件(例えば、使用する試薬の種類や実験条件に応じた微弱発光の波長や、検出感度、明視野観察における明るさ等)を上記と同様に入力する。また、図31のように蛍光測定を併用する例においては、例えばLED−G(緑色)とLED−B(青色)のどちらを使うかを選択したり、LED照明41Cの明るさを決定したりする。また、GUIにおける「Cube」ボタンにて、選択した波長に対応する蛍光キューブを選択したり、「Lens」ボタンにて、番号のボタンに対応する倍率変更レンズを決定したりする。さらに、GUIにおける「Camera Control」ボタンにて、CCDカメラの露出時間やAEを実行するかどうかなどカメラの撮影条件を決定したり、「Image File Name」ボタンにて、撮影後の画像を保存するファイル名を決定したり、「Time−lapse」ボタンにて、タイムラプスのインターバル時間や実験期間の設定など観察条件として必要なパラメータを全て設定したりする。ここでタイムラプスのインターバル時間とは、多点タイムラプス(1点のみの場合も含む)を行う場合の1回目の多点を撮影するための電動ステージ移動時間、撮影時間及び制御時間と、前記多点の2回目を撮影開始する直前までの待機時間を合計したものである。
次に、入力された撮影条件を記憶(S6)すると、例えばタイムラプスのインターバル時間に対してステージの移動時間やカメラの露出時間の合計時間が長い場合、正しくタイムラプス・インターバル撮像を行うことができないため、コンピュータがタイムラプスのインターバル時間の再設定や撮像時間の再設定を行って、所望の数の撮像領域を漏れなく撮像できるようにすることができる。例えば、GUIにおける自動調整ボタンをクリックすることで、ステージの移動時間、カメラの露出時間の合計時間よりも多少長くした時間を自動的に算出し、それをタイムラプスのインターバル時間として設定することができる。また、待機時間をゼロに近づけることで、連続性のあるタイムラプス撮像に切り換えることができる。こうして、特定の観察位置における設定が終了すると(S7)、観察準備が終了して、撮像が開始できる状態となる。なお、入力した条件の記憶を中止して入力をやり直したい場合や別の観察位置についての設定を行いたい場合は、S3に戻って、入力を繰返すこととなる。
以上のように、この例に示した多点タイムラプスによれば、所望の観察対象のそれぞれに対して、ハイスループットで且つ適切な撮像条件で漏れなく自動観察できる。
以上、上記の例では、蛍光顕微鏡をも兼用した例で説明したが、本実施形態は発光画像を専用に撮像してもよく、その場合には、励起光を照射する必要が無いので、照射光学系を除去することができる。蛍光標識した細胞等の観察を発光標識した細胞等の画像と同時に又は別々に観察するようにしてもよい。発光標識の例としては、顕微鏡下でも肉眼では見えないような微弱光を発する生物発光(または化学発光)が挙げられる。
生物発光(または化学発光)の例として、特定の関心ある遺伝子領域のプロモーターの下流に連結したレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を含むDNAが導入された細胞または組織が挙げられる。ルシフェラーゼをレポーターとして発現させた細胞または組織を用いることにより、所望の発現部位におけるルシフェラーゼ活性を検出することによって、転写の経時的変化を実時間で検出することが可能である。
好ましい態様は、導入した発光遺伝子が末梢組織中で概日リズムを有するように発現される脊椎動物由来の細胞または組織である。末梢組織には、肝臓、肺、および骨格筋が含まれるが、これらに限定されることはない。これらの末梢組織は、7〜12時間の位相差でもって概日リズムを刻んでいることが報告されている。概日リズムの遅延パターンを示したことは、多器官から構成される複雑な哺乳動物の生物リズムの正常な協調性を反映したものと考えられる。
これによれば、本実施形態により解析した情報が、概日リズムと関係のある時差ぼけ又は睡眠障害の機序を解明するため、ならびに概日リズム障害の治療に有用な化合物のスクリーニングおよび試験を目的として用いる哺乳動物モデルを開発するために有用であるといえる。
また、レポーター遺伝子を発現する本実施形態のDNAを含む形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物を用いると、種々の試験またはスクリーニングを行うことができる。さまざまな任意の条件下でこれらの組織または細胞におけるレポーター遺伝子の発現を検出することにより、レポーター遺伝子の発現を調節する刺激もしくは化合物の効果を評価すること、またはこれらをスクリーニングすることが可能である。刺激には温度、光、運動、および他のショックが含まれる。使用する化合物に制限はない。本実施形態は特に、本実施形態の形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物に導入された時計遺伝子(例えばPeriod 1)のプロモーターによって誘導される発現を改変する化合物を、その形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物を用いて試験またはスクリーニングする方法に適用可能である。
本実施形態において測定する器官に特に制限はなく、視床下部の視交叉上核(SCN)を含む中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)、ならびに肝臓、肺、および骨格筋を非制限的に含むような他の末梢組織が含まれる。より具体的には、SCNおよび末梢組織における時計遺伝子“Period 1”の発現の位相関係および同調機構を評価するために有用である。ここで、本実施形態による発光顕微鏡により、さらに、異なる所望の経過時間ごとの微弱光画像を連続的ないし断続的に取得するようにする場合には、1以上の同一の細胞に関する時間ごとの光強度を網羅的に解析した解析データに基づいて、例えば時間遺伝子の活性パターンや薬剤等による細胞内物質の応答パターンを網羅的に評価することができるようになる。また、認識した細胞のうち所定の光強度ないし光分布を示さない細胞については網羅的評価を行わないことにより、解析すべきでない細胞を除外して正確な評価を実施できるようになる。また、画像解析した全ての細胞の光強度の合計値または平均値を算出することにより、個々の細胞の評価の他に、解析した細胞全体の評価も実施できるようになる。また、画像解析した2以上の細胞を、その光強度および/または光強度パターンに応じて同一または異なる細胞グループに分類することにより、解析したパターンごとに時間遺伝子の活性を評価できるようになる。場合によっては、パターンが異なる細胞ごとに時間遺伝子の活性度ないし活性変化の詳細を調べることができるようになる。本実施形態によれば、時計遺伝子の発現パターンの周期の波形形状(振幅長、周期幅など)や波形強度(発現量、活性速度など)といった変動パラメータに関して、多様な組合せでもって解析を行うことができる。時計遺伝子の発現パターンの周期の波形解析の結果は、診断、治療、生育(ないし生物学的発生)等の研究用途や産業上(医学、農産など)用途に重要な情報をもたらすので、本実施形態の果たす役割は大きい。
また、本実施形態の装置は、多数の細胞を含む生物学的試料を画像取得可能な状態に保持する保持手段と、前記生物学的試料から発する微弱な発光に関する光学的データを蓄積して画像解析可能な画像情報を取得する微弱光画像取得手段と、前記画像情報を形態的に解析して個々の細胞を認識するとともに、認識した細胞に関する微弱光の光強度を網羅的に評価するための画像解析手段とを備えたことを特徴とする。ここで、前記保持手段を、複数のウェルを一体化したプレートをアドレス化可能に保持する構成とすることにより、前記画像解析手段は、複数のウェル間の前記評価を同一視野内または所定の順番で行えるようになるので、本実施形態の装置は、異なる試料または異なる薬剤等による活性評価の結果を比較したり相関させたりすることができるようになる。この場合、前記保持手段を、複数の独立した容器をアドレス化可能に保持する構成としてもよく、これにより、前記画像解析手段は、前記微弱光画像取得手段の視野に限定されず、多数の容器について前記評価を行えるようになる。また、本実施形態の装置は、画像情報を取得した時刻に応じた前記評価を行うように制御する制御手段を有することにより、経過時間ごとの同一細胞に関する解析、特定の活性を示した異なる時間同士の細胞(同一または異なる細胞)の比較解析といった多様な時間解析ができるようになる。また、本実施形態の装置は、前記画像解析手段での解析結果を画像情報と関連付けて表示する表示手段をさらに有することにより、解析結果の中から画像として見たい解析結果に対応する画像を表示できるようになる。また、前記表示手段が所望の画像情報を動画表示する構成を有することにより、本実施形態の装置は、1以上の所望の細胞に関する活性の変化をリアルタイムな映像でもって観察することができるようになる。動画表示としては、同一細胞に関する時間ごとの微弱光画像を画像処理により重ね合わせて臨場感を向上させるようにするとさらに好ましい。また、動画表示としては、同一細胞に関する時系列の複数画像を駒送りで並列(ないし一部ずらしただけでもよい)表示するようにして、時間ごとの画像を全貌できるようにしてもよい。
また、本発明において、透過光(明視野)画像を得るための照明光を、蛍光画像を誘起するための励起光に替えてもよい。この場合、照明光としての励起光の照明の後に誘起された蛍光画像について撮像を行う工程を、照明画像の撮像として説明することができる。
また、本実施形態によれば、以下に示すような、本実施形態の微弱光撮像方法及び/又は撮像装置に関する更なる態様ないし応用例、ならびに撮像装置のためのソフトウェアの実施形態も包含する。
態様1:上述した撮像装置を具備した生体検査機(例えば、内視鏡、CTスキャン測定機)。
態様2:上述した撮像装置を具備した分析装置(例えば、ルミノメータ、サイトメータ)。
態様3:上述した撮像装置を具備したバイオチップ製造装置。
態様4:上述した微弱光撮像方法による画像データの解析サービス。
態様5:上述した微弱光撮像方法による画像情報の管理システム。
態様6:上述した微弱光撮像方法において、2種(又は3種以上)の波長に対応した光学フィルターと連結した2台の撮像用カメラを配置し、試料からの光線を光分離素子により2等分(又は3以上のn等分)して、各カメラによって同時に2種類(又は3種類以上)の微弱光データを蓄積し、完全に同期した波長ごとの微弱光画像を取得するようにした微弱光マルチイメージング方法。
態様7:上述した微弱光撮像方法において、試料からの光線を、2種(又は3種以上)の波長に対応した光分離素子により2等分(又は3以上のn等分)し、分離後の各波長ごとの光線の各々を同一(又は別個の)撮像素子(例えばCCD)上に設定した波長ごとの結像エリアに結像して、全結像エリアにおける2種類(又は3種類以上)の微弱光データを同時に蓄積し、完全に同期した波長ごとの微弱光画像を取得するようにした微弱光マルチイメージング方法。
態様8:上記態様6又は態様7に記載の微弱光マルチイメージング方法を実行するための撮像装置。
ソフトウェア1:上述した装置1〜17のいずれかに記載の装置において、設定したインターバル撮像条件によるインターバル撮像が実行されるように、前記制御手段および前記画像取得手段を機能させるためのプログラムを有することを特徴とするハイスループット撮像装置のためのソフトウェア。
ソフトウェア2:上述した態様1〜8のいずれかに記載の装置、サービスまたはシステムを実行するためのソフトウェア。
また、本発明によれば、以下の付記項に記載の発明を包含すると解することもできる。
付記項1B:高開口数(NA)と拡大倍率とで決まる光学条件と適用すべき方法又は装置と連携して、微弱光による撮像との連携を最適化したことを特徴とする生体試料の撮像方法。
付記項2B:付記項1Bに記載の生体試料の撮像方法において、前記撮像がインターバル条件の設定を行う工程を含み、生体試料に関する複数の画像を異なる時間において複数取得することを特徴とする生体試料の撮像方法。
付記項3B:付記項1Bまたは2Bに記載の生体試料の撮像方法を用いることを特徴とする撮像装置。
付記項4B:付記項3Bに記載の撮像装置において、微弱光を発生する細胞を解析するためのソフトウェアと連携するように制御されたことを特徴とする撮像装置。
付記項5B:付記項1Bまたは2Bに記載の生体試料の撮像方法において、適宜改良または変形例を含む態様を含むことを特徴とする生体試料の撮像方法。
付記項6B:付記項3Bまたは4Bに記載の撮像装置において、適宜改良または変形例を含む態様を含むことを特徴とする撮像装置。