JP5143348B2 - 生物学的活性を長期的に評価する装置または自動解析する方法 - Google Patents
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Description
GFPを用いる観察では、GFPが励起光の照射に応じて蛍光を発する蛋白質であり、GFPを作用させた標本に大きな強度の励起光を照射して蛍光を得るため、標本に損傷を与えやすく、1〜2時間程度の観察が限度であるが、ルシフェラーゼを用いる観察では、ルシフェラーゼが自己発光酵素であり、標本に損傷を与える励起光を必要としないため、5日間程度の観察が可能である。また、蛍光は、複数回の励起光によって退色が進行するので、長期間ないし連続的解析に適さない一面が有る。さらに蛍光強度のばらつきが生じ易いので、たとえ退色の影響を補正ないし回避するような改善を実現できたとしても、蛍光強度に依存した定量的評価は実質的に不可能である。
ルシフェラーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子を細胞に導入する方法には、リン酸カルシウム法、リポフェクチン法、エレクトロポレーション法などがあるが、これらの方法は、導入の目的や細胞の種類に応じて使い分けられる。そして、ルシフェラーゼ活性による細胞からの発光量の測定では、細胞溶解液をルシフェリン、ATP、マグネシウムなどを含む基質溶液と反応させた後、光電子増倍管を用いたルミノメーターによって発光量が定量される。この測定では、細胞を溶解した後に発光量が測定されるため、ある時点での発現量が細胞全体の平均値として計測される。
一方、遺伝子の発現が一過性である場合には、個々の細胞での発現量に大きなばらつきが生じる。たとえば、HeLa細胞などのクローン化した培養細胞であっても、細胞膜表面のレセプターを介した薬剤の応答が個々の細胞でばらつくことがある。すなわち、細胞全体としての応答は検出されなくとも、数個の細胞は応答している場合がある。この場合、細胞全体からではなく個々の細胞での発現量を測定することが重要である。
さらに、従来のルミノメータは、多数の細胞を含んだ細胞溶液が1回の測定時点にしか使えないので、測定したい時間に応じた回数に相当する数量の細胞ならびに収容容器を最低限必要とする。しかも、異なる測定時点ごとに別々の細胞溶液を準備することにより、同一の細胞を長期に亘り、連続的ないし経時的に評価または自動解析することができない。
認識した同一細胞から生じる画像ごとの発光量を計算する工程とを含んでいることを特徴とするものである。ここで、前記計算工程が、時間軸に沿った発光量の比較工程をさらに有しており、これにより、生物学的活性の測定値を提供するのが、定量的に生物学的活性(例えば遺伝子転写調整機能の転写活性)の変化を解析できる点で好ましい。また、前記発光蛋白がルシフェラーゼまたはエクオリンであるのが実用的であるので好ましい。また、前記培養工程が生物学的活性を調査する充分な期間中、一定の培養環境を維持することが好ましい。また、前記画像取得工程が微弱光検出が可能な顕微鏡的光学系によるデジタル画像を提供する工程を含む場合、画像処理を行う上で都合が良い。また、前記認識工程が細胞画像の位置及び/又は形状に基づき実行される場合には、関心有る細胞からの解析データが正確に得られる点で好ましい。
(1)アッセイ項目
次の広範なアッセイ項目において、微弱な発光を用いた低浸襲性でかつ直接的な解析を詳細かつ正確に実行し得る。例えば、遺伝子発現異常(例えば遺伝子発現頻度の決定および/または変動のモニタリング)、体内リズム障害関連疾患(例えば睡眠障害、過労症候群、時差ボケ)、時間薬理学的応答(例えば薬物感受性または薬物代謝活性の日内変動)、日照応答リズム(例えば植物生育速度、走光性運動活性)、化学物質応答評価(創薬スクリーニング、抗癌剤効果モニタリング、移植または遺伝子治療後の細胞(ないし生体組織)の術後経過観察、水類(ないし血清)ストレス評価)、物理学的刺激応答評価(熱ショック、電気ショック、圧力ショック)、発生学的生物活性の評価が挙げられる。
核内移行、レセプタ受容シグナル伝達、神経細胞成長、生体日概リズムが挙げられる。
このうち、アッセイにおいて、光学的ないし熱的刺激を利用するものについては、従来の蛍光検出は複数回の励起光照射による余分な光刺激または熱上昇をもたらすが、発光においては冷光である故に、過剰な外来ビームや熱上昇による細胞への影響は殆ど無い。
撮像装置(例えば光学顕微鏡、フォトマルチプライヤー型イメージャー(フォトマル)、イメージサイトメーター)、分光測定装置(例えばルミノメータ、積分球光度計、フォトンカウンター)が挙げられる。このうち、撮像装置は、フォトマルによる画像生成よりも、CCDカメラ(培養装置と一体化しているシステムにおいてインキュベーター温度による感度低下が問題になる場合には、冷却性能に優れるCCDである方が好ましい)による画像生成の方が鮮明な画質を短時間で得易い点で好ましい。但し、生物学的活性を計測する上では、上記の撮像装置、分光測定装置のいずれであってもデータが得られる。例えば、上記撮像装置において画像が生成されるより前に生物学的活性を示すに充分な発光量(ないし発光強度)が蓄積できる。従って、上記撮像手段にいずれかを用いて発光画像を取得した場合には、同じ発光画像を用いて高感度な発光データを得ることが可能である。連続的ないし経時的(ないし時系列)な解析を行う場合には、複数回の異なる時間のうち、最少1回(好ましくは初回)の発光シグナルの取得時において画像生成を行い、それ以外は画像生成することなく、好ましくは指定された部位または部分領域について、発光データのみを繰返し得るようにすれば、評価ないし解析時間のさらなる効率化が図れる。なお、本発明において、分光測定装置を使用する場合には、生物学的試料の特定部位ないし部分領域に限定した計測が可能な手段(例えば光学的絞り)と組み合わせることにより特定の単一細胞を含む若干大きめの小フレームまたは或る程度の広がりを持った細胞集団を含む大フレームによって、受光可能な最大面積よりも小さく且つ余分な領域がなるべく含まれないような受光データを連続的ないし経時的(好ましくは時系列的)に繰返し測光するようにすればよい。
真核動物、シアノバクテリア由来の細胞または組織が挙げられる。医学用途において、哺乳類、とくひヒトにおける検査すべき部位からバイオプシーにより切除した細胞を含む試料がとくに例示される。再生医療においては、少なくとも一部が人工的に改良ないし合成された生体試料であって、生物学的活性を良好に維持するかどうかを検査する目的に利用できる。他の一面において、本発明のアッセイ対象は、動物由来の細胞または生体組織に限らず、植物や昆虫由来の細胞または生体組織であったもよい。菌、ウイルスにおいては、従来のルミノメータでは実行されなかった容器内の部分ごとの解析が対象となり得る。ルミノメータではウエルまたはシャーレ等の容器内に無数の試料(例えば1ウェル当り100万個以上)を重積することで強大な発光量を得るようにしている。本発明では、個々の細胞が識別できる程度の密度で容器内に収容することで、個別の細胞ないし生体組織を解析できる。個別の解析には、発光している細胞だけの個数を計算する工程を含めることができるので、細胞1個当りの正確な相互作用に関する評価が行なえる。
個々の細胞のそれぞれから発生する1種または複数種類の発光データである。一例として、細胞のそれぞれが異なる発光量または発光分布を示すことを統計的に解明する方法および装置を提供する。別の例として、同一の細胞から異なる種類の発光が同一または異なる時機に発生するかどうかを解明するマルチアッセイのための方法および装置を提供する。また、別な例として、同一の撮像領域において発光量で分類される複数の同一または異なる細胞集団を解明し、必要に応じて分類結果をヒストグラムや正規分布等のグラフィック表現を行なうような方法および装置を提供する。また、別な例として、同一の細胞(ないし組織)の特定部位ないし一定の拡がりの有る領域についての各種変化を安定的に高精度で解析する方法および装置を提供する。分布状態撮像領域において発光量で分類される複数の同一または異なる細胞集団を解明し、必要に応じて分類結果をヒストグラムや正規分布等のグラフィック表現を行なうような方法および装置を提供する。
図13および図14を用いて、第1の実施の形態の構成について説明する。図13は倒立型顕微鏡をベースとする微弱光検出装置の概略図である。微弱光検出装置は、光源2と、光源2から発せられた光を平行光とし、被験試料4へ導くための照明光学系1と、被験試料4の像を生成するための観察光学系5と、被験試料4の像を拡大して目視観察するための接眼レンズ6と、被験試料4の像を撮像するための撮像素子7を有するCCDカメラ8とにより構成されている。またCCDカメラ8には、テレビモニターを兼ねるコンピューター16が信号ケーブル100によって接続されている。
単一細胞での経時的なレポーターアッセイの例を説明する。
このレポーターアッセイでは、まず、テトラサイクリン・リプレッサー(TetR)を恒常的に発現させるベクター「pcDNA6/TR(インビトロジェン社製)」と、テトラサイクリン・オペレータ(TetO2)をもつ発現ベクター「pcDNA4/TO(インビトロジェン社製)」にルシフェラーゼ遺伝子をつなげたプラスミドとをHeLa細胞に共発現させて標本を作製する。この状態では、図1に示すように、TetRホモダイマーがTetO2領域に結合しているため、ルシフェラーゼ遺伝子の転写は抑制される。つぎに、図2に示すように、培養液中にテトラサイクリンを添加してTetRホモダイマーに結合させ、TetRホモダイマーの立体構造を変化させることによって、TetO2からTetRホモダイマーを分離させ、ルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘導する。なお、培養液は10mMのHEPESを含むD−MEM培地であり、1mMのルシフェリンを含む。対物レンズおよび結像レンズとして用いたレンズは、それぞれ「Oil、20倍、NA0.8」および「5倍、NA0.13」の仕様である市販の顕微鏡用対物レンズであり、倍率Mgに対応する総合倍率は4倍である。カメラC1として用いたカメラは、5℃冷却の顕微鏡用デジタルカメラ「DP30BW(オリンパス社製)」であり、CCD3としてのCCD素子は、2/3インチ型、画素数1360×1024、画素サイズ6μm角である。
HSP70B(Heat shock Protein70B)は、熱、毒性物質、酸素不足などの環境因子によって発現が誘導されるストレスタンパク質であり、HSPは分子シャペロンとして細胞の機能調節に寄与するだけではなく、細胞内情報伝達物質としても注目されている。そこで、この実施例でレポーターアッセイに用いたのは、pGL3-Basic Vector(プロメガ社)にHSP70Bプロモーター配列を導入したベクターである(図6)。このベクターを導入した細胞に、熱ショックなどのストレスを与えると、熱ショック因子がHSP70Bプロモーター部分に結合し、転写が開始される(図7)。ガラスボトムディッシュにて培養したHeLa細胞に前記ベクターをリポフェクション法によりトランスフェクションを行った。一晩培養後、1mM Luciferinを加え、熱刺激(43℃60分)後にて、発光顕微鏡内にて30分ごと20時間タイムラプス計測を行った。培地は、D-MEM5%FCS-10mM HEPESを用いた。はじめに明視野観察にて、細胞の形状および位置情報を得た後、発光画像を取得した。対物レンズは20倍レンズを用いて、露出時間は5分であった。発光画像と明視野画像の重ね合わせ画像の一部を図8に示す。発光している細胞を目立ち易い擬似カラー(図では白色の部分)で示してある。
細胞内でのオルガネラへの局在の観察を行った結果を図11に示す。HeLa細胞に、核、小胞体、細胞膜へ局在させるためのシグナル配列を導入したpGL3ベクターをトランスフェクションし、一晩培養後、1mM LuciferinをD-MEM5%FCS-10mM HEPES培地に加えて発光顕微鏡により観察を行った。明視野画像、発光画像、明視野と発光画像の重ね合わせを行った画像を示してある。核、小胞体、細胞膜、それぞれにおいて、目的の場所への局在が観察された。細胞内局在を検出可能であると、例えば、細胞に何らかの刺激を与えた際に細胞質から核への移行を観察することが可能となる(図12)。例えば、核内レセプターであるグルココルチコイドレセプターを発現させ、グルココルチコイドホルモンを処理した際の核移行などの検出などがあげられる。
従来行われてきた発光検出では、ルミノメーターにより平均化された発光量を計測していたが、発光顕微鏡によりイメージングを行うことで、異なる細胞間での相互作用の解析も可能となる。一例として、神経細胞とグリア細胞の解析が挙げられる。神経系は、主に神経細胞とグリア細胞の2種類の細胞で構成されており、神経細胞は電気的活動とシナプス結合を介して脳の情報処理に対して中心的な役割を果たしているが、グリア細胞にはそのような電気的活動性はなく、神経細胞の周囲を取り巻いて神経細胞の活動をサポートする役割をしていると考えられている。神経細胞の周囲にあるグリア細胞の果たす役割にはまだ解明されてない部分も多い。
細胞での発光レポーターアッセイだけではなく、対象として組織サンプルが挙げられる。例えば脳スライス組織を利用する事で、生物時計の座であり生物に昼と夜の違いをもたらす場所である視交叉上核において、細胞毎に異なる周期・位相などを捕らえる事が可能となる。
方法(1):本発明の形質転換体における導入遺伝子の発現を改変する活性を有する化合物を試験またはスクリーニングする方法であって、(a)前記形質転換体を前記化合物で処理する段階;および(b)処理した形質転換体における前記導入遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
方法(2):本発明の哺乳動物における導入遺伝子の発現を改変する活性を有する化合物を試験またはスクリーニングする方法であって、(a)前記哺乳動物を前記化合物で処理する段階;および(b)処理した哺乳動物における前記導入遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
方法(3): 概日リズム睡眠障害の治療に有用な医薬品の試験またはスクリーニングの方法であって、(a)本発明の形質転換体またはトランスジェニック非ヒト哺乳動物をその医薬品で処置する段階;および (b)処置した形質転換体または哺乳動物におけるレポーター遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
方法(4):(a)概日リズムが既に決定されているトランスジェニック哺乳動物に化合物を投与する段階;(b)トランスジェニック哺乳動物におけるレポーター遺伝子の発現レベルを定期的に検出し、発現リズムを検証する段階; (c)化合物の投与後のレポーター遺伝子の発現リズムを投与前のものと比較する段階;および(d)発現リズムの位相、周期、または振幅を改変する化合物を選択する段階。
方法(5): (a)本発明の形質転換体、または本発明のトランスジェニック哺乳動物に由来する組織もしくは細胞を培養する段階; (b)形質転換体または組織もしくは細胞を適切な期間にわたって化合物で処理し、さらに培養を続ける段階; (c)レポーター遺伝子の発現レベルを定期的に検出する段階;および(d)(b)の処理後にレポーター遺伝子の発現リズム(位相、周期、および振幅)を改変する化合物を選択する段階。
3 試料ステージ
2 光源
4 被験試料
5 観察光学系
8 CCDカメラ
9 対物レンズZ軸駆動機構
15 対物レンズ
19 結像面
21 試料容器
22 水槽
27 ヒートプレート
Claims (4)
- 生物学的活性を解析する自動化された方法であって、
生物学的活性を調査し得る条件下で、発光蛋白遺伝子を導入した細胞を所定の培養容器内で2次元的に配置した状態で培養する工程と、
培養された細胞を含む少なくとも前記培養容器に2次元的に配置された細胞集団を含むような充分な広がりを有する領域について、明視野観察にて細胞の位置及び形状に関する情報を得た後に、蓄積型光検出手段を用いて発光画像を経時的に複数取得する工程と、
少なくとも一つの発光画像において関心有る細胞を指定する工程と、
細胞画像の位置及び形状に基づき、複数の発光画像について指定した同一の細胞を認識する工程と、
認識した同一細胞から生じる画像ごとの発光量を計算する工程とを含んでおり、
前記計算する工程が、時間軸に沿った発光量の比較工程をさらに有しており、これにより、生物学的活性の測定値を提供することを特徴とする生物学的活性の自動解析方法。 - 前記発光蛋白がルシフェラーゼまたはエクオリンである請求項1に記載の方法。
- 前記培養する工程が生物学的活性を調査する充分な期間中、一定の培養環境を維持することを含む請求項1に記載の方法。
- 前記発光画像を経時的に複数取得する工程が微弱光検出が可能な顕微鏡的光学系によるデジタル画像を提供する工程を含む請求項1に記載の方法。
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