JP5143348B2 - 生物学的活性を長期的に評価する装置または自動解析する方法 - Google Patents

生物学的活性を長期的に評価する装置または自動解析する方法 Download PDF

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Description

本発明は、種々の生体に関連する生物学的活性の評価装置に関する。また、本発明は、生物学的活性の自動解析方法に関する。本発明は、例えば遺伝子転写活性を評価する装置または自動解析する方法に適用が可能である。
近年、細胞生物学、分子生物学などの研究分野では、緑色蛍光蛋白質(GFP;Green Fluorescent Protein)や生物発光酵素であるルシフェラーゼ遺伝子を発現のレポーターとして働かせ、細胞内の特定部位や機能蛋白質に蛍光標識や発光標識を付して生体細胞を観察する必要性が高まっている。
GFPを用いる観察では、GFPが励起光の照射に応じて蛍光を発する蛋白質であり、GFPを作用させた標本に大きな強度の励起光を照射して蛍光を得るため、標本に損傷を与えやすく、1〜2時間程度の観察が限度であるが、ルシフェラーゼを用いる観察では、ルシフェラーゼが自己発光酵素であり、標本に損傷を与える励起光を必要としないため、5日間程度の観察が可能である。また、蛍光は、複数回の励起光によって退色が進行するので、長期間ないし連続的解析に適さない一面が有る。さらに蛍光強度のばらつきが生じ易いので、たとえ退色の影響を補正ないし回避するような改善を実現できたとしても、蛍光強度に依存した定量的評価は実質的に不可能である。
ルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性を指標にして発現の強さを調べる際、ルシフェラーゼ遺伝子の上流や下流に目的のDNA断片をつなぐことによって、そのDNA断片の転写に及ぼす影響を調べることができる。また、転写に影響を及ぼすと思われる転写因子などの遺伝子を発現ベクターにつないで共発現させることによって、その遺伝子産物のレポーター遺伝子の発現に対する影響を調べることができる。さらに、蛍光と異なり、発光反応による発光はばらつきが殆ど無いので、定量的評価に適している。ルシフェラーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子を細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウム法、リポフェクチン法、エレクトロポレーション法などがあるが、それぞれの目的や細胞の種類によって使い分けられている。
細胞内に導入され発現しているルシフェラーゼ活性を定量的にモニターする技術としては、多数の細胞を溶解させた溶解液をルシフェリン、ATP、マグネシウムなどを含む基質溶液と反応させ、光電子増倍管を用いた発光用分光装置(以下、ルミノメーターと称する)によって発光量を計測している(特許文献1)。多数の細胞(600万個)をウェル内で発光反応させた後に細胞を溶解して、その細胞溶液を測定用チューブに入れ替えてルミノメーター内での光量測定を行なうため、ある時点での発現量を細胞全体の平均値として計測していることとなる。
特開2005−192565号
ところで、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として細胞に導入し、ルシフェラーゼ活性による細胞からの発光量を指標にしてルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さを調べる際、ルシフェラーゼ遺伝子の上流や下流に目的のDNA断片をつなぐことによって、このDNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることができる。また、ルシフェラーゼ遺伝子の転写に影響を及ぼすと思われる転写因子などの遺伝子を発現ベクターにつないでルシフェラーゼ遺伝子と共発現させることによって、その遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現におよぼす影響を調べることができる。
ルシフェラーゼ遺伝子などのレポーター遺伝子を細胞に導入する方法には、リン酸カルシウム法、リポフェクチン法、エレクトロポレーション法などがあるが、これらの方法は、導入の目的や細胞の種類に応じて使い分けられる。そして、ルシフェラーゼ活性による細胞からの発光量の測定では、細胞溶解液をルシフェリン、ATP、マグネシウムなどを含む基質溶液と反応させた後、光電子増倍管を用いたルミノメーターによって発光量が定量される。この測定では、細胞を溶解した後に発光量が測定されるため、ある時点での発現量が細胞全体の平均値として計測される。
また、遺伝子の発現量の経時変化を捉えるためには、生きた細胞からの発光量を経時的(ないし時系列)に測定する必要がある。たとえば、細胞を培養するインキュベーターにルミノメーターの機能を設け、培養している全細胞集団から発せられる光量を一定時間ごとに測定することによって、一定の周期性をもった発現リズムなどを計測することができる。この場合、多数の細胞その他の成分から発生する発光総量による経時的な発現量の変化が計測される。
一方、遺伝子の発現が一過性である場合には、個々の細胞での発現量に大きなばらつきが生じる。たとえば、HeLa細胞などのクローン化した培養細胞であっても、細胞膜表面のレセプターを介した薬剤の応答が個々の細胞でばらつくことがある。すなわち、細胞全体としての応答は検出されなくとも、数個の細胞は応答している場合がある。この場合、細胞全体からではなく個々の細胞での発現量を測定することが重要である。
さらに、従来のルミノメータは、多数の細胞を含んだ細胞溶液が1回の測定時点にしか使えないので、測定したい時間に応じた回数に相当する数量の細胞ならびに収容容器を最低限必要とする。しかも、異なる測定時点ごとに別々の細胞溶液を準備することにより、同一の細胞を長期に亘り、連続的ないし経時的に評価または自動解析することができない。
従って、本発明は、生体試料中の生物学的活性を長期的に評価するための、直接的かつ低侵襲な装置を提供することを目的とする。また、本発明は、生物学的活性を長期的に解析することができる自動化方法を提供することを目的とする。また、別の目的として、本発明は、特に蛍光解析では困難であるような安定な生物学的試料(例えば細胞または組織内外)の定量的解析を、発光解析により精度よく行なうことが可能な方法を提供することをさらなる目的とする。また、本発明は、発光している細胞のみを選択し、確実に遺伝子導入された細胞について、発光量、位置、形態情報等を正確に解析する方法を提供することをさらなる別の目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明の装置は、生物学的試料の生物学的活性に起因する微弱な光学的データを蓄積して検出可能な光情報を得る蓄積型光検出手段と、生物学的試料の画像情報を生成する手段と、前記画像情報中の関心有る部位または部分領域に関する光学的データを連続的ないし経時的に解析する解析手段とを備えたことを特徴とする生物学的活性の評価装置である。ここで、本発明は、前記画像情報生成手段が前記蓄積型光検出手段が検出した微弱光を蓄積して発光画像を生成する構成を有するのが好ましい。また、前記蓄積型光検出手段とは独立して制御され、照射エネルギーによる前記試料そのものの非発光画像の取得を行う非蓄積型画像取得手段をさらに含む場合も好ましい。ここで、前記蓄積型光検出手段および前記画像取得手段が共通の画像シグナル検出用の光学素子を兼用する構成であるのがさらに好ましい。前記蓄積型光検出手段における光情報の受光用光学素子としては、CCDまたはフォトンカウンターが好適に用いられる。また、前記非蓄積型画像取得手段が、可視光、赤外線、ラマン光、超音波、電子線のいずれかを照射する照射手段を有することも可能である。また、前記解析手段が、取得した画像を表示する表示手段と表示された画像における関心部位または部分領域を指定する指定手段と連動する構成である場合、指定した試料について連続的ないし経時的(ないし時系列)の発光画像を正確に比較したり、連続的に表示することで、動画で視覚的に評価できるようにもなるので好ましい。
また、前記蓄積型光検出手段による光検出を外来光が無い状態で実行するための遮光手段を備えるのも好ましい。前記遮光手段による開閉期間および前記蓄積型光検出手段による光検出期間を少なくとも含む期間中に、外来光の有無および/または量を連続的ないし経時的に検出する構成を含んでいる場合には、同一または異なる試料についての手作業(例えば、容器交換、薬剤等の試薬の分注、試料のサンプリング等における遮光状態の変化を加味した精度管理を実行することができる点で好ましい。また、生物学的活性を継続するのに必要な物理学的ないし化学的環境を維持するための環境維持手段をさらに具備するのが、長期間の評価に有用である。前記環境維持手段が、生細胞の培養に必要な構成要素を含んでいる場合には、同一の細胞を連続的ないし経時的(ないし時系列)で評価する際の生存状態を一定に維持できる点で好ましい。
また、本発明の方法は、生物学的活性を解析する自動化された方法であって、生物学的活性を調査し得る条件下で、発光蛋白遺伝子を導入した細胞を所定の培養容器内で2次元的に配置した状態で培養する工程、培養された細胞を含む少なくとも2次元の充分な広がりを有する領域について、蓄積型光検出手段を用いて発光画像を経時的に複数取得する工程、少なくとも一つの発光画像において関心有る細胞を指定する工程、複数の発光画像について指定した同一の細胞を認識する工程、
認識した同一細胞から生じる画像ごとの発光量を計算する工程とを含んでいることを特徴とするものである。ここで、前記計算工程が、時間軸に沿った発光量の比較工程をさらに有しており、これにより、生物学的活性の測定値を提供するのが、定量的に生物学的活性(例えば遺伝子転写調整機能の転写活性)の変化を解析できる点で好ましい。また、前記発光蛋白がルシフェラーゼまたはエクオリンであるのが実用的であるので好ましい。また、前記培養工程が生物学的活性を調査する充分な期間中、一定の培養環境を維持することが好ましい。また、前記画像取得工程が微弱光検出が可能な顕微鏡的光学系によるデジタル画像を提供する工程を含む場合、画像処理を行う上で都合が良い。また、前記認識工程が細胞画像の位置及び/又は形状に基づき実行される場合には、関心有る細胞からの解析データが正確に得られる点で好ましい。
本発明によれば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞の発光像を,以下の条件を満たす光学系で撮像することが実用面で重要な鍵を握っている。本出願人による光学的実験によれば、対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)の2乗の値が0.01以上の光学系で撮像することによって、単一の細胞から発生する発光だけで画像化できることが証明された(特願2005−267531号参照)。さらに、本出願人は、検討を進め、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。さらに、発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できること突き止めた。これらの発光画像を蓄積型の撮像装置により顕微鏡観察する発光解析システムを発光顕微鏡と呼ぶこととする。発光顕微鏡には、好ましくは遮光のための開閉蓋(ないし開閉窓)を具備する遮光手段を有し、この遮光手段の開閉によって必要な生体試料をセットまたは交換する。目的に応じて、生体試料を収容する容器に対して化学的ないし物理学的刺激を行なう操作を手動ないし自動で行なうようにしてもよい。最良の一形態では、発光顕微鏡は公知または独自の培養装置を搭載いる。培養装置は、長期間のシステム内での解析を可能にするように、温度、湿度、pH、外気成分、培地成分、培養液成分を最適に維持する機能を備えている。
従って、本発明の解析方法は、細胞内外の相互作用を画像情報に基づいて解析する方法において、前記相互作用し得る物質の少なくとも一方に対して生物学的励起物質としての発光物質を標識した相互作用物質を1以上の細胞内に存在せしめ、相互作用による結果としての発光を光学的に撮像し、撮像した光学的情報を単一の細胞について画像化する工程を含み、画像表現が相互作用に起因する微弱光の有無および/または量を示していることを特徴とする。
本発明においては、次の適用範囲が有効的に含まれる。
(1)アッセイ項目
次の広範なアッセイ項目において、微弱な発光を用いた低浸襲性でかつ直接的な解析を詳細かつ正確に実行し得る。例えば、遺伝子発現異常(例えば遺伝子発現頻度の決定および/または変動のモニタリング)、体内リズム障害関連疾患(例えば睡眠障害、過労症候群、時差ボケ)、時間薬理学的応答(例えば薬物感受性または薬物代謝活性の日内変動)、日照応答リズム(例えば植物生育速度、走光性運動活性)、化学物質応答評価(創薬スクリーニング、抗癌剤効果モニタリング、移植または遺伝子治療後の細胞(ないし生体組織)の術後経過観察、水類(ないし血清)ストレス評価)、物理学的刺激応答評価(熱ショック、電気ショック、圧力ショック)、発生学的生物活性の評価が挙げられる。
(2)アッセイ原理
核内移行、レセプタ受容シグナル伝達、神経細胞成長、生体日概リズムが挙げられる。
このうち、アッセイにおいて、光学的ないし熱的刺激を利用するものについては、従来の蛍光検出は複数回の励起光照射による余分な光刺激または熱上昇をもたらすが、発光においては冷光である故に、過剰な外来ビームや熱上昇による細胞への影響は殆ど無い。
(3)使用可能な機器
撮像装置(例えば光学顕微鏡、フォトマルチプライヤー型イメージャー(フォトマル)、イメージサイトメーター)、分光測定装置(例えばルミノメータ、積分球光度計、フォトンカウンター)が挙げられる。このうち、撮像装置は、フォトマルによる画像生成よりも、CCDカメラ(培養装置と一体化しているシステムにおいてインキュベーター温度による感度低下が問題になる場合には、冷却性能に優れるCCDである方が好ましい)による画像生成の方が鮮明な画質を短時間で得易い点で好ましい。但し、生物学的活性を計測する上では、上記の撮像装置、分光測定装置のいずれであってもデータが得られる。例えば、上記撮像装置において画像が生成されるより前に生物学的活性を示すに充分な発光量(ないし発光強度)が蓄積できる。従って、上記撮像手段にいずれかを用いて発光画像を取得した場合には、同じ発光画像を用いて高感度な発光データを得ることが可能である。連続的ないし経時的(ないし時系列)な解析を行う場合には、複数回の異なる時間のうち、最少1回(好ましくは初回)の発光シグナルの取得時において画像生成を行い、それ以外は画像生成することなく、好ましくは指定された部位または部分領域について、発光データのみを繰返し得るようにすれば、評価ないし解析時間のさらなる効率化が図れる。なお、本発明において、分光測定装置を使用する場合には、生物学的試料の特定部位ないし部分領域に限定した計測が可能な手段(例えば光学的絞り)と組み合わせることにより特定の単一細胞を含む若干大きめの小フレームまたは或る程度の広がりを持った細胞集団を含む大フレームによって、受光可能な最大面積よりも小さく且つ余分な領域がなるべく含まれないような受光データを連続的ないし経時的(好ましくは時系列的)に繰返し測光するようにすればよい。
(4)アッセイ対象(試料)
真核動物、シアノバクテリア由来の細胞または組織が挙げられる。医学用途において、哺乳類、とくひヒトにおける検査すべき部位からバイオプシーにより切除した細胞を含む試料がとくに例示される。再生医療においては、少なくとも一部が人工的に改良ないし合成された生体試料であって、生物学的活性を良好に維持するかどうかを検査する目的に利用できる。他の一面において、本発明のアッセイ対象は、動物由来の細胞または生体組織に限らず、植物や昆虫由来の細胞または生体組織であったもよい。菌、ウイルスにおいては、従来のルミノメータでは実行されなかった容器内の部分ごとの解析が対象となり得る。ルミノメータではウエルまたはシャーレ等の容器内に無数の試料(例えば1ウェル当り100万個以上)を重積することで強大な発光量を得るようにしている。本発明では、個々の細胞が識別できる程度の密度で容器内に収容することで、個別の細胞ないし生体組織を解析できる。個別の解析には、発光している細胞だけの個数を計算する工程を含めることができるので、細胞1個当りの正確な相互作用に関する評価が行なえる。
(5)本発明によって得られる進歩性有る情報
個々の細胞のそれぞれから発生する1種または複数種類の発光データである。一例として、細胞のそれぞれが異なる発光量または発光分布を示すことを統計的に解明する方法および装置を提供する。別の例として、同一の細胞から異なる種類の発光が同一または異なる時機に発生するかどうかを解明するマルチアッセイのための方法および装置を提供する。また、別な例として、同一の撮像領域において発光量で分類される複数の同一または異なる細胞集団を解明し、必要に応じて分類結果をヒストグラムや正規分布等のグラフィック表現を行なうような方法および装置を提供する。また、別な例として、同一の細胞(ないし組織)の特定部位ないし一定の拡がりの有る領域についての各種変化を安定的に高精度で解析する方法および装置を提供する。分布状態撮像領域において発光量で分類される複数の同一または異なる細胞集団を解明し、必要に応じて分類結果をヒストグラムや正規分布等のグラフィック表現を行なうような方法および装置を提供する。
発光画像を用いて相互作用を評価することにより、蛍光解析では困難であった安定した定量解析を行なうことができる。また、撮像した同一視野中の複数の細胞画像を個別に解析することにより、発光解析を精度よく行なうことができる。また、同一細胞または同一組織の異なる部位における相互作用物質を発光解析により行なうことにより、より詳細な微小部分の相互作用を直接的かつ低浸襲に評価できる。また、同一の細胞(または生体組織)の異なる複数部位、もしくは特定の場所(ないし分布状態)複数種類の相互作用物質を画像情報に基づいて前記相互作用物質ごとに解析することができる。
以下の説明において、光学条件の詳細については出願人による特願2005−267531および特願2005−44737を参照できる。
第1の実施の形態
図13および図14を用いて、第1の実施の形態の構成について説明する。図13は倒立型顕微鏡をベースとする微弱光検出装置の概略図である。微弱光検出装置は、光源2と、光源2から発せられた光を平行光とし、被験試料4へ導くための照明光学系1と、被験試料4の像を生成するための観察光学系5と、被験試料4の像を拡大して目視観察するための接眼レンズ6と、被験試料4の像を撮像するための撮像素子7を有するCCDカメラ8とにより構成されている。またCCDカメラ8には、テレビモニターを兼ねるコンピューター16が信号ケーブル100によって接続されている。
照明光学系1は、光源2側から順に、コレクターレンズ10、照明光の光軸11を偏向させるための偏向ミラー12、及びコンデンサレンズ14により構成される。光源2はハロゲンランプ、LED光源、タングステンランプ、水銀ランプなどの可視域の波長のインコヒーレント光源を用いる。あるいはレーザーのようなコヒーレント光源の光を拡散板などを用いてインコヒーレントな光に変えて、光源として用いても良い。光源の波長は通常、可視光を用いるが、赤外光を用いても良い。
観察光学系5は、被験試料4側から順に、被験試料4の像を形成するための対物レンズ15、第1のリレーレンズ16、対物レンズ15からの光を偏向するための偏向ミラー17、第1のリレーレンズ16と共に対物レンズ15の像(被験試料4の像)を結像面19に結像させるための第2のリレーレンズ18により構成される。また、第2のリレーレンズ18と結像面19との間には、被験試料4の像を接眼レンズ6による目視観察とCCDカメラ8による観察が任意に切り替えることができるように、切替ミラー20が配置されている。なお、切替ミラー20は機械的な切り替えタイプ以外に、ハーフミラーを用いて2つの光路を分離するようにしても良い。
次に本発明による微弱光検出装置の検出部分に関する詳細な構成について、図14を用いて説明する。被験試料はシャーレなどの試料容器21に、培養液と共に入れられる。試料容器21の周囲には水槽22が配置されており、この水槽22内に純水がノズル23を通して供給される。この純水は試料容器内の湿度を保つために送られる。また水槽22の上面にはガス供給チューブ24を通してCO2ガスが供給される。CO2ガスは測定装置本体の外部に置かれたガスボンベ25から供給される。ガスボンベ内はCO25%、O295%の混合ガスで満たされている。CO2ガスはガスボンベ25から試料容器21が入ったフタ付き密閉容器30内へ、ガス供給チューブ24を通って、50mL/minの流速で供給される。また、試料容器全体はヒートプレート27の上に乗っている。ヒートプレート27は温度コントローラー(図示しない)により環境温度の設定が0.5°ステップ間隔で行なわれている。試料容器21の底面は顕微鏡用カバーガラスと同じ材質で、厚さ0.17mmになっており、通常の対物レンズが対応できるようになっている。試料容器21の底面は光学的に透明になっている。なお、試料容器21はシャーレに限ることなく、スライドガラス、マイクロプレート、フローセルなどを用いても良く、好ましくは2次元的データが得られやすいように、幅広(ないし扁平)な底面を有する容器であるのがさらに好ましい。複数の収容部分を一体化したウェルやキュベットにおいては、各収容部分の仕切り部分が遮光性の材料ないし染料で全面的に成形するのが好ましい。また、シャーレ等の上部開口を有する容器については、蒸発防止用のフタを覆い被せるのが好ましく、さらにフタの内面が反射防止用の被膜ないし染色を施すのがS/N比を向上させる上で好ましい。このような硬質のフタの代わりに、容器内の試料の上面にミネラルオイルのような液状のフタを配置するようにしてもよい。
試料容器21の上面には試料容器フタ26が、試料容器21の上面前面を覆って、かぶせられるように配置されている。試料容器フタ26は光学的に透明なアクリル樹脂などの合成樹脂でできており、試料容器21内の被験試料4内にゴミなどの異物が侵入することを防いでいる。また、試料容器21内の被験試料4が蒸発することも防いでいる。水槽22を含めた試料容器21はフタ付き密閉容器30内に収められている。フタ付き密閉容器30は光学的に遮光性が高く且つ耐水性、耐熱性に優れた材質(例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属、暗黒色の染料ないし金属粒子を密に含有するプラスチックや合成樹脂等、隙間用シリコンゴムなど)で出来ており、上面には蝶番32を介して、同様の材質のフタ31が取り付けられている。フタ31は蝶番32により、手動で開閉することができる。このようにして、試料容器21を完全に遮光された光環境に置くことができる構成となっている。必要に応じてさらに装置本体を覆うハウジング(図示せず)を設けることで、二重の遮光構造にしてもよい。
試料ステージ3には2個のステッピング・モーター(図示しない)がそれぞれ90°方向に別々に取り付けられており、それぞれのステッピング・モーターは試料ステージコントローラーに接続されている。試料ステージコントローラーはコンピューター16に接続されており、コンピューター16からの指令により、2個のステッピング・モーターを駆動し、試料ステージ3をX方向、Y方向に移動させる。試料ステージ3下方には対物レンズ15が倒立に配置されており、対物レンズヒーター28が対物レンズ15に接触して周囲に取り付けられている。対物レンズヒーター28は温度調整装置につながれており、0.5°ステップ間隔で温度コントロールが行なわれ、対物レンズを外側から一定温度に保持している。また、対物レンズヒーターの周囲には対物レンズZ軸駆動機構9が備えられており、対物レンズ15をZ軸(光軸方向)に沿って自動的に駆動する。対物レンズZ軸駆動機構9はラックピニオン機構(図示しない)で対物レンズを上下に移動させる。ラックピニオン機構のノブの回転動作はコンピューター制御されたステッピングモーター(図示しない)により行なう。なお、対物レンズZ軸駆動機構9はラックピニオン機構のほかに、フリクションローラー機構で行なっても良い。
受光器はCCD(Charge Coupled Device)カメラを用い、例えば受光部分の構成が、CCDカメラ8の受光面上で1,360×1,024個程度の画素からなる撮像素子となっている。被験試料から発せられた光が微弱光のため、受光器としてのCCDカメラ8はできる限り高感度のものを用いる。CCDカメラ8から発する暗電流を抑えるために、CCDカメラ8の底部にはペルチエ素子から成る冷却装置29が備え付けられており、CCDカメラ8の温度を0℃程度で冷却保温する。CCDカメラ8の受光面の上方に赤外線カットフィルターを配置し、背景光となる赤外線を遮断する。CCDカメラ8は、図示するように信号ケーブル100を通じてコンピュータ16におけるTVモニターと接続されており、TVモニター上に種々の試料画像が描出される。CCDカメラは、3板式カラーカメラとして、カラーの明視野像が得られるようにしても良い。ここで、コンピュータ16におけるキーボードやマウスポインター(もしくはタッチパネル、電子入力用ペン、テンキーボード、グリッド座標入力手段等)といった指定手段が、TVモニター上の画像の所望の部位または部分領域を指定(ないし入力)できるように構成されている。
なお光検出器はCCDカメラに限ることなく、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサーやSIT(Silicon Intensified Target)カメラなどを用いても良いのは勿論である。また、培養温度や光検出期間の長さに応じて、必要充分な感度を有する冷却型CCDカメラを使用するのが好ましい。
生物発光タンパク質による発光現象を測定する場合、試料セッティング時には発光強度がまだ極めて微弱で、ほとんど光信号として、受光器で検出することができない。従って、細胞の内部構造は通常、観察できない。すなわち、通常の顕微鏡観察のように、試料内の観察対象である細胞を確認しながら対物レンズのフォーカスを合わせることができない。そこで明視野像観察として、ハロゲンランプなどの光源からの光を照明光学系を通して、被験試料に投光し、被験試料による顕微鏡の明視野像を得て、これに基づいて対物レンズのフォーカス位置を決定する。すなわち、明視野観察において、高いコントラスト像が得られる、対物レンズの光軸上の2箇所の略中心位置を対物レンズのフォーカス位置とする。これにより、生物発光タンパク質による発光強度が大きくなってきたときに、CCDカメラに合焦された鮮明な発光像が得られる。
次に、第1の実施の形態の光学系の作用について図13に基づいて説明する。光源2はコレクタレンズ10により平行光とされ、コンデンサーレンズ14の瞳位置に投影される。この光源2の像は、コンデンサーレンズ14によってケーラー照明として被験試料4を照明する。被験試料4を照明した光は、被験試料4を透過して対物レンズ15に入射する。対物レンズ15に入射した測定光は、対物レンズ15と第1のリレーレンズ16及び第2のリレーレンズ18により結像面19に被験試料4の像を形成する。ここでは倍率×20の対物レンズを用いている。対物レンズは、所望の倍率に応じて適宜、油浸式にすることができる。また、どの倍率を選択するかは、評価(ないし解析)すべき試料のサイズに応じて適宜選択すればよい。図示した装置(発光顕微鏡)による検討では、40倍〜100倍での発光画像の取得が可能となるように光学系を設計出来ている。
結像面19に形成された被験試料4の像は、接眼レンズ6にそのまま入射すると共に、切替ミラー20により、CCDカメラ8の撮像素子7上に結像する。CCDカメラ8の受光面の前方に赤外線カットフィルター13が設置され、これにより背景光となる赤外線を遮断する。なお、対物レンズを移動させるに限らず、試料ステージ3を光軸に沿って移動させても良いことは勿論である。
実施例1 テトラサイクリンによる遺伝子発現誘導
単一細胞での経時的なレポーターアッセイの例を説明する。
このレポーターアッセイでは、まず、テトラサイクリン・リプレッサー(TetR)を恒常的に発現させるベクター「pcDNA6/TR(インビトロジェン社製)」と、テトラサイクリン・オペレータ(TetO2)をもつ発現ベクター「pcDNA4/TO(インビトロジェン社製)」にルシフェラーゼ遺伝子をつなげたプラスミドとをHeLa細胞に共発現させて標本を作製する。この状態では、図1に示すように、TetRホモダイマーがTetO2領域に結合しているため、ルシフェラーゼ遺伝子の転写は抑制される。つぎに、図2に示すように、培養液中にテトラサイクリンを添加してTetRホモダイマーに結合させ、TetRホモダイマーの立体構造を変化させることによって、TetO2からTetRホモダイマーを分離させ、ルシフェラーゼ遺伝子の転写を誘導する。なお、培養液は10mMのHEPESを含むD−MEM培地であり、1mMのルシフェリンを含む。対物レンズおよび結像レンズとして用いたレンズは、それぞれ「Oil、20倍、NA0.8」および「5倍、NA0.13」の仕様である市販の顕微鏡用対物レンズであり、倍率Mgに対応する総合倍率は4倍である。カメラC1として用いたカメラは、5℃冷却の顕微鏡用デジタルカメラ「DP30BW(オリンパス社製)」であり、CCD3としてのCCD素子は、2/3インチ型、画素数1360×1024、画素サイズ6μm角である。
図3はテトラサイクリンを添加してから9時間後の標本の自己発光による像を1分間露光して撮像した画像である。テトラサイクリン添加後、0時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間経過後の観察画像を示してある。なお、これらの観察は、標本がインキュベーター内に載置されるため、37℃の環境で観察を行っている。
図4に画像上で指定した4つの部分領域ROI−1,ROI−2、ROI−3、ROI−4について、それぞれ拡大フレームで連番表示した状態を示している。図5は、これら4つの領域ごとに、ルシフェラーゼ遺伝子の発光強度の経時変化を測定した結果を示す図である。図5に示すように、テトラサイクリンを添加した2時間後から発光が捉えられ,6〜7時間後でプラトーに達したことを示している。このように、この実施の形態にかかる微弱光標本撮像ユニットおよび微弱光標本撮像装置によれば、発光するルシフェラーゼ遺伝子の位置を特定して経時的(ないし時系列)に追跡し、発光現象の経時変化を測定することができる。
実施例2 HSP70B遺伝子プロモーターアッセイ
HSP70B(Heat shock Protein70B)は、熱、毒性物質、酸素不足などの環境因子によって発現が誘導されるストレスタンパク質であり、HSPは分子シャペロンとして細胞の機能調節に寄与するだけではなく、細胞内情報伝達物質としても注目されている。そこで、この実施例でレポーターアッセイに用いたのは、pGL3-Basic Vector(プロメガ社)にHSP70Bプロモーター配列を導入したベクターである(図6)。このベクターを導入した細胞に、熱ショックなどのストレスを与えると、熱ショック因子がHSP70Bプロモーター部分に結合し、転写が開始される(図7)。ガラスボトムディッシュにて培養したHeLa細胞に前記ベクターをリポフェクション法によりトランスフェクションを行った。一晩培養後、1mM Luciferinを加え、熱刺激(43℃60分)後にて、発光顕微鏡内にて30分ごと20時間タイムラプス計測を行った。培地は、D-MEM5%FCS-10mM HEPESを用いた。はじめに明視野観察にて、細胞の形状および位置情報を得た後、発光画像を取得した。対物レンズは20倍レンズを用いて、露出時間は5分であった。発光画像と明視野画像の重ね合わせ画像の一部を図8に示す。発光している細胞を目立ち易い擬似カラー(図では白色の部分)で示してある。
1細胞が入る領域(ROI)を5箇所設定して(図9)、データ数値化・平均値のプロットを行った(図10)。Heat shock後、10−15時間の時点でプロモーター活性が最も高かったが、5細胞間においてプロモーター活性の上昇率や活性上昇まで要する時間にかなりの開きがあった。図10Aには、プロモーター活性が刺激後14時間前後で最大となった細胞群、図10Bには刺激後10時間前後で最大となった細胞群を示した。 従来のルミノメーターでの観察においては、ある一定の細胞数をまとめて解析しているため、トランスフェクション効率および細胞間の違いなどは平均化されている。しかし、実際には図8に示すように、トランスフェクションされていない細胞も多く混在しており、また細胞によって発現の強弱などの違いも見られる。発光顕微鏡で、1細胞毎のデータを測定する事が可能となれば、トランスフェクション効率の違い、細胞周期による影響を考慮し解析を行うことができる。
実施例3 細胞内局在の観察
細胞内でのオルガネラへの局在の観察を行った結果を図11に示す。HeLa細胞に、核、小胞体、細胞膜へ局在させるためのシグナル配列を導入したpGL3ベクターをトランスフェクションし、一晩培養後、1mM LuciferinをD-MEM5%FCS-10mM HEPES培地に加えて発光顕微鏡により観察を行った。明視野画像、発光画像、明視野と発光画像の重ね合わせを行った画像を示してある。核、小胞体、細胞膜、それぞれにおいて、目的の場所への局在が観察された。細胞内局在を検出可能であると、例えば、細胞に何らかの刺激を与えた際に細胞質から核への移行を観察することが可能となる(図12)。例えば、核内レセプターであるグルココルチコイドレセプターを発現させ、グルココルチコイドホルモンを処理した際の核移行などの検出などがあげられる。
実施例4 異なる細胞間の相互作用の解析
従来行われてきた発光検出では、ルミノメーターにより平均化された発光量を計測していたが、発光顕微鏡によりイメージングを行うことで、異なる細胞間での相互作用の解析も可能となる。一例として、神経細胞とグリア細胞の解析が挙げられる。神経系は、主に神経細胞とグリア細胞の2種類の細胞で構成されており、神経細胞は電気的活動とシナプス結合を介して脳の情報処理に対して中心的な役割を果たしているが、グリア細胞にはそのような電気的活動性はなく、神経細胞の周囲を取り巻いて神経細胞の活動をサポートする役割をしていると考えられている。神経細胞の周囲にあるグリア細胞の果たす役割にはまだ解明されてない部分も多い。
実施例5 組織における発光レポーターアッセイ
細胞での発光レポーターアッセイだけではなく、対象として組織サンプルが挙げられる。例えば脳スライス組織を利用する事で、生物時計の座であり生物に昼と夜の違いをもたらす場所である視交叉上核において、細胞毎に異なる周期・位相などを捕らえる事が可能となる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、次のような変更または改良が可能である。例えば、発光物質として遺伝子として機能する発光蛋白を用いたが、遺伝子機能を持たない他の生物発光物質であってもよい。本発明では、好適には、生体試料(例えば細胞または組織)の生物学的活性にとって最小限の光マーカー物質を蓄積型の撮像装置により蓄積しながら画像化する工程を有する。この撮像工程により、蛍光解析のような、従来の走査型(スキャニング式)の高輝度解析では撮像不可能な微弱光による試料画像を取得するので、長期間、生体試料への光毒性ないし光ダメージを与えずに発光解析できる。ここにおいて、発光とは別な目的で、発光と同程度ないし半分未満の極低濃度の蛍光物質または化学発光物質を併用するようにしてもよい。また、単一の試料当りの総量を発光物質と蛍光物質とで所望の比率で分配するようにして、その発光総量が蓄積型の撮像にとって必要最小限であるように調整してもよい。
また、本発明で使用可能な生物発光(または化学発光)の例として、特定の関心ある遺伝子領域のプロモーターの下流に連結したレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を含むDNAが導入された細胞または組織が挙げられる。ルシフェラーゼをレポーターとして発現させた細胞または組織を用いることにより、所望の発現部位におけるルシフェラーゼ活性を検出することによって、転写の経時的変化を実時間で検出することが可能である。
好ましい態様は、導入した発光遺伝子が末梢組織中でリズムを有するように発現される脊椎動物由来の細胞または組織である。末梢組織には、肝臓、肺、および骨格筋が含まれるが、これらに限定されることはない。これらの末梢組織は、7〜12時間の位相差でもって概日リズムを刻んでいることが報告されている。概日リズムの遅延パターンを示したことは、多器官から構成される複雑な哺乳動物の生物リズムの正常な協調性を反映したものと考えられる。
これによれば、本発明により解析した情報が、概日リズムと関係のある時差ぼけまたは睡眠障害の機序を解明するため、ならびに概日リズム障害の治療に有用な化合物のスクリーニングおよび試験を目的として用いる哺乳動物モデルを開発するために有用であるといえる。
また、レポーター遺伝子を発現する本発明のDNAを含む形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物を用ると、種々の試験またはスクリーニングを行うことができる。さまざまな任意の条件下でこれらの組織または細胞におけるレポーター遺伝子の発現を検出することにより、レポーター遺伝子の発現を調節する刺激もしくは化合物の効果を評価すること、またはこれらをスクリーニングすることが可能である。刺激には温度、光、運動、および他のショックが含まれる。使用する化合物に制限はない。本発明は特に、本発明の形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物に導入された時計遺伝子(例えばPeriod 1)のプロモーターによって誘導される発現を改変する化合物を、その形質転換体またはトランスジェニック哺乳動物を用いて試験またはスクリーニングする方法に適用可能である。
本発明の試験またはスクリーニングの方法としては、以下の方法が挙げられる。
方法(1):本発明の形質転換体における導入遺伝子の発現を改変する活性を有する化合物を試験またはスクリーニングする方法であって、(a)前記形質転換体を前記化合物で処理する段階;および(b)処理した形質転換体における前記導入遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
方法(2):本発明の哺乳動物における導入遺伝子の発現を改変する活性を有する化合物を試験またはスクリーニングする方法であって、(a)前記哺乳動物を前記化合物で処理する段階;および(b)処理した哺乳動物における前記導入遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
本発明の方法は、Period 1遺伝子の発現を調節する化合物をスクリーニングするために有用である。本方法はまた、概日リズム障害に対する医薬品をスクリーニングするためにも有用である。従って、上記の方法(1)、(2)に加えて、以下に挙げるスクリーニング法も本発明によって可能となる。
方法(3): 概日リズム睡眠障害の治療に有用な医薬品の試験またはスクリーニングの方法であって、(a)本発明の形質転換体またはトランスジェニック非ヒト哺乳動物をその医薬品で処置する段階;および (b)処置した形質転換体または哺乳動物におけるレポーター遺伝子の発現を測定する段階、を含む方法。
本発明の試験またはスクリーニングの方法に使用する化合物に特に制限はない。その例には、無機化合物、有機化合物、ペプチド、蛋白質、天然または合成性の低分子化合物、天然または合成性の高分子化合物、組織または細胞の抽出物、微生物の培養上清、植物または海洋生物に由来する天然成分などが含まれるが、これらに限定されることはない。遺伝子ライブラリーまたはcDNA発現ライブラリーなどの発現産物を使用してもよい。化合物による処置の方法に特に制限はない。インビトロでの処置は、例えば化合物を培養液に添加して細胞を化合物と接触させたり、微量注入またはトランスフェクション試薬を用いて化合物を細胞内に導入することなどにより実施しうる。インビボでの治療の方法には、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、または腹腔内注射;経口投与、経腸投与、筋肉内投与、または鼻腔内投与;眼への投与;注射もしくはカテーテルを介した脳内投与、脳室内投与、または末梢器官内投与などの、当業者に公知の方法が含まれる。化合物は適宜組成物として投与する。例えば、それを水、生理食塩水、緩衝液、塩、安定剤、保存剤、懸濁剤などと混合することができる。
レポーター遺伝子の発現は、哺乳動物または細胞が生きたまま測定することもでき、細胞を可溶化した後に測定することもできる。例えば、生組織におけるルシフェラーゼ遺伝子の発現を測定するために、実施例に示すように光電子増倍管により、または本明細書に参照として組み入れられるヤマザキ(Yamazaki, S.)ら(Science、2000、288、682〜685)に記載された他の類似の検出器により、生物発光を連続的に測定することが可能である。可溶化した組織または細胞におけるルシフェラーゼ活性は、例えば、ルシフェラーゼレポーター二重アッセイ系(Dual-Luciferase Reporter Assay System)(Promega)などを使用して測定することができる。レポーター遺伝子の発現は、時間的または空間的に測定することができる。発現リズムの位相、振幅、および/または周期を検出することによって発現を分析することもできる。本発明の方法により、化合物の即時的または長期的な効果(位相変化を含む)の評価が可能となる。化合物の投与によってこれらの発現が改変されれば、その化合物はPeriod 1遺伝子の発現を調節する薬剤候補となる。このような化合物は、睡眠障害を含むさまざまな概日リズム障害に対する医薬品として適用されることが期待される。例えば、レポーター遺伝子の発現の振動をリセットまたは開始する薬剤は、ペースメーカの位相を後退または前進させると期待される。したがって、これらの薬剤は脱同調した発現パターンを正常な同調に導くために使用することができる。本発明によってスクリーニングされる医薬品は、薬剤の治療効果を評価するために、概日リズム障害モデルとなるように誘導した本発明のトランスジェニック哺乳動物に投与される。
トランスジェニック哺乳動物における遺伝子の発現を検出する場合、測定する器官に特に制限はなく、これには視床下部のSCNを含む中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)、ならびに肝臓、肺、および骨格筋を非制限的に含む他の末梢組織が含まれる。本発明で開示する系は、SCNおよび末梢組織におけるPeriod 1発現の位相関係および同調機構を評価するために有用である。
本発明の系は、Period 1の発現を調節すると推定される多くの因子を同定するために使用され得る。概日リズムと関係のある新規なインビボ因子および遺伝子が本発明の系を用いて同定されれば、これらの因子および遺伝子の発現のインビボでの振動を評価することができる。それにより、SCNおよび末梢組織の振動位相を制御する因子を単離することが可能である。これらは概日リズムに関与する新規な遺伝子および蛋白質であると考えられ、これらを標的として用いることにより、新規薬剤のスクリーニングが可能になると考えられる。このようなスクリーニングはインビボおよびインビトロのどちらでも行える。
具体的には、本発明のトランスジェニック哺乳動物を用いるインビボでのスクリーニング方法は以下の段階を含む方法(4)により達成される。
方法(4):(a)概日リズムが既に決定されているトランスジェニック哺乳動物に化合物を投与する段階;(b)トランスジェニック哺乳動物におけるレポーター遺伝子の発現レベルを定期的に検出し、発現リズムを検証する段階; (c)化合物の投与後のレポーター遺伝子の発現リズムを投与前のものと比較する段階;および(d)発現リズムの位相、周期、または振幅を改変する化合物を選択する段階。
レポーター遺伝子の発現リズムは、生きた動物の体内でのレポーター遺伝子の発現リズムを検出する方法;切り出した組織を培養することによって発現の変動を連続的に観察する方法;または動物組織の抽出物を定期的に調製して、各時点での発現レベルを検出する方法によって検出可能である。例えば、適した方法(例えば、静脈内注射、腹腔内投与、脳室内投与など)により、適切なタイミングでトランスジェニック動物にルシフェリンを投与する。続いてこの動物を麻酔し、CCDカメラによってルシフェラーゼ発光を計測することにより、レポーター遺伝子の発現部位および発現レベルを決定する。個々の動物の発現リズムを確認するために、この測定を数時間毎に数回ずつ行う(Sweeney TJら、「生きた動物における腫瘍細胞クリアランスの可視化(Visualizing the kinetics of tumor-cell clearance in living animals)」、PNAS、1999、96、12044〜12049;およびContag PRら、「生きた哺乳動物における生物発光標識(Bioluminescent indicators in living mammals)」、Nature Medicine、1998、4、245〜247を参照のこと)。
前記の通り、インビトロでも本発明を用いて新規薬剤のスクリーニングを行うことができる。このようなインビトロスクリーニング法は以下の段階を含む方法(5)により達成できる。
方法(5): (a)本発明の形質転換体、または本発明のトランスジェニック哺乳動物に由来する組織もしくは細胞を培養する段階; (b)形質転換体または組織もしくは細胞を適切な期間にわたって化合物で処理し、さらに培養を続ける段階; (c)レポーター遺伝子の発現レベルを定期的に検出する段階;および(d)(b)の処理後にレポーター遺伝子の発現リズム(位相、周期、および振幅)を改変する化合物を選択する段階。
本明細書において、本発明の撮像すべき組織または細胞は、初代培養物または樹立細胞系の細胞であってもよい。本明細書で用いる組織、細胞などに制限はないが、脊椎動物におけるSCN、視床下辺縁細胞、末梢神経などが好ましい。化合物による処理は、例えば、化合物を添加しておいた溶媒中に組織、細胞などを一定期間、浸漬することによって行ってもよい。レポーター遺伝子の発現リズムの変化を測定する場合には、発現リズムがあらかじめ決定された同一の組織もしくは細胞、または化合物による処理を受けていない対照組織または細胞を用いた比較を行ってもよい。
上記のインビボおよびインビトロのスクリーニング方法において、光刺激などの刺激処理を、化合物の投与または処理とともに行ってもよい。
本発明の試験またはスクリーニングの方法により同定された化合物は、所望の概日リズム疾患または障害に対する医薬品として用いることができる。これらの薬剤は、適宜薬学的に許容される担体、溶質、および溶媒と組み合わせることによって医薬組成物として製剤化することができる。本薬剤は、時差症候群、交代制勤務による睡眠障害、睡眠相後退症候群、および不規則性睡眠覚醒障害などの疾患または障害に対して適用することができる。
本発明のスクリーニング法によって単離された化合物を医薬品として用いる場合には、それを患者に直接的に投与することもでき、またはそれを公知の医薬品製剤法によって医薬組成物の形態に製剤化することもできる。例えば、それを薬学的に許容される担体または媒体、具体的には滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤などと適宜組み合わせた後に投与することができる。本発明の医薬組成物は、水溶液、錠剤、カプセル、トローチ、バッカル錠、エリキシル、懸濁液、シロップ、点鼻液、吸入液などの形態でありうる。化合物の含有量は適宜決定してよい。これらは例えば、通常は動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、または経口投与によって患者に投与することができ、このような方法は当業者に公知である。投与量は患者の体重、年齢、投与方法、および症状により変動するが、当業者であれば投与量を適宜選択することができる。一般に、投与量は薬剤の有効血中濃度および代謝時間により異なるが、1日当たりの維持用量は約0.001mg/kg〜1g/kg、好ましくは、0.01mg/kg〜100mg/kg、より好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kgであると考えられる。投与は1日当たり1回から複数回であってもよい。化合物がDNAによってコードされうる場合には、遺伝子治療を行うためにDNAを遺伝子治療用ベクターに組み入れることが可能である。
実施例1についてテトラサイクリン・オペレータ(TetO2)をもつ発現ベクターにルシフェラーゼ遺伝子をつなげたプラスミドの模式図である。 テトラサイクリンの作用でTetO2からTetRホモダイマーが分離した状態を示す模式図である。 実施例1のルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞に対してテトラサイクリンを添加後に得られる経過時間ごとの発光画像である。 実施例1において、20倍の対物レンズにより得られる観察用発光画像の全視野に対して測定すべき4箇所の領域を指定した状態を示す図である。 図4に示した領域ROI−1,ROI−2、ROI−3、ROI−4について、ルシフェラーゼ遺伝子の発光強度の経時変化を測定した結果を示す図である。 熱ショック蛋白であるHSP70B配列を、TATAボックスを介してルシフェラーゼ遺伝子配列に対してつなげた模式図である。 熱ショック因子の作用でHSP70Bプロモーター部分から転写が開始される状態を示す模式図である。 実施例2において熱刺激後60経過した細胞の照明画像および発光画像を重ね合わせた画像を示す図である(トランスフェクションされた細胞は発光し図では白く表現されているが、それ以外の殆どの細胞はトランスフェクションされていない)。 実施例2において、20倍の対物レンズにより得られる観察用発光画像の全視野に対して測定すべき5箇所の領域(実線で囲んだ領域)と図8で示した重ね合わせ画像の領域(点線で囲んだ領域)を指定した状態を示す図である。 実施例2において指定した5箇所の領域ごとにタイプラプス撮像した発光画像に基づく発光量の経時的データをグラフィック表現した図である。各領域ごとの個々の細胞について、ヒートショックによるプロモータ活性が細胞群(ROI1、ROI2)では14時間前後で最大となり(図10A)、細胞群(ROI3、ROI4、ROI5)では10時間前後で最大となった(図10B)。 オルガネラ(核、小胞体、細胞膜)ごとに細胞内で局在させた発光画像を示す図(左から順に明視野画像、発光画像、明視野と発光の重ね合わせ画像)である。 核内レセプターを発現した細胞において核内移行を誘発する刺激処理によって移行する様子を示す図である。 倒立型顕微鏡をベースとする微弱光検出装置(発光顕微鏡)の概略図である。 微弱光検出装置の検出部分に関する詳細な構成を示す図である。
符号の説明
1 照明光学系
3 試料ステージ
2 光源
4 被験試料
5 観察光学系
8 CCDカメラ
9 対物レンズZ軸駆動機構
15 対物レンズ
19 結像面
21 試料容器
22 水槽
27 ヒートプレート

Claims (4)

  1. 生物学的活性を解析する自動化された方法であって、
    生物学的活性を調査し得る条件下で、発光蛋白遺伝子を導入した細胞を所定の培養容器内で2次元的に配置した状態で培養する工程
    培養された細胞を含む少なくとも前記培養容器に2次元的に配置された細胞集団を含むような充分な広がりを有する領域について、明視野観察にて細胞の位置及び形状に関する情報を得た後に、蓄積型光検出手段を用いて発光画像を経時的に複数取得する工程
    少なくとも一つの発光画像において関心有る細胞を指定する工程
    細胞画像の位置及び形状に基づき、複数の発光画像について指定した同一の細胞を認識する工程
    認識した同一細胞から生じる画像ごとの発光量を計算する工程とを含んでおり、
    前記計算する工程が、時間軸に沿った発光量の比較工程をさらに有しており、これにより、生物学的活性の測定値を提供することを特徴とする生物学的活性の自動解析方法。
  2. 前記発光蛋白がルシフェラーゼまたはエクオリンである請求項1に記載の方法。
  3. 前記培養する工程が生物学的活性を調査する充分な期間中、一定の培養環境を維持することを含む請求項1に記載の方法。
  4. 前記発光画像を経時的に複数取得する工程が微弱光検出が可能な顕微鏡的光学系によるデジタル画像を提供する工程を含む請求項1に記載の方法。
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