JP2004187530A - 細胞分裂可視化細胞及びその作製方法、蛍光の検出方法、細胞分裂への影響の評価方法、並びにスクリーニング方法 - Google Patents

細胞分裂可視化細胞及びその作製方法、蛍光の検出方法、細胞分裂への影響の評価方法、並びにスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】蛍光蛋白質を細胞内に導入することにより、細胞分裂を視覚化できる細胞分裂可視化細胞及びその作製方法、それを用いた細胞分裂の可視化方法、細胞分裂への影響の評価方法、並びにスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】本発明は、(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造体を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで、(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより細胞分裂可視化細胞を得て、その後、(3)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することにより、細胞分裂を可視化して、細胞分裂の状態を観察する。また、被験物質と本発明の細胞分裂可視化細胞とを共に培養することにより、細胞分裂に影響を及ぼす被験物質を選択することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2種以上の蛍光蛋白質遺伝子を細胞内に導入することにより、細胞分裂を可視化することができる細胞分裂可視化細胞及びその作製方法に関する。
また、本発明は、細胞分裂可視化細胞に含まれる蛍光蛋白質を発現させて、該蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出する蛍光の検出方法に関する。
また、本発明は、上記細胞分裂可視化細胞を使用して、遺伝子や薬剤等の細胞分裂への影響を評価することができる細胞分裂への影響の評価方法に関する。
更に、本発明は、上記細胞分裂可視化細胞を使用して、細胞分裂に影響を与える遺伝子や薬剤等の物質をスクリーニングするスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
動植物の細胞は、誕生から死滅まで細胞分裂を起こしながら生存する。この細胞分裂周期は時系列順にG1期(有糸分裂とDNA合成の開始時期との間隙期)、S期(DNA合成の段階)、G2期(Sと有糸分裂との間隙期)、M期(核分裂から実際の細胞分裂に到る段階)と繰り返されることにより成り立っている。そして、この細胞分裂周期の1サイクルは細胞によって異なるが、約8〜24時間が最も多く、この周期の中でM期(約1〜2時間)は、細胞内の様々な構造が最もダイナミックに変化する細胞分裂期である。
【0003】
そして上記のように、動植物の細胞は、誕生から死滅まで細胞分裂を起こしながら生存することから、細胞分裂の形態変化の観察、特に外来性の物質や遺伝子等による細胞分裂の形態変化への影響を観察することは、生物学的に重要である。かかる観点から従来より、細胞分裂の形態変化を観察することが行われている。例えば、通常、細胞分裂に作用する物質は、上記の細胞分裂周期の中のM期での作用が顕著であるであることから、核、染色体、核膜、中心体、動原体、紡錘体の変化を追跡することによって、M期の構造変化を追跡することが行われている。
【0004】
細胞分裂における細胞構造の状態変化を観察する場合、通常は、顕微鏡を使用して、視覚的に細胞を観察している。そして、一般の顕微鏡観察では、細胞の内部での形態変化を観察することは困難であることから、従来、蛍光色素を利用することによる観察が行われていた。例えば、細胞をホルマリン等で固定し、これに、蛍光色素で標識した抗体等と反応させて観察する方法等が行われていた。この方法では、分裂した細胞を見つけ出すのが容易であるという利点はある。しかし、被験物質の細胞分裂への影響を評価する場合、生細胞の細胞分裂を観察することが望まれるところ、上記の方法では、細胞が死滅していることから、蛍光色素使用時の細胞の形態を観察できても、生細胞の形態変化を継続して観察することは困難である。かかる観点から、蛍光色素を蛋白質と結合させて生細胞に導入して観察する方法も試みられている。しかし、この方法の場合は、導入した細胞の状態しか観察できず、分裂した細胞を見つけ出すのが容易ではない。また、細胞が分裂する度に蛍光色素を結合した蛋白質が少なくなり、時間の経過と共に蛍光が低下するという問題がある。更に、かかる方法によっても、分裂している最中の細胞を観察するのが依然として困難であるという問題がある。
かかる観点から、1種又は2種の蛍光蛋白質によって核等を標識し、当該蛍光を観察することによって細胞分裂の状態を観察する方法が知られている(下記非特許文献1及び2参照)。
【0005】
【非特許文献1】
Sugimoto et al., 「Cell Structure and Function」 25:253−261(2000)
【非特許文献2】
Sugimoto et al., 「Cell Structure and Function」 26:705−718(2001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、1種の蛍光蛋白質を使用して細胞分裂を観察する場合は、1種類の蛋白質(1種類の細胞構造)の変化を把握できるのみであり、細胞構造相互の時間的、空間的な動きは把握できないという問題がある。また、2種の蛍光蛋白質を使用して細胞分裂を観察する場合は、蛍光数(細胞構造の数)が少ないために、細胞分裂における諸器官の空間的、相互的作用についての詳細を知ることは困難であるという問題がある。更に、上記のように、1種又は2種の蛍光蛋白質を使用して細胞分裂を観察する方法では、見えていないものが多すぎるため、細胞分裂の状態を詳細に知ることが困難であることから、かかる方法では、他の物質や遺伝子等が細胞分裂サイクルのどの時期にどのような影響を及ぼしているかを十分に判別することができないという問題がある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、蛍光蛋白質を細胞内に導入することにより、細胞分裂を視覚化できる細胞分裂可視化細胞及びその作製方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、細胞分裂可視化細胞に含まれる蛍光蛋白質を発現させて、該蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出する蛍光の検出方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、上記細胞分裂可視化細胞を使用して、遺伝子や薬剤等の細胞分裂への影響を評価することができる細胞分裂への影響の評価方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記細胞分裂可視化細胞を使用して、細胞分裂に影響を与える遺伝子や薬剤等をスクリーニングするスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記実情に鑑みて検討した結果、細胞分裂をつぶさに観察するためには、多種類の細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質について、できる限り多く蛍光化すればよいことに着目して鋭意検討した。その結果、従来、1つの細胞に3種以上の蛍光蛋白質を導入して細胞分裂を全般にわたり動的に視覚化した技術は報告がなかったのに対し、本発明者は、蛍光蛋白質に目的の細胞構造を構成する蛋白質を融合させた融合遺伝子の3種以上を導入し、継代培養する間でも蛍光蛋白質が脱離しない安定した細胞分裂可視化細胞を樹立することに成功した。そして、当該細胞分裂可視化細胞を用いて蛍光を観察することにより、従来よりも詳細に細胞分裂を可視化することができ、その結果、細胞分裂の状況及び他の物質や遺伝子の細胞分裂に対する影響をより詳細に知ることができることを見出して、本発明に至った。
【0009】
本発明は以下に示すとおりである。
〔1〕細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子の3種以上と、それぞれ種類の異なる蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して得られた3種以上の融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより得られることを特徴とする細胞分裂可視化細胞。
〔2〕細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子の2種以上と、それぞれ種類の異なる蛍光蛋白質の遺伝子と融合して得られた2種以上の融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより得られた形質転換細胞に、被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を導入することにより得られることを特徴とする細胞分裂可視化細胞。
〔3〕上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造が、核、染色体、核膜、中心体、動原体、紡錘体、細胞骨格、ヘテロクロマチン及びテロメアのうちの少なくとも1種である上記〔1〕又は〔2〕記載の細胞分裂可視化細胞。
〔4〕上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質が、ヒストンH3、ヒストンH2B、インポーチンα、ラミンB、オーロラA、オーロラB、α−チュブリン、β−チュブリン、γ−チュブリン、セントロメア蛋白質A、セントロメア蛋白質C、ヘテロクロマチン蛋白質1、サービビン、アクチン、及びテロメア蛋白質のうちの少なくとも1種である上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞。
〔5〕上記蛍光蛋白質が、緑色蛍光蛋白質、シアン色蛍光蛋白質、赤色蛍光蛋白質及び黄色蛍光蛋白質の2種又は3種以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞。
〔6〕上記宿主細胞が、哺乳動物由来の細胞である上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞。
〔7〕上記哺乳動物由来の細胞が、哺乳動物の体細胞、生殖細胞又はES細胞である上記〔6〕記載の細胞分裂可視化細胞。
【0010】
〔8〕(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することを特徴とする安定な細胞分裂可視化細胞の作製方法。
〔9〕(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる2種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得て、その後、(3)被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を、上記形質転換細胞に導入することを特徴とする安定な細胞分裂可視化細胞の作製方法。
【0011】
〔10〕(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで、(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより細胞分裂可視化細胞を得て、その後、(3)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することを特徴とする蛍光の検出方法。
〔11〕(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる2種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得て、その後、(3)被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を、上記形質転換細胞に導入して細胞分裂可視化細胞を得て、次いで、(4)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することを特徴とする蛍光の検出方法。
【0012】
〔12〕(1)被験物質の存在下、上記〔1〕乃至〔7〕のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞を培養し、次いで、(2)該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記蛍光蛋白質を発現させて生じた蛍光を検出することにより、細胞分裂の状態の観察を行うことを特徴とする細胞分裂への影響の評価方法。
〔13〕(1)上記〔2〕乃至〔7〕のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞を培養し、次いで、(2)該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記融合被験遺伝子由来の上記蛍光蛋白質を発現させて生じた蛍光を検出することにより細胞分裂の状態の観察を行うことを特徴とする細胞分裂への影響の評価方法。
〔14〕上記細胞分裂が有糸分裂及び/又は減数分裂である上記〔12〕又は〔13〕記載の細胞分裂への影響の評価方法。
〔15〕上記細胞分裂の状態の観察は、上記細胞分裂可視化細胞を蛍光顕微鏡下又はレーザー顕微鏡下で培養すると共に、細胞分裂時に上記細胞分裂可視化細胞の経時的撮影を行って画像を取得することによる動的可視化によって行う上記〔12〕乃至〔14〕のいずれかに記載の細胞分裂への影響の評価方法。
【0013】
〔16〕上記〔12〕記載の細胞分裂への影響の評価方法を行うことにより、細胞分裂に影響を及ぼす被験物質を選択することを特徴とするスクリーニング方法。
〔17〕上記〔13〕記載の細胞分裂への影響の評価方法を行うことにより、細胞分裂に影響を及ぼす遺伝子を選択することを特徴とするスクリーニング方法。
【0014】
【発明の効果】
本発明の細胞分裂可視化細胞は、継代培養する間でも蛍光蛋白質を安定に発現する細胞であり、また、多種類の細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質について蛍光化していることから、その蛍光を観察することにより、従来よりも詳細に細胞分裂の状態を観察することができる。
本発明の他の細胞分裂可視化細胞は、継代培養する間でも蛍光蛋白質を脱離しない安定した細胞であり、その蛍光を観察することにより、他の評価対象遺伝子の細胞分裂に与える影響を詳細に知ることができる。
上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を、核、染色体、核膜、中心体、動原体、紡錘体、細胞骨格、ヘテロクロマチン及びテロメアのうちの少なくとも2種とすると、細胞分裂の時期に応じた細胞構造の変化を可視化することが可能となり、より詳細に細胞分裂の状態を観察することができる。
また、上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質を、ヒストンH3、ヒストンH2B、インポーチンα、ラミンB、オーロラA、オーロラB、α−チュブリン、β−チュブリン、γ−チュブリン、セントロメア蛋白質A、セントロメア蛋白質C、ヘテロクロマチン蛋白質1、サービビン、アクチン、及びテロメア蛋白質のうちの少なくとも2種とすると、細胞分裂の時期に応じた細胞構造の変化を可視化することが可能となり、より詳細に細胞分裂の状態を観察することができる。
更に、上記蛍光蛋白質として、緑色蛍光蛋白質、シアン色蛍光蛋白質、赤色蛍光蛋白質及び黄色蛍光蛋白質の2種又は3種以上を用いると、容易に蛍光を検出することができる。
また、上記融合遺伝子を導入する上記細胞として、哺乳動物由来の細胞を用いると、哺乳動物における細胞分裂の状態を従来よりも詳細に観察することができる。特に、上記哺乳動物由来の細胞として、体細胞、生殖細胞又はES細胞を用いると、これらの細胞における細胞分裂の状態を従来よりも詳細に観察することができる。
【0015】
本発明の細胞分裂可視化細胞の作製方法及び本発明の他の細胞分裂可視化細胞の作製方法によれば、上記作用効果を奏する細胞分裂可視化細胞を容易に得ることができる。
【0016】
本発明の蛍光の検出方法によれば、より詳細に細胞分裂の状態を観察することができる。
【0017】
本発明の細胞分裂への影響の評価方法及び本発明の他の細胞分裂への影響の評価方法によれば、被験物質又は被験遺伝子の細胞分裂に及ぼす影響を詳細に知ることができる。
また、上記細胞分裂を有糸分裂及び/又は減数分裂とすることにより、これらの分裂時における被験物質又は被験遺伝子の細胞分裂に及ぼす影響を詳細に知ることができる。
更に、上記細胞分裂の状態の観察は、上記細胞分裂可視化細胞を蛍光顕微鏡下又はレーザー顕微鏡下で培養すると共に、細胞分裂時に上記細胞分裂可視化細胞の経時的撮影を行って画像を取得することによる動的可視化によって行うと、被験物質又は被験遺伝子の細胞分裂に及ぼす影響、特に経時的変化をより詳細に知ることができる。
【0018】
本発明のスクリーニング方法及び本発明の他のスクリーニング方法によれば、細胞分裂に影響を及ぼす被験物質又は被験遺伝子を選択することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明について以下に詳細に説明する。
〔1〕細胞分裂可視化細胞及びその作製方法
本発明の細胞分裂可視化細胞は、細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子の3種以上と、それぞれ種類の異なる蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して得られた3種以上の融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより得られる。本発明の細胞分裂可視化細胞では、異なる蛍光蛋白質と融合した細胞構造を構成する蛋白質が3種以上存在することから、3種以上の細胞構造を蛍光化して観察することができる。その結果、細胞構造の1種又は2種を蛍光化して観察するより、より詳細に細胞分裂の状態を観察することができ、また、細胞分裂の動的観察も可能であることから、各細胞構造の時間的変化並びに各細胞構造間の時間的、空間的な相関を把握することもできる。
【0020】
本発明の他の細胞分裂可視化細胞は、細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子の2種以上と、それぞれ種類の異なる蛍光蛋白質の遺伝子と融合して得られた2種以上の融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより得られた形質転換細胞に、被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を導入することにより得られる。本発明の他の細胞分裂可視化細胞では、異なる蛍光蛋白質と融合した細胞構造を構成する蛋白質の2種以上と、被験遺伝子由来の蛋白質の合計3種以上の蛍光を観察することができる。その結果、上記本発明の細胞分裂可視化細胞の観察効果に加え、被験遺伝子の細胞分裂に及ぼす影響を観察することができる。
【0021】
上記「細胞分裂の状況を反映する細胞構造」は、細胞を構成し、細胞分裂の際に形態、性状等が変化する構造体(真核細胞染色体の末端部分の構造であるテロメアのように、当該構造体を構成する一部の構造も含む。)であれば、その種類について特に限定はない。上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造として具体的には、例えば、核、染色体、核膜、中心体、動原体、紡錘体、細胞骨格、ヘテロクロマチン及びテロメア等のうちの少なくとも2種(好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上)が挙げられる。上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造として、いかなる細胞構造を選択するか特に限定はないが、通常は、観察したい細胞分裂の時期に基づいて適宜選択することができる。例えば、M期の分裂前期(prophase)を観察したい場合であれば、核(染色体)、核膜、中心体、紡錘体、細胞骨格、ヘテロクロマチン又はテロメアを選択することができる。また、分裂中期(metaphase)を観察したい場合であれば、染色体、動原体、紡錘体又はヘテロクロマチンを選択することができる。更に、分裂後期(anaphase)を観察したければ、核(染色体)、核膜又は動原体を選択することができる。
【0022】
上記「細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質」は、上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質であれば、その種類について特に限定はない。上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質としては、例えば、上記核、染色体、核膜、中心体、動原体、紡錘体、細胞骨格、ヘテロクロマチン及びテロメアの構成蛋白質のうちの少なくとも2種(好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上)が挙げられる。より具体的には、例えば、ヒストンH3、ヒストンH2B、インポーチンα、ラミンB、オーロラA、オーロラB、α−チュブリン、β−チュブリン、γ−チュブリン、セントロメア蛋白質A、セントロメア蛋白質C、ヘテロクロマチン蛋白質1(HP1α、HP1β又はHP1γ)、サービビン、アクチン、及びテロメア蛋白質のうちのうちの少なくとも2種(好ましくは3種以上、より好ましくは4種以上)が挙げられる。通常、可視化を望む上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造と、上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質とは、次のように対応する。そして、本発明では、下記の▲1▼〜▲8▼の番号に属する蛋白質のうち、番号の異なる蛋白質を2種以上、好ましくは3種以上、更に好ましくは4種以上を選択することができる。
▲1▼「核/染色体」:ヒストンH3、ヒストンH2B
▲2▼「核膜」:インポーチンα、ラミンB、核ラミンA前駆体認識因子(NARF)
▲3▼「中心体」:オーロラA、γ−チュブリン
▲4▼「中心体/紡錘体」:α−チュブリン、β−チュブリン、オーロラA
▲5▼「ヘテロクロマチン」:ヘテロクロマチン蛋白質1(HP1α、HP1β又はHP1γ)、オーロラB、サービビン、SNF2b(BRG1)、Suv39h1
▲6▼「細胞骨格」:アクチン
▲7▼「テロメア」:各種テロメア蛋白質(TRF1、TRF2等)
▲8▼「動原体」:セントロメア蛋白質A、C
【0023】
上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質として、いかなる蛋白質を選択するかは特に限定はないが、通常は、観察したい細胞分裂の時期に基づいて適宜選択することができる。例えば、M期は「核膜」が消失する時期、「核」のクロマチンが染色体に凝縮する時期、及び「紡錘体」が形成される時期を含むので、このあたりの細胞構造を構成する蛋白質の複数を選択するのが好ましい。より具体的には、例えば、G2期からM期の前期にかけては、「核/染色体」、「核膜」及び「中心体/紡錘体」を構成する蛋白質、即ち、上記▲1▼〜▲3▼に別個に属する蛋白質の2種又は3種以上を選択することができる。また、M期の前中期、中期、後期にかけては、「核/染色体」、「中心体/紡錘体」及び「動原体」を構成する蛋白質、即ち、上記▲1▼▲3▼▲8▼に別個に属する蛋白質の2種又は3種以上を選択することができる。更に、M期の後期から終期にかけては、上記G2期からM期の前期の場合と同様に、「核膜」、「核/染色体」「中心体/紡錘体」を構成する蛋白質を選択することができる。
【0024】
上記「蛍光蛋白質」は、少なくとも細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、細胞構造を構成する蛋白質又は被験遺伝子の産物と融合した形で発現し、蛍光を発する性質を備える蛋白質である限り、その種類に限定はない。上記蛍光蛋白質としては、例えば、緑色蛍光蛋白質(GFP)、シアン色蛍光蛋白質(CFP)、赤色蛍光蛋白質(DsRed,HcRed)及び黄色蛍光蛋白質(YFP)等のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
上記「融合遺伝子」とは、上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、上記蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して得られるものである。上記融合遺伝子を得る方法については特に限定はない。通常は、上記蛍光蛋白質の遺伝子を含む発現ベクターを適当な制限酵素で切断し、当該切断部位に上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子を上記制限酵素で切断したDNA断片を挿入することにより得ることができる。また、上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質のcDNAと、上記蛍光蛋白質の遺伝子とを融合することにより得てもよい。
【0026】
本発明の細胞分裂可視化細胞では、上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上、好ましくは4種以上、更に好ましくは5種以上の上記融合遺伝子を宿主細胞に導入する。また、本発明の他の細胞分裂可視化細胞では、上記蛍光蛋白質の種類が異なる2種以上、好ましくは3種以上、更に好ましくは4種以上の上記融合遺伝子を宿主細胞に導入する。上記融合遺伝子を上記宿主細胞内に導入する方法は特に限定はなく、必要に応じて公知の方法を選択することができる。上記融合遺伝子を上記宿主細胞に導入する方法として具体的には、例えば、エレクトロポレーション法、トランスフェクション法、マイクロインジェクション法、プロトプラスト融合法等の細胞融合法等が挙げられる。また、上記融合遺伝子を宿主細胞に導入する順序についても特に限定はない。更に、上記融合遺伝子を宿主細胞に導入する場合、上記融合遺伝子を1種類づつ宿主細胞に導入してもよく、あるいは、全ての上記融合遺伝子をまとめて宿主細胞に導入してもよい。
【0027】
また、上記宿主細胞の種類については特に限定はなく、細胞分裂状態を観察し得る種々の細胞を用いることができる。例えば、上記宿主細胞は、植物由来の細胞でもよく、動物由来の細胞でもよい。また、動物由来の細胞としては、哺乳動物由来又は鳥類の細胞等を使用することができる。上記宿主細胞として、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ等)由来の細胞を用いると、哺乳動物における細胞分裂の状態を従来よりも詳細に観察することができ、その結果、哺乳動物、例えばヒトの細胞分裂に対する物質の影響等を詳細に評価することができるので好ましい。更に、上記宿主細胞としては、例えば、体細胞、生殖細胞及びES細胞が挙げられる。より具体的には、ヒトMDA435細胞、マウスA9細胞、ウシMDBK細胞、ブタPK15、マウスC3H細胞、インドホエジカ細胞等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の他の細胞分裂可視化細胞では、上記融合遺伝子を上記宿主細胞に導入して得られた形質転換細胞に、更に、被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を導入する。上記被験遺伝子は、細胞内内在性の遺伝子でもよく、外来性の遺伝子でもよい。また、生体から分離抽出された遺伝子、あるいは、当該遺伝子を適当な制限酵素で切断して得られた遺伝子断片、又は合成したポリヌクレオチド鎖でもよい。また、上記融合被験遺伝子を導入する方法についても特に限定はなく、上記融合遺伝子を導入する方法と同様に、必要に応じて公知の方法を選択することができる。
【0029】
本発明の細胞分裂可視化細胞の作製方法において、目的とする安定な細胞分裂可視化細胞、即ち、導入した遺伝子が染色体に組み込まれた形質転換体だけを選別する方法には特に限定はない。例えば、ピューロマイシン等の抗生物質を使って選択することができる。
【0030】
(2)蛍光の検出方法
本発明の蛍光の検出方法は、(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで、(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより細胞分裂可視化細胞を得て、その後、(3)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することを特徴とする。
また、本発明の他の蛍光の検出方法は、(1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる2種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得て、その後、(3)被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を、上記形質転換細胞に導入して細胞分裂可視化細胞を得て、次いで、(4)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することを特徴とする。
上記細胞分裂可視化細胞を得る方法及びその内容については、本発明の細胞分裂可視化細胞及び本発明の他の細胞分裂可視化細胞で既に詳述した記載がそのまま妥当する。
【0031】
本発明の蛍光の検出方法及び本発明の他の蛍光の検出方法では、少なくとも該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時における上記蛍光蛋白質由来の蛍光の観察を可能にするために、上記蛍光蛋白質を発現させる。本発明の蛍光の検出方法及び本発明の他の蛍光の検出方法では、少なくとも細胞分裂時における上記蛍光蛋白質由来の蛍光の観察を可能にするために、上記蛍光蛋白質を発現させればよい。即ち、細胞分裂時のみ上記蛍光蛋白質を発現させるようにしてもよく、あるいは、細胞分裂時だけでなく、細胞分裂の進行が停止している段階でも上記蛍光蛋白質を発現させてもよい。尚、本発明の他の蛍光の検出方法において、蛍光を発生させるために発現された上記蛍光蛋白質は、上記融合遺伝子から発現されたものでもよく、上記融合被験遺伝子から発現されたものでもよく、あるいは、この両方でもよい。また、上記蛍光蛋白質由来の蛍光を観察する方法は、上記蛍光蛋白質由来の蛍光を発生させることができる限り特に限定はなく、例えば、紫外線等の光を照射する等の方法により蛍光を発生させて観察する方法が挙げられる。
【0032】
(3)細胞分裂への影響の評価方法
本発明の細胞分裂への影響の評価方法は、(1)被験物質の存在下、本発明の細胞分裂可視化細胞又は本発明の他の細胞分裂可視化細胞を培養し、次いで、(2)該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記蛍光蛋白質を発現させて生じた蛍光を検出することにより、細胞分裂の状態の観察を行う。本発明の細胞分裂への影響の評価方法によれば、被験物質の細胞分裂に及ぼす影響を、従来の方法よりも詳細に評価することができる。
【0033】
上記被験物質の種類は特に限定はない。該被験物質は、天然物由来の物質でもよく、合成物でもよい。上記被験物質として具体的には、例えば、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、脂質、糖類、微生物発酵物、生物体(植物又は動物の組織、微生物、又は細胞などを含む)からの抽出物(遺伝子、ポリヌクレオチド等)、合成化合物(低分子有機化合物、高分子有機化合物等)、ダイオキシン、環境ホルモン、及びこれらのライブラリーが挙げられる。ライブラリーとしては、合成化合物ライブラリー(コンビナトリアルライブラリー等)、ペプチドライブラリー(コンビナトリアルライブラリー等)等が挙げられる。また、上記被験物質は1種のみを用いてよく、2種以上(ライブラリー等を含む)を用いてもよい。その他、上記被験物質は、2種以上の物質を含む組成物でもよく、また、医薬品、食品、化粧品及び農薬等のような最終製品でもよい。
【0034】
本発明の他の細胞分裂への影響の評価方法は、(1)本発明の他の細胞分裂可視化細胞を培養し、次いで、(2)該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記融合被験遺伝子由来の上記蛍光蛋白質を発現させて生じた蛍光を検出することにより細胞分裂の状態の観察を行う。
【0035】
上記被験遺伝子は、細胞内内在性の遺伝子でもよく、外来性の遺伝子でもよい。また、生体から分離抽出された遺伝子、あるいは、当該遺伝子を適当な制限酵素で切断して得られた遺伝子断片、又はアンチセンスDNAの如き合成したDNA、あるいはPNA(ペプチド核酸)でもよい。更に、上記融合被験遺伝子を導入する方法についても特に限定はなく、上記融合遺伝子を導入する方法と同様に、必要に応じて公知の方法を選択することができる。
【0036】
本発明の細胞分裂可視化細胞又は本発明の他の細胞分裂可視化細胞の培養条件、方法については特に限定がなく、細胞分裂可視化細胞の種類等の諸条件に応じて種々の培養条件、方法で行うことができる。
【0037】
本発明の細胞分裂への影響の評価方法では、上記細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記融合遺伝子から発現した上記蛍光蛋白質の蛍光を検出して細胞分裂を可視化することにより、細胞分裂の状態を観察する。また、本発明の他の細胞分裂への影響の評価方法では、上記融合被験遺伝子から発現した上記蛍光蛋白質の蛍光を検出して細胞分裂を可視化することにより、細胞分裂の状態を観察する。ここで、観察する上記細胞分裂は、有糸分裂でもよく、減数分裂でもよい。
【0038】
上記蛍光蛋白質の蛍光を検出し、観察する方法については特に限定はない。通常は、蛍光顕微鏡又はレーザー顕微鏡を用いて上記蛍光蛋白質の蛍光を直接肉眼で観察したり、あるいは写真撮影をして画像を取得し、該画像に基づいて観察を行う。写真撮影により得られた画像に基づいて観察する場合、ある一定時期のみを撮影して画像を取得してもよいが、一定の時間間隔で経時的に撮影を行って画像を取得することにより、細胞分裂の動的可視化を行うことができる。かかる方法によれば、細胞分裂の時間的変化をより詳細に追跡することができる。
また、上記蛍光蛋白質の蛍光の検出、観察は、細胞分裂可視化細胞の種類、観察目的とする細胞周期、添加する被験物質の種類、添加する被験遺伝子の種類、性質等によって観測時間等の観測条件を適宜変動させて行うことができる。また、上記動的可視化測定の場合も、細胞分裂可視化細胞の種類、観察目的とする細胞周期、添加する被験物質の種類、添加する被験遺伝子の種類、性質等によって撮影の時間間隔を適宜変動させることができる。
【0039】
(4)スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、上記本発明の細胞分裂への影響の評価方法を行うことにより、細胞分裂に影響を及ぼす被験物質を選択することを特徴とする。本発明の細胞分裂への影響の評価方法は、上記のように、被験物質の細胞分裂に及ぼす影響を、従来の方法よりも詳細に評価することができることから、本発明のスクリーニング方法によれば、細胞分裂に影響を及ぼす物質を従来の方法より細分化して選択することができる。即ち、細胞分裂の細分化したフェーズに作用する物質や薬剤を選択することができる。
【0040】
本発明のスクリーニング方法において、上記被験物質の種類は特に限定はない。該被験物質は、天然物由来の物質でもよく、合成物でもよい。上記被験物質として具体的には、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、脂質、糖類、微生物発酵物、生物体(植物又は動物の組織、微生物、又は細胞などを含む)からの抽出物(遺伝子、ポリヌクレオチド等)、合成化合物(低分子有機化合物、高分子有機化合物等)、ダイオキシン、環境ホルモン、及びこれらのライブラリーが挙げられる。ライブラリーとしては、合成化合物ライブラリー(コンビナトリアルライブラリー等)、ペプチドライブラリー(コンビナトリアルライブラリー等)等が挙げられる。また、上記被験物質は1種のみを用いてよく、2種以上(ライブラリー等を含む)を用いてもよい。例えば、細胞抽出物のような混合物を分画したものについて本発明のスクリーニングを行い、分画を重ねて、最終的に細胞分裂に影響を与える物質を単離することも可能である。その他、2種以上の物質を含む組成物でもよく、また、上記被験物質は、医薬品、食品、化粧品及び農薬等のような最終製品でもよい。
【0041】
本発明の他のスクリーニング方法は、本発明の他の細胞分裂への影響の評価方法を行うことにより、細胞分裂に影響を及ぼす遺伝子を選択することを特徴とする。上記のように、本発明の他の細胞分裂可視化細胞は、細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質を蛍光化すると共に、他の遺伝子を細胞内に導入し、蛍光化させることにより、細胞分裂に影響を及ぼす遺伝子を、従来よりも詳細に選択することができる。
【0042】
上記被験遺伝子は、細胞内内在性の遺伝子でもよく、外来性の遺伝子でもよい。また、生体から分離抽出された遺伝子、あるいは、当該遺伝子を適当な制限酵素で切断して得られた遺伝子断片、又はアンチセンスDNAの如き合成したDNA、あるいはPNA(ペプチド核酸)でもよい。更に、上記融合被験遺伝子を導入する方法についても特に限定はなく、上記融合遺伝子を導入する方法と同様に、必要に応じて公知の方法を選択することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明の一例を具体的に説明する。
<実施例1>
(1)プラスミドDNAの作成
ヒトオーロラA−緑色蛍光蛋白質融合蛋白質の発現ベクターとして、緑色蛍光蛋白質(GFP)の遺伝子を含むベクターである哺乳動物細胞用発現ベクターpEGFP−C1(クロンテック社から購入)を使用した。そして、上記pEGFP−C1を制限酵素SalI及びBglIIで切断し、該切断部位にヒトオーロラAのcDNAの1.2kb断片を挿入することにより、ヒトオーロラA−緑色蛍光蛋白質融合蛋白質を発現させるためのプラスミドDNA(pEGFP−オーロラA)を作成した。
【0044】
また、ヒストンH3−シアン色蛍光蛋白質融合蛋白質の発現ベクターとして、シアン色蛍光蛋白質(CFP)の遺伝子を含むベクターである哺乳動物細胞用発現ベクターpECFP−C1(クロンテック社から購入)を使用した。そして、マウスヒストンH3発現プラスミドpZErO−histoneH3(Tatchibana et al., J.Biol.Chem., Vol.276,25309−25317,2001)を制限酵素EcoRI及びXhoIで切断し、得られた430bpのマウスヒストンH3cDNA断片を、同じ制限酵素で切断した上記pECFP−C1の切断部位に導入することにより、ヒストンH3−シアン色蛍光蛋白質融合蛋白質を発現させるためのプラスミドDNA(pECFP−ヒストンH3)を作成した。
【0045】
更に、インポーチンα−赤色蛍光蛋白質融合蛋白質の発現ベクターとして、赤色蛍光蛋白質(DsRed)の遺伝子を含むベクターである哺乳動物細胞用発現ベクターpDsRed−C1(クロンテック社から購入)を使用した。そして、上記pDsRed−C1を制限酵素EcoRI及びSalIで切断し、該切断部位にヒトインポーチンαのcDNAの1.2kb断片を挿入することにより、インポーチンα−赤色蛍光蛋白質融合蛋白質を発現させるためのプラスミドDNA(pDsRed−インポーチンα)を得た。
【0046】
(2)プラスミドDNAの導入及び安定形質転換細胞の取得
上記プラスミドDNAを導入する細胞として、ヒトMDA435細胞(Viget al,.1996;Sugimoto,et al.,2000,2001)を用いた。そして、10%FCS含有D−MEM培地(日水製薬製)にて、上記ヒトMDA435細胞を37℃、5%炭酸ガス空気下で培養した。対数増殖期にある細胞を1×PBS(−)4mlで洗浄し、トリプシン1mlを加えて細胞をはがした。D−MEM培地4mlを添加してトリプシン作用を止めた後、細胞浮遊液を遠心チューブに移し、一部を取り出しヘマトメーターを用いて細胞数を計測した。残りを遠心分離(1000rpm/10分)し、回収された細胞を1×PBS(−)12mlに懸濁することで細胞を洗浄し、この作業を二回行った後、細胞数が1.2×10細胞/mlになるように1×K−PBSに懸濁した。
【0047】
この細胞懸濁液0.5ml分を1.5mlマイクロチューブに移して氷中で5分間静置後、上記プラスミドDNA(pEGFP−オーロラA)50μl(約16μg分)を添加して軽く撹拌し、5分間氷中で静置した。静置後、パスツールピペットで細胞懸濁液を撹拌して予め冷却していたキュベット(BIO−RAD社製)に移しかえ、パルス発生装置(「Gene Pulser」;BIO−RAD社製)を用いてエレクトロポレーション法(電圧0.22kV、コンデンサー容量960μFD)により、上記プラスミドDNA(pEGFP−オーロラA)をヒトMDA435細胞内に導入し、直ちに氷中で10分間静置した。その後、無血清D−MEM培地0.5mlを加えて室温で10分間静置し、パスツールピペットで回収した細胞を4mlの培地に加え、予め培地9mlの入った90mmシャーレ4〜5枚に0.3〜0.5mlずつ播いた。
【0048】
培養2日後、G418(商品名「ゲネティシン」)を0.8〜1.2mg/mlとなるよう加えた培地に交換し、5日毎に培地を交換し、培養を継続した。2〜3週間経過後、形成されたコロニーを内径7mmのクローニングリング(岩城硝子社製)内で個々にトリプシン処理を行い、それぞれを12穴マイクロプレートに移して、2ml培地中でさらに5〜10日間培養した。次の〔0049〕に記載の操作により、目的蛋白質を100%発現していることが確認された細胞を安定形質転換細胞株とし、さらに90mmシャーレにて継代し、保存した。
【0049】
次いで、〔0045〕及び〔0046〕と同様の手順により、上記プラスミドDNA(pECFP−ヒストンH3)及び上記プラスミドDNA(pDsRed−インポーチンα)を導入した。上記プラスミドDNA(pDsRed−インポーチンα)を導入する場合は、さらに、選択マーカー用プラスミドpTK−Hyg(ハイグロマイシン耐性プラスミド)7μgを添加し、細胞へのプラスミドDNAの導入を行ってから1〜2日後、選択用薬剤であるハイグロマイシンを0.075〜0.15μg/mlとなるよう添加した培地で培養し、〔0047〕と同様の手順により、安定形質転換細胞株を得た。その後、上記プラスミドDNA(pECFP−ヒストンH3)を導入する場合は、選択マーカー用プラスミドpLC−puro(ピューロマイシン耐性プラスミド)7μgを添加し、細胞へのプラスミドDNAの導入を行ってから1〜2日後、選択用薬剤であるピューロマイシンを0.05〜0.5μg/mlとなるよう添加した培地で培養し、上記と同様の手順により、安定形質転換細胞株を得た。
【0050】
(3)形質転換細胞での目的とする構造の可視化の確認の方法
コロニーを形成した上記形質転換細胞の一部(1ラ10〜3ラ10)をカバーグラス上でさらに培養し、4%パラホルムアルデヒドで20分固定し、0.1%トリトンX−100で5分間処理した。そして、この固定化した上記形質転換細胞の核を、青色蛍光色素DAPI(1μg溶液)で対比染色した後、Sugimoto et al., Cell Struct.Funct., Vol25,253−261,2000に記載したように、冷却CCDカメラ「MicroMAX 1300Y」(Princeton Instruments社製)、励起用フィルターホイールとZ軸モーターを制御するためのコントローラー「BioPoint MAC3000」(Ludl Electric Products社製)及び対物レンズ「PlanApo 60x」(NA1.40,ニコン社製)を備えた蛍光顕微鏡「Eclipse E600」(ニコン社製)を用いて、上記形質転換細胞を観察した。それぞれの蛍光を観察するにあたっては、DAPI,CFP、GFP、DsRedが観察可能なフィルターセット「Quad filter set No.84」(Chroma Technology社製)を使用した。画像取得、解析にあたっては、「MetaMorphsoftware」(Universal Imaging社製)を使用し、目的とする細胞構造(中心体/紡錘体、核/染色体、核膜)がそれぞれの蛍光を放っていることを観察することにより、形質転換細胞が目的とする蛍光蛋白質を発現することを確認した。
【0051】
(4)生細胞における細胞内構造の画像取得
対物レンズ「PlanApo 60x」を備えた倒立蛍光顕微鏡「Eclipse TE300」(ニコン社製)のステージ上で、35mmシャーレ(カバーガラスが底に張り付けられたもの:旭テクノ硝子製)を用い、サーモスタット及び炭酸ガス導入制御タイマー(日本、Kokensha Engineering社製)により炭酸ガス濃度及び温度をコントロールした湿潤器内で上記形質転換細胞を培養した。そして、高感度CCDカメラORCA−ER(浜松フォトニクス社製)、並びに観察のためのCFP/YFP/RFP用フィルターセット(No.86006,Chroma Technology社製)を備えた励起・吸収フィルターホイール及びZ軸モーターとその制御機であるコントローラー「BioPoint MAC5000」(Ludl Electronic Products社製)を使用し、これらを制御するためのコンピュータソフトウェア(LuminaVision バージョン1.40;三谷商事社製)を用いた。それぞれの時間毎の観察では、各蛍光蛋白質毎に別々の波長の光を順に照射し、且つ1〜2μmの間隔でステージの高さ(Z軸)を変化させ4〜10枚、計12〜30枚の画像を取得した。この観察を2分間隔で120−180分間続け、併せて1440−3600枚程度の画像を取得し、上記ソフトウェアを用いて画像のタイムラプス解析を行った。その結果を図1に示す。
【0052】
(5)実施例1の効果
図1において、緑色蛍光はオーロラA−緑色蛍光蛋白質融合蛋白質の蛍光を、シアン色蛍光はヒストンH3−シアン色蛍光蛋白質融合蛋白質の蛍光を、赤色蛍光はインポーチンα−赤色蛍光蛋白質融合蛋白質の蛍光を示している。即ち、これらの融合蛋白質により、細胞構造である中心体/紡錘体(緑色蛍光)、核/染色体(シアン色蛍光)及び核膜(赤色蛍光)が可視化されている。そして、複製された中心体(緑色蛍光)は、観測開始後0〜12分は、ほぼ同位置に存在していたのに対し、観測開始後14分から分離するように動き始め、観測開始後30分頃には中心体(緑色蛍光)は、それぞれ両極へ移動が完了している。この間は、細胞分裂サイクルのG2後期に該当する。この結果より、通常の顕微鏡観察では必ずしも明確でなかったG2期とM期の前期の区別を、オーロラAにより可視化した中心体の両極への移動する時期として明確に捉えることができた。
【0053】
そして、観測開始後30分過ぎから、核クロマチン(シアン色蛍光)の凝縮と核膜付近への移行が始まっている。また、中心体(緑色蛍光)直下部分の核膜(赤色蛍光)の肥厚化と共に陥入が始まり、観測開始後44分には赤色蛍光が消失していることから、核膜が消失していることが分かる。一方、中心体(緑色蛍光)は、核膜が破壊される観測開始後38分から急速に成長し、観測開始後44分には紡錘体様の形状に変形していることが分かる。この間は、細胞分裂期のM期の前期に該当し、これにより、M期の前期から前中期までにおける構造の変化を捕らえることができた。
【0054】
次いで、観測開始後44分から64分にかけて、紡錘体(緑色蛍光)の形成と共に、染色体(シアン色蛍光)が紡錘体(緑色蛍光)の赤道方向に整列することが観測された。この間は、細胞分裂期のM期の前中期から中期に該当し、これにより、M期の前中期から中期までにおける構造の変化を捕らえることができた。
【0055】
そして、観測開始後66分から、染色体(シアン色蛍光)が極方向へ移動し、観測開始後70分には、両極に到達したことが観察された、これにより、M期の後期、特にM期の後期が開始する時期を明確に捕らえることができた。
【0056】
次いで、観測開始後72分から、両極に分配された染色体(シアン色蛍光)を取り囲むように再び核膜(赤色蛍光)が生じていることが観察された。これにより、M期の後期と終期の区別が明確になった。その後、紡錘体(緑色蛍光)が縮小し、観測開始後96分には、核膜付近に中心体として存在することが確認できた。また、染色体(シアン色蛍光)は、観測開始後72分から次第に脱凝縮し、核の大きさが増加したことが確認された。この観察結果より、終期からG1期に移行したことが分かる。
【0057】
以上より、本発明の細胞分裂可視化細胞を用いて蛍光を観察することにより、インポーチンαにより可視化した核膜、ヒストンH3を用いて可視化した核及び染色体、並びに、オーロラAにより可視化した中心体及び紡錘体の生細胞における時間的、空間的構造変化を動的に観察することができた。そして、これにより、従来の通常の顕微鏡観察では明確には分からなかったG2期と前期の区別、後期の開始、後期と終期の区別を明確化することができた。即ち、通常、明確に捉えにくかったG2期は、中心体(緑色蛍光に相当)を可視化することで、これが二手に分かれていく時期(図1の12〜30分)として明確に捉えることができた。また、G2期からM期の前期への移行も中心体の下の核膜(赤色蛍光に相当)が肥厚し、窪み始める時期(図1の32分)として捉えることができる。更に、M期の前期から前中期は、さらに窪んだ核膜が徐々に消え、中心体が成長していく時期(図1の40〜44分)として、中期から後期への移行は、染色体(青色蛍光に相当)が分かれ始める時期(66分)として、後期から終期への移行は、核膜が再形成される時期(72分)として捉えることができた。このことは、本発明の細胞分裂可視化細胞を用いて蛍光を観察することにより、従来よりもより詳細に細胞分裂の過程を観察することができることを明確に示している。
【0058】
<実施例2>
本実施例は、細胞分裂阻害物質の細胞分裂に対する作用をリアルタイムで観察したものである。実施例1で得られた上記形質転換細胞を、35mmシャーレ(カバーガラスが底に張り付けられたもの:旭テクノ硝子仕製)を用い、炭酸ガス濃度及び温度をコントロールした湿潤器で培養した。次いで、培養液中に薬剤としてビンブラスチンを加え、可視化した細胞構造の動的変化を高感度CCDカメラORCA−ER(浜松フォトニクス社製)、並びにCFP/YFP/RFP用フィルターセット(No.86006,Chroma Technology Corp.製)を備えた励起・吸収フィルターホイール及びZ軸モーターとその制御機であるコントローラー「BioPoint MAC5000」(LudlElectronic Products Ltd.製)を使用し、これらを制御するためのコンピュータソフトウェア(LuminaVision;三谷社製)を用いて、ニコン社製倒立蛍光顕微鏡下にて、2分間隔で観察した。それぞれの時間毎の観察では、各蛍光蛋白質毎に別々の波長の光を順に照射し、且つ2μmの間隔でステージの高さ(Z軸)を変化させ、計18枚の画像を取得した。その結果を図2及び図3に示す。
【0059】
図2に示すように、ビンブラスチンを添加することにより、観察を始めて38分後より前期に特徴的な中心体(緑色蛍光)の成長が観察されたものの、分裂前期から前中期にかけて細胞内で起こるはずの中心体の極への移動(48分後には、逆に、接近していることに注意)並びに紡錘体の形成が阻害され、その後に起こるはずの染色体の赤道面への整列、即ち、中期への移行、並びに、それに続く染色体の極への分配(後期への移行)についても、観察を始めて130分を経ても見られなかった。これらの結果より、ビンブラスチンによって、細胞分裂の進行、特に、前期から前中期への移行が阻害されることが観察できた。
【0060】
また、図3に示すように、別の細胞においても、ビンブラスチン添加により前期から前中期への移行が阻害され、130分を経過しても中期でみられるはずの染色体の赤道面への整列が観察されなかった。これらの結果は、ビンブラスチン添加によって、細胞分裂の進行、特に、前期から前中期への移行が阻害されることを、さらに裏付けるものである。
【0061】
尚、本発明においては、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の細胞分裂の状態を2分間隔で撮影した写真を示す図である。
【図2】実施例2の細胞分裂の状態を経時的に撮影した写真を示す図である。
【図3】実施例2の別の細胞の細胞分裂の状態を経時的に撮影した写真を示す図である。

Claims (17)

  1. 細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子の3種以上と、それぞれ種類の異なる蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して得られた3種以上の融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより得られることを特徴とする細胞分裂可視化細胞。
  2. 細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子の2種以上と、それぞれ種類の異なる蛍光蛋白質の遺伝子と融合して得られた2種以上の融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより得られた形質転換細胞に、被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を導入することにより得られることを特徴とする細胞分裂可視化細胞。
  3. 上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造が、核、染色体、核膜、中心体、動原体、紡錘体、細胞骨格、ヘテロクロマチン及びテロメアのうちの少なくとも2種である請求項1又は2記載の細胞分裂可視化細胞。
  4. 上記細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質が、ヒストンH3、ヒストンH2B、インポーチンα、ラミンB、オーロラA、オーロラB、α−チュブリン、β−チュブリン、γ−チュブリン、セントロメア蛋白質A、セントロメア蛋白質C、ヘテロクロマチン蛋白質1、サービビン、アクチン、及びテロメア蛋白質のうちの少なくとも2種である請求項1乃至3のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞。
  5. 上記蛍光蛋白質が、緑色蛍光蛋白質、シアン色蛍光蛋白質、赤色蛍光蛋白質及び黄色蛍光蛋白質の2種又は3種以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞。
  6. 上記宿主細胞が、哺乳動物由来の細胞である請求項1乃至5のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞。
  7. 上記哺乳動物由来の細胞が、哺乳動物の体細胞、生殖細胞又はES細胞である請求項6記載の細胞分裂可視化細胞。
  8. (1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することを特徴とする安定な細胞分裂可視化細胞の作製方法。
  9. (1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる2種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得て、その後、(3)被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を、上記形質転換細胞に導入することを特徴とする安定な細胞分裂可視化細胞の作製方法。
  10. (1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで、(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる3種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより細胞分裂可視化細胞を得て、その後、(3)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することを特徴とする蛍光の検出方法。
  11. (1)細胞分裂の状況を反映する細胞構造を構成する蛋白質の遺伝子と、蛍光蛋白質の遺伝子とを融合して融合遺伝子を得て、次いで(2)上記蛍光蛋白質の種類が異なる2種以上の上記融合遺伝子を、宿主細胞に導入することにより形質転換細胞を得て、その後、(3)被験遺伝子と、上記蛍光蛋白質とは異なる種類の蛍光蛋白質の遺伝子とを融合した融合被験遺伝子を、上記形質転換細胞に導入して細胞分裂可視化細胞を得て、次いで、(4)上記蛍光蛋白質を発現させ、該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時において上記蛍光蛋白質由来の蛍光を経時的に検出することを特徴とする蛍光の検出方法。
  12. (1)被験物質の存在下、請求項1乃至7のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞を培養し、次いで、(2)該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記蛍光蛋白質を発現させて生じた蛍光を検出することにより、細胞分裂の状態の観察を行うことを特徴とする細胞分裂への影響の評価方法。
  13. (1)請求項2乃至7のいずれかに記載の細胞分裂可視化細胞を培養し、次いで、(2)該細胞分裂可視化細胞の細胞分裂時に、上記融合被験遺伝子由来の上記蛍光蛋白質を発現させて生じた蛍光を検出することにより細胞分裂の状態の観察を行うことを特徴とする細胞分裂への影響の評価方法。
  14. 上記細胞分裂が有糸分裂及び/又は減数分裂である請求項12又は13記載の細胞分裂への影響の評価方法。
  15. 上記細胞分裂の状態の観察は、上記細胞分裂可視化細胞を蛍光顕微鏡下又はレーザー顕微鏡下で培養すると共に、細胞分裂時に上記細胞分裂可視化細胞の経時的撮影を行って画像を取得することによる動的可視化によって行う請求項12乃至14のいずれかに記載の細胞分裂への影響の評価方法。
  16. 請求項12記載の細胞分裂への影響の評価方法を行うことにより、細胞分裂に影響を及ぼす被験物質を選択することを特徴とするスクリーニング方法。
  17. 請求項13記載の細胞分裂への影響の評価方法を行うことにより、細胞分裂に影響を及ぼす遺伝子を選択することを特徴とするスクリーニング方法。
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