[I]以下に、本発明にかかる所定部位発光量測定方法および所定部位発光量測定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
まず、本発明を実現する所定部位発光量測定装置100の構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、所定部位発光量測定装置100の全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、所定部位発光量測定装置100は、サンプル102と、サンプル102を収納した容器103(具体的にはシャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、ゲル支持体、微粒子担体など)と、容器103を配置するステージ104と、発光画像撮像ユニット106と、蛍光画像撮像ユニット108と、情報通信端末110と、で構成されている。また、所定部位発光量測定装置100において、発光画像撮像ユニット106に含まれる対物レンズ106aと蛍光画像撮像ユニット108に含まれる対物レンズ108aとは、図示の如く、サンプル102、容器103およびステージ104を挟んで上下の対向する位置に配置される。なお、図14に示すように、発光画像撮像ユニット106および蛍光画像撮像ユニット108の配置を入れ替えてもよい。蛍光よりも微弱な発光を測定するための発光画像撮像ユニット106を下側に配置することにより、カバー開閉によるサンプル上方からの外乱光を完全に遮断できて発光画像のS/N比を増すことができる。発光画像撮像ユニット106と別体の蛍光画像撮像ユニット108は、レーザー走査式の光学系であってもよい。
再び図1に戻り、サンプル102は、発光タンパク質をサンプル102内の所定の部位(例えば、ミトコンドリアや細胞質、核など)に移行させる移行塩基配列および当該発光タンパク質を発現する発光関連遺伝子に加えてさらに蛍光タンパク質を発現する蛍光関連遺伝子を融合した融合遺伝子を導入したものである。また、サンプル102は、生きたものであり、例えば、試料、組織、細胞、個体などである。なお、サンプル102は、具体的には、当該融合遺伝子が入ったプラスミドベクターを導入したものでもよい。
発光画像撮像ユニット106は、具体的には正立型の発光顕微鏡であり、サンプル102の発光画像を撮像する。発光画像撮像ユニット106は、図示の如く、対物レンズ106aと、ダイクロイックミラー106bと、CCDカメラ106cと、結像レンズ106fと、で構成されている。対物レンズ106aは、具体的には、(開口数/倍率)2の値が0.01以上のものである。ダイクロイックミラー106bは、サンプル102から発せられた発光を色別に分離し、2色の発光を用いて発光量を色別に測定する場合に用いる。CCDカメラ106cは、対物レンズ106a、ダイクロイックミラー106bおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影されたサンプル102の発光画像および明視野画像を撮る。また、CCDカメラ106cは、情報通信端末110と有線または無線で通信可能に接続される。ここで、サンプル102が撮像範囲中に複数存在する場合、CCDカメラ106cは、当該撮像範囲中に含まれる複数のサンプル102の発光画像および明視野画像を撮像してもよい。結像レンズ106fは、対物レンズ106aおよびダイクロイックミラー106bを介して当該結像レンズ106fに入射した像(具体的にはサンプル102を含む像)を結像する。なお、図1では、ダイクロイックミラー106bで分離した2つの発光に対応する発光画像を2台のCCDカメラ106cで別々に撮像する場合の一例を示しており、1つの発光を用いる場合には、発光画像撮像ユニット106は、対物レンズ106a、1台のCCDカメラ106cおよび結像レンズ106fで構成されてもよい。
ここで、2色の発光を用いて発光量を色別に測定する場合、発光画像撮像ユニット106は、図2に示すように、対物レンズ106aと、CCDカメラ106cと、スプリットイメージユニット106dと、結像レンズ106fと、で構成されてもよい。そして、CCDカメラ106cは、スプリットイメージユニット106dおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影されたサンプル102の発光画像(スプリットイメージ)および明視野像を撮像してもよい。スプリットイメージユニット106dは、サンプル102から発せられた発光を色別に分離し、ダイクロイックミラー106bと同様、2色の発光を用いて発光量を色別に測定する場合に用いる。
また、複数色の発光を用いて発光量を色別に測定する場合(つまり、多色の発光を用いる場合)、発光画像撮像ユニット106は、図3に示すように、対物レンズ106aと、CCDカメラ106cと、フィルターホイール106eと、結像レンズ106fと、で構成されてもよい。そして、CCDカメラ106cは、フィルターホイール106eおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影されたサンプル102の発光画像および明視野画像を撮像してもよい。フィルターホイール106eは、サンプル102から発せられた発光をフィルター交換によって色別に分離し、複数色の発光を用いて発光量を色別に測定する場合に用いる。
再び図1に戻り、蛍光画像撮像ユニット108は、具体的には倒立型の蛍光顕微鏡であり、サンプル102の蛍光画像を撮像する。蛍光画像撮像ユニット108は、図示の如く、対物レンズ108aと、ダイクロイックミラー108bと、光源108cと、CCDカメラ108dと、結像レンズ108eと、シャッター108fと、で構成されている。対物レンズ108aは、具体的には、(開口数/倍率)2の値が0.01以上のものである。ダイクロイックミラー108bは、サンプル102からの蛍光を透過するとともに、光源108cから照射された励起光がサンプル102へ照射されるように励起光の方向を変える。光源108cは、励起光を照射するためのものであり、具体的には、キセノンランプ、ハロゲン等のランプ、レーザー、LEDなどである。CCDカメラ108dは、対物レンズ108a、ダイクロイックミラー108bおよび結像レンズ108eを介して当該CCDカメラ108dのチップ面に投影されたサンプル102の蛍光画像および明視野画像を撮る。また、CCDカメラ108dは、情報通信端末110と有線または無線で通信可能に接続される。ここで、サンプル102が撮像範囲中に複数存在する場合、CCDカメラ108dは、当該撮像範囲中に含まれる複数のサンプル102の蛍光画像および明視野画像を撮像してもよい。結像レンズ108eは、対物レンズ108aおよびダイクロイックミラー108bを介して当該結像レンズ108eに入射した像(具体的にはサンプル102を含む像)を結像する。シャッター108fは、光源108cから照射された励起光を切り替える。換言すると、シャッター108fは、光源108cから照射された励起光を透過したり遮断したりすることで、サンプル102への励起光の照射を切り替える。
ここで、発光画像撮像ユニット106および蛍光画像撮像ユニット108は、具体的には、それぞれ倒立型の発光顕微鏡および倒立型の蛍光顕微鏡でもよく、ステージ104は回転するものでもよい。
また、図1および図14に示した所定部位発光量測定装置100は発光画像撮像ユニット106と蛍光画像撮像ユニット108とを別々に備えた構成であったが、所定部位発光量測定装置100は、図15に示すように、蛍光画像撮像ユニット108のみを備えた構成であってもよい。換言すると、所定部位発光量測定装置100は、蛍光画像撮像ユニット108のみで蛍光観察と発光観察の両方を行う構成であってもよい。なお、図15に示す所定部位発光量測定装置100で蛍光・発光観察を行う場合、所定部位発光量測定装置100は、発光画像を撮像する(発光検出を行う)際に、シャッター108fの切り替えを自動又は手動で行うと共にダイクロイックミラー108bを光路(図15中の点線)から外れた位置まで自動又は手動で移動することが可能な構成であることが好ましい。これにより、発光画像中のノイズを減らすことができる。また、図15に示す所定部位発光量測定装置100の場合、対物レンズ108aは、具体的には、“(開口数/倍率)2の値が0.01以上”という条件を満たすものであることが好ましい。
また、所定部位発光量測定装置100は、図16に示すように、励起光の照射をサンプル102の上方から行い且つ蛍光・発光観察をサンプル102の下方から行う構成であってもよい。ここで、図16に示す所定部位発光量測定装置100の構成のうち、これまで説明してない構成のみを説明する。励起用分光フィルター108gは、光源108cから発せられた励起光を、波長領域の異なる複数の励起光に分離する。光ファイバー108hは、励起用分光フィルター108gで分離した各励起光をサンプル102へ導く。コンデンサーレンズ108iは、サンプル102を均等に照明するために用いるレンズであり、光ファイバー108hにより導かれた各励起光を集光する。発光・蛍光分光用フィルター108jは、サンプル102から放出された蛍光や発光を、強度や波長などの違いで分離する。なお、図16に示す所定部位発光量測定装置100の場合、対物レンズ108aは、具体的には、“(開口数/倍率)2の値が0.01以上”という条件を満たすものであることが好ましい。
再び図1に戻り、情報通信端末110は、具体的にはパーソナルコンピュータである。そして、情報通信端末110は、図4に示すように、大別して、制御部112と、システムの時刻を計時するクロック発生部114と、記憶部116と、通信インターフェース部118と、入出力インターフェース部120と、入力部122と、出力部124と、で構成されており、これら各部はバスを介して接続されている。
記憶部116は、ストレージ手段であり、具体的には、RAMやROM等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。そして、記憶部116は制御部112の各部の処理により得られたデータなどを記憶する。
通信インターフェース部118は、情報通信端末110と、CCDカメラ106cおよびCCDカメラ108dと、の間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部118は他の端末と有線または無線の通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
入出力インターフェース部120は、入力部122や出力部124に接続する。ここで、出力部124には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下で、出力部124をモニタとして記載する場合がある。)。また、入力部122には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
制御部112は、OS(Operating System)等の制御プログラムや各種の処理手順等を規定したプログラムや所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行する。出力部1240としてのモニタにおける画像再生は、制御部1120が市販等の画像処理用ソフトウェアのプログラムと連携することにより、内部メモリに記憶された画像データを読み出して所望の再生方法でモニタ上に再生するようになっている。そして、制御部102は、大別して、蛍光画像撮像指示部112aと、蛍光画像取得部112bと、判定部112cと、発光画像撮像指示部112dと、発光画像取得部112eと、選定部112fと、発光量測定部112gと、関連物質定量部112hと、で構成されている。
蛍光画像撮像指示部112aは、通信インターフェース部116を介して、CCDカメラ108dへ蛍光画像および明視野画像の撮像を指示する。蛍光画像取得部112bは、CCDカメラ108dで撮像した蛍光画像および明視野画像を、通信インターフェース部116を介して取得する。
判定部112cは、蛍光画像取得部112bで取得した蛍光画像および明視野画像に基づいて、サンプル102に融合遺伝子が導入されたか否かを判定したり、所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かを判定したりする。ここで、蛍光画像取得部112bで取得した蛍光画像および明視野画像に複数のサンプル102が存在する場合、判定部112cは、蛍光画像および明視野画像に基づいて、サンプル102に融合遺伝子が導入されたか否かをサンプル102ごとに判定したり、所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かをサンプル102ごとに判定したりしてもよい。
判定発光画像撮像指示部112dは、通信インターフェース部116を介して、CCDカメラ106cへ発光画像および明視野画像の撮像を指示する。発光画像取得部112eは、CCDカメラ106cで撮像した発光画像および明視野画像を、通信インターフェース部116を介して取得する。
選定部112fは、蛍光画像取得部112bで取得した蛍光画像および明視野画像ならびに発光画像撮像取得部112eで取得した発光画像および明視野画像を重ね合わせることで、判定部112cの判定結果が局在すると判定されたサンプル102の中から測定対象のサンプル102を選定する。
発光量計測部112gは、判定部112cの判定結果が局在すると判定されたサンプル102や選定部112fで選定したサンプル102からの発光量を発光画像に基づいて測定する。関連物質定量部112gは、発光量計測部112gで測定した発光量に基づいて、当該発光量の増減に対して直接的または間接的に関連する物質の量を定量する。例えば、発光タンパク質がルシフェラーゼの場合、関連物質定量部112gは、例えば当該ルシフェラーゼの発光量の増減に対して直接的に関連する物質であるATPの量を定量する。つまり、関連物質定量部112gは、発光量計測部112gで測定した発光量に基づいてATPを定量するATP定量手段として用いることができる。
以上の構成において、所定部位発光量測定装置100で行われる処理の一例を、図5を参照して説明する。なお、以下では、複数のサンプル102に同じ融合遺伝子を導入して、複数のサンプル102のうち特定のサンプル102における所定の部位での発光量を経時的に測定する場合の処理の一例について説明する。
まず、情報通信端末110は、蛍光画像撮像指示部110aの処理で、通信インターフェース部116を介して、CCDカメラ108dへ蛍光画像および明視野画像の撮像を指示する(ステップSA−1)。つぎに、CCDカメラ108dは、撮像範囲中に存在する複数のサンプル102の蛍光画像および明視野画像を撮像し、(ステップSA−2:図6参照)、情報通信端末110へ送信する(ステップSA−3)。なお、励起光は蛍光画像を撮像する時のみサンプル102へ照射する。つぎに、情報通信端末110は、蛍光画像取得部112bの処理で、CCDカメラ108dで撮像した蛍光画像および明視野画像を、通信インターフェース部116を介して取得し、記憶部116の所定の記憶領域に記憶する(ステップSA−4)。
つぎに、情報通信端末110は、判定部112cの処理で、蛍光画像と明視野画像とを比較することで、融合遺伝子が導入されているか否かをサンプル102ごとに判定し、導入されていると判定されたサンプル102に対してさらに当該サンプル102の所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かを判定する(ステップSA−5)。これにより、図6に示すように、例えば、複数のサンプル102(細胞1〜細胞5)の中から、遺伝子が導入され、且つ所定の部位に発光タンパク質が局在しているもの(細胞1)を確認することができる。
つぎに、遺伝子が導入され、且つ所定の部位に発光タンパク質が局在しているサンプル102が存在した場合(ステップSA−6:Yes)、情報通信端末110は、発光画像撮像指示部112dの処理で、通信インターフェース部116を介して、CCDカメラ106cに対して発光画像および明視野画像の撮像を指示する(ステップSA−7)。つぎに、CCDカメラ106cは、撮像範囲中に存在する複数のサンプル102の発光画像および明視野画像を撮像し(ステップSA−8:図7参照)、情報通信端末110へ送信する(ステップSA−9)。なお、図7に示した発光画像では、細胞2の発光が最も強い場合を一例として示している。
つぎに、情報通信端末110は、発光画像取得部112eの処理で、CCDカメラ106cで撮像した発光画像および明視野画像を、通信インターフェース部116を介して取得すると共に、制御部112の処理で、クロック発生部114から時刻(後述する図8におけるT1に対応)を取得し、発光画像および明視野画像と時刻とを、既に記憶されている蛍光画像および明視野画像とさらに対応付けて記憶部116の所定の記憶領域に記憶する(ステップSA−10)。
つぎに、情報通信端末110は、選定部112fの処理で、明視野画像、蛍光画像および発光画像を重ね合わせることで、判定部112cの判定結果が局在すると判定されたサンプルの中から測定対象のサンプルを選定(特定)する(ステップSA−11)。なお、図6に示した例では、遺伝子が導入され、且つ所定の部位に発光タンパク質が局在している細胞は細胞1のみであるので、ステップSA−11では、図8に示すように、自動的に細胞1が特定される。
つぎに、情報通信端末110は、発光量計測部112gの処理で、選定したサンプル102に対応する発光量(発光強度)を発光画像に基づいて測定し、選定したサンプル102(例えば図8における細胞1)を識別する識別情報と当該発光量とを、既に記憶されている蛍光画像、発光画像、明視野画像および時刻とさらに対応付けて記憶部116の所定の記憶領域に記憶する(ステップSA−12)。
そして、情報通信端末110は、制御部112の処理で、上述したステップSA−1〜ステップSA−12を、例えば予め設定した時間間隔で所定の回数繰り返し実行する(SA−13)ことで、図9に示すように、選定したサンプル102(例えば、図6、図7および図8に示す細胞1)内の所定の部位における発光量の変動を、経時的(例えば、図8および図9に示す時刻T1〜T4ごと)に得る。
以上、詳細に説明したように、所定部位発光量測定装置100によれば、サンプル102に導入する融合遺伝子は、移行塩基配列および発光関連遺伝子に加えてさらに蛍光タンパク質を発現する蛍光関連遺伝子を融合したものであり、当該融合遺伝子が導入されたサンプル102の蛍光画像を撮り、撮像した蛍光画像に基づいて所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かを判定し、判定結果が局在すると判定された場合、サンプル102からの発光量を測定する。これにより、生きたサンプル102内の所定の部位からの発光量を測定するにあたって、当該サンプル102と同一のものに対して、所定の部位に発光たんぱく質が局在しているか否かを確認することができる。また、融合遺伝子が導入された生きたサンプルに対し発光タンパク質の局在を確認すると共に、当該サンプルからの発光量を測定するので、サンプルからの発光量は所定の部位からの発光量に明確に対応しており、測定した発光量が所定の部位からのものであることの信頼性を確保することができる。なお、サンプル102が例えば細胞の場合、発光成分を取り込んでいない細胞をカウントせずに、正確な統計解析が可能である。また、所定部位発光量測定装置100は、例えば、各種反応(例えば薬物刺激や光照射など)の検査や治療などに好適に用いることができる。
また、所定部位発光量測定装置100によれば、融合遺伝子が導入された生きたサンプル102が撮像範囲中に複数存在する場合、複数のサンプル102の蛍光画像を撮り、蛍光画像に基づいて所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かをサンプル102ごとに判定し、複数のサンプル102の発光画像を撮り、撮像した蛍光画像および撮像した発光画像を重ね合わせることで、判定結果が局在すると判定されたサンプル102の中から測定対象のサンプル102を選定し、選定したサンプル102からの発光量を測定する。これにより、複数のサンプル102の中から個々のサンプル102を識別し、単一のサンプル102内の所定の部位からの発光量を測定することができる。また、蛍光および発光を画像で取得することで、測定対象のサンプル102と同一のサンプル102における発光タンパク質の局在と、当該サンプル102から発せられる発光強度と、を得ることができる。そのため、遺伝子の導入効率や細胞周期による個々の細胞の生理的な状態の違いの影響を排除した解析を行うことができる。ここで、本実施の形態の所定部位発光量測定装置100では、図5に示すように、一例として、蛍光画像を撮像した後、発光タンパク質が所定の部位に局在しているか否かの判定を行い、そして、局在すると判定された場合に発光画像を撮像する、という処理を行なっているが、発光画像の撮像は、蛍光画像の撮像とともに行なってもよい。換言すると、所定部位発光量測定装置100は、蛍光画像および発光画像を撮像した後、局在の判定を行なってもよい。具体的には、所定部位発光量測定装置100は、融合遺伝子が導入された生きたサンプル102が撮像範囲中に複数存在する場合、複数のサンプル102について、蛍光画像および発光画像を撮り、蛍光画像に基づいて所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かをサンプル102ごとに判定し、撮像した蛍光画像および撮像した発光画像を重ね合わせることで、判定結果が局在すると判定されたサンプル102の中から測定対象のサンプル102を選定し、選定したサンプル102からの発光量を測定してもよい。
さらに、所定部位発光量測定装置100によれば、蛍光画像の撮像、局在の判定、発光画像の撮像、測定対象のサンプル102の選定、発光量の測定を繰り返し実行することで、サンプル102内の所定の部位からの発光量を経時的に得る。これにより、例えば特定のサンプル102内の所定の部位における発光量の変動を経時的に測定することができる。
ここで、所定部位発光量測定装置100において、サンプルに導入される融合遺伝子は、複数存在し、移行塩基配列で移行させる発光タンパク質の移行先の部位と、発光タンパク質から発せられる発光の発光色と、蛍光タンパク質から発せられる蛍光の蛍光色との組み合わせがそれぞれ異なるように予め作製されたものでもよい。そして、この場合、所定部位発光量測定装置100は、サンプル102からの発光を発光色別に分離し、撮像した蛍光画像に基づいて所定の部位に発光タンパク質が局在するか否かを蛍光色ごとに判定し、判定結果が局在すると判定された場合、分離した複数の発光のうち当該局在すると判定された部位からの発光を特定し、特定した発光の発光量を測定してもよい。これにより、例えば、1つのサンプル102内の複数の部位からの発光量を同時に測定することができたり、サンプル102内の複数の部位からの発光量をサンプル102ごとに同時に測定することができたりする。
具体的には、サンプル102が細胞である場合、細胞に導入される融合遺伝子を2つ作製し、1つは、ミトコンドリア移行シグナルで移行させる緑色ルシフェラーゼの移行先の部位であるミトコンドリアと、緑色ルシフェラーゼから発せられる発光の発光色(緑色)と、GFPから発せられる蛍光の蛍光色(緑色)と、の組み合わせで作製され、残りの1つは、細胞質で発現させる赤色ルシフェラーゼから発せられる発光の発光色(赤色)と、CFPから発せられる蛍光の蛍光色(シアン)と、の組み合わせで作製されてもよい。そして、この場合、所定部位発光量測定装置100は、細胞からの発光を発光色別(緑色、赤色)に分離し、撮像した蛍光画像に基づいて、ミトコンドリアに緑色ルシフェラーゼが局在するか否かをGFPから発せられる蛍光色(緑色)で判定し、細胞質に赤色ルシフェラーゼが局在するか否かをCFPから発せられる蛍光色(シアン)で判定し、判定結果が局在すると判定された場合、分離した2つの発光(緑色、赤色)のうち当該局在すると判定された部位からの発光を特定し、特定した発光の発光量を測定してもよい。換言すると、細胞内のミトコンドリアに対しては、移行塩基配列としてミトコンドリア移行シグナル、発光タンパク質として緑色ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質としてGFPを選択し、一方、当該細胞内の細胞質に対しては、移行塩基配列は用いず、発光タンパク質として赤色ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質としてCFPを選択し、ミトコンドリアと細胞質での発光量(さらにはATP量など)の変動を発光強度の変化として個別に且つ同時に測定してもよい。
また、所定部位発光量測定装置100において、測定した発光量に基づいて、当該発光量の増減に対して直接的または間接的に関連する物質の量を定量してもよい。具体的には、発光タンパク質がルシフェラーゼの場合、例えば当該ルシフェラーゼの発光量の増減に対して直接的に関連する物質であるATPの量を定量してもよい。これにより、特定のサンプル102内の所定の部位における関連物質(例えばATPなど)の量の変動を例えば経時的に測定することができる。
また、他の実施の形態として、例えば、細胞周期ごとに発現量及び/又は局在部位が変化するような蛍光タンパク質および発光タンパク質を含む細胞を作製し、当該細胞から発せられる蛍光および発光を経時的に測定することで、細胞周期を、蛍光タンパク質の発現量及び/又は局在部位の変化で確認するとともに細胞の発光量の変動を経時的に測定してもよい。
また、複数の神経細胞を対象とした場合、神経細胞に導入する融合遺伝子として、発光タンパク質を発現する発光関連遺伝子、当該発光タンパク質を別の神経細胞へ移行させる移行塩基配列および蛍光タンパク質を発現する蛍光関連遺伝子を融合したものを作製し、当該融合遺伝子が導入された神経細胞から別の神経細胞へ発光タンパク質が移行する過程を、神経細胞から発せられる蛍光色で確認し、当該移行する過程における神経細胞における発光量の変動を経時的に測定してもよい。
(付記)蛍光タンパク質を発現する蛍光関連遺伝子および発光タンパク質を発現する発光関連遺伝子を融合した融合遺伝子を導入したサンプルから発せられる蛍光の蛍光強度を測定する蛍光測定ステップと、
前記蛍光測定ステップで測定した蛍光強度に基づいてサンプルの位置を特定する位置特定ステップと、
当該サンプルから発せられる発光の発光強度を測定する発光測定ステップと、
前記発光測定ステップで測定した発光強度に基づいて発光量を定量する発光量定量ステップと、
を含むことを特徴とする蛍光・発光測定方法。
[II]以下に、本発明にかかる発現量測定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
まず、本発明を実施するための装置である発現量測定装置1000の構成について、図20〜図22を参照して説明する。図20は、発現量測定装置1000の全体構成の一例を示す図である。
図20に示すように、発現量測定装置1000は、細胞1020と、細胞1020を収納した容器1030(具体的にはシャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、ゲル支持体、微粒子担体など)と、容器1030を配置するステージ1040と、発光画像撮像ユニット1060と、蛍光画像撮像ユニット1080と、情報通信端末1100と、で構成されている。また、発現量測定装置1000において、発光画像撮像ユニット1060に含まれる対物レンズ1060aと蛍光画像撮像ユニット1080に含まれる対物レンズ1080aとは、図示の如く、細胞1020、容器1030およびステージ1040を挟んで上下の対向する位置に配置される。なお、発光画像撮像ユニット1060および蛍光画像撮像ユニット1080の配置を入れ替えてもよい。
細胞1020は、発光タンパク質(具体的にはルシフェラーゼ)を発現する発光関連遺伝子、蛍光タンパク質(具体的にはGFP)を発現する蛍光関連遺伝子および解析対象の遺伝子に加えてさらに、細胞周期における所定のステージで発現する細胞周期関連遺伝子を導入した生きたものである。ここで、本明細書において発光とは、生物発光および化学発光を含む概念である。
なお、細胞1020は、発光関連遺伝子と蛍光関連遺伝子と解析対象の遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを融合した融合遺伝子を導入した生きたものでもよい。具体的には、細胞1020は、発光関連遺伝子と蛍光関連遺伝子と解析対象の遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを融合したベクターを導入した生きたものでもよい。また、細胞1020に対し発光関連遺伝子または蛍光関連遺伝子と組み合わせて導入する解析対象の遺伝子の数は複数でもよい。換言すると、細胞1020に対し解析対象の遺伝子と発光関連遺伝子または蛍光関連遺伝子との組を複数導入してもよい。これにより、細胞周期のステージを同定すると共に、細胞1020に導入した複数の解析対象の遺伝子の発現量を一緒に測定することができる。
ここで、蛍光で細胞周期のステージを同定し、発光で解析対象の遺伝子の発現量を測定する場合、細胞1020は、蛍光関連遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを関連付けて導入すると共に、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを関連付けて導入した生きたものでもよい。具体的には、細胞1020は、蛍光関連遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを融合したベクター(蛍光関連遺伝子導入ベクター)を導入すると共に、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合したベクター(発光関連遺伝子導入ベクター)を導入した生きたものでもよい。また、細胞周期関連遺伝子プロモーターを導入したベクターを細胞1020に導入してもよい。具体的には、細胞周期マーカーとして知られているCyclin B1プロモーターを導入したGFPセンサー(アマシャムバイオサイエンス社製)を細胞1020に導入してもよい。また、HaloTag(登録商標)ベクター(プロメガ社製)を細胞1020に導入し、HaloTag(登録商標)リガンド(プロメガ社製)を細胞1020に添加して、細胞1020を蛍光標識してもよい。また、解析対象の遺伝子プロモーターを導入したルシフェラーゼベクターを細胞1020に導入し、発現させてもよい。また、HaloTag(登録商標)ベクター(プロメガ社製)を細胞1020に導入し、HaloTag(登録商標)リガンド(プロメガ社製)を細胞1020に添加して、細胞1020をルシフェラーゼ標識してもよい。
また、蛍光で細胞周期のステージを同定し、発光で解析対象の遺伝子の発現量を測定する場合、細胞1020は、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを導入し、細胞1020の所定の部位(具体的には、核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した生きたものでもよい。具体的には、細胞1020は、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合した融合遺伝子(具体的には、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合したベクター)を導入し、細胞1020の所定の部位(具体的には、核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した生きたものでもよい。ここで、細胞1020の核を、生細胞核染色試薬“DRAQ5”(Biostatus社製)を用いて染色してもよい。また、細胞1020の細胞膜を、“PKH LinkerKits”(SIGMA社製)を用いて染色してもよい(ただし、この場合、その形状から細胞周期のステージが同定可能な細胞(具体的にはPC12など)を用いる。)。
また、発光で細胞周期のステージを同定し、蛍光で解析対象の遺伝子の発現量を測定する場合、細胞1020は、発光関連遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを関連付けて導入すると共に、蛍光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを関連付けて導入した生きたものでもよい。具体的には、細胞1020は、発光関連遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを融合したベクター(発光関連遺伝子導入ベクター)を導入すると共に、蛍光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合したベクター(蛍光関連遺伝子導入ベクター)を導入した生きたものでもよい。また、細胞周期関連遺伝子プロモーターを導入したベクターを細胞1020に導入してもよい。具体的には、Cyclin B1プロモーターを導入したルシフェラーゼベクターを作製し、細胞1020に導入してもよい。また、HaloTag(登録商標)ベクター(プロメガ社製)を細胞1020に導入し、HaloTag(登録商標)リガンド(プロメガ社製)を細胞1020に添加して、細胞1020をルシフェラーゼ標識してもよい。また、解析対象の遺伝子プロモーターを導入した蛍光タンパク質ベクターを細胞1020に導入し、発現させてもよい。また、HaloTag(登録商標)ベクター(プロメガ社製)を細胞1020に導入し、HaloTag(登録商標)リガンド(プロメガ社製)を細胞1020に添加して、細胞1020を蛍光標識してもよい。また、β−lactamase遺伝子をレポーター遺伝子として細胞1020に導入してもよい。
なお、細胞周期関連遺伝子としては、サイクリン(具体的には、Cyclin A1、Cyclin A2、Cyclin B1、Cyclin B2、Cyclin B3、Cyclin C、Cyclin D1、Cyclin D2、Cyclin D3、Cyclin E1、Cyclin E2、Cyclin F、Cyclin G1、Cyclin G2、Cyclin H、Cyclin I、Cyclin T1、Cyclin T2a、Cyclin T2bなど)、サイクリンキナーゼ(具体的には、CDK2、CDK28など)などを適用してもよい。また、解析対象の遺伝子としては、上述した細胞周期関連遺伝子、サーカディアンリズム調節遺伝子(具体的には、period遺伝子、Kai遺伝子、timeless遺伝子、per遺伝子、clock遺伝子など)、その他細胞周期との関連性が不明な遺伝子などを適用してもよい。
再び図20の説明に戻り、発光画像撮像ユニット1060は、具体的には正立型の発光顕微鏡であり、細胞1020の発光画像を撮像する。発光画像撮像ユニット1060は、図示の如く、対物レンズ1060aと、ダイクロイックミラー1060bと、CCDカメラ1060cと、で構成されている。対物レンズ1060aは、具体的には、(開口数/倍率)2の値が0.01以上のものである。ダイクロイックミラー1060bは、細胞1020から発せられた発光を色別に分離し、2色の発光を用いて発光強度を色別に測定する場合に用いる。CCDカメラ1060cは、対物レンズ1060aを介して当該CCDカメラ1060cのチップ面に投影された細胞1020の発光画像や明視野画像を撮る。また、CCDカメラ1060cは、情報通信端末1100と有線または無線で通信可能に接続される。ここで、細胞1020が撮像範囲中に複数存在する場合、CCDカメラ1060cは、撮像範囲中に含まれる複数の細胞1020の発光画像や明視野画像を撮像してもよい。なお、図20では、ダイクロイックミラー1060bで分離した2つの発光に対応する発光画像を2台のCCDカメラ1060cで別々に撮像する場合の一例を示しており、1つの発光を用いる場合には、発光画像撮像ユニット1060は、対物レンズ1060aおよび1台のCCDカメラ1060cで構成されてもよい。
ここで、2色の発光を用いて発光強度を色別に測定する場合、発光画像撮像ユニット1060は、図21に示すように、対物レンズ1060aと、CCDカメラ1060cと、スプリットイメージユニット1060dと、で構成されてもよい。そして、CCDカメラ1060cは、スプリットイメージユニット1060dを介して当該CCDカメラ1060cのチップ面に投影されたサンプル1020の発光画像(スプリットイメージ)や明視野像を撮像してもよい。スプリットイメージユニット1060dは、細胞1020から発せられた発光を色別に分離し、ダイクロイックミラー1060bと同様、2色の発光を用いて発光強度を色別に測定する場合に用いる。
また、複数色の発光を用いて発光強度を色別に測定する場合(つまり、多色の発光を用いる場合)、発光画像撮像ユニット1060は、図22に示すように、対物レンズ1060aと、CCDカメラ1060cと、フィルターホイール1060eと、で構成されてもよい。そして、CCDカメラ1060cは、フィルターホイール1060eを介して当該CCDカメラ1060cのチップ面に投影された細胞102の発光画像や明視野画像を撮像してもよい。フィルターホイール1060eは、細胞1020から発せられた発光をフィルター交換によって色別に分離し、複数色の発光を用いて発光強度を色別に測定する場合に用いる。
再び図20に戻り、蛍光画像撮像ユニット1080は、具体的には倒立型の蛍光顕微鏡であり、細胞1020の蛍光画像を撮像する。蛍光画像撮像ユニット1080は、図示の如く、対物レンズ1080aと、ダイクロイックミラー1080bと、キセノンランプ1080cと、CCDカメラ1080dと、で構成されている。CCDカメラ1080dは、対物レンズ1080aを介して当該CCDカメラ1080dのチップ面に投影された細胞1020の蛍光画像や明視野画像を撮る。また、CCDカメラ1080dは、情報通信端末1100と有線または無線で通信可能に接続される。ここで、細胞1020が撮像範囲中に複数存在する場合、CCDカメラ1080dは、撮像範囲中に含まれる複数の細胞1020の蛍光画像や明視野画像を撮像してもよい。ダイクロイックミラー1080bは、細胞102からの蛍光を透過するとともに、キセノンランプ1080cから照射された励起光が細胞1020へ照射されるように励起光の方向を変える。キセノンランプ1080cは励起光を照射する。
ここで、発光画像撮像ユニット1060および蛍光画像撮像ユニット1080は、具体的には、それぞれ倒立型の発光顕微鏡および倒立型の蛍光顕微鏡でもよく、ステージ1040は回転するものでもよい。
情報通信端末1100は、具体的にはパーソナルコンピュータである。そして、情報通信端末1100は、図23に示すように、大別して、制御部1120と、システムの時刻を計時するクロック発生部1140と、記憶部1160と、通信インターフェース部1180と、入出力インターフェース部1200と、入力部1220と、出力部1240と、で構成されており、これら各部はバスを介して接続されている。
記憶部1160は、ストレージ手段であり、具体的には、RAMやROM等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。そして、記憶部1160は制御部1120の各部の処理により得られたデータなどを記憶する。
通信インターフェース部1180は、情報通信端末1100と、CCDカメラ1060cおよびCCDカメラ1080dと、の間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部1180は他の端末と有線または無線の通信回線を介してデータを通信する機能を有する。
入出力インターフェース部1200は、入力部1220や出力部1240に接続する。ここで、出力部1240には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下で、出力部1240をモニタとして記載する場合がある。)。また、入力部1220には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
制御部1120は、OS(Operating System)等の制御プログラムや各種の処理手順等を規定したプログラムや所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行する。出力部1240としてのモニタにおける画像再生は、制御部1120が市販等の画像処理用ソフトウェアのプログラムと連携することにより、内部メモリに記憶された画像データを読み出して所望の再生方法でモニタ上に再生するようになっている。そして、制御部1020は、大別して、蛍光画像撮像指示部1120aと、発光画像撮像指示部1120bと、蛍光画像取得部1120cと、発光画像取得部1120dと、判定部1120eと、蛍光測定部1120fと、発光測定部1120gと、ステージ同定部1120hと、選択部1120i、発現量測定部1120jと、で構成されている。
蛍光画像撮像指示部1120aは、通信インターフェース部1160を介して、CCDカメラ1080dへ蛍光画像や明視野画像の撮像を指示する。発光画像撮像指示部1120bは、通信インターフェース部1160を介して、CCDカメラ1060cへ発光画像や明視野画像の撮像を指示する。蛍光画像取得部1120cは、CCDカメラ1080dで撮像した蛍光画像や明視野画像を、通信インターフェース部1160を介して取得する。発光画像取得部1120dは、CCDカメラ1060cで撮像した発光画像や明視野画像を、通信インターフェース部1160を介して取得する。
判定部1120eは、蛍光画像および/または発光画像に基づいて、各遺伝子が導入されているか否かを細胞1020ごとに判定する。蛍光測定部1120fは、CCDカメラ1080dで撮像した蛍光画像に基づいて、各細胞1020から発せられた蛍光の蛍光強度をそれぞれ測定する。発光測定部1120gは、CCDカメラ1060cで撮像した発光画像に基づいて、各細胞1020から発せられた発光強度をそれぞれ測定する。
ステージ同定部1120hは、蛍光測定部1120fで測定した蛍光強度または発光測定部1120gで測定した発光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を細胞1020ごとに判定することで、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定する。なお、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを導入し、その所定の部位(具体的には核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した生きた細胞1020を対象とした場合、CCDカメラ1080dで撮像した蛍光画像に基づいて細胞1020の形状が変化したか否かを判定することで、細胞周期のステージを同定してもよい。選択部1120iは、ステージ同定部1120hでステージが同定された細胞1020の中から測定対象の細胞1020を選択する。
発現量測定部1120jは、選択部1120iで選択した細胞1020を対象として、ステージ同定部1120hで発光強度を用いる場合には蛍光測定部1120fで測定した蛍光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定し、ステージ同定部1120hで蛍光強度または蛍光画像を用いる場合には発光測定部1120gで測定した発光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定する。なお、発現量測定部1120jは、複数の細胞1020または選択部1120iで選択した細胞1020を対象として、蛍光測定部1120fで測定した蛍光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定すると共に、CCDカメラ1080dで撮像した蛍光画像に基づいて解析対象の遺伝子の細胞1020内における発現部位を同定してもよい。
以上の構成において、発現量測定装置1000で行われる処理の一例を、図24を参照して説明する。なお、以下では、発光関連遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを融合したベクターおよび蛍光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合したベクターを複数の細胞1020に導入し、導入した複数の細胞1020のうち特定の細胞1020を対象として、発光強度で細胞周期のステージを同定しながら、蛍光強度で解析対象の遺伝子の発現量を経時的に測定すると共に蛍光画像で解析対象の遺伝子の細胞1020内における発現部位を経時的に同定する場合の処理の一例について説明する。
まず、情報通信端末1100は、蛍光画像撮像指示部1100aの処理で通信インターフェース部1160を介してCCDカメラ1080dへ蛍光画像の撮像を指示し、発光画像撮像指示部1120bの処理で通信インターフェース部1160を介してCCDカメラ1060cへ発光画像の撮像を指示する(ステップSB−1)。つぎに、CCDカメラ1080dは、撮像範囲中に存在する複数の細胞1020の蛍光画像を撮像し(ステップSB−2)、当該蛍光画像を情報通信端末1100へ送信する(ステップSB−3)。一方、CCDカメラ1060cは、撮像範囲中に存在する複数の細胞1020の発光画像を撮像し(ステップSB−4)、当該発光画像を情報通信端末1100へ送信する(ステップSB−5)。なお、蛍光画像の撮像指示および発光画像の撮像指示は、異なる時刻または時間間隔で行ってもよい。例えば、細胞周期のステージを同定するために用いる発光画像の撮像は数時間おきに行い、解析対象の遺伝子の発現量を測定するために用いる蛍光画像の撮像は数分おきに行ってもよい。また、励起光は蛍光画像を撮像する時のみ細胞1020へ照射する。
つぎに、情報通信端末1100は、(a)蛍光画像取得部1120cの処理で通信インターフェース部1160を介して蛍光画像を取得し、(b)発光画像取得部1120dの処理で通信インターフェース部1160を介して発光画像を取得し、(c)制御部1120の処理でクロック発生部1140から時刻を取得し、(d)取得した蛍光画像と発光画像と時刻とを対応付けて記憶部1160の所定の記憶領域に記憶する(ステップSB−6)。
つぎに、情報通信端末1100は、判定部1120eの処理で、蛍光画像および/または発光画像に基づいて、ベクターが導入されているか否かを細胞1020ごとに判定する(ステップSB−7)。つぎに、ベクターが導入されている細胞1020が少なくとも1つ存在した場合(ステップSB−8:Yes)、情報通信端末1100は、蛍光測定部1120fの処理で蛍光画像に基づいて各細胞1020から発せられた蛍光の蛍光強度をそれぞれ測定すると共に、発光測定部1120gの処理で発光画像に基づいて各細胞1020から発せられた発光の発光強度をそれぞれ測定する(ステップSB−9)。
つぎに、情報通信端末1100は、ステージ同定部1120hの処理で、発光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を細胞1020ごとに判定することで、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定する(ステップSB−10)。なお、蛍光関連遺伝子と細胞周期関連遺伝子とを融合したベクターおよび発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合したベクターを細胞1020に導入した場合、蛍光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を細胞1020ごとに判定することで、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定してもよい。また、発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを融合したベクターを細胞1020に導入し、その所定の部位(具体的には核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した場合、蛍光画像に基づいて細胞1020の形状が変化したか否かを細胞1020ごとに判定することで、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定してもよい。
つぎに、情報通信端末1100は、選択部1120iの処理で、ステップSA−10でステージが同定された細胞1020の中から測定対象の細胞1020を選択する(ステップSB−11)。つぎに、情報通信端末1100は、発現量測定部1120jの処理で、ステップSB−11で選択した細胞1020を対象として、蛍光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定すると共に、蛍光画像に基づいて解析対象の遺伝子の細胞1020内における発現部位を同定する(ステップSB−12)。なお、ステップSB−10において蛍光強度または蛍光画像を用いる場合、ステップSB−12では、発光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定してもよい。
そして、情報通信端末1100は、制御部1120の処理で、上述したステップSB−1〜ステップSB−12までの処理を例えば予め設定した時間間隔で所定の回数繰り返し実行し、所定の回数終了した場合(ステップSB−13:Yes)には処理を終了する。
ここで、発光画像および蛍光画像の撮像および取得だけを繰り返し実行し、解析の時点で、発光強度の測定、蛍光強度の測定、ステージの同定、細胞1020の選択、発現量の測定を行ってもよい。つまり、解析に必要な元データである発光画像および蛍光画像だけをまとめて取得し、その後、解析の時点で、発光強度の測定、蛍光強度の測定、ステージの同定、細胞1020の選択、発現量の測定を行ってもよい。具体的には、発光画像および蛍光画像の取得後に、解析の時点で、細胞1020の選択、発現量の測定を行ってもよい。また、発光画像および蛍光画像の取得を行った後、解析の時点で、ステージの同定、細胞1020の選択を行ってもよい。また、発光画像および蛍光画像の取得後に、解析の時点で、細胞1020の選択を行ってもよい。
また、蛍光画像を取得した後、測定対象の細胞1020を選択し、そして発光画像を取得してもよい。
以上、詳細に説明したように、発現量測定装置1000によれば、発光関連遺伝子と蛍光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを導入した生きた細胞1020を対象として、細胞1020から発せられた発光の発光強度を測定し、細胞1020から発せられた蛍光の蛍光強度を測定し、測定した発光強度または測定した蛍光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定するにあたって、細胞は、発光関連遺伝子、蛍光関連遺伝子および解析対象の遺伝子に加えてさらに細胞周期関連遺伝子を導入したものであり、発現量の測定で発光強度を用いる場合には測定した蛍光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を判定し、発現量の測定で蛍光強度を用いる場合には測定した発光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を判定することで、細胞周期のステージを同定する。これにより、細胞1020に導入した解析対象の遺伝子の発現量の測定において同調培養の操作を行わずに当該細胞1020に対して細胞周期のステージを同定することができ、その結果、実験者の作業的な負担を軽減することができる。また、解析対象の遺伝子と細胞周期のステージとの関連性を評価することができる。具体的には、細胞周期との直接の関与が不明である解析対象の遺伝子に関して、薬剤投与や温度変化などの刺激で引き起こされる発現量の変化を細胞周期のステージと共に得ることができるので、当該解析対象の遺伝子と細胞周期との関与を検証することができる。また、細胞周期との直接の関与が示唆される解析対象の遺伝子に関して、当該解析対象の遺伝子の発現量と細胞周期のステージとを一緒に取得することができるので、当該解析対象の遺伝子が細胞周期マーカーとして有用であるか否かを評価することができる。なお、発光タンパク質を発現する発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを導入し、その所定の部位(具体的には、核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した生きた細胞1020を対象とした場合、発現量測定装置1000は、細胞1020から発せられた発光の発光強度を測定し、測定した発光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定し、当該細胞1020の蛍光画像を撮像し、撮像した蛍光画像に基づいて細胞1020の形状が変化したか否かを判定することで、細胞周期のステージを同定してもよい。なお、発光誘導蛋白遺伝子の取り込みを確認するための方法を除き、蛍光融合遺伝子の変わりに蛍光色素を用いてもよいが、励起光による光毒性の影響を最小限にするために、蛍光色素による撮像は、蛍光のみで撮像する場合に比べて撮像回数を減らすようにすることができる。また、発現量測定装置1000は、例えば、各種反応(例えば薬物刺激や光照射など)の検査や治療などに好適に用いることができる。
ここで、これまでは、レポーターアッセイを行う際に、様々な細胞周期ステージの細胞を一群のデータとして取り扱っていた。細胞周期は、細胞の成長、DNAの複製、染色体の分配、細胞の分裂などからなる複数の連続反応であり、そのステージにより様々な遺伝子の発現が変動することは十分に考えられる。そこで、発現量測定装置1000を利用すれば、細胞周期への直接の関与が不明である遺伝子に関して、薬剤や温度変化など、何らかの刺激により引き起こされる遺伝子発現量変化を検出したい場合に、細胞周期データと合わせることで、より詳細な解析結果が得られる。また、発現量測定装置1000を利用すれば、細胞周期との直接の関与が示唆される遺伝子に関しても、各細胞の細胞周期のステージが判別できるので、従来行ってきた同調培養などの操作を必要とせず、解析を行いたいステージの細胞のみを選択し、観察対象とすることができる。
また、発現量測定装置1000によれば、細胞1020が撮像範囲中に複数存在する場合、複数の細胞1020の蛍光画像を撮像し、複数の細胞1020の発光画像を撮像し、撮像した発光画像に基づいて、各細胞1020から発せられた発光の発光強度をそれぞれ測定し、撮像した蛍光画像に基づいて、各細胞1020から発せられた蛍光の蛍光強度をそれぞれ測定し、測定した発光強度または測定した蛍光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を細胞1020ごとに測定し、発現量の測定で発光強度を用いる場合には測定した蛍光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を細胞1020ごとに判定し、発現量の測定で蛍光強度を用いる場合には測定した発光強度に基づいて細胞周期関連遺伝子の発現の有無を細胞1020ごとに判定することで、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定する。これにより、複数の細胞1020を対象として、解析対象の遺伝子の発現量を細胞1020ごとに測定すると共に、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定することができる。また、解析対象の遺伝子と細胞周期のステージとの関連性を細胞1020ごとに評価することができる。なお、発光タンパク質を発現する発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを導入し、その所定の部位(具体的には、核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した生きた細胞1020を対象とした場合、発現量測定装置1000は、撮像範囲中に存在する複数の細胞1020の発光画像を撮像し、複数の細胞1020の蛍光画像を撮像し、撮像した発光画像に基づいて、各細胞1020から発せられた発光の発光強度をそれぞれ測定し、測定した発光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を細胞1020ごとに測定し、撮像した蛍光画像に基づいて細胞1020の形状が変化したか否かを細胞1020ごとに判定することで、細胞周期のステージを細胞1020ごとに同定してもよい。また、細胞周期ごとに比較することにより、条件が等しい細胞同士の比較評価を行うようにしてもよい。
また、発現量測定装置1000によれば、ステージが同定された細胞1020の中から測定対象の細胞1020を選択し、測定した発光強度または測定した蛍光強度に基づいて、選択した細胞1020に導入された解析対象の遺伝子の発現量を測定する。これにより、複数の細胞1020の中から個々の細胞1020を識別し、単一の細胞1020を対象として、解析対象の遺伝子の発現量を測定すると共に、細胞周期のステージを同定することができる。
また、発現量測定装置1000によれば、発光画像の撮像、蛍光画像の撮像、発光強度の測定、蛍光強度の測定、ステージの同定、細胞1020の選択、発現量の測定を繰り返し実行することで、選択した細胞1020を対象として、細胞周期のステージを同定しながら解析対象の遺伝子の発現量を経時的に測定する。これにより、単一の細胞1020を対象として、細胞周期のステージを同定しながら解析対象の遺伝子の発現量の変動を経時的に測定することができる。なお、発光タンパク質を発現する発光関連遺伝子と解析対象の遺伝子とを導入し、その所定の部位(具体的には、核、細胞膜、細胞質など)を蛍光物質で染色した生きた細胞1020を対象とした場合、発現量測定装置1000は、発光画像の撮像、蛍光画像の撮像、発光強度の測定、ステージの同定、細胞1020の選択、発現量の測定を繰り返し実行することで、選択した細胞1020を対象として、細胞周期のステージを同定しながら解析対象の遺伝子の発現量を経時的に測定してもよい。また、同一視野内の異なる細胞を、各々の細胞周期に応じたタイミングで撮像したタイムラプス映像または1画像上に同時に画像再生することにより、細胞周期を一致させた動画(またはコマ送り)ないし1画像表示をしてもよい。
また、発現量測定装置1000によれば、発現量の測定において、選択された細胞1020を対象として、測定した蛍光強度に基づいて解析対象の遺伝子の発現量を測定すると共に、撮像した蛍光画像に基づいて解析対象の遺伝子の細胞1020内における発現部位を同定する。これにより、解析対象の遺伝子と細胞周期のステージとの関連性を評価することができるだけでなく、解析対象の遺伝子の細胞1020内における発現部位を得ることができる。
また、発現量測定装置1000を利用すれば、具体的には、抗がん剤およびそのリード化合物の評価を行うことができる。特に、抗がん剤が細胞分裂の効率に有害な作用を持つかどうかの判断と、そのリード化合物が解析対象遺伝子の転写活性に影響を与えるかどうかを同時にモニターすることができる。また、発現量測定装置1000を利用すれば、具体的には、細胞周期と細胞の形態との関連を調べることができる。特に、PC12細胞などにおいては、細胞周期ステージ、分化段階によって形態が変わることが知られているが、その他の神経様細胞においても、細胞形態による詳細なステージ同定を行うことができ、細胞形態そのものを細胞周期または分化のフェーズマーカーとして用いることができる。また、発現量測定装置1000を利用すれば、具体的には、細胞周期に関わる可能性のある遺伝子において、発光検出にて細胞周期をモニタリングしながら、蛍光検出にて発現時期・局在性を同定することで、細胞周期との関連性の有無、または細胞周期マーカーとしての有用性を評価することができる。
[III]以下、添付図面を参照して、本発明にかかる測定装置としての顕微鏡ユニットおよび顕微鏡装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)まず、本発明の実施の形態1にかかる顕微鏡装置について説明する。図25は、この実施の形態1にかかる顕微鏡装置の構成を示す模式図である。図25に示すように、この実施の形態1にかかる顕微鏡装置100aは、蛍光観察を行う蛍光顕微鏡ユニット101と、微弱光観察を行う微弱光観察ユニット102aと、発光標識および蛍光標識が付与された標本Sを保持する保持手段としての保持部7と、各顕微鏡ユニット101,102aによって撮像した標本Sの標本像等を表示するモニター9と、顕微鏡装置100aの全体の処理および動作を制御する制御装置PC1と、を備える。蛍光顕微鏡ユニット101と微弱光顕微鏡ユニット102aとは、互いに隣接して配置される。
蛍光顕微鏡ユニット101は、蛍光対物レンズとしての対物レンズ1および蛍光結像レンズとしての結像レンズ2を有する高倍率の蛍光結像光学系と、この蛍光結像光学系によって結像される標本Sの標本像である蛍光標本像を撮像する蛍光撮像手段としての撮像装置3と、標本Sを励起する励起光を発する励起光源4と、励起光源4からの励起光を集光するレンズ5と、蛍光ユニットとしての蛍光キューブ6と、を備える。
対物レンズ1は、標本側に大きなNAを有し、標本Sに付与された蛍光標識の各点から発せられる蛍光をほぼ平行光束に変換する。結像レンズ2は、対物レンズ1によってほぼ平行光束に変換された蛍光を集光して標本Sの標本像である蛍光標本像を結像する。蛍光結像光学系は、蛍光標本像を40倍以上の高倍率で結像する。撮像装置3は、CCD、CMOS等の固体撮像素子を有し、この固体撮像素子の撮像面上に結像される蛍光標本像を撮像し、画像データを生成して制御装置PC1に出力する。
蛍光キューブ6は、標本Sを励起するための励起光を選択的に透過させる励起光透過フィルターとしての励起フィルター6aと、この励起光によって励起された標本Sから発せられる蛍光を選択的に透過させる蛍光透過フィルターとしての吸収フィルター6bと、励起光を反射して蛍光を透過させるダイクロイックミラー6cとを一体に備える。励起フィルター6aは、励起光源4から発せられる各種波長の光の中から所定の波長域の励起光を抽出するバンドパスフィルターであり、吸収フィルター6bは、所定のカットオフ波長を有するロングウェーブパスフィルターである。なお、吸収フィルター6bは、所定の波長範囲の蛍光を抽出するバンドパスフィルターでもよい。バンドパスフィルターは、標本Sから発せられる微弱光と蛍光の波長が近い場合に有効である。
励起光源4は、水銀ランプ、キセノンランプ、レーザー等によって実現され、励起光照射手段としての励起光源4およびレンズ5は、励起光源4からの励起光を、励起光フィルター6aを介し、ダイクロイックミラー6cによって反射させ標本Sに照射する。なお、励起光源4は、制御装置PC1からの指示をもとに点灯および消灯を行う。
微弱光顕微鏡ユニット102aは、微弱光対物レンズとしての対物レンズ11および微弱光結像レンズとしての結像レンズ12を有する低倍率の微弱光結像光学系と、この微弱光結像光学系によって結像される標本Sの標本像である微弱光標本像を撮像する微弱光撮像手段としての撮像装置13と、を備える。
対物レンズ11は、標本側に大きなNAを有し、標本Sに付与された発光標識の各点から自己発光によって発せられる微弱光をほぼ平行光束に変換する。結像レンズ12は、対物レンズ11によってほぼ平行光束に変換された微弱光を集光して標本Sの標本像である微弱光標本像を結像する。微弱光結像光学系は、蛍光結像光学系の結像倍率よりも低い結像倍率で微弱光標本像を結像する。このとき、微弱光結像光学系は、標本側のNAをNAo、結像倍率をβとして、(NAo/β)2≧0.01を満足することが望ましい。
撮像装置13は、CCD、CMOS等の固体撮像素子を有し、この固体撮像素子の撮像面上に結像される微弱光標本像を撮像し、画像データを生成して制御装置PC1に出力する。なお、撮像装置13が有する固体撮像素子は、高感度のモノクロームCCDであって0℃程度の冷却CCDを用いるとよい。
保持部7は、標本Sを直接載置するプレパラート、スライドガラス、マイクロプレート、ゲル支持体、微粒子担体、インキュベーター等の保持部材7aと、この保持部材7aとともに標本Sを2次元的に移動させる可動ステージ7bとを有する。可動ステージ7bは、制御装置PC1からの指示をもとに、ステージ駆動部8によって駆動される。
制御装置PC1は、CPUを備えたコンピュータ等の処理装置によって実現され、撮像装置3,13、励起光源4、ステージ駆動部8およびモニター9を電気的に接続し、これらの各構成部位の動作を制御する。制御装置PC1は、特に、撮像切換制御手段として、撮像装置13によって撮像される微弱光標本像の像特性をもとに、微弱光顕微鏡ユニット102aによる微弱光標本像の撮像と、蛍光顕微鏡ユニット101による蛍光標本像の撮像とを切り換える撮像切換処理の制御を行う。
ここで、制御装置PC1が制御する撮像切換処理について説明する。図26は、撮像切換処理の処理手順を示すフローチャートである。図26に示すように、制御装置PC1は、可動ステージ7bによって微弱光結像光学系の視野内に移動された標本Sの微弱光標本像を撮像装置13によって撮像する(ステップS101)。この撮像結果をもとに、制御装置PC1は、微弱光標本像の像特性としての像強度があらかじめ設定したしきい値より大きい領域が微弱光標本像内にあるか否かを判断する(ステップS103)。像強度がしきい値より大きい領域がないと判断された場合(ステップS103:No)、制御装置PC1は、ステップS101からの処理を繰り返す。
一方、像強度がしきい値より大きい領域があると判断された場合(ステップS103:Yes)、制御装置PC1は、ステップS101で撮像した微弱光標本像を記録し(ステップS105)、可動ステージ7bによって蛍光結像光学系の視野内に標本Sを移動する(ステップS107)。そして、制御装置PC1は、微弱光標本像の像強度がしきい値より大きい領域に対応する蛍光標本像を撮像装置3によって撮像して記録し(ステップS109)、撮像切換処理を終了する。なお、標本Sの経過観察を行う場合、制御装置PC1は、ステップS109の後、可動ステージ7bによって標本Sを再び微弱光結像光学系の視野内に移動し、ステップS101からの処理を繰り返すように制御するとよい。また、ステップS109での撮像は、タイムラプス撮像または1画像の撮像のどちらでもよい。また、同一視野内の異なる細胞を、各々の細胞周期に応じたタイミングで撮像したタイムラプス映像または1画像上に同時に画像再生することにより、細胞周期を一致させた動画(またはコマ送り)ないし1画像表示をしてもよい。
制御装置PC1は、ステップS105およびS109では、撮像した微弱光標本像および蛍光標本像を自装置内に備えるRAM等の記憶部に記憶する。また、制御装置PC1は、ステップS101およびS109では、撮像した微弱光標本像および蛍光標本像をモニター9に逐次表示するようにしてもよい。さらに、制御装置PC1は、ステップS101〜S105の間、すなわち、微弱光顕微鏡ユニット102によって標本Sの微弱光観察を行っている間、励起光源4を消灯し、ステップS109で標本Sの蛍光観察を行う場合、励起光源4を点灯するように制御を行うとよい。あるいは、励起光源4から蛍光ユニット6までの光路上にシャッター等の遮光装置を設け、制御装置PC1は、未照射手段として、励起光源4を点灯および消灯する替わりに、遮光装置を開閉することによって励起光の照射を制御するようにしてもよい。
なお、制御装置PC1は、ステップS103では、微弱光標本像内の部分的な領域の像強度をもとに蛍光観察への切り換えを判断するようにしたが、微弱光標本像の全体の像強度をもとに切り換えを判断するようにしてもよい。また、制御装置PC1は、これらの像強度を、たとえば、所定時点から現時点までの累積の像強度として取得してもよく、あるいは現時点の瞬間的な像強度として取得してもよい。なお、微弱光標本像の全体の像強度を取得する場合には、撮像装置13に替えてフォトマルチプライヤー等の高感度の受光素子を用いてもよい。
以上説明したように、この実施の形態1にかかる顕微鏡装置によれば、蛍光観察用の蛍光顕微鏡ユニット101と微弱光観察用の微弱光顕微鏡ユニット102aとを隣接して備えるとともに、蛍光結像光学系および微弱光結像光学系の各視野内に標本Sを移動させる可動ステージ7bとを備えるため、適宜に蛍光観察と微弱光観察とを切り換えることができ、また、微弱光標本像の像特性としての像強度に応じて、微弱光観察から蛍光観察へ即時に切り換えることができる。
なお、微弱光結像光学系は、対物レンズ11および結像レンズ12によって標本像を結像する無限遠補正光学系として説明したが、対物レンズのみによって標本像を結像する有限補正光学系としてもよい。
また、上述した撮像切換処理では、微弱光標本像の像強度等の像特性をもとに微弱光観察から蛍光観察に切り換えるようにしたが、蛍光観察で標本Sに照射する励起光強度や標本Sから発光される蛍光強度が弱く、励起光および蛍光によって標本Sに与えるダメージが小さい場合などには、蛍光標本像の像強度等の像特性をもとに蛍光観察から微弱光観察に切り換えるようにしてもよい。
(実施の形態2)つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、可動ステージ7bによって蛍光結像光学系および微弱光結像光学系の各視野内に標本Sを移動させるようにしたが、この実施の形態2では、蛍光結像光学系および微弱光結像光学系を移動させることによって各視野内に標本Sを配置するようにしている。
図27は、本発明の実施の形態2にかかる顕微鏡装置の構成を示す模式図である。図27に示すように、この実施の形態2にかかる顕微鏡装置200は、顕微鏡装置100aと同様に蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202を備え、また、これらの各顕微鏡ユニット201,202の中間位置に光学系移動手段としての回転駆動装置14および保持軸15a,15bを備える。さらに、顕微鏡装置200は、顕微鏡装置100aが備えた保持部7に替えて、可動範囲を小さくした可動ステージ17bを有する保持部17を備えるとともに、制御装置PC1に替えて、制御装置PC2を備える。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一の構成部分には同一符号を付している。
蛍光顕微鏡ユニット201は、蛍光顕微鏡ユニット101と同じ各構成部位を一体に保持する筐体21を備え、微弱光顕微鏡ユニット202は、微弱光顕微鏡ユニット102aと同じ各構成部位を一体に保持する筐体22を備える。
回転駆動装置14は、蛍光顕微鏡ユニット201が備える蛍光結像光学系および微弱光顕微鏡ユニット202が備える微弱光結像光学系の各視野の略中心点を結ぶ線分の中点を通り各光学系の光軸に略平行な回転軸を有し、この回転軸を中心に、複数の保持軸15a,15bによって保持した蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202を回転移動させる。ここで、固定軸15a,15bは、それぞれ筐体21,22を保持している。
可動ステージ17bは、微弱光結像光学系の視野と概ね等しい範囲内で標本Sを移動させる。また、可動ステージ17bは、制御装置PC2からの指示をもとに、ステージ駆動部18によって駆動される。
制御装置PC2は、制御装置PC1と同様に撮像装置3,13、励起光源4およびステージ駆動部18の動作を制御するのに加えて、回転駆動装置14の動作を制御する。制御装置PC2は、微弱光観察と蛍光観察とを切り換える場合、回転駆動装置14を制御して蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202の配置を切り換える。
このように、この実施の形態2にかかる顕微鏡装置200よれば、回転駆動装置14によって蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202を回転移動して蛍光観察と微弱光観察とを切り換えられるようにしているため、たとえば、培養液中に浸された標本等、高速で移動させることができない標本を観察対象とする場合でも、即時に蛍光観察と微弱光観察とを切り換えることができる。
なお、顕微鏡装置200では、回転駆動装置14によって各顕微鏡ユニット201,202の全体を回転移動させるようにしているが、撮像装置3,13を1つの撮像装置で共用し、蛍光顕微鏡ユニット201から撮像装置3を除いた部分と、微弱光顕微鏡ユニット202から撮像装置13を除いた部分とを回転移動させて、互いに配置を切り換えるようにしてもよい。
図28は、このようにした場合の顕微鏡装置の構成を示す模式図である。図28に示すように、この実施の形態2の変形例としての顕微鏡装置300は、顕微鏡装置200から撮像装置13を取り除き、微弱光顕微鏡ユニット202の全体を一体に保持した筐体22に替えて、微弱光結像光学系を一体に保持する筐体24を備えるとともに、蛍光顕微鏡ユニット201の全体を一体に保持した筐体21に替えて、撮像装置3を除いた部分を一体に保持する筐体23を備える。また、顕微鏡装置300は、制御装置PC2に替えて、制御装置PC3を備える。その他の構成は、顕微鏡装置200と同じであり、同一の構成部分には同一符号を付している。
制御装置PC3は、制御装置PC2と同様に撮像装置3、励起光源4、ステージ駆動部18および回転駆動装置14の動作を制御する。ただし、制御装置PC2が蛍光観察と微弱光観察とに応じて撮像装置3,13の制御を切り換えていたのに対し、制御装置PC3は、蛍光観察および微弱光観察の両方の場合で撮像装置3を制御して標本像を撮像するようにしている。このとき、制御装置PC3は、蛍光観察および微弱光観察に応じて、撮像装置3によって撮像される標本像の範囲、結像倍率等を切り換えて認識する。
なお、回転駆動装置14は、固定軸15a,15bによって筐体23,24を保持し、制御装置PC3からの指示をもとに、微弱光観察および蛍光観察に応じて、筐体23,24の配置を切り換える。
このように、この実施の形態2の変形例としての顕微鏡装置300よれば、蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202から撮像装置3,13を除く部分を回転駆動装置14によって回転移動して蛍光観察と微弱光観察とを切り換えられるようにしているため、移動部分が軽量化され、より高速に移動および切り換えを行うことができる。また、顕微鏡装置300では、顕微鏡装置100a,200に比して撮像装置の数を削減しているため、撮像装置に関連する回路構成を簡略化することができるとともに、制御装置PC3の処理負荷を軽減させて処理の高速化をはかることができる。また、装置を安価にすることができる。
なお、顕微鏡装置200,300では、回転駆動装置14によって蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202、またはこれら各ユニットの一部を回転移動させるようにしたが、回転移動に限らず、たとえば、可動ステージ17bに沿って蛍光顕微鏡ユニット201および微弱光顕微鏡ユニット202を平行移動させて、各ユニット201,202の配置を切り換えるようにしてもよい。
(実施の形態3)つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1および実施の形態2では、標本Sの同じ側に配置され独立した蛍光結像光学系および微弱光結像光学系を備えるようにしていたが、この実施の形態3では、光学系の一部を共用した蛍光結像光学系および微弱光結像光学系を備えるようにしている。
図29は、本発明の実施の形態3にかかる顕微鏡装置の構成を示す模式図である。図29に示すように、この実施の形態3にかかる顕微鏡装置400は、顕微鏡装置100aが独立して備えた蛍光結像光学系および微弱光結像光学系の対物レンズを共用し、一体化した顕微鏡ユニットを備える。具体的には、顕微鏡装置400は、顕微鏡装置100aが備えた蛍光顕微鏡ユニット101と同様の顕微鏡ユニットを備え、さらに、この顕微鏡ユニットが有する対物レンズ1と蛍光キューブ6との間に挿脱可能なミラー34を備え、このミラー34によって図上で左側に約90度に折り曲げられる光軸上に、結像レンズ12に替わる結像レンズ32と撮像装置13とを備える。
このようにして顕微鏡装置400は、対物レンズ1を共用し、対物レンズ1と結像レンズ2を有する蛍光結像光学系と、対物レンズ1と結像レンズ32とを有する微弱光結像光学系とを備える。また、顕微鏡400は、顕微鏡装置200が備えた保持部17およびステージ駆動部18を備えるとともに、励起光源4とレンズ5との間に未照射手段としてのシャッター33と、このシャッター33およびミラー34を動作させる光路切換駆動部35と、制御装置PC4と、を備える。その他の構成は、実施の形態1または実施の形態2と同じであり、同一の構成部分には同一符号を付している。
制御装置PC4は、制御装置PC2と同様に撮像装置3,13およびステージ駆動部18の動作を制御するのに加えて、光路切換駆動部35を介してシャッター33およびミラー34の動作を制御する。制御装置PC4は、微弱光観察から蛍光観察に切り換える場合、対物レンズ1と蛍光キューブ6との間からミラー34を取り除き、シャッター33を開いて励起光源4からの励起光を標本Sに照射させる。一方、蛍光観察から微弱光観察に切り換える場合、制御装置PC4は、シャッター33を閉じて励起光源4からの励起光を遮光し、標本Sに対して励起光を未照射にするとともに、対物レンズ1と蛍光キューブ6との間の光路上にミラー34を挿入し配置して、標本Sからの微弱光を結像レンズ32に向けて反射させる。
なお、結像レンズ32は、結像レンズ2よりも短い焦点距離を有し、結像レンズ32を有する微弱光結像光学系は、結像レンズ2を有する蛍光結像光学系の結像倍率よりも低い結像倍率で微弱光標本像を結像する。また、結像レンズ32を有する微弱光結像光学系は、標本側のNAをNAo’、結像倍率をβ’として、(NAo’/β’)2≧0.01を満足することが望ましい。
このように、この実施の形態3にかかる顕微鏡装置400よれば、対物レンズを共用した蛍光結像光学系および微弱光結像光学系によって一体化した顕微鏡ユニットを備えるようにしているため、顕微鏡装置全体の小型化および簡素化をはかることができるとともに、蛍光観察と微弱光観察との切り換えにともなう移動部分が単一の光学素子となって軽量化されるため、より高速に移動および切り換えを行うことができる。
なお、励起光源4からの励起光および標本Sからの蛍光と、標本Sからの微弱光との波長帯域が異なる場合、ミラー34に替えて、励起光および蛍光を透過させるとともに微弱光を反射させるダイクロイックミラーを用いるようにしてもよい。この場合、制御装置PC4は、蛍光観察と微弱光観察とを切り換える場合、ダイクロイックミラーを挿脱する必要はない。また、ダイクロイックミラーを用いる場合、制御装置PC4は、蛍光観察と微弱光観察とを同時に行うように制御してもよい。
(実施の形態4)つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。上述した実施の形態1では、標本Sに対して同じ側に蛍光顕微鏡ユニット101および微弱光顕微鏡ユニット102aを配置するようにしたが、この実施の形態4では、標本Sに対して互いに反対側に蛍光顕微鏡ユニットおよび微弱光顕微鏡ユニットを配置するようにしている。
図30は、本発明の実施の形態4にかかる顕微鏡装置の構成を示す模式図である。図30に示すように、この実施の形態4にかかる顕微鏡装置500は、顕微鏡装置100aが備えた蛍光顕微鏡ユニット101および微弱光顕微鏡ユニット102aを備えるとともに、顕微鏡装置200が備えた保持部17およびステージ駆動部18を備え、さらに、制御装置PC5およびモニター9を備える。実施の形態1または実施の形態2と同じ構成部分には同一符号を付している。図30に示す顕微鏡装置500では、蛍光顕微鏡ユニット101は、図上で標本Sの下側に配置され、微弱光顕微鏡ユニット102aは、標本Sの上側に配置されている。なお、これら各ユニット101,102aの上下の配置関係は逆転させてもよい。
制御装置PC5は、制御装置PC2と同様に撮像装置3,13、励起光源4およびステージ駆動部18の動作を制御する。制御装置PC5は、微弱光観察から蛍光観察に切り換える場合、励起光源4を点灯して標本Sに励起光を照射させ、蛍光観察から微弱光観察に切り換える場合、励起光源4を消灯し標本Sに対して励起光を未照射にする。
なお、励起光源4からダイクロイックミラー6cを介した標本Sまでの光路上にシャッター33等の遮光装置を設け、制御装置PC5は、未照射手段として、励起光源4を点灯および消灯する替わりに、遮光装置を開閉することによって励起光の照射および未照射を制御するようにしてもよい。
また、励起光源4からの励起光および標本Sからの蛍光と、標本Sからの微弱光との波長帯域が異なる場合、たとえば、結像レンズ12と撮像装置13との間に、微弱光を透過させるとともに励起光および蛍光を遮光する波長抽出フィルターを設け、制御装置PC5は、励起光源4を消灯させることなく蛍光観察と微弱光観察とを切り換えるようにしてもよい。あるいは、この場合、制御装置PC5は、蛍光観察と微弱光観察とを同時に行うように制御してもよい。
このように、この実施の形態4にかかる顕微鏡装置500よれば、標本Sに対して互いに反対側に蛍光顕微鏡ユニット101および微弱光顕微鏡ユニット102aを配置するようにしているため、機械的な駆動を全くさせることなく、蛍光観察と微弱光観察とを即時に切り換えることができる。
なお、上述した実施の形態4において、蛍光顕微鏡ユニット101の構成を微弱光顕微鏡ユニット102aと同一の構成に代えて替えて配置することも可能である。上下両方に微弱光顕微鏡ユニットを配置することにより、生物発光のように発光の開始が速い光標識による同時のモニタリングや、奥行きの有るサンプルからの部位ごとの最適な画像化が実現する。以下は、標本Sに対して、上下に微弱光顕微鏡ユニット102aを配置した場合の応用例を示す。なお、複数の微弱光顕微鏡ユニットを配置する配置角度は上下に限定するものではなく、適宜角度を変更して配置するようにしてもよく、配置するユニット数も3個以上であっても構わない。また、複数の微弱光顕微鏡ユニットごとに異なる光学条件(倍率、開口数、作動距離(ワーキングディスタンス)、露光時間、撮像回数等)に設定することにより、各々の微弱光顕微鏡ユニットの役割を最適化するのが好ましい。
応用例1.発光イメージングによる胚観察
胚におけるタイムラプス観察はこれまではGFPを指標に行われていたが発光を用いることで、S/N比が良いイメージングを得ることが出来、またGFPが未発現時期での初期の観察もルシフェラーゼを指標に実現可能である。そこで、受精卵の初期段階である胚試料において、長期的な観察を目的として、GFPを発現させた状態の観察が行われている。しかしGFPを指標にした場合、励起光による試料へのダメージ、観察が初期であるためにGFPが十分に発現していない、などの課題がある。胚観察において、発光を指標としたレポーターアッセイで行うことで、低侵襲で、定量的なアッセイを実現するため、発光を指標としたイメージングを行う。より具体的には、胚試料において、一過的なレポーターアッセイを行い、胚の成長と遺伝子発現量の変化を検出する。倒立、正立、どちらでも撮影可能であるが、胚は厚みがある場合が多く、上方に配置した微弱光顕微鏡ユニット102aにより、正立型で撮影した方が容易である場合があり得る。他方、培養環境における発露が対物レンズやシャーレ等の光透過性カバー(ないし所定の観察窓)において観察の障害になる場合があり、その場合には、下方に配置した微弱光顕微鏡ユニット102aにより、倒立型で撮影した方が容易である場合があり得る。従って、使用状況や目的に応じて、上下両方の微弱光顕微鏡ユニット102aにより、任意に選択して発光シグナルを取得できるようにするのが好ましい。微弱光顕微鏡ユニット102aのみで撮像を行うことにより、強い光シグナルを発生する標識試薬や長期の照射用励起光によるサンプルへのダメージを防止することができ、生きたサンプルをそのまま再現した状態での各種用途(診断、再生医療、薬効モニタリング等)を安定に行うことができる。測定の手順としては、まず、明視野像と発光画像を交互に取得し、次に必要に応じて、デコンボリューション撮影を行い、次に立体的に画像を取得する(透明度の高い試料の場合)。撮影後の3D画像の構築胚観察は透明度の高いものであれば、デコンボリューションなどで複数枚数撮影した画像を組み合わせて立体的な試料を観察することができるが、透明度の低い場合、厚みがある場合には観察が難しい。上下に配置した2個の微弱光顕微鏡ユニット102aによって発光画像を観察することで、一断面だけではなく、立体的な観察を行うことが出来る。また上下に配した観察点の角度を試料の形状に合わせて任意に動かすことで、より精度の高い画像を得ることが出来る。
2.上下顕微鏡による胚観察
胚や組織などの厚みある試料の観察を行う際には、フォーカス位置を変化させて、複数枚の画像を撮影し、データ解析の際に再構築をするため、デコンボリューション処理が行われている。透明度の高い試料を用いる際には、この技術が応用できるが、試料が厚く、しかも透明度が低い場合には焦点位置から離れるにつれて、撮影が難しくなるという課題がある。そこで、立体的な試料、透明度の低い試料に対し、より高精度な観察を実施するため、上下方向からの撮影、かつ撮像方向は一方向ではなく、任意に角度を変えることができ、球形などの立体的な形状の試料、立体的試料の側面についても観察することができる。測定の手順としては、まず、明視野像と発光画像を交互に取得し、次に撮像ユニットの撮影角度を任意に変えて複数枚の画像を撮影する。撮影後は、3D画像の構築を行うことが好ましい。
3.上下顕微鏡 時計遺伝子観察
現在、時計遺伝子分野において、ルシフェラーゼ遺伝子を指標として、生きたままの脳組織を連続的に観察する試みが行われている。脳組織または脳細胞では、すべての細胞において、同じリズムが刻まれているわけではなく、異なるリズムの細胞が何らかの制御を受けて、同調していると考えられている。しかし、2種の異なるリズムを持つ細胞または組織を同一の容器に入れて、異なるリズムを持つ細胞または組織を混合したときに、2種細胞においてどのようなリズム変化が起こるのか、を観察する装置はこれまでに無かった。そこで、本発明では、時計遺伝子の発現解析において、リズムの異なる細胞または組織をカセットを使って上下に配し同時にイメージングを行う。各々のリズムの変化、液性因子の影響、などを観察する。測定の手順としては、まず、同調機構の解析を行うために、本発明では、同一容器内に異なるリズムを刻む細胞または組織をメンブレン等の多孔質部材を介して上下に別々に載置して適宜の培養環境に調整する。次に、上下方向から、上下のぞれぞれに配置した異なる試料を同時に観察する。このように、上下2種類の試料の時計遺伝子発現変化過程を観察することにより、2つの細胞(または組織)間でのリズム同調過程を検出することが可能となる。
なお、制御装置PC5は、図示しない駆動装置によって蛍光顕微鏡ユニット101を微弱光顕微鏡ユニット102aに対して、可動ステージ17bに沿って相対的に移動させるようにしてもよい。この場合、微弱光顕微鏡ユニット102aによって標本Sの広範囲な領域を観察し続けながら、この広範囲な領域内の任意の微小領域の拡大像を蛍光顕微鏡ユニット101によって観察することができるとともに、標本Sを全く移動させることなく蛍光観察および微弱光観察を行うことができる。
(実施の形態5)つぎに、本発明の実施の形態5について説明する。上述した実施の形態1〜4では、発光標識および蛍光標識からの微弱光および蛍光によって標本Sを観察するようにしていたが、この実施の形態5では、さらに透過照明によって標本Sを観察するようにしている。
図31は、本発明の実施の形態5にかかる顕微鏡装置の構成を示す模式図である。図31に示すように、この実施の形態5にかかる顕微鏡装置600は、実施の形態1にかかる顕微鏡装置100aに加えて、透過照明を行う照明手段としての透過照明ユニット103aと、この透過照明ユニット103aが有するシャッター43等を駆動させる照明駆動部46と、制御装置PC1に替わる制御装置PC6と、を備える。その他の構成は、実施の形態1と同じであり、同一の構成部分には同一符号を付している。
透過照明ユニット103aは、透過照明用の白色光を発するハロゲンランプ等の白色光源44と、白色光の照射および未照射を切り換えるシャッター43と、白色光源44からの白色光を標本S上に集光させる照明レンズ系45とを備え、標本Sに対して、蛍光顕微鏡ユニット101と反対側に配置されている。照明レンズ系45は、コレクタレンズ45aおよびコンデンサーレンズ45bを有し、標本Sに対してクリティカル照明を行う。なお、照明レンズ系45は、標本Sに対してケーラー照明を行うようにしてもよい。
照明駆動部46は、制御装置PC6からの指示をもとに、シャッター43および蛍光照明ユニット104aを駆動する。ここで、蛍光照明ユニット104aは、筐体26によって一体に保持された励起光源4、レンズ5および蛍光キューブ6を有する。照明駆動部46は、シャッター43を開閉して標本Sに対する白色光の照射および未照射を切り換えるとともに、蛍光キューブ6を対物レンズ1と結像レンズ2との間の光路上に挿脱するように蛍光照明ユニット104aを移動させる。
制御装置PC6は、制御装置PC1と同様に撮像装置3,13、励起光源4およびステージ駆動部8の動作を制御するのに加えて、照明駆動部46の動作を制御する。制御装置PC6は、蛍光観察から透過照明による観察に切り換える場合、蛍光キューブ6を対物レンズ1と結像レンズ2との間から取り除くように蛍光照明ユニット104aを移動させ、励起光源4を消灯し、シャッター43を開いて透過照明させる。透過照明による観察から蛍光観察に切り換える場合、制御装置PC6は、シャッター43を閉じ、蛍光キューブ6が対物レンズ1と結像レンズ2との間に配置されるように蛍光照明ユニット104aを移動させ、励起光源4を点灯する。
また、微弱光観察から透過照明による観察に切り換える場合、制御装置PC6は、蛍光観察から透過照明による観察に切り換える場合の制御に加えて、ステージ駆動部8によって可動ステージ7bを駆動し、標本Sを蛍光結像光学系の視野内に移動させる制御を行う。なお、制御装置PC6は、シャッター43を開閉する替わりに、白色光源44を点灯および消灯するようにしてもよい。
なお、透過照明ユニット103aは、明視野観察用の照明を行うように示したが、明視野観察用に限らず、暗視野観察用、微分干渉観察用または位相差観察用の照明を行うようにしてもよい。また、これらの各種観察用の照明を切り換え可能に備えてもよい。なお、微分干渉観察用の照明を行う場合、透過照明ユニット103aは、コンデンサーレンズ45bの光源側に偏光子および偏光分離プリズムを備え、蛍光結像光学系には、対物レンズ1の瞳側に偏光合成プリズムおよび検光子を配設するとよい。また、位相差観察用の照明を行う場合、透過照明ユニット103aは、コンデンサーレンズ45bの光源側にリングスリットを備え、蛍光結像光学系には、対物レンズ1の略瞳位置に位相板を配設するか、対物レンズ1を位相板を有する対物レンズに切り換えるようにするとよい。さらに、暗視野観察用の照明を行う場合、透過照明ユニット103aは、コンデンサーレンズ45bの光源側にリングスリット等を備えるようにするとよい。
また、透過照明ユニット103aは、高倍率で透過照明による観察を行うために蛍光結像光学系に対応させて配置するように示したが、低倍率で観察を行えるように微弱光結像光学系に対応させて配置してもよい。あるいは、これらの結像光学系の両方に対応させて配置してもよく、各結像光学系に対して適宜配置を切り換えられるようにしてもよい。
ところで、顕微鏡装置600では、顕微鏡装置100aの構成に透過照明ユニット103a、照明駆動部46をさらに備えるように示したが、これに限定されず、たとえば、図32〜図34に示すように、顕微鏡装置200,300,400の各構成に、透過照明ユニット103aと、照明駆動部46もしくは照明駆動部47とをさらに備えるようにしてもよい。
図32に示す顕微鏡装置700は、顕微鏡装置200の構成に透過照明ユニット103a、照明駆動部46をさらに備えた場合であり、制御装置PC7は、制御装置PC2と同様に撮像装置3,13、励起光源4、回転駆動装置14およびステージ駆動部18を制御するとともに、制御装置PC6と同様に照明駆動部46によって透過照明ユニット103aおよび蛍光照明ユニット104aを制御する。
図33に示す顕微鏡装置800は、顕微鏡装置300の構成に透過照明ユニット103a、照明駆動部46をさらに備えた場合であり、制御装置PC8は、制御装置PC3と同様に撮像装置3、励起光源4、回転駆動装置14およびステージ駆動部18を制御するとともに、制御装置PC6と同様に照明駆動部46によって透過照明ユニット103aおよび蛍光照明ユニット104aを制御する。
図34に示す顕微鏡装置900は、顕微鏡装置400の構成に透過照明ユニット103a、照明駆動部47をさらに備えた場合であり、制御装置PC9は、制御装置PC4と同様に撮像装置3,13、およびステージ駆動部18を制御するとともに、照明駆動部47によって透過照明ユニット103a、ミラー34および蛍光照明ユニット105を制御する。
すなわち、制御装置PC9は、蛍光観察または微弱光観察から透過照明による観察に切り換える場合、ミラー34および蛍光キューブ6を対物レンズ1と結像レンズ2との間から取り除くように蛍光照明ユニット105を移動させ、シャッター33を閉じて励起光を未照射とし、シャッター43を開いて透過照明させる。透過照明による観察から蛍光観察または微弱光に切り換える場合、制御装置PC9は、シャッター43を閉じ、蛍光キューブ6またはミラー34が対物レンズ1と結像レンズ2との間に配置されるように蛍光照明ユニット105またはミラー34を移動させる。蛍光観察を行う場合には、さらにシャッター33を開いて標本Sに蛍光を照射させる。
このように、この実施の形態5にかかる顕微鏡装置600,700,800,900によれば、蛍光結像光学系および微弱光結像光学系の少なくとも一方に対応し、標本Sに対して透過照明を行う透過照明ユニットを備えるようにしているため、蛍光観察および微弱光観察ばかりでなく各種の透過照明による観察を行うことができ、標本Sを多角的に観察することができる。
なお、上述した顕微鏡装置100a,200,300,400,600,700,800,900は、それぞれ正立型の顕微鏡装置として示したが、倒立型の顕微鏡装置としてもよい。また、上述した顕微鏡装置は、例えば、各種反応(例えば薬物刺激や光照射など)の検査や治療などに好適に用いることができる。
以上、実施の形態について詳細に説明したが、本発明において、発光とは、化学反応により光を発生し得ることをいい、特に生物発光および化学発光を好適な例として含む用語である。これに対し、蛍光とは励起光により光を発生し得ることをいう。ここで、生物発光による光エネルギーにより励起されるBRET(生物発光共鳴エネルギー転移)は、基質溶液との化学反応が支配的要因であるので、本発明では発光に含めるものである。サンプルから発生する光は、特に生きた細胞に危害が少ない約400nm〜約900nmの間の波長を持つ電磁放射線をいう。発光するサンプルの撮像は、極めて低レベルの光(通常は単一光子事象)を検出し、画像の構築が可能になるまで光子放射を積分できる光検出器の使用を必要とする。そのような高感度光検出器の例には、単一光子事象を増幅した後、検出系に固有の背景ノイズに対して単一光子を検出できるカメラまたはカメラ群で、例えばCCDのような撮像素子群を具備するCCDカメラを例示できる。一般に、高感度を得るために、CCDカメラを液体窒素などで冷却する場合がある。また、一般に、細胞や胚等の生物材料に導入された発光関連遺伝子からの光シグナルは非常に微弱な光量であるために、ルミノメータによる光量測定においては多数の生物材料を破壊して高濃度に濃縮した溶液を測定する必要があった。しかし、本発明者らの研究チームは、近年、単一の細胞ごとに発光関連遺伝子から発生する微弱な発光シグナルを可視化できる光学技術を開発した。これによると、高い開口数(NA)とくに、開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.01以上である対物レンズを用いる場合には、冷却温度をマイナス5℃〜マイナス20℃、好ましくはマイナス5℃〜常温でも画像化できると本発明者らによって確認された。さらに、検討を進めた結果、上記光学的条件(NA/β)の2乗が0.071以上である場合に、5分以内、場合によっては1分程度で視認可能で且つ解析可能な細胞画像を提供できることを突き止めた。一般に生きたサンプルは形状ないし発光部位の変化の為に、30分を越える撮像時間では鮮明な発光画像を得ることは困難な場合が多い。従って、本発明では、短時間、特に30分以内、好ましくは1分〜10分の間で1つの発光画像を取得し、撮像時間が速い蛍光測定との連携に有利な方法と装置を提供する。
例えば関連する態様として、選択した生物適合成分の分布および/または局在に対するある処置の効果を記録するために、蛍光シグナルの局在および/または発光シグナルの強度を経時的に追跡したい場合は、光子放射の測定または撮像を選択した時間間隔で反復することにより、一連の画像を構築することができる。間隔は数分程度の短いものであってもよいし、数日または数週間程度に長いものであってもよい。発光画像または蛍光(または透過光)発光の重ね合せ画像は、画面表示、印刷された紙、グラフィック加工されたイメージ等の様々な形式で表現できる。
他の関連する態様として、本発明は、発光性タンパク質をコードする遺伝子を誘導性プロモーターの制御下に含む構築物でトランスジェニックまたはキメラにした動物におけるプロモーター誘導事象の存在を検出した後にプロモーター誘導事象の活性度をモニタリングする方法を包含する。プロモーター誘導事象には、そのプロモーターを直接活性化する物質の投与、内因性プロモーター活性化因子の産生を刺激する物質の投与(例えばRNAウイルス感染によるインターフェロン産生の剌激)、内因性プロモーター活性化因子の産生をもたらす状態に置くこと(例えば熱ショックまたはストレス)などがある。
またもう1つの態様として、本発明は、病原体による感染の重篤化を抑制するのに有効な治療用化合物を同定する方法をも包含する。この方法では、病原体と蛍光成分と発光成分の複合体を対照動物と実験動物、若しくはそれらの培養された組織(ないし細胞)に投与し、その実験動物を治療用化合物候補で処置する。そして、上述の方法によって測定対象であるサンプル内の蛍光シグナルの局在を確認した後に、局内が確認されたサンプルのみから発光シグナル(生物発光または化学発光)を連続的に測定する。こうすることによって、その化合物の治療上の有効性をモニタリングできる。
さらなる別な態様として、本発明は、様々な不透明度を持つ媒質を通して局在化したサンプルを蛍光シグナルによって選んだ後で、局在が確認されたサンプルのみから連続的に発光測定する方法を包含する。この方法では、発光シグナルを、その媒質を透過した光子を積分して画像を作成することもできるが、局在が確認されたサンプルのみを媒質(例えば、臓器組織)から外科的に取り出して、取り出したサンプルを適宜の培養環境下で発光測定するように方法の改良を行なうことができる。上述した実施の形態4で説明したように、異なる角度(上述した説明では上下両方向)から微弱光顕微鏡ユニットにより発光シグナルを効率良く回収することにより、肉厚のサンプルまたは光透過性が乏しいサンプルにおいても、所望の部位または全体から必要な画像データを取得することが可能となる。例えば、胚観察のような生物学的発生現象や長期培養が必要な再生医療上の研究用途において、あらゆる厚みのサンプルを多角度から検査する上で、本発明の微弱光による多方向解析は最もダメージないし毒性(過度な光エネルギーまたは高濃度の標識用試薬による)が少ない方法および装置を提供する。限定された外科手術(例えばバイオプシー)は、元となる生物(例えば、哺乳類、とくにヒト)への身体的負担を最小限にし、必要なサンプルのみを安定した検査環境下に移して、種々の見込み有る薬剤に対する応答、治療後の経過管理、予防医学的試験を長期に実行できるという利点を有する。
さらなる態様として、本発明は、ある生物内の特定の部位で、選択した物質(例えば溶存酸素またはカルシウム)の濃度を測定する方法を含むことができる。
以上の説明において、本発明では次に示すような生物発光の画像解析(またはイメージング分析)ならではの分析試薬を提供することも可能である。とくに、本発明の好適な実施の形態では、不透明な組織を含まない、単離された細胞もしくは細胞群を主に含んでいるような生物学的試料の任意な生物学的活性(酵素活性、免疫学的活性、分子生物学的活性、遺伝学的活性、内科的活性など)を分析するための方法、試薬、ならびに装置を提供する。ここに、単離された細胞もしくは細胞群は、主に光透過性が高い材質からなる収容容器(例えば、ウエル、シャーレ、マイクロスライド、マイクロフルイディクス用チップ)中で長期間保持するので、細胞内活性を損失を最小限にするか実質的に失活せずに撮像を行うための独特な試薬または試薬環境を提供する。以下に、上述した本発明の方法及び装置を適用するのに適した試薬セットとその取り扱いについて列記する。
1.基質の長期使用に関する試薬とその取扱い
試料の細胞内活性を、例えば数時間から24時間、2日から6日間、1週間から数週間、または数週間超というように長期間培養などの技術で継続させる際、発光をもたらすためには、次のような特徴をもった取扱いが重要である。次に述べる幾つかの方法および/または試薬は、単独でもよいが、複数の方法を組み合わせる方がよい場合があるので、本発明では限定しない。
(第1の取扱い方法) 現在市販または報告されている生物発光用試薬は、24時間まで観察可能な基質があるが、それ以上、例えば、数週間だと、基質の継ぎ足しが必要となる。細胞または細胞群を配置している培地に対して定期的ないし、測定の開始に同期して基質を添加する方法が好ましい。複数回の添加を行うのに適している試薬キットとして、同じパッケージに同封される発光タンパクを含む発光性試薬を含む収容手段(容器または袋)と、発光性試薬に対応する量の基質溶液(または基質含有培養液)を複数回の使用に足りるように複数の分割されて収容している収容手段(容器または袋)とを具備するのが好ましい。
(第2の取扱い方法) 他の一面において、PH調整を長期に亘り実行する。そのために、例えば気体環境としての二酸化炭素ガスの濃度を一定量以上に保つ方法である。より詳細には、細胞が生き続けるに必要な最低量よりも高濃度なガスを存在させることができる。他方、充分大きな容量の気体環境を大気圧以上の蓄積容器(例えばガス用タンク)内に蓄積し、その容器から定期的ないし徐々に細胞(ないし細胞群)に向けて移動するように装置設計する。このような気体環境の局所的な移動は、細胞(ないし細胞群)の気体に対する代謝速度に応じた速度となるようにするのが好ましい。
(第3の取扱い方法および試薬) PHを長時間一定に保証することが知られているHEPESを添加する。そのための方法には、上記気体環境の場合のように、細胞(ないし細胞群)が消費する固体、液体、気体の全てについての消費速度と関連したHEPES濃度に応じてHEPESを供給することができる。HEPESは、公知の除放性カプセルに封入して、有効数のカプセルを細胞(ないし細胞群)とともに液中ないし培地内に含ませておくことがさらに好ましい。有効量のHEPES(またはHEPESと同等のPH維持用化合物)を封入した徐放性カプセルを主に含んでいる溶液や培地は、本発明の目的を達成する有効な試薬となり得る。
(第4の取扱い方法、装置または試薬) 本発明の主旨によれば、細胞または細胞群の内部温度を致命的な変化が起きない程度に調節するための保温用装置および/または薬剤を提供することができる。
(第5の取扱い方法または試薬) 発光検出のバックグラウンドを長期に低くするための方法および/または試薬に関する。すなわち、生物発光(または化学発光)によるバックグラウンドの増加に関連する要素としての組織片、有色物(例えば発色性色素物質、とくにフェノールレッド色素))を除く方法であり、或いはこれら要素を予め充分に除去した培地または溶液を試薬として提供することができる。
(第6の取扱い方法または試薬) 細胞、特に細胞群に対して基質を流通させることは発光の安定性や測定精度にとって重要である。方法としては、基質の細胞膜透過を助ける処理(例えば、圧力ショック、電気的ショック)を連続的、断続的または細胞の老化に応じて実行することができる。試薬としては、細胞膜透過性を補助または促進する添加物(例えば、膜溶解物質としての界面活性剤、膜浸透圧変容物質としての塩類)を含有する基質または別途緩衝溶液を試薬として提供することができる。これらの方法および/または試薬は、長期の測定中に細胞中において活性の有る基質が不足しないように、新鮮な細胞外の基質に対して透過性が継続するか、或いは一時的に透過性が高まるように設定するのが好ましい。
(第7の取扱い方法) 均一な染色方法を達成する方法に関する。磁気ビーズをあらかじめ加えておき、数時間、または一日に一回攪拌する。通常は、収容する容器の底面上には細胞が貼り付いているため、上方から攪拌するのが好ましい。
(第8の取扱い方法または試薬) 長期観察を行う際に、同一の細胞(または細胞群)について多数回の発光反応を繰り返すことで生じる副産物による、光学的または化学的な阻害の影響を除去する方法や試薬に関する。すなわち、基質を継ぎ足すような取扱いに応じて発光反応に伴う反応副産物が蓄積していく。この発光反応に伴う副産物(ピロリン酸)などを除去するために、副産物排除用物質(例えば、沈殿作用を有する金属イオン)を加える。
(第9の取扱い方法または試薬) 発光成分としてのルシフェリンを再生させる方法または試薬に関する。ルシフェリンが発光後、オキシルシフェリンとなるが、これをルシフェリンに再生するための試薬をルシフェリンの老化または消耗に応じて細胞(または細胞群)に供給する方法が提供される。検出オキシルシフェリンがニトリル体2に変換された後、合成でも使われたように体内にあるシステインと反応し、ルシフェリンが再生することがホタルでは知られている。このような発光成分の活性低下を再生する再生物質を含んでいる基質、或いは別途の緩衝液を提供することも可能である。基質としては、他にセレンテラジンも含まれる。
(第10の取扱い方法または試薬) 新規な試薬としてのカプセル封入型基質に関する。所定時間経過後または一定の時間間隔で溶出ないし液放出するようなカプセルに適当な基質(例えばルシフェリン)を封入しておき、基質を一定濃度を保つようにする。また、カプセルに封入されていない基質(例えばルシフェリン)と、カプセルに封入した同種の基質を同時に提供する方法、または混合した状態のカプセル含有溶液である試薬を提供することができる。また、徐放速度が異なる2以上のカプセルに同種の基質(例えばルシフェリン)を含有させた試薬を同時に細胞(ないし細胞群)と添加(または培地との接触)することにより、異なる放出時機に新鮮な基質が自動的に提供されるという利点を有する。こうすることによって、励起光照射時機と基質の放出時機を連携させることも可能となる。