発明の簡単な説明
本開示は、グルコース、トリプトファン、インドール−3−乳酸から、及び/又はインドール−3−ピルベート及び2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸といったモナチン前駆体を通じてモナチンを作り出す種々の生合成経路を提供する。モナチン、インドール−3−ピルベート、及び2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸の作製に使用可能なペプチド及び核酸配列も開示されている。簡潔化のため、明細書及び請求の範囲において中間体/生成物(例えば、モナチン又はモナチン前駆体)が形成されたと記載された場合、「及び/又はその塩」という用語は適用可能な場合には包含されているものと解釈されるべきである。換言するならば、例えば、「インドール−3−ピルベートはモナチン前駆体に変換される」という表現は、「インドール−3−ピルビン酸はモナチン前駆体並びに及び/又はその塩に変換される」であると解釈されるべきである。実際、当業者であれば、示された反応条件下において中間体/生成物の塩が実際に存在しているか又は共に存在するかを理解するであろう。
モナチンは、1種類以上の適切な基質及び1種類以上の選択されたポリペプチドを含む反応混合物を反応させて生成することができる。適切な基質には、グルコース、トリプトファン、インドール−3−乳酸、モナチン前駆体(インドール−3−ピルベート及び2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸のような)、並びにその混合物が含まれるが、これに限定されることはない。前記反応混合物に存在するモナチン生成に適切な基質は、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は反応混合物中でその場所で(in situ)生成されてもよい。前記選択されたポリペプチドは、反応混合物に添加されてもよく、更に/又は前記反応混合物中に存在する微生物により生成されてもよい(例えば、前記反応混合物を、前記選択されたポリペプチドを発現する微生物で発酵させることにより)。
モナチンは、インドール−3−ピルベート、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(モナチン前駆体、MP、モナチンのα−ケト型)、インドール−3−乳酸、トリプトファン、及び/又はグルコースを通じて生成することができる(図1)。図1−3及び11−13に示される、基質を第一の生成物に変換し、その後に該第一の生成物を第二の生成物に変換し、所望の最終生成物が造られるまでこれを続けることを必要とするモナチン又はその中間体の生成又は製造方法が開示されている。
図1−3及び11−13には、可能性のある中間生成物と最終生成物が枠内に示されている。例えば、グルコースからトリプトファン、トリプトファンからインドール−3−ピルベート、インドール−3−ピルベートからMP、MPからモナチン、又はインドール−3−乳酸(インドール−ラクテート)からインドール−3−ピルベートへといった、1つの生成物の別のものへの変換は、これらの方法を用いて行なうことができる。これらの変換は、化学的又は生物学的に促進することができる。「変換」という用語は、化学的方法又は第一の中間体を第二の中間体へと変化させる反応中のポリペプチドのいずれかを用いることを意味する。「化学変換」という用語は、ポリペプチドにより能動的に促進されない反応を意味する。「生物学的変換」という用語は、ポリペプチド(例えば、酵素)により能動的に促進される反応を意味する。変換は、生体外又は生体内で起こることが可能である(例えば、適切な微生物により栄養ブロスを発酵させることによる)。生物学的変換が用いられる場合には、ポリペプチド及び又は細胞は、ポリマーの支持体上に化学的に結合させるなどにより支持体に固定することができる。前記変換は、当業者に公知のあらゆる反応器を用いることで、例えば、バッチ又は連続反応器中にて達成することができる。
第一のペプチドを基質と接触させて第一の生成物を作り、次に造られた該第一の生成物を第二のポリペプチドと接触させて第二の生成物を造り、次に造られた該第二の生成物を第三のポリペプチドと接触させて例えばモナチンなどの第三の生成物を造ることを含む方法も提供される。使用されるポリペプチド及び生成される生成物は、図1−3及び11−13に示されている。
図1−3及び11−13に示す変換の実施に使用できるポリペプチドとそのコーディング配列が開示されている。いくつかの例においては、基質特異性及び/又はポリペプチドの活性を変化させることが可能な1以上の点変異を有するポリペプチドを用いてモナチンを作っている。
モナチンを生成する単離された組換え細胞が開示されている。これらの細胞は、植物、動物、菌類、酵母、藻類、古草菌、又は真菌細胞のようないかなる細胞でもよい。これらの細胞を用いて、該細胞を含む栄養培地を発酵させることによりモナチンを合成することができる。該栄養培地には、グルコース、トリプトファン、インドール−3−乳酸、及び/又はインドール−3−ピルベート及び2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸といったモナチン前駆体を含むモナチンの合成に適したあらゆる分子が含まれていてもよいが、これに限定されるものではない。
特定の例では、開示される細胞は以下の活性を1種類以上、例えば、以下の活性を2種類以上又は3種類以上含む:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.5)、複数基質アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.19)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.28)、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.2)、トリプトファンオキシダーゼ(EC番号無し、Hadarら、J.Bacterial 125:1096−1104、1976及びFuruyaら、Biosci Biotechnol Biochem 64:1486−93、2000)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.99.1)、D−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.3)、Dアラニンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.21)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)又は4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.16)といったシンターゼ/リアーゼ(EC4.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2.−)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(Kohiba及びMito、第8回ビタミンB6及びカルボニル触媒に関する国際シンポジウムの議事録、大阪、日本1990年)、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT、EC2.6.1.42)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.2、1.4.1.3、1.4.1.4)及びロイシン(分枝鎖)デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)。
別の例では、細胞は以下の活性を1種類以上、例えば、以下の活性を2種類以上又は3種類以上含む:インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.110)、R−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.222)、3−(4)−ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC1.1.1.237)、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3)、(3−イミダゾール−5−n)乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.111)、乳酸オキシダーゼ(EC1.1.3.−)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)又は4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.16)といったシンターゼ/リアーゼ(4.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2.−)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.19)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.28)、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.5)、複数基質アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT、EC2.6.1.42)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.2、1.4.1.3、1.4.1.4)、ロイシン(分枝鎖)デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.99.1)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、及び/又はDアラニンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.21)。
更に、開示される細胞は以下の活性を1種類以上、例えば、以下の活性を2種類以上又は3種類以上含む:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.5)、複数基質アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.19)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.28)、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.2)、トリプトファンオキシダーゼ(EC番号無し)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.99.1)、D−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.3)、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.21)、インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.110)、R−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.222)、3−(4)−ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC1.1.1.237)、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3)、(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.111)、乳酸オキシダーゼ(EC1.1.3.−)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)又は4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.16)といったシンターゼ/リアーゼ(4.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2.−)、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT、EC2.6.1.42)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.2、1.4.1.3、1.4.1.4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、ロイシン(分枝鎖)デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)及び/又はD−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ。
モナチンは、トリプトファン及び/又はインドール−3−乳酸を、トリプトファン及び/又はインドール−3−乳酸をインドール−3−ピルベートに変換する第一のポリペプチドと接触させ(D又はL型のトリプトファン又はインドール−3−乳酸をインドール−3−ピルベートへ変換される基質として用いることができる;当業者であれば、本工程のために選択されたポリペプチドが理想的に適切な特異性を示すことを理解するであろう)、生じたインドール−3−ピルベートを、インドール−3−ピルベートを2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(MP)へと変換する第二のポリペプチドと接触させ、該MPを、MPをモナチンへと変換する第三のポリペプチドと接触させることを含む方法により生成することができる。上記変換に用いることのできる典型的なポリペプチドを図2及び3に示す。
本発明の別の局面からは、MPのような組成物、並びに、少なくとも1種類の外来性核酸配列にコードされる少なくとも2種類のポリペプチド、又は時として少なくとも3種類又は少なくとも4種類のポリペプチドを含む細胞が提供される。
本開示の上記及び他の局面は、以下の詳細な説明及び例示から明らかである。
配列表
添付される配列表に列挙される核酸及びアミノ酸の配列が、ヌクレオチド塩基については標準文字の略号を用い、アミノ酸については3文字コードを用いて示されている。各核酸配列のうち1本鎖のみが示されているが、しかし、表示される全ての鎖についての言及において相補鎖も含まれているものと理解すべきである。
配列番号1及び2は、それぞれシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)由来のアミノトランスフェラーゼの核酸及びアミノ酸配列を示す(文字通り、チロシン又は芳香族アミノトランスフェラーゼと呼ばれるtatA遺伝子)。
配列番号3及び4は、それぞれロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(2.4.1)由来のチロシンアミノトランスフェラーゼの核酸及びアミノ酸配列を示す(tatA(配列番号1及び2)との相同性から、ゲノミクス用ソフトウェアにより「アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ」であると予想された)。
配列番号5及び6は、それぞれロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(35053)由来のアミノトランスフェラーゼの核酸及びアミノ酸配列を示す(配列番号3及び4の2.4.1の配列に基いてクローニングされた新規な配列)。
配列番号7及び8は、それぞれ大形リーシュマニア(Leishmania major)由来の広範囲の基質に対するアミノトランスフェラーゼ(bsat)の核酸及びアミノ酸配列を示す。
配列番号9及び10は、それぞれバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来の芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT)の核酸及びアミノ酸配列を示す。
配列番号11及び12は、それぞれラクトバシラス・アミロヴォラス(Lactobacillus amylovorus)由来の芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT)の新規な核酸及びアミノ酸配列を示す(相同性により芳香族アミノトランスフェラーゼと同定された)。
配列番号13及び14は、それぞれR.スフェロイデス(R.sphaeroides)(35053)由来の複数基質アミノトランスフェラーゼ(msa)の核酸及びアミノ酸配列を示す(Accession No.AAAEO1000093.1,bp14743−16155及びAccession No.ZP00005082.1に対する相同性により複数基質アミノトランスフェラーゼと同定された)。
配列番号15−16は、B.サブチリス(B.subtilis)のD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat)配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号17−18は、S.メリロティ(S.meliloti)のtatA配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号19−20は、B.サブチリス(B.subtilis)のaraTアミノトランスフェラーゼ配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号21−22は、ロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(2.4.1及び35053)の複数基質アミノトランスフェラーゼ配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号23−24は、大形リーシュマニア(Leishmania major)のbsat配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号25−26は、ラクトバシラス・アミロヴォラス(Lactobacillus amylovorus)のaraT配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号27−28は、R.スフェロイデス(R.sphaeroides)のtatA配列(2.4.1及び35053の両方)のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号29−30は、大腸菌(E.coli)のaspC配列(遺伝子配列はGenbank Accession No.:AEOOO195.1、タンパク質配列は、Genbank Accession No.:AAC74014.1)のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号31及び32は、それぞれ大腸菌(E.coli)由来の芳香族アミノトランスフェラーゼ(tyrB)の核酸及びアミノ酸配列を示す。
配列番号33−34は、大腸菌(E.coli)のtryB配列のクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号35−40は、4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(KHG)(EC4.1.3.16)活性を有するポリペプチドのクローニングに使用されたプライマーを示す。
配列番号41及び42は、P00913(GI:401195)及びP31013(GI:401201)のタンパク質をコードする、大腸菌(E.coli)由来のトリプトファナーゼ(tna)及びシトロバクテル・フロインディイ(Citrobacter freundii)由来のチロシンフェノール−リアーゼ(tpl)の核酸配列を示す。
配列番号43−46は、トリプトファナーゼポリペプチド及びβ−チロシナーゼ(チロシンフェノールリアーゼ)ポリペプチドのクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号47−54は、トリプトファナーゼポリペプチド及びβ−チロシナーゼポリペプチドの変異に用いたプライマーを示す。
配列番号55−64は、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)活性を有するポリペプチドのクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号65及び66は、C.テストステロニ(C.testosteroni)由来の4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(proA)の核酸及びアミノ酸の配列をそれぞれ示す。
配列番号67−68は、pET30 Xa/LIC中の大腸菌(E.coli)aspCを有するオペロン内へのC.テストステロニ(C.testosteroni)4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(proA)のクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号69−72は、pESC−his内への大腸菌(E.coli)aspC及びC.テストステロニ(C.testosteroni)proAのクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号73−74は、ここに開示する遺伝子のクローニングに用いたプライマーの5’末端に付加された配列を示す。
配列番号75−76は、HEX遺伝子及び遺伝子産物の核酸及びアミノ酸の配列(NCBI 受託番号1 AHF A GI:1127190)(HEXAspCアミノトランスフェラーゼアミノ酸配列)をそれぞれ示す。
配列番号77−78は、大腸菌(E.coli)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC)又は変異aspCアミノトランスフェラーゼ(HEX)の遺伝子配列のクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号79−80は、大腸菌(E.coli)チロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrb)のクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号81−82は、Z.モビリス(Z.mobilis)(ATCC 29191)のkhg遺伝子のクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号83及び84は、Z.モビリス(Z.mobilis)のkhg遺伝子(Accession No:.AE008692.1 GI:56542470)及び遺伝子産物(Accession No.:AAV89621.1 GI:56543467)の核酸及びアミノ酸の配列をそれぞれ示す。
配列番号85−86は、タンパク質GI:1788722(タンパク質同定番号AAC75438.1)をコードする2496317−2495079番目の塩基のGI:48994873としてNCBIに寄託された大腸菌(E.coli)yfdZ遺伝子配列のクローニングに用いたプライマーを示す。
配列番号87及び88は、リゾビウム・レグミノサラム・ビオヴァル・ヴィシエ(Rhizobium leguminosarum biovar viciae)rhiz23g02−p1k 1009 341(サンガー研究所)由来のアルドラーゼの核酸及びアミノ酸の配列をそれぞれ示す。
複数の実施態様の詳細な説明
省略形及び用語
以下の用語及び方法の説明の提供により、よりよく本開示内容を説明し、当業者を本開示内容の実施へと導く。ここで用いられる「包含する」は「含む」ことを意味する。加えて、文脈から他に明確に示されない限りは、単数形には複数形での意味も含まれる。例えば、「タンパク質を含む」という言及には、1つ又は複数のそのようなタンパク質が含まれており、また、「前記細胞を含む」という言及には、1つ又はそれよりも多くの細胞、及び当業者に公知なそれに相当するもの等についての言及が含まれる。「約」という用語には、いずれかの測定において生じる実験誤差の範囲が含まれる。他に記載がない限り、全ての測定数値は、「約」という単語が明確に使用されていない場合であっても、該単語「約」をその数値の前に有しているものと仮定する。
他に説明のない限り、ここで用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、本開示内容が属する技術分野の当業者に一般的に理解される意味と同様の意味を有する。ここに記載される方法及び原料と類似する方法及び原料又は同一の方法及び原料を本開示内容の実施又は試験に用いることは可能であるが、適切な方法及び原料は下記に説明される。該原料、方法、及び実施例は、単に例示的なものであり、制限を設けることを意味するものではない。本開示内容のその他の特徴及び優位性は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明らかである。
cDNA(相補的DNA):内部の非コーディングセグメント(イントロン)及び転写を決定する制御配列を含まないDNAの断片。cDNAは、細胞から抽出されたメッセンジャーRNAから逆転写することにより実験室で合成することが可能である。
保存的置換:ポリペプチド内にける1個のアミノ酸の他のアミノ酸への置換であり、該ポリペプチドの活性に対して微細ないし皆無の影響を有するもの。該置換は、変換されたアミノ酸が構造的又は機能的に類似することが判明するかどうかに関わらず、保存的であるものと考えられる。例えば、理論上、1又はそれ以上の保存的置換を含むトリプトファンアミノトランスフェラーゼポリペプチドは、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性を維持する。ポリペプチドは、例えば、部位特異的変異誘発又はPCR又は当該技術分野で公知の他の方法のような標準的な方法を用いて、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することにより1又はそれより多くの保存的置換を含むように生成することが可能である。
タンパク質内の本来のアミノ酸を置換でき、該ポリペプチドの活性に対しての影響が微細ないし皆無である場合に保存的置換とみなすことができるアミノ酸の非限定的な例には、以下のものが含まれる:Ser又はThrで置換されたAla;Gln、His、又はLysで置換されたArg;Glu、Gln、Lys、His、Aspで置換されたAsn;Asn、Glu、又はGlnで置換されたAsp;Ser又はAlaで置換されたCys;Asn、Glu、Lys、His、Asp、又はArgで置換されたGln;Asn、Gln、Lys、又はAspで置換されたGlu;Proで置換されたGly;Asn、Lys、Gln、Arg、Tyrで置換されたHis;Leu、Met、Val、Pheで置換されたIle;Ile、Met、Val、Pheで置換されたLeu;Asn、Glu、Gln、His、Argで置換されたLys;Ile、Leu、Val、Pheで置換されたMet;Trp、Tyr、Met、Ile、又はLeuで置換されたPhe;Thr、Alaで置換されたSer;Ser又はAlaで置換されたThr;Phe、Tyrで置換されたTrp;His、Phe、又はTrpで置換されたTyr;並びにMet、Ile、Leuで置換されたVal。
とりわけ他の部位における、保存的置換についての更なる情報は、Ben−Bassatら、(J.Bacteriol.169:751−7,1987)、O’Reganら、(Gene 77:237−51,1989)、Sahin−Tothら、(Protein Sci.3:240−7,1994)、Hochuliら、(Bio/Technology 6:1321−5,1988)、WO00/67796(Curdら.)並びに遺伝学及び分子生物学の標準的教科書において見つけることができる。
由来する:本明細書と請求項の目的のため、以下の1以上のものが当てはまる場合には、その物質は生物又は供給源に「由来する」:1)該物質が、該生物/供給源に存在する;2)該物質が天然の宿主から取り出されている;又は、3)該物質が、天然の宿主から取り出され、例えば変異誘発等により進化している。
酵素的に生成する:「酵素的に生成する」というフレーズ、又は「酵素的に生成された」若しくは「酵素的に合成された」等の類似するフレーズは、少なくとも1種類のポリペプチドを生体外(例えば、試験管又は反応器で1種類以上のポリペプチドを用いる)、又は生体内(例えば、細胞全体内又は発酵反応)のいずれかで用いた生成物(モナチン等)の製造を意味する。生成物を「酵素的に生成する」ことは、化学的な試薬又は反応の使用を除外するものではない一方で、該生成物の製造において少なくとも1つの反応を促進する少なくとも1種類のポリペプチドの使用を包含する。
外来性:ここで核酸及び特定の細胞との関係において用いられる「外来性」という用語は、自然界に見出される状態にある該特定の細胞に由来しない全ての核酸を意味する。従って、非天然の核酸は、細胞に導入されれば該細胞にとって外来性のものとして考慮される。天然の核酸についても、特定の細胞にとっては外来性と成りうる。例えば、個人Xの細胞から単離された全染色体は、個人Yの細胞に関しては、該染色体がYの細胞に導入されれば外来性の核酸である。
機能的に同等:同等な機能を有すること。酵素に関しては、機能的に同等な分子には、該酵素の機能を保持する異なる分子が含まれる。例えば、機能的同等物は、酵素の配列において、1以上の配列変異が、変異を伴わないペプチドの酵素活性のような機能を保持する配列変異により提供できる。特定の例では、トリプトファンアミノトランスフェラーゼの機能的同等物は、トリプトファンをインドール−3−ピルベートに変換する能力を保持する。
配列変異の例としては、保存的置換、欠失、変異、フレームシフト及び挿入が挙げられるが、これに限定されるものではない。1つの例で、任意のポリペプチドがある抗体に結合し、機能的同等物は同じ抗体に結合するポリペプチドである。従って、機能的同等物には、あるポリペプチドと同じ結合特異性を有し、該ポリペプチドの代わりの試薬として使用可能なペプチドが含まれる。1つの例では、ある機能的同等物が、結合配列が非連続的であるが、抗体がその直線エピトープに結合するポリペプチドを含む。従って、ペプチドの配列がMPELANDLGL(配列番号12のアミノ酸1−10)の場合には、機能的同等物には、以下のように表わすことが可能な非連続的エピトープが含まれる(**=介在するアミノ酸の全ての数値):NH2−**−M**P**E**L**A**N**D**L**G**L−COOH。この例において、前記ポリペプチドは、該ポリペプチドの3次元構造が配列番号12のアミノ酸1−10に結合するモノクローナル抗体に結合可能である場合には、配列番号12のアミノ酸1−10と機能的に同等である。
ハイブリダイゼーション:ここで用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、2つの核酸分子のヌクレオチド配列の相補性についての、相補的な1本鎖DNA及び/又はRNAが2重分子を形成する能力に基く試験方法を意味する。核酸のハイブリダイゼーション技術を用いて本開示内容の範囲内にある単離された核酸を得ることが可能である。簡潔には、配列番号11に記載される配列と一定の相同性を有するいかなる核酸をプローブとして用いて、中程度から非常にストリンジェントな条件下におけるハイブリダイゼーションにより類似する核酸を同定することが可能である。同定された後には、該核酸は、精製し、シーケンスし、解析することで本開示内容の範囲に含まれるかどうかを決定することができる。
ハイブリダイゼーションは、サザン又はノーザン解析により行なわれ、プローブにハイブリダイズするDNA又はRNA配列をそれぞれ同定することが可能である。前記プローブは、ビオチン、ジゴキシゲニン、ポリペプチド、又は32Pといった放射性同位体により標識できる。前記DNA又はRNAは、Sambrookら、「(1989)分子クローニング法(Molecular Cloning),第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、プレインヴュー、ニューヨーク州」の第7.39−7.52章に記載される方法のような当業者にとって周知の標準的手法を用いて、アガロース又はポリアクリルアミドのゲル上で電気泳動により分離し、ニトロセルロール、ナイロン又はその他の適切なメンブランに移し、プローブとハイブリダイズさせることが可能である。典型的には、プローブは少なくとも約20ヌクレオチドの長さにある。例えば、配列番号11に記載される隣接する20ヌクレオチドの配列に対応するプローブを用いて同一又は類似の核酸を同定することが可能である。更に、20ヌクレオチドよりも長い又は短いプローブを用いることもできる。
また、本開示内容は、少なくとも約12塩基の長さにあり(例えば、少なくとも約13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、100、250、500、750、1000、1500、2000、3000、4000、又は5000塩基の長さ)、ハイブリダイゼーション条件下において、配列番号11に示される配列を有する核酸のセンス鎖又はアンチセンス鎖にハイブリダイズする単離された核酸の配列を提供する。該ハイブリダイゼーション条件は、中程度に又は非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であってもよい。
本開示内容の目的として、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、ハイブリダイゼーションが、25mMのKPO4(pH7.4)、5×SSC、5×デンハルト溶液、50μg/mLの変性超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、及び1−15ng/mLのプローブ(約5x107cpm/μg)を含むハイブリダイゼーション溶液中で約42℃にて行なわれる一方で、洗浄が2×SSC及び0.1%硫酸ドデシルナトリウムを含む洗浄用溶液で約50℃にて行なわれることを意味する。
非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、ハイブリダイゼーションが、25mMのKPO4(pH7.4)、5×SSC、5×デンハルト溶液、50μg/mLの変性超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、及び1−15ng/mLのプローブ(約5x107cpm/μg)を含むハイブリダイゼーション溶液中で約42℃にて行なわれる一方で、洗浄が0.2×SSC及び0.1%硫酸ドデシルナトリウムを含む洗浄用溶液で約65℃にて行なわれることを意味する。
単離された:ここで用いられる「単離された」という用語は、その天然宿主から取り出された全ての物質について言及される;該物質は生成される必要はない。例えば、「単離された核酸」は、該核酸が由来する生物の天然のゲノムでは該核酸が隣接する両隣の配列(1つは5’末端で1つは3’末端)に隣接してない天然の核酸を意味する。例えば、単離された核酸は、これに制限されることはないが、天然のゲノムにおいて通常その組換えDNA分子に隣接して見付かる核酸配列の1つが取り除かれている又は欠如している場合には、いかなる長さの組換えDNAであってもよい。従って、単離された核酸には、ベクター、自然に複製されるプラスミド、ウィルス(例えばレトロウィルス、アデノウィルス、又はヘルペスウィルス)又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに挿入された組換えDNAと共に、他の配列とは独立した分離された分子(例えば、cDNA又はPCR又は制限エンドヌクレアーゼ処理により作られたゲノムDNAの断片)として存在する組換えDNAが含まれるが、これに限定されることはない。これに加え、単離された核酸には、ハイブリッド又は融合核酸配列の部分である組換えDNA分子が含まれていてもよい。
非天然の核酸配列は自然界に見出されず、天然のゲノムにおいても隣接する配列を有しないのであるから、ここで核酸との関連で用いられる「単離された」という用語には、あらゆる非天然の核酸も含まれる。例えば、操作された核酸等の非天然の核酸は、単離された核酸であるものと考慮される。操作された核酸は、通常の分子クローニング又は化学的核酸合成の手法により作り出すことが可能である。単離された非天然の核酸は、他の配列から独立しているか、又はベクター、自然に複製するプラスミド、ウィルス(例えば、レトロウィルス、アデノウィルス、又はヘルペスウィルス)、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに挿入されていてもよい。更に、非天然の核酸には、ハイブリッド又は融合核酸配列の部分である核酸分子が含まれていてもよい。
例えば、cDNA若しくはゲノムライブラリー、又はゲノムDNAの制限酵素消化物を含むゲル切片に含まれる数100ないし数100万個の他の核酸分子の中に混在する核酸は、単離された核酸としては考慮されない。
核酸:ここで用いられる「核酸」という用語には、RNA、並びに、これらに制限されないが、cDNA、ゲノムDNA、及び合成(例えば化学的に合成された)DNAを含むDNAの両方が包含される。該核酸は、二本鎖又は一本鎖でもよい。一本鎖の場合には、該核酸は、センス鎖又はアンチセンス鎖であってもよい。更に、核酸は環状又は直線状であってもよい。
機能的に連結している:第一の核酸配列が、第二の核酸配列と機能的に関連して配置された場合であれば、該第一の核酸配列は、該第二の核酸配列と「機能的に連結している」。例えば、プロモーターがコーディング配列の転写に作用するならば、該プロモーターは該コーディング配列と機能的に連結している。一般的に、機能的に連結されたDNA配列は、隣接しており、二つのポリペプチドコーディング領域を結合させる必要がある場合には、同一のリーディングフレーム内にある。
ペプチド修飾:本開示には、酵素及びその合成の実施形態が含まれる。更に、所望の酵素活性を有する類似体(非ペプチドの有機分子)、誘導体(開示されるペプチド配列から開始して得られる化学的に機能化されたペプチド分子)及び変異体(ホモログ)を、ここに記載される方法で用いることができる。ここに開示されるペプチドには、L−及び/又はD−アミノ酸、天然及びその他でもよいアミノ酸の配列が含まれる。
ペプチドを種々の化学的手法により修飾して、該非修飾ペプチドと本質的に同じ活性を有し、これに付随的してその他の所望の特性を有する誘導体を生成することができる。例えば、タンパク質のカルボン酸基は、カルボキシル末端又は側鎖であれ、医薬的に許容可能なカチオンの塩として提供されるか、又はエステル化されてC1−C16のエステルを形成するか、又はR1及びR2が別個独立してH又はC1−C16のアルキルである一般式NR1R2のアミドに変換されるか、又は結合されて5員環若しくは6員環等の複素環を形成することができる。ペプチドのアミノ基は、アミノ末端又は側鎖であれ、HCl、HBr、酢酸、安息香酸、硫酸トルエン、マレイン酸、酒石酸及びその他の有機塩のような医薬的に許容可能な酸付加塩の形態にあってもよく、又はC1−C16のアルキル若しくはジアルキルアミノへと変換されてもよく、若しくは更にアミドまで変換されてもよい。
ペプチド側鎖のヒドロキシル基は、周知の手法によりC1−C16のアルコキシ又はC1−C16のエステルへと変換することができる。ペプチド側鎖のフェニル環及びフェノール環は、1以上のF、Cl、Br若しくはIのようなハロゲン原子、又はC1−C16のアルキル、C1−C16のアルコキシ、カルボン酸及びそのエステル、若しくはこのようなカルボン酸のアミドにより置換することができる。ペプチド側鎖のメチレン基は、同族のC2−C4アルキレンに伸長することができる。チオールは、アセトアミド基のような数多くの周知の保護基のうち、いずれか1種類により保護することができる。また、当業者であれば、本開示に係るペプチドに環状構造を導入して、該ペプチドの構造に増大した安定性を生じる構造的条件を選択して提供する方法も理解するであろう。例えば、ペプチドが酸化された場合にジスルフィド結合を含むように該ペプチドにC末端又はN末端のシステインを付加して、環状ペプチドを作り出すことができる。その他のペプチドを環化する方法には、チオエーテル並びにカルボキシル末端及びアミノ末端のアミド及びエステルの形成が含まれる。
ペプチド模倣薬及び生物模倣薬(organomimetic)の化学的成分の三次元的配置は、ペプチドのバックボーン及びその成分のアミノ酸側鎖の三次元的配置を模倣するものであり、結果として本開示に係るタンパク質のこのようなペプチド模倣薬及び生物模倣薬が検出可能な酵素活性を有することになることから、このようなペプチド模倣薬及び生物模倣薬の実施形態も本開示の範囲内にある。コンピューターモデリングの適用については、ファルマコフォアが、生物学的活性に対する構造上の要件の三次元的な決定をするのに理想的である。ペプチド模倣薬及び生物模倣薬は、最新のコンピューターモデリング用ソフトウェアを用いて(コンピューター援用薬品設計(computer assisted drug design)又はCADDを用いる)、各ファルマコフォアに適合するように設計することができる。CADDにおいて使用される技術の記載に関しては、Klegerman及びGroves(編集)、Pharmaceutical Biotechnology、1993、インターファーム出版に掲載される、Walters、「コンピューターによる薬品のモデリング(Computer−Assisted Modeling of Drugs)」:Buffalo Grove、ILの第165−74ページ、並びにMunson(編集)、「薬理学の原理(Principles of Pharmacology)、1995、Chapman & Hallの第102章を参照。また、これらの手法を用いて調製された模倣薬についても本開示の範囲内に含まれる。一例としては、酵素、又はその変異体、断片、若しくは融合体により作り出される酵素活性を模倣する模倣薬がある。
ProAアルドラーゼ:「ProA」及び/又は「ProAアルドラーゼ」は、歴史的にコマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)由来の4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼのみを同定するものとして用いられてきたが、他に記載のない限り、ここでは「ProA」及び/又は「ProAアルドラーゼ」という用語は、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドを意味するものとして用いる。ProA又はProAアルドラーゼの適切な例としては、C.テストステロニ(C.testosteroni)のProA (配列番号66)及びシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)のProA(NCBI Accession No.:CAC46344)、又はC.テストステロニ(C.testosteroni)のProA(配列番号66)及び/又はシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)のProA(NCBI Accession No.:CAC46344)に対する相同性を示す酵素が挙げられる。例えば、安定な酵素であれば、C.テストステロニ(C.testosteroni)のProA(配列番号66)及び/又はシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)のProA(NCBI Accession No.:CAC46344)に対して少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、及び/又は99%の配列同一性を有するであろう。
プローブ及びプライマー:核酸のプローブ及びプライマーは、ここに提示されるアミノ酸配列及び核酸配列に基き直ちに調製することが可能である。「プローブ」には、検出可能な標識又はレポーター分子を含む単離された核酸が含まれる。典型的な標識には、放射性同位体、リガンド、化学発光剤、及びポリペプチドが含まれるが、これに限定されるものではない。標識方法及び種々の目的に適した標識の選択の手引きについては、例えば、Sambrookら.(編集)、「分子クローニング(Molecular Cloning):実験マニュアル(A Laboratory Manual)」第2版、第1−3巻、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1989、及びAusubelら.(編集)「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、グリーネ出版及びウィリーインターサイエンス社(Greene Publishing and Wiley−Interscience)、ニューヨーク州(定期的更新を伴う)、1987、において議論されている。
「プライマー」とは、典型的には10個以上のヌクレオチドを有する核酸分子である(例えば、約10個から約100個の間のヌクレオチドを有する核酸分子である)。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションにより、相補的な標的の核酸鎖にアニーリングして、該プライマー及び該標的核酸鎖との間にハイブリッドを形成し、その後に、例えばDNAポリメラーゼポリペプチドにより該標的核酸鎖に沿って伸長することが可能である。プライマー対は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は当該技術分野にて公知のその他の核酸増幅法による核酸配列の増幅に用いることも可能である。
プローブ及びプライマーの調製方法及び使用方法は、例えば、Sambrookら.(編集)、「分子クローニング(Molecular Cloning):実験マニュアル(A Laboratory Manual)」第2版、第1−3巻、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1989;Ausubelら.(編集)「分子生物学における最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、グリーネ出版及びウィリーインターサイエンス社(Greene Publishing and Wiley−Interscience)、ニューヨーク州(定期的更新を伴う)、1987;及びInnisら.(編集)、「PCR法プロトコル(PCR Protocols):方法と応用へのガイダンス(A Guide to Methods and Applications)」、アカデミック出版:サンディエゴ、1990、のような文献中に記載されている。PCRプライマー対は、例えば、プライマー(0.5版、著作権1991、ホワイトヘッド生物医学研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)等の、その目的のために意図されたコンピュータープログラムを用いることにより、公知の配列から得ることが可能である。当業者であれば、特定のプローブ又はプライマーの特異性は、その長さに伴って増加するが、プローブ又はプライマーは完全長配列から短くても5つの連続するヌクレオチドの配列までの長さの範囲内で変動可能なことを理解するであろう。従って、例えば、20個の連続するヌクレオチドからなるプライマーは、これに対応する15個のヌクレオチドのみからなるプライマーよりも高い特異性をもって標的にアニーリングすることが可能である。従って、より高い特異性を得るためには、プローブ及びプライマーは、例えば、10、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、3000、3050,3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300、4350、4400、4450、4500、4550、4600、4650、4700、4750、4800、4850、4900、5000、5050、5100、5150、5200、5250、5300、5350、5400、5450、又はこれよりも多くの連続するヌクレオチドを含むものから選択することができる。
プロモーター:核酸の転写を支配する核酸制御配列が配列したものである。プロモーターは、転写開始部位付近に必要な核酸配列を含み、例えば、ポリメラーゼII型のプロモーターであれば、TATA因子を含む。プロモーターには、遠位のエンハンサー又はリプレッサー因子が含まれていてもよく、これらは、転写開始部位から数1000塩基対もの位置にあってもよい。
精製された:ここで用いられる「精製された」という用語は、完全な純粋さを要するものではなく、むしろ相対的な用語として意図されている。従って、例えば、精製されたポリペプチド又は核酸試料とは、該対象のポリペプチド若しくは核酸が生物内の自然環境にあるポリペプチド若しくは核酸よりも高い濃度にあるか、又はこれらが取り出されてきた環境中よりも高い濃度にあるものでよい。
組換え:「組換え」核酸とは、(1)該核酸が発現される生物において天然に存在しない配列、又は(2)組換え核酸よりも短く、別々であった2つの配列を人工的に連結させることにより作られた配列を有するものである。この人工的な連結は、場合により、化学合成、又は、より一般的に、例えば遺伝子操作技術等による単離された核酸断片の人工操作により行なうことができる。「組換え」は、人工的に操作されてはいるが、その核酸が単離された生物に見られるものと同一の制御配列及びコーディング領域を有する核酸分子の表現にも用いられる。
配列の同一性:アミノ酸配列間の同一性は、他において配列の同一性と呼ばれてはいるものの、配列間の類似性に関して表現されている。配列の同一性は、多くの場合百分率による同一性(又は類似性又は相同性)により測定される;パーセンテージが高い程に、2つの配列はより類似する。配列番号12のようなペプチドのホモログ又は変異体は、標準的方法を用いてアラインメントした場合に、比較的高い配列同一性を有する。
比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野において周知である。種々のプログラム及びアラインメントアルゴリズムが下記に記載されている:Smith及びWaterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981;Needleman及びWunsch,J.MoI.Biol.48:443−53,1970;Pearson及びLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444−8,1988;Higgins及びSharp,Gene 73:237−44,1988;Higgins及びSharp,CABIOS 5:151−3,1989;Corpetら.,Nucleic Acids Research 16:10881−90,1988;並びにAltschulら,Nature Genet.6:119−29,1994。
NCBIベーシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST(商標))(Altschulら,J.Mol.Biol.215:403−10,1990)は、blastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxの配列解析プログラムと組み合わせて使用するために、米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI、ベセスダ、メリーランド州)及びインターネットを含む複数の供給源から利用可能である。
ペプチドの変異体は、典型的に、blastpのギャップがデフォルトのパラメータとして設定されているNCBI Blast 2.0を用いてアミノ酸配列との完全長アラインメントについて計算して、少なくとも50%の配列同一性を有することにより特徴づけられる。約30個のアミノ酸よりも大きなアミノ酸配列の比較には、デフォルトのパラメータに設定されたデフォルトBLOSUM62マトリックス(11のギャップ存在コスト、そして1の残基ギャップコスト毎)を用いたBlast2配列機能が利用される。短いペプチド(約30個のアミノ酸よりも少ない)のアラインメントの場合には、該アラインメントは、デフォルトのパラメータに設定されたPAM30マトリックス(開いたギャップ9で、伸長ギャップ1のペナルティー)を利用したBlast2配列機能を用いて行なわれる。対象の配列と更に高い類似性を有するタンパク質は、この方法により評価された場合には、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%までもの配列同一性といった、増大した百分率の同一性を示すであろう。全配列よりも小さな部分が配列同一性について比較される場合には、ホモログ及び変異体は、典型的には、10−20個のアミノ酸の短い領域に対して少なくとも80%の配列同一性を有するであろうし、該対象の配列に対する類似性に依存して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は98%の配列同一性を有してもよい。このような短い領域における配列同一性の決定方法は、米国メリーランド州ベセスタの米国国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)により維持されるウェブサイトに記載されている。当業者であれば、これらの配列同一性の範囲は、単に指針として提示されているに過ぎないことを理解するであろう;提示される範囲に該当しない非常に重要なホモログが得られることは十分に可能性のあることである。
類似する方法を用いて、核酸配列の配列同一性パーセントを測定することができる。特定の例においては、相同的な配列は天然の配列とアラインメントされ、そして両配列中の同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が存在する位置の数を計算することによりマッチングの数が求められる。配列同一性パーセントは、同定された配列(例えば配列番号11)に示される配列の長さ、又は統合された長さ(例えば、同定された配列に示される配列からの100個の連続するヌクレオチド又はアミノ酸残基)のいずれかにより前記マッチングの数を割って、続いて生じた値に100を掛けることにより求められる。例えば、配列番号11に示される配列とアラインメントした場合に1166のマッチングを有するアミノ酸配列は、該配列番号11に示される配列と75.0パーセント同一である(即ち、1166÷1554*100=75.0)。配列同一性パーセント値は、最も近い10分の1の値へと切り捨て(切り上げ)られる。ことに注意すべきである。例えば、75.11、75.12、75.13、及び75.14は75.1へと切り捨てられ、75.15、75.16、75.17、75.18、及び75.19は、75.2へと切り上げられる。また、長さの値は必ず整数であることにも注意すべきである。別の例では、以下の同定された配列からの20個の連続するヌクレオチドとアラインメントされる20−ヌクレオチド領域を含む標的配列は、該同定された配列と75パーセントの配列同一性を共有する領域を含む(即ち、15÷20*100=75)。
特異的結合剤:ここに記載されるポリペプチドのいずれかに特異的に結合可能な薬剤。例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(ヒト化モノクローナル抗体を含む)、及びFab、F(ab’)2、及びFvフラグメントのようなモノクローナル抗体の断片、並びにこのようなポリペプチドのエピトープに特異的に結合可能なその他の薬剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。
ここに提示されるポリペプチド(又はその断片、変異体又は融合体)に対する抗体を用いてこのようなポリペプチドを精製又は同定することが可能である。ここに提示されるアミノ酸及び核酸の配列により、ここに記載されるポリペプチドを認識する特異的抗体ベースの結合剤を生産することが可能となる。
ポリペプチド、該ポリペプチドの部分、又はその変異体に対するモノクローナル又はポリクローナル抗体は作成することができる。ポリペプチド抗原上の1以上のエピトープに対して誘起された抗体は、該ポリペプチドを特異的に検出するであろう。即ち、1種類の特定のポリペプチドに対して誘起された抗体は、該特定のポリペプチドを認識して結合するであろうが、その他のポリペプチドを実質的に認識して結合することはないであろう。特定のポリペプチドに対して抗体が特異的に結合することの判定は、数多くの標準的イムノアッセイ法の一つにより行なうことができる;例えば、ウェスタンブロッティング法がある(例えば、Sambrookら.(編集)、「分子クローニング(Molecular Cloning):実験マニュアル(A Laboratory Manual)」第2版、第1−3巻、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、1989を参照)。
ウェスタンブロッティング法により、任意の抗体試料(配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに対してマウス内で生成された試料のような)が適当なポリペプチド(例えば、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド)を特異的に検出することを判定するため、総細胞タンパク質を細胞から抽出してSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離することが可能である。
前記分離された総細胞タンパク質は、その後、メンブラン(例えばニトロセルロース)に移すことができ、そして前記抗体試料は該メンブランと共にインキュベートされる。前記メンブランを洗浄して非特異的に結合した抗体を除去した後、アルカリホスファターゼのようなポリペプチドに結合した適切な二次抗体(例えば、抗マウス抗体)を用いると、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウムの適用が結果として免疫局在性のアルカリホスファターゼにより濃い青色の化合物を生じるので、特異的に結合した抗体の存在を検出することが可能である。
免疫原としての使用に適した実質的に純粋なポリペプチドは、形質移入された細胞、形質転換された細胞、又は野生型の細胞から得ることができる。最終試料中のポリペプチド濃度は、例えば、アミコン(Amicon)フィルター装置上での濃縮により、1ミリリットル毎に数マイクログラムの濃度まで調整することができる。更に、完全長のポリペプチドから9アミノ酸残基しか有しないポリペプチドの大きさの範囲内にあるポリペプチドを免疫原として利用することができる。このようなポリペプチドは、細胞培養中で精製可能であり、標準的方法を用いて化学的に合成可能であり、又は巨大なポリペプチドを生成可能なより小さなポリペプチドに切断することにより得ることもできる。9アミノ酸残基の長さしか有しないポリペプチドは、MHCクラスI又はMHCクラスII分子のような主要組織適合複合体(MHC)分子との関連における免疫系に晒された場合には、免疫原性と成りうる。従って、ここに開示されるいずれかのアミノ酸配列の連続したアミノ算残基を少なくとも9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、900、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350個、又はこれよりも多く有するポリペプチドは、抗体の生産のための免疫原として用いることができる。
ここに開示されるポリペプチドのいずれもに対するモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein(Nature 256:495−7,1975)の古典的な方法又はそれから派生した方法に従って、マウスハイブリドーマから調製することが可能である。
ここに開示されるあらゆるポリペプチドの雑多なエピトープに対する抗体を含むポリクローナル抗血清は、修飾されていないか若しくは免疫原性を高めるために修飾された該ポリペプチド(又はその断片)で適切な動物を免疫することにより調製することが可能である。ウサギの効果的な免疫プロトコルは、Vaitukaitisら.(J Clin. Endocrinol.Metab.33:988−91,1971)に見出すことができる。
全体抗体に代わって抗体の断片を用いることも可能であり、容易に原核生物宿主細胞内で発現することができる。「抗体断片」とも呼ばれるモノクローナル抗体の免疫学的に有効な部分の作製及び使用の方法は、周知であり、Better及びHorowitz(Methods Enzymol.178:476−96,1989)、Glockshuberら.(Biochemistry 29:1362−7,1990)、米国特許第5,648,237号(「機能的抗体断片の発現(Expression of Functional Antibody Fragments)」)、米国特許第4,946,778号(「一本鎖ポリペプチド結合性分子(Single Polypeptide Chain Binding Molecules)」)、米国特許第5,455,030号(「一本鎖ポリペプチド結合性分子を用いた免疫療法(Immunotherapy Using Single Chain Polypeptide Binding Molecules)」)、及びこれらに引用される参考文献に記載される方法も含まれる。
立体反転アミノトランスフェラーゼ:「立体反転アミノトランスフェラーゼ」とは、反対のキラリティーの基質をアミノドナーとして用いることで、優先的に又は選択的にキラルアミノ酸生成物(モナチンのような)を生成可能なポリペプチドである。例として、立体反転アミノトランスフェラーゼは、優先的に又は選択的にL−グルタメートを基質として用いてR,Rモナチンを生成するD−フェニルグリシンアミノトランスフェラーゼ(又はD−4−ヒドロキシフェニルグリシンアミノトランスフェラーゼとも呼ばれる)でもよい。これに限定されない立体反転アミノトランスフェラーゼの例としては、D−メチオニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.41)及びD−フェニルグリシンアミノトランスフェラーゼ活性又はD−4−ヒドロキシフェニルグリシンアミノトランスフェラーゼ活性を有する酵素が挙げられる。
形質転換された:「形質転換された」細胞とは、例えば分子生物学的手法により核酸分子が導入された細胞である。形質転換は、このような細胞に核酸分子が導入されうる全ての技術を包含し、これに限定されるものではないが、ウィルスベクターを用いた形質移入、接合、プラスミドベクターを用いた形質転換、及びエレクトロポレーション、リポフェクション、及びパーティクルガン加速による裸のDNAの導入が含まれる。
変異体、断片又は融合タンパク質:開示されるタンパク質には、その変異体、断片及び融合体が含まれる。タンパク質(例えば配列番号12)、融合タンパク質、又はタンパク質の断片若しくは変異体をコードするDNA配列(例えば配列番号11)は、真核生物細胞、バクテリア、昆虫、及び/又は植物中で該タンパク質を発現できるように操作することが可能である。発現を得るため、該DNA配列は、変更したり他の制御配列と機能的に連結したりすることが可能である。前記制御配列及び前記タンパク質を含む最終産物がベクターと呼ばれる。このベクターは、真核生物、バクテリア、昆虫、及び/又は植物の細胞に導入することができる。細胞内に入ったら、前記ベクターにより前記タンパク質の生成が可能となる。
例えば配列番号12のトリプトファンアミノトランスフェラーゼ(又はその変異体、多型、突然変異体、若しくは断片)のようなタンパク質で、例えばトリプトファンをインドール−3−ピルベートへと変換する能力などの、該タンパク質の所望の活性を阻害しない他のアミノ酸配列と連結されているタンパク質を含む融合タンパク質。1つの例においては、前記他のアミノ酸配列は、その長さが約10、12、15、20、25、30、又は50個のアミノ酸以下である。
当業者であれば、DNA配列は、そのコードするタンパク質の生物学的活性に影響することなく数多くの方向に変更することが可能であることを理解するであろう。例えば、PCRを用いてタンパク質をコードするDNA配列に変異を作り出すことが可能である。このような変異体は、前記タンパク質の発現に用いられる宿主内のコドン選択について最適化された変異、又は発現を促進する他の配列変化であってもよい。
ベクター:細胞に導入されることにより形質転換された細胞を作り出す核酸分子。ベクターには、複製開始点のような該ベクターを細胞内で複製させる核酸配列が含まれていてもよい。また、ベクターには、1以上の選択可能なマーカー遺伝子及び当該分野で公知の他の遺伝因子も含まれていてもよい。
生合成経路の概要
図1−3及び11−13に示すように、種々の生合成経路を用いてモナチン又はインドール−3−ピルベート若しくはMPのようなモナチンの中間体を生成することが可能である。各基質(グルコース、トリプトファン、インドール−3−乳酸、インドール−3−ピルベート、及びMP)の各生成物(トリプトファン、インドール−3−ピルベート、MP及びモナチン)への変換には、複数の異なるポリペプチドを用いることができる。更に、これらの反応は、生体内、生体外、又は生体内反応と非酵素的化学反応を含む生体外反応のような生体外反応との組み合わせを通じて行なうことができる。従って、図1−3及び11−13は、例示的なものであり、所望の生成物を得るために用いることのできる複数の異なる経路を示している。
グルコースからトリプトファンへ
種々の生物は、グルコースからトリプトファンを生成することができる。このような生物に、グルコース及び/又はトリプトファンからモナチン、MP、及び/又はインドール−3−ピルベートを生成するために要する遺伝子を含む構築物をクローニングすることができる。ここでは、トリプトファンをモナチンへ変換可能なことを示す。
他の例においては、生物は、公知のポリペプチドを用いてトリプトファンを生成するよう、又はトリプトファンを過剰生成するように操作される。例えば、米国特許第4,371,614号(ここに参考文献として組み入れられている)には、野生型トリプトファンオペロンを含むプラスミドにより形質転換された大腸菌(E.coli)株が記載されている。
米国特許第4,371,614号に開示されるトリプトファンの最大力価は、約230ppmである。同様に、国際特許出願公開公報WO8701130号(ここに参考文献として組み入れられている)には、トリプトファンを生成するように遺伝子操作された大腸菌(E.coli)株が記載され、L−トリプトファンの発酵生産の増加について議論がなされている。当業者であれば、グルコースからトリプトファンを生成可能な生物が、グルコース又はフルクトース−6−ホスフェートに変換可能な他の炭素及びエネルギーの供給源を利用して同様の結果を得ることも可能なことを理解するであろう。典型的な炭素及びエネルギーの供給源には、これに限定されるものではないが、スクロース、フルクトース、デンプン、セルロース又はグリセロールが含まれる。
トリプトファンからインドール−3−ピルベートへ
複数のポリペプチドを用いてトリプトファンをインドール−3−ピルベートに変換することが可能である。典型的にポリペプチドには、酵素クラス(EC)2.6.1.27、1.4.1.19、1.4.99.1、2.6.1.28、1.4.3.2、1.4.3.3、2.6.1.5、2.6.1.−、2.6.1.1及び2.6.1.21の構成要素が含まれる。これらのクラスには、L−トリプトファン及び2−オキソグルタレートをインドール−3−ピルベート及びL−グルタメートへと変換するトリプトファンアミノトランスフェラーゼ(L−フェニルアラニン−2−オキソグルタレートアミノトランスフェラーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、5−ヒドロキシトリプトファン−ケトグルタル酸トランスアミナーゼ、ヒドロキシトリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファントランスアミナーゼ、及びL−トリプトファン:2−オキソグルタレートアミノトランスフェラーゼとも呼ばれる);D−トリプトファン及び2−オキソ酸をインドール−3−ピルベート及びアミノ酸へと変換するD−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ;L−トリプトファン及びNAD(P)をインドール−3−ピルベート及びNH3及びNAD(P)Hへと変換するトリプトファンデヒドロゲナーゼ(NAD(P)−L−トリプトファンデヒドロゲナーゼ、L−トリプトファンデヒドロゲナーゼ、L−Trp−デヒドロゲナーゼ、TDH及びL−トリプトファン:NAD(P)オキシドレダクターゼ(脱アミノ化する));D−アミノ酸及びFADをインドール−3−ピルベート及びNH3及びFADH2に変換するD−アミノ酸デヒドロゲナーゼ;L−トリプトファン及びフェニルピルベートをインドール−3−ピルベート及びL−フェニルアラニンへと変換するトリプトファン−フェニルピルベートトランスアミナーゼ(L−トリプトファン−α−ケトイソカプロエートアミノトランスフェラーゼ及びL−トリプトファン:フェニルピルベートアミノトランスフェラーゼとも呼ばれる);L−アミノ酸及びH2O及びO2を2−オキソ酸及びNH3及びH2O2へと変換するL−アミノ酸オキシダーゼ(ヘビアミノ酸オキシダーゼ及びL−アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱アミノ化する)とも呼ばれる);D−アミノ酸及びH2O及びO2を2−オキソ酸及びNH3及びH2O2へと変換するD−アミノ酸オキシダーゼ(ヘビアミノ酸オキシダーゼ及びD−アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱アミノ化する));並びにL−トリプトファン及びH2O及びO2をインドール−3−ピルベート及びNH3及びH2O2へと変換するトリプトファンオキシダーゼ、と呼ばれるポリペプチドが含まれる。これらのクラスには、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、D−アミノ酸(又はD−アラニン)アミノトランスフェラーゼ、及び複数のアミノトランスフェラーゼ活性を有する広範囲な(複数の基質)アミノトランスフェラーゼも含まれ、これらのうちいくつかは、トリプトファン及び2−オキソ酸をインドール−3−ピルベート及びアミノ酸に変換することができる。
配列番号11及び12に示される新規なアミノトランスフェラーゼを含む、このような活性を有するアミノトランスフェラーゼクラスの11種類の構成要素が、下記実施例1に記載されている。従って、本開示は、配列番号11及び12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%もの配列同一性を有する単離された核酸及びタンパク質の配列を提供する。また、本開示に包含されるものとしては、アミノトランスフェラーゼ活性を維持するか、又はアミノトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質をコードする配列番号11及び12の断片並びに融合体がある。典型的な断片としては、これに限定されるものではないが、配列番号11の少なくとも10、12、15、20、25、50、100、200、500、又は1000個の連続するヌクレオチド、又は配列番号12の少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、200、300又は350個の連続するアミノ酸が挙げられる。開示される配列(及びその変異体、断片、及び融合体)は、ベクターの一部分であってもよい。該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換することが可能であり、それによって、トリプトファンからインドール−3−ピルベートを生成可能な組換え細胞を作り出すことができ、いくつかの例ではこれらは更にMP及び/又はモナチンを生成することが可能である。
L−アミノ酸オキシダーゼ(1.4.3.2)は公知であり、配列は、ヴィペラ・レベティネ(Vipera lebetine)(P81375種)、オフィオファガス・ハナア(Ophiophagus hannah)(P81383種)、アグキストロドン・ロドストマ(Agkistrodon rhodostoma)(P81382種)、クロタラス・アトロクス(Crotalus atrox)(P56742種)、ブルコルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、シロイヌナズナ、カウロバクテル・クレセンタス(Caulobacter cresentus)、クラミドモナス・レインハルティイ(Chlamydomonas reinhardtii)、ハツカネズミ、シュードモナス−シリンゲ(Pseudomonas syringae)、及びロドコッカス(Rhodococcus)株のような複数の異なる供給源から単離することが可能である。更に、トリプトファンオキシダーゼは前記文献に記載されており、例えば、コプリヌス(Coprinus)種SF−I、根こぶ病を有する白菜、シロイヌナズナ、及び哺乳動物の肝臓から単離することが可能である。トリプトファンをインドール−3−ピルベートに変換可能なL−アミノ酸オキシダーゼクラスの1つの構成要素が、別の分子クローニング用供給源と共に、下記実施例5で議論されている。種々のD−アミノ酸オキシダーゼの遺伝子は、分子クローニング用のデータベースで利用可能である。
トリプトファンデヒドロゲナーゼは公知であり、例えば、ホウレン草、ピサム・サティヴァム(Pisum sativum)、プロソピス・ジュリフローラ(Prosopis juliflora)、豆、メスキート、小麦、トウモロコシ、トマト、タバコ、クロモバクテリウム・ヴィオラセウム(Chromobacterium violaceum)、及びラクトバシリ(Lactobacilli)から単離することができる。種々のD−アミノ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子配列が公知となっている。
米国特許第5,728,555号には、水の存在下においてトリプトファンをインドール−3−ピルベート及びアンモニウムに変換できるフェニルアラニンデアミナーゼ(EC3.5.1.−)が開示されている。このような広い特異性を有する酵素は、プロテウス・ミキソファシエンス(Proteus myxofaciens)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ヴルガリス(Proteus vulgaris)及びプロテウス・モルガニイ(Proteus morganii)のようなプロテウス微生物から単離でき、対応する遺伝子はクローニングされ、シーケンスされている。例えば、プロテウス・ヴルガリス(Proteus vulgaris)デアミナーゼ(タンパク質受託番号:BAA90864.1 GI:7007412;遺伝子受託番号:AB030003.1 GI:7007411);プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)デアミナーゼ(タンパク質受託番号:AAA86752.1 GI:1015426;遺伝子受託番号:U35383.1 GI:1015425)を参照。トリプトファンをインドール−3−ピルベートに変換可能なL−デアミナーゼは、プロヴィデンシア(Providencia)及びモルガネラ(Morganella)にも含まれている。H.Drechsel,A.Thieken,R.Reissbrodt,G.Jung,及びG.Winkelmann.J.Bacteriol.,175:2727−2733(1993)を参照。
図11−13に示されるように、トリプトファンオキシダーゼのようなアミノ酸オキシダーゼを用いてトリプトファンをインドール−3−ピルベートに変換する場合には、カタラーゼを添加して過酸化水素を還元し、又はその存在を排除することまでも可能である。
インドール−3−ラクテートからインドール−3−ピルベート
インドール−3−ラクテートをインドール−3−ピルベートへと変換する反応は、ポリペプチドの1.1.1.110、1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3、1.1.1.222、1.1.1.237、1.1.3.−、又は1.1.1.111クラスの構成要素のような種々のポリペプチドにより触媒されることが可能である。前記ポリペプチドの1.1.1.110クラスには、インドールラクテートデヒドロゲナーゼ(インドール乳酸:NAD+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。前記1.1.1.27、1.1.1.28、及び1.1.2.3クラスには、ラクテートデヒドロゲナーゼ(乳酸ヒドロゲナーゼ、ラクテート:NAD+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。前記1.1.1.222クラスには、(R)−4−ヒドロキシフェニルラクテートデヒドロゲナーゼ(D−芳香族ラクテートデヒドロゲナーゼ、R−芳香族ラクテートデヒドロゲナーゼ、及びR−3−(4−ヒドロキシフェニル)ラクテート:NAD(P)+2−オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれ、そして前記1.1.1.237クラスには、3−(4−ヒドロキシフェニルピルベート)レダクターゼ(ヒドロキシフェニルピルベートレダクターゼ及びA−ヒドロキシフェニルラクテート:NAD+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。前記1.1.3.−クラスには、ラクテートオキシダーゼが含まれ、前記1.1.1.111クラスには、(3−イミダゾール−5−イル)ラクテートデヒドロゲナーゼ((S)−3−(イミダゾール−5−イル)ラクテート:NAD(P)+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。恐らく、これらのクラス中の複数のポリペプチドが、インドール−3−乳酸からのインドール−3−ピルベートの生成を可能とする。この変換の例は、実施例4に提示される。
化学反応を用いてインドール−3−乳酸をインドール−3−ピルベートに変換することも可能である。このような化学反応には、例えば、以下のような、複数の方法を用いて達成可能な酸化工程が含まれる:B2触媒(China Chemical Reporter,v 13,n 28,p 18(1),2002)、希釈過マンガン酸(permanganate)及び過塩素酸(perchlorate)、又は金属触媒の存在下で過酸化水素を用いた空気酸化。
インドール−3−ピルベートから2−ヒドロキシ2−(インドール−3イルメチル)−4−ケトグルタル酸(MP)へ
複数の公知のポリペプチドを用いてインドール−3−ピルベートをMPへ変換することが可能である。典型的なポリペプチドクラスには、4.1.3.−、4.1.3.16、4.1.3.17、及び4.1.2.−が含まれる。これらのクラスには、2つのカルボン酸基質の縮合を触媒するアルドラーゼのような、炭素−炭素シンターゼ/リアーゼが含まれる。ペプチドクラスEC4.1.3.−は、オキソ酸基質(インドール−3−ピルベートのような)を求電子体として用いて炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼであり、一方、EC4.1.2.−は、アルデヒド基質(ベンズアルデヒドのような)を求電子体として用いて炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼである。
例えば、欧州特許第1045−029号に記載されるポリペプチド(EC4.1.3.16,4−ヒドロキシ−2−オキソグルタレートグリオキシレート−リアーゼであり、4−ヒドロキシ−2−オキソグルタレートアルドラーゼ、2−オキソ−4−ヒドロキシグルタレートアルドラーゼ又はKHGアルドラーゼとも呼ばれる)は、グリオキシル酸及びピルベートを4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸、及び4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタレートアルドラーゼのポリペプチド(EC4.1.3.17、また、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタレートピルベート−リアーゼ又はProAアルドラーゼとも呼ばれる)へと変換し、2個のピルベート等の2つのケト酸を4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタレートへと縮合する。これらのリアーゼを用いた反応は、ここに記載されている。
図1−2及び11−13には、3炭素(C3)分子が、インドール−3−ピルベートと結合するこれらの反応の概略図が示されている。EC4.1.2.−及び4.1.3.−の多くの構成要素、特にPLPを利用するポリペプチドは、セリン、システイン、及びアラニンのようなアミノ酸、又はこれらの誘導体であるC3分子を利用することができる。EC4.1.2.−及び4.1.3.−の典型に触媒されるアルドール縮合では、この経路の三炭素分子(即ち、C3炭素供給源)がピルベート又はピルベートの誘導体であることが要求される。しかしながら、他の化合物もC3炭素供給源として機能してピルベートに変換されることが可能である。アラニンは、上記で指摘された多くを含む種々のPLPを利用するトランスアミナーゼによりアミノ基転移され、ピルベートを生み出すことが可能である。ピルベート及びアンモニアは、L−セリン、L−システイン、及び、O−メチル−L−セリン、O−ベンジル−L−セリン、S−メチルシステイン、S−ベンジルシステイン、S−アルキル−L−システイン、0−アシル−L−セリン、及び3−クロロ−L−アラニンのような十分な脱離基を有するセリン及びシステインの誘導体のβ脱離反応(トリプトファナーゼ又はβ−チロシナーゼに触媒されるような)により得ることが可能である。アスパルテートは、トリプトファナーゼ(EC4.1.99.1)及び/又はβ−チロシナーゼ(EC4.1.99.2、又はチロシン−フェノールリアーゼとも呼ばれる)により触媒される反応等の、PLP媒介性のβ−リアーゼ反応において、ピルベートの供給源として機能することができる。β−リアーゼ反応の速度は、Mouratouら.(J.Biol.Chern 274:1320−5,1999)及び実施例18に記載されるように、前記(4.1.99.1−2)ポリペプチドに部位特異的変異誘発を行なうことにより増加させることが可能である。これらの修飾により、前記ポリペプチドがジカルボキシルアミノ酸基質を許容可能となる。ラクテートもピルベートの供給源として機能することが可能であり、ラクテートデヒドロゲナーゼ及び酸化された補因子、又はラクテートオキシダーゼ及び酸素の添加によりピルベートへと酸化される。これらの反応の例を下記に記載する。例えば、図2及び図11−13に示されるように、ピルベートをC3分子として用いた場合に、ProAアルドラーゼをインドール−3−ピルベートと接触させることができる。
MPも、実施例8に提示されるアルドール縮合のような化学反応を用いて作り出すことが可能である。
MPからモナチンへ
MPからモナチンへの変換は、以下の1以上により触媒可能である:トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.27)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(1.4.1.19)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(1.4.99.1)、グルタメートデヒドゲナーゼ(1.4.1.2−4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、ロイシン(分枝鎖)デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)、トリプトファン−フェニルピルベートトランスアミナーゼ(2.6.1.28)、又はより一般的にアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(2.6.1.5)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.21)(図2)及び分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT、EC2.6.1.42)のようなアミノトランスフェラーゼファミリー(2.6.1.−)の構成要素。配列番号11及び12に示されるアミノトランスフェラーゼクラスの新規な構成要素を含む、該アミノトランスフェラーゼクラスの11個の構成要素が下記(実施例1)に記載されており、アミノトランスフェラーゼ及びデヒドロゲナーゼ酵素の活性を示す反応が、実施例15に提示されている。
上記反応は、化学反応を用いても行なうことができる。ケト酸(MP)のアミノ化は、アンモニア及びナトリウムシアノボロヒドリドを用いた還元的アミノ化により行なわれる。
図11−13は、インドール−3−ピルベート又はトリプトファンからの増加したモナチンの収量を提供すると共に、MPのモナチンへの変換に使用可能な更なるポリペプチドを示す。例えば、アスパルテートがアミノドナーとして用いられる場合には、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを用いてアスパルテートをオキサロアセテートへと変換できる(図11)。該オキサロアセテートは、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(図11)及び2−オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(EC4.1.1.71)のようなデカルボキシラーゼによりピルベート及び二酸化炭素へと変換される。これに加え、リジンがアミノドナーとして用いられる場合には、リジンεアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.36)を用いてリジンをアリシンへと変換することが可能である(図12)。該アリシンは、自動的に1−ピペリデイン6−カルボキシレートへと変換される(図12)。図12に示す工程に類似する工程では、リジンεアミノトランスフェラーゼの代わりにオルニチンδ−アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.13)が用いられ、オルニチンはアミノドナーとして機能する。還元的アミノ化反応を触媒可能なポリペプチド(例えばグルタミン酸デヒドロゲナーゼ)を用いてMPをモナチンへと変換する場合、NAD(P)Hを再利用すること及び/又は揮発性生成物を生成することが可能なギ酸デヒドロゲナーゼのようなポリペプチド(図13)を用いることができる。
生合成経路の設計における更なる検討
いずれのポリペプチドを用いてインドール−3−ピルベートを作り出すかに依存して、MP及び/又はモナチン、補因子、基質、及び/又は追加的なポリペプチドが産生細胞に提供されて生成物の形成を促進することが可能である。
過酸化水素の除去
過酸化水素(H2O2)は、生産された場合には、産生細胞にとって有毒となり、生成されるポリペプチド又は中間体を損傷する可能性がある。上記のL−アミノ酸オキシダーゼは、H2O2を生成物として作り出す。従って、L−アミノ酸オキシダーゼを用いた場合には、生じるH2O2は除去可能であるか、又はその濃度が低下して前記細胞又は生成物に対する潜在的な損傷を低下させる。
カタラーゼを用いて細胞中のH2O2濃度を減少させることが可能である(図11−13)。前記産生細胞は、過酸化水素の水及び酸素ガスへの分解を触媒するカタラーゼ(EC1.11.1.6)をコードする遺伝子又はcDNA配列を発現することができる。例えば、カタラーゼは、前記産生細胞に形質移入されたベクターから発現されることが可能である。使用可能なカタラーゼの例としては、これに限定されるものではないが、下記のものが挙げられる:tr|Q9EV50(スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus))、tr|Q9KBE8(バシラス・ハロジュランス(Bacillus halodurans))、tr|Q9URJ7(カンディダ・アルビカンス(Candida albicans))、tr|P77948(ストレプトミセス・コエリコロール(Streptomyces coelicolor))、tr|Q9RBJ5(キサントモナス・カペストリス(Xanthomonas campestris))(SwissProt Accession Nos.)。L−アミノ酸オキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ、又はトリプトファンオキシダーゼを利用した生触媒反応も、カタラーゼポリペプチドを含んでいてもよい。
PLP(ピリドキサル−5’−ホスフェート)利用可能性の調節
図1に示されるように、PLPは、ここに記載される1以上の生合成工程において利用することができる。PLP濃度は、補充することが可能であるので、PLPは、該反応全体の効率に対する制限となるものではない。
ビタミンB6(PLPの前駆体)の生合成経路については、大腸菌(E.coli)において徹底的に研究が行なわれ、そのタンパク質のいくつかは結晶化されている(Laberら,FEBS Letters,449:45−8,1999)。他の代謝経路では、前記遺伝子のうち2つ(epd又はgapB及びserC)が要求されるが、ピリドキサルホスフェートの生合成には3つの遺伝子(pdxA、pdxB、及びpdxJ)が固有のものとなる。大腸菌(E.coli)の経路における開始材料の1つとして、1−デオキシ−D−キシルロース−5−ホスフェート(DXP)がある。通常の2及び3炭素の中心的な代謝物からのこの前駆体の合成は、1−デオキシ−D−キシルロース−5−ホスフェートシンターゼ(DSX)というポリペプチドにより触媒される。他の前駆体は、4炭糖であるD−エリスロース4−ホスフェートから形成されるスレオニン誘導体である。ホスホ−4−ヒドロキシル−Lスレオニン(HTP)への変換に必要な遺伝子は、epd、pdxB、及びserCである。PLP形成における最終反応は、pdxA及びpdxJの遺伝子産物により触媒される、DXP及びHTP間での複雑な分子内縮合及び閉環反応である。
モナチンを生成する発酵の間、PLPが限られた栄養分となるならば、産生宿主細胞内の1以上の前記経路の遺伝子の増大した発現を用いてモナチンの収量を増加させることが可能である。宿主生物は、その天然経路の遺伝子の複数コピーを含むことができ、又は非天然経路の遺伝子のコピーを該生物のゲノムに導入することもできる。更に、サルベージ経路遺伝子の複数のコピーを前記宿主生物にクローニングすることもできる。
全ての生物において保存される1つのサルベージ経路では、種々のビタミンB6誘導体を活性PLP型へと再利用する。この経路において必要とされるポリペプチドは、pdxKキナーゼ、pdxHオキシダーゼ、及びpdxYキナーゼである。これらの遺伝子の1種類以上の過剰発現によりPLP利用可能性を増大させることができる。
ビタミンB6濃度は、宿主生物内の天然生合成経路の遺伝子の代謝制御の除去又は抑制により上昇させることが可能である。PLPは、バクテリアのフラヴォバクテリウム(Flavobacterium)種238−7株における、前駆体であるスレオニン誘導体の生合成に必要なポリペプチドを抑制する。この代謝制御を有しない細菌株は、ピリドキサル誘導体を過剰生成し、20mg/LまでものPLPを排出できる。モナチンを生成する宿主生物の同様の方法での遺伝子操作により、生合成経路の遺伝子を過剰発現することなくPLPの生産量を増加させることができる。
アンモニウムの利用
トリプトファナーゼ反応は、アンモニアをより多く利用可能にするか、又は水を取り除くことにより合成方向(インドールからのトリプトファンの生成)へ促進することが可能である。グルタミン酸デヒドロゲナーゼにより触媒される反応のような還元的アミノ化反応についても、過剰量のアンモニウムにより正方向に傾けることができる。
アンモニアは、炭酸又はリン酸緩衝系において炭酸アンモニウム又はリン酸アンモニウム塩として利用可能にできる。また、アンモニアは、ピルビン酸アンモニウム又はギ酸アンモニウムとしても提供可能である。これに代わり、アンモニアは、前記反応がグルタミン酸デヒドロゲナーゼ、トリプトファンデヒドロゲナーゼ又は分枝鎖デヒドロゲナーゼのようなアンモニアを生産する反応と連結された場合にも供給可能である。アンモニアは、フェノール、又はインドール、ピルベート及びNH3へと加水分解される天然基質のEC4.1.99.−(チロシン又はトリプトファン)の添加により作り出すことが可能である。これにより、酵素にその好ましい基質を加水分解させることで通常の平衡量に亘って合成産物の収量を増加させること可能となる。
生成物及び副生成物の除去
トリプトファンアミノトランスフェラーゼを介したトリプトファンのインドール−3−ピルベートへの変換は、該反応がグルタメートを生成し、補基質である2−オキソグルタレート(α−ケトグルタレート)を必要とするので、インドール−3−ピルベートの生成速度に対して不利に作用する可能性がある。グルタメートは、前記アミノトランスフェラーゼの阻害を生ずる可能性があり、該反応は大量の前記補基質を消費するであろう。更に、高グルタメート濃度は、下流の分離工程に対して有害なものとなる。
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)のポリペプチドはグルタメートを2−オキソグルタレートへと変換し、それによってトリプトファンアミノトランスフェラーゼにより触媒される前記反応中の前記補基質を再利用する。また、GLDHは、好気的条件下での細胞のエネルギー(ATP)生産に用いられる還元性同等物(NADH又はNADPH)をも生産する。GLDHによるグルタメートの利用は、副生成物の形成を低下させる。これに加え、前記反応では、細胞への窒素供給源として、又は図1に示す最終工程の還元的アミノ化における基質として機能可能なアンモニアが生産される。従って、GLDHポリペプチドを過剰発現する産生細胞を用いて収量を増加させ、培地及び/又は分離工程のコストを低下させることができる。
トリプトファンからモナチンへの経路において、適切な酵素クラスからのアミノトランスフェラーゼが用いられた場合には、工程3のアミノドナー(例えば、グルタメート又はアスパルテート)は、変換されて工程1で必要とされるアミノアクセプターへ戻ることが可能である。この経路において、1のトランスアミナーゼの基質が他方のトランスアミナーゼの活性を競合的に阻害しない2種類の個別のトランスアミナーゼを利用することにより、この経路の効率を増加させることができる。
記載された経路における多くの反応は可逆的であり、従って、基質と生成物との間で平衡に達する。該経路の収量は、前記ポリペプチドからの生成物を継続的に取り除くことにより増加させることができる。例えば、パーミアーゼ又は他の輸送タンパク質を用いた発酵ブロスへのモナチンの分泌、又は基質の再利用を伴う生触媒反応の流れからのモナチンの選択的結晶化は、反応収量を増加させるであろう。
更なる酵素反応又はアミノドナー基の置換による副生成物の除去は、反応収量を増大させるもう1つの方法である。複数の例が実施例21で議論され、図11−13に示されている。理想的には、副生成物は、相転移(蒸発)又は二酸化炭素のような非反応性最終産物への自発的変換のいずれによっても、逆方向において反応に利用することができないように生成される。
基質プールの調整
インドールプールは、トリプトファン前駆体生産量の増加並びに/又はインドール−3−ピルベート及び/若しくはトリプトファンを伴う異化経路の変更により調整することができる。例えば、インドール−3−ピルベートからのインドール−3−酢酸の生成は、宿主細胞内のEC4.1.1.74をコードする遺伝子の機能的欠失により減少又は排除することができる。トリプトファンからのインドールの生成は、宿主細胞内のEC4.1.99.1をコードする遺伝子の機能的欠失により減少又は排除することができる。また、これに代わり、過剰量のインドールを、生体外又は生体内での製造方法においてEC4.1.99.1をコードする遺伝子の増加量との組み合わせで基質として利用することも可能である(Kawasakiら,J.Ferm.and Bioeng.,82:604−6,1996)。遺伝子操作を行なってD−エリスロース−4−ホスフェート及びコリスメートのような中間体の濃度を上昇させることも可能である。
トリプトファン生成は、殆どの生物において制御されている。その1つの機構として、該経路中の特定の酵素のフィードバック阻害によるものがある;トリプトファン濃度が上昇するにつれ、トリプトファン生成速度が低下する。従って、トリプトファン中間体を通じてモナチンを生成するよう操作された宿主細胞を用いた場合、トリプトファン濃度に対する感受性を有しない生物を用いることが可能である。例えば、種々のトリプトファン類似体による増殖阻害に耐性を有するカサランサス・ロセウス(Catharanthus roseus)の菌株が、高濃度の5−メチルトリプトファンに繰返し晒すことにより選択されている(Schallenberg及びBerlin,Z Naturforsch 34:541−5,1979)。前記菌株に生じるトリプトファンシンターゼ活性は、恐らく前記遺伝子の変異のために、生成阻害による比較的低度の影響を受けていた。同様にして、モナチン生成に用いる宿主細胞についても最適化することが可能である。
トリプトファン生成は、定向進化を用いて生成阻害に対する感受性が低いポリペプチドへと進化させることを通じて最適化することが可能である。例えば、スクリーニングは培地中にトリプトファンは含まないが、高濃度の非代謝性トリプトファン異性体を含むプレート上で行なうことが可能である。米国特許第5,756,345号;同第4,742,007号;及び同第4,371,614号には、発酵生物中のトリプトファン生産性の増大に用いる方法が記載されている。トリプトファン生合成の最終ステップは、インドールへのセリンの付加である;従って、セリンの利用性を高めることでトリプトファン生成量を増加させることができる。
発酵生物により生成されたモナチンの量は、宿主生物により生成されるピルベート量を増加させることにより増加させることが可能である。トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)(Wangら,Lett.Appl.Microbiol.35:338−42,2002)及びトルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)(Liら,Appl Microbiol.Biotechnol.57:451−9,2001)のような特定の酵母は、ピルベートを過剰生成しており、ここに開示される方法の実施に用いることができる。更に、大腸菌(E.coli)W1485lip2株(Kawasakiら.,J.Ferm.and Bioeng.82:604−6,1996)と同様に、生物に遺伝子操作を行なってピルビン酸生産を促進させることも可能である。
キラリティーの制御
モナチンの風味の性質は、該分子の立体化学(キラリティー)を制御することにより変更できる。例えば、別の食品系のための異なる濃度の混合においては、別のモナチン異性体が望まれるであろう。キラリティーは、pH及びポリペプチドの組み合わせにより制御することが可能である。
モナチンのC−4部位におけるラセミ化(上記の番号付けがされた分子を参照)は、pHのシフト又は補因子であるPLPとの反応により生じることが可能なα炭素の脱プロトン化及び再プロトン化により生じることが可能となる。微生物においては、ラセミ化を起こす程十分にpHがシフトすることはあり得ないが、PLPは豊富にある。ポリペプチドを用いてキラリティーをコントロールする方法は、モナチン生成に利用する生合成経路に依存する。
モナチンが図2に示す経路を用いて形成される場合、以下を考えることができる。生触媒反応においては、炭素−2のキラリティーは、インドール−3−ピルベートをMPへと変換する酵素により決定される。複数の酵素(例えば、EC4.1.2.−、4.1.3.−から)がインドール−3−ピルベートをMPへと変換できるので、従って、所望の異性体を形成する酵素を選択することが可能である。また、これとは別に、インドール−3−ピルベートをMPへと変換する酵素のエナンチオ特異性を定向進化により変更することが可能であり、又は触媒抗体を操作して所望の反応を触媒させることも可能である。MPが生成されたならば(酵素又は化学縮合のいずれかにより)、ここに記載されるようなトランスアミナーゼを用いて立体特異的にアミノ基を付加することが可能である。炭素−4のR又はS配位のいずれも、D−又はL−芳香族酸アミノトランスフェラーゼが使用されるのかに依存して作り出すことが可能である。殆どのアミノトランスフェラーゼはL−異性体に特異的であるが、しかし、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼも特定の植物内に存在している(Kohiba及びMito、第8回ビタミンB6及びカルボニル触媒に関する国際シンポジウムの議事録、大阪、日本1990年)。更に、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.21)、D−メチオニン−ピルベートアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.41)並びに(R)−3−アミノ−2−メチルプロパノエートアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.61)及び(S)−3−アミノ−2−メチルプロパノエートアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.22)の両方が同定されている。特定のアミノトランスフェラーゼについては、C2炭素において特定の配位を有する上記反応用の基質のみを許容するであろう。従って、MPへの変換が立体特異的でない場合であっても、トランスアミナーゼの適切な選択を通じて最終生成物の立体化学を制御することが可能である。前記反応は可逆的であるので、未反応のMP(所望でない同位体)は、再利用してその構成要素に戻すことが可能であり、MPのラセミ混合物を再形成することができる。
基質の活性化
ここに開示される反応において、ホスホエノールピルベート(PEP)のようなリン酸化された基質を使用することができる。リン酸化された基質はエネルギー的により好ましい場合があり、従って、反応速度及び/又は収量の増加に用いることができる。アルドール縮合では、リン酸基の付加により求核基質のエノール互変異性体が安定化され、より反応性が高められる。他の反応においては、リン酸化された基質は時としてより良好な脱離基を提供する。同様にして、基質はCoA誘導体又はピロリン酸誘導体への変換により活性化できる。
例証的な態様
1つの態様において、モナチン又はその塩は、HEXAspCアミノトランスフェラーゼ(NCBI Accession No:1 AHF A GI:1127190)のようなアミノトランスフェラーゼの使用を含む方法により生成することができる。例えば、HEXAspCアミノトランスフェラーゼを用いて、トリプトファン、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸、及びそれらの組み合わせから選択される基質を含む少なくとも1つの反応を促進することが可能である。
別の態様において、モナチン又はその塩は、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT)(EC2.6.1.42)及び/又は分枝鎖デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)の使用を含む方法により生成することができる。例えば、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ及び/又は分枝鎖デヒドロゲナーゼを用いて2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸の反応を促進することができる。適切な分枝鎖アミノトランスフェーゼ(BCAT)(EC2.6.1.42)には、AT−102又はAT−104が含まれていてもよい。適切な分枝鎖デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)には、AADH−110が含まれていてもよい。
別の態様において、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸又はその塩は、KHGアルドラーゼのようなアルドラーゼの使用を含む方法により生成することができる。適切なKHGアルドラーゼには、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ(Accession No.: AAV89621.1 GI:56543467)及び/又はZ.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ(Accession No.:AAV89621.1 GI:56543467)と少なくとも約90%同一のアミノ酸配列を含み、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ活性を有するポリペプチドが含まれていてもよい。ある態様では、適切なアルドラーゼには、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ(Accession No.:AAV89621.1 GI:56543467)と少なくとも約95%同一又は少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含み、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ活性を有するポリペプチドが含まれていてもよい。前記選択されたアルドラーゼを用いてインドール−3−ピルベートのような、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸の合成のための基質を必要とする反応を促進することが可能である。
他の態様において、モナチン又はその塩は、アルドラーゼを用いて、モナチンの生成のための基質を必要とし、生成されるモナチンの60%より多くがモナチンのR,R立体異性体となる反応を促進することを含む方法により生成することができる。前記反応に適切なアルドラーゼには、KHGアルドラーゼ(EC4.1.3.16)が含まれ、前記反応に適切な基質には、インドール−3−ピルベートが含まれていてもよい。
他の態様において、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸は、以下のものを含む適切な反応混合物を反応させることを含む方法により生成することができる:(a)トリプトファンのような適切な基質;(b)HEXAspCアミノトランスフェラーゼ(NCBI Accession No:1AHF A GI:1127190)、YfdZ(NCBI Accession No.AAC75438.1)及びこれらの組み合わせから選択される第一のポリペプチド;並びに(c)KHGアルドラーゼ(EC4.1.3.16)、ProAアルドラーゼ(EC4.1.3.17)、及びこれらの組合せから選択される第二のポリペプチド。前記基質にトリプトファンが含まれる場合には、該トリプトファンにはD−トリプトファン、L−トリプトファン、及びこれらの混合物が含まれていてもよい。前記トリプトファンは前記反応混合物に添加してもよく、更に/又は適切な基質(例えば、グルコース及びセリン)を反応させることによりその場所で生成することができる。ある態様では、前記トリプトファンにはD−トリプトファンが含まれる。前記KHGアルドラーゼには、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ(Accession No.:AAV89621.1 GI:56543467)及び/又はZ.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ(Accession No.:AAV89621.1 GI:56543467)と少なくとも約90%同一のアミノ酸配列を含み、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ活性を有するポリペプチドが含まれていてもよい。ある態様では、適切なアルドラーゼには、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ(Accession No.:AAV89621.1 GI:56543467)と少なくとも約95%同一又は少なくとも約99%同一のアミノ酸配列を含み、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼ活性を有するポリペプチドが含まれていてもよい。また、ある態様では、前記ProAアルドラーゼには、C.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ、S.メリロティ(S.meliloti)ProAアルドラーゼ、及びこれらの組み合わせが含まれていてもよい。前記選択されたポリペプチドは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中に存在する微生物により発現されてもよい。例えば、前記反応混合物には、前記選択されたポリペプチドが、該ポリペプチドを発現する適切な微生物で栄養培地を発酵することにより生成されるような栄養培地が含まれていてもよい。
他の態様において、モナチン又はその塩は、以下のものを含む反応混合物を反応させることにより生成することができる:(a)2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸のような適切な基質;並びに(b)YfdZ(NCBI Accession No.AAC75438.1)、HEXAspCアミノトランスフェラーゼ(NCBI Accession No:1AHF A GI:1127190)、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT)(EC2.6.1.42)、分枝鎖デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)、及びその組み合わせから選択されるポリペプチド。2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸は、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又はその場所で合成されてもよい。例えば、前記反応混合物には、更に(c)インドール−3−ピルベート;並びに(d)インドール−3−ピルベート及びC3炭素供給源を2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸へと変換可能な第二のポリペプチドが含まれていてもよい。前記インドール−3−ピルベートは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は適切な基質からその場所で合成されてもよい。前記選択されたポリペプチドは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中に存在する微生物により発現されてもよい。例えば、前記反応混合物には、前記選択されたポリペプチドの1種類以上を発現する微生物で発酵された栄養培地が含まれていてもよい。ある態様では、前記反応混合物には、YfdZ(NCBI Accession No.AAC75438.1)、HEXAspCアミノトランスフェラーゼ(NCBI Accession No:1AHF A GI:1127190)、又はこれらの組み合わせを含む細胞抽出物のような未精製の細胞抽出物が含まれていてもよい。
また、ある態様では、モナチン又はその塩は、以下のものを含む反応混合物を反応させることにより生成することができる:(a)2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸のような適切な基質;並びに(b)AT−101、AT−102、AT−103、AT−104、AADH−102、AADH−110、AADH−112、AADH−113、及びこれらの組み合わせから選択されるポリペプチド。ある態様では、前記選択されるポリペプチドは、AT−103でもよい。前記方法により生成されるモナチン又はその塩は、その大部分がモナチンのR,R立体異性体であってもよい。例えば、ある態様では、前記方法において生成されるモナチンの少なくとも約65%が、モナチンのR,R立体異性体であってもよい。
他の態様において、モナチン又はその塩は、モナチン組成物中に存在するモナチン又はその塩の少なくとも約80%がモナチンのR,R立体異性体であるようなモナチン組成物を酵素的に生成することにより、基質(トリプトファン及び/又はインドール−3−ピルベートのような)から生成することができる。前記方法の適切な態様では、前期モナチン組成物中に存在するモナチン又はその塩の少なくとも約84%が、モナチンのR,R立体異性体である。適切な基質には、トリプトファンが含まれていてもよく、これにはD−トリプトファン、L−トリプトファン又はこれらの混合物が含まれていてもよい。ある態様では、前記選択された基質はD−トリプトファンである。前記方法には、ProAアルドラーゼ(EC4.1.3.17)を提供することが含まれていてもよい。例えば、ProAアルドラーゼ(EC4.1.3.17)を提供してインドール−3−ピルベートから2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸への変換を促進することができる。ある態様では、前記方法には、AT−103(D−トランスアミナーゼ)のようなトランスアミナーゼを提供することが含まれていてもよい。例えば、AT−103(D−トランスアミナーゼ)を提供して、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸からモナチンへの変換を促進することができる。
他の態様において、モナチン又はその塩は、以下のものを含む反応混合物を反応させることを含む方法により生成することができる:(a)トリプトファン、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸、及びこれらの組み合わせから選択される基質;並びに(b)大腸菌(E.coli)AspCポリペプチド(NCBI Accession No.AAC74014.1)。前記大腸菌(E.coli)AspCポリペプチド(NCBI Accession No.AAC74014.1)には、ブタ細胞質ゾルのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの番号付け方式に基いて番号付けされた、第39、41、47、69、109、297番目、及びこれらの組み合わせから選択されるアミノ酸部位における少なくとも1つの置換を含んでいてもよい。適切な態様では、前記大腸菌(E.coli)AspCポリペプチドは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有してもよい。前記前記大腸菌(E.coli)AspCポリペプチドには、以下の置換の少なくとも1つが含まれていてもよい:第39番目のバリンからロイシンへの置換;第41番目のリジンからチロシンへの置換;第47番目のスレオニンからイソロイシンへの置換;第69番目のアスパラギンからロイシンへの置換;第109番目のスレオニンからセリンへの置換;第297番目のアスパラギンからセリンへの置換;及びこれらの組み合わせ。前記基質は、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は適切な基質からその場所で生成されてもよい。前記大腸菌(E.coli)AspCポリペプチドは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中に存在する微生物により発現されてもよい(例えば、前記大腸菌(E.coli)AspCポリペプチドを発現する微生物で、栄養培地が含まれていてもよい反応混合物を発酵させることによる)。
更なる態様においては、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸又はその塩は、以下のものを含む反応混合物を反応させることにより生成することができる:(a)インドール−3−ピルベートのような基質;及び(b)適切なアルドラーゼ。例えば、前記アルドラーゼは、ブラディリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)USDA 110株(NCBI Accession No:GI:27378953);スフィンゴモナス(Sphingomonas)(シュードモナス(Pseudomonas))パウシモビリス(paucimobilis)(NCBI Accession No:GI:19918963);イエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)KIM (NCBI Accession No: GI:21956715);ラルストニア・メタリジュランス(Ralstonia metallidurans)CH34(NCBI Accession No:GI:48767386);イエルシニア・シュードチュベルキュロシス(Yersinia pseudotuberculosis)IP 32953(NCBI Accession No:GI:51594436);リゾビウム・レグミノサラム・ビオヴァルヴィシエ(Rhizobium leguminosarum biovar viciae)rhiz23g02−p1k 1009 341(配列番号88);ノヴォスフィンゴビウム・アロマティシヴォランス(Novosphingobium aromaticivorans)DSM 12444(スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)F199)(NCBI Accession No:GI:48849026);シュードモナスプティダ(Pseudomonas putida)KT2440(NCBI Accession No:GI:24984081);マグネトスピリラム・マグネトタクティカム(Magnetospirillum magnetotacticum)MS−1(NCBI Accession No:GI:46200890);ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)CGA009(NCBI Accession No:GI:39937756);キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)ATCC−33913(NCBI Accession No:GI:21115297);キサントモナス・アキソノポディス・シトリ(Xanthomonas axonopodis citri)306(NCBI Accession No:GI:21110581);ストレプトマイシス・アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)MA−4680(NCBI Accession No:GI:29828159);及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。前記基質(例えば、インドール−3−ピルベート)は、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は適切な基質からその場所で生成されてもよい。前記アルドラーゼは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中に存在する微生物により発現されてもよい(例えば、選択されるアルドラーゼを発現する微生物で、栄養培地が含まれていてもよい反応混合物を発酵させることによる)。
更なる態様では、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸又はその塩は、以下のものを含む反応混合物を反応させることにより生成できる:(a) インドール−3−ピルベートのような基質;及び(b)適切なアルドラーゼ。例えば、適切なアルドラーゼには、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸リアーゼ活性を有しており、C.テストステロニ(C.testosteroni)ProA(配列番号66)と少なくとも約49%同一なアミノ酸配列、又はシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)ProA(NCBI Accession No.:CAC46344)と少なくとも約56%同一なアミノ酸配列を含んでいてもよい。ある適切な態様では、前記アルドラーゼは、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸リアーゼ活性を有しており、C.テストステロニ(C.testosteroni)ProA(配列番号66)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、及び/若しくは99%同一なアミノ酸配列、並びに/又はシノリゾビウムメリロティ(Sinorhizobium meliloti)ProA(NCBI Accession No.:CAC46344)と少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、及び/若しくは99%同一なアミノ酸配列を含むであろう。また、ある態様では、前記アルドラーゼは、C.テストステロニ(C.testosteroni)ProA(配列番号66)と少なくとも約60%同一なアミノ酸配列を含む。他の態様では、前記アルドラーゼは、C.テストステロニ(C.testosteroni)ProA(配列番号66)と少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を含む。前記基質(例えば、インドール−3−ピルベート)は、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中の適切な基質からその場所で生成されてもよい。前記アルドラーゼは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中に存在する微生物により発現されてもよい(例えば、選択されるアルドラーゼを発現する微生物で、栄養培地が含まれていてもよい反応混合物を発酵させることによる)。
更なる態様において、モナチン又はその塩は、以下のものを含む反応混合物を反応させることを含む方法により生成することができる:(a)トリプトファンのような基質;及び適切なデアミナーゼ(EC3.5.1.−)。ある態様では、前記デミナーゼは、以下のものから選択される微生物から得られる:プロテウス(Proteus)種、プロビデンシア(Providencia)種、モルガネラ(Morganella)種、又はこれらの組み合わせ。適切なデアミナーゼには、プロテウス・ミキソファシエンス(Proteus myxofaciens)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ヴルガリス(Proteus vulgaris)、プロテウス・モルガニイ(Proteus morganii)、及びこれらの組み合わせを含むが、これに限定されることのないプロテウス(Proteus)種から得られるデアミナーゼが含まれていてもよい。前記トリプトファンは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は適切な基質からその場所で生成されてもよい。前記デアミナーゼは、前記反応混合物に添加されてもよく、更に/又は該反応混合物中に存在する微生物により発現されてもよい(例えば、選択されるデアミナーゼを発現する微生物で、栄養培地が含まれていてもよい反応混合物を発酵させることによる)。
実施例1
トリプトファンアミノトランスフェラーゼのクローニング及び発現
本実施例は、トリプトファンのインドール−3−ピルベートへの変換に使用可能なトリプトファンアミノトランスフェラーゼのクローニングに用いた方法を記載する。該遺伝子は、pET 30 Xa/LICベクターにクローニングされ、切断可能なN末端HIS6−Tag/T7タグを有する複合タンパクが産生された。生じたタンパク質は固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製された。
実験の概要
アミノトランスフェラーゼをコードする11種類の遺伝子が、大腸菌にクローニングされた。これらの遺伝子は、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)のD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat、Genbank Accession No.Y14082.1 bp28622−29470及びGenbank Accession No. NP 388848.1、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)(又はリゾビウム・メリロティ(Rhizobhim meliloti)ともいう)のチロシンアミノトランスフェラーゼ(tatA、配列番号1及び2、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、ロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1株のチロシンアミノトランスフェラーゼ(ホモロジーによりアサートされたtatA、配列番号3及び4、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、R.スフェロイデス(R.sphaeroides)35053のチロシンアミノトランスフェラーゼ(ホモロジーによりアサートされた、配列番号5及び6、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、大形リーシュマニア(Leishmania major)の広範囲な基質に対するアミノトランスフェラーゼ(bsat、メキシコリーシュマニア(L.mexicana)からのペプチド断片に対するホモロジーによりアサートされた、配列番号7及び8、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)の芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT、ホモロジーによりアサートされた、配列番号9及び10、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、ラクトバシラス・アミロヴォラス(Lactobacillus amylovorus)の芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT、ホモロジーによりアサートされた、配列番号11及び12、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、R.スフェロイデス(R.sphaeroides)35053の複数基質に対するアミノトランスフェラーゼ(ホモロジーによりアサートされた、配列番号13及び14、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、ロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1株の複数基質に対するアミノトランスフェラーゼ(msa、ホモロジーによりアサートされた、Genbank Accession No.AAAEO 1000093.1, bp14743−16155及びGenbank Accession No.ZP00005082.1、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、大腸菌(Escherichia coli)のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC、Genbank Accession No.AE000195.1 bp2755−1565及びGenbank Accession No.AAC74014.1、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)、及び大腸菌のチロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrB、 配列番号31及び32、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)。
これらの遺伝子は、クローニングされ、発現されて、市販の酵素と共にトリプトファンをインドール−3−ピルベートに変換する活性について試験された。11種類全てのクローンが活性を有していた。
所望の活性を持つポリペプチドを収容可能な菌種の同定
NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベースには、トリプトファンアミノトランスフェラーゼとして称される遺伝子が無かった。しかしながら、この酵素の活性を有する生物が同定された。以下の供給源からの細胞抽出物又は精製されたタンパク質には、L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(TAT)活性が測定された:フェスカ・オクトフロラ(Festuca octoflora)からの根瘤菌単離物、エンドウマメのミトコンドリア及び細胞質ゾル、ヒマワリの根頭癌腫細胞、リゾビウム・レグミノサラム・ビオヴァル・トリフォリ(Rhizobium leguminosarum biovar trifoli)、エルウィニア・ヘルビコラpv.ギプソフィレ(Erwinia herbicola pv.gypsophilae)、シュードモナス・シリンゲpv.サヴァスタノイ(Pseudomonas syringae pv. savastanoi)、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アゾスピリラム・リプフェラム及びブラジレンス(Azospirillum lipferum & brasilense)、エンテロバクテル・クロアケ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクテル・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、ブラジリゾビウム・エルカニイ(Bradyrhizobium elkanii)、カンジダ・マルトサ(Candida maltosa)、アゾトバクテル・ヴィネランジイ(Azotobacter vinelandii)、ラットの脳、ラットの肝臓、シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)、シュードモナス・フルオレセンスCHAO(Pseudomonas fluorescens CHAO)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバシラス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・ヘルヴェティカス(Lactobacillus helveticus)、小麦の幼苗、大麦、ファセオラス・アウレウス(Phaseolus aureus)(リョクトウ)、サッカロミセス・ウヴァラム(Saccharomyces uvarum)(カールスベルゲンシス(carlsbergensis)),リーシュマニア(Leishmania)種、トウモロコシ、トマトの苗条、エンドウマメの木、タバコ、ブタ、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、及びストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)。
クローニングのためのゲノムDNAの単離
S.メリロティ(S.meliloti)(ATCC受託番号9930)を、pH7.2、25℃において、TY培地中で増殖した。600nmでの光学密度(OD600)が1.85になるまで細胞を増殖させ、ゲノムDNAの調製には2%の種菌を用いた。ゲノムDNAの単離には、キアゲンジェノミックチップ(Qiagen genomic tip)20/Gキット(バレンシア、カリフォルニア州)が用いられた。
バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)6051(ATCC)を30℃にてべレト・ニュートリエント・ブロス(Bereto Nutrient Broth)中で増殖した(Difco;デトロイト、ミシガン州)。キアゲンジェノミックチップ20/Gのプロトコルに以下の変更を加えたものを用いてゲノムDNAを単離した:プロテナーゼK及びリゾチームの濃度を2倍にし、インキュベーション時間を2−3倍に増やした。
大形リーシュマニア(Leishmania major)ATCC50122のゲノムDNAは、IDI社(ケベック州、 anada)からpH8.0のTEバッファー中に17ng/μLの濃度で提供された。
ロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1株(テキサス大学(ヒューストン)Sam Kaplan教授からの提供)、R.スフェロイデス(R.sphaeroides)35053(ATCC受託番号)、及びL.アミロヴォラス(L.amylovorus)のゲノムDNAを標準的なフェノール抽出により調製した。細胞は、対数期の後期に回収し、TENバッファー(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA、100mM NaCl)に再懸濁し、細胞懸濁液1mLに対して0.024mLのラウリルサルコシンナトリウムを添加することで溶解した。該DNA溶液については、TEバッファー(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA)で飽和したフェノールを等量用いて少なくとも3回抽出した後、クロロホルム/オクタノール9:1溶液で1回抽出し、クロロホルムで3回抽出した。0.1倍体積の3M酢酸ナトリウムpH6.8及び2倍体積のエタノールの添加により、該DNAを沈殿した。該沈殿物は、遠心により回収され、70%エタノールで1回洗浄された。最後に、該DNAは0.10mLの蒸留水に溶解された。
大腸菌(Escherichia coli)のゲノムDNAを、DH10B株(インビトロジェン社)から単離し、キアゲンジェノミックチップ(商標)(Qiagen Genomic−tipTM)(500/G)キットを用いて調製した。LBでOD650が1.87になるまで増殖した上記株の30mLから、0.3mgの精製DNAが得られた。該精製DNAはキアゲン(Quiagen)流出バッファー(EB)に、0.37μg/μLの濃度で溶解された。
ポリメラーゼ連鎖反応法プロトコル
pET 30 Xa/LICベクター(ノバジェン社、マディソン、ウィスコンシン州)に適合する突出部を有するプライマーを設計した。該pETベクターは、Xa/LIC部位の5’側に12塩基の一本差突出部を有し、該Xa/LIC部位の3’側に15塩基の一本差突出部を有する。該プラスミドは、非クローニング依存性ライゲーション用に設計され、N末端にHis及びSタグを、C末端には任意でHisタグを有する。Xaプロテアーゼ認識部位(IEGR)は、目的遺伝子の開始コドンの直前に位置しているので、融合タンパク質のタグを除去することが可能である。
プライマー設計時に、生物種特異的な配列の5’末端に、以下の配列が付加された:フォーワードプライマー、5’GGTATTGAGGGTCGC(配列番号73);リバースプライマー:5’AGAGGAGAGTTAGAGCC(配列番号74)。
バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)のdat用プライマー:
N末端:GGTATTGAGGGTCGCATGAAGGTTTTAGTCAATGG−3’及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTATGAAATGCTAGCAGCCT−3’(配列番号15及び16)。
シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)のtatA用プライマー:
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTTCGACGCCCTCGCCCG及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGAGACTGGTGAACTTGC(配列番号17及び18)。
バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)のaraT用プライマー:
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGGAACATTTGCTGAATCC及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTAAACGCCGTTGTTTATCG(配列番号19及び20)。
ロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)のmsa(2.4.1株及び35053の両方):
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGCGAGCCTCTTGCCCT及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGCCGGGGAAGCTCCGGG(配列番号21及び22)。
大形リーシュマニア(Leishmania major)のbsat:
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTCCACGCAGGCGGCCAT及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCACTCACGATTCACATTGC(配列番号23及び24)。
ラクトバシラス・アミロヴォラス(Lactobacillus amylovorus)のaraT:
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCCAGAATTAGCTAATGA及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTATTCGTCCTCTTGTAAAA(配列番号25及び26)。
ロドバクテル・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)のtatA:(2.4.1株及び35053の両方):
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGCTCTACGACGGCTCC及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGCCGCGCAGCACCTTGG(配列番号27及び28)。
大腸菌(Escherichia coli)のaspC:
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTTTGAGAACATTACCGC−3’及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACAGCACTGCCACAATCG−3’(配列番号29及び30)。
大腸菌(Escherichia coli)のtyrB:
N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCGTGTTTCAAAAAGTTGACGC及びC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACATCACCGCAGCAAACG−3’(配列番号33及び34)。
S.メリロティ(S.meliloti)から得た遺伝子(tatA)は、以下のPCRプロトコルを用いて増幅された。50μLの反応量において、0.1−0.5μgの鋳型、1.5μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5Uのエキスパンドハイファイデリティーポリメラーゼ(Expand High Fidelity Polymerase)(ロッシュ社、インディアナポリス、インディアナ州)、及びMg含有の1×エキスパンド(商標)(1×ExpandTM)バッファーを用いた。使用したサーマルサイクラーのプログラムには、96℃で5分間のホットスタート、及びこれに続く以下のステップの29回の繰返し:94℃で30秒、55℃で2分間、及び72℃で2.5分間、が含まれた。前記29回の繰返しの後、サンプルは72℃にて10分間維持され、その後、4℃にて保存された。このPCRプロトコルにより、1199bpの生成物が得られた。
R.スフェロイデス(R.sphaeroides)から得た遺伝子の配列(msa及びtatA)、L.アミロヴォラス(L.amylovorus)のaraT、及びバシラス(Bacillus)のaraTから得た遺伝子の配列は、以下のPCRプロトコルを用いて増幅された。50μLの反応量において、0.1−0.5μgの鋳型、1.5μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5Uのエキスパンドハイファイデリティー(商標)ポリメラーゼ(Expand High FidelityTM Polymerase)、及びMg含有の1×エキスパンド(商標)(1×ExpandTM)バッファーを加えた。使用したサーマルサイクラーのプログラムには、96℃で5分間のホットスタート、及びこれに続く以下のステップの29回の繰返し:94℃で30秒、40−60℃で1分間、45秒間(温度勾配機能付きサーマルサイクラー)及び72℃で2分間、15秒間が含まれた。前記29回の繰返しの後、サンプルは72℃にて10分間維持され、その後、4℃にて保存された。
各R.スフェロイデス(R.sphaeroides)のmsa遺伝子については、42℃及び48℃のアニーリング温度において、複数の生成物が得られたが、明確なバンドは約1464bpにあった。L.アミロヴォラス(L.amylovorus)のaraTについては、42℃、48℃、及び56℃のアニーリング温度で、1173bpに強いバンドとして単一の生成物を得た。B.サブチリス(B.subtilis)のaraTについては、40℃、45℃、50℃、及び55℃のアニーリング温度で、ゲノムDNA及びコロニーの両方から単一の強い生成物を得た(1173bp)。大形リーシュマニア(L.major)のbsatについては、55℃のアニーリング温度で最も明るい生成物が得られた(1260bp)。ロドバクテル(Rhodobacter)のtatA遺伝子については、50−55℃のアニーリング温度で、適切なサイズに明るい産物を得た(1239bp)。大腸菌(E.coli)の遺伝子及びB.サブチリス(B.subtilis)のdat遺伝子については、55−60℃のアニーリング温度が用いられ、アニーリング時間は45秒間へ短縮された。適切なサイズの明るい産物が得られた(大腸菌(E.coli)の遺伝子については約1.3kb、dat遺伝子については約850bp)。
クローニング
前記PCR産物は、キアゲンゲルエクストラクションキット(Qiagen gel extraction kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いて、0.8%又は1%TAE−アガロースゲルからゲル精製された。前記PCR産物は、アガロースゲルでの標準物との対比により定量され、その後、ライゲーションインディペンデントクローニング(Ligation Independent Cloning)(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)用の製造元推奨プロトコルに従ってT4 DNAポリメラーゼで処理された。
簡潔には、約0.2pmolの精製されたPCR産物を、dGTPの存在下で、22℃にて30分間1UのT4 DNAポリメラーゼと処理した。前記ポリメラーゼは、前記PCR産物の3’末端から連続する塩基を取り除く。前記ポリメラーゼはグアニン残基と遭遇すると、該酵素の5’から3’方向へのポリメラーゼ活性が前記エキソヌクレアーゼ活性を妨害し、これ以上の切除を効果的に防止する。これにより、pET Xa/LICベクターと適合する一本鎖の突出部が作り出される。前記ポリメラーゼは、75℃で20分間インキュベートすることで不活性化される。
前記ベクター及び処理済みインサートは、ノバジェン社の推奨通りにアニールされた。約0.02pmolの処理済みインサート及び0.01pmolのベクターは、22℃にて5分間インキュベートされ、6.25mMのEDTA(終濃度)が添加され、前記22℃のインキュベーションが繰り返された。前記アニーリング反応物(1μL)は、ノバブルー(商標)(NovaBlueTM)シングルスコンピテントセル(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)へ添加され、氷上にて5分間インキュベートされた。混合の後、前記細胞は、42℃にて30秒間のヒートショック法により形質転換された。前記細胞は2分間氷上に置かれ、常温の250μLのSOCで回収され、37℃にて30分間、225rpmで振とう培養された。細胞は、カナマイシンを含有(25−50μg/mL)するLBプレートに播種された。
プラスミドDNAは、キアゲンスピンミニプレップキット(Qiagen spin miniprep kit)を用いて精製され、XhoI及びXbaIを用いた制限酵素処理により、適正なインサートがスクリーニングされた。適正なインサートを有すると思われるプラスミドの配列は、ジデオキシ鎖停止DNAシーケンス法により確かめられた。
配列番号1−14及び31−32は、前記組換えアミノトランスフェラーゼのヌクレオチド配列及びそれに対応するアミノ酸配列を示しており、Genbankの配列からのいかなる変異も、サイレント置換であるか、又はタンパク質配列に保存的置換を作り出していた。配列番号11及び12は新規な配列である。
遺伝子発現及びアッセイ
配列解析により確かめられたプラスミドDNAは、大腸菌発現宿主であるBLR(DE3)又はBL21(DE3)(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)にサブクローニングされた。該培養は増殖され、前記プラスミドはキアゲンミニプレップキット(Qiagen miniprep kit)を用いて単離され、制限酵素処理により解析されて同一性が確認された。
初めに、BLR(DE3)及びBL21(DE3)の両細胞中のL.アミロヴォラス(L.amylovorus)のaraT、B. サブチリス(B.subtilis)のaraT、及びS.メリロティ(S.meliloti)のtatAに誘導がなされた。カナマイシン含有(30mg/L)のLBで0.5−0.8のOD600まで増殖した培養を用いて経時的実験が行なわれ、1mMのIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導され、該誘導後の0、1、2、及び4時間目にサンプリングが行なわれた。2.0mLからの細胞が、10%ドデシル硫酸ナトリウム、10% 2−メルカプトエタノール、及び20%グリセロールを含む0.10mLの120mM Tris−HCI、pH6.8に再懸濁され、95℃にて10分間加熱されて冷却され、0.10mLのH2Oに希釈された。これら細胞総タンパク質のサンプルは、4−15%の勾配ゲルを用いたSDS−PAGEにより分析された。2時間及び4時間の誘導、BLR(DE3)及びBL21(DE3)細胞の間に発現されたタンパク質量に有意な差は無かった。
2mLの培養からの細胞ペレットを0.25μLのベンゾナーゼヌクレアーゼを含む0.25mLのノバジェンバグバスター(商標)(Novagen BugBusterTM)試薬液に懸濁し、低速の振とうと共に常温で20分間インキュベートし、16,000×gで遠心して細胞片を除去することにより、4時間目のサンプルから細胞抽出物をもまた調製した。上澄(細胞抽出物)は、4−15%の勾配ゲルにローディングされ、細胞の可溶性タンパク質について分析された。
(L.アミロヴォラス(L.amylovorus)のaraT(配列番号11及び12)、B.サブチリス(B.subtilis)のaraT(配列番号9及び10)、及びS.メリロティ(S.meliloti)のtatA(配列番号1及び2)の3種類のクローンでは、適正なサイズ(約45kDa)に相当する可溶性タンパク質が示された。B.サブチリス(B.subtilis)のaraT遺伝子産物は、最も高い過剰発現レベルにあり、及び/又は、他の2種の遺伝子産物よりも可溶性が高かった。
その次の発現方法では、陽性クローンからのプラスミドDNAは、その宿主の優れた増殖能のためBL21(DE3)にサブクローニングされた。50mg/Lのカナマイシンを含むLBで増殖された培養で、OD600が約0.8に達した時点で、1mMのIPTGを用いて再度誘導が行なわれた。細胞は、37℃で4時間増殖させた後に回収され、3000rpmで10分間(4℃)遠心され、TEGGPバッファー(50mM Tris−HCl(pH7.0)、0.5mM EDTA、100mg/Lグルタチオン、5%グリセロール、ロッシュ社のコンプリートプロテアーゼ阻害剤カクテル(complete protease inhibitor cocktail)を含む)で洗浄され、−80℃のエタノール中で瞬間冷凍された。
サンプルは、5μL/mLのプロテアーゼ阻害剤カクテルセット#3(カルバイオケム−ノババイオケム社、サンディエゴ、カリフォルニア州)及び1μL/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼを含むバグバスター(商標)(BugBusterTM)(ノバジェン社)試薬に、5mL/g湿細胞重量で再懸濁された。サンプルは、軌道振とう器上で、常温にて20分間インキュベートされた。不溶性の細胞片は、16,000×gで4℃にて20分間遠心することにより除去された。
細胞抽出物は、SDS−PAGEにより分析され、以下のプロトコルを用いた以下のインドール−ピルビン酸の生産によりトリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性についてアッセイが行なわれた。50mM四ホウ酸ナトリウム(pH8.5)、0.5mM EDTA、0.5mMヒ酸ナトリウム、50μMピリドキサールホスフェート、5mM α−ケトグルタレート、及び5mM L−トリプトファン中で1mLの反応が行なわれた。前記反応は、細胞無しの抽出物又は精製された酵素を添加することで開始され、30℃にて30分間インキュベートされた。20%のTCA(200μL)を添加して反応を停止し、沈殿したタンパク質は遠心により除去された。327nmの吸光度が測定され、アッセイバッファー中の新たに調製されたインドール−3−ピルベートの検量線と比較された。トリプトファン基質無し、又はpET30aのみを形質転換したクローンの無細胞抽出物を用いたコントロール反応も行なわれた。
細胞抽出物中の天然の大腸菌性アミノトランスフェラーゼによるバックグランドのため、ぞれぞれpET30のアミノ末端HIS6−タグ/S−タグに融合したアミノトランスフェラーゼタンパク質を含む前記組換え融合タンパク質は、His−結合性カートリッジを備えた固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて、製造元のプロトコル(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)に従って精製された。前記複合タンパク質のHIS6−タグ配列は、IDAベースのHis結合性樹脂に固定化された2価のNi2+カチオンに結合する。溶離液フラクションは、PD−10(アマシャムバイオサイエンス社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)カラムで脱塩され、pH7.0の50mM Trisで溶離された。精製されたタンパク質は、SDS−PAGEにより分析され、アミノトランスフェラーゼ活性についてアッセイされた。
1mM IPTG(4時間)による37℃での誘導からの結果は、大形リーシュマニア(L.major)のbsat、S.メリロティ(S.meliloti)のtatA、大腸菌(E.coli)のaspC、及び両R.スフェロイデス(R.sphaeroides)のtatAクローンは、有意なレベルのトリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性を有することを示している。B.サブチリス(B.subtilis)からのaraTタンパク質は、過剰発現されており、可溶性であるが、酵素活性は殆ど示さなかった。L.アミロヴォラス(L.amylovorus)のaraT遺伝子産物は、細胞抽出物中で可溶性であることが分かったが、His−結合性カートリッジを用いた精製では、適正な分子量を持つタンパク質が少量生じただけであった。msa遺伝子産物は不溶性であり、24℃にて更なる発現実験を行ない封入体の形成を最小化した。10μMないし1mMにある種々のIPTG濃度を用いて可性タンパク質量を最大化した。
表1は、ミリグラム量のタンパク質から1分間に形成されたマイクログラム量のインドール−3−ピルベート(I3P)の測定された特異的活性を列挙している。いくつかのケースにおいて、非常に微量な組換えタンパク質が該アッセイの有効な直線範囲を上回る高レベルの活性を示した。これらのケースでは、「>」が具体的な活性値の前に記載されている。
クローニングされた全ての組換えタンパク質を比較するアライメントから、araT、tatA、bsat、及びmsaの配列間にはあまり多くの保存領域が存在しないことが示される。最も活性の高い組換えタンパク質のアライメント:ロドバクテル(Rhodobacter)のtatA遺伝子産物のホモログ、大形リーシュマニア(L.major)の広範囲基質アミノトランスフェラーゼ、及びシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)のチロシンアミノトランスフェラーゼは、種々の保存領域を示したが、しかし、タンパク質レベルにおいて30−43%程度の同一性しか有していない。広範囲の利用性、D−特異的(D−アラニン)アミノトランスフェラーゼは、モナチンの他の立体異性体の作製に有用であろう(実施例9−15参照)。
実施例2
本実施例は、pET30 Xa/LICベクターにクローニングされた大腸菌(E.coli)aspC遺伝子の変異種、HEXのサブクローニング及び解析に用いられた方法について記載する。この遺伝子の産物は、その活性部位に6箇所の変異を有し、大腸菌(E.coli)のTyrB芳香族(チロシン)アミノトランスフェラーゼに対する相同性に基づいた芳香族アミノ酸のアミノトランスフェラーゼ活性が増大されるように合理的に設計された。これらの箇所のうち、2箇所(Thr109及びAsn297;ブタ細胞質のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)の番号付け方式)は、全ての公知のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ酵素において不変であるが、大腸菌(E.coli)のTyrB配列(Ser109及びSer297)を模倣するように改変された。他の4箇所(VaI39、Lys41、Thr47、及びAsn69)は、大腸菌(E.coli)AspCの活性部位の窪みに一列に並んでおり、TyrB内に存在するより疎水性の高い側鎖を有するアミノ酸(Leu39、Tyr41、Ile47、及びLeu69)で置換されている。
クローニング
pUC19にクローニングされたHEX遺伝子は、JF Kirsch教授(分子細胞生物学科、カリフォルニア大学バークレイ校、バークレイ、カリフォルニア州94720−3206)より提供され、該遺伝子のpET30 Xa/LICへのクローニング用鋳型として使用された。James J.Onuffer及びJack F.Kirsch、「ホモロジーモデリング及び部位特異的変異誘発による大腸菌(Escherichia coli)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの基質特異性の大腸菌(Escherichia coli)チロシンアミノトランスフェラーゼの基質特異性への再設計(Redesign of the substrate specificity of Escherichia coli aspartate aminotransferase to that of Escherichia coli tyrosine aminotransferase by homology modeling and site−directed mutagenesis)」、Protein Science,4:1750−1757(1995)を参照。
実施例1に記載されるpET30 Xa/LICベクターに大腸菌(E.coli)aspC遺伝子(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)をクローニングするために設計されたプライマー(配列番号29及び30)を用いて同ベクターにHEX遺伝子がサブクローニングされた。以下のPCRプロトコルを用いて遺伝子増幅を行なった:50μLの反応量中に、50ngのDNAの鋳型、1.0μMの各プライマー、0.2mMの各dNTP、1UのpfuUltra HFポリメラーゼ(ストラタジーン社)、2.1Uのエキスパンドハイファイデリティー(商標)ポリメラーゼ(Expand High FidelityTM Polymerase)(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ社、インディアナポリス、インディアナ州)、及びMg含有の1Xエキスパンド(商標)(1×ExpandTM)バッファーが添加された。サーマルサイクラーのプログラムには、94℃で5分間のホットスタート;これに続く94℃(30秒)の変性ステップ、50℃(1分間)のアニーリングステップ、及び72℃(1分30秒間)の伸長ステップの10サイクル;94℃(30秒)の変性ステップ、55℃(1分間)のアニーリングステップ、及び各サイクル毎に5秒ずつ延長される72℃(1分30秒間)の伸長ステップの15サイクル;94℃(30秒)の変性ステップ、55℃(1分間)のアニーリングステップ、及び72℃(2分45秒間)の伸長ステップの10サイクル;及び最後に72℃(7分間)の終了ステップ、が用いられた。該増幅されたDNAは、キアゲンキアクイックゲルエクストラクションキット(Qiagen QIAquick Gel Extraction Kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いて1%アガロースゲルから精製された。前記PCR産物は、260nmの吸光度測定により定量され、T4 DNAポリメラーゼで処理され、ライゲーションインディペンデントクローニング(Ligation Independent Cloning)用の製造元推奨プロトコル(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)及び上記実施例1の記載に従って前記ベクターにアニーリングされた。
アニーリング反応物のエレクトロコンピテントDH10Bへの形質転換は、バイオラッド社のエレクトロポレーションマニュアルに記載されるように、0.1cmキュベット及びバイオラッドジーンパルサーII(Bio−Rad Gene Pulser II)を用いて、標準的な条件の下で行なわれた。HEX遺伝子を含むクローンは制限酵素処理解析により同定され、DNAシーケンスにより確認された。配列番号75及び76は、HEX遺伝子及び遺伝子産物(HEXAspCアミノトランスフェラーゼ、又はHEXタンパク質とも呼ばれる)のヌクレオチド配列及びこれに相当するアミノ酸配列を示す。NCBI accession number 1AHF A GI:1127190(アミノ酸配列)を参照。
遺伝子発現及びアッセイ
プラスミドDNA(シーケンス解析により確認)は、発現宿主であるBL21(DE3)(ノバジェン社)にサブクローニングされた。該培養は、50mg/Lのカナマイシンを含むLB倍地中で増殖され、前記プラスミドはキアゲンスピンプラスミドミニプレップキット(Qiagen spin plasmid miniprep kit)を用いて単離され、続いて制限酵素処理により解析されて同一性が確認された。50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で37℃にて増殖させたBL21(DE3)構築物を用いて誘導実験が行なわれた。OD600が約0.6に達した後に、0.2mM IPTGを用いてタンパク質発現が誘導された。細胞は30℃で4時間増殖され、遠心により回収された。細胞は、その後、1μL/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼ、5μL/mLのカルバイオケムプロテアーゼ阻害剤カクテルセットIII(Calbiochem protease inhibitor cocktail set III)及び0.33μL/10mLのr−リゾチームを含むバグバスター(商標)(BugbusterTM)試薬液(ノバジェン社)を用いて、ノバジェン社推奨プロトコルに従って溶解された。低速振とうと共に25℃で15分間インキュベーションされた後、細胞片は、4℃にて21,000×gで20分間遠心してペレット化された。上澄(無細胞抽出物)は、4−15%の勾配ゲル(バイオラッド社)を用いたSDS−PAGEにより分析され、前記組換え融合タンパク質の可溶性タンパク質濃度が検出された。発現量は高く(可溶性タンパク質の約30−40%)、aspCアミノトランスフェラーゼタンパク質で観察された場合と同様であった。
HIS6−HEXタンパク質が、His−結合性900カートリッジを有する固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて、製造元推奨プロトコル(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)に従って細胞抽出物(上記の通り調整された)から精製された。(HIS6−HEXタンパク質のHIS6−タグ配列は、IDAベースのHis−結合性樹脂に固定化された2価のNi2+カチオンに結合する)。溶離液フラクションは、PD−10(アマシャムバイオサイエンス社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)カラムで脱塩され、pH7.0の50mM Tris−HClで溶離された。精製されたタンパク質は、SDS−PAGEにより純度が分析され、ウシ血清アルブミンを標準物としてピアスBCAアッセイ(Pierce BCA assay)を用いて精製フラクション中のタンパク質の量が測定された。
精製されたHIS6−HEXタンパク質及び精製されていない細胞抽出物は、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性について以下のプロトコルを用いて解析された:1.0mLの反応混合物には、50mM四ホウ酸ナトリウム、pH8.5、5mM α−ケトグルタレート、0.05mMピリドキサールホスフェート、0.5mM ヒ酸ナトリウム、0.5mM EDTA及び酵素が含まれた。前記酵素以外の全ての組成物が一緒に混合され、該酵素を添加して反応を開始させ、該反応溶液は30℃で30分間インキュベートされた。前記反応は、0.2mLの20%トリクロロ酢酸の添加により停止され、前記混合物は、21,000rpmで遠心され、透明な上澄が慎重に除去された。前記上澄の吸光度を327nmにて測定した(インドール−3−ピルベートに最大の吸光度)。全ての反応は、2つの系にて行なわれた。実施例1に記載されるHIS6−tyrb及びHIS6−aspCのアミノトランスフェラーゼの比較については、同様のプロトコルを用いて解析された。結果を表2に示す。327での吸光度は、インドール−3−ピルベート濃度に比例しており、特定の実験における種々の酵素の相対活性の測定に用いることが可能である。
表2に列挙される結果は、精製された酵素をアッセイで用いた場合には、HEXAspCアミノトランスフェラーゼが、AspCタンパク質よりも、トリプトファンに対して約40%高い活性を有することを示している。細胞抽出物が前記酵素の供給源である場合には、活性の向上は、有意に低下している。このことは、宿主である大腸菌(E.coli)株の天然タンパク質による干渉的な活性に起因するものであろう。TyrB遺伝子産物は、AspCタンパク質よりも不安定であり、この安定性の欠如は、この酵素について観察される程度の低い活性に反映されているであろう。更に、前記His複合タグは、タンパク質の適正な高次構造に干渉し、その活性に不利に影響しているかもしれない。下記データを参照。トリプトファンに対するAspCのHEX変異体の増大した活性は、この酵素を下記実施例9−10(表6及び7)に記載されるように使用した場合のモナチン形成量の向上を説明できるであろう。AspCのHEX変異体は、C.テストステロニ(C. testosteroni)ProAアルドラーゼを含む反応におけるS,Sモナチン作製に最適な酵素である。
実施例3
本実施例は、aspC、tyrB、及びHEXアミノトランスフェラーゼ遺伝子、及びアミノ末端のHIS6タグ無しで構築された該遺伝子産物のサブクローニング、発現及び解析に用いられた方法について記載する。アミノトランスフェラーゼ活性は、実施例18に記載されるように、反応の副産物であるグルタメートの形成をHPLCで追跡することにより測定された。
クローニング
大腸菌(E.coli)のaspC、tyrB及びHEX遺伝子のpET30aベクター(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)へのクローニング用に、下記のプライマーが設計された(同じプライマーがaspC及びHEXにも用いられた):
aspC/HEXプライマー:
N末端:5’−GCGGAACATATGTTTGAGAACATTACCGCC−3’(配列番号77);
C末端:5’−ATAACCGGATCCTTACAGCACTGCCACAATCG−3’(配列番号78);
tyrBプライマー:
N末端:5’−GCGGCGCATATGGTGTTTCAAAAAGTTGACGC−3’(配列番号79);
C末端:5’−CCAATAGGATCCTTACATCACCGCAGCAAACG−3’(配列番号80)。
制限酵素との適合性及びより高発現レベルのため、tyrBのコーディング配列の5’側にATG開始コドンが付加された。以下のPCRプロトコルを用いて遺伝子増幅を行なった:100μLの反応量中に、50ngのDNAの鋳型、1.0μMの各プライマー、0.2mMの各dNTP、1UのPfuターボ(Pfu Turbo)ポリメラーゼ(ストラタジーン社;ラホヤ、カリフォルニア州)、及び1XクローンドPfu(Cloned Pfu)バッファーが添加された。サーマルサイクラーのプログラムには、94℃で5分間のホットスタート;これに続く94℃(30秒)の変性ステップ、55℃(1分間)のアニーリングステップ、及び72℃(2分間)の伸長ステップの25サイクル、及び最後に72℃(7分間)の終了ステップ、が用いられた。該増幅されたDNAは、キアゲンキアクイック(登録商標)PCRピュリフィケーションキット(Qiagen QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いて精製された。前記精製されたDNA及び精製されたプラスミドDNA(キアゲンキアプレップ(登録商標)スピンミニプレップキット(Qiagen QIAprep(登録商標)Spin Miniprep Kit)を用いて精製されたpET30)は、製造元の指示書(NEB;バーリー、マサチューセッツ州)に従って、NdeI及びBamHIにより消化された。NdeIによるpET30aベクターの消化により、アミノ末端のHIS6−タグ領域が除去される。消化されたDNAは、キアゲンキアクイック(登録商標)ゲルエクストラクションキット(Qiagen QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いて1%アガロースゲルから精製された。前記DNA精製物は、260nmの吸光度測定により定量され、クイックライゲーションキット(Quick Ligation kit)(NEB)を用いてライゲーションされた。前記ライゲーションされたDNAは、化学的コンピテント細胞トップ10F’(TOP10F’)(インビトロジェン;カールスバド、カリフォルニア州)に形質転換された。インサートを有するクローンは、精製されたプラスミドDNAを1%アガロースゲルで泳動することにより同定された。インサートを有するクローンは、DNAシーケンスにより確認された。
遺伝子発現及びアッセイ
プラスミドDNA(シークエンス解析により確認)は、発現宿主であるBL21(DE3)(ノバジェン社)にサブクローニングされた。該培養は、50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で増殖された。50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で37℃にて増殖されたBL21(DE3)構築物を用いて誘導実験が行なわれた。OD600が約0.5に達した後に、0.1mM IPTGを用いてタンパク質発現が誘導された。細胞は30℃で4時間増殖され、遠心により回収された。細胞は、その後、1μL/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼ、5μL/mLのカルバイオケムプロテアーゼ阻害剤カクテルセットIII(Calbiochem protease inhibitor cocktail set III)及び0.33μL/10mLのr−リゾチームを含むバグバスター(商標)(BugbusterTM)試薬液(ノバジェン社)を用いて、ノバジェン社推奨プロトコルに従って溶解された。緩やかな振とうと共に25℃で15分間インキュベーションされた後、細胞片は、4℃にて21,000×gで20分間遠心してペレット化された。上澄(無細胞抽出物)は、4−15%の勾配ゲル(バイオラッド社)を用いたSDS−PAGEにより分析され、前記組換え融合タンパク質の可溶性タンパク質濃度が検出された。3種類の全てのタンパク質で発現量は高く(全可溶性タンパク質の約25−40%)、対応するpET30 HIS6−タグ付き構築物で観察された場合と同様であった。
以下のプロトコルを用いて、タグ無しのAspC及びTyrBタンパク質のトリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性のアッセイが行なわれた。実施例1に記載されるようにインドール−3−ピルベートの形成を測定するのではなく、実施例18に記載するHPLC蛍光検出法を用いて反応の副産物であるグルタメートの形成を測定した。この反応において、トリプトファンは、化学量論的にα−ケトグルタレートと反応してインドール−3−ピルベート及びグルタメートを作り出す。グルタメートは、インドール−3−ピルベートよりも水性溶液中で安定であり、これを測定することで、より正確な酵素活性の測定が可能となる。1.0mLの前記反応混合物中には、pH8.0の50mMのTris−HCl、5mMのα−ケトグルタレート、0.05mMのピリドキサールホスフェート、5mMのトリプトファン及び酵素が含まれた。前記酵素以外の全ての組成物が一緒に混合され、該酵素を添加して反応を開始させ、該反応溶液は30℃で60分間インキュベートされた。前記反応は、0.15mLの20%トリクロロ酢酸の添加により停止され、前記混合物は、21,000rpmで遠心され、透明な上澄が慎重に除去された。結果を表3(グルタメート濃度のバックグランド及びタンパク質沈殿のためのトリクロロ酢酸添加による希釈について補正された)に示す。
他の研究者により、TyrBアミノトランスフェラーゼは、その基質としてAspCよりもトリプトファンに対してより高活性を示すことが観察されていることから(Hayashiら(1993)Biochemistry 32:12229−1239)、上記結果は驚くべきものであった。前記予期せぬ低レベルな活性は、タンパク質の不安定性によるものかもしれない。しかしながら、タグ無しのTyrBタンパク質に見られる活性レベルは、上記タグ付きの変種に観察された活性(表1参照)よりも相当に高いものである。アミノトランスフェラーゼ反応において、トリプトファンは、化学量論的にα−ケトグルタレートと反応してインドール−3−ピルベート及びグルタメートを作り出すので、形成されたインドール−3−ピルベート濃度(表1に示すように)及び形成されたグルタメート濃度(表3に示すように)は同一の活性を表している。グルタメートは、インドール−3−ピルベートよりも水性溶液中で安定であり、従って、これを測定することで、より正確な酵素活性の測定が可能となる。どちらの検出法を用いてもAspCに対するTyrBの相対活性(又は比率)は、同じ数字を生み出すはずであり、タグ付きのTyrB変種が、タグ付きAspCとの比較してトリプトファンに対して低い活性を有する一方で、タグ無しのTyrBは、タグ無しAspCとほぼ同様の活性を有することは明らかである。
実施例4
インドール−3−ラクテートのインドール−3−ピルベートへの変換
図1及び3に示すように、インドール−3−乳酸を用いてインドール−3−ピルベートを作り出すことが可能である。乳酸とピルベートの変換は、インドール−3−ラクテートとインドール−3−ピルベートの変換と同様に可逆的反応である。インドール−3−ピルベートからの340nmにおける高いバックグランド量により、インドール−ラクテートの酸化がこれに続いた。
アッセイ用の標準混合物0.1mLには、pH8.0で100mMのリン酸カリウム、0.3mMのNAD+、7単位の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(シグマ社、L2395、セントルイス、ミズーリ州)、及び2mMの基質が含まれていた。該アッセイは、モレキュラーディバイススペクトラマックスプラスプレートリーダー(Molecular Devices SpectraMax Plus platereader)を用いてUV透過性マイクロタイタープレート中で2つの系で重複して行なわれた。ポリペプチドとバッファーは混合され、インドール−3−乳酸及びNAD+を含むウェルにピペッティングされ、短時間の混合の後、9秒間の間隔を空けて各ウェルについて340nmの吸光度が測定された。反応は、25℃で5分間継続した。NAD+からのNADHの生成に続いて、340nmにおける吸光度の増大が生じた。NAD+無し及び基質無しで個別のネガティブコントロールが行なわれた。リューコノストク・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来のD−LDH(シグマ社カタログ番号L2395)は、インドール−誘導体基質に対して、バシラス・ステアロテルモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のL−LDH(シグマ社カタログ番号L5275)よりも高い活性を示すことが判明した。
同様の方法が、D−乳酸及びNAD+又はNADH、及び、D−LDHポリペプチドの天然の基質であるピルベートについても用いられた。ピルベートの還元のVmaxは、ラクテートの酸化のVmaxよりも100−1000倍高かった。インドール−3−ラクティックのD−LDHとの酸化反応のVmaxは、乳酸との酸化反応のVmaxの約5分の1であった。インドール−3−ピルベートの存在は、0.5mMのEDTA及び0.5mMのヒ酸ナトリウムを含む50mMのホウ酸ナトリウムバッファーを用いて327(エノール−ボレート誘導体)の吸光度の変化を追跡することにより測定された。L−LDH及びD−LDHの両ペプチドによるネガティブコントロールと比較して、微量な、しかし、繰返し可能な吸光度の変化が観測された。
更に、広い特異性を有する乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.27、EC1.1.1.28、及び/又はEC1.1.2.3と関連する活性を有する酵素)がクローニング可能であり、また、これを用いてインドール−3−乳酸からインドール−3−ピルベートを作り出すことが可能である。広い特異性を有するデヒドロゲナーゼの供給源として、大腸菌(E.coli)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)が挙げられる。
もう1つの方法として、インドール−3−ラクテートを、インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.110)を含むクロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)の細胞抽出物;又は、インドール−3−ピルベートに対する活性を有することが知られているp−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.222)を含むクルーズ・トリパノソーマ・エピマスチゴテス(Trypanosoma cruzi epimastigotes)の細胞抽出物;又は、イミダゾール−5−イル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.111)を含シュードモナスアシドボランス(Pseudomonas acidovorans)又は大腸菌(E.coli)の細胞抽出物;又は、ヒドロキシフェニルピルベートレダクターゼ(EC1.1.1.237)を含むコレウスブルメイ;又は、D−芳香族乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.222)を含むカンジダ・マルトサ(Candida maltosa)と接触させることによりインドール−3−ピルベートを作り出すことが可能である。このような活性について記載された参照として、Nowickiら.(FEMS Microbiol Lett 71:119−24,1992)、Jean及びDeMoss(Canadian J.Microbiol.14 1968、Coote及びHassall(Biochem.J.Ill:237−9,1969)、Corteseら(CR.Seances Soc.Biol.FiI.162 390−5,1968)、Petersen及びAlfermann(Z.Naturforsch.C:Biosci.43 501−4,1988)、及びBhatnagarら.(J.Gen Microbiol 135:353−60,1989)が挙げられる。加えて、シュードモナス種由来等の乳酸オキシダーゼ(Guら.J.MoI.Catalysis B:Enzymatic:18:299−305,2002)を用いてインドール−3−ラクティックを酸化してインドール−3−ピルベートにできる。
実施例5
L−アミノ酸オキシダーゼを用いたL−トリプトファンのインドール−3−ピルベートへの変換
本実施例は、実施例1に記載されるようなトリプトファンアミノトランスフェラーゼを用いる代わりとしての、オキシダーゼ(EC1.4.3.2)を介したトリプトファンのインドール−3−ピルベートへの変換に用いる方法について記載する。L−アミノ酸オキシダーゼは、カスカベルガラガラヘビ(Crotalus durissus)(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州、カタログ番号A−2805)から精製された。分子クローニング用のL−アミノ酸オキシダーゼの受託番号としては以下の番号が挙げられる;CAD21325.1、AAL14831、NP 490275、BAB78253、A38314、CAB71136、JE0266、T08202、S48644、CAC00499、P56742、P81383、O93364、P81382、P81375、S62692、P23623、AAD45200、AAC32267、CAA88452、AP003600、及びZ48565。
反応は、総体積1mLにて微小遠心管内で行なわれ、振とうと共に37℃で10分間インキュベートされた。反応混合物には、5mMのL−トリプトファン、pH6.6で100mMのリン酸ナトリウムバッファー、0.5mMヒ酸ナトリウム、0.5mMのEDTA、25mMの四ホウ酸ナトリウム、0.016mgのカタラーゼ(83U、シグマ社、C−3515)、0.008mgのFAD(シグマ社)、及び0.005−0.125単位のL−アミノ酸オキシダーゼが含まれていた。ネガティブコントロールにはトリプトファンを除く全ての成分が含まれ、ブランクにはオキシダーゼを除く全ての成分が含まれていた。カタラーゼを用いて酸化的脱アミノ化中に形成された過酸化水素が取り除かれた。四ホウ酸ナトリウム及びヒ酸ナトリウムを用いて、327nmに最大吸光度を示すエノール−ボレート型のインドール−3−ピルベートを安定化した。前記反応混合物中にて、0.1−1mMの濃度でインドール−3−ピルベート標準液が調製された。
前記購入したL−アミノ酸オキシダーゼは、1mgのタンパク質から毎分540μgのインドール−3−ピルベートを形成する特異的活性を有していた。これは、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ酵素の特異的活性と同じオーダーの量である。
実施例6
D−アミノ酸オキシダーゼを用いたD−トリプトファンのインドール−3−ピルベートへの変換
本実施例は、反応の開始基質としてL−トリプトファンを用いる代わりとしての、オキシダーゼ(EC1.4.3.3)を介したD−トリプトファンのインドール−3−ピルベートへの変換に用いる方法について記載する。D−アミノ酸オキシダーゼはバイオカタリティックス(BioCatalytics)(パサデナ、カリフォルニア州、カタログAOD−101)から購入された。
反応は、総体積1mLにて微小遠心管内で行なわれ、振とうと共に30℃で20分間インキュベートされた。反応混合物には、5mMのL−トリプトファン、pH8で50mMの四ホウ酸ナトリウムバッファー、0.5mMヒ酸ナトリウム、0.5mMのEDTA、25.5μLの工業グレードのカタラーゼ(1000U、バイオカタリティックス(BioCatalytics)、CAT−101)、0.008mgのFAD(シグマ社)、及び約10mgの粗調製D−アミノ酸オキシダーゼが含まれていた。前記D−アミノ酸オキシダーゼ調剤は、大量の不溶性原料を含んでいた。ネガティブコントロールには、オキシダーゼ以外の全ての成分が含まれていた。サンプルは2つの系で重複して測定された。
前記サンプルは、遠心されてデブリが取り除かれ、上澄は、327nm吸光度測定前に10倍に希釈された。該希釈サンプルは0.789−0.926の範囲内の吸光度を有し、一方で、ネガティブコントロール(非希釈)は、0.418及び0.416のODを有していた。予想される通り、広い特異性を有するD−オキシダーゼを用いてD−トリプトファンをインドール−3−ピルベートに効率的に変換することが可能である。
実施例7
アルドラーゼを用いたインドール−3−ピルベートの2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸への変換
本実施例は、アルドラーゼ(リアーゼ)を用いたインドール−3−ピルベートの2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸モナチン前駆体(MP)への変換に使用可能な方法を記載する(図2)。アルドール縮合は、アルデヒド又はケトンのβ−炭素と別のアルデヒド又はケトンのカルボニル炭素との間に炭素−炭素結合を形成する反応である。カルバニオンは、ある基質のカルボニル基の隣の炭素上に形成され、第二の基質のカルボニル炭素(求電子炭素)に対する求核攻撃としての役割をする。通常、前記求電子基質はアルデヒドであるから、殆どのアルドラーゼはEC4.1.2.の範疇に属する。多くの場合、前記求核基質はピルベートである。一般的に、アルドラーゼが、2個のケト酸又は2個のアルデヒド間の縮合を触媒することはあまりない。
しかしながら、2個のカルボン酸の縮合を触媒するアルドラーゼが同定された。例えば、欧州特許EP1045−029には、シュードモナス(Pseudomonas)培養(EC4.1.3.16)を用いてグリオキシル酸及びピルベートからL−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸を製造する方法が記載されている。加えて、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ、EC4.1.3.17)は、2個のケト酸の縮合を触媒可能である。従って、同様のアルドラーゼペプチドを用いてインドール−3−ピルベートとピルベートの縮合を触媒した。これら酵素の活性又はエナンチオ特異性は、モナチンの特定の立体異性体の製造のため改変することが可能である。
クローニング
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ(例、ProAアルドラーゼ、EC4.1.3.17)及び4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸−リアーゼ(例、KHGアルドラーゼ、EC4.1.3.16)は、図2のアルドラーゼ反応によく類似する反応を触媒する。pET30 Xa/LICベクター(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)に適合する突出部を有するプライマーが設計された。これらのプライマーの設計は、上記実施例1に記載されている。
pET30 Xa/LIC へのクローニング用に以下のプライマーが設計された:
1. シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea) (シュードモナス・オクラセアエ(Pseudomonas ochraceae) NGJI)proA遺伝子(Genbank Accession No.: 12964663 Version:12964663)及びコマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)proA遺伝子(配列番号65−66、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTACGAACTGGGAGTTGT−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTAGTCAATATATTTCAGGC−3’
(配列番号55及び56)。
2.シノリゾビウムメリロティ(Sinorhizobium meliloti)1021 SMc00502遺伝子(homologous to proA,Genbank Accession No.:15074579及びCAC46344、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAGCGTGGTTCACCGGAA−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAATCGATATATTTCAGTC−3’
(配列番号61及び62)。
3.スフィンゴモナス(Sphingomonas)種LB 126 fldZ遺伝子(Genbank Accession No.:7573247 Version:7573247、推定上のアシルトランスフェラーゼをコードする)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTCCGGCATCGTTGTCCA−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGACATATTTCAGTCCCA−3’
(配列番号57及び58)。
4.アルトロバクテルケイセリ(Arthrobacter keyseri)pcmE遺伝子(Genbank Accession No.:AF331043 Version:AF331043.1、オキサロシトラマレートアルドラーゼをコードする)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGACTGAACAACCTCGG−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGTTCTCCACGTATTCCA−3’
(配列番号59及び60)。
5.イエルシニアぺスティ(Yersinia pestis)CO92株YPO0082遺伝子(Genbank Accession No.:15978115 Version:15978115、恐らくトランスフェラーゼをコードする)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAGCCTGGTTAATATGAA−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTATGACTTTAACGCGTTGA−3’
(配列番号63及び64)。
6.バシラスサブチリス(Bacillus subtilis)khg遺伝子(Genbank Accession No.Z99115.1 GI:2634478、12671l−127301及びCAB14127.1、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGGAGTCCAAAGTCGTTGA−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACACTTGGAAAACAGCCT−3’
(配列番号35及び36)。
7.大腸菌(E.coli)khg遺伝子(Genbank Accession No.AE000279.1 1331−1972及びAAC74920.1、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAAAAACTGGAAAACAAG−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACAGCTTAGCGCCTTCTA−3’
(配列番号37及び38)。
8.S.メリロティ(S.meliloti)khg遺伝子(Genbank Accession No.AL591792.1 GI:15075850、65353−64673及びCAC47463.1、それぞれ核酸配列及びアミノ酸配列)
フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGAGGGGCATTATTCAA−3’及び
リバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGCCCTTGAGCGCGAAG−3’
(配列番号39及び40)。
上記1−2及び6−8に記載される生物のゲノムDNAは、キアゲンジェノミック−チップD(Qiagen Genomic−tipD)(バレンシア、カリフォルニア州)のプロトコルを用いて精製された。3−5に記載される生物のゲノムDNAについても、類似する手法を用いて精製可能である。
シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)(ATCC 33636)は、30℃でニュートリエントブロス(Nutrient Broth)及びヒドロキシベンゾエート培地中にて増殖された。コマモナステス・トステロニ(Comamonas testosteroni)(ATCC49249)は、26℃でニュートリエントブロス(Nutrient Broth)及びヒドロキシベンゾエート培地中にて増殖された。スフィンゴモナス(Sphingomonas)種LB126(フレミッシュ工科研究大学(Flemish Institute for Technological Research)、VITO、B−2400 MoI、ベルギー)は、Wattiauら.(Research in Microbiol.152:861−72,2001)に記載される方法に従って増殖された。アルトロバクテルケイセリ(Arthrobacter keyseri)(湾岸生態部(Gulf Ecology Division)、国立衛生環境影響研究所、米国環境保護局、ガルフブリーズ、FL 32561、アメリカ合衆国)は、Eaton(J.Bacteriol.183:3689−3703,2001)に記載されるプロトコルに従って増殖された。シノリゾビウムメリロティ(Sinorhizobium meliloti)1021(ATCC51124)は、26℃にてATCC TY培地及びヒドロキシベンゾエート培地中にて増殖された。イエルシニアぺスティ(Yersinia pestis)CO92株(ATCC)は、26℃にて、ATCC培地739ウマ血液寒天で増殖された。バシラスサブチリス(Bacillus subtilis)6051(ATCC)は、30℃にてベレトニュートリエントブロス(Bereto Nutrient Broth) (ディフコ社;デトロイト、ミズーリ州)で増殖された。大腸菌(E.coli)のゲノムDNAは、実施例1に記載するようにDH10B株(インビトロジェン社)から単離された。
実施例1に記載されるPCR、クローニング、及びスクリーニングのプロトコルは、大腸菌(E.coli)、B.サブチリス(B.subtilis)、及びS.メリロティ(S.meliloti)のkhg配列と同様に、C.テストステロニ(C.testosteroni)及びS.メリロティ(S.meliloti)のproA配列のクローニングにも用いられた。同方法は、上記の他の配列のクローニングにも用いることが可能である。C.テストステロニ(C.testosteroni)のproA遺伝子については、PCRのアニーリング及び伸長の条件は、40−60℃で1分間、45秒間(温度勾配機能付きサーマルサイクラー)及び72℃で2分間、15秒間であった。
陽性クローンは、S−タグ及びT7終止プライマー(ノバジェン社)、及びインテグレイティッドDNAテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies,Inc.)(コラルヴィル、アイオワ州)からの内部プライマーを用いたジデオキシ鎖停止DNAシーケンス法(シークライト社、ヒューストン、テキサス州)を用いてシーケンスされた。
発現及び活性のアッセイ
プラスミドDNA(シーケンス解析により確認)は、発現宿主であるBL21(DE3)(ノバジェン社)にサブクローニングされた。該培養は、50mg/Lのカナマイシンを含むLB倍地中で増殖され、前記プラスミドはキアゲンスピンプラスミドミニプレップキット(Qiagen spin plasmid miniprep kit)を用いて単離され、続いて制限酵素処理により解析されて同一性が確認された。50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で37℃にて増殖させたBL21(DE3)構築物を用いて誘導実験が行なわれた。OD600が約0.6に達した後に、0.1mM IPTGを用いてタンパク質発現が誘導された。細胞は30℃で4時間増殖され、遠心により回収された。細胞は、その後、バグバスター(商標)(BugbusterTM)試薬液(ノバジェン社)を用いて溶解され、前記His−タグ付組換えタンパク質は、上記(実施例1)のようにHis−結合性カートリッジを用いて精製された。精製されたタンパク質は、PD−10ディスポーザブルカラム上で脱塩され、2mMのMgCl2を有するpH7.3、50mMのTris−HClバッファーで溶離された。
前記タンパク質は、4−15%の勾配ゲルを用いたSDS−PAGEにより分析され、前記組換え融合タンパク質の予想分子量における可溶性タンパク質濃度が検出された。
前記タンパク質について、インドール−3−ピルベート及びピルビン酸ナトリウムを基質として活性のアッセイを行なった。前記アッセイの混合物1mLには、100mMのTris−HCl(pH7−pH8.9)、0−8mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム(pH8)、及び6mMの各基質が含まれていた。反応は、異なる量のペプチド(例えば、10ないし100μg)の添加により開始され、25℃−37℃で30分間インキュベートされ、フィルター濾過された後に−80℃で凍結された。
proA遺伝子産物の活性の結果
C.テストステロニ(C.testosteroni)のproA及びS.メリロティ(S.meliloti)のSMcOO 502の遺伝子構築物は、IPTGで誘導された際に高い発現性を有していた。総タンパク質及び細胞抽出物のSDS−PAGE解析により測定されたとおり、前記組換えタンパク質は高い可溶性を呈した。C.テストステロニ(C.testosteroni)の遺伝子産物は、95%よりも高純度で精製された。His−結合性カートリッジを用いたアフィニティー精製後においてS.メリロティ(S. meliloti)の遺伝子産物の収量は非常に少量であったため、細胞抽出物を用いて酵素アッセイを行なった。
両組換えアルドラーゼは、インドール−3−ピルベート及びピルベートからのMPの形成を触媒した。酵素活性には、2価のマグネシウム及びリン酸カリウムの両方の存在が必要であった。インドール−3−ピルベート、ピルベート、又はリン酸カリウムが存在しない場合には生成物が見られなかった。酵素が存在しない場合でも少量の生成物が形成された(典型的に、酵素が存在する場合よりも量が1オーダー少なかった)。
実施例18に記載されるLC/MS法を用いて、インドール−3−ピルベート標準よりも僅かに遅れて逆相のC18カラムから前記産物のピークが流出し、該ピークの質量スペクトルは、前記MP産物として予測される親イオンである、292.1の衝突誘導性親イオン([M+H]+)を示した。前記質量スペクトルに存在する主な娘断片には、m/z=158(1H−インドール−3−カルバルデヒドカルボニウムイオン)、168(3−ブタ−1,3−ジエニル−1H−インドールカルボニウムイオン)、274(292−H2O)、256(292−2H2O)、238(292−3H2O)、228(292−CH4O3)、及び204(ピルベートの喪失)のものが含まれていた。また、前記産物は、λmaxが279−280にあり、290nm付近に小さな肩のあるトリプトファンのような他のインドール含有化合物に特徴的なUVスペクトルを示した。
C.テストステロニ(C.testosteroni)アルドラーゼにより生産されるMP量は、反応温度の常温から37℃への上昇、基質の量、及びマグネシウム量の増加に伴って増加した。前記酵素の合成活性は、pHの上昇と共に減少し、pH7において最大生産量がみられた。トリプトファン標準に基けば、20μgの精製タンパク質を用いた標準アッセイにおけるMP生産量は、1mLの反応量毎に約10−40μgであった。
C.テストステロニ(C.testosteroni)及びS.メリロティ(S.meliloti)のProAアルドラーゼのコーディング配列と上記の他の遺伝子との高い相同性に基き、前記組換え遺伝子産物の全てが上記反応を触媒可能であることが予想される。更に、59及び87番目の位置にスレオニン(T)を、119番目にアルギニン(R)を、120番目にアスパラギン酸(D)及び31及び71番目にヒスチジン(H)(C.テストステロニ(C.testosteroni)の番号付け方式に基く)を有するアルドラーゼは、類似する活性を有するであろうことが予想される。更なるホモログがシークエンスされ、NCBIに寄託された。それらの遺伝子はクローニングが可能であり、対応する遺伝子産物は類似する活性を有することが予想される。類似するアルドラーゼ活性を有すると予想される遺伝子及びタンパク質の例について、そのC.テストステロニ(C.testosteroni)のProAタンパク質との同一性パーセント及びS.メリロティ(S.meliloti)のProAタンパク質との同一性パーセント、並びにその照合番号を下記に提示する:
アルドラーゼ供給源:ブラディリゾビウムジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum str.)USDA 110株(タンパク質blr3842)
遺伝子:NC 004463.1:4260815..4261498
タンパク質:GI:27378953(NP 770482.1)
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:63
S.メリロティ(S. meliloti)のProAとの同一性パーセント:63
アルドラーゼ供給源:スフィンゴモナス(シュードモナス)パウシモビリス(Sphingomonas(Pseudomonas)paucimobilis)
遺伝子:GI:19918959(AB073227.1:3738..4424)
タンパク質:GI:19918963(BAB88738.1)
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:65
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:64
アルドラーゼ供給源:イエルシニア・ぺスティス(Yersinia pestis)KIM
遺伝子:AE013606.1 GI:21956705
タンパク質:AAM83650.1 GI:21956715
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:56
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:57
アルドラーゼ供給源:ラルストニア・メタリジュランス(Ralstonia metallidurans)CH34
遺伝子:NZ AAAI02000016.1 GI:48767334
タンパク質:ZP 00271743.1 GI:48767386
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:60
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:57
アルドラーゼ供給源:イエルシニア・シュードチュベルクロ(登録商標)シス(Yersinia pseudotuberculosis)IP 32953
遺伝子:NC 006155.1 GI:51594359
タンパク質:YP 068627.1 GI:51594436
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:56
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:57
アルドラーゼ供給源:リゾビウムレグミノサラム・ビオヴァルヴィシアエ(Rhizobium leguminosarum biovar viciae)rhiz23g02−plk 1009 341
(サンガー研究所(Sanger Institute))
遺伝子:
ATGGGCATCGTCGTACAGAACATACCACGGGCGGAAGCTGATGTGATCGACAGGCTCGCCAAATCAGGCGTCGCGACGGTCCACGAAGCCCAGGGGCGCAAAGGCATGCTCGCCAGCCATATGAGACCAATCTATTCAGGTGCGCAGATCGCCGGCTCCGCCATTACGATCTCCGCACCGCCCGGTGATAACTGGATGATCCATGTGGCGATCGAGCAGATCCAGGCCGGCGACATCCTGGTGCTTTCGCCGACCTCGCCCTGTGACAACGGTTATTTCGGCGACCTGCTTGCCACCTCGGCGCGGGCGCGAGGTTGCCGCGGCCTTGTCATCGACGCCGGTGTCCGCGATATCAGGGATCTGACCCAGATGCAGTTCCCCGTGTGGTCCAAGGCCGTGTCCGCGCAGGGGACCGTCAAGGAAACGCTCGGTTCGGTCAACGTTCCGATCGTCTGCGCTGGCGCCTTCATCGAAGCCGGCGACATCATCGTCGCCGACGACGACGGGGTGTGCGTGGTGAAGCTCAACGCGGCCGAGGAGGTTCTGACTGCTGCCGAGAACCGTGTGGCGAACGAGGAGGCCAAGCGGCAACGCCTCGCCGCCGGCGAACTCGGGCTCGATATCTATGACATGCGGTCGAAGCTCCGGGAAAAGGGGCTTAAATATGTATGA(配列番号87)
タンパク質:
MGIVVQNIPRAEADVIDRLAKSGVATVHEAQGRKGMLASHMRPIYSGAQIAGSAITISAPPGDNWMIHVAIEQIQAGDILVLSPTSPCDNGYFGDLLATSARARGCRGLVIDAGVRDIRDLTQMQFPVWSKAVSAQGTVKETLGSVNVPIVCAGAFIEAGDIIVADDDGVCVVKLNAAEEVLTAAENRVANEEAKRQRLA
AGELGLDIYDMRSKLREKGLKYVW (配列番号88)
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:58
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:61
アルドラーゼ供給源:ノボスフィンゴビウムアロマティシヴォランス(Novosphingobium aromaticivorans)DSM 12444(スフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(sphingomonas aromaticivorans)F199は同じ遺伝子を有する)
遺伝子:NZ AAAV02000003.1 GI:48848843
タンパク質:ZP 00303270.1 GI:48849026
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:68
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:63
アルドラーゼ供給源:シュードモナス・プティダ(Pseudomonas putida)KT2440
遺伝子:AE016783.1 GI:26557027
タンパク質:AAN68126.1 GI:24984081
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:57
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:60
アルドラーゼ供給源:マグネトスピリラム・マグネトタクティクム(Magnetospirillum magnetotacticum)MS−1
遺伝子:NZ AAAP01003877.1 GI:23016465
タンパク質:ZP00056301.2 GI:46200890
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:73
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:59
アルドラーゼ供給源:ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)CGA009
遺伝子:NC 005296.1 GI:39933080
タンパク質:NP 950032.1 GI:39937756
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:74
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:58
アルドラーゼ供給源:キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)ATCC−33913
遺伝子:AEO12524.1 GI:21115292
タンパク質:AAM43251.1 GI:21115297
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:63
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:64
アルドラーゼ供給源:キサントモナス・アキソノポディスシトリ306(Xanthomonas axonopodiscitri 306)
遺伝子:AE012066.1 GI:21110580
タンパク質:AAM38990.1 GI:21110581
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:61
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:62
アルドラーゼ供給源:ストレプトミセス・アヴェルミティリス(Streptomyces avermitilis)MA−4680
遺伝子:NC 003155.3 GI:57833846
タンパク質:NP 822793.1 GI:29828159
C.テストステロニ(C.testosteroni)のProAとの同一性パーセント:49
S.メリロティ(S.meliloti)のProAとの同一性パーセント:56
khg遺伝子産物の活性の結果
B.サブチリス(B.subtilis)及び大腸菌(E.coli)のkhg遺伝子構築物は、IPTGで誘導された際に高いタンパク質発現レベルを有していたが、一方でS.メリロティ(S.meliloti)のkhgは、比較的低い発現レベルを有していた。前記組換えタンパク質は、総タンパク質及び細胞抽出物のSDS−PAGE解析から判断されるように、高い可溶性を示した。B.サブチリス(B.subtilis)及び大腸菌(E.coli)のkhg遺伝子産物は95%よりも高純度で精製された;His−結合性カートリッジを用いたアフィニティー精製後においてS.メリロティ(S.meliloti)の遺伝子産物の収量はこれら程には多くなかった。
上記酵素の活性にマグネシウム及びホスフェートが必要であるという証拠はない。しかしながら、リン酸ナトリウムバッファー中でアッセイを行なったことが文献により報告され、前記酵素は、二機能性であり、2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコネート(KDPG)のようなリン酸化された基質に対する活性を有することが報告されている。酵素アッセイは、上記の通りに行なわれ、そのいくつかの場合においてホスフェートは除外された。結果は、前記組換えKHGアルドラーゼはMPを生産したが、前記ProAアルドラーゼほどの活性を有していなかったことを示す。いくつかの場合において、KHGにより生産されたMPの濃度は、殆どマグネシウム及びホスフェート単独で生産された量と同じであった。ホスフェートによるKHG活性の増加は見られなかった。バシラス(Bacillus)酵素が最も高い活性を有しており、LC/MS/MS(実施例18を参照)による測定では、前記マグネシウム及びホスフェート単独による場合よりも約20−25%も高い活性を有していた。前記シノリゾビウム(Sinorhizobium)酵素が最も低い活性量を有しており、これは発現に示されるフォールディング及び溶解性の障害に関連している可能性がある。3種類の全ての酵素は、グルタメート活性部位(B.サブチリス(B.subtilis)の番号付け方式で43番目の位置)及びピルベート(130番目の位置)とのシッフ塩基形成に必要なリジンを有する;しかしながら、前記B.サブチリス(B.subtilis)の酵素は、活性部位の残基である47番目にアルギニンではなくスレオニンを含んでいる。B.サブチリス(B.subtilis)のKHGは、比較的小さく、スレオニン活性部位を有する他の酵素と共に、S.メリロティ(S.meliloti)及び大腸菌(B.subtilis)の酵素とは異なるクラスターにあることが判明した。前記活性部位における差異が、B.サブチリス(B.subtilis)の酵素の増大した活性の理由であろう。
アルドラーゼ活性の向上
触媒抗体は、天然のアルドラーゼと同程度に有効であり、広い範囲の基質を許容可能であり、これを用いて図2に示す反応を触媒することが可能である。
また、アルドラーゼは定向進化法により改良可能であり、例えばDNAシャッフリング法及びエラープローンPCR法によりホスフェートの必要性を除去してエナンチオ選択性を逆転することで進化したKDPGアルドラーゼ(上記KHGと非常にホモロジーが高い)が先に記載されている。KDPGアルドラーゼポリペプチドは、ドナー基質(ここではピルベート)に対して高い特異性を有するが、アクセプター基質(即ち、インドール−3−ピルベート)については比較的適応性があるので、生化学反応において有用である(Koeller及びWong,Nature 409:232−239,2001)。KHGアルドラーゼは、多数のカルボン酸及びアルデヒドとピルベートの縮合に対する活性を有する。KHGアルドラーゼの哺乳動物性変種は、バクテリア性変種に対して、4−ヒドロキシ4−メチル2−オキソグルタレートに対する高い活性及び4−ヒドロキシ−2−ケトグルタレートの両方の立体異性体に対する許容性を含むより広いエナンチオ特異性を有すると考えられている。殆どのバクテリア性供給源は、前記融合産物の特定の構造に対して10倍の嗜好性を有することが明らかとなっている。この例外は、ラット肝臓などの哺乳動物性供給源から単離された酵素に類似したジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)バクテリア由来の酵素であり、これは基質に対する緩やかな立体化学的要件と共に低い基質選択性(広範囲の基質を許容する)を示す(参照:Sheltonら(1996)J Am Chem Soc,118(9):2117−2125。ゲノムデータベースでは100種類近くのKHGホモログが利用可能であり、シュードモナス(Pseudomonas)、パラコッカス(Paracoccus)プロヴィデンシア(Providencia)、シノリゾビウム(Sinorhizobium)、モルガネラ(Morganella)、大腸菌(E.coli)及び哺乳類の組織内における活性が実証されている。これらの酵素は、モナチン生産に望ましいエナンチオ特異性の調整の開始点として使用可能である。
ピルベート並びにケト酸であり、及び/又はインドール等のかさ高い疎水性基を有する他の基質を用いるアルドラーゼは、「進化する」ことで前記ペプチドの特異性、速度、及び選択性を調整することが可能である。ここで示されるKHG及びProAアルドラーゼに加え、これら酵素の例には以下のものが含まれるが、これらに限定されることはない:KDPGアルドラーゼ及びこれに関連するポリペプチド(KDPH);ノカルジオイデス(Nocardioides)株由来トランスカルボキシベンザルピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ;ピルベートと2−カルボキシベンズアルデヒド(芳香環含有基質)を縮合させる4−(2−カルボキシフェニル)−2−オキソブト−3−エノエートアルドラーゼ(2’−カルボキシベンザルピルビン酸アルドラーゼ);ピルベート及び芳香環含有アルデヒドを基質として用いる、シュードモナス・プティダ(Pseudomonas putida)及びスフィンゴモナス・アロマティシヴォランス(Sphingomonas aromaticivorans)由来のトランス−0−ヒドロキシベンジリデンピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ;2−オキソ酸を基質として用い、マクロコッカス・デニトリフルカンス(Micrococcus denitriflcans)という生物に存在すると考えられる(3−ヒドロキシアスパラギン酸アルドラーゼ(エリスロ−3−ヒドロキシ−L−アスパラギン酸グリオキシル酸リアーゼ);ベンジル基を含む基質を用いるベンゾインアルドラーゼ(ベンズアルデヒドリアーゼ);ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ;グリシンとベンズアルデヒドを縮合させるL−トレオ−3−フェニルセリンベンズアルデヒド−リアーゼ(フェニルセリンアルドラーゼ);4−ヒドロキシ−2オキソバレレートアルドラーゼ;1,2−ジヒドロキシベンジルピルビン酸アルドラーゼ;及び2−ヒドロキシベンザルピルビン酸アルドラーゼ。
イソクエン酸リアーゼ、N−アセチルノイラミニン酸シンセターゼ、クエン酸リアーゼ、トリプトファナーゼ及びその特定の変異体、β−チロシナーゼ及びその特定の変異体、PLP、触媒アルドラーゼ抗体、トリプトファンシンセターゼは、試験された条件下においては、上記に類似するアッセイ、及び実施例18に記載する検出法を用いて検出可能なレベルでインドール−3−ピルベートをMPに変換していなかったようである。
望ましい活性を有するポリペプチドは、以下の方法を用いて目的のクローンをスクリーニングすることにより選択可能である。トリプトファン栄養要求菌株は、発現カセットに目的のクローンを載せたベクターにより形質転換され、少量のモナチン又はMPを含む培地で増殖された。アミノトランスフェラーゼ及びアルドラーゼの反応は可逆性であるから、前記細胞はモナチンのラセミ混合物からトリプトファンを生産することが可能である。同様にして、生物(組換え型及び野生型の両方)は、MP又はモナチンを炭素及びエネルギー源として利用する能力によりスクリーニング可能である。目的のアルドラーゼの一供給源は、種々のシュードモナス(Pseudomonas)及びリゾバクテリア(rhizobacterial)株の発現ライブラリーである。シュードモナス(Pseudomonads)は、芳香族分子の分解のための種々の独特の異化経路を有しており、また、種々のアルドラーゼも含んでいる;植物の根圏で増殖することが知られるリゾバクテリア(rhizobacteria)はアルドラーゼを含み、モナチンの生合成経路の構築に関して記載された種々の遺伝子を有する。
実施例8
モナチン前駆体の化学合成
実施例7には、アルドラーゼを用いてインドール−3−ピルベートを2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸モナチン前駆体(MP)に変換する方法が記載されている。本実施例では、MPを化学的に合成する別の方法について記載する。
MPは典型的なアルドール型縮合を用いて形成可能である(図4)。簡潔に、典型的なアルドール型反応は、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、リチウムヘキサメチルジシラザン又はブチルリチウムといった強塩基を用いたピルビン酸エステルのカルバニオン生成を必要とする。前記生成されたカルバニオンは、インドール−ピルベートと反応して結合産物を形成する。
インドール窒素の保護に用いることのできる保護基としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない:t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)。カルボン酸のブロック基には、アルキルエステル(例えば、メチル、エチル、ベンジルエステル)が含まれるが、これに限定されるものではない。このような保護基が用いられる場合には、形成される生成物の立体化学を制御することは不可能である。しかしながら、R2及び/又はR3が、(S)−2−ブタノール、メタノール、又はキラルアミンといったキラル保護基(図4)であった場合には、一方のみのMPのエナンチオマーの形成に有利に働くことになる。
実施例9
トリプトファン又はインドール−3−ピルベートのモナチンへの変換
アミノトランスフェラーゼ及びアルドラーゼの2種の酵素を用いた細胞外での製法では、トリプトファン及びピルベートからモナチンが形成された。第一の工程では、α−ケトグルタレートは、インドール−3−ピルベート及びグルタメートを生成するアミノ基移転反応のトリプトファン由来のアミノ基のアクセプターであった。アルドラーゼは、Mg2+及びホスフェートの存在下でピルベートがインドール−3−ピルベートと反応してモナチンのα−ケト誘導体(MP)である2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸を生じる第二の反応を触媒した。前記第一の反応で形成された前記グルタメート由来のアミノ基の移転で、所望の生成物であるモナチンが生成された。前記生成物の精製及び特性指摘により、形成された異性体がS,S−モナチンであることが確認された。上記製法に対して行なわれた改良と共に、代わりとなる基質、酵素及び条件について記載する。
酵素
コマモナステス・トステロニ(Comamonas testosteroni)由来のアルドラーゼである4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ(ProAアルドラーゼ、proA遺伝子)(EC4.1.3.17)が、実施例7に記載される通りにクローニングされ、発現され、精製された。B.サブチリス(B.subtilis)、大腸菌(E.coli)、及びS.メリロティ(S.meliloti)由来の4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸リアーゼ(KHGアルドラーゼ)(EC4.1.3.16)が、実施例7に記載される通りにクローニングされ、発現され、精製された。
モナチンの生成にアルドラーゼと共に用いられたアミノトランスフェラーゼは、大腸菌(E.coli)aspC遺伝子にコードされるL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、大腸菌(E.coli)tyrB遺伝子にコードされるチロシンアミノトランスフェラーゼ、S.メリロティ(S.meliloti)TatA酵素、大形リーシュマニア(L.major)bsat遺伝子にコードされる広範囲の基質に対するアミノトランスフェラーゼ、又はブタ心臓由来のグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(IIa型)であった。非哺乳類タンパク質のクローニング、発現及び精製については、実施例1に記載されている。ブタ心臓由来のグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(IIa型)は、シグマ社(#G7005)から入手した。
ProAアルドラーゼ及びL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの使用方法
前記反応混合物1リットル中には、50mMの酢酸アンモニウム、pH8.0、4mMのMgCl2、3mMリン酸カリウム、0.05mMピリドキサールホスフェート、100mMのピルビン酸アンモニウム、50mMのトリプトファン、10mMのα−ケトグルタレート、160mgの組換え体C.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ(非精製細胞抽出物中、〜30%がアルドラーゼ)、233mgの組換え大腸菌(E.coli)L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(非精製細胞抽出物中、〜40%がアミノトランスフェラーゼ)、が含まれていた。前記酵素以外の全ての成分が一緒に混合され、トリプトファンが溶解するまで30℃でインキュベートされた。その後、前記酵素が添加され、前記反応溶液は、緩やかな振とう(100rpm)と共に30℃で3.5時間インキュベートされた。前記酵素を添加して0.5時間及び1時間後に、一定分量の固体のトリプトファン(各50mmol)が前記反応系に添加された。添加されたトリプトファンの全てが溶解したわけではないが、濃度は50mM又はこれを超える濃度で維持された。3.5時間後に、前記固体のトリプトファンは、フィルター除去された。一定量のトリプトファンを標準として用いたLC/MSによる前記反応混合物の解析により、該溶液中のトリプトファン濃度が60.5mMであり、モナチン濃度が5.81mM(1.05g)であることが示された。
以下の方法を用いて最終生成物を精製した。前記透明な溶液の90%が、バイオラッド(BioRad)AG50W−X8樹脂(225mL;結合容量1.7meq/mL)に注がれた。前記カラムは水で洗浄され、280nmの吸光度が最初の貫流フラクションの5%未満になるまで300mLのクラクションが採取された。その後、前記カラムは1M酢酸アンモニウム、pH8.4で溶離され、300mLフラクションが4フラクション分採取された。4フラクションは、全てモナチンを含んでおり、微温のウォーターバスと共に回転式エバポレーターを用いて105mLまで蒸発された。体積の減少に伴って沈殿が形成され、該沈殿は該蒸発工程を通してフィルター除去された。
LC/MSによる前記カラムフラクションの解析により、99%のトリプトファン及びモナチンが前記カラムに結合していることが示された。前記蒸発工程中に形成された沈殿には、97%よりも多くのトリプトファン及び2%未満のモナチンが含まれていた。上澄中の生成物に対するトリプトファンの比率は、約2:1であった。
前記上澄(7ml)は、事前に、0.5Lの1M NaOH、0.2Lの水、1.0Lの1.0M酢酸アンモニウムpH8.4、及び0.5Lの水で洗浄してアセテート型に変換されていた100mLのファストフローDEAEセファロース(Fast Flow DEAE Sepharose)(アマシャムバイオサイエンス社)カラムに注がれた。前記上澄は、2mL/分未満でロードされ、前記カラムは280nmの吸光度が0になるまで水で3−4mL/分で洗浄された。モナチンは、100mMの酢酸アンモニウムpH 8.4で溶離され、100mLのフラクションを4フラクション分回収した。
前記フラクションの解析により、貫流フラクション中におけるトリプトファンとモナチンの比率は85:15であり、溶離フラクション中における比率は7:93であることが示された。280nmにおけるモナチンの吸光係数がトリプトファンと同じであったと仮定すると、溶離フラクションには、0.146mmolの生成物が含まれていたことになる。総量が1Lの反応系について推定すると、〜2.4mmol(〜710mg)のモナチンが生成され、68%の回収率となる。
DEAEセファローズカラムからの溶離フラクションは20mL未満まで蒸発された。生成物の一定分量は、更に、モナチンの解析スケールでの特性指摘のため、実施例18に記載するのと同様のクロマトグラフィー条件を用いたC8調製用逆相カラムに通すことにより精製された。ウォーターズフラクションリンクス(商標)(Waters FractionlynxTM)ソフトウェアを用いて、m/z=293イオンの検出に基いたモナチンフラクションの自動回収を起動させた。モナチンに対応するプロトン付加分子イオンを含むC8カラムからのフラクションが回収され、蒸発乾燥され、その後、少量の水に溶解された。このフラクションを用いて、生成物の特性指摘を行なった。
生じた生成物は以下の方法により特性指摘が行なわれた。
UV/可視分光法。酵素的に生成されたモナチンのUV/可視分光測定は、キャリー100バイオ(Cary 100 Bio)UV/可視分光光度計を用いて行なわれた。水に溶解された前記精製産物は、インドール含有化合物に特徴的な、288nmに肩のある280nmでの最大吸光を示した。
LC/MS解析。前記生体外での生化学反応から得られたモナチンの混合物の解析は、実施例18に記載されたように行なわれた。図5には、生体外の酵素的生成混合物中のモナチンの典型的なLC/MS解析が示されている。図5の下のグラフには、m/z=293におけるモナチンのプロトン付加分子イオンの選択イオンのクロマトグラムが示されている。混合物中のモナチンの同定は、図6に示される質量スペクトルにより実証された。LC/MSによる前記精製産物の解析は、293の分子イオン及び280nmでの吸光度を持つ単一のピークを示した。質量スペクトルは、図6に示されるものと同一であった。
MS/MS解析。実施例18に記載するように、モナチンについてLC/MS/MS娘イオンの実験も行なわれた。図7にモナチンの娘イオンの質量スペクトルが示されている。図7でラベルした全てのフラグメントイオンの暫定的な構造決定が行なわれた。これらには、m/z=275(293−H2O)、257(293−(2×H2O))、230(275−COOH)、212(257−COOH)、168(3−ブタ−1,3−ジエニル−1H−インドールカルボニウムイオン)、158(1H−インドール−3−カルバルデヒドカルボニウムイオン)、144(3−エチル−1H−インドールカルボニウムイオン)、130(3−メチレン−1H−インドールカルボニウムイオン)、及び118(インドールカルボニウムイオン)のフラグメントイオンが含まれる。分子のインドール部分から得られた場合には、予想されるとおり、これらの多くはMPのために得られたもの(実施例7)と同一であった。いくつかのものについては、ケトンの代わりにアミノ基が存在することにより、MPに見られたものよりも1質量単位高いものであった。
モナチンの精密質量測定。図8には、精製モナチンについてアプライドバイオシステムズ−パーキンエルマーQ−スター(Applied Biosystems−Perkin Elmer Q−Star)四重極/飛行時間複合型質量分析計を用いて得られた質量スペクトルが示されている。トリプトファンを内部質量校正標準として用いて測定したプロトン付加モナチンの質量は、293.1144であった。元素組成Ci4H17N2O5に基いて計算されたプロトン付加モナチンの質量は、293.1137である。これは百万分率(ppm)で2未満の質量測定エラーであり、酵素的に生成されたモナチンの元素組成の確定的証拠を提供するものである。
NMR分光法。NMR実験は、ヴァリアンイノーヴァ(Varian Inova)500MHz装置を用いて行なわれた。モナチンのサンプル(〜3mg)は0.5mlのD2Oに溶解された。最初に、溶媒(D2O)は、4.78ppmにおける内部基準として用いられた。水のピークが大きかったことから、1H−NMRは水のピークを抑制して測定された。続いて、水のピークの広さから、モナチンのC−2プロトンを基準ピークとして使用し、7.192ppmの公表値に定めた。
13C−NMRについては、最初の数百回の走査による測定から、サンプルが希釈されすぎており配分時間内に十分な13Cスペクトルを得られないことが示された。従って、結合する水素と炭素を相互に関連付けて炭素の化学シフトの情報を提供すること可能な、異核種間多量子コヒーレンス(a heteronuclear multiple quantum coherence)(HMQC)実験が行なわれた。
1H及びHMQCデータの要約を表4及び5に示す。公表値との比較から、前記NMRデータは、酵素的に生成されたモナチンは、(S,S)、(R,R)のいずれか、又はこれら両者の混合物であることを示した。
キラルLC/MS解析。生体外で生成されたモナチンは、1種類の異性体であり、(S,S)及び(R,R)エナンチオマーの混合物ではないことを実証するため、実施例18に記載する装置を用いて鏡像異性LC/MS解析が行なわれた。
キラルLC分離は、常温でキロバイオティックT(Chirobiotic T)(アドヴァンストセパレーションズテクノロジー社)キラルクロマトグラフィーカラムを用いて行なわれた。分離法及び検出法は、前記販売会社から公表されたプロトコルを基に、トリプトファンのR−(D)及びS−(L)異性体に対して最適化された。LCの移動相は、A)0.05%(v/v)のトリフルオロ酢酸含有水; B)メタノールを含有する0.05%(v/v)のトリフルオロ酢酸から構成された。溶離は、70%のA及び30%のBで定組成であった。流速は1.0mL/分で、PDAの吸光度は200nmから400nmまでモニターされた。トリプトファン及びモナチンのキラルLC/MS解析に用いた機器パラメータは、実施例18でLC/MS解析について記載されたものと同一である。m/z150−400の領域の一群の質量スペクトルが用いられた。プロトン付加分子イオンの選択イオンクロマトグラム(R−及びS−の両トリプトファンについて[M+H]+=205、モナチンについて[M+H]+=293)は、混合物中のこれら被検体の直接的な同定を可能とした。
図9に、キラルクロマトグラフィーで分離され、MSでモニターされたR−及びS−トリプトファン及びモナチンのクロマトグラフを示す。モナチンのクロマトグラムにおける単一のピークは、該化合物が、S−トリプトファンと殆ど同じ保持時間を持つ1種類の異性体であることを示す。
表4
1H NMRのデータ
旋光分析。旋光度は、ルドルフオートポルIII(Rudolph Autopol III)旋光計で測定された。モナチンは、水中14.6mg/mLの溶液として調製された。S,Sモナチン(塩の状態)について予想される比旋光度([α]D 20)は、水中1g/mLの溶液で−49.6である(Vleggaarら)。酵素的に生成された精製モナチンで測定された[α]D 20は、−28.1であり、S,S異性体であったことを示している。
改良
試薬及び酵素の濃度を含む反応条件は最適化され、以下の試薬配合を用いて5−10mg/mLの収率が得られた:50mM酢酸アンモニウムpH8.3、2mM MgCl2、200mMピルベート(ナトリウム又はアンモニウム塩)、5mMα−ケトグルタレート(ナトリウム塩)、0.05mMピリドキサールホスフェート、酵素添加後に終量を1mLとするための脱気水、3mMリン酸カリウム、50μg/mLの組換えProAアルドラーゼ(細胞抽出物;167μg/mLの総タンパク質濃度)、大腸菌(E.coli)aspC遺伝子によりコードされるL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ1000μg/mL(細胞抽出物;2500μg/mLの総タンパク質濃度)、及び60mMを超える濃度にするための固体トリプトファン(飽和;反応を通じて部分的に溶解しない)。前記混合物は、緩やかな攪拌又はミキシングと共に30℃で4時間インキュベートされた。
置換
α−ケトグルタレートの濃度は、1mMまで減少させることが可能であり、9mMのアスパルテートを補充して同じ量のモナチンが得られる。第一の工程に置いて、オキサロアセテートといった別のアミノ酸アクセプターを用いることもできる。
大腸菌(E.coli)のL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの代わりに、組換え大形リーシュマニア(L.major)の広範囲の基質に対するアミノトランスフェラーゼが用いられた場合でも、同様のモナチン収量が達成された。しかしながら、分子質量が292の第二の未確認の生成物(主生成物の3−10%)もLC/MS解析により検出された。大腸菌(E.coli)tyrBにコードされる酵素、S.メリロティ(S.meliloti)tat Aにコードされる酵素又はブタ心臓由来のグルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(IIa型)がアミノトランスフェラーゼとして添加去れた場合には、0.1−0.5mg/mLのモナチン濃度が得られた。インドール−3−ピルベートから前記反応を開始させた場合、最終工程でグルタメートデヒドロゲナーゼ及びNADHを用いた還元的アミノ化を行なうことが可能である(実施例15のように)。
大腸菌(E.coli)L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼと共にB.サブチリス(B.subtilis)、大腸菌(E.coli)及びS.メリロティ(S.meliloti)由来のKHGアルドラーゼも用いて酵素的にモナチンを生成した。以下の反応条件が用いられた:50mMのNH4−OAc pH8.3、2mMのMgCl2、200mMのピルベート、5mMのグルタメート、0.05mMピリドキサールホスフェート、酵素添加後に終量を0.5mLとするための脱気水、3mMリン酸カリウム、20μg/mLの組換えB.サブチリス(B.subtilis)KHGアルドラーゼ(精製)、細胞抽出物から未精製の約400μg/mLの大腸菌(E.coli)L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、及び12mMインドール−3−ピルベート。反応系は、振とうと共に30℃で30分間インキュベートされた。B。サブチリス(B.subtilis)の酵素を用いて生成されたモナチン量は、80ng/mLであったが、アルドラーゼ量の増加に伴って増加した。インドール−3−ピルベート及びグルタメートを飽和量のトリプトファン及び5mMのα−ケトグルタレートに代えた場合、モナチンの生成は360ng/mLにまで増加した。反応は、飽和量のトリプトファンと共に、50mM Tris pH8.3中に30μg/mLの各3種類のKHG酵素を用いて繰り返され、検出量を増加させるため1時間反応が進められた。実施例7と同様に、バシラス(Bacillus)の酵素が最も高い活性を有し、約4000ng/mLのモナチンを生成した。大腸菌(E.coli)のKHGは3000ng/mLのモナチンを生成し、S.メリロティ(S.meliloti)の酵素は2300ng/mLを生成した。
実施例10
ProAアルドラーゼ及びAspC、TyrB、又はHEXAspCアミノトランスフェラーゼをアミノ末端HIS6タグ有り及び無しで用いたトリプトファンのモナチンへの変換
実施例9に記載される2種類の酵素を用いてトリプトファンからモナチンを生成する生体外の製法について、アミノ末端HIS6タグ有り及び無しで構築された3種類のアミノトランスフェラーゼを用いて更なる試験を行なった。
酵素
コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)由来のproAアルドラーゼ遺伝子が、実施例7に記載されるようにクローニングされて発現された。この遺伝子構築物の遺伝子産物は、pET30系のアミノ末端HIS6タグを有する。
pET30のアミノ末端HIS6タグ系と共に構築されたaspC及びtyrBアミノトランスフェラーゼ遺伝子は、実施例1に記載されるようにクローニングされ発現された。pET30のアミノ末端HIS6タグ系と共に構築されたHEX遺伝子は、実施例2に記載されるようにクローニングされ発現された。上記3種類のアミノトランスフェラーゼ遺伝子のタグ無しの変種は、実施例3に記載されるようにクローニングされ発現された。
アミノトランスフェラーゼタンパク質を含む細胞抽出物を用いたモナチン生成物の遺伝子発現及びアッセイ
proA、aspC、tyrB、及びHEXの遺伝子産物を含む細胞抽出物が、50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で増殖された培養から調製された。OD600が約0.5に達した後に、0.2mM IPTGを添加してタンパク質が誘導された。細胞は誘導後に30℃で4時間増殖され、遠心により回収された。洗浄された細胞は、1μL/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼ、5μL/mLのカルバイオケムプロテアーゼ阻害剤カクテルセットIII(Calbiochem protease inhibitor cocktail set III)及び0.33μL/10mLのr−リゾチームを含むバグバスター(商標)(BugbusterTM)試薬液(ノバジェン社)を用いて、ノバジェン社推奨プロトコルに従って溶解された。緩やかな振とうと共に25℃で15分間インキュベーションされた後、細胞片は、4℃にて21,000×gで20分間遠心してペレット化され、上澄が慎重に除去された(細胞抽出物)。
前記タンパク質の濃度は、96ウェルプレート型でピアスBCAプロテインアッセイキット(Pierce BCA Protein Assay Kit)を用いて測定された。各ウェルあたりの総アッセイ体積は、200μLであった。各ウェルにおいて、200μLのワーキング試薬が10μLのタンパク質溶液に添加された。ウシ血清アルブミン(ピアス社、カタログ#23209)が検量線決定に用いられた(0ないし1.0mg/mL)。アッセイのサンプルと標準物質の吸光度が562nmで測定された。
未精製酵素を用いてトリプトファンからのモナチン生成を試みた。前記2種類のタンパク質の発現レベルは、以下の例において高かった(可溶性タンパク質総量の30ないし40%)。しかしながら、例えば可溶性タンパク質総量の5ないし30%といった発現レベルの低い、又は、例えば可溶性タンパク質総量の40%を超える発現レベルの高い他の細胞抽出物を用いることも可能であった。反応混合物1mLには、100mMの酢酸ナトリウムpH8.0、4mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム、0.05mMのピリドキサールホスフェート、200mMピルビン酸ナトリウム、50mMのトリプトファン、10mMのα−ケトグルタレート、112μgの組換えC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ(〜30%のアルドラーゼを含有する未精製細胞抽出物(可溶性タンパク質総量の百分率として計算))及び1000μg又は10μgいずれかの組換えアミノトランスフェラーゼ(〜40%のアミノトランスフェラーゼを含有する未精製細胞抽出物(可溶性タンパク質総量の百分率として計算))が含まれていた。トリプトファンは固体のまま添加された。酵素以外の全ての成分が一緒に混合され、前記トリプトファンが溶解するまで30℃にてインキュベートされた。その後、酵素が添加され、反応溶液は、緩やかな攪拌と共に30℃で1時間インキュベートされた。反応混合物は、実施例18に記載されるようにLC/MS/MS MRMによりモナチン形成について解析された。表6に、酵素活性を前記1時間のインキュベーション中に生じた生成物の濃度として列挙する。これらの結果から、AspC又はHEXAspCアミノトランスフェラーゼがpET30アミノ末端HIS6タグと融合した場合、又はこれらが天然タンパク質のまま発現された場合において、トリプトファンから形成されたモナチンの量に有意差が無いことが示されている。対照的に、タグ付きのTyrBタンパク質は、タグ無しのTyrBタンパク質と比べて、少量の産物を生成している。タグ無しのTyrBタンパク質は、添加されたアミノトランスフェラーゼ酵素の総量に依存するが、AspC又はHEXAspCアミノトランスフェラーゼ反応混合液で測定された生成物濃度の約25−75%を生成している。
最適化されていない培地、誘導濃度、又は誘導時間を用いた場合、AspC又はProAの発現レベルは低下した(例えば、総可溶性タンパク質の約10−20%まで)。これらの場合には、更なる量の細胞抽出物を用いて対等な結果を得た。
精製アミノトランスフェラーゼタンパク質の使用
アミノトランスフェラーゼは、タグ付きのpET30構築物の細胞抽出物(上記同様に生成)からHis−結合性カートリッジ付きの固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて、製造元のプロトコル(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)に従って精製された。融合タンパク質のHIS6−タグ配列は、IDAベースのHis−結合性樹脂に固定化された2価のNi2+カチオンに結合する。溶離液フラクションは、PD−10(アマシャムバイオサイエンス社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)カラムで脱塩され、pH7.0の50mM Tris−HClで溶離された。精製されたタンパク質は、SDS−PAGEにより純度が分析され、ウシ血清アルブミンを標準物としてピアスBCAアッセイ(Pierce BCA assay)を用いてフラクション中のタンパク質の量が測定された。
精製されたAspC、HEXAspC、又はTyrBアミノトランスフェラーゼ及び未精製のProAアルドラーゼを用いてトリプトファンからのモナチン形成を試みた。反応混合物0.5mLには、50mMのTris−HCl、pH8.0、4mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム、0.05mMピリドキサールホスフェート、200mMのピルビン酸ナトリウム、〜50mMのトリプトファン、5mMのα−ケトグルタレート、165μgの組換えC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ(〜30%のアルドラーゼを含有する未精製細胞抽出物(可溶性タンパク質の総量の百分率として計算))及び64μg又は10μgいずれかの精製組換え大腸菌(E.coli)アミノトランスフェラーゼが含まれていた。トリプトファンは固体のまま添加された。酵素以外の全ての成分が一緒に混合され、前記トリプトファンが溶解するまで30℃にてインキュベートされた。その後、酵素が添加され、反応溶液は、緩やかな振とうと共に30℃で2時間インキュベートされた。反応混合物は、10倍に希釈され、実施例18に記載されるようにLC/MS/MS MRMによりモナチン形成について解析された。表7に、酵素活性を前記2時間のインキュベーション中に生じた生成物の濃度として列挙する。
表7の結果は、限定された量の精製アミノトランスフェラーゼ及び過剰のアルドラーゼ(未精製)により、AspCアミノトランスフェラーゼの反応よりも、HEXAspCアミノトランスフェラーゼの反応では7倍多いモナチン(殆ど検出不能 対 0.0879g/L)が生成されることを示している。より高濃度のアミノトランスフェラーゼでは、前記増加率は約20%となる。しかしながら、同様にして、未精製酵素ではあまり著しい差異は観察されなかった(表6参照)。
コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)由来のproAアルドラーゼ遺伝子及びHIS6タグ無しのHEXアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子もpET23a(ノバジェン社)誘導体のマルチプルクローニング配列のNdeI及びXhoI部位にクローニングされた。これら構築物の細胞抽出物が、IPTG又はラクトースのいずれかにより誘導された培養から調製され、モナチンの酵素的生成のための酵素の供給源として使用された。反応は、50mLにおいてpHの範囲が7.5ないし8.9にある3種類のスルホン酸緩衝液(MOPS、3−(N−モルフォリオ)プロパンスルホン酸;HEPES、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−スルホン酸;TAPS、2−ヒドロキシ−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)メチル)アミノ)−1−プロパンスルホン酸)のいずれか1種類を用いて行なわれた。反応系には、50mMの緩衝液、2mMのMgCl2、200mMのピルベート、5mMのグルタメート、0.05mMのピリドキサールホスフェート、酵素添加後に終量を50mLとするための脱気水、3mMのリン酸カリウム、194μg/mLのProAアルドラーゼ細胞抽出物(〜50μg/mLのアルドラーゼを含む)及び281μg/mL又は2810μg/mLのHEXAspCアミノトランスフェラーゼ細胞抽出物(〜50μg/mL又は〜500μg/mLのアミノトランスフェラーゼを含む)が含まれていた。酵素添加の直前であり、かつ反応が開始してから一定時間間隔後に固体のトリプトファン(0.5g)が反応混合物に加えられた。反応系は常温で攪拌され、一定分量が上記同様にLC−MSによる解析用に取り分けられた。これらの条件下において、モナチン生成に最適なpHは、8.2から8.5の間にあった。前記酵素は、反応開始後から数日間モナチンを生成し続け、6g/L以下の生成物を生成した。
実施例11
本実施例は、ジモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)(ATCC29191)からKHGアルドラーゼをクローニングし、解析する方法について記載する。この酵素をアミノトランスフェラーゼと組み合わせて用いてトリプトファンからモナチンを生成した。
クローニング
Z.モビリス(Z.mobilis)(ATCC29191)由来のkhg遺伝子は、実施例2に記載されるのと同様の方法によりクローニングされた。Mekalanos JJ,「ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)の毒素遺伝子の複製及び増幅(Duplication and amplification of toxin genes in Vibrio cholerae)」,Cell 35:253−263(1983)の方法を用いてゲノムDNAを単離した。
Z.モビリス(Z.mobilis)のkhg遺伝子のpET30a及びpET28ベクター(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)へのクローニング用に以下のプライマーが設計された。
N末端:5’−GGCCGGCATATGCGTGATATCGATTCCGTAAT−3’(配列番号81);
C末端:5’−GGAATTCTCGAGTTAGGCAACAGCAGCGCG−3’(配列番号82)。
以下のPCRプロトコルを用いて遺伝子増幅を行なった:50μLの反応量中に、200ngのDNAの鋳型、1.6μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、0.5UのpfuUltra HFポリメラーゼ(ストラタジーン社)、2.8Uのエキスパンドハイファイデリティー(商標)ポリメラーゼ(Expand High FidelityTM Polymerase)(ロッシュモレキュラーバイオケミカルズ社、インディアナポリス、インディアナ州)、及びMgCl2含有の1Xエキスパンド(商標)バッファー(1×ExpandTM)が添加された。サーマルサイクラーのプログラムには、94℃で3分間のホットスタート;これに続く94℃(30秒間)の変性ステップ、53℃(30秒間)のアニーリングステップ、及び72℃(1分30秒間)の伸長ステップの8サイクル;94℃(30秒)の変性ステップ、59℃(30秒間)のアニーリングステップ、及び72℃(1分30秒間)の伸長ステップの20サイクル;及び最後に72℃(7分間)の終了ステップ、が用いられた。該増幅されたDNAは、キアゲンキアクイック(登録商標)ゲルエクストラクションキット(Qiagen QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いて1%アガロースゲルから精製された。精製DNA及び精製プラスミドDNA(キアゲンキアプレップ(登録商標)スピンミニプレップキット(Qiagen QIAprep(登録商標)Spin Miniprep Kit)を用いて精製)は、製造元の指示(NEB; ビヴァリー、マサチューセッツ州)に従い、NdeI及びXhoIにより消化された。NdeIによるpET30aベクターの消化により、アミノ末端のHIS6−タグ領域が除去される。消化されたDNAは、キアゲンキアクイック(登録商標)ゲルエクストラクションキット(Qiagen QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いて1%アガロースゲルから精製された。精製されたDNA産物は、260nmでの吸光度の測定により定量され、ラピッドDNAライゲーションキット(Rapid DNA Ligation Kit)(ロッシュ社)を用いてライゲーションされた。ライゲーション反応物のエレクトロコンピテントDH10Bへの形質転換は、バイオラッド社のエレクトロポレーションマニュアルに記載されるように、0.2cmキュベット及びバイオラッドジーンパルサーII(Bio−Rad Gene Pulser II)装置を用いて、標準的な条件の下で行なわれた。khg遺伝子を含むクローンは、制限酵素処理解析により同定され、DNAシーケンスにより確認された。配列番号83及び84には、khg遺伝子とその遺伝子産物のヌクレオチド配列及びこれに対応するアミノ酸配列が示されている。
遺伝子発現及びアッセイ
プラスミドDNA(シーケンス解析により確認)は、製造元のプロトコル(ノバジェン社)に従って、発現宿主であるBL21(DE3)(ノバジェン社)に形質転換された。該培養は、50mg/Lのカナマイシンを含むLB倍地中で増殖された。50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で37℃にて増殖させたBL21(DE3)構築物を用いて誘導実験が行なわれた。OD600が約0.6に達した後に、0.2mM IPTGを用いてタンパク質発現が誘導された。細胞は30℃で4時間増殖され、遠心により回収された。細胞は、その後、1μL/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼ、5μL/mLのカルバイオケムプロテアーゼ阻害剤カクテルセットIII(Calbiochem protease inhibitor cocktail set III)を含むバグバスター(商標)(BugbusterTM)試薬液(ノバジェン社)を用いて、ノバジェン社推奨プロトコルに従って溶解された。上澄(無細胞抽出物)は、4−15%の勾配ゲル(バイオラッド社)を用いたSDS−PAGEにより分析され、前記組換え融合タンパク質の可溶性タンパク質濃度が検出された。Z.モボリス(Z.mobolis)アルドラーゼは、大腸菌(E.coli)内で効率よく発現され、可溶性タンパク質の約30%を占めることがSDSポリアクリルアミドゲル上で判断された。
未精製の酵素を用いて、トリプトファンからのモナチンの形成を試みた。前記反応混合物1mL中には、100mMの酢酸アンモニウムpH8.0、4mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム、0.05mMのピリドキサールホスフェート、100mMのピルビン酸ナトリウム、50mMのトリプトファン、10mMのα−ケトグルタレート、239μgの組換えHEXAspCアミノトランスフェラーゼ(〜30−40%のアルドラーゼを含む非精製細胞抽出物(可溶性タンパク質総量の百分率として計算))及び組換えZ.モビリス(Z.mobilis)khgアルドラーゼ(〜30%のアルドラーゼを含む10又は100μgの非精製細胞抽出物(可溶性タンパク質総量の百分率として計算))又はProAアルドラーゼ(30%のアルドラーゼを含む11.2又は112μgの非精製細胞抽出物(可溶性タンパク質総量の百分率として計算))が含まれていた。トリプトファンは固体で添加された。前記酵素以外の全ての成分が一緒に混合され、トリプトファンが溶解するまで30℃でインキュベートされた。その後、前記酵素が添加され、前記反応溶液は、緩やかな振とうと共に30℃で1時間又は22時間インキュベートされた。反応混合物は、10倍に希釈され、実施例18に記載されるようにLC/MS/MS MRMによりモナチン形成について解析された。表8に、酵素活性を前記インキュベーション中に形成された生成物の濃度として列挙する。
表8に列挙される結果は、Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼが、ProAアルドラーゼが存在する反応との比較においては低濃度ではあるが、モナチン形成を触媒していることを示している。第2列目及び4列目の結果の比較から分かるように、反応系により高濃度のKHGアルドラーゼが添加された場合には、より多くのモナチンが形成されていた。Z.モビリス(Z.mobilis)KHGアルドラーゼが存在する反応系からのLC/MS/MSクロマトグラフにモナチンのMS/MSの特徴を有する2本のピークが観察され、この酵素により複数種のモナチン異性体が形成されたことが示された。表8に示される結果は、これら2本のピークの和を表している。Z.モビリス(Z.mobilis)のアッセイの24時間サンプルをキラル手法を用いて解析した場合、該サンプルの大体数はS,S−モナチンであることが示された。しかしながら、少量のR,S−モナチンも存在しており、Z.モビリス(Z.mobilis)アルドラーゼがR−モナチン前駆体(R−MP)立体異性体を生成可能であることが示された。
前記Z.モビリス(Z.mobilis)KHGについて、ProAアルドラーゼと共に、実施例7に記載される大腸菌(E.coli)のホモログとの比較により更なる特性指摘が行なわれた。1mLの反応混合物に対し、以下のものが加えられた:約60μgアルドラーゼ(細胞抽出物中に供給される)、4mMのMgCl2、50mMのD−トリプトファン、0.5mgのバイオカタリティクス(BioCatalytics)D−アミノトランスフェラーゼ(AT−103)、100mMピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウムバッファーpH7.5又は100mM酢酸ナトリウムバッファーpH8、0.05mMのPLP、3mMのリン酸カリウム(酢酸反応のみに添加)、及び10mMのα−ケトグルタレート。実験は、アルドラーゼが添加されていないネガティブコントロールを用いて2つの系で重複して行なわれた。サンプルは、緩やかな振とうと共に30℃にて一晩(20時間)インキュベートされ、LC/MS/MS解析及びFDAA誘導体化の前に濾過された。酢酸ナトリウムサンプルの実際のpHは約5であり、ホスフェートにより緩衝されたサンプルの最終pHは約7であった。いずれのアルドラーゼもpH5では有意な活性を有しておらず、ProAアルドラーゼを含むサンプルではネガティブコントロールよりも若干高かったが、恐らく実験誤差よりも高いものではなかったであろう。リン酸カリウムにおいては、ProAアルドラーゼは、R,R:S,Rが1.7:1となる比率で73.4ppmのモナチンを生成した。KHGアルドラーゼは、およそR,R:S,Rが2:1−4:1となる比率で、0.03−0.6ppmのモナチンを生成した。
実施例12
大腸菌(E.coli)由来の別のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを用いたS,Sモナチンの生成
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼと芳香族アミノトランスフェラーゼの両方に相同性を有する推定上PLP依存性のアミノトランスフェラーゼが、大腸菌(E.coli)MG1655からクローニングされ、その組換えタンパク質のS,S−モナチンを生成する活性について試験を行なった。NCBIにGI:48994873として寄託されたyfdZ遺伝子配列の、タンパク質GI:1788722(タンパク質ID AAC75438.1)をコードする2496317−2495079塩基に基づいてプライマーが設計された。
5’プライマー:
TGA CCC TCT AGA TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG GCT GAC ACT CGC CCTGAAC(配列番号85)
3’プライマー:
TTC TCA AGC TTT TAT TCC GCG TTT TCG TGA ATA TGT TTG(配列番号86)
MG1655由来のゲノムDNAが標準的手法を用いて調製され、100ngが1×rTthバッファー、1mMの酢酸マグネシウム塩、0.3mMの各dNTP、0.75μMの各プライマー、0.5μLのPfuポリメラーゼ(Pfu Polymerase)(ストラタジーン社)、及び4単位のrTthポリメラーゼ(rTth Polymerase)(アプライドバイオシステムズ社)をも含む100μLのPCR反応に用いられた。PCR8ラウンドにおいて56℃のアニーリング温度を用い、これに60℃のアニーリング温度を用いる22ラウンドのPCRが続いた。伸張ステップは、68℃にて2分15秒間行なわれた。PCR産物は、キアゲンキアクイックゲルエクストラクションキット(Qiagen QIAquick Gel Extraction Kit)(バレンシア、カリフォルニア州)を用いてゲル精製され、EBバッファー50μL中に溶出された。精製されたPCR産物及びpTRC99aベクター(ファルマシアバイオテック社)は、BSA入りの1×NEBバッファー中で37℃にてXba及びHindIIIで一晩消化された。消化産物は、キアゲンキアクイック(登録商標)PCRピュリフィケーションキット(Qiagen QIAquick(登録商標)PCR Purification Kit)を用いて精製され、32μLの0.5XEB中に溶出された。ライゲーションは、インサート:ベクターを6:1の比率で、クイックライゲーションキット(Quick Ligation Kit)(NEB)を用いて行なわれた。ライゲーション反応物は、PCRピュリフィケーションキット(PCR Purification Kit)を用いて精製され、DH10Bコンピテント細胞にエレクトロポレーションされた。100μg/mLのアンピシリンを含むLBプレートに2μLが播種された。コロニーは、pTRC99aベクターから得られたプライマーを用いてPCRによりスクリーニングされた。ミニプレップDNAはシーケンスされ、ベクターへの正確な挿入が確認された。
細胞は、アンピシリン含有LB培地にて0.4のODまで増殖され、1mMのIPTGにて37℃で3時間誘導された。バグバスター(商標)(BugBusterTM)(ノバジェン社)を用いて、製造元のプロトコルに従って細胞抽出物が作られ、タンパク質濃度が0−2mg/mLのBSA標準を用いたピアスBCAアッセイ(Pierce BCA assay)の使用により測定された。発現は、可溶性タンパク質のSDS−PAGE解析により確認され、推定上のアミノトランスフェラーゼ(YfdZ)は、可溶性タンパク質の約10%を構成することが測定された。
モナチン生成について、yfdZ遺伝子産物は100mM酢酸ナトリウム及び50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)の両方においてアッセイされ、実施例2に記載されるように調製されたHEXAspCタンパク質と比較された。50μgの未精製アミノトランスフェラーゼが、20mMのL−トリプトファン、4mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム(酢酸バッファー専用)、0.05mMのPLP、10mMのα−ケトグルタレート、100mMピルビン酸ナトリウム、及び細胞抽出物として提供された50μgのProAアルドラーゼ(実施例7に記載)を含む各バッファー中にてアッセイされた。酵素の添加前に、酢酸サンプルのpHを6ないし7.5に調整する必要があった。1mLのサンプル(2つの系で重複して測定)は、緩やかな振とうと共に30℃にて1時間インキュベートされた。各バッファーにてネガティブコントロールも行なわれ、ProAアルドラーゼの細胞抽出物に存在するもの以外全くアミノトランスフェラーゼを含むものではなかった。サンプルは濾過され、実施例18に記載されるようにLC/MS/MS(MRM)により解析された。生成されたモナチンのバックグラウンド量(410−469ng/mLのモナチン)を差し引いた後、HEXAspCアミノトランスフェラーゼは、ホスフェートバッファー中で1285ng/mLのモナチンを生成することが判明し、YfdZタンパク質は426ng/mLのモナチンを生成することが判明した。酢酸ナトリウムバッファー中においては、HEXAspCアミノトランスフェラーゼが815ng/mLのモナチンを生成する一方で、前記推定上のアミノトランスフェラーゼは446ng/mLを生成した。結果から、yfdZ遺伝子産物は、実際に、実施例1に記載されるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼと類似する振る舞いを見せるアミノトランスフェラーゼであり、その活性はトリプトファン及びモナチンの両方に対するものであることが確認された。
実施例13
市販のトランスアミナーゼライブラリーを用いたインドール−3−ピルベートからのモナチンの生成の比較
トランスアミナーゼライブラリーがバイオカタリティクス(BioCatalytics)(パサディナ、カリフォルニア州)から購入され、該酵素はC.テストステロニ(C.testosteroni)由来のProAアルドラーゼを用いた関連反応におけるモナチンの生成について試験された。前記ライブラリーは以下のものから構成されていた:AT−101、広範囲L−アミノトランスフェラーゼ;AT−102、分枝鎖L−トランスアミナーゼ(即ち、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT、EC2.6.1.42));AT−103、広範囲D−トランスアミナーゼ;AT−104、分枝鎖L−トランスアミナーゼ(即ち、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCAT、EC2.6.1.42));AT−105、リジン6−アミノトランスフェラーゼ;及びAT−106、広範囲L−トランスアミナーゼ。AT−103を含む反応では、D−グルタメートがアミノ酸ドナーとして用いられた。AT−105を含む反応では、L−リジンがアミノドナーとして用いられた。他の全ての反応では、L−グルタメートが補基質として用いられた。酵素及び追加の組成物/基質は、前記キットに提供され、100mMのリン酸カリウムバッファーpH7.5、100mMのアミノドナー、及び0.1mMのPLPを含む反応バッファーに直接添加された。1mLの反応バッファーに対し、以下のものが添加された:4mgのインドール−3−ピルベート、20mgのピルベート、細胞抽出物中に提供される約50μgのProA、1μLの2MのMgCl2、及び2mgの試験されるアミノトランスフェラーゼ酵素。全ての反応は2つの系で重複して行なわれ、追加のアミノトランスフェラーゼを添加していないネガティブコントロール反応も行なわれた。モナチンのバックグラウンド生成は、組換えProA酵素の細胞抽出物中に存在する天然の大腸菌(E.coli)アミノトランスフェラーゼに起因する。反応は、緩やかな振とう(100rpm)と共に30℃で一晩インキュベートされた。サンプルは濾過され、実施例18に記載される逆相LC/MS/MS解析に処された。結果を以下に示す:
AT−101、AT−102、AT−103、及びAT−104アミノトランスフェラーゼは、明らかにネガティブコントロールよりも多くのモナチンを生成した。AT−105は、ネガティブコントロールよりも少ないモナチンを生成しているが、これは恐らく、細胞抽出物中の天然大腸菌(E.coli)アミノトランスフェラーゼに適していないリジンをアミノドナーとして用いたことが理由であろう。同様にして、D−グルタメートが与えられたAT−103を含む反応ではバックグラウンドが低くなることが予想されるであろう。上記結果は更に解析され、クロマトグラフ分離中に分解する2種類の立体異性体プールのピーク領域に基づいてモナチンのS、R/R、S対R、R/S、S比が測定された。生成された総モナチン量のうち、ネガティブコントロールに約99.7%のR、R/S、Sモナチンが含まれていた。AT−102が次に最も高い特異性を示し(89%のRR/SSピーク)、AT−101及びAT−104がこれに続いた(〜80%)。広い特異性を有するD−アミノトランスフェラーゼであるAT−103を用いた反応では、混合異性体との比較で69%のR、R/S、Sモナチンが生成された。この酵素は、D−アミノ酸に呈する広い特異性を有することが知られており、実施例1においてもD−トリプトファンを基質として許容することが示された、実施例1に記載されたバシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)のDAT酵素と相同的である。実施例18に記載する方法を用いてキラル解析が行なわれ、予想通り、前記D−アミノトランスフェラーゼはR,Rモナチンを生成していたことが確かめられた。S,Sモナチン又はR,Rモナチンを基質として用いた更なる実験により、予想通り、バイオカタリティクス(BioCatalytics)の酵素はD−配位に対する選択性が非常に高いことが確認された(実施例15に結果を記載する)。
AT−103(前記広範囲D−トランスアミナーゼ)及びProAアルドラーゼを含む関連反応中の副生成物として生成するS,Sモナチン又はR,Sモナチンの量を減少させるため、該アルドラーゼは、実施例1に記載するようにHis−結合性カートリッジを用いて精製された。精製された酵素には、細胞抽出物中に存在する可能性のある野生型アミノトランスフェラーゼ活性は含まれないはずであった。His−結合性溶離物は脱塩され、PD−10カラム(G25セファデックス(G25Sephadex)、アマルシャムファルマシア社)を用いてイミダゾールが除去され、50mMのTris−Cl、pH7に溶出された。実験は、2つの系で重複して行なわれ、1mLの体積中には、100mMのTris−ClバッファーpH7.8、50μgProAアルドラーゼ、4mgのインドール−3−ピルベート、1又は2mgのD−アミノトランスフェラーゼ、200mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム、0.1mMのPLP、及び14.7mgのD−グルタメートが含まれていた。チューブは緩やかな振とうと共に30℃でインキュベートされた。2時間のタイムポイントが取られ、−20℃にて即座に凍結された。2時間目においてNaOHを用いてpHが5から7−8の間に調整され、アッセイ系は一晩インキュベートされた。サンプルは濾過され、実施例18に記載するようにモナチンについて解析された。恐らく低いpHのせいで、前記2時間目のサンプルは、検出可能な量のモナチンを有していなかった。一晩のサンプルは、1mgのD−アミノトランスフェラーゼを用いた場合に約190ng/mLのモナチンを含有し、約84%がR,Rモナチンで16%がS,Rモナチンであった。2mgのD−アミノトランスフェラーゼを用いた場合には、540ng/mLのモナチンが生成され、約71%がR,Rモナチンであった。
同様の実験が、100mMのリン酸カリウムpH7.5、0.1mMのPLP、及び100mMのグルタメートを含むバイオカタリティクスアミノトランスフェラーゼ(Biocatalytics Aminotransferase)バッファーを用いて行なわれた。上記のように固体インドール−ピルベート及びD−アミノトランスフェラーゼが添加された。ストック溶液からPro A アルドラーゼ(50μg)、MgCl2、及び50mMのピルベートが添加された。アッセイ系は上記と同様に処理されたが、この場合においてはpH調整は必要なかった。バイオカタリティクス(BioCatalytics)により供給される酵素及びバッファーのみを用いてネガティブコントロールが行なわれたが、モナチンは全く生成されなかった。実験結果を表9に示す。
ホスフェートバッファー中でのモナチン生成量は、明らかにTrisバッファー系よりも高い。
実施例1からのクローニングされたB.サブチリス(B.subtilis)DATの活性とバイオカタリティクス(BioCatalytics)の酵素を比較するため、更なるアッセイが行なわれた。B.サブチリス(B.subtilis)dat遺伝子は、実施例1にAspC及びHEXAspCアミノトランスフェラーゼについて記載されるのと同様にサブクローニングされ、His−6タグが取り除かれた。実施例1に記載されるように、タグ無し及びタグ付きの酵素がBL21(DE3)で生成された。細胞抽出物が作られ、前述のように総タンパク質のアッセイが行なわれ、タンパク質濃度が測定された。以下を含む1mLの反応が2つの系で重複して行なわれた:500μgのD−アミノトランスフェラーゼ、50μgのProAアルドラーゼ、100mMリン酸カリウムpH7.5、3mMのMgCl2、4mgのインドール−3−ピルベート、200mMピルビン酸ナトリウム、7.35mg(50mM)のD−グルタメート、及び0.1mMのPLP。サンプルは30℃で1時間、2時間、及び一晩インキュベートされ、LC/MS/MS解析用に濾過された。実施例18に記載されるFDAA誘導体化プロトコルにより、サンプルにはモナチンのS,R及びR,R立体異性体のみが含まれることが分かった。結果は、下記表10にまとめられている。%RRは、逆相クロマトグラフィーにより分離されるピーク領域により決定され、更に前記一晩のサンプルの組成がFDAA誘導体化技術により確かめられた。
HIS−6タグの除去によりB.サブチリス(B.subtilis)のD−アミノトランスフェラーゼの活性が向上されたことが分かった;しかしながら、バイオカタリティクス(BioCatalytics)D−アミノトランスフェラーゼのホモログが明かに最も高い活性を有していた。また、バイオカタリティクス(BioCatalytics)D−アミノトランスフェラーゼは、R−MPに対してより高い基質特異性を示した。インキュベーション時間の増加は、形成されるR,Rモナチンの鏡像異性的余剰を減少させることが分かった。
バシラス(Bacillus)種由来の他の相同的なD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼについても特性指摘が行なわれた。バシラス(Bacillus)種YM−I由来の酵素は、B.サブチリス(B.subtilis)の酵素と類似した基質特異性を有することが判明し、従って、この酵素がモナチンの生成のために機能することが予想される。更に、B.YM−I及びB.サブチリス(B.subtilis)は、特異性が高い酵素であり、B.スフェリカス(B.sphaericus)及び他の種に由来するホモログのように広い基質特異性を有しないことが示された。従って、全てのバシラス(Bacillus)のホモログはモナチンに至る酵素経路において活性を有することが予想される。K.Yonaha、H.Misono、T.Yamamoto、及びK.Soda、JBC、250:6983−6989(1975);K.Tanizawa、Y.Masu、S.Asano、H.Tanaka、及びK.Soda、JBQ264:2445−2449(1989)を参照。試験された(上記)相同的酵素であるAT−103については、モナチンの生成を触媒することが示された。B.アントラシス(B.anthracis)、B.セレウス(B.cereus)、B.ハロジュランス(B.halodurans)、B.リチェニフォルミス(B.licheniformis)、B.スフェリクス(B.sphaericus)、B.ステアロテルモフィルス(B.stearothermophilus)、B.サブチリス(B.subtilis)、B.スリンギエンシス(B.thuringiensis)、B.YM−l/YM−2、ゲオバシラス(Geobacillus)種、テルモフィリック(thermophilic)種、及びオセアノバシラス(Oceanobacillus)種を含むバシラス(Bacillus)種内において、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼをコードする多くの遺伝子が知られている。
実施例14
市販のデヒドロゲナーゼ酵素を用いたモナチンの生成
C.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼと共にバイオカタリティクス(BioCatalytics)アミノ酸デヒドロゲナーゼ酵素を用いたインドール−3−ピルベート及びピルベートからのモナチンの生成について、以下の条件でアッセイを行なった:6−7mg/mlのデヒドロゲナーゼ酵素、5mgのNADH又はNADPH、50μgアルドラーゼ(未精製、実施例7を参照)、3mMリン酸カリウムバッファー、2mMのMgCl2、4mgのインドール−3−ピルベート、及び20mgのピルベートが1mLのAADH反応バッファー(100mMの炭酸水素塩pH9.5、200mMのNH4Cl)に添加された。ネガティブコントロールには、アミノ酸デヒドロゲナーゼ酵素は含まれていなかった。サンプルは30℃にて100rpmで一晩インキュベートされた。実験は2つの系で重複して行なわれた。前記試験されたデヒドロゲナーゼは、AADH−110、AADH−111、AADH−112、及びAADH−113であった。AADH−110及び111は、広い特異性を有する酵素として規定され、一方で112及び113はグルタミン酸デヒドロゲナーゼである。AADH−110は、ネガティブコントロールとの比較において、約0.36μg/mLの最も多くのモナチンを生成した(LC/MS/MSにより測定)。NADHを用いるグルタミン酸デヒドロゲナーゼであるAADH−112は、NADPHを用いるグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(AADH−113)よりも高い活性を示した。AADH−111については、アッセイされた条件下ではネガティブコントロールよりも多くのモナチンを生成しなかった。
実施例15
MP及びモナチン間での相互変換
MPのアミノ化によるモナチンの形成は、アミノトランスフェラーゼにより、又はNADH若しくはNADPHといった補因子を要するデヒドロゲナーゼにより触媒可能である。実施例1及び9、10、12−14を参照。これらの反応は可逆的であり、いずれの方向においても測定することができる。デヒドロゲナーゼ酵素を用いた場合の方向性は、主にアンモニウム塩の濃度により制御されている。
デヒドロゲナーゼ活性。モナチンの酸化的脱アミノ化は、NAD(P)+がより単色のNAD(P)Hに変換することに伴う340nm吸光度の増加を追跡することによりモニターされた。モナチンは、実施例9に記載されるように、酵素的に生成されて精製された。
典型的なアッセイ用混合物0.2mLには、50mMのTris−HCl、pH8.0ないし8.9、0.33mMのNAD+又はNADP+、2ないし22単位のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ社)、及び10−15mMの基質が含まれていた。アッセイは、UV透過性のマイクロタイタープレートにて、モレキュラーデバイススペクトラマックスプラス(Molecular Devices SpectraMax Plus)プレートリーダーを用いて2つの系で重複して行なわれた。酵素、バッファー、及びNAD(P)+の混合物は、基質を含むウェルにピペッティングにより移され、短時間の混合の後10秒間の間隔を設けて340nm吸光度の増加がモニターされた。反応系は25℃で10分間インキュベートされた。基質を添加していないネガティブコントロールが行なわれ、ポジティブコントロールとしてはグルタメートが用いられた。ウシ肝臓由来のIII型グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ社#G−7882)は、グルタメートのα−ケトグルタレートへの変換速度の約100分の1の変換速度でモナチンのMPへの変換を触媒した。グルタミン酸デヒドロゲナーゼを用いてインドール−3−ピルベートからモナチンを生成する試みでは、結果として検出可能量のトリプトファンが生成され、前記経路における本工程においては、オキシダーゼ又はアミノトランスフェラーゼを用いるよりもむしろ潜在的にグルタミン酸デヒドロゲナーゼ又はその変異体を、トリプトファンの脱アミノ化に用いることが可能であることが示された。
アミノ基移転活性。大腸菌(E.coli)由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(HIS6−AspC)、大腸菌(E.coli)由来のチロシンアミノトランスフェラーゼ(HIS6−TyrB)、大形リーシュマニア(L.major)由来の広範囲の基質に対するアミノトランスフェラーゼ(HIS6−BSAT)、及び実施例1に記載される2つの市販のブタグルタミン酸−オキサロ酢酸アミノトランスフェラーゼを用いてモナチンアミノトランスフェラーゼのアッセイが行なわれた。オキサロアセテート及びα−ケトグルタレートの両方は、アミノアクセプターとして試験された。アッセイ用混合物(0.5mL中)には、50mMのTris−HCl pH8.0、0.05mMのPLP、5mMのアミノアクセプター、5mMのモナチン、及び25μgのアミノトランスフェラーゼが含まれていた。アッセイ系は30℃にて30分間インキュベートされ、0.5mLのイソプロパノールの添加により反応が停止された。モナチンの喪失量は、LC/MS又はLC/MS/MS(実施例18)によりモニターされた。オキサロアセテートをアミノアクセプターとした大形リーシュマニア(L.major)HIS6−BSATにおいて最も高い活性が認められ、α−ケトグルタレートをアミノアクセプターとした同一酵素がこれに続いた。オキサロアセテートを用いた相対的な活性は以下の通りであった:HIS6−BSAT>HIS6−AspC>ブタIIa型>ブタI型=HIS6−TyrB。α−ケトグルタレートを用いた相対的な活性は以下の通りであった:HIS6−BSAT>HIS6−AspC>ブタI型>ブタIIa型>HIS6−TyrB。
上記に類似するアッセイ法、及び実施例18に記載される検出方法を用いてが、S.メリロティ(S.meliloti)TatA及びR.スフェロイデス(R.sphaeroides)TatAの2種類の酵素は、試験された条件下では検出可能な程にモナチンをMPに変換することはなかった。しかしながら、上記検出可能な活性の欠如は、MPが水性溶液中で不安定であることから時として検出が困難であるという事実に起因しているかもしれない。精製ProAアルドラーゼ及び精製S.メリロティ(S.melitoti)アミノトランスフェラーゼのそれぞれを約50μg用いた反応(実施例9同様の条件下)では、トリプトファンとピルベートは2時間では6ppm、一晩の反応では40ppmのモナチンへと変換された。R.セファロイデス(R.sphaeroides)のトリプトファンアミノトランスフェラーゼからは、約10倍も多くのモナチンが生成され、MPからモナチンへの変換におけるより高い活性が示された。
タグ無しのTyrB及びAspCタンパク質のアミノトランスフェラーゼ活性及び基質特異性についても、トリプトファンの変わりにS,S−モナチン(5mM)が基質として添加された実施例3に記載するプロトコルを用いて副産物であるグルタメートの形成を追跡することにより測定された。上記アミノトランスフェラーゼ反応において、S,S−モナチンは、化学量論的にアミノアクセプターであるα−ケトグルタレートと反応してMP及びグルタメートを形成する。従って、1μmolのグルタメートが形成された場合には、1μmolのMPも形成されているはずである。結果を表11に列挙する。
これらの結果と実施例3に記載される結果との比較から、AspCがS,S−モナチンよりも6倍も高くトリプトファンに対する基質選択性を有する(328.2μg/mL/54.3μg/mL)ことが示された。一方で、TyrBは、トリプトファンに対して1.5倍の嗜好性を示すのみであり(310.1μg/mL/211.8μg/mL)、モナチンが基質である場合にAspCタンパク質よりも相当に高い活性を示す。
市販のデヒドロゲナーゼを用いたモナチンからMPへの変換
モナチンからMPへの変換について、バイオカタリティクス(BioCatalytics)の種々のアミノ酸デヒドロゲナーゼ(AADH−101−110)がアッセイされた。アッセイは、100mMの炭酸水素ナトリウムバッファー、pH10.0、10−20mMのNAD+、実施例9に記載されるように調製された20−200mMのモナチン、及び20mg/mlの酵素中にて行なわれた。反応系は30−45℃で2時間インキュベートされ、その後30℃で16時間インキュベートされた。反応の過程は、NADHの生成による340nmでの吸光度変化の追跡によりモニターされた。ネガティブコントロールは、酵素が存在しない又はAADH−101が存在する中で、NAD+又はモナチンのいずれかが取り除かれて行なわれた。ポジティブコントロールは、AADH−101を基質としてのバリンと共に用いて行なわれた。ポジティブコントロールとの比較では低度であるが(〜1−4%)、AADH−102(芳香族L−アミノ酸デヒドロゲナーゼ)及びAADH−110(広い特異性の分枝鎖L−アミノ酸デヒドロゲナーゼ;EC1.4.1.9)は、S,Sモナチンに対する多少の活性を有し、進化して生体触媒による過程における活性を向上させることが可能であることが分かった。MPからのモナチンの生成に必要な還元的アミノ化反応は、概して本実施例で測定された酸化的脱アミノ化反応よりも十分に速い反応である。MPはLC/MSによって検出できなかった;しかしながら、不安定でありアッセイが困難であることが判明した。
市販のアミノトランスフェラーゼを用いたモナチン及びα−KGのMP及びグルタミン酸への変換
AT−101、AT−102、AT−103、及びAT−104が、バイオカタリティクス社(BioCatalytics)(パサディナ、カリフォルニア)から購入された。AT−101は、広範囲L−トランスアミナーゼであり、AT−102は、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.42)であり、AT−103は、広範囲D−アミノトランスフェラーゼであり、AT−104は、分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.42)である。これらの酵素は全て、アルドラーゼ酵素と共に用いた場合、インドール−ピルベート及びピルベートからのモナチン生成における活性を有していた(実施例13参照)。前記酵素は、化学的に生成されたS,S及びR,Rモナチンに対する活性について試験された。反応は、0.5mLの総体積にて行なわれ、2つの系で重複して測定された。アッセイ系には、pH7.8で50mMのTris、0.08mMのPLP、10mMのα−ケトグルタレート(α−KG)、5mMのモナチン、及び1mg/mlのアミノトランスフェラーゼ酵素が含まれていた。ネガティブコントロールにはアミノトランスフェラーゼ酵素は含まれていなかった。サンプルは、30℃にて100rpmの振とうで2時間インキュベートされた。サンプルは濾過され、LC/MS/MS解析が行なわれてグルタメート濃度が確認された(実施例18に記載する通り)。グルタメート濃度は、MP生成量と化学量論的に相関するはずである。ネガティブコントロールには、天然大腸菌(E.coli)アミノトランスフェラーゼによるグルタメート生成と共に、アルドラーゼの細胞抽出物からのグルタメート濃度による多少のバックグラウンドが含まれる。R,Rを反応基質として用いた場合、ネガティブコントロールと比較して唯一有意に生成されたグルタメートは、D−トランスアミナーゼ(AT−103)によるものであり、約1.1μg/mlが検出された。AT−101及びAT−104は、ネガティブコントロールよりも僅かに多くグルタメートを生成した。D−トランスアミナーゼ酵素は、S,S−モナチンに対して検出可能な活性を示さなかった。予想されたように、前記アミノトランスフェラーゼは、アミノ部分を含むキラル炭素についてエナンチオ選択的であった。全てのL−アミノトランスフェラーゼがS,S−モナチンに対する活性を示した。AT−101は、75μg/mlのグルタメートを生成し、AT−102は、102μg/mlのグルタメートを生成し、AT−104は64μg/mlのグルタメートを生成した。
25mMのR,R−monatin、100mMのリン酸カリウムpH7.5、0.08mMのPLP、50mMのα−ケトグルタレート及び4mg/mLのAT−103酵素を用いての同様の反応では、30℃で1、2、3、及び19時間のインキュベーションで、0.145、0.268、0.391、及び0.593mMのグルタメートが生成された(実施例18に記載するLC−ポストカラム蛍光法により測定)。Tris−Clバッファーと比較した場合に、ホスフェートではD−アミノトランスフェラーゼ活性が増加することが分かった。1mg/mLのAspC及び基質としてのS,S−モナチンを用いた並行実験では、インキュベーション時間中に0.11−0.18mMのグルタメートが形成された。AspC濃度の2mg/mlへの増加により、4時間の反応においてグルタメート濃度は1.2mMに増加した。
実施例16
トリプトファン及びピルベート以外のC3供給源からのモナチンの生成
上記実施例9に記載されるように、インドール−3−ピルベート又はトリプトファンについては、ピルベートをC3分子として用いることでモナチンに変換可能である。しかしながら、一定の状況においては、ピルベートは適切な原料となり得ない。例えば、ピルベートは他のC3炭素供給源よりも高価であり、又は培地に添加された場合に発酵に対して有害な作用を及ぼすであろう。多くのPLP−酵素によりアラニンをアミノ基転移させてピルベートを生成することが可能である。
トリプトファナーゼ様酵素は、アミノトランスフェラーゼ等の他のPLP酵素よりも速い速度でβ脱離反応を行なった。このクラス(4.1.99.−)からの酵素は、L−セリン、L−システインといったアミノ酸、及びO−メチル−L−セリン、O−ベンジル−L−セリン、S−メチルシステイン、S−ベンジルシステイン、S−アルキル−L−システイン、O−アシル−L−セリン、3−クロロ−L−アラニンといった良好な脱離基を有するセリン及びシステインの誘導体からアンモニアとピルベートを生成することができる。
EC4.1.99.−ペプチドを用いたモナチンの生成方法は、Mouratouら(J.Biol.Chem 274:1320−5,1999)の方法に従ってβ−チロシナーゼ(TPL)又はトリプトファナーゼを突然変異させることにより改善することができる。Mouratouらには、自然界での存在が報告がなされていない、β−チロシナーゼをジカルボキシルアミノ酸β−リアーゼに変換する能力が記載されている。283番目のバリン(V)をアルギニン(R)へ、100番目のアルギニン(R)をスレオニン(T)に変換することにより特異性の変化が達成された。これらのアミノ酸の変化により、リアーゼが加水分解的脱アミノ化反応のためのジカルボキシルアミノ酸(アスパラギン酸等)を許容することが可能となる。従って、アスパルテートは、その後のアルドール縮合反応のためのピルベート供給源として用いることも可能である。
更に、細胞又は酵素リアクターはラクテート及びラクテートをピルベートに変換する酵素と共に供給される。上記反応を触媒可能な酵素の例として、乳酸デヒドロゲナーゼ及び乳酸オキシダーゼが上げられる。
ゲノムDNAの単離
トリプトファナーゼペプチドについては、例えばMouratouら(JBC 274:1320−5,1999)のように先に報告がなされている。トリプトファナーゼペプチドをコードする遺伝子を単離するため、実施例1に記載されるように、大腸菌(E.coli)DH10BからのゲノムDNAが、PCRの鋳型として用いられた。
チロシン−フェノールリアーゼの遺伝子はC. フロインディイ(C.feundii)(ATCCカタログ番号8090、指定番号 ATCC 13316;NCTC 9750)から単離され、栄養アガー(ディフコ社0001)及び栄養ブロス(ディフコ社0003)にて37℃でODが0.2になるまで増殖された。ゲノムDNAは、キアゲンジェノミックチップ(商標)100/Gキット(Qiagen Genomic−tipTM100/G kit)を用いて精製された。
コーディング配列のPCR増幅
上記実施例1に記載するように、pET30 Xa/LICベクター(ノバジェン社、マジソン、ウィスコンシン州)に適合する突出部を有するプライマーが設計された。
大腸菌(E.coli)tna(配列番号41)。pET30 Xa/LICへのクローニング用N−末端プライマー:5’−GGT ATT GAG GGT CGC ATG GAA AAC TTT AAA CAT CT−3’(配列番号43)。
pET30 Xa/LICへのクローニング用C−末端プライマー:5’−AGA GGA GAG TTA GAG CCT TAA ACT TCT TTA AGT TTT G−3’(配列番号44)。
C.フロインディイ(C.freundii)tpl(配列番号42)。pET30 Xa/LICへのクローニング用N−末端プライマー:5’−GGT ATT GAG GGT CGC ATGAATTATCCGGCAGAACC−3’(配列番号45)。pET30 Xa/LICへのクローニング用C−末端プライマー:5’−AGA GGA GAG TTA GAG CCTTAGATGTAATCAAAGCGTG−3’(配列番号46)。
全てのPCR反応においてエッペンドルフマスターサイクラー(商標)グラディエント5331サーマルサイクラー(Eppendorf MastercyclerTM Gradient 5331 Thermal Cycler)が用いられた。50μL中に、0.5μgの鋳型(ゲノムDNA)、1.0μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5Uのエキスパンドハイファイデリティーポリメラーゼ(Expand High Fidelity Polymerase)(ロッシュ社)、及びMg含有の1Xエキスパンド(Expand)バッファー、及び5%のDMSO(終濃度)が添加された。使用されたサーマルサイクラー用PCRプログラムは以下の通りであった:96℃でホットスタート(5分間)、94℃−30秒間、40−60℃−1分45秒間、72℃−2分15秒間;30回の繰返し。最終重合ステップは7分間であり、その後サンプルは4℃で保存された。
クローニング
上記実施例1に詳述されるクローニング及び陽性クローンの同定方法を用いて適切なクローンを同定した。
遺伝子発現及び活性アッセイ
プラスミドDNA(シーケンス解析により確認)は、発現宿主であるBL21(DE3)(ノバジェン社)にサブクローニングされた。該培養は、30mg/Lのカナマイシンを含むLB倍地中で増殖され、前記プラスミドはキアゲンミニプレップキット(Qiagen miniprep kit)を用いて単離され、制限酵素処理により解析されて同一性が確認された。
発現宿主であるBL21(DE3)を用いて誘導実験が行なわれ、該構築物は50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で37℃で増殖された。前記培養のOD600値が約0.6に達した後に0.1mMのIPTGを用いてタンパク質発現が誘導された。細胞は30℃で4時間増殖され、遠心により回収された。細胞は、その後、5μL/mLのプロテアーゼ阻害剤カクテルセット#III(カルバイオケム社)及び1μL/mLのベンゾナーゼヌクレアーゼ(ノバジェン社)を含む5mL/g湿潤細胞重量のバグバスター(商標)(BugbusterTM)試薬液(ノバジェン社)に溶解され、His−タグ付組換えタンパク質が上記実施例1に記載されるようにHis−結合性カートリッジを用いて精製された。精製されたタンパク質はPD−10(G25 セファデックス(Sephadex)、アマルシャムバイオサイエンス社)カラムで脱塩され、100mMのTris−ClバッファーpH8.0に溶離された。タンパク質は4−15%の勾配ゲルを用いたSDS−PAGEにより解析され、前記組換え融合タンパク質の予想分子量での可溶性タンパク質濃度が確認された。
変異誘発
ペプチドクラス4.1.99.−(トリプトファナーゼ及びβ−チロシナーゼ)のいくつかの構成要素は、アスパルテート又はこれに類似する何らの改変もされていないアミノ酸と共にβ−リアーゼ反応を起こす。しかしながら、前記クラスのいくつかの構成要素については、基質としての使用及び/又は生成物の創造を可能とするために変異誘発を必要とするであろう。更に、場合によっては変換を可能とするペプチドについても変異誘発により最適化することが可能である。
PLP−結合性ペプチドの三次元構造解析に基き、部位特異的変異誘発が行なわれた。ポリペプチドの基質特異性を変化させた2つの例を下記に示す。
トリプトファナーゼの変異誘発:実施例16A
下記に示す変異誘発プロトコルにより、アミノ酸配列に2点の変異が導入された。第一の点変異により103番目の部位のアルギニン(R)がスレオニン(T)へと変換され、第二の点変異により299番目の部位のバリン(V)がアルギニン(R)へと変換された(大腸菌(E.coli)成熟タンパク質の番号付け方式)。変異誘発実験はATGラボラトリーズ社(エデンプレーリー、ミネソタ州)により行なわれた。変異は、遺伝子断片のPCRにより順に導入され、該断片の再構築もPCRにより完成された。103番目のアルギニン(R)をスレオニン(T)に変換するためのプライマー:5’−CCAGGGCACCGGCGCAGAGCAAATCTATATT−3’(配列番号47)及び
5’−TGCGCCGGTGCCCTGGTGAGTCGGAATGGT−3’(配列番号48)。
299番目のバリン(V)をアルギニン(R)に変換するためのプライマー:
5’−TCCTGCACGCGGCAAAGGGTTCTGCACTCGGT−3’(配列番号49)及び
5’−CTTTGCCGCGTGCAGGAAGGCTTCCCGACA−3’(配列番号50)。
変異体はXbaI/HindIII及びSphIを用いた制限酵素処理によりスクリーニングされ、シーケンスにより確認された。
チロシンフェノールリアーゼ(β−チロシナーゼ)の変異誘発:実施例16B
チロシンフェノールリアーゼアミノ酸配列に2点の変異がなされた。これらの変異により、100番目の部位にあるアルギニン(R)がスレオニン(T)へ、283番目の部位にあるバリン(V)がアルギニン(R)へと変換された(C.フロインディイ(C.freundii)成熟タンパク質配列において)。
R100T変換用プライマーは以下の通り:
5’−AGGGGACCGGCGCAGAAAACCTGTTATCG−5’(配列番号51)及び
5’−AGGGGACCGGCGCAGAAAACCTGTTATCG−3’(配列番号52)。
V283R変換用プライマーは以下の通り:
5’−GTTAGTCCGCGTCTACGAAGGGATGCCAT−3’(配列番号53)及び
5’−GTAGACGCGGACTAACTCTTTGGCAGAAG−3’(配列番号54)。
上記の方法が用いられ、クローンはKpnI/SacI消化、及びBstXI消化によりスクリーニングされた。配列は、ジデオキシ鎖停止シークエンス法により確認された。組換えタンパク質は、上記の野生型酵素用に記載された通りに生成された。
反応混合物は、50mMのTris−Cl pH8.3、2mMのMgCl2、200mMのC3炭素供給源、5mMのα−ケトグルタレート、ナトリウム塩、0.05mMのピリドキサールホスフェート、酵素添加後に終体積を0.5mLとするための脱気水、3mMのリン酸カリウムpH7.5、実施例7で調製された粗組換えC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ25μg、実施例1で調製された粗L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)500μg、及び60mMを超える濃度を可能とするための固体トリプトファン(飽和;反応中全てが溶解するわけではない)により構成された。反応系は、30℃で攪拌と共に30分間インキュベートされた。セリン、アラニン、及びアスパルテートが3−炭素供給源として供給された。アッセイは、β−脱離反応及びβ−リアーゼ反応を可能とする二次的PLP酵素(精製済)(トリプトファナーゼ(TNA)、トリプトファナーゼ二重変異体、β−チロシナーゼ(TPL))を含む又は含まない状態で行なわれた。前記反応混合物のLC/MS解析の結果を表12に示す:
アラニン及びセリンを3−炭素供給源として生成されたモナチンはLC/MS/MS娘走査解析により確認され、実施例9で生成されたモナチンの特性指摘と同一であった。試験された中でアラニンは最良の代替物であり、AspC酵素によりアミノ基転移された。モナチンの生成量は、アミノ基転移二次活性を有するトリプトファナーゼの添加により増加した。セリンを炭素供給源として用いたモナチンの生成量については、添加されたトリプトファナーゼの量はアミノトランスフェラーゼと比較して5分の1の量に過ぎなかったが、トリプトファナーゼの添加により約2倍に増加した。AspCは単独で多少のβ−脱離作用が可能である。アスパルテートを用いた結果から、アスパルテートに対するトリプトファナーゼ活性は、従来β−チロシナーゼについて指摘されてきたように、同一の部位特異的変異誘発により増加しないことが示された。β−チロシナーゼ変異体は、モナチンの生成についてより高い活性を有するであろうことが予想される。
実施例17
モナチンの化学合成
インドール−3−ピルビン酸へのアラニンの添加によりモナチンが生成されるが、この反応はグリニャール試薬又は有機リチウム試薬を用いて合成的に行なうことが可能である。
例えば、無水条件下において、カルボキシル基及びアミノ基が適切にブロックされた3−クロロ−アラニン又は3−ブロモ−アラニンにマグネシウムが添加される。次にインドール−3−ピルベート(適切にブロックされた)が添加され、結合した生成物が形成され、次に保護基の除去が起こってモナチンが形成される。特に有用な保護基としては、簡単に付加及び除去が可能なTHP(テトラヒドロピラニルエーテル)が挙げられる。
実施例18
モナチン、MP、トリプトファン及びグルタミン酸の検出
本実施例では、トリプトファン及びグルタミン酸と共に、モナチン、又はその前駆体である2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸の存在の検出に用いる方法について記載する。また、モナチンの4種類の立体異性体の分離及び検出の方法についても記載する。
モナチン、MP、及びトリプトファンのLC/MS解析
ウォーターズ996フォト−ダイオードアレイ(Waters 996 Photo−Diode Array)(PDA)吸光モニターを備えたウォーターズ2795液体クロマトグラフが該クロマトグラフとマイクロマスクアトロウルティマ(Micromass Quattro Ultima)三連四重極質量分析計を含むウォーターズ/マイクロマス(Waters/Micromass)液体クロマトグラフィー−タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)装置を用いて生体外又は生体内の生化学的反応から得られたモナチン、MP、及び/又はトリプトファンの混合物の解析が行なわれた。エクステラ(Xterra)MS C8逆相クロマトグラフィーカラム、2.1mm×250mm、又はスペルコディスカヴァリー(Supelco Discovery)C18逆相クロマトグラフィーカラム、2.1mm×150mmを用いて室温又は40℃にてLC分離が行なわれた。前記LCの移動相は、A)0.05%(v/v)のトリフルオロ酢酸含有水、及びB)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸含有メタノールから構成された。
勾配溶離は、測定間に5分間の再平衡化時間を設け、5%Bから35%B、0−4分で直線、35%Bから60%B、4−6.5分で直線、60%Bから90%B、6.5−7分で直線、90%B、7−11分でアイソクラチック、90%Bから95%B、11−12分で直線、95%Bから5%B、12−13分で直線であった。流速は0.25mL/分であり、PDA吸光度は200nmから400nmでモニターされた。ESI−MSの全ての指標は、被検体のプロトン付加分子イオン([M+H]+)の生成及び特徴的なフラグメントイオンの生産に基いて最適化され、選択された。
以下の機器パラメータがモナチンのLS/MS解析に用いられた:キャピラリー:3.5kV;コーン:40V;ヘックス(Hex)1:20V;開口部:0V;ヘックス(Hex)2:0V;イオン源温度:100℃;脱溶媒温度:35O℃;脱溶媒ガス:500L/h;コーンガス:50L/h;低質量分解能(Q1):15.0;高質量分解能(Q1):15.0;イオンエネルギー:0.2;入口:50V;衝突エネルギー:2;出口:50V;低質量分解能(Q2):15;高質量分解能(Q2):15;イオンエネルギー(Q2):3.5;増倍管:650。報告された質量/電荷比(m/z)及び分子量の不確定性は±0.01%である。混合物中のα−ケトグルタレート型のモナチン(MP)及びモナチンの初期検出は、m/z 150−400の領域におけるLC/MSモニタリングで質量スペクトルの収集を行なうことにより行なわれた。プロトン付加された分子イオン用に選択されたイオンクロマトグラム(MP用に[M+H]+=292,モナチン用に[M+H]+=293,トリプトファン用に[M+H]+=205)により、混合物中にあるこれら被検体の直接的な同定が可能となった。次なるモナチン及びMPの検出方法には、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)LC/MS/MS法(下記参照)が用いられた。
モナチンのLC/MS/MS解析
モナチンについて、以下の通りにLC/MS/MS娘イオン実験を行なった。娘イオン解析には、質量分析計の第一の質量分析部(Q1)から、アルゴンが導入されて該親イオンをフラグメント(娘)イオンへと化学的に解離する衝突室への目的の親イオンのトランスミッションを必要とする(例えば、モナチンについてm/z=293)。その後、これらのフラグメントイオンは第二の質量分析部(Q2)で検出され、前記親イオンの構造決定を実証するのに用いることができる。トリプトファンは、m/z=205のトランスミッション及びフラグメンテーションを介する同様の方法にて特性指摘され定量された。
以下の機器パラメータがモナチンのLS/MS/MS解析に用いられた:
キャピラリー:3.5kV;コーン:40V;ヘックス(Hex)1:20V;開口部:0V;ヘックス(Hex)2:0V;イオン源温度:100℃;脱溶媒温度:350℃;脱溶媒ガス:500L/h;コーンガス:50L/h; 低質量分解能(Q1):13.0;高質量分解能(Q1):13.0;イオンエネルギー:0.2;入口:−5V;衝突エネルギー:14;出口:1V;低質量分解能(Q2):15;高質量分解能(Q2):15;イオンエネルギー(Q2):3.5;増倍管:650。
LC/MS/MSマルチプルリアクションモニタリング(Multiple Reaction Monitoring)
モナチン検出の感度及び選択性の向上のため、MRM測定法を用いたLC/MS/MS法が開発された。LC分離は、先の部分に記載される通りに行なわれた。ESI−MS/MSの機器パラメータは、Q1及びQ2の低及び高質量分解能を12.0に設定して選択性を最大にした点を除いては、先の部分に記載され通りに設定された。5種類のモナチン特異的な親から娘へのトランジションを用いて、生体外及び生体内反応中のモナチンを特異的に検出した。前記トランジションは、293.1から158.3、293.1から168.2、293.1から211.2、293.1から230.2、及び293.1から257.2であった。
モナチン、トリプトファン、及びグルタミン酸(グルタメート)のハイスループット測定
上記に記載する装置及びLC/MS/MSマルチプルリアクションモニタリング(Multiple Reaction Monitoring)用に記載されたMSパラメータを用いて、生体外又は生体内の反応から得られたモナチン、トリプトファン、及び/又はグルタミン酸の混合物のハイスループット分析(5分未満/サンプル)が行なわれた。LC分離は、0.25%酢酸を含む4.6mm×50mmアドバンストセパレーションテクノロジーズキロバイオティック(Advanced Separation Technologies Chirobiotic)Tカラムを用いて常温で行なわれた。アイソクラチック溶離は50%Bで0−5分であった。流速は0.6mL/分であった。ESI−MS/MS装置用の全てのパラメータについては、マルチプルリアクションモニタリング(MRM)実験用の被検体特異的フラグメントイオンの衝突誘導性生成と共に、トリプトファン及びモナチン及び内部基準である2H5−トリプトファン又は2H3−グルタミン酸のプロトン付加分子イオンの最適インソース生成に基いて最適化されて選択された(トリプトファンで204.7から146.4、2H5−トリプトファンで209.7から151.4、グルタミン酸で147.6から102.4、2H3−グルタミン酸で150.6から105.4、モナチン特異的なトランジションについては先の部分に列挙している)。
モナチンの正確な質量測定
アプライドバイオシステムズ−パーキンエルマーQ−スター(Applied Biosystems−Perkin Elmer Q−Star)四重極/飛行時間複合型質量分析計を用いた高分解能MS分析が行なわれた。プロトン付加されたモナチンの測定質量は、内部質量較正標準としてトリプトファンを用いた。基本組成物C14H17N2O5に基いて計算されたプロトン付加されたモナチンの質量は293.1137である。実施例9に記載する生触媒性製法を用いて生成されたモナチンは、293.1144の測定質量を示した。これは100万分の2(2ppm)未満の質量測定誤差であり、酵素的に生成されたモナチンの基本組成についての決定的な証拠を提供するものである。
モナチンのキラルLC/MS/MS(MRM)測定
生体外及び生体内反応中のモナチンの立体異性体分布の決定は、1−フルオロ−2−4−ジニトロフェニル−5−L−アラニンアミド(FDAA)の誘導体化及びこれに続く逆相LC/MS/MS MRM測定により行なわれた。
FDAAによるモナチンの誘導体化
50μLのサンプル又はスタンダードに、200μLの1%FDAAアセトン溶液が添加された。40μLの1.0M炭酸水素ナトリウムが添加され、該混合物は、時折の攪拌と共に40℃で1時間インキュベートされた。該サンプルは、取り除かれ、冷却され、そして20μLの2.0MのHClで中和された(緩衝化された生物学的混合物を効果的に中和するには、より多くのHClを要するであろう)。脱気完了後、サンプルはLC/MS/MSによる解析のための準備が整った。
生体外及び生体内反応中のモナチンの立体異性体分布の決定のためのLC/MS/MSマルチプルリアクションモニタリング
先の部分に記載したLC/MS/MS装置を用いた解析を行なった。モナチンの4種類の立体異性体全て(特にFDAA−モナチン)を分離可能なLC分離が、フェノメネックスルナ(Phenomenex Luna)(5μm)C18逆相クロマトグラフィーカラムを用いて40℃にて行なわれた。LC移動相は、A)0.05%(質量/体積)酢酸アンモニウム含有水及びB)アセトニトリルから構成された。勾配溶離は、測定間に16分間の再平衡化時間を設け、2%Bから34%B、0−33分で直線、34%Bから90%B、33−34分で直線、90%B、34−44分でアイソクラチック、90%Bから2%B、44−46分で直線であった。流速は0.25mL/分であり、PDA吸光度は200nmから400nmでモニターされた。ESI−MSの全ての指標は、FDAA−モナチンのプロトン付加分子イオン([M+H]+)の生成及び特徴的なフラグメントイオンの生産に基いて最適化され、選択された。
モナチンの陰イオンESI/MSモードでのLC/MS解析には、以下の機器パラメータが用いられた:キャピラリー:2.0kV;コーン:25V;ヘックス(Hex)1:10V;開口部:0V;ヘックス(Hex)2:0V;イオン源温度:100℃;脱溶媒温度:350℃;脱溶媒ガス:500L/h;コーンガス:50L/h;低質量分解能(Q1):12.0;高質量分解能(Q1):12.0;イオンエネルギー:0.2;入口:−5V;衝突エネルギー:20;出口:1V;低質量分解能(Q2):12;高質量分解能(Q2):12;イオンエネルギー(Q2):3.0;増倍管:650。3種類のFDAA−モナチン特異的な親から娘へのトランジションを用いて生体外及び生体内反応中のFDAA−モナチンが特異的に検出された。該トランジションは、543.6から268.2、543.6から499.2、及び543.6から525.2である。FDAA−モナチン立体異性体の同定は、精製モナチン立体異性体に対するクロマトグラフィーの保持時間及び質量スペクトルデータに基く。
グルタメートを含むアミノ酸の液体クロマトグラフィー−ポストカラム蛍光検出
ウォーターズ(Waters)2690 LC装置又はウォーターズ(Waters)474走査性蛍光検出計を備えた同等物、及びウォーターズ(Waters)ポストカラム反応モジュールにて、生体外及び生体内反応中のグルタミン酸測定のためにポストカラム蛍光検出を備えた液体クロマトグラフィーが行なわれた。LC分離は、60℃にて、相互作用−ナトリウム(Interaction−Sodium)が注入されたイオン交換カラムにて行なわれた。移動相Aは、ピッカリングNa 328(Pickering Na 328)バッファー(ピッカリングラボラトリー社; マウンテンビュー、カリフォルニア州)であった。移動相BはピッカリングNa 740(Pickering Na 740)バッファーであった。勾配溶離は、測定間に20分間の再平衡化時間を設け、0%Bから100%B、0−2分、100%B、20−30分でアイソクラチック、100%Bから0%B、30−31分で直線であった。前記移動相の流速は、0.5mL/分であった。前記OPAポストカラム誘導体化溶液の流速は、0.5mL/分であった。蛍光検出計の設定は励起波長が338nmで放出波長が425nmであった。該分析の内部標準としてノルロイシンが用いられた。アミノ酸の同定は、精製された標準物についてのクロマトグラフィーの保持時間に基づいた。
実施例19
細菌中におけるモナチンの生成
本実施例は、大腸菌(E.coli)細胞内におけるモナチンの生成に用いた方法について記載する。当業者であれば、同様の方法を用いて他の細菌細胞内でモナチンを生成できることを把握するであろう。加えて、モナチンの生成経路中の他の遺伝子を含むベクター(図2)も使用できる。
trp−1+グルコース培地、大腸菌(E.coli)細胞内でのトリプトファンの生成の増大に用いた最小培地(Zemanら、Folia Microbiol.35:200−4、1990)が以下のように調製された。700mLのナノ精製水に以下の試薬が添加された:2gの(NH4)2SO4、13.6gのKH2PO4、0.2gのMgSO4*7H20、0.01gのCaCl2*2H20、及び0.5mgのFeSO4*7H20。pHが7.0に調整され、体積が850mLまで増加され、該培地はオートクレーブされた。個別に50%グルコース溶液が調製され、フィルター滅菌された。前記基礎培地(850mL)に40mLが加えられ、終体積を1Lとした。
pH7の0.1Mのリン酸ナトリウムにて10g/LのL−トリプトファン溶液が調製され、フィルター滅菌された。以下に記載するように、培養には典型的に10分の1の体積が加えられた。10%ピルビン酸ナトリウム溶液も調製され、フィルター滅菌された。培養1Lに対し、典型的に10mLの分量が用いられた。アンピシリン(100mg/mL)、カナマイシン(25mg/mL)及びIPTG(840mM)のストックが調製され、フィルター滅菌され、使用前まで−20℃で保存された。ツイーン20(Tween 20)(ポリオキシエチレン20−ソルビタンモノラウレート)が終濃度0.2%(体積/体積)で使用された。アンピシリンは、非致死的濃度で、典型的には終濃度1−10μg/mLで用いられた。
大腸菌(E.coli)BL21(DE3)::Cテストステロニ(C.testosteroni)proA/pET 30 Xa/LIC(実施例7に記載)の新鮮なプレートが50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地中、30℃にて増殖された。一晩の培養(5mL)は、単一コロニーから播種され、カナマイシンを含むLB培地中で30℃で増殖された。Trp−1+グルコース倍地中での誘導には、典型的に1ないし50個の種菌が用いられた。新鮮な抗生物質が終濃度50mg/Lで添加された。振とうフラスコの系は誘導前まで37℃にて増殖された。
細胞は、0.35−0.8のOD600が得られるまで1時間毎にサンプル採取された。その後、細胞は0.1mMのIPTGにより誘導され、温度が34℃まで下げられた。サンプル(1mL)は、誘導(零時点)前に回収され5000xgにて遠心された。上澄は、LC/MS解析用に−20℃で凍結された。誘導から4時間後、さらに1mLのサンプルが回収され、遠心により細胞ペレットからブロスが分離された。上記の通り、トリプトファン、ピルビン酸ナトリウム、アンピシリン及びツイーンが添加された。
前記細胞は誘導後48時間増殖され、更に1mLがサンプル採取され上記の通りに調製された。48時間時点にて、更なる一定分量のトリプトファン及びピルベートが添加された。全ての培養体積は約70時間の増殖(誘導後)の後に、4℃にて3500rpmで20分間遠心された。上澄はデカントされてブロスと細胞の両方が−80℃で凍結された。ブロスのフラクションが濾過され、LC/MSにより分析された。[M+H]+=293ピークの高さと領域が実施例18に記載するとおりにモニターされた。該培地のバックグラウンドレベルは差し引かれた。データは、また、該培養の600nmにおける吸光度で割った[M+H]+=293ピークの高さをプロットすることにより、細胞増殖について標準化された。
誘導時ではなく、むしろ誘導から4時間後にピルベート、アンピシリン、及びツイーンを添加した場合に、より高濃度のモナチンが生成された。PLP、更なるホスフェート、又は更なるMgCl2のような他の添加物はモナチンの生成量を増加しなかった。インドール−3−ピルベートの代わりにトリプトファンを用い、播種時又は誘導時ではなく誘導後にトリプトファンが添加された場合に、より高力価のモナチンが得られた。誘導前、及び誘導から4時間後(基質の添加時点)においては、発酵ブロス又は細胞抽出物中には概して検出可能な濃度のモナチンが存在していなかった。トリプトファン及びピルベートが添加されていない培養と共に、pET30aベクターのみを有する細胞を用いてネガティブコントロールが行なわれた。親MS走査により、(m+1)/z=293を有する化合物はより大きな分子に由来するものではなく、娘走査(実施例18にて実施されたように)は、生体外で作られたモナチンに類似するものであったことが示された。
終濃度が0、0.2%(体積/体積)、及び0.6%のツイーン20(Tween−20)を用いて、ツイーンの効果が調べられた。0.2%ツイーンにおいて、振とうフラスコでのモナチン生成量が最大となった。アンピシリン濃度を0から10μg/mLの間で変化させた。細胞ブロス中のモナチン量は、0から1μg/mLの間で急速に増加し(2.5倍)、アンピシリン濃度が1から10μg/mLに増加した場合に1.3倍に増加した。
典型的な結果を示す経時的実験を図10に示す。細胞ブロスに分泌されたモナチン量は、数値を細胞の増殖について標準化した場合であっても増加していた。トリプトファンのモル吸光係数を用い、ブロス中のモナチン量は10μg/mL未満であると評価された。同様の実験が、proAインサートを有しないベクターを含む細胞を用いて繰り返された。多くの数値は負であり、これらの培養におけるm/z=293のピークの高さは培地単体におけるよりも低いことが示された(図10)。トリプトファン及びピルベートがない場合には、数値は一貫して低く、モナチン生成がアルドール酵素により触媒される酵素反応の結果であることが示された。
細菌細胞中でのモナチンの生体内生成は、800mL振とうフラスコ実験及び発酵槽にて繰り返された。250mLのモナチン(無細胞ブロス中の)サンプルが陰イオン交換クロマトグラフィー及び調製用逆相液体クロマトグラフィーにより精製された。このサンプルは蒸発され、高分解能質量分析(実施例9に記載)に処された。該高分解能MSにより、生成されている代謝物がモナチンであることが示された。
生体外でのアッセイにより、アミノトランスフェラーゼはアルドラーゼよりも高濃度で存在する必要があることが示され(実施例9参照)、従って、大腸菌(E.coli)由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼがアルドラーゼ遺伝子と組み合わせて過剰発現され、モナチン生成量が増加された。以下のように、aspC/pET30 Xa/LICを有するオペロンにC.テストステロニ(C.testosteroni)proAを導入するプライマーが設計された:5’プライマー:ACTCGGATCCGAAGGAGATATACATATGTACGAACTGGGACT(配列番号67)及び3’プライマー:CGGCTGTCGACCGTTAGTCAATATATTTCAGGC(配列番号68)。クローニング用に、5’プライマーにはBamHI部位が含まれ、3’プライマーにはSalI部位が含まれる。実施例7に記載するようにPCRが行なわれ、ゲル精製された。PCR産物と同様に、aspC/pET30 Xa/LIC構築物はBamHI及びSalIで消化された。消化物は、キアゲンス・ピンカラム(Qiagen spin column)を用いて精製された。前記proAのPCR産物は、ロッシュラピッドDNAライゲーションキット(Roche Rapid DNA Ligation kit)(インディアナポリス、インディアナ州)を用いて製造元の指示に従って前記ベクターにライゲーションされた。実施例1に記載されるように、ノバブルー・シングルス(Novablues Singles)(ノバジェン社)を用いた化学的形質転換が行なわれた。コロニーは50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地で増殖され、プラスミドDNAがキアゲンスピンミニプレップキット(Qiagen spin miniprep kit)を用いて精製された。クローンは、制限酵素処理解析によりスクリーニングされ、配列がシークライト(Seqwrite)(ヒューストン、テキサス州)により確認された。構築物は、BLR(DE3)、BLR(DE3)pLysS、BL21(DE3)及びBL21(DE3)pLysS ノバジェン社)にサブクローニングされた。proA/pET30 Xa/LIC構築物もBL21(DE3)pLysSに形質転換された。
上記の標準条件下におけるBLR(DE3)振とうフラスコのサンプルの初期比較から、第二の遺伝子(aspC)の添加が7倍もモナチンの生成量を向上させることが示された。増殖を速めるため、BL21(DE3)−由来の宿主株が用いられた。上記Trp−1培地中で前記proAクローン及び前記2つの遺伝子のオペロンクローンが誘導され、pLysS宿主にも培地にクロラムフェニコール(34mg/mL)が添加された。0.2%のツイーン20(Tween−20)及び1mg/Lのアンピシリンの添加有り又は無しで振とうフラスコ実験が行なわれた。生体外で生成され精製されたモナチンをスタンダードとして用いて、ブロス中のモナチン量が計算された。実施例18に記載するようにSRM解析が行なわれた。細胞は、増殖の零時点、4時間目、24時間目、48時間目、72時間目及び96時間目にサンプル採取された。
培養ブロス中の最大生成量について、結果が表13に示されている。殆どの例において、前記2つの遺伝子構築物が、proA構築物単体よりも高い数値を示している。漏出性の細胞外皮を有しているはずのpLysS株では、これらの株は該して比較的遅い速度で増殖するにもかかわらず、最も高濃度のモナチンが分泌された。ツイーン及びアンピシリンの添加は有益であった。
実施例20
酵母内でのモナチンの生成
本実施例は、真核細胞内におけるモナチンの生成に用いる方法について記載する。当業者であれば、目的のいかなる細胞内においても類似の方法を用いてモナチンを生成できることを把握するであろう。更に、本実施例に記載される遺伝子に加えて、又は代えて他の遺伝子(例えば、図2に列挙される遺伝子)を用いることもできる。
pESCイーストエピトープタギングベクターシステム(pESC Yeast Epitope Tagging Vector System)(ストラタジーン社、ラホヤ、カリフォルニア州)を用いて大腸菌(E.coli)aspC及びC.テストステロニ(C.testosteroni)proA遺伝子がサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)へとクローニングされ発現された。pESCベクターには、逆鎖にGAL1及びGAL10の両プロモーターが2つの個別のマルチプルクローニングサイトと共に含まれており、同時に2種類の遺伝子の発現を可能とする。pESC−Hisベクターには、宿主(YPH500)内でのヒスチジン栄養要求性の補完のためのHis3遺伝子も含まれている。GAL1及びGAL10プロモーターは、グルコースにより抑制され、ガラクトースにより誘起される;酵母内での最適な発現のためにコザック配列を用いる。pESCプラスミドはシャトルベクターであり、初期の構築が大腸菌(E.coli)内で行なわれることを可能とする(選択用にbla遺伝子を有する);しかしながら、そのマルチプルクローニングサイトには細菌性リボソーム結合部位が存在しない。
pESC−Hisへのクローニング用に以下のプライマーが設計された(制限酵素部位に下線が引かれ、コザック配列は太字である):aspC(BamHI/SalI)、GAL1;
5’−CGCGGATCCATAATGGTTGAGAACATTACCG−3’(配列番号69)及び
5’−ACGCGTCGACTTACAGCACTGCCACAATCG−3’(配列番号70)。
proA(EcoRI/Notl)、GAL10:
5’−CCGGAATTCATAATGGTCGAACTGGGAGTTGT−3’(配列番号71)及び
5’−GAATGCGGCCGCTTAGTCAATATATTTCAGGCC−3’(配列番号72)。
コザック配列の導入により、両成熟タンパク質の第二コドンは芳香族アミノ酸からバリンへと変更された。目的の遺伝子は、実施例1及び7に記載されるクローンからのpET30 Xa/LICミニプレップDNAを鋳型として用いて増幅された。エッペンドルフマスターサイクラーグラディエントサーモサイクラー(Eppendorf Master cycler Gradient Thermocycler)及び50μLの反応量に以下のプロトコルを用いてPCRが行なわれた:1.0μLの鋳型、1.0μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5Uのエキスパンドハイファイデリティーポリメラーゼ(Expand High Fidelity Polymerase)(ロッシュ社、インディアナポリス、インディアナ州)、及びMg含有の1Xエキスパンド(商標)(ExpandTM)バッファー。使用されたサーマルサイクラープログラムは、94℃で5分間のホットスタート、及びこれに続く以下のステップの29回の繰返しから構成された:94℃で30秒間、50℃で1分45秒間、及び72℃で2分15秒間。前記29回の繰返しの後、サンプルは72℃で10分間維持され、その後4℃にて保存された。PCR産物は1%TAE−アガロースゲルでの分離及びこれに続くキアクイックゲルエクストラクションキット(QIAquick Gel Extraction Kit)(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア州)を用いた回収により精製された。
前記pESC−HisベクターDNA(2.7μg)は、上記と同様にBamHI/SalIで消化され、ゲル精製された。前記aspCのPCR産物は、BamHI/SalIで消化され、キアクイックPCRピュリフィケーションカラム(QIAquick PCR Purification Column)で精製された。ライゲーションは、ロッシュラピッドDNAライゲーションキット(Roche Rapid DNA Ligation Kit)を用いて製造元のプロトコルに従って行なわれた。脱塩されたライゲーション体は、0.2cmバイオラッド(Biorad)ディスポーザブルキュベット内で、パルスコントローラープラス(pulse controller plus)を備えたバイオラッドジーンパルサーII(Biorad Gene Pulser II)を用いて、製造元の指示に従って、40μlのエレクトロマックス(Electromax)DH10Bコンピテント細胞(インビトロジェン社)にエレクトロポレーションされた。1mLのSOC培地中で1時間回復させた後、形質転換体は、100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地上に播種された。クローン用のプラスミドDNAの調製は、キアプレップスピンミニプレップキット(QIAprep Spin Miniprep Kit)を用いて行われた。プラスミドDNAは制限酵素処理によりスクリーニングされ、ベクター用に設計されたプライマーを用いて確認のためにシーケンスされた(シークライト(Seqwrite))。
前記aspC/pESC−Hisクローンは、proAのPCR産物と同様にEcoRI及びNotIで消化された。DNAは上記と同様に精製され、上記と同様にライゲーションされた。前記2種類の遺伝子構築物はDH10Bへ形質転換され、制限酵素処理及びDNAシーケンシングによりスクリーニングされた。
前記構築物は、S.セレヴィシエ(S.cerevisiae)のYPH500株にS.c.イージーコンプ(商標)トランスフォーメーションキット(S.c.EasyCompTM Transformation Kit)(インビトロジェン社)を用いて形質転換された。形質転換反応物は、2%のグルコースを含むSC−His最小培地(インビトロジェン社pYES2マニュアル)へ播種された。個々の酵母コロニーは、proA及びaspC遺伝子の存在について、上記のPCRプライマーを用いたコロニーPCR法によりスクリーニングされた。ペレット化された細胞(2μl)は、1μlのザイモリアーゼを含む20μLのY−ライシスバッファー(Y−Lysis Buffer)(ザイモリサーチ社)に懸濁され、37℃で10分間加熱された。この懸濁液のうち4μLが、続いて上記の反応混合物及びプログラムを用いる50μLのPCR反応に用いられた。
5mLの培養が、SC−His+グルコース上で30℃で225rpmにて一晩増殖された。ガラクトースによる誘導前の遅延期を最短にするため、細胞は、徐々にラフィノース上での増殖に調整されていった。約12時間の増殖の後、600nmでの吸光度が測定され、適切な体積の細胞が遠心により沈殿され、新鮮なSC−His培地中で0.4のODを示すように再懸濁された。以下の炭素供給源が順に用いられた:1%ラフィノース+1%グルコース、0.5%グルコース+1.5%ラフィノース、2%ラフィノース、及び最後に誘導用に1%ラフィノース+2%ガラクトース。
誘導培地中での約16時間の増殖の後、50mLの培養は2つの25mLの培養に分けられ、該2つのうち一方だけに下記のものが添加された:(終濃度)1g/LのL−トリプトファン、pH7.1で5mMのリン酸ナトリウム、1g/Lのピルビン酸ナトリウム、1mMのMgCl2。非誘導培地から、及びモナチン経路の基質添加前の16時間の培養からのブロスのサンプル及び細胞ペレットは、ネガティブコントロールとして保存された。更に、機能的aspC遺伝子(及び切断されたproA遺伝子)のみを含む構築物が、別のネガティブコントロールとして用いられた。前記細胞は、誘導から合計で69時間増殖させられた。時折、前記酵母細胞は比較的低いODで誘導され、トリプトファン及びピルベートの添加前4時間のみ増殖された。しかしながら、これらモナチンの基質は、増殖を阻害することが分かり、比較的高いODでの添加がより効果的であった。
前記培養からの細胞ペレットは、5mLのイーストバスター(商標)(YeastBusterTM)+1グラム(湿重量)の細胞中に50μlのTHP(ノバジェン社)を用い、並びに先の実施例に記載するようにプロテアーゼ阻害剤及びビンゾナーゼヌクレアーゼの添加と共に製造元プロトコルに従って溶解された。培養ブロス及び細胞抽出物は濾過され、実施例18に記載されるようにSRMにより分析された。この方法を用いて、前記ブロスサンプル中にはモナチンは検出されず、これらの条件下では細胞がモナチンを分泌できないことが示された。これらの条件下ではプロトン輸送力が不十分な可能性があり、又はアミノ酸トランスポーター全般がトリプトファンで飽和している可能性もある。タンパク質発現は、SDS−PAGEを用いてその変化が検出可能なレベルにはなかった。
モナチンは、2種類の機能的遺伝子を持つ培養の細胞抽出物中で、培地にトリプトファン及びピルベートが添加された場合に一時的に検出可能であった(約60ng/mL)。いずれのネガティブコントロールの細胞抽出物中にもモナチンは検出されなかった。実施例9に記載される最適化されたアッセイ法を用い、4.4mg/mLの総タンパク質量(典型的に大腸菌(E.coli)の細胞抽出物に用いられた量の約2倍)を用いたモナチンの生体外アッセイが2つの系で重複して行なわれた。その他のアッセイも、32μg/mLのC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ又は400μg/mLのAspCアミノトランスフェラーゼを添加して行なわれ、該細胞抽出物中でどの酵素が制限しているのかを測定した。ネガティブコントロールが、酵素の添加なし、又はAspCアミノトランスフェラーゼのみの添加により行なわれた(アルドール縮合は酵素無しでも一定の範囲内で起こりうる)。ポジティブコントロールは、16μg/mLのアルドラーゼ及び400μg/mLのアミノトランスフェラーゼを用いた部分的に純粋な酵素(30−40%)により行なわれた。
生体外での結果は、SRMにより分析された。細胞抽出物の分析から、トリプトファンは、誘導後に培地に添加された場合に効果的に細胞内に輸送されており、追加的にトリプトファンを添加しなかった場合よりも2桁高いトリプトファン濃度を生じていたことが示された。生体外でのモナチン分析の結果を表14に示す(数値はng/mLで示される)。
増殖培地に基質が添加された又は添加されていない全長の2種類の遺伝子の細胞抽出物から肯定的な結果が得られた。ポジティブコントロールとの比較において、これらの結果からは、前記酵素は酵母の総タンパク質量の1%に近い濃度で発現されたことが示されている。aspC構築物(切断されたproAと共に)の細胞抽出物をアルドラーゼでアッセイした場合のモナチン生成量は、細胞抽出物を単体でアッセイした場合よりも有意に多く、組換えAspCアミノトランスフェラーゼは、酵母の総タンパク質量の約1−2%を占めることが示されている。誘導されなかった培養の細胞抽出物は、細胞中の天然アミノトランスフェラーゼの存在により、アルドラーゼでアッセイした場合には低い活性量を有していた。AspCアミノトランスフェラーゼでアッセイした場合には、誘導されなかった細胞の抽出物の活性は、AspCを含むネガティブコントロールにより生成されたモナチンの量(約200ng/ml)まで増加した。これに対し、前記2種類の遺伝子構築物の細胞抽出物をアッセイした場合に観測された活性は、アルドラーゼが添加された場合よりもアミノトランスフェラーゼが補充された場合により一層増加した。両遺伝子は同じレベルで発現しているはずであるから、上記は、アルドラーゼの濃度よりもアミノトランスフェラーゼの濃度が高い場合にモナチン生成量が最大となることを示しており、実施例9に示す結果と一致する。
ピルベートとトリプトファンの添加は、細胞増殖を阻害するだけでなく、明らかにタンパク質発現も阻害している。pESC−Trpプラスミドの添加により、YPH500宿主細胞のトリプトファン栄養要求を補正し、増殖、発現及び分泌へより少ない作用を有するトリプトファンの供給方法を提供することができる。
実施例21
関連反応を用いた酵素的過程の改善
理論上は、副反応又は基質若しくは中間体の分解が生じない場合には、図1に例示される酵素反応から形成される生成物の最大量は、各反応の平衡定数並びにトリプトファン及びピルベートの濃度に正比例することになる。トリプトファンは可溶性の高い基質ではなく、200mMより高いピルベート濃度は収量にマイナスの効果を与えるものと思われる(実施例9参照)。
理想的には、分離のコストを下げるため、モナチンの濃度は基質に関して最大化される。モナチンが反応混合物から取り除かれ、逆反応が起こるのを防ぐような物理的分離法を行なうこともできる。原料及び触媒はその後再生することができる。モナチンの、種々の試薬及び中間体との、大きさ、電荷及び疎水性における類似性により、モナチンに対する高い親和性(アフィニティークロマトグラフィー技術のような)がない限り物理的分離は困難なものとなるであろう。しかしながら、モナチンの反応は、系の平衡がモナチン生成に傾くような他の反応と連結させることが可能である。以下は、トリプトファン又はインドール−3−ピルベートから得られるモナチンの収量を向上させる方法の例である。
オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.3)を用いた関連反応
図11は、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼの添加でMPからモナチンへの変換中に形成される副生成物のオキサロアセテートが取り除かれるモナチンの形成経路の例示である。トリプトファンオキシダーゼ及びカタラーゼを用いて反応をインドール−3−ピルベート生成の方向へ至らしめる。カタラーゼは、過酸化水素が逆方向での反応、又は酵素若しくは中間体の損傷に利用されないように過剰に用いられる。酸素は、上記カタラーゼ反応中に再生される。これに代わり、インドール−3−ピルベートを初期の基質として用いることができる。
上記経路で、アスパルテートは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによって触媒される反応におけるMPのアミノ化のためのアミノ基のドナーとして用いられる。理論上は、MP/モナチン反応と比較してトリプトファン/インドール−3−ピルベート反応に対して低い特異性を有するアミノトランスフェラーゼは、アスパルテートがアミノドナーとして作用せず、インドール−3−ピルベートを再アミノ化しないように用いられる。オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(シュードモナス種由来)を添加してオキサロアセテートをピルベート及び二酸化炭素に変換することができる。CO2は揮発性であるため、酵素を用いた反応に利用することができず、従って、逆反応を減少させる又は阻止するものである。上記工程で生成されるピルベートも、前記アルドール縮合反応において基質として機能してMPを形成することができる。その他のデカルボキシラーゼ酵素を用いることもできる;アクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アキフェックス・エオリクス(Aquifex aeolicus)、アルケオグロバス・フルギドゥス(Archaeoglobus fulgidus)、アゾトバクテル・ヴィネランディイ(Azotobacter vinelandii)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、ボルデテッラ(Bordetella)種の複数種類、カンピロバクテル・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・オーランチアカス(Chloroflexus aurantiacus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、フソバクテリウム・ヌレアタム(Fusobacterium nucleatum)、クレブジエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、レジョネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、マグネトコッカスMC−I(Magnetococcus MC−I)、マンヘイミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、メチロバシラス・フラゲラタスKT(Methylobacillus flagellatus KT)、パストレラ・マルトシダPm70(Pasteurella multocida Pm70)、ペトロトガ・ミオテルマ(Petrotoga miotherma)、ポルフィロモナス・ギンギヴァリス(Porphyromonas gingivalis)、シュードモナス(Pseudomonas)種の複数種類、ピロコッカス(Pyrococcus)種の複数種類、ロドコッカス(Rhodococcus)、サルモネラ(Salmonella)種の複数種類、ステプトコッカス(Streptococcus)種の複数種類、テルモクロマチウム・テピダム(Thermochromatium tepidum)、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、トレポネマ・パリダム(Treponema pallidum)、及びビブリオ(Vibrio)種の複数種類にホモログが存在することが知られている。
大腸菌(E.coli)からのHIS6−タグ付アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、大腸菌(E.coli)からのHIS6−タグ付チロシンアミノトランスフェラーゼ(TyrB)、大形リーシュマニア(L.major)からのHIS6−タグ付広範囲の基質に対するアミノトランスフェラーゼ(BSAT)、及び実施例1に記載されるように2種類の市販のブタ由来グルタミン酸−オキサロ酢酸アミノトランスフェラーゼと共にトリプトファンアミノトランスフェラーゼのアッセイが行なわれた。オキサロアセテート及びα−ケトグルタレートの両方はアミノアクセプターとして試験された。トリプトファンを用いた場合の活性に対するモナチンを用いた場合の活性(実施例15)の比率が比較され、どの酵素がモナチンアミノトランスフェラーゼ反応に対して最も高い特異性を有するのかが決定された。これらの結果から、トリプトファン反応に対するモナチン反応に最も高い特異性を有する酵素はブタII−A型グルタミン酸−オキサロ酢酸アミノトランスフェラーゼ、GOAT(シグマ社#G7005)であることが示された。上記特異性は、いずれのアミノアクセプターを用いたかについて無関係であった。従って、上記酵素は、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼを用いた関連反応で使用された。
インドール−3−ピルベートから開始する典型的な反応には、pH7.3で50mMのTris−Cl、6mMのインドール−3−ピルベート、6mMのピルビン酸ナトリウム、6mMのアスパルテート、0.05mMのPLP、3mMのリン酸カリウム、3mMのMgCl2、25μg/mLのアミノトランスフェラーゼ、50μg/mLのC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ、及び3単位/mLのデカルボキシラーゼ(シグマ社#O4878)が含まれていた(終濃度)。反応混合物は26℃で1時間インキュベートされた。場合によっては、デカルボキシラーゼが除外されるか、又はアスパルテートがα−ケトグルタレートにより代替された(ネガティブコントロールとして)。上記のアミノトランスフェラーゼ酵素も、前記GOATの代わりに試験され初期の特異性の実験が確認された。サンプルは、実施例18に記載されるように濾過されLC/MSにより分析された。結果から、GOAT酵素は、副生成物として最少量のトリプトファンを生成すると共に、タンパク質1ミリグラムについて最大量のモナチンを生成することが示された。更に、デカルボキシラーゼ酵素が添加された場合には、生成物の形成において2−3倍の増加が見られた。大腸菌(E.coli)AspC酵素も、他のアミノトランスフェラーゼと比較してより多くのモナチンを生成した。
モナチン生成量は以下により増大した:1)インドール−ピルベート、ピルベート、及びアスパルテートを定期的に2mM添加すること(30分毎ないし1時間毎)、2)無酸素性の環境中、又は脱気したバッファーを用いて反応を行なうこと3)反応を数時間進めさせること、及び4)あまり多く凍結融解を行なっておらず、新たに調製されたデカルボキシラーゼを用いること。デカルボキシラーゼは12mMよりも高濃度のピルベートにより阻害された。4mMより高濃度のインドール−3−ピルベートでは、インドール−3−ピルベートを用いた副反応が促進された。反応で使用されるインドール−3−ピルベートの量は、アルドラーゼの量も増加される場合には増加することができる。高濃度のホスフェート(50mM)及びアスパルテート(50mM)は、カルボキシラーゼ酵素反応に対して阻害的であった。添加されるデカルボキシラーゼ酵素の量は、1時間の反応におけるモナチンの生成量を減少せしめることなく0.5U/mLまで低下させることができる。モナチンの生成量は、温度を26℃から30℃へ、30℃から37℃へ上昇させた場合に増加した。しかしながら、37℃においては、インドール−3−ピルベートの副反応も促進された。モナチンの生成量は、pHを7から7.3へ上昇させるに伴って増加し、pH7.3−8.3において比較的安定であった。
トリプトファンから開始される典型的な反応には、pH7.3で50mMのTris−Cl、20mMのトリプトファン、6mMのアスパルテート、6mMのピルビン酸ナトリウム、0.05mMのPLP、3mMリン酸カリウム、3mMのMgCl2、25μg/mLのアミノトランスフェラーゼ、50μg/mLのC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ、4単位/mLのデカルボキシラーゼ、5−200mU/mLのL−アミノ酸オキシダーゼ(シグマ社#A−2805)、168U/mLのカタラーゼ(シグマ社#C−3515)、及び0.008mgのFADが含まれていた(終濃度)。反応は30℃で30分間行なわれた。デカルボキシラーゼの添加により改善が観察された。50mU/mLのオキシダーゼが用いられた場合に最大量のモナチンが生成された。改善は、インドール−3−ピルベートが基質として用いられた場合に観察されたものと類似していた。更に、モナチンの生成量は、1)トリプトファン濃度が低い場合(即ち、トリプトファン濃度がアミノトランスフェラーゼ酵素のKmより低く、従って、該アミノトランスフェラーゼの活性部位において比較的MPとの競合性が低い)、及び2)アルドラーゼ及びアミノトランスフェラーゼに対するオキシダーゼの比率が、インドール−3−ピルベートが堆積できないようなレベルで維持されている場合に増加した。
インドール−3−ピルベート又はトリプトファンのいずれから開始する場合であっても、1−2時間のインキュベーション時間でのアッセイにおけるモナチンの生成量は、酵素の比率を同一に保ったまま、全ての酵素を2−4倍量使用した場合に増加した。いずれの基質を用いた場合であっても約1mg/mLのモナチン濃度は達成された。インドール−ピルベートから開始された場合には、トリプトファンの生成量は、概して生成物量の20%未満となり、関連反応の使用による有益性が示された。更なる最適化並びに中間体の濃度及び副反応の制御により、生産性及び収量は更に改善することができる。
オキサロアセテートの代わりにα−ケトグルタレートを2−オキソグルタレートデカルボキシラーゼ酵素と共にアミノアクセプターとして用いることができる(EC4.1.1.71)。この場合、コハク酸セミアルデヒド及び二酸化炭素が作られる。この反応スキームからは、逆反応が生じることを防ぐことが予想されるが、副生成物としてピルベートが提供されるという利点があるわけではない。この酵素をコードする多数の遺伝子配列が発表されている。
リジンεアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.36)を用いた関連反応
リジンεアミノトランスフェラーゼ(L−リジン6−トランスアミナーゼ)は、ロドコッカス(Rhodococcus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、ノカルディア(Nocardia)、フラヴォバクテリウム(Flavobacterium)、カンディダ・ユチリス(Candida utilis)、及びストレプトマイセス(Streptomyces)を含む種々の生物において発見されている。生物により、いくつかのβラクタム抗体の生成の第一工程として利用されている(Rius及びDemain,J Microbiol.Biotech.,7:95−100,1997)。この酵素は、α−ケトグルタレートがアミノアクセプターである場合にリジンのC−6のPLP−媒介性アミノ基転移によりリジンをL−2−アミノアジペート6−セミアルデヒド(アリシン)へと変換する。アリシンは不安定であり、自然に分子内脱水を起こし、環状分子である1−ピペリデイン6−カルボキシレートを形成する。これによりあらゆる逆反応の発生が効果的に阻害される。図12に反応スキームが描かれている。これに代わり、リジンピルビン酸6−トランスアミナーゼ(EC2.6.1.71)を用いることも可能である。
1mLの典型的な反応には、以下のものが含まれる:pH7.3で50mMのTris−HCl、20mMのインドール−3−ピルベート、0.05mMのPLP、pH8で6mMのリン酸カリウム、2−50mMのピルビン酸ナトリウム、1.5mMのMgCl2、50mMのリジン、100μgのアミノトランスフェラーゼ(リジンεアミノトランスフェラーゼLAT−101、バイオカタリティクス社、パサディナ、カリフォルニア州)、及び200μgのC.テストステロニ(C.testosteroni)ProAアルドラーゼ。モナチンの生成量は、ピルベート濃度の上昇に伴って増加した。これらの反応条件(50mMのピルベートで)を用いての最大量は、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼを用いた関連反応で観察された量の10分の1未満であった(約0.1mg/mL)。
前記反応混合物のLC/MS分析において、[M+H]+=293のピークはモナチンとして予想される時点で溶出し、質量スペクトルには他の酵素的製法で観察されたのと同じフラグメントが複数含まれていた。適切な質量電荷比(293)を持つ第二のピークは、実施例9で生成されたS,S−モナチンで典型的に観察された場合よりも若干早く溶出しており、モナチンの別の異性体の存在が示唆された。この酵素では非常に微量のトリプトファンが生成された。しかしながら、この酵素はピルベートを基質として用いることも可能である(副生成物としてアラニンが生成される)。また、該酵素は不安定であることが知られている。定向進化実験を行なって安定性を増加させ、ピルベートに対する活性を減少させ、MPに対する活性を増大させることで改善を行なうことが可能である。これらの反応は、上記のようにL−アミノ酸オキシダーゼ/カタラーゼと連関させることも可能である。
図12に示される製法に類似する製法では、リジンεアミノトランスフェラーゼの代わりにオルニチンδ−アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.13)を用い、この場合には、オルニチンはアミノドナーとして機能する。α−ケト産物であるL−グルタミン酸セミアルデヒドは、自然に環化してΔ1−ピロリン−S−カルボキシレートを形成する。上記種類の酵素を用いた別の反応スキームが、非タンパク質新生性アミノ酸製剤の生産のために記載されている(T.Li,A.B.Kootstra,LG.Fotheringham,Organic Process Research &.Development,6:533−538(2002))。これらのスキームでは、目的のアミノ酸に対して比較的高い活性を有する別のアミノトランスフェラーゼ(モナチンに対するHEXAspCのような)及びグルタメートの添加を要する。
その他の関連反応
トリプトファン又はインドール−ピルベートからのモナチンの収量を向上させることが可能な別の関連反応が図13に示されている。ギ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.2.1.2又は1.2.1.43)は一般的な酵素である。ギ酸ヒドロゲナーゼにはNADHを必要とするものもあるが、それ以外はNADPHを利用することができる。アンモニウムベースのバッファーを用いることで、グルタミン酸デヒドロゲナーゼがMPおよびモナチンの相互変換を触媒することが先の実施例において証明された。ギ酸アンモニウム及びギ酸デヒドロゲナーゼの存在は、補因子の再生に有効な系であり、二酸化炭素の生成は逆反応の速度を低下させるのに有効な方法である(Bommariusら,Biocatalysis 10:37,1994及びGalkinら.Appl.Environ.Microbiol.63:4651−6,1997)。更に、大量のギ酸アンモニウムも反応バッファーに溶解可能である。グルタミン酸デヒドロゲナーゼ反応(又は同様の還元的アミノ化)により生成されるモナチンの収量は、ギ酸デヒドロゲナーゼ及びギ酸アンモニウムの添加により向上させることが可能である。
同様の還元的アミノ化の触媒に適した酵素が実施例14及び15に示された。これらの酵素には、芳香族(フェニルアラニン)デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)と共に広い特異性を有する分枝鎖デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.9)が含まれていた。また、広い特異性を有するD−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(1.4.99.1)を用いてもこの反応を触媒できることが予想される。
他の製法を用いて平衡をモナチン生成に対して傾けさせることが可能である。例えば、アミノプロパンが、米国特許第5,360,724号及び同第5,300,437号に記載されるようなω−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.18)により触媒される反応中のMPのモナチンへの変換においてアミノ酸ドナーとして機能する場合には、生じる生成物の1つは、基質のアミノプロパンよりも揮発性の高い生成物であるアセトンとなるであろう。周期的に温度を短時間上昇させてアセトンを選択的に蒸発させ、これにより平衡を緩和させることも可能である。アセトンは47℃の沸点を有しており、この温度を短時間用いても恐らく前記中間体が分解されることはないであろう。α−ケトグルタレートをアミノアクセプターとして利用できる殆どのアミノトランスフェラーゼもMPに対する活性を有する。同様にして、アミノドナーとしてのグリシンと共にグリオキシレート/芳香族酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.60)が用いられた場合には、グリオキシレートが生成される。この生成物は不安定であり、グリシンよりも低い沸点を有する。
実施例22
組換え発現
公的に入手可能な酵素のcDNA及びアミノ酸の配列、並びに酵素及びここに開示される配列番号11及び12といった配列、及びその変異体、多型、突然変異体、断片及び融合体により、酵素等のいかなるタンパク質の発現及び精製も基本的な実験技術をもって実施することができる。当業者であれば、酵素及びその断片は、目的のいかなる細胞内又は生物内でも組換え技術により生成が可能であり、使用する前、例えば配列番号12及びその誘導体の生成前に精製することが可能であることを理解するであろう。
組換えタンパク質の製造方法は、当該技術分野において周知である。従って、本開示の範囲には、酵素等のいかなるタンパク質又はその断片の組換え発現が包含される。例としてJohnsonらに付与された米国特許第5,342,764号;Pauschらに付与された米国特許第5,846,819号;Fleerらに付与された米国特許第5,876,969号並びにSambrookら(分子クローニング(Molecular Cloning):実験マニュアル(A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、1989、第17章)を参照。
簡潔に言うと、タンパク質又はペプチドをコードする部分的、完全長又は変異cDNA配列は、細菌由来又は真核生物由来の発現ベクター等の発現ベクターにライゲーションすることが可能である。該cDNA配列の上流にプロモーターを配置することでタンパク質及び/又はペプチドの生成が可能となる。プロモーターの例としては、lac,trp,tac,trc,λファージの主なオペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、SV40の初期及び後期プロモーター、ポリオーマ、アデノウィルス、レトロウィルス、バキュロウィルス、及びシミアンウィルス由来のプロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ用のプロモーター、酵母の酸性ホスファターゼのプロモーター、酵母のα−交配因子のプロモーター及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれに限定されるものではない。
完全な天然タンパク質の生成に適したベクターとしては、pKC30(Shimatake及びRosenberg,1981,Nature 292:128)、pKK177−3(Amann及びBrosius,1985,Gene 40:183)及びpET−3(Studier及びMoffatt,1986,J.MoI.Biol.189:113)が挙げられる。DNA配列は、他のプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、動物ウィルス及び酵母人工染色体(YAC)(Burkeら,1987,Science 236:806−812)のような他のクローニング媒体に移すことができる。これらのベクターは、体細胞、及び細菌、真菌(Timberlake及びMarshall,1989,Science 244:1313−1317)、無脊椎動物、植物(Gasser及びFraley,1989, cience 244:1293)、及び哺乳動物(Purselら,1989,Science 244:1281−1288)といった単純な又は複雑な生物を含む種々の宿主に導入することが可能であり、これらは異種cDNAの導入によりトランスジェニックとなる。
例えば、哺乳動物細胞においては、cDNA配列は、pSV2ベクター内のシミアンウィルスのSV40プロモーター(Mulligan及びBerg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072−6)のような異種プロモーターにライゲーションされ、サルのCOS−1細胞(Gluzman,1981,Cell 23:175−82)等の細胞に導入され、一過性又は長期の発現を達成することが可能である。該キメラ遺伝子構築物の安定な導入は、ネオマイシン(Southern及びBerg,1982,J Mol.Appl.Genet.1:327−41)及びミコフェノール酸(Mulligan及びBerg,1981,Proc.Natl.Acad.ScI USA 78:2072−6)等の生化学的選択により哺乳動物細胞内で維持することができる。
ヒト又は他の哺乳動物細胞等の真核細胞へのDNAの導入は従来技術である。ベクターは、例えば、リン酸カルシウム(Graham及びvander Eb,1973,Virology 52:466)リン酸ストロンチウム(Brashら,1987,MoI.Cell Biol.7:2013)による沈殿、エレクトロポレーション法(Neumannら,1982,EMBO J.1:841)、リポフェクション法(Feignerら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci USA 84:7413)、DEAEデキストラン法(McCuthanら,1968,J.Natl.Cancer Inst.41:351)、マイクロインジェクション法(Muellerら,1978,Cell 15:579)、プロトプラスト融合法(Schafner,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2163−7)、又はペレットガン(Kleinら,1981,Nature 327:70)により純粋なDNAとしてレシピエントの細胞に導入される(トランスフェクション)。また、これに代わり、cDNAは、例えばアデノティルス(Ahmadら,1986,J.Virol.57:267)又はヘルペス(Spaeteら,1982,Cell 30:295)といったレトロウィルス(Bernsteinら,1985,Gen.Engrg.7:235)等のウィルスベクターの感染により導入することも可能である。
本開示内容の原理が応用できる多くの可能な実施形態を考慮し、例示される実施形態は本開示に係る特定の実施例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものと受け取られるべきではないことが理解されるべきである。むしろ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲に従うものである。従って、我々は、これらの各請求項の範囲及び趣旨に含まれる全てのものを我々の発明として主張する。