概要
本発明は、式:
を有する化合物である、モナチン(2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−アミノグルタル酸−また4−アミノ−2−ヒドロキシ−2−(1H−インドール−3−イルメチル)ペンタンジオイック酸と呼ばれる、また他の番号付け系に基づいて、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)グルタミン酸とも呼ばれるものを含む。モナチンはまた、以下の化学名も持つ。3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−ブチ−4−イル)−インドール、4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−グルタミン酸、および3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシブタン−4−イル)−インドール。
モナチンは、天然に存在する、高密度甘味料である。モナチンは、4つの立体異性体形態を持つ。2R,4R(「R,R立体異性体」または「R,Rモナチン)、2S,4S(「S,S立体異性体」または「S,Sモナチン」)、2R,4S(「R,S立体異性体」または「R,Sモナチン」)、および2S,4R(「S,R立体異性体」または「S,Rモナチン」)。本明細書で使用するところの「モナチン(monatin)」は、他に言及しない限り、すべての4つのモナチンの立体異性体、ならびにモナチン立体異性体の任意の組み合わせの任意の混合物を意味する(例えば、モナチンのR,RおよびS,S立体異性体の混合)。
本発明は、部分的に、グルコース、トリプトファン、インドール−3−乳酸から、および/またはインドール−3−ピルビン酸および2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(モナチン前駆体、MP、モナチンのα−ケト形態)のような中間体を介して、モナチンを作製する、いくつかの生合成経路の同定に基づいている。モナチン、インドール−3−ピルビン酸、およびMPを作製するために利用可能であるポリペプチド類および核酸配列が開示されている。モナチンの有機合成が、異性体の分離を必要とするので、安価な原材料を利用可能であり、1つの異性体のみを産生可能である生化学経路が、より経済的に利点があり得る。
モナチンは、インドール−3−ピルビン酸、MP、インドール−3−乳酸、トリプトファン、および/またはグルコースを介して産生可能である(図1)。図1〜3および11〜13で示した、モナチンまたはその中間体を産生または作製する方法には、望む最終産物が作製されるまで、基質を第一産物に変換すること、次いで、第一産物を第二産物に変換すること、などが開示されている。
図1〜3および11〜13は、ボックス中で、可能性ある中間体産物および最終産物を示している。例えば、グルコースからトリプトファン、トリプトファンからインドール−3−ピルビン酸、インドール−3−ピルビン酸からMP、MPからモナチン、またはインドール−3−乳酸(インドール−乳酸)からインドール−3−ピルビン酸のような、1つの産物から他への変換を、本明細書で提供した方法および物質を用いることによって達成可能である。これらの変換は、化学的または生物学的のいずれかで促進可能である。語句「変換(convert)」は、1つの産物(例えば第一中間体)を他の産物(例えば第二中間体)に変換する反応中、化学的方法またはポリペプチドのいずれかの利用を意味する。語句「化学的変換(chemical conversion)」は、ポリペプチドによって活発に促進されない反応を意味する。語句「生物学的変換(biological conversion)」は、ポリペプチドによって活発に促進される反応を意味する。変換は、インビボまたはインビトロにて実施可能である。生物学的変換を利用する場合、ポリペプチドおよび/または細胞を、ポリマー支持体上への化学的接着によってのように、支持体に固定化可能である。変換は、例えば、バッチまたは連続反応器中で、当業者に公知の任意の反応器を用いて実施可能である。
第一ポリペプチドを基質に接触させること、および第一産物を産生すること、次いで、作製した第一産物を第二ポリペプチドと接触させ、第二産物を産生すること、次いで、作製した第二産物を第三ポリペプチドと接触させ、例えばモナチンのような、第三産物を作製すること、が含まれる方法も提供される。使用したポリペプチドおよび産生した産物を、図1〜3および11〜13で示している。
図1〜3および11〜13で示した変換を実施するために利用可能な、ポリペプチドおよびそのコード配列が開示されている。いくつかの例にて、基質特異性および/またはポリペプチドの活性を改変可能にする、1つ以上の点変異を持つポリペプチドを、モナチンを作製するために使用する。
モナチンを産生する単離および組換え体細胞が開示されている。これらの細胞は、植物、動物、細菌、酵母、藻類、古細菌または真菌細胞のような、任意の細胞であり得る。
特定の例において、開示された細胞には、1つ以上の(例えば2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上)の以下の活性を含む。トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.5)、多重基質アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.19)、トリプトファン−フェニルピリビン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.28)、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.2)、トリプトファンオキシダーゼ(EC番号なし、Hadar他,J.Bacteriol 125:1096−1104,1976、およびFuruya他,Biosci Biotechnol Biochem 64:1486−93,2000)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.99.1)、D−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.3)、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.21)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキシグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)または4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.16)のような、シンターゼ/リアーゼ(EC4.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2.−)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(Kohiba and Mito,Procceedings of the 8th International Symposium on Vitamin B6 and Carbonyl Catalysis,Osaka,Japan 1990)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、および/またはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.2、1.4.1.3、1.4.1.4)。
他の例において、細胞は、1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上)の以下の活性を含む。インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.110)、R−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.222)、3−(4)−ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC1.1.1.237)、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3)、(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.111)、乳酸オキシダーゼ(EC1.1.3.−)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)または4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.16)のような、シンターゼ/リアーゼ(4.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2.−)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.19)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.28)、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.5)、多重基質アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.2、1.4.1.3、1.4.1.4)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.99.1)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、および/またはD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.21)。
さらに、開示された細胞は、1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ以上)の以下の活性を含む。トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.5)、多重基質アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.−)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.19)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(EC2.6.1.28)、L−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.2)、トリプトファンオキシダーゼ(EC番号なし)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.99.1)、D−アミノ酸オキシダーゼ(EC1.4.3.3)、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.21)、インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.110)、R−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.222)、3−(4)−ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ(EC1.1.1.237)、乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3)、(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.111)、乳酸オキシダーゼ(EC1.1.3.−)、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)または4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.16)のようなシンターゼ/リアーゼ(4.1.3.−)、シンターゼ/リアーゼ(4.1.2.−)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.2、1.4.1.3、1.4.1.4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、および/またはD−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ。
モナチンは、トリプトファンおよび/またはインドール−3−乳酸を、第一ポリペプチドと接触させることで、ここで、第一ポリペプチドが、トリプトファンおよび/またはインドール−3−乳酸を、インドール−3−ピルビン酸に変換し(トリプトファンまたはインドール−3−乳酸のDまたはL形態を、インドール−3−ピルビン酸へ変換する基質として利用可能であり、当業者は、この段階で選択されたポリペプチドが、適切な特異性を理想的に示すことを理解するであろう)、得られたインドール−3−ピルビン酸を、第二ポリペプチドに接触させることであり、そこで第二ポリペプチドが、インドール−3−ピルビン酸をMPに変換する、およびMPを第三ポリペプチドと接触させることで、そこで、第三ポリペプチドが、MPをモナチンに変換する、を含む方法によって産生可能である。これらの変換に用いることが可能な、典型的なポリペプチドが図2および3に示されている。
本発明の他の態様は、MPのような組成物、および少なくとも2つのポリペプチド、または場合によっては、少なくとも3つ、または少なくとも4つのポリペプチドを含む細胞で、少なくとも1つの外来の核酸配列(例えば少なくとも2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の外来核酸配列)をコードする細胞を提供する。
本明細書で提供した方法および物質を、モナチン、MP、モナチン中間体、およびモナチン誘導体のような産物を作製するために利用可能である。本明細書で記述したモナチンおよびいくつかのモナチンの中間体は、甘味剤として、またはモナチン誘導体の合成における中間体として、有用であり得る。
他の態様において、本発明は、モナチンを産生するための方法を特徴とする。特定の実施形態において、モナチンまたはその塩を産生する方法には、(a)微生物を培養培地中で培養することであって、前記微生物が、アルドラーゼポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸と、アミノトランスフェラーゼポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含むこと、および(b)モナチンまたはその塩を、培養培地または培養微生物より抽出すること、が含まれる。特定の実施形態において、アルドラーゼポリペプチドは、ProAアルドラーゼ(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドース、EC4.1.3.17)およびKHGアルドラーゼ(4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸リアーゼ、EC4.1.3.16)から選択される。他の実施形態において、微生物は、シノリゾビウム・メリロッティ(Sinorhizobium meliloti)、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)、シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)および大腸菌(E.coli)から選択される。あるいは、微生物は、コリネバクテリウム属およびブレビバクテリウム属から選択され得る。
1つの実施形態において、培養培地には、非イオン性界面活性剤、ペニシリン、(アンピシリンのような)ペニシリン誘導体、またはその組み合わせが含まれる。非イオン性界面活性剤には、ツィーン、トリトンX−100または酢酸ドデシルアンモニウムが含まれる。1つの実施形態において、培養培地には、5μg/L未満の濃度で、ビオチンが含まれる。他の実施形態において、培養培地のpHは、微生物を培養する前に、約pH7〜約pH8である。さらに、培養培地には、モラッセ、コーンスティープリカーまたはその組み合わせが含まれ得る。
いくつかの実施形態において、微生物は大腸菌であり、培養培地は、Trp−1およびグルコース培地を含む。他の実施形態において、微生物は、増殖のためにフェニルアラニンおよびチロシンを必要とし、培養培地には、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。微生物はまた、aspCおよびproA遺伝子を含み得る。さらに、微生物は、グルタミン酸を産生し、分泌する、コリネバクテリウム・グルタミカムの株であり得る。いくつかの実施形態において、モナチンまたはその塩が、微生物(例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム)から分泌される。他の実施形態において、微生物は発酵槽中で培養される。
いくつかの実施形態において、培養培地には、トリプトファン、ピルビン酸、(ツィーンのような)非イオン性界面活性剤、ペニシリン、ペニシリン誘導体またはその組み合わせが含まれる。他の実施形態において、アミノトランスフェラーゼポリペプチドは、トリプトファンアミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.27)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.1)、芳香族アミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.5)およびD−アラニンアミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.21)から選択される。
さらに、本発明は、(a)コリネバクテリウム・グルタミカム(ATCC13058)を培養培地中で培養すること、および(b)培養培地または培養微生物から、モナチンまたはその塩を抽出すること、を含むモナチンまたはその塩を産生する方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、培養培地には、ツィーン、ペニシリン、ペニシリン誘導体またはその組み合わせが含まれる。
さらに、本発明は、アルドラーゼポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸、およびアミノトランスフェラーゼポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含む微生物を特徴とし、そこで、前記核酸は、外来核酸、組換え体核酸およびその組み合わせから選択され、前記微生物がモナチンまたはその塩を産生する。いくつかの実施形態において、アルドラーゼポリペプチドは、ProAアルドラーゼ(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ、EC4.1.3.17)およびKHGアルドラーゼ(4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸−リアーゼ、EC4.1.3.16)から選択される。他の実施形態において、アミノトランスフェラーゼポリペプチドは、トリプトファンアミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.27)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.1)、芳香族アミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.5)およびD−アラニンアミノトランスフェラーゼポリペプチド(EC2.6.1.21)から選択される。微生物には、ピルビン酸を過剰産生する、および/またはチアミン栄養要求株、フェニルアラニンおよびチロシン栄養要求株、またはリポ酸栄養要求株であるものが含まれ得る。
いくつかの実施形態において、微生物は、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、トリホスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、およびサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から選択される。他の実施形態において、前記微生物が、aspCおよびproA遺伝子を含む。特定の実施形態において、微生物は、aspCおよびproA遺伝子、および少なくとも1つのトリプトファンオペロン遺伝子を含む。他の実施形態において、微生物は大腸菌である。他の実施形態において、前記微生物は、不備F1-ATPアーゼ遺伝子、内因性lipA遺伝子における崩壊、崩壊pheA遺伝子、崩壊内因性トリプトファナーゼ(tna)遺伝子、および/または1つ以上のトリプトファン生合成遺伝子の、2つ以上のコピーを含む。いくつかの実施形態において、微生物は、トリプトファンを過剰産生する。他の実施形態において、前記微生物が、ppsA遺伝子を過剰発現し、相当する対照微生物に比べて、多量の3−デオキシ−D−アラビノ−ヘパチュロソニック7−リン酸(DAHP)シンターゼ活性を持ち、ホスホエノールピルビン酸(PEP)シンターゼ活性を持つポリペプチドをコードする核酸を含み、そこで、外来核酸、組換え体核酸、およびその混合物および/またはtkt遺伝子から、核酸が選択される。他の実施形態において、微生物は大腸菌またはコリネバクテリウム・グルタミカムである。
いくつかの実施形態において、微生物にはさらに、トリプトファナーゼ活性を持つポリペプチドをコードする外来核酸が含まれる。他の実施形態において、微生物は、モナチンまたはその塩を分泌し、および/または脂肪酸栄養要求株である。他の実施形態において、微生物は、アルドラーゼを発現している核酸を含む細菌の株であり、そこで、核酸より発現したアルドラーゼは、立体異性体的に過剰のモナチン混合物を産生可能である。いくつかの実施形態において、立体異性体的に過剰のモナチン混合物は、主にS,Sモナチンまたはその塩である。あるいは、立体異性体的に過剰のモナチン混合物は、主にR,Rモナチンまたはその塩である。1つの実施形態において、微生物は、少なくとも1つの、トリプトファン取り込みポリペプチドをコードする核酸を過剰発現している。
他の態様において、本発明は、(a)モナチンまたはその塩が産生される条件下で、培養培地中で、モナチンまたはその塩を産生する微生物を培養すること、および(b)培養培地または培養微生物から、モナチンまたはその塩を得ること、を含むモナチンまたはその塩を産生するための方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、微生物は、モナチンまたはその塩を分泌し、および/または脂肪酸栄養要求株である。
さらに、本発明はまた、(a)モナチンまたはその塩、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸またはその塩、モナチンの類似体またはその塩、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸の類似体またはその塩、およびその組み合わせから選択される、炭素/エネルギー供給源の存在下で、細胞を培養すること、および、(b)細胞の増殖に関して試験することで、細胞の増殖が、細胞が、炭素/エネルギー供給源をピルビン酸に変換することを示唆し、それによって、細胞が、モナチンまたはその塩を合成可能であることを示唆していること、を含む、モナチンまたはその塩を合成可能である細胞を同定するための方法を含む。1つの実施形態において、細胞はピルビン酸栄養要求株であり、ピルビン酸が、炭素/エネルギー供給源の代謝によって細胞内に産生される。他の実施形態において、前記細胞が、pykAおよびpykF遺伝子中での崩壊を含む。
さらに、本発明は、(a)トリプトファンの不在下で、およびモナチンまたはその塩、2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケト−グルタル酸またはその塩、またはその組み合わせの存在下、トリプトファン栄養要求株である細胞を培養すること、および(b)トリプトファン栄養要求株である細胞の増殖を試験することであって、細胞の増殖が、細胞が、モナチンまたはその塩、2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケト−グルタル酸またはその塩、またはその組み合わせからトリプトファンを合成したことを示唆し、それによって、細胞が、モナチンまたはその塩、または2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケト−グルタル酸またはその塩、またはその組み合わせをトリプトファンから合成可能であることを示唆していること、を含む、モナチンまたはその塩、または2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケト−グルタル酸またはその塩、またはその組み合わせを、トリプトファンから合成可能である細胞を同定するための方法を特徴とする。
本発明はまた、(a)培養培地中で微生物を培養することであって、前記微生物が、シノリゾビウム・メリロッティ(Sinorhizobium meliloti)、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)、シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)から選択されること、および、(b)培養培地または培養微生物から、モナチンまたはその塩を抽出すること、を含む、モナチンまたはその塩を産生する方法を特徴とする。いくつかの実施形態において、前記微生物は遺伝的に改変されていない。他の実施形態において、培養培地には、PHB培地が含まれる。培養培地にはまた、トリプトファン、ピリビン酸、非イオン性界面活性剤、ペニシリン、ペニシリン誘導体またはその組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、微生物は、シノリゾビウム・メリロッティまたはコマモナス・テストステロニである。他の実施形態において、前記微生物は、コマモナス・テストステロニであり、および/または培養培地がさらに、トリプトファンおよびピルビン酸を含む。他の実施形態において、培養培地には、TY培地が含まれる。培養培地にはまた、トリプトファン、ピルビン酸またはその組み合わせが含まれ得る。
他に定義しない限り、本明細書で使用するところの全ての技術的および科学的語句は、本発明が帰属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同様の意味を持つ。本明細書に記述されたものと同様の、または等価の方法および物質を、本発明を実施するために利用可能であるけれども、好適な方法および物質を以下に記述している。すべての発行物、特許明細書、特許および他の参考文献は、その全てが参照により本明細書に組み込まれている。不一致の場合、定義を含み、本明細書は制御され得る。さらに、物質、方法および実施例は、例示のみであって、制限する意図はない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記述、および請求項より明らかであろう。
配列表
付随する配列表中に列記された核酸およびアミノ酸配列は、ヌクレオチド塩基に対する標準の略字、およびアミノ酸に関する三文字コードを用いて示している。各核酸配列の1つの鎖のみが示されているが、相補鎖も、表示した鎖に対する任意の参照によって含まれ得ることが理解される。
配列番号1および2は、シノリゾビウム・メリロッティ(Sinorhizobium meliloti)からのアミノトランスフェラーゼの、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している(tatA遺伝子、文献では、チロシンまたは芳香族アミノトランスフェラーゼと呼ばれている)。
配列番号3および4は、(tatA(配列番号1および2)との相同性により)ロードバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)(2.4.1)からのチロシンアミノトランスフェラーゼの、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号5および6は、ロードバクター・スファエロイデス(35053)からのアミノトランスフェラーゼの、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している(新規、2.4.1配列配列番号3および4)に基づいてクローン化)。
配列番号7および8は、ライシュマニア・メジャー(Leishmania major)からの、広基質アミノトランスフェラーゼ(bsat)の、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号9および10は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)からの芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT)の、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号11および12は、(芳香族アミノトランスフェラーゼとして、相同性より同定した)ラクトバシルス・アミロボラス(Lactobacillys amylovorus)からの芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT)の、それぞれ新規核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号13および14は、(受入番号第AAAE01000093.1、bp 14743−16155および受入番号第ZP00005082.1に対する相同性によって、多重基質アミノトランスフェラーゼとして同定した)R.スファエロイデス(R.sphaeroides)(35053)からの多重基質アミノトランスフェラーゼ(msa)の、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号15および16は、B.サブチリスD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat)遺伝子配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号17および18は、S.メリロッティtatA配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号19および20は、B.サブチリスaraTアミノトランスフェラーゼ配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号21および22は、ロードバクター・スファエロイデス(2.4.1および35053)多重基質アミノトランスフェラーゼ配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号23および24は、ライシュマニア・メジャーbsat配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号25および26は、ラクトバチルス・アミロボラスaraT配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号27および28は、R.スファエロイデスtatA配列(2.4.1および35053両方)をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号29および30は、大腸菌aspC配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している(遺伝子配列Genbank受入番号:AE000195.1、タンパク質配列Genbank受入番号:AAC74014.1)。
配列番号31および32は、大腸菌からの芳香族アミノトランスフェラーゼ(tyrB)の、それぞれ核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号33および34は、大腸菌tyrB配列をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号35〜40は、4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(KHG)(EC4.1.3.16)活性を持つポリペプチドをクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号41および42は、タンパク質P00913(GI:401195)およびP31013(GI:401201)をそれぞれコードする、大腸菌からのトリプトファナーゼ(tna)遺伝子、およびシトロバクター・フレウンディ(Citrobacter freundii)からのチロシンフェノール−リアーゼ(tpl)遺伝子の核酸配列を示している。
配列番号43〜46は、トリプトファナーゼポリペプチド類およびβ−チロシナーゼ(チロシンフェノール−リアーゼ)ポリペプチドをクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号47〜54は、トリプトファナーゼポリペプチドおよびβ−チロシナーゼポリペプチドに変異導入するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号55〜64は、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17)活性を持つポリペプチドをクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号65および66は、それぞれ、C.テストステローニ(C.testosteroni)からの、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(proA)の核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号67〜68は、pET30Xa/LIC中、大腸菌aspCでのオペロン中、C.テストステローニ4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(proA)をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号69〜72は、pESC−his中、大腸菌aspCおよびC.テストステローニproAをクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号73〜74は、本明細書で開示した遺伝子をクローン化するために使用したプライマーの5’末端に加えた、核酸配列を示している。
配列番号75および76は、aspCおよびproA遺伝子間の介在配列を短くするために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号77および78は、pPRONco中で大腸菌tnaAをクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号79および80は、pPRONco中で、大腸菌トリプトファンオペロン(遺伝子trpE、trpD、trpC、trpB、trpA)をクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号81および82は、それぞれ、(5−メチルトリプトファン耐性細胞から由来した)プラスミドpGX50のtrpE遺伝子の核酸およびアミノ酸配列を示している。
配列番号83および84は、C.テストステローニ4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(proA)および大腸菌aspCを含むオペロンを、コリネバクテリウム/大腸菌シャトルベクターpEKEX−2内にクローン化するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号85および86は、大腸菌内に、pykAノックアウトを産生するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号87および88は、大腸菌内に、pykFノックアウトを産生するために使用したプライマーの核酸配列を示している。
配列番号89は、ラクトバシルス・アミロボルス(配列番号12)からの、芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT)の最初の10個のアミノ酸を示している。
詳細な説明
語句および方法の以下の説明は、本開示をよりよく記述するため、および本開示物の実施の技術分野の当業者を導くために提供される。本明細書で使用するところの、「含む(including)」は、「含む(comprising)」を意味する。さらに、単数形態「a」または「an」または「the」には、文脈が他に明確に指示する以外、複数参照を含む。例えば「タンパク質を含む」に対する参照は、1つまたは多数のそのようなタンパク質を含み、「細胞を含む」に対する参照は、当業者に公知の1つ以上の細胞およびその等価物の参照を含み、他も同様である。語句「約(about)」は、任意の測定で起こる、広範囲の実験的エラーを含む。他に言及しない限り、すべての測定数値は、語句「約」が表示されていない場合でも、その前に語句「約」を持つと推測される。
cDNA(相補的DNA):内部、非コード区画(イントロン)および転写を決定する調節配列を欠くDNAの断片。cDNAは、細胞から抽出したメッセンジャーRNAからの逆転写によって、研究所内で合成可能である。
保存置換:同様の生化学的特性を持つアミノ酸残基に対する、1つ以上のアミノ酸置換(例えば2、5または10残基)。典型的には、保存的置換は、得られたポリペプチドの活性において、影響が少ないか、ない。例えば、理想的に、1つ以上の保存置換を含む、トリプトファンアミノトランスフェラーゼポリペプチドは、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性を維持する。ポリペプチドは、例えば、部位特異的変異導入またはPCRのような標準の手順を用いて、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することによって、1つ以上の保存置換を含むために産生可能である。
置換変異体は、アミノ酸配列中の少なくとも1つの残基が、除去されたか、異なる残基がその位置に挿入されたものである。タンパク質中の本来のアミノ酸に対して置換可能な、そして保存置換として考えられる例には、serまたはthrで置換されたala、gln、hisまたはlysで置換されたarg、glu、gln、lys、his、aspで置換されたasn、asn、gluまたはglnで置換されたasp、serまたはalaで置換されたcys、asn、glu、lys、his、aspまたはargで置換されたgln、asn、gln、lysまたはaspで置換されたglu、proで置換されたgly、asn、lys、gln、arg、tyrで置換されたhis、leu、met、val、pheで置換されたile、ile、met、val、pheで置換されたleu、asn、glu、gln、his、argで置換されたlys、ile、leu、val、pheで置換されたmet、trp、tyr、met、ileまたはleuで置換されたphe、thr、alaで置換されたser、serまたはalaで置換されたthr、phe、tyrで置換されたtrp、his、pheまたはtrpで置換されたtyr、およびmet、ile、leuで置換されたvalが含まれる。保存置換に関するさらなる情報に関して、Ben−Bassat他,(J.Bacteriol.169:751−7,1987)、O’Regan他,(Gene 77:237−51,1989)、Sahin−Toth他,(Protein Sci.3:240−7,1994)、Hochuli他,(Bio/Technology 6:1321−5,1988)、国際特許第WO00/67796号(Curd他)、または遺伝学および分子生物学の標準のテキストブックを参照のこと。
外来:核酸およびとりわけ細胞に関して、本明細書で使用するところの語句「外来(exogenous)」は、天然で見られるような、特定の細胞から由来したのではない任意の核酸を意味する。したがって、天然に存在しない核酸は、一旦細胞内に導入された細胞に対して外来性であると考えられる。天然に存在する核酸はまた、特定の細胞に対して外来性である。例えば、個体Xの細胞から単離した全クロモソームは、一旦クロモソームがYの細胞に導入されたならば、個体Yの細胞に対して、外来性の核酸である。「外来」タンパク質は、細胞内の、外来核酸の発現による。
機能的等価性:等価の機能を持つこと。酵素の文脈にて、機能的に等価な分子には、酵素の機能を保持する異なる分子が含まれる。例えば、機能的等価性は、酵素配列における配列の変化によって提供可能であり、そこで、1つ以上の配列の変化を持つポリペプチドが、変化しないポリペプチドの機能を維持する(例えば酵素的な活性)。特定の実施形態において、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ機能等価物は、トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸へ変換する能力を維持する。
配列変化の例には、限定はしないが、保存置換、欠損、変異、フレームシフトおよび挿入が含まれる。1つの例において、該ポリペプチドは抗体に結合し、機能的等価物は、同一の抗体に結合するポリペプチドである。したがって、機能的等価物には、ポリペプチドと同一の結合特異性を持つペプチド、およびポリペプチドの代わりに試薬として使用可能なペプチドが含まれる。1つの例において、機能的等価物には、結合配列が、不連続であり、抗体が直線エピトープに結合するポリペプチドが含まれる。したがって、ペプチド配列が、MPELANDLGL(配列番号12のアミノ酸1〜10)(配列番号89)である場合、機能的等価物には、不連続エピトープが含まれ、以下のようであり得る(**=任意の数の介在アミノ酸):NH2−**−M**P**E**L**A**N**D**L**G**L−COOH。この例において、ポリペプチドの三次元構造が、配列番号12のアミノ酸1〜10に結合するモノクローナル抗体に結合可能であるようなものである場合、ポリペプチドは、配列番号12のアミノ酸1〜10に機能的に等価である。
ハイブリッド形成:本明細書で使用するところの語句「ハイブリッド形成(hybridization)」は、二本鎖分子を形成するための、相補的一本鎖DNAおよび/またはRNAの能力に基づいて、2つの核酸分子のヌクレオチド配列における相補性に関して試験する方法を意味する。核酸ハイブリッド形成技術を、本開示物の範囲内で、単離核酸を得るために使用可能である。簡単に記すと、配列番号11にて示した配列に対する相同性を持つ任意の核酸またはその部分を、中程度から高い緊縮性の条件下でのハイブリッド形成によって、同様の核酸を同定するためのプローブとして使用可能である。一旦同定したならば、次いで核酸を精製し、配列決定し、本開示物の範囲内であるかどうかを決定するために解析可能である。
ハイブリッド形成は、プローブに対してハイブリッド形成する、それぞれDNAまたはRNA配列を同定するために、サザンまたはノザン解析によって実施可能である。プローブをビオチン、ジゴキシゲニン、ポリペプチドまたは32Pのような放射性同位体で標識化可能である。解析すべきDNAまたはRNAを、Sambrook他(1989)Molecular Cloning、second edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NYの項目7.39−7.52で記述されたもののように、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル上で、電気泳動的に分離し、ニトロセルロース、ナイロンまたは他の好適な膜に移し、当技術分野でよく知られている標準の技術を用いてプローブでハイブリッド形成可能である。典型的には、プローブは、長さにして少なくとも約20ヌクレオチドである。例えば、配列番号11で示した連続20ヌクレオチド配列に相当するプローブを、同一または類似の核酸を同定するために使用可能である。さらに、20ヌクレオチドより長い、または短いプローブを使用可能である。
本開示物はまた、長さにして少なくとも12塩基(例えば、長さにして、少なくとも約13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60,100、250、500、750、1000、1500、2000、3000、4000または5000塩基)であり、ハイブリッド条件下で、配列番号11に示した配列を持つ核酸のセンスまたはアンチセンス鎖にハイブリッド形成する単離核酸配列を提供する。ハイブリッド形成条件は、中程度または高い緊縮性ハイブリッド形成条件であり得る。本開示物の目的のために、中程度の緊縮性ハイブリッド形成条件は、ハイブリッド形成が、25mM KPO4(pH7.4)、5×SSC、5×Denhart溶液、50μg/mL還元、超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、および1〜15ng/mLプローブ(約5×107cpm/μg)を含むハイブリッド形成溶液中、約42℃で実施され、洗浄が、2×SSCおよび0.1%硫酸ドデシルナトリウムを含む洗浄溶液で、約50℃にて実施される、ことを意味する。
高緊縮性ハイブリッド形成条件は、ハイブリッド形成が、25mM KPO4(pH7.4)、5×SSC、5×Denhart溶液、50μg/mL還元、超音波処理サケ精子DNA、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、および1〜15ng/mLプローブ(約5×107cpm/μg)を含むハイブリッド形成溶液中、約42℃で実施され、洗浄が、0.2×SSCおよび0.1%硫酸ドデシルナトリウムを含む洗浄溶液で、約65℃にて実施される、ことを意味する。
単離された:核酸に関して、本明細書にて使用するところの語句「単離された(isolated)」は、由来した有機体の天然に存在するゲノム中で、直接に連続性である(1つは5’末端上で、1つが3’末端上)配列の両方と、直接連続的ではない、天然に存在する核酸を意味する。例えば、単離した核酸は、限定せずに、通常、天然に存在するゲノム中のその組換え体DNA分子に直接に隣接して通常発見される、核酸配列の1つが除去されるか、または存在しないという条件で、任意の長さの組換え体DNA分子であり得る。したがって、単離核酸には、限定はせずに、他の配列に依存せずに、分離分子として存在する組換え体DNA(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されるcDNAまたはゲノムDNA断片)、ならびにベクター、自発的複製プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)内、または真核生物または原核生物のゲノムDNA断片内に組み込まれている組換え体DNAが含まれる。さらに、単離核酸には、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部分である、組換え体DNA分子が含まれ得る。核酸に関して、本明細書にて使用するところの語句「単離された」はまた、天然に存在しない核酸配列が天然には見られず、天然に存在するゲノム中の直接に連続する配列を持たないので、任意の天然に存在しない核酸も含む。例えば、遺伝子工学的に改変した核酸のような、天然に存在しない核酸が、単離した核酸と考えられる。遺伝子工学的に改変した核酸は、一般的な分子クローニング、または化学的核酸合成技術を用いて作成可能である。単離した天然に存在しない核酸は、他の配列に依存せず、またはベクター、自発的複製プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)、または原核生物または真核生物のゲノムDNA内に組み込まれ得る。さらに、天然に存在しない核酸には、ハイブリッドまたは融合核酸配列の部分である、核酸分子が含まれ得る。
例えばcDNAまたはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化を含むゲルスライス内で、数百から数百万の他の核酸分子の中に存在する核酸は、単離核酸とは考えない。
ポリペプチドに関して、本明細書で使用するところの語句「単離した」は、例えば、細胞から、任意の方法で単離した、または先の環境より分離した、ポリペプチドを意味する。単離ポリペプチドはまた、任意の方法で精製されたポリペプチドも意味し得る。
核酸:本明細書で使用するところの語句「核酸(nucleic acid)」は、cDNA、ゲノムDNA、および合成(例えば化学的に合成した)DNAを限定的ではなく含む、RNAおよびDNA両方を意味する。核酸は、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖またはアンチセンス鎖であり得る。さらに、核酸は環状または直線であり得る。1つ以上の核酸は、より大きな核酸内に存在し得る。例えば、アルドラーゼポリペプチドをコードする核酸およびアミノトランスフェラーゼポリペプチドをコードする核酸が、ゲノムDNAまたはプラスミドベクターのような、より大きな単一核酸内に存在し得る。あるいは、アルドラーゼポリペプチドをコードする核酸およびアミノトランスフェラーゼポリペプチドをコードする核酸は、2つの異なるプラスミドベクターのような、2つの異なる核酸上に存在し得る。
作動可能に連結した:第一核酸配列は、この第一核酸配列が、第二核酸配列と機能的に関連して位置する場合に、第二核酸配列と「作動可能に連結する(operably linked)」。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写に影響を与える場合に、コード配列に作動可能に連結する。一般的に、作動可能に連結したDNA配列は、連続しており、2つのポリペプチド−コード領域を連結する必要がある場合に、同一のリーディングフレーム中である。
過剰発現:細胞は、核酸または遺伝子によってコードされたポリペプチドが、細胞および/または微生物中で、相当する野生型または天然の細胞および/または微生物中で産生されるものよりも高濃度で産生される場合に、特定の核酸または遺伝子を「過剰発現する(overexpresses)」。細胞は、外来、組換え体または天然に存在する(すなわち天然の)核酸または遺伝子を、細胞内で過剰発現可能である。例えば、ポリペプチドは、細胞内で、天然に存在する核酸を過剰発現することによって、高レベルで産生され得、そこで、ポリペプチドそれ自身をコードする核酸は、遺伝的に改変されていないが、核酸配列の転写に指向しているプロモーターは改変または添加されている。語句「過剰発現」はまた、過剰発現したタンパク質に関し、すなわち、相当する野生型または天然の細胞および/または微生物中に存在するものよりも、高濃度で、細胞および/または微生物中に存在するものであり得る。
ポリペプチド:ポリペプチドは、翻訳後修飾に関わらず、アミノ酸の鎖を意味する。
ポリペプチド改変:本開示物は、酵素、ならびにその合成実施形態を含む。さらに、望む酵素活性を持つ、類似体(非ペプチド有機分子)、誘導体(開示したポリペプチド配列で開始して得た、化学的に機能化したポリペプチド分子)、および変異体(相同物)を、本明細書で開示した方法にて利用可能である。本明細書で開示したポリペプチドには、アミノ酸の配列が含まれ、それは、L−および/またはD−アミノ酸のいずれか、天然に存在するものおよびその他であり得る。
ポリペプチドは、未改変ポリペプチドと同様の活性を本質的に持ち、他の望む特性を任意に持つ誘導体を産生するために、種々の化学的技術によって改変可能である。例えば、カルボキシル末端または側鎖いずれかの、ポリペプチドのカルボン酸基を、薬理学的に許容可能なカチオンの塩の形態で提供可能であり、またはC1〜C16エステルを形成するためにエステル化可能であり、または式NR1R2、式中R1およびR2がそれぞれ独立して、HまたはC1−C16アルキルである、のアミドに変換可能であり、または5−または6−員環のような、ヘテロ環状環を形成するために結合可能である。アミノ末端または側鎖いずれかの、ポリペプチドのアミノ基は、HCl、HBr、酢酸、安息香酸、硫酸トルエン、マレイン酸、タルタル酸および他の有機塩のような、薬理学的に許容可能な酸添加塩の形態であり得、またはC1−C16アルキルまたはジアルキルアミノに改変し、またはさらにアミドに変換可能である。
アミノ酸側鎖のヒドロキシル基を、良く認識された技術を用いて、C1〜C16アルコキシへ、またはC1〜C16エステルへ変換可能である。アミノ酸側鎖のフェニルおよびフェノール環を、F、Cl、BrまたはIのような1つ以上のハロゲン原子で、またはC1〜C16アルキル、C1〜C16アルコキシ、そのカルボン酸およびエステル、またはそのようなカルボン酸のアミドで置換可能である。アミノ酸側鎖のメチレン基を、相同C2〜C4アルキレンまで伸長可能である。チオールを、アセタミド基のような、多数の良く認識されている保護基の任意の1つで保護可能である。当業者はまた、結果として安定性の増加となる構造への立体配座的制限を選択し、提供するために、環状構造を、本開示物のポリペプチド内に導入するための方法も認識し得る。例えば、C−またはN末端システインをポリペプチドに加えることが可能であり、それによって、酸化した場合に、ポリペプチドが、ジスルフィド結合を含み得、環状ポリペプチドが産生される。他のポリペプチド環状化方法には、チオエーテル類およびカルボキシル−およびアミノ末端アミド類およびエステル類の形成が含まれる。
ペプチドミメティックおよびオルガノミメティック実施形態はまた、本開示物の目的の範囲内であり、それによって、そのようなペプチド−およびオルガノミメティックの化学的組成の三次元配列が、ペプチド骨格の三次元配列および構成要素アミノ酸側鎖を模倣し、結果として、検出可能な酵素活性を持つ、本開示物のポリペプチドのそのようなペプチド−およびオルガノミメティックとなる。コンピュータモデリング適用のために、ファーマフォアが、生物学的活性のための構造的な要求の、理想的な、三次元定義である。ペプチド−およびオルガノミメティックは、(コンピュータ補助薬物設計またはCADDを用いる)現在のコンピュータモデリングソフトウェアで、それぞれのファーマコフォアを適合させるために設計可能である。例えば、CADDにて使用する技術の記述に関して、Walters,「薬物のコンピュータ−補助モデリング(Computer−Assisted Modeling of Drugs)」,Klegerman & Groves(eds.),Pharmaceutical Biotechnology,1993,Interpharm Press:Buffalo Grove,IL,pp.165−74およびch.102 Munson(ed.),Principles of Pharmacology,1995,Chapman & Hallを参照のこと。そのような技術を用いて調製したミメティックも本開示物の範囲内に含まれる。1つの例において、ミメティックは、酵素またはその変異体、断片または融合物によって産生された酵素活性を模倣する。
プローブおよびプライマー:核酸プローブおよびプライマーは、本明細書で提供したアミノ酸配列および核酸配列に基づいて簡単に調製可能である。「プローブ」には、検出可能な標識またはレポーター分子を含む、単離した核酸が含まれる。例示的な標識には、限定はしないが、放射性同位体、リガンド、化学発光試薬およびポリペプチド(例えば酵素)が含まれる。標識化のための方法、および種々の目的のために適切な標識の選択における指針は、例えば、Sambrook他(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989、およびAusubel他(ed.)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York(定期的な更新),1987にて議論されている。
「プライマー(primers)」は、典型的に、10以上のヌクレオチドを持つ核酸分子である(例えば、約10ヌクレオチドから約100ヌクレオチドの間を持つ核酸分子)である。プライマーを、核酸ハイブリッド形成によって相補的な標的核酸鎖にアニールし、プライマーと標的核酸鎖間でハイブリッドを形成させ、次いで、例えばDNA断片ポリメラーゼポリペプチドによって、標的核酸鎖にそって伸長させることが可能である。プライマー対を、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または当技術分野で公知の他の核酸増幅方法によって、核酸配列の増幅のために使用可能である。
プローブおよびプライマーを調製する、および使用するための方法は、例えば、Sambrook他(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;Ausubel他(ed.),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York(定期的な更新),(1987)、およびInnis他(eds.),PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press:San Diego,1990のような参考文献にて記述されている。PCRプライマー対は、例えば、Primer(Version 0.5、C1991、Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,Mass.)のような、この目的のために意図されたコンピュータプログラムを用いることによって、公知の配列より誘導可能である。当業者は、特定のプローブまたはプライマーの特異性が、長さによって増加すること、しかしプローブまたはプライマーは、全長配列から、5つの連続ヌクレオチドのように小さい配列までの範囲のサイズであり得ることを理解するであろう。したがって、例えば、20連続ヌクレオチドのプライマーが、15ヌクレオチドのみの相当するプライマーよりも高い特異性で標的に対してアニール可能である。したがって、より高い特異性を得るために、プローブおよびプライマーは、例えば、10、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、3000、3050、3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300、4350、4400、4450、4500、4550、4600、4650、4700、4750、4800、4850、4900、5000、5050、5100、5150、5200、5250、5300、5350、5400、5450、またはそれ以上の連続ヌクレオチドを含んで選別可能である。
プロモーター:核酸配列の転写を指向する核酸制御配列。プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATA要素のような、転写の開始部位の近くに、必須核酸を含む。プロモーターには、転写開始部位から、数千塩基対ほどに局在可能な、遠位エンハンサーまたはレプレッサー要素が含まれ得る。
精製した:本明細書で使用するところの語句「精製した(purified)」は、絶対的純度を必要とせず、相対的語句として意図される。したがって、例えば、精製したポリペプチドまたは核酸調製物は、それぞれ対照ポリペプチドまたは核酸が、有機体内のその天然の環境中で存在し得るポリペプチドまたは核酸よりも、より高い濃度であるものであり得る。例えば、ポリペプチド調製物は、調製物中のポリペプチド含量が、調製物の全可溶性タンパク質含量の、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、98%または99%を示す場合に、精製されたと考えられる。
組換え体:「組換え体(recombinant)」核酸は、(1)発現している有機体中に天然には存在しない配列、または(2)2つの別に分離した、より短い配列の人工的組み合わせによって作製された配列、を持つものである。この人工的組み合わせは、しばしば、化学的合成によって、より一般的には、核酸の単離区画の人工的操作によって、例えば、遺伝的工作技術によって実施される。「組換え体」はまた、人工的に操作されたが、しかし、核酸が単離された有機体中で見られる、同一の制御配列およびコード領域を含む、核酸分子を記述するためにも使用される。「組換え体」ポリペプチドは、組換え体核酸から発現されるものである。
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性の語句で表現され、さもなければ、配列同一性といわれる。配列同一性はしばしば、パーセント同一性(または類似性または相同性)に関して測定し、パーセンテージが高ければ高いほど、2つの配列はより同様である。配列番号12のような、ポリペプチドの類似物または変異体は、標準の方法を用いて並べたときに、相対的に高い程度の配列同一性を持つ。
比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野でよく知られている。種々のプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−53,1970、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444−8,1988、Higgins and Sharp,Gene 73:237−44,1988、Higgins and Sharp,CABIOS 5:151−3,1989、Corpet他,Nucleic Acids Research 16:10881−90,1988、およびAltschul他,Nature Genet.6:119−29,1994に記述されている。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標))(Altschul他,J.Mol.Biol.215:403−10,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxとの連結で使用するために、National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)およびインターネット上を含む、種々のソースより入手可能である。
ポリペプチドの変異体は、典型的には、NCBI Blast 2.0、デフォルトパラメーターに設定したギャップblastpを用いて、アミノ酸配列との全長アライメント上で計算した、少なくとも50%配列同一性を持つことによって特性化される。約30アミノ酸以上のアミノ酸配列の比較のために、Blast2配列式を、デフォルトパラメーターに設定した、デフォルトBLOSUM62マトリックスを用いて利用する(ギャップ存在コスト11、および残基ごとギャップコスト1)。短いポリペプチド(約30アミノ酸より小さい)をアライメントする場合、このアライメントは、デフォルトパラメータ(オープンギャップ9、伸長ギャップ1ペナルティー)に設定したPAM30マトリックスを利用し、Blast2配列式を使用して実施する。参照配列に対してより大きな類似性を持つポリペプチドさえ、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性のような、本方法によって査定したときに、高いパーセンテージ同一性を示し得る。全配列以下を、配列同一性に関して比較する場合、相同物および変異体は、典型的には、10〜20アミノ酸の短いウインドにわたり、少なくとも80%配列同一性を持ち、参照配列に対するその類似性に依存して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または98%の配列同一性を持ち得る。そのような短いウインドにわたる配列同一性を決定するための方法は、Bethesda,MarylandのNational Center for Biotechnology Informationによって維持されるウェブサイトにて記述されている。当業者は、これらの配列同一性範囲が、ガイダンスのためのみに提供されることを理解し得、強力に有意な類似体が、提供された範囲外で得られる可能性が完全にある。
同様の方法を、核酸配列のパーセント配列同一性を決定するために利用可能である。特定の例にて、類似性配列をもとの配列と並べ、マッチの数を、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が、両方の配列中に存在する位置の数を計数することによって決定する。パーセント配列同一性を、同定した配列にて表した配列(例えば配列番号11)の長さによって、または関連した長さ(例えば、同定した配列で表した配列からの、100連続ヌクレオチドまたはアミノ酸残基)によってのいずれかで、マッチの数を割り、次いで得られた数値に100をかけることによって決定する。例えば、配列番号11で表した配列と並べたときに、882マッチを持つ核酸配列は、配列番号11に表した配列に対して、75.0パーセント同一である(すなわち、(882÷1176)*100=75.0)。パーセント配列同一性値は、小数点以下二位を四捨五入して、小数点以下一位までの概数にすることが理解される。例えば、75.11、75.12、75.13および75.14は75.1に概数され、75.15、75.16、75.17、75.18および75.19は75.2に概数される。また、長さの値はつねに整数であることが理解される。
特異的結合試薬:本明細書にて記述された任意のポリペプチドに特異的に結合可能な試薬。例には、限定はしないが、ポリクローナル抗体、(ヒト化モノクローナル抗体を含む)モノクローナル抗体、およびFab、F(ab’)2およびFv断片のようなモノクローナル抗体の断片、ならびにそのようなポリペプチドのエピトープに特異的に結合可能である他の任意の試薬が含まれる。
本明細書で提供したポリペプチドに対する抗体を、そのようなポリペプチドを精製または同定するために使用可能である。本明細書で提供したアミノ酸および核酸配列により、本明細書で記述したポリペプチドを認識する、特異的抗体に基づく結合試薬の産生が可能になる。
モノクローナルまたはポリクローナル抗体は、ポリペプチド、ポリペプチドの部分、またはその変異体に対して産生可能である。好ましくは、ポリペプチド抗原上の1つ以上のエピトープに対して作製された抗体は、そのポリペプチドを特異的に検出する。したがって、1つの特定のポリペプチドに対して作製した抗体は、その特定のポリペプチドを認識および結合し、他のポリペプチドは基本的に認識または結合しない。抗体が、特定のポリペプチドに特異的に結合することは、多数の標準的な免疫アッセイ方法の任意の1つによって決定される。例えば、ウエスタンブロッティング(例えば、Sambrook他(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989を参照のこと)。
(配列番号12にて表したアミノ酸配列を持つポリペプチドに対して、マウスで産生された調製物のような)該抗体調製物が、ウエスタンブロッティングによって、適切なポリペプチド(例えば、配列番号12にて表したアミノ酸配列を持つポリペプチド)を特異的に検出することを決定するために、全細胞タンパク質を、細胞より抽出し、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離可能である。
次いで、分離した全細胞タンパク質を、膜(例えばニトロセルロース)に移すことが可能であり、膜と共に抗体調製物をインキュベートする。非特異的に結合した抗体を取り除くために、膜を洗浄した後、特異的に結合した抗体の存在を、アルカリホスファターゼのようなポリペプチドに連結した、適切な第二抗体(例えば抗マウス抗体)を用いて検出可能であり、それは、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウムの使用が、結果として、免疫−局在化アルカリホスファターゼによる、密集した青色化合物の産生につながるからである。
免疫原として利用するのに適切な、本質的に純粋なポリペプチドを、トランスフェクトした細胞、形質導入した細胞または野生型細胞より得ることが可能である。最終調製物中のポリペプチド濃度を、例えば、Amiconフィルター器具上の濃縮によって、ミリリットルあたり数マイクログラムのレベルに適合可能である。さらに、大きさにして、全長ポリペプチドから、9アミノ酸残基を持つポリペプチドまでの範囲のポリペプチドを、免疫原として利用可能である。そのようなポリペプチドを、細胞培養中で産生可能であり、標準の方法を用いて化学的に合成可能であり、または、大きなポリペプチドを、精製可能であるより小さなポリペプチドに開裂することによって得ることが可能である。長さにして、わずか9アミノ酸残基を持つポリペプチドは、MHCクラスIまたはMHCクラスII分子のような、主要組織適合性複合体(Major Histocompatibility Complex(MHC))分子に関する免疫系に提示したときに、免疫原性である。したがって、本明細書で開示した任意のアミノ酸配列の、少なくとも9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、900、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350またはそれ以上の連続アミノ酸残基を有するポリペプチドを、抗体を産生するための免疫原として利用可能である。
本明細書で開示された任意のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を、Kohler&Milstein(Nature 256:495−7,1975)の古典的な方法、またはその改変方法にしたがって、齧歯類ハイブリドーマより調製可能である。
本明細書で開示された任意のポリペプチドの異種エピトープに対する抗体を含む、ポリクローナル抗血清を、改変されないか、または免疫原性を増強するために改変可能である、ポリペプチド(またはその断片)で、好適な動物を免疫化することによって調製可能である。ウサギに対する効果的な免疫化プロトコールが、Vaitukaitis他(J.Clin.Endorinol.Metab.33:988−91,1971)にて見ることができる。
抗体断片を、全抗体の代わりに使用可能であり、原核生物宿主細胞に簡単に発現可能である。モノクローナル抗体の免疫学的に効果的な部分を作製および使用する方法はまた、「抗体断片(antibody fragments)」として呼ばれ、よく知られており、Better & Horowitz(Methods Enzymol.178:476−96,1989)、Glockshuber他(Biochemistry 29:1362−7,1990)、米国特許第5,648,237号明細書(「機能的抗体断片の発現(Expression of Functional Antibody Fragments)」、米国特許第4,946,778号明細書(「単一ポリペプチド鎖結合分子(Single Polypeptide Chain Binding Molecules)」、米国特許第5,455,030号明細書(「単一鎖ポリペプチド結合分子を用いる免疫治療(Immunotherapy Using Single Chain Polypeptide Binding Molecules)」およびそれらに引用されている参考文献で記述されているものが含まれる。
形質導入した:「形質導入した(transformed)」細胞は、例えば、分子生物学的技術によって、核酸分子が導入された細胞である。形質導入は、限定はしないが、ウイルスベクターでのトランスフェクション、接合、プラスミドベクターでのトランスフォーメーション、および電気泳動による裸DNAの導入、リポフェクションおよび粒子ガン促進を含む、核酸分子を細胞内に導入可能である全ての技術を含む。
変異体、断片または融合ポリペプチド:開示されたポリペプチドには、その変異体、断片および融合物が含まれる。ポリペプチド(例えば配列番号12)、融合ポリペプチド、またはポリペプチドの断片または変異体をコードするDNA配列(例えば配列番号11)を、遺伝子工学的に改変して、真核細胞、細菌、昆虫、および/または植物中でポリペプチドを発現可能にすることができる。発現を得るために、DNA断片配列を変更し、他の調節配列に作動可能に連結可能である。調節配列およびポリペプチド−コード配列を含む、最終産物が、ベクターと呼ばれる。このベクターを、真核生物、細菌、昆虫および/または植物細胞内に導入可能である。一旦細胞に入ったならば、ベクターが、ポリペプチドを産生可能である。
融合ポリペプチドには、ポリペプチドの望む活性(例えば、トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸に変換する能力)を阻害しない他のアミノ酸配列に連結した、芳香族アミノトランスフェラーゼ(例えば、配列番号12)のような、ポリペプチドが含まれ得る。1つの例にて、他のアミノ酸配列は、長さにして、約10、12、15、20、25、30または50アミノ酸以上ではない。
当業者は、DNA配列が、コードされたポリペプチドの生物学的活性に影響を与えることなしに、多数の方法で変更可能であることを理解するであろう。例えば、PCRを利用して、ポリペプチドをコードするDNA配列中に、変異体を産生可能である。そのような変異体は、ポリペプチドを発現するために使用した宿主細胞中の、コドン参照に関して最適化された変異体、または発現を促進する他の配列変化であり得る。
ベクター:細胞内に導入され、したがって形質導入細胞を産生する核酸分子。ベクターには、複製の開始点のような、細胞内で複製することを許容する核酸配列が含まれ得る。ベクターにはまた、1つ以上の選別マーカー遺伝子および当技術分野で公知の他の遺伝的要素が含まれ得る。
生合成経路の概説
図1〜3および11〜13で示したように、多くの生合成経路を使用して、モナチンまたはインドール−3−ピルビン酸またはMPのような、その中間体を産生可能である。各基質(例えば、グルコース、トリプトファン、インドール−3−乳酸、インドール−3−ピルビン酸、およびMP)の、各産物(例えば、トリプトファン、インドール−3−ピルビン酸、MPおよびモナチン)への変換のために、いくつかの異なるポリペプチドを使用可能である。さらに、これらの反応は、非酵素化学的反応を含むインビトロ反応のような、インビボ、インビトロで、またはインビボ反応およびインビトロ反応の組み合わせを介して、実施可能である。したがって、図1〜3および11〜13は、例示的であり、望む産物を得るために使用可能である多数の異なる経路を示している。
グルコースからトリプトファン
多くの有機体が、グルコースからトリプトファンを合成可能である。グルコースおよび/またはトリプトファンから、モナチン、MPおよび/またはインドール−3−ピルビン酸を産生するために必要な遺伝子(類)を含む構造(類)を、そのような有機体内にクローン化可能である。本明細書で、トリプトファンをモナチンに変換可能であることが示される。
他の例において、有機体を、トリプトファンを産生するため、またはトリプトファンを過剰産生するために、公知のポリペプチドを用いて、遺伝子工学的に改変可能である。例えば、米国特許第4,371,614号明細書は、野生型トリプトファンオペロンを含むプラスミドを形質導入した大腸菌株を記述している。トリプトファンオペロン遺伝子には、ポリペプチドアントラニリル酸シンターゼ成分I(EC4.1.3.27)、アントラニル酸シンターゼ成分II(EC4.1.3.27)、N−(5’−ホスホリボシル)アントラニル酸イソメラーゼ(EC5.3.1.24)/インドール−3−グリセロールリン酸シンターゼ(EC4.1.1.48)、トリプトファンシンターゼ、αサブユニット(EC4.2.1.20)およびトリプトファンシンターゼ、ベータサブユニット(EC4.2.1.20)をコードするトリプトファン生合成遺伝子が含まれ、その全てが、コリスミ酸からのトリプトファンの産生に関与する。
米国特許第4,371,614号明細書にて開示されたトリプトファンの最大タイターは、約230ppmである。同様に、国際特許第WO8701130号は、トリプトファンを産生するように遺伝的に改変した大腸菌を記述しており、L−トリプトファンの発酵産生の増加を議論している。当業者は、グルコースからトリプトファンを産生可能な有機体がまた、同様の結果で、グルコースまたはフルクトース−6−リン酸へ変換され得る他の炭素およびエネルギー供給源を利用可能であることを認識するであろう。例示的な炭素およびエネルギー供給源には、限定はしないが、スクロース、フルクトース、デンプン、セルロース、またはグリセロールが含まれる。
トリプトファン産生の増加
トリプトファン産生が、ほとんどの有機体で制御される。1つの機構は、経路において、特定の酵素のフィードバック阻害を介している。例えば、トリプトファンのレベルを増加させることによって、トリプトファンの産生率が減少可能である。したがって、トリプトファン中間体を介してモナチンを産生するように、遺伝子工学的に改変した宿主細胞を用いる場合、有機体を、トリプトファン濃度に感受性でないとして使用可能である。例えば、種々のトリプトファン類似体による増殖阻害に対して耐性である、カサランサス ロセウス(Catharanthus roseus)株を、他(Schallenberg and Berlin,Z.Naturforsch,34:541−5,1979)で記述されたように、高濃度の5−メチルトリプトファンに繰り返しさらすことによって選別可能である。この株の得られたトリプトファンシンターゼ活性は、遺伝子中の変異のために、産物阻害による影響を受けにくい。
同様の方法を、フィードバック耐性を持つ株に関して選別するために使用可能である。例えば、(大腸菌遺伝的保存センター(E.Coli Genetic Stock Center),W3110tnaA2trpEfbr19(Yanofsky他,J.Bacteriol.,158:1018−1024,1984およびDoolittle and Yanofsky,J.Bacteriol.,95:1253,1968)からの)大腸菌株#7692を、フィードバック耐性aroG DAHP(3−デオキシ−D−アラビノヘプツロソニック 7−リン酸)シンターゼを持つ変異体に関して選別するために、フェニルアラニン類似体類、ベータ−2−チエニルアラニン、m−フルオロ−D,L−フェニルアラニンおよびp−フルオロ−D,L−フェニルアラニン上で増殖させることができる。この大腸菌株#7692は、測定可能な量のトリプトファンを産生可能であり、アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼをコードする核酸のような、外来核酸を挿入するための、開始宿主として利用可能である。他の大腸菌株であるE971(ATCC15491)は、高レベルのDAHPシンターゼ、ならびに、親株よりもより高いレベルのインドールおよびトリプトファンを示している原栄養菌株である(Lim and Mateles,1964 J.Bacteriol.,87:1051−1055)。この株は、フィードバック耐性が、増殖培地中で5−メチルトリプトファン類似体を用いて減少した、アントラニル酸シンターゼ(EC5.3.1.24)変異体を得るために使用可能である。この株はまた、アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼをコードする外来核酸を導入した宿主として利用可能でもある。
トリプトファン産生は、産物阻害に対して感受性が低いポリペプチドを発展させるための、指向進化の利用を介して最適化可能である。例えば、スクリーニングを、培地中にトリプトファンを含まないが、高レベルの代謝不可能トリプトファン類似体を含むプレート上で実施可能である。米国特許第5,756,345号明細書、第4,742,007号明細書および第4,371,614号明細書は、発酵有機体中で、トリプトファン産生性を増加させるために使用する方法を記述している。トリプトファン生合成の最後の段階は、セリンのインドールへの添加である。したがって、セリンの利用可能性は、トリプトファン産生を増強するために増加され得る。
トリプトファン生合成に対する制御点は、酵素DAHPシンターゼである。このポリペプチドの3つのアイソザイムは、以下の遺伝子、aroF、aroGおよびaroHによってコードされ、それぞれ、チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンによってフィードバック阻害可能である。L−チロシンフィードバック阻害DAHPシンターゼは、総酵素活性の約20%に寄与し、L−フェニルアラニンフィードバック阻害DAHPシンターゼは、総酵素活性の80%に寄与し、L−トリプトファン阻害DAHPシンターゼは、総酵素活性に対して、非常にわずかな寄与しか提供しない。酵素がフィードバック耐性である変異体を得ることによって、この制御点が解除される株を提供可能である。一般的に、主要なフィードバック耐性標的は、aroGおよびaroFである。
フィードバック耐性変異体を単離するための1つのアプローチは、化学的または紫外線変異導入を利用し、アミノ酸類似体上で増殖可能である有機体に対して選択することである。フィードバック不感受性aroGは、類似体ベータ−2−チエニルアラニンを用いて得ることが可能である(Duda and Sasvari−Szekely,(1973)Acta.Biochim.Biophys.Acad.Sci.Hung.8(2):81−90)。類似体m−フルオロ−D,L−フェニルアラニンはまた、フィードバック不感受性aroG(Ito他,(1990)Agric.Biol.Chem.,54(3):707−713)、ならびにp−フルオロフェニルアラニン(Hagino and Nakayama,(1974)Agr.Biol.Chem.,38(1):157−161)を産生するために利用可能である。
フィードバック耐性DAHPシンターゼを得るための1つのアプローチは、アミノ酸類似体を使用し、もとの遺伝子が変異された株を作製することである。他のアプローチは、フィードバック耐性酵素をコードする遺伝子をクローン化することであって、異なるプロモーターの利用で、より柔軟性を提供し、転写制御の可能性を減少可能である(Ito他,(1990)Agric.Biol.Chem.,54(3):707−713)。
トリプトファン生合成における他の制御点は、分岐点酵素、アントラニル酸シンターゼであり、大腸菌中のtrpEおよびtrpDによってコードされる2成分タンパク質である。トリプトファンによるフィードバック阻害から放出される変異体は、アミノ酸類似体5−フルオロトリプトファンおよび5−メチルトリプトファンを用いて入手可能である(Shiio他,(1975)Agr.Biol.Chem.,39(3):627−635)。
さらに、トリプトファンによる、アントラニル酸ホスホリボシルトランスフェラーゼおよびトリプトファンシンターゼのフィードバック阻害が、ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)内で起こり得る。しかしながら、阻害のためのこれらの酵素の脱感作が伴い得る(Matsui他,(1987)J.Bacteriol.,169:5330−5332)。そのような変異体は、トリプトファンレベルの上昇を示し得、したがって、モナチンレベルの増加があることが予想される。
細胞は、転写のレベルでの調製を含む、これらが合成するトリプトファンのレベルを制御する他の方法を利用する。コリネバクテリウム・グルタミカムにおいて、DAHPシンターゼが、チロシンによって転写のレベルで制御され、5’調節領域の操作によって、この制御の救済によって、トリプトファン生合成を改善可能である(Shiio,1986、Biotechnology of Amino Acid Production,Aida,K.,Chibita,L.,Nakayama,K.,Takinami,K.and Yamada,H.Eds.Elsevier)。大腸菌において、トリプトファン(trp)オペロンが、80倍変化に対して原因である抑圧と、6〜8倍変化に対する減衰で、抑圧および減衰両方によって、転写レベルにて調節される。抑圧タンパク質である、TrpRポリペプチドの不活性化が、trpオペロンmRNAのレベルを増加可能である。リーダーペプチドが、荷電tRNAtrpのレベルに対して応答する、mRNA二次構造を形成する。5’−制御減衰領域の欠損が、このさらなるレベルの制御を克服することを補助可能である(Yanofsky他,J.Bacteriol.,158:1018−1024,1984)。trp−RNA−結合減衰タンパク質(TRAP)での減衰機構がまた、B.subtilisにて観察され、それをコードする遺伝子のダウン−レギュレーションまたは欠損による減衰の救済によって、宿主有機体中のトリプトファン合成を改善可能である(Babitzke and Gollnick,2001,J.Bacteriol.,183:5795−5802)。あるいは、抗TRAPポリペプチドの発現をアップレギュレート可能である。
トリプトファン産生を、トリプトファン経路でポリペプチドを過剰発現することによって増加可能であり、モナチンレベルを改善可能である。例えば、aroFfbrの、および(シキメートキナーゼをコードする)aroLの、トランスケトラーゼをコードする核酸の過剰発現が、トリプトファン産生を改善可能である。しかしながら、これらの配列の過剰発現は、細胞上、および最小培地中で代謝負担を引きおこし得、細胞は、種々の中間体を排出する。より栄養が豊富な培地を利用して、トリプトファンのレベルを増加可能である(Kim他,2000,J.Microbiol.Biotechnol.,10(6):789−796)。さらに、解除DAHPシンターゼ発現、解除アントラニル酸シンターゼ発現、およびホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする多重コピープラスミドを含む、C.グルタミカム細胞が、43g/Lまでの増加したトリプトファン産生を示し得る(Katsumata and Ikeda,(1993)Bio/Technology,11:921−9250)。
フィードバックおよび/または転写制御の対象である、芳香族アミノ酸経路における他の酵素には、(aroEによってコードされる)シキメートデヒドロゲナーゼおよび(aroK、aroLによってコードされる)シキメートキナーゼI/IIが含まれる。aroE遺伝子の突然変異が、フィードバック耐性酵素を提供可能である。aroKおよびaroLは、チロシンによるネガティブ転写調節対象である。プロモーター領域の遺伝的操作、または調節遺伝子(trpRおよびtyrR)の欠損が、チロシンによる制御を軽減可能である。
フェニルアラニンおよびチロシンは、コリスム酸が、全ての3つの芳香族アミノ酸に対する共通の前駆体であり、トリプトファン代謝と、フェニルアラニン/チロシン代謝の間の分岐点であることから、その生合成が、チロシンより炭素を転用可能である、芳香族アミノ酸である。生合成フェニルアラニンおよびチロシン経路は、コリスム酸の消費を減少させるために欠損または崩壊可能であり、これは、コリスム酸ムターゼ/プレファネートデヒドロゲナーゼをコードするpheAまたはtyrA遺伝子の遺伝的ノックアウトによって達成可能である。コリスム酸ムターゼ酵素は、入手可能なコリスム酸に関して、アントラニル酸シンターゼ(trpDおよびtrpE遺伝子産物)と競合する。芳香族アミノ酸経路に競合する崩壊または欠損の例示株には、大腸菌NRRL B12262(実施例15を参照のこと)、大腸菌NRRL B 12258、大腸菌SR250(Rothman and Kirsch,J Mol Biol.(2003)327,593−603)、C.グルタミカムATCC21847(実施例17を参照のこと)、C.グルタミカムATCC21850、C.グルタミカムATCC21851が含まれる。あるいは、フェニルアラニンおよびチロシン経路の欠損、および培地へのアミノ酸添加を必要とする以外に、trpE遺伝子(または全トリプトファンオペロン)を、クローン化可能であり、アントラニル酸シンターゼが、pheAまたはtyrAと比較して、コリスム酸に対してより高い親和性を持つので、異種プロモーターを用いて過剰発現可能である(Dopheide他,(1972)J.Biol.Chem.,247:4447−4452)。フェニルアラニンおよびチロシンへの炭素フローを減少させる他の方法は、それらの転写制御を改変することである。さらに、トリプトファンのインドールおよびピルビン酸への変換を触媒する酵素である、トリプトファナーゼポリペプチドの発現を減少させることが、トリプトファンの欠損の防止を手助け可能である(Aiba他,Appl.Environ.Microbiol.,1982,43:289−297)。
1つの実施形態において、中心代謝を、モナチン産生を増加させるために、遺伝子工学的に改変可能である。本明細書で使用するように、適切なモナチン産生を得るために、選択した、または得た有機体は、野生型有機体以上に増加した速度で、トリプトファンを産生する能力を持つべきである。トリプトファンが最終産物ではなく、モナチンへの経路における中間体であることを考えると、より高濃度のトリプトファンを蓄積するための能力を持つだけではなく、それへの流速が増加している株を開発することが重要であり得る。多数の戦略を利用して、中心炭素代謝を遺伝子工学的に改変し、炭素を、高レベルのモナチンが産生可能であるように、シキメートおよびコリスム酸経路に伝達可能である。
トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンのような、芳香族化合物の生合成における第一の段階は、DAHPを形成するための、ホスホエノールピルビン酸(PEP)およびエリスロース4−リン酸(E4P)の濃縮である。種々の方法を利用して、各前駆体の利用可能性を増加させ、この第一反応のパフォーマンスを改善可能である。以下の5つの方法が、PEP利用可能性を増加させるために利用可能である、手順の可能性のある例である。
第一に、ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)による、グルコース取り込みを介したPEPの消費を除外可能である。グルコース輸送系の不活性化が、結果として、グルコースネガティブ変異体となり得る。PTS-グルコース+変異体が単離された。これらのいくつかが輸送し、ガラクトースパーミアーゼ、グルコキナーゼおよびATPを介してグルコースをリン酸化し、PEPを消費しない(Flores他,(1996)Nat.Biotechnol.,14:620−623およびChen他,(1997)Biotechnol.Prog.,13:768−775)。グルコースパーミアーゼ系は、グルコースをリン酸化するために、より多量のATPを必要とする。また多量のPEPとなり得る、異なるグルコース輸送およびリン酸化系を、(glfによってコードされた)グルコース促進物、(gdhIVによってコードされた)グルコースデヒドロゲナーゼ、および(glkによってコードされた)グルコン酸キナーゼをコードする遺伝子の添加によって導入可能である(国際特許第WO99/55877号)。この機構によって、グルコン酸6−リン酸を産生可能であり、これは、ペントースリン酸経路中の中間体であり、したがって、本経路における炭素流速を増加可能であり、結果として、高レベルのE4Pとなる。
第二に、PEP消費酵素、PEPカルボキシラーゼ(Ppc)およびピルビン酸キナーゼ類(例えばPykAおよびPykB)を不活性化して、利用可能なPEPのプールを増加可能である(Bongaerts他,(2001)Met.Eng.,3,289−300)。
第三に、PTSまたはピルビン酸キナーゼ類のいずれかで形成されたピルビン酸を、PEPシンターゼ(Pps)の発現を増強することによって、PEPに再び再環状化可能である(Patnaik他,(1995)Biotechnol.Bioeng.,46:361−370、およびYi他,(2002)Biotechnol.Prog.,18:1141−1148)。
第四に、グルコース新生調節を、グルコース新生を増加させ、PEP代謝に関与する種々の酵素の調節に影響を与え、解糖を減少させ、PEPレベルを増加させ得る、csrA遺伝子(炭素保存調節物)を崩壊させることによって、改変可能である(Tatarko他,(2001)Current Microbiol.,43(1):26−32)。
第五に、PEP消費を、グルコースとは違い、細胞への輸送のためのPTS系を回避する、キシロースのような糖を供給することによって減少させることができる。
E4Pの利用可能性を増加させるために、トランスケトラーゼをコードするtktA遺伝子、および/またはトランスアルドラーゼをコードするtalB遺伝子を過剰発現させることが出来る。トランスケトラーゼの発現は、芳香族経路内へ、炭素流速を指向することにおいて、より効果的であり得る(Liao他,(1996)Biotechnol.Bioeng.,52:129−140)。例えば、改変ペントースリン酸経路での、コリネバクテリウム・グルタミカム株を使用して、トリプトファンを産生可能である(KY9218含有pKW9901;Ikeda and Katsumata,Appl.Environ.Microbiol.,1999,65(6):2497−502)。
これらの方法の任意の組み合わせを使用可能である。例えば、これらの改変のいくつかの組み合わせを、大腸菌株に適用可能である。tktAを過剰発現した、PTS-グルコース+、pykA、pykB株において、芳香族経路への炭素流速における、およそ20倍の増加が達成可能である(Gosset他,(1996)J.Ind.Microbiol.,17:47−52)。さらに、これらの方法は、他の改変と組み合わせて、トリプトファン生合成経路で後に発生するボトルネック(例えば、芳香族経路のトリプトファン枝における遺伝子の過剰発現、コリスム酸の消費を避けるpheAおよびtyrA遺伝子の欠損、アントラニル酸の合成を増加させるtrpEおよびtrpDの過剰発現)を減少させ、トリプトファン産生を増加させることが可能である。産生されたトリプトファンは、モナチンのような産物へさらに変換され得るので、細胞内で蓄積する必要はない。
トリプトファンの産生、および続くモナチンの産生は、セリンの産生に導かれる経路での変更によって利益が生じる。セリンは、トリプトファンの産生の最後の段階で必要であり、セリンのインドール−3−グリセロリン酸の反応を含む。この反応は、トリプトファンシンターゼポリペプチドによって触媒される。トリプトファン経路を介した、炭素流速の増加が、結果として、新しい問題発生を伴い、いくつかの反応での不安定さとなり得る。セリンは、別の経路によって産生されるので、その産生速度が、トリプトファンの産生における律速因子となり得る。セリン経路を介した炭素流速は、3−ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ(PDG;Ikeda他,(1994)Biosci.Biotech.Biochem.,58(4):674−678)をコードする、この経路の第一遺伝子の過剰発現によって増加させることが出来る。
ピルビン酸産生の増加
有機体によって産生されたモナチンの量は、宿主有機体によって産生されたピルビン酸の量を増加させることによって増強可能である。モナチンの産生のための1つの経路は、モナチンの4−ケト酸誘導体を形成するための、ピルビン酸とのインドール−3−ピルビン酸の反応に依存する。この反応を先に進めるために、ピルビン酸へ多量の炭素を転換可能である有機体が、モナチンの産生のための宿主として有用である。ピルビン酸過剰産生物を選別可能であり、高濃度の酸に耐性である必要はないが、より多くの炭素をピルビン酸に転換するように、その代謝経路において、解除される。トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)(Wang他,Lett.Appl.Microbiol.,35:338−42,2002)、カンジダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびカンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)(以前はトルロプシス・グラブラータ(Torulopsis glabrata)として知られていた)(Li他,Appl.Microbiol.Biotechnol.,57:451−9,2001)のような特定の酵母が、グルコースからピルビン酸を過剰産生し(50g/Lまで)、本明細書で記述した産物を産生するために使用可能である。
これらの異なる株のチアミン栄養要求株は、ピルビン酸の酸化脱炭素化が、チアミン依存ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)の活性の減少によって弱まるので、チアミン制限下でピルビン酸を蓄積する。リポ酸がPDHの共因子である。そのようにして、大腸菌株W1485lip2(ATCC25645;Kawasaki他,J.Ferment.Bioeng.,82:604−6、1996)のような、リポ酸栄養要求株は、有意な程度まで(>25g/L)ピルビン酸を蓄積可能である(Yokota他,Appl.Microbiol.Biotechnol.,41:638−643,1994)。ピルビン酸産生の速度および量は、F1−ATPアーゼ欠損遺伝子を、W1485lip2株内に導入することによって、さらに増加可能である。この変異は結果として、エネルギー産生の細胞欠損となり、解糖を介した炭素流速の増加によって埋め合わされる傾向にあり、したがって、より多量のピルビン酸が産生される(Yokota他,J.Ferment.Bioeng.,83:132−138,1997)。二重変異株を利用して、トリプトファン(Kawasaki他,1996、上記)、ロイシンおよびバリン(米国特許第5,888,783号明細書および第6,214,591号明細書)を含む、種々のアミノ酸を過剰産生する、宿主細胞を産生可能である。
ピルビン酸−デヒドロゲナーゼ複合体中の変異に加えて、ピルビン酸産生におけるさらなる改善を、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ピルビン酸フェレドキシン−オキシドレダクターゼ、ピルビン酸フラボドキシンオキシドレダクターゼ、ピルビン酸−ホルミエートリアーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、および/またはピルビン酸オキシダーゼの発現を削除すること、または減少させることによって実施可能である。例えば、国際特許第WO03/000913号を参照のこと。
ピルビン酸過剰産生株におけるトリプトファナーゼ遺伝子の過剰発現を、インドールからトリプトファンを産生するために使用可能である(Kawasaki他,1996、上記)。ピルビン酸の過剰産生は、トリプトファンの産生を改善可能であり、また、モナチン前駆体の形成に関して、多量の基質レベル(ピルビン酸およびインドール−3−ピルビン酸の両方)を提供する。あるいは、トリプトファナーゼ遺伝子を使用する場合、過剰なアンモニアの存在下、ピルビン酸およびインドール両方を同時に供給することが可能である。界面活性剤を、インドールの可溶性を増加させるために利用可能であり、またはインドールを、毒性および沈殿を最小化するために、連続して供給可能である。
トリプトファンからインドール−3−ピルビン酸
種々のポリペプチドを利用して、トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸に変換可能である。例示的なポリペプチドには、限定はしないが、酵素種類(EC)2.6.1.27、1.4.1.19、1.4.99.1、2.6.1.28、1.4.3.2、1.4.3.3、2.6.1.5、2.6.1.−、2.6.1.1および2.6.1.21のメンバーが含まれる。これらの種類には、限定はしないが、L−トリプトファンおよび2−オキソグルタル酸を、インドール−3−ピルビン酸およびL−グルタミン酸に変換する、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(また、L−フェニルアラニン−2−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ、トリプトファントランスアミナーゼ、5−ヒドロキシトリプトファン−ケトグルタル酸トランスアミナーゼ、ヒドロキシトリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファントランスアミナーゼ、およびL−トリプトファン:2−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼとも呼ばれる)、D−トリプトファンおよび2−オキソ酸を、インドール−3−ピルビン酸およびアミノ酸に変換する、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ、L−トリプトファンおよびNAD(P)を、インドール−3−ピルビン酸およびNH3およびNAD(P)Hに変換する、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(またNAD(P)−L−トリプトファンデヒドロゲナーゼ、L−トリプトファンデヒドロゲナーゼ、L−Trp−デヒドロゲナーゼ、TDHおよびL−トリプトファン:NAD(P)オキシドレダクターゼ(脱アミノ化)とも呼ばれる)、D−アミノ酸およびFADを、インドール−3−ピルビン酸およびNH3およびFADH2に変換する、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ、L−トリプトファンおよびフェニルピルビン酸を、インドール−3−ピルビン酸およびL−フェニルアラニンに変換する、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ(またL−トリプトファン−α−ケトイソカプロン酸アミノトランスフェラーゼおよびL−トリプトファン:フェニルピルビン酸アミノトランスフェラーゼとも呼ばれる)、L−アミノ酸およびH2OおよびO2を、2−オキソ酸およびNH3およびH2O2に変換する、L−アミノ酸オキシダーゼ(また、オフィオ−アミノ−酸オキシダーゼおよびL−アミノ−酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱アミノ化)とも呼ばれる)、D−アミノ酸およびH2OおよびO2を、2−オキソ酸およびNH3およびH2O2に変換する、D−アミノ酸オキシダーゼ(また、オフィオ−アミノ−酸オキシダーゼおよびD−アミノ−酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱アミノ化)とも呼ばれる)、L−トリプトファンおよびH2OとO2を、インドール−3−ピルビン酸およびNH3とH2O2に変換する、トリプトファンオキシダーゼと呼ばれるポリペプチドが含まれる。これらの種類にはまた、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、D−アミノ酸(またはD−アラニン)アミノトランスフェラーゼ、および多重アミノトランスフェラーゼ活性を持つ広範囲(多重基質)アミノトランスフェラーゼが含まれ、そのいくつかが、トリプトファンおよび2−オキソ酸を、インドール−3−ピルビン酸およびアミノ酸に変換可能である。
そのような活性を持つアミノトランスフェラーゼ種類の11のメンバーが、以下実施例1で記述されており、配列番号11および12で示した新規のアミノトランスフェラーゼが含まれる。したがって、本開示物は、それぞれ配列番号11および12で表されている配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を持つ、単離した核酸配列およびアミノ酸を提供する。また、アミノトランスフェラーゼ活性を持っているか、またはアミノトランスフェラーゼ活性を維持しているポリペプチドをコードする、配列番号11および12で表されている配列の断片および融合物が、本開示物に含まれている。例示的な断片には、限定はしないが、配列番号11の、少なくとも10、12、15、20、25、50、100、200、500または1000連続ヌクレオチド、または配列番号12の、少なくとも6、10、15、20、25、50、75、100、200、300または350連続アミノ酸が含まれる。開示された配列(およびその変異体、断片および融合物)は、ベクターの一部であり得る。ベクターを、宿主細胞を形質導入するために使用可能であり、それによって、トリプトファンからインドール−3−ピルビン酸を産生可能な組換え体細胞を産生し、いくつかの例にて、さらにMPおよび/またはモナチンを産生可能である。
L−アミノ酸オキシダーゼ(1.4.3.2)が公知であり、配列が、ビペラ・レベチン(Vipera lebetine)(spP81375)、オフィオファガス・ハンナ(Ophiophagus hannah)(spP81383)、アグキストロドン・ロードストーマ(Agkistrodon rhodostoma)(spP81382)、クロタラス・アトロックス(Crotalus atrox)(spP56742)、ブルクホルデリア・セパチア(Burkholderia cepacia)、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter cresentus)、クラミドモナス・レインハルディティ(Chlamydomonas reinhardtii)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)およびロードコッカスstr.(Rhodococcus str.)のような、種々の異なる供給源より単離可能である。さらに、トリプトファンオキシダーゼ類が、文献にて記述されており、例えば、コプリナスsp.(Coprinus sp.)SF−1、クラブ根病を持つ白菜、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)および哺乳動物肝臓より単離可能である。
トリプトファンデヒドロゲナーゼが公知であり、例えば、ほうれん草、ピスム・サチバム(Pisum sativum)、プロソピス・ジュリフロラ(Prosopis juliflora)、エンドウ豆、メスキート、小麦、トウモロコシ、トマト、たばこ、クロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)、およびラクトバチリ(Lactobacilli)から単離可能である。多くのD−アミノ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子配列が公知である。
図11〜13で示したように、トリプトファンオキシダーゼのようなアミノ酸オキシダーゼを利用して、トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸に変換する場合、カタラーゼを、過酸化水素の存在を減少させる、または削除するために加えることが可能である。
インドール−3−乳酸からインドール−3−ピルビン酸
インドール−3−乳酸をインドール−3−ピルビン酸に変換する反応は、ポリペプチドの1.1.1.110,1.1.1.27、1.1.1.28、1.1.2.3、1.1.1.222、1.1.1.237、1.1.3.−、または1.1.1.111クラスのメンバーのような、種々のポリペプチドによって触媒され得る。ポリペプチドの1.1.1.110クラスには、インドール乳酸デヒドロゲナーゼ(またインドール乳酸:NAD+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。1.1.1.27、1.1.1.28および1.1.2.3クラスには、乳酸塩デヒドロゲナーゼ(また乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸塩:NAD+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。1.1.1.222クラスには、(R)−4−ヒドロキシフェニル乳酸デヒドロゲナーゼ(またD−芳香族乳酸デヒドロゲナーゼ、R−芳香族乳酸デヒドロゲナーゼ、およびR−3−(4−ヒドロキシフェニル)乳酸:NAD(P)+2−オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれ、および1.1.1.237クラスには3−(4−ヒドロキシフェニルピルビン酸)レダクターゼ(また、ヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼおよび4−ヒドロキシフェニル乳酸:NAD+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。1.1.3.−クラスには、乳酸オキシダーゼが含まれ、1.1.1.111クラスには、(3−イミダゾール−5−イル)乳酸デヒドロゲナーゼ(また、(S)−3−(イミダゾール−5−イル)乳酸:NAD(P)+オキシドレダクターゼとも呼ばれる)が含まれる。これらのクラス中のポリペプチドのいくつかによって、インドール−3−乳酸からの、インドール−3−ピルビン酸の産生が許容される可能性がある。
化学反応もまた、インドール−3−乳酸を、インドール−3−ピルビン酸へ変換するために使用可能である。そのような化学反応は、例えば、B2触媒(China Chemical Reporter,Vol.13,no.28,pg.18(1),2002)、希釈過塩素酸過マンガン酸、または金属触媒存在下での過酸化水素を用いる空気酸化のような、いくつかの方法を用いて実施可能である酸化段階を含む。
インドール−3−ピルビン酸から、2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸(MP)
いくつかの公知のポリペプチドを、インドール−3−ピルビン酸+ピルビン酸のような三炭素供給源をMPに変換するために使用可能である。例示的なポリペプチドクラスには、4.1.3.−、4.1.3.16、4.1.3.17および4.1.2.−が含まれる。これらのクラスには、2つのカルボン酸基質の濃縮を触媒するアルドースのような、炭素−炭素シンターゼ/リアーゼが含まれる。ポリペプチドクラスEC4.1.3.−は、求核試薬として、(インドール−3−ピルビン酸のような)オキソ−酸基質を用いて、炭素−炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼであり、EC4.1.2.−は、求核試薬として、(ベンズアルデヒドのような)アルデヒド基質を用いる、炭素−炭素結合を形成する、シンターゼ/リアーゼである。
例えば、欧州特許第1045−029号で記述されたポリペプチド(EC4.1.3.16、4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシレート−リアーゼ、また4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ、2−オキソ−4−ヒドロキシグルタル酸アルドラーゼ、またはKHGアルドラーゼとも呼ばれる)は、グルコキシル酸およびピルビン酸を、4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸に変換し、ポリペプチド4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(EC4.1.3.17、また4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸−リアーゼまたはProAアルドラーゼとも呼ばれる)は、2つのピルビン酸のような2つのケト−酸を、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸に濃縮する。これらのリアーゼを利用する反応が本明細書で記述されている。
図1〜2および11〜13は、3−炭素(C3)分子が、インドール−3−ピルビン酸と結合する、これらの反応の略図的ダイアグラムを示している。EC4.1.2.−および4.1.3.−の多くのメンバー、とりわけPLP−利用ポリペプチドが、セリン、システインおよびアラニンのようなアミノ酸であるC3分子、またはその誘導体を利用可能である。EC4.1.2.−および4.1.3.−の代表によって触媒されるアルドール濃縮は、ピルビン酸またはピルビン酸の誘導体への本経路の3つの炭素分子を必要とする。しかしながら、他の化合物を、C3炭素供給源として利用可能であり、ピルビン酸に変換可能である。アラニンを、多くの上述した物を含む、多くのPLP−利用トランスアミナーゼによってトランスアミン化して、ピルビン酸を産生可能である。ピルビン酸およびアンモニアを、L−セリン、L−システイン、およびO−メチル−L−セリン、O−ベンジル−L−セリン、S−メチルシステイン、S−ベンジルシステイン、S−アルキル−L−システイン、O−アシル−L−セリンおよび3−クロロ−L−アラニンのような、十分な脱離基を持つセリンおよびシステインの誘導体の、(トリプトファナーゼまたはベータ−チロシナーゼによって触媒されるもののような)ベータ−脱離反応によって得ることが出来る。アスパラギン酸を、トリプトファナーゼ(EC4.1.99.1)および/またはβ−チロシナーゼ(EC4.1.99.2、また、チロシン−フェノールリアーゼとも呼ばれる)によって触媒されるもののようなPLP−仲介β−リアーゼ反応において、ピルビン酸の供給源として利用可能である。ベータ−リアーゼ反応の速度を、Mouratou (J.Biol.Chem 274:1320−5,1999)によって記述されたように、および実施例5で記述したように、(4.1.99.1−2)ポリペプチド上で、部位特異的変異導入を実施することによって増加可能である。これらの改変によって、ポリペプチドが、ジカルボン酸アミノ酸基質類を許容する。乳酸をまた、ピルビン酸の供給源として利用可能であり、乳酸デヒドロゲナーゼ、酸化共因子または乳酸オキシダーゼおよび酸素の添加によって、ピルビン酸に酸化される。これらの反応の例が、以下に記述されている。例えば、図2および図11〜13で示したように、ピルビン酸をC3分子として利用する場合に、ProAアルドラーゼを、インドール−3−ピルビン酸と接触させることが出来る。
MPからモナチン
MPのモナチンへの変換は、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ類(2.6.1.27)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ類(1.4.1.19)、D−アミノ酸デヒドロゲナーゼ類(1.4.99.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ類(1.4.1.2〜4)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.20)、トリプトファン−フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ類(2.6.1.28)、または、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(EC2.6.1.1)、チロシン(芳香族)アミノトランスフェラーゼ(2.6.1.5)、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼまたはD−アラニン(2.6.1.21)アミノトランスフェラーゼのような、アミノトランスフェラーゼファミリー(2.6.1.−)のより一般的なメンバーの、1つ以上によって触媒可能である(図2)。配列番号11および12で示した新規クラスメンバーを含む、アミノトランスフェラーゼクラスの11のメンバーを以下に記述しており(実施例1)、アミノトランスフェラーゼおよびデヒドロゲナーゼ酵素の活性を示している反応を、実施例4で提供している。
本反応はまた、化学的反応を用いて実施可能である。ケト酸(MP)のアミン化は、アンモニアおよびシアノボロハイドライドナトリウムを用いる、還元アミン化によって実施される。
図11〜13は、MPをモナチンに変換するために使用可能である、さらなるポリペプチド類を示しており、同時に、インドール−3−ピルビン酸またはトリプトファンからのモナチンの収率の増加を提供する。例えば、アスパラギン酸をアミノドナーとして利用する場合、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを、アスパラギン酸をオキサロ酢酸に変換するために使用可能である(図11)。オキサロ酢酸を、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼのようなデカルボキシラーゼによって、ピルビン酸および二酸化炭素に変換する(図11)。さらに、リシンをアミノドナーとして利用する場合、リシンイプシロンアミノトランスフェラーゼを、リシンをアリシンに変換するために利用可能である。(図12)。アリシンは自発的に、1−ピペリジン6−カルボン酸に変換される(図12)。還元アミン化反応を触媒可能なポリペプチド(例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)を、MPをモナチンに変換するために使用する場合、ギ酸デヒドロゲナーゼのような、NAD(P)Hをリサイクルし、および/または揮発性産物を産生可能なポリペプチド(図13)を利用可能である。
モナチン産生を増加させるためのさらなる方法
モナチン産生を増加させるために使用可能な遺伝的に改変した株の他の例には、以下が含まれる。
1)大腸菌AGX1757を、W3110(プラスミドpSC101+trplとtrpAE1、trpR、tnaA)から単離可能である。NTG変異導入を実施可能であり、6−フルオロトリプトファンまたは5−メチルトリプトファン耐性を選別する。Pluronic L−61の添加を使用して、産生性を増加させるために、培地中で、トリプトファンまたはモナチンを結晶化可能である。
2)Px−115−97から由来したC.グルタミカムKY9225は、フェニルアラニンおよびチロシン二重栄養要求性を示し、トリプトファン阻害に対するアントラニル酸シンターゼ耐性を持つ。
3)ブレビバクテリウム・ラクトフェルメンタム(Brevibacterium lactofermentum)1041trpEを変異導入し、トリプトファンフィードバック阻害に対して脱感作させた。遺伝子が、アルギニンによって置換されたセリン残基を持つことがわかった。推定アテニュエーター中の末端構造でのグアニンのアデニンへの変異が、同様に転写制御を軽減することがわかった(Matsui他,(1987)J.Bacteriology,16:5330−5332)。
前駆体の利用可能性を最適化し、モナチン産生を最大化することにおいて、有用であり得るさらなる改変には、限定はしないが、(1)モナチン取り込みを促進可能であるポリペプチド類をコードする遺伝子を欠損させること、(2)経路を競合することに関与するポリペプチド類をコードする遺伝子を欠損させること、またはダウンレギュレートすること、(3)アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼポリペプチド発現をアップレギュレートすること、(4)正しくない形態のモナチンを産生する、アミノトランスフェラーゼポリペプチド類をコードする遺伝子を欠損させること、および(5)PLP利用可能性を増加させること、が含まれる。モナチン取り込みを促進可能であるポリペプチド類をコードする遺伝子には、バシルス・サブチリス(Bacillus subtilis)アスパラギン酸取り込みトランスポーター(YveA;Larca他,2003,J.Bacteriol.,185(10):3218−22)、Glt−1 L−グルタミン酸/L−アスパラギン酸/D−アスパラギン酸取り込みポリペプチド(シンポーター類)、およびC.グルタミカム(C.glutamicum)gluA、B、C、Dグルタミン酸取り込み遺伝子が含まれ得る。競合経路に関与するポリペプチドをコードする遺伝子は、インドールが、トリプトファン産生のための基質として利用出来る場合を除いて、(トリプトファナーゼポリペプチドをコードする)tnaA遺伝子であり得る。
生合成経路の設計におけるさらなる考慮
インドール−3−ピルビン酸、MP、および/またはモナチンを産生するためにどのポリペプチドを使用するか、に依存して、共因子、基質および/またはさらなるポリペプチドを、産物形成を増強するために、産生細胞に提供可能である。さらに、遺伝的改変を、インドール−3−ピルビン酸、MP、および/またはモナチンのような産物の産生を増強するために設計可能である。同様に、モナチン産生のために利用した宿主細胞を最適化可能である。
本明細書で記述するように、大腸菌または(クレブシエラ(Klebsiella)、パントエア(Pantoea)およびエルウィニア(Erwinia)株のような)腸内細菌科、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム株、バシルス株およびサッカロマイセス株のような任意の有機体を、インドール−3−ピルビン酸、MP、および/またはモナチンのような産物を産生するために使用可能である。例えば、(多くの問題のある副産物となる)アントラニル酸からトリプトファンを過剰産生するために遺伝子工学的に改変した、バシルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)およびB.サブチリス(B.subtilis)を、効果的に産物を産生するために改変可能である。さらに、グルタミン酸を産生する、そしてリシンのような他のアミノ酸を効果的に産生するように改変した、野生型ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)株が存在する。T.Oka,「アミノ酸、産生工程(Amino Acids,Production Processes)」、Encyclopedia of Bioprocess Technology:Fermentation,Biocatalysis,and Bioseparation.M.C.Flickinger and S.W.Drew,eds.John Wiley & Sons,Inc.New York,pp.89−100。さらに、本明細書で記述した有機体を、(1)低費用の基質上で増殖可能であるように、好ましい増殖動力学を持つ、(2)モナチンのような産物を分泌する、および/または(3)トリプトファンおよびピルビン酸のような、モナチンに対する高レベルの前駆体を産生する、ために選別または設計可能である。そのような有機体は、簡単に入手可能な遺伝的ツールで、および/または食物成分を産生することにおいて安全な利用の歴史を持つ、よく特性化された種からのものであり得る。
1.過酸化水素の除去
過酸化水素(H2O2)は、産生されたならば、産生細胞に対して毒性であり得、産生されたポリペプチドまたは産物(例えば中間体)に障害を与え得る産物である。以上で記述したL−アミノ酸オキシダーゼは、産物としてH2O2を産生する。したがって、L−アミノ酸オキシダーゼを利用する場合、細胞または産物に対する可能性のある障害を減少するために、得られたH2O2を除去するか、またはそのレベルを減少させ得る。
カタラーゼを、細胞内のH2O2のレベルを減少するために利用可能である(図11〜13)。産生細胞は、カタラーゼ(EC1.11.1.6)をコードする遺伝子またはcDNA配列を発現可能であり、水および酸素気体への過酸化水素の分解を触媒する。例えば、カタラーゼを、産生細胞内にトランスフェクトしたベクターから発現させることが出来る。利用可能なカタラーゼの例には、制限はしないが、tr|Q9EV50(スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus))、tr|Q9KBE8(バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans))、tr|Q9URJ7(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、tr|P77948(ストレプトマイセス・コエリカラ(Streptomyces coelicolor))、tr|Q9RBJ5(キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris))(SwissPort Accession Nos.)が含まれる。L−アミノ酸オキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼまたはトリプトファンオキシダーゼを利用する生体触媒反応物もまた、カタラーゼポリペプチドを含み得る。
2.ピリドキサール−5’−リン酸(PLP)利用可能性の調節
図1で示すように、PLPを、1つ以上の、本明細書で記述した生合成段階にて利用可能である。PLPが反応の総効率における制限にならないように、PLPの濃度を加えることが可能である。
ビタミンB6(PLPの前駆体)のための生合成経路が、大腸菌において、完全に研究されてきており、タンパク質のいくつかが結晶化されてきた(Laber他,FEBS Letters,449:45−8,1999)。2つの遺伝子(epdまたはgapBおよびserC)が、他の代謝経路で必要であり、3つの遺伝子(pdxA、pdxBおよびpdxJ)が、ピリドキサールリン酸生合成に対して固有である。大腸菌経路における開始物質の1つが、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸(DXP)である。この前駆体の、共通2および3炭素中心代謝からの合成は、ポリペプチド1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸シンターゼ(DXS)によって触媒される。他の前駆体は、4−炭素糖、D−エリスロース4−リン酸から形成されるチロシン誘導体である。ホスホ−4−ヒドロキシル−Lスレオニン(HTP)を変換するために必要な遺伝子は、epd、pdxBおよびserCである。PLPの形成のための最後の反応は、複合分子内濃縮およびDXPおよびHTP間の閉環反応であり、pdxAおよびpdxJの遺伝子産生によって触媒される。
PLPが、モナチンを産生するための、発酵の間の制限栄養になる場合、産生宿主細胞における、経路遺伝子の1つ以上の発現の増加が、モナチンの収率を増加させるために利用可能である。宿主有機体は、その本来の経路遺伝子の多数のコピー、または有機体ゲノム内に組み入れられ得る非天然の経路遺伝子のコピーを含み得る。さらに、復旧経路遺伝子の多数のコピーを、宿主有機体内にクローン化可能である。
全ての有機体で保存される、1つの復旧経路は、活性PLP形態に対して、ビタミンB6の種々の誘導体をリサイクルする。この経路に関連するポリペプチドは、pdxKキナーゼ、pdxHオキシダーゼおよびpdxYキナーゼである。1つ以上のこれらの遺伝子の過剰発現が、PLP利用可能性を増加可能である。
ビタミンB6のレベルは、宿主有機体中の、天然の生合成経路遺伝子の代謝調節の削除または抑制によって増加させることができる。PLPは、バクテリウム・フラボバクテリウムsp.(Flavobacterium sp.)株238−7中の、前駆体スレオニン誘導体の生合成に関与するポリペプチドを抑制する。この細菌株、代謝対照の解放は、ピリドキサール誘導体を過剰産生し、20mg/LのPLPまで分泌する。同様の様式でモナチンを産生する宿主有機体の遺伝的操作によって、生合成経路遺伝子の過剰発現なしで、産生PLPを増加させる可能性がある。
3.アンモニア利用
トリプトファナーゼ反応を、アンモニアをより利用可能にすることによって、または水を除去することによって、合成の方向(インドールからのトリプトファンの産生)に誘導可能である。グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって触媒されるもののような、還元アミン化反応もまた、過剰のアンモニアによって進めることが可能である。
アンモニアを、炭酸またはリン酸緩衝系中で、炭酸アンモニアまたはリン酸アンモニウム塩として利用可能にできる。アンモニアをまた、ピルビン酸アンモニアまたはギ酸アンモニアとして提供可能である。あるいは、アンモニアを、グルタミン酸デヒドロゲナーゼまたはトリプトファンデヒドロゲナーゼのような、アンモニアを産生する反応と連結する場合に供給可能である。アンモニアを、EC4.1.99.−の天然の基質(チロシンまたはトリプトファン)の添加によって産生可能であり、フェノールまたはインドール、ピルビン酸およびNH3に加水分解され得る。これによってまた、酵素にその好ましい基質を加水分解させることにより、正常の等価量において、合成産物の収率を増加させる。
4.産物および副産物の除去
反応が、グルタミン酸を産生し、共基質2−オキソグルタル酸(α−ケトグルタル酸)を必要とするので、トリプトファンアミノトランスフェラーゼを介した、トリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換が、インドール−3−ピルビン酸の産生速度に悪影響を与え得る。グルタミン酸が、アミノトランスフェラーゼの阻害を引き起こし得、この反応は多量の共基質を消費し得る。さらに、高濃度のグルタミン酸が、下流分離工程に対して不利益であり得る。
ポリペプチドグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)は、グルタミン酸を2−オキソグルタル酸に変換し、それによって、トリプトファンアミノトランスフェラーゼによって触媒された反応中で、共基質をリサイクルする。GLDHはまた、好気性条件下、細胞(ATP)のためのエネルギーを産生するために利用可能である還元等価物(NADHまたはNADPH)も産生する。GLDHによるグルタミン酸の利用がまた、副産物形成を減少させる。さらに、この反応はアンモニアを産生し、細胞に対する窒素供給源として、または図1で示した最終段階のための、還元アミン化での基質として利用可能である。したがって、GLDHポリペプチドを過剰発現する産生細胞を利用して、収率を増加させ、培地の費用および/または分離工程を減少させることが出来る。
トリプトファンのモナチンへの経路において、段階3のアミノドナー(例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸)が、適切な酵素クラスからのアミノトランスフェラーゼを利用する場合に、段階1のために必要なアミノアクセプター(例えば2−オキソ−グルタル酸またはオキサロ酢酸)に変換され戻され得る。1つのトランスアミナーゼの基質が、他のトランスアミナーゼの活性を競合的に阻害しない、本経路のための2つの別のトランスアミナーゼの利用が、本経路の効果を増加可能である。
記述した経路における多くの反応が、可逆性であり、したがって、基質と産物間の平衡に達する。経路の収率を、ポリペプチドからの産物の連続的な除去によって増加可能である。例えば、ペルメアーゼまたは他の輸送タンパク質両方を用いる発酵ブロス内へのモナチンの分泌、または基質の付随するリサイクルで、生物触媒反応物ストリームからのモナチンの選択的結晶化が、反応収率を増加させ得る。
さらなる酵素的反応を介して、またはアミノドナー基の置換を介しての副産物の除去が、反応収率を増加させる他の方法である。例えば、副産物は、相変化(例えば最終産物の沈殿)によって、または二酸化炭素のような、揮発性最終産物への自発的な変換によってのいずれかで、逆方向で反応するために利用できないように産生可能である。
5.基質プールの調節
インドールプールを、トリプトファン前駆体の産生を増加させること、および/またはインドール−3−ピルビン酸および/またはトリプトファンを含む異化経路を変更すること、によって調節可能である。例えば、インドール−3−ピルビン酸からの、インドール−3−酢酸の産生を、宿主細胞中、EC4.1.1.74をコードする遺伝子を機能的に欠損させることによって、減少または削除可能である。トリプトファンからのインドールの産生は、宿主細胞中のEC4.1.99.1をコードする遺伝子を機能的に欠損させることによって、減少または削除可能である。あるいは、過剰なインドールを、EC4.1.99.1をコードする多量の遺伝子との組み合わせで、インビトロまたはインビボ工程で、基質として利用可能である(Kawasaki他,J.Ferm.and Bioeng.,82:604−6、1996)。
さらに、D−エリスロース−4−リン酸およびコリスム酸のような、中間体のレベルを増加させるために、遺伝的改変を実施可能である。
6.キラリティーの制御
モナチンの風味プロファイルを、その立体化学(キラリティー)を制御することによって変化可能である。例えば、異なるモナチンの異性体は、異なる食物系については異なる濃度のブレンドで望ましいことがある。キラリティーは、pHおよびポリペプチドの組み合わせを介して制御可能である。
モナチン(以上の番号付けした分子を参照のこと)のC−4位でのラセミ化が、α炭素の脱プロトン化および再プロトン化によって起こり得、それは、pHのシフトによって、または溶液中で、ラセマーゼのような酵素と結合した、または遊離の共因子PLPとの反応によって、起こり得る。微生物中で、pHは、ラセミ化が起こるのに十分なほどシフトする見込みがないが、PLPは豊富である。ポリペプチドでのキラリティーを制御するための方法は、モナチン産生のために利用した生合成経路に依存する。
モナチンが、図2で示した経路を用いて形成される場合、以下が考慮可能である。生物触媒反応において、炭素−2のキラリティーは、インドール−3−ピルビン酸をMPに変換する酵素によって決定され得る。多数の酵素(例えばEC4.1.2.−、4.1.3.−から)は、インドール−3−ピルビン酸をMPに変換可能であり、したがって、望む異性体を形成する酵素が選択可能である。あるいは、インドール−3−ピルビン酸をMPに変換する酵素のエナンチオ特異性を、指向進化の利用を介して改変可能であり、または望む反応を触媒するように、触媒抗体を遺伝子工学的に改変可能である。一旦(酵素的、または化学的濃縮によって)MPが産生されたならば、アミノ基を、本明細書で記述したもののような、トランスアミナーゼを用いて、立体特異的に加えることが可能である。炭素−4のRまたはS配座のいずれかは、どのD−またはL−芳香族酸アミノトランスフェラーゼを利用するかに依存して産生可能である。ほとんどのアミノトランスフェラーゼは、好ましくは、基質のL−異性体と反応するが、しかし、D−トリプトファンアミノトランスフェラーゼが、特定の植物に存在する(Kohiba and Mito,Proceedings of the 8th International Symposium on Vitamin B6 and Carbonyl Catalysis,Osaka,Japan,1990)。さらに、D−アラニンアミノトランスフェラーゼ(2.6.1.21)、D−メチオニン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(2.6.1.41)、および(R)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アミノトランスフェラーゼ(2.6.1.61)と(S)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アミノトランスフェラーゼ(2.6.1.22)両方が同定された。特定のアミノトランスフェラーゼが、好ましく、C2炭素にて、特定の配座を持つ基質と反応する。したがって、MPへの変換が、立体特異的でない場合でも、最終産物の立体化学を、トランスアミナーゼの適切な選別を介して制御可能である。反応が可逆的であるので、未処理MP(望まない異性体)を、その構成物質にリサイクルして戻すことが可能であり、MPのラセミ混合物を再形成可能である。
発酵または全細胞生物触媒産生経路(インビボ)において、S,SまたはR,Sモナチンの産生が、D−アミノトランスフェラーゼと比較して、多量の天然のL−アミノトランスフェラーゼによって、有利に働き得る。R,Rおよび/またはS,Rモナチンが望む立体異性体である場合、AspCおよびTyrBのような、広い特異性および芳香族L−アミノトランスフェラーゼ類が、株SR250(Rothman and Kirsch,J Mol Biol.(2003)327,593−603)にてのように、ノックアウトされるべきであり得る。そうすることにおいて、フェニルアラニンおよびチロシンが、増殖培地中で必要とされ得る。好ましく、トリプトファンのL−異性体と反応する、L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼを、モナチンを産生する経路において、インドール−3−ピルビン酸産生に対して置換可能であり、一方で、好ましく(D−アラニンアミノトランスフェラーゼのような)D−アミノ酸と反応する、D−アミノトランスフェラーゼが、R,RまたはS,Rモナチンの産生を促進するために、野生型有機体中よりも、より多量で存在する必要があることがもっとも適当である。
1つの実施形態において、立体異性体的に過剰のモナチンの混合物が、生合成経路中、および/または細胞中で産生される。「立体異性体的に過剰のモナチン混合物」は、混合物が一つ以上のモナチン立体異性体を含み、混合液中の少なくとも60%のモナチン立体異性体が、R,R、S,S、S,RまたはR,Sのような、特定の立体異性体であることを意味する。他の実施形態において、混合物には、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%以上の特定のモナチン立体異性体が含まれる。「立体異性体的に過剰の」R,Rモナチンは、モナチンが、少なくとも60%のR,Rモナチンを含むことを意味する。「立体異性体的に過剰の」S,Sモナチンは、モナチンが、少なくとも60%のS,Sモナチンを含むことを意味する。他の実施形態において、「立体異性体的に過剰の」モナチンは、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%以上のR,RまたはS,Sモナチンを含む。
他の実施形態において、主にS,SまたはR,Rモナチンは、生合成経路にて、および/または細胞内で産生される。「主に(predominantly)」は、生合成経路および/または細胞内で産生されたモナチン立体異性体のうち、モナチンが、90%以上の特定の立体異性体を含むことを意味する。いくつかの実施形態において、産生されたモナチンは、本質的にR,SまたはS,Rモナチンを含まない。「本質的に含まない(substantially free)」は、生合成経路および/または細胞内で産生されたモナチン立体異性体のうち、モナチン立体異性体が、2%未満の特定の立体異性体を含むことを意味する。さらに、またはあるいは、生合成経路および/または細胞内で産生されたモナチンを記述する際に用いる場合、「本質的に含まない(substantially free)」は、異なる立体異性体(例えば、R,Rモナチン)を産生するために、キラル−特異的酵素(例えばD−アミノ酸デヒドロゲナーゼまたはD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ)および/またはキラル−特異的基質(例えば、R−立体配座での炭素を持つもの)を含む、生合成経路において、副産物として産生される立体異性体(例えばR,Sモナチン)の量をも意味する。
7.基質活性化
ホスホエノールピルビン酸(PEP)のような、リン酸化基質を、本明細書で開示した反応で利用可能である。リン酸化基質は、よりエネルギー的に好ましく、したがって、反応速度および/または収率を増加させるために利用可能である。アルドール濃縮において、リン酸基の添加が、求核基質のエノール互変異性体を安定化し、より反応性にする。他の反応において、リン酸化基質が、よりよい脱離基を提供可能である。同様に、基質を、CoA誘導体またはピロリン酸誘導体への変換によって活性化可能である。
8.産物分泌
微生物は、アミノ酸を産生可能である。例えば、コリネバクテリアおよびブレビバクテリアは、グルタミン酸、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、スレオニン、リシン、メチオニン、バリン、イソロイシンおよびロイシンのような、種々のアミノ酸を産生可能であり、一方、パントエア(Pantoea)、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、およびセラチア・リクエファシエンス(Serratia liquefacience)は、グルタミン酸を産生可能である。さらに、微生物は、有機酸およびアミノ酸を分泌可能である。例えば、バシルスおよびラクトバシルス有機体は、乳酸および酢酸のような有機酸を分泌可能であり、コリネバクテリアおよびブレビバクテリア有機体は、全てではないが、産生する多くのアミノ酸を分泌可能である。
アミノ酸を分泌可能な有機体は通常、2つの理由の内1つのために実施する。(1)ポリペプチド類を炭素およびエネルギー供給源として利用するが、特定のアミノ酸を異化することが出来ない、または(2)荷電アミノ酸が、pHまたは浸透圧を制御するために、ストレス応答として分泌され得る。例えば、グルタミン酸は、野生型コリネバクテリアによって構成的に排泄されない。オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性のレベル、特定のエクスポーターの存在、細胞エンベロープの状態、化学的ポテンシャルまたは調節における変化による、取り込み工程の反転、およびストレスのようないくつかの条件が、グルタミン酸の輸出を誘発することに関与する可能性がある。
細胞エンベロープ状態は、培地の組成物および増殖条件によって影響を受け得る。一般的に、ペプチドグリカン(細胞壁およびムレイン)は、輸送のバリアではないが、コリネバクテリアおよびグルタミン酸の場合は例外である。ペニシリン、またはアンピシリンまたはカルバニシリンのような、ペニシリン誘導体の添加が、とりわけコリネバクテリアにて、グルタミン酸流出を助けることがわかっている。ペニシリン、およびアンピシリンおよびカルバニシリンのようなペニシリン誘導体は、トランスペプチダーゼによって触媒される、細胞壁架橋の合成の最終段階を阻害する、ベータ−ラクタム抗生物質である。これらはまた、大腸菌の棒様構造にとって、および分裂の間の壁隔形成のために必要である、ペニシリン結合タンパク質と呼ばれる酵素を阻害する。
細胞膜の流動性が同様に関与し得る。例えば、より飽和された脂肪酸の存在が、流動性および流出を減少させ得る。流動性は、ビオチンを制限すること、および界面活性剤を加えることによって影響を受け得る。温度の上昇、酢酸ドデシルアンモニアの添加、オレイン酸栄養要求性、グリセロール栄養要求株におけるグリセロール欠損、ツィーン60のような界面活性剤の添加、局所麻酔の添加、脂肪酸変異体、リソザイム−感受性変異体の利用、および電気的電位の適用が、細胞膜/壁の浸透性に影響を与え得る。例えば、プロトン原動力が、荷電分子の分泌のために重要であり得、細胞内pHと比較して、培地のpHによって大きく影響を受け得る。
任意の方法を利用して、膜流動性および産物分泌を増加可能である。例えば、イソニコチン酸ヒドラジド(INH)を、ミコール酸合成活性を阻害するために、培養液に加えて良く、結果として、膜流動性の増加と、産物分泌の増加となる。さらに、csp1(PS1−ミコリルトランスフェラーゼ)の不活性化が、細胞壁結合ミコール酸含量を50%まで減少させ、細胞エンベロープを介して、親水性基質の輸送を増加させ得る。(ミコール酸合成に関与する)acp遺伝子の過剰発現が、ツィーン60を培地に加える利点を無効にするため、この遺伝子をダウンレギュレートする方法を利用して、コリネバクテリア株からのモナチン分泌を増加させることが出来る。
C.グルタミカムの細胞膜の主要な脂肪酸はオレイン酸(18:1)およびパルミチン酸(16:0)であり、不飽和がわずか、またはない脂肪酸である。ブレビバクテリアおよびコリネバクテリアからの異なる脂肪酸シンターゼが、飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸に対する比、および脂肪酸の長さに関して、異なる特徴を持つ。コリネバクテリアは、脂肪酸合成のために、FAS I(酵母および哺乳動物系)およびFAS II(大腸菌および植物系)酵素の両方を持つ。事実、コリネバクテリア・グルタミカムは、2つの脂肪酸シンターゼI酵素を持つ。これらの遺伝子、またはこれらの遺伝子の発現の操作によって、膜の流動性を変更可能である。
ビオチンが、脂肪酸合成および細胞増殖で必要とされ得る。ビオチンレベルを制限することによって、非常に不飽和な脂肪酸に影響を与える以上に、オレイン酸(または、不飽和がわずか、またはない他の脂肪酸)レベルを低下させ、細胞膜をより流動化する。分泌を改善するために、ビオチンを含み、リン脂質の合成のために必要である、アセチル−CoA−カルボキシラーゼポリペプチド類を、ダウンレギュレートまたは阻害可能である。さらに、ビオチンの制限よりも、ビオチンアンタゴニストを利用可能である。例えば、温度感受性ビオチン阻害ポリペプチド(dtsR遺伝子産物)は、界面活性剤抵抗性を与え、分泌を改善する。さらに、温度感受性ビオチン阻害ポリペプチドをコードする核酸を、コリネバクテリアに形質導入可能であり、グルタミン酸およびリシンを産生するために使用可能である(例えば、米国特許第20030077765号明細書を参照のこと)。
デサチュラーゼポリペプチドをコードする遺伝子を、有機体に加えて、膜流動性を増加可能である。C.グルタミカムにおいて、plsC、cmaおよびclsのような、リン脂質生合成ポリペプチドをコードする遺伝子の過剰発現を、グルタミン酸分泌を改善するために使用可能である。
エイコサペンタノイル酸(EPA)は、膜流動性において有意な役割を果たすことが知られており(Hashimoto他,1999,Lipids,34:1297−1304)、このポリ不飽和脂肪酸の過剰産生が、宿主有機体の総流動性/輸送特性において補助可能である。38kbpゲノムDNA断片が、海洋バクテリア(シェワネラ(Shewanella))から首尾良くクローン化されており、大腸菌中で発現され、結果としてEPAの産生となる(Yazawa,1996,Lipids,31:S297−S300)。EPA合成のためのシェワネラsp.遺伝子が市販されている。ポリケチドシンターゼ酵素がまた、ポリ不飽和脂肪酸を産生すると知られており、これらの酵素の酵素ドメインが、EPA産生のために利用された、上述FAS−関連遺伝子と同様のオープンリーディングフレーム内に存在する。宿主有機体内のこれらの遺伝子クラスターのクローニングが、膜流動性および続く産物放出において、有意な効果を持ち得る。
培地は、副産物の量および輸送の速度に影響を持ち得る。C.グルタミカムにおいて、多量のミネラルが、NADPH、H+産生速度における増加と関連した様式で、酢酸および乳酸副産物に対して、グルタミン酸産生を好み得る。炭素供給源の選択はまた、NADPHのNADP+に対する比に影響を与え得、結果として、副産物形成および輸送速度の変化となる。高H+の存在、またはナトリウムおよびカリウムのような培地中の他の陽極に荷電したイオンの存在が、アンチポート(流出)またはシンポート(取り込み)の速度に影響を与え得る。
グルタミン酸/グルタミン比はしばしば、細胞内の窒素(アンモニア)の利用可能性の示唆である。グルタミンは、いくつかの有機体内で、アスパラギン酸からのアスパラギン産生のためのアンモニアドナーとして利用される。高レベルのグルタミン酸が集積し、これが、細胞にシグナルを与え、グルタミン酸を分泌させ得る。また、グルタミン酸および他のアニオン性分子を、異なるストレスの条件下で、細胞内外に輸送可能である。
芳香族アミノ酸は、C.グルタミカム(C.glutamicum)中で、共通の輸送システムを共有可能である。これらのアミノ酸の取り込みに欠損を持つ株を見つけることが、アミノ酸の産生が増加した株を産生するために利用可能である(Ikeda and Katsumata,(1995)Biosci.Biotech.Biochem.,59:1600−1602)。
1つの実施形態において、以下の段階を、グルタミン酸流出を示している有機体を同定するために実施可能である。コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)として再分類された、ATCC13655および13058のような株を得ることができる。例えば、米国特許第3,128,237号明細書および第3,002,889号明細書を参照のこと。有機体を、産生されたグルタミン酸のレベルを決定するために査定可能である。次いで、ツィーン、アンピシリン(またはペニシリンまたはカルベニシリン)の利用、およびビオチンの減少のような、種々の条件の効果を、グルタミン酸放出のためのもっとも効果的な処置を決定するために測定可能である。グルタミン酸放出が検出された場合、有機体を、輸送活性を持つポリペプチドをコードする遺伝子を得るために利用可能である。
細菌内のアミノ酸放出ポリペプチドは主に、プロトン−原動力駆動である。一般的に、これらはプロトンアンチポーターであるが、他の陽極に荷電した分子も、アミノ酸が分泌されるときに、輸入され得る。荷電勾配の方向ですでに動いているので、陰極に荷電した分子の輸出は、輸入されるべきプロトンを必要とすべきでない。したがって、グルタミン酸トランスポーターは、アンチポーターではなく、ユニポーターであり得る。
任意の有機体を、モナチンまたはグルタミン酸を輸送するポリペプチドに対してスクリーニングし得る。例えば、以下の有機体を、モナチンまたはグルタミン酸トランスポーターに関して試験可能である。(1)大腸菌、B.サブチリス(B.subtilis)およびリックセッチア(Ricksettia)のような、多数の予想された第二トランスポーターを持つ有機体、(2)コリネバクテリアおよびブレビバクテリアのような、グルタミン酸を分泌する有機体、(3)ダイズ、エンドウ、ピーナッツおよび豆のような、植物を含む、植物および豆科植物、(4)リゾビウム(Rhizobium)種、および(5)乳酸バクテリア、アセトバクター(Acetobacter)株、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)のような、酸に対して高い耐性を持つ有機体。有機体はまた、単独の窒素供給源として、グルタミン酸濃縮合成または天然ポリペプチド類(例えば、GLURP、プラズモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)からのグルタミン酸濃縮ポリペプチドまたはポリグルタミン酸)を利用する能力に関してスクリーニング可能である。そのような有機体は、グルタミン酸を分泌する能力を持ち、これらが、毒性であり得、または細胞浸透圧ポテンシャルによくない影響を与え得る、高レベルの細胞内グルタミン酸の存在下で生存することを可能にする。
モナチンを認識しないトランスポーターポリペプチド類を、モナチンを認識するトランスポーターポリペプチド類を産生するために操作可能である。とりわけ、選別工程のような技術を使用して、モナチンを基質として認識するトランスポーターポリペプチドを得ることができる。例えば、古典的な変異導入を介したフェニルアラニンおよびチロシン調節遺伝子の変異導入と、大腸菌でのスクリーニングが、結果として、フェニルアラニンの産生および分泌の増加となることが示されてきた。
トリプトファン分泌を促進するポリペプチドが検出された場合、これらのポリペプチドをコードする遺伝子を、モナチンの産生のために、トリプトファンが細胞内で簡単に利用可能であるように、そして収率を増加させるために、ノックアウト可能である。さらに、トリプトファン取り込みポリペプチドをコードする遺伝子を、トリプトファンを、分泌するのではなく、モナチン産生のために利用可能であるように、トリプトファンを過剰産生している宿主細胞中で発現させることが出来る。そのような遺伝子には、MTRペルメアーゼ(トリプトファン特異的輸送タンパク質)、TyrP(チロシン特異的輸送タンパク質)、TnaB(トリプトファン特異的輸送タンパク質)、(大腸菌指定)およびAroP(芳香族アミノ酸取り込みタンパク質)が含まれる。
9.遺伝的ツール
過去20年間に、クローニングベクターおよびDNA輸送方法のような、一般的な分子生物学的ツールが、アミノ酸産生コリネバクテリウムおよびブレビバクテリウム株に関して発展してきた。これらのツールのいくつかを利用して、モナチンのような産物を産生するように、コリネバクテリウム・グルタミカムの、グルタミン酸および/またはトリプトファン産生株を操作可能である。例えば、proAおよびaspC遺伝子が、C.グルタミカム株中で過剰発現する場合に、モナチンが、高レベルで産生または分泌され得る。
協和発酵工業株式会社内の研究所は、C.グルタミカム株を遺伝的に操作して、芳香族アミノ酸生合成に関与するいくつかの遺伝子を過剰発現させることによって、トリプトファンの産生を増加させた。協和発酵によって開発されたシャトルベクターの1つ、pCE54が、ATCCより入手可能である(カタログ番号39019)。これは、多重クローニング部位、3つの抗生物質マーカー、およびコリンベバクテリウム(Corynbebacterium)/ブレビバクテリウムに対する、pCG2レプリコン、および大腸菌に対するpMB1レプリコンをもつ。pCB101、pEthr1、pCG11およびpCE53を含む、異なる選別可能マーカーを持ついくつかの他のシャトルベクターが、協和発酵によって開発された(米国特許第4,710,471号明細書、およびIkeda and Katsumata,(1999)App.Env.Microbiology,65:2497−2502)。
EikmannsおよびSahmのグループが、C.グルタミカム/大腸菌のための、シャトルおよび発現ベクターのファミリーを構築した(Eikmanns他,(1991)Gene,102:93−98)。これらは、コリンバクテリアpBL1および大腸菌ColE1の複製起源に基づき、多重制限部位を持ち、カナマイシン−またはクロラムフェニコール−耐性遺伝子を含む。これらの内の2つ、8.2kb pEKE×1またはpEKE×2ベクターが、イソプロピル−β−D−チオガラクトシドで誘導可能である。プロモータープローブベクターがまた、プロモーター強度をアッセイするために存在する。
Sinskeyと共同研究者らは、コリネバクテリウムにおける代謝的遺伝子工学のための、ベクターを開発した。彼らのシャトルベクターは、本来、C.グルタミカムおよびC.ラクトフェルメンタムから単離された、pSR1(広宿主範囲)、pBL1およびpNG2プラスミドに基づく。これらには、共役ベクター、転写解析のためのベクター、大腸菌tacプロモーター、またはtacプロモーターとfda−遺伝子から得たコリネバクテリウムプロモーター両方を含む2つの発現ベクター、およびプロモータープローブベクターが含まれる(Jetten他,(1994)Ann.NY Acad.Sci.,721:12−29、およびJetten and Sinskey,(1995)Crit.Rev.Biotechnology,15:73−103)。
遺伝的ツールは、真菌種に対しても利用可能である。例えば、Zhou他,(1994)Gene,142:135−40、Willins他,(2002)Gene,292:141−9、Hanic−Joyce and Joyce,(1998)Gene,211:395−400、およびBarkani他,(2000)Gene,246:151−5を参照のこと。簡単に記すと、ほとんどのトルロプシス(Torulopsis)種が、T.グラブラータ(T.glabrata)を含む、カンジダ(Candida)と名前を変更された。カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)は、無性半数体子嚢真菌である。サッカロマイセス・セルビシエと同様のオーダーであるが、クローニングツールの全ては適合ではない。例えば、共通のmu自主複製配列(ARS)は、C.グラブラータでは複製しない。それにもかかわらず、pRS316、セントロメア(CEN)−に基づくS.セルビシエプラスミドが、C.グラブラータ中で使用可能である。さらに、URA3は、栄養要求性選別マーカーとして、C.グラブラータ中で使用可能であり、統合プラスミドが、相同組換えを介して、URA3座での、挿入配列に関して存在する。
C.グラブラータ中で機能する発現ベクターが、Genome Therapeutics Corp.で、研究者によって設計され(Willins他,(2002)Gene 292:141−149)、HIS3、ADE2およびLEU2栄養要求性を含む。このベクターはまた、S.セルビシエCENおよびARS領域も持つ。C.グラブラータの銅−誘導可能メタロチオネインI(MT−1)プロモーター、および標準のネオマイシンおよびカナマイシン耐性遺伝子を、C.グラブラータ中で使用可能である。同様に、ADE2遺伝子を持つ高コピー−数ベクターが、C.グラブラータ中で機能的であり、ARSとして利用されるS.セルビシエミトコンドリア(mt)DNAの断片を含む(Hanic−Joyce and Joyce,(1998)Gene 11:395−400)。
C.グラブラータのための大腸菌シャトルベクターが構築され、C.グラブラータCEN−ARSカセットおよび大腸菌のlacZコード配列両方を含む(El Barkani他,(2000)Gene 246:151−155)。HIS3遺伝子プロモーターおよびリボソーム結合部位を、lacZを発現するために使用した。MTII遺伝子:lacZレポーター融合もまた、銅でのディファレンシャル誘導のために作製した。
S.セルビシエのFLPリコンビナーゼのような、他のカンジダ株のために開発された方法、プロモーターおよび選別マーカーの単離、UV変異導入技術および細胞透過化方法を、C.グラブラータに適用可能である。さらに、酢酸リチウムまたはエレクトロポレーション技術を、カンジダ種を形質導入するために利用可能である。
非組換え体有機体中のモナチン産生、およびモナチン産生可能な有機体の単離のためのスクリーニング方法
シノリゾビウム・メリロッティ(Sinorhizobium meliloti)、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)、およびシュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)は、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ、ならびに芳香族アミノトランスフェラーゼ活性を持つ原核生物である。これらの有機体が、トリプトファンからモナチンを産生するために必要な酵素を含むので、その生合成のために遺伝的改変は必要ない。アルドラーゼおよび芳香族アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、誘導可能であり、適切な増殖条件(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸の存在下の増殖)が、これらが誘導されることを確かにするために必要である。4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼは、シュードモナスおよび関連種における、プロトカテキュエート分解経路の部分である。コリネバクテリウム・グルタミカムはまた、モナチンを産生可能である。4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼが、本有機体にて未だ同定されていないが、プロトカテキュエート分解に関与する他の酵素が含まれる。
これらの遺伝子を持つか、または他の経路によってモナチンを合成可能な他の有機体を、単独の炭素供給源として、モナチンまたはモナチン前駆体(MP)上での増殖に関してスクリーニングすることによって検出可能である。トリプトファンおよびピルビン酸から、モナチンまたはモナチン前駆体(MP)を産生する反応は、すべて可逆的である。したがって、モナチンまたはモナチン前駆体(MP)を、トリプトファンまたはピルビン酸へ変換可能である細胞のスクリーニングは、モナチン産生のために有用な酵素を含む細胞に関して試験するために使用可能であるツールである。試験は、トリプトファン栄養要求株(トリプトファンを産生不可能で、増殖のための培地にその添加が必要である細胞)を用いること、およびモナチンまたはMP上で増殖可能な細胞かどうか決定することによって達成可能であり、モナチンまたはMPをトリプトファンに変換した細胞を示唆し得る。あるいは、細胞を、(以下で記述したように)モナチン、MP、モナチン類似体、および/またはMP類似体が、第一炭素/エネルギー供給源である、最小培地上にプレート可能である。生存(および可視コロニーに増殖)するために、これらの細胞は、モナチン、MP、モナチン類似体および/またはMP類似体を、ピルビン酸または中枢代謝の他の成分に変換しなければならない。細胞の増殖を、例えば、アガープレート上のコロニー形成を探すことによって、または陰性対照と比較して、液体培養液中での増殖の証拠を探すことによって(例えば、液体の光学密度での変化を探すことによって)試験可能である。試験細胞は、ピルビン酸栄養要求株(ピルビン酸を産生不可能であり、増殖のための培地中にピルビン酸供給源を必要とする細胞)であり得、細胞が、モナチン、MP、モナチン類似体および/またはMP類似体上で増殖可能であるかどうかを決定する。試験細胞は、天然に、モナチン産生のために有用である酵素を含む、野生型有機体であり得る。そのプレート上での増殖能力によって陽性試験細胞として同定された場合、例えば、アルドラーゼおよび/またはアミノトランスフェラーゼが、陽性試験細胞より精製可能である。
試験細胞はまた、モナチンまたはMPをトリプトファンおよび/またはピルビン酸に変換する、遺伝子産物の能力に関して試験するために発現され得る遺伝子を含む、組換え体細胞でもあり得る。増殖可能な細胞が、外来遺伝子が、モナチンまたはMPをトリプトファンおよび/またはピルビン酸に変換可能な酵素をコードすることを示している。本方法によるスクリーニングは、(1)合成経路が可逆的であることで、産物、モナチンが、本経路で代謝可能であること、および(2)有機体が、モナチンまたはMP(または類似体)を輸入可能である輸送系を持つこと、を必要とする。これらの有機体におけるタイター改良は、古典的な変異原生技術を用いて実施可能である。
本発明は、以下の実施例にてさらに記述され、これは、請求項で記述された本発明の範囲を制限しない。
実施例1
トリプトファンアミノトランスフェラーゼのクローニングおよび発現
本実施例は、トリプトファンをインドール−3−ピルビン酸に変換するために使用可能である、トリプトファンアミノトランスフェラーゼをクローン化するために使用した方法を記述している。開裂可能N末端HIS6−Tag/T7−Tagsとの融合タンパク質を産生するために、遺伝子を、pET30Xa/LICベクター内にクローン化した。得られたタンパク質を、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。
実験概略
アミノトランスフェラーゼをコードする11遺伝子を、大腸菌内にクローン化した。これらの遺伝子は、バシルス・サブチリスD−アラニンアミノトランスフェラーゼ(dat、Genbank受入番号Y14082.1 bp28622−29470、およびGenbank受入番号NP_388848.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、シノリゾビウム・メリロッティ(Sinorhizobium meliloti)(またリゾビウム・メリロッティ(Rhizobium meliloti)とも呼ばれる)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(tatA、配列番号1および2、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、ロードバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株2.4.1チロシンアミノトランスフェラーゼ(相同性によって主張された、tatA、配列番号3および4、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、R.スファエロイデス35053チロシンアミノトランスフェラーゼ(相同性によって主張された、配列番号5および6、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、レイスマニア・メジャー(Leishmania major)広基質アミノトランスフェラーゼ(bsat、L.メキシカーナ(L.mexicana)からのペプチド断片に対する相同性によって主張された、配列番号7および8、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、バシルス・サブチリス芳香族アミノトランスフェラーゼ(araT、相同性によって主張された、配列番号9および10、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、ラクトバシルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)芳香族アミノトランスフェラーゼ(相同性によって主張されたaraT、配列番号11および12、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、R.スファエロイデス(R.sphaeroides)35053多重基質アミノトランスフェラーゼ(相同性によって主張された、配列番号13および14、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、ロードバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株2.4.1多重基質アミノトランスフェラーゼ(相同性によって主張されたmsa、Genbank受入番号NZ_AAAE01000093.1、bp14743−16155およびGenbank受入番号ZP_00005082.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、大腸菌(Escherichia coli)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC、Genbank受入番号AE000195.1 bp2755−1565およびGenbank受入番号AAC74014.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)、および大腸菌チロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrB、配列番号31および32、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)であった。
市販されている酵素と共に、遺伝子をクローン化し、発現させ、トリプトファンのインドール−3−ピルビン酸への変換における活性に関して試験した。すべての11のクローンが活性をもった。
望む活性を持つポリペプチドを含み得る、細菌株の同定
NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベース中の遺伝子は、どれもトリプトファンアミノトランスフェラーゼとしては指定されていなかった。しかしながら、この酵素的活性を持つ有機体が同定されてきた。L−トリプトファンアミノトランスフェラーゼ(TAT)活性を、細胞抽出物中で、または以下の供給源からの精製タンパク質から測定した。フェスツカ・オクトフローラ(Festuca octoflora)からのリゾバクテリア単離物、エンドウ豆ミトコンドリアおよび細胞質、ヒマワリ・クラウンゴール細胞、リゾビウム・レグミノサラム(Rhizobium leguminosarum)次亜種トリホリ(trifoli)、エルウィニア・ヘルビコラ(Erwinia herbicola)pvギプソフィラエ、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)pv.サバスタノイ、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、アゾスピリラム・リフェラム&ブラシレンス(Azospirillum lipferum & brasilense)、エンテロバクター・クロアサエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobactor agglomerans)、ブラジルヒゾビウム・エルカニイ(Bradyrhizobium elkanii)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、ラット脳、ラット肝臓、シノリゾビウム・メリロッティ(Sinorhizobium meliloti)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)CHA0、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバシルス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシルス・ヘルベチカス(Lactobacilus helveticus)、小麦苗木、オオムギ、ファセオラス・アウレウス(Phaseolus aureus)(マングビーンズ)、サッカロマイセイス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)(カールスベルゲンシス)、レイシュマニア(Leishmania)sp.、トウモロコシ、トマト根、エンドウ豆植物、たばこ、ブタ、クロストリジウム・スポロジーンズ(Clostridium sporogenes)、およびストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)。
クローニングのためのゲノムDNAの単離
S.メリロッティ(S.meliloti)(ATCC番号9930)を、25℃、pH7.2にて、TY培地中で増殖させた。細胞を、1.85の600nmでの光学密度(OD600)まで増殖させ、2%接種材料を、ゲノムDNA調節物のために利用した。キアゲン(Qiagen)ゲノムチップ20/Gキット(Valencia、CA)を、ゲノムDNA単離のために使用した。
バシルス・サブチリス(Bacillus subtilis)6051(ATCC)を、Bereto Nutrient Broth(Difco;Detroit,MI)中、30℃にて増殖させた。キアゲンゲノムチップ20/Gプロトコールを使用して、以下の変更で、ゲノムDNAを単離した。プロテイナーゼKおよびリソザイムの濃度を二倍し、培養時間を2〜3倍にした。
レイシュマニア・メジャー(Leishmania major)ATCC50122ゲノムDNAは、TE緩衝液pH8.0、17ng/μL中、IDI,Inc.(Quebec,Canada)によって供給された。
(Sam Kaplan博士、テキサス大学、Houstonにより供給された)ロードバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)2.4.1、R.スファエロイデス35053(ATCC番号)、およびL.アミロボラス(L.amylovorus)ゲノムDNAを、標準のフェノール抽出によって調製した。細胞を後期ログ相にて回収し、TEN緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA、100mM NaCl)中で再懸濁させ、細胞懸濁液mLあたり、0.024mLのラウリルサルコシンナトリウムの添加によって溶解した。少なくとも3回、TE緩衝液(10mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA)で飽和した、等容量のフェノールで抽出した後、DNA溶液を9:1クロロホルム:オクタノールで一回、クロロホルムで三回抽出した。DNAを、0.1容量の3M酢酸ナトリウム、pH6.8および2容量のエタノールの添加によって沈殿させた。沈殿物を、遠心によって回収し、70%エタノールで一度洗浄した。最後に、DNAを0.10mL蒸留水中に溶解した。
大腸菌ゲノムDNAを、株DH10B(インビトロジェン(Invitrogen))より単離し、キアゲンGenomic−tip(商標)(500/G)キットを用いて調製した。LB中にて、1.87のOD650まで増殖させた本株、30mLから、0.3mgの精製DNAが得られた。精製したDNAを、キアゲン溶出緩衝液(EB)中で、0.37μg/μLの濃度にて溶解した。
ポリメラーゼ連鎖反応プロトコール
プライマーを、pET 30Xa/LICベクター(ノバジェン(Novagen)、Madison,WI)に対する適合可能なオーバーハングを含めて設計した。pETベクターは、Xa/LIC部位の5’部上で、12塩基単一鎖オーバーハング、Xa/LIC部位の3’部上で、15−塩基単独鎖オーバーハングを持つ。プラスミドは、ライゲーション独立クローニングのために設計され、N末端HisとS−タグ、および任意にC末端His−タグを含む。Xaプロテアーゼ認識部位(IEGR)は、直接、対象の遺伝子の開始コドンの前に存在し、融合タンパク質タグを除去可能である。
以下の配列を、プライマーを設計するときに、有機体特異的配列の5’末端に加えた。フォワードプライマー、5’GGTATTGAGGGTCGC(配列番号73)、リバースプライマー:5’AGAGGAGAGTTAGAGCC(配列番号74)。
バシルス・サブチリスdatプライマー:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAAGGTTTTAGTCAATGG−3’およびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTATGAAATGCTAGCAGCCT−3’(配列番号15および16)。
シノリゾビウム・メリロッティtatAプライマー:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTTCGACGCCCTCGCCCGおよびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGAGACTGGTGAACTTGC(配列番号17および18)。
バシルス・サブチリスaraTプライマー:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGGAACATTTGCTGAATCCおよびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTAAACGCCGTTGTTTATCG(配列番号19および20)。
ロードバクター・スファエロイデスmsa(2.4.1および35053両方):N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGCGAGCCTCTTGCCCTおよびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGCCGGGGAAGCTCCGGG(配列番号21および22)。
レイシュマニア・メジャーbsat:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTCCACGCAGGCGGCCATおよびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCACTCACGATTCACATTGC(配列番号23および24)。
ラクトバシルス・アミロボラスaraT:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCCAGAATTAGCTAATGAおよびC末端:;5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTATTCGTCCTCTTGTAAAA(配列番号25および26)。
ロードバクター・スファエロイデスtatA(2.4.1および35053株両方):N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGCTCTACGACGGCTCCおよびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGCCGCGCAGCACCTTGG(配列番号27および28)。
大腸菌aspC:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTTTGAGAACATTACCGC−3’、およびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACAGCACTGCCACAATCG−3’(配列番号29および30)。
大腸菌tyrB:N末端:5’−GGTATTGAGGGTCGCGTGTTTCAAAAAGTTGACGCおよびC末端:5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACATCACCGCAGCAAACG−3’(配列番号33および34)。
S.メリロッティ(S.meliloti)(tatA)から由来した遺伝子を、以下のPCRプロトコールを用いて増幅させた。50μLの反応中、0.1〜0.5μgの鋳型、1.5μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5Uエクスパンドハイフィデリティポリメラーゼ(Expand High Fidelity Polymerase)(ロッシュ(Roche)、Indianapolis、IN)、およびMgを含む1×Expand(商標)緩衝液を使用した。使用したサーモサイクラープログラムには、96℃で5分間の熱開始と、続く以下の段階の29回の繰り返し、すなわち、94℃30秒間、55℃2分間、および72℃2.5分間が含まれた。29回の繰り返しの後、試料を、72℃にて10分間維持し、次いで、4℃にて保存した。このPCRプロトコールによって、1199bpの産物が産生された。
R.スファエロイデスより由来した遺伝子(msaおよびtatA)、L.アミロボラス araTおよびバシルスaraTの配列を、以下のPCRプロトコールを用いて増幅した。50μL反応中、0.1〜0.5μgの鋳型、1.5μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5Uエクスパンドハイフィデリティ(商標)ポリメラーゼ、およびMgを含む1×Expand(商標)緩衝液を加えた。使用したサーモサイクラープログラムには、96℃で5分間の熱開始と、続く以下の段階の29回の繰り返し、すなわち、94℃30秒間、40〜60℃1分45秒間(勾配サーモサイクラー)、および72℃2分15秒間が含まれた。29回の繰り返しの後、試料を、72℃にて10分間維持し、次いで、4℃にて保存した。
各R.スファエロイデスmsa遺伝子に関して、42℃と48℃のアニーリング温度によって、多数の産物が産生されたが、およそ1464bpにて、明確なバンドが産生された。L.アミロボラスaraTに関して、42℃、48℃および56℃のアニーリング温度にて、1173bpにて、強力なバンドの単一産物が産生された。B.サブチリス araTに関して、40℃、45℃、50℃、55℃アニーリング温度によって、ゲノムDNAおよびコロニー両方から、単一の強力な産物(1173bp)が産生された。L.メジャーbsatに関して、55℃のアニーリング温度が、もっとも明確な産物(1239bp)を与えた。ロードバクターtatA遺伝子に関して、50〜55℃のアニーリング温度により、明確な産物が、正しいサイズ(1260bp)で得られた。大腸菌遺伝子およびB.サブチリスdat遺伝子両方に関して、55〜60℃のアニーリング温度を利用し、アニーリング時間を45秒まで短くした。正しい大きさの明確な産物が得られた(大腸菌遺伝子に関して、およそ1.3kb、dat遺伝子に関して850bp)。
クローニング
PCR産物を、キアゲンゲル抽出キット(Valencia,CA)を用いて、0.8%または1%TAE−アガロースゲルよりゲル精製した。PCR産物を、アガロースゲル上の標準物と比較することによって定量し、次いで、Ligation Independent Cloning(ノヴァジェン(Novagen)、Madison,WI)のための、製造業者の推奨プロトコールにしたがって、T4 DNAポリメラーゼで処理した。
簡単に記すと、およそ0.2pmolの精製PCR産物を、dGTPの存在下、22℃にて30分間、1U T4 DNAポリメラーゼで処理した。ポリメラーゼが、PCR産物の3’から連続する塩基を除去する。ポリメラーゼが、グアニン残基に至ると、酵素の5’〜3’ポリメラーゼ活性が、エクソヌクレアーゼ活性と対抗し、さらなる切断が効果的に防止される。これによって、pET Xa/LICベクターと適合可能な、一本鎖オーバーハングが作製される。ポリメラーゼを、75℃にて20分間のインキュベートによって不活性化する。
ベクターおよび処理挿入物を、ノヴァジェンによって推奨されたようにアニールした。およそ0.02pmolの処理挿入物と、0.01pmolのベクターを、22℃にて5分間インキュベートし、6.25mM EDTA(最終濃度)を加え、22℃でのインキュベーションを繰り返した。アニーリング反応(1μL)をNovaBlue(商標)単一コンピテント細胞(ノヴァジェン、Madison,WI)に加え、氷上で5分間インキュベートした。混合後、細胞を、熱ショックによって、42℃にて30秒間、形質導入した。細胞を2分間氷上に置き、250μLの室温SOC中、225rpmで振とうしながら、37℃にて30分間、回収させた。細胞を、カナマイシン(25〜50μg/mL)を含むLBプレート上にプレートした。
プラスミドDNAを、キアゲンスピンミニプレップキットを用いて精製し、XhoIおよびXbaIでの制限消化によって、正確な挿入物に関してスクリーンした。正確な挿入物を持つことが明らかになったプラスミドの配列を、ジデオキシ鎖終結DNAシークエンシングによって確認した。
配列番号1〜14および31〜32は、組換え体アミノトランスフェラーゼのヌクレオチドおよび相当するアミノ酸配列を示しており、Genbank配列からの任意の変化は、サイレントであるか、またはタンパク質配列の保存置換を産生するか、のいずれかであった。配列番号11および12は新規の配列である。
遺伝子発現およびアッセイ
配列解析によって確認した、プラスミドDNAを、大腸菌発現宿主BLR(DE3)またはBL21(DE3)(ノヴァジェン、Madison,WI)内にサブクローン化した。この培養液を増殖させ、プラスミドを、キアゲンミニプレップキットを用いて単離し、制限消化によって解析して、同一性を確認した。
誘導を、BLR(DE3)およびBL21(DE3)細胞両方での、L.アミロボラス araT、B.サブチリスaraT、およびS.メリロッティtatAでまず実施した。時間経過研究を、カナマイシン(30mg/L)を含むLB中の、0.5〜0.8のOD600までの培養液増殖で実施し、1mM IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導し、誘導後、0、1、2および4時間でサンプリングした。2.0mLからの細胞を、10%硫酸ドデシルナトリウム、10%2−メルカプトエタノールおよび20%グリセロールを含む、0.10mL 120mM Tris−HCl、pH6.8中で再懸濁させ、95℃にて10分間熱し、冷却し、0.10mL H2Oで希釈した。これらの総細胞タンパク質試料の一部を、4〜15%勾配ゲルを用いるSDS−PAGEによって解析した。2時間から4時間の誘導の間に発現されたタンパク質の量に、有意な違いはなく、BLR(DE3)およびBL21(DE3)細胞間でもなかった。
細胞抽出液をまた、0.25μLベンゾナーゼヌクレアーゼを含む0.25mLノヴァジェンBugBuster(商標)試薬中の2mLの培養液から細胞ペレットを懸濁し、室温にて20分間、穏やかに撹拌してインキュベートし、細胞残骸を除去するために、16,000×gで遠心することによって、4時間試料から調製した。上清(細胞抽出液)を、細胞可溶性タンパク質の解析のために、4〜15%勾配ゲル上にのせた。
3つのクローン(L.アミロボラスaraT(配列番号11および12)、B.サブチリスaraT(配列番号9および10)およびS.メリロッティtatA(配列番号1および2)は、正確な大きさ(およそ45kDa)に相当する可溶性タンパク質を示した。B.サブチリスaraT遺伝子産物は、最も高いレベルで過剰発現し、および/または他の2つの遺伝子産物よりも、より可溶性であった。
続く発現方法において、陽性クローンからのプラスミドDNAを、この宿主のよりよい増殖特性のために、BL21(DE3)にサブクローン化した。誘導を、カナマイシンを50mg/Lで含むLB中の培養液増殖で、1mM IPTGを用いて繰り返し、OD600がおよそ0.8に達したときに誘導した。細胞を、37℃での増殖の4時間後に回収し、3000rpmにて10分間(4℃)にて遠心し、TEGGP緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.0)、0.5mM EDTA、100mg/Lグルタチオン、5%グリセロール、ロッシュ完全プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む)で洗浄し、−80℃エタノール中で、瞬間凍結した。
試料を、5μL/mLのプロテアーゼ阻害剤カクテルセット#3(カルビオケム−ノヴァバイオケム社(Calbiochem−Novabiochem Corp.)、San Diego,CA)および1μL/mLベンゾナーゼヌクレアーゼを含む、5mL/gウェット細胞重量のBugBuster(商標)(ノヴァジェン)試薬中で再懸濁させた。試料を、環状シェーカー上で、室温にて20分間インキュベートした。不溶性細胞残骸を、4℃、16,000×gでの20分間の遠心によって除去した。
細胞抽出液を、SDS−PAGEによって解析し、以下のプロトコールを用いる、インドール−ピルビン酸の産生に続くことで、トリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性に関してアッセイした。1mL反応を、50mMテトラボレートナトリウム(pH8.5)、0.5mM EDTA、0.5mMヒ酸ナトリウム、50μMリン酸ピリドキサール、5mM α−ケトグルタル酸、および5mM L−トリプトファン中で実施した。この反応は、細胞を含まない抽出物、または精製した酵素の添加によって開始し、30℃にて30分間インキュベートした。20%TCA(200μL)を、反応を終了させるために加え、沈殿したタンパク質を遠心によって除去した。327nmでの吸収を測定し、アッセイ緩衝液中で、新鮮に調製したインドール−3−ピルビン酸の標準曲線と比較した。基質トリプトファンを含まない、またはpET30aのみを形質導入したクローンからの細胞を含まない抽出液を用いる、対照反応も実施した。
細胞抽出液中の、天然の大腸菌アミノトランスフェラーゼからのバックグラウンドのために、pET30アミノ末端HIS6−Tag/S−Tagに融合した、アミノトランスフェラーゼタンパク質をそれぞれ含む、組換え体融合タンパク質を、製造業者のプロトコール(ノヴァジェン、Madison,WI)にしたがって、His−Bindカートリッジでの、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。融合タンパク質のHIS6−Tag配列は、IDA−基礎His−Bind樹脂上に固定化した二価Ni2+カチオンに結合する。溶出画分を、PD−10(アマシャム・バイオサイエンセス(Amersham Biosciences)、Piscataway,NJ)カラム上で脱塩し、50mM Tris、pH7.0中に溶出した。精製したタンパク質を、SDS−PAGEによって解析し、アミノトランスフェラーゼ活性に関してアッセイした。
1mM IPTGでの37℃イ誘導(4時間)からの結果は、L.メジャーbsat、S.メリロッティtatA、大腸菌aspC、および両方のR.スファエロイデスtatAクローンが、有意なレベルのトリプトファンアミノトランスフェラーゼ活性を持つことを示している。B.サブチリスからのaraTタンパク質が過剰発現し、可溶性であったが、ほとんど酵素活性を示さなかった。L.アミロボラスaraT遺伝子産物は、細胞抽出液中で可溶性であることがわかったが、His−Bindカートリッジを用いる精製では、正確な分子量を持つタンパク質の量はわずかであった。msa遺伝子産物は不溶性であり、さらなる発現実験を、24℃にて実施して、封入体形成を最小とした。10μM〜1mM間のいくつかの濃度のIPTGを使用して、可溶性タンパク質の量を最大化した。
表1は、ミリグラムタンパク質あたり、分あたりに形成された、インドール−3−ピルビン酸(I3P)のマイクログラムにて測定した、特定の活性を列記している。いくつかの場合、非常の少量の組換え体タンパク質が、アッセイの効果的な直線範囲上で、高レベルの活性を示した。これらの場合、「>」は、特異的活性数を越えている。
クローン化された全ての組換え体タンパク質のアライメント比較によって、araT、tatA、bsatおよびmsa配列間で、多くの高い保存領域は存在しないことが示された。最も高い活性組換え体タンパク質のアライメント、すなわちロードバクターtatA遺伝子産物相同物、L.メジャー広基質アミノトランスフェラーゼ、およびシノリゾビウム・メリロッティチロシンアミノトランスフェラーゼが、いくつかの保存領域を示したが、これらは、タンパク質レベルで、およそ30〜43%同一であるのみである。広範囲、D−特異的(D−アラニン)アミノトランスフェラーゼの利用が、モナチンの他の立体異性体の産生において有用であり得る(実施例3および4を参照のこと)。
実施例2
アルドラーゼでの、インドール−3−ピルビン酸の2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸への変換
本実施例は、アルドラーゼ(リアーゼ)を用いて、インドール−3−ピルビン酸をMPに変換するために使用可能である方法を開示している(図2)。アルドール濃縮は、アルデヒドまたはケトンのβ−炭素と、他のアルデヒドまたはケトンのカルボニル炭素間の、炭素−炭素結合を形成する反応である。カルバニオンが、1つの基質のカルボニル基に隣接した炭素上で形成され、第二の基質のカルボニル炭素(求電子性炭素)を攻撃する求核試薬として働く。もっとも一般的に、求電子性基質はアルデヒドであり、したがってほとんどのアルドラーゼが、EC4.1.2.−カテゴリーに入る。非常にしばしば、求核基質はピルビン酸である。アルドラーゼが、2つのケト酸または2つのアルデヒド間の濃縮を触媒することは、あまり一般的ではない。
しかしながら、2つのカルボン酸の濃縮を触媒するアルドラーゼが同定されてきた。例えば、欧州特許第EP1045−029号は、シュードモナス培養液(EC4.1.3.16)を用いる、グリオキシル酸とピルビン酸からの、L−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の産生を記述している。さらに、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸アルドラーゼ(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ、EC4.1.3.17)は、2つのケト酸の濃縮を触媒可能である。したがって、同様のアルドラーゼポリペプチドを、インドール−3−ピルビン酸のピルビン酸との濃縮を触媒するために使用した。これらの酵素の活性またはエナンチオ選択性は、モナチンの特定の立体異性体の産生のために改変可能であり、以下実施例9で記述した方法を利用して選別可能である。
クローニング
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ(ProAアルドラーゼ、EC4.1.3.17)および4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシル酸−リアーゼ(KHGアルドラーゼ、EC4.1.3.16)は、図2のアルドラーゼ反応と非常に類似した反応を触媒する。プライマーは、pET30Xa/LICベクター(ノヴァジェン、Madison,WI)に対して適合可能なオーバーハングを持って設計された。これらのプライマーの設計は、実施例1にて以上で記述している。
以下のプライマーを、pET30Xa/LICクローニングのために設計した。
1.シュードモナス・ストラミネアproA遺伝子(Genbank受入番号:12964663、Version:12964663、あるいは、AB050935.2 GI:12964663と呼ばれる)およびコマモナス・テストステロニproA遺伝子(配列番号65−66、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTACGAACTGGGAGTTGT−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTAGTCAATATATTTCAGGC−3’(配列番号55および56)。
2.シノリゾビウム・メリロッティ1021SMc00502遺伝子(proAに対して相同、Genbank受入番号:15074579またはAL591788.1 GI:15074579およびCAC46344.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAGCGTGGTTCACCGGAA−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAATCGATATATTTCAGTC−3’(配列番号61および62)。
3.スフィンゴモナスsp.LB126fldZ遺伝子(Genbank受入番号:7573247 Version:7573247またはAJ277295.1 GI:7573247、推定アシルトランスフェラーゼをコードする GenBank受入番号:CAB87566.1 GI:7573254)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGTCCGGCATCGTTGTCCA−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGACATATTTCAGTCCCA−3’(配列番号57および58)。
4.アルスロバクター・キーセリ(Arthrobacter keyseri)pcmE遺伝子(Genbank受入番号:AF331043 Version:AF331043.1、オキサロサイトラマレートアルドラーゼをコードする GenBank受入番号:AAK16525.1 GI:13242045)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGACTGAACAACCTCGG−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGTTCTCCACGTATTCCA−3’(配列番号59および60)。
5.イエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)株CO92 YPO0082遺伝子(Genbank受入番号:15978115 Version:15978115またはAJ414141.1 GI:15978115、可能性のあるトランスフェラーゼをコードする GenBank受入番号:CAC88948.1 GI:15978195)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAGCCTGGTTAATATGAA−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTATGACTTTAACGCGTTGA−3’(配列番号63および64)。
6.バシルス・サブチリスkhg遺伝子(Genbank受入番号:Z99115.1 GI:2634478、126711−127301またはZ99115.1 GI:2634478、126711−127301およびCAB14127.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGGAGTCCAAAGTCGTTGA−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACACTTGGAAAACAGCCT−3’(配列番号35および36)。
7.大腸菌khg遺伝子(Genbank受入番号:AE000279.1 1331−1972およびAAC74920.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGAAAAACTGGAAAACAAG−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTTACAGCTTAGCGCCTTCTA−3’(配列番号37および38)。
8.S.メリロッティkhgまたはSMc03153遺伝子(Genbank受入番号:AL591792.1 GI:15075850またはAL591792.1 GI:15075850、64673..65311およびCAC47463.1、それぞれ核酸配列およびアミノ酸配列)フォワード5’−GGTATTGAGGGTCGCATGCGAGGGGCATTATTCAA−3’およびリバース5’−AGAGGAGAGTTAGAGCCTCAGCCCTTGAGCGCGAAG−3’(配列番号39および40)。
以上1〜2および6〜8で記述した有機体からのゲノムDNAを、キアゲンGenomic−tip(商標)(Valencia,CA)プロトコールを用いて精製した。3〜5にて記述した有機体からのゲノムDNAを、同様の技術を用いて精製可能である。
シュードモナス・ストラミネア(ATCC33636)を、Nutrient Brothおよびヒドロキシ安息香酸培地中で、30℃にて増殖させた。コマモナス・テストステロニ(ATCC49249)を、Nutrient Brothおよびヒドロキシ安息香酸培地中、26℃にて増殖させた。スフィンゴモナスsp.LB126(Flernish Institute for Technological Research,VITO,B−2400Mol,Belgium)を、Wattiau他(Research in Microbiol.152:861−72,2001)によって記述された方法にしたがって増殖させた。アルスロバクター・キーセリ(Gulf Ecololgy Division,National Health and Environmental Effects Research Laboratory,U.S.Environmental Protection Agency,Gulf Breeze,FL32561,USA)を、Eaton(J.Bacteriol.183:3689−3703,2001)によって記述されたプロトコールにしたがって増殖させた。シノリゾビウム・メリロッティ1021(ATCC51124)を、ATCCTY培地およびヒドロキシ安息香酸培地中、26℃にて増殖させた。イールシニア・ペスティス(Yersinia pestis)株CO92(ATCC)を、ATCC培地739ウマ血液アガー中、26℃にて増殖させた。バシルス・サブチリス6051(ATCC)を、Bereto Nutrient Broth(ディフコ(Difco);Detroit,MI)中、30℃にて増殖させた。大腸菌ゲノムDNAを、実施例1で記述したように、株DH10B(インビトロジェン)より単離した。
実施例1で記述したPCR、クローニングおよびスクリーニングプロトコールを使用して、C.テストステロニおよびS.メリロッティproA配列、ならびに大腸菌、B.サブチリス、およびS.メリロッティkhg配列をクローン化した。同様の方法を用いて、以上に記述した他の配列をクローン化可能である。C.テストステロニproA遺伝子に関して、PCRに関するアニーリングおよび伸長条件は、40〜60℃1分45秒間(勾配サーモサイクル)および72℃2分15秒間、であった。
陽性クローンを、S−tagおよびT7終結プライマー(ノヴァジェン)でのジデオキシ鎖終結シークエンシング(セクウェライト(Seqwright)、Houston,TX)、およびインテグレイテッドDNAテクノロジーズ社(Integrated DNA Technologies,Inc.)(Coralville,IA)からの内部プライマーを用いて配列決定した。
発現および活性アッセイ
(配列解析によって確認した)プラスミドDNAを、発現宿主BL21(DE3)(ノヴァジェン)内にサブクローン化した。培養液を、50mg/Lカナマイシンを含むLB培地中で増殖させ、プラスミドを、キアゲンスピンプラスミドミニプレップキットを用いて単離し、続いて、制限消化によって解析して、同一性を確認した。誘導実験を、37℃にて、50mg/Lカナマイシンを含むLB培地中で増殖させた、BL21(DE3)構造物で実施した。タンパク質発現を、OD600が、およそ0.6に達した後、0.1mM IPTGを用いて誘導した。細胞を、30℃にて4時間増殖させ、遠心によって回収した。次いで細胞を、Bugbuster(商標)試薬(ノヴァジェン)を用いて溶解し、His−タグ組換え体タンパク質を、以上(実施例1)で記述したように、His−Bindカートリッジを用いて精製した。精製したタンパク質を、PD−10使い捨てカラム上で脱塩し、2mM MgCl2を含む、50mM Tris−HCl緩衝液、pH7.3中に溶出した。
タンパク質を、4〜15%勾配ゲル上のSDS−PAGEによって解析し、組換え体融合タンパク質の予想MWでの、可溶性タンパク質のレベルを検出した。
タンパク質を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ナトリウムを基質として用いて活性に関してアッセイした。アッセイ混合液は、100mM Tris−HCl(pH7−pH8.9)、0〜8mM MgCl2、3mMリン酸カリウム(pH8)、および6mMの各基質が1mL中に含まれた。反応を、種々の量のポリペプチド(例えば、10〜100μg)を加えることによって開始し、25℃〜37℃にて30分間インキュベートし、濾過し、次いで−80℃にて凍結した。
proA遺伝子産物での活性結果
C.テストステロニproAおよびS.メリロッティSMc00502遺伝子構造物は、IPTGで誘導したときに、高レベルの発現を持った。組換え体タンパク質は、総タンパク質および細胞抽出試料のSDS−PAGE解析によって決定されたように、非常に可溶性であった。C.テストステロニ遺伝子産物を、>95%純度まで精製した。S.メリロッティ遺伝子産物の収率は、His−Bindカートリッジを用いたアフィニティー精製の後、非常に低かったので、細胞抽出液を、酵素アッセイのために使用した。
両方の組換え体アルドラーゼが、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸からのMPの形成を触媒した。二価リン酸マグネシウムおよびカリウム両方の存在が、酵素活性のために必要である。インドール−3−ピルビン酸、ピルビン酸またはリン酸カリウムが存在しない場合、産物は現れなかった。少量の産物がまた、酵素が存在しない場合に形成された(典型的には、酵素が存在した場合よりも、1オーダー小さな規模である)。
実施例6で記述したLC/MS法を用いて、産物ピークが、インドール−3−ピルビン酸標準よりもわずかに遅く、逆相C18カラムより溶出され、このピークの質量スペクトルが、292.1の衝突誘導親イオン([M+H]+)を示し、親イオンが、産物MPを予測した。質量スペクトル中に存在する主要な娘断片には、m/z=158(1H−インドール−3−カルボアルデヒドカルボニウムイオン)、168(3−ブタ−1,3−ジエニル−1H−インドールカルボニウムイオン)、274(292−H2O)、256(292−2H2O)、238(292−3H2O)、228(292−CH4O3)および204(ピルビン酸の欠損)のものが含まれた。産物はまた、279〜280のλmax、およびおよそ290nmにて、小さな肩で、トリプトファンのような、他のインドールを含む化合物のUVスペクトル特性を示した。
C.テストステロニアルドラーゼによって産生されたMPの量は、室温から37℃までの反応温度、基質の量およびマグネシウムの量の増加によって増加した。酵素の合成活性は、pHの増加によって減少し、観察された最大産物はpH7の時であった。トリプトファン標準に基づいて、20μgの精製タンパク質を用いる標準アッセイ下で産生されたMPの量は、およそ、1mL反応あたり、10〜40μgであった。
S.メリロッティとC.テストステロニProAアルドラーゼコード配列の、以上で記述した他の遺伝子との高程度の相同性によって、全ての組換え体遺伝子産物が、この反応を触媒可能であることが予想される。さらに、(C.テストステロニの番号付けシステムに基づいて)位置59および87にてスレオニン(T)、119にてアルギニン(R)、120にてアスパラギン酸(D)、31および71にてヒスチジン(H)を持つアルドラーゼが、同様の活性を持ち得ることが予想される。
khg遺伝子産物での活性結果
B.サブチリスおよび大腸菌khg遺伝子構築物両方が、IPTGで誘導したときに、高レベルのタンパク質を発現したが、S.メリロッティkhgは、より低いレベルの発現であった。組換え体タンパク質は、総タンパク質および細胞抽出液のSDS−PAGE解析によって判断したように、非常に可溶性であった。B.サブチリスおよび大腸菌khg遺伝子産物を、>95%純度まで精製し、S.メリロッティ遺伝子産物の収率は、His−Bindカートリッジを用いたアフィニティー精製の後、高くはなかった。
マグネシウムおよびリン酸が、本酵素の活性に必要であるという証拠はない。しかしながら、文献によって、リン酸ナトリウム緩衝液中でのアッセイの実施が報告されており、酵素が二機能性であり、2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコン酸(KDPG)のような、リン酸化基質上で活性を持つことが報告されている。酵素アッセイを以上で記述したように実施し、いくつかの例では、リン酸を省略した。結果は、組換え体KHGアルドラーゼ類がMPを産生するが、ProAアルドラーゼのような活性ではなかったことを示唆している。いくつかの場合、KHGによって産生されたMPのレベルは、マグネシウムおよびリン酸のみによって産生された量とほとんど同一であった。リン酸は、KHG活性を増加させるようには見えなかった。バシルス酵素がもっとも高い活性を持ち、LC/MS/MSによって決定したように、マグネシウムおよびリン酸のみよりも、およそ20〜25%高い活性を持った(実施例6を参照のこと)。シノリゾビウム酵素は、最小の活性量を持ち、これは、発現において考えられた、ホールディングおよび可溶性の問題に関連し得る。すべての3つの酵素は、活性部位グルタミン酸(B.サブチリス番号付けシステムで位置43)、ならびにピルビン酸とのShiff塩基形成に必要なリシン(位置130)を持つが、B.サブチリス酵素は、位置47にて、アルギニンではなく、スレオニン、活性部位残基を含む。B.サブチリスKHGはより小さく、活性部位スレオニンを持つ他の酵素と一緒に、S.メリロッティおよび大腸菌酵素から遠いクラスター内でみられる。活性部位の差が、B.サブチリス酵素の活性の増加の理由であり得る。
アルドラーゼ活性の改善
触媒抗体は、天然のアルドラーゼと同様に効果的であり得、広範囲の基質を許容し、図2で示した反応を触媒するために利用可能である。
アルドラーゼはまた、リン酸に対する要求性を取り除くため、およびエナンチオ選択性を反転させるために、例えば、DNAシャフリングおよびエラー傾向PCRによって発展させた、KDPGアルドラーゼ(以上で記述したKHGに対して高い相同性)に関して先に記述されたように、指向発達によって改善可能である。KDPGアルドラーゼポリペプチドは、ドナー基質(ここでは、ピルビン酸)に対して非常に特異的であるが、アクセプター基質(すなわちインドール−3−ピルビン酸)に関して比較的柔軟性があるため、生化学反応において有用である(Koeller & Wong,Nature 409:232−9,2001)。KHGアルドラーゼは、多数のカルボン酸およびアルデヒドとのピルビン酸の濃縮に対して活性を持つ。KHGアルドラーゼの哺乳動物バージョンは、4−ヒドロキシ4−メチル2−オキソグルタル酸の高い活性を含む、多くの細菌のバージョンよりも広いエナンチオ特異性を持ち、4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸の両方の立体異性体の許容性を持つと考えられる。細菌供給源は、R異性体に関して、10倍の優先傾向を持つことが明らかである。ゲノムデータベースで、ほぼ100KHGの相同物が利用可能であり、活性が、シュードモナス、パラコッカス、プロビデンシア、シノリゾビウム、モルガネラ、大腸菌および哺乳動物組織で示されてきた。これらの酵素を、モナチン産生のために望まれるエナンチオ特異性を調製するための開始点として利用可能である。
ピルビン酸および、ケト酸であるか、および/またはインドールのような、大きな疎水性基を持つかいずれかである他の基質を利用するアルドラーゼが、ポリペプチドの特異性、スピードおよび選択性を調製するために「発展(evolved)」することが可能である。本明細書で示したKHGおよびProAアルドラーゼに加えて、これらの酵素の例には、限定はしないが、KDPGアルドラーゼおよび関連ポリペプチド類(KDPH)、ノカルジオイデスst.(Nocardioides st.)からのトランスカルボキシベンザールピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ、ピルビン酸と2−カルボキシベンズアルデヒド(芳香族環含有基質)を濃縮する、4−(2−カルボキシフェニル)−2−オキソブト−3−エノエートアルドラーゼ(2’−カルボキシベンザールピルビン酸アルドラーゼ)、また基質としてピルビン酸および芳香族含有アルデヒドを利用する、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)およびスフィンゴモナス・アロマチシボランス(Sphingomonas aromaticivorans)からの、トランス−O−ヒドロキシベンジリデンピルビン酸ヒドラターゼ−アルドラーゼ、基質として2−オキソ酸を利用し、有機体ミクロコッカス・デニトリカンス(Micrococcus denitrificans)中に存在すると考えられる、3−ヒドロキシアスパラギン酸アルドラーゼ(エリスロ−3−ヒドロキシ−L−アスパラギン酸グリオキシレートリアーゼ)、ベンジル基を含む基質を利用する、ベンゾインアルドラーゼ(ベンズアルデヒドリアーゼ)、ジヒドロネオプテリンアルドラーゼ、グリシンをベンズアルデヒドと濃縮する、L−スレオ−3−フェニルセリンベンズアルデヒド−リアーゼ(フェニルセリンアルドラーゼ)、4−ヒドロキシ−2−オキソ吉草酸アルドラーゼ、1,2−ジヒドロキシベンジルピルビン酸アルドラーゼ、および2−ヒドロキシベンザールピルビン酸アルドラーゼが含まれる。
以上で記述したのと同様のアッセイ、および実施例6で記述した検出方法を利用して、イソシトレートリアーゼ、N−アセチルノウラミン酸シンターゼ、クエン酸リアーゼ、トリプトファナーゼおよび特定の変異体、ベータ−チロシナーゼおよび特定の変異体、PLP、触媒的アルドラーゼ抗体、トリプトファンシンターゼ(類)が、試験した条件下で、インドール−3−ピルビン酸をMPに検出可能なほど変換することは見られなかった。
望む活性を持つポリペプチドを、以下の方法を用いて、対象のクローンをスクリーニングすることによって選別可能である。トリプトファン栄養要求株に、発現カセット上に対象のクローンを含むベクターを形質導入し、少量のモナチンまたはMPを含む培地上で増殖させる。アミノトランスフェラーゼおよびアルドラーゼ反応が可逆的であるので、細胞が、モナチンのラセミ混合物よりトリプトファンを産生可能である。同様に、(組換え体および野生型両方の)有機体を、炭素およびエネルギー供給源として、MPまたはモナチンの利用可能性によって選別可能である。標的アルドラーゼの1つの供給源が、種々のシュードモナスおよびリゾバクテリア株の発現ライブラリーである。シュードモナスは、芳香族分子の分解のために、多くの異常な代謝経路を持ち、また、多くのアルドラーゼを含み、一方で、リゾバクテリアは、アルドラーゼ類を含み、植物根圏中で増殖すると知られており、モナチンのための生合成経路の構築のために記述された多くの遺伝子を持つ。
実施例3
トリプトファンまたはインドール−3−ピルビン酸のモナチンへの変換
2つの酵素、アミノトランスフェラーゼおよびアルドラーゼを利用するインビトロ工程が、トリプトファンおよびピルビン酸よりモナチンを産生した。第一段階において、α−ケトグルタル酸が、インドール−3−ピルビン酸およびグルタミン酸を産生する、トランスアミノ化反応において、トリプトファンからのアミノ基のアクセプターであった。アルドラーゼは、Mg2+およびリン酸の存在下で、ピルビン酸がインドール−3−ピルビン酸と反応し、モナチン(MP)のα−ケト誘導体、2−ヒドロキシ−2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸を産生する第二反応を触媒した。アミノ基の、第一反応にて形成されたグルタミン酸からの伝達によって、望む産物であるモナチンが産生された。産物の精製および特性化によって、形成された異性体が、S,S−モナチンであったことが確立された。他の基質、酵素および条件、および本工程に関して実施された改善を記述する。
酵素
アルドラーゼ、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)からの4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸ピルビン酸リアーゼ(ProAアルドラーゼ、proA遺伝子)(EC4.1.3.17)を、実施例2で記述したように、クローン化し、発現させ、精製した。B.サブチリス、大腸菌およびS.メリロッティからの4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸グリオキシレートリアーゼ類(KHGアルドラーゼ類)(EC4.1.3.16)を、実施例2で記述したようにクローン化し、発現させ、精製した。
モナチンを産生するために利用したアルドラーゼとの組み合わせで使用したアミノトランスフェラーゼは、大腸菌aspC遺伝子によってコードされたL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、大腸菌tyrB遺伝子によってコードされたチロシンアミノトランスフェラーゼ、S.メリロッティTatA酵素、L.メジャーbsat遺伝子によってコードされた広基質アミノトランスフェラーゼ、またはブタ心臓からの、グルタミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(Type IIa)であった。非哺乳動物タンパク質のクローニング、発現および精製は、実施例1で記述している。ブタ心臓からのグルタミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(IIa型)は、シグマ(Sigma)(#G7005)より得た。
ProAアルドラーゼおよびL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを用いる方法
反応混合液には、1リットル中、50mM酢酸アンモニア、pH8.0、4mM MgCl2、3mMリン酸カリウム、0.05mMリン酸ピリドキサール、100mMピルビン酸アンモニア、50mMトリプトファン、10mM α−ケトグルタル酸、160mgの組換え体C.テストステロニProAアルドラーゼ(未精製細胞抽出液、〜30%アルドラーゼ)、233mgの組換え体大腸菌L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(未精製細胞抽出液、〜40%アミノトランスフェラーゼ)が含まれた。酵素を除くすべての成分を一緒に混合し、トリプトファンが溶解するまで、30℃にてインキュベートした。次いで、酵素を加え、反応溶液を、3.5時間、ゆっくりと撹拌しながら(100rpm)、30℃にてインキュベートした。酵素の添加0.5および1時間後、固体トリプトファンの一部(各50mmol)をこの反応液に加えた。加えたトリプトファンは全ては溶解しなかったが、濃度は、50mM以上に維持された。3.5時間後、固体トリプトファンを濾過して取り除いた。標準として定義された量のトリプトファンを用いる、LC/MSによる反応混合液の解析が、溶液中のトリプトファンの濃度が、60.5mMであり、モナチンの濃度が、5.81mM(1.05g)であったことを示した。
以下の方法を使用して、最終産物を精製した。90パーセントの透明な溶液を、バイオラッド(BioRad)AG50W−X8樹脂(225mL、1.7meq/mLの結合能力)のカラムに適用した。カラムを水で洗浄し、280nmでの吸収が、画分をとおした最初のフローの<5%であるまで、300mL画分を回収した。次いでカラムを、1M酢酸アンモニア、pH8.4で溶出し、4 300−mL画分を回収した。すべての4つの画分が、モナチンを含み、ぬるい水浴での、回転エバポレーターを用いて、105mLまで蒸発させた。沈殿物が、容量が減少したように形成され、蒸発工程の経路にわたって濾過して除去した。
LC/MSによるカラム画分の解析によって、99%のトリプトファンおよびモナチンがカラムに結合したことが示された。蒸発工程の間に形成された沈殿物は、>97%トリプトファンおよび<2%モナチンが含まれた。上清中のトリプトファンの産物に対する比は、およそ2:1であった。
上清(7ml)を、0.5L 1M NaOH、0.2L水、1.0Lの1.0M酢酸アンモニア、pH8.4、および0.5L水で洗浄することによって、先に、酢酸形態に変換した、100mL Fast Flow DEAE Sepharose(アマシャム バイオサイエンシス(Amersham Biosciences)に適用した。上清を、<2mL/分でのせ、カラムを、280nmでの吸収が〜0になるまで、3−4mL/分で、水によって洗浄した。モナチンを、100mM酢酸アンモニウム、pH8.4にて溶出し、4 100−mL画分を回収した。
画分の解析によって、画分を介したフロー中の、トリプトファンのモナチンに対する比が、85:15であり、溶出画分中の比が7:93であったことが示された。モナチンの280nmでの消滅係数が、トリプトファンと同様であるとすると、溶出画分は、0.146mmolの産物を含んだ。合計1Lの反応液に外挿すると、モナチンは〜2.4mmol(〜710mg)産生され、68%の回収率であった。
DEAE Sepharoseカラムからの溶出画分を、<20mLまで蒸発させた。産物の一部をさらに、解析スケールのモナチン特性化のために、実施例6で記述したものと同様のクロマトグラフィー条件を用いて、C8プレパラティブ逆相カラムに適用することによって、さらに精製した。ウォーターズ(Waters)Fractionlynx(商標)ソフトウェアを利用して、m/z=293イオンの検出に基づいて、モナチンの自動化画分回収を誘発した。モナチンに関する、相当するプロトン化された分子でのC8カラムからの画分を回収し、乾燥するまで蒸発させ、次いで、少量の水中に溶解した。この画分を、産物の特性化のために使用した。
得られた産物を、以下の方法を用いて特性化した。
UV/可視スペクトロスコピー
酵素的に産生されたモナチンのUV/可視スペクトロスコピー測定を、Cary 100 Bio UV/visible分光光度計を用いて実施した。水中に溶解させた精製した産物は、288nmの肩を持つ、280nmの吸収最大を持ち、これは、インドールを含む化合物の典型的な特徴である。
LC/MS解析
インビトロ生化学反応より由来したモナチンに関する、混合液の解析を、実施例6で記述したように実施した。インビトロ酵素合成混合液中のモナチンの、典型的なLC/MS解析を図5に例示している。図6に下パネルは、m/z=293でのモナチンのプロトン化分子イオンに関する、選択したイオンクロマトグラムを例示している。混合液中でのこのモナチンの同定は、図6で示した質量スペクトルによって確証となった。LC/MSによる精製した産物の解析は、293の分子イオンでのシングルピークと、280nmでの吸収を示した。質量スペクトルは、図6で示したものと同一であった。
MS/MS解析
実施例6で示したような、LC/MS/MS娘イオン実験をまた、モナチンにおいて実施した。モナチンの娘イオン質量スペクトルを図7に示している。図7で標識された全ての断片イオンの仮の構造アサイメントを実施した。これらには、m/z=275(293−H2O)、257(293−(2×H2O))、230(275−COOH)、212(257−COOH)、168(3−ブタ−1,3−ジエニル−1H−インドールカルボニウムイオン)、158(1H−インドール−3−カルボアルデヒドカルボニウムイオン)、144(3−エチル−1H−インドールカルボニウムイオン)、130(3−メチレン−1H−インドールカルボニウムイオン)および118(インドールカルボニウムイオン)の断片イオンが含まれる。これらの多くは、分子のインドール部分から由来すると予測されたように、MPに関して得たもの(実施例2)と同様である。いくつかは、ケトンの代わりにアミノ基の存在によって、MPに関して見られたものよりも1質量ユニット大きい。
モナチンの正確な質量測定
図8は、アプライド・バイオシステムズ−パーキン・エルマー(Applied Biosystems−Perkin Elmer)Q−Starハイブリッドクワドロポール/飛行時間質量スペクトロメーターを用いて、精製したモナチンに関して得られた質量スペクトルを示している。内部質量較正標準としてトリプトファンを用いた、プロトン化されたモナチンに関する測定された質量は、293.1144であった。プロトン化モナチンの計算された質量は、要素組成C14H17N2O5に基づいて、293.1137である。これは、2部分/100万(ppm)以下の質量測定エラーであり、酵素的に産生されたモナチンの要素組成の決定的な証拠を提供している。
NMR分光法
NMR実験を、Varian Inova 500MHz器具上で実施した。モナチンの試料(〜3mg)を0.5mlのD2O中に溶解した。最初に、溶媒(D2O)を、4.78ppmでの内部参照として利用した。水に対するピークが大きかったので、1H−NMRを、水に対するピークの抑制のために実施した。つづいて、水ピークの広がりのために、モナチンのC−2部分を、参照ピークとして利用し、7.192ppmの公表値として設定した。
13C−NMRに関して、数百のスキャンの初期実施によって、試料が希釈されすぎており、割り当てられた時間で、正確な13Cスペクトルを得ることができないことが示唆された。したがって、ヘテロ核多重量子結合力(HMQC)実験を実施し、水素および結合した炭素の相関を可能にし、また、炭素の化学シフトにおける情報を提供する。
1HおよびHMQCデータの要約を、表2および3で示している。公表値との比較によって、NMRデータが、酵素的に産生されたモナチンが、(S,S)または(R,R)いずれか、または両方の混合物であることを示唆した。
キラルLC/MS解析
インビトロで産生されたモナチンが、1つの異性体であり、(R,R)および(S,S)エナンチオマーの混合物ではないことを確立するために、キラルLC/MS解析を、実施例6で記述した器具を用いて実施した。
キラルLC分離を、Chirobiotic T(アドバンスド・セパレーションズ・テクノロジー(Advanced Separations Technology)キラルクロマトグラフィーカラムを用いて、室温にて実施した。ベンダーからの公表されたプロトコールに基づいて、分離および検出を、トリプトファンのR−(D)およびS−(L)異性体に最適化した。LC移動相は、A)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸を含む水、B)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸を含むメタノールからなった。溶出は、70%Aおよび30%Bで定組成であった。流速は、1.0mL/分であり、PDA吸収を200nm〜400nmでモニタした。トリプトファンおよびモナチンのキラルLC/MS解析に関して使用した器具パラメータは、LC/MS解析に関して、実施例6で記述したものと同一である。m/z150〜400領域に関する質量スペクトルの回収を利用した。プロトン化分子イオンに関する選択したイオンクロマトグラム(R−およびS−トリプトファンに関して、[M+H]+=205、モナチンに関して[M+H]+=293)によって、混合液中でのこれらの解析物の直接の同定が可能であった。
キラルクロマトグラフィーによって分離し、MSによってモニタした、R−およびS−トリプトファンおよびモナチンのクロマトグラムを図9で示している。モナチンのクロマトグラム中での単一のピークが、化合物が1つの異性体であることを示唆し、S−トリプトファンに対してほとんど同一である保持時間を持つ。
偏光分析法
旋光度を、Rudolph Autopol III旋光度計上で測定した。モナチンを、水中14.6mg/mL溶液として調製した。S,Sモナチン(塩形態)に関して予想された特定の旋光([α]D 20)は、水中1g/mL溶液に関して、−49.6である(Vleggaar et al)。観察された[α]D 20は、精製した、酵素的に産生されたモナチンに関して、−28.1であり、これがS,S異性体であることを示唆している。
改善
試薬および酵素濃度を含む、反応条件を最適化し、5〜10mg/mLの収率を、以下の試薬混合液、50mM酢酸アンモニア pH8.3、2mM MgCl2、200mMピルビン酸(ナトリウムまたはアンモニウム塩)、5mM α−ケトグルタル酸(ナトリウム塩)、0.05mM酢酸ピリドキサール、酵素の添加後、1mLの最終容量を達成するための脱気水、3mMリン酸カリウム、50μg/mLの組換え体ProAアルドラーゼ(細胞抽出液、総タンパク質濃度167μg/mL)、1000μg/mLの、大腸菌aspC遺伝子によってコードされた、L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(細胞抽出液、総タンパク質濃度、2500μg/mL)、および>60mMの濃度を達成するための固体トリプトファン(飽和、反応を通して未溶解)を用いて産生した。混合液を、30℃にて4時間、ゆっくりと撹拌するか、混合しながらインキュベートした。
代用
α−ケトグルタル酸の濃度は、1mMまで減少可能であり、等収率のモナチンで、9mMアスパラギン酸を含めることができる。オキサロ酢酸のような、他のアミノ酸アクセプターを、第一段階で使用可能である。
組換え体L.メジャー広基質アミノトランスフェラーゼを、大腸菌L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの代わりに使用した場合、モナチンの同様の収率を達成した。しかしながら、292の分子量を持つ、第二の未同定産物(主要産物の3〜10%)もまた、LC−MS解析によって検出された。0.1〜0.5mg/mLのモナチン濃度が、大腸菌tyrBコード酵素、S.メリロッティtatAコード酵素、またはブタ心臓からのグルタミン−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(IIa型)をアミノトランスフェラーゼとして加えた場合に産生された。インドール−3−ピルビン酸から反応を開始した場合、還元アミン化は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼおよびNADHで、最終段階にて実施可能である(実施例4で示したように)。
B.サブチリス、大腸菌およびS.メリロッティからのKHGアルドラーゼをまた、モナチンを酵素的に産生するために、大腸菌L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼと一緒に使用した。以下の反応条件を使用した。50mM NH4−OAc pH8.3、2mM MgCl2、200mM ピルビン酸、5mM グルタミン酸、0.05mM リン酸ピリドキサール、酵素の添加後、0.5mLの最終容量を達成するための脱気水、3mMリン酸カリウム、20μg/mLの組換え体B.サブチリスKHGアルドラーゼ(精製)、約400μg/mLの細胞抽出液より未精製な、大腸菌L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、および12mMインドール−3−ピルビン酸。反応液を、振とうしながら、30℃にて30分間インキュベートした。B.サブチリス酵素を用いて産生されたモナチンの量は、80ng/mLであり、アルドラーゼの増量に伴って増加した。インドール−3−ピルビン酸およびグルタミン酸を、飽和量のトリプトファンおよび5mMα−ケトグルタル酸で置換した場合、モナチンの産生が、360ng/mLまで増えた。反応を、飽和量のトリプトファンで、50mM Tris pH8.3中、30μg/mLの各3つのKHG酵素で繰り返し、検出を増加させるために、1時間処理した。バシルス酵素は、実施例2でのように、最も高い活性を持ち、およそ4000ng/mLモナチンを産生する。大腸菌KHGは3000ng/mLモナチンを産生し、S.メリロッティ酵素は、2300ng/mLを産生した。
実施例4
MPおよびモナチン間の相互変換
モナチンを形成するためのMPのアミン化は、実施例1および3で同定したもののようなアミノトランスフェラーゼ類によって、またはNADHまたはNADPHのような還元共因子を必要とするデヒドロゲナーゼ類によって触媒可能である。これらの反応は可逆的であり、いずれかの方向で測定可能である。デヒドロゲナーゼ酵素を利用する場合、方向性は、アンモニウム塩の濃度によって、大きく制御され得る。
デヒドロゲナーゼ活性
モナチンの酸化的脱アミノ化を、NAD(P)+が、より発色体のNAD(P)Hに変換されたので、340nmでの吸収の増加を追うことでモニタした。モナチンを、実施例3で記述したように、酵素的に産生し、精製した。
典型的なアッセイ混合液には、0.2mL中、50mM Tris−HCl、pH8.0〜8.9、0.33mM NDA+またはNADP+、2〜22ユニットのグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ)、および10〜15mMの基質が含まれた。アッセイは、モレキュラー・デバイセス(Molecular Dvices)SpectraMax Plusプレートリーダー上、UV−透明マクロタイタープレート中で、二重に実施した。酵素、緩衝液、およびNAD(P)+の混合液を、基質を含むウェル内にピペットし、340nmでの吸収の増加を、簡単に混合した後、10秒の間隔でモニタした。反応液を、25℃にて10分間インキュベートした。陰性対照を、基質の添加無しで実施し、グルタミン酸を、陽性対照として利用した。ウシ肝臓からのIII型グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ#G−7882)は、グルタミン酸のα−ケトグルタル酸への変換率の、およそ100分の1の変換率で、モナチンのモナチン前駆体への変換を触媒する。
アミノ基転移活性
モナチンアミノトランスフェラーゼアッセイを、大腸菌からのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、大腸菌からのチロシンアミノトランスフェラーゼ(TyrB)、L.メジャーからの広基質アミノトランスフェラーゼ(BSAT)、および実施例1で記述した、2つの市販されているブタグルタミン酸−オキサロ酢酸アミノトランスフェラーゼにて実施した。オキサロ酢酸およびα−ケトグルタル酸両方を、アミノアクセプターとして試験した。アッセイ混合液には、(0.5mL中)、50mM Tris−HCl、pH8.0、0.05mM PLP、5mM アミノアクセプター、5mM モナチン、および25μgのアミノトランスフェラーゼが含まれた。アッセイを、30℃にて30分間インキュベートし、反応を、0.5mLのイソプロピルアルコールの添加によって停止させた。モナチンの欠損を、LC/MSによってモニタした(実施例6)。最も高い量の活性が、アミノアクセプターとしてオキサロ酢酸での、L.メジャーBSATにて記録され、続いて、アミノアクセプターとしてα−ケトグルタル酸での同様の酵素であった。オキサロ酢酸での相対活性は、BSAT>AspC>ブタIIa型>ブタI型=TyrBであった。α−ケトグルタル酸での相対活性は、BSAT>AspC>ブタI型>ブタIIa型>TryBであった。
以上で記述したのと同様のアッセイ、および実施例6で記述した検出方法を利用して、2つの酵素、S.メリロッティtatAおよびR.スファエロイデスtatAは、試験した条件下で、モナチンをMPへ、検出可能に変換するようには見られなかった。この検出可能な活性の欠損は、しかしながら、水溶液中で不安定であるので、MPが時折検出することが難しいという事実による可能性がある。
実施例5
トリプトファンおよびトリプトファン以外のC3供給源からのモナチンの産生
実施例3で記述したように、インドール−3−ピルビン酸またはトリプトファンを、C3分子としてピルビン酸を用いてモナチンに変換可能である。しかしながら、いくつかの環境で、ピルビン酸は、望ましい原材料ではない。例えば、ピルビン酸は、他のC3炭素供給源より高額であり得、または培地に加えた場合に、発酵において、逆効果を持ち得る。アラニンを、多くのPLP−酵素によってアミン変換して、ピルビン酸を産生可能である。
トリプトファナーゼ−様酵素は、アミノトランスフェラーゼのような、他のPLP酵素よりもより速い速度で、ベータ−脱離反応をおこす。このクラス(4.1.99.−)からの酵素は、L−セリン、L−システイン、およびO−メチル−L−セリン、O−ベンジル−L−セリン、S−メチルシステイン、S−ベンジルシステイン、S−アルキル−L−システイン、O−アシル−L−セリン、3−クロロ−L−アラニンのような、良い脱離基を持つセリンおよびシステインの誘導体から、アンモニアおよびピルビン酸を産生可能である。
EC4.1.99.−ポリペプチドを用いてモナチンを産生するための工程を、Mouratou他(J.Biol.Chem 274:1320−5,1999)の方法にしたがって、β−チロシナーゼ(TPL)またはトリプトファナーゼに変異導入することによって改良可能である。Mouratou他は、β−チロシナーゼの、天然に存在するとは報告されていない、ジカルボン酸アミノ酸β−リアーゼへの変換の能力を記述している。特異性の変化は、バリン(V)283を、アルギニン(R)に、そしてアルギニン(R)100をスレオニン(T)に変換することによって達成した。これらのアミノ酸の変化が、リアーゼに関して、(アスパラギン酸のような)加水分解脱アミノ化反応に関して、ジカルボン酸アミノ酸を許容させる。したがって、アスパラギン酸がまた、続くアルドール濃縮反応のための、ピルビン酸の供給源として利用可能である。
さらに、細胞または酵素反応器に、乳酸および乳酸をピルビン酸に変換する酵素を供給可能である。この反応を触媒可能な酵素の例には、乳酸デヒドロゲナーゼおよび乳酸オキシダーゼが含まれる。
ゲノムDNAの単離
トリプトファナーゼポリペプチドは、例えばMouratou他(JBC 274:1320−5,1999)にて先に報告されてきている。トリプトファナーゼポリペプチドをコードする遺伝子を単離するために、大腸菌DH10BからのゲノムDNAを、実施例1で記述したようなPCRのための鋳型として利用した。
チロシン−フェノールリアーゼに関する遺伝子を、C.フレウンディ(C.freundii)(ATCCカタログ番号8090、Designation ATCC 13316、NCTC 9750)より単離し、Nutrient寒天(Difco 0001)および栄養培地(Difco 0003)上で、OD2.0まで、37℃にて増殖させた。ゲノムDNAを、キアゲンGenomic−tip(商標)100/Gキットを用いて精製した。
コード配列のPCR増幅
プライマーを、実施例1で記述したように、pET30Xa/LICベクター(ノヴァジェン、Madison,WI)に関して適合可能なオーバーハングを含めて設計した。
大腸菌tna(配列番号41)。pET30Xa/LICクローニングのためのN−末端プライマー:5’−GGT ATT GAG GGT CGC ATG GAA AAA AAC TTT AAA CAT CT−3’(配列番号43)。pET30Xa/LICクローニングのためのC−末端プライマー:5’−AGA GGA GAG TTA GAG CCT TAA ACT TCT TTA AGT TTT G−3’(配列番号44)。
C.フレウンディ tpl(配列番号42)。pET30Xa/LICクローニングのためのN−末端プライマー:5’−GGT ATT GAG GGT CGC ATGAATTATCCGGCAGAACC−3’(配列番号45)。pET30Xa/LICクローニングのためのC−末端プライマー:5’−AGA GGA GAG TTA GAG CCTTAGATGTAATCAAAGCGTG−3’(配列番号46)。
Eppendorf Mastercyler(商標)Gradient 5331 Therfmal Cyclerを全てのPCR反応のために使用した。50μL中、0.5μg 鋳型(ゲノムDNA)、1.0μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5U Expand High Fidelity Polymerase(ロッシュ)、1×Expand緩衝液Mg入り、および5%DMSO(最終濃度)を加えた。使用したサーマルサイクラーPCRプログラムは、以下のようであった。96℃加熱開始(5分間)、94℃−30秒間、40〜60℃−1分45秒間、72℃−2分15秒間、30回繰り返し。最終重合段階は7分間であり、次いで試料を4℃にて保存した。
クローニング
実施例1で詳述した、クローニングおよび陽性クローン同定手順を使用して、適切なクローンを同定した。
遺伝子発現および活性アッセイ
(配列解析によって確認した)プラスミドDNAを、発現宿主BL21(DE3)(ノヴァジェン)内にサブクローン化した。培養液を、30mg/Lカナマイシンを含むLB培地中で増殖させ、プラスミドをキアゲン・ミニプレップ・キットを用いて単離し、制限消化によって解析して、同一性を確認した。
誘導実験を、BL21(DE3)発現宿主で実施し、構造物を、37℃にて、50mg/Lカナマイシンを含むLB培地中で増殖させた。タンパク質発現を、培養液のOD600がおよそ0.6に達した後、0.1mM IPTGによって誘導した。細胞を、30℃にて4時間増殖させ、遠心によって回収した。次いで、細胞を、5μL/mLプロテアーゼ阻害剤カクテルセット#III(カルビオケム(Calbiochem))および1μL/mLベンゾナーゼヌクレアーゼ(ノヴァジェン)を含む、5mL/gウェット細胞重量のBugBuster(商標)(ノヴァジェン)試薬中で溶解し、His−タグ化組換え体タンパク質を、実施例1で記述したような、His−Bindカートリッジを使用して精製した。精製タンパク質を、PD−10(G25 Sephadex、アマシャム バイオサイエンセス(Amersham Biosciences))カラム上で脱塩し、100mM Tris−Cl緩衝液、pH8.0中に溶出した。タンパク質を、4〜15%勾配ゲル上のSDS−PAGEによって解析し、組換え体融合タンパク質の予想MWでの、可溶性タンパク質レベルを確認した。
変異導入
ペプチドクラス4.1.99.−のいくつかのメンバー(トリプトファナーゼおよびβ−チロシナーゼ)が、任意の改変なしで、アスパラギン酸または同様のアミノ酸と、ベータ−リアーゼ反応を起こし得る。しかしながら、このクラスのいくつかのメンバーは、基質の利用および/または産物の作製を可能にするために、変異導入される必要があり得る。さらに、いくつかの場合、変換を実施可能なポリペプチドをさらに、変異導入によって最適化可能である。
部位特異的変異導入を、PLP−結合ポリペプチドの3D構造解析に基づいて実施した。ポリペプチドの基質特異性を変化させた2つの例を以下に示す。
トリプトファナーゼの変異導入 実施例A
以下の提供した変異導入プロトコールによって、アミノ酸配列に2つの点変異が導入された。第一点変異導入は、位置103でのアルギニン(R)をスレオニン(T)に変え、第二点変異導入は、位置299でのバリン(V)をアルギニン(R)に変えた(大腸菌成熟タンパク質のためのナンバリングシステム)。変異導入実験は、ATGラボラトリーズ(ATG Laboratories)(Eden Prairie、MN)によって実施した。変異を、遺伝子断片のPCRによって連続的に導入し、断片の再アセンブルを、同様にPCRによって実施した。
アルギニン(R)103をチロシン(T)に変換するためのプライマー
5’−CCAGGGCACCGGCGCAGAGCAAATCTATATT−3’(配列番号47)、および
5’−TGCGCCGGTGCCCTGGTGAGTCGGAATGGT−3’(配列番号48)。
バリン(V)299をアルギニン(R)に変換するためのプライマー
5’−TCCTGCACGCGGCAAAGGGTTCTGCACTCGGT−3’(配列番号49)、および
5’−CTTTGCCGCGTGCAGGAAGGCTTCCCGACA−3’(配列番号50)。
変異体を、XbaI/HindIIIおよびSphIでの制限消化によって選別し、シークエンシングによって確認した。
チロシンフェノールリアーゼ(β−チロシナーゼ)の変異導入 実施例B
2つの点変異導入を、チロシンフェノールリアーゼアミノ酸配列に実施した。これらの変異導入によって、位置100でのアルギニン(R)がチロシン(T)に変換され、位置283のバリン(V)が、アルギニンに変換された(C.フレウンディ成熟タンパク質配列中)。
R100T変換のためのプライマーは、
5’−AGGGGACCGGCGCAGAAAACCTGTTATCG−3’(配列番号51)、および
5’−TCTGCGCCGGTCCCCTGGTGAGTCGGAACAAT−3’(配列番号52)であった。
V283R変換のためのプライマーは、
5’−GTTAGTCCGCGTCTACGAAGGGATGCCAT−3’(配列番号53)、および
5’−GTAGACGCGGACTAACTCTTTGGCAGAAG−3’(配列番号54)であった。
以上で記述した方法を用い、クローンを、KpnI/SacI消化、およびBstXI消化によって選別した。配列を、ジデオキシ鎖終結シークエンシングによって確認した。組換え体タンパク質を、野生型酵素に関して以上で記述したように産生した。
反応混合液は、50mM Tris−Cl pH8.3、2mM MgCl2、200mM C3炭素供給源、5mM α−ケトグルタル酸、ナトリウム塩、0.05mM リン酸ピリドキサール、酵素の添加後、0.5mLの最終容量を達成するための脱気水、3mMリン酸カリウム、pH7.5、25μgの、実施例2で調製したような、未精製組換え体C.テストステロニProAアルドラーゼ、500μgの、実施例1で調製したような、未精製L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspC)、および>60mMの濃度を達成するための固体トリプトファン(飽和、反応を通して未溶解)からなった。この反応混合液を、混合しながら、30℃にて30分間インキュベートした。セリン、アラニンおよびアスパラギン酸を、3−炭素供給源として供給した。アッセイを、ベータ−脱離およびベータ−リアーゼ反応を実施可能な第二PLP酵素(精製)(トルプトファナーゼ(TNA)、二重変異導入トリプトファナーゼ、β−チロシナーゼ(TPL))あり、およびなしで実施した。反応混合液のLC/MS解析の結果を表4に示している。
3−炭素供給源として、アラニンおよびセリンから産生されたモナチンを、LC/MS/MS娘スキャン解析によって確認し、実施例3で産生された、特性化されたモナチンと同一であった。アラニンは、試験した中で最もよいものであり、AspC酵素によってアミノ変換された。産生されたモナチンの量は、トリプトファナーゼの添加によって増加し、この酵素は、アミノ変換第二活性を持つ。炭素供給源としてセリンによって産生されたモナチンの量は、アミノトランスフェラーゼと比較して、5分の1だけの量のトリプトファナーゼを加える場合でも、トリプトファナーゼ酵素の添加によって、ほぼ二倍になった。AspCは、いくらかの量のベータ−脱離活性のみで可能である。アスパラギン酸の結果は、アスパラギン酸におけるトリプトファナーゼ活性が、β−チロシナーゼに関して先に提案されたのと同様の部位特異的変異導入では増加しなかったことを示唆している。変異体β−チロシナーゼが、モナチン産生に関して、より高い活性を持ち得ることが予想される。
実施例6
モナチン、MP、トリプトファンおよびグルタミン酸の検出
本実施例は、モナチンの存在、およびその前駆体2−ヒドロキシ2−(インドール−3−イルメチル)−4−ケトグルタル酸、ならびにトリプトファンおよびグルタミン酸の存在を検出するために使用する方法を記述している。また、モナチンの4つの立体異性体の分離および検出に関する方法も記述している。
モナチン、MPおよびトリプトファンのLC/MS解析
インビトロまたはインビボ生化学反応より由来した、モナチン、MPおよび/またはトリプトファンの解析を、クロマトグラフと、ミクロマス(Micromass)Quattro Ultima三重四重極子質量分析器の間に連続してウォーターズ(Waters)996 Photo−Diode Array(PDA)吸収モニターが配置された、ウォーターズ(Waters)2795液体クロマトグラフィーを含む、ウォーターズ/ミクロマス(Waters/Micromass)液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC/MS/MS)器具を用いて実施した。LC分離は、Xterra MS C8逆相クロマトグラフィーカラム、2.1mm×250mm、またはSupelco Discovery C18逆相クロマトグラフィーカラム、2.1mm×150mmを用いて、室温にて、または40℃にて実施した。LC移動相は、A)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸を含む水、およびB)0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸を含むメタノールからなった。
勾配溶出は、5%B〜35%Bの直線、0〜4分間、35%B〜60%Bの直線、4〜6.5分間、60%B〜90%Bの直線、6.5〜7分間、90%Bでの定組成、7〜11分間、90%B〜95%Bの直線、11〜12分間、95%B〜5%Bの直線、12〜13分間、および実施の間の5分間の再平衡であった。流速は、0.25mL/分であり、PDA吸収を、200nm〜400nmでモニタした。ESI−MSの全てのパラメータを、対象の解析物のプロトン化分子イオン([M+H]+)の発生、および特徴的な断片イオンの産生に基づいて、最適化し、選択した。
以下の器具パラメータを、モナチンのLC/MS解析のために利用した。キャピラリー(Capillary):3.5kV、コーン(Cone):40V、ヘックス1(Hex1):20V、開口(Aperture):0V、ヘックス2(Hex2):0V、供給源温度(Source temperature):100℃、脱溶媒和温度(Desolvation temperature):350℃、脱溶媒和ガス(Desolvation gas):500L/時間、コーンガス(Cone gas):50L/時間、低質量分解(Low mass resolution)(Q1):15.0、高質量分解(High mass resolution)(Q1):15.0、イオンエネルギー(Ion energy):0.2、入口(Entrance):50V、衝突エネルギー(Collision Energy):2、出口(Exit):50V、低質量分解(Low mass resolution)(Q2):15、高質量分解(High mass resolution)(Q2):15、イオンエネルギー(Ion energy)(Q2):3.5、乗数(Multiplier):650。報告された質量/電荷比(m/z)および分子量の不確かさは、±0.01%である。モナチン(MP)のα−ケト酸形態および混合液中のモナチンの初期検出は、m/z150〜400の範囲の質量スペクトルの回収で、LC/MSモニタリングによって実施した。プロトン化分子イオン(MPに関して、[M+H]+=292、モナチンに関して、[M+H]+=293、トリプトファンに関して、[M+H]+=205)に関する選択されたイオンクロマトグラフィーは、混合液中でのこれらの解析物の直接の同定を可能にする。モナチンおよびMP検出に関する続く方法は、(MRM)LC/MS/MS方法をモニタリングする多重反応を利用した(以下を参照のこと)。
モナチンのためのLC/MS/MS解析
LC/MS/MS娘イオン実験を、以下のようにモナチンにおいて実施した。娘イオン解析には、第一質量解析器(Q1)から、質量分析器の衝突細胞内への、対象の親イオン(例えば、モナチンに関してm/z=293)の遷移を伴い、そこで、アルゴンが導入され、親を断片(娘)イオンへ化学的に分離する。これらの断片イオンを次いで、第二質量解析器(Q2)で検出し、親の構造アサイメントを確認するために利用可能である。トリプトファンを、m/z=205の遷移および断片化を介して、同様の方法で、特性化し、定量した。
以下の器具パラメータを、モナチンのLC/MS/MS解析のために利用した。キャピラリー(Capillary):3.5kV、コーン(Cone):40V、ヘックス1(Hex1):20V、開口(Aperture):0V、ヘックス2(Hex2):0V、供給源温度(Source temperature):100℃、脱溶媒和温度(Desolvation temperature):350℃、脱溶媒和ガス(Desolvation gas):500L/時間、コーンガス(Cone gas):50L/時間、低質量分解(Low mass resolution)(Q1):13.0、高質量分解(High mass resolution)(Q1):13.0、イオンエネルギー(Ion energy):0.2、入口(Entrance):−5V、衝突エネルギー(Collision Energy):14、出口(Exit):1V、低質量分解(Low mass resolution)(Q2):15、高質量分解(High mass resolution)(Q2):15、イオンエネルギー(Ion energy)(Q2):3.5、乗数(Multiplier):650。
LC/MS/MS多重反応モニタリング
モナチン検出の感度および選択性を増加させるために、MRM測定を利用するLC/MS/MS法が開発された。LC分離を、先の項目で記述したように実施した。ESI−MS/MSに関する器具パラメータを、Q1およびQ2に関して設定した、低および高質量分解を、感度を最大化するために、12.0に設定した以外、先の項目で記述したように設定した。5つのモナチン特異的親−娘遷移を利用して、インビトロおよびインビボ反応にて、モナチンを特異的に検出した。遷移は、293.1から158.3、293.1から168.2、293.1から211.2、293.1から230.2および293.1から257.2である。
モナチン、トリプトファンおよびグルタミン酸(グルタミン酸塩)のハイ−スループット決定
インビトロまたはインビボ反応から由来したモナチン、トリプトファン、および/またはグルタミン酸に関する混合液の、ハイ−スループット解析(<5分/試料)を、以上で記述した器具、およびLC/MS/MS多重反応モニタリングに関して記述したのと同様のMSパラメータを用いて実施した。LC分離を、4.6mm×50mm アドバンスド セパレーション・テクノロジーズ・カイロバイオティックT(Advanced Separation Technologies Chirobiotic T)カラムを用いて、室温にて実施した。LC移動相は、A)0.25%酢酸を含む水、B)0.25%酢酸を含むメタノール、からなった。アイソクラチック溶出は、50%B、0〜5分であった。流速は、0.6mL/分であった。ESI−MS/MSシステムの全てのパラメータを、トリプトファンおよびモナチンのプロトン化分子イオンの最適なインソース発生、および内部標準2H5−トリプトファンまたは2H3−グルタミン酸、ならびに多重反応モニタリング(MRM)実験のための解析物−特異的断片イオンの、衝突誘導産生(トリプトファンに関して、204.7〜146.4、2H5−トリプトファンに関して209.7〜151.4、グルタミン酸に関して、147.6〜102.4、2H3−グルタミン酸に関して150.6〜105.4、モナチン−特異的遷移は先の項目で列記している)に基づいて、最適化し、選択した。
モナチンの正確な質量測定
高分解MS解析を、アプライド バイオシステムズ−パーキンエルマー(Applied Biosystems−Perkin Elmer)Q−Starハイブリッド四重極子/飛行時間質量分析器を用いて実施した。プロトン化モナチンに関して測定した質量は、トリプトファンを内部質量較正標準として使用した。要素組成C14H17N2O5に基づいて、プロトン化モナチンの計算した質量は、293.1137である。実施例3で記述した生物触媒工程を用いて産生したモナチンは、293.1144の測定質量を示した。これは、2部分/100万(ppm)以下の質量測定エラーであり、酵素的に産生されたモナチンの要素組成の確実な証拠を提供している。
モナチンのキラルLC/MS/MS(MRM)測定
インビトロおよびインビボ反応中の、モナチンの立体異性体分布の決定を、1−フルオロ−2−4−ジニトロフェニル−5−L−アラニンアミド(FDAA)での誘導体化、続いて逆相LC/MS/MS MRM測定によって実施した。
FDAAでのモナチンの誘導体化
50μLの試料または標準に、200μLの、酢酸中1%FDAA溶液を加えた。40μLの1.0M重炭酸ナトリウムを加え、この混合液を、時折混合して、40℃にて1時間インキュベートした。試料を除去し、冷却し、20μLの2.0M HClで中和した(より多くのHClが、緩衝化生物学的混合物の中和を達成するために必要であり得る)。脱気を完了した後に、試料が、LC/MS/MSによる解析のために準備出来た。
インビトロおよびインビボ反応における、モナチンの立体異性体分布の決定のための、LC/MS/MS多重反応モニタリング
解析を、先の項目で記述した、LC/MS/MS器具を用いて実施した。モナチン(とりわけFDAA−モナチン)のすべての4つの立体異性体を分離可能であるLC分離を、フェノメネックス(Phenomenex)Luna(5μm)C18逆相クロマトグラフィーカラム上で、40℃にて実施した。LC移動相は、A)0.05%(質量/容量)酢酸アンモニアを含む水、B)アセトニトリル、からなった。勾配溶出は、2%B〜34%Bの直線、0〜33分、34%B〜90%Bの直線、33〜34分、90%Bの定組成、34〜44分、および90%B〜2%Bの直線、44〜46分であり、実施の間に16分の再平衡化期間を含んだ。流速は、0.25mL/分であり、PDA吸収を、200nm〜400nmでモニタした。ESI−MSの全てのパラメータは、FDAA−モナチンのプロトン化分子イオン([M+H]+)の発生、および特徴的な断片イオンの産生に基づいて、最適化し、選択した。
以下の器具パラメータを、陰性イオンESI/MSモードにおける、モナチンのLC/MS解析のために使用した。キャピラリー(Capillary):2.0kV、コーン(Cone):25V、ヘックス1(Hex1):10V、開口(Aperture):0V、ヘックス2(Hex2):0V、供給源温度(Source temperature):100℃、脱溶媒和温度(Desolvation temperature):350℃、脱溶媒和ガス(Desolvation gas):500L/時間、コーンガス(Cone gas):50L/時間、低質量分解(Low mass resolution)(Q1):12.0、高質量分解(High mass resolution)(Q1):12.0、イオンエネルギー(Ion energy):0.2、入口(Entrance):−5V、衝突エネルギー(Collision Energy):20、出口(Exit):1V、低質量分解(Low mass resolution)(Q2):12、高質量分解(High mass resolution)(Q2):12、イオンエネルギー(Ion energy)(Q2):3.0、乗数(Multiplier):650。3つのFDAA−モナチン−特異的親〜娘遷移を使用して、インビトロおよびインビボ反応における、FDAA−モナチンを特異的に検出した。遷移は、543.6から268.2、543.6から499.2および543.6から525.2である。FDAA−モナチン立体異性体の同定は、精製したモナチン立体異性体と比較した、クロマトグラフィー保持時間、および質量スペクトルデータに基づいた。
グルタミン酸を含むアミノ酸の、液体クロマトグラフィー−後カラム蛍光検出
インビトロおよびインビボ反応での、グルタミン酸の決定のための、カラム後蛍光検出を含む液体クロマトグラフィーを、ウォーターズ(Waters)2690LCシステム、またはウォーターズ474スキャニング蛍光検出器と組み合わせた等価のもの、およびウォーターズカラム後反応モジュール上で実施した。LC分離を、Interaction−Sodiumロードイオン交換カラム上で、60℃にて実施した。移動相Aは、Pickering Na 328緩衝液(ピッカーリング ラボラトリーズ社(Pickering Laboratories,Inc.)、Mountain View,CA)であった。移動相Bは、Pickering Na 740緩衝液であった。勾配溶出は、0%B〜100%B、0〜20分、100%B定組成、20〜30分、および100%B〜0%B、30〜31分であり、実施の間に、20分間の再平衡化期間を含んだ。移動相の流速は、0.5mL/分であった。OPAカラム後誘導体化溶液の流速は、0.5mL/分であった。蛍光検出器設定は、EX338nmおよびEm425nmであった。ノルロイシンを、解析のための内部標準として利用した。アミノ酸の同定は、精製した標準物に対する、クロマトグラフィー保持時間データに基づいた。
実施例7
細菌におけるモナチンの産生
本実施例は、大腸菌細胞内でモナチンを産生するために使用した方法を記述している。当業者は、同様の方法を、他の細菌細胞においてモナチンを産生するために使用可能であることを理解するであろう。さらに、モナチン合成経路(図2)での他の遺伝子を含むベクターを利用可能である。
大腸菌BL21(DE3)::proA/pET30 Xa/LIC細胞内でのモナチンの産生
(実施例2で記述したような)大腸菌BL21(DE#)::C.テストステロニproA/pET30 Xa/LIC細胞のフレッシュプレートを、50μg/mLのカナマイシンを含むLB培地上で調製した。一晩培養液(5mL)を、単一コロニーから接種し、カナマイシンを含むLB培地中で、30℃にて増殖させた。典型的には、1〜50接種を、50μg/mLのカナマイシンを含むtrp−1+グルコース培地中での誘導のために利用した。
大腸菌細胞中でのトリプトファンの産生を増加させるために使用されてきた最小培地(Zeman他,Folia Microbiol.35:200−4)である、Trp−1+グルコース培地を以下のように調製した。700mLナノピュア水に、以下の試薬、2g(NH4)2SO4、13.6gKH2PO4、0.2g MgSO4*7H2O、0.01g CaCl2*2H2Oおよび0.5mg FeSO4*7H2Oを加えた。pHを7.0に調整し、容量を、850mLまで増加させ、培地をオートクレーブした。50%グルコース溶液を別に調製し、濾過滅菌した。40mLを、1L最終容量のために、ベースの培地に加えた(850mL)。
10g/LのL−トリプトファン溶液を、0.1Mリン酸ナトリウムpH7中で調製し、濾過滅菌した。10分の1の容量を、一般的に、以下に特記したように、培地に加えた。10%ピルビン酸ナトリウム溶液をまた調製して、濾過滅菌した。10mLの分液を一般的に、培養液1リットルあたりで使用した。アンピシリン(100mg/mL)、カナマイシン(25mg/mL)およびIPTG(840mM)のストックを調製し、濾過滅菌し、使用の前に−20℃にて保存した。ツィーン20(ポリオキシエチレンン 20−Sorbitanモノラウレート)を、0.2%(vol/vol)最終濃度にて使用した。アンピシリンを、非致死濃度、典型的には、1〜10μg/mL最終濃度で使用した。
細胞を37℃にて増殖させ、0.35〜0.8のOD600が得られるまで、各時間ごとにサンプリングした。次いで細胞を0.1mM IPTGにて誘導し、インキュベーション温度を34℃まで下げた。試料(1ml)を誘導の前に回収し(ゼロ時間点)、5000×gで遠心した。上清を、LC−MS解析のために、−20℃にて冷凍した。誘導の4時間後、さらに1mLの試料を回収し、遠心して、細胞ペレットからブロスを分離した。トリプトファン、ピルビン酸ナトリウム、アンピシリンおよびツィーンを以上で記述したように加えた。
細胞を、誘導後48時間増殖させ、他の1mLの試料をとり、以上のように調製した。48時間の時点で、他のトリプトファンおよびピルビン酸の分液を加えた。全培養液容量を、増殖(誘導後)のおよそ70時間後、4℃、3500rpmにて20分間遠心した。上清をデカントし、ブロスおよび細胞両方を−80℃にて凍結した。ブロス画分を濾過し、LC/MSによって解析した。[M+H]+=293ピークの高さおよび面積を、実施例6で記述したようにモニタした。培地のバックグラウンドレベルを差し引いた。データをまた、600nmでの培養液の光学密度で割った、[M+H]+=293ピークの高さをプロットすることによって、細胞増殖に関して正規化した。
ピルビン酸、アンピシリンおよびツィーンを、誘導時ではなく、誘導後4時間で加えた場合に、より高いレベルのモナチンが産生された。PLP、さらなるリン酸、またはさらなるMgCl2のような他の添加物は、モナチンの産生を増加させなかった。トリプトファンを、インドール−3−ピルビン酸の代わりに利用した場合、およびトリプトファンを、接種時、または誘導時ではなく、誘導後に加えた場合に、より高いタイターのモナチンが得られた。誘導前、および誘導後4時間(基質添加時点)にて、典型的には、発酵ブロスまたは細胞抽出物中に、検出可能なレベルのモナチンはなかった。陰性対象を、pET30aベクターのみでの細胞を用いて、ならびにトリプトファンおよびピルビン酸を加えない培養で実施した。親MSスキャンによって、(m+1)/z=293を持つ化合物が、より大きな分子より誘導されず、(実施例6でのように実施した)娘スキャンが、インビトロ作製されたモナチンと同様であったことを示唆した。
(ツィーン、Trixon X−100および酢酸ドデシルアンモニウムのような)非イオン性界面活性剤の、モナチン細胞分泌における効果を研究した。とりわけ、モナチンの分泌における、ツィーンの効果を、0、0.2%(vol/vol)、および0.6%最終濃度のツィーン−20を用いることによって研究した。シェイクフラスコによて産生されたモナチンのもっとも大きな量は、0.2%ツィーンでのものであった。ツィーンまたは他の界面活性剤によって、細胞の増殖は典型的には阻害されるけれども、この宿主内で、多くの界面活性剤が、非特異的に細胞の漏水を増加させることが予想されたので、他のツィーンの型(例えば、ツィーン−40、ツィーン−60およびツィーン−80)もまた、この濃度で大腸菌内で試験した。ツィーン 40は、最も少ない増殖の阻害を引き起こし、続いて、ツィーン60、ツィーン80そしてツィーン20であった。Twen20での細胞増殖の最終OD600は、ツィーン40の存在下で増殖させた培養液のほんの半分であった。
アンピシリン濃度を、0〜10μg/mLで変化させた。細胞ブロス内のモナチンの量は、0〜1μg/mLの間で急速に(2.5×)増加し、アンピシリン濃度が、1〜10μg/mLに増加したときに、1.3×増加した。
典型的な結果を示している、時間経過実験を図10で示している。細胞ブロス内に分泌されたモナチンの量は、値を、細胞増殖に関して標準化した場合でさえも、増加した。トリプトファンのモル減衰係数を利用することによって、ブロス中のモナチンの量が、10μg/mL以下であることが推測された。同様の実験を、proA挿入物を含まないベクターを含む細胞で繰り返した。多数が陰性であり、これは、(m+1)/z=293でのピークの高さが、培地のみの場合よりも、これらの培養液中で少なかったことを示唆している(図10)。数字は、トリプトファンおよびピルビン酸が存在しない場合に一貫して低く、これは、モナチン産生が、アルドラーゼ酵素によって触媒された酵素的な反応の結果であることを示唆している。
細菌内でのモナチンのインビボ産生を、800mLシェイクフラスコ実験、および発酵器内で繰り返した。250mLのモナチンの試料(細胞を含まないブロス)を、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびプレパラティブ逆相液体クロマトグラフィーによって精製した。この試料を蒸発させ、(実施例3で記述した)高分解能質量解析に対して提示した。高分解MSによって、産生されている代謝物がモナチンであることが示唆された。
インビトロ工程に関する最適化実験が、アミノトランスフェラーゼの濃度が、アルドラーゼの濃度よりも数倍高い場合に、より高濃度のモナチンが産生され得ること(実施例3を参照のこと)を示唆しているので、aspC遺伝子が、proA遺伝子よりも高いレベルで発現した、インビボ研究のために、オペロンを構築した。
プライマーを、C.テストステロニproAを、aspC/pET30 Xa/LICで、オペロン内に導入するために設計した。5’プライマー:ACTCGGATCCGAAGGAGATATACATATGTACGAACTGGGACT(配列番号67)および3’プライマー:CGGCTGTCGACCGTTAGTCAATATATTTCAGGC(配列番号68)。クローニングのために、5’プライマーは、BamHI部位を含み、3’プライマーは、SalI部位を含む。PCRを、実施例2で記述したように実施し、産物を、QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kitを用いてゲル精製した。aspC/pET30 Xa/LIC構造物およびPCR産物を、BamHIおよびSalIで消化した。消化物を、QIAquick(登録商標)Gel Purification Kitを用いて精製し、EB緩衝液にて、スピンカラムから溶出した。proA PCR産物を、製造業者の取扱説明書にしたがって、Roche Rapid DNA Ligationキット(Indianapolis,IN)を用いて、ベクターとライゲートした。化学的形質導入を、実施例1にて記述したように、NovaBlue Singles(ノヴァジェン)を用いて実施した。単一コロニーを利用して、50mg/Lカナマイシン(5mL)を含むBL培地中に接種し、プラスミドDNAを、QIAquick(登録商標)Spin Miniprep Kitを用いて精製した。プラスミドDNAを、制限消化解析によって選別し、配列を、セクウェイライト(Seqwright)(Houston,TX)によって確認した。
2つの遺伝子間の介在配列を、ストラタジーン(Stratagene)QuikChange(商標)Site−Directed Mutagenesis Kit(LaJolla,CA)を用いて、23塩基対によって短化した。以下のプライマーを設計し、手順のために合成した。フォワード5’−GAAGCGATTGTGGCAGTGCTGTAAGGCTCTAACGGATCCGAAGGAGATATACATATGTAC(配列番号75)、リバース5’−GTACATATGTATATCTCCGGATCCGTTAGAGCCTTACAGCACTGCCACAATCGCTTC(配列番号76)。温度サイクル、消化およびXL10−Goldコンピテント細胞への形質導入に関して、製造業者のプロトコールにしたがった。50mg/Lカナマイシンを含むLBプレート上で増殖可能なクローンを、制限消化解析によって選別し、配列を、ジデオキシ鎖終結DNAシークエンシング(SeqWright、Houston,TX)によって確認した。1つの変異が、位置214にて、アルドラーゼアミノ酸配列を、メチオニンからイソロイシンに変化させた、proA遺伝子(G642A)中での、全ての配列決定されたクローンで発生した。この構造物を、さらに改変せずに使用した。構造物を、BLR(DE3)、BLR(DE3)pLysS、BL21(DE3)およびBL21(DE3)pLysS(ノヴァジェン)内にサブクローン化した。proA/pET30 Xa/LIC構造物をまた、BL21(DE3)pLysS内に形質導入した。
実施例6で記述したようにLC/MSによって解析した、以上で記述した標準の条件下での、BLR(DE3)シェイクフラスコ試料の初期比較によって、第二遺伝子(aspC)の添加が、7倍まで、産生されたモナチンの量を改善したことが示された。増殖率がより高いので、BL21(DE3)−由来宿主株を続く実験のために使用した。proAクローンおよび2つの遺伝子オペロンクローンを、以上のように、Trp−1培地中で誘導した。クロラムフェニコール(34μg/mL)を、pLysSベクターを持つ細胞を含む培養液の培地に加えた。シェイクフラスコ実験を、0.2% ツィーン−20および1mg/Lアンピシリンの添加あり、およびなしで実施した。ブロス中のモナチンの量を、標準として、インビトロで産生された、精製されたモナチンを用いて計算した。Lc/MS/MS解析を、実施例6で記述したように実施した。細胞を、増殖のゼロ、4時間、24時間、48時間、72時間および96時間の時点でサンプリングした。
培養ブロス中に産生された最大量に関して、結果を表5に示している。ほとんどの例において、2つの遺伝子構造物が、相当するproA構造物よりも高い値を与えた。リーカー細胞エンベロープを持つはずである、pLysSベクターを持つ宿主株が、これらの株が典型的にはより遅い速度で増殖するにもかかわらず、より高いレベルのモナチン分泌を示した。ツィーンおよびアンピシリンの添加が、モナチン分泌に対して利点がある。ペニシリンまたは(カルベニシリンのような)他のペニシリン誘導体の、アンピシリンの代用により、同様の利点が提供され得る。
大腸菌BL21(DE3)の増殖速度における、いくつかの界面活性剤ツィーンの効果を、シェイクフラスコ実験で試験した。ツィーン−20、−40、60または−80を、10μg/mLアンピシリンの存在下で、0.2%にて加え、増殖を48時間にわたって追った。ツィーン−40が、もっとも少なく、増殖速度に影響をした。ツィーン−20の存在下での増殖速度は、有機体が、ツィーン−40の存在下で増殖した場合に観察されたものの約半分であった。ツィーン−60および−80は、効果においては中間であった。大腸菌宿主有機体の増殖速度に異なって影響を与えることに加えて、異なるツィーン処方が、モナチンの分泌において、異なる影響を持ち得ることが予想される。
aspCproA/pET30bの構築
短化介在配列(〜7μg)およびpET32b(〜6.6μg)を持つaspCproA/pET30 Xa/LICプラスミドを、XbaIおよびSalIで消化した。XbaIおよびSalIでのpET32bベクターの消化によって、アミノ−末端チオレドキシン−、His−およびS−タグが除去され、一方で、この消化によって、pET30 Xa/LICプラスミド中のaspC配列の上流である、His−Tagは保持される。2.1kB aspCproAバンドおよび5.4kB pET32bバンドを、QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kitを用いて、1%−TAEアガロースゲルから精製した。消化したDNAを、Roche Rapid DNA Ligationキットを用いて、消化したベクターとライゲーションさせ、上述したように、ライゲーション混合液を、NovaBlue(商標)Singles(ノヴァジェン)内に形質導入した。100μg/mLのアンピシリンまたはカルベニシリンを含むLBプレート上で増殖可能なクローンを、制限消化解析によってスクリーンし、配列を、ジデオキシ鎖終結DNAシークエンシング(SeqWright,Houston,TC)によって確認した。大腸菌BL21(DE3)およびBL21(DE3)pLysS細胞に、ノヴァジェンのプロトコールにしたがって、aspCproA/pET32を形質導入した。100μg/mLアンピシリンを含むLB培地上で増殖可能であるBL21(DE3)形質導入組からの2つのクローン、および100μg/mLアンピシリン+34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地上で増殖可能であるBL21(DE3)pLysS形質導入組からの2つのクローンを、アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼ遺伝子を発現するその能力に関して試験した。適切な抗生物質を含むLB中の構築物の50mL培養液を、0.5〜0.75のOD600まで、振とうして、37℃にて増殖させた。遺伝子発現を、0.1mM IPTGを加えることによって誘導し、培養液を、さらに3時間、振とうしながら30℃にてインキュベートした。細胞を、4000×gにて10分間の遠心によって回収し、50mM MOPS、pH7で洗浄し、再び遠心した。細胞抽出物を、ノヴァジェンのプロトコールにしたがって、ベンゾナーゼヌクレアーゼおよびカルビオケム(Calbiochem)プロテアーゼ阻害剤カクテルIIIを含む、ノヴァジェン BugBuster(商標)試薬を用いて調製した。細胞抽出物中のタンパク質発現のレベルを、4〜15%勾配ゲル(バイオ−ラド(Bio−Rad)、Hercules,CA)を用いて、SDS−PAGEによって解析した。両方のポリペプチドが良く発現し、アルドラーゼポリペプチドは、可溶性タンパク質画分の15〜20%であることが明らかであり、一方、アミノトランスフェラーゼポリペプチドは、BL21(DE3)宿主培養液中の可溶性タンパク質画分の20〜30%であることが明らかである。BL21(DE3)pLysS培養液中の発現のレベルはより低かった。
大腸菌BL21(DE3)::aspCproA/pET32bの新鮮なプレートを、100μg/mLアンピシリンを含むLB培地上で調製した。一晩培養液(5mL)を、単一コロニーから接種し、アンピシリンを含むLB培地中で、30℃にて増殖させた。典型的に、1〜100接種を、100mg/Lアンピシリンまたはカルベニシリンを含むtrp−1+グルコース培地中での誘導のために使用した。接種した培養液(100mL)を、OD600が0.5に達するまで、振とうしながら37℃にてインキュベートした。遺伝子発現を、0.1mM IPTG(最終濃度)の添加によって誘導し、培養液を、さらに4時間、振とうしながら30℃にてインキュベートした。遺伝子発現が誘導されたときに、ピリドキシンをまた、0.5mMの最終濃度まで加えた。誘導の4時間後、trp−1培地の25−mL分液、および0.05mLの100mg/mLカルベニシリン(5mg)を培養液に加え、インキュベーションを、振とうしながら、30℃にて続けた。インキュベーションの18時間後、リン酸カリウム(50mM、pH7.2)中の0.04mMピリドキサールリン酸(最終濃度)を加えた。培養液を、無菌培養フラスコ中で、2つの等しい分液にわけた。最終濃度50mMまでの固体トリプトファン、最終濃度0.2%までのツィーン−20(ストック溶液20%)、および最終濃度0.1%までのピルビン酸ナトリウム(ストック溶液10%)を、最初の分液に加えた。最終濃度50mMまでの固体トリプトファン、最終濃度0.2%までのツィーン−20を、第二の分液に加えた。両方の培養液のpHを、8.2〜8.4に調整し、30℃でインキュベーションを続けた。モナチン(0.5mL)およびタンパク質産生(5〜10mL)の解析のための試料を、IPTGでの誘導後、4、18(添加前)、19、24および48時間で抜いた。これらの試料を細胞をペレット化するまで遠心した。上清を、モナチンに関して、LC−MS解析の前に、Acrodisc(登録商標)13mmシリンジフィルター(0.45μm;ゲルマンラボラトリー(Gelman Laboratory))を用いて濾過した。細胞ペレットを、50mM MOPS、pH7にて洗浄し、細胞抽出物が、タンパク質産生の解析のために調製されるまで、−80℃にて冷凍した。
発酵ブロス試料中のモナチンの濃度を、(実施例6で記述した)LC/MSまたはLC/MS/MSによって測定した。モナチンを、トリプトファンおよびツィーンを培養液に加えた時に、34mg/Lの濃度で、24時間発酵ブロス試料中で検出した。濃度が、誘導の48時間後に、4.4mg/Lまで落ちた。トリプトファン、ピルビン酸およびツィーンを培養液に加えたときに、モナチンが、誘導の19〜48時間後に、130〜150mg/Lの濃度で、発酵ブロス試料中で検出された。
細胞抽出物を、ノヴァジェンのプロトコールにしたがって、ベンゾナーゼヌクレアーゼおよびカルビオケム(Calbiochem)プロテアーゼ阻害剤カクテルIIIを含む、Novagen BugBuster(商標)試薬を用いて調製した。細胞抽出物中のタンパク質発現のレベルを、4〜15%勾配ゲル(バイオ−ラド(Bio−Rad)、Hercules,CA)を用いて、SDS−PAGEによって解析した。発現されたタンパク質の濃度は、誘導18〜24時間後に、細胞抽出試料中で、もっとも高かった。アルドラーゼポリペプチドは、可溶性タンパク質の>10%をしめ、アミノトランスフェラーゼは、可溶性タンパク質の>25%であることが明らかになった。
実施例8
酵母でのモナチンの産生
本実施例は、真核生物において、モナチンを産生するために使用した方法を記述している。当業者は、同様の方法を、任意の対象の細胞内で、モナチンを産生するために使用可能であることを理解するであろう。さらに、他の遺伝子を、本実施例で記述したものに加えて、または変えて、利用可能である(例えば図2で列記したもの)。
pESC酵母エピトープ標的化ベクターシステム(ストラタジーン(Stratagene)、La Jolla,CA)を使用して、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)内で、大腸菌aspCおよびC.テストステロニproA遺伝子をクローン化および発現させた。pESCベクターは、2つの異なる多重クローニング部位を含み、GAL1および反対の鎖にGAL10プロモーター両方を含み、これによって同時に、2つの遺伝子を発現可能である。pESC−Hisベクターはまた、宿主(YPH500)内で、ヒスチジン栄養要求性の相補性のために、His3遺伝子も含む。GAL1およびGAL10プロモーターが、グルコースによって抑制され、ガラクトースによって誘導され、Kozak配列が、酵母における最適な発現のために必要である。pESCプラスミドはシャトルベクターであり、大腸菌内で、初期構造物を作製可能にするが(選別のために、bla遺伝子を含む)、細菌リボソーム結合部位は、多重クローニング部位では存在しない。
以下のプライマーを、pESC−His内へのクローニングのために設計した(制限部位に下線を引き、Kozak配列は太字である)。aspC(BamHI/SalI)、GAL1:5’−CGCGGATCCATAATGGTTGAGAACATTACCG−3’(配列番号69)および5’−ACGCGTCGACTTACAGCACTGCCACAATCG−3’(配列番号70)。proA(EcoRI/NotI)、GAL10:5’−CCGGAATTCATAATGGTCGAACTGGGAGTTGT−3’(配列番号71)および5’−GAATGCGGCCGCTTAGTCAATATATTTCAGGCC−3’(配列番号72)。
両方の成熟タンパク質に関する第二コドンを、Kozak配列の導入のために、芳香族アミノ酸から、バリンに変えた。対象の遺伝子を、鋳型として、実施例1および2で記述したクローンのキアゲンQIAprep(登録商標)Spin Miniprep Kit(Valencia,CA)を用いて精製したpET30 Xa/LIC DNA)を用いて増幅した。PCRを、50μLの反応に関して、Eppendorf Masterサイクル勾配サーマルサイクラーおよび以下のプロトコールを用いて実施した。1.0μL鋳型、1.0μMの各プライマー、0.4mM 各dNTP、3.5U Expand High Fidelity Polymerase(Roche,Indianapolis,IN)およびMg入り1× Expand(商標)緩衝液。使用したサーモサイクラープログラムは、94℃にて5分間の熱開始、続く以下の段階の29回繰り返し、94℃30秒間、50℃1分45秒間、および72℃2分15秒間からなっていた。29回の繰り返しの後、試料を72℃にて10分間維持し、次いで4℃にて保存した。PCR産物を、1% TAE−アガロースゲル上での分離、つづいて、QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kit(キアゲン)を用いた回収によって精製した。
pESC−HisベクターDNA(2.7μg)を、BamHI/SalIにて消化し、以上で記述したようにゲル精製した。aspC PCR産物を、BamHI/SalIにて消化し、QIAquick PCR Purification Kit(キアゲン)で精製した。ライゲーションを、製造業者のプロトコールにしたがって、Roche Rapid DNA Ligation Kitで実施した。脱塩ライゲーション混合液を、製造業者の説明書にしたがって、BioRad Gene Pulser IIシステムで、0.2cmバイオ−ラッド使い捨てキュベットを用いて、40μlのElectromax DH10Bコンピテント細胞(インビトロジェン、Carlsbad,CA)内にエレクトロポレーションした。1mLのSOC培地中の回復1時間後、形質転換細胞を、100μg/mLアンピシリンを含むLB培地上にプレートした。単一コロニーを利用して、100μg/mLアンピシリンを含む5mLのLB培地を接種し、これらを、37℃にて一晩インキュベートした。プラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprep Kitsを用いて、一晩培養液から精製した。このDNAを、制限消化によって選別し、ベクターに関して設計したプライマーを用いて、確認のために配列決定した(Seqwright)。
aspC/pESC−HisクローンおよびproA PCR産物を、EcoRIおよびNotIで消化した。DNAを精製し、ライゲーションを、以上で記述したように実施した。2つの遺伝子構造物を、Electromax DH10Bコンピテント細胞(インビトロジェン)内に形質変換し、制限消化によって選別し、確認のために配列決定した(Seqwright)。
2つの遺伝子構造物を、S.c.EasyComp(商標)Transformation Kit(インビトロジェン)を用いて、S.セルビシエ株YPH500内に形質変換した。形質変換反応液を、2%グルコースを含む、SC−His最小培地(インビトロジェンpYES2マニュアル)上にプレートした。個々の酵母コロニーを、以上で列記したPCRプライマーを用いて、コロニーPCRによって、proAおよびaspC遺伝子の存在に関してスクリーニングした。ペレット化した細胞(2μl)を、1μlのザイモラーゼを含む、20μLのY−Lysis Buffer(ザイモリサーチ(Zymo Research)、Orange,CA)中に懸濁させ、37℃にて10分間熱した。次いで、4μLのこの懸濁液を、以上で記述したPCRプロトコールを用いて、50μL PCR反応液中で使用した。
5mLの培養液を、30℃、225rpmにて、SC−His+2%グルコース上で一晩増殖させた。ガラクトースでの誘導の前のラグ期間を最小化するために、細胞を、徐々に、ラフィノース上での増殖に適合させた。増殖のおよそ12時間後、600nmでの吸収測定を実施し、適切な容量の細胞を、スピンダウンさせ、新鮮なSC−His培地中で、0.4のOD600を与えるように再懸濁した。以下の炭素供給源を連続して使用した。誘導のために、1%ラフィノース+1%グルコース、0.5%グルコース+1.5%ラフィノース、2%ラフィノースおよび最後に1%ラフィノース+2%ガラクトース。
誘導培地中の増殖のおよそ16時間後、50mLの培養液を、二重の25mL培養液に分け、以下を培養液の1つに加えた。(最終濃度)1g/L L−トリプトファン、5mMリン酸ナトリウム、pH 7.1、1g/L ピルビン酸ナトリウム、1mM MgCl2。非誘導培地からの、そして(モナチン経路に関する基質の添加前)16時間培養液からのブロスおよび細胞ペレットの試料を、陰性対照として利用した。加えて、機能的aspC遺伝子(および短化非機能的proA遺伝子)のみを含有する構造物を別の陰性対照として使用した。細胞を、誘導後合計69時間増殖させた。いくつかの実験で、酵母細胞が、より低いOD600にて誘導され、トリプトファンおよびピルビン酸の添加前4時間のみ増殖した。しかしながら、モナチン経路基質が、増殖を阻害することが明らかであり、より高いOD600での添加がより効果的であった。
培養液からの細胞ペレットを、製造業者のプロトコールにしたがって、細胞のグラム(ウェット質量)あたり、5mLのYeastBuster(商標)+50μl THP(ノバジェン)で溶解した。さらに、カルビオケムプロテアーゼ阻害剤組IIIおよびベンゾナーゼヌクレアーゼ(Novagen)を、細菌細胞抽出物の調製のために、先の実施例で記述したように、試薬に加えた。培養ブロスおよび細胞抽出物を濾過し、実施例6で記述したように、LC/MS/MSによって解析した。この方法を用いて、モナチンはブロス試料中で検出されず、これは、細胞が、これらの条件下でモナチンを分泌出来なかった(プロトン誘因力が、これらの条件下で不十分であり得る、または一般的なアミノ酸トランスポーターが、トリプトファンで飽和された)ことを示唆している。組換え体タンパク質の発現は、SDS−PAGEを用いた変化の検出が可能なレベルではなかった。
トリプトファンおよびピルビン酸を培地に加えた時に、2つの機能的な遺伝子を発現している細胞から産生された細胞抽出物中で、モナチンは一過性に検出可能であった(約60ng/mL)。モナチンは、任意の陰性対照細胞抽出物では検出されなかった。モナチンに関するインビトロアッセイを、実施例3で記述した最適化アッセイを用いて、4.4mg/mLの総タンパク質(大腸菌細胞抽出物に関して典型的に使用するものの約二倍)を含む細胞中抽出物で二重に実施した。他のアッセイを、どの酵素が、酵母細胞抽出物中で制限であったかを決定するために、32μg/mL C.テストステロニProAアルドラーゼ、または400μg/mL AspCアミノトランスフェラーゼいずれかの添加で実施した。陰性対照を、酵素を添加しないか、またはAspCアミノトランスフェラーゼのみを添加して実施した(アルドール濃縮が、非酵素的に、低レベルで起こり得る)。陽性対照を、16μg/mLアルドラーゼおよび400μg/mLアミノトランスフェラーゼを用いて、部分的に精製した酵素(30〜40%)で実施した。
インビトロアッセイをSRMによって解析した。細胞抽出物の解析によって、誘導後、培地に加えた場合に、トリプトファンが、効果的に細胞内に輸送され、結果として、追加のトリプトファンを加えない場合と比較して、2倍高い程度のトリプトファンレベルとなることが示された。インビトロモナチン解析に関する結果を、表6で示している(数字は、ng/mLを示している)。
陽性の結果が、増殖の間に基質を添加した、およびしない培養液からの、完全な2遺伝子構造物細胞抽出物で得られた。陽性対照と比較した場合、これらの結果は、酵素が、酵母中の総タンパク質の1%に近いレベルで発現したことを示唆している。(短化proAを含む)aspC構築物からの細胞抽出物を、アルドラーゼによって解析した場合に、産生されたモナチンの量は、細胞抽出物をそれのみでアッセイした場合よりも、有意に多かった。これは、組換え体AspCアミノトランスフェラーゼが、およそ1〜2%の酵母総タンパク質を含むことを示唆している。未誘導培養液の細胞抽出物は、細胞内での天然のアミノトランスフェラーゼの存在によって、添加したProAアルドラーゼでアッセイした場合に、少量の活性も持った。加えたAspCアミノトランスフェラーゼでアッセイした場合に、未誘導細胞からの抽出物の活性は、AspCでの陰性対照(約200ng/ml)によって産生されたモナチンの量まで増加した。反対に、2つの遺伝子構築物細胞抽出物をアッセイした場合に観察された活性は、アルドラーゼを加えた場合よりも、アミノトランスフェラーゼを加えた場合で、より増加した。両方の遺伝子が、同一のレベルで発現すべきであるので、このことは、産生されたモナチンの量が、アミノトランスフェラーゼのレベルが、アルドラーゼのレベルよりも高い場合に、最大化されることを示唆している。
ピルビン酸およびトリプトファンの添加は、細胞増殖を阻害するだけでなく、あきらかに、タンパク質発現も阻害する。pESC−Trpプラスミドの添加を、YPH500宿主細胞のトリプトファン栄養要求性に関して補正するため、増殖、発現および分泌においてより小さな効果で、トリプトファンを提供する方法を提供するために使用可能である。S.セルビシエ株YPH500に、S.c.EasyCompTM Transformation Kit(インビトロジェン)を用いて、aspCproA/pESC−His構造物およびpESC−trpを共形質変換した。培養液を、以上で記述したように、省略し、誘導した、ヒスチジンおよびトリプトファン両方を含む培地中で増殖させた。モナチンが、基質(トリプトファンまたはピルビン酸)を、誘導の後、増殖培地に加えなかったYPH500::aspCproA/pESC−His培養液からの細胞抽出物試料で、低レベル(8.7ng/mL未満)で検出された。一方で、aspCproA/pESC−His構築物のみで形質変換したYPH500を含む培養液からの細胞抽出物にて、モナチンは検出されなかった。
実施例9
野生型有機体における、モナチンのインビボ産生
いくつかの市場で、モナチンのための産生宿主として、遺伝的に改変されていない有機体を持つことが望ましい。ゲノムデータベースを、モナチン産生のために利用可能な酵素、4−ヒドロキシ4−メチル2−オキソグルタル酸アルドラーゼを持つと知られている有機体に関して検索した。シノリゾビウム・メリロッティ、コマモナス・テストステロニ、およびシュードモナス・ストラミネアが、このアルドラーゼならびに芳香族アミノトランスフェラーゼを持つと知られている。これらの有機体を、種々の条件下で増殖させて、モナチン産生を誘導した。古典的な変異導入技術を、これらの有機体によって産生されるモナチンのタイターを改善するために利用可能であった。
材料
他に特に言及しない限り、すべての試薬は、培地グレード純度以上のものであった。TY培地は、(Lあたり)6gトリプトン、3g酵母抽出物、9mM CaCl2を含んだ。トリプトンおよび酵母抽出物を、ナノピュア水中に溶解し、pHを7.2に調整した。容量を991mlに調整し、混合液をオートクレーブによって滅菌した。1モルの塩化カルシウムを別に調製し、滅菌濾過し、新鮮なオートクレーブ済み培地に加えた。
パラ−ヒドロキシ安息香酸(PHB)培地を、ATCC(ATCC1702)によって指示されたように調製した。溶液A(990ml)には、3g(NH4)2SO4、1.6g K2HPO4、2.5g NaCl、0.5g酵母抽出物、および3g 4−ヒドロキシ安息香酸が含まれた。溶液B(10m)には、0.27g MgSO4−7H2Oが含まれた。溶液AおよびBを別々にオートクレーブし、冷却後併せて溶液Cを調製した。この新鮮に調製した溶液Cに、0.05g Fe(NH4)2(SO4)26H2O(使用の前に濾過滅菌)を含む1mlの溶液を加えた。最終培地のpHを、6N NaOHによって7.0に調整した。
10g/LのL−トリプトファン溶液を、0.1Mリン酸ナトリウムpH7中で調製し、滅菌濾過した。10分の1の容量を、一般的に、以下で特記したように、培養液に加えた。10%ピルビン酸ナトリウム溶液をまた調製し、滅菌濾過した。10mlの分液を一般的に、培養リットルあたりで使用した。
M9最小培地プレートを、Sambrook他(ed.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.,vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989で記述されたように調製し、リゾビウム(Rhizobium)最小培地プレートを、以下のように調製した。各1リットルの培地に、15g寒天、0.1g酵母抽出物、1g(NH4)2SO4、7g K2HPO4、2g KH2PO4、0.1g MgSO4−7H2O、0.02g ZnSO4−7H2O、0.0025g NiCl2−6H2O、および4mL 1M CaCl2(濾過滅菌、オートクレーブの後に加える)を含めた。炭素供給源およびカサミノ酸を、以下の文脈で記述した種々の濃度で加えた。
方法
シノリゾビウム・メリロッティ1021(ATCC51124)を、TY培地中で接種させ、一方、コマモナス・テストステロニ(ATCC49249)およびシュードモナス・ストラミネア(ATCC33636)を、Nutrient Broth(ディフコ(Difco))中で増殖させた。全ての株を、26℃にて培養した。2日間増殖の後、2mLの培養液を使用して、100mLの新鮮に調製したPHB培地に接種した。C.テストステロニ中のアルドラーゼ−含有経路を誘導可能である、単独の炭素およびエネルギー供給源として、PHBと一緒に1時間増殖させた後、10mLのトリプトファンおよび1mLのピルビン酸を加えた。細胞を60時間増殖させ、全ての培養液は、8〜9の最終pHを持った。
600nmでの吸収を、以下のように60時間後に記録した。S.メリロッティ、3.35、P.ストラミネア、1.28、およびC.テストステロニ、1.93。
細胞を、3500rpm、4℃にて20分間遠心した。ペレットを、処理するまで、−80℃にて冷凍した。上清(発酵ブロス)を、LC/MS解析のために濾過した。結果を、バイオマスの量における差を説明するために標準化した。細胞ペレットを、実施例1で記述したように、BugBuster試薬(ノヴァジェン)にて処理し、得られた細胞抽出物を、SDS−PAGEによって解析し、LC/MSのために濾過した。溶解の効率に差があるので、結果を、280nmでの吸収で標準化し、細胞タンパク質の相対量の指標とした。同様の細胞抽出物を、トリプトファンおよびピルビン酸の添加無しでの、PHB上での細胞増殖のために調製し、1つの場合(S.メリロッティ)、細胞を、PHBではなく、TY培地上で増殖させた。
増殖の数日後、SDS−PAGE上で、アルドラーゼに関して予想された大きさでは、バンドは存在しなかった。これらの細胞抽出物を、PD10カラム上で脱塩し、インドール−3−ピルビン酸、ピルビン酸およびグルタミン酸からの、モナチンまたはモナチン前駆体のインビトロ産生に関してアッセイした。アッセイ混合液には、1mL中、100mM Tris−HCl(pH7)、2mM MgCl2、1mMリン酸化カリウム(pH8)、0.05mM PLP、酵素(細胞抽出物)、および6mMの各インドール−3−ピルビン酸(エタノール中で調製)、グルタミン酸およびピルビン酸ナトリウムが含まれた。反応を、0.5mLの脱塩細胞抽出物を加えることによって開始し、37℃にて30分間インキュベートし、濾過し、LC/MS解析の前に−80℃で凍結した。
LC/MS上での検出を、実施例6で記述したように実施した。インビトロアッセイのために、陰性対照を、モナチンの基準量を決定するために提供した、細胞抽出物なしで、またはマグネシウムとリン酸との基質の反応から産生されたMPで、実施した。結果を、表7〜9で示している。数字は、いくつかの場合に、面積を積分するのが難しいので、LC/MS解析からの電子スプレーピークの高さを反映している。これらの数字は、モナチン濃度とおおよそ比例し、定性的な傾向を探るために利用した。
LC/MSクロマトグラムの解析によって、検出されたモナチンのレベルを増加するようには見えなかったけれども、C.テストステロニ株が、他の2つの有機体よりも、より大きなパーセンテージのトリプトファンを代謝した可能性があることが示唆された。これらの結果は、細胞が、モナチンを分泌することにおいて、効果的ではなかったことを示唆し得る。したがって、細胞抽出物をまた、LC/MSによって解析した(表8)。
ブロスおよび細胞抽出物量の中に、検出可能なレベルのMPが存在しないことは、MPが、特定のマトリックス内で安定ではなかったことを示唆した。さらなるトリプトファンおよびピルビン酸の効果は検出不可能であり、ただしコマモナスでは検出可能であり、利点が記録された。後者の実験によって、トリプトファンおよびピルビン酸の添加のタイミングが、非常に重要であり、適切でない時間での添加は、培養液の増殖に悪影響をおよぼし得ることが示唆された。トリプトファンおよびピルビン酸が、これらの野生型有機体中で効果的に取り上げられるかどうか、または遺伝子発現において、どんな変化が、高濃度のこれら基質を培地に加えたことの結果として発生するか、は分かっていない。パラヒドロキシ安息香酸基質が、唯一、コマモナスにおいて、アルドラーゼを誘導することが知られている一方で、S.メリロッティで産生されたモナチンの量も改善したことが示されている。
S.メリロッティおよびC.テストステロニの細胞抽出物中で、インドール−3−ピルビン酸からモナチンを産生可能である酵素の存在を確認するために、インビトロアッセイを以上で記述したように実施した。細胞抽出物を脱塩して、培養液から残っていた任意の残余モナチンを除去した。細胞に関する培養条件を、表9の左に示し、モナチンに関するMSピーク高さを右カラムに示している。
表9で示した結果は、陰性対照と比較して、モナチンが、これらの濾過細胞抽出物によって形成されたことを定性的に示している。表の最後の行の陰性対照は、化学的に誘導されたアルドール濃縮の示唆である。過剰なトリプトファンなしでの、PHB上での細胞増殖が、モナチンに関して、非常に低いシグナル対ノイズ比を持ち、このことが、トリプトファンの添加が天然の芳香族アミノトランスフェラーゼの発現を誘導し得ることを示唆している。質量スペクトルおよびUVスペクトルが、陽性対照および他の試料と異なる差を示しているので、TY上で増殖した細胞からの、S.メリロッティ細胞抽出物が、定量を干渉している少なくとも1つの他の夾雑物を持つと示されている。より大きな分子質量種の存在が示唆された一方で、S.メリロッティ293モナチンピークの娘断片およびUVスペクトルが、精製されたアルドラーゼ/トランスアミナーゼ混合物から産生されたモナチンと一致する。しかしながら、親スキャンは、より大きな分子が、293ピークに関連したことを示唆しなかった。
さらなる増殖実験を、S.メリロッティおよびC.テストステロニで実施した。S.メリロッティを、トリプトファンおよびピルビン酸あり、およびなしで、TYおよびPHB培地中で増殖させた。さらに、ツィーンおよびアンピシリンを、PHB+トリプトファン+ピルビン酸フラスコの1つに加えて、細胞を透過性とした。C.テストステロニを、添加トリプトファンあり、およびなしで、NBまたはPHB培地中で増殖させた。TY培地を、LC/MS解析物中、陰性対照として利用した。試験した両方の有機体において、モナチン分子量に相当するピークの高さは、リッチなTY培地に対して、PHB培地中で増殖した細胞に関してより高く、トリプトファンおよびピルビン酸の添加に際して、両方の細胞型に関して増加した。ツィーンおよびアンピシリンの添加は、シノリゾビウム細胞の増殖速度を大きく減少させたが、OD600によって標準化した際に、ブロス中のモナチンのレベルを改善したようには見えなかった。PHB培地中、モナチンに相当するLC/MSシグナルレベルは、陰性対照よりも、両方の試料中で、2〜3倍高かった。
S.メリロッティPHB実験からの試料を蒸発させ、陽イオン交換クロマトグラフィーによって部分的に精製した。溶出プロファイルは、他の酵素的に産生したモナチンの試料と同様に見えた。
主要な炭素およびエネルギー供給源としてモナチンを用いるプレートアッセイ
モナチンを合成可能な有機体を、モナチン(またはモナチン前駆体(MP))が主要な炭素およびエネルギー供給源である、プレート上での増殖に関してスクリーニングすることによって検出可能である。この方法によるスクリーニングは、(1)合成経路が可逆的であり、産物のモナチンを、本経路によって代謝可能にすること、および(2)有機体が、モナチンまたはMPを輸入可能である輸送経路を持つこと、を必要とする。S.メリロッティ、P.ストラミネア、およびC.テストステロニを、主要な炭素およびエネルギー供給源として、モナチンを含む、最小培地プレート上で増殖させるその能力に関して試験した。
実験方法および結果
M9最小培地またはリゾビウム最小培地を含むプレートを、0.01%カサミノ酸および0.1〜0.2%炭素供給源(グルコースまたは精製モナチン)で調製した。陰性対照プレートには、カサミノ酸が含まれるが、追加の炭素供給源は含まなかった。S.メリロッティ、P.ストラミネアおよびC.テストステロニを、リッチ培地中で、OD2.1〜2.7まで増殖させ、無菌1×リン酸緩衝食塩水(PBS)で1000倍希釈した。1〜10μLの容量をプレーティングのために使用した。プレートを、数日間、26℃にてインキュベートした。M9培地+モナチン上で増殖したS.メリロッティは、試験した他の株よりもより増殖を示し、一方で、M9培地のみ上では増殖しなかった。実験を繰り返し、C.テストステロニが、誘導の前に、NBならびにPHB培地両方で増殖した。プレーティングのためにM9培地を再び用いて、S.メリロッティが、他の有機体よりも、炭素供給源としてモナチンで、よりよく増殖したことがわかった。C.テストステロニはまた、わずかな増殖を示した。リゾビウム最小培地を用いて、C.テストステロニが、グルコースでのときよりも、炭素および供給源としてモナチンの場合に、よりよく増殖した。さらに、より高い希釈(10-6)で、PHB−増殖接種の利用が、NB−増殖接種と比較して、得られたコロニーの数および大きさを増加させた。
夾雑が起こらないことを保証するために、種々のC.テストステロニプレートからの4つのコロニーを、HMGアルドラーゼ遺伝子に対するプライマーを用いて、コロニー−PCRによって解析した。すべての4つのコロニーが、約750bp(正確な大きさ)でPCR産物を与え、一方で陰性対照は産物を含まなかった。コロニーをまた、PHBプレート上で再画線させ、再び増殖可能であることがわかった。PHB−増殖液体培養液およびM9プレートを用いた、C.テストステロニに関するプレーティング実験を繰り返し、細胞をスピンダウンさせ、1×PBSで洗浄し、プレーティングの前に、1×PBS中で再懸濁させた。得られたコロニーの数は、グルコースプレートと同等であるが、一方で、陰性対照はコロニーを含まなかった。
これらの結果は、シノリゾビウムおよび種々のシュードモナス属が、モナチンのインビトロ産生のために、アルドラーゼ遺伝子を含むという事実にそって、これらの有機体が、異種遺伝子の誘導なしに、モナチンを産生可能であることを示唆している。増殖培地、トリプトファンおよびピルビン酸のような基質の添加、および細胞壁に影響を与える成分の添加が、これらの野生型有機体によって産生されたモナチンのレベルを増加させるための、重要な因子であることが明らかである。有機体内での、アルドラーゼおよび芳香族アミノトランスフェラーゼ遺伝子の発現法の理解、およびその発現への影響が、モナチンの産生の改善を導き得る。産生性を改善するために、古典的な変異導入技術を利用可能であることが予想される。
異なる供給方策を用いる他の実験
P.ストラミネア、C.テストステロニおよびS.メリロッティ培養液のシェイクフラスコ実験を、基質および共因子に関して、異なる供給方策略を用いて、実験的改善をして、繰り返し、LC/MS/MS MRMを用いて解析した。
方法
シュードモナス・ストラミネアおよびコマモナス・テストステロニを、PHB培地中で増殖させた。シノリゾビウム・メリロッティを、以上で記述したように、そして、3.75mlの20%酵母抽出物および2mlの50%グルコースを加えた、PHB培地中で増殖させた。開始培養液を増殖させ、1Lシェイクフラスコ内の250ml培地中に接種させた。すべての培養液を、29℃にて一晩、250rpmにて振とうさせて、〜0.5〜1.1のOD600までインキュベートした。
モナチン排出を手助けするために、基質、共因子および試薬(表10および11での組成リスト)の添加のための供給方策を、250mlの培養液あたり、以下のように実施した。
添加2日後、培養液を、90〜100rpmにて、振とうしながら、25℃にてインキュベートした。
添加3日後、培養液を、〜8時間増殖させ、その後、この培養液を遠心して細胞を分離した。上清を濾過し、モナチンに関して、LC/MS/MS解析によって解析した(実施例6を参照のこと)。細胞抽出物を、以下のように細胞ペレットより調製した。ペレットを、1×リン酸緩衝食塩水中に再懸濁させ、懸濁液を、Frenchプレス(〜20,000psi)を2回通し、次いで遠心して細胞残留物を除去した。
濾過発酵ブロス試料の、LC/MS/MS MRM法を用いる解析によって、断定的に、モナチンが、C.テストステロニおよびP.ストラミネアより産生されたことが示された(表12を参照のこと)。実施例6で記述したFDAA誘導体化方法を用いて、S,Sモナチン形成を、C.テストステロニ試料中で確認した。
実験2条件からの濾過細胞抽出物の解析によって、モナチンが、S.メリロッティによっても細胞内で産生されたことが示された。S.メリロッティの発酵ブロス中ではモナチンが検出されず、これは、この有機体が、モナチンを分泌しないことを示唆している。しかしながら、実験2条件からのこの培養液の細胞抽出物を試験した時に、多数のモナチン異性体が、逆相LC/MS/MSを用いて同定された。異性体は、S,SまたはR,RおよびS,RまたはR,Sモナチンとして同定された。これらの解析によって、少なくとも2つのモナチンの異性体が、S.メリロッティによって産生されたことが示唆される。多数のモナチンの異性体を産生する有機体を、インビトロでのモナチンの特異的な立体異性体の産生のための酵素の供給源として使用可能である。
一緒に考えると、以上の結果は、あきらかに、シュードモナス・ストラミネア、コマモナス・テストステロニおよびシノリゾビウム・メリロッティの、モナチンを産生し、異種宿主内で発現可能な、モナチンオペロン中の遺伝子の供給源として利用可能である、その可能性が示された。
組換え体大腸菌中の、ピルビン酸アルドラーゼのスクリーニングのための選別方法
炭素供給源としてリボースを含むM9最小培地上で増殖した場合に、ピルビン酸の添加を必要とする大腸菌の株が、すでに記述されている(J.Bacteriol.1995.177:5719−5722)。株の遺伝子型は、△pykA△pykFである。二重ノックアウトを、Datsenko and Wanner(PNAS.2000.97:6640−6645)の方法によって産生可能である。これらの株は、ピリビン酸産生アルドラーゼスクリーンのための基礎を形成し、モナチンの特定の立体異性体、モナチン前駆体の特定の立体異性体、またはモナチンまたはモナチン前駆体の類似体において、より活性である、アルドラーゼに関するスクリーニングのための基礎を形成可能である。モナチン前駆体の類似体には、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸、4−カルボキシル−4−ヒドロキシ−2−オキソアジピン酸、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソアジピン酸のような、ProAアルドラーゼまたはKHGアルドラーゼに対する基質、またはアルドール反応中に、ピルビン酸に変換される他のカルボキシルリッチな化合物として同定されてきた化合物が含まれる。使用可能なモナチンの類似体の例は、4−ヒドロキシ−4−メチルグルタミン酸であり、これは、天然のアミノトランスフェラーゼによって、試験細胞中で、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸(ProAの基質)に容易にアミノ変換され得る。
クローニング
以下のプライマーを、pykAノックアウトを産生するために使用した。
5’−ATGTCCAGAAGGCTTCGCAGAACAAAAATCGTTACCACGTTAGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC−3’(配列番号85)および
5’−CTCTACCGTTAAAATACGCGTGGTATTAGTAGAACCCACGGTACCATATGAATATCCTCCTTAG−3’(配列番号86)。
以下のプライマーを、pykFノックアウトを産生するために使用した。
5’−AGGACGTGAACAGATGCGGTGTTAGTAGTGCCGCTCGGTACCAGCATATGAATATCCTCCTTAG−3’(配列番号87)および
5’−ATGAAAAAGACCAAAATTGTTTGCACCATCGGACCGAAAACCGGTGTAGGCTGGAGCTGCTTC−3’(配列番号88)。
PCR反応を、標準のプロトコールを用いて、鋳型として、pKD3またはpKD4いずれかで実施した。PCR産物を、ラムダレッド相同組換えシステムを発現する大腸菌の株内にエレクトロポレーションした。PCR産物は、pykAまたはpykFに相同性を持ち、これらのサイトで、クロモソーム内に組み換えられた。二重クロスオーバーが発生した際、結果としての子孫が欠損pykAまたはpykF遺伝子および抗生物質耐性マーカーを持っていた。抗生物質耐性マーカーを持つ欠損遺伝子を、標準のP1形質導入技術を用いて、大腸菌株(MG1655)に導入した。
株解析
二重ノックアウトを、(Balchのビタミン溶液、Balchの改変トレース要素溶液(Balch,W.E.,G.E.Fox,L.J.Magrum,C.R.Woese、and R.S.Wolfe.1979.「メタン生成微生物:ユニークな生物学的群の再評価(Methanogens:reevaluation of a unique biological group.)」Microbiol.Rev.43:260−296)、0.4% D−リボースを含む、M9塩(ディフコ))最小培地上での増殖に関して試験した。5mMピルビン酸をまた培地に加えないかぎり、二重変異体に関して、増殖は見られなかった。野生型MG1655を、ピルビン酸の存在する場合、またはしない場合両方で、上記培地上で増殖した。二重ノックアウトを、リボースではなく、0.4%グルコースを含む、上述した最小培地上での増殖に関して試験した。この培地上での増殖は、野生型株で見られたものと同様であった。この培地と共に、ピルビン酸が、ptsI遺伝子産物(ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸を産生し、リン酸をグルコースに移動させる、ホスホトランスフェラーゼシステムの酵素)を介して、グルコースから産生され得る。二重ノックアウト株をまた、リボースではなく、0.4% L−アラビノースまたは0.4%D−キシロースを加えた、上述したような培地を用いて、増殖に関して試験した。ピルビン酸は、(非PTS)基質を含むこれらの5−炭素上での増殖からは産生されていない。二重ノックアウトは、5mMピルビン酸を含まないかぎり、これらの条件下で増殖しなかったが、野生型株は、ピルビン酸の存在する場合、およびしない場合両方で、正常に増殖した。
(pET30 Xa/LIC中にクローン化した、実施例2で記述した)コモモナス・テストステロニからのproAアルドラーゼ遺伝子、および(pET30 Xa/LICおよびpET32中でクローン化した)実施例3で記述したaspC/proA遺伝子を、pBAD TOPO TA発現キット(インビトロジェン)を用いて、pBAD−TOPO内にサブクローン化した。これらの構造物中の、遺伝子(類)の発現は、誘導可能araBADプロモーターによって制御される。アラビノース(例えば0.4%)およびIPTGの存在下で、遺伝子(類)が発現する。ピルビン酸またはピルビン酸の供給源を含めない限り、株は、最小培地上で増殖しないであろう。培地に、モナチン、モナチン前駆体、モナチンおよびモナチンの前駆体の類似体を加えることができる。文献中で使用された基質の典型的な範囲は、0.5〜5mMである。ProAアルドラーゼは例えば、モナチン前駆体をピルビン酸およびインドール−3−ピルビン酸に変換し、ピルビン酸の供給源を株に供給し、0.4%アラビノースを含む最小培地上での増殖を許容する。proA遺伝子およびaspC遺伝子の両方を発現する構造物は、モナチンをモナチン前駆体に、およびモナチン前駆体をピルビン酸およびインドール−3−ピルビン酸に変換できる。このシステムを、アルドラーゼに関して選別するため、およびモナチンの特定の立体異性体、モナチン前駆体の特定の立体異性体、またはモナチンまたはモナチン前駆体の類似体上で、より活性である、アルドラーゼに関して選別するために利用可能である。例えば、望む進化が、実施例2で言及した任意のアルドラーゼにて起こった場合、プレートアッセイは、得られた変異体酵素のエナンチオ特異性を測定するために、RまたはSモナチン前駆体いずれかを含む培地を利用可能である。R−モナチン前駆体を含むプレート上で増殖が起こり、S−モナチン前駆体を含むプレート上で、増殖がほとんど、または全く起こらなかった場合、アルドラーゼは、反応部位において、R−キラリティーを含む基質に対して特異性を持つ。
M9最小培地プレートを、1×Balchビタミン溶液およびBalch改変トレース要素溶液(Balch,W.E.,G.E.Fox,L.J.Magrum,C.R.Woese、and R.S.Wolfe.1979.「メタン生成微生物:ユニークな生物学的群の再評価(Methanogens:reevaluation of a unique biological group.)」Microbiol.Rev.43:260−296)を含んで作製した。グルコースまたはアラビノースを、炭素供給源(0.4% w/v)として含め、プレートに、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)中に溶解した5mM モナチン(R,R;S,Sラセミ体混合物)、またはモナチンを含まない、等量のリン酸カリウム緩衝液いずれかを含めた。増殖を、以下表13で要約している。
スクリーンを、ProAおよびAspCのレベルを制御すること、モナチンの取り込みを増加させること、モナチンの代わりにモナチン前駆体を利用すること(この場合、アミノトランスフェラーゼは存在する必要がない)、または以上で記述したもののような、少ないモナチンの疎水性類似体を利用すること、によって最適化可能であることが予測される。モナチンの取り込みを増加させるための方法には、アミノ酸混合物の添加、特定のアミノ酸の添加、および細胞壁を浸透性にすることを助ける、界面活性剤、抗生物質、抗生物質類似体または酵素の利用が含まれる。ポリミキシンBナノペプチド(Dixon and Chopra.1986.Antimicrobial Agents and Chemotherapy.29:781−788)およびミクロシスチンRR(Dixon,Al−Nazawi,and Alderson.FEMS Microbiology Letters.2004.2003:167−170)が、大腸菌の外側膜を浸透性にする試薬として記述されてきている。
他のプロモーターシステム/プラスミドを、等しい結果を持って、このスクリーニングシステムで使用可能であることが予想される。例には、T7プロモーターシステムおよびtaqおよびlacのようなIPTG誘導可能プロモーターが含まれる。
モナチンおよびモナチン前駆体(MP)類似体の合成
モナチン前駆体(MP)類似体4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸を、Shannon and Marcus(1962)またはPrey et al(1955)またはWaldmann et al(1954)の方法を用いて合成する。モナチン前駆体(MP)類似体4−カルボキシ−4−ヒドロキシ−2−オキソアジピン酸を、Tack et al(1972)の方法、またはMartius(1943)の方法によって合成する。
モナチン類似体4−ヒドロキシ−4−メチルグルタミン酸を、実施例4のアミノ変換活性項目にて記述したように、アミノドナーグルタミン酸の存在下で、aspCアミノトランスフェラーゼとの反応によって、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソグルタル酸から生合成した。
実施例10
リポ酸生合成遺伝子のノックアウトによる、大腸菌内でのピルビン酸の産生の増加
リポ酸生合成経路の妨害によって、大腸菌におけるピルビン酸生産性が増加可能であり、これは、インビボモナチン産生のために利点であり得る。ピルビン酸デヒドロゲナーゼに関する共因子として利用するために可能である、リポ酸がほとんどないか、または全くない場合、ピルビン酸からのアセチル−CoAの形成が制限される。DE3株を、pET30 Xa/LIC中のT7プロモーターからのモナチンオペロンの発現に関して使用可能である。BW25113△lipA::cam株を、トリプトファン過剰産生株である、大腸菌7692内への、lipAノックアウト(クロラムフェニコール挿入あり)のP1形質導入のための、ドナー株として利用した。大腸菌7692△lipAおよびBW25113△lipA変異体両方を、T7発現のために、溶原化した。
株
大腸菌株BE25113および大腸菌CGSC7692を、ジェネティック ストック センター(Genetic Stock Center(Yale University))より得た。大腸菌CGSC7692は、以下の遺伝子型を持つ。W3110tnaA2trpEFBR19(Doolittle and Yanofsky,J.Bacteriol.,(1968)95:1283−1294、およびYanofsky他,J.Bacteriol.,(1984)158:1018−1024)。この株は、フォードバック耐性アントラニル酸シンターゼ遺伝子(trpE)を持ち、これは、トリプトファンの生合成に関する、鍵となる分岐点であり、調節点である。
BW25113△lipA::cam構造物は、Dr.Hans Liaoより提供された(第WO02085293A号)。
材料と方法
P1ファージを、ATCC(Manassas,VA)カタログ#25404−B1から購入した。ラムダ(DE3)溶原化キットを、ノヴァジェン(Madison,WI)から購入した。他に言及しない限り、全ての試薬は、培地グレードまたはそれ以上であった。
ピルビン酸過剰発現培地を、以下を含めて利用した。50g/Lグルコース(オートクレーブ後に加える)、10g/L(NH4)2SO4、4g/Lペプトン(フィッシャー(Fisher))、1g/L K2HPO4、2g/l NaCl、0.5g/L MgSO4−7H2O、14.7mg/L CaCl2−2H2O(オートクレーブ後に加える)、および1μg/リットルのリポ酸(オートクレーブ後に加える)。ピルビン酸過剰産生培地を、NaOHでpH8に調節した。
大腸菌株の遺伝的操作
P1形質導入を、Miller(Miller,J.H.,「細菌遺伝学のショートコース(A short course in bacterial genetics)」Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1992)の方法を用いて実施した。P1溶解物を、大腸菌BW25113△lipA::cam細胞を用いて作製した。次いで、単離したP1ファージを、大腸菌CGSC7692を形質導入するために使用した。対象のクローンを、34μg/mlクロラムフェニコールおよび10nMリポ酸を含むBLプレート上での増殖によって選別した。リポ酸シンターゼ欠損を、リポ酸を含む、そして含まないプレート上での増殖の比較によって、およびPCRスクリーニングならびに正確な大きさおよび制限パターンに関するPCR産物の解析によって確認した。
大腸菌株CGSC7692のλDE3溶原化、7692△lipA、およびBW25113△lipAを、製造業者のプロトコールにしたがって、ノヴァジェンλDE3溶原化キットを用いて実施した。DE3ファージの存在を、T7 RNAポリメラーゼのない状態では、プラークを形成することができない、T7 Testerファージ(4107)の利用によって確認した。溶原化を、さらに、aspC/pET30 Xa/LIC構造物を用いる発現実験によって確認した。
ピルビン酸の検出
ピルビン酸に関して解析すべき、インビトロまたはインビボ生化学反応実験の試料を、pHを3未満に減少させるために、ギ酸で処理し、次いで、LC/MS解析にかける前に、0.45μmのナイロンシリンジフィルターを介して濾過した。ピルビン酸の同定は、保持時間および質量選択的検出に基づいた。LC分離を、Waters2690液体クロマトグラフィーシステム、および40℃での定組成溶出での、2.1mm×250mm Pehnomenex Aqua C18逆相クロマトグラフィーカラムを用いて実施した。LC移動相は、0.18mL/分の流速での、0.1%(v/v)ギ酸を含む水中1%メタノールであった。
ピルビン酸の解析のための検出系には、Waters 996 Photo−Diode Array(PDA)検出器およびWaters Micromass ZQ四極子質量分析器が含まれる。クロマトグラフィープロファイルをモニタリングするために、195〜225nmにて操作する、PDAを、クロマトグラフィーシステムと質量分析器の間に連続して配置した。ピルビン酸の[M+H]-イオンの安定性を増強するために、イソ−プロパノールおよび水中の1%(v/v)NH4OHのインラインカラム後添加を、質量分析器の前に、0.025mL/分の速度で加えた。
陰性電子噴霧イオン化モード(−ESI)にて操作するMicromass ZQ四極子質量分析器パラメータを、以下のように設定した。キャピラリー(Capillary):2.0kV、コーン(Cone):30V、エクストラクター(Extractor):4V、RFレンズ:1V、供給源温度(Source temperature):120℃、脱溶媒和温度(Desolvation temperature):380℃、脱溶媒和ガス(Desolvation gas):600L/時間、コーンガス(Cone gas):オフ、低質量分解(Low mass resolution):15.0、高質量分解(High mass resolution):15.0、イオンエネルギー(Ion energy):0.2、倍増管(Multiplier):650。単一イオンモニタリングMS試験を、ピルビン酸の脱プロトン化分子[M−H]-イオンである、m/z 87を選択的に検出可能にするために、設定した。
増殖実験
BW25113、BW25113△lipA、BW25113△lipA(DE3)、CGSC7692、7692△lipA、7692(DE3)、および7692△lipA(DE3)の20mL培養液を、10nMリポ酸を含む、2YT培地(Sambrook他)を含む125mLシェイクフラスコ中で増殖させた。24時間後、発酵ブロスの試料を、解析のためにのぞき、20g/Lのグルコースを加えた。培養液を、さらに24時間増殖させ、その時点で、細胞を回収して、発酵ブロスを濾過し、以上で記述したように、LC/MSによって解析した。7692△lipAおよびBW25113△lipA細胞両方が明らかに、lipA遺伝子を含むCGSC7692およびBW25113細胞よりも、多くのピルビン酸を産生可能であるので、図14でリポ酸生合成の遺伝的ノックアウトの利点を示している。実験を、50g/Lグルコースを含む、ピルビン酸過剰産生培地で繰り返した(Yokota他,(1997).J.Ferment.Bioeng.,83:132−138)。ブロスの試料を、増殖の24、48および72時間後に取り除き、ピルビン酸に関して、LC/MSによって解析した。結果を図15に示しており、異なる培地を用いて図14の結果を確認している。7692構築物は、2YT培地中で、より高い生産性を持つことが明らかである。他の細菌における同様の遺伝的変異が、同様の効果を持つことが予想される。
実施例11
リポ酸シンターゼ遺伝子を欠く、大腸菌構造物におけるモナチンの産生
図10にて、ピルビン酸産生が、lipA遺伝子を欠損した場合に、大腸菌構造物中で増加した。lipAノックアウトのDE3株に、モナチンオペロン(実施例7で記述したaspC proA/pET32b構造物)を形質導入し、誘導されたタンパク質を発現する、およびモナチンを産生するそれらの能力に関して評価した。モナチンオペロンを形質導入した、大腸菌BW25113△lipA(DE3)構造物は、トリプトファンを、誘導の数時間後に培養液に加えた場合に、8〜9ng/mlバイオモナチンを産生した。モナチンオペロンを形質導入した、トリプトファン過剰発現株大腸菌7692△lipA(DE3)は、トリプトファンを与えないで、約2ng/mLモナチンを産生した。モナチンオペロンで基質導入したが、lipA遺伝子を含む、大腸菌7692(DE3)構造物は、検出可能なモナチンを産生しなかった。
大腸菌7692(DE3)、7692△lipA(DE3)およびBW25113△lipA(DE3)のエレクトロコンピテント細胞の調製
(12.5μg/mLクロラムフェニコールおよび、もし△lipAなら、10nM α−リポ酸を含む)LB培地中の大腸菌7692(DE3)、7692△lipA(DE3)およびBW25113△lipA(DE3)の200ミリリットル培養液を、0.45〜0.5のOD650まで、振とうしながら37℃にて増殖させた。氷浴中で冷却した後、培養液を、4,000×gにて10分間4℃にて遠心した。上清をデカントし、細胞ペレットを、それぞれ、200mLの無菌氷冷水中に懸濁させた。遠心を繰り返して、細胞ペレットをそれぞれ、20mLの無菌氷冷水中に検索させた。三回目の遠心の後、細胞ペレットを、2mL氷冷10%グリセロール中にそれぞれ懸濁した。四回目の遠心によって得られた細胞ペレットを、0.15mL氷冷10%グリセロール中に懸濁させ、この懸濁液を、40μL分液にわけて、−80℃にて冷凍した。
大腸菌7692(DE3)、7692△lipA(DE3)、およびBW25113△lipA(DE3)エレクトロコンピテント細胞に、バイオ−ラッド(Bio−Rad)Gene Pulsar II器具を用いて、バイオ−ラッド・エレクトロポレーションマニュアルにて記述された標準の条件下での、エレクトロポレーションによって、モナチンオペロン構築物(aspC proA/pET32)を形質導入した。100μg/mLのアンピシリン(および△lipAの場合、20nM αリポ酸)を含むLB培地上で増殖可能なクローンを、その、アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼ遺伝子を発現する能力に関して解析した。
100μg/mLアンピシリンを含むLB中の、2つの7692(DE3)クローンの50mL培養液を、0.5〜0.9の間のOD650まで、振とうしながら、37℃にて増殖させた。さらに、100μg/mLアンピシリンおよび10nM αリポ酸を含むLB中の、1つの7892DlipA(DE3)クローンと1つのBW25113△lipA(DE3)クローンの50mL培養液を、0.5〜0.9の間のOD650まで、振とうしながら、37℃にて増殖させた。遺伝子発現を、0.1mM IPTGの添加によって誘導し、培養液を、さらに撹拌しながら、30℃にて4時間インキュベートした。細胞を、4,000rpmにて10分間の遠心によって回収し、50mM MOPS、pH7緩衝液で洗浄し、再び遠心した。細胞抽出物を、製造業者のプロトコールにしたがって、ベンゾナーゼヌクレアーゼおよびCalbiochemプロテアーゼ阻害剤カクテルIIIを含む、ノヴァジェンBugBuster(商標)試薬を用いて調製した。細胞抽出物中のタンパク質発現のレベルを、4〜15%勾配ゲル(バイオ−ラッド、Hercules,CA)を用いて、SDS−PAGEによって解析した。全ての宿主において、アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼ両方がよく発現され、レベルは、LB培養液上で増殖させた場合に、大腸菌BL21(DE3)宿主で見られたものと同様であった。
aspCproApET32を形質導入した、大腸菌7692(DE3)、7692△lipA(DE3)およびBW25113△lipA(DE3)細胞における、モナチンの産生
これらの実験において、aspCproA/pET32を形質導入した大腸菌株を、以上で記述したように、増殖させ、誘導した。これらの培養液に、トリプトファンおよびピルビン酸両方を加え、細胞内および細胞外試料を、モナチンの産生に関して解析した。
aspCproA/pET32を形質導入した、大腸菌7692(DE3)、7692△lipA(DE3)およびBW25113△lipA(DE3)細胞のフレッシュなプレートを、100μg/mLアンピシリンを含むLB培地上で調製した。△lipA株に関して使用したプレートはまた、10nMαリポ酸を含んだ。一晩培養液(5mL)を、単一コロニーから接種し、100μg/mLアンピシリンおよび10nMαリポ酸を含むLB培地中、37℃にて増殖させた。一晩培養液の1mLを、100μg/mLカルベニシリンおよび10nMαリポ酸を含むtrp−1培地、100mL中で、接種として利用した。培養液を、OD650が約0.5に達するまで、振とうしながら、37℃にてインキュベートした。遺伝子発現を、0.1mM IPTGの添加によって誘導し、培養液を、振とうしながら、30℃にてさらに4時間インキュベートした。遺伝子発現が誘導された時に、ピリドキシンを、最終濃度0.5mMまで加え、同時に1nmolのαリポ酸も加えた。誘導の4時間後、trp−1培地の25mLの分液、および0.05mLの100mg/mLカルベニシリン(5mg)を培養液に加え、インキュベーションを、振とうしながら、30℃にて続けた。誘導の18時間後、リン酸カリウム(50mM、pH7.2)中の0.04mMリン酸ピリドキサールを全ての培養液に加えた。aspCproA/pET32を形質導入した大腸菌7692(DE3)および7692△lipA(DE3)培養液に、グルコース(0.2g)および0.2%の最終濃度までのツィーン−20を与えた。大腸菌BW25113△lipA(DE3)構造物培養液に、最終濃度50mMまでの固体トリプトファンと、最終濃度0.2%までのツィーン−20を与えた。すべての3つの培養液のpHを、8.2〜8.4に調節し、30℃でのインキュベーションを続けた。モナチン(0.5mL)およびタンパク質産生(5〜10mL)の解析のための試料を、IPTGでの誘導の0、4、18(添加前)、19、24、48および72時間後に抜いた。
発酵ブロス試料中のモナチンの濃度を、実施例6で記述したように、LC/MSまたはLC/MS/MSによって測定した。
モナチンは、aspCproA/pET32形質導入大腸菌7692△lipA(DE3)培養液からの18時間試料中で、〜2ng/mLの濃度で、発酵ブロス中で検出された。24〜72時間の間で抜いた試料では、モナチンは観察されなかった。aspC proA/pET32形質導入大腸菌7692(DE3)培養液からの任意の試料にて、モナチンは観察されなかった。しかしながら、モナチンが、濃度8〜9ng/mLにて、aspCproA/pET32形質導入大腸菌BW25113△lipA(DE3)培養液の、48および72時間発酵ブロス試料中で検出された。
細胞抽出物を、ノヴァジェンのプロトコールにしたがって、ベンゾナーゼヌクレアーゼおよびCalbiochemプロテアーゼ阻害剤カクテルIIIを含む、ノヴァジェンBugBuster(商標)試薬を用いて調製した。細胞抽出物中のタンパク質発現のレベルを、4〜15%勾配ゲル(バイオ−ラッド、Hercules,CA)を用いて、SDS−PAGEによって解析した。発現したタンパク質の濃度は、aspCproA/pET32形質導入大腸菌7692(DE3)試料に関する、24時間細胞抽出物試料にて、もっとも高いレベルであった。発現したタンパク質の濃度は、aspCproA/pET32形質導入大腸菌7692△lipA(DE3)細胞抽出物試料に関して、4および18時間試料でその最大値であった。アルドラーゼポリペプチドが、可溶性タンパク質の約15%を占め、一方で、アミノトランスフェラーゼポリペプチドは、これらの試料中、可溶性タンパク質の>30%であることが明らかであった。2つのポリペプチドは、trp−1培地中で増殖した、aspCproA/pET32形質導入大腸菌BW25113△lipA(DE3)培養液中でも、発現しなかった。しかしながら、18および24時間細胞抽出物試料中で見られたもっとも高いレベルは、いずれのポリペプチドでも、総可溶性タンパク質の10〜15%超ではなかった。
これらの結果は、タンパク質が、IPTGでの誘導の後、aspCproA/pET32を形質導入した株全てで産生されたことを示している。lipA遺伝子を欠損し、aspCproA/pET32を形質導入した、2つの株(大腸菌BW25113△lipA(DE3)および7692△lipA(DE3))が、ピルビン酸を与えることなしに、モナチンを産生した。これは、lipA遺伝子ノックアウトが、モナチンのインビボ産生に関して有利であることを示している。トリプトファン過剰発現株大腸菌7692△lipA(DE3)は、トリプトファンまたはピルビン酸の添加なしで、モナチンを産生した。しかしながら、モナチン産生のレベルは、トリプトファンおよびピルビン酸両方を与えた大腸菌構築物中で産生され、および分泌された量よりも、非常に少量であった(例えば、実施例7の表5を参照のこと)。
実施例12
トリプトファンおよびピルビン酸を過剰産生する、大腸菌構築物におけるモナチンの産生
lipA遺伝子を欠く、大腸菌トリプトファン過剰産生株、NRRL12264を、aspCおよびproA遺伝子を含むプラスミド、ならびにトリプトファンオペロンを含む第二オペロンを形質導入した時に、モナチンを産生する能力に関して評価した。モナチンおよびトリプトファン両方を、遺伝子発現の誘導の後に測定した。
株
実施例15において、トリプトファン過剰発現物として米国特許第4,371,614号明細書にて引用された3つの株を、2つの培地組成にて、それらのトリプトファンを産生するための能力に関して実験した。1つの株である、NRRL B−12262(また、引用された遺伝子型serB-、trp△ED、tnaA2-、tetS、tyrA-、pheA-を持つ、AGX15とも呼ばれる)は、pBR322から由来するpGX44と呼ばれるプラスミドも含み(Roeder and Somerville,Molec.Gen.Genet.,1979,176:361−368)、serB遺伝子およびトリプトファンオペロンを含む。他の株、NRRL B−12264(また、引用された遺伝子型serB-、trp△ED、tnaA2-、aroP-を持つAGX6とも呼ばれる)は、pBR322から由来した、pGX50と呼ばれるプラスミドを含み、serB遺伝子、5−メチルトリプトファンに耐性である細胞から由来するトリプトファンオペロン、およびアンピシリン耐性遺伝子を含む。これらの2つの株を、以下の遺伝的操作にかけ、NRRL B−12264から由来した株を、モナチン産生のために解析した。
遺伝的操作
lipA遺伝子を欠損させるためのP1形質導入、および大腸菌NRRL株12262および12264のλDE3溶原化を、実施例10で記述したように実施した。リポ酸シンターゼ欠損を、リポ酸の存在下、または存在しない状態で、プレート上での増殖比較によって、およびPCRスクリーニングおよび正確な大きさおよび制限パターンに関する、PCR産物の解析によって、確認した。DE3ファージの存在を、T7 Testerファージの利用、およびaspCpET30(Xa/LIC)を形質導入したときに、aspC遺伝子を発現する能力によって確認した。セリンおよびトリプトファンを含み、アンピシリンを含まない、リッチ培地上で、繰り返し継代することによって、プラスミドpGX44を、株12262より保存し、プラスミドpGX50を、株12264より保存した。保存を、アンピシリンの存在下での、増殖の能力の欠損によって、株12264中で確認した。
大腸菌12262△lipA(DE3)および12264△lipA(DE3)のエレクトロコンピテント細胞の調製
大腸菌12262△lipA(DE3)および12262△lipA(DE3)のエレクトロコンピテント細胞を、実施例10にて記述したように調製した。最終洗浄と、氷冷10%グリセロール中での再懸濁の後、細胞を、40μL分液にわけ、−80℃にて冷凍した。
トリプトファンオペロンを含むプラスミドの構築
キアゲンQIAprep(登録商標)Spin Miniprep Kitを用いて、プラスミドpGX44を、株12262から精製し、プラスミドpGX50を、株12264から精製した。大腸菌ゲノムDNAを、実施例1で記述したように、株大腸菌DH10B(インビトロジェン、Carlsbad,CA)から単離した。
プラスミドpGX44、pGX50のトリプトファンオペロン、および大腸菌株DH10BからのゲノムDNAを、KpnIおよびBamHI制限部位を用いて、pPRONcoプラスミド内にクローン化するために、プライマーを設計した。このプラスミドは、1つのNcoI部位が、変異T1538Cによって取り除かれた、pPROLar.A112ベクター(BDバイオサイエンセス クロンテック(BD Biosciences Clontech)、Palo Alto,CA)の誘導体である。トリプトファンオペロン(Genbank受入番号:NC_000913.2 GI:49175990 1320970−1314440)は、以下の遺伝子、trpE、trpD、trpC、trpBおよびtrpAのオープンリーディングフレームを含む。遺伝子産物のGenBank受入番号は、以下のようである。trpE、GenBank受入番号:NP_415780.1 GI:16129225、trpD、GenBank受入番号:NP_415779.1 GI:16129224、trpC、GenBank受入番号:NP_415778.1 GI:16129223、trpB、GenBank受入番号:NP_415777.1 GI:16129222、trpA GenBank受入番号:NO_415776.1 GI:16129221。
N末端:5’−CGGGGTACCCATGCAAACACAAAAACCGACTCTCGAACTG−3’(配列番号79)
C末端:5’−CGCGGATCCTTAACTGCGCGTCGCCGCTTTCAT−3’(配列番号80)。以下のPCRプロトコールを遺伝子増幅のために利用した。50μLの反応液中に、100〜300ng DNA鋳型、1.0μMの各プライマー、0.2mM各dNTP、0.75U pfuUltra HF Polymerase(ストラタジーン(Stratagene);LaJolla,CA)、2.5U Expand High Fidelity(商標)ポリメラーゼ(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN),Mg入り1XExpand(商標)緩衝液を加えた。サーモサイクラープログラムは、94℃5分間の熱開始、続く、30サイクルの94℃(30秒間)の変性段階、61.5℃(1分間)のアニーリング段階、および72℃(8分間)の伸長段階、および最終的に、72℃(7分間)の最終段階、を利用した。増幅されたDNAを、キアゲン QIAquick(登録商標)Gel Extraction Kit(Valencia,CA)を用いて、1%アガロースゲルより精製した。
PCR産物およびpPRONcoベクターを、製造業者のプロトコールにしたがって、連続して、NEB(Beverly,MA)より購入したBamHI、次いでKpnIで消化した。両方の消化の後、キアゲンQIAquick PCR Clean−up Kitを用いて、DNAをタンパク質および緩衝液塩より精製した。ベクターもまた、第二の洗浄段階の前に、製造業者の推奨にしたがって、エビアルカリホスファターゼ(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)で処理した。精製したDNAを、260nmでの吸収を測定することによって定量し、T4リガーゼ(NEB)を用いて、>8:1の挿入物対ベクターの比でライゲートした。ライゲーション混合液の、エレクトロコンピテント大腸菌DH10B細胞への形質導入を、バイオ−ラッド エレクトロポレーション マニュアルに記述されているように、0.1cmキュベットおよびバイオ−ラッドGene Pulser IIシステムを用いて、標準条件下で実施した。トリプトファンオペロンを含むクローンを、制限解析によって同定し、DNAシークエンシングによって確認した。大腸菌DH10BおよびpGX44(大腸菌株12262)からのトリプトファンオペロン遺伝子の核酸配列は同一であり、NCBIデータベース(上記リストの受入番号)と一致する一方で、pGX50(大腸菌株12264)からのトリプトファンオペロンは、trpE遺伝子中15の変異を示したが、trpD、trpC、trpBおよびtrpA遺伝子中のDH10BおよびpGX44配列は同一であった。pGX44のtrpE遺伝子での変異は以下のようであった。G30A(サイレント)、T61C(サイレント)、C63G(サイレント)、G160A(サイレント)、T189A(サイレント)、C210T(サイレント)、C211A(Gln72Lys)、A217G(サイレント)、C218T(サイレント)、T220A(サイレント)、C229T(サイレント)、C232T(サイレント)、C241G(サイレント)、G281A(Ser94Asn)、C349T(サイレント)。配列番号81および82は、それぞれ、pGX50からのtrpE遺伝子の、核酸配列およびアミノ酸配列を示している。
大腸菌株12262△lipA(DE3)および12264△lipA(DE3)の形質導入
大腸菌12264△lipA(DE3)および12262△lipA(DE3)エレクトロコンピテント細胞を、バイオ−ラッド・エレクトロポレーション・マニュアルにて記述された標準条件下で、バイオ−ラッド Gene Pulser II器具を用いて、(実施例10で記述した)aspCproApET32で形質導入するか、またはaspCproApET32および以上で記述したトリプトファンオペロン構造物の1つでエレクトロポレーションによって共形質導入した。100mg/Lでのアンピシリンおよび20nM αリポ酸(aspCproA/pET32形質導入株)、または100mg/Lでのアンピシリン、50mg/Lでのカナマイシンおよび20mMαリポ酸(aspCproA/pET32およびトリプトファンオペロン形質導入株)のいずれかを含むLB培地上で増殖可能なクローンを、さらなる解析のために選んだ。
aspCおよびproA遺伝子およびトリプトファンオペロンを含むプラスミドを形質導入した、大腸菌株12264△lipA(DE3)におけるモナチンの産生
aspCproA/pET32、またはaspCproA/pET32およびDH10トリポペロン/pPRONcoで、またはaspCproA/pET32およびpGX44トリポペロン/pPRONcoで、またはaspCproA/pET32およびpGX50トリポペロン/pPRONcoで形質導入した大腸菌12264△lipA(DE3)のフレッシュなプレートを、適切な抗生物質および20nMのαリポ酸を含むLB培地上で調製した。一晩培養液(5mL)を、単一のコロニーより接種し、適切な抗生物質および20nMαリポ酸を含む、(実施例1および7で記述した)LB培地またはtrp−1培地中、37℃にて増殖させた。aspCproA/pET32およびpGX50トリポペロン/pPRONcoを持つ株は、trp−1またはLB中の液体培養液中では、どちらでも増殖せず、さらには使用しなかった。1〜2mLの各一晩培養液を、適切な抗生物質、0.4%カサミノ酸、0.1%Balchのビタミン溶液、および20nMαリポ酸を含む、100mLのtrp−1培地に関して接種として利用した。Balchのビタミン溶液は、以下を含んだ。1L中、p−アミノ安息香酸(5.0mg)、ギ酸(2.0mg)、ビオチン(2.0mg)、ニコチン酸(5.0mg)、ペントテン酸カルシウム(5.0mg)、リボフラビン(5.0mg)、チアミン−HCl(5.0mg)、ピリドキシン−HCl(10.0mg)、シアノコバラミン(0.1mg)、およびαリポ酸(0.1mg)。pHをNaOHで7.0に調節し、この溶液を使用の前に濾過滅菌した。
株を、振とうしながら、37℃にてインキュベートした。aspCproA/pET32ベクターのみを持つ株は、8時間にわたり、600nmでのODの増加を示さず、さらにインキュベートはしなかった。他の培養液は、OD600が約0.5に達するまで(およそ8時間)インキュベートした。遺伝子発現を、0.2mM IPTGおよび0.5%アラビノースの添加によって誘導した。50mM でのピリドキシンおよび1mg/mLでのビオチンも、各培養フラスコに加えた。誘導の5時間後、0.04mM リン酸ピリドキサール、0.5%ピルビン酸ナトリウム、0.2% ツィーン−20および10μg/mLアンピシリンを、各培養フラスコに加え、インキュベーションを30℃にて続けた。モナチン(0.5mL)およびタンパク質産物(5〜10mL)の解析のための試料を、IPTGでの誘導後、0、4、16、24、40、49および67時間後に抜いた。発酵ブロス試料中のモナチンおよびトリプトファンの濃度を、LC−MS/MS MRMによって測定した。結果を、以下の表に示している。トリプトファンおよびモナチンの濃度は、表14および15で示したように、誘導16〜24時間後に抜いた発酵ブロス試料中でもっとも高かった。
細胞抽出物を、ノヴァジェンのプロトコールにしたがって、ベンゾナーゼヌクレアーゼ、r−リソザイムおよびCalbiochemプロテアーゼ阻害剤カクテルIIIで、ノヴァジェンBugBuster(商標)試薬を用いて調製した。細胞抽出物中のタンパク質発現のレベルを、4〜15%勾配ゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いて、SDS−PAGEによって解析した。細胞抽出物中に効果的に発現したタンパク質を、誘導後4〜24時間で回収したタンパク質より調製した。55〜59kD(trpSおよびtrpE遺伝子産物)および48〜50kD(trpCおよびHIS6aspC遺伝子産物)の分子量のタンパク質が、高いレベルの発現を示した。細胞抽出物試料を、5倍に希釈し、濾過し、LC/MS/MS MRMによって解析した。モナチンではなくトリプトファンが、細胞抽出物試料中で検出された。最も高いレベルのトリプトファンが、誘導後16〜24時間で抜いた試料にて測定され、それより後の時間点では減少した。より濃縮した細胞抽出物試料が、検出可能なレベルでのモナチン濃度を示すことが予想される。
実施例13
組換え体グラム陽性細菌でのモナチン産生
本実施例は、コリネバクテリウム細胞のようなグラム陽性細菌中で、モナチンを産生するために使用可能である方法を記述している。当業者は、同様の方法を、他の細菌細胞中でモナチンを産生するために利用可能であることを理解するであろう。さらに、ベクターが、モナチンの産生を増加させるための他の遺伝子を含み得る。
方法と材料
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC21847を、American Type Culture Collectionより得た。この株は、種々の芳香族アミノ酸類似体に対して耐性であることが知られており、増殖のためにフェニルアラニンおよびチロシンを必要とする。
全ての制限酵素を、New England BioLabs(Berverly,MA)より購入した。プライマーを、他に言及しない限り、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville,IA)によって合成した。コリネバクテリウム/大腸菌シャトルベクター、pEKEX−を、Dr.Lothar Eggeling,Institute of Biotechnology 1,Forschungszentrum Julich GmbH,52425 Julich Germany(Eikmanns他,(1991)Gene 102(1):92−8))より得た。
aspCproApEKEX−2の構築
PCRのための組換え体DNA技術、DNAの精製、ライゲーションおよび形質導入を、確立された手順(Sambrook,Fritsch,Maniatis他,1989)にしたがって実施した。aspCおよびproA遺伝子を含むモナチンオペロンを、鋳型としてaspCproApET32を用いて、pEKEX−2ベクター内にクローン化した。aspC ATG開始コドンの5’およびproA終止コドンの3’ KpnI制限を持つオペロンの合成のためのプライマーを、PCR増幅のために設計した。フォワードプライマーを、aspC配列のリボソーム結合部位5’を含み、pET32構築物中に存在するHis−タグ配列を除くように設計した。フォワードプライマー:5’−CGGGGTACCAGAAGGAGAGATGCACGAT−GTTTGAGAACATTACCGCCGCT−3’;リバースプライマー:5’−CGGGGTACCGCTTAGTCAAT−ATATTTCAGGC−3’(配列番号83および84)。
以下のPCRプロトコールを用いてモナチンオペロンを増幅させた。50μLの反応液中、50ng鋳型、1.0μMの各プライマー、0.2nMの各dNTP、0.5U Pfuturbo DNAポリメラーゼ(ストラタジーン(Stratagene),LaJolla,CA)、2.8U Expand High Fidelity(商標)Polymerase、およびMgを含む1×ExpandTM緩衝液を加えた(Roche,Indianapolis,IN)。使用したサーモサイクラープログラムは、96℃にて5分間の熱開始、以下の段階94℃30秒間、59〜59℃1分間45秒(勾配サーモサイクラー)、および72℃1分30秒間の10回の繰り返し、以下の段階94℃30秒間、59〜59℃1分間45秒、および72℃1分30秒間、各サイクルで5秒間増加させる、の15回繰り返し、および以下の段階94℃30秒間、59〜59℃1分45秒間、および72℃2分45秒間の10回繰り返しを含んだ。35サイクル後、試料を、72℃にて7分間インキュベートし、次いで4℃にて保存した。PCR産物を、QIAQuick PCR Clean−upキット(Valencia,CA)を用いて精製し、260nmでの吸収を測定することによって定量した。
pEKEX−2プラスミドを、KpnIにて2時間、37℃にて消化し、次いで、15分間、エビアルカリホスファターゼ(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)で処理した。PCR産物を、37℃での一晩反応中で、KpnIで消化し、両方の消化物を、QIAQuick PCR Clean−upキットを用いて精製した。ライゲーション反応を、84ngのプラスミドおよび130ngのPCR産物で、Roche Rapid DNA Ligationキット(Indianapolis、IN)を用いて実施し、得られたライゲーション混合液を、0.2cm ミクロ−エレクトロポレーションキュベットおよびBio−Rad Gene Pulser IIシステム(Hercules,CA)で、大腸菌細胞を形質導入するための、製造業者の推奨手順を用いて、大腸菌DH10B ElectroMAX細胞(Invitrogen、Carlsbad,CA)内に形質導入した。SOC培地中での回復後、形質導入混合液を、50μg/mLでカナマイシンを含むLBプレート上でプレートした。プラスミドDNAを、LB+カナマイシンプレートからピックアップしたコロニーの液体培養液(37℃にて一晩増殖した、5mL 2×YT培地+カナマイシン(50μg/mL))から単離し、QIAprep(登録商標)Spin Miniprepキット(キアゲン)を用いて精製した。次いでプラスミドを、正確な方向および大きさを持つ挿入物に関して、制限消化によって選別し、配列を、ジデオキシヌクレオチド鎖−終結DNAシークエンシング(SeqWright,Houston,TX)によって確認した。
正確な配列および方向を持つ2つのクローンを、それらの、アルドラーゼおよびアミノトランスフェラーゼ遺伝子を発現する能力に関して試験した。50μg/mLカナマイシンを含むLB中の構築物の50mL培養液を、約0.3のOD600まで撹拌して37℃にて増殖させた。遺伝子発現を0.1mM IPTGを添加することによって誘導し、培養液を、さらに15時間、30℃で振とうしながらインキュベートした。試料(10mL)を、誘導後0、2および15時間の時点で抜いた。細胞を4000×gにて10分間の遠心によって回収し、50mM MOPS、pH7にて洗浄し、再び遠心した。細胞抽出物を、ノヴァジェンのプロトコールにしたがって、ベンゾナーゼヌクレアーゼおよびCalbiochemプロテアーゼ阻害剤カクテルIIIで、ノヴァジェンBugBuster(商標)を用いて調製した。細胞抽出物中でのタンパク質発現のレベルを、4〜15%勾配ゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いたSDS−PAGEによって解析した。両方のポリペプチドが発現された。proAアルドラーゼポリペプチドは、誘導15時間後、可溶性タンパク質画分の5〜10%であり、aspCアミノトランスフェラーゼポリペプチドは、15時間試料中の可溶性タンパク質画分の20〜30%であることが明らかになった。
エレクトロポレーションのための、コリネバクテリウム・グルタミカム・コンピテント細胞の調製
エレクトロコンピテントC.グルタミカム細胞を、Tauch他(Current Microbiology,(2002)45:362−367)およびKoffas他(Metabolic Engineering、(2003)5:32−41)のプロトコールを組み合わせた方法を用いて調製した。C.グルタミカム細胞を、一晩増殖させ、翌日、200mLのMB培地(600nmでの初期吸収0.1)内に接種させた。MB培地は、5g/L酵母抽出物、15g/Lトリプトン、5g/Lソイトン、および5g/L塩化ナトリウムを含んだ。次いで、細胞を、200rpmにて振とうして、0.7の600nmでの最終吸収まで増殖させた。細胞を遠心(4000×g、20分間、4℃)によって回収し、細胞ペレットを、40mLの氷冷緩衝液(5%グリセロールを含む、20mM HEPES、pH7.2)にて3回洗浄した。スライス洗浄ペレットを、20mL氷冷10%v/vグリセロールでさらに2回洗浄した。4℃、4000×gでの10分間の遠心の後、細胞ペレットを、1.0mL 10%v/vグリセロール中に懸濁させ、0.15mL分液にわけ、−80℃にて保存した。
aspCproApEKEX−2での、コリネバクテリウム・グルタミカムの形質導入
C.グルタミカム細胞(株21847)中の形質導入を、Tauch他(Current Microbiology,(2002)45:362−367)およびKoffas他(Metabolic Engineering、(2003)5:32−41)の手順を組み合わせた方法を用いて実施した。エレクトロコンピテントC.グルタミカム細胞を、氷上で融解した。aspCproApEKEX−2 DNAを加え(1μg)、混合液を、冷却0.2cmエレクトロポレーションキュベットに移す前に、5分間氷上でインキュベートした。電気パルスの前に、0.8mLの氷冷10% v/vグリセロールを、2つの液体層が混合するのを避けるために、穏やかに細胞懸濁液上にのせた。エレクトロポレーション条件は、200ohms、25μFd、および12.5kV/cmであった。単一電気パルスへの暴露に続き、細胞懸濁液をすぐに、4mLの先に暖めた(46℃)MB培地中に移し、振とうしながら、46℃にて6分間インキュベートした。続いて、細胞を、200rpmにて振とうしながら、30℃にて50分間インキュベートした。細胞の部分を、25μg/mLカナマイシンを含む選択的MBプレート上に蒔き、形質導入細胞を回復させた。25μg/mLカナマイシンを含む選択的MBプレート上で増殖可能なクローンを、PCRによって選別して、形質導入を確認した。
aspCproApEKEX−2で形質導入した、コリネバクテリウム細胞中のモナチンの産生
C.グルタミカム::aspCproA/pEKEX−2(株21847)のフレッシュなプレートを、25μg/mLカナマイシンを含むMB培地上で調製した。一晩培養液(5mL)を、単一コロニーから接種し、25μg/mLカナマイシンを含むMB中で、30℃にて増殖させた。培養液を遠心し、細胞を1mLの産生培地中で懸濁させた。懸濁液の分液(0.5mL)を、100mLの産生培地を接種するために使用した。産生培地は、以下の変更をして、リシンの産生のためのKoffas他(Metabolic Enginnering,(2003)5:32−41)によって使用されたものと同様であった。アミノ酸添加が、200μg/mLの最終濃度にて、チロシンおよびフェニルアラニンであった。カナマイシンを、25μg/mLで加えた。トレオニン、メチオニンおよびロイシンは加えなかった。接種した培養液(100mL)を、OD600が0.2〜0.4に達するまで、振とうしながら、30℃にてインキュベートした。遺伝子発現を、1.0mM IPTG(最終濃度)の添加によって誘導し、培養液を、振とうしながら、30℃にてインキュベートした。遺伝子発現を誘導した時に、ピリドキシンを、最終濃度0.5mMまで加えた。インキュベーションを、振とうしながら、一晩30℃にて続けた。
誘導の16時間後、リン酸カリウム(50mM、pH7.2)中の0.04mMリン酸ピリドキサール(最終濃度)、ピルビン酸ナトリウム(0.1%)およびツィーン−20(0.2%)を加えた。30℃にてインキュベーションを続けた。モナチンおよびタンパク質産生の解析のための試料(5mL)を、IPTGでの誘導の後0〜112時間、いくつかの時間点で抜いた。試料を遠心し、分離した上清とペレット画分を、解析まで、−80℃にて冷凍した。
発酵ブロス試料中のモナチンの濃度を、(実施例6で記述した)LC−MS/MSによって測定した。モナチン(3〜12ng/mL)が、誘導66〜112時間後に抜いたブロス試料中で検出された。よりトリプトファンを産生する培養液がまた、よりモナチンを産生した。例えば、誘導40時間後に抜いたブロス試料中のトリプトファンの濃度が、70μg/mLであった場合、モナチンの濃度は、誘導後66〜112時間で抜いた試料中で、11〜12ng/mLであった。一方、少ないトリプトファン(40時間の時点で51μg/mL)を産生した培養液は、3ng/mLのモナチンのみを分泌した。
グルタミン酸過剰産生物、C.グルタミカム(ATCC13058)でのモナチンの産生
方法と材料
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13058を、American Type Culture Collectionより得た。この株は、グルタミン酸を産生および分泌することが知られている。
aspCproApEKEX−2でのエレクトポレーションおよび形質導入のための、コリネバクテリウム グルタミカム(ATCC13058)コンピテント細胞の調製
エレクトロコンピテントC.グルタミカム(ATCC13058)細胞を、ATCC株21847に関して記述したように調製した。最終洗浄および10%グリセロール中での再懸濁の後、0.15mLの分液を−80℃で保存した。細胞を、ATCC株21847に関して記述したように、aspCproApEKEX−2およびpEKEX−2で形質導入した。
aspCproApEKEX−2で形質導入したコリネバクテリウム(ATCC13058)細胞におけるモナチンの産生
C.グルタミカム::aspC proA/pEKEX−2(STCC13058)の2つの単離物、および C.グルタミカム::pEKEX−2(STCC13058)の1つの単離物のフレッシュプレートを、25μg/mLカナマイシンを含むMB培地上で調製した。一晩培養液(5mL)を、単一コロニーから接種し、25μg/mLカナマイシンを含むMB中で、30℃にて増殖させた。この培養液を遠心し、細胞を1mLのC.グルタミカム発酵培地中に懸濁させた。この培地には、1L中、以下の、グルコース(100g)、(NH4)2SO4(2g)、K2HPO4(1g)、KH2PO4(1g)、MgSO4−7H2O(0.25g)、FeSO4−7H2O(0.01g)、MnSO4−4H2O(0.01g)、ビオチン(2.5μg)が含まれた。(長期発酵に関して、pHを維持するために、4〜6時間の間隔で、少量の10%尿素を培養液に加えた。)各懸濁液(0.5mL)の分液を、2×100−mLの培地を接種するために利用した。接種した培地(100mL)を、OD600が〜0.4に達するまで、振とうしながら、30℃にてインキュベートした。遺伝子発現を、1.0mM IPTG(最終濃度)の添加によって誘導し、培養液を振とうしながら、30℃にてインキュベートした。遺伝子発現が誘導された時に、ピリドキシンを、0.5mMの最終濃度まで加えた。インキュベーションを、振とうしながら、一晩、30℃にて続けた。
誘導の9時間後、リン酸カリウム(50mM、pH7.2)中、0.04mMリン酸ピリドキサール(最終濃度)、ピルビン酸ナトリウム(0.1%)およびツィーン−20(0.2%)を、各構築物に関して、1つの培養液フラスコに加えた。ツィーン−20を、各培養液の第二フラスコから除いた。30℃でのインキュベーションを続けた。モナチンおよびタンパク質産生の解析のための試料(5mL)を、IPTGでの誘導後、0〜68時間で、いくつかの時間点で抜いた。試料を遠心し、分離した上清およびペレット画分を、解析まで−80℃にて冷凍した。
結果
発酵ブロス試料中のモナチンの濃度を、LC−MS/MSによって測定した。モナチンが、誘導後30〜68時間で抜いたブロス試料中で検出された。誘導後45時間で、モナチンの濃度が、ツィーン−20を、240〜330ng/mLの間で加えた、aspCproApEKEX−2を形質導入した培養液中で最大であった。ツィーン−20なしの培養液中でのモナチンのレベルは、50〜66ng/mLの範囲であった。驚くべきことに、モナチンは、対照培養液中で、検出可能なレベルで発見されたが、定量可能なレベルでは観察されなかった。
aspCproApEKEX−2で形質導入したコリネバクテリウム(ATCC13058)細胞におけるモナチンの産生(続き)
シェイクフラスコ実験を、異なるフィードレジメを用いて、C.グルタミカム13058::aspCproA/pEKEX−2およびC.グルタミカム13058::pEKEX−2で繰り返し、実施例6で記述したように、LC/MS/MS MRMによって解析した。
以下の開始培養液を、250rpmにて振とうしながら、30℃にて一晩、50mg/Lのカナマイシンを含むLB中で増殖させた。
C.グルタミカム13058::aspCproA/pEKEX−2−1(モナチンオペロン)
C.グルタミカム13058::pEKEX−2−1(ベクター対照)
5mlの開始培養液を、50mg/Lにてカナマイシンを含む、100mlのC.グルタミカム発酵培地に移した。培養液を、〜0.5のOD600まで、250rpmにて振とうしながら、30℃にてインキュベートした。この時点で、以下の添加物を、遺伝子発現を誘導するために、各フラスコに加えた。1μl IPTG(840mMストック)、10mlピリドキシンHCl(50mMストック)、および200μl PLP(20mMストック)。培養液を、IPTGの誘導の後、250rpmにて振とうしながら、30℃にて3時間(OD600 〜0.5)インキュベートした。培養液を55ml(半分)容量を新しいフラスコに移すことによって、2つのフラスコにわけた。各フラスコを、以下に記述する2つの測定のうちの一つにかけた。添加物を、表16で記述したように加えた。
添加の後、培養液を、250rpmにて48時間、振とうしながら30℃にてインキュベートした。各フラスコからの10mlの培養液ブロスを、乾燥細胞質量決定のために除いた。残った培養液容量を遠心し、上清を濾過し、グルタミン酸およびモナチン解析のために使用した。
培養液ブロスに関する結果を、表17にて以下のように表にした。
以上で観察されたように、ベクターpEKEX−2を形質導入した細胞と比較したときに、aspCおよびproA遺伝子を発現しているC.グルタミカム13058細胞において、モナチン産生が明らかに増加した。しかしながら、モナチンが、aspCおよびproA遺伝子を含むベクターで形質導入しなかった細胞で、あきらかに形成されており、このことは、野生型コリネバクテリウム・グルタミカム株が、モナチンを産生可能であることを示唆している。モナチン流出におけるさらなる増加が、ツィーン−40、ツィーン−60およびアンピシリンを培養液に加えた際にも観察された。さらに、ベクターのみで形質導入したC.グルタミカム13058上清試料の、実施例6のFDAA誘導体化方法を用いたキラル解析が、S,Sモナチンと、微量のR,Rモナチン両方の存在を示唆した(一過性にみられた)。別の実験で、LC/MS/MS MRM解析によって、多重のモナチンピークの存在が見られ、このことはS,RまたはR,SおよびRRまたはSSモナチンいずれかの存在を示唆している。
C.グルタミカム13032::aspCproA/PEKEX−2をまた、C.グルタミカム13058::aspCproA/PEKEX−2で使用したのと同様のプロトコールを用いて、シェイクフラスコ実験で増殖させた。誘導後21時間の時点で、C.グルタミカム13032::aspCproA/PEKEX−2が、表16で示した基質に加えて、ツィーンおよびアンピシリンで培養液を処理したときに、1059ppbのモナチンを産生した。C.グルタミカム13032::aspCproA/PEKEX−2は、IPTGでの誘導の21時間後に相当する時間点で、ツィーンおよびアンピシリンが存在しない状態で、428ppbのモナチンを産生した。C.グルタミカム13032::PEKEX−2での対照実験が、IPTGでの誘導の21時間後に、ツィーンおよびアンピシリンが存在する場合、またはしない場合で、45〜58ppbのモナチンを産生した。C.グルタミカム13032は、モナチン産生のためのさらなる産生宿主を表している。
一緒に考えると、以上の結果は、明らかに、コリネバクテリウム・グルタミカムおよび他のコリネバクテリウム属のメンバーの、モナチンを産生する、そして異種宿主にて発現可能な、モナチンオペロン中の遺伝子の供給源として役に立つ可能性を表していた。
実施例14
大腸菌における制御を軽減する変異を利用する、インビボでのトリプトファンの産生の増加
トリプトファン生合成経路は、大腸菌にて非常に制御されている。制御点の軽減によって、トリプトファン生合成に対する流れが増加可能である。制御は、酵素のフィードバック阻害、ならびに本経路における酵素の合成の抑制によってのいずれかで起こり得る。トリプトファンはモナチン産生の中間体であるので、トリプトファンのレベルを改善することによって、産生されるモナチンのレベルが改善可能である。以下で記述した制御遺伝子は、トリプトファン経路における制御点のほんのいくつかであり、当業者は、他のトリプトファン過剰産生戦略もまた、大腸菌におけるモナチンの収量を増加できることを理解する。
当業者は、トリプトファンを過剰発現可能な、耐性変異体に関して選別するために、類似体を利用可能である。トリプトファン経路における制御点の軽減によって、大腸菌のような細菌によって産生されたモナチンのレベルの増加となり得る。フィードバック阻害の制御点を変更するための1つのアプローチは、類似体化合物に対して耐性である、変異体を選別することである。そのような化合物の例には、限定はしないけれども、5−フルオロトリプトファン、3−フルオロフェニルアラニン、ベータ−2−チエニルアラニン、6−フルオロトリプトファン、トリプトファンヒドロキサメート、p−フルオロフェニルアラニン、p−アミノフェニルアラニン、チロシンヒドロキサメートおよびフェニルアラニンヒドロキサートが含まれる(Azuma他,Appl.Microbiol.Biotechnol.,1993,39:471−476およびDuda and Sasvari−Szekely,Acta Biochim.Biophys.Acad.Sci.Hung.,1973,8:81−90)。
7692のような大腸菌株と、(実施例10で記述した)大腸菌7692△lipA DE3は、新鮮なLBプレート上で増殖可能である。個々のコロニーを利用して、M9培地+グルコースおよび他の必要なビタミン類または共因子類で、シェイクフラスコに接種可能である。250rpmで振とうしながら、37℃でのインキュベーションの24時間後、少量の大腸菌培養液をのぞき、種々の濃度の類似体(例えば1mg/mL p−フルオロフェニルアラニン)を含むM9最小培地上にプレートすることができる。耐性コロニーをピックアップし、5mLのLBの培養液中で、振とうしながら、37℃にて増殖させ、トリプトファン産生の増加に関して選別することができる。プレート上での類似体に対する耐性の増加が、類似体濃度を徐々に増加させることによって影響をうける。これはまた、連続培養液中でも実施し得る。
例えば、これらの類似体は、芳香族アミノ酸合成の開始点での鍵となる分岐点、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプチュロソネート7−リン酸シンターゼに影響を与える。大腸菌において、これは、3つのアイソザイムaroF、aroGおよびaroHによってコードされており、それぞれが、本経路のアミノ酸、それぞれ、チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファンによってフィードバック阻害される。以上で記述した類似体に対する変異体耐性が、本フィードバック阻害の軽減を示し得る。
他の鍵となる分岐点は、アントラニル酸シンターゼであり、この遺伝子におけるフィードバック耐性変異体がまた、トリプトファン産生を改善可能である。また、1つの制御変異(例えばフィードバック耐性アントラニル酸シンターゼ)の効果を、本経路中の中間体のバックアップによってマスク可能である。したがって、当業者は、モナチン産生を改善するために、トリプトファン経路変異を組みあわせ得る。モナチン産生を改善するために利用可能である、トリプトファン経路および芳香族生合成経路における変異の例には、トリプトファンによるフィードバック阻害に耐性をつくり得る、トリプトファン生合成に特異的な任意の酵素、およびtrpRまたはその結合部位を変化させる抑制の救済、ならびに、オペロン発現の減衰制御の軽減が含まれるが、それらに限定されない(Kim他,J.Micobiol.Bipochnol.,2000,10:789−796、Jossek他,FEMS Micobiol.Lett.,2001,202:145−148;Bongaerts他,Metabol.Eng.,2001,3:289−300,Azuma他,Appl.Microbiol.Biotechnol.,1993,39:471−476;Flores他,Nature Biotechnol.,1996,14:620−623;Tribe and Pittard,Apple.Environ.Microbiol.,1979,38:181−190;Yanofsky他,J.Bacteriol.,1984,158:1018−1024;Gosset他.J.Indus.Microbiol.,1996,17:47−52)。
トリプトファンおよびモナチン産生を増強するための、株の遺伝的改変に加えて、培地成分、ならびにpH、温度および混合のような工程条件の変更のような、増殖条件が、宿主微生物によるトリプトファンおよびモナチンの生合成を改善可能である。したがって、増殖因子を含むもののような、好適な培地を、大腸菌からのトリプトファン産生を増加させるために利用可能である。例えば、ピリミジン類のような増殖因子、トレース要素、およびビオチンの濃度が、中間体の産生および放出に影響を与え得る(Jensen,(1993)J.Bacteriol.,175:3401−3407)。
実施例15
過剰発現戦略を用いる、大腸菌におけるトリプトファンの産生の増加
大腸菌においてトリプトファンのレベルを増加させるための他の戦略は、細胞内での、トリプトファン生合成遺伝子のコピー数を増加させることである。このことは、ベクター内へ遺伝子をクローニングし、細胞内にこのベクターを形質導入することによって実施可能である。当業者は、遺伝子のコピー数の増加をまた、クロモソームDNA内へ遺伝子をクローニングすること、または天然のプロモーター領域を変更することによっても達成可能であることを認識するであろう。
米国特許第4,371,614号明細書で引用された3つの株を、U.S.D.A.Peoria培養コレクションから得た。第一の宿主株、NRRL B−4574はまた、KB3100と呼ばれ、△aroPである。第二の株NRRL B−12262はまた、AGX15と呼ばれ、遺伝子型serB-、trp△ED、tnaA2-、tetS、tyrA-、pheA-を持つ。これは、pGX44と呼ばれるプラスミドを含む。pGX44は、pBR322(Roeder and Someville,Molec.Gen.Genet.,1979,176:361−368)から由来し、serB遺伝子とトリプトファンオペロンを含む。第三の株、NRRL B−12264はまた、AGX6と呼ばれ、遺伝子型serB-、trp△ED、tnaA2-、aroP-を持つ。これは、pGX50と呼ばれるプラスミドを含む。pGX50は、pBR322から由来し、serB遺伝子と、5−メチルトリプトファンに対して耐性である細胞から由来した、トリプトファンオペロンを含む。
株NRRL B−12262およびB−12264は、serB遺伝子が欠損し、結果として宿主株増殖のためにセリンが必要となる。プラスミドpGX44(B12262中)およびpGX50(B−12264中)はそれぞれ、serB遺伝子を含み、したがって、セリン栄養要求性が、プラスミドを維持していることに関する選別圧力である。セリンを欠く培地を利用して、これらの有機体によって産生された高濃度のトリプトファンの存在下においても、プラスミドを維持可能である。セリンなしの培地中で培養した場合、プラスミドを含む株、12262および12264が、生存し、増殖するために、多数のプラスミドのコピーを維持しなければならず、したがって多数のトリプトファンオペロンのコピーを含む。NRRL B−4574株は、これらのプラスミドのいずれをも持たず、したがって、(ゲノム上に)トリプトファンオペロンの1つのコピーのみを持つ。NRRL B−12264に関して使用した、すべての増殖培地および発酵培地は、pGX50ベクターが、アンピシリン耐性遺伝子を含むので、50μg/mLアンピシリンを含んだ。
株を、LBブロスおよびTrp Production培地中で増殖させた。trp産生培地には、リットルあたり、30gのグルコース、10gの(NH4)2SO4、1.0gのKH2PO4、1.0gのMgSO4−7H2O、0.01gのFeSO4−7H2O、0.01gのMnCl2−4H2O、4gのカサミノ酸および40gのCaCO3が含まれた。シェイクフラスコに対する接種を、LBブロス中で増殖させた。3ミリリットルの接種培養液を利用して、250mLバッフルドシェイクフラスコ中の50mLの培地を接種した。シェイクフラスコを、穏やかに振とうしながら(200rpm)、30℃にてインキュベートした。トリプトファンを実施例6で記述したように測定した。シェイクフラスコを、グルコースおよびOD550に関して定期的にサンプリングした。結果を、表18で示している。
トリプトファンオペロンの多数のコピーが、大腸菌によるトリプトファンの産生を増加させることが明らかである。同様の遺伝的改変のいくつかを含むが、余分なトリプトファンのコピーは含まない株は、同様な実験条件下で、より少ないトリプトファンを産生した。例えば、大腸菌SR250(Rothman and Kirsch,2033)は、tyrA−およびpheA−株であるが、同様の条件下で試験した場合、およそ0.1μg/mLしか産生しなかった。これらのデータにより、多数のトリプトファン生合成遺伝子のコピー、とりわけpheAが崩壊したものを、モナチン産生を増加させるために利用可能であることが示唆されている。
実施例16
発酵におけるトリプトファンの産生
発酵を、経済的に効果的なモナチン産生を達成するために利用可能である。発酵器具の利用に際し、pH、酸素および混合のようなパラメータを、発酵反応が最適化され得るように、簡単に制御する。
3つの大腸菌株、NRRL B−4575、NRRL B−12262およびNRRL B−12264を、Peoria,IllinoisのU.S.D.A.研究所から得た。後者2つの株は両方とも、トリプトファンオペロンをプラスミド上に含む。これらの株は、実施例15にてより詳細に記述している。300mlの培地でのInfors発酵槽を、発酵研究のために利用した。トリプトファン産生培地は、実施例15で記述した。
微生物接種を、新鮮にストリーキングしたLBプレートよりとった。1つの狭間を、250mLシェイクフラスコ中、50mLのTrp産生培地内に接種させ、培養液を37℃にて一晩増殖させた。シードフラスコからの15mLを、各二重に、250mLのTrp産生培地を含むInfor300mL発酵瓶内に接種させた。撹拌を500rpmにて開始し、1000rpmまで増加させた。空気を、1vvmにて噴霧し、4時間で、5vvmまで増加させた。pHを、1N水酸化ナトリウムで、7.0に維持した。
試料を定期的にとり、グルコースおよびOD550に関して解析した。3日後、発酵ブロスを15,000rpmにて2分間スピンダウンさせ、濾過し、トリプトファン解析まで冷凍した。
実施例15で示したように、NRRL B−12262は、Trp産生培地を用いたシェイクフラスコで、NRRL B−12264よりも、約4倍のトリプトファンを産生する。表19で見られるように、NRRL B−12262は、シェイクフラスコ中よりも、発酵槽中で、かなり少ないトリプトファンを産生し、これは、細菌における、最適化されていないスケール−アップによる。株NRRL B−12264の同様のストレスが、発酵槽における検出可能なトリプトファンの産生の欠如を説明し得る。当業者が、NRRL B−12262およびNRRL B−12264株両方による、発酵槽におけるトリプトファン産生を改善可能であり得ることが予想される。
実施例17
コリネバクテリアの変異株によるトリプトファンの産生増加
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC21847をAmerican Type Culture Collectionから入手した。該菌株は種々の類似体に耐性であり、フェニルアラニンおよびチロシン要求性を生じる遺伝子突然変異を有する。C.グルタミカム(C.glutamicum)2180および21851は、異なる菌株であるが、6フルオロ‐トリプトファン、4アミノフェニルアラニン、トリプトファンヒドロキサマート、および4メチルトリプトファンなどの類似体を用いて同様に作製される。
普通寒天平板から採取したATCC21847の新鮮なコロニーを、グルコース2%、ペプトン1%、酵母抽出物1%、およびNaCl0.3%を含む5mLの種管に接種した。30℃にて一晩振とう培養した後、管から2mLを振とうフラスコ中の50mLの培地に接種した。2種の培地を用いた。第1の培地(培地1)は、グルコース10%、KH2PO40.05%、K2HPO40.05%、MgSO4−7H2O0.025%、(NH4)2SO42%、NZ‐アミン0.5%、ビオチン30μg/mL、およびCaCO32%を含む。pHは7.2に調整した。第2の培地(培地2)は、1L当たり、廃糖蜜100g(グルコースベース)、KH2PO40.5g、K2HPO40.5g、MgSO40.25g、NH4SO40.25g、コーンスティープリカー(Corn Steep Liquor)10g、CaCO320g、チロシン4mg/mLの原液38mL、およびフェニルアラニン25mg/mLの原液12mLを含む(米国特許第3849251号明細書)。pHは7.2に調整した。
このフラスコをイノバ(Innova)社の振とう機を用いて、30℃、250rpmにて4日間インキュベートし、トリプトファンの量を実施例6に記載したように測定した。
結果を表20に示す。コリネバクテリウム(Corynebacterium)の類似体耐性変異株は他のC.グルタミカム(C.glutamicum)株よりも多くのトリプトファンを産生した(表20)。培地2で産生値が高いのは、コーンスティープリカー(Corn Steep Liquor)や廃糖蜜などの、栄養分のある培地組成物の影響だと思われる。同様に、ATCC21851は培地2では300〜370μg/mLのトリプトファンを産生したが、培地1では1〜2μg/mLしか産生しなかった。ATCC21850は最適培地(培地2)では試験しなかったが、21851と同様の結果になると思われる。これらの結果は、コリネバクテリウム(Corynebacterium)宿主株が経済的なモナチン生産株となり得ることを実証している。さらに、本明細書に記載の大腸菌によるトリプトファン産生を増加させるための方策(例えば、実施例14〜17を参照されたい)と同様のものをコリネバクテリウム(Corynebacterium)に使用して、モナチンの生産宿主菌株としての性質を改善することができる(Shiio他,Agr.Biol.Chem.,1975,39:627−635;Hagino and Nakayama,Agr.Biol.Chem.,1975,39:343−349;Shiio他,Agr.Biol.Chem.,1984,48:2073−2080;Heery,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1994,201:1255−1262;Heery and Dunican,Appl.Environ.Microbiol.,1993,59:791−799;およびKatsumata and Ikeda,Bio/Technol.,1993,11:921−925)。
実施例18
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)によるグルタミン酸の産生
パートA:培養物中でのグルタミン酸の収率を向上させるための物理的方法
経済的なアミノ酸産生に対する重要な制約のひとつは、細胞からのアミノ酸の排出である。細菌細胞は一般にアミノ酸を細胞中へ輸送する機構を有するが、多くの場合、多量のアミノ酸を運び出す機構は知られていない。グルタミン酸流出に影響を与えるために、洗浄液の使用や培地の変更などの物理的な方法を用いることができる。グルタミン酸およびモナチンはどちらもジカルボン酸であるので、当業者は下記のグルタミン酸に対する技術を、モナチンの培地への放出を改善するために利用できる。
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC13058、13655、および13689をAmerican Type Culture Collectionから入手した。これらの菌株はグルタミン酸の産生株として挙げられている(米国特許第3,002,889号明細書、および同第3,128,237号明細書)。
これらの菌株を、振とうフラスコ内で、1L当たり以下を含む培地で培養した。KH2PO41.0g、大豆ペプトン2.0g、MgSO4・7H2O0.4g、FeSO40.01g、MnSO40.01g、グルコース100g、尿素5g、ビオチン4μg、チアミン200μg。培地のpHは6.0に調整し、尿素、グルコース、ビオチン、およびチアミンはすべて別々に滅菌した。この培養物を30℃にて72時間、振とうしながらインキュベートした。18時間目に、1.8%の尿素をフラスコに加えた。
表21に示したように、3種の菌株全てがグルタミン酸を産生し、その一部を培地内に分泌した。細胞を遠心分離によりフラスコから回収し、分離して、Lysonase(商標)でBugbuster(登録商標)(Novagen)を用いた洗浄酵素法または浸透圧衝撃のどちらかの処理をした。浸透圧衝撃は、細胞を低温度の脱イオン水で1:20に希釈することにより行った。これらの処理により、グラム陽性菌(コリネバクテリウム・グルタミカムなど)の細胞外被を完全にではなく部分的に破壊し、それによって細胞内の代謝産物の放出を促進することが望まれる。グルタミン酸は、実施例6に記載のハイスループット法により分析した。
データから、分泌されたのと同量のグルタミン酸が細胞内に留まっており、その放出を種々の物理的処理により実行できることが示された。これらの処理法に加えて、他の物理的処理法も同様に細胞からグルタミン酸を放出させることが期待でき、またこれらの技術はモナチンの遊離促進にも使用できることが期待される。
パートB:グルタミン酸の産生向上に対する付加的な因子
グルタミン酸の排出は、抗生物質、界面活性剤、温度、浸透ストレス、pHおよびビオチン濃度などの種々の因子により影響され得る。本実施例ではグルタミン酸の産生および/または分泌に関連する因子を明らかにする。
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13058およびATCC13655をAmerican Type Culture Collectionから入手した。これらの菌株は既知のグルタミン酸産生株である。
一連の統計、要因計画を行い、C.グルタミカムATCC株13058およびATCC13655によるグルタミン酸の産生に関する種々の因子を調査した。それぞれの菌株のコロニーを5mLの改良MCGC培地に接種し、30℃にて一晩培養した。振とうフラスコに入れた改良MCGC培地に0.5〜1.0mLの種培養物を接種した。改良MCGC培地は1L当たり以下を含む。Na2HPO43g、KH2PO46g、NaCl2g,(NH4)2SO48g、ソイトン0.5g、グルコース60g、FeCl33.9mg、ZnSO4−7H2O0.9mg、CuSO4−5H2O0.56mg、MnSO4−7H2O3.9mg、(NH4)6Mo7O4‐4H2O0.1mg、Na2B4O7−10H2O0.3mg、CaCl2−2H2O84mg、ベタイン2g。処理物は、1L当たり、100mmolのMOPSまたはMES、MgSO4−7H2O50mgまたは400mg、チアミン4mgまたは20mg、およびビオチン4ugまたは20ugを含んだ。16時間目に、ツィーン40または60を1L当たり3mg、アンピシリンを0ugまたは10ug/mL加え、高温処理を必要とするフラスコの温度を40℃まで上昇させた。フラスコを30℃、250rpmにて、他に注記がなければ2〜3日間インキュベートした。
試料を定期的に採取し、グルコース濃度(g/L)、細胞密度(OD600)、およびpHを分析した。2〜3日後、試料を遠心分離して上清を濾過し、実施例6に記載のような、蛍光検出法によるHPLCを用いたグルタミン酸の分析を行うまで凍結させた。
グルタミン酸の産生/排出に関して検討した因子としては、アンピシリン、ツィーン、温度、初期pH、ビオチン、マグネシウム、およびチアミンが挙げられる。C.グルタミカム(C.glutamicum)ATCC13058に関しては、グルタミン酸の産生において統計的に有意な因子としては、ビオチン、初期pH、およびビオチンとpHとの相互作用が挙げられる。結果の分析には、2種以上の異なる方法間の相違に関する仮説を検定するための統計的手法である、分散分析(ANOVA)用いた。予測モデルは、0.96に調整したR2でαレベル<0.0001において有意であった。初期pH7.6または6.5よりもpH8.0の方がグルタミン酸の産生により適していた。ビオチン濃度は最低濃度の4ug/Lでグルタミン酸がより多く産生された。この結果は、2〜5ug/L(マイクログラム/L)に制限されたビオチン濃度が細胞膜の流動性に影響してグルタミン酸の流出を増加させるという別の研究(Eggeling L and Sahm H(1999)「アミノ酸産生:代謝工学の原理(Amino−acid production:principles of metabolic engineering)」 in Metabolic Engineering(Ed:Lee SY,Papoutsakis ET); Marcel Dekker,Inc,NY,NY.)とも一致する。したがって、ある実施形態では、微生物を培養する培地は5ug/L以下のビオチンを含む。
ビオチン濃度が低濃度と高濃度(4ug/Lおよび20ug/L)のどちらの場合でも、pH7.6よりもpH8.0の方が、グルタミン酸の産生が多かった。ツィーン40とツィーン60はどちらも同等に有効に働いたが、マグネシウム濃度とツィーンの種類との間に、グルタミン酸の産生に影響を与える相互作用の可能性が見られた。ツィーン存在下では、アンピシリンの添加によりグルタミン酸の産生が減少した。上清グルタミン酸濃度は、ATCC13058およびATCC13655に関してそれぞれ0〜13.3mMおよび0〜11.3mMであった。
これらの結果は、グルタミン酸の産生/排出は上記の有意な因子を用いて操作可能であることを示している。モナチンの産生/排出に対しても、モナチンがグルタミン酸と同様にジカルボン酸構造を有することから、同じ因子が有効であると予測される(Delaunay S.他,1999,Enzyme and Microbial Technology,25,762−768)。
パートC:Kramer’s培地の使用および温度上昇によるグルタミン酸の産生向上
本実施例は、異なる菌株、温度、および培地を用いたグルタミン酸の産生向上を実証する。
コリネバクテリウム・グルタミカム株ATCC13032およびATCC13058をAmerican Type Culture Collectionから入手した。
どちらの菌株についても、30℃および37℃にて、Kramer’sA培地を用いて研究を行った。それぞれの菌株のコロニーを5mLのKramer’sA培地に接種し、30℃にて一晩培養した。振とうフラスコに入れたKramer’sA培地に0.5〜1.0mLの種培養物を接種した。Kramer’sA培地は、1L当たり以下を含む。(NH4)2SO45g、尿素5.0g、KH2PO42.0g、K2HPO41.53g、MgSO4−7H2O1モル、グルコース50g、FeSO4−7H2O0.01g、MnSO4−7H2O0.01g、CaCl2−2H2O0.01g、ZnSO4−7H2O0.03mg、(NH4)6Mo7O4−4H2O由来のMo0.1mg、H3BO30.10mg、CoCl2−6H2O0.07mg、NiCl2−2H2O0.01mg、CuCl2−2H2O0.03mgおよびビオチン1ug。pHは5MのNaOHで7.0に調整した。ツィーンおよびアンピシリンはこの実験では添加しなかった。フラスコを250rpm、30℃または37℃にて24時間インキュベートした。グルタミン酸を実施例6に記載のハイスループット法により分析した。
ATCC13032およびATCC13058を用いた、30℃および37℃における実験結果は表22に記載する。
コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13058は、37℃でより多くのグルタミン酸を産生したが(54mM)、一方C.グルタミカム13032についてはどちらの温度でもグルタミン産生量は同様であった(〜40mM)。これらの結果は、温度および培地組成を変えることにより、グルタミン酸の産生/排出が操作可能であることを再度示すものである。モナチンの産生/排出に対しても、モナチンがグルタミン酸と同様にジカルボン酸構造を有することから、同じ因子が有効であると予測される(Hoischen C.and Kramer R.,1989,Arch Microbiol,151:342−347)。
実施例19
大腸菌(Escherichia coli)からのトリプトファナーゼ遺伝子(tna)のクローニング
トリプトファナーゼポリペプチド(EC 4.1.99.1)は以下の可逆反応を触媒する。
場合によっては、トリプトファナーゼをコードする遺伝子は、トリプトファンの加水分解による崩壊を防ぐために宿主株から取り除かれる。しかし、過剰なインドール、ピルビン酸、およびアンモニウムを細胞に供給すると、この酵素が過剰発現してトリプトファンの合成を助ける。この手法は、トリプトファンの宿主生合成経路の自由化が行われない場合に特に有効である。大腸菌DH10B由来のトリプトファナーゼ遺伝子を、モナチン生合成経路遺伝子および補足遺伝子を含むpETベクターに適合性である、pPROLAR由来のベクター中にクローン化した。
クローニングのためのゲノムDNAの単離
大腸菌のゲノムDNAをDH10B株(Invitrogen)から単離し、Qiagen Genomic−tip(商標)(500/G)kitを用いて調製した。LB中でOD6501.87まで培養した該菌株の30mLから、0.3mgの精製DNAを得た。この精製DNAを濃度0.37μg/μLでQiagen溶出緩衝液(EB)中に溶解させた。
ポリメラーゼ連鎖反応プロトコール
カナマイシン遺伝子中のNcoI認識部位が突然変異したpPROLar.A122(クロンテック ラボラトリーズ社(Clontech Laboratories,Inc.))への分子クローニングのために、プライマーを設計した(本明細書中、pPRONcoとする)。pPRONcoプライマーの配列は下記である。
forward:5’‐TGCCATGGAAAACTTTA‐AACATCT‐3’
reverse:3’‐CCAAGCTTTTAAACTTCTTTAAGTTTTG‐3’(配列番号77および78)
下記のPCRプロトコールでPCRを行なった。50μLの反応物中、鋳型0.1〜0.5μg、プライマーそれぞれ1.5μM、dNTPそれぞれ0.4mM、Expand High Fidelity Polymerase(Roche,Indianapolis,IN)3.5U、およびMgを含むExpand(商標)緩衝液1Xを用いた。用いたサーモサイクラープログラムは下記であった。最初96℃にて熱開始5分間、次いで以下のステップを29回繰り返した。94℃にて30秒間、50℃にて1.75分間、72℃にて2.25分間。この29回の反復の後、試料を72℃にて10分間維持し、次いで4℃にて保存した。このPCRプロトコールにより約1500bpの産物が産生された。
クローニング
PCR産物を、Qiagenゲル抽出キット(Valencia,CA)を用いて0.8%または1%のTAEアガロースゲルからゲル精製した。tna遺伝子を、マルチクローニングサイトの制限酵素認識部位NcoIとHindIIIとの間に挿入することにより、PRONcoに挿入した。pPRONdeへのクローニングはNdeI部位とHindIII部位との間に挿入することで行なった。
ライゲーション混合物を、電気穿孔法を用いてDH10B細胞中に形質転換した。選抜のために、細胞を50mg/Lのカナマイシンを含むLB培地上で培養した。プラスミドDNAを、Qiagen spin miniprep kitを用いて精製し、制限酵素認識部位の切断により正しく挿入されたかをスクリーニングした。正しく挿入されたと思われるプラスミドの配列を、ジデオキシ鎖終止DNAスクリーニングにより確認した。化学的コンピテント大腸菌BL21(DE3)を、製造者(Novagen,Madison,WI)の手順に従い、aspC proA/pET32とtna/pPRONcoで同時形質転換するか、tna/pPRONco単独で形質転換した。
aspC proApET32とtna/pPRONcoで形質転換した大腸菌BL21(DE3)によるモナチンおよびトリプトファンの産生
tna/pPRONcoで形質転換するか、またはaspC proA/pET32とtna/pPRONcoの両方で形質転換したE.coli BL21(DE3)の培養物を、グルコース0.4%およびBalch’sビタミン溶液を含むtrp‐1培地で、37℃にて振とう培養した(それぞれの構成について2連)。tna/pPRONcoの培養物はさらに50μg/mLのカナマイシンを含んだが、両方のプラスミドで形質転換したBL21(DE3)を含む培養物は、さらに50μg/mLのカナマイシンと100μg/mLのアンピシリンを含んだ(処方は実施例1、7および11を参照されたい)。OD600が0.5〜0.7に達した時に、1.0MのIPTGおよび0.5%のL‐アラビノースで誘導し、30℃にてインキュベーションを続けた。さらに、誘導の際0.5mMのピリドキシンを加えた。誘導の5時間後、0.04mMのピリドキサールリン酸、0.5%のピルビン酸ナトリウム、および0.6%の塩化アンモニウムをそれぞれの培養フラスコに添加し、それぞれのpHを7.5〜7.6に調整し、次にそれぞれのフラスコに5mMのインドール(2%のトリトンX−100の水溶液中50mMのインドール原液より)を加えた。インキュベーションを30℃にて続けた。トリプトファンおよびモナチン(0.5mL)およびタンパク質誘導(1mL)の分析用の試料を、IPTGによる誘導の0、5、7.5、20、30、48および74時間後に回収した。乾燥細胞重量(DCW)分析用の試料を誘導後7.5、20、30、および48時間後に回収した。発酵培養液中のモナチンおよびトリプトファンの濃度を、実施例6に記載のようにLC‐MS/MS MRMにより測定した。
結果下記の表23および24に示す。発酵培養液中のトリプトファン濃度は、tna遺伝子を単独で発現している培養物において誘導後20時間で約1.1g/Lに達し、74時間までに約1.3g/Lまで増加した。モナチンはtna遺伝子のみを発現している培養物から回収したどの試料からも検出できなかった。tna遺伝子とaspCproA遺伝子の両方を発現している培養物中のトリプトファン濃度は、tna遺伝子のみを発現している培養物の約10%であった。しかし、これらの培養物ではモナチンが産生された。モナチンの最高濃度は誘導の48時間後に測定された(263ng/mL)。
実施例20
ホスホエノールピルビン酸シンターゼ(EC2.7.9.2)および関連する遺伝子の過剰発現による芳香族代謝経路への流量増加
グルコースまたはピルビン酸由来の炭素の、芳香族代謝経路への流量を増加させるように中央代謝を設計することにより、発酵の間に産生されるトリプトファンの量を増加させることができ、その結果モナチンの量も増加させることができる。種々の取り組みが行なわれているが、そのひとつは、PEPシンターゼ(Pps)の発現を増やすことにより、PTSまたはピルビン酸キナーゼのどちらかによって形成されるピルビン酸を再利用して、またPEPにするというものである(Patnaik and Liao,(1994),Appl.Env.Microbiol.,60:3903−3908; Patnaik他,(1995),Biotechnol.Bioeng.,46,361−370; Yi他,(2002),Biotechnol.Prog.,18,1141−1148;米国特許第6,489,100号明細書;同第5,985,617号明細書;および同第5,906,925号明細書)。PEPシンターゼは、水の存在下でATPおよびピルビン酸をAMP、ホスホエノールピルビン酸、およびリン酸に転換する。PEP濃度が上昇することにより、シキミ酸、コリスミ酸、ならびに芳香族アミノ酸産生の重要な前駆物質である、DAHP産生が増加する。ppsA遺伝子は高度に遍在しており、単離および大腸菌などの産生宿主内での過剰発現が容易に可能である。組換えPpsAは宿主生物の染色体中に、またはプラスミド上に誘導することができる。ppsA遺伝子を含むプラスミドは、実施例7に記載のモナチンオペロンと共発現し得るか、またはモナチンオペロンに追加され得る。トランスケトラーゼ(tkt)遺伝子を共発現させて、芳香族アミノ酸の前駆体分子をさらに増加させることができる。そのような遺伝的構造により、モナチン産生の改良が期待できる。
実施例21
発酵槽中での生合成遺伝子産生
実施例3に、アミノトランスフェラーゼとアルドラーゼの2つの酵素を利用して、トリプトファンおよびピルビン酸からモナチンを産生させる方法を記載している。コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)由来のアルドラーゼ(ProAアルドラーゼ、proA遺伝子)および大腸菌aspC遺伝子によりコードされているL‐アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをクローン化し、発現させ、前述の実施例のように精製した。発酵方法を開発して酵素の産生を増加させ、それらをモナチンの産生のためのインビトロ工程で使用できるようにした。
L‐アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの産生のためのバッチ発酵
大腸菌aspC/pET30/BL21(DE3)株(L‐アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ産生株)を3Lの発酵槽内のバッチ中で培養した。使用した培地は1L当たり、(NH4)2SO42g、KH2PO41.6g、Na2HPO4*7H2O9.9g、クエン酸ナトリウム0.65g、MgSO40.24g、NZ Amine A20g、グルコース20g、およびカナマイシン25mgを含んだ。pHはNaOHで7.0に調整し、温度は、インキュベーション前は37℃に維持し、インキュベーション時に34℃に下げた。培養物は、攪拌速度を上昇させることにより、発酵の間中好気性を維持した。酵素の発現を0.1〜0.4mMのIPTGにより誘導した。細胞をOD6003(接種後3〜4時間)またはOD60010(接種後5〜6時間の)で誘導した。最良の結果は、OD6003時に0.1mMのIPTGで細胞を誘導した時に得られた。これらの条件下で、細胞のバイオマス濃度は7.2g/L、アミノトランスフェラーゼである可溶性タンパク質の総量の20〜40%に達した。酵素の総量(培養物1L当たりアミノトランスフェラーゼペプチド0.8g)は、実施例3に記載のように行なった、振とうフラスコで実験した培養物から得られたものより6倍多かった。
ProAアルドラーゼの産生のためのフェッドバッチ発酵
大腸菌proA/pET30/BL21(DE3)(アルドラーゼ産生株)を3Lの発酵槽内で、フェッドバッチモードで培養した。1L当たり以下を含む所定の培地を用いた。(NH4)2SO42g、KH2PO48g、NaCl2g、クエン酸ナトリウム1g、FeSO4*7H2O0.01g、MgSO4*7H2O2g、CaSO4*2H2O0.05g、EDTA7.5mg、MnSO4*H2O2.5mg、CoCl2*6H2O0.5mg、ZnSO4*7H2O0.5mg,CuSO4*5H2O0.05mg、H3BO30.05mg、p‐アミノ安息香酸50mg、葉酸20mg、ビオチン20mg、ニコチン酸20mg、パントテン酸カルシウム50mg、リボフラビン50mg、塩酸チアミン50mg、および塩酸ピリドキシン100mg。初めのグルコース濃度は2g/Lで、グルコースを指数関数的に供給して増殖速度を0.15〜0.25時間-1に保った。NH4OHでのpH調整の際要求に応じて窒素を供給した。培養物を、OD600が25(接種後17時間)または35(接種度21時間)に達した時に、1mMのIPTGで誘導した。よりよいタンパク質発現は、細胞密度の低い方で細胞を誘導した場合に得られた。酵素発現は、全可溶性タンパク質の20〜30%と非常に高く、特異的な酵素活性はフラスコで培養した細胞に比べ減少したにもかかわらず、培地1L当たりの総酵素活性は、実施例3に記載のように行なった振とうフラスコでの実験での測定値の9倍であった。培養物1L当たり総量1.8gのアルドラーゼポリペプチドが測定された。増殖率に応じて異なる細胞濃度が得られ、最大値は乾燥細胞重量の26.3g/Lであった。
どちらの発酵方法も、任意のこれらの酵素の産生に適用できる。グルコースを指数関数的に供給して増殖率0.15〜0.25時間-1に保つようなフェッドバッチ手順が、高い酵素濃度で高い細胞密度を得るのにより良い方法であり、いずれの場合にも特異的な酵素活性を増加させるようさらに最適化できる。フェッドバッチ発酵において、一定の供給速度または断続的な供給などの代替の供給手順も利用できる。
他の実施形態
本発明はその詳細な説明に関連して記載しているが、前述の説明は例示目的であって、添付の請求項の範囲で規定される本発明の範囲を限定するものではない。他の態様、利点、および変更は下記の請求項の範囲の範囲内である。