JP4239600B2 - 2r−モナティンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の酵素反応、好ましくはL−アミノトランスフェラーゼおよびL−アミノ酸オキシダーゼによる反応を利用して、モナティンの異性体混合物から高甘味度異性体である2R−モナティンを製造する方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
下記式で示される4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−グルタミン酸(3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−ブタン−4−イル)−インドール)(以下、「モナティン」と称する。)は、植物シュレロチトン イリシホリアス(Sclerochitom ilicifolius)の根に含有されるアミノ酸の一種であり、ショ糖の数百倍の甘味を有していることから、低カロリー甘味料として期待される化合物である(特開昭64−25757号公報参照)。
【0003】
【化1】
Figure 0004239600
【0004】
上記モナティンは2つの不斉部位(2位、4位)が存在し、天然型の立体異性体は、(2S,4S)体と報告されていた。その他の立体異性体の存在についても、合成的に調製され3種の立体異性体の存在が確認され、何れもショ糖の数十倍から数千倍の甘味強度を有することが確かめられている。
【0005】
【表1】
Figure 0004239600
【0006】
表1に示すように、天然型の(2S,4S)体のみならず、その他の立体異性体の何れもがそれぞれ高倍率の甘味強度を有しているが、2R体は2S体と比較して甘味度が非常に高い。なかでも、最も甘味度が高い異性体である(2R,4R)体は、甘味剤或いは甘味剤成分(甘味料)として期待される化合物である。従って、2R体、望ましくは(2R,4R)体のモナティンを得る方法の開発が望まれる。
【0007】
モナティンの製造方法については、過去に5例の報告が為されている。詳細は下記の先行技術文献のうち、特許文献1及び非特許文献1〜4に記載の通りである。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第5994559号明細書
【特許文献2】
欧州特許出願公開第0736604号明細書
【非特許文献1】
テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)、2001年、42巻、39号、6793〜6796頁
【非特許文献2】
オーガニック レターズ(Organic Letters)、2000年、2巻、19号、2967〜2970頁
【非特許文献3】
シンセティック コミュニケーション(Synthetic Communication)、1994年、24巻、22号、3197〜3211頁
【非特許文献4】
シンセティック コミュニケーション(Synthetic Communication)、1993年、23巻、18号、2511〜2526頁
【0009】
しかしながら、何れの方法も多段階の工程を必要とすることから、工業的な実施が難しい上、これら化学合成法により合成されるモナティンは複数の光学異性体を含む異性体混合物である。
【0010】
前述の通り、4種の光学異性体においてそれぞれ甘味度が異なることを既に出願人らは見出しているが、工業化に向けては高甘味度異性体である2R体、望ましくは(2R,4R)体を選択的に生成せしめる製法の開発が、単位重量当たりの甘味度および製造コスト面からみても望ましい。
【0011】
従って、そのようなモナティンを工業的に製造する上で、より簡便かつ高収率な高甘味度異性体である2R−モナティンの製造方法、さらに望ましくは(2R、4R)体の製造方法の開発が求められる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、甘味料等の成分として期待されるモナティンのなかでも甘味度の高い異性体である2R−モナティンの製造方法を提供することにある。さらに、本発明は、モナティンの異性体混合物の甘味度を改善する方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、化学合成法などの方法で合成したモナティンの光学異性体の複数の混合物に、特定の酵素反応、好ましくはL−トランスアミナーゼおよび/またはL−アミノ酸オキシダーゼによる反応を利用して、比較的甘味度が低い2S体のモナティンを選択的に脱アミノ化することにより、2R−モナティンを製造する方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
本発明においては、酵素反応を利用して、モナティンの異性体混合物中における2S体を、下記構造式を有する4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(以下、IHOGと略)に変換させるため、2R体は反応系に未反応のまま残る。モナティンとIHOGとは晶析等の方法により容易に分割可能である。従って、反応系に残存するモナティンを回収することにより、高甘味度異性体である2R体の含有率が高い2R−モナティンを得ることができる。
【0015】
【化2】
Figure 0004239600
【0016】
なお、本願明細書において、「2R体」とは、2位の不斉についてR配置を有するモナティンを意味する。モナティンは2位の他、4位にも不斉を有するので、2R体には(2R、4R)体、(2R、4S)体の2つがある。また、「2S体」とは、2位の不斉についてS配置を有するモナティンを意味し、(2S、4R)体、(2S、4S)体の2つがある。以下、簡便のため、(2R、4R)体、(2R、4S)体、(2S、4R)体、(2S、4S)体を、それぞれRR体、RS体、SR体、SS体と称する場合がある。また、本発明の製造方法により得られる「2R−モナティン」とは、高甘味度異性体である2R体の含有率が高いモナティンを意味する。
【0017】
また、もうひとつの本発明であるモナティンの甘味度改善方法は、酵素反応を利用してモナティンの異性体混合物中の2S体を選択的にIHOGに変換させ、高甘味度異性体である2R体の含有率を向上させることにより、モナティンの甘味度を改善する方法である。
【0018】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0019】
〔1〕 2S体および2R体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成する反応を触媒する酵素を含有する反応系で反応させることにより、2S体を分解させる工程、および
前記反応系から残存するモナティンを回収して2R−モナティンを得る工程
を含むことを特徴とする、2R−モナティンの製造方法。
【0020】
〔2〕 前記酵素は、L-アミノトランスフェラーゼおよび/またはL−アミノ酸オキシダーゼであることを特徴とする、〔1〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0021】
〔3〕 前記L-アミノトランスフェラーゼはL-アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼであることを特徴とする、〔2〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0022】
〔4〕 前記L-アミノトランスフェラーゼは、Aeromonas属、Agrobacterium属、Alcaligenes属、Beijerinckia属、Escherichia属、Proteus属、Morganella属からなる群より選ばれる微生物に由来することを特徴とする、〔2〕または〔3〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0023】
〔5〕 前記微生物は、Aeromonas hydrophila、Agrobacterium tumefaciens、Alcaligenes faecalis、Beijerinckia indica、Escherichia coli、Proteus rettgeri及びMorganella morganiiからなる群より選ばれることを特徴とする、〔4〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0024】
〔6〕 前記L-アミノトランスフェラーゼは、L-アミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入した微生物の産生するL-アミノトランスフェラーゼであることを特徴とする、〔2〕または〔3〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0025】
〔7〕 前記L-アミノトランスフェラーゼ遺伝子は、Escherichia coliに由来するL-アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする、〔6〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0026】
〔8〕 前記反応系にアミノ基受容体として、α−ケト酸を含有することを特徴とする、〔2〕〜〔7〕のいずれか一つに記載の2R−モナティンの製造方法。
【0027】
〔9〕 さらに前記反応系に、前記α−ケト酸から副生するL−アミノ酸に対して作用するL−アミノ酸オキシダーゼを含有することを特徴とする、〔8〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0028】
〔10〕 前記α−ケト酸は、α−ケトグルタル酸であり、かつ、前記L−アミノ酸オキシダーゼは、L−グルタミン酸オキシダーゼであることを特徴とする、〔9〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0029】
〔11〕 前記L−グルタミン酸オキシダーゼは、Streptomyces属またはAzotobacterに由来することを特徴とする、〔10〕記載のモナティンの2R−モナティンの製造方法。
【0030】
〔12〕 前記L−アミノ酸オキシダーゼは、蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼであることを特徴とする、〔2〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0031】
〔13〕 前記モナティンの異性体混合物は、(2S、4S)体および(2R、4R)体を含み、前記酵素は、Escherichia coli由来L-アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼであることを特徴とする、〔1〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0032】
〔14〕 前記モナティンの異性体混合物は、(2S、4R)体および(2R、4R)体を含み、前記酵素は、蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼであることを特徴とする、〔1〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0033】
〔15〕 さらに前記反応系に、IHOGから2R体のモナティンを生成する反応を触媒するD−アミノトランスフェラーゼを含有することを特徴とする〔1〕〜〔14〕のいずれか一つに記載の2R−モナティンの製造方法。
【0034】
〔16〕 前記D−アミノトランスフェラーゼは、Bacillus属又はPaenibacillus属に属する微生物に由来することを特徴とする、〔15〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0035】
〔17〕 前記微生物は、Bacillus sphaericus、Bacillus pulvifaciens、Bacillus macerans、Bacillus lentus、Paenibacillus larvae subsp. pulvifaciens及びPaenibacillus maceransからなる群より選ばれることを特徴とする、〔16〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0036】
〔18〕 前記D−アミノトランスフェラーゼは、D−アミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入した微生物の産生する酵素であることを特徴とする、〔15〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0037】
〔19〕 前記D−アミノトランスフェラーゼ遺伝子は、Bacillus sphaericus又はBacillus maceransに由来することを特徴とする、〔18〕記載の2R−モナティンの製造方法。
【0038】
〔20〕 (2S、4R)体および(2R、4R)体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、(2S、4R)体のモナティンに選択的に作用して4R−IHOGを生成する反応を触媒する酵素、および、4R−IHOGから(2R、4R)体のモナティンを生成する反応を触媒するD−アミノトランスフェラーゼを含有する反応系で反応させることにより、(2S、4R)体を(2R、4R)体に変換する工程、
前記反応系からモナティンを回収して(2R、4R)−モナティンを得る工程
を含むことを特徴とする、(2R、4R)−モナティンの製造方法。
【0039】
〔21〕 2S体および2R体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成する反応を触媒する酵素を含有する反応系で反応させ、2S体のモナティンの少なくとも一部を分解させることにより、高甘味度異性体である2R体の含有率を向上させることを特徴とするモナティンの甘味度改善方法。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明は、2R体および2S体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成する反応を触媒する酵素を含有する反応系で反応させ、2S体を分解させることにより、2R−モナティンを製造する方法に関する。
【0041】
本発明の製造方法により得られる「2R−モナティン」とは、高甘味度異性体である2R体の含有率が高いモナティンを意味する。2R体の含有率が高いとは、2R体含有率が60%以上であることを意味する。2R体含有率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。また、本発明の製造方法により得られる「2R−モナティン」のうち、(2R、4R)体の含有率が高いモナティンを「(2R、4R)−モナティン」と称する場合がある。(2R、4R)体の含有率が高いとは、(2R、4R)体の含有率が60%以上であることを意味する。(2R、4R)体含有率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0042】
例えば、RR体、RS体、SR体、SS体の4種異性体混合物を用いて2S体を選択的に脱アミノ化させると、下記に示すように、2S体であるSR体、SS体はそれぞれ4R−IHOG、4S−IHOGに変換され、2R体であるRR体、RS体は未反応のまま反応系に残る。従って、反応系に残存するモナティンを回収することにより高甘味度異性体である2R体(RR体、RS体)を高含有率で含む2R−モナティンを得ることができる。
【0043】
RR体 → 回収
RS体 → 回収
SR体 → 4R−IHOG
SS体 → 4S−IHOG
【0044】
以下、本発明について、下記の順に詳細に説明する。
〔I〕酵素
〔II〕モナティンの異性体混合物
〔III〕反応方法
〔IV〕反応の具体例
【0045】
〔I〕酵素
本発明においては、2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成する反応を触媒する酵素を用いる。当該酵素反応により、モナティンの異性体混合物中の2S体を分解して、高甘味度異性体である2R−モナティンを製造する。
【0046】
「2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成する反応を触媒する酵素」とは、具体的には、2S体:2R体=1:1の異性体混合物を作用させた場合、反応後に残存するモナティンの50%超、好ましくは80%超、より好ましくは90%超が2R体となる酵素を意味する。好ましくは、2S体のみに作用し、2R体には作用しない酵素であることが好ましい。
【0047】
また、当該酵素は、SR体およびSS体の少なくとも一方に作用する酵素であれば足りるが、好ましくはSR体およびSS体の双方に対して作用する酵素であることが好ましい。
【0048】
当該酵素としては、2S体のモナティンを基質として対応するケト酸であるIHOGを生成する反応を触媒する酵素であれば特に制限は無く、L−アミノトランスフェラーゼ、L−アミノ酸オキシダーゼ、L−アミノ酸デヒドロゲナーゼ等を使用できる。これらのなかでも、L−アミノトランスフェラーゼないしL−アミノ酸オキシダーゼを使用することが好ましい。また、これらの酵素を複数種類組み合わせて作用させることもできる。
【0049】
以下、簡便のため、L−アミノトランスフェラーゼを「LAT」、L−アミノ酸オキシダーゼを「LAO」と略記する場合がある。
【0050】
(A)L−アミノトランスフェラーゼ
本発明において2S体のモナティンを脱アミノ化する酵素としてL−アミノトランスフェラーゼ(LAT)を用いる場合について説明する。
【0051】
L−アミノトランスフェラーゼとはL−アミノ酸のアミノ基転移反応を触媒する酵素である。「アミノ基転移反応」とは、アミノ供与体基質であるL−アミノ酸をケトン化合物に転化し、アミノ基受容体であるケトン化合物前駆体をその対応するアミノ化合物に転化する反応である。
【0052】
本発明では、2S体のモナティンがアミノ供与体基質(L−アミノ酸)に相当し、2S体のモナティンのアミノ基をアミノ基受容体へと転移させることによりIHOGを生成する。
【0053】
アミノ基受容体(ケトン化合物前駆体)としては、α-ケト酸の1種又は複数種を用いることが好ましい。α-ケト酸の例としては、α-ケトグルタル酸、オキザロ酢酸、ピルビン酸等を挙げることができる。アミノ基転移反応により、これらのα-ケト酸はアミノ化されると、それぞれ、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−アラニンを副生する。
【0054】
酵素としてLATを用いる場合、下記反応式に示す反応により、2S体のモナティンが脱アミノ化され、IHOGを生成する。また、α-ケト酸として用いたα-ケトグルタル酸(α-KG)は、アミノ化されL−グルタミン酸を生成する。
【0055】
【化3】
Figure 0004239600
【0056】
LATとしては2S体のモナティンを基質としたL−アミノトランスフェラーゼ活性作用を有する酵素であれば特に制限は無いが、特に好ましくはL−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspAT)を用いることができる。
【0057】
このような酵素は、当該LATを生産する微生物を培養することによっても調製することができる。このような微生物としては、例えばアエロモーナス(Aeromonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アルカリゲネシス(Alcaligenes)属、バチルス(Bacillus)属、ベイジェリンキア(Beijerinckia)属、エシェリヒア(Escherichia)属、プロテウス(Proteus)属及びモルガネラ(Morganella)属に属する微生物を挙げることができる。
【0058】
これらの微生物として、具体的には、次のものが例として挙げられる。即ち、2S体のモナティンからIHOGへと変換するL−アミノトランスフェラーゼ生産菌としては下記の例を挙げることができる。
【0059】
アエロモーナス ヒドロフィラ Aeromonas hydrophila IFO3820;
アグロバクテリウム ツメファシエンス Agrobacterium tumefaciens IFO3058;
アルカリゲネス フェカリスAlcaligenes faecalis ATCC8750;
ベイジェリンキア インディカBeijerinckia indica ATCC9037;
エシェリヒア コリ Escherichia coli ATCC 12814;
プロテウス レットゲリ Proteus rettgeri IFO13501;
モルガネラ モルガニイ Morganella morganii IFO3848。
【0060】
これらの微生物は、土壌、植物等自然界より新たに分離された菌株であってもよいし、また更に変異導入薬剤処理や組換DNA技術等により人為的に育種された菌株であってもよい。
【0061】
また、LAT活性を有する微生物として、LAT遺伝子を導入した微生物を使用することができる。このような微生物にはEscherichia coliを使用することができる。
【0062】
当該LAT遺伝子、望ましくはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子(aspC遺伝子)には、Escherichia coli由来のものを使用することができる。
【0063】
酵素としてLATを用いる場合、平衡反応であるアミノ基転移反応を不可逆反応であるL−アミノ酸オキシダーゼによる脱アミノ化反応と組み合わせることにより、2S体のモナティンの脱アミノ化効率を高めることもできる。
【0064】
すなわち、LATによるアミノ基転移反応は一般的に平衡反応であるため、平衡状態に達するとそれ以上脱アミノ化反応は進行しないが、下記反応式に示すように、LAT反応により副生するアミノ化合物を脱アミノ化するL−アミノ酸オキシダーゼ(LAO)を併用することより、平衡状態を脱アミノ化反応側にシフトさせることができる。これにより、2S体のモナティンの脱アミノ化反応効率を上げることができる。
【0065】
【化4】
Figure 0004239600
【0066】
なお、後述の2S体のモナティンを選択的に脱アミノ化するために用いるLAOは、LAT反応により副生するアミノ化合物を脱アミノ化するために用いるLAOとは異なることを明記しておく。2S−モナティンを選択的に脱アミノ化するために用いるLAOと、LAT反応により副生するアミノ化合物を脱アミノ化するために用いるLAOとを区別するために、前者を単に「L−アミノ酸オキシダーゼ(LAO)」、後者を「アミノ化合物除去用L−アミノ酸オキシダーゼ(アミノ化合物除去用LAO)」と称することにする。
【0067】
アミノ化合物除去用LAOとしては、L−アミノトランスフェラーゼ反応により副生するアミノ化合物に対して作用する酵素であればよい。
【0068】
このような2種類の酵素カップリング(LAT+アミノ化合物除去用LAO)の一例を挙げると、L-アミノトランスフェラーゼ反応にアミノ基受容体としてα-ケトグルタル酸を用いた場合には、アミノ化合物としてL−グルタミン酸が副生するので、アミノ化合物除去用LAOとしては、L−グルタミン酸オキシダーゼを併用することが好ましい。この場合、用いるL−グルタミン酸オキシダーゼとしては、L−グルタミン酸を脱アミノ化する活性を有する酵素であれば特に制限はないが、一例を挙げると放線菌由来L−グルタミン酸オキシダーゼを用いることができる。
【0069】
これらアミノ化合物除去用LAOは、LATによる2S−モナティンの脱アミノ化反応開始時に添加してもよいし、LAT反応途中から添加してもよい。
【0070】
前述のアミノ化合物除去用LAOは、当該酵素を生産する微生物を培養することによっても調製することができる。このような微生物としては、例えばストレプトマイセス(Streptomyces)属、アゾトバクター(Azotobacter)属に属する微生物を挙げることができる(特公昭61−26357号公報;アンチバイオチキ イ キミオテラピラ (Antibiotiki i Khimioterapiya)、1998年、43巻4号、7〜13頁;ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー (European
Journal of Biochemistry)、1989年、182巻2号、327〜332頁)。
【0071】
これらの微生物は、土壌、植物等自然界より新たに分離された菌株であってもよいし、また更に変異導入薬剤処理や組換DNA技術等により人為的に育種された菌株であってもよい。
【0072】
(B)L−アミノ酸オキシダーゼ
次に、2S体のモナティンを脱アミノ化する酵素としてL−アミノ酸オキシダーゼ(LAO)を用いる場合について説明する。
【0073】
L−アミノ酸オキシダーゼとは、O2を酸化剤として、L−アミノ酸を酸化する反応を触媒する酵素である。本発明では、2S体のモナティンがL−アミノ酸に相当し、2S体のモナティンが酸化されることによりIHOGを生成する。
【0074】
本発明において用いるLAOは、2S体のモナティンを酸化してIHOGを生成する反応を触媒する酵素であれば限定はないが、好ましくは蛇毒由来LAOが用いられる。
【0075】
酵素としてLAOを用いる場合、下記反応式に示す反応により、2S体のモナティンは酸化され、IHOGを生成する。
【0076】
【化5】
Figure 0004239600
【0077】
上記反応の際に副生する過酸化水素によって基質(IHOG、モナティン)が分解される場合があるので、これを抑制するため、カタラーゼを反応系に添加して過酸化水素を分解することが好ましい(下記反応式参照)。微生物をL−アミノ酸オキシダーゼ源とする場合、微生物自身のカタラーゼ活性により、過酸化水素を十分に除去できることもあるが、L−アミノ酸オキシダーゼとして精製酵素を用いる場合は過酸化水素の影響を受けるので、カタラーゼを併用することが好ましい。
【0078】
【化6】
Figure 0004239600
【0079】
(C)その他の酵素
本発明においては、2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成する反応を触媒する酵素の他、さらに反応系にIHOGからモナティンの2R体を生成する反応を触媒するD−アミノトランスフェラーゼを含有させることも好ましい。D−アミノトランスフェラーゼを用いることにより、酵素反応で副生する4R−IHOG、4S−IHOGをそれぞれRR体、RS体のモナティンとして再生することができ、コスト面からみても本法は望ましい。
【0080】
RR体 → 回収
RS体 → 回収
SR体 → 4R−IHOG → RR体→ 回収
SS体 → 4S−IHOG → RS体→ 回収
【0081】
このようなD−アミノトランスフェラーゼ産生菌としては、例えば、下記の例を挙げることができる。
【0082】
バチルス スフェリカス Bacillus sphaericus ATCC10208
パエニバチルス ラバエ サブスピシーズ プルビファシエンス Paenibacillus larvae subsp. pulvifaciens ATCC 13537バチルス マセランス Bacillus macerans AJ1617
パエニバチルス マセランス Paenibacillus macerans ATCC 8244
バチルス レンタス Bacillus lentus ATCC 10840
【0083】
尚、バチルス マセランス Bacillus macerans AJ1617については下記の通り寄託されている。
【0084】
Bacillus macerans AJ1617株
(イ)受託番号 FERM BP−8243
(ロ)受託日 2001年12月13日
(ハ)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)
【0085】
これらの微生物は、土壌、植物等自然界より新たに分離された菌株であってもよいし、また更に変異導入薬剤処理や組換DNA技術等により人為的に育種された菌株であってもよい。
【0086】
〔II〕モナティンの異性体混合物
本発明において、出発物質として用いるモナティンの異性体混合物は、2R体および2S体の双方を含んでいればよく、その組成比は特に限定されない。
【0087】
したがって、例え異性体混合物であっても、RR体とRS体の混合物のように、2S体を含まない異性体混合物や、SR体とSS体の混合物ように2R体を含まない異性体混合物は、本発明における「モナティンの異性体混合物」には該当しない。
【0088】
出発物質として用いるモナティンの異性体混合物の調製方法は特に限定されず、化学合成法、酵素法等の公知の方法を用いることができるが、一例を挙げれば、下記反応式に示すように、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)とのアルドール縮合により前駆体ケト酸(IHOG)を合成し、次いでIHOGの2位をアミノ化する方法等が挙げられる。
【0089】
【化7】
Figure 0004239600
【0090】
化学合成法を用いた場合、モナティンは、RR、RS、SR、SS体の4種異性体混合物として得られる。RR、RS、SR、SS体の4種異性体混合物を用いて、酵素反応により2S体を脱アミノ化させた場合、2S体であるSR体、SS体はそれぞれ4R−IHOG、4S−IHOGに変換され、2R体であるRR体、RS体は未反応のまま反応系に残る。従って、反応系に残存するモナティンを回収することにより高甘味度異性体である2R体(RR体、RS体)を高含有率で含む2R−モナティンを得ることができる。
【0091】
2S体であるSR体、SS体のうち、いずれか一方にのみ作用する酵素を用いる場合、酵素反応で除去できないもう一方の2S体を、晶析法等の手法を用いて予め除去しておくことが好ましい。すなわち、SS体にのみ作用する酵素を用いる場合は、出発物質として、SR体が除去されたモナティンの異性体混合物を用い、SR体にのみ作用する酵素を用いる場合は、SS体が除去されたモナティンの異性体混合物を用いることが好ましい。これにより、2R−モナティン中における2S体の含有率を下げ、単位重量あたりの甘味度の高いモナティンを得ることができる。
【0092】
例えば、化学合成法にて合成したモナティンの4種異性体混合物を、参考例1に示すような条件下において、(SS+RR)のラセミ混合物として晶析・分離することにより、異性体混合物からSR体を除去することができる。このSR体を除去した(SS+RR)のラセミ混合物に、SS体にのみ作用する酵素を作用させることにより、RR体からなる2R−モナティンが得られる。
【0093】
また、参考例2に示すように、モナティンの前駆体である4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸を4R体と4S体に分割し、4R体のモナティン前駆体から(SR+RR)を合成することにより、SS体を含まない異性体混合物を調製することができる。このSS体を含まない(SR+RR)の異性体混合物に、SR体にのみ作用する酵素を作用させることにより、RR体からなる2R−モナティンが得られる。なお、ここでいう(SR+RR)の異性体混合物とは、主としてSR体とRR体からなるモナティンの異性体混合物を意味し、不純物レベルでRS体、SS体を含んでいても良い。不純物レベルとは、含有量が異性体混合物全体の5%未満、好ましくは3%未満であることを意味する。この際、2R−モナティンの収率を上げるため、SR体から副生する4R−IHOGをD−アミノトランスフェラーゼを用いてRR体のモナティンとして再生させることが好ましい。
【0094】
可能であれば、酵素反応で除去できなかった2S体を、酵素反応後に除去してもよい。酵素反応後に未反応の2S体を除去する方法としては、例えば、4種異性体混合物に対し、SS体にのみ作用する酵素を用いて反応させ、RR、RS、SR体の3種異性体混合物を得た後、晶析により、母液からRR体を析出させることにより、酵素反応で除去できない2S体(この場合、SR体)を除去できる。
【0095】
〔III〕反応方法
本発明において、酵素は、当該酵素活性を発揮できる状態であれば、いかなる形態で反応系に存在させてもよい。すなわち、LATやLAOについては、2S体のモナティンに選択的に作用してIHOGを生成できる状態であればよい。また、LATと併用するアミノ化合物除去用LAO、LAOと併用するカタラーゼ、IHOGを2R体のモナティンに再生させるためのD−アミノトランスフェラーゼについては、それぞれの酵素活性を発揮できる状態であればよい。
【0096】
例えば、酵素を単体で反応系に添加してもよいし、当該酵素活性を有する微生物(酵素産生菌、組み換えDNAによって形質転換された細胞)、該微生物の培養物(液体培養、固体培養等)、培地(培養物から菌体を除去したもの)、該培養物の処理物を反応系に添加してもよい。微生物の培養物を用いる場合は、微生物を培養させながら同時に反応を進行させてもよいし、予め酵素を得るために培養された培養物を用いて反応を行っても良い。また、ここでの「処理」とは、菌体内の酵素を取り出すことを目的として行う処理を意味し、例えば超音波、ガラスビーズ、フレンチプレス、凍結乾燥処理や溶菌酵素、有機溶剤、界面活性剤等による処理等が挙げられる。また、これ等の処理を行った処理物を、定法(液体クロマトグラフィーや硫安分画等)によって調製した粗分画酵素や精製酵素であって、必要とする能力を有するものであれば、これを用いてもよい。
【0097】
更に、上記培養物或いはその処理物の利用の際、これ等をカラギーナンゲルやポリアクリルアミドに包括、或いはポリエーテルスルホンや再生セルロース等の膜に固定化して使用することも可能である。
【0098】
本発明の一つの好ましい様態において、目的とするL−アミノトランスフェラーゼやL−アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子を微生物細胞中に組み込むこともできる。尚、組み換えDNA技術を利用して酵素、生理活性物質等の有用タンパク質を製造する例は数多く知られており、組み換えDNA技術を用いることで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産できる。組み込まれる遺伝子の一例としては、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspC遺伝子)が挙げられる。遺伝子の由来はこれに限定されるものではなく、目的とする2S-モナティンを脱アミノ化するようなL−アミノトランスフェラーゼ活性を有するような酵素をコードする遺伝子であればよい。
【0099】
組み換えDNA技術を用いてタンパク質を大量生産する場合、形質転換される宿主細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、動物細胞等を用いることができる。このうち、組換えDNA操作について知見のある微生物としてはBacillus、Pseudonomas、Brevibacterium、Corynebacterium、Streptomyces、及びEscherichia coli等が挙げられる。一般には、大腸菌を用いてタンパク質を大量生産する技術について数多くの知見があるため、大腸菌、好ましくはEscherichia coliが用いられる。
【0100】
これら微生物へは、目的とするL−アミノトランスフェラーゼ遺伝子やL−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子を塔載したプラスミド、ファージ等のベクターを用いて導入してもよいし、相同組換えによって該細胞の染色体上に目的遺伝子を組み込んでもよい。好ましくは、いわゆるマルチコピー型のプラスミドベクターが挙げられ、例えばEscherichia coliへのベクターとしてはCol E1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミド、或いはその誘導体が挙げられる。これらベクターには目的とするアミノ基転移酵素遺伝子を発現させるプロモーターとして、通常大腸菌においてタンパク質生産に用いられるプロモーターを使用することができ、例えば、T7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、PLプロモーター等の強力なプロモーターが挙げられる。また、生産量を増大させるためには、タンパク質遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネーターを連結することが好ましい。このターミネーターとしては、T7ターミネーター、fdファージターミネーター、T4ターミネーター、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネーター、大腸菌trpA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。また、形質転換体を選別するために、該ベクターはアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましく、このようなプラスミドとして、例えば、pUC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233−2(クローンテック製)等のように強力なプロモーターを持つ発現ベクターが市販されている。
【0101】
次に、本発明における微生物の培養方法について説明する。本発明における微生物の培養方法としては、通常この分野において用いられる培地、即ち炭素源、窒素源、無機塩類、微量金属塩類、ビタミン類等を含む培地を用いて行うことができる。また、微生物の種類或いは培養条件によっては、培地中に0.1〜1.0g/dl程度のアミノ酸等のアミノ化合物を添加することによって、アミノ基転移反応活性を促進することもできる。
【0102】
遺伝子組換え細胞を培養する場合は、ベクターの選択マーカーに対応してアンピシリン、カナマイシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール等の薬剤を適宜添加することもできる。また、ベクターに塔載されているプロモーターに合わせて、誘導剤を適量添加することによって該組換え遺伝子の発現量を上げることもできる。一例を挙げると、lacプロモーターの下流に目的とする遺伝子を連結してベクターを構築した場合は、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.1mM〜5mMの範囲で適宜添加することも可能であり、また、この代りとしてガラクトースを終濃度0.1〜5g/dl望ましくは0.5g/dl〜2g/dl適宜添加することもできる。
【0103】
モナティンの菌体内への透過性を高めるために、トライトン X(Triton X)やトゥイーン(Tween)等の界面活性剤やトルエン、キシレン等の有機溶媒を利用することもできる。また、反応促進物質として、ピリドキサール−5−リン酸等の補酵素類を上記培地に添加してもよい。上記培地成分として用いる具体的物質として、例えば、炭素源としては、利用する微生物が利用可能であれば制限は無く、例えばグルコース、シュークロース、フルクトース、グリセロール、酢酸等、又はこれらの混合物を使用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、カゼイン加水分解物等、或いはこれらの混合物を使用することができる。具体的な培地組成として、例えばフマル酸 0.5g/dl、酵母エキス 1g/dl、ペプトン 1g/dl、硫安 0.3g/dl、K2HPO4 0.3g/dl、KH2PO4 0.1g/dl、FeSO4・7H2O 1mg/dl、及びMnSO4・4H2O 1mg/dl(pH7.0)を含む培地等が挙げられる。
【0104】
培養温度は、通常、利用する微生物が生育する範囲内、即ち10〜45℃で行われるが、好ましくは20℃〜40℃、更に好ましくは25〜37℃の範囲である。また、培地のpH値については、好ましくは2〜12、より好ましくは3〜10、更に好ましくは4〜8の範囲で調節される。通気条件については、利用する微生物の生育に適した条件に設定されるが、好気条件が好ましい。培養時間については、通常12〜120時間、好ましくは24〜96時間程度である。
【0105】
反応温度については、通常、利用する酵素が活性を有する範囲内、即ち好ましくは10〜50℃で行われるが、より好ましくは20〜40℃、更に好ましくは25〜37℃の範囲で行われる。反応溶液のpH値については、通常、2〜12、好ましくは6〜11、更に好ましくは7〜9の範囲で調節される。反応時間については、通常1〜120時間程度、好ましくは1〜72時間程度、更に好ましくは1〜24時間程度が選択される。
【0106】
菌体又は菌体処理物の使用量については、所与の反応の場合において目的とする効果を発揮する量(有効量)であればよく、この有効量については当業者であれば簡単な予備実験により容易に求められるが、例えば、洗浄湿潤菌体の場合、反応液100ml当たり1〜40gである。
【0107】
尚、培養液或いは反応液中のモナティンあるいはIHOGを定量する場合、周知の方法を用いて速やかに測定することができる。即ち、簡便にはMerck社製「Silica gel 60F254」等を利用した薄層クロマトグラフィーを利用することができ、より分析精度を高めるには、ジーエルサイエンス社製「Inertsil ODS-80A」やダイセル化学工業(株)製「CROWNPAK CR(+)」等の光学分割カラムを利用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いればよい。
【0108】
このようにして、培養液或いは反応液中に蓄積されたIHOGおよび残存モナティンは、常法により培養液或いは反応液中より採取して用いることができる。培養液或いは反応液中からの採取は、このような場合に当該分野において通常使用されている周知の手段、例えば濾過、遠心分離、真空濃縮、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、結晶化等の操作が必要に応じて適宜組み合わせて用いられる。
【0109】
反応系に残存するモナティンを回収する方法に特に限定はなく、公知の手法を用いることができる。目的とする2R−モナティンは遊離体の形で取得することができるが、必要により塩の形態で取得することもできる。塩の形態としては、塩基との塩を挙げることができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基、アンモニア、各種アミン等の有機塩基を挙げることができる。
【0110】
〔IV〕具体例
まず、Escherichia coli由来L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを用いて2R−モナティンを製造する方法について説明する。当該酵素は、2S体のうちSS体にのみ作用するので、RR体、RS体、SR体、SS体の4種異性体混合物に作用させた場合、SS体が脱アミノ化されて4S−IHOGとなり、RR体、RS体、SR体は未反応のまま残る。
【0111】
この際、アミノ基転移反応により副生するアミノ化合物(ここではL−Glu)を脱アミノ化するアミノ化合物除去用LAO(L-Glu oxidase)を併用して、平衡状態を脱アミノ化反応側にシフトさせることが好ましい。アミノ基転移反応は平衡反応であるが、アミノ化合物除去用LAOを用いてアミノ化合物を脱アミノ化することにより、L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによるアミノ基転移反応を100%進行させることができる。
【0112】
【化8】
Figure 0004239600
【0113】
L−アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを用いた場合、反応系から回収されたモナティンは、SS体が除去された分、単位重量当たりの甘味度が改善される。
【0114】
なお、当該酵素反応によってはSR体は除去できないため、甘味度をより向上させるためには、酵素反応前に予めSR体を除去しておくか、酵素反応後にSR体を除去することが好ましい。
【0115】
酵素反応前にSR体を除去する方法としては、例えば、下記▲1▼のように、晶析法によりSS体とRR体のラセミ混合物(SS+RR)を調製し、当該ラセミ混合物にAspATを作用させて、SS体を4S−IHOGに変換して、RR体を製造する方法がある。また酵素反応後にSR体を除去する方法としては、例えば、下記▲2▼のように、まず4種異性体混合物中のSS体のみを4S−IHOGに変換させた後、晶析によってRR体のみ析出させることにより、RR体を製造できる。これらの方法によれば、最も甘味度の高いRR体が得られるため、単位重量あたりの甘味度が高いモナティンが得ることができ好ましい。
【0116】
【化9】
Figure 0004239600
【0117】
次に、蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼを用いて、2R−モナティンを製造する場合について説明する。当該酵素は、2S体のうち、SR体にのみ作用するので、RR体、RS体、SR体、SS体の4種異性体混合物に作用させた場合、RR体、RS体、SS体は未反応のまま残る。従って、反応系から回収されたモナティンは、SR体が除去された分、単位重量当たりの甘味度が改善される。
【0118】
蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼを用いた場合、酵素反応によってSS体を除去することができないため、甘味度をより向上させるためには、SS体を除去することが好ましい。
【0119】
例えば、下記のように、参考例2の方法を用いて、RR体とSR体のモナティンの異性体混合物(RR+SR)を合成し、当該異性体混合物に蛇毒由来LAOを作用させると、SR体を選択的に4R−IHOGに変換して、RR体を製造することができる。
【0120】
蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼを用いる場合、2R体の収率を上げるため、SR体から副生する4R−IHOGをD−アミノトランスフェラーゼを用いてRR体のモナティンとして再生させることが好ましい。D−アミノトランスフェラーゼによって4R−IHOGをRR体に変換する反応は、蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼによる反応と同時に行っても良いし、蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼによる反応と分割して行っても良いが、反応の簡略化の観点からは、前者が好ましい。
【0121】
【化10】
Figure 0004239600
【0122】
また、SS体にのみ作用する酵素と、SR体にのみ作用する酵素を組み合わせて用いることにより、SS体とSR体をIHOGに変換することも好ましい。このような酵素の組み合わせの一例としては、上記Escherichia coli由来LAOと蛇毒由来LAOとの組み合わせ酵素を組み合わせが挙げられる。
【0123】
この場合、最終生産物として得られる2R−モナティンは、RS体とRR体の混合物となる。さらに甘味度を向上させたい場合は、晶析法等の手法を用いて、2R−モナティンからRR体を単離してもよい。
【0124】
【化11】
Figure 0004239600
【0125】
【実施例】
以下に実施例及び参考例を示し本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0126】
尚、実施例1で用いたモナティンの(2S、4S)、(2R、4R)体は、後述の参考例1により調製したものであり、実施例2、3で用いたモナティンの(2S、4R)、(2R、4R)体は、後述の参考例2を用いて調整したものである。
【0127】
また、本実施例において、モナティンの定量は、ジーエルサイエンス社製「Inertsil ODS-80A 」(5μm, 6X150mm)を利用した高速液体クロマトグラフィーにより行った。分析条件は、以下に示す通りである。
【0128】
移動相:12%(v/v) アセトニトリル/0.05%(v/v) トリフルオロ酢酸水溶液;
流速:1.5ml/min;
カラム温度:30℃;及び
検出:UV210nm
【0129】
本分析条件により、モナティンの(2S、4S)体及び(2R、4R)体は12.1分に、(2S、4R)体及び(2R、4S)体は9.7分にて分別定量ができる。
【0130】
また、必要に応じて、ダイセル化学工業製光学分割カラム「CROWNPAK CR(+)」(4.6X150mm)を利用した高速液体クロマトグラフィーによる分析も行った。分析条件は以下に示す通りである。
【0131】
移動相:過塩素酸水溶液(pH1.5)/10%(v/v)メタノール;
流速:0.5ml/min;
カラム温度:30℃;及び
検出:UV210nm。
【0132】
本条件によりモナティン光学異性体は(2R、4S)体、(2R、4R)体、(2S、4R)体、及び(2S、4S)体の順に42分、57分、64分、及び125分のリテンションタイムにて分別定量ができる。
【0133】
実施例1 L−アミノトランスフェラーゼを用いたモナティンの(2S、4S)、(2R、4R)体混合物からの(2S、4S)体の選択的脱アミノ化
(1)aspartate aminotransferase (aspC)高発現E. coliの作製
(1−1)trpプロモーター及びrrnBターミネーター搭載プラスミドpTrp4の構築
エシェリヒア コリ(Escherichia coli)W3110染色体DNA上のtrpオペロンのプロモーター領域を表に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(表2:▲1▼と▲2▼の組み合わせ)により目的遺伝子領域を増幅し、得られたDNA断片をpGEM−Teasyベクター(プロメガ製)にライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中からtrpプロモーターの方向がlacプロモーターと反対向きに挿入された目的のプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをEcoO109I/EcoRIにて処理して得られるtrpプロモーターを含むDNA断片と、pUC19(Takara製)のEcoO109I/EcoRI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、プラスミドをpTrp1と命名した。次にpKK223−3(Amersham Pharmacia製)をHindIII/HincIIにて処理し、得られたrrnBターミネーターを含むDNA断片とpTrp1のHindIII/PvuII処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、プラスミドをpTrp2と命名した。次にpTrp2を鋳型として表に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(表2:▲1▼と▲3▼の組み合わせ)によりtrpプロモーター領域を増幅した。このDNA断片をEcoO109I/NdeIにより処理し、pTrp2のEcoO109I/NdeI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coliJM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrp4と命名した。
【0134】
【表2】
Figure 0004239600
【0135】
(1−2)aspC遺伝子発現プラスミドptrpAspCの構築とE.coliでの発現
プライマーaspC-5'Nde (5'-CGC AGT CAT ATG TTT GAG AAC ATT ACC GCC GCT -3')およびaspC-3'Eco(5'-CGC GAA TTC ATT GTT TTT AAT GCT TAC AGC A -3')を用いてエシェリヒア コリ(Esherichia coli)W3110染色体DNAより増幅した約1.2kbpの断片をNdeI/EcoRI消化し、pTrp4のNdeI/EcoRIサイトに挿入したプラスミドptrpAspCを構築した。構築した発現プラスミドをE.coli JM109に導入し、形質転換体を50μg/mlアンピシリンを含むLB培地培地50mlに接種し、37℃、16時間振盪培養した。培養終了後、集菌し、20mM Tris−HCl(pH7.6)に懸濁して洗浄を行い、再度集菌して洗浄菌体を得た。
【0136】
(2)AspC高発現E.coliを用いたモナティンの(2S、4S)、 (2R、4R)体混合物からの(2S、4S)-モナティンの選択的脱アミノ化
100mM Tris−HCl(pH8.0)、50mM (2S、4S)体モナティン、50mM (2R、4R)体モナティン、1mM PLP、1% (w/v)AspC高発現E.coli洗浄菌体からなる反応液に、アミノ基受容体として200 mM 2−ケトグルタル酸ないし200 mM オキザロ酢酸をそれぞれ添加した反応区を設定した。反応液1mlを試験管に入れ、33℃で16時間振とう反応させた。その結果、2−ケトグルタル酸区において30mM相当の(2S、4S)体が、オキザロ酢酸区において26mM相当の(2S、4S)体がそれぞれIHOGへと変換された。なお、いずれの実験区においても(2R、4R)体のモナティンはほぼ分解を受けずに反応系に残存した。
【0137】
(3)AspC高発現E.coliとL−グルタミン酸オキシダーゼの組み合わせによる(2S、4S)、(2R、4R)体混合物からの(2S、4S)体の選択的脱アミノ化
100mM Tris−HCl(pH8.0)、50mM (2S、4S)体モナティン、50mM (2R、4R)体モナティン、200mM 2−ケトグルタル酸、1mM PLP、1% (w/v) AspC高発現E.coli洗浄菌体からなる反応液1mlを試験管に入れた。2つの実験区を設定し、一方には反応開始1時間後に 2U/mlのStreptomyces sp.由来L−グルタミン酸オキシダーゼ(Sigma社製)および2000U/ml カタラーゼ(Sigma社製)を添加して反応を実施した。30℃で16時間振とう反応を実施した結果、L−グルタミン酸オキシダーゼ無添加区においては30mM相当の(2S、4S)体モナティンがIHOGへと変換されたのに対して、L−グルタミン酸オキシダーゼ添加区においては(2S、4S)体モナティンの全量がIHOGへと変換された。なお、いずれの実験区においても(2R、4R)体はほぼ分解を受けずに反応系に残存した。この結果より、L−アミノ酸オキシダーゼとL−グルタミン酸オキシダーゼをカップリングさせることにより(2S、4S)、(2R、4R)体混合物より(2S、4S)体を選択的に完全に脱アミノ化せしめ、(2R、4R)体のモナティンを採取せしめることができた。
【0138】
実施例2 L−アミノ酸オキシダーゼを用いたモナティンの(2S、4R)、(2R、4R)体混合物からの(2S、4R)体の選択的脱アミノ化
100mM Tris−HCl(pH8.0)、1U/ml 蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼ(L-amino acid oxidase from Crotalus adamanteus)(Sigma社製)、3000U/ml カタラーゼ(Sigma社製)、0.26 g/dl (2S、4R)体のモナティン、1.74 g/dl (2R、4R)体のモナティンからなる反応液1mlを試験管に入れ、30℃で16時間振とうさせた。反応終了後のモナティン量をHPLCにて測定したところ、(2S、4R)体は完全に4R-IHOGへと脱アミノ化されている一方で、(2R、4R) 体は分解を受けずに反応液中に残存し、(2S、4R)、(2R、4R)体混合物から (2S、4R)体を選択的に脱アミノ化し4R-IHOGへと変換せしめた。
【0139】
実施例3 L−アミノ酸オキシダーゼを用いたモナティンの(2S、4R)、(2R、4R)体混合物からの(2S、4R)体の4R-IHOGへの選択的脱アミノ化およびD−アミノトランスフェラーゼ発現E.coliによる4R-IHOGの(2R、4R)体モナティンへの変換
(1)Bacillus macerans AJ1617株由来D−アミノトランスフェラーゼ遺伝子(bmdat)のクローニング
(1−1)染色体DNAの調製
Bacillus macerans AJ1617株を50mlのブイヨン培地を用いて30℃で一晩培養した(前培養)。この培養液5mlを種菌として、50mlのブイヨン培地を用いて本培養を行った。対数増殖後期まで培養した後、培養液50mlを遠心分離操作(12000×g、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を用いて定法に従って染色体DNAを調製した。
【0140】
(1−2)遺伝子ライブラリからのbmdat遺伝子の単離
まず、Bacillus macerans AJ1617株の染色体DNA30μgに制限酵素EcoRIを1U添加し、37℃にて3時間反応させて部分消化した。次にこのDNAからアガロースゲル電気泳動にて3〜6kbpの断片を回収した。これをプラスミドpUC118のEcoRI切断物(BAP処理済み・宝酒造製)1μgとライゲーションさせ、E. coli JM109を形質転換して遺伝子ライブラリを作製した。これをアンピシリンを含むLB培地培地(トリプトン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム1%、寒天2%、pH7.0)にプレーティングして、コロニーを形成させた。出現したコロニーをアンピシリンとイソブチル−1−チオ-β-D−アミノトランスフェラーゼ−ガラクトピラノシド(IPTG)を0.1mM含むLB培地液体培地にて37℃で一晩培養後、遠心・集菌して菌体を得た。得られた菌体を、100mM Tris−HCl (pH8.0)、50mM ピルビン酸ナトリウム、100 mM D−グルタミン酸、1 mM ピリドキサール−5´−リン酸、1% (v/v)トルエンからなる反応液に接種し、30℃で30分間反応させた。反応終了後、反応液を遠心分離した上清5μlを200μlのピルビン酸定量反応液(100 mM Tris−HCl (pH 7.6)、1.5 mM NADH、5 mM MgCl2、16 U/ml Lactate dehydrogenase(オリエンタル酵母製))を含む96ウェルプレートに加え、30℃で10分間反応させた後に340nmの吸光度をプレートリーダー(SPECTRA MAX190、Molecular Device社製)を用いて測定した。同様の反応を終濃度0.2mM〜1mMのピルビン酸ナトリウムを添加して実施し、これをスタンダードとしてピルビン酸の減少量を定量し、D−アミノトランスフェラーゼ活性を検出した。
【0141】
上記スクリーニングにより、D−アミノトランスフェラーゼ活性を示すクローンを採取した。これら形質転換体よりD−アミノトランスフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドを調製し、pUCBMDATと命名した。プラスミドpUCBMDATをEcoRI処理してアガロースゲル電気泳動に供したところ、挿入断片の長さは約3.3kbpと見積もられた。
【0142】
(1−3)挿入断片の塩基配列
プラスミドpUCBMDATの挿入断片の塩基配列をジデオキシ法によって決定したところ、配列表配列番号6に示す配列のうち、630番から1481番に対応する約850bpからなるORFを見出した。本ORFについて既知配列との相同性検索を行ったところ、Bacillus sphaericus ATCC10208株由来のD−アミノトランスフェラーゼ遺伝子とアミノ酸配列において91%の相同性を、Bacillus sp. YM−1株由来のD−アミノトランスフェラーゼ遺伝子とアミノ酸配列において66%の相同性を、Bacillus licheniformis ATCC10716株由来のD−アミノトランスフェラーゼ遺伝子とアミノ酸配列において42%の相同性を示した。この結果より、本ORFはD−アミノトランスフェラーゼ伝子をコードしていることが明らかとなった。なお、ここでの相同性は、遺伝子解析ソフト「genetyx ver.6」(GENETYX社)を用い、各種パラメータは初期設定の通りとして算出した値である。
【0143】
(2)L−アミノ酸オキシダーゼを用いたモナティンの(2S、4R)、(2R、4R)体混合物からの(2S、4R)体の4R-IHOGへの選択的脱アミノ化およびBacillus macerans由来D−アミノトランスフェラーゼ(BMDAT)発現E.coliを用いたIHOGからの2R体モナティンの生産の組み合わせ反応
(2−1)BMDAT発現E.coliの調製
pUCBMDATを持つE.coli 形質転換体0.1mg/ml アンピシリンを含むLB培地培地(バクトトリプトン 1g/dl、酵母エキス 0.5g/dl、及びNaCl 1g/dl)で37℃、16時間シード培養した。LB培地培地50mlを張り込んだ500ml容坂口フラスコにこのシード培養液を1ml添加し、37℃にて本培養を行った。培養開始2.5時間後に、終濃度1mMとなるようにイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、更に4時間培養を行った。得られた培養液より集菌、洗浄し、BMDAT発現E.coliを調製した。
【0144】
(2−2)L−アミノ酸オキシダーゼおよびD−アミノトランスフェラーゼの組み合わせ反応
100 mM Tris−HCl (pH 8.0)、1 U/蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼ(L-amino acid oxidase from Crotalus adamanteus)(Sigma社製)、2000 U/ml カタラーゼ (Sigma社製)、13.4 mM (2S、4R)体モナティン、81.4 mM (2R、4R)体モナティン、1mM ピリドキサール−5´−リン酸、100 mM D−Alaからなる反応液1mlを試験管に入れた。2つの実験区を設定し、一方には上記で作製したD−アミノトランスフェラーゼ発現E.coliの洗浄菌体を湿菌体重量で約1%(w/v)となるように添加した。これら反応液を、30℃で16時間振とうさせ反応を実施した。その結果、D−アミノトランスフェラーゼ無添加区においては(2S、 4R)体のモナティンが完全に4R-IHOGへと変換された。さらにD−アミノトランスフェラーゼ添加区においては(2S、4R)体のモナティンが完全に変換された上に、(2R、4R)体モナティン量が81.4mM から87.6mMへと増加した。即ち、L−アミノ酸オキシダーゼとD−アミノトランスフェラーゼを組み合わせることによりモナティンの(2S、4R)、(2R、4R)体混合物から (2S、4R)体を4R-IHOGへと選択的に脱アミノ化し、さらに4R-IHOGから(2R、4R)体のモナティンを生成せしめることができた。
【0145】
参考例1 モナティンの(2S、4S)、(2R、4R)体混合物の調製
(1)モナティンの4種立体異性体混合物の合成
(1−1)4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の合成
水50mlに水酸化カリウム(純度85%)13.8gを溶解した後、インドール−3−ピルビン酸5.0g(24.6mmol)及びオキサロ酢酸9.8g(73.8mmol)を加えて室温にて72時間反応を行った。反応液に対してヒドロキシルアミン塩酸塩6.8g(98.4mmol)を加えた。その際、4規定水酸化ナトリウム水溶液にて反応液のpH値を7.5に調節した。そのまま室温にて24時間攪拌した後に、6規定塩酸にて反応液のpH値を2.6に調節した。酢酸エチルを用いて抽出した後に、有機層を飽和食塩水にて洗浄、無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、濃縮乾固した。得られた残渣を14%アンモニア水10mlに溶解し、エタノール70mlを徐々に滴下して室温にて3時間攪拌した。得られたスラリーを濾過し、取得した結晶を乾燥することで、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸2.7g(7.9mmol)をアンモニウム塩として得た。
【0146】
(NMR測定)
1H NMR(DMSO-d6)δ:2.66(s, 2H), 2.89(d, J= 14.4 Hz, 1H), 3.04(d, J= 14.4 Hz, 1H), 6.89−6.94(m, 1H), 6.97−7.03(m, 1H), 7.11(d, J= 2.8 Hz, 1H), 7.27(d, J= 7.8 Hz, 1H), 7.53(d, J= 7.8 Hz, 1H), 10.71(br s, 1H)
【0147】
(分子量測定)
ESI-MS 計算値C14H14N2O6=306.28, 分析値305.17(MH-
【0148】
(1−2)4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−アミノグルタル酸(モナティン)の合成
4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸アンモニウム塩0.13g(0.38mmol)を28%アンモニア水5mlに溶解し、5%ロジウム炭素0.09gを加えて室温にて7.5気圧の水素圧にて反応させた。14時間後に触媒を濾過し、反応液を濃縮乾固することで(2S、4S)/(2R、4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−アミノグルタル酸(モナティン)のアンモニウム塩0.075g(0.23mmol)及び(2S、4R)/(2R、4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−アミノグルタル酸(モナティン)のアンモニウム塩0.036g(0.11mmol)を混合物として得た。
【0149】
(NMR測定)
1H NMR (D2O) δ:2.05(dd, J=12.2, 15.1Hz, 0.67H), 2.21 (dd, J= 9.9, 15.6 Hz, 0.33H) , 2.48 (dd, J= 3.2, 15.6 Hz, 0.33H) , 2.68 (dd, J= 2.2, 15.1 Hz, 0.67H) , 3.08 (d, J= 14.4 Hz, 0.67H) , 3.17 − 3.25 (m, 0.66H) , 3.28 (d, J= 14.4 Hz, 0.67H) , 3.63 (dd, J= 2.2, 12.2 Hz, 0.67H) , 3.98 (dd, J=3.2, 9.9Hz, 0.33H) , 7.12 − 7.18 (m, 1H) , 7.19 − 7.26 (m, 2H)
, 7.45 − 7.51 (m, 1H) , 7.70 − 7.76 (m, 1H)。
【0150】
(分子量測定)
ESI-MS 計算値 C14H16N2O5 = 292.29, 分析値 291.28 (MH-)。
【0151】
(2)モナティン4種立体異性体混合物のアンモニウム塩の(2S、4S)体と(2R、4R)体とのラセミ体結晶及び(2S、4R)体と(2R、4S)体とのラセミ体結晶への分割
(1)に記載の方法を利用して別途合成したモナティンの光学異性体混合物(モナティン[(2S、4S)+(2R、4R)]体:モナティン[(2S、4R)+(2R、4S)]体=6:4;1H NMR (D2O)での積分値での比により算出)のアンモニウム塩10.00g(32.33mmol)を、2.5%アンモニア水100mlに溶解し、溶液を20mlになるまで濃縮した。新たに5%アンモニア水3mlを加え均一にした後、室温にて30分静置した。結晶析出後、5%アンモニア水/エタノール=25/75の水溶液80mlを加えて均一にし、モナティン[(2S、4S)+(2R、4R)]体アンモニウム塩の結晶を濾取した。得られた結晶を再び2.5%アンモニア水30mlに溶解し濃縮した後、5%アンモニア水0.5mlとエタノール30mlにて再結晶し、モナティン[(2S、4S)+(2R、4R)]体アンモニウム塩結晶 4.80g(15.52mmol、HPLC純度98.0%)を得た。
【0152】
1H NMR(D2O)δ:1.95−2.02(m,1H),2.58−2.62(m,1H),3.01−3.05(m,1H),3.21−3.24(m,1H),3.55−3.58(m,1H),7.07−7.11(m,1H),7.14−7.18(m,2H),7.42−7.44(d,1H),7.66−7.68(d,1H)
【0153】
ESI−MS 291.39(M−H)-
【0154】
融点 182〜186℃
【0155】
前述の操作で得た濾液(モナティン[(2S、4S)+(2R、4R)]体:モナティン[(2S、4R)+(2R、4S)]体=3:10)を5mlになるまで濃縮した。新たに5%アンモニア水3mlを加えて均一にした後、室温にて10分静置した。結晶析出後、エタノール80mlを加えて均一にし、モナティン[(2S、4R)+(2R、4S)]アンモニウム塩の結晶を濾取した。得られた結晶を再び2.5%アンモニア水30mlに溶解し濃縮した後、5%アンモニア水0.5mlとエタノール30mlによる再結晶を3回おこない、モナティン[(2S、4R)+(2R、4S)]体アンモニウム塩結晶 3.10g(10.02mmol、HPLC純度98.2%)を得た。総回収率は79.0%であった。
【0156】
1H NMR(D2O)δ:2.11−2.17(m,1H),2.38−2.43(m,1H),3.16(s,2H),3.90−3.93(m,1H),7.06−7.10(m,1H),7.13−7.17(m,2H),7.41−7.43(d,1H),7.66−7.68(d,1H)
【0157】
ESI−MS 291.19(M−H)-
【0158】
融点 167.2〜168.4℃
【0159】
参考例2 モナティンの(2S、4R)、(2R、4R)体混合物の調製
参考例中、光学純度測定は下記条件でHPLCにて行った。
<光学異性体分離用カラム> (株)住化分析センター製 SUMICHIRAL OA-7100<溶離液> 20mM燐酸緩衝液(pH=2.8):アセトニトリル=7:3
<カラム温度> 10℃
<流速> 0.6ml/min
【0160】
(1)4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の製造
1.6wt%水酸化ナトリウム水溶液917gに、インドール−3−ピルビン酸73.8g(352mmol)を加えて溶解した。反応溶液を35℃とし、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を11.1に保ちながら、50%ピルビン酸水溶液310.2g(1761mmol)を2時間かけて滴下した。更に4.5時間反応させて、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ケトグルタル酸を含有する反応溶液を得た。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を7に保ちながら、40%ヒドロキシルアミン塩酸塩水溶液367.2g(2114mmol)を加え、5℃にて17.5時間攪拌した。濃塩酸を用いて反応液のpH値を2にし、有機物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して残渣を得た。残渣に28%アンモニア水60mlと2−プロパノール1350mlから再結晶を行い、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の2アンモニウム塩43.4g(142mmol:収率40% 対インドール−3−ピルビン酸)を結晶として得た。
【0161】
(2)(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩の製造
4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩44.7g(0.131モル)を25℃で水500mlに溶解後、36%塩酸25.5gにてその水溶液のpHを2にした。酸性溶液を酢酸エチル1300mlで抽出し、その酢酸エチル溶液を飽和食塩水200mlで洗浄した。得られた酢酸エチル溶液に炭酸ナトリウム水溶液500ml(炭酸ナトリウム 13.9g 0.131モル)を加え攪拌し、アルカリ水溶液と酢酸エチルを分離した。得られたアルカリ水溶液に36%塩酸23.1gを添加し液のpHを2にした。この酸性水溶液に(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン6.99g(57.6mmol)を滴下し25℃にて1時間攪拌する。得られた結晶をろ過し、減圧乾燥して(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩21.8g(47.8mmol)を得た。(収率72.7% 光学純度87.4%)
【0162】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6)σ:1.48 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 2.63(d, 1H, J = 14.0 Hz), 2.70(d, 1H, J= 14.0 Hz), 2.90 (d, 1H, J = 14.1 Hz), 3.06 (d, 1H, J = 14.1 Hz), 4.40 (q, 1H, J = 6.8 Hz), 6.91-7.54 (m, 10H).
【0163】
(3)(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン塩の製造
(1)で得られた結晶ろ過液に、更に(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン7.12g(58.7mmol)を滴下し25℃にて1時間攪拌した。得られた結晶をろ過し、減圧乾燥して(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン塩23.8g(53.3mol)を得た。(収率81.1% 光学純度92.1%)
【0164】
(4)(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩の製造
25℃にて、(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩21.8g(51.0mmol)に水200ml及び28%アンモニア水18.5gを加えて溶解させた後、さらにトルエン200mlを加えて攪拌した。分層して得られた水層を60℃に加温し、その水溶液に2−プロパノール900mlを2時間かけて滴下した。この2−プロパノール水溶液を10℃まで5時間かけて冷却した後、10℃で10時間攪拌した。得られた結晶をろ過し、減圧乾燥して(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩14.75gを得た。(収率85.1% 光学純度99.0%)
融点;205℃(分解)
比旋光度 [α]20 D +13.4(c=1.00, H2O)
【0165】
(5)(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩の製造
上記実施例と同様に、(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩23.8g(53.3mmol)から(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩16.2gを得た。(収率89.3% 光学純度99.9%)
比旋光度 [α]20 D -13.6(c=1.00, H2O)
【0166】
(6)(2R、4R)及び(2S、4R)モナティンのアンモニウム塩の製造
(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアミン塩10.0g(光学純度94.4%、22.4mmol)を28%アンモニア水120mlに溶解し、5%ロジウム炭素(50%含水品)7.4gを加えて室温にて1MPaの水素圧で反応を行った。24時間後に触媒をろ過し、反応液にトルエン50mlを添加した。トルエン層と水層を分離し、得られた水層を濃縮した。濃縮物に90%エタノール水50mlを加え25℃で10時間攪拌した。析出した粗結晶をろ過し、減圧乾燥することにより(2R、4R)及び(2S、4R)モナティンのアンモニウム塩2.8gを得た(収率42%)
【0167】
(2R、4R):(2S、4R):(2S、4S):(2R、4S)=82.4:12.3:3:2.3(HPLCエリア比)
【0168】
【発明の効果】
本発明の2R−モナティンの製造方法により、モナティン異性体混合物から甘味度の高い異性体である2R−モナティンを製造することができる。さらに晶析法等を組み合わせることにより最も甘味度の高い(2R、4R)−モナティンを製造することができるので、本発明は工業上、特に食品の分野において極めて有用である。
【0169】
【配列表】
Figure 0004239600
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Claims (13)

  1. 2S体および2R体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、2S体のモナティンに選択的に作用して4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する酵素を含有する反応系で反応させることにより、2S体を分解させる工程、および
    前記反応系から残存するモナティンを回収して2R−モナティンを得る工程
    を含み、
    前記酵素が、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)に由来するL-アミノトランスフェラーゼおよび/または蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼであることを特徴とする、2R−モナティンの製造方法。
  2. 前記L-アミノトランスフェラーゼはL-アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項1記載の2R−モナティンの製造方法。
  3. 前記L-アミノトランスフェラーゼは、L-アミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入したエシェリヒア コリ(Escherichia coli)の産生するL-アミノトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項1または2記載の2R−モナティンの製造方法。
  4. 前記L-アミノトランスフェラーゼ遺伝子は、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)に由来するL-アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子であることを特徴とする、請求項3記載の2R−モナティンの製造方法。
  5. 前記反応系にアミノ基受容体として、α−ケト酸を含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の2R−モナティンの製造方法。
  6. 前記α−ケト酸は、α−ケトグルタル酸であり、さらに前記反応系に、前記α−ケトグルタル酸から副生するL−アミノ酸に対して作用するストレプトマイセス エスピー(Streptomyces sp.)由来のL−グルタミン酸オキシダーゼを含有することを特徴とする、請求項5記載の2R−モナティンの製造方法。
  7. 前記モナティンの異性体混合物は、(2S、4S)体および(2R、4R)体を含み、前記酵素は、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)由来L-アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼであることを特徴とする、請求項1記載の2R−モナティンの製造方法。
  8. 前記モナティンの異性体混合物は、(2S、4R)体および(2R、4R)体を含み、前記酵素は、蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼであることを特徴とする、請求項1記載の2R−モナティンの製造方法。
  9. さらに前記反応系に、バチルス マセランス(Bacillus macerans)に由来する酵素であって、4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸から2R体のモナティンを生成する反応を触媒するD−アミノトランスフェラーゼを含有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の2R−モナティンの製造方法。
  10. 前記D−アミノトランスフェラーゼは、D−アミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入したエシェリヒア コリ(Escherichia coli)の産生する酵素であることを特徴とする、請求項9記載の2R−モナティンの製造方法。
  11. 前記D−アミノトランスフェラーゼ遺伝子は、バチルス マセランス(Bacillus macerans)に由来することを特徴とする、請求項10記載の2R−モナティンの製造方法。
  12. (2S、4R)体および(2R、4R)体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、(2S、4R)体のモナティンに選択的に作用して4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する酵素、および、4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸から(2R、4R)体のモナティンを生成する反応を触媒するD−アミノトランスフェラーゼを含有する反応系で反応させることにより、(2S、4R)体を(2R、4R)体に変換する工程、
    前記反応系からモナティンを回収して(2R、4R)−モナティンを得る工程
    含み、
    前記4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する酵素が蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼであり、前記D−アミノトランスフェラーゼがバチルス マセランス(Bacillus macerans)に由来する酵素であることを特徴とする、(2R、4R)−モナティンの製造方法。
  13. 2S体および2R体の双方を含むモナティンの異性体混合物を、2S体のモナティンに選択的に作用して4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する酵素を含有する反応系で反応させ、2S体のモナティンの少なくとも一部を分解させることにより、高甘味度異性体である2R体の含有率を向上させる工程を含み、
    前記酵素が、エシェリヒア コリ(Escherichia coli)に由来するL-アミノトランスフェラーゼおよび/または蛇毒由来L−アミノ酸オキシダーゼであることを特徴とするモナティンの甘味度改善方法。
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