JP4797452B2 - 新規アルドラーゼ並びに光学活性ihog及びモナティンの製造方法 - Google Patents
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Description
(a)インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)のアルドール縮合により前駆体ケト酸(IHOG)を合成する反応工程
(b)IHOGの2位をアミノ化する反応工程
[1]
下記(a)又は(b)
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性が70%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質、
のいずれかに記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、
インドール−3−ピルビン酸及びピルビン酸又はオキサロ酢酸に作用させ、
光学純度70%以上の下記式(1)で示される(4R)−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(4R−IHOG)又はその塩を生成させることを特徴とする、4R−IHOG又はその塩の製造方法。
下記(a)又は(b)
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性が70%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質、
のいずれかに記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、
インドール−3−ピルビン酸及びピルビン酸又はオキサロ酢酸に作用させ、
4R−IHOG又はその塩を優先的に生成させる第1の工程、及び、
前記第1の工程によって得られた4R−IHOG又はその塩のカルボニル基をアミノ基に変換し、光学純度90%以上の下記式(2)で示される4R−モナティン又はその塩を得る第2の工程、
を含むことを特徴とする4R−モナティン又はその塩の製造方法。
[3]
前記第2の工程において、カルボニル基のアミノ基への変換が、4R−IHOGに酵素を作用せしめてアミノ化することにより行なわれるものである、[2]記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
[4]
前記第2の工程において、カルボニル基のアミノ基への変換が、反応液に含まれる4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、中性又はアルカリ性条件下において下記一般式(3)
で表されるアミン化合物又はその塩と反応せしめ、下記式(4)に示される4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸(IHOG−oxime)を生成させ、生成したIHOG−oxime又はその塩の4R体を晶析し、
得られた4R体のIHOG−oxime又はその塩を還元し、生成した光学純度90%以上の4R−モナティン又はその塩を採取するものである、[2]記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
前記一般式(3)で表されるアミン化合物が、ヒドロキシルアミン、メトキシアミン、ベンジルオキシアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物である、[4]記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
[6]
4R体のIHOG−oxime又はその塩の還元が、水素及び水素添加触媒の存在下で実施されることを特徴とする[4]又は[5]に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
[7]
前記第2の工程において、晶析により(2R,4R)−モナティンを採取することを特徴とする[4]〜[6]のいずれか一項に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
[8]
前記第2の工程において、晶析溶媒として水、アルコール溶媒又は含水アルコール溶媒を用いることを特徴とする[4]〜[7]のいずれか1項に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
[9]
前記方法に用いられるタンパク質が、スフィンゴモナス属又はバークホルデリア属細菌から選ばれる微生物に由来するタンパク質である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10]
前記微生物は、スフィンゴモナス エスピー(Sphingomonas sp.)AJ110329株又はAJ110372株、バークホルデリア エスピー(Burkholderia sp.)AJ110371株であることを特徴とする[9]記載の製造方法。
下記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性が70%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質
[12]
配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性が70%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質が、配列番号13又は15のいずれかに記載のタンパク質である、[11]記載のタンパク質。
[13]
[11]又は[12]に記載のタンパク質をコードするDNA。
[14]
下記(d)又は(e)のDNA。
(d)配列番号1記載の塩基配列又は同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列からなるDNA
(e)配列番号1記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
[15]
配列番号1記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAが、(f)配列番号12記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号399〜1253の塩基配列からなるDNA、又は(g)配列番号14記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号531〜1385の塩基配列からなるDNAのいずれかのDNAである、[14]記載のDNA。
[16]
[14]又は[15]に記載のDNAとベクターDNAを接続して得られることを特徴とする組換えDNA。
[17]
[16]記載の組換えDNAによって形質転換された細胞。
[18]
[17]記載の細胞を培地中で培養し、培地及び/又は細胞中にアルドラーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とするアルドラーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
[I] 光学活性IHOGの製造方法
[II] 光学活性モナティンの製造方法
の順に添付の図面を参照して詳細に説明する。
(1)反応
本発明の4R−IHOGの製造方法について述べる。本発明の4R−IHOGの製造方法は、下記式(5)
下記一般式(6)
で示されるピルビン酸又はオキサロ酢酸とを反応せしめることにより、
下記式(1)
当該反応を触媒するタンパク質存在下で反応を実施する点に特徴を有する。
当該反応を触媒するタンパク質は、4R−IHOGを優先的に合成する反応を触媒可能な限り、いかなる形態で反応系に添加してもよい。すなわち、当該反応を触媒するタンパク質を単体で反応系に添加してもよいし、当該反応を触媒するタンパク質(アルドラーゼ)を含むアルドラーゼ活性を有する組成物の形態で反応系に添加してもよい。
ここで、より立体選択的にIHOGを生成せしめる場合に、自発的なアルドール縮合を抑制することにより、より高い立体選択性をもって目的とする4R−IHOGを生成せしめることも出来る。ここで、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸をアルドール縮合せしめてIHOGを生成させる場合を例として挙げる。本反応はpHをアルカリ側、例えばpH9〜12あたりで反応せしめることにより、自発的にアルドール縮合する。この自発的なアルドール縮合により生成したIHOGは、4位の立体に関しては選択性が低く、4Rと4Sの混合物(ラセミ体)を与える。そこで本発明の一態様においては、反応を触媒するタンパク質を作用せしめる際の、反応pHをpH9〜pH7、より好ましくはpH8.7〜pH8付近に制御することにより、自発的なIHOGの生成が抑制され、一方で当該タンパク質によって4R−IHOG選択的にアルドール縮合せしめるため、結果として生成したIHOGの4R選択性を上げることができる。このような反応条件については、当該業者であれば簡単な予備的検討によって条件を決定することが出来る。
本発明の製造方法に用いる、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質(以下単に、「4R−アルドラーゼ」ということがある。)は、前記の反応を触媒する性質を有するものであるが、4R−アルドラーゼは、4R−アルドラーゼ活性を有する微生物から得ることもでき、当該微生物は、以下のスクリーニング方法によって得ることが出来る。
(a)4R−アルドラーゼ活性を有する微生物のスクリーニング方法
4R−アルドラーゼを産生する微生物は、土壌、水等の自然界から取得することができる。即ち、モナティン、IHOG、IHOG−oxime、PHG、PHOG、PHOG−oxime等の目的とするアルドラーゼが基質とする化合物を炭素源もしくは窒素源として、好ましくは、単一炭素源もしくは単一窒素源として、培地中に添加し、微生物源となるサンプルを接種の上、培養することが望ましい。また、それらの添加物はラセミ混合物を用いてもよいが、好ましくは4R−体、更に好ましくは、(2R,4R)−モナティンとすることが望ましい。炭素源以外の有機栄養源としては、通常の培地成分を適宜選択することが出来る。窒素源としては有機酸のアンモニウム塩、硝酸塩、およびペプトン、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素化合物あるいはこれらの混合物を使用できる。他に無機塩類、微量金属塩、ビタミン類などの通常用いられる栄養源を適宜混合できる。このような集積培養において生育可能な微生物はアルドラーゼ活性菌が多く含まれる。
流速: 1ml/min
カラム温度: 40℃
検出: UV210nm
本発明者らは、上記スクリーニングの結果、集積菌からスフィンゴモナス属に属する微生物及びバークホルデリア属に属する微生物を選択し、両属に属する微生物又はこれらに近縁の微生物から、本発明に使用可能なアルドラーゼが産生されることを見出した。従って、本発明に用いることが出来るアルドラーゼ活性を有する微生物としては、スフィンゴモナス属、バークホルデリア属、又はこれらに近縁の属に属する微生物が挙げられる。スフィンゴモナス属の近縁の属としては、例えば、リゾモナス属、ブラストモナス属、エリスロマイクロビウム属、ポルフィロバクター属、アグロバクテリウム属、エリスロバクター属が挙げられる。なお、スフィンゴモナス属については、近年再分類の提案がなされており、スフィンゴビウム属、ノボスフィンゴビウム属又はスフィンゴピキシス属と呼ばれる場合もあるが(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(2001), 51,1405−1417)、本明細書においては、これらも含む意味でスフィンゴモナス属の用語を用いる。
Sphingomonas sp., Sphingomonas trueperi, Sphingomonas parapaucimobilis, Sphingomonas sanguinis, Sphingomonas paucimobilis, Sphingomonas adhaesiva, Sphingomonas pruni, Sphingomonas mali, Sphingomonas asaccharolytica, Sphingomonas echinoids, Sphingomonas yanoikuyae, Sphingomonas herbicidovorans, Sphingomonas chlorophenolica, Sphingomonas agrestis, Sphingomonas rosa, Sphingomonas subarctica, Sphingomonas stygia, Sphingomonas subterranean, Sphingomonas aromaticivorans, Sphingomonas capsulate, Sphingomonas macrogoltabidus, Sphingomonas terrae, Rhizomonas suberifaciens, Blastomonas natatoria, Blastomonas ursincola, Agrobacterium sanguineum, Erythrobacter longus, Erythrobacter litoralis等が挙げられる。
Burkholderia sp., Burkholderia phenazinium, Burkholderia caribensis, Burkholderia graminis, Burkholderia kururiensis, Burkholderia brasilensis, Burkholderia caryophylli, Burkholderia glathei, Burkholderia plantarii, Burkholderia vandii, Burkholderia glumae, Burkholderia cocovenenans, Burkholderia gladioli, Burkholderia vietnamiensis, Burkholderia multivorans, Burkholderia cepacia, Burkholderia pyrrocinia, Burkholderia thailandensis, Burkholderia pseudomallei, Burkholderia mallei, Burkholderia andropogonis等が挙げられる(Current Microbiology Vol. 42 (2001), pp. 269−275)。
・Sphingomonas sp. AJ110329株(C77株)
(i)受託番号 FERM BP−10027
(ii)原寄託申請の受託日 2004年5月21日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)
・Sphingomonas sp. AJ110372株(C43株)
(i)受託番号 FERM BP−10156
(ii)原寄託申請の受託日 2004年10月28日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)
・Burkholderia sp. AJ110371株(C24株)
(i)受託番号 FERM BP−10155
(ii)原寄託申請の受託日 2004年10月28日
(iii)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)
AJ110329株のゲノムDNAよりPCRにより16S ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち、5’末端側約500bpの領域を増幅し、塩基配列を決定した(配列番号16)。得られた配列の相同性解析を、MicroSeq Bacterial 500 Library v.0023(Applied Biosystems,CA,USA)をデータベースとし、MicroSeq Microbial Identification System Software V.1.4.1.を用いて解析した。その結果、AJ110329株16S rDNA部分塩基配列と一致する既知配列は存在せず、相同率96.6%でSphingomonas capsulataの16S rDNAに対し最も高い相同性を示した。分子系統樹上でもAJ110329株の16S rDNAはSphingomonasの16S rDNAが形成するクラスター内に含まれた。また、表2に示す菌学的性質についても上記16S rDNA塩基配列解析結果と矛盾するものではなく、AJ110329株をSphingomonas sp.と推定した。
AJ110372株のゲノムDNAよりPCRにより16S ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち、5’末端側約500bpの領域を増幅し、塩基配列を決定した(配列番号17)。得られた配列の相同性解析を、MicroSeq Bacterial 500 Library v.0023 (Applied Biosystems,CA,USA)をデータベースとし、MicroSeq Microbial Identification System Software V.1.4.1.を用いて解析した。その結果、AJ110372株16S rDNA部分塩基配列と一致する既知配列は存在せず、相同率98.94%でSphingomonas yanoikuyaeの16S rDNAに対し最も高い相同性を示した。分子系統樹上でもAJ110372株の16S rDNAはSphingomonas yanoikuyaeの16S rDNAが形成するクラスター内に含まれ、AJ110372株をSphingomonas sp.と推定した。
AJ110371株のゲノムDNAよりPCRにより16S ribosomal RNA遺伝子(16S rDNA)のうち、5’末端側約500bpの領域を増幅し、塩基配列を決定した(配列番号18)。得られた配列の相同性解析を、MicroSeq Bacterial 500 Library v.0023(Applied Biosystems,CA,USA)をデータベースとし、MicroSeq Microbial Identification System Software V.1.4.1.を用いて解析した。その結果、AJ110371株16S rDNA部分塩基配列と一致する既知配列は存在せず、相同率95.21%でBurkholderia phenaziniumの16S rDNAに対し最も高い相同性を示した。分子系統樹上でもAJ110371株の16S rDNAはBurkholderiaの16S rDNAが形成するクラスター内に含まれた。また、表3に示す菌学的性質についても上記16S rDNA塩基配列解析結果と矛盾するものではなく、AJ110371株をBurkholderia sp.と推定した。
1)BARROW,(G.I.)and FELTHAM,(R.K.A):Cowan and Steel’s Manual for the Identificaation of Medical Bacteria. 3rd edition.1993,Cambridge University Press.
2)坂崎利一・吉崎悦郎・三木寛二:新細菌培地学講座・下〈第二版〉.1988,近大出版,東京.
3)細菌同定キットAPI20,NE,
(bioMerieux,France:http://www.biomerieux.fr/home_en.htm).
アルドラーゼの取得源となる微生物の培養形態は液体培養、固体培養いずれも可能であるが、工業的に有利な方法は、深部通気撹拌培養法である。栄養培地の栄養源としては、微生物培養に通常用いられる炭素源、窒素源、無機塩及びその他の微量栄養源を使用できる。使用菌株が利用できる栄養源であればすべてを使用できる。
アルドラーゼ活性を有する微生物を培養した後、菌体を遠心分離(たとえば、10,000xg、10分)により集菌する。アルドラーゼの大部分は菌体中に存在するので、この菌体を破砕、又は溶菌させることにより、アルドラーゼの可溶化を行う。菌体破砕には、超音波破砕、フレンチプレス破砕、ガラスビーズ破砕等の方法を用いることができ、また溶菌させる場合には、卵白リゾチームや、ペプチダーゼ処理又はこれらを適宜組み合わせた方法が用いられる。
このようにして、アルドラーゼ活性を有する微生物を取得し、取得された微生物からアルドラーゼ及びアルドラーゼをコードするDNAを取得することが出来る。
本発明者らは、上記スクリーニング方法により選択された、C77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)より、アルドラーゼを取得し、SpALDと命名した。前述の方法によって特定された本発明のSpALDをコードするDNAを配列表の配列番号1(CDS:塩基番号210〜1064)、SpALDのアミノ酸配列を配列番号2に示す。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性が70%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質
更に、上記(b)のタンパク質としては、以下の(c)のタンパク質も含まれる。
(c)配列番号13又は15のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2、13又は15のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(e)配列番号2、13又は15のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質
SpALD及びBuALDは、インドールピルビン酸と、ピルビン酸又はオキサロ酢酸とを反応せしめることにより、4R−IHOGを優先的に製造する反応を触媒する。
したがって、本発明のタンパク質の別の様態は、
(A)インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する活性、及び/又は、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する活性を有し、
(B)(A)記載の活性の至適pHが37℃において約7.5−8.0であり、
(C)pH8以下でpH安定性を有し、
(D)50℃以下で温度安定性を有し、かつ、
(E)ゲルろ過法により測定した分子量が約155kDaであり、SDS−PAGE法により測定したサブユニットあたりの分子量が約30kDaである
ことを特徴とするタンパク質である。
従って、本発明のタンパク質の別の態様は、
(A)インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する活性、及び/又は、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応を触媒する活性を有し、
(B)(A)記載の活性の至適pHが37℃において約6.5−7.5であり、
(C)pH8.5以下でpH安定性を有し、
(D)37℃以下で温度安定性を有し、かつ、
(E)ゲルろ過法により測定した分子量が約160kDaであり、SDS−PAGE法により測定したサブユニットあたりの分子量が約30kDaである
ことを特徴とするタンパク質である。
本発明者らは、前記(i)(ii)記載の通り、本発明者らが単離したアルドラーゼ産生菌であるSphingomonas sp. AJ110329株(C77株)より、配列表の配列番号1の塩基配列を有する本発明のアルドラーゼ遺伝子、Sphingomonas sp. AJ110372株(C43株)より、配列番号12の塩基配列を有する本発明のアルドラーゼ遺伝子、及び、Burkholderia sp. AJ110371株(C24株)より、配列番号14の塩基配列を有する本発明のアルドラーゼ遺伝子を得た。これらの遺伝子は、本発明の、インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)からIHOGを合成する反応を触媒するアルドラーゼをコードしており、本発明に含有される。
(a)配列番号1記載の塩基配列のうち、塩基番号210〜1064の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号12記載の塩基配列のうち、塩基番号399〜1253の塩基配列からなるDNA
(c)配列番号14記載の塩基配列のうち、塩基番号531〜1385の塩基配列からなるDNA
(d)配列番号1記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列、配列番号12記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号399〜1253の塩基配列、又は配列番号14記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号531〜1385の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(e)配列番号2、13又は15のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)配列番号2、13又は15のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(g)配列番号2、13又は15のいずれか記載のアミノ酸配列と70%以上相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
も本発明のDNAに含まれる。ここで、「1若しくは数個」の意義は、前記(ii)アルドラーゼの項で述べたものと同じである。
次に本発明のアルドラーゼの製造方法について説明する。本発明のアルドラーゼの製造方法としては、(i)アルドラーゼ産生菌を微生物培養することによりアルドラーゼを生成蓄積させる方法と、(ii)組み換えDNA技術によりアルドラーゼを生成する形質転換体を作成し、当該形質転換体を培養することによりアルドラーゼを生成蓄積させる方法の2つがある。(i)については、アルドラーゼ産生菌の取得方法、アルドラーゼ産生菌を微生物培養する方法として、前記(2)(i)の項で述べた。以下に、(ii)について説明する。
組み換えDNA技術を利用して酵素、生理活性物質等の有用タンパク質を製造する例は数多く知られており、組み換えDNA技術を用いることで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産できる。
先ず、本発明のアルドラーゼをコードするDNAを調製する(ステップS1)。
次に、調製したDNAをベクターDNAと接続して組み換えDNAを作製し(ステップS2)、該組み換えDNAによって細胞を形質転換して形質転換体を作製する(ステップS3)。続いて、該形質転換体を培地中で培養し、培地中及び/又は細胞中にアルドラーゼを生成蓄積させる(ステップS4)。
その後、ステップS5に進み、該酵素を回収・精製することによって精製アルドラーゼを製造する。
また、ステップS5で生産した精製アルドラーゼ又はステップS4のアルドラーゼが蓄積された培地及び/又は細胞をアルドール反応に用いることで、目的とする光学活性IHOGを大量に製造することができる(ステップS6)。
また、生産量を増大させるためには、融合タンパク遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネーターを連結することが好ましい。このターミネータとしては、T7ターミネータ、fdファージターミネータ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータ等が挙げられる。
本発明の光学活性モナティンの製造方法は、[I]光学活性IHOGの製造方法の項に記載した方法により光学活性IHOGを製造した後、当該IHOGをモナティンに変換する方法である。本発明の方法に従い生産されるIHOGは、4R−IHOGが優位に生産されているため、本発明において製造されるIHOGからは、4R体の光学活性モナティン、すなわち(2R,4R)−モナティン及び(2S,4R)−モナティンが優位に生成される(以下、(2R,4R)−モナティン及び(2S,4R)−モナティンを総称して4R−モナティンという)。
化学反応法によって光学活性IHOGから光学活性モナティンを製造する方法としては、光学活性IHOGをオキシム化し、対応する下記式(4)記載のIHOG−oxime又はその塩を化学的に還元して光学活性モナティンを生成する方法を挙げることができる。
に表されるアミン化合物又はその塩とを反応せしめることによって行う。ここに、Rがアルキル基、アリール基又はアラルキル基である場合、Rは炭素原子を1〜3有するアルキル基、又は、側鎖に置換基を有していてもよいアリール基又はアラルキル基が好ましく、結晶化の観点からより好ましくは、Rはメチル基、エチル基、ベンジル基から選択される。
酵素法によって4R−IHOGから4R−モナティンを製造する場合、4R−IHOGの2位をアミノ化する反応を触媒する酵素の存在下で4R−IHOGをアミノ化すればよい。当該反応を触媒する酵素としては、例えば4R−IHOGに対してアミノ基転移反応を触媒するアミノトランスフェラーゼ、また、4R−IHOGの還元的アミノ化反応を触媒するデヒドロゲナーゼ等を例示することができるが、アミノトランスフェラーゼを用いることがより好ましい。
アミノトランスフェラーゼを用いてモナティンを生成させる反応は、上記のアルドール縮合を行った後に生成した4R−IHOGを一旦単離精製してから行ってもよいし、アルドラーゼとアミノトランスフェラーゼを共存させて同一系内で反応を実施してもよい。同一系内で反応を実施する場合、アルドラーゼをコードするDNAとアミノトランスフェラーゼをコードするDNAを共発現する微生物を用いてもよく、また、別途酵素を調製し、反応系内に添加することでもよい。アルドラーゼをコードするDNAとアミノトランスフェラーゼをコードしているDNAを共発現する微生物(宿主細胞)は、上記したようなアルドラーゼをコードするDNAを機能的に含有する発現ベクターとアミノトランスフェラーゼをコードするDNAを機能的に含有する発現ベクターとの共形質導入やアルドラーゼをコードするDNAとアミノトランスフェラーゼをコードするDNAとを、宿主細胞内で活性を有した状態で発現し得るような形態で含有する発現ベクターによる形質転換等によって調製することができる。
移動相:40%(v/v)アセトニトリル/5mM リン酸二水素テトラブチルアンモニウム溶液
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
検出:UV210nm
また、生成したIHOGあるいはPHOGの4位の不斉の解析は、ジーエルサイエンス社製「Inertsil ODS−3」(5μm,4.6×160mm)と住化分析センター製「SUMICHIRAL OA−7100」(5μm,4.6×250mm)を順に直結したHPLC分析にて解析した。分析条件は、以下に示すとおりである。
移動相A:5%(v/v)アセトニトリル20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.8)
移動相B:50%(v/v)アセトニトリル20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.8)
0〜90分まで移動相Aで溶出し、90分〜120分まで移動相Bで溶出・洗浄
流速:0.4ml/min
カラム温度:17℃
検出:UV210nm
(2R,4R)−モナティン(以下RRモナティン)を単一炭素源とした培地を用いて集積培養を行うことにより、4R−IHOG光学選択的アルドラーゼ活性菌株を自然界より単離・取得した。
移動相:20%(v/v)アセトニトリル/0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液
流速:1ml/min
カラム温度:40℃
検出:UV 210nm
本条件により、PHOGは約9.8分に、フェニルピルビン酸は約12分の保持時間に溶出され、それぞれ分別、定量できた。
C77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)の可溶性画分からIHOGアルドラーゼの精製を以下の通り行った。アルドラーゼ活性測定は、PHOGを基質としたアルドール分解活性を以下の条件で測定した。
反応条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、0.25mM NADH、0.2mM KPi、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定。
ブイヨン平板培地で30℃、24時間培養したC77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)菌体を一白金耳かきとり、50mlの酵素生産培地(5g/l グリセロール、5g/l フマル酸、5 g/l 硫酸アンモニウム、3g/l K2HPO4、1g/l KH2PO4、0.5g/l MgSO4・7H2O、3g/l、酵母エキス、2g/l ペプトン、2.5g/l フタル酸ナトリウム、(Sigma社製)、pH6.5にKOHで調整)を含む500ml容フラスコに接種し、30℃で24時間振とう培養した。該培養液0.5mlを酵素生産培地50mlを含む500ml容フラスコ20本に接種し、30℃で24時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH(pH7.6))に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。得られた洗浄菌体を80mlのバッファーAに懸濁し、4℃で30分間超音波破砕した。破砕液を遠心分離(x8000rpm、10分間×2回)により菌体残渣を除き、得られた上清を可溶性画分とした。
上記の可溶性画分40mlをバッファーAで平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ−Sepharose FF 26/10(ファルマシア社製、CV=20ml)に供して担体に吸着させた。担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)をバッファーAを用いて洗い流した後、KCl濃度を0Mから0.7Mまで直線的に変化させて(total 140ml)吸着したタンパク質の溶出を行った。各溶出画分についてPHOGアルドラーゼ活性を検出したところ、約0.4M相当の画分にPHOGアルドラーゼ活性のピークを検出した。同様のクロマト操作を2度繰り返して実施した。
アルドラーゼ活性が検出された溶液をバッファーB(20mM Hepes−KOH、1M硫酸アンモニウム、pH7.6)に対して4℃で一晩透析し0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、バッファーBで平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP HR 16/10(ファルマシア社製)に供した。この操作によりアルドラーゼは担体に吸着した。
担体に吸着しなかった非吸着タンパク質をバッファーBを用いて洗い流した後、硫酸アンモニウム濃度を1Mから0Mまで直線的に変化させてアルドラーゼを溶出させた。得られた各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、硫酸アンモニウム濃度がおよそ0.4〜0.5Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
アルドラーゼを含む画分をそれぞれ集めて、バッファーAに対して透析し、0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、限外ろ過膜centriprep 10を用いて濃縮した。得られた濃縮液を、バッファーC(20mM Hepes−KOH,0.1M KCl,pH7.6)で平衡化されたゲルろ過Sephadex200 HP 16/60(ファルマシア社製)に供し、1ml/minの流速で溶出した。この操作によりアルドラーゼは66ml付近の画分に溶出された。活性のピークの溶出位置より、該アルドラーゼの分子量は約155kDaと見積もられた。
得られた画分を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、バッファーAで平衡化された陰イオン交換クロマトグラフィーカラム Mono−Q HR 5/5(ファルマシア社製)に供した。この操作により、アルドラーゼは担体に吸着した。バッファーAにより非吸着タンパク質を洗い流した後、KCl濃度を直線的に0mMから700mMへ変化させてタンパク質の溶出をおこなった(Total 24ml)。各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、KCl濃度が約0.4Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
得られた画分をSDS−PAGEに供したところ、活性画分には10本程度のバンドが認められた。その中で、活性プロフィールとSDS−PAGEバンド強度のプロフィールが一致する約30kDaのバンドが存在し、当該バンドをアルドラーゼの候補としてSDS−PAGEから切り出し、アミノ酸配列解析に供した。
精製したアルドラーゼ画分をSDS−PAGEに供した後、30kDaに相当するバンドを切り出し、SDS−PAGEゲル中の試料をトリプシン処理し(pH8.5、35℃、20時間)、逆相HPLCに供して断片ペプチドを分離した。分取したフラクションのうち、2つのフラクションについてそれぞれ17残基、12残基分のアミノ酸配列(配列番号3、4)を下記表6の通り決定した。
(1)染色体DNAの調製
C77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)を50mlのCM2G培地を用いて30℃で一晩培養した(前培養)。この培養液5mlを種菌として、50mlのブイヨン培地を用いて本培養を行った。対数増殖後期まで培養した後、培養液50mlを遠心分離操作(12000xg、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を用いて定法に従って染色体DNAを調製した。
決定したIHOGアルドラーゼの内部アミノ酸配列をもとに、表7記載のミックスプライマー(配列番号5、6)を合成した。
94℃ 30秒
55℃ 30秒
72℃ 1分
PCR産物をアガロースゲル電気泳動に供したところ、約200bpの断片の増幅が認められた。該DNA断片をpT7Blue (Novagen社製)にクローニングし、塩基配列を決定したところ、取得したDNA断片から推定されるアミノ酸配列が、IHOGアルドラーゼの内部アミノ酸配列と一致しており、目的のアルドラーゼ遺伝子が取得されたことが確認された。
PCRで増幅したDNA断片を用いて、サザン解析及びコロニーハイブリダイゼーションによって全長遺伝子の取得を行った。DNAプローブの作製はDIGHigh Prime(ロシュダイアグノスティック社製)を使用して、説明書通りに37℃でO/Nインキュベートしてプローブの標識を行った。サザン解析は染色体DNA 1μgを各種制限酵素で完全に消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動したのちに、ナイロンメンブレンにブロッティングし、以下マニュアルに従って行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hyb(ロシュダイアグノスティック社製)を用いて行い、50℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後にプローブを添加して、O/Nでハイブリダイゼーションさせた。バンドの検出はDIG Nucleotide Detection Kitを用いて行った。その結果、該PCR断片をプローブとして強くハイブリダイゼーションする約3.2kbpのPstI/BamHI断片を検出した。次に、このPstI/BamHI断片をコロニーハイブリダイゼーションにて取得した。染色体DNA 20μgをPstI/BamHIで処理後アガロースゲル電気泳動に供し約3.2kbpの大きさの断片を回収した。これをpUC19に連結し、E.coli JM109にてライブラリーを作製した。コロニーをナイロンメンブレンフィルター(Hybond−N、アマシャム社製)にうつし、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hybを用いて行った。フィルターをバッファー中に浸し、42℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った。その後、作成した標識プローブを添加し、42℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。SSCでの洗浄後、プローブとハイブリダイズするコロニーの検出をDIG Nucleotide Detection Kit(ロシュダイアグノスティック社製)を用いて行った。その結果、プローブと強くハイブリダイゼーションするクローンを取得した。
(1)trpプロモーター及びrrnBターミネーター搭載プラスミドpTrp4の構築
E. coli W3110染色体DNA上のtrpオペロンのプロモーター領域を表8に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(配列番号7及び配列番号8の組み合わせ)により目的遺伝子領域を増幅し、得られたDNA断片をpGEM−Teasyベクター(プロメガ製)にライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中からtrpプロモーターの方向がlacプロモーターと反対向きに挿入された目的のプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをEcoO109i/EcoRIにて処理して得られるtrpプロモーターを含むDNA断片と、pUC19(Takara製)のEcoO109i/EcoRI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、プラスミドをpTrp1と命名した。次にpKK223−3(Amersham Pharmacia製)をHindIII/HincIIにて処理し、得られたrrnBターミネーターを含むDNA断片とpTrp1のHindIII/PvuII処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、プラスミドをpTrp2と命名した。次にpTrp2を鋳型として表8に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(配列番号7及び配列番号9の組み合わせ)によりtrpプロモーター領域を増幅した。このDNA断片をEcoO109i/NdeIにより処理し、pTrp2のEcoO109i/NdeI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrp4と命名した。
表9に示すプライマー(配列番号10及び11)を用いてC77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)の染色体DNAより増幅した断片をNdeI/PstI消化し、pTrp4のNdeI/PstIサイトに挿入したプラスミドptrpSpALDを構築した。このプラスミドは配列番号1に記載の塩基配列のうち210番目のATGを翻訳開始コドンとして1064番目まで翻訳することにより得られる、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼ遺伝子を発現する。
反応条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、0.25mM NADH、0.2mM KPi、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
測定した結果、pTrp4を導入したE.coli(コントロール)においてはアルドラーゼ活性は検出されなかったのに対して、ptrpSpALD導入株においては33.6U/mg proteinのアルドラーゼ活性が検出された。これにより、SpALD高発現プラスミドの構築と併せて、確かに目的とするアルドラーゼをクローニングしたことも確認できた。
C77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)由来アルドラーゼ(SpALD)を高発現させたE.coliの可溶性画分から組み換えSpALDの精製を以下の通り行った。アルドラーゼ活性測定は、PHOGを基質としたアルドール分解活性を以下の条件で測定した。
反応条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、0.25mM NAD、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109 / ptrpSpALD菌体を一白金耳かきとり、LB−amp培地50mlを含む500ml容フラスコ10本に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH,pH7.6)に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。得られた洗浄菌体を20mlのバッファーAに懸濁し、4℃で30分間超音波破砕した。破砕液を遠心分離(x8000rpm、10分間×2回)により菌体残渣を除き、得られた上清を粗抽出画分とした。
上記の可溶性画分20mlをバッファーAで平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ−Sepharose FF 26/10(ファルマシア社製、CV=20 ml)に供して担体に吸着させた。担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)をバッファーAを用いて洗い流した後、KCl濃度を0Mから0.7Mまで直線的に変化させて(total 140ml)吸着したタンパク質の溶出を行った。各溶出画分についてPHOGアルドラーゼ活性を検出したところ、約0.4M相当の画分にPHOGアルドラーゼ活性のピークを検出した。
アルドラーゼ活性が検出された溶液をバッファーB(20mM Hepes−KOH、1M硫酸アンモニウム、pH7.6)に対して4℃で一晩透析し0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、バッファーBで平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP HR 16/10(ファルマシア社製)に供した。この操作によりアルドラーゼは担体に吸着した。
担体に吸着しなかった非吸着タンパク質をバッファーBを用いて洗い流した後、硫酸アンモニウム濃度を1Mから0Mまで直線的変化させてアルドラーゼを溶出させた。得られた各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、硫酸アンモニウム濃度がおよそ0.4〜0.5Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
アルドラーゼを含む画分をそれぞれ集めて、バッファーAに対して透析し、0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、限外ろ過膜centriprep 10を用いて濃縮した。得られた濃縮液を、バッファーC(20mM Hepes−KOH,0.1M KCl,pH7.6)で平衡化されたゲルろ過Sephadex 200 HP 16/60(ファルマシア社製)に供し、1ml/minの流速で溶出した。この操作によりアルドラーゼは66ml付近の画分に溶出された。
得られた画分を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、バッファーAで平衡化された陰イオン交換クロマトグラフィーカラムMono−Q HR 5/5(ファルマシア社製)に供した。この操作により、アルドラーゼは担体に吸着した。バッファーAにより非吸着タンパク質を洗い流した後、KCl濃度を直線的に0 mMから700mMへ変化させてタンパク質の溶出をおこなった(Total 24ml)。各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、KCl濃度が約0.4Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
実施例6にて作製したSpALDを酵素源として用いて、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸からの4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(IHOG)の合成を実施した。100mM Hepes−KOH(pH8.5)、300mM インドール−3−ピルビン酸、750mM ピルビン酸、1mM MgCl2からなる反応液にSpALDを7.9mg/mlとなるように添加し、37℃で3分間反応させた。酵素反応液を適宜希釈してHPLC分析に供し、生成したIHOGを定量した。その結果、該アルドラーゼによるIHOG生成を確認した。当該条件でのIHOG合成反応初速度は、451U/mgと見積もられた。
実施例6で調製したSpALDを用いて、以下に掲げる項目について検討した。
基本測定条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、5mM MgCl2、16U/ml Lactate dehydrogenase、30℃にて340nmの吸光度の減少を測定。
図3示す結果から、Vmax(for PHOG)=979μmol/min/mg、Km(for PHOG)=0.60mM、Km(for MgCl2)=0.034mMとそれぞれ決定した。また、KPB添加によるアルドラーゼ活性の上昇は認められなかった。
pH3〜10の範囲におけるpH安定性を測定した。測定に用いた緩衝液は以下の通り。クエン酸ナトリウムバッファー(pH3, 4, 4.5)、酢酸ナトリウムバッファー(pH4, 4.5, 5, 5.5, 6, 6.5)、リン酸カリウムバッファー(pH6, 6.5, 7, 7.5, 8, 8.5)、Hepes−KOHバッファー(pH7.5, 8, 8.5, 9, 9.5)、CAPS−NAOHバッファー(pH9, 9.5, 10)。SpALDを100 mMのそれぞれの緩衝溶液中で37℃で30分間インキュベートした残存活性を基本測定条件にて測定した。結果を図4に示す。
25℃〜70℃にて100mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)及び100mM Hepes−KOHバッファー(pH8.5)中でSpALDを30分間インキュベートした後、残存活性を基本測定条件にて測定した。結果を図5に示す。
(4)至適pH
30℃におけるPHOG分解活性を比色法で測定した(図6)。結果、PHOGアルドール分解反応の至適pHはpH7.5付近であることが明らかとなった。
また、300mM IPAと750mM ピルビン酸を基質としたIHOG合成活性をそれぞれのpHで測定した(反応条件:100mM Hepes−KOH(pH8.5),300mM IPA,750mM PA,1mM MgCl2,37℃,16h)。酵素添加区のIHOG生成量から酵素無添加区のIHOG生成量を差し引いた値を図7に示す。結果、SpALDによるIHOGアルドール縮合の至適pHはpH8.0付近であることが明らかとなった。
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109/ptrpSpALD菌体を一白金耳かきとり、50mlのLB−amp培地を含む500ml容フラスコ12本に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH,pH7.6)に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。遠心分離にて調製した菌体(湿菌体重量で約3g)を、以下の組成の反応液300mlに懸濁した。
IHOG合成反応溶液:50mM Hepes−KOH(pH8.5),300mM インドールピルビン酸,750mM ピルビン酸ナトリウム,1mM MgCl2、5mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.5),(6N KOHにてpH8.5に調整)
菌体を懸濁した反応液にアルゴンガスを通気し、以後、アルゴンガス雰囲気下で反応を実施した。反応は37℃で攪拌しながら、20時間行った。反応終了後、遠心分離により除菌してアルドール反応液300mlを得た。
実施例9で取得したアルドール反応液に、8N水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を9に保ちながら、ヒドロキシルアミン塩酸塩18.8g(270mmol)を加え、25℃にて3時間10℃にて一晩攪拌した。得られた反応液中のIHOG−oxime量をHPLC分析にて定量した。その結果、反応液中に25mmolの4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸(IHOG−oxime)が生成した。4位の不斉について分析を行ったところ、4R−IHOG−oximeが21.4mmol、4S−IHOG−oximeが3.6mmol生成しており、光学純度71.3%e.e.で4R体が優先的に生成していることを確認した。
実施例10で得た(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩5.38g(15.8mmol)を28%アンモニア水60mlに溶解し、5%ロジウム炭素(50%含水品)2.84gを加えて室温にて1MPaの水素圧で反応を行った。17時間後に触媒を濾過し(0.2ミクロンフィルター)、その濾過液に炭酸カリウム1.04g(7.5mmol)を溶解した。その溶解液を濃縮し、得られた濃縮物15.4gにエタノール20mlを加え25℃で撹拌し、更にエタノール30mlを3時間かけて滴下した後、25℃で17時間攪拌した。
1HNMR(400MHz,D2O)δ:2.06(dd,J=11.8,15.3Hz,1H),2.67(dd,J=2.0,15.2Hz,1H),3.08(d,J=14.4Hz,1H),3.28(d,J=14.4Hz,1H),3.63(dd,J=2.2,12.2Hz,1H),7.12−7.16(m,1H),7.20−7.24(m,2H),7.48−7.49(m,1H),7.71−7.73(m,1H)。
ESI−MS 計算値 C14H16N2O5=292.29,分析値291.28[M−H]-
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109/ptrpSpALD菌体を一白金耳かきとり、50mlのLB−amp培地を含む500ml容フラスコ12本に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH,pH7.6)に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。遠心分離にて調製した菌体(湿菌体重量で約3g)を、以下の組成の反応液300mlに懸濁した。
IHOG合成反応溶液:50mM リン酸バッファー(pH8.7),300mM インドールピルビン酸,600mM ピルビン酸ナトリウム,0.1mM MgCl2(6N KOHにてpH8.5に調整)
菌体を懸濁した反応液にアルゴンガスを通気し、以後、アルゴンガス雰囲気下で反応を実施した。反応は37℃で攪拌しながら、20時間行った。反応終了後、遠心分離により除菌してアルドール反応液300mlを得た。得られた反応液を実施例10と同様にオキシム化した後にHPLCにて生成IHOGを定量した。その結果、63.6mMの4R−IHOGが光学純度92.2%e.e.で生成しており、SpALDの反応条件の改善により4R選択性を向上せしめることが出来た。
実施例1にて採取し、4R−IHOG aldolase活性を見出した集積菌のうち、C24株から4R−IHOG aldolase(以下BuALD)をコードする遺伝子を取得した。また、ptrp4にbuald遺伝子を連結し、E.coli JM109で大量発現せしめた。
C24株(Burkholderia sp. AJ110371株)を50mlのCM2G培地を用いて30℃で一晩培養した(前培養)。この培養液5mlを種菌として、50mlのブイヨン培地を用いて本培養を行った。対数増殖後期まで培養した後、培養液50mlを遠心分離操作(12,000xg、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を用いて定法に従って染色体DNAを調製した。
SpALD遺伝子の全長をコードするDNA断片をプローブとして用いて、サザン解析及びコロニーハイブリダイゼーションによってbuald遺伝子の取得を行った。表9に示すプライマー(配列番号10及び11)を用いてC77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)の染色体DNAよりspald遺伝子全長をPCRによって増幅した。増幅した断片を用いたDNAプローブの作製はDIG High Prime(ロシュダイアグノスティック社製)を使用して、説明書通りに37℃でO/Nインキュベートしてプローブの標識を行った。サザン解析は、C24株から調製した染色体DNA 1μgを各種制限酵素で完全に消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動したのちに、ナイロンメンブレンにブロッティングし、以下マニュアルに従って行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hyb(ロシュダイアグノスティック社製)を用いて行い、50℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後にプローブを添加して、O/Nでハイブリダイゼーションさせた。バンドの検出はDIG Nucleotide Detection Kitを用いて行った。その結果、該PCR断片をプローブとして強くハイブリダイゼーションする約2.3 kbpのPstI/SmaI断片を検出した。次に、このPstI/SmaI断片をコロニーハイブリダイゼーションにて取得した。染色体DNA 20μgをPstI/SmaIで処理後アガロースゲル電気泳動に供し約2.3kbpの大きさの断片を回収した。これをpUC18に連結し、E.coli JM109にてライブラリーを作製した。コロニーをナイロンメンブレンフィルター(Hybond−N、アマシャム社製)にうつし、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hybを用いて行った。フィルターをバッファー中に浸し、42℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った。その後、作成した標識プローブを添加し、42℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。SSCでの洗浄後、プローブとハイブリダイズするコロニーの検出をDIG Nucleotide Detection Kit(ロシュダイアグノスティック社製)を用いて行った。その結果、プローブと強くハイブリダイゼーションするクローンを取得した。
取得したクローンより回収したプラスミドDNAの塩基配列を決定したところ、配列番号14に記載の塩基配列を有することが明らかになり、目的とするbuald遺伝子の全長を取得した。
表10に示すプライマー(配列番号19及び20)を用いてC24株(Burkholderia sp. AJ110371株)の染色体DNAより増幅した断片をNdeI/PstI消化し、pTrp4のNdeI/PstIサイトに挿入したプラスミドptrpBuALDを構築した。このプラスミドは配列番号14に記載の塩基配列のうち531番目のATGを翻訳開始コドンとして1385番目まで翻訳することにより得られる、配列番号15記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼ遺伝子を発現する。
該粗酵素液を用いてアルドラーゼ活性を測定した。アルドラーゼ活性測定は、PHOGを基質としたアルドール分解活性を以下の条件で測定した。
反応条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、0.25mM NADH、0.2mM KPi、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
測定した結果、pTrp4を導入したE.coli(コントロール)においてはアルドラーゼ活性は検出されなかったのに対して、ptrpBuALD導入株においては231U/mgproteinのアルドラーゼ活性が検出された。これにより、BuALD高発現プラスミドの構築と併せて、確かに目的とするアルドラーゼをクローニングしたことも確認できた。
C24株(Burkholderia sp. AJ110371株)由来アルドラーゼ(BuALD)を高発現させたE.coliの可溶性画分から組み換えBuALDの精製を以下の通り行った。アルドラーゼ活性測定は、PHOGを基質としたアルドール分解活性を以下の条件で測定した。
反応条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、0.25mM NAD、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109/ptrpBuALD菌体を一白金耳かきとり、LB−amp培地50 mlを含む500 ml容フラスコ10本に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH,pH7.6)に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。得られた洗浄菌体を20mlのバッファーAに懸濁し、4℃で30分間超音波破砕した。破砕液を遠心分離(x8000rpm、10分間×2回)により菌体残渣を除き、得られた上清を粗抽出画分とした。
上記の可溶性画分20mlをバッファーAで平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ−Sepharose FF 26/10(ファルマシア社製、CV=20ml)に供して担体に吸着させた。担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)をバッファーAを用いて洗い流した後、KCl濃度を0 Mから0.7Mまで直線的に変化させて(total 140ml)吸着したタンパク質の溶出を行った。各溶出画分についてPHOGアルドラーゼ活性を検出したところ、約0.35M相当の画分にPHOGアルドラーゼ活性のピークを検出した。
アルドラーゼ活性が検出された溶液をバッファーB(20mM Hepes−KOH、1M硫酸アンモニウム、pH7.6)に対して4℃で一晩透析し0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、バッファーBで平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP HR 16/10(ファルマシア社製)に供した。この操作によりアルドラーゼは担体に吸着した。
担体に吸着しなかった非吸着タンパク質をバッファーBを用いて洗い流した後、硫酸アンモニウム濃度を1Mから0Mまで直線的変化させてアルドラーゼを溶出させた。得られた各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、硫酸アンモニウム濃度がおよそ0.4〜0.5Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
アルドラーゼを含む画分をそれぞれ集めて、バッファーAに対して透析し、0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、限外ろ過膜centriprep 10を用いて濃縮した。得られた濃縮液を、バッファーC(20mM Hepes−KOH,0.1M KCl,pH7.6)で平衡化されたゲルろ過Sephadex 200 HP 16/60(ファルマシア社製)に供し、1ml/minの流速で溶出した。この操作によりアルドラーゼは66ml付近の画分に溶出された。
得られた画分を0.45μmのフィルターで濾過した。ここで得られた濾液を、バッファーAで平衡化された陰イオン交換クロマトグラフィーカラム Mono−Q HR 5/5(ファルマシア社製)に供した。この操作により、アルドラーゼは担体に吸着した。バッファーAにより非吸着タンパク質を洗い流した後、KCl濃度を直線的に0 mMから700mMへ変化させてタンパク質の溶出をおこなった(Total 24ml)。各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、KCl濃度が約0.4Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
実施例14で調製したBuALDを用いて、以下に掲げる項目について検討した。
基本測定条件:50mM Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、5mM MgCl2、16U/ml Lactate dehydrogenase、30℃にて340nmの吸光度の減少を測定。
図8−1および図8−2に示す結果から、Vmax(for PHOG)=483μmol/min/mg、Km(for PHOG)=0.66mM、Km(for MgCl2)=0.021mMとそれぞれ決定した。また、KPB添加によるアルドラーゼ活性の上昇は認められなかった。
pH3〜10の範囲におけるpH安定性を測定した。測定に用いた緩衝液は以下の通り。クエン酸ナトリウムバッファー(pH3, 4, 4.5)、酢酸ナトリウムバッファー(pH4, 4.5, 5, 5.5, 6, 6.5)、リン酸カリウムバッファー(pH6, 6.5, 7, 7.5, 8, 8.5)、Hepes−KOHバッファー(pH7.5, 8, 8.5, 9, 9.5)、CAPS−NaOHバッファー(pH9, 9.5, 10)。BuALDを100mMのそれぞれの緩衝溶液中で37℃で30分間インキュベートした残存活性を基本測定条件にて測定した。結果を図9に示す。
25℃〜70℃にて100mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)及び100mM Hepes−KOHバッファー(pH8.5)中でBuALDを30分間インキュベートした後、残存活性を基本測定条件にて測定した。結果を図10に示す。
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109/ptrpBuALDあるいはE.coli JM109/ptrpSpALD菌体を一白金耳かきとり、50mlのLB−amp培地を含む500ml容フラスコ4本にそれぞれ接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH,pH7.6)に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。遠心分離にて調製した菌体(湿菌体重量で約1g)を、以下の組成の反応液100mlに懸濁した。
IHOG合成反応溶液:50mM KPB(pH8.0),300mM インドールピルビン酸,600mM ピルビン酸ナトリウム,0.1mM MgCl2,(6N KOHにてpH8.0に調整)
菌体を懸濁した反応液にアルゴンガスを通気した後に、反応は37℃で攪拌しながら、18時間行った。反応終了後、遠心分離により除菌してアルドール反応液約100mlを得た。
取得したアルドール反応液約96mlに、6N水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を9に保ちながら、ヒドロキシルアミン塩酸塩6.25g(90mmol)を加え、25℃にて6時間,10℃にて一晩攪拌した。得られた反応液中のIHOG−oxime量をHPLC分析にて定量した。その結果、(表11)BuALD区、SpALD区ともに、4R−IHOG−oximeが優先的に生成していた。
実施例1にて採取し、4R−IHOG aldolase活性を見出した集積菌のうち、Sphingomonas sp. C43株から4R−IHOG aldolase(以下SpALD2)をコードする遺伝子を取得した。また、ptrp4にspald2遺伝子を連結し、E.coli JM109で大量発現せしめた。
C43株(Sphingomonas sp. AJ110372株)を50mlのCM2G培地を用いて30℃で一晩培養した(前培養)。この培養液5mlを種菌として、50mlのブイヨン培地を用いて本培養を行った。対数増殖後期まで培養した後、培養液50mlを遠心分離操作(12,000xg、4℃、15分間)に供し、集菌した。この菌体を用いて定法に従って染色体DNAを調製した。
SpALD遺伝子の全長をコードするDNA断片をプローブとして用いて、サザン解析及びコロニーハイブリダイゼーションによってspald2遺伝子の取得を行った。表9に示すプライマー(配列番号10及び11)を用いてC77株(Sphingomonas sp. AJ110329株)の染色体DNAよりspald遺伝子全長をPCRによって増幅した。増幅した断片を用いたDNAプローブの作製はDIG High Prime(ロシュダイアグノスティック社製)を使用して、説明書通りに37℃でO/Nインキュベートしてプローブの標識を行った。サザン解析は、C43株から調製した染色体DNA 1μgを各種制限酵素で完全に消化し、0.8%アガロースゲルで電気泳動したのちに、ナイロンメンブレンにブロッティングし、以下マニュアルに従って行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hyb(ロシュダイアグノスティック社製)を用いて行い、50℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後にプローブを添加して、O/Nでハイブリダイゼーションさせた。バンドの検出はDIG Nucleotide Detection Kitを用いて行った。その結果、該PCR断片をプローブとして強くハイブリダイゼーションする約3kbpのPstI断片を検出した。次に、このPstI断片をコロニーハイブリダイゼーションにて取得した。染色体DNA20μgをPstIで処理後アガロースゲル電気泳動に供し約3kbpの大きさの断片を回収した。これをpUC118に連結し、E.coli JM109にてライブラリーを作製した。コロニーをナイロンメンブレンフィルター(Hybond−N、アマシャム社製)にうつし、アルカリ変性、中和、固定化の処理を行った。ハイブリダイゼーションはDIG Easy Hybを用いて行った。フィルターをバッファー中に浸し、42℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った。その後、作成した標識プローブを添加し、42℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。SSCでの洗浄後、プローブとハイブリダイズするコロニーの検出をDIG Nucleotide Detection Kit(ロシュダイアグノスティック社製)を用いて行った。その結果、プローブと強くハイブリダイゼーションするクローンを取得した。
取得したクローンより回収したプラスミドDNAの塩基配列を決定したところ、配列番号12に記載の塩基配列を有することが明らかになり、目的とするspald2遺伝子の全長を取得した。
表12に示すプライマー(配列番号21及び22)を用いてSphingomonas sp. C43株の染色体DNAより増幅した断片をEcoRI/PstI消化し、pUC18のEcoRI/PstIサイトに挿入したプラスミドpUCSpALD2を構築した。このプラスミドは配列番号12に記載の塩基配列のうち399番目のATGを翻訳開始コドンとして1253番目まで翻訳することにより得られる、配列番号13記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼ遺伝子を発現する。
反応条件: Hepes−KOH(pH8.5)、2mM PHOG、0.25mM NADH、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、 3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
測定した結果、pUC18を導入したE.coli(コントロール)からはアルドラーゼ活性が検出されなかったのに対して、pUCSpALD2導入株においては0.68U/mg proteinのアルドラーゼ活性が検出された。これにより、SpALD2高発現プラスミドの構築と併せて、確かに目的とするアルドラーゼをクローニングしたことも確認できた。
LB−amp平板培地で30℃、16時間培養したE.coli JM109/pUCSpALD2菌体を一白金耳かきとり、100μg/mlアンピシリン、0.1mM IPTGを含むLB培地50ml培地を含む500ml容フラスコ4本にそれぞれ接種し、34℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes−KOH,pH7.6)に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。遠心分離にて調製した菌体(湿菌体重量で約1g)を、以下の組成の反応液100mlに懸濁した。
IHOG合成反応溶液:50mM KPB(pH8.0),300mM インドールピルビン酸,600mM ピルビン酸ナトリウム,0.1mM MgCl2,(6N KOHにてpH8.0に調整)
菌体を懸濁した反応液にアルゴンガスを通気した後に、反応は37℃で攪拌しながら、18時間行った。反応終了後、遠心分離により除菌してアルドール反応液約100mlを得た。
取得したアルドール反応液約96mlに、50%ヒドロキシルアミン水溶液5.95ml(90mmol)を加え、25℃にて6時間,10℃にて一晩攪拌した。得られた反応液中のIHOG−oxime量をHPLC分析にて定量した。その結果、4R−IHOG−oximeが3.84mmol、4S−IHOG−oximeが0.15mmol生成しており、光学純度92.4%e.e.で4R体が優先的に生成していることを確認した。
水酸化カリウム18.91g(286.5mmol、含量85重量%)を溶解した水64.45mlに、インドール−3−ピルビン酸7.50g(35.8mmol、含量97.0重量%)とオキサロ酢酸14.18g(107.4mmol)を加えて溶解させた。この混合溶液を35℃にて24時間攪拌した。
更に、3N−塩酸40.0mlを加えて中和(pH=7.0)し、153.5gの反応中和液を得た。この反応中和液には、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ケトグルタル酸が5.55g含まれており、収率53.3%(対インドールピルビン酸)であった。
この反応中和液に水を加え、168mlとし、合成吸着剤(三菱化学製 DIAION−SP207)840mlにて充填された樹脂塔(直径4.8cm)に通液した。更に、流速23.5ml毎分にて純水を通液し、1.73〜2.55(L/L−R)を収集することにより、高純度の4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ケトグルタル酸を3.04g含む水溶液を、収率54.7%(樹脂への投入量に対して)にて得た。
(NMR測定)
1H−NMR(400MHz,D2O):3.03(d,1H,J=14.6Hz),3.11(d,1H,J=14.6Hz),3.21(d,1H,J=18.1Hz),3.40(d,1H,J=18.1Hz),7.06−7.15(m,3H),7.39(d,1H,J=7.8Hz),7.66(d,1H,J=7.8Hz).
13C−NMR(100MHz,D2O):35.43,47.91,77.28,109.49,112.05,119.44,119.67,121.91,125.42, 128.41,136.21,169.78,181.43,203.58
水酸化カリウム(純度85%)13.8gを溶解した水25mlに対し、フェニルピルビン酸5.0g(30.5mmol)、オキサル酢酸12.1g(91.4mmol)を加えて室温にて72時間反応させた。濃塩酸を用いて反応液のpH値を2.2に調節し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥を行った後に、濃縮して残渣を得た。残渣を酢酸エチルとトルエンから再結晶を行い、4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸2.8g(11.3mmol)を結晶として得た。
(NMR測定)
1H NMR(D2O)δ:2.48(d,J=14.4Hz,0.18H),2.60(d,J=14.4Hz,0.18H),2.85−3.30(m,3.64H),7.17−7.36(m,5H)
(分子量測定)
ESI−MS計算値C12H12O6=252.23,分析値251.22(MH-)
1.6wt%水酸化ナトリウム水溶液917gに、インドール−3−ピルビン酸73.8g(352ミリモル)を加えて溶解した。反応溶液を35℃とし、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を11.1に保ちながら、50%ピルビン酸水溶液310.2g(1761ミリモル)を2時間かけて滴下した。更に4.5時間反応させて、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ケトグルタル酸を含有する反応溶液を得た。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を7に保ちながら、40%ヒドロキシルアミン塩酸塩水溶液367.2g(2114ミリモル)を加え、5℃にて17.5時間攪拌した。濃塩酸を用いて反応液のpH値を2にし、有機物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して残渣を得た。残渣に28%アンモニア水60mlと2−プロパノール1350mlから再結晶を行い、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の2アンモニウム塩43.4g(142ミリモル:収率40%対インドール−3−ピルビン酸)を結晶として得た。
4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩44.7g(0.131モル)を25℃で水500mlに溶解後、36%塩酸25.5gにてその水溶液のpHを2にした。酸性溶液を酢酸エチル1300mlで抽出し、その酢酸エチル溶液を飽和食塩水200mlで洗浄した。得られた酢酸エチル溶液に炭酸ナトリウム水溶液500ml(炭酸ナトリウム 13.9g 0.131モル)を加え攪拌し、アルカリ水溶液と酢酸エチルを分離した。得られたアルカリ水溶液に36%塩酸23.1gを添加し液のpHを2にした。この酸性水溶液に(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン6.99g(57.6ミリモル)を滴下し25℃にて1時間攪拌する。得られた結晶を濾過し、減圧乾燥して(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩21.8g(47.8ミリモル)を得た(収率72.7%、光学純度87.4%)。
(NMR測定)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:1.48(d,3H,J=6.8Hz),2.63(d,1H,J=14.0Hz),2.70(d,1H,J=14.0Hz),2.90(d,1H,J=14.1Hz),3.06(d,1H,J=14.1Hz),4.40(q,1H,J=6.8Hz),6.91−7.54(m,10H)。
参考例4で得られた結晶濾過液に、更に(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン7.12g(58.7ミリモル)を滴下し25℃にて1時間攪拌した。得られた結晶を濾過し、減圧乾燥して(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン塩23.8g(53.3モル)を得た(収率81.1%、光学純度92.1%)。
(1)(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩の製造
25℃にて、(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩21.8g(51.0ミリモル)に水200ml及び28%アンモニア水18.5gを加えて溶解させた後、さらにトルエン200mlを加えて攪拌した。分層して得られた水層を60℃に加温し、その水溶液に2−プロパノール900mlを2時間かけて滴下した。この2−プロパノール水溶液を10℃まで5時間かけて冷却した後、10℃で10時間攪拌した。得られた結晶を濾過し、減圧乾燥して(4S)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩14.75gを得た(収率85.1%、光学純度99.0%)。
融点;205℃(分解)
比旋光度[α]20 D+13.4(c=1.00,H2O)
(2)(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩の製造
上記参考例と同様に、(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩23.8g(53.3ミリモル)から(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩16.2gを得た(収率89.3%、光学純度99.9%)。
比旋光度[α]20 D−13.6(c=1.00,H2O)
参考例6で得た(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩13.2g(38.7ミリモル)を28%アンモニア水135mlに溶解し、5%ロジウム炭素(50%含水品)6.93gを加えて25℃にて1MPaの水素圧で反応を行った。24時間後に触媒を濾過し(0.2ミクロンフィルター)、その濾過液に炭酸カリウム2.54g(18.4ミリモル)を溶解した。その溶解液を濃縮し、得られた濃縮物32.7gに水20ml及びエタノール45mlを加え25℃で撹拌し、更にエタノール60mlを3時間かけて滴下した後、25℃で20時間攪拌し晶析を行った。得られた湿結晶9.78gを水12mlに溶解し、エタノール24mlを添加した後、更にエタノール51mlを3時間かけて滴下した。このエタノール溶液を15℃まで4時間かけて冷却した後、15℃で10時間攪拌した。得られた湿結晶7.08gを減圧乾燥し、目的とする(2R,4R)モナティンのカリウム塩5.7gを得た。
Claims (18)
- 下記(a)又は(b)
(a)配列番号2、13又は15記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は
(b)配列番号2、13又は15記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性(ここで相同性はアミノ酸残基の一致する割合を示す)が85%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質、
のいずれかに記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、
インドール−3−ピルビン酸及びピルビン酸又はオキサロ酢酸に作用させ、
光学純度70%以上の下記式(1)で示される(4R)−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(4R−IHOG)又はその塩を生成させることを特徴とする、4R−IHOG又はその塩の製造方法。
- 下記(a)又は(b)
(a)配列番号2、13又は15記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、又は
(b)配列番号2、13又は15記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性(ここで相同性はアミノ酸残基の一致する割合を示す)が85%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質、
のいずれかに記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、
インドール−3−ピルビン酸及びピルビン酸又はオキサロ酢酸に作用させ、
4R−IHOG又はその塩を優先的に生成させる第1の工程、及び、
前記第1の工程によって得られた4R−IHOG又はその塩のカルボニル基をアミノ基に変換し、光学純度90%以上の下記式(2)で示される4R−モナティン又はその塩を得る第2の工程、
を含むことを特徴とする4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 前記第2の工程において、カルボニル基のアミノ基への変換が、4R−IHOGに酵素を作用せしめてアミノ化することにより行なわれるものである、請求項2記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 前記第2の工程において、カルボニル基のアミノ基への変換が、反応液に含まれる4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、中性又はアルカリ性条件下において下記一般式(3)
で表されるアミン化合物又はその塩と反応せしめ、下記式(4)に示される4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸(IHOG−oxime)を生成させ、生成したIHOG−oxime又はその塩の4R体を晶析し、
得られた4R体のIHOG−oxime又はその塩を還元し、生成した光学純度90%以上の4R−モナティン又はその塩を採取するものである、請求項2に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 前記一般式(3)で表されるアミン化合物が、ヒドロキシルアミン、メトキシアミン、ベンジルオキシアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物である、請求項4に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 4R体のIHOG−oxime又はその塩の還元が、水素及び水素添加触媒の存在下で実施されることを特徴とする請求項4又は5に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 前記第2の工程において、晶析により(2R,4R)−モナティンを採取することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 前記第2の工程において、晶析溶媒として水、アルコール溶媒又は含水アルコール溶媒を用いることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の4R−モナティン又はその塩の製造方法。
- 前記方法に用いられるタンパク質が、スフィンゴモナス属又はバークホルデリア属細菌から選ばれる微生物に由来するタンパク質である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記微生物は、スフィンゴモナス エスピー(Sphingomonas sp.)AJ110329株又はAJ110372株、バークホルデリア エスピー(Burkholderia sp.)AJ110371株であることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
- 下記(a)〜(c)のいずれかのタンパク質。
(a)配列番号2、13又は15に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2、13又は15記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性(ここで相同性はアミノ酸残基の一致する割合を示す)が85%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列表の配列番号2、13又は15に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質 - 配列番号2記載のアミノ酸配列と少なくとも相同性(ここで相同性はアミノ酸残基の一致する割合を示す)が85%以上であって、4R−アルドラーゼ活性を有するタンパク質が、配列番号13又は15のいずれかに記載のタンパク質である、請求項11に記載のタンパク質。
- 請求項11又は12に記載のタンパク質をコードするDNA。
- 下記(d)又は(e)のDNA。
(d)配列番号1記載の塩基配列又は同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列からなるDNA
(e)配列番号1記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(ここで、ストリンジェント条件とは、90%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件を示し、相同性は塩基の一致する割合を示す。) - 配列番号1記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号210〜1064の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、アルドラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAが、(f)配列番号12記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号399〜1253の塩基配列からなるDNA、又は(g)配列番号14記載の塩基配列若しくは同配列中塩基番号531〜1385の塩基配列からなるDNAのいずれかのDNAである、請求項14に記載のDNA。
- 請求項14又は15に記載のDNAとベクターDNAを接続して得られることを特徴とする組換えDNA。
- 請求項16記載の組換えDNAによって形質転換された細胞。
- 請求項17記載の細胞を培地中で培養し、培地及び/又は細胞中にアルドラーゼ活性を有するタンパク質を蓄積させることを特徴とするアルドラーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
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