JP4604524B2 - 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法 - Google Patents

変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4604524B2
JP4604524B2 JP2004075256A JP2004075256A JP4604524B2 JP 4604524 B2 JP4604524 B2 JP 4604524B2 JP 2004075256 A JP2004075256 A JP 2004075256A JP 2004075256 A JP2004075256 A JP 2004075256A JP 4604524 B2 JP4604524 B2 JP 4604524B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
residue
aldolase
acid
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004075256A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005261231A5 (ja
JP2005261231A (ja
Inventor
雅一 杉山
立己 柏木
健一 森
榮一郎 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Priority to JP2004075256A priority Critical patent/JP4604524B2/ja
Priority to US11/080,628 priority patent/US7432100B2/en
Publication of JP2005261231A publication Critical patent/JP2005261231A/ja
Publication of JP2005261231A5 publication Critical patent/JP2005261231A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4604524B2 publication Critical patent/JP4604524B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P17/00Preparation of heterocyclic carbon compounds with only O, N, S, Se or Te as ring hetero atoms
    • C12P17/10Nitrogen as only ring hetero atom
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/88Lyases (4.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2299/00Coordinates from 3D structures of peptides, e.g. proteins or enzymes

Description

本発明は、モナティンの前駆体である4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を4R体または4S体選択的に生成する変異型アルドラーゼ、およびこれを用いた光学活性IHOGの製造方法、ならびに光学活性モナティンの製造方法に関する。
下記構造式で示される4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−グルタミン酸(3−(1−アミノ−1,3−ジカルボキシ−3−ヒドロキシ−ブタン−4−イル)−インドール)(以下、「モナティン」と称する。)は、植物シュレロチトン イリシホリアス(Schlerochitom ilicifolius)の根に含有され、甘味強度が著しく高いことから、特に低カロリー甘味料として期待される化合物である(特開昭64−25757号公報参照)。
Figure 0004604524
上記モナティンは2つの不斉(2位、4位)が存在し、天然に存在する立体異性体は、(2S,4S)体と報告されていた。その他に3種の立体異性体の存在が確認され、何れもショ糖の数十倍から数千倍の甘味強度を有することが確かめられている(表1)。
Figure 0004604524
表1に示すように、(2S,4S)−モナティンのみならず、その他の立体異性体の何れもがそれぞれ高倍率の甘味度を有しているが、特に、(2R,4R)−モナティンは甘味度がショ糖の2700倍と著しく高く、甘味剤或いは甘味剤成分(甘味料)として最も期待される異性体である。従って、(2R,4R)−モナティンを効率的に生成する方法の開発が望まれる。
本発明者らは、試薬として購入可能であるインドールピルビン酸とピルビン酸とを用いて、下記の反応(a)および(b)からなる新たなモナティンの合成方法を開発した(特許文献1)。
(a) インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)のアルドール縮合により前駆体ケト酸(4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸:IHOG)を合成する反応工程
(b) IHOGの2位をアミノ化する反応工程
Figure 0004604524
特許文献1は、上記モナティンの合成ルートにおける(a)のアルドール縮合反応について、インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)から前駆体ケト酸(IHOG)を生成することができる酵素として、Pseudomonas taetrolensおよびPseudomonas coronafaciens由来のアルドラーゼを開示している。これらのアルドラーゼは、IHOG以外にも、4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(PHOG)等のケト酸を生成する反応を触媒することが分かっている。
IHOGには4R体と4S体の2つの異性体が存在するが、最も甘味度の高い異性体である(2R,4R)−モナティンを効率的に生成するためには、上記モナティンの合成ルートにおける(a)のアルドール縮合反応において、4R−IHOGを優先的に生成させ、4R体リッチなIHOGを得ることが望ましい。また、キラル分子は、異性体ごとに異なる生理活性を示すことが多々あるが、IHOGについても異性体ごとに異なる性質を有している可能性があり、4R体と4S体を作り分けることにより、モナティンの前駆体以外の他の用途に利用することも考えられる。したがって、4R−IHOG、4S−IHOGのうち一方の異性体を優先的に生成する方法の開発は、工業上極めて有用である。
国際公開第03/056026号パンフレット 国際公開第04/018672号パンフレット
しかしながら、従来の化学合成系では、生成するIHOGは、4R体と4S体の混合物(ラセミ体)であった。また、本発明者らはIHOGの合成に好適なアルドラーゼとして、Pseudomonas taetrolens由来のアルドラーゼを取得しているが、当該野生型アルドラーゼによって生成されるIHOGは4R体リッチではなく、反応の条件にもよるが、むしろやや4S体リッチなIHOGを生成することが明らかとなっていた。(特許文献1、特許文献2)。また、4R−IHOGを優先的に生成するアルドラーゼについては、今までのところ、報告されてない。したがって、現状では、光学活性IHOG、特に、4R体リッチなIHOGを効率的に生成する方法が確立されていない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、4R体または4S体選択的にIHOGやPHOGを生成する変異型アルドラーゼ、およびこれを用いた光学活性IHOGの製造方法、ならびに光学活性モナティンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、X線結晶構造解析によって得られたPseudomonas taetrolens ATCC4683由来のアルドラーゼ(PtALD)の構造情報に基づき、PtALDの活性中心近傍において、生成物(IHOG、PHOG)の4位のキラリティーに関与する部位を見出し、この特定部位のアミノ酸残基を置換することにより、光学選択性を改変したアルドラーゼが得られることを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明の変異型アルドラーゼは、4R体または4S体のいずれか一方の異性体を優先的に生成するように改変を施されていることを特徴とする。なお、本願明細書において、「光学選択性」とは、4R体または4S体のいずれか一方の異性体を優先的に生成させることにより光学活性な生成物を生成する性質を意味し、「4R体選択性」とは4R体を優先的に生成させる性質を意味し、「4S体選択性」とは4S体を優先的に生成させる性質を意味する。
さらに、本発明者らは、X線結晶構造解析によって得られたPtALDの構造情報から、PtALDと同じ酵素ファミリーに属する他のアルドラーゼにおいても、相同のアミノ酸変異を施せば、IHOGを光学選択的に生成できる変異型アルドラーゼに改変しうることを見出した。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4位の不斉炭素について光学活性を有する4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4位の不斉炭素について光学活性を有する4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有するタンパク質であって、
前記タンパク質のアミノ酸配列のうち、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するシュードモナス タエトロレンス由来アルドラーゼをテンプレートタンパク質として、スレッディング法により3次構造をアラインメントした場合に、前記テンプレートタンパク質の37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基に対応するアミノ酸残基の少なくとも一つのアミノ酸残基が、前記テンプレートタンパク質のアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基に置換されており、かつ、
前記タンパク質のアミノ酸配列のホモロジースコアが前記テンプレートタンパク質との比較時にSeqFold Total Score(bit)値として100以上であることを特徴とするタンパク質。
〔2〕 〔1〕記載のタンパク質の立体構造と、前記テンプレートタンパク質の立体構造とを重ね合わせたときに、
前記テンプレートタンパク質の基質結合部位を構成する37、67、71、97、98、99、100、119、120、139、141、189、192、193、および209番目に位置するアミノ酸残基と、
当該タンパク質において、前記テンプレートタンパク質の前記基質結合部位を構成するアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基と、
の間の主鎖Cα原子の位置のずれが、根二乗平均誤差値として4Å以下となることを特徴とするタンパク質。
〔3〕 〔1〕記載のタンパク質であって、
当該タンパク質のアミノ酸配列のうち、前記テンプレートタンパク質を用いてスレッディング法により3次構造をアラインメントした場合に、前記テンプレートタンパク質の67、71、97、98、100、119、139、141、189、192、193および209番目に位置するアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基において、少なくとも1つのアミノ酸残基が、前記テンプレートタンパク質のアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基に置換されていることを特徴とするタンパク質。
〔4〕 下記(A)または(B)のアミノ酸配列を有することを特徴とする〔1〕に記載のタンパク質。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列において、下記(a)および(b)から選ばれる少なくとも1個のアミノ酸残基の置換を有するアミノ酸配列
(a)37番目のアルギニン残基から他のアミノ酸残基への置換
(b)99番目のロイシン残基から他のアミノ酸残基への置換
(B)(A)のアミノ酸配列において、37、67、71、97、98、99、100、119、120、139、141、189、192、193および209番目に位置するアミノ酸残基以外の箇所に、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列
〔5〕 前記(a)の置換は、下記(a')の置換であることを特徴とする、〔4〕記載のタンパク質。
(a')37番目のアルギニン残基からチロシン残基、トリプトファン残基、ヒスチジン残基、フェニルアラニン残基またはプロリン残基への置換
〔6〕 前記(b)の置換は、下記(b')の置換であることを特徴とする、〔4〕記載のタンパク質。
(b')99番目のロイシン残基からアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リジン残基、トリプトファン残基、チロシン残基またはグリシン残基への置換
〔7〕 インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のタンパク質。
〔8〕 インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4S体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4S体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のタンパク質。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔10〕 〔9〕に記載のポリヌクレオチドを含む組換えDNA。
〔11〕 〔10〕に記載の組換えDNAを保有する微生物。
〔12〕 〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて光学活性4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成させ、生成された光学活性4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を採取することを特徴とする光学活性4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸の製造方法。
〔13〕 〔7〕に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させ、生成された4R−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を採取することを特徴とする4R−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸の製造方法。
〔14〕 〔8〕に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4S体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させ、生成された4S−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を採取することを特徴とする4S−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸の製造方法。
〔15〕 〔7〕に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させる第1の工程、および、
前記第1の工程によって得られた4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、アミノ化することにより4R−モナティンを生成させ、生成した4R−モナティンを採取する第2の工程
を含むことを特徴とする4R−モナティンの製造方法。
〔16〕 前記第2の工程において、(2R,4R)−モナティンを優先的に生成させることを特徴とする〔15〕に記載の4R−モナティンの製造方法。
〔17〕前記第2の工程において、4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸に酵素を作用せしめてアミノ化することを特徴とする〔15〕または〔16〕に記載の4R−モナティンの製造方法。
〔18〕 〔7〕に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させることにより4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を含有する反応液を取得する第1の工程、
前記第1の工程によって得られた前記反応液に含まれる4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、中性又はアルカリ性条件下において下記一般式(1)
Figure 0004604524
(上記一般式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
で表されるアミン化合物又はその塩と反応せしめ、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸を生成させ、生成した4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸又はその塩の4R体を晶析する第2の工程、および、
得られた4R体の4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸又はその塩を還元し、生成した4R−モナティン又はその塩を採取する第3の工程を含むことを特徴とする4R−モナティンの製造方法。
〔19〕 前記一般式(1)で表されるアミン化合物が、ヒドロキシルアミン、メトキシアミン、ベンジルオキシアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物である、〔18〕に記載の4R−モナティンの製造方法。
〔20〕 前記第3の工程において、水素及び水素添加触媒の存在下で、還元を実施することを特徴とする〔18〕または〔19〕に記載の4R−モナティンの製造方法。
〔21〕 前記第3の工程において、晶析により(2R,4R)−モナティンを採取することを特徴とする〔18〕〜〔20〕のいずれか一項に記載の4R−モナティンの製造方法。
〔22〕 前記第2の工程において、晶析溶媒として水、アルコール溶媒又は含水アルコール溶媒を用いることを特徴とする〔18〕〜〔21〕のいずれか一項に記載の4R−モナティンの製造方法。
〔23〕 〔8〕に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4S体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させる第1の工程、および、
前記第1の工程によって得られた4S体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、アミノ化することにより4S−モナティンを生成させ、生成した4S−モナティンを採取する第2の工程
を含むことを特徴とする4S−モナティンの製造方法。
〔24〕 アルドラーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸残基の一部を置換することによって、アルドラーゼ活性が改変された変異型アルドラーゼを作成する変異型アルドラーゼの作成方法であって、
前記アルドラーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列のうち、配列番号2記載のアミノ酸配列を有するシュードモナス タエトロレンス由来アルドラーゼをテンプレートタンパク質として、スレッディング法により3次構造をアラインメントした場合に、前記テンプレートタンパク質中の37、67、71、97、98、99、100、119、139、141、189、192、193、209番目に位置するアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基のうち、少なくとも1箇所のアミノ酸残基において、アミノ酸の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を導入することを特徴とする変異型アルドラーゼの作成方法。
本発明の変異型アルドラーゼを用いることにより、インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)から光学活性IHOGを生成でき、また、生成した光学活性IHOGをアミノ化することにより光学活性モナティンを生成できる。
本発明の変異型アルドラーゼは、アルドール縮合反応の段階における効率的な不斉導入をはじめて可能とするものであり、本発明のアルドラーゼを用いることにより、4R−IHOG、4S−IHOGの一方を目的に応じて優先的に生成させることができる。
また、モナティンの合成ルートにおける(b)のアミノ化反応工程においては、アミノトランスフェラーゼなどの酵素を作用させて反応を行う場合は、4S−IHOGは4R−IHOGに対して拮抗阻害的に作用していると考えられるため、(a)のアルドール縮合反応で4R−IHOGを優先的に生成し、副生する4S−IHOGを削減できれば、目的とする(2R,4R)−モナティンの収率を向上させることができる。
また、従来は、ラセミ体のIHOG(4R、4S−IHOG)から4R体を単離しようとする場合、4R、4S−IHOGをオキシム化した後、キラルアミンを作用させて4R−IHOG−oximeを晶析する必要があった。これに対し、本発明によれば、アルドール縮合反応の段階で4R体リッチなIHOGを生成させることができるため、晶析の際、キラルアミンを用いて光学分割する必要がなく、オキシム化後、そのまま4R−IHOG−oximeを晶析させることができる。したがって、4R−IHOGの精製処理プロセスを軽減することが可能となる。
PtALDは、前述したようにPseudomonas taetrolens ATCC4683株から取得されたアルドラーゼである。野生型PtALD遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示し、野生型PtALDのアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。配列表の配列番号2は、配列表の配列番号1記載の塩基配列のうち、塩基番号456〜1118の塩基配列がコードするPtALDのアミノ酸配列である。本願明細書においては、PtALDのアミノ酸残基の位置を規定する際には、配列表配列番号2に記載アミノ酸配列を基準とすることとする。
本発明者らの研究により、PtALDは、インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)からアルドール縮合により4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(IHOG)を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸から4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸(PHOG)を生成する反応を触媒することが分かっている。
野生型のPtALDを用いてIHOGを生成させた場合、反応の条件にもよるが、得られるIHOGはややS体リッチとなる傾向がある。S−IHOGとR−IHOGの生成比は、基質濃度、その他の反応条件によって異なるため、一概には規定することができないが、例えば、50 mM のインドール−3−ピルビン酸と250mMのピルビン酸を基質とした反応条件では、PtALDはS−IHOGとR−IHOGを約65:35の比で生成することが確認されている(実施例3参照)。
また、野生型のPtALDを用いてPHOGを生成させた場合、得られるPHOGは、R体とS体の比がほぼ50:50となることが確認されている(実施例3参照)。
本発明者らは、野生型のPtALDの立体構造を解析することにより、PtALDの活性部位を構成するアミノ酸残基を明らかにし、さらに、生成物(IHOG、PHOG)の4位のキラリティーに関与しているアミノ酸残基を特定した。そしてこのようなアミノ酸残基に部位特異的な変異を導入することにより、変異型アルドラーゼを得ることに成功した。
さらに、解析したPtALDの構造情報から、PtALDと同じ酵素ファミリーに属する他のアルドラーゼにおいても、相同のアミノ酸変異を施せば、IHOGを光学選択的に生成できる変異型アルドラーゼに改変しうることを見出した。
以下、本発明の実施形態について下記の順に説明する。
〔I〕野生型PtALDの立体構造
〔II〕変異型アルドラーゼ
(A)変異型アルドラーゼのアミノ酸配列
(B)変異型アルドラーゼの製造方法
〔III〕光学活性IHOGの製造方法
〔IV〕光学活性モナティンの製造方法
〔I〕野生型PtALDの立体構造
X線結晶構造解析によるタンパク質立体構造の決定は、以下の(1)〜(3)の手順で行う。
(1)タンパク質を結晶化する。結晶化は、立体構造決定のためには欠かせないが、それ以外にも、タンパク質の高純度の精製法、高密度でプロテアーゼ抵抗性の強い安定な保存法として産業上有用である。
(2)作製した結晶にX線を照射して回折データを収集する。なお、タンパク質結晶はX線照射によりダメージを受け回折能が劣化するケースが多々あるが、その場合、結晶を急激に−173℃程度に冷却し、その状態で回折データを収集する低温測定技術が最近普及している。なお、最終的に、構造決定に利用する高分解能データを収集するために、輝度の高いシンクロトロン放射光が利用される。
(3)結晶構造解析を行うには、回折データに加えて、位相情報が必要になる。PtALDは、類縁のタンパク質の結晶構造が未知であるため、重原子同型置換法により位相問題が解決されなくてはならない。重原子同型置換法は、水銀や白金等原子番号が大きな金属原子を結晶に導入し、金属原子の大きなX線散乱能のX線回折データへの寄与を利用して位相情報を得る方法である。決定された位相は、結晶中の溶媒領域の電子密度を平滑化することにより改善することが可能である。溶媒領域の水分子は揺らぎが大きいために電子密度がほとんど観測されないので、この領域の電子密度を0に近似することにより、真の電子密度に近づくことができ、ひいては位相が改善される。このようにして改善された位相を用いて計算した電子密度図にタンパク質のモデルをフィットさせる。このプロセスは、コンピューターグラフィックス上で、Accelrys社(アメリカ)のQUANTA等のプログラムを用いて行うことができる。この後、Accelrys社のCNX等のプログラムを用いて、構造精密化を行い、構造解析は完了する。重原子同型置換法によりタンパク質自身の結晶(ネイティヴ結晶)の構造が決定されれば、そのタンパク質に基質等を結合させた複合体の結晶構造は、ネイティヴ結晶構造を利用した分子置換法や差フーリエ法により、比較的容易に決定できる。
本発明者らは、大腸菌に大量発現させたPtALDを用いて結晶化を行い、構造解析に適した結晶を得た(実施例9)。そしてその結晶を用いて重原子同型置換法による構造解析を行い、PtALDの立体構造を得ることに成功した(実施例10)。更に、本発明の目的生成物の1つであるPHOG及び、もう1つの目的生成物であるIHOGの類縁化合物である4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸(IHOG−oxime)とPtALDの複合体についても結晶化を行い(実施例9)、さらにX線構造解析も実施して、その立体構造を決定した(実施例11、12)。
図1は、本発明で解明されたネイティヴ結晶におけるPtALDの立体構造を、リボンモデルで表した図である。図1においては、α−へリックスとβ−シートを、それぞれ、らせんを巻いたリボンと伸長したリボンで示した。
PtALD単分子は、図1に示すように、勾玉状の外形をしており、N末端側が勾玉の頭部を、C末端側が勾玉の尾部を形成している。実際には、この単分子が6個のサブユニットとして会合した6量体を形成して、アルドラーゼとしての機能をはたす。PHOG複合体結晶構造、IHOG−oxime複合体結晶構造における、6量体のリボンモデルを図2、図3に示す。両図においては、それぞれPHOG、IHOG−oximeをスペースフィリングモデルで示した。PtALD 6量体は、直径約80Å、高さ約75Åの円柱状の形をしている。3回回転軸によって関係付けられたサブユニットからなる3量体2つが、2回回転軸によって関係付けられることにより、6量体が形成されている。この2つの3量体サブユニットのうち、一方のサブユニットをサブユニット甲とし、もう一方のサブユニットをサブユニット乙とすると、サブユニット甲を構成する3個のPtALD単分子における頭部が、当該サブユニット甲と対峙するサブユニット乙においての対応するPtALD単分子の尾部と相互作用しており、その相互作用部位にPHOG、IHOG−oximeが結合している。また図4は、PtALDのネイティヴ結晶構造における6量体に関して、円柱の軸方向から見て、その表面の凹凸を示した図である。電荷を持つ領域は濃い色で、電荷を持たない領域は薄い色で、表示されている。
PtALDにおける、PHOG、IHOG−oxime結合部位周辺の拡大図を、ボール・アンド・スティック・モデルで、図5〜図7に示す。図5はネイティヴ結晶構造、図6はPHOG複合体結晶構造、図7はIHOG−oxime複合体結晶構造における、基質結合部位周辺の拡大図である。なお、図5〜図7においては、PtALDは基質結合部位を構成する15個のアミノ酸残基のみを表示している。また、図6でPtALDに結合しているのは4R体のPHOGであり、図7でPtALDに結合しているのは4R体のIHOG−oximeである。ネイティヴ結晶においては、結晶化時に沈殿剤として用いたリン酸イオンが、両複合体結晶構造においては、それぞれ、4R-PHOG、4R-IHOG−oximeが結合している。両分子の周囲4Å以内には、Arg37、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Leu99、Ile100、Arg119、Asp120、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209の15個の残基が存在している。そのうち、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Leu99、Ile100、Arg119、Asp120、Pro139、Lys141の10残基が、サブユニット甲由来であり、残りの5残基(Arg37、His189、His192、Glu193、Trp209)が、サブユニット乙由来である。従って、基質構成部位を構成する上記15個のアミノ酸と立体構造を重ね合わせた場合に対応するアミノ酸間の主鎖Cα原子の位置のずれが、根二乗平均誤差値として約4Å以内にあるタンパク質は、PtALDと同様に、4R-PHOG及び4R-IHOG−oximeとの結合活性を有するアルドラーゼであることが合理的に推測できる。これらの内Asp120は、他の残基に改変すると、酵素活性が完全に失われることがある(実施例3)。したがって、Asp120にはアミノ酸残基の置換を導入しないことが好ましい。
上述したアミノ酸残基は、水素結合、静電相互作用(塩橋)、疎水性相互作用、π−π相互作用(芳香環の環電流が発生する磁場同士の相互作用)、CH/π相互作用(芳香環の環電流とメチル基の電子が発生する磁場の相互作用)等を介して、PHOGやIHOG−oximeを捕捉している。従って、本複合体構造を良く観察し、これらのアミノ酸残基に対して適切な改変を設計すれば、4R体または4S体選択的にPHOGやIHOGを生成する変異体酵素や、PHOGやIHOGの生成能の改善された変異体酵素を創出することが可能である。
例えば、複合体結晶構造中では、4R−PHOG、4R−IHOG−oximeの4位カルボキシル基の2つの酸素原子は、一方がArg37のNη1原子と水素結合或は塩橋を形成しており、もう一方がAsn67 Nδ、Tyr71 Oη、Lys141 Nζと水素結合(Lys141のNζの場合は塩橋の可能性もあり)を形成している。基質であるフェニルピルビン酸やインドールピルビン酸がR体の生成物を生成する配置(プロR配置)で結合したときも、そのカルボキシル基は、PtALDと上記のような相互作用を形成し得ると期待される。それに対して、4S−PHOGや4S−IHOGが結合する場合には、4位のカルボキシル基と水酸基の位置関係が逆になる。その場合には、Arg37のNη1原子と4位カルボキシル基の間の相互作用は残存するが、Asn67 Nδ、Tyr71 Oη、Lys141 Nζとカルボキシル基の間の相互作用は消失すると考えられる。また水酸基の酸素原子は、Asn67 Nδ、Tyr71 Oη、Lys141 Nζの方を向くが、カルボキシル基の酸素原子ほど、これらの残基には近づけないので、水素結合等の極性の強い相互作用は形成し得ない。基質であるフェニルピルビン酸やインドールピルビン酸がS体の生成物を生成する配置(プロS配置)で本酵素と結合したときも、カルボキシル基が相互作用し得る酵素側の残基は、Arg37のみであると考えられる。従って、この37番目のArg残基に対して、プロS配置で結合した基質のカルボキシル基と水素結合相互作用が出来ないような改変を実施すれば、同配置での基質の結合が起こりにくくなる。プロR配置での基質の結合は、37番残基との相互作用が消失しても、Asn67、Tyr71、Lys141とカルボキシル基の強固な相互作用は保存し得るので、4R体の生成には影響は軽微と考えられる。結果的に4R−IHOGおよび4R−PHOGの一方を優先的に生産する改変酵素を得ることができる。
また、4R−PHOG、4R−IHOG−oximeの4位炭素原子の近傍には、丁度Arg37の反対側付近に、Leu99が存在している。このアミノ酸残基を、電荷を持ったアミノ酸に変換させることにより、フェニルピルビン酸やインドールピルビン酸のカルボキシル基との間に、静電的な反発或は吸引を生じさせしめ、両基質がプロR配置で結合するようにさせることも可能である。或は、このアミノ酸残基の側鎖の大きさを変えることにより、基質結合部位の表面形状を変化させ、両基質がプロR配置で結合するようにさせることも可能であると考えられる。
こうした変異は、Arg37およびLeu99の2残基に限られるものではなく、PHOG、IHOG−oximeを取り囲むアミノ酸残基の全てを変異導入の対象とすることができる。但し、活性に重要な働きをするAsp120を改変すると活性が失われることが予想されるので、これを除外して変異体を作成することが好ましい。
〔II〕変異型アルドラーゼ
本発明の変異型アルドラーゼは、IHOGを光学選択的に生成できるように、野生型アルドラーゼの特定のアミノ酸残基に変異を導入したものである。
上述のように、PtALDの立体構造情報を解析した結果、PtALDの基質結合部位は、Arg37、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Leu99、Ile100、Arg119、Asp120、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209の15個のアミノ酸残基によって囲まれた空間で構成されていることが分かった。すなわち、これらの15個のアミノ酸残基によって囲まれた空間が基質(インドールピルビン酸およびピルビン酸)が結合するために好適な環境を構成している。
従って、野生型アルドラーゼのアミノ酸配列において、PtALDの基質結合部位を構成する15個のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基のうち、活性に重要な働きをすると考えられるAsp120を除くいずれかのアミノ酸残基に置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を導入することにより、野生型アルドラーゼの活性を改変させることができる。ここでいうアルドラーゼ活性の改変とは、4R体または4S体選択的にPHOGやIHOGを生成する改変や、PHOGやIHOGの生成能の改変のほか、基質特異性の改変等をも含む広義の改変を意味する。
PtALDの基質結合部位を構成する15個のアミノ酸残基のうち、生成物(IHOG、PHOG)の4位のキラリティーに関与するアミノ酸残基は、Arg37およびLeu99の2つである。4R体または4S体選択的にIHOGを生成する変異型アルドラーゼは、光学活性モナティンの製造に有用であるので、以下、このような変異型アルドラーゼを中心に説明する。
(A)変異型アルドラーゼのアミノ酸配列
光学活性を有する変異型アルドラーゼを得るためには、野生型アルドラーゼのアミノ酸配列において、生成物の4位のキラリティーに関与する部位を特定し、該当部分のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換すればよい。変異を導入する対象となる野生型アルドラーゼとしては、PtALDのほか、PtALDと類似する立体構造を有する他のアルドラーゼを用いることができる。以下、変異型アルドラーゼのアミノ酸配列について、野生型アルドラーゼとして、(i)PtALDを用いる場合と、(ii)PtALD以外の他のアルドラーゼを用いる場合に分けて説明する。
(i)PtALDから変異型アルドラーゼのアミノ酸配列を決定する場合
PtALDは、配列表配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質である。PtALDの光学選択性を改変させる場合は、配列表配列番号2に記載された221個のアミノ酸残基のうち、Arg37およびLeu99の少なくとも一方のアミノ酸残基に変異を導入すればよい。すなわち、配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基のうち、少なくとも1箇所のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより、光学選択性を有する変異型アルドラーゼが得られる。
フェニルピルビン酸やインドールピルビン酸がプロS配置で結合する際の基質カルボキシル基に対して、特異的に水素結合相互作用しやすいような改変をArg37残基に実施すれば、4S-PHOGや4S-IHOGを選択的に生成させることが可能であり、また、両基質がプロS配置で結合する際の基質カルボキシル基に対して、水素結合相互作用が出来ないような改変を実施すれば、相対的にプロR配置での基質の結合が起こりやすくなり、4R-PHOGや4R-IHOGを選択的に生成させることが可能となる。例えば、プロS配置での基質の結合を起こしにくくするアミノ酸残基としては、チロシン残基、トリプトファン残基、ヒスチジン残基、フェニルアラニン残基、プロリン残基等を例示することができる。
また、Leu99については、電荷を持ったアミノ酸に変換することにより、フェニルピルビン酸やインドールピルビン酸のカルボキシル基と静電的な吸引或いは反発を生じせしめたり、或は、このアミノ酸残基の側鎖の大きさを変えて、基質結合部位の表面形状を変化させることにより、両基質がプロR配置またはプロS配置の何れかで結合し易くするようにさせることも可能である。例えば、基質をプロR配置で結合しやすくするアミノ酸残基としては、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リジン残基、トリプトファン残基、チロシン残基、グリシン残基等を例示することができる。
したがって、4R体選択的な変異型アルドラーゼを得るには、配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目のアルギニン残基からチロシン残基、トリプトファン残基、ヒスチジン残基、フェニルアラニン残基またはプロリン残基への置換を導入することが好ましい。また、99番目のロイシン残基からアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リジン残基、トリプトファン残基、チロシン残基またはグリシン残基への置換を導入することが好ましい。また、37番目のアルギニン残基と99番目のロイシン残基の両方のアミノ酸残基にこれらの置換を導入することも好ましい。
また、上述のArg37、Leu99への変異導入と併せて、基質結合部位を構成する残りのアミノ酸残基のうちAsp120を除くアミノ酸残基、すなわち、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Ile100、Arg119、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209の少なくともひとつのアミノ酸残基に、置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を導入してもよい。これら12個のアミノ酸残基は基質結合部位を構成しているため、これらの部位に変異を導入することにより、PHOGやIHOGの生成能や、基質特異性を改変することが期待できる。ただし、上記12個のアミノ酸残基に変異を導入する場合は、アルドラーゼ活性、および、Arg37、Leu99へのアミノ酸残基の置換によって得られた光学選択性を大きく損なわない範囲で行う。
また、上述のArg37、Leu99へのアミノ酸残基の置換に加え、基質結合部位を構成するアミノ酸残基以外の箇所、すなわち、Arg37、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Leu99、Ile100、Arg119、Asp120、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209以外のアミノ酸残基に、1若しくは数個の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列を有する場合であっても、アルドラーゼ活性、および、Arg37、Leu99へのアミノ酸残基の置換によって得られた光学選択性を大きく損なわない場合は、本発明の変異型アルドラーゼに該当する。
ここで、「1若しくは数個」とは、タンパク質の全体的な立体構造や、アルドラーゼ活性、および、Arg37、Leu99へのアミノ酸残基の置換によって得られた光学選択性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、1〜50個、好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜10個である。この場合、33℃、pH9の条件下で配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、とりわけ好ましくは100%以上のアルドラーゼ活性を保持していることが望ましい。
(ii)PtALD以外の他のアルドラーゼから変異型アルドラーゼのアミノ酸配列を決定する場合
以下、図8を参照しながら、PtALD以外の他のアルドラーゼに対して、X線結晶構造解析によって得られたPtALDの構造情報をもとに、PtALDと同様のアミノ酸変異を施す方法について説明する。他のアルドラーゼとしては、アルドラーゼ活性が確認されているアミノ酸配列が既知のタンパク質を用いることが好ましい。特に、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させてIHOGを生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させてPHOGを生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性が確認されているタンパク質を用いることが好ましい。
まず他のアルドラーゼとPtALDの立体構造を比較し、PtALDの立体構造との類似性を判断する(ステップS1)。
ここで、他のアルドラーゼが、PtALDと類似の立体構造を有するか否かについては、スレディング(Threading)法を用いて判定することが好ましい。スレッディング法とは、あるアミノ酸配列がどのような立体構造をとるかを、データベース中の既知の立体構造との類似性で評価し、予測する方法である(Science、第253巻、第164〜170頁(1991))。具体的には、他のアルドラーゼのアミノ酸配列をデータベース中のPtALDの立体構造に乗せて、二次構造のとり易さ等に関して、両者の適合度を定量化する目的関数を算出し、その結果を比較検討することにより、評価を行う。スレディング(Threading)法に用いるPtALDの立体構造データとしては、図9−1〜図9−26に記載のデータを用いることができる。
スレッディング法は、INSIGHT II、LIBRA等のプログラムにより実行が可能である。INSIGHT IIは、米国Accelrys社より購入できる。スレッディング法を実施するには、同プログラム中のSeqFoldモジュールを利用する。LIBRAは、インターネットを使って、そのホームページのアドレス(http://www.ddbj.nig.ac.jp/E-mail/libra/LIBRA_I.html)にアクセスして、使用することが出来る。
あるタンパク質がPtALDの立体構造と類似性を有するか否かの判定する基準としては、例えばINSIGHT II-SeqFoldを用いる場合には、スレッディング法による評価関数をすべて総合して算出した総合評価値(SeqFold Total Score (bits))を用いることが好ましい。SeqFold Total Score (bits)を算出することにより、タンパク質の立体構造が全体的に類似しているかどうかを判定することができる。プログラムSeqFoldを用いてスレッディング法を実施すると、SeqFold(LIB) P-Value、SeqFold(LIB) P-Value、SeqFold(LEN) P-Value、SeqFold(LOW) P-Value、SeqFold(High) P-Value、SeqFold Total Score (raw)、SeqFold Alignment Score (raw)等の各種の評価値が算出されるが、SeqFold Total Score (bits)は、これらの評価値をすべて総合して算出した総合評価値であり、SeqFold Total Score (bits)の値が大きいほど、対比している2つのタンパク質の立体構造の類似性が高いことを意味する。例えば、INSIGHT IIを用いてスレッディング法を実施した場合、PtALDと類似した立体構造を有するタンパク質であると判断する際の閾値としては、SeqFold Total Score (bits)の値にして、100程度が妥当と考えられる。すなわち、SeqFold Total Score (bits)が100以上であれば、PtALDの立体構造と他のアルドラーゼの立体構造が類似性を有していると判定できる。より好ましい閾値としては、SeqFold Total Scoreの値にして105以上、更に好ましくは120以上であり、特に好ましくは150以上である。
また、PtALDと他のアルドラーゼは、基質結合部位について、さらに高い類似性を有していることが好ましい。したがって、SeqFold Total Score (bits)を用いてタンパク質の立体構造の全体的な類似性を判断するのと併せて、他のアルドラーゼの立体構造が決定されている場合には、タンパク質の基質結合部位の立体構造の類似性について判断してもよい。
PtALDと他のアルドラーゼが基質結合部位について高い類似性を有するか否かは、他のアルドラーゼの立体構造とPtALDの立体構造とを重ね合わせたときに、基質結合部位を構成する15個のアミノ酸残基における主鎖Cα原子の位置のずれが、根二乗平均誤差値として所定の閾値以下となるか否かで判定することができる。基質結合部位について高い類似性を有すると判断する際の閾値としては、主鎖Cα原子の位置のずれが、根二乗平均誤差値として4Å程度が妥当である。すなわち、主鎖Cα原子の位置のずれが4Å以下であれば、PtALDと他のアルドラーゼが基質結合部位について高い類似性を有していると判定できる。具体的には、他のアルドラーゼの立体構造とPtALDの立体構造とを重ね合わせる。そして、両者の立体構造を重ね合わせたときに、PtALDの基質結合部位を構成する15個のアミノ酸残基(Arg37、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Leu99、Ile100、Arg119、Asp120、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209)と、これら15個のアミノ酸残基に対応する他のアルドラーゼ中のアミノ酸残基との間の主鎖Cα原子の位置のずれが、所定の閾値以下となるかを判断する。従って、SeqFold Total Score (bits)が所定の閾値以上であるか、又は、基質結合部位を構成する15個のアミノ酸残基における主鎖Cα原子の位置のずれが所定の閾値以下である場合に、PtALDと類似した立体構造を有するタンパク質であると判断することができる。
他のアルドラーゼがPtALDと類似の立体構造を有すると判定された場合(ステップS2 Yes)、他のアルドラーゼのアミノ酸配列において、PtALDのArg37およびLeu99に対応するアミノ酸残基を特定する(ステップS3)。PtALDのArg37およびLeu99に対応するアミノ酸残基は、そのタンパク質のアミノ酸配列について、スレッディング法によりPtALDと3次構造のアラインメントを実施することによって特定することができる。
そして、前記タンパク質に対し、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基、および、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基のうち、少なくとも一方のアミノ酸残基を置換することにより変異型アルドラーゼのアミノ酸配列を決定する(ステップS4)。ここでいうアミノ酸残基の置換は、PtALDに施すアミノ酸残基と同様の置換を適用することができる。
例えば、4R体選択性を有する変異型アルドラーゼのアミノ酸配列を得るためには、PtALDとの類似性に関して高いスコアの得られた他のアルドラーゼのアミノ酸配列において、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基を、チロシン残基、トリプトファン残基、ヒスチジン残基、フェニルアラニン残基、および、プロリン残基等のアミノ酸残基へ置換することが好ましい。また、PtALDとの類似性に関して高いスコアの得られた他のアルドラーゼのアミノ酸配列において、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基を、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リジン残基、トリプトファン残基、チロシン残基およびグリシン残基等のアミノ酸残基へ置換することが好ましい。また、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基と、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基の両方のアミノ酸残基に上述の置換を施してもよい。
本発明者らは、Pseudomonas coronafaciens、Arthrobacter keyseri、Pseudomonas ochraceae由来の3種のアルドラーゼに対して、INSIGHT IIを用いてスレッディング法を実施した結果、これらのアルドラーゼがPtALDと類似した立体構造をとっていることを見い出した(実施例13)。
Pseudomonas coronafaciens由来のアルドラーゼ(PcALD)とPtALDとのアミノ酸配列のSeqFold Total Score (bits)値は165.94である。
PcALDのアミノ酸配列を配列表配列番号23に、PcALDとPtALDとのアラインメント結果を図15に示す。図15において、上段がPcALDのアミノ酸配列、下段がPtALDのアミノ酸配列であり、両者のアミノ酸残基が一致する部分については*を付している。また、図15においては、PtALDの活性部位を構成する15個のアミノ酸残基(Arg37、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Leu99、Ile100、Arg119、Asp120、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209)について網掛けして表示している。改変するとアルドラーゼ活性が失われるおそれのあるPtALDのAsp120については、PcALDにおいてもPtALDと同じアミノ酸残基が対応していることが分かる。
PcALDにおいて、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基はArg、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基はMetである。したがって、PcALDのアミノ酸配列において、これら2個所のアミノ酸残基のうち、少なくとも一方のアミノ酸残基に置換を導入すればよい。なお、PtALDのLeu99に対応するMetについては、アミノ酸残基の種類がPtALDとは異なるが、この場合は、MetおよびLeu以外のアミノ酸残基に置換することにより、野生型PcALDの光学選択性を改変することができる。
Arthrobacter keyseri由来のアルドラーゼ(PcmE)とPtALDとのアミノ酸配列のSeqFold Total Score (bits)値は105.51である。
PcmEのアミノ酸配列を配列表配列番号24に、PtALDとのアラインメント結果を図16に示す。図16において、上段がPcmEのアミノ酸配列、下段がPtALDのアミノ酸配列であり、両者のアミノ酸残基が一致する部分については*を付している。また、図16においても、PtALDの活性部位を構成する15個のアミノ酸残基について網掛けして表示している。改変するとアルドラーゼ活性が失われるおそれのあるPtALDのAsp120については、PcmEにおいてもPtALDと同じアミノ酸残基が対応していることが分かる。
PcmEにおいて、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基はArg、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基はLeuである。したがって、PcmEのアミノ酸配列において、これら2個所のアミノ酸残基のうち、少なくとも一方のアミノ酸残基に置換を導入すれば光学選択性を付与することができる。
Pseudomonas ochraceae由来のアルドラーゼ(ProA)とPtALDとのアミノ酸配列のSeqFold Total Score (bits)値は119.85である。
ProAのアミノ酸配列を配列表配列番号25に、PtALDとのアラインメント結果を図17に示す。図17において、上段がProAのアミノ酸配列、下段がPtALDのアミノ酸配列であり、両者のアミノ酸残基が一致する部分については*を付している。また、図17においても、PtALDの活性部位を構成する15個のアミノ酸残基について網掛けして表示している。改変するとアルドラーゼ活性が失われるおそれのあるPtALDのAsp120については、ProAにおいてもPtALDと同じアミノ酸残基が対応していることが分かる。
ProAにおいて、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基はArg、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基はLeuである。したがって、ProAのアミノ酸配列において、これら2個所のアミノ酸残基のうち、少なくとも一方のアミノ酸残基に置換を導入すれば光学選択性を付与することができる。
ただし、PtALDと立体構造が類似するアルドラーゼは、PcALD、PcmE、ProAに限定されるものではなく、これ以外の菌株由来のアルドラーゼであっても、PtALDと立体構造が類似しているアルドラーゼについては、同様のアミノ酸残基の置換を導入できることは言うまでもない。
また、PtALDと立体構造が類似するアルドラーゼについて、上述したPtALDのArg37およびLeu99に対応するアミノ酸残基への変異導入と併せて、PtALDの基質結合部位を構成する残りアミノ酸残基のうちAsp120を除くアミノ酸残基、すなわち、Asn67、Tyr71、Gly97、Glu98、Ile100、Arg119、Pro139、Lys141、His189、His192、Glu193、Trp209に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基に、置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を導入してもよい。これら12個のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基は、基質結合部位を構成しているため、アミノ酸残基をPtALDとは異なるアミノ酸残基に置換することにより、PHOGやIHOGの生成能や、基質特異性を改変することが期待できる。また、これら12個のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基が、もともとPtALDとは異なるアミノ酸残基である場合は、PtALDと同じアミノ酸残基に置換してもよい。PtALDの基質結合部位を構成するアミノ酸残基のうち、PtALDとは異なるアミノ酸残基を、PtALDと同じアミノ酸残基に置換することによって、PHOGやIHOGの生成能を向上させることができる場合がある。ただし、上記12個のアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基に変異を導入する場合は、アルドラーゼ活性、および、Arg37、Leu99に対応するアミノ酸残基への置換によって得られた光学選択性を大きく損なわない範囲で行う。
また、PtALDと立体構造が類似するアルドラーゼのアミノ酸配列のうち、PtALDの基質結合部位を構成するアミノ酸残基に対応していない他のアミノ酸残基において、1若しくは数個の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列を有する場合であっても、アルドラーゼ活性、および、Arg37、Leu99に対応するアミノ酸残基への置換によって得られた光学選択性を大きく損なわない場合は、本発明の変異型アルドラーゼに該当する。
ここで、「1若しくは数個」とは、タンパク質の全体的な立体構造や、アルドラーゼ活性、および、Arg37、Leu99に対応するアミノ酸残基への置換によって得られた光学選択性を大きく損なわない範囲のものであり、具体的には、1〜50個、好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜10個である。この場合、33℃、pH9の条件下で配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、とりわけ好ましくは100%以上のアルドラーゼ活性を保持していることが望ましい。
(B)変異型アルドラーゼの製造方法
本発明の変異型アルドラーゼは、野生型アルドラーゼのアミノ酸配列をコードする遺伝子に変異を導入することによって、変異型アルドラーゼをコードする変異型遺伝子を作製し、当該変異型遺伝子を適当な宿主を用いて発現させることによって製造することができる。
また、変異型アルドラーゼを産生する変異株から取得した変異型アルドラーゼ遺伝子を適当な宿主を用いて発現させることによっても、製造することができる。
(i)野生型アルドラーゼ遺伝子の取得
PtALDを用いて変異型アルドラーゼを作成する場合、野生型アルドラーゼ遺伝子は、Pseudomonas taetrolens ATCC4683の細胞からクローニングすることができる。
また、PtALDと立体構造が類似している他のアルドラーゼから変異型アルドラーゼを作成する場合、野生型アルドラーゼ遺伝子は、当該酵素を産生する微生物等の細胞からクローニングすることができる。PtALDと立体構造が類似している他のアルドラーゼを産生する細菌の具体例としては、Pseudomonas coronafaciens、Arthrobacter keyseri、Pseudomonas ochraceaeを例示することができるが、これらに限定されるものではない。このうち、Pseudomonas coronafaciensがより好ましい。この菌株については下記の通り寄託されている。
Pseudomonas coronafaciens AJ2791株
(a)受託番号 FERM BP−8246(平成14年6月10日に寄託されたFERM P−18881より平成14年11月22日に国際寄託へ移管)
(b)受託日 2002年6月10日
(c)寄託先 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)
また、Arthrobacter keyseri及びPseudomonas ochraceaeについては下記の文献に記載の通り、アルドラーゼ活性菌であることが知られている。
Arthrobacter keyseri 12B株
(a)文献 Eaton,R.W., Plasmid-encoded phthalate catabolic pathway in Arthrobacter keyseri 12B, J. Bacteriol. 183 (12), 3689-3703 (2001)
(b)Genebank Accession Number: AF331043
Pseudomonas ochraceae NGJ1株
(a)文献 Maruyama,K., Miwa,M., Tsujii,N., Nagai,T., Tomita,N., Harada,T.,Sobajima,H. and Sugisaki,H., Cloning, sequencing, and expression of the gene encoding
4-hydroxy-4-methyl-2-oxoglutarate aldolase from Pseudomonas ochraceae NGJ1, Biosci. Biotechnol. Biochem. 65 (12), 2701-2709 (2001)
(b)Genebank Accession Number: AB050935
次に、アルドラーゼ産生菌から野生型アルドラーゼをコードするDNAを取得する方法について説明する。
野生型アルドラーゼ遺伝子の塩基配列に基づいて、30塩基対程度のDNA分子を合成する。該DNA分子を合成する方法はテトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)、1981年、22、1859頁に開示されている。また、Applied Biosystems社製のシンセサイザーを用いて該DNA分子を合成できる。
該30塩基対程度のDNA分子は、アルドラーゼをコードするDNA全長を、アルドラーゼ産生菌染色体遺伝子ライブラリーから単離する際に、プローブとして利用できる。あるいは、アルドラーゼをコードするDNAをPCR法で増幅する際に、プライマーとして利用できる。ただし、PCR法を用いて増幅されるDNAはアルドラーゼをコードするDNA全長を含んでいないので、PCR法を用いて増幅されるDNAをプローブとして用いて、アルドラーゼをコードするDNA全長をアルドラーゼ産生菌染色体遺伝子ライブラリーから単離する。
PCR法の操作については、White, T.J. et al., トレンズ ジェネティックス 5(Trends Genet. 5), 1989年、185頁等に記載されている。染色体DNAを調製する方法、さらにDNA分子をプローブとして用いて、遺伝子ライブラリーから目的とするDNA分子を単離する方法については、モレキュラー クローニング 第2版(Molecular Cloning, 2nd edition), Cold Spring Harbor press 、1989年等に記載されている。
(ii)変異型アルドラーゼ遺伝子の調製
上記のアルドラーゼ産生菌から得られる野生型アルドラーゼ遺伝子に対し、所定の部位に人為的に変異を起こさせ、変異型アルドラーゼ遺伝子を調製する。野生型PtALD遺伝子を用いて、光学選択性を有する変異型アルドラーゼ遺伝子を作製する場合、Arg37およびLeu99の少なくとも一方のアミノ酸残基を置換するように野生型PtALD遺伝子に対して人為的に変異を起こさせる。また、PtALD以外の野生型アルドラーゼ遺伝子を用いて光学選択性を有する変異型アルドラーゼ遺伝子を作製する場合は、PtALDのArg37に対応するアミノ酸残基、および、PtALDのLeu99に対応するアミノ酸残基の少なくとも一方のアミノ酸残基が置換されるように、人為的に変異を起こさせる。
DNAの目的部位に目的の変異を起こす部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., イン PCR テクノロジー(in PCR technology)、61、Erlich, H. A. Eds., Stockton press 、1989年、Carter, P., メソッド イン エンザイモロジー(Meth. in Enzymol.)、 1987年、154、 382頁)、ファージを用いる方法(Kramer,W. and Frits, H. J., メソッド イン エンザイモロジー(Meth. in Enzymol.)、1987年、154、 350頁、Kunkel, T. A. et al., メソッド イン エンザイモロジー(Meth. in Enzymol.)、 1987年、154、 367頁)などがある。
4R体選択的にIHOGを生成できるように改変された変異型アルドラーゼDNAの具体例としては、下記のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAを例示できる。
(1) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からチロシン残基へ置換したアミノ酸配列
(2) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からトリプトファン残基へ置換したアミノ酸配列
(3) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からヒスチジン残基へ置換したアミノ酸配列
(4) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からフェニルアラニン残基へ置換したアミノ酸配列
(5) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からプロリン残基へ置換したアミノ酸配列
(6) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からアスパラギン酸残基へ置換したアミノ酸配列
(7) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からグルタミン酸残基へ置換したアミノ酸配列
(8) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からリジン残基へ置換したアミノ酸配列
(9) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からトリプトファン残基へ置換したアミノ酸配列
(10) 配列番号2に示すアミノ酸配列において、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からチロシン残基へ置換したアミノ酸配列
(11)配列番号2に示すアミノ酸配列において、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からグリシン残基へ置換したアミノ酸配列
(12)配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からフェニルアラニン残基へ置換し、かつ、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からリジン残基へ置換したアミノ酸配列
(13)配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からチロシン残基へ置換し、かつ、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からリジン残基へ置換したアミノ酸配列
(14)配列番号2に示すアミノ酸配列において、37番目に位置するアミノ酸残基をアルギニン残基からトリプトファン残基へ置換し、かつ、99番目に位置するアミノ酸残基をロイシン残基からリジン残基へ置換したアミノ酸配列
上記(1)〜(14)のアミノ酸配列に基づいて、これをコードするDNAを演繹するには、DNAの塩基配列ユニバーサルコドンを採用すればよい。
また、これらの変異型アルドラーゼの基質結合部位以外の部位、すなわち、(1)〜(14)において置換した部位並びに37、67、71、97、98、99、100、119、120、139、141、189、192、193および209番目に位置するアミノ酸残基以外の部位に1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列を有し、かつ、4R体選択性を有するアルドラーゼをコードするDNAも例示できる。ここで、「1若しくは数個」の定義は、(A)変異型アルドラーゼの設計の項で説明した場合と同じである。
また、当然ながら、(1)〜(14)のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、4R体選択性を有する変異型アルドラーゼをコードするDNAも例示できる。ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%超、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件(ここでいう相同性(homology)は、比較する配列間において一致する塩基の数が最大となるような並べ方にして演算された値であることが望ましい)、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である37℃、0.1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは65℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当するに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件があげられる。ただし、(1)〜(14)のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、4R体選択性を有する変異型アルドラーゼをコードするDNAの場合、33℃、pH9の条件下で配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは100%以上のアルドラーゼ活性を保持していることが望ましい。
従って、これらの変異型アルドラーゼをコードするように、上記の部位特異的変異法により、野生型アルドラーゼ遺伝子の特定の部位において塩基の置換を行えばよい。
(iii)変異型アルドラーゼ産生菌の作製・培養
上記のようにして得られる変異型アルドラーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片は、適当なベクターに再度組換えて宿主細胞に導入させることにより、変異型アルドラーゼを発現した組換え菌を得ることができる。
尚、組換えDNA技術を利用して酵素、生理活性物質等の有用タンパク質を製造する例は数多く知られており、組換えDNA技術を用いることで、天然に微量に存在する有用タンパク質を大量生産できる。組み込まれる遺伝子としては、(ii)変異型アルドラーゼ遺伝子の調製の項で説明した遺伝子が挙げられる。
形質転換される宿主細胞としては、細菌細胞、放線菌細胞、酵母細胞、カビ細胞、植物細胞、動物細胞等を用いることができる。宿主-ベクター系が開発されている細菌細胞としてはエシェリヒア属細菌、シュードモナス属細菌、コリネバクテリウム属細菌、バチルス属細菌などが挙げられるが、好ましくはエシェリヒア・コリが用いられる。エシェリヒア・コリを用いてタンパクを大量生産する技術について数多くの知見があるためである。以下、形質転換された大腸菌を用いてアルドラーゼを製造する方法を説明する。
変異型アルドラーゼをコードするDNAを発現させるプロモーターとしては、通常大腸菌における異種タンパク生産に用いられるプロモーターを使用することができ、例えば、T7プロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、PLプロモーター等の強力なプロモーターが挙げられる。
変異型アルドラーゼを融合タンパク封入体として生産させるためには、アルドラーゼ遺伝子の上流あるいは下流に、他のタンパク、好ましくは親水性であるペプチドをコードする遺伝子を連結して、融合タンパク遺伝子とする。このような他のタンパクをコードする遺伝子としては、融合タンパクの蓄積量を増加させ、変性・再生工程後に融合タンパクの溶解性を高めるものであればよく、例えば、T7gene 10、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、インターフェロンγ遺伝子、インターロイキン−2遺伝子、プロキモシン遺伝子等が候補として挙げられる。
これらの遺伝子と変異型アルドラーゼをコードする遺伝子とを連結する際には、コドンの読み取りフレームが一致するようにする。適当な制限酵素部位で連結するか、あるいは適当な配列の合成DNAを利用すればよい。
また、生産量を増大させるためには、融合タンパク遺伝子の下流に転写終結配列であるターミネーターを連結することが好ましい。このターミネーターとしては、T7ターミネーター、fdファージターミネーター、T4ターミネーター、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネーター、大腸菌trpA遺伝子のターミネーター等が挙げられる。
変異型アルドラーゼまたは変異型アルドラーゼと他のタンパクとの融合タンパクをコードする遺伝子を大腸菌に導入するためのベクターとしては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、Col E1由来の複製開始点を有するプラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミド、あるいはその誘導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加または逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう改変とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも含む。
また、形質転換体を選別するために、該ベクターがアンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有することが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモーターを持つ発現ベクターが市販されている(pUC系(宝酒造(株)製)、pPROK系(クローンテック製)、pKK233-2(クローンテック製)ほか)。
プロモーター、変異型アルドラーゼまたは変異型アルドラーゼと他のタンパクとの融合タンパクをコードする遺伝子、ターミネーターの順に連結したDNA断片と、ベクターDNAとを連結して組換えDNAを得る。
該組換えDNAを用いて大腸菌を形質転換し、この大腸菌を培養すると、変異型アルドラーゼまたは変異型アルドラーゼと他のタンパクとの融合タンパクが発現生産される。形質転換される宿主は、異種遺伝子の発現に通常用いられる株を使用することができるが、特にエシェリヒア・コリ JM109(DE3)株、JM109株が好ましい。形質転換を行う方法、および形質転換体を選別する方法はMolecular Cloning, 2nd edition, Cold Spring Harbor press (1989)等に記載されている。
なお、本発明の変異型アルドラーゼは、上述のように野生型アルドラーゼをコードする遺伝子を直接変異させることによって得られる変異型遺伝子を発現させることによって得られるが、アルドラーゼを産生する微生物(例えばPseudonomas属)を、紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)等の通常人工突然変異に用いられている変異剤により処理し、IHOGおよびPHOGを光学選択的に生成できるようになった変異株を培養することによっても得ることができる。
次に、本発明における微生物の培養方法について説明する。ここでの用語「微生物」とは、本発明の変異型アルドラーゼを発現した遺伝子組換え細胞、および、変異型アルドラーゼを産生するようになった変異株の両方を意味する。また、ここで説明する培養条件は、微生物に変異型アルドラーゼを産生させこれを取得するための培養と、微生物を培養して変異型アルドラーゼを産生させながら同時にIHOGを生成する反応を行う場合の培養の両方に適用できる。
本発明における微生物の培養方法としては、通常この分野において用いられる培地、即ち炭素源、窒素源、無機塩類、微量金属塩類、ビタミン類等を含む培地を用いて行うことができる。
遺伝子組換え細胞を培養する場合は、ベクターの選択マーカーに対応してアンピシリン、カナマイシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール等の薬剤を適宜添加することもできる。また、ベクターに塔載されているプロモーターに合わせて、誘導剤を適量添加することによって該組換え遺伝子の発現量を上げることもできる。一例を挙げると、lacプロモーターの下流に目的とする遺伝子を連結してベクターを構築した場合は、イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.1mM〜5mMの範囲で適宜添加することも可能であり、また、この代りとしてガラクトースを終濃度0.1〜5g/dl望ましくは0.5g/dl〜2g/dl適宜添加することもできる。
培養温度は、通常、利用する微生物が生育する範囲内、即ち10〜45℃で行われるが、好ましくは20℃〜40℃、更に好ましくは25〜37℃の範囲である。また、培地のpH値については、好ましくは2〜12、より好ましくは3〜10、更に好ましくは4〜8の範囲で調節される。通気条件については、利用する微生物の生育に適した条件に設定されるが、好気条件が好ましい。培養時間については、通常12〜120時間、好ましくは24〜96時間程度である。
このように変異型アルドラーゼを発現した遺伝子組換え細胞、または、変異型アルドラーゼを産生するようになった変異株を培養することによって、菌体内や培養液中に、本発明の変異型アルドラーゼを蓄積することができる。
〔III〕光学活性IHOGの製造方法
本発明の光学活性IHOGの製造方法は、光学選択性が改変された本発明の変異型アルドラーゼを用いて、インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)のアルドール縮合によりIHOGを製造する方法である。本発明の変異型アルドラーゼを用いることにより、光学活性IHOGを生成でき、また、生成した光学活性IHOGをアミノ化することにより光学活性モナティンを生成できる。
本発明の変異型アルドラーゼは、アルドール縮合反応の段階における効率的な不斉導入を可能とするものである。従来の方法では、得られるIHOGは、4R体と4S体の混合物(ラセミ体)であったが、本発明のアルドラーゼを用いることにより、4R体および4S体の一方を、目的に応じて優先的に生成させることができるため、4R体リッチなIHOGあるいは4S体リッチなIHOGが得られる。
(2R,4R)−モナティンを効率的に生産するためには、4R−IHOGを優先的に生成させる変異型アルドラーゼを用いて、4R体リッチなIHOGを得ることが好ましい。このような変異型アルドラーゼの具体例としては、上述の(1)〜(14)のアミノ酸配列を有するアルドラーゼを例示することができる。
本発明の変異型アルドラーゼは、インドールピルビン酸とピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)のからIHOGを生成するアルドール縮合反応を触媒可能である限り本発明の変異型アルドラーゼを反応系に添加してもよいし、本発明の変異型アルドラーゼを含有する微生物を反応系に添加してもよい。
すなわち、変異型アルドラーゼを含むものであればよく、具体的には培養物、培地(培養物から菌体を除去したもの)、菌体(培養菌体、洗浄菌体のいずれも含む)、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物、前記培地および/または細胞を精製処理することにより得られるアルドラーゼ活性を有する組成物(粗酵素液、精製酵素)などを含む。例えば、変異型アルドラーゼを産生する細菌を用いて、IHOGを製造する場合、細菌を培養しながら、培養液中に直接基質を添加してもよい。また、培養液より分離された菌体、洗浄菌体、菌体を破砕あるいは溶菌させた菌体処理物を反応液中に添加してもよいし、当該菌体処理物からアルドラーゼを回収し、粗酵素液または精製酵素として反応液中に添加してもよい。すなわち、変異型アルドラーゼを含有する画分であれば、どのような形態であっても本発明のIHOGの製造方法に使用することが可能である。
本発明の変異型アルドラーゼを用いてアルドール縮合反応を進行させるには、インドールピルビン酸、ピルビン酸(ないしオキサロ酢酸)、および、本発明の変異型アルドラーゼを含む反応液を20〜50℃の適当な温度に調整し、pH6〜12に保ちつつ、30分〜5日静置、振とう、または攪拌すればよい。
IHOGの生成量を高めるには反応液中の基質濃度を上げればよいが、基質濃度などの反応条件によって生成するIHOGの光学純度が変わることもある。従って、IHOGの生成量よりも、得られるIHOGの光学純度を重視するのであれば、必要に応じて、基質濃度をコントロールしてもよい。
反応液にMg2+、Mn2+、Ni2+、Co2+などの2価のカチオンを添加することによって反応速度を向上させることもできる。コスト等の面から、好ましくはMg2+を用いることがある。
これら2価カチオンを反応液に添加する際は、反応を阻害しない限りにおいてはいずれの塩を用いてもよいが、好ましくはMgCl2、MgSO4、MnSO4等を用いることがある。これら2価カチオンの添加濃度は当該業者であれば簡単な予備検討によって決定することができるが、0.01mM〜10mM、好ましくは0.1mM〜5mM、さらに好ましくは0.1mM〜1mMの範囲で添加することができる。
〔IV〕光学活性モナティンの製造方法
本発明の光学活性モナティンの製造方法は、本発明の変異型アルドラーゼを用いて光学活性IHOGを製造した後、当該光学活性IHOGをモナティンに変換する方法である。4R−IHOGは、(2R,4R)−モナティンおよび(2S,4R)−モナティンを生成し、4S−IHOGは、(2R,4S)−モナティンおよび(2S,4S)−モナティンを生成する。
モナティンの4種の異性体のうち、最も甘味度の高い異性体である(2R,4R)−モナティンを効率的に生産するためには、4R体リッチなIHOGを用いることが好ましい。この場合、IHOGの全体量に対する4R−IHOGの割合が、55%超となることが好ましく、より好ましくは、60%超、さらに好ましくは70%超、特に好ましくは80%超である。
IHOGをモナティンに変換する方法は特に限定されず、化学反応法、酵素法等の公知の方法を用いることができる。
(i)化学反応法
化学反応法によってIHOGからモナティンを製造する方法としては、IHOGをオキシム化し、このIHOG−oximeまたはその塩を化学的に還元してモナティンを生成する方法を挙げることができる。
好ましくは、4R体リッチなIHOGをオキシム化し、この4R体リッチなIHOG−oximeを含有する溶液から晶析によって4R−IHOG−oximeまたはその塩を単離し、この4R−IHOG−oximeまたはその塩を化学的に還元して4R−モナティンを生成する。
IHOGのオキシム化は、中性又はアルカリ性条件下において、IHOGと、下記一般式(1)
Figure 0004604524
(上記一般式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
に表されるアミン化合物又はその塩とを反応せしめることによって行う。ここに、Rがアルキル基、アリール基又はアラルキル基である場合、Rは炭素原子を1〜3有するアルキル基、又は、側鎖に置換基を有していてもよいアリール基またはアラルキル基が好ましく、結晶化の観点からより好ましくは、Rはメチル基、エチル基、ベンジル基から選択される。
このオキシム化反応は、IHOGを含むアルドラーゼ反応液に、直接上記一般式(1)のアミンを添加することによって行うことができる。この4R体リッチなIHOG−oximeを含有する溶液から、4R−IHOG−oximeまたはその塩を晶析することによって、4R体を単離することができる。晶析溶媒としては、水、アルコール溶媒又は含水アルコール溶媒を用いることが好ましい。
晶析によって得られた4R−IHOG−oximeまたはその塩を還元することによって4R−モナティンを得ることができる。4R−IHOG−oximeまたはその塩の還元は、水素及び水素添加触媒の存在下で実施する。水素添加触媒としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、活性炭などの担体に、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、コバルトなどの金属触媒を担持させた金属担持触媒を用いることが好ましい。
従来は、光学活性IHOGを効率的に生成させることができなかったため、ラセミ体のIHOG(4R、4S−IHOG)から4R−IHOGを単離するには、4R、4S−IHOGをオキシム化した後、キラルアミンを作用させて4R−IHOG−oximeを晶析させる必要があった。これに対し、本発明によれば、アルドール縮合反応の段階で4R体リッチなIHOGを生成させることができるため、晶析の際、キラルアミンを用いて光学分割する必要がなく、4R体リッチなIHOGをオキシム化した後、そのまま4R−IHOG−oximeを晶析させることができる。したがって、4R−IHOGの精製処理プロセスに要するコストを軽減することが可能となる。
化学的還元法によって得られる4R−モナティンは、(2R、4R)−モナティンおよび(2S、4R)−モナティンのラセミ混合物となる。(2R、4R)−モナティンを単離する場合は、晶析によって(2R、4R)−モナティンを析出させればよい。具体的には国際公開パンフレット第03/059865号に記載の方法を用いることが出来る。
(ii)酵素法
酵素法によってIHOGからモナティンを製造する場合、IHOGの2位をアミノ化する反応を触媒する酵素の存在下でIHOGをアミノ化すればよい。当該反応を触媒する酵素としては、例えばIHOGに対してアミノ基転移反応を触媒するアミノトランスフェラーゼ、また、IHOGの還元的アミノ化反応を触媒するデヒドロゲナーゼ等を例示することができるが、アミノトランスフェラーゼを用いることがより好ましい。
アミノトランスフェラーゼを用いる場合、アミノトランスフェラーゼおよびアミノ基供与体の存在下で、IHOGを反応させることによって、モナティンを生成することができる。具体的には、国際公開パンフレット第03/056026号に記載の方法を用いることが出来る。
この際、アミノトランスフェラーゼとしてはL−アミノトランスフェラーゼおよびD−アミノトランスフェラーゼのいずれも使用することが可能である。L−アミノトランスフェラーゼを用いた場合は、IHOGの2位にL−アミノ酸のアミノ基を転移することによって2S−モナティンを選択的に生成することができる。また、D−アミノトランスフェラーゼを用いた場合は、IHOGの2位にD−アミノ酸のアミノ基を転移することによって2R−モナティンを選択的に生成することができる。したがって、甘味度の高い(2R,4R)−モナティンを選択的に生成するには、D−アミノトランスフェラーゼを用いて、4R体リッチなIHOGを反応させることが好ましい。
本発明者らの研究によれば、IHOGからモナティンを生成するアミノ化反応工程においては、アミノトランスフェラーゼなどの酵素を作用させてアミノ化反応を行う場合は、4S−IHOGは4R−IHOGに対して拮抗阻害的に作用していると考えられる。本発明の変異型アルドラーゼを用いてアルドール縮合反応を実施することにより、副生する4S−IHOGを削減することができるため、4S−IHOGの拮抗阻害作用を抑制することができ、目的とする(2R,4R)−モナティンの収率を向上させることができる。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例におけるIHOGおよびPHOGの定量はジーエルサイエンス社製「Inertsil ODS-2 」(5μm, 4.6×250mm)を利用したHPLC分析を用いて行った。分析条件は、以下に示す通りである。
移動相:40%(v/v) アセトニトリル/5 mM リン酸二水素テトラブチルアンモニウム溶液
流速:1 ml/min
カラム温度:40℃
検出:UV210nm
また、生成したIHOGあるいはPHOGの4位の不斉の解析は、ジーエルサイエンス社製「Inertsil ODS-3」(5μm, 4.6×160mm)と住化分析センター製「SUMICHIRAL OA-7100」(5μm, 4.6×250mm)を順に直結したHPLC分析にて解析した。分析条件は、以下に示すとおりである。
移動相A:5%(v/v) アセトニトリル20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.8)
移動相B:50%(v/v) アセトニトリル20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.8)
0〜90分まで移動相Aで溶出し、90分〜120分まで移動相Bで溶出・洗浄
流速:0.4 ml/min
カラム温度:17℃
検出:UV210nm
〔実施例1〕 E.coliでのIHOGアルドラーゼ(PtALD)の大量発現
(1)trpプロモーター及びrrnBターミネーター搭載プラスミドpTrp4の構築
E.coli W3110染色体DNA上のtrpオペロンのプロモーター領域を表2に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(配列番号3および4の組み合わせ)により目的遺伝子領域を増幅し、得られたDNA断片をpGEM−Teasyベクター(プロメガ製)にライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中からtrpプロモーターの方向がlacプロモーターと反対向きに挿入された目的のプラスミドを有する株を選択した。次にこのプラスミドをEcoO109i/EcoRIにて処理して得られるtrpプロモーターを含むDNA断片と、pUC19(Takara製)のEcoO109i/EcoRI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、プラスミドをpTrp1と命名した。次にpKK223−3(Amersham Pharmacia製)をHindIII/HincIIにて処理し、得られたrrnBターミネーターを含むDNA断片とpTrp1のHindIII/PvuII処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、プラスミドをpTrp2と命名した。次にpTrp2を鋳型として表2に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(配列番号3および5の組み合わせ)によりtrpプロモーター領域を増幅した。このDNA断片をEcoO109i/NdeIにより処理し、pTrp2のEcoO109i/NdeI処理物とライゲーションした。このライゲーション溶液でE.coli JM109を形質転換し、アンピシリン耐性株の中から目的のプラスミドを有する株を選択し、このプラスミドをpTrp4と命名した。
Figure 0004604524
(1)アルドラーゼ遺伝子発現プラスミドptrpPtALDの構築とE.coliでの発現
表3に示すプライマー(配列番号6および7)を用いてP. taetrolens ATCC4683染色体DNAより増幅した断片をNdeI/HINDIII消化し、pTrp4のNdeI /HindIIIサイトに挿入したプラスミドptrpPtALDを構築した。このプラスミドは配列番号1に記載の塩基配列のうち456番目のATGを翻訳開始コドンとして配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼ遺伝子を発現する。構築した発現プラスミドをE.coli JM109に導入し、形質転換体を100 μg/mlアンピシリンを含むLB培地50 mlに1白金耳接種し、37℃で16時間振盪させた。培養終了後、集菌、洗浄を行い、1mlの20mM Tris−HCl (pH7.6)に懸濁し、マルチビーズショッカー(安井器械社製)を用いて菌体を破砕した。破砕液を15000rpmで10分間遠心分離した上清を粗酵素液とした。
Figure 0004604524
該粗酵素液を用いてアルドラーゼ活性を測定した。アルドラーゼ活性測定は、PHOGを基質としたアルドール分解活性を以下の条件で測定した。
反応条件:50mM Tris−HCl (pH8.0)、2mM PHOG、0.2mM NADH、0.2mMKPi、1mM MgCl2、16U/ml lactate dehydrogenase、 3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
測定した結果、pTrp4を導入したE.coli(コントロール)においてはPHOGアルドラーゼ活性は検出されなかったのに対して、ptrpPtALD導入株においては36.0 U/mg proteinのPHOGアルドラーゼ活性が検出された。
〔実施例2〕変異型PtALDの作製
(1)変異導入プラスミドpKFPtALDの構築
PtALDへの部位特異的変異の導入は、Mutan−Super Express Km (TaKaRa製)を用いて、キット添付のプロトコール通りに行った。まず、変異導入用プラスミドpKFPtALDを構築した。表4に示すプライマー(配列番号6および8)を用いてptrpPtALDを鋳型としてtrpプロモーターからPtALDの構造遺伝子全長を含む断片をPCRにて増幅した。増幅した断片をXbaI/ HindIII消化し、pKF18−2のXbaI/ HindIIIサイトに挿入したプラスミドpKFPtALDを構築した。
Figure 0004604524
(2)PtALDへの部位特異的変異の導入
PtALDのX線結晶構造情報より、PtALDのピルビン酸結合部位と推定される部位と、基質(インドールピルビン酸、フェニルピルビン酸など)結合部位の間を向いており、酵素反応生成物の4位の不斉に影響を与えると考えられた、R37およびL99について部位特異的変異を導入した。まず、目的とする塩基置換を導入するように設計した合成オリゴDNAプライマーをそれぞれ合成した。作製した変異型酵素と変異導入に使用した合成オリゴDNAプライマーの配列を表5に示す。変異型酵素の名称についてであるが、「野生型酵素でのアミノ酸残基→残基番号→置換したアミノ酸残基」の順に表記する。例えばR37Y変異型酵素は野生型酵素の37番目のArg(R)残基をTyr(Y)残基に置換した変異型酵素であることを意味する。なお、触媒反応に必須な残基を特定するために、活性中心近傍に位置するAsp120についても変異型酵素を作製した。
Figure 0004604524
該キットの方法に従い、pKFPtALDを鋳型として変異型プラスミドを作製した。まず、合成オリゴDNAプライマーの5’末端をを以下の条件で、37℃で30分間リン酸化反応後、70℃、5分間インキュベートして反応を停止した。
10×T4 polynucleotide kinase buffer 2μl
合成オリゴDNAプライマー(100 pmol/L) 1μl
10mM ATP 2μl
T4 polynucleotide kinase 1μl
DW 14μl
リン酸化した合成オリゴDNAプライマーと添付のセレクションプライマーを用いて、以下の条件で変異型PtALD発現プラスミドを増幅した。なお、例えばpKFR37Yの作製にあたっては、pKFPtALDを鋳型として、5’末端をリン酸化したプライマーR37Yを用いてPCRを行い、得られた反応液でE.coli JM109を形質転換した。形質転換体よりプラスミドを回収して塩基配列を決定し、目的とする塩基置換が導入されていることを確認した。
94℃ 1分
55℃ 1分
72℃ 3分 ×30サイクル
なお、2重変異体の作製は、先に作製した単変異体の発現プラスミドを鋳型として、導入したいもう一方の変異導入用プライマーを用いて行った。例えばR37Y/L99K変異型酵素発現プラスミドの作製は、pKFR37Yを鋳型として5’末端をリン酸化したプライマーL99Kを用いてPCRを行った。なお、2重変異体の作製には、変異導入プラスミドの作製効率を高めるために、PCR後のDNAをメチル化DNAを認識して切断する制限酵素DpnI処理することにより、鋳型プラスミドを切断した後に、得られた反応液でE.coli JM109を形質転換した。形質転換体よりプラスミドを回収して塩基配列を決定し、目的とする塩基置換が導入されていることを確認した。
(3)変異型PtALD発現E.coliの作製
各種変異型PtALD遺伝子塔載プラスミドあるいはpKFPtALDを持つE.coli形質転換体を0.1 mg/ml アンピシリン、0.1 mMイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を含む3mlのLB培地(バクトトリプトン 1g/dl、酵母エキス 0.5g/dl、及びNaCl 1g/dl)に接種し、37℃、16時間振とう培養した。得られた培養液より集菌、洗浄し、PtALD発現E.coliを調製した。各種変異型PtALDの発現の確認は、SDS−PAGEにて行った。培養液250μlより遠心分離により集菌して得られる菌体を500μlのSDS−PAGEサンプルバッファーに懸濁して10分間煮沸させ、溶菌・変性させた。遠心分離(10,000×g、10min)により得られる上清5〜10μlをSDS−PAGEに供したところ、野生型およびすべての変異型PtALD発現プラスミド導入株にて約25kDa付近の位置に特異的に出現するバンドを認め、野生型および変異型PtALDの発現を確認した。
〔実施例3〕 変異型pKFPtALD導入E.coliを用いたIHOGおよびPHOG合成反応
実施例2にて調製した各種変異型PtALD発現E.coliを用いてIHOGおよびPHOGの生産を実施した。400μl培養液より遠心分離にて調整した菌体を以下の組成の反応液200μlにそれぞれ懸濁した。
IHOG合成反応溶液:100 mM Hepes−KOH (pH 8.5), 50 mM インドールピルビン酸, 200 mM ピルビン酸ナトリウム, 1 mM MgCl2, 5 mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.5)
PHOG合成反応溶液:100 mM Hepes−KOH (pH 8.5), 50 mM フェニルピルビン酸ナトリウム, 200 mM ピルビン酸ナトリウム, 1 mM MgCl2, 5 mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.5)
反応液を37℃で6時間インキュベートした後に、生成したIHOGあるいはPHOGを定量し、さらに反応生成物の4位の不斉についても解析した。結果を表6に示す。作製した変異型PtALD発現株において、pKFPtALD導入株(親酵素発現株)と比較して4R-IHOGあるいは4R-PHOGの選択性の向上が認められた。
なお、pKFD120A導入株については、菌体抽出液を酵素源としてPHOGを基質としたアルドール分解活性を先に示した条件で測定したが、活性は検出されず、Asp120に変異を導入することによりアルドラーゼ活性が消失することが明らかとなった。
Figure 0004604524
〔実施例4〕 変異型ptrpPtALDの構築とIHOGおよびPHOG合成反応
(1)変異型ptrpPtALDの構築と変異型PtALD発現E.coliの作製
pKFPtALDを鋳型として作製した変異型PtALD遺伝子をpTrp4に連結してpTrp4系での高発現プラスミドを作製し、これを導入した変異型PtALD高発現E.coliを用いて初発インドールピルビン酸あるいはフェニルピルビン酸濃度を300 mMに上げた条件にてIHOG合成反応を実施し、4位の不斉を解析した。
表3に示すプライマー(配列番号6および7)を用いて、実施例2で作製した各種変異型pKFPtALDのプラスミドDNAより増幅した断片をNdeI/HindIII消化し、pTrp4のNdeI /HindIIIサイトに挿入したプラスミドptrpPtALDを構築した。例えばpKFR37Yを鋳型として増幅したDNAをpTrp4に連結したR37Y高発現プラスミドをptrpR37Yとした。
構築した発現プラスミドをE.coli JM109に導入し、形質転換体を100 μg/mlアンピシリンを含むLB培地3 mlに1白金耳接種し、37℃で16時間振盪させた。各種変異型PtALDの発現の確認は、SDS−PAGEにて行った。培養液250μlより遠心分離により集菌して得られる菌体を500μlのSDS−PAGEサンプルバッファーに懸濁して10分間煮沸させ、溶菌・変性させた。遠心分離(10,000×g, 10min)により得られる上清5〜10μlをSDS−PAGEに供したところ、野生型およびすべての変異型PtALD発現プラスミド導入株にて約25kDa付近の位置に特異的に出現するバンドを認め、野生型および変異型PtALDの発現を確認した。
(2)変異型ptrpPtALD導入E.coliを用いたIHOGおよびPHOG合成反応
(1)にて調製した各種変異型ptrpPtALD導入E.coliの培養液1mlより遠心分離にて調製した菌体を、以下の組成の反応液500 μlにそれぞれ懸濁した。
IHOG合成反応溶液:100 mM Hepes−KOH (pH 8.5), 300 mM インドールピルビン酸, 750 mM ピルビン酸ナトリウム, 1 mM MgCl2, 5 mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.5), (6N KOHにてpHを調整)
PHOG合成反応溶液:100 mM Hepes−KOH (pH 8.5), 300 mM フェニルピルビン酸, 750 mM ピルビン酸ナトリウム, 1 mM MgCl2, 5 mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.5), (6N KOHにてpHを調整)
IHOG合成反応液は37℃で24時間、PHOG反応液は37℃で6時間、それぞれインキュベートした後に生成したIHOGあるいはPHOGを定量し、さらに反応生成物の4位の不斉についても解析した。結果を表7に示す。作製した変異型PtALD発現株において、ptrpPtALD導入株(親酵素発現株)と比較して4R-IHOGあるいは4R-PHOGの選択性の向上が認められた。
Figure 0004604524
〔実施例5〕 R37Y/L99K変異型アルドラーゼによるIHOG合成
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109 / ptrpR37Y/L99K菌体を一白金耳かきとり、50 mlのLB−amp培地を含む500ml容フラスコ20本に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes-KOH(pH7.6))に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。遠心分離にて調製した菌体(湿菌体重量で約5g)を、以下の組成の反応液500mlに懸濁した。
IHOG合成反応溶液:50 mM Hepes−KOH (pH 8.5), 200 mM インドールピルビン酸, 500 mM ピルビン酸ナトリウム, 1 mM MgCl2, 5 mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.5), (6N KOHにてpH 8.5に調整)
菌体を懸濁した反応液にアルゴンガスを通気し、以後、アルゴンガス雰囲気下で反応を実施した。反応は37℃で攪拌しながら、21時間行った。反応終了後、遠心分離により除菌してアルドール反応液495 mlを得た。
〔実施例6〕 アルドール反応液のオキシム化および4R-IHOG−oximeの単離
実施例5で取得したアルドール反応液に、8N水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を9に保ちながら、ヒドロキシルアミン塩酸塩27.1g(391mmol)を加え、5℃にて20時間攪拌した。得られた反応液中のIHOG−oxime量をHPLC分析にて定量した。その結果、反応液中に26mmolの4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸(IHOG−oxime)が生成した。4位の不斉について分析を行ったところ、4R−IHOG−oximeが21.3mmol、4S−IHOG−oximeが4.7mmol生成しており、e.e.=64.2%で4R体が優先的に生成していることを確認した。
濃塩酸を用いて得られた反応液のpH値を2にし、有機物を酢酸エチルで抽出した。有機層を濃縮して残渣を得た。残渣に28%アンモニア水20ml及び水15mlを添加し、2−プロパノール170mlを加えて結晶化を行い、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の2アンモニウム塩11.18g(湿重量)を結晶として得た。得られた結晶を60mlの水に溶解させた後に、2−プロパノール200mlを加えて再結晶を行った。再結晶の操作を2回実施し、4.54g (13.4mmol)のIHOG−oxime・2アンモニウム塩を得た。得られた結晶の4位の不斉について分析を行ったところ、4R体としてのe.e.値が99.7%であり、高純度の4R−IHOG−oxime・アンモニウム塩を2−プロパノールからの晶析により単離・取得することができた。
〔実施例7〕 4R-IHOG−oximeの化学的還元による4R−モナティンの生成
実施例6で得た(4R)−4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸のアンモニウム塩4.39 g(12.9mmol)を28%アンモニア水45 mlに溶解し、5%ロジウム炭素(50%含水品)2.31 gを加えて25℃にて1MPaの水素圧で反応を行った。24時間後に触媒を濾過し(0.2ミクロンフィルター)、その濾過液に炭酸カリウムを溶解した。その溶解液を濃縮し、得られた濃縮物10.9 gに水6.7 ml及びエタノール15 mlを加え25℃で撹拌し、更にエタノール20 mlを3時間かけて滴下した後。25℃で20時間攪拌した。
得られた湿結晶3.26 gを水4 mlに溶解し、エタノール8 mlを添加した後、更にエタノール17mlを3時間かけて滴下した。このエタノール溶液を15℃まで4時間かけて冷却した後、15℃で10時間攪拌した。得られた湿結晶2.36 gを減圧乾燥し、目的とする(2R,4R)−モナティンのK塩1.9 gを得た。
〔実施例8〕 Pseudomonas taetrolens ATCC4683株由来アルドラーゼの組換え酵素の精製
P. taetrolens ATCC4683由来アルドラーゼ(以下、PtALD)を高発現させたE.coliの可溶性画分から組換えPtALDの精製を以下の通り行った。アルドラーゼ活性測定は、PHOGを基質としたアルドール分解活性を以下の条件で測定した。
反応条件:50mM Tris−HCl(pH8.0)、2mM PHOG、0.2mM NAD、0.2mM Kpi、1mM MgCl2、16 U/ml lactate dehydrogenase、3μl酵素/600μl反応液、30℃、340nmの吸光度を測定
(1) 可溶性画分の調製:
LB−amp平板培地で37℃、16時間培養したE.coli JM109 / ptrpALDに菌体を一白金耳かきとり、3mlのLB−amp培地を含む試験管に接種し、37℃で16時間振とう培養した。該培養液0.5mlをLB−amp培地50mlを含む500ml容フラスコ10本に接種し、37℃で16時間振とう培養した。得られた培養液から遠心分離により集菌し、バッファーA(20mM Hepes-KOH(pH7.6))に懸濁して洗浄した後、再度遠心分離にて集菌した。得られた洗浄菌体を25mlのバッファーAに懸濁し、4℃で30分間超音波破砕した。破砕液を遠心分離(x8000rpm、10分間×2回)により菌体残渣を除き、得られた上清を粗抽出画分とした。
(2)陰イオン交換クロマトグラフィー:Q-Sepharose FF
上記の粗抽出画分23mlをバッファーAで平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラムQ-Sepharose FF 26/10(ファルマシア社製、CV=20ml)に供して担体に吸着させた。担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)をバッファーAを用いて洗い流した後、KCl濃度を0Mから0.7Mまで直線的に変化させて(total 140ml)吸着したタンパク質の溶出を行った。各溶出画分についてPHOGアルドラーゼ活性を検出したところ約0.5M相当の画分にPHOGアルドラーゼ活性のピークを検出した。
(3) 疎水性クロマトグラフィー :Phenyl Sepharose HP HR 16/10
アルドラーゼ活性が検出された溶液をバッファーB(20mM Hepes−KOH(pH7.6)、1M硫酸アンモニウム、pH7.6)に対して4℃で一晩透析し、10000rpmで10分間遠心分離した上清を0.45μmのフィルターで濾過した。得られた濾液を、バッファーBで平衡化した疎水性クロマトグラフィーカラムPhenyl Sepharose HP HR 16/10(ファルマシア社製)に供した。この操作によりアルドラーゼは担体に吸着した。
担体に吸着しなかった非吸着タンパク質をバッファーBを用いて洗い流した後、硫酸アンモニウム濃度を1Mから0Mまで直線的変化させてアルドラーゼを溶出させた。得られた各溶出画分についてアルドラーゼ活性を測定し、硫酸アンモニウム濃度がおよそ0.2Mの溶出位置にアルドラーゼ活性が認められた。
以上のカラムクロマト操作により精製した画分をSDS−PAGEに供したところ、約25kDaに相当する位置にCBB染色で単一なバンドとして検出された。取得した組換えPtALD溶液はバッファーAに対して4℃で一晩透析した。上記の操作により、350U/mlのPtALD溶液を17ml取得した。
〔実施例9〕 PtALDの結晶化
実施例8で得られたPtALDの精製酵素溶液を、限外ろ過セントリプレップ10(分画分子量10kDa)を用いて4℃で濃縮した。得られた濃縮酵素溶液(20.3 mg/ml)を用いて、ハンプトンリサーチ社のcrystal screenキットを使用して、結晶化条件を探索した。各種沈殿剤溶液2LとPtALD溶液2Lとを混合し、sitting drop蒸気拡散法により結晶化を試みた。その結果、1M ammomium phosphate, 0.1M sodium citrate (pH 5.6)を沈殿剤として4℃の条件で、2〜3日で0.1 mm×0.1 mm×1 mmの柱状晶を取得した。
また、PtALDとPHOGあるいはIHOG−oximeとの複合体での結晶を採取した。なお、PHOGおよびIHOG−oximeは、後述の参考例1および参考例2に記載の方法によって取得した。濃縮酵素溶液(20 mg/ml)2L、上記の沈殿剤溶液2L、および10mMのPHOG溶液またはIHOG−oxime/2NH3溶液1Lを混合し、sitting drop蒸気拡散法により結晶化し、4℃で2〜3日インキュベートし、共結晶を得た。
〔実施例10〕 PtALDネイティヴ結晶のX線結晶構造解析
PtALDの結晶は、常温測定では、X線損傷により結晶が劣化し、徐々に分解能が下がるため、低温条件下でのX線回折強度測定を行った。結晶を、25%のグリセロール及び1.5M リン酸アンモニウムを含む0.15Mクエン酸-ナトリウム緩衝液(pH5.6)に移した後、−173℃の窒素ガスを吹き付け、急速冷却した。文部科学省高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設のビームライン6Bに設置された(株)リガク製のX線回折装置R−AXIS V++を用いて、PtALDネイティヴ結晶のX線回折データを収集した。X線の波長は1.0Åに設定し、結晶からイメージングプレート検出器までの距離は180mmとした。1フレームのイメージングプレートに対しては振動角0.8°で120秒間露光し、150フレーム分のデータを集めた。結晶学的パラメータは、空間群がP6322、格子定数がa=94.38Å、c=111.49Åとなった。非対称単位には1個のアルドラーゼ分子が含まれており、結晶の水分含有率は60%である。結晶は1.5Å程度まで回折した。(株)リガク製のプログラムCrystalClearを用いて、データを処理した。データの質の指標であるRmergeの値は,40.0〜1.5Å分解能で0.097、最外郭シェルの1.55〜1.50Å分解能で0.260となった。データの完全率は、40.0〜1.5Å分解能で99.2%、最外郭シェルの1.55〜1.50Å分解能で99.9%となった。
続いて、重金属塩類の溶液中にPtALDの結晶を浸すことにより、重原子誘導体結晶のスクリーニングを行った。重原子に浸漬させた結晶のX線回折データも、文部科学省高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設のビームライン6Bに設置された(株)リガク製のX線回折装置R−AXIS V++を用いて測定した。1.0 mM エチル水銀チオサリシル酸(Ethylmercurithiosalicylic acid、EMTS)、1.8 M リン酸アンモニウムを含む0.18 Mクエン酸−ナトリウム緩衝液(pH5.6)中に約1日浸漬させた結晶、2.5mM HgCl2、1.8 M リン酸アンモニウムを含む0.18 Mクエン酸−ナトリウム緩衝液(pH5.6)中に約1日浸漬させた結晶の2つが、ネイティブ結晶のデータとの差パターソン図より、良好な重原子同形置換結晶となったことが判明した。EMTSの重原子同形置換結晶について、差パターソン図よりメジャーな重原子サイトを求めた後、この座標から計算される位相を用いて差フーリエ図を計算し、他の複数のマイナーな重原子サイトを決定した。これらの重原子サイトの座標や占有率を、タンパク質構造解析プログラムパッケージCCP4(Acta Crystallogr. Sect. D、第50巻、第760〜763頁(1994))に含まれる位相決定用プログラムMLPHAREにより精密化し、初期位相を算出した。同じくCCP4に含まれる位相改良プログラムDMを用いて、溶媒平滑化とヒストグラムマッチングを行い、位相を改良した。改良位相に基づき、2.7Å分解能の電子密度図を計算し、Accelrys社製のコンピュータグラフィクスプログラムQUANTA上で、電子密度図を描いた。電子密度図は非常に良好で、C末端残基のAsn221を除く全てのアミノ酸残基を電子密度にフィットすることができた。
構築した分子モデルを初期構造として、Accelrys社製のプログラムCNXを用いて構造精密化を行った。1.5Å分解能までのX線データを用いて精密化された最終モデル(図1、図4、図5)は、PtALDのSer2からAla220までの全てのアミノ酸残基、1個のリン酸イオン、341個の水分子を含む。リン酸イオンは、基質であるピルビン酸の結合部位付近に結合している(図5)。40.0〜1.5Å分解能の反射を用いた結晶学的信頼度因子は、Rcrystが19.9%、Rfreeが22.7%となった。タンパク質分子中の原子間結合距離、結合角の理想値からのずれは、根自乗平均誤差の値で、それぞれ0.0079Å、1.6313°となった。プログラムPROCHECK(J. Appl. Crystallogr.、第26巻,第283〜291頁(1993))を用いてラマチャンドランプロットを作製したところ、グリシン以外の180残基の91.7%が最も好ましい領域に、8.3%が次に好ましい領域に位置し、全ての残基が十分許容され得るペプチド結合の二面角を有することが示された。尚、PtALDネイティヴ結晶の原子座標を、図9−1〜図9−26に示した。
〔実施例11〕 PtALDとPHOGとの複合体結晶のX線結晶構造解析
PtALDとPHOGの共結晶化によって得られた結晶を、10 mM PHOG、25% グリセロール及び1.5M リン酸アンモニウムを含む0.15 M クエン酸−ナトリウム緩衝液(pH5.6)に移した後、−173℃の窒素ガスを吹き付け、急速冷却した。文部科学省高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設のビームライン6Bに設置された(株)リガク製のX線回折装置R−AXIS V++を用いて、結晶のX線回折データを収集した。X線の波長は1.0Åに設定し、結晶からイメージングプレート検出器までの距離は180mmとした。1フレームのイメージングプレートに対しては振動角0.8°で120秒間露光し、60フレーム分のデータを集めた。結晶学的パラメータは、空間群がP6322、格子定数がa=94.37Å、c=111.67Åとなり、ネイティヴ結晶とほぼ同型な結晶が得られた。結晶は1.8Å程度まで回折した。(株)リガク製のプログラムCrystalClearを用いて、データを処理した。データの質の指標であるRmergeの値は、40.0〜1.8Å分解能で0.097、最外郭シェルの1.86〜1.80Å分解能で0.201となった。データの完全率は、40.0〜1.8Å分解能で99.2%、最外郭シェルの1.86〜1.80Å分解能で99.5%となった。
ネイティヴ結晶の構造を元に電子密度図を計算し、Accelrys社製のコンピュータグラフィクスプログラムQUANTA上で観察したところ、隣接する2つのサブユニットの界面に、PHOGらしい電子密度が、はっきりと存在していることが確認された。その部分にPHOGの分子モデルを構築した。タンパク質部分に関しては、ネイティブ結晶の構造から殆ど変化は無かった。引き続き、Accelrys社製のプログラムCNXを用いて構造精密化を行った。1.8Å分解能までのX線データを用いて精密化された最終モデル(図2、図6)は、PtALDのSer2からAla220までの全てのアミノ酸残基、PHOG 1分子、295個の水分子を含む。40.0〜1.8Å分解能の反射を用いた結晶学的信頼度因子は、Rcrystが19.8%、Rfreeが24.2%となった。タンパク質分子中の原子間結合距離、結合角の理想値からのずれは、根自乗平均誤差の値で、それぞれ0.0076Å、1.4883°となった。プログラムPROCHECKを用いてラマチャンドランプロットを作製したところ、グリシン以外の180残基の93.9%が最も好ましい領域に、6.1%が次に好ましい領域に位置し、全ての残基が十分許容され得るペプチド結合の二面角を有することが示された。
〔実施例12〕 PtALDとIHOG−oximeとの複合体結晶のX線結晶構造解析
PtALDとIHOG−oximeの共結晶化によって得られた結晶を、10 mM IHOG−oxime・2NH3,25% グリセロール及び1.5 M リン酸アンモニウムを含む0.15 M クエン酸−ナトリウム緩衝液(pH5.6)に移した後、−173℃の窒素ガスを吹き付け、急速冷却した。文部科学省高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設のビームライン6Bに設置された(株)リガク製のX線回折装置R−AXIS V++を用いて、結晶のX線回折データを収集した。X線の波長は1.0Åに設定し、結晶からイメージングプレート検出器までの距離は180mmとした。1フレームのイメージングプレートに対しては振動角0.8°で120秒間露光し、100フレーム分のデータを集めた。結晶学的パラメータは、空間群がP6322、格子定数がa=94.75Å、c=111.84Åとなり、ネイティヴ結晶とほぼ同型な結晶が得られた。結晶は2.2Å程度まで回折した。(株)リガク製のプログラムCrystalClearを用いて、データを処理した。データの質の指標であるRmergeの値は、40.0〜2.15Å分解能で0.097、最外郭シェルの2.25〜2.15Å分解能で0.203となった。データの完全率は、40.0〜2.15Å分解能で98.7%、最外郭シェルの2.25〜2.15Å分解能で98.7%となった。
ネイティヴ結晶の構造を元に電子密度図を計算し、Accelrys社製のコンピュータグラフィクスプログラムQUANTA上で観察したところ、隣接する2つのサブユニットの界面に、IHOG−oximeらしい電子密度が、はっきりと存在していることが確認された。その部分にIHOG−oximeの分子モデルを構築した。タンパク質部分に関しては、ネイティブ結晶の構造から殆ど変化は無かった。引き続き、Accelrys社製のプログラムCNXを用いて構造精密化を行った。2.2Å分解能までのX線データを用いて精密化された最終モデル(図3、図7)は、PtALDのSer2からAla220までの全てのアミノ酸残基、IHOG−oxime1分子、287個の水分子を含む。40.0〜2.2Å分解能の反射を用いた結晶学的信頼度因子は、Rcrystが21.7%、Rfreeが25.6%となった。タンパク質分子中の原子間結合距離、結合角の理想値からのずれは、根自乗平均誤差の値で、それぞれ0.0140Å、1.7532°となった。プログラムPROCHECKを用いてラマチャンドランプロットを作製したところ、グリシン以外の180残基の92.8%が最も好ましい領域に、7.2%が次に好ましい領域に位置し、全ての残基が十分許容され得るペプチド結合の二面角を有することが示された。
〔実施例13〕 スレッディング法による、PtALDと立体構造が類似したタンパク質の探索
以下の4種の配列に関して、Accelrys社製のソフトウェアInsight IIのヴァージョン2000.1に含まれる、スレッディング法のプログラムSeqFoldを用いて、各タンパク質のPtALDに対する立体構造類似性を解析した。
Pseudomonas taetrolens由来アルドラーゼ(PtALD): 立体構造を解析した酵素
Pseudomonas coronafaciens由来アルドラーゼ(PcALD): PtALDに対する相同性40.6%
Arthrobacter keyseri由来アルドラーゼ(PcmE): PtALDに対する相同性28.0%
Pseudomonas ochraceae由来アルドラーゼ(ProA): PtALDに対する相同性29.3%
SeqFoldの理論、操作法等に関しては、インターネットを使って、そのホームページのアドレス(http://www.accelrys.com/doc/life/insight2000.1/SeqFold)にアクセスして、情報を得ることが出来る。SeqFoldは、個々のタンパク質の二次構造情報(αへリックス、βシート等の二次構造をどの残基がとっているかという情報)をデータベース化し、それを対象配列の二次構造予測の結果と照合して、立体構造の類似性を判定する。本解析では、まずSeqFoldのデータベースの再構築を行った。即ち、プロテインデータバンク(PDB)に登録されている立体構造の内、配列相同性が95%以下の6027構造に関する二次構造情報をデータベース化したものに、PtALDの二次構造情報を追加し、それをデータベースとして用いた。PtALDの二次構造情報は、Accelys社提供のコマンドスクリプトcreate_1d_prof.plを用い、PtALDの立体構造座標データ(図9−1〜図9−26)を入力データとして、プログラムInsightIIにより計算させた。PtALDの二次構造情報を図10に示す。図10では、立体構造が決定された2〜220番目のアミノ酸配列を表示した。データベース中のPtALDのコード名は9ald_Aとした。またデータベース自体の電子ファイル名は、pdb95+9ald.1d_prfである。実際のスレッディング法の処理は、Insight IIのグラフィックス・ユーザー・インターフェイスから、プルダウンメニューHomology:SeqFold/Fold_Searchでパラメータ設定画面を呼び出し、そこにおいて各種のパラメータを設定した。その詳細を以下に記すが、これらは開発元が推奨する設定をそのまま利用したものである。
Scoring_Defaults: seqseq
Score_Parameters: on
Substitution_Matrix: Gonnet
Seq_Weight: 1.00
Sec_Weight: 0.6
Align_Parameters: on
Align_Type: Global_Local
Max_Top_Scores: 50
Max_Top_Alignments: 25
Change_Fold_Lib: on
Fold_Library: pdb95+9ald.1d_prf
Change_Fold_Path: off
Quick_Z_Score: off
Random_Alignments: 500
Gap_Parameters: on
Struct_Gap_Open: 10.8
Struct_Gap_Extend: 0.6
Struct_Gap_Terminal: 0.6
Seq_Gap_Open: 10.8
Seq_Gap_Extend: 0.6
Seq_Gap_Terminal: 0.00
スレッディング法による解析結果の一部を図11〜図14に示す。各グラフ(10)において、横軸のidは一次配列の相同性であり、縦軸のraw maxは、SeqFoldのスレッディング法評価関数の1つであるSeqFold Total Score (raw)を略記したものである。各グラフ(10)はSeqFold Total Score (raw)の値で上位25個の構造についてプロットしたものであり、左端のリスト(11)は、その上位25構造のPDBコード名である。なお、PtALDの立体構造は「9ald_A_...」というコード名で示される。また、右端のリスト(12)は左端のリスト(11)に記載の上位25構造のそれぞれについて、スレッディング法によって算出された評価値を示しており、このうち左端の列(Listの列)の値がSeqFold Total Score (raw)の値を示している。
PtALDの配列に対するスレッディング法の実施結果(図11)においては、自身の構造に対するSeqFold Total Score (raw)が1016.86という傑出して高い値を示しており、計算処理が正しく実施されていることを示すと共に、PtALDが構造既知のタンパク質とは全く異なる、新規な立体構造を有していることを示唆している。
一方、PcALD、PcmE、ProAについては(図12、図13、図14)、配列相同性が25%程度ある他の立体構造既知タンパク質とのSeqFold Total Score (raw)の値が100程度であるのに対して、PtALDとのSeqFold Total Score (raw)値はそれぞれ504.44、320.74、364.34と極めて高値であり、これらのアルドラーゼが、PtALDとよく似た立体構造をとっていることが示唆された。その他の評価関数を用いた評価結果と併せた総合評価値(SeqFold Total Score (bit))を以下の表8に示す。この総合評価においても、上記と同様な結論が導き出せる。PtALDと類似した立体構造を有するタンパク質であると判断する際の閾値としては、SeqFold Total Score (bit)の値にして、100程度が妥当と考えられる。
Figure 0004604524
スレッディング法を実施すると、探索配列と、データベース中にある立体構造既知タンパク質の配列とを、アラインメントさせることができる。図15は、PtALDとPseudomonas coronafaciens由来アルドラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを表した図である。保存されているアミノ酸残基を*で示した。また、図16は、PtALDとArthrobacter keyseri由来アルドラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを表した図である。保存されているアミノ酸残基を*で示した。更に、図17は、PtALDとArthrobacter keyseri由来アルドラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを表した図である。保存されているアミノ酸残基を*で示した。
〔参考例1〕4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸(PHOG)の合成
水酸化カリウム(純度85%)13.8gを溶解した水25mlに対し、フェニルピルビン酸5.0g(30.5mmol)、オキサル酢酸12.1g(91.4mmol)を加えて室温にて72時間反応させた。濃塩酸を用いて反応液のpH値を2.2に調節し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥を行った後に、濃縮して残渣を得た。残渣を酢酸エチルとトルエンから再結晶を行い、4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−ケトグルタル酸2.8g(11.3mmol)を結晶として得た。
(NMR測定)
1H NMR (D2O) δ:2.48(d, J=14.4 Hz, 0.18H), 2.60 (d, J= 14.4 Hz, 0.18H) , 2.85 − 3.30 (m, 3.64H) , 7.17 − 7.36 (m, 5H)
(分子量測定)
ESI-MS 計算値 C12H12O6 = 252.23, 分析値 251.22 (MH-)
〔参考例2〕4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸2アンモニウム塩(IHOG−oxime・2NH3)の合成
1.6 wt%水酸化ナトリウム水溶液917gに、インドール−3−ピルビン酸73.8g(352mmol)を加えて溶解した。反応溶液を35℃とし、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を11.1に保ちながら、50%ピルビン酸水溶液310.2g(1761mmol)を2時間かけて滴下した。更に4.5時間反応させて、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ケトグルタル酸を含有する反応溶液を得た。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を7に保ちながら、40%ヒドロキシルアミン塩酸塩水溶液367.2g(2114mmol)を加え、5℃にて17.5時間攪拌した。濃塩酸を用いて反応液のpH値を2にし、有機物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して残渣を得た。残渣に28%アンモニア水60mlと2−プロパノール1350mlから再結晶を行い、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸の2アンモニウム塩43.4g(142mmol:収率40% 対インドール−3−ピルビン酸)を結晶として得た。
以上のように、本発明の変異型アルドラーゼを用いることによって、IHOGおよびPHOGを光学選択的に生成することが可能となる。本発明の変異型アルドラーゼは、モナティンの合成ルートにおけるアルドール縮合反応の段階において、効率的な不斉導入を可能とするものであり、光学活性IHOG、および、光学活性モナティンの製造に好適に利用することができる。
ネイティヴ結晶におけるPtALDサブユニットの立体構造を、リボンモデルで表した図である。 PtALDとPHOGとの複合体の結晶における、6量体の立体構造であり、PtALD分子をリボンモデルで、PHOG分子をスペースフィリングモデルで表した図である。 PtALDとIHOG−oximeとの複合体の結晶における、6量体の立体構造であり、PtALD分子をリボンモデルで、IHOG−oxime分子をスペースフィリングモデルで表した図である。 ネイティヴ結晶におけるPtALD 6量体の立体構造であり、構造の表面の凹凸を、図2と同じ方向で示した図である。 ネイティヴ結晶におけるPtALDの活性部位付近の立体構造を、ボールアンドスティックモデルで表した図である。結合しているリン酸イオンに関しては、スティックを太めにして表示してある。水素結合或は塩橋の相互作用を点線で示している。 PtALDとPHOGとの複合体結晶におけるPtALDの活性部位付近の立体構造を、ボールアンドスティックモデルで表した図である。結合しているPHOG分子に関しては、スティックを太めにして表示してある。水素結合或は塩橋の相互作用を点線で示している。 PtALDとIHOG−oximeとの複合体結晶におけるPtALDの活性部位付近の立体構造を、ボールアンドスティックモデルで表した図である。結合しているIHOG−oxime分子に関しては、スティックを太めにして表示してある。水素結合或は塩橋の相互作用を点線で示している。 PtALD以外の他のアルドラーゼを用いて変異型アルドラーゼのアミノ酸配列を決定するためのフローチャートを示した図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(1)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(2)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(3)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(4)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(5)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(6)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(7)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(8)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(9)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(10)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(11)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(12)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(13)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(14)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(15)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(16)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(17)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(18)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(19)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(20)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(21)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(22)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(23)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(24)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(25)を示す図である。 PtALDネイティヴ結晶の原子座標(26)を示す図である。 PtALDのアミノ酸配列に対して、二次構造をアサインした図である。αへリックスを太い二重線で、βストランドを太い一重線で示してある。なお、立体構造が決定された2〜220番目のアミノ酸配列を表示した。 PtALDのアミノ酸配列に対する、プログラムSeqFoldによるスレッディング法の実施結果を示した図である。 Pseudomonas coronafaciens由来アルドラーゼのアミノ酸配列に対する、プログラムSeqFoldによるスレッディング法の実施結果を示した図である。 Arthrobacter keyseri由来アルドラーゼのアミノ酸配列に対する、プログラムSeqFoldによるスレッディング法の実施結果を示した図である。 Pseudomonas ochraceae由来アルドラーゼのアミノ酸配列に対する、プログラムSeqFoldによるスレッディング法の実施結果を示した図である。 PtALDとPseudomonas coronafaciens由来アルドラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを表した図である。なお、アラインメントがなされなかった、N末、C末の一部配列は表示していない。 PtALDとArthrobacter keyseri由来アルドラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを表した図である。なお、アラインメントがなされなかった、N末、C末の一部配列は表示していない。 PtALDとPseudomonas ochraceae由来アルドラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを表した図である。なお、アラインメントがなされなかった、N末、C末の一部配列は表示していない。
配列番号1:Pseudomonas taetrolens由来アルドラーゼDNA
配列番号2:Pseudomonas taetrolens由来アルドラーゼ
配列番号3:プライマー
配列番号4:プライマー
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号8:プライマー
配列番号9:R37Y作製用プライマー
配列番号10:R37W作製用プライマー
配列番号11:R37H作製用プライマー
配列番号12:R37P作製用プライマー
配列番号13:R37F作製用プライマー
配列番号14:L99D作製用プライマー
配列番号15:L99W作製用プライマー
配列番号16:L99Y作製用プライマー
配列番号17:L99G作製用プライマー
配列番号18:L99K作製用プライマー
配列番号19:D120A作製用プライマー
配列番号20:L99E作製用プライマー
配列番号21:L99H作製用プライマー
配列番号22:L99V作製用プライマー
配列番号23:Pseudomonas coronafaciens由来アルドラーゼ
配列番号24:Arthrobacter keyseri由来アルドラーゼ
配列番号25:Pseudomonas ochraceae由来アルドラーゼ

Claims (21)

  1. インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有するタンパク質であって、
    下記(A)または(B)のアミノ酸配列からなることを特徴とするタンパク質。
    (A)配列番号2に示すアミノ酸配列において、下記(a)および(b)から選ばれる少なくとも1個のアミノ酸残基の置換を有するアミノ酸配列
    (a)37番目のアルギニン残基から他のアミノ酸残基への置換
    (b)99番目のロイシン残基から他のアミノ酸残基への置換
    (B)(A)のアミノ酸配列において、37、67、71、97、98、99、100、119、120、139、141、189、192、193および209番目に位置するアミノ酸残基以外の箇所に、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加および/または逆位を有するアミノ酸配列
  2. 前記(a)の置換は、下記(a')の置換であることを特徴とする、請求項記載のタンパク質。
    (a')37番目のアルギニン残基からチロシン残基、トリプトファン残基、ヒスチジン残基、フェニルアラニン残基またはプロリン残基への置換
  3. 前記(b)の置換は、下記(b')の置換であることを特徴とする、請求項記載のタンパク質。
    (b')99番目のロイシン残基からアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、リジン残基、トリプトファン残基、チロシン残基またはグリシン残基への置換
  4. インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のタンパク質。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  6. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えDNA。
  7. 請求項に記載の組換えDNAを保有する微生物。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成させ、生成された4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を採取することを特徴とする4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸の製造方法。
  9. 請求項に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させ、生成された4R−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を採取することを特徴とする4R−4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸の製造方法。
  10. 請求項に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させる第1の工程、および、
    前記第1の工程によって得られた4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、アミノ化することにより4R−モナティンを生成させ、生成した4R−モナティンを採取する第2の工程
    を含むことを特徴とする4R−モナティンの製造方法。
  11. 前記第2の工程において、(2R,4R)−モナティンを優先的に生成させることを特徴とする請求項10に記載の4R−モナティンの製造方法。
  12. 前記第2の工程において、4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸に酵素を作用せしめてアミノ化することを特徴とする請求項10または11に記載の4R−モナティンの製造方法。
  13. 請求項に記載のタンパク質、又は、それを含有する微生物を、インドール−3−ピルビン酸およびピルビン酸ないしオキサロ酢酸に作用させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を優先的に生成させることにより4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を含有する反応液を取得する第1の工程、
    前記第1の工程によって得られた前記反応液に含まれる4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を、中性又はアルカリ性条件下において下記一般式(1)
    Figure 0004604524

    (上記一般式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)
    で表されるアミン化合物又はその塩と反応せしめ、4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸を生成させ、生成した4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸又はその塩の4R体を晶析する第2の工程、および、
    得られた4R体の4−ヒドロキシ−4−(3−インドリルメチル)−2−ヒドロキシイミノグルタル酸又はその塩を還元し、生成した4R−モナティン又はその塩を採取する第3の工程を含むことを特徴とする4R−モナティンの製造方法。
  14. 前記一般式(1)で表されるアミン化合物が、ヒドロキシルアミン、メトキシアミン、ベンジルオキシアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物である、請求項13に記載の4R−モナティンの製造方法。
  15. 前記第3の工程において、水素及び水素添加触媒の存在下で、還元を実施することを特徴とする請求項13または14に記載の4R−モナティンの製造方法。
  16. 前記第3の工程において、晶析により(2R,4R)−モナティンを採取することを特徴とする請求項1315のいずれか一項に記載の4R−モナティンの製造方法。
  17. 前記第2の工程において、晶析溶媒として水、アルコール溶媒又は含水アルコール溶媒を用いることを特徴とする請求項1316のいずれか一項に記載の4R−モナティンの製造方法。
  18. インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有するタンパク質のスクリーニング方法であって、
    下記(a)〜(e)の工程を含む、スクリーニング方法:
    (a)任意のアルドラーゼの立体構造を、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼの立体構造と比較する工程;
    (b)任意のアルドラーゼのなかから、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼと立体構造の類似性を有するアルドラーゼを、スレッディング法により3次構造をアライメントすることにより選択する工程;
    (c)選択されたアルドラーゼのアミノ酸配列のうち、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼをテンプレートタンパク質として、前記テンプレートタンパク質の37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基に対応するアミノ酸残基を特定する工程;
    (d)選択されたアルドラーゼにおいて、前記テンプレートタンパク質の37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基に対応するアミノ酸残基を、他のアミノ酸残基に置換する工程;および
    (e)(d)で得られたアミノ酸残基の置換を有するアルドラーゼの活性を測定する工程であって、該活性が、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性である、工程
  19. インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性を有するタンパク質のスクリーニング方法であって、
    下記(a1)および(b1)の工程を含む、スクリーニング方法:
    (a1)Pseudomonas taetrolens、Pseudomonas Coronafaciens、Arthrobacter keyseriまたはPseudomonas ochraceaeに由来する、アルドラーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列のうち、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼをテンプレートタンパク質として、スレッディング法により3次構造をアラインメントした場合に、前記テンプレートタンパク質の37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基に対応するアミノ酸残基の少なくとも一つのアミノ酸残基を、前記テンプレートタンパク質のアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基に置換する工程;および
    (b1)で得られたアミノ酸残基の置換を有するアルドラーゼの活性を測定する工程であって、該活性が、インドール−3−ピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−(インドール−3−イルメチル)−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応、および、フェニルピルビン酸とピルビン酸とをアルドール縮合させて4R体の4−フェニルメチル−4−ヒドロキシ−2−オキソグルタル酸を生成する反応のうち、少なくとも一方の反応を触媒するアルドラーゼ活性である、工程
  20. Pseudomonas taetrolens、Pseudomonas Coronafaciens、Arthrobacter keyseriまたはPseudomonas ochraceaeに由来する、アルドラーゼ活性を有するタンパク質が、配列番号2、配列番号23、配列番号24または配列番号25記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼであり、かつ
    配列番号2記載のアミノ酸配列からなるアルドラーゼをテンプレートタンパク質として、スレッディング法により3次構造をアラインメントした場合に、前記テンプレートタンパク質の37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基に対応するアミノ酸残基が、37番目のアルギニン残基および99番目のロイシン残基または99番目のメチオニン残基である、請求項19に記載のスクリーニング方法
  21. さらに以下の工程(a2)を含む、請求項19記載のスクリーニング方法:
    (a2)Pseudomonas taetrolens、Pseudomonas Coronafaciens、Arthrobacter keyseriまたはPseudomonas ochraceaeに由来する、アルドラーゼ活性を有するタンパク質のアミノ酸配列のうち、前記テンプレートタンパク質を用いてスレッディング法により3次構造をアラインメントした場合に、前記テンプレートタンパク質の67、71、97、98、100、119、139、141、189、192、193および209番目に位置するアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基において、少なくとも1つのアミノ酸残基を、前記テンプレートタンパク質のアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基に置換する工程。
JP2004075256A 2004-03-16 2004-03-16 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法 Expired - Fee Related JP4604524B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004075256A JP4604524B2 (ja) 2004-03-16 2004-03-16 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法
US11/080,628 US7432100B2 (en) 2004-03-16 2005-03-16 Variant aldolase and processes for producing an optically active IHOG and an optically active monatin using the same

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004075256A JP4604524B2 (ja) 2004-03-16 2004-03-16 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2005261231A JP2005261231A (ja) 2005-09-29
JP2005261231A5 JP2005261231A5 (ja) 2007-04-26
JP4604524B2 true JP4604524B2 (ja) 2011-01-05

Family

ID=35086393

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004075256A Expired - Fee Related JP4604524B2 (ja) 2004-03-16 2004-03-16 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法

Country Status (2)

Country Link
US (1) US7432100B2 (ja)
JP (1) JP4604524B2 (ja)

Families Citing this family (35)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2409968A1 (en) * 2001-11-30 2012-01-25 Ajinomoto Co., Inc. Crystals of non-natural-type stereoisomer salt of monatin and use thereof
US7297800B2 (en) * 2001-12-27 2007-11-20 Ajinomoto Co., Inc. Process of producing glutamate derivatives
WO2003059865A1 (fr) * 2001-12-27 2003-07-24 Ajinomoto Co., Inc. Procedes de preparation de composes d'acide glutamique et d'intermediaires desdits composes, et nouveaux intermediaires utilises dans lesdits procedes
US8372989B2 (en) 2002-04-23 2013-02-12 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of monatin and its precursors
US7572607B2 (en) * 2002-04-23 2009-08-11 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of monatin and its precursors
JP4670347B2 (ja) 2002-08-26 2011-04-13 味の素株式会社 新規アルドラーゼおよび置換α−ケト酸の製造方法
CA2507225C (en) * 2002-12-09 2012-02-07 Ajinomoto Co., Inc. Mutated d-aminotransferase and method for producing optically active glutamic acid derivatives using the same
US20050112260A1 (en) * 2003-08-01 2005-05-26 Cargill, Inc. Monatin tabletop sweetener compositions and methods of making same
RU2380989C2 (ru) * 2003-08-25 2010-02-10 Карджилл, Инкорпорейтед Питьевая композиция, содержащая монатин, и способы ее получения
KR101158592B1 (ko) * 2003-10-21 2012-06-22 카아길, 인코포레이팃드 모나틴 및 모나틴 전구체의 생산
JP4604524B2 (ja) 2004-03-16 2011-01-05 味の素株式会社 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法
US7935377B2 (en) * 2004-06-04 2011-05-03 Ajinomoto Co., Inc. Crystals of free (2R, 4R)-monatin and use thereof
CA2506247C (en) * 2004-06-07 2012-02-21 Ajinomoto Co., Inc. Novel aldolase, and method for producing optically active ihog and monatin
US7180370B2 (en) * 2004-09-01 2007-02-20 Micron Technology, Inc. CMOS amplifiers with frequency compensating capacitors
CA2583426A1 (en) * 2004-10-05 2006-04-13 Ajinomoto Co., Inc. Process for producing amino acid derivative from hydroxyimino acid
US8153405B2 (en) 2005-04-20 2012-04-10 Cargill, Incorporated Products and methods for in vivo secretion of monatin
US8158389B2 (en) * 2005-04-20 2012-04-17 Cargill, Incorporated Products and methods for in vivo secretion of monatin
US7582455B2 (en) * 2005-04-26 2009-09-01 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors
US8076108B2 (en) 2005-04-26 2011-12-13 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors
EA019971B1 (ru) * 2006-03-07 2014-07-30 Верениум Корпорейшн Альдолазы, кодирующие их нуклеиновые кислоты и способы их получения и применения
MX2008011477A (es) 2006-03-07 2008-09-23 Cargill Inc Aldolasas, acidos nucleicos que las codifican y metodos para hacerlas y usarlas.
US20090198072A1 (en) * 2006-05-24 2009-08-06 Cargill, Incorporated Methods and systems for increasing production of equilibrium reactions
AU2007267618B2 (en) * 2006-05-24 2013-07-18 Cargill, Incorporated Methods and systems for increasing production of equilibrium reactions
CN101239941B (zh) 2007-02-08 2012-02-29 味之素株式会社 光学活性化合物的制造方法
JP5973131B2 (ja) * 2007-09-13 2016-08-23 コデクシス, インコーポレイテッド アセトフェノンの還元のためのケトレダクターゼポリペプチド
US8367847B2 (en) * 2007-10-01 2013-02-05 Cargill, Incorporated Production of monatin enantiomers
US8003361B2 (en) * 2007-10-01 2011-08-23 Cargill Incorporated Production of monatin enantiomers
US8076107B2 (en) * 2007-10-01 2011-12-13 Cargill, Incorporated Production of monatin stereoisomers
EP2107053A1 (en) 2008-03-11 2009-10-07 Ajinomoto Co., Inc. Hydrate crystals of (2R,4R)-Monatin monosodium salt
US20110144216A1 (en) * 2009-12-16 2011-06-16 Honeywell International Inc. Compositions and uses of cis-1,1,1,4,4,4-hexafluoro-2-butene
EP2479272A4 (en) 2010-10-14 2013-11-20 Ajinomoto Kk PROCESS FOR THE PRODUCTION OF MONATIN
US20120208244A1 (en) * 2010-10-15 2012-08-16 Ajinomoto Co., Inc. Method for producing monatin
US8771997B2 (en) * 2011-04-20 2014-07-08 Ajinomoto Co., Inc. Method for producing monatin using an L-amino acid aminotransferase
JP6787668B2 (ja) * 2013-12-10 2020-11-18 天野エンザイム株式会社 改変型リパーゼ及びその用途
EP3388518A1 (en) * 2017-04-10 2018-10-17 Consejo Superior de Investigaciones Cientificas (CSIC) Fructose-6-phosphate aldolase variants for aldol carboligations

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004018672A1 (ja) * 2002-08-26 2004-03-04 Ajinomoto Co., Inc. 新規アルドラーゼおよび置換α−ケト酸の製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7297800B2 (en) 2001-12-27 2007-11-20 Ajinomoto Co., Inc. Process of producing glutamate derivatives
JP4604524B2 (ja) 2004-03-16 2011-01-05 味の素株式会社 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004018672A1 (ja) * 2002-08-26 2004-03-04 Ajinomoto Co., Inc. 新規アルドラーゼおよび置換α−ケト酸の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
US20050244939A1 (en) 2005-11-03
US7432100B2 (en) 2008-10-07
JP2005261231A (ja) 2005-09-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4604524B2 (ja) 変異型アルドラーゼ、並びにこれを用いた光学活性ihog及び光学活性モナティンの製造方法
JP5056825B2 (ja) 変異型d−アミノトランスフェラーゼおよびこれを用いた光学活性グルタミン酸誘導体の製造方法
JP4670347B2 (ja) 新規アルドラーゼおよび置換α−ケト酸の製造方法
US8202711B2 (en) Process for producing glutamate derivatives
US7241599B2 (en) Aldolase, and method for producing optically active IHOG and monatin
KR100775778B1 (ko) 글루탐산 유도체의 제조방법
KR20210032928A (ko) 트립타민의 생산 방법
JP5303950B2 (ja) 光学活性化合物の製造方法
JP5246639B2 (ja) 4−ヒドロキシ−l−イソロイシンの製造法
US7354746B1 (en) Method for producing optically active IHOG and monatin
JP2015211679A (ja) モナチンの立体異性体およびそれらの前駆体の生成のためのポリペプチドおよび生合成経路
JP2015091231A (ja) アミノトランスフェラーゼおよびオキシドレダクターゼの核酸およびポリペプチドおよび使用方法
JP6582997B2 (ja) 変異型グルタミン酸−システインリガーゼ、及び、γ−グルタミルバリルグリシンの製造法
KR20120068872A (ko) 모나틴의 제조 방법
JP4797452B2 (ja) 新規アルドラーゼ並びに光学活性ihog及びモナティンの製造方法
WO2007148514A1 (ja) 4-ヒドロキシ-2-キノリノン類の酵素合成法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070309

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070309

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100105

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100304

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100511

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100524

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100907

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100920

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131015

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131015

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees