JP5275313B2 - 有用物質分泌生産用細菌及び有用物質生産方法 - Google Patents

有用物質分泌生産用細菌及び有用物質生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、細菌及び有用物質の生産方法に関する。詳しくは、界面活性剤と細菌を同時に存在させる事により有用物質を分泌生産させる有用物質生産方法に使用される細菌及びその細菌を使用する有用物質の生産方法に関する。
細菌は、アミノ酸、タンパク質等の有用物質を生産するために広く利用されている。有用物質生産に用いる細菌として、特に大腸菌が多用されており、遺伝子工学技術の進展に伴って、医薬上・産業上有用なタンパク質の遺伝子を大腸菌に導入して、有用タンパク質を効率的に生産する技術が知られている。
通常、大腸菌を用いてタンパク質を発現した場合、目的タンパク質を抽出するために、超音波、高圧ホモジナイザー、フレンチプレス等の物理的破砕法が用いられる。しかし、これらの物理的破砕法はタンパク質を取り出す際、細胞内に存在する目的物質以外の物質も大量に混入し純度低下の原因になる。
したがって、有用物質の生産においては有用物質を分泌生産する方法が、目的の有用物質を高純度で獲得する目的においても、高い生産性を達成する目的においても有効である。
有用物質を分泌生産する方法において、界面活性剤が用いられる事がある。例えば、グルタミン酸の生産では、界面活性剤の一種であるポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテイトが用いられていることが知られている(特許文献1)。また、セルラーゼ等のタンパク質の生産においても界面活性剤が用いられている事が知られている(非特許文献1)。
しかし、界面活性剤を用いた有用物質生産法には、培養液中で界面活性剤を用いることによって、細菌が死ぬ又は生育が阻害されるという欠点がある。その結果、有用物質の生産量が低下する問題がある。
国際公開第99/07853号パンフレット
バイオインダストリー協会発酵と代謝研究会編集、「発酵ハンドブック」、共立出版、2001年7月、253頁
本発明が解決しようとする課題は、界面活性剤を用いる有用物質の分泌生産方法において、細菌が界面活性剤によって死ぬ又は生育が阻害されることを抑制することができる細菌を提供することである。また、純度を低下させることなく有用物質を生産でき、有用物質の生産量が低下することなく有用物質を生産できる有用物質生産方法を提供することである。
本発明の有用物質生産方法は、有用物質を生産する細菌と界面活性剤とを同時に存在させて有用物質を細胞外に分泌させる工程を含む有用物質生産方法であって、細菌が遺伝子pioO,yegI,cysB,fepB,guaB,atpE,yebV,acnA,ybgI,surA,lpcA,folB,acrB,acrA,dnaK,rfaP,pfs,yfgA,thyA,tolC,rfaG,rfaC,ubiG,gmhB,rfaF,rfaD,hfq,galU,galT及びrfaEを有する有用物質分泌生産用細菌であり、界面活性剤がラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、コカミノプロピオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを要旨とする。
本発明は以下の効果を奏する。
本発明の細菌を、界面活性剤を用いる有用物質の分泌生産過程で用いることで、界面活性剤による細菌の死滅又は生育阻害が抑制できる。その結果、本発明の細菌を用いる本発明の界面活性剤を用いる有用物質の分泌生産方法は、有用物質の純度を低下させることなく有用物質を生産でき、有用物質の生産量を向上させる事ができる。
本発明における細菌には、真正細菌及び古細菌が含まれる。真正細菌には、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が含まれる。グラム陰性細菌としては、エシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)等が挙げられる。グラム陽性菌としては、バチルス属(Bacillus属)、ストレプトマイセス属(Streptmyces属)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium属)、ラクトコッカス属(Lactococcus属)、エンテロコッカス属(Enterococcus属)、ペディオコッカス属(Pediococcus属)、リューコノストック属(Leuconostoc属)及びストレプトマイセス属(Streptomyces属)等が挙げられる。また、用いる細菌は特定の遺伝子欠損又は遺伝子の過剰発現をしていても良い。
これらのうち、有用物質の生産性の観点から、エシェリチア属菌が好ましく、さらに好ましくは大腸菌である。
本発明における第1発明の細菌は、遺伝子pioO,yegI,cysB,fepB,guaB,atpE,yebV,acnA,ybgI,surA,lpcA,folB,acrB,acrA,dnaK,rfaP,pfs,yfgA,thyA,tolC,rfaG,rfaC,ubiG,gmhB,rfaF,rfaD,hfq,galU,galT及びrfaEを有する。さらに好ましくは、pioO,yegI,cysB,guaB,atpE,yebV,surA,lpcA,acrB,acrA,dnaK,rfaP,pfs,thyA,tolC,rfaG,rfaC,ubiG,gmhB,rfaF,rfaD,hfq,galU及びrfaEを有する。
なお、各遺伝子及び遺伝子領域は、Biosystems,30,p161−171.(1993)で報告され定義されており、インターネットサイト等でも閲覧可能である。
上記遺伝子には、相同する遺伝子も含まれる。
本発明における有用物質は、特に限定されないが、タンパク質(酵素、ホルモンタンパク質、抗体及びペプチド等)、オリゴ糖及び核酸等が含まれる。
タンパク質としては、酵素{酸化還元酵素(コレステロールオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ及びペルオキシダーゼ等)、加水分解酵素(リゾチーム、プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びグルコアミラーゼ等)、異性化酵素(グルコースイソメラーゼ等)、転移酵素(アシルトランスフェラーゼ及びスルホトランスフェラーゼ等)、合成酵素(脂肪酸シンターゼ、リン酸シンターゼ及びクエン酸シンターゼ等)及び脱離酵素(ペクチンリアーゼ等)等}、ホルモンタンパク質{骨形成因子(BMP)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1〜12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G−CSF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、ナトリウム利尿ペプチド、血液凝固第VIII因子、ソマトメジン、グルカゴン、成長ホルモン放出因子、血清アルブミン及びカルシトニン等}、抗体{1本鎖抗体、IgGラージサブユニット、IgGスモールサブユニット等}、蛍光タンパク質(GFP等)、発光タンパク質(ルシェラーゼ等)等が挙げられる。ペプチドとしては、特にアミノ酸組成を限定するものではなく、ジペプチド及びトリペプチド等が挙げられる。
オリゴ糖としては、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、ラフィノース、パノース、シクロデキストリン、ガラクトオリゴ糖及びフラクトオリゴ糖等が挙げられる。
核酸としては、イノシン一リン酸、アデノシン一リン酸及びグアノシン一リン酸等が挙げられる。
これらの有用物質のうち、有用物質の生産性の観点から、タンパク質が好ましく、さらに好ましくは酵素及びホルモンタンパク質である。
本発明において界面活性剤(B)は、両性界面活性剤(B1)、アニオン性界面活性剤(B2)、ノニオン性界面活性剤(B3)及びカチオン性活性剤(B4)が含まれる。
両性界面活性剤(B1)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤(B1−1)、硫酸エステル塩型両性界面活性剤(B1−2)、スルホン酸塩型両性界面活性剤(B1−3)及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤(B1−4)が含まれる。
カルボン酸塩型両性界面活性剤(B1−1)としては、アミノ酸型両性界面活性剤(B1−1−1)、ベタイン型両性界面活性剤(B1−1−2)及びイミダゾリン型両性界面活性剤(B1−1−3)等が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤(B1−1−1)は、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
[R−NH−(CH2n−COO]mM (1)
一般式(1)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nは1又は2の整数である。mは1又は2の整数である。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(アミン及びアルカノールアミン等由来のカチオンを含む)及び第4級アンモニウム等の1価又は2価のカチオンである。
(B1−1−1)としては、例えば、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤(コカミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム及びラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等);アルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウム等)及びN−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。
ベタイン型両性界面活性剤(B1−1−2)としては、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤であり、下記一般式(2)で示される化合物等のアルキルジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、アミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びラウリン酸アミドプロピルベタイン等)及びアルキルジヒドロキシアルキルベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)等が挙げられる。
R−N+(CH32−CH2COO− (2)
一般式(2)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。
イミダゾリン型両性界面活性剤(B1−1−3)としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
その他の両性界面活性剤としては、ナトリウムラウロイルグリシン、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩及びジオクチルジアミノエチルグリシン塩酸塩等のグリシン型両性界面活性剤;ペンタデシルスルホタウリン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;コールアミドプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸(CHAPS)、コールアミドプロピルジメチルアンモニオ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CHAPSO);ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤等が含まれる。
アニオン性界面活性剤(B2)としては、エーテルカルボン酸及びその塩(B2−1)、硫酸エステル又はその塩(B2−2)、エーテル硫酸エステル及びその塩(B2−3)、スルホン酸塩(B2−4)、スルホコハク酸塩(B2−5)、リン酸エステル及びその塩(B2−6)、エーテルリン酸エステル及びその塩(B2−7)、脂肪酸塩(B2−8)、アシル化アミノ酸塩並びに天然由来のカルボン酸及びその塩(ケノデオキシコール酸、コール酸及びデオキシコール酸等)等が挙げられる。
エーテルカルボン酸又はその塩(B2−1)としては炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸及びその塩が含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−1)として、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテル酢酸ナトリウム塩及びラウリルグリコール酢酸ナトリウム塩等が挙げられる。
硫酸エステル及びその塩(B2−2)としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有する硫酸エステル及びその塩が含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−2)として、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム塩及びラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
エーテル硫酸エステル及びその塩(B2−3)としては、炭素数8〜24の炭化水素基を有するエーテル硫酸エステル及びその塩が含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−3)として、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
スルホン酸塩(B2−4)としては、炭素数6〜24の炭化水素基を有するスルホン酸塩が含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−4)として、具体的には、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びナフタレンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
スルホコハク酸塩(B2−5)としては、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸二ナトリウム塩、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム塩及びスルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム塩等が挙げられる。
リン酸エステル及びその塩(B2−6)としては、炭素数6〜24の炭化水素基を有するリン酸エステルが含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−6)として、具体的には、オクチルリン酸二ナトリウム塩及びラウリルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
エーテルリン酸エステル及びその塩(B2−7)としては、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)アルキレンオキサイド(炭素数2〜8)付加物(重合度=1〜100)のリン酸エステル及びその塩が含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−7)として、具体的には、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸二ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
脂肪酸塩(B2−8)としては、炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)の塩が含まれる。塩としては、アルカリ金属塩等が挙げられ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。(B2−8)として、具体的には、オクチル酸ナトリウム塩、ラウリル酸ナトリウム塩及びステアリン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤(B3)としては、高級アルコールアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物(B3−1)、アルキルフェノールAO付加物(B3−2)、脂肪酸AO付加物(B3−3)及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(B3−4)等が含まれる。
高級アルコールAO付加物(B3−1)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが含まれ、炭素数8〜24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1〜20モル及び/又はプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1〜20モル付加物(ブロック付加物及び/又はランダム付加物を含む。以下同様)等が挙げられる。
アルキルフェノールAO付加物(B3−2)としては、炭素数6〜24のアルキル基を有するアルキルフェノールAO付加物のHLBが9〜13のものが含まれ、オクチルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物並びにノニルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物等が挙げられる。また、TRITONTMX−114、igepalTMCA−520及びigepalTMCA−630等が市場から容易に入手できる。
脂肪酸AO付加物(B3−3)としては、炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物が含まれ、具体的には、オレイン酸EO9モル付加物、ジオレイン酸EO12モル付加物、ジオレイン酸EO20モル付加物及びステアリン酸EO9モル付加物等が挙げられる。
多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(B3−4)としては、炭素数3〜36の2〜8価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のEO及び/又はPO付加物;前記多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物、並びに、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等)及びこれらのAO付加物が含まれ、具体的には、ソルビタンテトラオレイン酸エステルEO付加物及びソルビタンヘキサオレイン酸エステルEO付加物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤(B4)としては、アミン塩型カチオン性界面活性剤(B4−1)及び第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤(B4−2)等が挙げられる。
アミン塩型カチオン性界面活性剤(B4−1)としては、ラウリルアミン、ステアリルアミン、トリエタノールアミンモノステアリン酸エステル、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアリン酸とアミノエチルエタノールアミンの縮合物にさらに尿素を縮合させたもの、硬化牛脂アミン及びロジンアミン等のギ酸、酢酸及び塩酸等の酸中和物が挙げられる。
第4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤(B4−2)としては、ステアラミドメチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルラウリルジメチルアンモニウムクロライド及びセチルピリジニウムブロマイド等があげられる。
界面活性剤(B)としては、分泌効率の観点から、両性界面活性剤(B1)、アニオン性界面活性剤(B2)及びノニオン性界面活性剤(B3)が好ましく、さらに好ましくはカルボン酸塩型両性界面活性剤(B1−1)、エーテルカルボン酸(B2−1)、スルホン酸塩(B2−4)、高級アルコールAO付加物(B3−1)及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(B3−4)であり、次にさらに好ましくはラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、コカミノプロピオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドであり、特に好ましくはコカミノプロピオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム及びポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
本発明において界面活性剤(B)は、使用に当たっては、界面活性剤(B)をそのまま使用してもよいし、必要により水と混合して、水性希釈液(水溶液状又は水分散液状)として用いることができる。
水性希釈液における、界面活性剤(B)の合計濃度は、対象となる細菌、生理活性物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、有用物質の分泌性及びハンドリング性の観点から、水性希釈液の重量を基準として、0.1〜99重量%が好ましく、好ましくは1〜50重量%である。
後述する工程(a)における培地に含まれる界面活性剤(B)の使用量(重量%)は、対象となる細菌、生産される有用物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、培地の重量を基準として、分泌効率及びタンパク質の変性のさせにくさの観点から、0.0001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜10、次にさらに好ましくは0.01〜5である。
界面活性剤(B)はあらかじめ培地と混合して使用する以外に、微生物を懸濁させた培地に後から添加しても良い。培地との混合は、4℃〜99℃で培地に界面活性剤(B)を添加し、撹拌羽根又はスターラー等で撹拌することで行うことができる。後から混合する際は、撹拌羽根等で撹拌しながら添加することで行うことができる。
界面活性剤(B)の使用にあたっては、上記界面活性剤を単独で用いる以外に、数種類を混合して用いても良い。
本発明において、有用物質を生産する細菌と界面活性剤とを同時に存在させて有用物質を細胞外に分泌させる工程は、下記工程(a)である。
工程(a)有用物質を生産する細菌(本発明の細菌)を培養する培養液と界面活性剤を同時に存在させて有用物質を細胞外(培養液中)に分泌させる工程。
工程(b)工程(a)の後、培養液から有用物質を回収する工程。
以下に本発明の細菌を使用する有用物質の生産方法の一例を示す。
(i)遺伝子組み換え
(i−1)目的タンパク質を発現している細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、該二本鎖DNAをファージDNA又はプラスミドに組み込む。得られた組み換えファージ又はプラスミドを宿主大腸菌に形質転換しcDNAライブラリーを作成する。
(i−2)目的とするDNAを含有するファージDNA又はプラスミドをスクリーニングする方法としては、ファージDNA又はプラスミドと目的タンパク質遺伝子又は相補配列の一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション法が挙げられる。
(i−3)スクリーニング後のファージ又はプラスミドから目的とするクローン化DNA又はその一部を切りだし、該クローン化DNA又はその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって、目的遺伝子の発現ベクターを作成することができる。内膜を移行させるシグナル配列(ペリプラズムに目的物質を発現させるシグナル配列)をコードするDNAを同時に連結することもできる。
(ii)培養
(ii−1)本発明の有用物質生産用細菌を発現ベクターで形質転換し培養する。培養は寒天培地上で通常15〜43℃で3〜72時間行う。
(ii−2)培養に用いる培地を121℃、20分間オートクレーブ滅菌を行い、ここに寒天培地で培養した組み換え細菌を本培養する。通常15〜43℃で12〜72時間行う。本工程で界面活性剤(B)を添加する。培養の始めから界面活性剤(B)を使用する場合は、(B)と培地を混合し均一化したものを、培地として用いる。培養を開始した後(B)を使用する場合は、培養開始直後から培養開始後72時間後に界面活性剤(B)を加えて培養を継続する。(ii−2)において、細菌の濃度は1〜1013細胞/mlが好ましく、さらに好ましくは102〜1011細胞/mlである。
(ii−2)において、界面活性剤(B)の使用量(重量%)は、対象となる細菌及び生産される有用物質の種類の種類等によって適宜選択されるが、培地の重量を基準として、分泌効率及びタンパク質の変性のさせにくさの観点から、0.0001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜10、次にさらに好ましくは0.01〜5である。
(iii)精製
(iii−1)培地中に分泌されたタンパク質は、遠心分離、中空糸分離、ろ過等で細菌及び細菌残さと分離される。
(iii−2)タンパク質を含む培地は、イオン交換カラム、ゲルろ過カラム、疎水カラム、アフィニティカラム及び限外カラム等のカラム処理を繰り返し、エタノール沈殿、硫酸アンモニウム沈殿及びポリエチレングリコール沈殿等の沈殿処理を必要に応じ適宜おこなうにことよって分離精製される。
(iii−1)で分離された細菌は、その後、培養釜に戻し、新たに培地を供給することにより、さらに培養することができる。その培地等をさらに(iii)の工程に供し精製、培養を繰り返すことにより、有用物質の連続生産を行うことができる。
本願発明の細菌は、界面活性剤(B)による細菌の死滅又は生育阻害が抑制されるので、この様な連続生産における細菌の生存率が高まる。したがって、有用物質を連続的に生産することができ、生産量を飛躍的に向上することができる。
上記の(iii)のタンパク質の分離・取り出し工程におけるカラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としては、シリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド及びビニルポリマー等が挙げられ、市販品ではSephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio−Gelシリーズ(Bio−Rad社)等があり入手可能である。
本発明の細菌を使用した生産方法で得られる有用物質は、従来よりも純度が高い。また生産性に優れているので短時間で高い収量を得ることができる。
以下の実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
遺伝子pioO,yegI,cysB,fepB,guaB,atpE,yebV,acnA,ybgI,surA,lpcA,folB,acrB,acrA,dnaK,rfaP,pfs,yfgA,thyA,tolC,rfaG,rfaC,ubiG,gmhB,rfaF,rfaD,hfq,galU,galT及びrfaEを有する大腸菌(W3110)をLB培地1ml(1重量%バクトトリプトン、0.5重量%イーストエキストラクト、1重量%塩化ナトリウム)に白金耳を用いて植菌して37℃で1晩振とう培養して作成した培養液2μlを、25ml固形培地(1重量%バクトトリプトン、0.5重量%イーストエキストラクト、1重量%塩化ナトリウム、1重量%コカミノプロピオン酸ナトリウム(三洋化成工業(株)製、商品名「レボンAPL−D」)、3重量%プロテアーゼ阻害剤ミックス(和光純薬(株)製))上に滴下し37℃1時間保温し8時間後、デジタルカメラによりコロニーを撮影した。そして、コロニーの大きさを画像解析ソフトであるImageJ(NIH)により解析し、大腸菌コロニーのサイズを定量した。定量した結果は、実施例1(W3110)の定量値を1.00とし、比較例1〜30の結果は、実施例1の定量値を基準とする相対値で示した。結果を表1に示す。
比較例1〜30
実施例1において、大腸菌(W3110)の代わりに、pioOを欠損している大腸菌(△pioO)(比較例1)、yegIを欠損している大腸菌(△yegI)(比較例2)、cysBを欠損している大腸菌(△cysB)(比較例3)、fepBを欠損している大腸菌(△fepB)(比較例4)、guaBを欠損している大腸菌(△guaB)(比較例5)、atpEを欠損している大腸菌(△atpE)(比較例6)、yebVを欠損している大腸菌(△yebV)(比較例7)、acnAを欠損している大腸菌(△acnA)(比較例8)、ybgIを欠損している大腸菌(△ybgI)(比較例9)、surAを欠損している大腸菌(△sufA)(比較例10)、lpcAを欠損している大腸菌(△lpcA)(比較例11)、folBを欠損している大腸菌(△folB)(比較例12)、acrBを欠損している大腸菌(△acrB)(比較例13)、acrAを欠損している大腸菌(△acrA)(比較例14)、dnaKを欠損している大腸菌(△dnaK)(比較例15)、rfaPを欠損している大腸菌(△rfaP)(比較例16)、pfsを欠損している大腸菌(△pfs)(比較例17)、yfgAを欠損している大腸菌(△yfgA)(比較例18)、thyAを欠損している大腸菌(△thyA)(比較例19)、tolCを欠損している大腸菌(△tolC)(比較例20)、rfaGを欠損している大腸菌(△rfaG)(比較例21)、rfaCを欠損している大腸菌(△rfaC)(比較例22)、ubiGを欠損している大腸菌(△ubiG)(比較例23)、gmhBを欠損している大腸菌(△gmhB)(比較例24)、rfaFを欠損している大腸菌(△rfaF)(比較例25)、rfaDを欠損している大腸菌(△rfaD)(比較例26)、hfqを欠損している大腸菌(△hfq)(比較例27)、galUを欠損している大腸菌(△galU)(比較例28)、galTを欠損している大腸菌(△galT)(比較例29)又はrfaEを欠損している大腸菌(△rfaE)(比較例30)をそれぞれ用いたこと以外は実施例1と同様の方法を用いて評価をおこなった。その結果を表1に示す。なお、各遺伝子を欠損した大腸菌の作成方法はDatsenko等の方法(Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 6640−6645)に従った。
参考例
界面活性剤(コカミノプロピオン酸ナトリウム)を含まない寒天培地を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例1及び比較例1〜30で使用した上記大腸菌を用いて実験を行った。実施例1で使用した大腸菌を使用したときのコロニーの大きさに対して、比較例1〜30で使用した大腸菌を使用したときのコロニーの大きさは同等であった。
Figure 0005275313
実施例2
コカミノプロピオン酸ナトリウムの変わりにポリオキシエチレンアルキル(C12−15)エーテル(三洋化成工業(株)製、商品名「ナロアクティーCL−40」)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で行った。定量した結果は、実施例2(W3110)の定量値を1.00とし、比較例31〜35の結果は、実施例2の定量値を基準とする相対値で示した。結果を表2に示す。
比較例31〜35
pioOを欠損している大腸菌(△pioO)(比較例31)、cycBを欠損している大腸菌(△cycB)(比較例32)、fepBを欠損している大腸菌(△fepB)(比較例33)、thyAを欠損している大腸菌(△thyA)(比較例34)、galTを欠損している大腸菌(△galT)(比較例35)をそれぞれ用いたこと以外は実施例2と同じ方法で行った。結果を表2に示す。
Figure 0005275313
実施例3
コカミノプロピオン酸ナトリウムの変わりにポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム(三洋化成工業(株)製、商品名「ビューライトLCA−25N」)を用いたこと以外は実施例1と同じ方法で行った。定量した結果は、実施例3(W3110)の定量値を1.00とし、比較例36〜40の結果は、実施例3の定量値を基準とする相対値で示した。結果を表3に示す。
比較例36〜40
pioOを欠損している大腸菌(△pioO)(比較例31)、cycBを欠損している大腸菌(△cycB)(比較例32)、fepBを欠損している大腸菌(△fepB)(比較例33)、thyAを欠損している大腸菌(△thyA)(比較例34)、galTを欠損している大腸菌(△galT)(比較例35)をそれぞれ用いたこと以外は実施例3と同じ方法で行った。結果を表3に示す。
Figure 0005275313
製造例1
C末端にHisタグを有するtorAを発現するpUC19プラスミドで形質転換した大腸菌(W3110)(α)を常法により作製した。
製造例2
C末端にHisタグを有するtorAを発現するpUC19プラスミドで形質転換した大腸菌(△rfaD)(β)を常法により作製した。
製造例3
C末端にHisタグを有するtorAを発現するpUC19プラスミドで形質転換した大腸菌(△galT)(γ)を常法により作製した。
実施例4
製造例1で作成した大腸菌(α)をLB培地10mlに白金耳を用いて植菌して37℃で一夜の間200rpmで振とう培養して培養液を作製した。遠心機を用いて集菌を行いTB培地(Difco社)10mlに再懸濁し、torA遺伝子の発現誘導を行ない同時にコカミノプロピオン酸ナトリウム(三洋化成工業(株)製、商品名「レボンAPL−D」)を1重量%、プロテアーゼ阻害剤ミックス(和光純薬(株)製))を3重量%になるように加え、37℃で振とう培養を行い振とう培養開始後から15時間後にサンプリングを行い、遠心分離機によって菌を分離し上清をSDS−PAGEによって解析しTorAタンパク質のバンドの定量を行った。この結果を表4に示す。
比較例41
実施例4において、大腸菌(α)の代わりに、製造例2で作成した大腸菌(β)を用いたこと以外は実施例4と同様に行った。結果を表4に示す。
比較例42
実施例4において、大腸菌(α)の代わりに、製造例3で作成した大腸菌(γ)を用いたこと以外は実施例4と同様に行った。結果を表4に示す。
Figure 0005275313
表1から、実施例1に比べて比較例1〜30はコロニーが小さく、コロニー形成が阻害されたことがわかる。この結果は、実施例1記載の大腸菌が比較例1〜30の大腸菌に比べて、界面活性剤に対して耐性であることを示している。実施例1記載の大腸菌は、活性剤存在下でも死ににくい又は生育が阻害されにくい事が原因である。
また、界面活性剤の種類を変更して同様の実験を行った、表2及び表3の結果から、実施例2及び比較例31〜35を比較した場合、実施例3及び比較例36〜40を比較した場合も同様に、比較例31〜40は実施例2又は3よりもコロニーが小さく、コロニー形成が阻害されており、本発明の有用物質分泌生産用細菌は、界面活性剤の種類によらず、死ににくい又は生育が阻害されにくいことがわかる。
また、タンパク質の発現量は大腸菌の数に影響されるので、本発明の実施例1記載の大腸菌によるタンパク質発現量は、比較例1〜30に記載の大腸菌に比べて、高いと考えられる。実際、表4に示すように、実施例1の大腸菌と同じ遺伝子を有する実施例4の大腸菌による組み換えタンパク質(TorAタンパク質)の発現量は、比較例41及び42に記載した大腸菌に比べて高い。つまり、本発明の細菌は比較例の細菌に比べて、死ににくい又は生育が阻害されにくく、有用物質の生産量が高いことがわかる。
本発明の細菌及び有用物質生産方法は、タンパク質などの有用物質を生産菌から分泌生産する際に使用できる。タンパク質としては酵素、ホルモタンパク質、抗体及びペプチド等が挙げられる。

Claims (1)

  1. 有用物質を生産する細菌と界面活性剤とを同時に存在させて有用物質を細胞外に分泌させる工程を含む有用物質生産方法であって、細菌が遺伝子pioO,yegI,cysB,fepB,guaB,atpE,yebV,acnA,ybgI,surA,lpcA,folB,acrB,acrA,dnaK,rfaP,pfs,yfgA,thyA,tolC,rfaG,rfaC,ubiG,gmhB,rfaF,rfaD,hfq,galU,galT及びrfaEを有する有用物質分泌生産用細菌であり、界面活性剤がラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、コカミノプロピオン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である有用物質生産方法。
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