JP5808527B2 - 有用物質製造方法 - Google Patents
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Description
通常、大腸菌を用いてタンパク質を発現した場合、目的タンパク質を抽出するために、超音波、高圧ホモジナイザー、フレンチプレス等の物理的破砕法が用いられている。しかし、これらの物理的破砕法はタンパク質を取り出す際、大腸菌の細胞内に存在する目的のタンパク質以外の物質も大量に混入するため、純度が低下するという問題がある。
この問題を解決する有用物質の生産方法として、有用物質を分泌生産する方法が知られている。有用物質の分泌生産は、目的の有用物質を高純度で獲得する目的でも、高い生産性を達成する目的でも有効である。
分泌生産を行う際、高い生産性を持続でき、生産時間を長くすることが生産性の向上につながる。しかし、高い生産性を持続させるために必要な因子については知られていない。
すなわち、本発明は、下記(a)及び(b)の工程を含む有用物質の細胞外分泌生産方法であって、工程(a)に要する時間の10%以上の時間の間、工程(a)における培養液中のタンパク質濃度が15〜500g/Lであり、有用物質がペプチド又はタンパク質であり、有用物質を生産する細菌が大腸菌であり、界面活性剤(B)が両性界面活性剤(B1)又はアニオン性界面活性剤(B2)である有用物質製造方法である。
工程(a):有用物質を生産する細菌を培養する培養液と界面活性剤(B)とを同時に存在させて有用物質を細胞外に分泌させる工程。
工程(b):細菌と、培養液及び有用物質とを分離する工程。
界面活性剤を用いる有用物質の分泌生産過程で本発明の培養方法を用いることで、有用物質の生産量を増大させる事が出来る。
アミノ酸型両性界面活性剤(B1−1−1)は、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
[R−NH−(CH2)n−COO]mM (1)
一般式(1)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nは1又は2の整数である。mは1又は2の整数である。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(アミン及びアルカノールアミン等由来のカチオンを含む)及び第4級アンモニウム等の1価又は2価のカチオンである。
また、(B1−1−1)は、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤(コカミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム及びラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等);アルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウム等)及びN−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。
R−N+(CH3)2−CH2COO- (2)
一般式(2)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。
水性希釈液における、界面活性剤(B)の合計濃度は、対象となる細菌、生理活性物質の種類及び分泌方法の種類によって適宜選択されるが、有用物質の分泌性及びハンドリング性の観点から、水性希釈液の重量を基準として、0.1〜99重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜50重量%である。
工程(a):有用物質を生産する細菌を培養する培養液と界面活性剤(B)とを同時に存在させて有用物質を細胞外に分泌させる工程。
工程(b):細菌と、培養液及び有用物質とを分離する工程。
培養液中に加えるタンパク質としては、ポリペプトン、バクトトリプトン、ラクトアルブミン、大豆フレーク、酵母エキス、肉エキス、血液、血清、コーンスティープリカー、ホエー、ピーナッツミル、綿実ミル、カゼイン、ゼラチン、魚粉及びこれらの分解物であるタンパク質が挙げられる。
(i)遺伝子組み換え
(i−1)目的タンパク質を発現している細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、DNAをファージ又はプラスミドに組み込む。もしくは、ゲノムDNA上の有用遺伝子を直接PCR(Polymerase Chain Reaction)等の方法で増幅し、該DNAをファージ又はプラスミドに組み込む。
(i−2)得られた組み換えファージ又はプラスミドで宿主を形質転換し、培養後、目的タンパク質遺伝子の一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション、あるいは抗体を用いたイムノアッセイ法により目的とするDNAを含有するファージあるいはプラスミドを単離する。
(i−3)その組み換えファージDNA又はプラスミドから目的とするクローン化DNAを切りだし、該クローン化DNA又はその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって製造することができる。内膜を移行させるシグナル配列(ペリプラズム間隙に目的物質を発現させるシグナル配列)をコードするDNAを同時に連結することもできる。
(ii−1)有用物質生産用細菌を発現ベクターで形質転換し培養する。培養は寒天培地上で通常15〜43℃で3〜72時間行う。
(ii−2)培養に用いる培養液を121℃、20分間オートクレーブ滅菌を行い、ここに寒天培地に培養した組み換え細菌を植菌し本培養を開始する。本培養は、通常15〜43℃で12〜72時間行う。本工程で界面活性剤(B)を添加する。培養の始めから界面活性剤(B)を使用する場合は、(B)と培養液を混合し均一化したものを、培養液として用いる。培養を開始した後(B)を使用する場合は、培養開始直後から培養開始後72時間後までの間に界面活性剤(B)を加えて培養を5〜100時間継続する。
本培養において、培養の始めから(B)を使用する場合は本培養は工程(a)を指し、培養を開始した後(B)を使用する場合は(B)を加えた時点からが工程(a)である。
工程(a)においてタンパク質濃度を測定する。細菌と界面活性剤(B)の両方が含まれた時点及びその時点から、0.5〜12時間おきにサンプリングし、タンパク質濃度を測定し、縦軸をタンパク質濃度、横軸を時間としてグラフを描き、タンパク質濃度が上記の濃度である時間の割合を確認する。タンパク質濃度は、タンパク質又は培養液を加え、その量を調整することで調製する。
(ii−2)において、細菌の濃度は1〜1013細胞/mlが好ましく、さらに好ましくは102〜1011細胞/mlである。
(ii−2)において、界面活性剤(B)の使用量(重量%)は、上記の通りである。
(iii−1)遠心分離、中空糸分離、ろ過等により細菌と培養液及び有用物質とに分離される。
(iii−2)有用物質及び培養液は、さらにイオン交換カラム、ゲルろ過カラム、疎水カラム、アフィニティカラム及び限外カラム等のカラム処理を繰り返し、エタノール沈殿、硫酸アンモニウム沈殿及びポリエチレングリコール沈殿等の沈殿処理を必要に応じ適宜おこなうにことよって有用物質と培養液に分離精製される。
プライマー1と2(表1)を用いてPCR法によりBacillus licheniformisのsubtilisin Carlsberg遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、プロテアーゼを発現する大腸菌(α)を作成した。
プライマー3と4(表1)を用いてPCR法によりBacillus licheniformisのbglC遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、セルラーゼを発現する大腸菌(β)を作成した。
プライマー5と6(表1)を用いてPCR法によりThermomyces lanuginosusのlip遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、リパーゼを発現する大腸菌(γ)を作成した。
プライマー7と8(表1)を用いてPCR法によりBacillus licheniformisのamyK遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとEcoRIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとEcoRI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、アミラーゼを発現する大腸菌(δ)を作成した。
大腸菌(α)〜(δ)をLB培養液(バクトトリプトン10g/L、イーストエキストラクト5g/L、NaCl10g/L、アンピシリン100mg/L)10mlに白金耳で植菌して37℃で一夜振とう培養を行った。この培養液を100mg/L アンピシリンを含有するTB培養液(Difco社)200mlに植菌し37℃で培養を行った。培養液の濁度が2.0になったときに、0.1mMになるようにIPTGを添加し、0.3重量%になるようにポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩(三洋化成工業(株)製、商品名「ビューライトLCA−25N」)を添加した。その後もさらに培養を継続し、1時間おきに15mlずつサンプリングを行い、遠心分離を行い上清を回収し、生産した組み換えタンパク質の量はSDS−PAGE法により定量を行い、培養液中のタンパク質濃度はBCA法(Micro BCA Protein Assay Kit(PIERCE社))により定量を行った。生産したタンパク質を定量した結果は、比較例1〜4の定量値を1.00とし、実施例1〜10の結果を、比較例1〜4の定量値を基準とする相対値で示した。結果を表2〜4にまとめた。
比較例1において、LB培地で終夜培養を行った大腸菌(α)をTB培養液に植菌する前のTB培養液にラクトアルブミンを加えた事以外は比較例1と同様にして培養し、比較例1と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びプロテアーゼ量の比較例1との定量値を基準とする相対値の結果を表2にまとめた。
比較例1において、LB培地で一夜培養を行った大腸菌(α)をTB培養液に植菌する前のTB培養液に肉エキス(和光純薬工業製)を加えた事以外は比較例1と同様にして培養し、比較例1と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びプロテアーゼ量の比較例1との定量値を基準とする相対値の結果を表2にまとめた。
比較例1において、LB培地で一夜培養を行った大腸菌(α)をTB培養液に植菌する前のTB培養液にポリペプトン(日本製薬製)を加えた事以外は比較例1と同様にして培養し、比較例1と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びプロテアーゼ量の比較例1との定量値を基準とする相対値の結果を表2にまとめた。
比較例1において、LB培地で一夜培養を行った大腸菌(α)をTB培養液に植菌する前のTB培養液に大豆タンパク質(和光純薬工業製)を加えた事以外は比較例1と同様にして培養し、比較例1と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びプロテアーゼ量の比較例1との定量値を基準とする相対値の結果を表2にまとめた。
比較例2において、LB培地で一夜培養を行った大腸菌(β)をTB培養液に植菌する前のTB培養液にラクトアルブミン(和光純薬工業製)を加えた事以外は比較例2と同様にして培養し、比較例2と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びセルラーゼ量の比較例2との定量値を基準とする相対値の結果を表3にまとめた。
比較例3において、LB培地で一夜培養を行った大腸菌(γ)をTB培養液に植菌する前のTB培養液にラクトアルブミンを加えた事以外は比較例3と同様にして培養し、比較例3と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びリパーゼ量の比較例3との定量値を基準とする相対値の結果を表4にまとめた。
比較例4において、LB培地で一夜培養を行った大腸菌(δ)をTB培養液に植菌する前のTB培養液にラクトアルブミンを加えた事以外は比較例4と同様にして培養し、比較例4と同様の方法を用いて評価をおこなった。培養液中のタンパク質濃度及びアミラーゼ量の比較例4との定量値を基準とする相対値の結果を表5にまとめた。
pET−22bプラスミド(Novagen社)を、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、ペプチドを発現する大腸菌(ε)を作成した。
大腸菌(ε)をLB培養液(バクトトリプトン10g/L、イーストエキストラクト5g/L、NaCl10g/L、アンピシリン100mg/L)10mlに白金耳で植菌して37℃で一夜振とう培養を行った。この培養液を100mg/L アンピシリンを含有するTB培養液(Difco社)200mlに植菌し37℃で培養を行った。培養液の濁度が2.0になったときに、0.1mMになるようにIPTGを添加し、0.3重量%になるようにTritonX−100を添加した。その後もさらに培養を継続し、1時間おきに15mlずつサンプリングを行い、遠心分離を行い上清を回収し、生産したペプチドの量はウエスタンブロット法により抗Hisタグ抗体を用いて定量を行い、培養液中のタンパク質濃度はBCA法(Micro BCA Protein Assay Kit(PIERCE社))により定量を行った。生産したペプチドを定量した結果は、比較例5の定量値を1.00とし、実施例11の結果は、比較例5の定量値を基準とする相対値で示した。結果を表6にまとめた。
集菌した大腸菌(ε)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、比較例5の定量値を基準とする相対値を算出し、結果を表6にまとめた。
製造例2で得た大腸菌(β)の終夜培養液10mlを作製し、250ml培養液(TB培養液(Difco社)、0.7重量%硫酸アンモニウム、0.05重量%クエン酸2アンモニウム、1mM硫酸マグネシウム)に植菌し1L微生物培養装置(エイブル社)を用いてpH7.0、37℃で維持したまま培養を行った。培養開始3時間後に、1M IPTGを0.75mlと0.3重量%になるようにヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(三洋化成工業(株)製、商品名「レボン2000」)を加えた。培養開始8時間後から、50%グリセリンを2ml/時間の速度で滴下して、12時間おきに15mlずつサンプリングを行い、遠心分離を行い上清を回収し、生産したセルラーゼの量は60時間目に回収したサンプルをSDS−PAGEにより解析してバンドの定量を行い、培養液中のタンパク質濃度はBCA法(Micro BCA Protein Assay Kit(PIERCE社))により定量を行った。生産したセルラーゼを定量した結果は、比較例6の定量値を1.00とし、実施例12及び13の結果は、比較例6の定量値を基準とする相対値で示した。結果を表7にまとめた。
<実施例12、実施例13>
微生物培養装置中の培養液に培養開始時からラクトアルブミンを加えていたこと以外は、比較例6と同様に行い、比較例6の定量値を基準とする相対値を算出し表7にまとめた。
表7の培養時間が長時間(60時間)の場合も同様に、本発明の方法を用いた実施例12及び13は、培養液中のタンパク質濃度を15g/L以上にすることで、比較例6よりも有用物質の生産量が増大することが分かる。さらに、培養液中のタンパク質濃度を15g/L以上で長時間保つ方が有用物質の生産量が増大することが分かる。
Claims (1)
- 下記(a)及び(b)の工程を含む有用物質の細胞外分泌生産方法であって、工程(a)に要する時間の10%以上の時間の間、工程(a)における培養液中のタンパク質濃度が15〜500g/Lであり、有用物質がペプチド又はタンパク質であり、有用物質を生産する細菌が大腸菌であり、界面活性剤(B)が両性界面活性剤(B1)又はエーテルカルボン酸(B2−1)及びその塩であるアニオン性界面活性剤(B2)である有用物質製造方法。
工程(a):有用物質を生産する細菌を培養する培養液と界面活性剤(B)とを同時に存在させて有用物質を細胞外に分泌させる工程。
工程(b):細菌と、培養液及び有用物質とを分離する工程。
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