JP2014011992A - 改変ヒアルロン酸合成酵素の生産方法及び改変ヒアルロン酸合成酵素 - Google Patents

改変ヒアルロン酸合成酵素の生産方法及び改変ヒアルロン酸合成酵素 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒアルロン酸合成酵素のアミノ酸配列の一部を欠失させ、改変したヒアルロン酸合成酵素を大量に得ることができる生産方法を提供することを目的とする。
【解決手段】クラス1に属する微生物由来のヒアルロン酸合成酵素(A)の膜貫通領域の少なくとも1つを欠失させた改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法であって、下記遺伝子(a’)を宿主(M)に導入して発現株(M’)とし、発現株(M’)を培養する改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法;改変ヒアルロン酸合成酵素。
遺伝子(a’):(A)をコードする遺伝子(a)から、(X)において(A)から欠失している膜貫通領域に相当する遺伝子が欠失した遺伝子。
【選択図】なし

Description

本発明は、改変ヒアルロン酸合成酵素の生産方法及び改変ヒアルロン酸合成酵素に関する。
細菌は、アミノ酸やタンパク質等を生産するために広く利用されている。特に近年は、医薬上・産業上有用なタンパク質の遺伝子を、遺伝子工学技術を活用して細菌に導入して形質転換し、この細菌を培養してタンパク質を発現させ、目的のタンパク質を効率的に生産する技術が知られている。生産したタンパク質は、工業用、食品加工用及び医薬品用等のタンパク質として幅広く用いられている。
膜タンパク質は、細胞膜上に存在するタンパク質であり、その特有の疎水性のため、細菌で生産しようとすると不活性の封入体となりやすく、また生産量が少量(50mg/L以下)である問題がある(非特許文献1)。
膜タンパク質を細菌から活性がある状態で取り出すには、細菌の膜成分ごと取り出す必要があり、工程が複雑となる問題もある。これらの理由から、現在まで膜タンパク質は商業利用されていない。
膜タンパク質の1つとして、ヒアルロン酸合成酵素がある。ヒアルロン酸合成酵素はウリジル二リン酸(UDP)−グルクロン酸とウリジル二リン酸(UDP)−N−アセチルグルコサミンとからヒアルロン酸を合成する反応を触媒する酵素である。ヒアルロン酸合成酵素は、不純物が少なく、分子量が均一なヒアルロン酸を合成できることから注目されている。しかしながら、ヒアルロン酸合成酵素は膜タンパク質であることから、細菌による生産量が少量であり、さらに活性がある状態で取り出すには、細菌の膜成分ごと取り出す必要があり工程が複雑であるという問題がある(非特許文献2)。
生物工学会誌、香山憲夫 他、2000年、第78巻、第3号、p82−93 Valarie L.、The Journal Of Biological Chemistry、1999年、Vol.274、No.7、p4246−4253
本発明は、ヒアルロン酸合成活性を有する酵素を大量に得ることができる生産方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、クラス1に属する微生物由来のヒアルロン酸合成酵素(A)の膜貫通領域の少なくとも1つを欠失させた改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法であって、下記遺伝子(a’)を宿主(M)に導入して発現株(M’)とし、発現株(M’)を培養する改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法;この生産方法により生産された改変ヒアルロン酸合成酵素である。
遺伝子(a’):(A)をコードする遺伝子(a)から、(X)において(A)から欠失している膜貫通領域に相当する遺伝子が欠失した遺伝子。
本発明の改変ヒアルロン酸合成酵素の生産方法は、ヒアルロン酸合成活性を有する酵素を大量に得ることが可能である。
本発明の生産方法は、クラス1に属する微生物由来のヒアルロン酸合成酵素(A)の膜貫通領域の少なくとも1つを欠失させた改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法である。ヒアルロン酸合成酵素(A)は、生産量が少ないという問題があるが、本発明の生産方法を用いれば、ヒアルロン酸合成活性を有する酵素(改変ヒアルロン酸合成酵素(X))を大量に得ることができる。また、本発明の生産方法により得られた改変ヒアルロン酸合成酵素(X)は、宿主から取り出す際に不活性な封入体となりにくい。したがって、本発明の生産方法によれば、ヒアルロン酸合成酵素の生産量向上が可能になる。
本発明において、ヒアルロン酸合成酵素(A)は、膜タンパク質の1種であり、膜貫通領域を少なくとも1つ有するタンパク質である。
膜タンパク質とは、細胞の脂質膜に存在するタンパク質であり、細菌内では細胞の脂質膜に結合しているタンパク質である。
膜貫通領域とは、膜タンパク質のアミノ酸配列中、細胞膜を貫通している部位であり、膜タンパク質をX線構造解析で解析することで特定することができる。
ヒアルロン酸合成酵素(A)は、ウリジン2リン酸−グルクロン酸とウリジン2リン酸−N−アセチルグルコサミンとから、ヒアルロン酸を合成するヒアルロン酸合成活性を有する酵素である。ヒアルロン酸合成活性は、具体的には、ウリジン2リン酸−グルクロン酸及びウリジン2リン酸−N−アセチルグルコサミンを糖供与体として、グルクロン酸がβ1,3結合でN−アセチルグルコサミンに結合した二糖単位の、β1,4結合による繰り返し構造を有するオリゴ糖を合成する能力をいう。
(A)としては、上記ヒアルロン酸合成活性を有する従来のクラスIに属する微生物由来のヒアルロン酸合成酵素であれば特に限定されないが、例えば、参考文献1(The Journal of Biological Chemistry,2007,Vol.282,No.51,P36777−36781)に記載されているクラスIに属する微生物由来のヒアルロン酸合成酵素が挙げられる。
クラスIとは、酵素のアミノ酸配列の相同性によって分類されたものである。クラスIに属するヒアルロン酸合成酵素には、微生物由来のもの(A−1)及び(A−1)が化学的に修飾された変異体(A−2)が含まれる。
(A−1)としては、アフリカツネガエル由来ヒアルロン酸合成酵素並びにストレプトコッカス属由来ヒアルロン酸合成酵素{例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素等(例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒアルロン酸合成酵素等)、ストレプトコッカス・エクイシミリス由来ヒアルロン酸合成酵素(例えば、配列番号4のアミノ酸配列を有するヒアルロン酸合成酵素等)、ストレプトコッカス・ウベリス由来ヒアルロン酸合成酵素(例えば、配列番号3のアミノ酸配列を有するヒアルロン酸合成酵素等)及びストレプトコッカス・パラウベリス(例えば、配列番号12のアミノ酸配列を有するヒアルロン酸合成酵素等)等}等が挙げられる。
(A−2)としては、上記(A−1)のアミノ酸配列にカルボジイミド化合物、無水コハク酸、ヨード酢酸及び/又はイミダゾール化合物等を作用させて化学修飾したもの等が挙げられる。
ヒアルロン酸合成酵素(A)のうち、酵素活性の観点から、好ましくはストレプトコッカス属由来ヒアルロン酸合成酵素が好ましく、さらに好ましくはストレプトコッカス・ピオゲネス由来、ストレプトコッカス・ウベリス由来、ストレプトコッカス・エクイシミリス由来及びストレプトコッカス・パラウベリス由来のヒアルロン酸合成酵素であり、次にさらに好ましくは配列番号1、3及び4のアミノ酸配列を有するヒアルロン酸合成酵素であり、特に好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を有するヒアルロン酸合成酵素である。
ヒアルロン酸合成酵素(A)の膜貫通領域は、X線構造解析により特定することができる。具体的には、ヒアルロン酸合成酵素(A)のタンパク質結晶を作成し、X線を当てその回折像で構造を特定する方法であり、参考文献2(Luecke,H.;Schobert,B.;Richter,H.T.;Cartailler,J.P.;Lanyi,J.K.(1999).”Structure of bacteriorhodopsin at 1.55 A resolution.”J.Mol.Biol.291(4):p899−911)に準じてX線構造解析をし、参考文献3(Biochim Biophys Acta,1975 Mar 25;382(3):p322−35)の記載に準じて、回折像の電子密度から膜貫通領域を特定する。
ヒアルロン酸合成酵素(A)が配列番号1のアミノ酸配列である場合、膜貫通領域は6〜28位、290〜312位、323〜345位、356〜378位である。
また、(A)が配列番号3のアミノ酸配列である場合、膜貫通領域は6〜28位、34〜56位、328〜350位、354〜376位、380〜402位である。(A)が配列番号4のアミノ酸配列である場合、膜貫通領域は6〜28位、35〜57位、314〜336位、346〜368位及び371〜393位である。(A)が配列番号12のアミノ酸配列である場合、膜貫通領域は13〜35位、292〜314位、324〜346位、348〜370位である。
本発明において、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)のアミノ酸配列は、ヒアルロン酸合成酵素(A)のアミノ酸配列が有する膜貫通領域のうち、少なくとも1つを欠失させたものであればよく、生産性(ヒアルロン酸合成酵素を大量に得る)の観点から、欠失させる領域数は、N末端側全てもしくはC末端側全てを欠損させることが好ましく、さらに好ましくは全てを欠損させることである。
欠失させる膜貫通領域は、(A)のアミノ酸配列のN末端側の膜貫通領域及び/又はC末端側の膜貫通領域であることが好ましく、さらに好ましくはN末端側の膜貫通領域及びC末端側の膜貫通領域である。
本発明の生産方法により得た改変ヒアルロン酸合成酵素(X)は、ヒアルロン酸合成酵素(A)と比較して、活性部位は変化していないので、改変する前のヒアルロン酸合成酵素(A)と同程度以上のヒアルロン酸合成活性を有する。また、宿主から取り出した際、不活性の封入体となりにくいので、ヒアルロン酸合成酵素(A)以上のヒアルロン酸合成活性を有し、水中での安定性も高い。
改変ヒアルロン酸合成酵素のアミノ酸配列として、生産量向上及び高活性の改変ヒアルロン酸合成酵素を得る観点から、下記が好ましい。
(A)が配列番号1のヒアルロン酸合成酵素である場合、1〜63位及び289〜395位を欠失{64位よりN末端側と287位よりC末端側を欠失}させた配列番号2の改変ヒアルロン酸合成酵素が好ましい。
(A)が配列番号3のヒアルロン酸合成酵素である場合、1〜88及び313〜417位を欠失{89位よりN末端側と312位よりC末端側を欠失}させた配列番号11の改変ヒアルロン酸合成酵素が好ましい。
(A)が配列番号4のヒアルロン酸合成酵素である場合、1〜88位及び314〜417位を欠失{89位よりN末端側と313位よりC末端側を欠失}させた配列番号10の改変ヒアルロン酸合成酵素が好ましい。
(A)が配列番号12のヒアルロン酸合成酵素である場合、1〜67位及び292〜397位を欠失{68位よりN末端側と291位よりC末端側を欠失}させた配列番号13の改変ヒアルロン酸合成酵素が好ましい。
本発明の生産方法は、下記遺伝子(a’)を宿主(M)に導入して発現株(M’)とし、発現株(M’)を培養する改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法である。
遺伝子(a’):(A)をコードする遺伝子(a)から、(X)において(A)から欠失している膜貫通領域に相当する遺伝子が欠失した遺伝子。
遺伝子(a’)は、ヒアルロン酸合成酵素(A)をコードする遺伝子(a)をクローニングし、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)においてヒアルロン酸合成酵素(A)から欠失している膜貫通領域に相当する遺伝子を突然変異処理等により欠失させることで得ることができる。
突然変異処理としては、当分野で知られている従来の方法を用いることができ、特に制限はないが、例えば、Site−Directed Mutagenesis System Mutan(登録商標)−Super Express Kmキット(TAKARA BIO Inc.)等を用いて行なう部位特異的変異、リコンビナントPCR(polymerase chain reaction)法(PCR protocols, Academic Press, New York, 1990)、SOE(splicing by overlap extension)−PCR法(Gene,77,61,1989)等が挙げられる。
宿主(M)としては、動物細胞、微生物及び植物細胞等が挙げられる。
動物細胞としては、特に限定されないが、昆虫細胞、サル細胞COS−7、Vero、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞及びCHO細胞等が挙げられる。
昆虫細胞としては、特に限定されないが、Sf9細胞及びSf21細胞等が挙げられる。
微生物としては、特に限定されないが、細菌及び酵母等が挙げられる。
細菌としては、真正細菌及び古細菌が含まれる。
真正細菌には、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が含まれる。グラム陰性細菌としては、エシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)等が挙げられる。グラム陽性菌としては、バチルス属(Bacillus属)、ストレプトマイセス属(Streptmyces属)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)、ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium属)、ラクトコッカス属 (Lactococcus属)、エンテロコッカス属 (Enterococcus属)、ペディオコッカス属(Pediococcus属)、リューコノストック属 (Leuconostoc属)、ストレプトマイセス属(Streptomyces属)等が挙げられる。
植物細胞としては、特に限定されないが、BY−2細胞等が挙げられる。
本発明において、宿主(M)としては、クローニングの容易さの観点から、微生物が好ましく、さらに好ましくは細菌であり、次にさらに好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)であり、特に好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、シュワネラ属菌(Shewanella)、バチルス属(Bacillus属)及びブレビバチルス属(Brevibacillus属)である。
遺伝子(a’)を宿主(M)に導入して発現株(M’)とする方法としては、当分野で従来用いられている常法に準じて行うことができる。例えば、目的とする宿主内で遺伝子を発現するのに適した任意のベクターに、遺伝子(a’)を組込み、この組換えベクターを用いて宿主を形質転換して発現株(M’)とする。
本発明の組換えベクターは、遺伝子(a’)を含有すれば特に限定されず、適当なベクターに遺伝子(a’)を挿入することによって得ることができる。
ベクターは種々のものが公知であり、市販品も多く存在する。当業者であれば、宿主の種類に応じて適切なベクターを容易に選択することができる。ベクターの具体例としては、pETシリーズ、pUCシリーズなどが挙げられる。
組換えベクターの調製方法自体は周知の常法である。適当なベクターに本発明の遺伝子を挿入し、宿主を形質転換する具体的な方法としては、エレクトロポレーション法、カルシウム法等が挙げられる。
発現株(M’)の培養は、発現株(M’)の資化可能な炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地等に接種し、常法に従って行えばよい。
本発明において、発現株(M’)から改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を採取及び精製する方法としては、常法に準じて行うことができる。例えば、発現株(M’)が細菌であり、培養液中で培養した場合は、培養物から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段により目的酵素を濃縮することができる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが、更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
本発明において、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を大量に得る観点から、下記工程(I)を含む生産方法で生産することが好ましい。
工程(I):遺伝子(a’)を導入した発現株(M’)を、培養液中で培養する工程。
上記工程(I)において、発現株(M’)としては、改変ヒアルロン酸合成酵素の生産量の観点から、微生物が好ましく、さらに好ましくは細菌である。
培養液は、一般的には、発現株(M’)及び培地を含有し、発現株(M’)を培養するための液体である。
培地とは、発現株(特に微生物)の培養において生育環境を提供するものをいい、具体的には、水等の水性媒体中に炭素源、窒素源及び無機塩類等を溶解したものをいう。培地は、当該微生物が資化しうる炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有していればよい。各成分の量も限定されず、当業者が適宜選択することができる。培地として、具体的には、肉汁培地、肉汁ゼラチン培地、硝酸塩培地、牛乳培地、コーンミール培地、MR−VP培地、トマトジュース培地、TSI培地、SIM培地、グルコース−ブイヨン培地、YM培地、細菌用完全培地、Lennox培地(L培地)、LB培地、大腸菌用最少培地(Davis培地)、大腸菌用最少塩培地(MS)、トリス−グルコース培地(TG培地)、EMB糖指示培地、枯草菌用最少培地(Spizizen 最少培地)、無機塩類液、枯草菌用最少塩培地、枯草菌形質転換用培地I、枯草菌形質転換用培地II、酵母用完全培地(YPAD)、酵母用最少培地、アカパンカビ用完全培地、アカパンカビ用最少培地(Vogel 培地 N)、アカパンカビ交雑用最少培地、アスペルギルス用完全培地(ANA培地)及びツァペック−ドッグス培地等が挙げられる。
また、培養液には、必要によりさらに、炭素源、窒素源及び無機塩類等を溶解してもいい。炭素源としては、細菌がATP(アデノシン三リン酸)を合成でき、なおかつ代謝により同化できる物であり、グルコース等の糖、脂質及びタンパク質等が挙げられる。窒素源としては、細菌がタンパク質や核酸の生合成に用いることができる物であり、タンパク質、アミノ酸、アンモニア及び尿素等が挙げられる。無機塩類としては、硫酸アンモニウム等が挙げられる。
培養液に溶解する炭素源、窒素源及び無機塩類等の量は特に限定されない。
培養液中には、界面活性剤(B)を含有してもいい。界面活性剤(B)を含む培養液中で発現株(M’)(発現株として好ましくは細菌、特に好ましくは微生物)を培養すると、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)をさらに大量に得ることができるので好ましい。
界面活性剤(B)を含有する方法で培養する場合は、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)に内膜分泌用のタグを融合して発現させ、かつ宿主としてグラム陰性菌を用いることが望ましい。グラム陰性菌は内膜の外側にペプチドグリカン層や外膜を有しているため、通常は改変ヒアルロン酸合成酵素は培養液中へ分泌されない。内膜分泌用のタグを融合して発現させることで、培養液中に分泌させることができる。
内膜分泌用のタグとしては、PelB、OmpA、StII、PhoA、OmpF、PhoE、MalE、OmpC、Lpp、LamB、OmpT、LTB及びTorA等に由来するシグナル配列又はバチルス属(Bacillus)由来のエンドキシラナーゼ等に由来するシグナル配列が挙げられる。これらのタグを融合した改変ヒアルロン酸合成酵素は、グラム陰性菌が有する内膜移行機構のSec経路又はTAT経路等を通してペリプラズムに移行されるため、培養液中へ分泌されやすくなる。
界面活性剤(B)には、両性界面活性剤(B1)、アニオン性界面活性剤(B2)、ノニオン性界面活性剤(B3)及びカチオン性界面活性剤(B4)が含まれる。
両性界面活性剤(B1)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤(B1−1)、硫酸エステル塩型両性界面活性剤(B1−2)、スルホン酸塩型両性界面活性剤(B1−3)及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤(B1−4)等が含まれる。
カルボン酸塩型両性界面活性剤(B1−1)としては、アミノ酸型両性界面活性剤(B1−1−1)、ベタイン型両性界面活性剤(B1−1−2)及びイミダゾリン型両性界面活性剤(B1−1−3)等が挙げられる。
アミノ酸型両性界面活性剤(B1−1−1)としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
[R−NH−(CH−COOM (1)
一般式(1)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nは1以上の整数である。mは1又は2の整数である。Mはプロトン;又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(アミン及びアルカノールアミン等由来のカチオンを含む)及び第4級アンモニウム等の1価又は2価のカチオンである。
また、(B1−1−1)として具体的には、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤(コカミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム及びラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等);アルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウム等)及びN−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。
ベタイン型両性界面活性剤(B1−1−2)は、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤である。(B1−1−2)は下記一般式(2)で示される化合物が含まれる。(B1−1−2)として具体的には、アルキルジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、アミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)及びラウリン酸アミドプロピルベタイン等)及びアルキルジヒドロキシアルキルベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)、硬化ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
R−N(CH−CHCOO (2)
一般式(2)中、Rは炭素数1〜20の1価又は2価の炭化水素基を含む置換基である。
イミダゾリン型両性界面活性剤(B1−1−3)としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
その他の両性界面活性剤としては、ナトリウムラウロイルグリシン、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩及びジオクチルジアミノエチルグリシン塩酸塩等のグリシン型両性界面活性剤;ペンタデシルスルホタウリン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;コールアミドプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸(CHAPS)、コールアミドプロピルジメチルアンモニオ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CHAPSO);ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤等が含まれる。
アニオン性界面活性剤(B2)としては、エーテルカルボン酸(B2−1)及びその塩、硫酸エステル(B2−2)又はその塩、エーテル硫酸エステル(B2−3)及びその塩、スルホン酸塩(B2−4)、スルホコハク酸塩(B2−5)、リン酸エステル(B2−6)及びその塩、エーテルリン酸エステル(B2−7)及びその塩、脂肪酸塩(B2−8)、アシル化アミノ酸塩並びに天然由来のカルボン酸及びその塩(ケノデオキシコール酸、コール酸及びデオキシコール酸等)等が挙げられる。
エーテルカルボン酸(B2−1)又はその塩としては炭化水素基(炭素数8〜24)を有するエーテルカルボン酸及びその塩が含まれる。(B2−1)又はその塩として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテル酢酸ナトリウム塩及びラウリルグリコール酢酸ナトリウム塩等が挙げられる。
硫酸エステル(B2−2)及びその塩としては、炭化水素基(炭素数8〜24)を有する硫酸エステル及びその塩が含まれる。(B2−2)及びその塩として具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム塩及びラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
エーテル硫酸エステル(B2−3)及びその塩としては、炭化水素基(炭素数8〜24)を有するエーテル硫酸エステル及びその塩が含まれる。(B2−3)及びその塩として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
スルホン酸塩(B2−4)としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びナフタレンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
スルホコハク酸塩(B2−5)としては、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸二ナトリウム塩、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム塩及びスルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム塩等が挙げられる。
リン酸エステル(B2−6)及びその塩としては、オクチルリン酸二ナトリウム塩及びラウリルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
エーテルリン酸エステル(B2−7)及びその塩としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸二ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
脂肪酸塩(B2−8)としては、オクチル酸ナトリウム塩、ラウリル酸ナトリウム塩及びステアリン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤(B3)としては、アルコールアルキレンオキサイド(以下、アルキレンオキサイドはAOと略記)付加物(B3−1)、アルキルフェノールAO付加物(B3−2)、脂肪酸AO付加物(B3−3)及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(B3−4)等が含まれる。
ノニオン性界面活性剤の親水性及び疎水性を示す尺度としてHLBが知られている。HLBとは、親水性と親油性のバランスを示す指標であって、例えば「界面活性剤入門」〔2007年三洋化成工業株式会社発行、藤本武彦著〕212頁に記載されている小田法による計算値として知られているものであり、グリフィン法による計算値ではない。HLBが高いほど親水性が高い。HLBの値は有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB≒10×無機性/有機性
HLBを導き出すための有機性の値及び無機性の値については前記「界面活性剤入門」213頁に記載の表の値を用いて算出できる。
ノニオン性界面活性剤(B3)のHLBは、分泌効率の観点から、0〜13が好ましく、さらに好ましくは5〜13であり、次にさらに好ましくは8〜13である。
アルコールAO付加物(B3−1)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが含まれる。(B3−1)として具体的には、炭素数8〜24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドはEOと略記)0〜20モル及び/又はプロピレンオキサイド(以下、プロピレンオキサイドはPOと略記)1〜20モル付加物(ブロック付加物及び/又はランダム付加物を含む。以下同様)[例えば、デシルアルコールのEO8モル/PO7モルブロック付加物]が含まれる。(B3−1)としてさらに具体的には、ラウリルアルコールEO7モル付加物(HLB=12.4)、オレイルアルコールEO5モル付加物(HLB=9.0)、オレイルアルコールEO6モル付加物(HLB=10.2)、オレイルアルコールEO7モル付加物(HLB=11.0)及びオレイルアルコールEO10モル付加物(HLB=12.4)、1,2−ドデカンジオールモノオキシエチレン付加物等が挙げられる。
アルキルフェノールAO付加物(B3−2)としては、炭素数6〜24のアルキル基を有するアルキルフェノールAO付加物が含まれる。(B3−2)として具体的には、オクチルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物並びにノニルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物等が挙げられる。また、TRITONTMX−114(HLB=12.4)、igepalTMCA−520(HLB=10.0)及びigepalTMCA−630(HLB=13.0)等が市場から容易に入手できる。
脂肪酸AO付加物(B3−3)としては、炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物が含まれる。(B3−3)として具体的には、オレイン酸EO9モル付加物(HLB=11.8)、ジオレイン酸EO12モル付加物(HLB=10.4)、ジオレイン酸EO20モル付加物(HLB=12.9)及びステアリン酸EO9モル付加物(HLB=11.9)等が挙げられる。
多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(B3−4)としては、炭素数2〜36の2〜8価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のEO及び/又はPO付加物;前記多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物、並びに、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等)及びこれらのAO付加物が含まれる。(B3−4)として具体的には、ソルビタンテトラオレイン酸エステルEO付加物(HLB=11.4)及びソルビタンヘキサオレイン酸エステルEO付加物(HLB=10.2)等が挙げられる。
カチオン界面活性剤(B4)としては、アミン塩型カチオン界面活性剤(B4−1)及び第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(B4−2)等が含まれる。
アミン塩型カチオン界面活性剤(B4−1)としては、1〜3級アミンを無機酸(塩酸、硝酸、硫酸、ヨウ化水素酸など)または有機酸(酢酸、ギ酸、蓚酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、アルキル燐酸など)で中和したものが含まれる。例えば、第1級アミン塩型のものとしては、脂肪族高級アミン(ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン、ロジンアミンなどの高級アミン)の無機酸塩または有機酸塩;低級アミン類の高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸など)塩などが挙げられる。第2級アミン塩型のものとしては、例えば脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物などの無機酸塩または有機酸塩が挙げられる。また、第3級アミン塩型のものとしては、例えば、脂肪族アミン(トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど)、脂肪族アミンのエチレンオキサイド(2モル以上)付加物、脂環式アミン(N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンなど)、含窒素ヘテロ環芳香族アミン(4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール、4,4’−ジピリジルなど)の無機酸塩または有機酸塩;トリエタノールアミンモノステアレート、ステアラミドエチルジエチルメチルエタノールアミンなどの3級アミン類の無機酸塩または有機酸塩などが挙げられる。
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(B4−2)としては、3級アミン類と4級化剤(メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸などのアルキル化剤;エチレンオキサイドなど)との反応で得られるものが含まれる。例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、セチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド、ステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなどが挙げられる。
界面活性剤(B)としては、生産量が多くなる観点及び分泌効率((X)が培養液中に分泌されやすくなる)の観点から、両性界面活性剤(B1)、アニオン系界面活性剤(B2)及びHLBが0〜13のノニオン系界面活性剤が好ましく、さらに好ましくはアニオン系界面活性剤(B2)及び両性界面活性剤(B1)が好ましく、次にさらに好ましくはカルボン酸塩型両性界面活性剤(B1−1)、エーテルカルボン酸(B2−1)及びスルホン酸塩(B2−4)であり、特に好ましくはポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸(B2−1)のナトリウム塩)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(B1−1−2)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(B1−1−2)、硬化ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(B1−1−2)、コカミノプロピオン酸ナトリウム(B1−1−1)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩(B2−4)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸(B2−1)のナトリウム塩)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸(B2−3)のナトリウム塩)である。
培養液中に(B)を含有すると、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)が発現株(M’)から培養液中に分泌されやすくなり、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)をさらに大量に得ることができる。
本発明の生産方法においては、上記界面活性剤(B)は1種用いてもよく、2種以上用いてもいい。
工程(I)において、界面活性剤(B)を含有する培養液を用いる場合、培養液中の(B)の含有量(重量%)は、対象となる発現株(M’)、生産される改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、培養液の重量を基準として、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産性及び高活性の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を得る観点から、0.01〜15が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.1〜5である。
また、発現株(M’)が細菌であり、界面活性剤(B)を含有する培養液を用いる場合、界面活性剤の分泌効率(%)が、生産性の観点から、1〜100であるものが好ましく、さらに好ましくは5〜100、次にさらに好ましくは10〜100、特に好ましくは50〜100である。
界面活性剤(B)の分泌効率とは、界面活性剤により細菌内の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)が細菌外(培養液中)へ分泌されること示している。
なお、本発明においては、下記式によって定義される。
分泌効率(%)=100×{(X/Y)−Z}
X:遠心分離による菌体除去後に残る培養液中の改変ヒアルロン酸合成酵素の量
Y:培養液中の全改変ヒアルロン酸合成酵素の量
Z:溶菌した細菌の割合を示し、下記の式によって定義される。
Z=Z1/Z2
Z1:遠心分離による菌体除去後に残る培養液中の細胞質内局在物質の量
Z2:培養液中の全細胞質内局在物質の量
なお細胞質内局在物質とは、細胞質内に存在している物質であり、溶菌によって培養液中に溶出される物質をさす。
分泌効率は、例えば細菌内で生産された改変ヒアルロン酸合成酵素(X)がより外膜移行するようにすれば分泌効率は上がり、より外膜移行しないようにすれば分泌効率は下がる。また、スクリーニングによって分泌効率の高い界面活性剤を選定することにより分泌効率を上げることができる。
界面活性剤(B)はあらかじめ培地と混合して使用する以外に、培地に宿主(M)を懸濁させた培養液に後から添加しても良い。後から添加する場合、改変ヒアルロン酸合成酵素を大量に得る観点から、培養後3〜72時間後に界面活性剤(B)を加えることが好ましい。
培地との混合は、4℃〜99℃で培養液に界面活性剤(B)を添加し、撹拌羽根又はスターラー等で撹拌することで行うことができる。後から混合する際は、撹拌羽根等で撹拌しながら添加することで行うことができる。
また、工程(I)において、発現株(M’)が細菌である場合、培養液中の乾燥菌体密度が、培養液の体積を基準として1.5〜500g/Lが好ましく、さらに好ましくは3〜200g/Lであり、特に好ましくは4〜100g/Lである。乾燥菌体密度が1.5g/L以上であることで、改変ヒアルロン酸合成酵素の生産量が高くなり、500g/L以下であることで、細菌が死ぬことなく、改変ヒアルロン酸合成酵素を効率よく分泌生産することができる。
さらに、細菌が大腸菌である場合の乾燥菌体密度は、培養液の体積を基準として、改変ヒアルロン酸合成酵素の生産量の観点から、1.5〜500g/Lが好ましく、さらに好ましくは3〜100g/Lであり、次にさらに好ましくは10〜50g/Lであり、最も好ましくは12〜27g/Lである。
本発明の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法において、上記範囲内であれば、乾燥菌体密度が大きければ大きいほど改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産量は増加する。
本発明において、乾燥菌体密度とは、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の分泌生産において、培養開始時から培養終了時までのいずれかの時点における培養液1L中に含まれる細菌の重量を表す。なお、この細菌の重量は、乾燥させた状態の細菌の重量である。
乾燥菌体密度は、次の手順(1)〜(5)により求める。
手順(1):あらかじめ容器(遠心チューブ)の重量を測定しておく。
手順(2):培養液100mlを手順(1)で重量を測定した容器に入れ、遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌する。
手順(3):容器中の集菌した細菌を、0.9重量%NaCl水溶液[手順(2)で使用した培養液と同じ体積]で洗い、再度遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌する。
手順(4):手順(3)で得られた細菌を容器にいれたままの状態で、105℃で10時間乾燥させた後、容器と細菌の合計の重量を測定する。
手順(5):手順(4)の後さらに105℃で2時間乾燥させた後、容器と細菌の合計の重量を測定して重量変化が無いことを確認する。さらに重量が減少するなら重量変化が無くなるまで105℃で乾燥を持続する。
手順(5)と手順(1)の測定値と手順(2)で使用した培養液の体積(L)を下記式に当てはめることにより、乾燥菌体密度を求める。
乾燥菌体密度(g/L)=([手順(5)の測定値]−[手順(1)の測定値])/0.1
本発明の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法において、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産量の観点から、乾燥菌体密度が上記範囲内である時間が、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を分泌させる工程に要する時間の10%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50%以上である。
乾燥菌体密度は、例えば十分な通気条件下で半回分培養法を用いて適切な速度で流加を行うことによって増加させることができ、制限した通気条件下で回分培養を行うことによって減らすことができる。また、培養開始から界面活性剤を入れるまでの時間を長くすることによって増加し、培養開始から界面活性剤を入れるまでの時間を短くすることによって減らすことができる。
以下に改変ヒアルロン酸合成酵素のさらに具体的な生産方法の一例を示す。
(i)遺伝子組み換え
(i−1)ヒアルロン酸合成酵素(A)を発現している細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、該二本鎖DNAをファージDNA又はプラスミドに組み込む。得られた組み換えファージ又はプラスミドを宿主大腸菌に形質転換しcDNAライブラリーを作成する。
(i−2)目的とするDNAを含有するファージDNA又はプラスミドをスクリーニングする方法としては、ファージDNA又はプラスミドと目的とする改変ヒアルロン酸合成酵素遺伝子又は相補配列の一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション法が挙げられる。
(i−3)スクリーニング後のファージ又はプラスミドから目的とするクローン化DNA又はその一部を切りだし、該クローン化DNA又はその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって、目的遺伝子の発現ベクターを作成することができる。外膜に移行させるシグナル配列をコードするDNAを同時に連結することもできる。
(ii)培養
(ii−1)宿主を発現ベクターで形質転換して発現株(M’)を作成し、発現株(M’)を前培養する。前培養は寒天培地上で通常15〜43℃で3〜72時間行う。
(ii−2)改変ヒアルロン酸合成酵素の生産に用いる培養液を121℃、20分間オートクレーブ滅菌を行い、ここに寒天培地で前培養した発現株(M’)を培養する。培養は、通常15〜43℃で12〜72時間行う。なお、培養開始と同時に界面活性剤(B)を使用する場合は、界面活性剤(B)と培地を混合し均一化したものを用いて、前培養した発現株(M’)を同様に培養する。また、培養後6時間から72時間後に界面活性剤(B)を加える場合は、界面活性剤を加えてから1〜1000時間培養を継続する。
(iii)精製
(iii−1)培養液中に分泌された改変ヒアルロン酸合成酵素(X)は、遠心分離、中空糸分離、ろ過等で微生物及び微生物残さと分離される。
(iii−2)改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を含む培養液は、イオン交換カラム、ゲルろ過カラム、疎水カラム、アフィニティカラム及び限外カラム等のカラム処理を繰り返し、エタノール沈殿、硫酸アンモニウム沈殿及びポリエチレングリコール沈殿等の沈殿処理を必要に応じ適宜行うことによって分離精製される。
(iii−1)で分離された発現株(M’)は、その後、新たに培養液を供給することにより、さらに培養することができる。その培養液等をさらに(iii)の工程に供し精製、培養を繰り返すことにより、改変ヒアルロン酸合成酵素の連続生産を行うことができる。
上記の(iii)の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の分離・取り出し工程におけるカラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としては、シリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド及びビニルポリマー等が挙げられ、市販品ではSephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio−Gelシリーズ(Bio−Rad社)等がある。
本発明の生産方法によれば、ヒアルロン酸合成活性を有する改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を大量に得ることができる。また、本発明の生産方法で得られる改変ヒアルロン酸合成酵素(X)は、不活性な封入体となりにくいので安定性が高く、ヒアルロン酸合成活性が低下しにくい。また、本発明の生産方法で得られる改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の活性と改変する前のヒアルロン酸合成酵素(A)の活性を比較した場合、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)は高活性である。したがって、本発明で得られた改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を用いれば、少量の酵素を用いて大量のヒアルロン酸を得ることができる。さらに、本発明の生産方法により得られる改変ヒアルロン酸合成酵素を用いてヒアルロン酸を生産すれば、高分子量のヒアルロン酸を得ることができる。
さらに、上記工程(I)において、発現株(M’)として細菌を用いて、界面活性剤(B)を含有する培養液中で細菌を培養して改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を生産すると、さらに短時間で高い収量を得ることができるため、高生産量を達成することができる。また、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)が培養液中に分泌されるため、改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の精製が容易である。さらに、細菌が生存している限り、細菌が改変ヒアルロン酸合成酵素(X)を作成し培養液中に分泌することができる。
本発明の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)は、上記生産方法により得られた改変ヒアルロン酸合成酵素である。改変ヒアルロン酸合成酵素として好ましいものは、上述と同様である。
以下の実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下において、株の作製、菌体重量の測定は当業者が行う標準的な方法に基づいて行った。
<実施例1>
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)発現株の作製]
ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号1のヒアルロン酸合成酵素(A−1)について、SOSUI(SOSUIとは、膜タンパク質における二次構造を予測するものであり、SOSUIプログラムとしてインターネット<http://bp.nuap.nagoya−u.ac.jp/sosui/>に掲載されている。)を用いて膜貫通領域を特定した。SOSUIによれば、X線構造解析と同じように膜貫通領域を特定できる。特定したもののうち、配列番号2の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)にするために、4つの膜貫通領域(6〜28位、290〜312位、323〜345位及び356〜378位)に対応するDNA領域を除くようにプライマー1(配列番号5)及び2(配列番号6)を設計した。
pMXベクターに組み込まれたストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号9)(Invitrogen社)を鋳型としてプライマー1(配列番号5)と2(配列番号6)を用いて、改変ヒアルロン酸合成酵素遺伝子(a’−1)を増幅した。増幅した遺伝子をpET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。BL21(DE3)大腸菌株にこのプラスミドを形質転換して配列番号2の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)を発現する発現株(α)を作製した。
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)の生産]
得られた発現株(α)の終夜培養液1mlをそれぞれ作製し、0.5mlをLB培養液(アンピシリン 100mg/L含有)5mlに植菌して30℃3時間振とう培養を行い前培養液を作製した。前培養液を50mLの培養液(酵母エキス(日本製薬社製)1.2g、ポリペプトン(日本製薬社製)0.6g、リン酸2カリウム0.47g、リン酸1カリウム0.11g、硫酸アンモニウム0.35g、リン酸2ナトリウム12水和物0.66g、クエン酸ナトリウム2水和物0.02g、グリセロール0.2g、ラクトアルブミン水解物1.5g、消泡剤(信越シリコーン製、「KM−70」)0.3g、1mM硫酸マグネシウム、微量金属溶液(塩化カルシウム18.9μg、塩化鉄(III)500μg、硫酸亜鉛7水和物9.0μg、硫酸銅5.1μg、塩化マンガン4水和物6.7μg、塩化コバルト4.9μg、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム200μg)、100mg/Lアンピシリン)に植菌し微生物培養装置(エイブル社製、製品名「BioJr.8」)を用いてpH6.8、30℃を維持したまま培養を開始した。培養開始3時間後1M IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を0.15mL加えた。培養開始12時間後から、グリセリン/タンパク質溶液(50% グリセリン、50g/L ラクトアルブミン水解物、33g/L 消泡剤(信越シリコーン製、「KM−70」)、100mg/L アンピシリン)の滴下を開始した。
培養開始14時間後、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としてヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを加えた。培養開始から36時間後に培養液を回収し、遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、菌体を除去し改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)を含む培養上清を得た。
得られた培養上清を用いて、ヒアルロン酸合成酵素量、改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)の比活性を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号1のヒアルロン酸合成酵素(A−1)について、SOSUIを用いて膜貫通領域を特定した。特定した2つの膜貫通領域(6〜28位及び356〜378位)に対応するDNA領域を除くようにプライマー1(配列番号5)及び3(配列番号7)を設計した。
実施例1の[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)発現株の作製]において、「プライマー1(配列番号5)と2(配列番号6)」に代えて、「プライマー1(配列番号5)と3(配列番号7)」を用いて、配列番号8の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−2)を発現する発現株(β)を作製した。
また、実施例1の[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)の生産]において、「発現株(α)」に代えて「発現株(β)」を用いる以外は同様に実施して、配列番号8の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−2)を含む培養上清を得た。得られた培養上清を用いて測定した改変ヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1の[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)の生産]において、「培養開始14時間後、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としてヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインを加えた。」に代えて「界面活性剤(A)を加えなかった。」とし、「培養液を回収し、遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、菌体を除去し改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)を含む培養上清を得た。」に代えて「培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、培養上清を除去し、菌体の5倍容量の10mMトリスHCl/pH8.0で洗浄し、菌体を新しい遠心分離管に移して、遠心分離(4,000G、15分、4℃)した。その菌体を5倍容量の10mMトリスHCl/pH8.0の緩衝液に再懸濁し、超音波処理(12W、1分)した(負荷サイクル:60%、仕事率:7、パルス:2/秒)。超音波処理後、破壊された菌体を再び遠心分離(4,000G、30分、4℃)して、沈殿画分を除き、配列番号2の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)を含む菌体破砕上清を得た。」とする以外は同様にして、配列番号2の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)を含む菌体破砕上清を得た。得られた培養上清を用いて測定した改変ヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<比較例1>
pMXベクターに組み込まれたストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号9)(Invitrogen社)をpET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。BL21(DE3)大腸菌株にこのプラスミドを形質転換して配列番号1のヒアルロン酸合成酵素(A−1)を発現する発現株(γ)を作製した。
実施例3の[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)の生産]において、「発現株(α)」に代えて「発現株(γ)」を用いる以外は同様に実施して、ヒアルロン酸合成酵素(A−1)を含む菌体破砕上清を得た。
得られた上清を用いて測定したヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<実施例4>
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−3)発現株の作製]
実施例1において、「ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号1のヒアルロン酸合成酵素(A−1)」に代えて「ストレプトコッカス・ウベリス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号3のヒアルロン酸合成酵素(A−2)」を用いて、5つの膜貫通領域(6〜28位、34〜56位、328〜350位、354〜376位及び380〜402位)に対応するDNA領域を除くようにプライマー4(配列番号16)及び5(配列番号17)を設計した。
プライマー4(配列番号16)及び5(配列番号17)を用いて、配列番号11の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−3)を発現する発現株(δ)を作製した。
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−3)の生産]
「発現株(α)」に代えて「発現株(δ)」を用いる以外は同様にして、配列番号11の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−3)を含む培養上清を得た。
得られた培養上清を用いて測定した改変ヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<比較例2>
比較例1において「ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号9)」に代えて「ストレプトコッカス・ウベリス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号14)」を用いて作製した配列番号3を発現する発現株(ε)を用いたこと以外は同様にして、ヒアルロン酸合成酵素(A−2)を含む菌体破砕上清を得た。
得られた培養上清を用いて測定した改変ヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<実施例5>
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−4)発現株の作成]
実施例1において、「ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号1のヒアルロン酸合成酵素(A−1)」に代えて「ストレプトコッカス・エクイシミリス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号4のヒアルロン酸合成酵素(A−3)」を用いて、5つの膜貫通領域(6位〜28位、35位〜57位、314位〜336位、346位〜368位及び371位〜393位)に対応するDNA領域を除くようにプライマー6(配列番号18)及び7(配列番号19)を設計した。
プライマー7(配列番号18)及び7(配列番号19)を用いて、配列番号10の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−4)を発現する発現株(η)を作製した。
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−4)の生産]
「発現株(α)」に代えて「発現株(η)」を用いる以外は同様にして、配列番号10の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−4)を含む培養上清を得た。
得られた培養上清を用いて測定した改変ヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<比較例3>
比較例1において「ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号9)」に代えて「ストレプトコッカス・エクイシミリス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号15)」を用いて作製した配列番号4を発現する発現株(σ)を用いたこと以外は同様にして、ヒアルロン酸合成酵素(A−3)を含む菌体破砕上清を得た。
得られた上清を用いて測定したヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<実施例6>
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−5)発現株の作成]
実施例1において、「ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号1のヒアルロン酸合成酵素(A−1)」に代えて「ストレプトコッカス・パラウベリス由来ヒアルロン酸合成酵素である配列番号12のヒアルロン酸合成酵素(A−4)」を用いて、4つの膜貫通領域(13〜35位、292〜314位、324〜346位及び348〜370位)に対応するDNA領域を除くようにプライマー8(配列番号21)及び9(配列番号22)を設計した。
プライマー8(配列番号21)及び9(配列番号22)を用いて、配列番号13の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−5)を発現する発現株(θ)を作製した。
[改変ヒアルロン酸合成酵素(X−5)の生産]
「発現株(α)」に代えて「発現株(θ)」を用いる以外は同様にして、配列番号10の改変ヒアルロン酸合成酵素(X−5)を含む培養上清を得た。
得られた培養上清を用いて測定した改変ヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<比較例4>
比較例1において「ストレプトコッカス・ピオゲネス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号9)」に代えて「ストレプトコッカス・パラウベリス由来ヒアルロン酸合成酵素核酸配列(配列番号20)」を用いて作製した配列番号4を発現する発現株(λ)を用いたこと以外は同様にして、ヒアルロン酸合成酵素(A−4)を含む菌体破砕上清を得た。
得られた上清を用いて測定したヒアルロン酸合成酵素量、比活性の測定結果を表1に示す。
<上清中の改変ヒアルロン酸合成酵素量又はヒアルロン酸合成酵素量の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた上清を用いて、SDS−PAGEにより、上清中に含まれる改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)〜(X−5)の量又はヒアルロン酸合成酵素(A−1)〜(A−4)の量を測定した。
タンパク質量の検量線として1μg、2.5μg、5μgの牛血清アルブミンをSDS−PAGEした。クーマシーブリリアントブルー染色液によってタンパク質を染色した。牛血清アルブミンのバンドから検量線を作製した。検量線を用いて、上清中に含まれるヒアルロン酸合成酵素量を算出した。
<ヒアルロン酸合成量の測定>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた上清0.1mlに、それぞれ0.1重量%になるようにUDP−N−アセチルグルコサミンとUDP−グルクロン酸とを添加し、緩衝液中で混合し、30℃で2時間反応させた。
反応後、反応液をポリアクリルアミドゲル中で電気泳動した。電気泳動したゲルをアルシアンブルー染色液によって染色した。同時に精製ヒアルロン酸を12.5ng、25ng、50ngを電気泳動し、染色した。電気泳動した際に見られるヒアルロン酸のバンドからヒアルロン酸検量線を作製した。検量線を用いて、電気泳動した際に見られるヒアルロン酸のバンドからヒアルロン酸合成量を算出した。
<改変ヒアルロン酸合成酵素又はヒアルロン酸合成酵素の比活性>
得られた改変ヒアルロン酸合成酵素量又はヒアルロン酸合成酵素量及びヒアルロン酸合成量の値を用いて、下記数式により、比活性を算出した。
比活性=(ヒアルロン酸合成量)/(改変ヒアルロン酸合成酵素量又はヒアルロン酸合成酵素量)
Figure 2014011992
表1の結果から、本発明の実施例1〜6の生産方法では、比較例1〜4と比較して、ヒアルロン酸合成活性を有する酵素を大量に得ることができることが分かる。特に、実施例3と比較例1との比較から、実施例3の生産方法では、膜貫通領域を5つ全て欠失させた改変ヒアルロン酸合成酵素(X−1)とすることで、宿主内で発現する量が増加したことが分かる。また、実施例1、2、4及び5では、培養液中に界面活性剤を含有することにより、改変ヒアルロン酸合成酵素が宿主外に分泌生産され、改変ヒアルロン酸合成酵素をさらに大量に得ることができることが分かる。
また、実施例1〜6で得た改変ヒアルロン酸合成酵素は、比較例1〜4で得たヒアルロン酸合成酵素と比較して比活性が高かった。したがって、実施例1〜6では、ヒアルロン酸合成活性の高い酵素を得られたことがわかる。特に、培養液中に界面活性剤を含有した実施例1及び2では、含有していない実施例3と比較して、さらに活性の高いヒアルロン酸合成酵素を得られることが分かる。
以上のことから、本発明の実施例1〜6の生産方法では、活性の高い改変ヒアルロン酸合成酵素を大量に得ることができることが分かる。
本発明の改変ヒアルロン酸合成酵素の生産方法は、ヒアルロン酸合成活性の高いヒアルロン酸合成酵素を大量に得ることができるので、本発明の生産方法で得たヒアルロン酸合成酵素は、工業利用しやすい。また、このヒアルロン酸合成酵素を用いて得たヒアルロン酸は、化粧品用だけでなく、医療用等にも用いることができる。

Claims (7)

  1. クラス1に属する微生物由来のヒアルロン酸合成酵素(A)の膜貫通領域の少なくとも1つを欠失させた改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法であって、
    下記遺伝子(a’)を宿主(M)に導入して発現株(M’)とし、発現株(M’)を培養する改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法。
    遺伝子(a’):(A)をコードする遺伝子(a)から、(X)において(A)から欠失している膜貫通領域に相当する遺伝子が欠失した遺伝子。
  2. ヒアルロン酸合成酵素(A)がストレプトコッカス属由来のヒアルロン酸合成酵素である請求項1に記載の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法。
  3. ヒアルロン酸合成酵素(A)がストレプトコッカス・ピオゲネス由来、ストレプトコッカス・ウベリス由来、ストレプトコッカス・エクイシミリス由来又はストレプトコッカス・パラウベリス由来のヒアルロン酸合成酵素である請求項1又は2に記載の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法。
  4. 改変ヒアルロン酸合成酵素(X)のアミノ酸配列が、配列番号1のヒアルロン酸合成酵素の1〜63位及び289〜395位を欠失させた配列番号2、配列番号3のヒアルロン酸合成酵素の1〜88及び313〜417位を欠失させた配列番号11、配列番号4のヒアルロン酸合成酵素の1〜88位及び314〜417位を欠失させた配列番号10、配列番号12のヒアルロン酸合成酵素の1〜67位及び292〜397位を欠失させた配列番号13のいずれか1つである請求項1〜3のいずれかに記載の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法。
  5. 宿主(M)が細菌である請求項1〜4のいずれかに記載の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法。
  6. 発現株(M’)を界面活性剤(B)を含む培養液中で培養する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の改変ヒアルロン酸合成酵素(X)の生産方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の生産方法により生産された改変ヒアルロン酸合成酵素(X)。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022269463A1 (en) * 2021-06-20 2022-12-29 Keramati Malihe Truncated hyaluronan synthase and polynucleotide encoding the same

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