JP4692556B2 - 全固体リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
A.全固体リチウム二次電池
まず、本発明の全固体リチウム二次電池について説明する。本発明の全固体リチウム二次電池は、硫化物系固体電解質材料を用いた全固体リチウム二次電池であって、少なくとも上記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子を有することを特徴とするものである。
また、例えば、上記酸化物層含有発電素子の側面を絶縁リング等の部材で直接接触させて覆ったものを全固体リチウム二次電池として使用する場合には、絶縁リング等の部材と上記酸化物層含有発電素子とからなる全固体リチウム二次電池周囲の雰囲気のことである。
また、例えば、上記酸化物層含有発電素子がコイン型の電池ケースで覆われたものを全固体リチウム二次電池として使用する場合には、コイン型の電池ケース周囲の雰囲気のことである。
また、例えば、上記酸化物層含有発電素子がラミネート型の電池ケースで覆われたもの、所定の外装体等中に上記酸化物層含有発電素子が設置されたものなど、上記酸化物層含有発電素子と電池ケース、外装体等との間に隙間等の空間を有する場合は、上記隙間等の空間に存在する雰囲気のことである。
図1は、本発明の全固体リチウム二次電池の一例を示すものである。図1に示すように、本発明の全固体リチウム二次電池は、酸化物層含有発電素子1の側面が絶縁リング2によって覆われているものである。ここで、酸化物層含有発電素子1は、固体電解質層3、固体電解質層3の一方の表面に配置された正極層4、固体電解質層3の他方の表面に配置された負極層5、正極層4の固体電解質3側とは反対側に配置された正極集電体6、負極層5の固体電解質層3側とは反対側に配置された負極集電体7、および硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層(固体電解質層3、正極層4、および負極層5)と外気とが接触する部位に形成された、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層8を有するものである。
本発明においては、上記電解質含有層は、通常、上述したように、上記酸化物層発電素子内のLiイオン伝導性を向上させることができる等の理由から、上記固体電解質層3、上記正極層4、上記負極層5全てが硫化物系固体電解質材料を含んだ電解質含有層であることが好ましい。
このような本発明の全固体リチウム二次電池においては、少なくとも、上記酸化物層含有発電素子を有するものであれば特に限定されるものではなく、図1に例示されているもの以外にも、例えば後述するような、上記酸化物層含有発電素子がコイン型、ラミネート型等の電池ケースで覆われたものであっても良く、上記酸化物層含有発電素子を覆う絶縁リング、電池ケース等がないものであっても良い。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池について、構成ごとに詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる酸化物層含有発電素子について説明する。本発明に用いられる酸化物層含有発電素子は、上述した図1で例示したように、少なくとも硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成されていることを特徴とするものである。
本発明における、上記酸化物層含有発電素子は、上記酸化物層含有発電素子中の上記電解質含有層と外気とが接触する部位に、上記酸化物層を有することにより、上記酸化物層含有発電素子中の上記電解質含有層と、外気との接触を抑制することができる。このため、上記電解質含有層の潮解、硫化水素の発生を伴う劣化等が抑制されて、上記酸化物層含有発電素子の耐水性を向上させることができる。
以下、本発明に用いられる酸化物層含有発電素子について、構成ごとに説明する。
まず、本発明における上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層について説明する。本発明における上記酸化物層は、上記酸化物層含有発電素子中の、少なくとも上記電解質含有層と外気とが接触する部位に形成され、実質的に水分を含まないことを特徴とするものである。
本発明における上記酸化物層は、上記電解質含有層よりも耐水性が高いため、上記電解質含有層と外気との接触を抑制し、外気中の水分等による上記電解質含有層の潮解等を抑制することができる。また、上記酸化物層には、実質的に水分が含まれておらず、上記酸化物層中の水分による上記電解質含有層の潮解等も抑制される。本発明においては、このような上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を有することにより、上記酸化物層含有発電素子の耐水性を向上させることができ、耐水性を向上した高出力かつ安定性の高い全固体リチウム二次電池を得ることができるのである。
例えば、図1に示したように、電解質含有層が固体電解質層3、正極層4、および負極層5であって、上記酸化物層含有発電素子1の側面を絶縁リング2等の部材で直接接触させて覆うような場合には、図1に示されるような上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層8が形成された部位、すなわち酸化物層含有発電素子1の断面における正極集電体6と、絶縁リング2との境界近辺、および負極集電体7と、絶縁リング2との境界近辺の部位を挙げることができる。
このように実質的に水分を含まない上記酸化物層中の水分含有量としては、具体的には、例えば、1000ppm以下、中でも、100ppm以下、特に、10ppm以下であることが好ましい。
上記酸化物層の硫黄/酸素元素比率は、後述するように、例えば、上記酸化物層含有発電素子等を大気中に曝露する時間、回数や、乾燥する回数等を制御するなどして制御することができる。
次に、本発明における電解質含有層について説明する。本発明における電解質含有層は、上述した硫化物系固体電解質材料を含有する層である。
本発明における、上記電解質含有層は、全固体リチウム二次電池に用いた場合、全固体リチウム二次電池の出力電流を大きなものとすることができる。すなわち、上記硫化物系固体電解質材料は、硫化物イオンが酸化物イオンに比べて分極が大きなイオンであり、リチウムイオンとの静電的な引力が小さなものとなることから、酸化物系固体電解質材料に比べて高いイオン伝導性を有するため、上記硫化物系固体電解質材料を含有する電解質含有層を有することにより、全固体リチウム二次電池の出力電流を大きなものとすることができるのである。
このような硫化物系固体電解質材料Li−A−Sとしては、具体的には70Li2S−30P2S5、LiGe0.25P0.75S4、80Li2S−20P2S5、Li2S−SiS2等を挙げることができ、イオン伝導度が高いことから、特に70Li2S−30P2S5が好ましい。
本発明に用いられる正極集電体について説明する。上記正極集電体とは、上記正極層の集電を行うものである。上記正極集電体としては、正極集電体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、およびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。さらに、上記正極集電体は、緻密質集電体であっても良く、多孔質集電体であっても良い。
上記負極集電体おける、緻密金属集電体、および多孔質金属集電体については、上記正極集電体おける、緻密金属集電体、および多孔質金属集電体についての記載と同様のものであるので、ここでの記載は省略する。
上記全固体リチウム二次電池において、上述した酸化物層含有発電素子以外の構成、例えば、絶縁リング、電池ケース、また、コイン型電池の封止に用いられる樹脂パッキン等に関しては、特に限定されるものではなく、一般的な全固体リチウム二次電池と同様のものを用いることができる。具体的には、電池ケースとしては、一般的には、金属製のものが用いられ、例えばステンレス製のもの等が挙げられる。また、樹脂パッキンとしては、吸水率の低い樹脂が好ましく、例えばエポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法としては、上記の全固体リチウム二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、後述する「B.全固体リチウム二次電池の製造方法」に記載される方法等を挙げることができる。
本発明の全固体リチウム二次電池の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、自動車用の全固体リチウム二次電池等として、用いることができる。
本発明の上記の全固体リチウム二次電池の形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、上述した酸化物層含有発電素子の側面を絶縁リングで直接接触させて覆ったもの、コイン型電池ケースを用いたもの、ラミネート型電池ケースを用いたもの、上述した酸化物層含有発電素子を電池ケース等で覆わずそのまま用いたもの等を挙げることができる。
次に、本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法は、硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層を有する発電素子を、水分を含む外気中に曝露して上記硫化物系固体電解質材料に吸水させることにより、酸化物を含む潮解部を少なくとも上記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に形成して潮解部含有発電素子を得る曝露工程と、上記潮解部を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を形成して酸化物層含有発電素子を得る乾燥工程とを有することを特徴とするものである。
このため、硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と、外気中の水分との反応を抑制して上記電解質含有層の劣化を抑制することができ、耐水性を向上させ、高出力かつ安定性の高い全固体リチウム二次電池を得ることができる。
また、上記曝露する時間や回数、上記乾燥させる回数などを制御することにより、上記酸化物層の硫黄/酸素元素比率を所望の値に制御して、硫化物系固体電解質材料の劣化をより確実に抑制できる酸化物層を形成することを可能とし、より耐水性を向上させることができる。
例えば、上述した図1および図6に示すような、絶縁リングを有する全固体リチウム二次電池を形成する場合は、硫化物系固体電解質材料をプレス成形して固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程を行った後、上記固体電解質層の一方に、正極材料および固体電解質材料からなる正極用合剤もしくは、正極材料のみを設置した後プレス成形して正極層を形成する正極層形成工程を行う。その後、固体電解質層上の正極層が形成されている面と反対の面上に、負極材料および固体電解質材料からなる負極用合剤もしくは、負極材料のみを設置した後プレス成形して負極層を形成する負極層形成工程を行う。得られた固体電解質層が正極層と負極層とによって挟持されたものを、さらに正極層上に正極集電体、負極層上に負極集電体が設置されるように集電体により挟持して発電素子を得る集電体設置工程を行う。
次に、得られた発電素子の側面を覆うように絶縁リングを設置して、電池セルを形成する電池セル形成工程を行う。
次に、得られた電池セルを、水分を含む外気中に所定の時間曝露して、少なくとも上記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に吸水させることにより酸化物を含む上記潮解部を形成して、潮解部含有発電素子を得る曝露工程を行う。
さらに、上記潮解部含有発電素子を所定の条件で乾燥させて、上記潮解部から水分を除去して上記酸化物層を形成する乾燥工程を行うことにより、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
次に、得られた発電素子を、水分を含む外気中に所定の時間曝露して、少なくとも上記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に吸水させることにより酸化物を含む上記潮解部を形成して、潮解部含有発電素子を得る曝露工程を行う。
次に、上記潮解部含有発電素子を所定の条件で乾燥させて、上記潮解部から水分を除去して上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を形成する乾燥工程を行って、酸化物層含有発電素子を得る。
さらに、得られた上記酸化物層含有発電素子を例えばコイン型の電池ケース中に設置した後、樹脂パッキンにより封止することにより電池セルを形成する電池セル形成工程を行い、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
次に、上記集電体が設置されていない発電素子を、水分を含む外気中に所定の時間曝露して、少なくとも上記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に吸水させることにより酸化物を含む上記潮解部を形成して、集電体が設置されていない潮解部含有発電素子を得る曝露工程を行う。
次に、所定の条件で乾燥させて、上記潮解部から水分を除去して上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を形成する乾燥工程を行って、集電体が設置されていない酸化物層含有発電素子を得る。
その後、例えば細い集電体を、上記酸化物層を削るなどして部分的に剥がした部分に設置する集電体設置工程を行い、酸化物層含有発電素子を得る。
次に、得られた上記酸化物層含有発電素子を例えばコイン型の電池ケース中に設置した後、樹脂パッキンにより封止することにより電池セルを形成する電池セル形成工程を行い、上述した所望の全固体リチウム二次電池を得ることができる。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法における各工程について、詳細に説明する。
本発明における曝露工程について説明する。本発明における曝露工程とは、硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層を有する発電素子を、水分を含む外気中に曝露することにより、上記発電素子の、少なくとも上記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に吸水させることにより酸化物を含む上記潮解部を形成して、後述する乾燥工程に用いる潮解部含有発電素子を得る工程である。
なお、電解質含有層、固体電解質層、正極層、負極層、正極集電体、および負極集電体については、上述した「A.全固体リチウム二次電池」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
一方、例えば、図2のコイン型、図3のラミネート型、および図4で示されるような密閉性の高い電池ケースを用いた全固体リチウム二次電池とする場合には、電池ケースにより密閉していない状態で、水分を含む外気中に上記発電素子を曝露することが好ましい。上記発電素子を密閉性の高い電池ケースに設置した状態では、外気の温度や湿度を制御しても、電池ケース内に水分が入りにくく、潮解させることが困難となるからである。このような観点から、上述したような密閉性の高い電池ケースを用いる場合には、本工程は後述する電池セル形成工程より前に行うことが好ましい。
次に、本発明における乾燥工程について説明する。本発明における乾燥工程とは、上記曝露工程で得られた潮解部含有発電素子を用いて、上記潮解部を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を形成して酸化物層含有発電素子を得る工程である。
一方、例えば、図2のコイン型、図3のラミネート型、および図4で示されるような密閉性の高い電池ケースを用いた全固体リチウム二次電池とする場合には、電池ケースにより密閉していない状態で、上記潮解部含有発電素子を乾燥することが好ましい。上記潮解部含有発電素子を密閉性の高い電池ケースに設置した状態では、乾燥温度、雰囲気等を制御しても、電池ケース内の水分を除去しにくく、乾燥させることが困難となるからである。このような観点から、上述したような密閉性の高い電池ケースを用いる場合には、本工程は後述する電池セル形成工程より前に行うことが好ましい。
また、上記酸化物層含有発電素子については、上述した「A.全固体リチウム二次電池 1.酸化物層含有発電素子」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造方法は、少なくとも上記曝露工程、および上記乾燥工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常、上記曝露工程、および上記乾燥工程のほかに、硫化物系固体電解質材料をプレス成形して固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程、上記固体電解質層の一方に、正極材料および固体電解質材料からなる正極用合剤等を設置した後プレス成形する等して正極層を形成する正極層形成工程、固体電解質層上の正極層が形成されている面と反対の面上に、負極材料および固体電解質材料からなる負極用合剤等を設置した後プレス成形する等して負極層を形成する負極層形成工程、得られた固体電解質層が正極層と負極層とによって挟持されたものを、さらに正極層上に正極集電体、負極層上に負極集電体が設置されるように集電体により挟持する等して発電素子を得る集電体設置工程、得られた発電素子の側面を覆うように絶縁リングを設置したり、得られた発電素子を電池ケース中に設置し、密閉したりするなどして電池セルを形成する電池セル形成工程を有する。これらの工程については、一般的な全固体リチウム二次電池における工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。さらに、得られる全固体リチウム二次電池についても、上記「A.全固体リチウム二次電池」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
次に、本発明の全固体リチウム二次電池の再生方法について、詳細に説明する。
本発明の全固体リチウム二次電池の再生方法は、少なくとも硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子を有する全固体リチウム二次電池の再生方法であって、電池使用後に、硫化水素を検出することにより、上記酸化物層含有発電素子における酸化物を含む潮解部の形成を検知した後、上記潮解部を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない上記酸化物層を再生することを特徴とするものである。
本発明においては、電池使用後に、例えば硫化水素センサ等により硫化水素を検出して、上記酸化物層等の劣化を検知することができる。さらに、上記酸化物層等の劣化を検知した場合に上記潮解部を所定の方法で、乾燥させることができる。これにより、上記潮解部を乾燥させて水分を除去し、劣化した部分に実質的に水分を含まない上記酸化物層を再生することができる。従って、電池使用後に上記酸化物層が劣化した場合においても、劣化した部分に上記酸化物層を再生して酸化物層の劣化を修復することが可能となり、全固体リチウム二次電池を再生することができるのである。
例えば、上述した図1で示したような酸化物層含有発電素子を有する全固体リチウム二次電池を使用した後、硫化水素センサで検知する等の硫化水素を検知することのできる方法を用いて、上記全固体リチウム二次電池近辺の硫化水素濃度を検知する。検出された硫化水素の濃度が、全固体リチウム二次電池の再生が必要な程度の濃度である場合、上記全固体リチウム二次電池を所定の外装体内等に密封させる。次に、上記外装体内を、例えば別途設けられた排気装置などの水分を除去して乾燥することのできる外部装置により、乾燥させる。所望の時間このような乾燥を行うことにより、上記酸化物層含有発電素子中の潮解部を乾燥させて水分を除去し、劣化した部分に実質的に水分を含まない上記酸化物層を再生して、全固体リチウム二次電池を再生することができるのである。
このような全固体リチウム二次電池再生装置においては、上記酸化物層含有発電素子12に形成されている酸化物層に亀裂が生じるなどして劣化し、酸化物層含有発電素子12内部の硫化物系固体電解質材料と外気等に起因する水分とが接触して反応すると、硫化水素が発生する。上記硫化水素は、外装体11内に充満していく。外装体11内の雰囲気は、通常大気なので、大気より重たい硫化水素は、外装体内の下部の方に充満していく。このような硫化水素を硫化水素センサ18により検出することができる。検出された硫化水素が所定の濃度となったら、スイッチ16に信号を送り、冷却素子15を作動させるように、演算部19、およびECU部20を設定することにより、所望のタイミングで外装体内の水分を冷却素子15上の水分吸着剤17に吸着させ、外装体11内を乾燥させることができる。このため、上記酸化物層が劣化して形成された上記酸化物を含む潮解部を乾燥させて水分を除去することが可能となり、劣化した部分に実質的に水分を含まない上記酸化物層を再生することができる。このようにして、劣化した全固体リチウム二次電池を再生することができるのである。
次に、本発明の全固体リチウム二次電池再生装置について、詳細に説明する。
本発明の全固体リチウム二次電池再生装置は、少なくとも硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子が、外装体内に密封された全固体リチウム二次電池再生装置であって、上記外装体内を乾燥させて水分を除去することのできる外装体内乾燥装置と、上記外装体内に配置された硫化水素センサとを有し、上記硫化水素センサが上記外装体内の硫化水素を検出することにより、上記外装体内乾燥装置が作動して上記外装体内を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を再生することを特徴とするものである。
例えば、上述したような図10の模式的な概略断面図に示すような、全固体リチウム二次電池再生装置を挙げることができる。
このような全固体リチウム二次電池再生装置においては、上記酸化物層含有発電素子12に形成されている上記酸化物層に亀裂が生じるなどして劣化し、酸化物層含有発電素子12内部の硫化物系固体電解質材料と外気等に起因する水分とが接触して反応すると、硫化水素が発生する。上記硫化水素は、外装体11内に充満していく。外装体11内の雰囲気は、通常大気なので、大気より重たい硫化水素は、外装体内の下部の方に充満していく。このような硫化水素を硫化水素センサ18により検出することができる。検出された硫化水素が所定の濃度となったら、スイッチ16に信号を送り、排気装置21を作動させるように、演算部19、およびECU部20を設定することにより、所望のタイミングで外装体内の水分を排気装置21により外装体外へ排気し、外装体11内を乾燥させることができる。このため、上記酸化物層が劣化して形成された上記酸化物を含む潮解部を乾燥させて水分を除去することが可能となり、劣化した部分に実質的に水分を含まない酸化物層を再生することができる。このようにして、劣化した全固体リチウム二次電池を再生することができるのである。
以下、本発明の上記全固体リチウム二次電池再生装置について、構成ごとに詳細に説明する。
本発明に用いられる酸化物層含有発電素子ついて説明する。本発明に用いられる酸化物層含有発電素子については、上述した「A.全固体リチウム二次電池 1.酸化物層含有発電素子」に記載したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
次に、本発明に用いられる外装体内乾燥装置について説明する。本発明に用いられる上記外装体内乾燥装置は、上記硫化水素センサが上記外装体内の硫化水素を検出することにより作動して、上記外装体内を乾燥させて水分を除去することができる装置である。このような外装体内乾燥装置により、外装体内を乾燥させることにより、実質的に水分を含まない上記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を再生することができる。
例えば、図10で例示した冷却素子と、上記冷却素子がトラップした水分を吸着する水分除去剤とからなる装置、図11で例示した排気装置等を挙げることができる。
以下、本発明に用いられる上記外装体内乾燥装置について、詳細に説明する。
まず、図10に例示されるような、冷却素子と、上記冷却素子がトラップした水分を吸着する水分吸着剤とからなる装置について説明する。このような装置においては、上記冷却素子が水分を集め、上記水分吸着剤が水分を吸着することにより、外装体内を乾燥させて水分を除去することができる。
次に、図11に例示されるような、本発明に用いられる排気装置について説明する。このような装置においては、外装体内が減圧状態に保持されていることにより、確実に水分を除去することができる。
上記排気装置は、上記外装体内の水分を、例えば図11中の矢印で示されるように外装体外へ排出して、外装体内を減圧状態とすることにより、外装体内の水分を外装体内から外装体外に放出することができるものである。このため、外装体内の水分が極めて少ないような非常に乾燥した状態にある微量水分を除去することができる。すなわち、上記酸化物層が劣化して形成された上記酸化物を含む潮解部を乾燥させて水分を除去することが可能となり、劣化した部分に実質的に水分を含まない酸化物層を再生することができる。
次に、本発明に用いられる硫化水素センサについて説明する。本発明に用いられる硫化水素センサは、外装体内の所定の位置に設置され、硫化水素を検知することができるものである。上記硫化水素センサが上記外装体内の硫化水素を検知した後、例えば、図10で例示した冷却素子等、図11で例示した排気装置等の外装体内乾燥装置を作動させることにより、上記潮解部を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない酸化物層を再生することができる。
冷却素子(ペルチェ素子)等の外装体内乾燥装置を作動させるような上記硫化水素濃度の設定値としては、上述したような本発明の全固体リチウム二次電池再生装置の構成、大きさ、硫化水素センサの位置等により変化するものであり、使用する全固体リチウム二次電池再生装置を用いた予備実験等により決定した設定値を、適宜用いることができる。
本発明の全個体リチウム二次電池再生装置において、上述した酸化物層含有発電素子、外装体内乾燥装置、および硫化水素センサ以外の構成、例えば、外装体、端子、絶縁部、スイッチ、演算部、ECU等に関しては、特に限定されるものではなく、一般的に用いられるものと同様のものを用いることができる。
(全固体リチウム二次電池形成)
全固体リチウム二次電池形成は、Ar雰囲気下で行った。
まず、固体電解質材料として70Li2S−30P2O5粉末65mgを、成形冶具中に挿入した。次に正極活物質(LiCoO2)11mgと固体電解質材料(70Li2S−30P2O5)5mgとを混合した正極用合剤を、成形冶具中に挿入し、1t/cm2でプレス成形して、固体電解質材料と正極用合剤とを一体化させ、固体電解質層および正極層を形成した。
次に、負極活物質(黒鉛(Timcal社製SFG15))4.3mgと固体電解質材料(70Li2S−30P2O5)4.3mgとを、混合することで負極用合剤を得た。この負極用合剤を、上記固体電解質層を正極層と負極層とで挟持するような順番となるように成形冶具中に挿入した後、5t/cm2でプレス成形して、負極用合剤を一体化させ負極層を形成し、固体電解質層を正極層と負極層とで挟持した全固体リチウム二次電池ペレットを得た。
上記の全固体リチウム二次電池ペレットをSUS製の集電体で挟持して、
その側面をPET製の絶縁リングで覆うことによって、全固体リチウム二次電池を得た。
(酸化物層形成)
得られた全固体リチウム二次電池を、大気中(気温25℃、湿度35%)5分曝露した後、真空乾燥(0.01気圧、10分保持)して、所望の位置に硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を形成して、酸化物層を有する全固体リチウム二次電池を得た。
実施例1と同様にして得られた全固体リチウム二次電池を用い、実施例1と同様の5分間の大気曝露および真空乾燥、を2回繰り返して所望の位置に酸化物層を形成して、酸化物層を有する全固体リチウム二次電池を得た。
[実施例3]
実施例1と同様にして得られた全固体リチウム二次電池を用い、実施例1と同様の5分間の大気曝露および真空乾燥、を3回繰り返して所望の位置に酸化物層を形成して、酸化物層を有する全固体リチウム二次電池を得た。
[実施例4]
実施例1と同様にして得られた全固体リチウム二次電池を用い、実施例1と同様の5分間の大気曝露および真空乾燥、を3回繰り返した後、さらに60分間の大気曝露(気温25℃、湿度35%)および真空乾燥(実施例1と同様の真空乾燥条件)を行って所望の位置に酸化物層を形成して、酸化物層を有する全固体リチウム二次電池を得た。
[比較例]
実験例1と同様にして得られた全固体リチウム二次電池を用い、大気曝露および真空乾燥は行わず、全固体リチウム二次電池を得た。
(硫黄/酸素元素比率測定)
固体電解質(70Li2S−30P2O5)のみの固体電解質層ペレットを作製し、大気曝露時間を変動させた固体電解質層表面の硫黄/酸素元素比率をXPSにより測定した。得られた結果を大気曝露した全時間に対してプロットしたものを図12に示す。図12に示されるように、固体電解質表面の硫黄/酸素元素比率は、大気曝露した全時間が増えるにつれて減少し、比較例相当では4程度であったのが、実験例1〜実施例3相当では3以下となり、実施例4相当では2以下となることがわかった。
(電池抵抗測定)
実施例1〜4および比較例で得られた全固体リチウム二次電池を用いて、電池抵抗を測定した。電池抵抗は、3.0V〜4.1Vでコンディショニング後、3.96Vに調整し、25℃で周波数10mHz〜100kHzにて交流インピーダンス法により測定した。得られた抵抗値を表1に示す。
(硫化水素濃度測定)
実施例1〜4および比較例で得られた全固体リチウム二次電池を用いて、硫化水素濃度を測定した。硫化水素濃度測定は、密閉容器中に実施例1〜4および比較例で得られた全固体リチウム二次電池を挿入し、大気(気温25℃、湿度35%)導入100秒後の硫化水素濃度を硫化水素センサ(ジコー社製、H2S検知器)にて、それぞれ測定した。得られた100秒後の硫化水素濃度を表1に示す。
また、表1から実施例においては、実施例1よりも、実施例2、実施例3、および実施例4の方がより硫化水素濃度の発生が少ない。この結果と、上述した実験例の結果とから、酸化物層の硫黄/酸素元素比率を3以下とすることにより、より硫化水素濃度の発生を抑えることができることがわかった。すなわち、酸化物層の硫黄/酸素元素比率を3以下とすることが好ましいことがわかった。
2 … 絶縁リング
3 … 固体電解質層
4 … 正極層
5 … 負極層
6 … 正極集電体
7 … 負極集電体
8 … 酸化物層
9 … 電池ケース
10 … 樹脂パッキン
11 … 外装体
12 … 酸化物層含有発電素子
13 … 端子
14 … 絶縁部
15 … 冷却素子
16 … スイッチ
17 … 水分吸着剤
18 … 硫化水素センサ
19 … 演算部
20 … ECU部
21 … 排気装置
Claims (6)
- 硫化物系固体電解質材料を用いた全固体リチウム二次電池であって、少なくとも前記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に、実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子を有することを特徴とする全固体リチウム二次電池。
- 前記電解質含有層が、固体電解質層、正極層、および負極層であることを特徴とする請求項1に記載の全固体リチウム二次電池。
- 前記酸化物層の硫黄/酸素元素比率が、3以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体リチウム二次電池。
- 硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層を有する発電素子を、水分を含む外気中に曝露して前記硫化物系固体電解質材料に吸水させることにより、酸化物を含む潮解部を少なくとも前記硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に形成して潮解部含有発電素子を得る曝露工程と、前記潮解部を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を形成して酸化物層含有発電素子を得る乾燥工程とを有することを特徴とする全固体リチウム二次電池の製造方法。
- 少なくとも硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子を有する全固体リチウム二次電池の再生方法であって、電池使用後に、硫化水素を検出することにより、前記酸化物層含有発電素子における酸化物を含む潮解部の形成を検知した後、前記潮解部を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を再生することを特徴とする全固体リチウム二次電池の再生方法。
- 少なくとも硫化物系固体電解質材料が含まれている電解質含有層と外気とが接触する部位に実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層が形成された酸化物層含有発電素子が、外装体内に密封された全固体リチウム二次電池再生装置であって、前記外装体内を乾燥させて水分を除去することのできる外装体内乾燥装置と、前記外装体内に配置された硫化水素センサとを有し、前記硫化水素センサが前記外装体内の硫化水素を検出することにより、前記外装体内乾燥装置が作動して前記外装体内を乾燥させて水分を除去し、実質的に水分を含まない前記硫化物系固体電解質材料が酸化されてなる酸化物層を再生することを特徴とする全固体リチウム二次電池再生装置。
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