JP4314291B2 - 塩化水素含有ガスを精製するための反応組成物及び方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塩化水素含有ガスの精製に関するものである。さらに、炭酸水素ナトリウムを基にした、塩化水素からガスを精製するのに使用できる反応組成物に関するものである。
焼却は、家庭用又は自治都市の廃棄物を処分するのにますます必要な技術である。家庭用廃棄物の焼却は、通常、塩化水素を含む煙の形成を伴う。煙を大気中に放つ前に、塩化水素を煙から除去することは重要課題である。
塩化水素を含有する煙を精製する公知方法は、煙を炭酸水素ナトリウムで処理し、塩化水素を分解及び塩化ナトリウムを形成することに存する。
より具体的には、炭酸水素ナトリウムを粉末の形態で焼却炉から出てくる煙に導入し、このように処理した煙を、次にフィルターに運ぶ方法が提供されている(非特許文献1)。この公知方法では、煙の温度は、炭酸水素ナトリウムの導入点において260 ℃である。炭酸水素ナトリウムは、粉砕により得られ、その90重量%が16μm 未満の直径を有する粒子の形態である、類別した(graded)粉末の形態で使用する。
実際に、この公知方法において使用される炭酸水素ナトリウムは、炭酸ナトリウム(Sodium monocarbonate)を含有する。
Solvay and Cie,Brochure TR. 895/5c-B-1-1290
本明細書において、明確に定義された品質の炭酸水素ナトリウムを選別することにより記載された、公知方法の効率を最適化するのが可能であることが見出された。
つまり、本発明は塩化水素含有ガスを精製するための固形状粉末反応組成物に関するものであり、該反応組成物は、炭酸水素ナトリウムを98重量%より多く、炭酸ナトリウムを2重量%未満含有し、平均粒子直径が0.050mmm未満でありかつ粒径勾配(particle size slope) が5未満であることにより定義される粒径分布を示す。
本発明の反応組成物において、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムは無水状態と見なされる。
本発明に関し、反応組成物は、炭酸水素ナトリウムを98重量%より多く(好ましくは、少なくとも99%)、炭酸ナトリウムを2重量%未満(好ましくは、多くても1%)含む。 本発明の反応組成物はまた、市販の炭酸水素ナトリウムに通常見出される他の不純物、特に塩化ナトリウムを含む。
本発明の反応組成物は、粉末状固形物である。本発明の反応組成物の重要な特性は、0.050mm 未満の平均粒子直径Dm(好ましくは、大きくても0.030mm に等しい) 及び5未満の粒径勾配δ(好ましくは、大きくても3に等しい)を特徴とする粒径分布に存在する。
本発明の反応組成物において、平均直径Dm及び粒径勾配δは、以下の関係により定義される:
Dm=Σni Di / Σni 、δ=(D90−D10)/D50
式中、ni は直径Di を有する粒子の(重量)頻度を表し、D90(それぞれD50及びD10)は直径を表し、その直径において反応組成物(重量で表す)の粒子の90%(それぞれ50%及び10%) がD90(それぞれD50及びD10)よりも小さい直径を有する。これらの粒径パラメーターを、Sympatec GmbH 製のSympatec model Helos 12LA 測定装置を用い、レーザー光線の回折による分析法により定義する。
本発明の反応組成物は、特に家庭用廃棄物を焼却する炉から発生する煙を精製することを意図している。この煙は、通常、塩化水素に加えて二酸化硫黄を含んでいる。本発明の反応組成物が、塩化水素及び二酸化硫黄両方からの煙を効果的に精製することが観察された。
本発明の反応組成物において、炭酸水素ナトリウムは主な活性化合物である。さらに、炭酸水素ナトリウム含有量及び粒径分布は、相互に依存する2つのパラメーターである。一方では、他の事柄に関しては全て同様であり、過剰の炭酸水素ナトリウム含有量は反応組成物の粒子が互いに粘着するのを招く傾向にあり、組成物の効率を下げることが観察された。また他方では、微粒子の大きさにより、処理済ガス中での塩化水素との反応が促進され、逆に、粗粒子の大きさにより、固形反応生成物の連続的な分離が促進されるであろうことが知られているように、反応組成物の粒径分布は妥協しなければならない。実際、特に推奨される反応組成物は、炭酸水素ナトリウム含有量が99から99.9重量%、炭酸ナトリウム含有量が0.1 から1重量%、平均粒子直径が0.010 から0.030mm 、粒径勾配が1から3であるものである。粒径パラメーターの最適値は、反応組成物と塩化水素及び適当ならば、処理済ガス中の二酸化硫黄との反応から固形状生成物を分離するのに使用されている手段に関連する。実際、これらの反応生成物が、反応組成物の粒径分布と直接関連する粒径分布を有するケースであることが分かった。
本発明の反応組成物の態様は、静電フィルターを上記の反応組成物を分離する手段として使用する特定のケースに特に適しており、平均粒子直径が0.020 から0.030mm かつ粒径勾配が1.25から2.50であるものである。本発明のこの態様の好ましい他の形は、粒子の少なくとも90重量%が0.055mm 以下の直径を有し、多くても10重量%が0.006mm 未満の直径を有するものである。
本発明の反応組成物の別の態様は、濾布タイプのフィルター(例えば、袋状フィルター)を、上記の反応組成物を機械的に分離する手段として使用する特定のケースに特に適しており、平均粒子直径が0.010 から0.020mm 、粒径勾配が1から3であるものである。本発明のこの他の態様の好ましい他の形は、粒子の少なくとも90重量%が0.035mm 以下の直径を有しかつ多くても10重量%が0.005mm 未満の直径を有するものである。
本発明の反応組成物は、通常、粗な市販の炭酸水素ナトリウム粉末を粉砕することにより得られる。該粉末の組成及び粒径類別は、本発明の反応組成物の品質において重要な役割を果たしている。
本発明の反応組成物の特に推奨される態様は、後者を、98重量%より多くの(好ましくは、少なくとも99%) の炭酸水素ナトリウム及び2重量%未満の(好ましくは、多くても1%)の炭酸ナトリウムを含有し並びに粒子の少なくとも85重量%が0.500mm 未満の直径を有しかつ粒子の多くても25重量%が0.040mm 未満の直径を有する粒径分布を示す粉末を粉砕することより得られる。本発明のこの態様の好ましい他の形において、粉砕に使用される粉末は、粒子100 重量ユニット当たり、85ユニットが0.250mm 未満の直径を有し、50から70ユニットが0.125mm 未満の直径を有し、30から50ユニットが0.090mm 未満の直径を有し、25ユニット未満が0.045mm 未満の直径を有する粒径分布を示す。
すぐ上に記載した特に推奨される態様において、粉砕条件は重要なパラメーターである。特に重要なのは、粉砕により放たれる熱の影響の下、粉末状の炭酸水素ナトリウムの、過剰な又は時宜を得ない熱分解を避けるように粉砕を調節することである。最適粉砕パラメーターは、他のパラメーター、例えば、使用する粉砕機、粉砕機に供される粉末並びにその炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム含有量を類別する粒径、本発明の反応組成物並びにその炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウム含有量に所望の粒径分布に直接関係する。実際、最適粉砕パラメーターは、各特定の場合において、機械的な実験室の作業により容易に決定できる。
他の事柄に関しては全て同様であり、本発明の反応組成物は、塩化水素から、かつ適当ならば二酸化硫黄から煙を精製するための反応体として最適な効率を示す。この効率は、気体状の塩化水素及び二酸化硫黄の定義された画分を、化学量論量の観点で分解するのに必要な過剰の反応組成物により明らかになる。
本発明の反応組成物により、家庭用廃棄物の焼却からの煙道ガスを精製することにおいて有利な利用を見出せる。
つまり、本発明はまた、塩化水素を含有する煙の精製法に関するものであり、炭酸水素ナトリウムを含む本発明の反応組成物が、温度125 から600 ℃で煙に導入され、次に煙を粉塵除去に供する。
本発明の方法において、反応組成物を固形状で煙に導入する。通常、反応組成物は、反応チャンバー内を移動する煙の流れに導入する。反応チャンバーにおいて、炭酸水素ナトリウムにより、塩化ナトリウムの形成を伴い、煙中の塩化水素を分解する。煙からの粉塵の除去は、形成した塩化ナトリウム粒子をそこから分離する機能を有している。任意の公知の適当な方法により、例えば、遠心分離機における機械的分離により、濾布を通す濾過により、又は静電的な分離により実施できる。本発明の方法を実施するのに必要なのは、塩化水素が粉塵除去に供される前に、炭酸水素ナトリウムと煙中の塩化水素が反応する十分な時間を提供することである。実際、反応組成物が煙に導入される最後から2秒より後(好ましくは2.5 から6秒の時間内)で実施されるのが有利であることが分かった。
本発明の方法は、家庭用廃棄物を焼却することにより発生する煙を精製する際に利用するのが特に有利であることが見出された。本発明の方法のこの特定の利用において、粉塵除去から捕集される固形状生成物は、通常、塩化ナトリウムに加えて、硫酸ナトリウム、金属化合物又は結合状態の多価金属及び炭酸ナトリウム(sodium carbonate)を含有する。この固形状生成物は、国際特許出願WO 93/04983[ソルヴェイ(株式会社)]において記載されている方法で処理できる。
本発明の明確な特徴及び詳細は、以下の添付の図の説明から分かるであろう。
図1に示される焼却プラントは、焼却炉1(部分的に示した)、回収ボイラー2、垂直管状反応チャンバー3、粉塵除去装置4及び煙突5を含む。粉塵除去装置4は、遠心分離機6、続く静電フィルターのアレイ7を含む。代わりに、該プラントは濾布フィルター、例えば袋状フィルターを静電フィルター7の代替物として又は静電フィルターのアレイの下流側として含むことができる。
反応チャンバー3には、装置14に接続している、反応組成物を供給するためのインジェクター8が備えつけられている。
図1のプラントを操作中、焼却炉1は、塩化水素と二酸化硫黄及び種々のガス及び重金属を含む固体不純物を十二分に帯びた煙を生成する。この煙は炉1を離れ、ボイラー2を通過し、そこでは、その実質的な熱の部分は回収され、そして煙道9を経由して、インジェクター8の下の反応チャンバー3の下方部分に出現する。さらに、インジェクター8に、操作が下に説明されている供給装置14からもたらされる本発明の粉末状反応組成物が供給される。つまり、煙は、チャンバー3において、インジェクター8から供給される反応組成物で処理され、その結果は、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウム粒子の形成を伴う煙中の塩化水素及び二酸化硫黄の分解である。反応チャンバー3の出発点において、煙は粉塵除去装置4に流入し、そこで特に重金属及び反応チャンバー3において形成される塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含む固形物質を分離する。精製された煙は次に煙突5に移される。
インジェクター8に供給するのに使用される反応組成物は、供給装置14からもたらされる。供給装置は、市販の炭酸水素ナトリウム粉末を含むサイロ10及びサイロ10から振動ディストリビュータ12を介して供給される粉砕機11を含む。粉砕機11は、磨砕型のものであり、磨砕エネルギーを、粉砕される物質に気流を介して提供する(Kirk-Othmer, 化学技術百科事典、第21巻、1983年、157 ページ) 。粉砕機は、選別装置を含む。該粉砕機は、インジェクター8にパイプ13を介して接続している。
以下の実施例により、本発明を具体的に説明する。
家庭廃棄物を、図1に示される上で記載したタイプの工業用プラントで焼却した。焼却炉の出発点において、煙は以下の特性を示した。

重量組成(mg/Nm 3 ):
HCl:1300
SO 2 :200
温度:250℃
供給速度:3500Nm 3 /h
さらに、以下の特性を示す市販の炭酸水素ナトリウム粉末を使用した。

重量組成
NaHCO3:>99%
Na2CO 3 :<1%
粒径分布:
直径(mm) 重量画分(%)
<0.250 > 85
<0.125 50-70
<0.088 30-50
<0.044 < 25
この市販の炭酸水素ナトリウム粉末を、STM パートナーシップ製のRTM 300-S 歯付円板粉砕機で粉砕した。粉砕の操作を調節し、図2に表した粒径分布及び以下の重量組成を示す反応組成物を得た:
NaHCO3:>99%
Na2CO3:<1%
粉砕機から捕集した反応組成物の累積粒径分布を図2に再現した。この図で、横座標のスケールは、粒子の直径をμm の単位で表し、縦座標のスケールは、累積重量画分を、ふるい分けされた物質の%で表した。
粉砕機から捕集した反応組成物を、実質的に煙中の(HCl+SO2)1molあたりNaHCO31.6molに対応する供給速度で、直ちに煙に導入した。次に、粉塵を、処理済の煙から静電フィルター上に除去した。
精製処理及び粉塵除去後の煙の組成を分析した:
HCl:200mg/Nm3
SO2:10mg/Nm3
実施例1の試験を、焼却炉の出口で以下の特性を示す煙について繰り返した:

重量組成(mg/Nm 3 ):
HCl:647
SO 2 :100
温度:167℃
供給速度:36000 Nm 3 /h
同じ市販の炭酸水素ナトリウム粉末を実施例1におけると同様に使用した。しかしながら、粉末の粉砕条件を変更し、図3に表した累積粒径分布(横座標及び縦座標のスケールは、図2のものと同じである)及び以下の重量組成を示す反応組成物を得た:
NaHCO3:>99%
Na2CO3:<1%
粉砕機から捕集した反応組成物を、実質的に煙中の(HCl+SO2)1molあたりNaHCO31.2molに対応する供給速度で、直ちに煙に導入した。次に、粉塵を処理済の煙から濾布フィルター上に除去した。
精製処理及び粉塵除去後の煙の組成を分析した:
HCl:5mg/Nm3
SO2:<10mg/Nm3
図1は、家庭用廃棄物の焼却用である、本発明の方法を利用しているプラントをダイアグラムで示したものである。 図2は、本発明の反応組成物の2つの特定の態様である累積粒径分布を再現するダイアグラムである。 図3は、本発明の反応組成物の2つの特定の態様である累積粒径分布を再現するダイアグラムである。

Claims (9)

  1. 塩化水素含有ガスを精製するための固形粉末状反応組成物であって、炭酸水素ナトリウムを少なくとも99重量%及び炭酸ナトリウム(Sodium monocarbonate)を多くても1重量%含み、平均粒子直径が0.020〜0.030mmであり、粒径勾配が1.25〜2.50であることにより定義される粒径分布を示す反応組成物。
  2. 少なくとも90重量%が0.055mm 以下の直径を有しかつ多くても10重量%が0.006mm 未満の直径を有する粒子から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の反応組成物。
  3. 炭酸水素ナトリウムを少なくとも99重量%、炭酸ナトリウムを多くても1重量%含み、少なくとも粒子の85重量%が0.500mmよりも小さい直径を有しかつ多くても粒子の25重量%が0.040mmよりも小さい粒径分布を示す粉末を粉砕することにより得られる請求項1又は2に記載の反応組成物。
  4. 前記粉末が、粒子100重量ユニット当たり、85ユニットが0.250mm未満の直径を有し、50から70ユニットが0.125mm未満の直径を有し、30から50ユニットが0.090mm未満の直径を有し、25ユニット未満が0.045mm未満の直径を有する粒径分布を示すことを特徴とする請求項3に記載の反応組成物。
  5. 家庭用廃棄物の焼却からの煙道ガスを精製するための、請求項1から4のいずれかに記載の反応組成物。
  6. 塩化水素を含有する煙を精製する方法であって、請求項1から7のいずれか記載の反応組成物を、温度125 から600 ℃で煙に導入し、次に、煙を粉塵除去に供する方法。
  7. 粉塵除去が静電的分離を含み、煙に導入される反応組成物が請求項2に記載のものであることを特徴とする請求項6記載の方法。
  8. 煙からの粉塵除去が、反応組成物が煙に導入される最後から2秒より後で実施されることを特徴とする請求項6又は7記載の方法。
  9. 反応組成物が煙に導入される最後と粉塵除去の間の経過時間が2.5 から6秒であることを特徴とする請求項8記載の方法。
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