JP4201494B2 - キンク防止耐圧フレキシブルホース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、キンクと呼ばれる曲げ時のホース折れ(以下キンク)を防止する耐圧フレキシブルホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の耐圧フレキシブルホースは、内管チューブに対して、線径50ミクロン以下の繊維を束ねた糸を編組し、接着処理を施した後に、外面樹脂をカバーして作成されていた。しかしながら、この従来の構造のホースは、ホース曲げ時において、編組層が接着剤とカバー層によって固定されている為に、内外周の周長差を吸収できず、キンクの発生がおき易かった。この問題を解決するため、特に曲げ応力が集中しキンク発生頻度の高いホース端末の固定金具際において、ホースをスプリング製のスパイラル状ガード内に挿入して取り付け、使用していた。しかしながら、このホースは重量が重い、分別廃棄が難しい、コストが高くなる、などの観点から一部の使用にとどまっている。
また、線径100ミクロン程度のモノフイラメントを内管チューブ上に編組した耐圧ホースも知られている(特開平11−201341号)。しかしながらこのような細い線径のモノフイラメントを使用したのでは、後述する比較例からも明らかなように充分なキンク防止性を付与することができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)は、フレキシブルで、耐圧性を有し、かつキンク防止性が良好であることから、食品用など各種ホースとして使用されているが、近年、脱PVCの世論が高まる中、各種素材の耐圧フレキシブルホースが開発提案されている。しかしながら、これらのホースは、既存のPVC製ホースと比較して、一般にキンクし易い傾向がある。また、PVC製ホースについても、より優れたキンク防止性が求められている。
本発明は、キンクの発生しやすい樹脂内管チューブに、優れたキンク防止性および耐圧性を付与し、かつ軽量なフレキシブルホースを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ゴム、熱可塑性エラストマーまたは軟質樹脂のいずれかからなる内管チューブ上に、繊径が1mmを越え、210℃の空気中に60分放置した時の熱収縮率が10%以下のポリエステル系樹脂モノフィラメントの編組層からなるかご状筒を設けたホースであって、このホースを曲げた場合に該内管チューブと該かご状筒は相互に滑る状態にあり、かつ該モノフィラメントが相互に接着することなく存在しているキンク防止耐圧フレキシブルホースによって達成される。
また、上記目的は、繊径が1mmを越え、210℃の空気中に60分放置した時の熱収縮率が10%以下のポリエステル系樹脂モノフィラメントを事前に編組し、かご状筒を形成した後、該かご状筒内に、ゴム、熱可塑性エラストマーまたは軟質樹脂のいずれかからなる内管チューブを挿入して密着させてホースを製造することにより、ホースを曲げた場合に該内管チューブと該かご状筒は相互に滑る状態にあり、かつ該モノフィラメントが相互に接着することなく存在しているキンク防止耐圧フレキシブルホースの製造方法により好適に製造される。
【0005】
【発明の実施の形態】
まず、本発明を図面により説明する。図1は、本発明の一例を示すキンク防止耐圧フレキシブルホースの一部縦断面を含む側面図(左側が縦断面、右側が側面)であり、図2は、図1の耐圧フレキシブルホースの横断面図である。本発明の耐圧フレキシブルホースは、フレキシブル内管チューブ1と、該チューブ1上に樹脂モノフィラメント2を編組し、加熱収縮して内管チューブ1に密着させたかご状筒3とからなるキンク防止耐圧フレキシブルホース4である。図中、5は内管チューブ内の空洞部である。
【0006】
本発明に使用するフレキシブル内管チューブ1は、キンクを発生しやすいチューブであり、内径5〜50mm、さらには8〜40mmの小口径で、かつ肉厚0.5〜15mm、さらには1〜10mmのチューブが好適に使用される。内管チューブの素材としては、各種ゴム、各種熱可塑性エラストマー(TPE)、各種軟質樹脂を使用でき、ゴムとしてはイソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、ブチル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、ウレタン系ゴムなどが挙げられ、このうちとくにシリコーン系ゴム、フッ素系ゴムが好適である。また、TPEとしては、スチレン系エラストマー(スチレンとジエンとのブロック共重合体の水添物等)、オレフィン系エラストマー等が好適なものとして挙げられ、軟質樹脂としては軟質PVCがあげられる。内管チューブは、これらのゴムや熱可塑性エラストマー、軟質樹脂の単層からなるチューブであることが、キンク防止性およびフレキシブル性をより顕著に発揮させることができることから好適である。内管チューブの素材は、ホースの用途およびホース内を流動させる物質に対応して、任意に選択できるが、本発明の一例である、かご状筒を加熱収縮による内管チューブに密着する場合においては、耐熱性を有するゴム系の材質が好ましい。
【0007】
本発明において、内管チューブ上に編組する樹脂モノフイラメント径は1mmを越えていることが重要で、好適には1.1mm以上である。上限については、4mm以下であることが好適であり、3mm以下であることが最適である。径が1mmを越える樹脂モノフイラメントを使用することにより、後述する実施例からも明らかなように、ホースを曲げた場合の偏平率が小さく優れたキンク防止性を付与できる。樹脂モノフイラメントを編組して得られるかご状筒は、8〜64錘のブレーダー、さらに好適には12〜32錘のブレーダーを使用し、径1mmを越える樹脂モノフィラメントを編組して形成される。樹脂モノフィラメントの素材としては、ポリエステル系樹脂(PET、PBTなど)、ポリプロピレン系樹脂(PP)、ポリアミド系樹脂、などがあげられるが、耐久性、キンク防止性に優れていることからポリエステル系樹脂が好適である。ポリエステル系樹脂モノフィラメントとしては、ポリエステル系樹脂モノフィラメントを延伸成形した後に再加熱収縮させたもので、210℃の空気中に60分間放置した時、熱収縮率が20%以下、さらには10%以下の低収縮加工した樹脂モノフィラメントが好適である。
【0008】
樹脂モノフィラメントを編組する場合、樹脂モノフィラメントの内管チューブ縦方向に対する交合角度は30〜70度(樹脂モノフィラメント相互の交合角度は60〜140度)であることが、より優れたキンク防止性を付与することができることから好適である。編組する場合、樹脂モノフィラメントのタテ糸は、使用しても差し支えないが、使用しない方が、折り曲げ特性(曲げ易さ、しなやかさ)が、より優れたものになることから好適である。
樹脂モノフィラメントを内管チューブ上に編組した後、樹脂モノフィラメントを加熱収縮して、内管チューブ上に密着させることが、より優れたキンク性および耐圧性を有するフレキシブルホースを得ることができることから好適である。ここで、密着とは、樹脂モノフイラメントと内管チューブは実質的に接着しておらず、ホースを曲げた場合両者が相互に滑り得る状態にあることを言う。また、加熱収縮方法としては、たとえば樹脂モノフイラメントとしてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフイラメントを使用する場合は、200〜240℃で、5分〜2時間空気中で加熱処理する方法があげられる。加熱処理する際、内管チューブが溶融などによる変形や酸化などによる変性が生じない程度に行うことが好ましい。過度の加熱処理により、樹脂モノフィラメントが相互に、または、樹脂モノフィラメントと内管チューブが溶融接着することは好ましい態様ではない。
内管チューブ材質が加熱収縮に耐えられないと考えられる場合においては、フッ素樹脂チューブに代表される、抜き取り可能なフレキシブルマンドレルへ樹脂モノフイラメントをまず編組し、加熱によって形状安定化を施した後、マンドレルを抜き取って、かご状筒を形成し、次に内管チューブを延伸し、その径を細くして前記のかご状筒内へ挿入し、挿入後に延伸の解放によって樹脂モノフイラメントを内管チューブ上に密着させる方法を採用することができる。
本発明において、樹脂モノフイラメントの編組層からなるかご状筒を、内管チューブ上に実質的に接着させることなく設けることは重要で、このように実質的に接着させることなく設けることにより、ホースを曲げた場合、内管チューブの内外周の周長差を吸収することができ、内管チューブのキンクをより完全に防ぐことができる。ここで実質的に接着させることなくとは、かご状筒と内管チューブとが接着剤等により接着固定されていない状態を言うが、ホースを曲げた場合、両者が相互に滑り得る程度ならば僅かに接着されていても構わない。
【0009】
本発明のフレキシブルホースは、代表的には、耐圧性、キンク防止性の要求される各種ホースとして使用され、とくに食品用スチーム加圧ホースとしてとくに好適に使用される。
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0010】
【実施例】
実施例1
24錘ブレーダーで、線径1.2mmの低収縮加工を施したPETモノフィラメント(210℃の空気中に60分間放置した時の熱収縮率は3%)24本を、肉厚3mm、内径9.8mmのシリコーンゴム内管チューブ上に編組し、210℃で60分間熱処理を施して、内径9.6mm、外径20.3mmの耐圧フレキシブルホースを得た。尚、編組は、内管チューブの縦方向に対し横糸が55度で交合(横糸相互の交合角110度)するよう行った。
【0011】
比較例1
24錘ブレーダーで、3000デニール(線径100ミクロン)のPETモノフィラメント24本を、肉厚3mm、内径9.8mmのシリコーンゴム内管チューブ上に編組し、シリコーンコーティング材を塗布しながら200℃で3分間架橋処理を行った。尚、編組は、内管チューブの縦方向に対して横糸が55度で交合(横糸相互の交合角110度)するよう行った。
【0012】
実施例1および比較例1で作製した耐圧フレキシブルホースの最小曲げ半径(ホースをはちまき状にねじり、そのはちまきの半径を測定する)と偏平率{(解放状態のホース外径−はちまきの頭頂部ホース短外径)÷解放状態のホース外径×100で測定算出する}、および耐圧性能(25℃においてホース内の水を加圧しホースがバーストした値、および、バースト時の伸び率を測定する)を測定した。結果を表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
表1の最小曲げ半径における偏平率は、実施例1が比較例1と比較して、キンク防止性に優れることを示している。さらに、表1のバースト値、および、伸びは、実施例1が比較例1と比較して、耐圧性能においても優れていることを示している。
【0015】
【発明の効果】
本発明のフレキシブルホースは、キンク防止性に極めて優れ、しかも耐圧性に優れており、かつ軽量である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示すフレキシブルホースの一部縦断面を含む側面図である。
【図2】図1のフレキシブルホースの横断面図である
【符号の説明】
1 内管チューブ
2 モノフィラメント
3 かご状筒
4 耐圧フレキシブルホース
5 内管チューブ内の空洞部
Claims (4)
- ゴム、熱可塑性エラストマーまたは軟質樹脂のいずれかからなる内管チューブ上に、繊径が1mmを越え、210℃の空気中に60分放置した時の熱収縮率が10%以下のポリエステル系樹脂モノフィラメントの編組層からなるかご状筒を設けたホースであって、このホースを曲げた場合に該内管チューブと該かご状筒は相互に滑る状態にあり、かつ該モノフィラメントが相互に溶融接着することなく存在しているキンク防止耐圧フレキシブルホース。
- 内管チューブが、単層チューブである請求項1に記載のキンク防止耐圧フレキシブルホース。
- 内管チューブが、内径5〜50mm、肉厚0.5〜15mmである請求項1または2に記載のキンク防止耐圧フレキシブルホース。
- 繊径が1mmを越え、210℃の空気中に60分放置した時の熱収縮率が10%以下のポリエステル系樹脂モノフィラメントを事前に編組し、かご状筒を形成した後、該かご状筒内に、ゴム、熱可塑性エラストマーまたは軟質樹脂のいずれかからなる内管チューブを挿入して密着させてホースを製造することにより、ホースを曲げた場合に該内管チューブと該かご状筒は相互に滑る状態にあり、かつ該モノフィラメントが相互に溶融接着することなく存在しているキンク防止耐圧フレキシブルホースの製造方法。
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